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平成14年度試験研究成果書 ロボット搾乳牛とパーラー搾乳牛における
平成14年度試験研究成果書 区 分 研 究 題 名 ロボット搾乳牛とパーラー搾乳牛における分娩後の繁殖機能に関するパ ラメーターの比較結果 〔要約〕 ロボット搾乳は多回搾乳が分娩後の繁殖機能回復にマイナスの影響を与えることが懸念されたが、 定時2回搾乳のパーラー搾乳牛群との比較では初回発情日数 、初回授精日数において差はなく 、また 、 分娩後の栄養状態の指標となるボディコンディションスコア、血中遊離脂肪酸、総コレステロールの変 動においても差は確認されなかった。 キーワード 乳牛 搾乳ロボット 繁殖機能 畜産研究所 家畜飼養研究室 1 背景とねらい 搾乳ロボットは不等間隔多回搾乳による産乳量の増加が確認されているが、繁殖機能に及ぼす影響は未 だ解明されていない。ロボット搾乳牛群における繁殖マネジメントの効率化を計ることを目的に栄養状態 および繁殖に関するパラメーターについて定時2回搾乳のパーラー牛群と比較検討した。 2 成果の内容 (1) 本試験では、分娩直後から泌乳最盛期にかけてのロボット牛群とパーラー牛群で栄養状態の指標 となる BCS、血液生化学成分値は同等に推移し 、繁殖機能の回復も同等であったことが確認できた 。 また、今回、ロボット牛群での搾乳回数は緩やかに増加したことから、分娩直後から 泌乳初期の搾 乳回数を抑制することにより、繁殖機能の回復に影響を及ぼさない可能性が示唆された。今後は搾 乳回数および乳量と初回排卵日数、性ホルモン等について検討を進めていく。 ア 繁殖成績はロボット 、パーラー両群間に初回発情日数 、初回授精日数とも差がなかった 。 (表2 ) イ 群の区別無く、全供試牛において初産牛と経産牛を比較したところ、初産牛は初回発情日数が 経産牛に比較して有意に遅かった 。(表2) ウ ロボット牛群の分娩後 60 日間の1日当たり搾乳回数は平均 2.6 回、最大5回、最低2回で、個 体差が目立った。なお、牛群平均の搾乳回数は、乳量に応じて徐々に増加していた 。(図1) エ 分娩後のボディコンディションスコア(BCS)の推移は、両群とも同様であった 。(図2) オ 血液生化学成分値について、分娩後の栄養状態の指標となる遊離脂肪酸( NEFA)および総コレス テロール(T-Cho)とも両群間に差は無かったが、NEFA 値は個体差が大きかった。 また、繁殖機能 に影響を及ぼすとされている血中尿素態窒素( BUN)は分娩後 48 日目にパーラー牛群が有意に高 かったが、その他のポイントでは差が無かった 。(表3) 3 成果活用上の留意事項 (1) ロボット、パーラー牛群とも供試牛の分娩時期は6月中旬∼8月初旬。両群ともパドック併設の フリーストール牛舎で各 20 ∼ 25 頭の1群管理、TMR(コーンサイレージ主体、 TDN74.9%、 CP15.6%)の不 断給餌、乳量に応じ個体別に最大 4kg の配合飼料(原物中 TDN73.6%、 CP18.2%)を増給 。(表1) (2) 搾乳回数はロボット牛群では2回以上とし上限は設定していない。パーラー牛群は定時2回。な お、両群とも分娩後5∼7日間は産褥牛舎で定時2回搾乳。 ( 3) 人工授精は明瞭かつ正常な発情行動が確認された場合に実施し、本試験では生理的空胎期間 (VWP)を設定しなかった。ホルモン剤の使用は一切していない。 (4) 分析に用いた血清は、朝の給餌前(8∼8時 30 分)に尾静脈から採血した後、分離し凍結保存し た。 4 成果の活用方法等 (1) 適用地帯又は対象者等:搾乳ロボット導入、または導入を検討している農場 (2) 期待する活用効果: 搾乳ロボットが繁殖機能に及ぼす影響を解明し、搾乳ロボット牛群における 最適な繁殖効率を達成させるための繁殖(および栄養)マネジメントシステムを構築できる。 5 6 当該事項に係る試験研究課題 (846)ロボット多回搾乳が乳用牛の繁殖機能に及ぼす影響の解明と繁殖管理技術の確立 参考資料・文献 (1) 泌乳牛の栄養と繁殖の関係について新しい情報と展望:Thomas R. Overton、 Dairy Science Update (1999) (2) 繁殖とエネルギーステータスの相互関係: William W.Thatcher ら、 Dairy Science Update( 1999) (3) 3回搾乳が乳牛の生産性に及ぼす影響:愛知農試(2000) ( 研)-34- 1 7 試験成績の概要 表1.供試牛の概要 表2.初回発情日数、初回授精日数 図1.ロボット搾乳牛群における搾乳回数および乳量推移 図2.供試牛の分娩後BCS推移 表3.供試牛の血液生化学成分の変動 項目 NEFA (mEq/ml) BUN (mg/dl) T-Cho (mg/dl) 区分 ロボット パーラー ロボット パーラー ロボット パーラー 分娩後日数 平均 -7 340 -1 518 0 706 3 885 6 765 15 514 21 634 27 425 36 269 標準偏差 平均 153 312 352 290 254 288 379 232 116 83 80 30 367 609 690 665 644 662 694 324 418 264 233 210 標準偏差 350 131 332 114 76 279 346 141 222 5.3 9.3 7.9 7.3 8.6 8.0 8.3 9.4 42 179 79 57 113 40 42 8.8a 9.6 平均 標準偏差 2.2 2.9 3.1 1.6 3.0 2.4 2.6 2.2 2.6 2.0 2.7 平均 4.7 10.2 10.3 8.7 8.4 7.9 8.3 10.1 10.4 11.6b 11.9 3.4 69 14 64 23 2.9 99 21 91 31 2.0 109 17 105 32 3.2 131 21 126 42 2.5 172 23 157 39 2.3 180 25 154 41 標準偏差 平均 75 標準偏差 平均 52 標準偏差 5 16 0.1 77 23 55 10 3.5 61 14 53 14 3.1 66 17 52 14 ※ -7は分娩予定前7日、-1は分娩前日の値 ※ 分娩後は概ね1週間間隔で測定した。 ※ ab異符号間に危険率5%水準で有意差あり ( 研)-34- 2 3.0 158 23 148 45 8.1 48 220 2.4 173 33 153 42