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S55.830 水害リスクコミュニケーションによる 地域防災力向上のための実践的研究

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S55.830 水害リスクコミュニケーションによる 地域防災力向上のための実践的研究
水害リスクコミュニケーションによる
地域防災力向上のための実践的研究
熊本大学大学院
自然科学研究科
S55.830
山田 文彦
講演内容
1.本研究の背景・目的
最近の水害の特徴
防災から減災へ,地域防災力
水害リスクマネージメント
水害リスクコミュニケーション
2. ケーススタディ(熊本市壷川校区)
ワークショップ・災害図上訓練(DIG)
避難行動実験(社会実験)
3. 現状のまとめ・今後の課題
最近の水害の特徴
2003年 水俣市宝川内地区
2004年 新潟・福島
福井
2005年 宮崎(台風14号)
2006年 鹿児島(川内川氾濫)
2007年 美里町 など
計画規模を超える豪雨
白川関係避難区域図 2007年7月7日
坪井川
二次避難エリア
200世帯 600人
「避難準備情報」発令
一次避難エリア
白川
市役所
越流注意箇所
研究背景
・今後の地球温暖化により,現状の想定した計画規模を超える外力の存在
・財政の悪化・公共事業費の縮減
行政主導によるハード整備・情報提供のみでの
災害リスク管理には限界がある(従来の防災の概念)
防災から減災への災害リスク管理の転換
ハード対策
堤防のかさ上げ
水害リスク
マネージメント
ソフト対策
ハザードマップ
避難経路
水害リスクマネジメント
(仲谷 2004)
水害が発生した場合の被害を最小限に抑えるための準備
活動の総称であり、以下のものが含まれる。
1)常時水害の状況を監視し、発生を的確に予測。
災害情報システム
2)予測される水害に対する対策を迅速かつ効果的に実施。
洪水ハザードマップ・避難行動計画
3)水害時に個人が的確な行動を取れるように、水害や対応
行動に対する教育、訓練を計画・実施。
防災教育・訓練、防災リーダー育成
洪水ハザードマップの問題点
・想定された条件(シナリオ)が周知さ
れていない
熊本大学
行政側からの一方向の情報発信
・氾濫状況に合わせてどのように避難
経路を選択したらよいか?
・指定避難場所が浸水の可能性が高
い場所に設定されている
土地利用形態や地物情報の再現性
が低く、地域の実情を正確に反映して
いない
凡
例
浸水した場合に想定される水深
0.5m 未満の区域
0.5~1.0m 未満の区域
1.0~2.0m 未満の区域
2.0~5.0m 未満の区域
5.0m 以上の区域
熊本市発行洪水ハザードマップ
問題の解決策
行政と住民の双方向の情報共有と理解が
不足している。
水害リスクコミュニケーション
の必要性
専門家が協力し、行政と住民と専門家の間で、災害がもたらすリスクにつ
いて、相互にコミュニケーションを繰り返し行い、リスクに関する認識を共有
する作業。
本研究の着眼点
国内外における既存の水害リスクコミュニケーションの
研究例は、概念的あるいは理論的研究が多く、如何に
して実際の水害による地域住民の被害を軽減するた
めに、どのように実践するかという視点が不足している。
例えば
Plate, 2002
Falconer & Harpin, 2005
多々納 2003
小林 2005
川島ら 2005
片田・桑沢 2006
片田ら 2007
本研究の目的
本研究ではワークショップや想定水害シナリオを用いた避難行動実験(社会
実験)などを水害リスクコミュニケーションの一環として実施する手法を提案す
る.具体的には、以下の3点が本提案手法の要点である.
①洪水ハザードマップを活用したワークショップを複数回実施し、洪水ハザー
ドマップの利点と欠点を理解するとともに、地域に潜む水害リスクを認知する.
さらに、災害図上訓練などを通して、地域独自の水害避難経路マップを作成
する
②作成した水害避難経路マップの有効性について確認するために、想定水
害シナリオを用いた社会実験を実施する.社会実験には、幼児から老人まで
でできるかぎり多数の方に参加してもらい、避難行動データを取得するととも
に、参加者からの意見を反映し、避難場所や避難経路の修正を行う.
③ワークショップや社会実験への参加者の防災・減災意識の変化について継
続的にアンケート調査を行い、地域コミュニティの合意形成における意識変化
過程の基礎データを取得する.
水害リスクコミュニケーションの実践法
社会実験の報告会
水害避難経路マップの変更と修正
④Action
水害避難経路マップの作成
社会実験の実施
各プロセスで参加住民の意識
変化のアンケート調査を実施
①Plan
地域防災・減災計画の作成
③Check
避難行動データの分析
②Do
災害図上訓練による水害避難経路の修正
社会実験の計画
図 PDCAサイクルとしてみた水害リスクコミュニケーション
地域防災力向上を目指した
リスクコミュニケーションの継続性
・・・・・・
2年目
Action
Check
1年目
Plan
リスクコミュニケーション
Do
ケーススタディ
(熊本市壷川校区)
壷川校区
人口構成比
世帯数 3926世帯
高齢単身世帯 425世帯
高齢夫婦世帯 307世帯
総人口 8407人
0~14歳 1022人(12%)
65歳以上 1677人(20%)
平成13年国勢調査
地盤高の鳥瞰図
坪井川
同一校区内で地盤高の高低差が30m程度存在し,
水害危険度の差が発生
第1回ワークショップ
日時: 2006年1月24日 19:00~21:00
場所: 熊本市壺川公民館
目的: 住民意識調査と現状把握
内容: オリジナル防災マップ作成 , アンケート
参加者: 壺川校区住民33名,熊本大学関係者(5名,学生8名),NPO法人,
熊本日日新聞,熊本県庁(各1名)
第2回ワークショップ2
氾濫開始~30分後
氾濫水の進行状況シミュレーション
シミュレーション提示後、改めて第1回
ワークショップ時作成の防災マップとの
比較・検討を行った。
前回の避難経路を見直すと共に、
水害想定の時間経過の中で、個
人・地域がどのように行動するか、
またその留意点を検討。
氾濫シミュレーション
第3回ワークショップ
日時: 2006年6月4日 10:00~12:00
場所: 熊本市壺川コミュニティセンター
目的: 災害時の行動の確認と意識の共有
内容: 河川氾濫を想定した災害図上訓練 , アンケート
参加者: 壺川校区住民35名,熊本大学関係者(4名,学生26名),NPO法人,国土交通省,
熊本県庁,熊本市(各1名)
避難行動実験シナリオ
2006年6月26日の内水氾濫の実績をもとに再現
水深
(m)
図4 内水氾濫の状況(80mm/h,0~1時間)
避難行動実験
目的
災害対策の1つとして,ワーク
ショップで見直した避難経路の
有効性の評価,避難行動調査
内容
・冠水すると予想される道路を時間ごとに
通行不可にする(トラップ)
・GPS携帯により避難行動時の経路
データ取得
日時:2006年10月9日10:00~12:00
避難場所:熊本市壺川コミュニティセンター
参加者:壺川校区住民86名(大人55名 子供31名)
熊本大学関係者(6名+学生40名)
国土交通省、熊本県、熊本市
NPO法人,NHK,熊本日日新聞
避難行動解析①
電話の受取待ち時間(分)
人数
52
平均
7.1
最大
17
最小
2
標準偏差
3.5
避難開始までの時間(分)
人数
52
平均
4.6
最大
10
最小
1
標準偏差
2.6
=
27(分)
参加者全員が避難するまでに
待受け時間
17(分)
避難開始までの時間
+
10(分)
避難準備情報
避難行動解析②
一般的な避難計画
徒歩での避難を前提
避難速度
避難時間
避難距離
33m/分
1時間以内
2km前後
人数
45
15
30
平均
72
83
67
最大
143
143
103
最小
46
55
46
標準偏差
19
25
13
全員
京町
壺川・坪井
人数
52
16
36
平均
20
10
25
最大
38
17
38
最小
2
2
8
標準偏差
9
5
7
全員
京町
壺川・坪井
人数
46
15
31
平均
1300
684
1600
最大
2060
1130
2060
最小
240
240
580
標準偏差
537
241
358
避難速度(m/分) 全員
京町
壺川・坪井
避難時間(分)
避難距離(m)
避難経路データ
GPSによる避難経路データ
坪井川
高低差30m
避難場所
避難時に橋を通過するのは危険・恐い
お年寄りの方が坂を上るのはきつい
避難場所が遠く、避難に時間がかかる
初期画面
終了画面
40分後
35分後
30分後
25分後
20分後
15分後
10分後
5分後
4分後
3分後
2分後
1分後
現状のまとめ
1. ワークショップを通したリスクコミュニケーションに
より,参加者の水害への関心度が向上した。ま
小学校校区という限られた地区内においても、たとえ
た,公助への依存度が低下し,
ば河川の右岸・左岸で水害の程度や避難の仕方・場
自助・共助の認識が高まる傾向を確認した。
所が異なることが住民・大学側双方で理解された。
2. 避難指示の連絡に必要な時間や実際の避難時
今後の地域避難計画においては,地域の実情をどこ
間を計測し,避難指示のタイミングに関する基礎
まで取り入れるかが重要であり、それには行政に任
データを取得できた
せるだけでなく、住民・地域がいかに積極的に関わっ
3.
シナリオに基づく訓練であったが,実際に体験す
ていける場を作れるか大きな鍵となる。
ることで,地域に潜む問題が明らかとなった。
今後の課題
・リスクコミュニケーションのみで埋められない部分
をどのように補完するのか
・寝たきりの方・高齢者の方などの避難対応
・ワークショップ等で得られた結果を如何にして地域
の住民全員に周知・浸透させてゆくのか(あるいは
地区にどの程度のリーダーが必要なのか?)
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