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進行期パ アプロー - abbvie channel
提供:アッヴィ合同会社 PP--0004 2016年 11月 座談会記録集 Sofitel Berlin Kurfürstendamm(ドイツ、ベルリン) 2016 年 6 月 20 日(月) 座談会 進行期パーキンソン病への アプローチ パーキンソン病(PD)治療はL-dopaをはじめとする様々な治療薬が使用可能であり、 新た な薬剤や治療法の研究も著しく進展している。 しかし実臨床では依然として、 運動合併症の コントロールに難渋する進行期患者が多く存在する。 今回は欧州と日本でPD研究をリード する4人の先生方にお集まりいただき、 進行期PD治療の課題と、 望まれる治療について議 論していただいた。 司 会 髙橋 良輔 先生 Discussants Werner Poewe 先生 長谷川 一子 先生 坪井 義夫 先生 京都大学大学院 医学研究科 臨床神経学 教授 Department of Neurology, Medical University of Innsbruck, Austria 国立病院機構 相模原病院 神経内科 医長 福岡大学医学部 神経内科学 教授 記載の薬剤の使用にあたっては、製品添付文書をご参照ください。 L-dopa に毒性があるとすれば、高用量投与患者では低 現在の進行期 PD 治療における課題 用量群に比べ、投与中には最も高い臨床効果が見られて も、washout 後は臨床症状が最も悪化するはずです。こ れを検討した試験が、広く知られているELLDOPA1)です。 L-dopa 療法は今も PD 治療のゴールドスタンダード 本試験では、L-dopa 投与中には用量依存性の臨床効果が 見られ、さらに 2 週間の washout を行っても、高用量 髙 橋 1 9 6 0 年に日 本 の 佐 野 、 (600mg/ 日)投与患者の臨床状態が最も良好でした。す オーストリアのHornykiewiczらに なわち L-dopa の神経毒性は、少なくとも臨床的には否定 よって、パーキンソン病(PD)にお されることとなりました(図 1) 。 ける大脳基底核でのドパミン低下 が発見されて以来、PD に対する 運動合併症発現に影響を及ぼす因子 L-dopa 治療の可能性が模索され、 髙橋 良輔 先生 1967~1969年、米国のCotzias 髙橋 その一方で ELLDOPA 試験では、高用量の L-dopa らによって L-dopa 大量療法の有 投与群でジスキネジアが生じることが確認されました。ま 効 性 が 確 立 さ れました 。 当 初 、 た最近報告された STRIDE-PD 試験の多変量解析では、ジ L-dopa の効果持続時間は 10〜15 分と短く、あまり実用 スキネジア発現に影響を及ぼす因子について検討が行われ 的ではありませんでしたが、Cotzias は少量から漸増して ています 大量投与することにより、治療を成功させました。 以来、 400mg、400mg 超~600mg、600mg 超に階層化した L-dopa 療法は、50 年たった今もなお、PD 治療のゴール 結果、400mg 未満では他の群に比べて有意にジスキネジ ドスタンダードであり続けています。 アの発現が抑制されていました(log-rank検定、p<0.001) 2 )。 L-dopa の 1 日用量で 400mg 未満、 ただし、L-dopa 自体の血中半減期が約 90 分と短いのは (図 2) 。ジスキネジアのリスク因子としては、発症年齢が 相変わらずです。また、L-dopa の継続的使用によりon- 若いこと、L-dopa 等価用量ではなくL-dopa そのものの用 off現象や、ジスキネジアが 40~100%の患者に現れます。 量(nominal dose)が高いこと、低体重、女性であること さらに、L-dopa がフリーラジカル産生を通じた神経毒性を などが挙げられました。Wearing-off 現象についても、同 有し、神経変性を促進するという懸念も持たれるようになり 様に 400mg 未満で発現が抑制されました(log-rank 検定、 ました。 p < 0.001) 。Wearing-off 現象のリスク因子としては、発 12 8 6 0.90 4 2 0 −2 −4 −6 −8 0.80 0.70 0.60 全体的傾向検定 log-rank 検定 p<0.001 0.50 0.40 0.30 <400mg/日(Group 1) 400mg/日(Group 2) 400 超∼600mg/日(Group 3) >600mg/日(Group 4) 0.20 0.10 2 ベースライン 6 10 14 18 22 26 30 34 38 42 46 週 投薬中止 [New England Journal of Medicine , 2004; 351: 2498-2508; Copyright©2016 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. Translated with permission.] 2 STRIDE-PD 試験:ジスキネジア発現率 1.00 プラセボ 150mg 300mg 600mg 10 スコアの変化(単位) 図2 ELLDOPA 試験:UPDRS スコアの変化 ジスキネジア未発現率 図1 記載の薬剤の使用にあたっては、製品添付文書をご参照ください。 0.00 0 N(Group 1) 157 N(Group 2) 310 N(Group 3) 201 N(Group 4) 77 26 52 78 104 130 156 182 208 118 267 185 76 107 240 162 71 104 224 148 58 97 198 129 43 94 179 111 33 53 80 56 18 13 22 11 2 0 0 0 0 治療経過(週) Warren Olanow C, et al. Mov Disord. 2013; 28: 1064-1071. 進行期パーキンソン病へのアプローチ 提供:アッヴィ合同会社 症年齢が若いこと、nominal dose が高いことのほか、 質問票 PDQ-8 を使って PD 患者の ADL(日常生活動作)スコアが高いことなどが挙げられまし QOL を評価し、現薬物療法につ た。 いては、効果発現までの時間や 1 したがって、L-dopa は PD の症状を十分コントロールで 日のうちでい つ 薬 が 効 いている き る 最 低 用 量 を 投 与 す べ き で あり、 ジ ス キ ネ ジ ア や か、薬効が不十分になってくると wearing-off のリスクを最小限にとどめたいなら、400mg/ どのような問題が生じるか、など 日未満が強く推奨されます。 特に女性の場合は、体重 kg を尋ねました。 あたりの用量を考慮することも重要でしょう。また、ドパミ その結果、約 70% の患者が夜 ンアゴニスト(DA)やモノアミン酸化酵素(MAO)-B 阻害薬 間就寝中・早朝または昼間の時間 などを併用することも望ましいと考えられます。 帯に効果不十分を感じていました。H & Y stage 別に見る Poewe 私は、初めて治療薬として用いられてからこれほ と、stage I でも約 40%が効果不十分を感じ、stage が進 ど長期間を経ても、そして多くの他の薬剤が開発されても、 行するにつれてその割合は増加しました(図 3) 。効果不十 L-dopa が依然として PD 治療のゴールドスタンダードであ 分で何が困るかと言えば、職務・家事、外出、薬がいつ効 り続けていることに注目すべきだと思っています。 髙橋先 かなくなるかという不安、一人でいるときの無動などが高 生がご指摘された問題さえ克服できれば、L-dopa は運動 頻度の回答でした。このうち外出の困難や一人でいるとき 症状に関する最善の薬剤であると思います。 の無動などは H & Y stage の進行とともに回答率が増加し 坪井 義夫 先生 ましたが、薬がいつ効かなくなるかという不安については H & Y stage I から一貫して高い回答率が認められました。 治療効果とQOL 効果不十分を感じている患者群と感じていない患者群で 髙橋 では現在の PD 治療について、患者はどう感じてい PDQ-8 のサマリー・インデックス(高値ほど QOL が悪い) るのでしょうか。坪井先生は実際に PD 患者を調査されたと を比較すると、効果不十分を感じている群のほうが QOL は 伺っているのですが。 不良であることが分かりました。H & Y stage I であっても 坪井 はい。 私たちは日本の PD 患者団体の協力を得て、 効果不十分を感じている群は感じていない群と比べ QOL が PD 患者に現在の薬物療法の満足度を尋ねる質問票調査を 悪化していました。 実施しました また、早朝の off 症状に的を絞って尋ねると、有病率は全 3) 。年齢、性別、Hoehn&Yahr 重症度(H & 体で約 80%に上りました。H & Y stage Iでも約 50%が同 Y stage)、罹病期間、現在の薬物療法などを確認の上、 図3 H & Y 重症度別治療効果 Hoehn & Yahr 重症度 Total n=2,523 39.8 31.8 ■ 夜間就寝中・早朝の効果不十分 (昼間にも効果不十分を感じる例を含む) ■ 昼間のみの効果不十分 ■ 効果不十分の時間帯に無回答 ■ 薬効の off 時間なし 26.6 1.8 Stage I n=72 22.2 Stage II n=202 18.1 59.7 36.1 25.7 37.6 0.5 Stage III n=924 42.1 Stage IV n=310 47.1 36.0 20.8 1.1 37.4 13.2 2.3 Stage V n=85 48.2 0 20 30.6 40 60 7.1 80 14.1 100 患者の割合(%) Tsugawa J, et al. BMC Neurol . 2015 Jul 5; 15: 105. doi: 10.1186/s12883-015-0360-y. 3 症 状 を 自 覚して おり、 H & Y れをいかに防ぐかが、患者の QOL 向上に不可欠なポイント stage の進行とともに有病率も上 だと感じています。 昇しました。早朝の off 症状がある 患者群とない患者群で PDQ-8 の 運動合併症発現抑制のための治療 サマリー・インデックスを比較する と、早朝のoff症状がある患者群の ほうが QOL は不良であることが分 Continuous dopaminergic stimulation (CDS)の概念 かりました。 Werner Poewe 先生 以上の結果から、PD 患者の治 療満足度を改善するには、早期からの適切な治療、運動症 髙橋 ここまで主にPD 治療における課題についてお話しい 状の日内変動に対する治療、早朝の off 症状に対する治療 ただきました。ところで、L-dopa の大量および長期投与に が重要です。その核心にあるのは、24 時間にわたる安定 よる運動合併症発現抑制のために、ドパミン受容体への持 した疾患コントロールだと考えられます。 続 的 刺 激を目指す、 c o n t i n u o u s d o p a m i n e r g i c 髙橋 薬剤の効果がいつ切れるか分からないという不安 stimulation(CDS)という概念が提唱されていますね。長 は、進行期 PD 患者だけでなく早期 PD 患者にも共通の問 谷川先生、この概念について解説をいただけますか。 題なのですね。早朝の off 症状が H & Y stage I の PD 患者 長谷川 はい。CDS が重要であることは、すでに 1980 年 でも約 50%に認められるというのも驚きです。進行期はも 代から指摘されていました。 ちろん、早期から 24 時間の疾患コントロールを実現するこ 健康成人における血中ドパミン濃度の日内変動を見てみ とが、患者の満足度にとって非常に重要であることが分か ると、日中は高値を保ち、夜間に低下して翌朝再び上昇し りました。 ます。一方、L-dopa 投与患者においては、投与後すぐに Poewe 同感です。ただそれがより深刻なのは、やはり進 ドパミン濃度が上昇して適正な範囲を超え、その後は急激 行期 PD 患者だと私は思います。効果不十分や早朝の off 症 に低下して、次の投与までは不十分な値となってしまいま 状を自覚する患者の割合は Stage が進むごとに増加してい す。こうした作用時間の短い薬剤による間歇的なドパミン ることに注意すべきです。 刺激が、PD 治療における運動合併症の要因と考えられて 長谷川 症状の悪化を日常的に繰り返し経験することは、 います。したがって、運動合併症を抑制するには、ドパミ 患者の精神状態にも悪影響を与えてしまいます。私は、そ ン刺激を生理的な範囲に安定して維持できる治療が重要に 図4 間歇的ドパミン刺激と持続的ドパミン刺激 有害 ドパミン濃度 ドパミン濃度 有害 適正 適正 不十分 0 2 4 不十分 6 8 10(時間) 0 2 4 6 8 10(時間) Chase TN. Drugs . 1998; 55 Suppl 1: 1-9.より改変 (長谷川先生提供) 4 記載の薬剤の使用にあたっては、製品添付文書をご参照ください。 進行期パーキンソン病へのアプローチ 提供:アッヴィ合同会社 欧州における 進行期 PD 治療の現状 なります(図 4)4)。 運動合併症が顕著になってくるのは、平均して治療開始か ら 6 年後ですが、これは PD の進行に伴い薬剤によるドパミ 髙 橋 P o e w e 先 生 、 欧 州では ン刺激への依存度が大きくなり、その作用時間に左右され L-dopa 治療のご経験が豊富だと るようになるためです。PD 患者に最もつらい症状を聞いた 思いますが、現在、進行期 PD の 海外の研究では、発症から 6 年未満と 6 年以上を分けると、 治療はどのように行われているの 後者において運動症状の日内変動が多く挙げられていま でしょうか。 Poewe 長谷川先生もご指摘の す 5)。 とおり、L-dopa の長期投与による 長谷川 一子 先生 ジスキネジアや wearing-off を抑制するのに有用性が認め CDS の実現を目指した薬物療法 られている薬剤として、MAO-B 阻害薬、COMT 阻害薬、 髙橋 これまでPD 治療においては、CDS の実現を目指し、 DA などがあり、いずれもその使用によって L-dopa の減量 様々な製剤や投与法の開発が行われてきました。 が可能になり、結果として運動合併症の抑制につながり 長谷川 そのとおりです。CDS を目的とした薬剤としては、 ます。 カテコ ー ル - O - メチ ル 基 転 移 酵 素( C O M T )阻 害 薬 、 L - d o p a 療 法 によって 運 動 症 状 の 日 内 変 動 が 生じ、 MAO-B 阻害薬、そして DA や L-dopa の新しい剤形や投与 MAO-B 阻害薬や COMT 阻害薬、DAによる補助治療を行 法が開発されてきました。たとえば DA の徐放製剤は off 時 っても改善せず、さらに off 時の緊急レスキュー療法として 間やジスキネジアの改善に有用であり、その併用により アポモルフィンの間歇的皮下注射を行っても改善が難しい L-dopa 用量を減量できることが示されています 6, 場合、あるいはジスキネジアが生じて、L-dopa 減量の上、 7) 。DA には貼付薬もあり、皮膚からの緩やかな吸収が安定した血 アマンタジンを追加しても改善が難しい場合、最終的な手 中濃度の維持と臨床効果を可能にすることが示されていま 段としてレボドパ / カルビドパ配合経腸用液(LCIG)持続経 す。逆に短時間作用型のDAを用いてoff時の緊急注射によ 腸注入やアポモルフィン持続皮下注入*、さらには視床下部 り運動合併症を改善するという方法もあります。 (STN)や淡蒼球内節(GPi)への脳深部刺激療法(DBS)が さらに、L-dopa の血中濃度の維持のために徐放製剤や 持続経腸注入剤が用いられることもあり、本邦でも開発中 です。 図5 考慮されます(図 5)8)。 * 本邦未承認 PD における運動合併症の治療 L-dopa 療法 ジスキネジア 考慮: MAO-B 阻害薬や COMT 阻害薬の中止 考慮: L-dopa の減量 アマンタジン追加 運動症状の日内変動 追加: COMT 阻害薬、MAO-B 阻害薬、 DA(徐放製剤や貼付薬も考慮) 難治性の運動症状日内変動 アポモルフィンによるレスキュー療法 改善なし デバイス支持療法、DBS (device-aided therapy) Jankovic J, et al. Curr Opin Neurol . 2012; 25: 433-447.より改変 (Poewe 先生提供) 5 回数は関係ありません。また、適切な非侵襲的治療にもか PD 患者の QOLと治療満足度を 改善させるための治療とは かわらず、1 日の覚醒時間のうち off 時間が 1~2 時間を超 えるような場合や、アマンタジン追加で改善しない厄介な ジスキネジアと運動症状の日内変動がともに認められる場 進行期 PD 治療のコンセンサスを目指す Navigate PD 合なども専門医へ紹介し、いずれかのデバイス支持療法を 考慮すべきです。 髙橋 では、近い将来、新たな薬剤や投与方法が使用可 これらのデバイス支持療法の使い分けについては、必ず 能になった場合、進行期 PD 患者の薬物治療や外科治療を しも比較試験によるエビデンスがあるわけではありません どのような考えに基づき選択すべきでしょうか。Poewe 先 が、多くの専門家の臨床経験に基づき、コンセンサスがま 生、欧州では“Navigate PD”というグループによる議論 とめられています(図 6)9)。 が行われているそうですね。 どの治療法を選択すべきかは個々の患者によって変わっ Poewe Navigate PD は国際的な枠組みによる独立した てきますので、絶対的なレシピはありません。その選択の 専門家グループです。現在、進行期 PD 患者に対するデバ プロセスは患者一人ひとりによって異なり、介護者のサポー イス支持療法(device-aided therapy) (LCIG 持続経腸注 ト状況によっても異なります。何が正しい選択であるかは毎 入、アポモルフィン持続皮下注入) 、DBSに関し、コンセン 回大きな課題であり、それゆえ Navigate PD の文書も長 サスの形成を進めているところです。 大なものになっています。 たとえば、経口薬や貼付薬などによる非侵襲的治療では 次の治療ステップについて 早期から考慮すべき 運動症状や QOL の改善が得られないことを判断し、専門 医へと紹介するには、何を基準にしたらよいでしょうか。ま ず、ジスキネジアを伴う、あるいは伴わない運動症状の日 髙橋 長谷川先生や坪井先生は、進行期 PD 患者の治療選 内変動によりQOL が不十分であり、非侵襲的治療がもは 択において何が重要と考えていらっしゃいますか。 や有効でないことについて医師と患者が同意することです。 長谷川 PD 治療の有効性は運動症状だけでなく、ADL や そして L-dopa、DA、MAO-B 阻害薬、COMT 阻害薬を QOL などの改善でも評価されます。 その一方で、各治療 適切に試した上で、L-dopa の投与が概ね 1 日 5 回以上必 で起こりうる有害事象にも注意しなければなりません。 治 要になれば、専門医への紹介を考慮すべきでしょう。ただ 療法の選択はそのバランスを考慮した上で、患者の人生観 し、患者の忍容性とoff 時間の適切な低下があれば、投与 や精神性、要望によっても変わりますし、保険制度や医療 図6 PD 治療におけるデバイス支持療法の選択 年齢<65 ∼ 70 歳、 運動症状の顕著な日内変動、 中等度のジスキネジア 年齢<65 ∼ 70 歳、 重度のジスキネジア (ジスキネジアも off 症状もない治療適正域 “therapeutic window”が消失) 第一選択 第二選択 STN-DBS アポモルフィン持続皮下注入 LCIG 持続経腸注入 STN-DBS LCIG 持続経腸注入 アポモルフィン持続皮下注入 年齢>65 ∼ 70 歳 * 運動症状の日内変動±ジスキネジア LCIG 持続経腸注入 Antonini A, et al. Expert Rev Neurother . 2009; 9: 859-867 より改変 . * 本邦未承認 6 記載の薬剤の使用にあたっては、製品添付文書をご参照ください。 進行期パーキンソン病へのアプローチ 提供:アッヴィ合同会社 費、主治医の考え方によっても変わるのではないかと思い 的なリハビリテーションプログラムと合わせて治療を進めて ます。 いきたいと考えています。 坪井 長谷川先生のご指摘どおり、各国で医療制度や保険 Poewe 今後の進行期PD治療におけるポイントの一つは、 制度が異なり、選択可能な治療法は必ずしも同一ではあり ドラッグデリバリーの改善にあると考えられます。それによ ませんが、その中で 24 時間にわたる安定した疾患コント って L-dopa 療法は今後も重要な位置を占め続けると予想 ロールを目指し、最良の選択を考える必要があると思い しています。しかし、それと同時にすくみ足や転倒、自律 ます。 神経障害、認知障害といった別の側面がクローズアップさ 私が一つ提案したいのは、進行期 PD 患者において治療 れてくるでしょう。PD の進行そのものを抑制するような疾 を次のステップに進めるのを、もう少し早くすべきではない 患修飾薬の登場も待ち望まれます。 かということです。 運動合併症の繰り返しは患者も介護者 髙橋 本日は進行期 PD 患者に対する治療の問題点を整理 も精神的に疲弊させます。私たち医師にとっても、患者に するとともに、今後の治療選択のあり方を話し合って参りま とっても、その決断は易しいことではありませんが、デバイ した。患者の QOL を考えれば、非運動症状も大きな課題 ス支持療法をもっと早期から考えてもよいのではないかと であり、PD の克服にはまだ乗り越えるべき長い道のりがあ 思います。 りますが、まずは運動症状を良好にコントロールできるよう Poewe それは非常に重要なご指摘です。 私はまだ内服 な治療を選択することで、患者のQOLと治療満足度を改善 療法の余地がある段階から今後の治療の展開を、最終的な していきたいと思います。本日はありがとうございました。 デバイス支持療法も含めてお話しするようにし、実際にデ バイスを見ていただいています。 長谷川 一時期、PD治療においては、DAを先に投与する ことが wearing-off やジスキネジアの予防のために期待さ れましたが、今では再び L-dopaファーストの考えに回帰し ています。 重要なのは L-dopa 療法を温存することではな く、L-dopa の血中濃度を適正な範囲に維持することであ り、そのための製剤や投与法が開発されてきました。今後 は進行期 PD に対しても、運動症状を改善しつつ、運動合 併症がより少ない治療が可能になると期待しており、積極 References 1)Fahn S, et al. N Engl J Med. 2004; 351: 2498-2508. 2)Warren Olanow C, et al. Mov Disord. 2013; 28: 1064-1071. 3)Tsugawa J, et al. BMC Neurol. 2015 Jul 5; 15: 105. doi: 10.1186/s12883-015-0360-y. 4)Chase TN. Drugs. 1998; 55 Suppl 1: 1-9. 5)Politis M, et al. Mov Disord. 2010; 25: 1646-1651. 6)Pahwa R, et al. Neurology. 2007; 68: 1108-1115. 7)Stocchi F, et al. Mov Disord. 2011; 26: 1259-1265. 8)Jankovic J, et al. Curr Opin Neurol. 2012; 25: 433-447. 9)Antonini A, et al. Expert Rev Neurother. 2009; 9: 859-867. 7