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(1)総合交通政策 ロサンゼルス郡都市圏交通局

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(1)総合交通政策 ロサンゼルス郡都市圏交通局
(1)総合交通政策
ロサンゼルス郡都市圏交通局
レポート担当
井上 哲也
議員
と
き
平成19年11月5日(月)
と
こ
ろ
ロサンゼルス郡都市圏交通局
応
接
者
ロサンゼルス郡都市圏交通局
ロバート・カリック氏ほか
(Mr. Robert Calix)
大阪府では、道路や公共交通の効率的な運用に向け、交通
調査目的
1
需要マネジメント(TDM)施策に取組んでおり、ノーマイカ
ーデー運動の展開、バス利用促進、鉄道からバスへの乗り換
え利便性の向上などを実施している。
車社会から公共交通重視へと転換が進められているロサン
ゼルスにおいて、交通整備の計画策定の状況やLRT(ライ
トレールトランジット)の状況、車の渋滞解消のため取り組
みについて調査し、大阪における公共交通施策の参考とする。
ロサンゼルス郡について
アメリカには、広域自治体として①州、②郡(カウンティ)、基礎自治体と
して、①シティ、②タウン、③ビレッジがある。
広域自治体としての郡は、州の政策・事業等を執行するために設定された主
要な地方統治単位である。
州によって若干の表現の差は見られるものの、郡は、大半の州憲法の中で州
の下部単位として位置づけられており、1つ以上の市町村をその郡内に含んで
いる。郡は、州の全域に対する基本的政府サービスの提供に責任を負う最も根
本的な地方政府であるといえる。
アメリカには 3,141 の郡相当の行政単位があり、カリフォルニア州には 58 の
郡がある。都市化の発達、政府構造の改革等により、現在、郡の役割及び責任
は強化され、サービスは増大傾向にあるとのことである。
郡政府の約 75%は、5万人以下の人口であり、人口約 1,020 万人(2006 年、
カリフォルニア州政府推計)のロサンゼルス郡は例外的存在で、カリフォルニ
ア州最大の郡である。また、カリフォルニア州の雇用者の約半分がロサンゼル
6
ス郡に集中している。
ロサンゼルス郡と大阪府とを比較すると、広さは、ロサンゼルスが大阪の約
3倍強、人口は、ロサンゼルス郡が約 1,020 万人、大阪は約 880 万人、GDP
は、どちらも約 37 兆円で同規模である。
ロサンゼルス市は、大阪と同様に車の渋滞が深刻で、優れた交通網を一層充
実させ、車社会からの脱却をめざしている。このロサンゼルス市を管轄するロ
サンゼルス郡都市圏交通局を訪問し、レクチャーを受けた。
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ロサンゼルス郡都市圏交通局の概要
アメリカにおいては、民間が事業の運営主体であることが多いが、公共交通
機関の運営については、基本的にすべて公共団体が行っているとのことであっ
た。
ロサンゼルス郡都市圏交通局の役割については、次のとおりである。
(1)郡全域の交通計画の立案者かつ調整役
25 年先のロサンゼルスの人口動態、雇用及び移動人口の動向を見通した上
で、交通計画の長期計画(2001∼2025 年)、短期計画(2003∼2009 年)を作成
している。
(2)郡全域の交通網の整備
鉄道の建設や輸送の整備をしている。
(3)郡全域の公共交通の運営
70 マイル(約 112.6km)ある地下鉄
やLRT(ライトレールトランジット)
等の運営、バス台数でアメリカ第2位
の 2,000 台を超えるバスシステムの運
営をしている。
また、同交通局の毎年の予算規模は
31 億ドルで、連邦政府や州政府による
補助金と州と地方の消費税の一部を使
った特定財源で構成されている。その
ため、事業計画等を州に報告する義務
がある。
担当者の「公共交通の運営にあって
は安全が第一である」との言葉が印象
ロサンゼルス郡都市圏交通局の前にて
的であった。
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交通路線図
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「2001 長期交通政策計画」(2001 LRTP)について
25 年後のロサンゼルスは、人口で 270∼350 万人程増加、雇用者は 124 万人
程の増加、移動人口は約 30%増、スプロール現象(都市が無秩序に拡大して
いく)が進み簡単に移動出来にくくなり、車での移動速度は遅くなっていく
と予想されている。
このような 25 年後の情勢の変化に対応し、ロサンゼルス郡の交通体系をど
の よ う に 整 備 し て い く の か を 決 め る た め 、 2001 L R T P ( Long Range
Transportation Plan=長期交通政策計画)を、2001 年 4 月に策定した。
策定にあたっては、ロサンゼルス郡内の 89 の市との連携や住民(交通機関
の利用者、土地所有者等)の理解も必要ということで、ロサンゼルス郡を9
つの地域に分けて、それぞれの地域において、道路・タクシー事業者及び組
合、アカデミック層(大学関係者)、非営利団体、地域のコミュニティグルー
プ等からなる委員会を設置し、それぞれの意見を参考として、計画を策定し
た。計画策定の初期段階から住民の参加を募り、技術面等の説明をしっかり
とするなどして十分なコミュニケーションを図り、信頼を得ることが大切で、
この信頼関係さえあれば、例えば、人間がすることであるので人為的なミス
がおこった場合であっても、理解を得られるとのことであった。委員会から、
財政面、パフォーマンス面、危機管理面からの対応、さらに全体の優先順位、
地球温暖化への対応等について意見が出されたが、これらの意見を取り入れ
て計画を練り直していき、18 ケ月かけて、長期計画が作成された。本計画は、
連邦政府や州政府からプロジェクトへの助成を得るためにも必要なものであ
る。
25 年間の計画に要する予
算として、1,060 億ドルを
見込んでいるが、その費用
の負担割合では、地元負担
が 779 億ドル、州政府が 145
億ドル、連邦政府が 136 億
ドルとなっている。また、
プロジェクトごとの計画予
算では、バス路線整備・運
営に 45 億ドルと計画予算
全体の4割以上を占めてい
る。
ロバート・カリック氏らとともに
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次に、新ライトレールプロジェクト、高速輸送、地下鉄網の整備で 145 億ド
ル、そして自動車道路の整備で 133 億ドルなどを見込んでいる。
LRTPは、最新の技術を取り入れることによって、また、社会情勢の変
化や資金需要の状況によって更新されていくものである。
また、LRTPは、州政府の各種の計画等に合致しているかどうかという
視点でも見直される。
特に地球温暖化の問題については、カリフォルニア州は全米でも厳しい基
準で取り組んでおり、例えば排出ガスについては、2020 年までに 1990 年のレ
ベルの 80%以下にすることとなっている。LRTPでも、この目標を組み込
む必要があり、遵守していない場合、州の審査において司法長官が拒否権を
発動する場合があり、他の郡でそういう実例もあったとのことなので、ロス
交通局でも州法の遵守には十分に配慮して計画を立てている。
住民の生活の質を向上させるための、長期計画の主要な目標としては、以
下のものをあげている。
① バス等の公共交通機関を整備し、車の利用を減少させる。
② 公共交通システムを向上させ、需要やニーズに的確に対応していく。
③ 地域の実情にあった交通体系の構築や多様な交通手段を提供する。
④ 公共交通システムにおける最新技術の導入やデザイン性を向上する。
また、長期計画の進行管理につい
ては、カープール・レーン(2人以上
の乗車車両専用優先車線)と他の車線
の利用台数の比率、地下鉄、LRT、
バスそれぞれの利用者人数の比率等
につき、成果を測るための指標として、
州政府や郡内の市とともに、随時追跡
していくとのことであった。
2001 年の策定後、現時点では、ま
だ結果が出ていないが、2008 年6月
に、これまでの成果をまとめた報告書
意匠を凝らした地下鉄の駅
を出す予定であるとのこと。
なお、より詳細に交通政策を推進するため、長期計画の期間を短く区切り、
短期計画(2003∼2009 年)もあわせて策定している。
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※ 「2001 長期交通政策計画」(2001 LRTP)より抜粋
2001 長期交通政策計画(2001
LRTP)より抜粋
予算関係
負担割合
連邦
州
郡・市
プロジェクト別の予算額
道路
バス
鉄道
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4
LRT(ライトレール・トランジット)について
アメリカでは、1968 年に運輸省が設立され、自動車中心の交通政策から、
LRT(次世代型路面電車:Light Rail Transit)と呼ばれる、従来の路面
電車を画期的に進化させた、新しいタイプの都市型輸送システムの開発が始
まった。
自動車交通による渋滞問題、
大気汚染・騒音等の環境問題に
対応するという目的もある。
LRTは、乗降性に優れ、す
べての人にとって使い心地が良
い。また、建設コストが割安、
需要への柔軟な対応が可能、と
いったメリットもある。車両デ
ザインは洗練されており、これ
LRT
までのいわゆる路面電車といったイメージを変え、
導入した都市のシンボルとなり得る。
1981 年にサンディエゴでLRTが開通され、営業経費の9割を運賃で賄え
る好成績をおさめ、全米におけるLRTの引き金となった。それに加えて、
大気汚染や交通渋滞による環境の悪化が、LRTの導入を早めるきっかけと
なった。
ロサンゼルス市
においては、1990
年にLRTが導入
された。
ロサンゼルスの
LRTは、ダウン
タウン周辺では地
下鉄になり、郊外
に出ると路面を走
るような路線もあ
地下鉄(左)とLRT(右)の駅
る。従来のバス路線を多角化し、中心部と郊外の移動、また、コミュニティ
間の移動をより円滑に迅速に行うことを目指している。
ロス交通局では、LRT導入については、都市開発と一体となって考えて
おり、地域ごとに、LRT導入の適否を検討する。全てにおいていえること
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であるが、地域の実情にあわせた交通手段の「選択」を住民に「提案」する
と考えており、押し付けることはしないということである。
担当者は、「住民の 100%の同意はないかもしれないけれどもコンセンサス
を得るのが我々の仕事である。」と述べておられた。また、LRTを導入する
となった場合、住民に正しく理解してもらうため、将来図をイメージしやす
いように、写真等で説明しているとのこと。その後、LRT導入となった場
合は、地域への影響を考えて、地上を走らせるべきか、地下とするべきかと
いうことも考えていくということである。
なお、日本においては、2006 年4月に富山市で本格導入され(富山ライト
レール)、大阪府内でも、堺市において 2010 年導入を目指し、計画が進めら
れている。
5
Carpool Lane(カープール・レーン)について
LRTやHRT等の公共交通の利用を促進しているが、広大なアメリカで
も例外とも思える交通渋滞(全米でワースト1とのこと)は、ロサンゼルス
空港から市内のホテルに向かうフリーウエイだけでも非常に印象的であった。
カープール・レーンは、フ
リーウエイに導入されており、
二人以上の乗員のいる乗用車
だけが、カープール・レーン
を利用できる。ただ、環境問
題に配慮し、ハイブリッドカ
ー、天然ガス車、電気自動車
については、ステッカーを貼
ることによって、例外的に使
用できるということである。
◇部分がカープール・レーン
(日本車では、プリウスとシビック・ハイブリッドが 2005 年にカリフォル
ニア州運輸局の認可を受けている。)
ロサンゼルス郡でカープール・レーンは 500 マイル(約 804km)あり、全
米で一番多い。
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左車線がカープール・レーン
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交通渋滞中であっても、カ
ープール・レーンの中は、比
較的スムーズに移動できる
ので、人形を同乗者にみたて
るなどして違反をする者も
あるようである。公平性を保
つため、違反者の罰金は最高
で 350 ドル程度(累犯の場合)
と高額になっているが、現行
犯逮捕が基本であるという
点が悩ましいとのことであ
る。
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