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ハイアミロースコーンスターチを用いたレジスタントス
ターチの生理作用に関する研究
笠岡, 誠一
. vol., no., p.1-108
1999-09-02
http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/1372
Rights
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IYOKAN - Institutional Repository : the EHIME area http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/
ノ¥イアミロースコーンスターチを用いた
レジスタントスターチの生理作用に関する研究
笠岡誠一
1
9
9
9年
目次
緒言第 I章
回-直腸吻合および正常ラットにおけるハイア
ミロースコーンスターチの消化率一一一一一一一一一一一一一
実験方法一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
6
7
実験結果一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 12
考察一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 21
第 E章
ノ¥イアミロースコーンスターチ摂取によるラッ
トの血中脂質上昇ならびに体脂肪蓄積抑制作用一一一一一 24
実験方法一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 2
5
実験結果一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 30
考察第田章
ジメチノレベンズアントラセン誘発ラット乳ガン
モデルにおけるハイアミロースコーンスターチの腫蕩
増殖抑制作用一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
41
実験方法一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 42
実験結果一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 48
考察一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 5
4
第I
V章
ラットの糞便排池に及ぼすハイアミロースコーン
スターチ摂取の影響一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 56
実験方法一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-- 57
実験結果一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 6
2
考察一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 69
第 V章
レジスタン トプロテインによるハ,
イアミロース
コーンスターチのラッ ト盲腸内発酵パターンの修飾 一一一 72
実験方法 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 73
実験結果 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 78
考察 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ー一一一一一一 88
総
括一一一一一一一一一一-----------一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-- 9
2
謝
辞 一
一
一
一
一
一
一
一
一
・・
-一
一
一
一
一
--- 95
文
献一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 9
6
E
S
u
l
r
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y目
目
白
目
-10
5
略号
ARP(
A
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i
f
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c
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lr
e
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i
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n
tp
r
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e
i
n
) 人工的に調製した難消化性タンパク質
ANOVA(An
a
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sofv
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n
c
e
) 分散分析
BDF(
B
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i
b
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) ビート食物繊維
CS(
C
o
m
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a
r
c
h
) コーンスターチ
DMBA(Dimethylbenz[
a]
a
n
t
h
r
a
c
e
n
e
) ジメチルベンズ、アントラセン
HAS(
H
i
g
h
a
m
y
l
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s
ec
o
m
s
t
a
r
c
h
) ハイアミロースコーンスターチ
NSP(N
o
n
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a
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hp
o
l
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c
c
h
a
r
i
d
e
s
) 非デンプン性多糖類
PP(
P
o
t
a
t
op
r
o
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e
i
n
) ポテトタンパク質
RP侭i
c
ep
r
o
t
e
i
n
) 米タンパク質
RS(
R
e
s
i
s
t
a
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ts
t
a
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c
h
) レジスタントスターチ
SCFA(
S
h
o
r
t
c
h
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i
nf
a
町a
c
i
d
s
) 短鎖脂肪酸
SP(
S
o
yp
r
o
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e
i
n
) 大豆タンパク質
SU(
S
u
c
r
o
s
e
) スクロース
WB(
羽市e
a
tb
r
a
n
) 小麦フスマ
緒言
本邦におけるデンプン摂取量は 1日当たりおよそ 140gと推定されり、この大半は米
をはじめとする穀類に由来する。食生活の西欧化に伴い、デンプンを主とする炭水化物
摂取量は年々低下してきているが、総エネノレギー摂取量に占める炭水化物の比率は現
在でもおよそ 6害J
Iを占めており
2
)、デンプンが日本人にとって重要なエネルギー源で
あることは明らかである。従来、デ、ンフ。
ンは小腸管腔内または小腸粘膜上で、ほぼ 1
0
00
/
0
がグ、ルコースに分解され吸収されると考えられ、エネルギー供給源としてのみ評価さ
れてきた。しかし、 1980年代初頭、食物繊維の定量方法が改良される途中で食物繊維
として定量されるデンプンの存在が明らかになってきた。E
n
g
l
y
s
te
ta
l.3) は S
o
u
t
h
g
a
t
e
の食物繊維定量法 4) を改良し非デンプン性多糖類(1¥
f
S
P
) の定量、すなわち、デンプン
をアミラーゼで分解した後、アルコールにより多糖を沈殿させ硫酸で、分解後、ガスクロ
マトグラフィーまたは比色法により定量していた。 このなかで彼等は食パンや加熱調
理したジャガイそなどの加工食品中の NSPが、それぞれの原料中の NSP よりも高い
値を示すことに気付いた。この NSP の増加は 2Nの水酸化ナトリウムまたはジメチル
スルホキシドで可溶化された後、はじめてグ、ルコースとして定量されるデンプンに基
づくことが明らかになり、彼等はこれを難消化性デンプン(レジスタントスターチ;
RS) と名付けた。彼等が見いだした RSは一旦糊化したデンプンが冷却される際に形成
される、いわゆる老化デンプンであるが、その後の研究で老化デンプン以外にも数種の
RSが食品中には存在することが明らかになった。現在 RSは「健康なヒトの小腸内で、
消化吸収されないデンプンおよびデンプンの部分分解物の総称」と定義されている
。
5
)
E
n
g
l
y
s
te
ta
.
l6) は
、 RSを物理的、化学的性質からタイプ 1
"
'
'
4に分類している。R
Sl
は食品のマトリックス構造中に物理的に包み込まれているため、水溶液中で、の膨潤・分
散が不十分で消化酵素が作用できないデンプン粒子を指す。 RSlは粉砕していない穀
類などに含まれるが、食品の加工方法によりその消化抵抗性は大きく変化する 。RS2
はデンプン粒子の X 線解析による結晶構造からタイプ A
"
'
'
Cに分類される。 タイプ A
には麦、とうもろこし等の穀類デンプンが相当し、これらのデンプンは試験管内では加
熱処理なしで完全に消化されるが、小腸管腔内で、は一部消化抵抗性を示す
O
タイプ B
には芋類、未完熟ノ《ナナのデンフ。
ンおよび、ハイアミロースコーンスターチ (HAS) が
含まれ、これらは加熱処理を施さない限り消化抵抗性を示す。タ イプ C には、豆類の
デンプンが含まれ、 A と B の中間の結晶構造を示す。 RS3はいわゆる老化デンプンを
指す。RS4は化学修飾デンプン、すなわち分子聞に架橋結合を施した ものや分子内にア
ルキノレ基を導入したデンプンなどを指す。このように、食品中には様々な種類の RSが
存在していることが明らかになっている。
実際に、ヒトが摂取したデンプンのうちどの程度が小腸を通り抜け大腸に達するの
ta
.
l の報告がある。彼らは事故死したヒトの大腸内容物を
かについては、 Cummingse
死後 4時間以内に回収し、炭水化物の分析を行っている
7
)
。 また、回腸造凄術を施し
た患者から得られた小腸内未消化物についても同様の分析を行つため
O
当初、彼等は
大腸内に存在する炭水化物で、は NSPの量が最も多いと予測していた。 しかし、彼等の
予測に反して、大腸内で最も多量に存在していたのは NSPではなくデンフ。
ンで、
あった
。また、通常の食事を摂った回腸造痩術患者の排地物中にも予想、を上回る量のデンフ。
7
)
ンが回収されることが明らかになった
8
)O
大腸へ流入したデンプン (RS) は、食物繊維と同様に大腸内容物の重量および体積
(カサ)を増大させることで排便反射を促し排便を促進すると考えられる 。排便の促進
は便秘を解消するだけでなく、発ガン 性の認められている物質と生体(大腸)との接触
d
時間を短縮することで大腸ガンの予防に寄与すると考えられる 。しかし、 RSの一部(ま
たは大半)は、腸内細菌により発酵を受け短鎖脂肪酸 (
S
C
F
A
;酢酸、プロピオン酸お
よび酪酸)を含む有機酸やガスへと変換されることが i
nv
i
t
r
o試験で示されており
9
)
、
デンプン (RS) 自体によるカサの効果はさほど期待できなし¥かもしれない。一方
、
S
t
e
p
h
e
n と Cummingslo) は、食物繊維が発酵を受け腸内細菌の増殖を促進し、その結果
CFAの大
菌体重量が増加することで糞便量は増加すると報告している。また、近年、 S
腸機能に対する役割が明らかにされつつあるが、そのひとつとして S
CFAによる大腸
組織の嬬動運動の刺激が報告されている
1
1
)。したがって、
RSは、菌体の増加によるカ
サの増大に加え、 S
CFAの作用によって排便を促進する可能性がある。 また、 i
nv
i
t
r
o
の発酵試験の結果からデンプンは S
CFAのなかでも特に酪酸を産生する割合が高いこ
とが報告されているが
9
) 、酪酸は、大腸上皮細胞で消費されるエネルギーの
をまかなっていること
1
2
) およびヒトの大腸腫湯細胞から得られた継代培養細胞の増殖
を抑制すること
1
3
)
700
/
0 以上
などが明らかにされている。 さらに、最近の報告では、健常人に比
べ大腸ガン患者では糞中への S
CFA排池量が低下しており、特に酪酸排池量の低下が
2
最も顕著であることが明らかにされている
1
4
)0
C
a
s
s
i
d
ye
ta
.
l1) は日本を含む 1
2ヶ国の
データをもとにデンプンまたは NSP摂取量と大腸ガンの発症率の関係について検討し
ている。 この結果、 1日当たりのデンプン摂取量が 300gを越えるインドでの大腸ガン
0
0g前後のオーストラリアおよびアメリカに比べ明らか
発症率は、デンプン摂取量が 1
に低いことが示された。 さらに、彼等は、大腸ガン発症率とデンプンまたは NSP摂取
量との相関性を調べたところ、大腸ガン発症率と有意な負の相関が認められたのはデ
ンプン摂取量であり、 NSP摂取量では有意な相関は認められなかったと報告している。
9
5
1年の 2
5g前後に対して 1
9
9
4年には
ところで、本邦における食物繊維摂取量は 1
約 1
6gにまで低下していることが報告されているが
1
5
)
、さ らにこの内分けを見ると、
食物繊維摂取量の低下は穀類由来の食物繊維摂取量の減少に大きく影響を受けている
。ここで示された食物繊維量は P
r
o
s
k
y法
1
5
)
1
6
)
によって測定された値であり、この方法
では NSPに加えて RSの一部も食物繊維として定量される可能性がある
l
7
)O
したがっ
て、本邦における食物繊維摂取量の低下には、穀類由来の食物繊維と同様に、穀類由来
の RS (恐らく RS1 と RS2) の低下が関与しているものと推測される。本邦でのデン
プン摂取量を 1
4
0g前後とし、 C
a
s
s
i
d
ye
ta
.
l1) の試算にもとづき全デンプン摂取量の 50
/
0
が RSと仮定すれば、 1日当たりの RS摂取量はおよそ 7 gになる。 これは現在の食物
繊維摂取量 (
1
6g
) から考えると無視できない量である。RSは、食物繊維と同様に難
消化性成分であり、食物繊維と同様の消化管内動態を示し、また類似の生理作用を有す
る可能性がある。 RSを豊富に含む穀類等の摂取は食物繊維摂取量を増加させることと
同様に重要なのではないだろうか。
P
h
i
l
l
i
p
se
ta
.
l18) は RS含量の異なる 2種類の食事、すなわち低 RS食 (
5g
!日)および
高 RS食 (
3
9g
!日)を健常人に各 3週間摂取させ、糞便重量の測定を行っている。この
結果、高 RS食摂取期の糞便重量は低 RS食摂取期に比べ有意に高い値を示した。 しか
し
、 RS による糞便重量の増加はそれまでに効果の認められている小麦フスマ
(WB、
不溶性の NSP) などに比べかなり弱し¥もので、あった。彼等は、 RSの摂取量および糞中
あ ったと報告してい
排池量から RSの大腸での分解率を計算したところおよそ 80% で、
る。 これは NSPの大腸での分解率 (50%) に比べ高い。事実、高 RS食摂取期の糞中酪
酸および酢酸濃度は低 RS食摂取期に比べ有意に高い値を示しており、このことからも
RSは大腸で分解されやすいと考えられる。 したがっ-て、彼らは、 RSの大腸での分解さ
れやすさが糞便重量の増加効果を弱めたものと推測している。ま た
、 B
r
y
n
e
se
ta
.
l19) は
3
ラットを用い RSの耐糖能を調べた結果、 RSを含まないデンプンに比べ RSを含むデン
プンでは血糖およびインスリンの上昇が明らかに抑制されたことを報告し ている。こ
の様に RSも食物繊維と類似の生理作用を有することが少しづ、つ明らかになっ てきてい
る。
欧米諸国と同様に本邦においても食物繊維の重要性は十分に認識されており、食物
繊維摂取量を増加させる目的で食品中への食物繊維強化が行われているが、食感をす員
なうなどの理由からこの試みは必ずしも成功していない。 しかし、 RSのうち RS2に分
類される比t¥.Sは、通常のコーンスターチ (CS) と全く同様の食感を示し、さらに糊化
温度が 154度以上と高く通常の加熱調理後も高い RS含量を示す
2
0
)
。 したがって、 こ
の礼t¥.Sは、これまでの食生活を極端に変化させることなく、自然に十分量の RS摂取
を可能にするものと期待される。
そこで本研究では RS源として比t¥.Sを用い、 RSの食物繊維様作用を明らかにする目
的で、糖質代謝、脂質代謝、糞便排池および大腸内発酵に及ぼす影響について検討した。
第 I章では、比生 S の生理作用を予測するうえで重要な消化管内動態を知るため、回
-直腸吻合ラットを用いて礼的の小腸内消化率を求めた。 さらに正常ラットを用いて
全消化管内消化率を求めることで、大腸内での分解率についても検討した。
第 E章では、比t¥.Sの脂質代謝へ及ぼす影響について調べるため、 CSを比較対照とし
て、血中コレステローノレおよびトリグリセリド、ならびに体脂肪蓄積量について検討し
た。
第田章では、比t¥.S の糖質代謝(インスリン代謝)を介した生体への影響について調
べるため、カロリー依存性の増殖を示し、またインスリンが腫蕩の増殖因子のひとつで
ある 7,1
2
-ジメチルベンズ、
アントラセン (DMBA) 誘発ラット乳ガンモデルにおいて
HASの腫湯増殖に及ぼす影響について検討した。
第N 章では、比t¥.Sの排便促進効果について調べるため、ラットに比企Sを含む飼料を
摂取させ、糞便量、盲腸内容物重量、盲腸内での SCFA を含む有機酸の産生量および
糞中への菌体排池量について検討した。
第 V章では、比t¥.S摂取時に盲腸内で多量に検出されるコハク酸が、盲腸内 pHなら
びに盲腸内容物および組織重量などの盲腸内環境に与える影響について検討した。 さ
らに、 HAS の盲腸内発酵においてコハク酸産生量を抑制し、生理活性の高い SCFA、
特に酪酸産生量を増大させることを目的とした栄養素(難消化性タンパク質)の検索を
4
行った。
/
0で
、 CS (
1000
/
0
) に比べ明
以上の研究結果から、比A.Sの小腸内消化率はおよそ 700
、
らかに低く、比生 Sは摂取エネルギー量の制限に寄与することを明らかにした。 HASは
摂取エネノレギー量の制限に加え、食後血糖値の急激な上昇の抑制、すなわちエネルギー
供給速度の低下を介して、血中トリグリセリド、およびコレステロール濃度を低値に保
ち、さらに体脂肪の蓄積を抑制することを明らかにした。また比A.Sは、摂取エネルギ
ー量の制限に加え、急激なインスリン分泌を抑制することによって DMBA誘発ラット
乳ガンモデルにおける腫蕩増殖を抑制する可能性が示唆された。 また、比企S の排便促
進作用は、大腸に流入した礼的が腸内細菌の発酵基質となり、菌体の増殖を通じて大
腸内容物のカサを増加させることによって発現すると考えられた。また、比t¥S 摂取時
の盲腸内発酵は、コハク酸の蓄積と極度の pH低下(<5.
6
) に特徴づけられるが、コハ
ク酸による pH 低下は盲腸組織を肥大化させることが明らかになった。さらに、 HAS
に加え難消化性タンパク質(レジスタントプロテイン)を同時に摂取することにより、
大腸内で生理活性の高い SCFA、特に酪酸産生量を格段に増加させることが可能である
ことを明らかにした。
5
第 I章
回-直腸吻合および正常ラットにおけるハイアミロース
コーンスターチの消化率
摂取したデンフ。
ンは、すべてが小腸内で、消化、吸収されるわけで、
はなく、 一部は下
部消化管(盲腸および結腸)に達する
RSと呼ばれ、現在では、
2
1)
。 このような消化抵抗性を示すデンプンは、
「健康なヒトの小腸内で、消化吸収されないデンプンおよびデ
ンプンの部分分解物の総称」と定義されている
はアミロース含量が約 70% あ
22) OHAS
り、強し¥消化抵抗性を示すことから R
Sの生理作用を検討するうえで良い素材である。
比
t
¥Sは
、 CSと比べて、摂取後の血糖値の上昇が緩やかで、急激なインスリン応答を抑
制する
1
9
)
。 また、比怖から単離した R
Sを用いた研究では、食後トリグリセリド濃度
の上昇を抑制すること
2
3
)
、さらに R
Sは脂質吸収を阻害することが明らかにされてい
る 24)O したがって、摂取カロリー量の制限という観点から礼的および R
Sは、糖尿病、
高脂血症患者に対する食事成分に、あるいはこれらの疾患を予防するための食品素材
としても適している。
ところで、デンプンの生体内消化率は、その結晶構造および食品中の形態に左右さ
れるだけではなく、岨輔、消化管内通過時間、摂取するデンプンの絶対量などによって
も変化する
6
)O
しかしながらこれまでの HASに関する研究は、生理作用に焦点を当て
たものが多く、それらの作用発現の根幹にある孔仙の消化率について、詳細に検討し
た報告は少ない 25)O
小腸を未消化で通過するデ、ンフ。
ンを測定することは、比t¥Sの血糖および血中脂質の
上昇抑制作用を理解するうえで、さらには HASの生理的エネルギー値を決定するうえ
でも重要である。一方、下部消化管に流れ込んだデンプンは、糞便重量の増加をもたら
すだけでなく、腸内細菌の発酵基質として利用されると考えられている
26,
2
7
)O
腸内細
菌による発酵産物である SCFA は、エネノレギー源で、
あると同時に、さまざまな生理作
用を発揮する。 したがって孔t¥Sの大腸内での発酵を介した生理作用の解析上、その大
腸内分解率を知ることも重要で、
ある。
本章では回一直腸吻合術を施したラットおよび正常ラットを用い、 HASの小腸内消
化率および全消化管内消化率を測定した。また、両者の差から下部消化管内での分解率
を算出し、
比
企 Sの消化過程について詳細に検討した。 また、
の関連性についても検討した。
6
比
t
¥S摂取量と消化率と
実験方法
1.実験材料
H
i
m
a
i
z
e,
S
t
a
r
c
h
実験に用いた CS(コーンスターチ W,日本食品化工)ならびに比t¥S (
LaneCaveA
u
s
t
r
a
l
i
a
) の化学組成を T
a
b
l
e1に示した。アミロース含量はヨウ
A
u
s
t
r
a
l
a
s
i
a,
素比色法 28) にて測定した結果、 CSでは 2
60
/
0、
比
t
¥Sでは 71%で、あった。Proskye
ta
.
lの
総食物繊維定量法
1
6
) で測定される値を
RS含量とみなすと、
比
t
¥Sでは 2
2
.
60
/
0 、CSで
は RSは全く検出されなかった。水分は常圧乾燥法、タンパク質含量は K
j
e
l
d
a
h
l法 29) 、
半田旨肪含量は F
o
l
c
he
ta
.
l の総脂質抽出法
3
0
) にもとづく重量法、灰分は乾式灰化法
(
5
5
00C) にて、それぞれ測定した。炭水化物含量は、全体から各成分を差し引いて算
出した。
2
. 実験飼料
標準飼料ならびに実験飼料の組成を Table2に示した。標準飼料は A別ー7
6組成 31) を
基本とし、その炭水化物のすべてをスクロース (SU) とした。一方、実験飼料では、 CS
もしくは HASで置き換えて調製した。 CSおよび HASは、飼料中 ]
0、20、40、およ
び 65.5% になるよう、標準飼料の SUと置き換えて添加した。
3
.動物実験
3
実験動物は、 5週齢の SD系雄ラット(日本エスエルシ一、浜松)を用い、室温 2
+10C、1
2時間の明暗 (
8:
0
0~こ点灯)周期の条件下、ステンレス製ケージ内で個別飼育
した。実験に用いたラットは、搬入後、
1週間標準飼料 (
T
a
b
l
e2
) を与えた後、実験
に用いた。
実験1. 回一直腸吻合ラットを用いた HASおよび CSの小腸内消化率の測定
回 一直腸吻合手術は、 24 時間絶食後、ネンブタール(ペントパルビ、タールナトリウ
ム塩、 0
.
2
4mmol/kg体重;A
b
b
o
t
tL
a
b
o
r
a
t
o
r
i
e
s,
N
o
r
t
hChicago,
USA) 麻酔下において宮田
らの方法 32) に従って行った。ただし、盲腸、結腸は摘出せず、腹腔内に温存し、盲腸、
結腸の残存内容物排池のため、左腹壁に人工紅門を設け、結腸近位側の切離部を縫接し
た。術後、 3
4 匹ずつ、プラスチック製ケージに移し、絶食、絶水状態に保った。そ
7
の後、 2日目より個別ケージに移し、 7日間標準飼料を与え回復期間とし、その間術後
4 日固までマイシリンゾル(明治製菓、 0
.
0
5ml/ラット/日)を皮下投与した。
試験飼育の期間は 2週間とし、
1週間経過時に CSまたは孔t¥Sの添加率が同じ飼料
開で飼料を交換する、 2飼料 Xl週間のクロスオーバ、
ーデ、
ザ、インとした。すなわち、
6
'
"
"
8匹の回復したラットを体重を基準に 2群に振り分けた。この日より 1週間、 CSま
たは比生Sを同じ添加率で含む飼料 (
T
a
b
l
e2
) のいずれかを自由摂取させた(第 l期) 。
1週間経過した時点で、 2群間で飼料を交換し、さら に 1週間飼育した(第 2期) 。試
験期間中は、体重、飼料摂取量、糞便の性状を記録した。各期の最後の 3 日間には糞
0
2
0C) した。
便を採取し、分析時まで凍結保存 (
実験 2
. 正常ラットを用いた HASおよび CSの全消化管内消化率の測定
正常ラットは、搬入後 1週間標準飼料 (
T
a
b
l
e2
) を与えた後、体重を基準に l群 5
匹の 6群に振り分け、標準飼料、もしくは 5種類の実験飼料 (
6
5
.
50
/
0 CS
、10%、200
/
0、
40%、および 65.5%孔
t
¥S
) のいずれかを自由摂取させた。試験飼育の期間は 3週間とし、
期間中、体重、飼料摂取量、糞便の性状を記録した。各週の最後の 3 日間には糞便を
採取し、分析まで凍結保存したし20C) した。飼育終了後、エーテル麻酔下で、解剖し、
0
盲腸組織および盲腸内容物重量を測定した。
なお、すべての動物実験は、山之内製薬動物実験管理委員会において定められた「動
物実験に関する指針」に則って実施した。
4
.デンプンの消化率の算出
各デンプンの消化率は、次式にて算出した。
0
) = [{(1日当たりのデンプン摂取量)一( 1日当たりの糞中デンプン
消化率(0/
排池量) }/ (1日当たりのデンプン摂取量) ] X 100
飼料、ならびに凍結乾燥した糞便中のデンプン量は市販の測定キット (
T
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ls
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c
h
Sydney,
A
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) を用い、 Muire
ta
l
. の方法 25) に従って測定した。
a
s
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yk
i
t
;Megazyme,
5
.統計解析
実験結果は、各実験群の平均値±標準誤差で表した。 CS飼料群内および HAS飼料
群内における平均値の差は、分散分析 (ANOVA) で添加率の違いが有意で、
あ った場合、
8
D
u
n
c
a
nの多重比較検定法 33) で検定した。添加率が同じ CS飼料群と礼l¥S飼料群の平
0
/0
均値の差の検定は、 S
t
u
d
e
n
t
'st
検定にて行った。いずれの統計解析も、棄権率が 5
未
満のとき、有意とみなした。デンプン摂取量と消化率の相関関係は、回帰分析を行った
3
4
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O
9
Table1
.C
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28
asedo
nAIN-76.
実験結果
実験1. 回ー直腸吻合ラットを用いた HASおよび CSの小腸内消化率の測定
6
0g (
14
4
'
"
"
1
8
5g
;1
1= 3
0
) であ
術後 1週間経過時における手術ラットの平均体重は 1
6
'
"
"1
8g、体重増加量は 6
'
"
"
8gで、あった。これらの数値か
り
、 l日当りの飼料摂取量は 1
ら、手術ラットは、通常の成長レベルにまで、回復したものと判断し、試験飼育を開始し
7
こ。
Table3には、第 l期、第 2期それぞれの飼料摂取量、体重増加量および飼料効率を
示した。各群の飼料摂取量は、第 l期および第 2期とも、デンプンの種類、添加率に
よらず、ほぼ一定で、あった。各群の体重増加量は、第 l期、第 2期のいずれにおいて
も
、 CS飼料群では添加率によらず、ほぼ一定で、あったが、比t¥S飼料群の体重増加量は
比
t
¥Sの添加率が増すにつれて減少し、 6
5
.
5
%比t¥S飼料群では 10%HAS飼料群に比べ有
意に低い値を示した。 この比t¥S添加飼料群における成長抑制の傾向は、第 1期におい
S飼料群と礼的飼料群の比
てより顕著で、あった。 またデ、ンフ。ン添加率が同じ場合の C
較では、 6
5
.
5
%礼t¥S飼料群の体重増加量が、第 l期、第 2期ともに、 CS飼料群の 7
00
/
0
程度であり、有意に低かった(し¥ずれも p<0
.
0
5
)。
CS飼料群の飼料効率は、いずれの期間においても、添加率によらず、ほぼ一定であ
った。これに対し、 HAS飼料群の飼料効率は比t¥Sの添加率が増すにつれて低くなった。
この比t¥S飼料群における飼料効率の変動は、第 l期においてより顕著で、あった。ま た
、
デンプン添加率が同じ場合の C
S飼料群と比t¥S飼料群の比較では、 6
5
.
50/
0 礼的飼料群
の飼料効率は、いずれの期間においても C
S飼料群より有意に低かった (
p<0
.
0
5
)
0
Table4には第 l期、第 2期それぞれの最後の 3 日間に求めたデンプン出納を示した。
CS飼料群では、いずれの期間においても添加率による飼料摂取量の差は認められなか
った。また、糞便乾燥重量はデンプン添加率によらず-一定で、あったが、糞中へのデンプ
ン排池量は、添加率が増すにつれて多くなった。しかし、デンプン添加率による消化率
の差は認められず、 CSは小腸内で、ほぼ完全に消化されていた。一方、比t¥S飼料群の第
l期における飼料摂取量は、デンプン添加率によ らず-一定で、あったが、第 2期における
.
0
5
) 0 また
、 HAS飼
飼料摂取量は、デンプン添加率が増すにつれて多くなったい<0
料群の糞便乾燥重量ならびに糞中デンプン排准量はともに、デンプン添加率が増すに
つれて増加した。 さらに比t¥Sの消化率は、添加率が増すにつれて低くなった。添加率
1
2
が同じ場合の CS飼料群と比t¥S飼料群の比較では、 HAS飼料群の糞便乾燥重量および
糞中デンプン排池量は、 CS飼料群と比べて有意に多く、一方、比t¥Sの消化率は CSの
.
0
5
)0
消化率と比べて有意に低かった(し¥ずれも p<0
実験 2
. 正常ラットを用いた HASおよび c
sの全消化管内消化率の測定
T
a
b
l
e5には、飼育期間中の飼料摂取量、体重増加量、飼料効率、解剖時に測定した
盲腸内容物および組織重量、ならびに体重から盲腸内容物重量を差し引し¥て補正した
体重増加量と飼料効率を示した。 65.5%比
t
¥
.S飼料群の飼料摂取量は試験群間で最も少
なかった。体重増加量は、比t¥Sの添加率が増すにつれて低くなる傾向が認められ、 65.5%
比
t
¥
.S飼料群では試験群間で最も低く、標準飼料群、 6
5
.
5
%
)CSおよび 1
00
/
0 比
生 S飼料群
に比べ有意に低かった (
p<0
.
0
5
)
0
った。盲腸内容物および組織重量は、
しかし、飼料効率では、群聞に差は認められなか
比
t
¥Sの飼料への添加率が増すにつれて増加した。
この盲腸内容物重量を体重から差しヲ│し 1た補正後の体重増加量は、礼的飼料群では添
加率が増すにつれて低くなる傾向を示したが、この傾向は補正前の体重増加量に比べ
てより顕著で、
あった。 200
/
0、40% および 6
5.5%HAS飼料群の補正後の体重増加量は、
標準飼料群、 65.5%CS、ならびに 10%HAS飼料群に比べ有意に低かったい<0
.
0
5
)。
また、 40% および 6
5
.
50
/
0 HAS飼料群における補正後の飼料効率も、標準飼料群、 6
5.5%
CS、ならびに 1
00
/
0、2
00
/
0 HAS飼料群よりも有意に低かったい<
0
.
0
5
)。
T
a
b
l
e 6には、各週最終 3 日間におけるデンプンの出納を示した。 比
t
¥
.S飼料群のデ
ンプン排池量は、飼料へのデンプンの添加率が高くなるにしたがって多くなり、糞便乾
燥重量ならびに糞中デンプン排池量も多くなった。400
/
0 および 6
5
.
50
/
0 HAS飼料群の糞
便乾燥重量ならびに糞中デンプン排池量は、 65.5%CS飼料群に比べて有意に高い値を
示した(し¥ずれも p<0
.
0
5
)。
孔
生S飼料群における消化率は、回一直腸吻合ラットの場合と同様に、比t¥Sの添加率
が増すにつれて低くなった。3週目の 200
/
0比
生 S飼料群を除き、 20%、400
/
0 および 6
5.
5
0
/
0
HAS飼料群における消化率は、すべての測定時において 6
5
.
5% CS飼料群よりも有意
.
0
5
)。
に低かった(し¥ずれも p<0
消化率算出期間中のデンフ。
ン 摂 取 量 (x)とデンプン消化率 (y) の関係を、回 ー
i
g
.1~こ、正常ラットの場合には Fig.2 に示した。 回 - 直腸
直腸吻合ラットの場合には F
1
3
吻合ラットを用いたときの CSの消化率は飼料への添加率に関係なく、ほぼ完全に消化
され、デンプン摂取量と消化率の聞に相関は認められなかったか=0.306、n=30、p=
0
.
0
9
9
7
)
0
一方、比t¥S では、飼料への添加率が増すにつれて、ノト腸内消化率が低くな
r=ー0
.
7
6
1、n=30、p <
る傾向があり、比t¥S摂取量と消化率の聞には有意な負の相関 (
0
.
0
0
01)が認められた。
また、正常ラットにおける HASの消化率も、回-直腸吻合ラットの場合と同様に、
r=0
.
8
5
3、n=60、p<0
.
0
0
0
1
) が認められた。
各週とも有意な負の相関 (
1
4
Table3
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4
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0.
40:
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2
0
考察
本章では、
HASの小腸内および全消化管内での消化率を、回ー直腸吻合ラ ッ トおよ
び正常ラットを用いて測定し、
HASの消化過程について検討した。
7
'
"
"
'
'
7
4
% であり、
回ー直腸吻合ラットを用いて測定した比企 S の小腸内消化率は、 6
CSの消化率 (
>
9
9
%
) に比べて著しく低いことが明らかとなった。孔
A
,
.Sの小腸内消化
率についてはこれまで M
u
i
re
ta
.
l が、約 4
00/0の HASを含む食事を回腸凄孔患者に摂取
させたところ、
38%が未消化のまま排池されたと報告している
2
5
)O
この結果は本章で
得られた結果と近似している 。
また、比A,.S の小腸内消化率は飼料への添加率が増す‘につれて低くなる傾向を示した
(
T
a
bl
e4 お よ び F
i
g
.1
)
0
一般に小腸内における生デンプン粒の消化率は αーアミラ
ーゼのスターチ粒への吸着性とほぼ平行関係にあるが、比A,.Sは αーアミラーゼに対す
る吸着性が高いにもかかわらず、消化されにくいことが指摘されているお)。渡辺らは、
HASを含む飼料をラットに 5週間与えた場合、消化管内容物中の αーアミラーゼ量は C
S
飼料を与えた場合に比べて有意に多かったが、この αーアミラーゼ、
分泌の允進は摂取開
始後 2週間目では認められなかったと報告している
であることを勘案すれば、
定であり、その結果、
36)
。 本試験での飼育期間が 1週間
αーアミラーゼの分泌量は飼料中の HAS添加量に関わらず一
HASの小腸内消化率は飼料への添加率が増すにつれて低くなる
傾向を示したと推測される。
正常ラットにおける
T
a
b
l
e6お よ び F
i
g
.2
)
HASの消化率は飼料への添加率によって異なった (
8
3
'
"
"
'
'
9
90/0、
0
T
a
b
l
e7には、試験飼料を 1週間摂取させた時点で測定した回
一直腸吻合ラットと正常ラットにおける消化率と、この両者の差として算出した下部
消化管内でのデンプンの分解率を示した。正常ラットにおける
HASの飼料への添加率
による消化率の差異は、小腸内消化率の差異に加え、下部消化管内において
HASの分
解率が
HASの添加率によって大きく異なることに起因すると考えられる(16
'
"
"
'
'
2
50/
0
)
これは
HASの添加率が高い場合には、腸内細菌の分解能を上回る過剰量の HASが下
0
部消化管に流入したためと推測される 。 また、正常ラットにおける
HASの消化率は
T
a
b
l
e6に示したように経時的に増加する傾向にあったが、これは腸内細菌叢の適応と
考えられる 。
現在、 RSの i
nνi
t
r
oの定量法には、主に P
r
o
s
k
ye
ta
l の総食物繊維定量法
2
1
1
6
) が用い
られている。 この方法では、本試験に用いた比怖の RS含量は 2
6
.
30
/
0 (乾燥重量当た
T
a
b
l
e1
)
り)で、あった (
量は、
0
小腸内消化率 (
i
nνi
v
o消化率)から算出した比t
¥Sの RS含
10% および 200
/
0 比t
¥S 添加飼料の場合にはそれぞれ 2
6
.
30
/
0、2
4.1% であり
P
r
o
s
k
y法 (
i
nν
i
か0
) により求めた値と近似するが、添加率が 400
/
0 を越えた場合、 RS
値は 30% 以上となり、 i
nv
i
t
r
oの値と大きく異なった。 DeI
courと E
e
r
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g
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nは
、 Prosky
e
ta
.
l の総食物繊維定量法
1
6
)
の操作行程で耐熱性
α ーアミラーゼ、
による処理温度が
1
0
00Cであることに対し、生体内 (
3
7C) よりもデンプンのゲノレ化がよりいっそう進む
0
ため分解が促進すると指摘している
法
1
6
)
3
7
)
。 したがって、
P
r
o
s
k
ye
ta
l
. の総食物繊維定量
では RS含量を低く見積もる可能性があると考えられる。
¥Sは小腸内において摂取量の 67"
'
'
7
40
/
0 が消化吸収され、さらに
本章の結果から、比t
下部消化管内では 1
6
"
'
'
2
5
%が腸内細菌によって分解されることが明らかになった。 ま
た、この消化過程は比t
¥Sの飼料への添加率によっても異なることが明らかになった。
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3
2
3
•
第 E章
ハイアミロースコーンスターチ摂取によるラットの
血中脂質上昇ならびに体脂肪蓄積抑制作用
第 I章では回一直腸吻合ラットを用い、比t¥.Sの小腸内消化率および大腸内分解率 (
発
0
/
2
0の HASの小腸内消
酵による)を求めた結果、アミロース /アミロ ペ クチン比が 8
7
"
'
'
7
4
% の範囲に認められた。 この
化率は、 HASの飼料中濃度によっても異なるが、 6
ような消化率の低いデンプンは、食後の血糖およびインスリンの急激な上昇を抑制す
ること
6,1
9
)
から
糖尿病患者のみならず冠状動脈疾患の予防にも有用である。 さらに
食物中に比絡が多量(十分)に存在する場合、食物繊維で指摘されているよ うに比怖
は食物のカロリー密度を低下させると考えられる
3
8
)。 したがって、普段の生活におい
て十分量の HASを食事に取り入れれば、それは、体脂肪率、血中の中性脂肪濃度の抑
制をもたらし、ひいては肥満の防止にも役立つと考えられる。
先に DeDeckeree
ta
lは
、 HASを出発原料とした老化デンプン (RSのタイプ 3に属
する)
2
4
) または
HAS23) をラットに m
e
a
l
f
e
e
d
i
n
g (摂食時間のみを制限)させた時の血
清トリグリセリドおよびコレステロール濃度ならびに副皐丸周囲脂肪重量について測
定し、 RSの摂取はこれらの濃度および重量を低下させることを報告している 。彼らの
実験では恐らく摂食直後と絶食時の血中脂質濃度を正確に測定する目的で meali
b
b
l
e
rであり、また摂取様式の違いはインスリ
f
e
e
d
i
n
g させているが、ラットは本来、 n
ン応答に影響をおよぼし、ひいては脂質代謝をも左右すると考えられる。本章では飼料
の完全自由摂取下において、比較的低用量から高用量(飼料中 1
0
"
'
'
4
00/
0
) までの礼絡
を摂取させた時の脂質代謝および、
体脂肪蓄積について詳細に検討し、主に摂取カロリ
ー量の観点から結果を考察した。
なお、試験の比較対照には脂質代謝に関し過去に多くの知見が得られているビート
食物繊維 (BDF)
39・ 41)
を用いた。
2
4
実験方法
1.実験材料
H
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u
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r
a
l
i
a
) か ら供
実験に用いた孔t¥S (
与されたもので、ヨウ素比色法
4
2
)
で測定したアミロース含量は 8
30
/
0、 P
r
o
s
k
y法
1
6
)
に
よって求めた食物繊維含量は 230
/
0 で
、あった。BDF (ベタス)は日本甜菜製糖より供与
されたもので、食物繊維含量は 82.7% で、あった。
2
.実験飼料
実験飼料の組成を Table8に示した。AIN-76組成 3りを基本とし、飼料中 65.5% を
SU とした SU飼料、飼料中 60% を CS とし、比t¥S を添加しない飼料 (CS飼料)、
比
t
¥Sを CS と 1
00
/
0、 20% および 4
0% 置き換えることで添加した HAS 飼料、同様
に
、 BDFを CSと 1
10
/
0 置き換えることで添加した BDF飼料である。な
お、 BDF飼料
中の食物繊維含量は 40%HAS飼料で測定した食物繊維 (RS) 含量と同量である。
3
.動物実験
実験動物は、 3週齢の SD系雄ラット(日本エスエルシ一、浜松)を用い、室温 23
+lO
C、相対湿度 6
0
"
'
"
'
7
0
%、1
2時間の明暗周期 (
8
:
0
0に点灯)の条件下、ステンレス製
ケージ内で個別飼育した。 ラットは搬入後、 1週間 SU 飼料を与えた後、体重、なら
びに尾静脈から採血し得られた血清中のトリグリセリド濃度を基準に 6群に振り分け、
SU、CS、10%孔倍、 20%HAS、40%比
t
¥S および BDF飼料のいずれかの実験飼料を 4
週間にわたり水道水とともに自由摂取させた。飼育期間中、体重および飼料摂取量は、
2日ごとに記録した。 また、 l週ごとに非絶食下で尾静脈から採血し(]3:
0
0
"
'
"
'1
5:
0
0
)、
血清トリグリセリド、コレステロール濃度を測定した。糞便は、試験終了直前の 3 日
間に採取し、凍結乾燥した後、総胆汁酸ならびに中性ステロールの測定に供した。飼育
終了後、エーテル麻酔下で腹部大動脈より採血し致死せしめた後、肝組織ならびに高J
I
皐
丸脂肪組織を摘出し重量を測定した。腹部大動脈血から得られた血清はトリグリセリ
ド、コレステロール(総コレステロール、 HDL-コレステロールおよび LDL+VLDLコレステローノレ)およびリン脂質濃度の測定に供した。また、肝組織は、脂質の測定時
0
4
0C で保存した。解剖後の屠体(肝臓、盲腸、大腸、副皐丸脂肪および消化管
まで -
2
5
内容物を取り除いた残りの全て)は、凍結後、ミキサーを用い細切し、脂質およびタン
パク質の測定に供した。なお、動物実験は、山之内製薬動物実験管理委員会において定
められた「動物実験に関する指針J に則って実施した。
4
.測定項目および測定方法
1
)血清トリグリセリド、コレステロール(総コレステローノレ、 HDL・コレス テロール、
LDL+VLDL-コレステローノレ)およびリン脂質の測定
DL-コレステロールおよびリン脂質は、
血清トリグリセリド、総コレステロール、 H
市販キット(トリグリセリド G- テストワコ一、コレステロール c- テストワコ~, HDL
-コレステローノレーテストワコーまたはリン脂質 B -テストワコ一、来日光純薬工業、大
DL+VLDL-コレステロール濃度は、総コレステロール濃度
阪)を用いて測定した。L
DL-コレステロール濃度の差から算出した。
とH
2
)肝組織中トリグリセリド、コレステローノレおよびリン脂質の測定
o
l
c
he
ta
.
l の方法
肝組織中の脂質抽出は、 F
3
0
) に準じて行った。すなわち、肝組織
l
gに 1
5mlのクロロホルム/メタノール混和液 (
2
:1
、v
/
v
) を加え、ポリトロンホモ ジ
慮過することで脂質抽出液を
ナイザーを用いてホモジネイトとした後、ろ紙を用いて j
査と分離し、 20mlの一定容量とした。 ここに 0.
37%塩化カリウム水溶液 4ml
肝臓残j
を加え、振とう後、 4C で一晩放置した。この後、水層を除去し、クロロホルム/メタ
0
4
8:
4
7、v
/
v
) 4mlで試験管壁を洗浄後、再度、水層を除去した。
ノール/水混和液(3:
2
:1
、v
/
v
)
この後、 1mlのメタノールを加え、さらにクロロホルム/メタノーノレ混和液 (
を加えることであ mlの一定容量とした。脂質定量用サンプルの調製は、 M
o
r
i
t
ae
ta
.
lの
方法
4
3
) に従い行った。すなわち、脂質抽出溶液からコレステロールおよび、リン脂質の
.
1、0
.
0
4mlを採取し、窒素気流下で濃縮乾固した後、 1
00
/
0 の
測定用には、それぞれ 0
トライトン X-I00を含む 0.02mlのイソプロヒ。ルアルコールにそれぞれ懸濁した。また
.
2mlを採取し、窒素気流下で濃縮乾回した後、 0
.
1mlのイソ
トリグリセリド用には、 0
プロヒ。
ルアルコーノレに懸濁した。
トリグリセリドおよびコレステロールは、それぞれ、市販キット(トリグリセリドテストワコーまたはコレステロール
c
-テストワコ一、和光純薬工業、大阪)を用いて
測定した。またリン脂質は市販キット(リン脂質 B-テストワコー、和光純薬工業、大
26
阪)によりコリン含有リン脂質のみを測定した。
3
) 糞中総胆汁酸および中性ステロール化合物の測定
糞中総胆汁酸および中性ステローノレ化合物の抽出は Enerothe
fa
l の方法制)に従い
行った。すなわち、凍結乾燥糞便 0
.
2gに 1
0mlのクロロホルム/メタノール混和液 (
1:
1
、
v
/
v
) を加え、還流下 70C、60 時間加温し、胆汁酸および中性ステロール化合物を抽
0
.
1Nの水酸化ナトリウムを含む 700
/
0 メ
出した。この抽出液を一豆、濃縮乾回した後、 0
.
0mlで懸濁し、さらに石油エーテル 4.0mlを加え激しく撹排した。次
タノール溶液 4
いで、遠心分離によって得られたメタノール層を総胆汁酸分析に、石油エーテル層を中
性ステロールの分析に用いた。
総胆汁酸の測定は、 Sheltawyと Losowskyの方法
4
5
) に従い測定した。すなわち、遠
.
1
5mlを採取し、ここに、 0
.
5N 塩酸溶液
心分離によって得られたメタノール層から 0
0
.
0
2
5ml、メタノール 0
.
3
2
5ml、467μmolの
0・NADを含む緩衝液 4.0mlを加え、
基質溶液を調製した。この基質溶液に 0.
227u
n
i
t
l
m
lの酵素溶液(3α どドロキシステ
2ml を添加し、 37C、1時間反応を行った。この後、
ロイドデヒドロゲナーゼ) 0.
0
340
nmでの吸光度を測定した。検量線は、メタノールで、溶解したリトコール酸標準溶液を
用いて作成し、得られた検量線から総胆汁酸含量を求めた。
ta
.
l の方法
中性ステロール画分のガスクロマトグラフィーによる分析は Moritae
4
6
)
に準じて行った。すなわち、石油エーテル層を一旦、濃縮乾固し 200
/
0 の水酸化カリウ
0
ムを含む 500
/
0 エタノール溶液 2
ml で懸濁し、 80C で 1 時間加温した。次いで、内
ヘキサン 2mlを加え激しく撹
部標準物質として適当量の 5α ーコレスタンを含む n持した後、遠心分離によって nヘキサン層を得た。エタノール層には、再度 nヘキ
サン 2ml を加え、同様に抽出した後、 2回の抽出物を合せ、
nヘキサン層を除き乾
回した後、 2mlの n・ヘキサンに再溶解した。 このうち 2 μ l をガスクロマトグラフ
ィーによる分析に供した。ガスクロマトグラフィーによる分析は GC-148 (島津製作
8
0-100mesh) を坦体とし 5% の SE
所、京都)を用い、クロモソルブ W AW -DMCS(
.
1m のガラスカラムCi.
d
.
-30 をコーティングした充填剤(信和化学、京都)をつめた 2
2
.
6mm) を使用し、水素イオン化検出器による検出をおこなった。窒素ガス流量は 50
0
ml
/
min、カラム温度は 270C とした。各化合物の定量は、 5α ・コレスタンを用いた内
部標準法によった。
4
) 体脂質/体タンパク質比の測定
ol
c
he
tal の方法
屠体からの脂質の抽出は、 F
3
0
) に従い、クロロホノレム/メタノール
混和液 (
2:
1
、v
/
v
) を用いて行った。 この後、溶媒を除去し重量を測定することで、脂
質含量を求めた。タンパク質含量は、 K
je
l
d
ah
l法
2
9
) に従い窒素量を測定した後、窒素-
タンパク質換算係数 (
6
.25) を用いて算出した。
5
.統計解析
実験結果は各実験群の平均値±標準誤差で表した。各データの統計処理は ANOVA
を行った後、 D
unc
anの多重比較検定法
3
3
) で検定した。危険率が
5
0
/
0 未満のとき、有
意とみなした。副峯丸脂肪組織重量および体脂肪/体タンパク質と、血清トリグリセリ
ドおよび総コレステロール濃度の相関は、回帰分析を行った
2
8
3
4
)O
Table8
.C
o
m
p
o
s
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x
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e
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t
a
ld
i
e
臼.
l
n:
e
r
e
d
i
e
n
t
s
SU
CS
10%HAS
20%HAS
40%HAS
BDF
ダkg
S
u
c
r
o
s
e(SU)
6
5
5
c
h(
C
S
)
COI1lS旬 r
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
600
500
400
200
490
1
0
0
200
400
H
i
g
h
a
m
y
l
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e
c
O
l
1
ls
t
a
r
c
h(HAS)
1
1
0
B
e
e
td
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e
t
a
r
yf
i
b
e
r(BDF)
C
a
s
e
i
n
250
250
250
250
250
250
Comoil
5
0
5
0
50
50
50
50
M
i
n
e
r
a
lm
i
x
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3
5
3
5
3
5
35
3
5
3
5
1
0
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0
1
0
1
0
V
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t
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m
i
nm
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1
0
1
0
1B
asedo
nA
I
N
7
6
.
2
9
実験結果
試験期間中の飼料摂取量および体重増加量は、 SU 飼料群に比べ他の 5 群 (CS、100
/
0
比倍、 20%孔倍、 40%比t
¥Sおよび BDF 飼料群)でやや高い値を示したが、統計上有
T
a
b
l
e9
) 0 また、試験終了時の体重にも群間で差は認め
意な差は認められなかった (
られなかった。 しかし、 HAS 添加飼料群では盲腸内容物重量の著しい増加が認められ
たので、各飼料群の最終体重から盲腸内容物重量を差し引し¥た正味体重を算出したと
ころ、有意な差は認められないものの、 HAS 飼料群では添加量に応じて正味体重が低
くなる傾向を示した。飼料効率でも試験群聞に有意な差は認められなかった。
解剖時の血清トリグリセリド濃度は、 SU飼料群が試験群問で最も高い値を示し、 CS
飼料群がこれに次いで高い値を示した。
SUおよび Cs飼料群の血清トリグリセリド
濃度に比べ、 1
00
/
0 HAS
、20%比t
¥Sおよび BDF 飼料群では低くなる傾向を示し、 40%
比t
¥S飼料群では有意に低い値を示した。血清総コレステロール濃度は、 CS 飼料群が試
00
/
0、
験群間で最も高い値を示したが、 CS飼料群の血清総コレステロール濃度に比べ、 1
200
/
0 および 40%HAS 飼料群では有意に低い値を示し、その程度は飼料中への HAS
添加量に依存していた。血清 HDL-コレステロール濃度についても、総コレステロール
濃度と全く同様の傾向が認められた。 SU飼料群の総コレステロールおよび HDL-コレ
ステロール濃度は CS 飼料群と同等で、あった。また、
BDF飼料群の総コレステロール
/
0 比t
¥S飼料群と同等で、あった。一方、血清 LDL
および HDL・コレステロール濃度は 400
+VLDL・コレステロール濃度は、試験群聞で有意な差は認められなかった。血清リン
脂質濃度は、 CS 飼料群が試験群間で最も高い値を示し、この CS 飼料群に比べ、 10%、
20% および 40%比t
¥S飼料群および BDF飼料群で有意に低い値を示した。一方、 SU
飼料群のリン脂質濃度は CS 飼料群と同等で、あった。
肝重量は試験群問で、差はなかったが、相対肝重量(体重 100 g当たり)では SU飼
料群が最も高い値を示し、 CS 飼料群がこれに次いで高い値を示した。 CS 飼料群の相
/
0 比t
¥Sおよび BDF 飼料群で、は有意に低い値を示した。肝臓総脂
対肝重量に比べ、 400
/
0 HASおよび BDF飼料群
質含量は SU飼料群で最も高く、これに比べ 20%比崎、 400
では有意に低い値を示した。肝臓中脂質の各分子種のうち、トリグリセリド含量だけに
変化が認められ SUおよび CS 飼料群に比べ 400
/
0 比t
¥Sおよび BDF飼料群では有意
に低し¥値を示した。
副皐丸脂肪組織の重量は、 SU飼料群が試験群間で最も高い値を示し、 C
S飼料群が
S飼料群の副皐丸脂肪組織の重量に比べ、 10%孔倍、
これに次いで高い値を示した。C
4
00/
0比
t
¥Sおよび BDF飼料群では有意に低い値を示した。相対重量は、 SUおよび C
S飼
1
0
%、20%、40%比t¥Sおよび BDF飼料群)で有意に低い値を
料群に比べ他の 4群 (
C
S、10%比t¥S、2
00/0
示した。体脂質/体タンパク質比は、 SU飼料群に比べ他の 5群 (
孔俗、 40%HASおよび BDF飼料群)で有意に低い値を示した。 さらに、 C
S飼料群に
比べ 4
0%比t¥Sおよび BDF飼料群の体脂質/体タンパク質比は、有意に低い値を示し
7
こ
。
試験期間中の血清トリグリセリドおよびコレステロール濃度の変化を F
i
g
.3に示し
た
。 SU飼料群の血清トリグリセリド濃度は、飼育開始後 1
"
'
'
4週間目まで各試験群問
で最も高い値を示し、 C
S飼料群がこれに次いで高い値を示した (
F
i
g
.
3-A
) 。一方、
札
t
¥S飼料群の血清トリグリセリド濃度は 2週間目を除き、 SUおよび C
S飼料群に比
べ低くなる傾向を示し
その程度は飼料中への HAS添加量に呼応していた。特に 4
00/
0
比
企S飼料群の血清トリグリセリド濃度は、飼育開始後 l、3および 4週間目において、
SUおよび CS飼料群に比べ有意に低い値を示した。血清コレステロール濃度も飼料中
への比t¥S添加量に応じて低い値を示す傾向が認められ、 SU飼料群に比べ飼育開始後
3週間目では 2
0および 4
00/
0H
AS飼料群が、飼育開始後 4週間目では 1
0、2
0および
4
00/0 比t¥S飼料群が有意に低い値を示した (
F
i
g
.
3B
)
・
0
しかし、 C
S飼料群については、
飼育開始時の値に大きな開きがあったため(有意ではないが)、他群との正確な比較は
できなかった。
糞の乾燥重量は、
SU、CS、10%比t¥Sおよび 2
00/
0H
AS飼料群に比べ 40%HASお
よび BDF飼料群で有意に高い値を示したが、 4
00/
0比
生S飼料群と BDF飼料群の聞に
は有意な差は認められなかった (
T
a
b
l
e1
0
) 0 糞便中への総胆汁酸排池量は、 SUおよ
び C
S飼料群に比べ、 40%比t¥Sおよび BDF飼料群で有意に高い値を示した。また、
4
00/
0 比
t
¥S飼料群に比べ BDF飼料群で有意に高い値を示した。一方、中性ステロール
S
U
(コレステロールとコプロスタノールの合計)排世量は、 BDF飼料群が、他の 5 群 (
00/
0H
AS、20%孔t¥Sおよび 4
00/
0比
t
¥S飼料)に比べ有意に高い値を示した。
CS、1
F
i
g
.
4は副皐丸脂肪組織重量と血清トリグリセリド濃度 (
F
i
g
.
4A
)および血清総コ
・
F
i
g
.4B
) との相関について示したものである。血清トリグリセリ
レステロール濃度 (
ド濃度との相関は、傾向 (
r
=
0
.
3
1
5、p= 0
.
0
6
1
7
) は認められるものの有意で、
はなかった。
3
1
一方、血清総コレステロール濃度は、副皐丸脂肪組織重量と有意な相関を示した (
r=
0
.
7
1
6、p<0
.
0
0
01
)0 F
i
g
.5 は体脂肪/体タンパク質比と血清トリグリセリド濃度 (
F
i
g
.
F
i
g
.
5・ B) との相関について示したものであ
5・ A) および、血清総コレステロール濃度 (
るが、副皐丸脂肪組織重量の場合と同様に有意な相関は、血清総コレステロール濃度に
.
7
2
5、p<0
.
0
0
01
)
対してのみ認められたか=0
32
0
Table9
. Foodi
J
it
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k
e,
bodyw
e
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g
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%HAS
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2
5
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2
6
2:
:
t6
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t8
2
6
3:
26
9:
:
t8
:
t1
2
25
9:
:
t1
0
2
66:
2
5
2:
:
t8
:
t6
2
6
0:
2
5
6:
:
t8
:
t8
2
6
0:
24
5:
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2
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2:
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4
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LDL+VLDL
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た時の脂質代謝および体脂肪蓄積について詳細に検討した。その結果、 HAS 非摂取群
(SU または CS 飼料群)の副皐丸脂肪組織重量および体脂肪/体たんぱく質比に比
べ
、 HAS 摂取群では飼料中への比I¥S添加量に応じて低下する傾向を示し、比I¥S 摂取
により脂肪蓄積が抑制されることが示された。さらに、血清脂質(トリグリセリド、コ
レステロールおよびリン脂質)濃度ならびに肝臓中トリグリセリド含量においても、同
様の結果が得られた。また、 40%比
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¥S 飼料群で認められた種々の効果は BDF飼料群
とほぼ同等で、あったが、今回の自由摂食下で比較した比生 Sの血中脂質上昇抑制および
体脂肪蓄積抑制効果は、先の DeDeckeree
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このような比崎摂取時の体脂肪率の低下には、複数の作用が関与している可能性が
あるが、もっとも大きな要因としては摂取カロリー量の制限が考えられる。第 I章にお
いて回-直腸吻合ラットを用い、 CSおよび比I¥S (飼料中 40% 添加時)の小腸内消化
率は、それぞれ >990
/
0および 69% であり、一方、大腸での発酵による分解率はそれ
C
S
) および 1
80
/
0(HAS) であることを明らかにしている。ま
ぞ れ 摂 取 量 の <0.3% (
た、小腸内で、消化吸収されたデンプンのカロリー量は通常 4
.
0k
c
al
/
gとされるが、大腸
.
9
0
"
"
'
2
.
2
7k
c
al
/
g と推定されて
内で発酵されたデ、ンフ。ンの宿主への寄与カロリー量は 1
いる
47・ 49)O
これらの知見に加え、飼料組成 (
T
a
b
l
e8
) および飼料摂取量 (
T
a
b
l
e9
)を
もとに算出した 1 日当たりの炭水化物由来の摂取カロリー量は、 CS 飼料群では約
4
3
.
1k
c
a
l、一方、 40%比
I
¥S飼料群では約 36.
4k
c
a
lと推定される。つまり両飼料群聞の
摂取カロリー量の差は、
1 日当たりで 6
.
7k
c
a
l、全飼育期間中では 1
8
7
.
6k
c
a
l~こ達する 。
SUと CS摂取時の血中インスリン濃度および標的組織(脂肪組織)のインスリン感
受性には有意な差が認められ、その結果、 SU摂取ラットの脂肪組織重量は、 CS摂取
ラットに比べ有意に増加することが知られている
50)O
事実、本試験においても SU飼
料群の体脂肪/体タンパク質比は、 CS飼料群に比べ有意に高い値を示し、有意で、はな
いものの副皐丸脂肪重量も高くなる傾向を示している。また CS 飼料群に比べ、 HAS
飼料群の副皐丸脂肪重量および体脂肪/体タンパク質比は、飼料中への添加量に応じ
て低下する傾向を示すが、
Bymese
ta
.
l19) は HAS摂取後のラットの血糖上昇速度およ
38
びインスリン分泌量は C
S摂取時に比べ、有意に低く抑え られることを報告している。
急激な血糖の上昇とこれに呼応したインスリン分泌は肝での脂肪酸およびトリ グ リセ
リド合成を促進し、その結果、血中への VLDL放出量を増大させると考えられるが、
比
生 S は急激な血糖の上昇を抑制することにより肝および血中トリグリセリド濃度の上
T
a
b
l
e9および F
i
g
.
3-A
) 。 ヒトおよびラットにおい
昇を抑制したものと考えられる (
て、血中トリグリセリドおよびコレステロール濃度と体脂肪量との問には正の相関が
認められることが報告されているが
5
1)、本試験でも血中コレステロール濃度は、副皐
丸脂肪重量および体脂肪/体タンパク質比と有意な正の相関を、また血中トリグリセ
リド濃度と副皐丸脂肪重量の聞にも緩やかな正の相関 (p=0
.
0
6
1
7
) を認めた。すなわ
ち孔t¥Sは脂肪酸合成速度を抑制することにより血中トリグリセリド濃度の上昇および
体脂肪蓄積を抑制すると考えられる。 さらに、今回検討を行っていないが、 C
S飼料群
と高用量の HASを摂取した群 (
4
0
%比t¥S飼料群)では脂肪組織におけるインスリン感
受性に差が生じていたのかもしれない。
F
i
g
.
初期値に開きがあったため、試験期間中においては正確な比較はできなかったが (
3-B
)、2
0%および 40%HASならびに BDF飼料群の血清コレステロール値は SUお
よび C
S飼料群に比べ、試験終了時においては有意に低い値を示した (
T
a
b
l
e9
)
る種の食物繊維の血清コレステロール低下作用には、胆汁酸の糞中排池元進
5
2
)
0
あ
および
小腸内胆汁酸フ。
)ルの増大に伴う「コレステロールから胆汁酸へのシフト J53) 、さら
CFA (特にプロピオン酸)との関係
には大腸内発酵により生成した S
5
4
)
が指摘されて
00/
0 孔
t
¥S飼料群のみが C
S飼料群
いる 。 しかし、比t¥S摂取時の糞中胆汁酸排池量は 4
に比べ有意な増加を示し、有意な血清コレステロール低下作用を示した 2
00/
0H
AS飼料
S飼料群に比べ差がなかった。また S
a
c
q
u
e
te
ta
.
l55) は、比怖
群の糞中胆汁酸排池量は C
の血清コレステローノレ低下作用が無菌ラットにおいても認められたことを報告してい
る。 したがって、 HASの血清コレステロール低下作用に対する胆汁酸排准允進や盲腸
内発酵の関与は少ないと考えられる。現時点において HASの血清コレステローノレ低下
作用には、先に述べたような摂取カロリー量および糖質の吸収速度の抑制(換言すれば
肝におけるコレステロール合成基質の供給速度の抑制)が最も重要な要因であると考
えられる。
肥満、糖尿病、高脂血症をはじめとしたいわゆる西欧病の発症または予防と食物繊維
摂取量との関連性については多くの報告があるが 56 58) 、池上は
・
3
9
1
5)、
1
9
5
1年 当時の本
邦における食物繊維摂取量は 2
5g前後で、あったのに対し、 1
9
9
0年代には約 1
6gにまで
低下したと報告している。また同報告によれば、戦後の食物繊維摂取量の低下は、穀類
からの摂取量の減少に最も大きく影響を受けていることが指摘されている 。 これは同
時にデンプン摂取量の低下を意味していると考えられるが、現在の一日当たりのデン
4
0g前後とし、 C
a
s
s
i
d
ye
ta
.
l1) の試算にもとづき全デンプン摂取量の 5%
プン摂取量を 1
が RSと仮定すれば、本邦における l 日当たりの RS摂取量はおよそ 7gになる。これ
は現在の食物繊維摂取量から比較すると無視できない量で、ある。孔
t
¥S はいわゆる老化
デンプンとは異なり、食感を著しく損なうことはなく、十分量を抵抗なく摂取すること
ができる。上述の背景からも比t¥S は食物繊維と同様に、肥満、糖尿病等の予防に適
した食品素材であると考えられる。
40
第田章
ジメチノレベンズアントラセン誘発ラット乳ガンモデル
におけるハイアミロースコーンスターチの腫蕩増殖抑制作用
第 I章では回一直腸吻合ラットを用いて HASの小腸内消化率を求めた結果、 HASの
/
0であり CS (
1
0
00
/
0
) に比べ明らかに低く、 HASは摂取カロ
小腸内消化率はおよそ 7
00
リー量の制限に寄与することが明らかになった。第 E章では、孔t¥.S が摂取カロリー量
の制限に加え、カロリー供給速度の低下による食後血糖値の急激な上昇を抑制すると
ともに、
(恐らくインスリン代謝を介して)血中トリグリセリドおよび、コレステローノレ
濃度を低値に保ち、さらには体脂肪の蓄積を抑制することを明らかにした。
以上(第 I章および第 E章)の結果から、 HASの長期的(継続的)な摂取は、肥満
および総摂取カロリー量との関連性が指摘されているインスリン非依存性糖尿病や乳
ガンに対して予防的効果を示す可能性があると考えられる。 ところで閉経後女性の乳
/
0を占めるホルモン依存性乳ガン 5
9
) の発症率は、いくつかの疫学調査
ガンのおよそ 5
00
の結果から食物繊維摂取量と負の相関を示すことが知られているが 60,61) 、この作用機
作には食物のカロリー密度低下による総摂取カロリー量の制限が関与していると考え
られる。すなわち、過剰なカロリー摂取は肥満を招き体脂肪量を増加させるが、腫療の
増殖を刺激するエストラジオーノレー 1
7 sは閉経後も脂肪細胞において合成されるため
、肥満は乳ガン発症のリスクを高めると考えられる 。 さらに、エストラジオール1
7
62)
0は他のステロイドホルモンと異なり、全代謝量のおよそ 500/
0が胆汁中に排池され、
その大半は小腸において再吸収されること(腸肝循環)が報告されており旬、食物繊
維による乳ガン抑制作用には、エストラジオールー 1
7 sの腸肝循環阻害の関与も考えら
れる併)。
この食物繊維による乳ガンの発症および増殖抑制効果は、ラットを用いた実験にお
いても再現されるが、動物実験では DMBAの経口または静脈内投与による化学誘発乳
ガンモデルが汎用されている。本モデルによる腫蕩は臨床と同様にホルモン依存性
6
5
)
および摂取カロリー量依存性 66) の増殖を示すことが知られているが、最近、 Imagawae
t
a
.
l67) は i
nv
i
t
r
o試験においてインスリンが乳腺腫蕩細胞の成長因子であることを認め
ている。食物}裁維は食後血糖値の上昇抑制、すなわち、血中インスリン値の急激な上昇
を抑制することによって、腫蕩増殖を抑制する可能性があると考えられる。
そこで、本章では、孔t¥.S の長期摂取による腫蕩増殖への影響について、 CSおよび
4
1
WB摂取時と比較検討するとともに、摂取カロリー量、エストラ ジオーノ
ー
レ1
7 sの腸肝
循環(血中および糞中エストラジオールー 1
7削直)および、
食後血糖値の観点か ら考察し
た。
実験方法
1.実験材料
実験に用いた CS (コーンスターチ
w
日本食品化工)、比I¥S (
S
t
a
r
c
hA
u
s
t
r
a
l
a
s
i
a、
S
y
d
n
e
y、A
u
s
t
r
a
l
i
a
) および WB (日清製粉)の化学組成を T
a
b
l
e1
1 に示した。比
I
¥Sの
RS含量は P
r
o
s
k
y法
1
6
) に従い、食物繊維として測定した。エストラジールー 1
7
sおよ
び7
,1
2
-ジメチルベンズ、
アントラセン (DMBA) はナカライ(京都)から購入した。 [
2,
4
,6
,7
-3H(N)]ーエストラジオールー 1
7 s (比放射活性、 3
5
2
6GBp/mmoJ)および [
1s
・
3
N
)]ーアンドロステンジオン(比放射活性、
H(
899GBp/mmol)は NewE
n
g
l
a
n
dN
u
c
l
e
a
r(
ボ
ストン, USA) から購入した。 ラジオイムノアツセイ用のエストラジオ一ル1
げ7 s
6
c
a
r
加
b
o
勾
x
y
m
e
t
h
旬
引
1
附
川
yl
o
幻
xi
m
加
bo
v
吋1
1
問
1
1
児es
e
r
u
ma
l
b
u
m
i
nに対するウサギギ、抗血清土
l
は UCB-Bio戸
pr
刀
o
吋
d
u
c
ω
臼
t
sS
.
A.
.
(ブブ、リユツセル、ベルギー)から購入した。他の試薬は全て特級品を用いた。
2
.動物実験
)
実験動物は SD系雌ラット(実験1)または SD系雄ラット(実験 2 および実験 3
を用い、室温 23+10C、 1
2時間の明暗周期 (
8
:
0
0に点灯)の条件下、ステンレス製ケ
ージ内で個別飼育した。試験期間中、体重および飼料摂取量は毎日、飼料交換の前に行
った。なお、動物実験は、山之内製薬動物実験管理委員会において定められた 「
動物実
験に関する指針J に則って実施した。
実験1. DMBA誘発乳ガン試験
D在
¥
IBA誘発乳ガンに対する礼I¥Sの腫蕩増殖抑制作用を調べるため、 1
1
8匹 (
4
2日齢)
T
a
b
l
e1
2
) により馴化した。49 日齢
の雌ラットを実験に用いた。実験動物は標準飼料 (
に達した時点で、全てのラット(平均体重、 1
6
6g
;1
5
0-1
8
5g
) に DMBA (
31mg
/
kg体
.
5mlの大豆油に溶解し、胃内に経口的に投与した。
重)を 0
DMBA投与後 2 日目に、体重を基準に 3群に分けた。実験開始日の平均体重は CS
4
2
飼料群 (
4
3匹)、 30%孔生 S飼料群(36匹)および 1
3
.
6
(
%WB飼料群でそれぞれ 1
6
5、
1
6
6および 1
6
6gで、あった
O
実験飼料ならび、に飲料水は自由摂取とした。実験飼料の組
a
b
l
e1
2に示した。3
00
/
0比
生S飼料と 1
3.6%WB飼料に含まれる食物繊維含量 (
6
.
7
成を T
g
/1
0
0g 飼料)は同量で、あった。 D~在BA 投与後 112 日目には、 10 時に飼料を取り出し、
1
2時から 1
5時の聞にジエチルエーテル麻酔下にて腹部大動脈か ら採血した。採血後、
7{3の測定に供した。卵巣は摘出後、液体窒素を用いて直ち
血清はエストラジオールー 1
0
に凍結し、アロマターゼの測定時まで 8
0C で保存した。
血清エストラジオールー 1
7(3濃度は B
u
t
c
h
e
re
ta
.
l の方法
6
8
) を一部改変したラジオイ
5ml容量
ムノアッセイにより測定した。エストラジオールの抽出用に 3mlの血清を 1
のポリエチレンチューブに採取した。測定の精度確認のため、それぞれのチューブには
4
7Bqの[
2,
4,
6,
7
_3同ーエストラジオールを加えた(回収率は 7
4
.
2+0
.
90
/
0
)。ここに 2ml
のジエチルエーテルを加え、 2分間激しく撹持した。この操作を 4回繰り返すことでエ
ストラジオールを抽出した。得られたエーテル層はプールした後、窒素気流下にて濃縮
乾回した。濃縮乾固した抽出物は、ベンゼン/メタノール (
8
5
:1
5、v
/
v
) に再溶解した
後
、 S
e
p
h
a
d
e
xLH-20 (
P
h
a
n
n
a
c
i
a、U
p
p
s
a
l
a、S
w
e
d
e
n
) を充填したカラムに添加した o
S
e
p
h
a
d
e
xは、あらかじめ室温で 4
8時間、ベンゼン/メタノール混液中で、
膨潤した後、
吸引法で脱気し、デ、ィスポーサブルのシリンジ(内径 7mm) に 2mlまで、満たした後、
あらたに調製したベンゼ、ン/メタノール混液 5mlで洗浄した。血清抽出物 (
0
.
1mI)を
カラムに加えた後、さらに溶媒(ベンゼン/メタノーノレ、 8
5
:
1
5
) を加え、溶出液のう
ち最初の 2
.
5mlは破棄した。次の 2
.
5mlはエストラジオ、ールー 1
7{3を含む画分として回
収した。 この溶液は窒素気流下にて溶媒を除去した後、
0
.
50
/
0 のウシ血清アルブミン
を含む 0.02Mのリン酸ナトリウム溶液 0
.
1
5mlを加え、 5分間ソニケーションを行 うこ
とで沈殿物を分散させた。得られた懸濁液はラジオイムノアッセイに用いた。放射活性
はシンチレーションフオトメーター(ベックマン LS6000TA、東京)にて測定した。エ
7 {3濃度は操作上の誤差を補正した後、 pmol
/l
で表した。エストラジ
ストラジオーノレー 1
オールー 1
7{3の検出限界は 6.
25p
gで、あった。
7{3排池量を測定するため、凍結乾燥後、粉砕した糞便
糞中へのエストラジオーノレー 1
0
50mgに 2mlのクロロホルム/メタノール (
1
/
1、v
/
v
) を加え、 4Cで 1
2時開放置した
後、抽出操作を 2回繰り返した。抽出液はプールし、窒素気流下にて濃縮乾固した後、
4mlの 3
00
/
0エタノール溶液を添加し、
1
0分間ソニケーションを行った。非抱合体のエ
4
3
ストラジオールー 1
7{
3
は 2mlのジエチルエーテルで、
抽出した後、窒素気流下で溶媒 を除
.
1mlのベンゼン/ メタノール (
8
5
:1
5、v
/
v
) 混液に再懸濁した。エスト ラジオ
去し、 0
ールー 1
7{3は血清中のエストラジオールー 1
7{3の測定と同様にカラムにより分離した後、
シンチレーションフォトメーターを用いて測定した。
i
i
t
e
r
iの方法 6
9
)に従い、 [
1{
3_3H(
N
)
]
ー
ア
卵巣中のアロマターゼ活性は Thompsonと S
0
ンドロステンジオンから遊離する 3H20を測定した。アロマターゼの比活性は 37Cの条
p
m
o
l
) で表した。サン
件下でタンパク質 1mgが 1分間当たりに遊離させる 3H20量 (
6、2
3および 2
5で、あった。
プル数は CS、比t¥Sおよび WB飼料群でそれぞれ、 2
タンパク質含量は K
j
e
l
d
a
h
l法 2
9
)に従い測定した。水分は 1
0
5C、2
4時間乾燥するこ
0
0
とによる重量の減少から求めた。灰分は直接灰化法 (
5
2
5C、一晩放置)、また食物繊
r
o
s
k
y法 1
6
)に従し 1測定した。総脂質含量は Fo1
che
ta
.
l の方法 30) に従いクロ
維含量は P
ロホルム/メタノール混液 (
2
:
1、v
/
v
) で抽出した後、溶媒を除去することで求めた。
炭水化物量は総重量からタンパク質、灰分、水分および食物繊維の量を差し引くことで
o
r
i
t
ae
ta
.
l46) の方法に従い測定
求めた。糞中中性ステローノレおよび総胆汁酸排池量は M
した。
実験 2 回一直腸吻合ラットを用いた HASと c
sの小腸内消化率の比較
HASおよび CSの小腸内消化率を求めるため、 8匹の雄ラット (
3
5 日齢)を用いた。
動物は標準飼料 (
T
a
b
l
e1
2
) を 1週間与えることで問 1化した。 4
2日齢になった時点で、
4時間は絶食させたが、水は自由摂取させ
ラットに回一直腸吻合術を施した。手術前 2
た。 ネンブタール(ペントバルビタールナトリウム塩、 0
.
2
4mmol/kg 体 重 ;A
b
b
o
t
t
N
o
r
t
hC
h
i
c
a
g
o,
USA) を腹腔内投与することで麻酔し、 N
i
s
h
i
m
u
r
ae
ta
.
l の方
L
a
b
o
r
a
t
o
r
i
e
s,
法 41)に従い盲腸および大腸を切除した。手術後 2
4時間は絶食および絶水とした後、標
準飼料を 1週間与えた。 この後、体重を基準に CS (
n= 4
) および HAS (n=4) 飼料群
に分けた。HAS飼料は 1k
g当たり炭水化物として 6
5
5gの比t¥Sを含み、カゼイン 2
5
0
0g、ミネラル混合 3
5gおよびビタミン混合 1
0g (それぞ
g、大豆油(味の素、東京) 5
れ AIN-76組成 31)に従った、オリエンタノレ酵母、東京)を含む様に調製した。 CS飼
料は比t¥Sと置き換えることで飼料 1k
g当たり 6
5
5gの CSを添加した。糞イ更は試験終
ン排准量は T
o
t
a
lS
t
a
r
c
hA
s
s
a
yK
i
t(Megazyme
了直前の 3日間に採取した。糞中へのデンフ。
y
d
n
e
y、A
u
s
t
r
a
l
i
a
) にて測定し 2
5
)、デンフ。
ンの消化率は下記の計算式に従い
A
u
s
t
r
a
l
i
a、S
44
計算した。
0
)
消化率(0/
= [
{
デンプン摂取量 (
g
) -糞中デンプン排准量 (
g
) }/
デンプン摂取量 (
g
)] X 1
0
0
実験 3
. 正常ラットを用いた HASと CS の食後の血糖値の比較
HASおよび CSの食後血糖値を評価するため、 1
0匹(35 日齢)の雄ラットを用いた。
実験動物は標準飼料 (
T
a
b
l
e1
2
)を 1
0 日間摂取させることで馴化した。 4
5日齢になっ
た時点で、体重を基準に 2群に分け実験に先立ち 2
4時間絶食させた。 2
4時間絶食後、
対照群には 18%CS懸濁液 (
w
/
v
) を体重 1
0
0g に対して 2
2
5mg の CSを含むように胃
8%孔t¥S懸濁液 (w/v) を対照群と同様に胃
内に経口的に投与した。比
t
¥S投与群には 1
内に経口的に投与した。結果に示した時間間隔で、
尾静脈採血を行った。血糖値は市販の
キット(グルコース B-テストワコ一、和光純薬工業、大阪)を用いて測定した。
3
. 統計処理
腫場発症率の統計処理は Y
a
t
e
sの補正後、
χ 2検定 7
0
) にて行った。
CSおよび比t¥S
の消化率ならびに血糖値の統計処理は S
t
u
d
e
n
t
'
st
- 検定を用いた。 また、相関性の検定
も行った
3
4
)O その他の統計処理は
を行い、
p 値が
ANOVA を行った後、 D
u
n
c
a
n
'sの多重比較検定
0
.
0
5以下の時に有意とみなした。
4
5
3
3
)
T
a
b
l
e1
1
.C
h
e
m
i
c
a
lc
o
m
p
o
s
i
t
i
o
n
so
fc
o
m
s
t
a
r
c
h,
h
i
g
h
a
m
y
l
o
s
ec
o
m
s
t
a
r
c
ha
n
dw
h
e
a
tb
r
a
n.
H
i
g
h
a
m
y
l
o
s
e
I
n
g
r
e
d
i
e
n
t
s
C
o
m
s
t
a
r
c
h
c
o
m
s
t
a
r
c
h
Whe
a
tb
r
a
n
g
l
1
0
0g
C
a
r
b
o
h
y
d
r
a
t
e
T
o
t
a
ld
i
e
t
a
r
yf
i
b
e
r
8
5
.
8
61
.5
21
.1
2
2
2.
6
49.
3
ND
(
R
e
s
i
s
t
a
n
ts
t
a
r
c
h1
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47
実験結果
実験1. DMBA誘発乳ガン試験
CS、比
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.S および W B飼料群の最終体重はそれぞれ 31
3=
1
=5 、294士5 および 31
9+5g
であり 、
比
t
¥
.S 飼料群の最終体重は他の 2 群に比べ有意に低い値を示した。CS、HAS お
1
2 日間の累積飼料摂取量はそれぞれ 1.
38+0
.
0
1、1
.34=
1
=0.
0
1および
よび W B飼料群の 1
1
.
45+0
.
0
1kg であり 、
比
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¥
.S 飼料群と CS飼料群の問で有意な差は認められなかった。
t
¥
.S飼料群に比べ有意に高い値を示した。
しかし 、W B飼料群の飼料摂取量は 比
試験終了時の腫場発症率は試験群間で有意な差は認められなかったが、発症時期に
は差が認められ、CSおよび W B飼料群ではそれぞれ DMBA投与後 27または 30 日目
に触診による発ガンが確認されたが 、 CS飼料群の発症日に比べ HAS飼料群では 21
日遅く DMBA 投与後 48 日目にはじめて腫揚が確認された。
D~在BA 投与後 112 日 間に触診で確認された担ガンラット当たりの累積腫場数を F i g. 6
に示した。 D~在BA 投与後 90 および 98 日目の累積腫蕩数は CS 飼料群に比べ HAS 飼
料群では有意に低い値を示したが 、W B飼料群は CS飼料群と 同等で、あった。試験終了
生S および W B飼料群でそれぞれ 6.
2
3
時の担ガンラット当たりの平均腫場数は、CS、比
+0
.
6
9、4.
9
1=
1
=0
.
7
4および 5.
69=
1
=0.
74 で、あった。担ガンラット当たりの平均腫虜重量は、
CS、HAS および W B飼料群でそれぞれ 6
.
9
0+0
.
9
3、5
.
1
4=
1
=0
.
8
3および 4
.
7
9+0
.
82g で
あった。HAS および W B飼料群の担ガンラット当たりの平均腫場数および腫場重量は、
CS飼料群に比べ 1
0~30%低下するものの 、 統計上有意な差は認められなかった。
糞便乾燥重量ならびに中性ステロール、胆汁酸およびエストラジオールー
1
7 sの糞中
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3 に示した。 HASおよび W B飼料群の糞便乾燥重量は CS飼料群に比
排池量を T
べ有意に高 い値 を示した。さらに W B飼料群の糞便乾燥重量は 礼的 飼料群に比べ有意
に高 い値 を示 した。糞 中への総胆汁酸排池量にも同様な傾向が認められ、 W B>HAS>CS
の1
)
慎で、あった。 しか し
、 総胆汁酸排准量とは異なり、 HASおよび W B飼料群の糞中へ
のステローノレ排池量は、CS飼料群に比べ有意に低い値を示した。HAS飼料群の糞中エ
1
7 s (遊離形)排池量は CS 飼料群とほぼ同等で、
あった。 しかし
ストラジオールー
W B飼料群のエストラジオーノレー
1
7s
排池量は CS飼料群に比べおよそ 2.
6倍の高い値を
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血清中エストラジオーノレー
1
7s
濃度ならびに卵巣中アロマターゼ活性を T
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48
示した。血清中エストラジオールー 1
7s
濃度は試験群聞で有意な差は認められなかった。
HAS飼料群の卵巣中アロマターゼ活性は CS 飼料群との聞に有意な差は認められなか
ったが、 W B飼料群の卵巣中アロマターゼ活性は CS飼料群に比べ有意に高い値を示し
た。卵巣中アロマターゼ活性と糞便中へのエストラジオーノレー1
7s排池量との聞に有意
y=1190x+193、r=0.
244、p=0.0359; y は糞便中へのエ
な正の相関が認められた (
ストラジオールー 1
7 s排 池 量 (pmol
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) を
、 x は卵巣中アロマターゼの比活性
(
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) を示す)
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実験 2
. 回一直腸吻合ラットを用いた HASと CS の消化率の比較
回一直腸吻合ラットを用いた HAS および CS の小腸内消化率はそれぞれ 66.5+0.5%、
99.6+0.050
/
0であり、この差は有意で、あったい<
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.
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実験 3
. 正常ラットを用いた HASと CS の食後血糖値の比較
HASまたは CS懸濁液投与後の血糖値の変化を F
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g
.
7 に示した。比
t
¥
.S懸濁液投与群
では投与後 30、45および 60分後の血糖値は、 CS懸濁液投与群に比べ有意に低い値を
示した。
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3HAS
,
h
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y
l
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r
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r
c
h.
4
W B,
w
h
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a
tb
r
a
n
.
52
1
2
-
X
一--{正一一
A
(三。自信)
ω 目。ω口百旬。。目白
‘・
1
0
a
8
225mgCS
225mgHAS
酒
、
6
4
A0
00
30
6
0
90
1
2
0
Time(
m
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150
1
8
0
F
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.7
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5
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u
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'
st
t
e
s
.
t
5
3
考察
本章では、 DMBA誘発乳ガンモデルを用い、 HASの腫蕩増殖に対する影響を WBを
陽性対照
7
1
)
として比較検討した。その結果、 HAS飼料群の腫蕩発症時期は CSに比べ
遅延する傾向を示し、比t¥S飼料群の担ガンラット当たりの累積腫場数は、試験期間中
の一時期 (DMBA 投与後 60 および 90 目前後)において~ CS飼料群に比べ有意に低い
値を示すことが明らかになった (
F
i
g
.6
) 。 また WB飼料群でも累積腫蕩数は全試験期
間中をつうじ CS飼料群に比べ抑制される傾向を示した。
この孔生Sおよび WBの腫蕩増殖抑制作用をエストロゲン代謝の観点から検討したと
ころ、比t¥S飼料群の血中エストラジオーノレー 1
7s
濃度および糞中エストラジオーノレ司 1
7
3排池量は CS飼料群とまったく同等であることが明らか l
こなった。一方、 WB飼料群
7 s排池量は CS飼料群に比べ有意に高い値を示したが、血
の糞中エストラジオールー 1
7 s濃度は CS飼料群に比べ差がなかった。エストラジオールー 1
7
中エストラジオールー 1
3は、主に卵巣において男性ホノレモンであるテストステロンからアロマターゼ(芳香化
酵素)により合成されている。そこで試験終了時に摘出した卵巣を用いアロマクーゼ活
性を測定したところ、比生S飼料群の活性は CS飼料群と同等であるが、 W B飼料群は
CS飼料群に比べ約 2倍高い値を示すことが明らかになった。 これらの結果は、 WBは
エストラジオーノレー 1
7 sの腸肝循環を阻害し糞中への排准量を増大させるが、補償的に
7s濃度は一定に維持されたこと
アロマターゼ活性が上昇し、血中エストラジオーノレー 1
を示している。 同様に、 Choene
ta
.
l71) も WBの腫蕩増殖抑制作用とエストロゲン代謝
の関係について検討しているが、やはり WB摂取によっても血中エストラジオールー 1
7
3濃度は低下しなかったと報告している 。したがって孔t¥Sおよび W Bによる腫場増殖
抑制作用はエストロゲン代謝の修飾とは無関係に発現するものと考えられた。
一方、比t¥Sおよび WBによる腫蕩増殖抑制作用を摂取カロリー量の観点から眺める
1
0
00
/
0
)
と、第 I章の結果と同様に本章においても、 HASの小腸内消化率は約 70%で CS(
に比べ明らかに低い値を示していた。また第 I章の結果から 3
00/0HAS飼料をラットが
摂取した時、大腸内で発酵されるデンフ。
ン量は大腸流入量の約 6
70
/
0であるが、大腸内
で発酵するデンプンの宿主への寄与カロリー量は 1
.
9
0
'
"
'
'
2
.
2
7k
c
a
l
/
g47
・
4
9
) の範囲に認め
られることが報告されている 。 これらの知見に加え、飼育期間中の l 日当たりの平均
飼料摂取量および飼料組成(脂質、 9k
c
a
l;タンパク質、 4k
c
a
lとして;T
a
b
l
e1
2
) から、
5
4
1日当たりの摂取カロリー量を推定すると、 CS飼料群では約 5
4.
4k
c
a
lで、比I¥S飼料群
0
.
1k
c
a
lになる 。 K
l
u
r
f
e
l
de
ta
.
l72) は
、 DMBA誘発乳ガンと摂取カロリー量の関
では約 5
係について明らかにする目的で、ラットを自由摂餌条件下に加え、 60%または 70%
摂餌
条件下で飼育した時の発ガン時期ならびに腫蕩重量について検討しているが、摂餌量
制限下では自由摂餌条件下に比べ発ガン時期の遅延とともに腫療重量の低下が認めら
れたことを報告している 。 この結果は DMBA誘発乳ガンにおける腫蕩増殖と摂取カロ
リー量との関係を明らかにしたものであり、本章で認められた比怖の腫場増殖抑制作
用にも摂取カロリー量の抑制が関与しているものと推測される 。一方、 W Bは脂質の吸
収阻害
7
3
) により摂取カロリー量を制限していると推測される 。
また最近、 Imagawae
ta
.
l67) は i
nνi
t
r
o試験においてインスリンが乳腺腫蕩細胞の成長
因子であることを報告しているが、本試験で HAS と CS投与後の血糖上昇を比較した
F
i
g
.
7
) 0 また G
r
a
n
f
e
l
d
te
ta
l
ところ、比t¥.Sの血糖上昇は CSに比べ有意に抑制された (
7
4
)も
、比t¥.S飼料摂取時の血糖値および血中インスリン値は
CS飼料摂取時に比べ、有
意に低い値を示すことを報告しており、比企 S の腫蕩増殖抑制作用には摂取カロリー量
の制限に加え、腫蕩成長因子としての血中インスリン濃度を低く保つことが関与して
し、るのかもしれない。
本章の結果から、 HAS の長期的(継続的)な摂取は、食物繊維と同様に総摂取カロ
リー量の制限により、乳ガンの増殖を抑制する可能性が示唆された。
5
5
第N章
ラットの糞便排祉に及ぼすハイアミロースコーンスターチ
摂取の影響
食物繊維による糞便重量の増加および
るが、/イ小
l
ト¥麦フスマなど大腸内でで、比較的分角解卒(発酵)を受けにくい食物繊維は、それ自体
が大腸内容物のカサを増加させるとともに、未発酵の繊維が水分を保持することで、さ
らに大腸内容物を増加させると考えられている
においても糞便重量の増加は認められている
7
5
)
。一方、発酵を受けやすい食物繊維
1
0
)0
S
t
e
p
h
e
nと Cummings10) は、食物繊維
が発酵を受け腸内細菌の増殖を促進し、その結果菌体重量が増加することで糞便量は
増加すると報告している。このような大腸内容物量の増大(カサの増大)は排便反射を
促し排便を促進すると考えられるが、近年、大腸内での発酵産物である SCFA の大腸
a
M
I
n
all) は SCFAが大腸組織
機能に対する役割が明らかにされつつある。すなわち、 Y
の嬬動運動を刺激することをラットの摘出大腸組織で認めており、発酵によって生成
した SCFA は排便を促進する可能性がある。 したがって、食物繊維による排便促進効
果は、食物繊維自体による、また菌体の増加によるカサの増大に加え、 SCFAの作用に
よって発現すると推測されている。
ところで、大腸内に流入する炭水化物は食物繊維に限らない。デンプンは、摂取し
たすべてが小腸内で、消化、吸収されるわけではなく、一部が大腸内に流入する
のような消化抵抗性を示すデンプンは、 RSと呼ばれ、現在では、
)
。こ
2
1
「健康なヒトの小腸
内で消化吸収されないデンプンおよびデンプンの部分分解物の総称」と定義されてい
る 5)。第 I章では回-直腸吻合および正常ラットを用い、 RS源としての HASの小腸内
消化率および大腸内での分解率について検討した結果、礼的の小腸内消化率は CS
(
IO
OO
/
o
) に比べて低く、 6
7
'
"
"
7
4
% に留まり、また大腸内での分解率は HAS摂取量の
1
6
'
"
"
2
501
0 であることを明らかにした。したがって、大腸内に流入した HASは大腸内容
物のカサを増加させるとともに、発酵を受け腸内細菌の増殖を促進し、一方、 HAS の
大腸内発酵により生成した SCFAは排便を促進する可能性がある。
S
c
h
e
p
p
a
c
he
ta
l
.77) は、健常人に高デンプン食を摂取させた(対照期)後、さらにアミ
ログルコシダーゼ阻害剤を摂取させ強制的に大腸内へのデンフ。
ン流入量を増加させた
(試験期)結果、試験期の糞便量は対照期に比べ有意に増加し、試験期の糞中への菌体
排池量は対照期に比べ有意に高い値を示したと報告している。一方、 RS含量を高めた
5
6
食事を用いた試験では、 R
Sが糞便量を増加させるとする報告
1
8
)
と増加させないとする
S摂取量および摂取期間な
報告 78) があるが、この原因としては被験者の腸内細菌叢、 R
らびに RS供給源 (
R
Sのタイプ)の違いが関与していると考えられる。
そこで、本試験ではタイプ 2の RSである HASの排便促進効果の程度を明らかにす
る目的で、ラットを用い HAS摂取時の大腸内容物量(糞便量)と盲腸内 SCFAの生成
量について検討した。 まず、実験 lでは、 HASの糞便量に対する影響を詳細に検討す
るため、比較的高用量(飼料中 40%) までの比l¥Sを段階的に添加した飼料をラットに
摂取させ、糞便の個数、湿重量、乾燥重量および水分含量を測定した。また、糞便体積
ならびに摂取した飼料の消化管内通過時間の測定を行った。次に、実験 2 では、比l¥S
の発酵性について検討するため、 HAS摂取時の盲腸重量、盲腸内 SCFA量ならびに糞
中デンプン排池量を測定した。 さらに、実験 3では、品目摂取時の糞中窒素およびジ
アミノピメリン酸排准量を測定することで、糞便重量に与える腸内細菌の増殖(菌体重
量)の影響についても検討した。 これらの結果をあわせ比l¥Sの糞便量および排便促進
に及ぼす影響について考察する。
実験方法
1.実験材料
L
a
n
eCove,A
u
s
t
r
a
l
i
a
) から
実験に用いた HAS (
H
i
m
a
i
z
e
)はS
t
a
r
c
hA
u
s
t
r
a
l
a
s
i
a社 (
供与されたもので、ヨウ素比色法
4
2
)
で測定したアミロース含量は 8
30
/
0、 P
r
o
s
k
y法
1
6
)
によって求めた食物繊維含量は 23%で、あった。
2
.実験動物
実験には 3週齢(実験 1
)または 6週齢(実験 2および 3
) の SD系雄ラットを用い、
0
ラットは室温 23+1
C、相対湿度 6
0
'
"
'
'
7
00
/
0、 1
2時間の明暗周期 (
8
:
0
0~こ点灯)の条件
下、ステンレス製ケージ内で個別飼育した。 ラットは搬入後、少なくとも 7 日間は糖
質源の全てを SU (実験1)または CS (実験 2および 3
) とした飼料(それぞれ SUお
よび CS飼料)を与え馴化した後、実験に供した。 SUおよび CS飼料の組成は T
a
b
l
e]
5
に示した。なお、全ての動物実験は、山之内製薬動物実験管理委員会において定められ
た「動物実験に関する指針J に則って実施した。
5
7
s
u飼料で期iI化した後、体重を基準に 4群に分け、糖質源と
00/の c
sと 5.5%の s
uを含む c
s飼料、または c
s飼料中の c
sと置き
して飼料中に 6
実験1. 3週齢雄ラットを
0
0
/0 HAS
1
0'
"
'
40
換えることによって 10%、 20% および 40% の HASを添加した飼料 (
飼料)のし¥ずれかを、水道水とともに自由摂取させた。なお、本試験ではラットの HAS
摂取に対する適応を観察するため、飼育期間は 4 週間とした。飼育期間中、体重およ
び飼料摂取量は 2 日ごとに記録した。飼育開始後 l、2および 3週目の最後の 3日間は
1
2時間間隔 (
9
:
0
0と 2
1:
0
0
) で糞便を採取し、糞便の個数および湿重量を測定した。糞
便の体積は、実験開始後 1
6日目に採取した糞便を用い、一定量の流動パラフィン中に
浸潰することによって増加する体積として求めた。また、 8日目には摂取した飼料の消
化管内通過時間を測定する目的で、生理食塩水に懸濁した 20
/
0カルミン懸濁液をラ ッ
ト
に体重 1k
g当たり 5m
l、胃内へ経口的に投与した。投与後 1
0
'
"
'
'
4
8 時間にわたり糞イ更
を観察し、糞便中にカルミン(赤色物)が排池された最初の時間を記録した。なお、カ
ルミン懸濁液は 1
9
:
0
0
'
"
'
'
2
0
:
0
0の時間帯(暗期に入る 1時間前)に投与した。飼育終了
後、エーテル麻酔下で、放血により致死せしめ、この後盲腸を摘出し内容物および組織重
量を測定した。
実験 2. 6週齢雄ラットを CS飼料で馴化した後、体重を基準に 5群に分け、糖質源と
して 6
5
.
5
%の CSを含む CS飼料、または 2
.
5
%、5%、 1
00/
0 および 2
00/
0の HASを添加
した飼料 (
2
.
5
'
"
'
'
2
00/
0比
I
¥S飼料)のいずれかを、 1
6日間にわたり水道水とと もに自由摂
取させた。 HAS は CS と置き換えることで添加した。飼育期間中、体重および飼料摂
取量は 2 日ごとに記録した。飼育終了後、エーテノレ麻酔下で、放血により致死せしめ
この後盲腸を摘出し内容物および組織重量を測定した。盲腸内容物は pHおよびアンモ
ニアの測定に供した。 また、盲腸内容物の一部は有機酸の測定時まで・2
0C で保存し
0
た。糞便は試験終了直前の 3 日間に採取し凍結乾燥した後、デンプンおよび窒素の測
定に供した。
. 6週齢雄ラットを CS飼料で馴化した後、体重を基準に 2群に分け、糖質源と
実験 3
5
.
50/
0の CSを含む CS飼料、または 2
00/
0の HASを添加した飼料 (
2
00
/
0 HAS飼料)
して 6
のし吋公れかを、 1
0日間にわたり水道水とともに自由摂取させた。HASは CS と置き換
えることで添加した。飼育期間中、体重および飼料摂取量は 2 日ごとに記録した。糞
5
8
便は、試験終了直前の 3 日間に採取し凍結乾燥した後、デンプン、窒素およびジア ミ
ノピメリン酸の測定に供した。飼育終了後、エーテノレ麻酔下で、放血により致死せしめ、
この後盲腸を摘出し内容物および組織重量を測定した。
3
.測定項目および測定方法
1
)盲腸内容物の pH、アンモニアおよび、
有機酸の測定
盲腸内容物の pHは 3
0
0mg前後を撹祥後、同重量の蒸留水を加え均一化した後、 pH
メーター (
M
o
d
e
lC
l、堀場、東京)にて測定した。
盲腸内容物中のアンモニアは、奥田と藤井の方法
に従い測定した。すなわち、 5
0
7
9)
l
mgの盲腸内容物に 0
.
0
6
2
5M 硫酸を含む 1
.
2
50/0 タングステン酸ナトリウム溶液 4m
を加え撹祥後、遠心操作により上清を得た。上清中のアンモニアは市販キット(アンモ
ニアーテストワコ一、和光純薬工業、大阪)を用いて測定した。
盲腸内容物中の有機酸は、 H
o
s
h
ie
ta
.
lの方法
8
0
)
に従い、 S
h
i
m
p
a
c
kSCR-l02Hカラム
(
3
0CI11,内径 8ml11,島津製作所、京都)および電気伝導度検出器 (CDD-6A、島津製
作所、京都)を装着した HPLC (LC-6A、島津製作所、京都)を用い、内部標準法によ
って測定した。すなわち、 3
0
0mgの盲腸内容物を 0
.
7ml の蒸留水で、
懸濁し、さらに
0
.
3mglmlのクロトン酸(内部標準)を含む 10mM水酸化ナトリウム溶液 1mlを加え
5分間遠心し上清を得た。 この上清 11
1
1
1 にクロロホ
均一化した後、 1
0,
0
0
0 X gで 1
ノ
レ
ム 11
1
1
1 を加え、十分混和し、さらに遠心分離によって得られた水層 3μi を分析に
供した。
2
) 糞中デンプン、窒素およびジアミノヒ。
メリン酸の測定
ta
l の方法
糞中デンプンの測定は、 M
u
i
re
2
5
)
¥こ従い行った
O
すなわち、凍結乾燥糞
2m
lの 80%エタノールを加え膨潤後、 2ml のジメチノレスルホキシドを
便1
0
0mgに 0.
加え、 1
0
0C、3
0分間加温することにより糞中デンフ。
ンを完全に可溶化させた。可溶化
0
したデ、ンフ。
ンは市販キット (
T
o
t
a
ls
t
a
r
c
ha
s
s
a
yk
i
t,
Megazyme,
A
u
s
t
r
a
l
i
a
)を用い測定した。
糞中窒素は K
j
e
l
d
a
h
l法 29) に従い測定した。糞中ジアミノピメリン酸は C
z
e
r
k
a
w
s
k
iの方
塩酸を加え、 1
0
50C、1
6時間加水分解した後、アご
法 81)に従い、凍結乾燥糞便に 20%
ノ酸自動分析計 (
8
3
5型、日立製作所)にて測定した。
5
9
4
.統計解析
実験結果は、各実験群の平均値±標準誤差で表した。各データの統計処理は ANOVA
を行った後 、 p<0
.
0
5の場合は Duncanの多重比較検定法
3
3
)
で検定した。 B
a
t
t
l
e
t
t検定
8
2
) により分散が均一でない場合には、データを対数変換した後に
ANOV
与を行い、 p<
0
.
0
5の場合には多重比較検定を行った。また、データを対数変換した後も分散が均一で
r
u
s
k
a
l
W
a
l
l
i
s) を行い、 p < 0
.
0
5 の場合には
な い 場 合 に は 、 不 等 分 散 分 析 (K
Kolmogorov-Smirnovt
w
o
s
a
m
p
l
e検定
8
2
) によって検定し、結果はメジアンおよび範囲で
t'
st
示した。なお、実験 3では 2群聞の比較を行うため、 Studen
6
0
-
Tabl
e1
5
. C
o
m
p
o
s
i
t
i
o
no
f
b
a
s
a
ld
i
e
t
s.
I
n
g
r
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d
i
e
n
t
s
SU
CS
引
くg
S
u
c
r
o
s
e(
S
U
)
6
5
5
C
o
r
n
s
t
a
r
c
h(
C
S
)
6
5
5
C
a
s
e
i
n
2
5
0
2
5
0
C
o
r
no
i
l
5
0
5
0
M
i
n
e
r
a
lm
i
x
t
u
r
e1
3
5
3
5
V
i
t
a
m
i
nm
i
x
t
u
r
e1
1
0
1
0
8
a
s
e
do
nA
I
N
7
6.
1
6
1
-司"...
実験結果
T
a
b
l
e1
6
)。
実験1. 試験期間中の飼料摂取量および体重増加量は群間で、差がなかった (
CS飼料群の糞便個数は各週において群問で最も低い値を示した
(
F
i
g
.8A
) 一方
、
0
HAS飼料,
群では比1¥Sの添加量に応じて糞便個数は増加する傾向を示し、 400
/
0 比
1
¥S飼
/
0
料群の糞便個数は CS飼料群に比べ各週をつうじて有意に高い値を示した。また、 200
比生 S飼料群も l週目を除き CS飼料群に比べ有意に高い値を示したが、 10%HAS飼料
群では各週とも CS飼料群と差がなかった。糞便湿重量も同様に CS飼料群で最も低い
/
0 および 4
00
/
0 比l
¥S飼料群では各週をつうじて CS飼料群に比べ有意に高
値を示し、 200
F
i
g
.8B
)0 10%比1¥S飼料群の糞便湿重量は各週をつうじて CS飼料群
い値を示した (
と差がなかった。各試験群の糞便乾燥重量は湿重量の場合と全く同様の傾向を示した
(
F
i
g
.8C) 糞便の水分含量は各週とも CS飼料群で最も低い値を示し、 200
/
0 および
0
40%HAS飼料群では、 CS飼料群に比べ
l週目を除き有意に高い値を示した (
F
i
g
.
80
)。
・
40%HAS飼料群の水分含量は、 200
/
0 HAS飼料群に比べ 2週目で有意に高い値を示した
が
、 lおよび 3週目で、は差がなかった。1
00
/
0 HAS飼料群と CS飼料群の水分含量に差は
なかった。また、本試験の結果から、ラットの HAS摂取への適応には 2週間程度必要
であると考えられた。
00
/
0、20% および 40%HAS飼料
糞便体積は CS飼料群が群間で最も低い値を示し、 1
T
a
b
l
e1
6
)
群では CS飼料群に比べ有意に高い値を示した (
0
400
/
0比
l
¥S飼料群の糞便体
積は CS 飼料群に比べおよそ 6~7 倍の高い値を示した。 摂取した飼料の消化管内通過
時間を測定するため、本試験ではカルミン懸濁液投与後 1
0時間目から糞便の観察を開
始したが、その時点ですでに 1
00
/
0 HAS飼料では l匹
、 200
/
0 および 40%HAS飼料群で
6匹)でカノレミン(赤色物)が糞中へ排池されていた。 このため、正
は全てのラット (
確な消化管内通過時聞が測定できず統計処理はできなかったが、 HAS飼料の消化管内
通過時間は CS飼料群に比べ短縮する傾向が認められた。
CS飼料群の盲腸組織重量に比べ 1
00
/
0、2
00
/
0 および 40%HAS飼料群では有意に高い
T
a
b
l
e1
6
) 。盲腸内
値を示し、その程度は飼料中への HASの添加量に依存していた (
容物重量についても、盲腸組織重量と同様の傾向が認められた。
62
可
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.
.
.
.
.
-
実験 2
. 20%HAS飼料群の飼料摂取量は CS飼料群に比べやや低い値を示したが統計
T
a
b
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e1
7
)
上有意な差は認められず、体重増加量も群間で、
差はなかった (
0
CS飼料群の盲腸組織重量に比べ 5
0
/
0、1
00/
0および 2
0%HAS飼料群では有意に高い値
T
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b
l
e1
7
)。一方、 2
.
50/
0H
AS
を示し、その程度は飼料中への比t¥S添加量に依存していた (
飼料群の盲腸組織重量は C
S飼料群と差がなかった。盲腸内容物重量についても、盲腸
S飼料群の盲腸内 pHは群問で最も高い値を示
組織重量と同様の傾向が認められた。 C
00/
0 および 2
00/0HAS飼料群では CS飼料群に比べ有意に低い値を示した。
し
、 1
各飼料摂取時の主要な盲腸内有機酸として酢酸、プロピオン酸、酪酸および、コハク
CFA (酢酸、プロピオン酸および酪酸の合計)
酸を測定したが、酢酸、酪酸および総 S
T
a
b
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e1
7
)0 2
00/0 HAS飼料群のフ。
ロピオン酸およびコハク
濃度は群間で、
差がなかった (
酸濃度は C
S飼料群に比べ有意に高い値を示した。一方、プールサイズでは全ての SCFA
は飼料中への HAS添加量に応じて増加した。盲腸内酢酸量は C
S飼料群で最も低い値
を示し、 1
00/0 および 20%HAS飼料群の盲腸内酢酸量は CS飼料群に比べ有意に高い値
を示した。また、 20%HAS飼料群と 10%HAS飼料群の盲腸内酢酸量にも有意な差が認
められた。盲腸内プロピオン酸量も C
S飼料群で最も低い値を示し、 5
0
/
0、 ]
0%および
2
00/0 HAS飼料群の盲腸内プロピオン酸量は CS飼料群に比べ有意に高い値を示した。
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2
00/0 HAS飼料群聞の差異も全て有意で、
あったコC
S飼料群の盲腸内酪酸量は
また、 5
群間で最も低い値を示したが、 C
S飼料群に比べ 10%および 20%HAS飼料群では有意
に高い値を示した。また、 2
0%比t¥S飼料群の盲腸内酪酸量は 10%孔t¥S飼料群と同等で
あった。盲腸内コハク酸量は 1
00/0 および 2
00/
0 礼的飼料群において有意でかつ顕著な
増加を示し、 1
00/
0H
AS飼料群では CS飼料群の約 3
0倍
、 20%HAS飼料群では約 6
4倍
の値を示した。
盲腸内アンモニア量は HAS飼料群で増加し、 1
00/
0 および 2
0%HAS飼料群では C
S
飼料群に比べ有意に高い値を示した (
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00/
0H
AS飼料群
の盲腸内アンモニア量にも有意な差が認められた。
2
00/0 HAS飼料群の糞便乾燥重量は CS飼料群に比べ有意に高い値を示した (
T
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b
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1
7
) CS飼料群の糞中デンフ。
ン排池量は群間で最も低い値を示したが、 C
S飼料群の糞
0
00/0 および 2
00/
0 H
AS飼料群では有意に高い値を示した。
中デンプン排准量に比べ 1
2
00/
0H
AS飼料群の糞中デンプン排世量は、 1
00/0HAS飼料群に対しでも有意に高い値を
示し、 1
0%HAS飼料群の約 6
.
5倍の値であった。
6
3
~
実験 3
. 20%比t¥S飼料群の飼料摂取量は CS飼料群に比べ有意に低い値を示したが、
T
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b
l
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8)0 20%HAS飼料群の盲腸組織および盲
体重増加量は両群問で、差がなかった (
腸内容物重量は CS飼料群に比べ有意に高い値を示した。糞便乾燥重量ならびに糞中デ
ンプンおよび糞中窒素排池量において、 20%HAS飼料群は CS飼料群に比べ有意に高
00/
0比
t¥S飼料群の糞中スターチ排池量は、実験 2の
い値を示した。また、本試験での 2
20%HAS飼料群で得られた値に比べ数倍高い値を示したが、第 I章で得られた値に近
似していた。 20%HAS飼料群の糞中ジアミノピメリン酸排池量は CS飼料群に比べ高
くなる傾向(p= 0
.
0
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) を示した。また、糞中ジアミノピメリン酸と窒素排准量には正
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6
8
考察
本試験の結果から明らかなように、 HAS は摂取量に応じて糞便個数、重量および体
積を増加させるが、対照となる CS飼料に比べ有意で、かっ顕著な差を示したのは、 2
00
/
0
HAS飼料からで、あった (
F
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g
. 8および T
a
b
l
e1
6
) 0 また、実験 2および 3においても
20%HAS飼料群の糞便乾燥重量 (
0
.
6
9g
/
d
a
yおよび 0
.
6
8g
/
d
a
y
) は、実験 1の 20%HAS
飼料群 (
0.
5
3'
"
'
"
'
0.
6
6g
!
d
a
y
) とほぼ同様の値を示し、 CS飼料群に比べ有意に高い値を示
すことが確認された。なお、実験 lの飼料には糖質源の一部に 5.5% の SUが含まれて
いたが、糞便排池量への影響は認められなかった。 この孔t¥S摂取時の糞便排池量の増
加には、盲腸・大腸内容物量の増加、すなわち小腸を未消化で、通過する HAS量が関与
すると考えられる 。第 I章において、摂取した HASの 3
00
/
0 前後は小腸を未消化で、通
) においても、札t¥S飼料群
過することを明らかにしているが、本章(実験 lおよび 2
の盲腸内容物重量は HAS添加量に応じて増加していた (
T
a
b
l
e1
6 および 1
7
)。
しかしながら、盲腸内容物重量の増加は、必ずしも直接的に糞便重量に反映される
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.
l83) は、通常および無菌ラットに HASを摂取
とは限らないようである 。A
させ、盲腸および糞中へのデンプン流入(排准)量を測定しているが、この時、盲腸内
に流入するデンプン量はラットの種類に係わらず一定(摂取量の約 400
/
0
) で、
あったが、
糞中へのデンプン排池量は無菌ラットでは摂取量の約 30%で、あったのに対し、通常ラ
/
0 程度で、あったことを報告している 。本章(実験 2
) においても、盲腸内
ットでは 30
容物重量は 5
'
"
'
"
'
2
00
/
0 HAS飼料群で C
S飼料群に比べ有意な増加を示したが、糞中デンフ。
o
'
"
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"
'
2O%HAS飼料群においてで、
あった (
T
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b
l
e
ン排世量に有意な増加が認められたのは 1
1
7
) 。すなわち発酵性の高い比t¥Sは、腸内細菌によって種々の有機酸やガスへと積極
的に変換されるため、盲腸内に流入した HASそれ自体による糞便重量の増大効果はか
なり減弱すると考えられる 。
一方、腸内細菌にとって良い発酵基質となる HASは
、菌体の増殖を促すと考えら
8
4
)
t
e
p
h
e
nと Cummingslo) はキャベツ由来の食物繊維を l 日当たり 1
8g ヒトに摂
れる 。 S
取させた時の糞便増加量およびその構成成分についての検討を行っているが、キャベ
00
/
0 以上は菌体に由来することを報告している 。
ツ繊維摂取時の糞便中乾物増加量の 5
彼らは、菌体の水分含量が 8
00
/
0 程度であり菌体自体が保水能を持っと考えられること
から、菌{本の増殖は大腸内容物のカサを増し排便を促進すると結論づけている。またデ
6
9
ンプンについても菌体の増殖を示唆する報告がある。 R
e
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1
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8
3
)は飼料中に 2
0
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0の生ポテトスターチ (HASと同様にタイ プ 2の RS) を含む飼料をラットに与え
400
た時、菌体合成のため腸内細菌のタンパク質要求量が高まり、この際大量の尿素が血中
から盲腸内に流入すると報告している。本章(実験 2) においても、 HAS飼料群の盲
00
/
0および 20%
腸内アンモニア量は、 HAS の添加量に応じて増加する傾向を示し、 1
比生S飼料群の盲腸内アンモニア量は、
CS飼料群に比べ有意に高い値を示した (
T
a
b
l
e
1
7
) 。そこで実験 3では、 HAS飼料摂取時の糞便増加効果における菌体増殖の関与に
ついて検討するため、糞便中の窒素ならびに細菌の細胞膜に特有の構成アミノ酸であ
るジアミノピメリン酸含量 8
1)を測定した。その結果、 200
/
0HAS飼料群では、 CS飼料
群に比べ窒素排世量では有意に高い値を示したが、ジアミノピメリン酸排准量では高
.
0
9
8
) を示すにとどまった。C
a
l
d
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n
ie
ta
.
l86) は
、 pHと腸内細菌の増
くなる傾向(p二 0
殖の関係について明らかにする目的で、ヒトの糞便を培養した結果、極度の pHの低下
はB
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c
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e
r
o
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d
e
sなどの大腸での主要な腸内細菌を減少させ、酸性耐性を示す乳酸菌のみ
を増殖させると報告している。T
a
b
l
e1
7に示すよ うに、本試験においてもラットに 20%
HAS飼料を摂取させた時、盲腸内容物中には高濃度のコハク酸が蓄積し、盲腸内容物
の pHは 5
.
6にまで低下した。したがって、 HASは腸内細菌にとって良い発酵基質とな
る反面、極度の pHの低下を招き、この結果、一部の菌種を除き積極的な菌体増殖は得
られなかったのかもしれない。
次に実験 2で HAS摂取時の盲腸内有機酸について検討したところ、 CS飼料群に比
べ HAS飼料群の酢酸および、酪酸のプールサイズは 1
0
"
"
'
2
00
/
0HAS飼料群で、またプロピ
オン酸のプールサイズは 5""'20%礼的飼料群で有意に高くなった (
T
a
b
l
e1
7
)。しかし、
これら SCFAの盲腸内濃度は、 200
/
0HAS飼料群のフ。
ロピオン酸を除きほとんど変化し
ていなかった。一方、 HAS摂取時には SCFAに加え多量のコハク酸が検出されたが、
コハク酸はプールサイズのみならず、その濃度においても HAS添加量にともない増加
し
、 1
00
/
0および 20%HAS飼料では CS飼料群に比べ有意に高い値を示した。コハク酸
は腸内細菌によって産生される通常の有機酸で、あるが
8
7
) 、乳酸と同様に吸収速度が遅
く管腔内で蓄積しやすいと考えられている 8
8
)
。 このため、多量のコハク酸は大腸管腔
.
l80) は 1
00
/
0のオリゴ糖
内に水分を引き込み下痢を誘発する可能性がある。 H
o
s
h
ie
ta
(キシロシノレフノレクトシド)を含む飼料をラットに摂取させた実験において盲腸内コ
ハク酸濃度の顕著な増加とコハク酸濃度の増加によると思われる下痢を確認している。
70
また、 6
0
/
0 のフラクトオリゴ糖を含む飼料をラットに摂取させた実験においても同様に、
高濃度のコハク酸と軟便の発現が認められている
8
9
)
。
本章(実験 1
)でも、 2
00
/
0 およ
び4
00
/
0H
AS飼料群の糞便の水分含量は CS飼料群に比べ有意に高い値を示し (
Fi
g
.
8・
D) 、この 2群の糞便は軟らかく、なかには糞院が形成されないも のも散見された。 し
たがって、盲腸内有機酸ノ々ターンから考える限り、 2
0
"
'
'
4
00
/
0H
AS飼料群で認められた
F
i
g.
8
) および消化管内通過時間の短縮 (
T
a
b
l
e1
6
)は
、 SCFAによる
糞便重量の増加 (
嬬動運動の刺激よりも、むしろコハク酸による影響が大きいと考えられる。
以上の結果をまとめると、ラットにおける HASの糞便重量増加および排便促進効果
は穏やかであり、比較的大量に摂取した時にのみ発現するものと考えられる。また、こ
れらの効果は主にコハク酸による大腸内水分量の増大にもとづくものであり、さらに
菌体増加による大腸内容物のカサの増大も一部関与していると考えられた。
7
1
第 V章
レジスタントプロテインによるハイアミロースコーンスター
チのラット盲腸内発酵パターンの修飾
SCFAは、大腸組織の!嬬動運動を刺激し 11) 、大腸上皮細胞のエネルギー源となる
かりでなく、大腸上皮細胞の増殖を促進することが知られている
回腸造凄術を施したラットの大腸内に
9
0
川
L
u
p
t
o
nと K
u
r
t
z91) は比較的発酵を受けやす
い食物繊維をラットに摂取させた実験において、
SCFA (酪酸)濃度が大腸上皮細胞の
増殖速度と有意な正の相関を示すことを明らかにしている 。 しかし、
内
SCFA濃度が高い
pHは低下する傾向を示しており、また、大腸上皮細胞の増殖は大腸
pHの低下にともない促進することも認められている
は主に
S
a
k
a
t
a90) は
、
SCFA溶液を投与した結果、 SCFAは大腸上皮細
胞の増殖を促進すると報告している 。また、
条件下では大腸内
o
1
2
)ば
9
2
)O
大腸上皮細胞の増殖促進
SCFAによる局所的な作用に依存するのか、または大腸内 pHの低下に依存する
のかはいまだ結論をみていなし 10
M
a
l
l
e
t
te
ta
.
l93) は HASおよび生ポテトスターチ(し¥ずれも R
S
2に属する)を用い
てラットの盲腸内発酵を検討したところ、
HASは盲腸内 SCFA量を増大させるが、生
Hの低下は、
ポテトスターチでは増加せず、一方、盲腸重量の増大および盲腸内 p
HAS
に比べ生ポテトスターチでより顕著で、あったと報告している。これらの結果は盲腸内
発酵を特徴づける盲腸重量および盲腸内 pHの変化には、
ていることを示している。最近、
取させ、盲腸内
には
SCFA以外の有機酸が関与し
H
o
s
h
ie
ta.
l80) は、難消化性オリゴ糖類をラットに摂
pHおよび盲腸内有機酸量について検討しているが、盲腸内 pHの低下
SCFAではなく、コハク酸の貢献度が大きいことを報告しており、さらに、コノ
ク酸は盲腸組織の増殖を刺激している可能性があると推測している 。また、本研究にお
いても第 W章で明らかにした様に、
HASを摂取したラットの盲腸内 pHは極度に低下
し(<p
H5
.
6
) 、盲腸内には多量のコハク酸が検出された。 したがって、
は、コハク酸が盲腸内
HAS摂取時に
pH、盲腸内容物および、組織重量などの盲腸内環境を変化させて
いるのかもしれない。
W
e
a
v
e
re
ta
.
l9) はデンプンを発酵基質とした場合、食物繊維に比べ酪酸の産生割合が
nv
i
t
J
ゅ試験において認めているが、第 W 章で示した結果は、
高いことを i
i
n νi
v
oでは
HAS 自体は必ずしも酪酸産生に適した発酵基質ではないことを示している 。 しかし、
盲腸内発酵はデンプンを含む糖質以外の栄養素にも影響を受けている。 M
a
c
f
a
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l
a
n
eと
72
M
a
c
f
a
r
l
a
n
e94) は
、 i
nv
i
t
r
oの発酵試験において、生成される SCFAの構成比(パターン)
は同ーの発酵基質(糖質)を用いても同時に添加する窒素量により著しく変化すると報
告している。 また、ラットを用いた試験において、比t¥S 摂取時の盲腸内発酵パターン
は、極めて消化率の高いカゼインを唯一のタンパク質源とする飼料と市販の粉末飼料
9
6
)O 大腸内に流入する窒素源は主に尿素お
とでは大きく異なることが示されている町、
よび未消化タンパク質であることを勘案すれば、食事条件、すなわち未消化タンパク質
量を変化させることで盲腸内発酵を制御することが可能と考えられる。
そこで、本章では、見t¥S摂取時に盲腸内で多量に検出されるコハク酸が、盲腸内 pH、
盲腸内容物および組織重量などの盲腸内環境に与える影響について検討すると同時に、
比
t
¥S 摂取時の盲腸内コハク酸産生量を抑制し、大腸組織の栄養源であり大腸腫蕩細胞
の増殖を抑制すると考えられる酪酸の産生量を増加させうる栄養素(難消化性タンノ 。
ク質)の検索を行った。
実験方法
1.実験材料
アルカリ抽出米タンパク質 (RP、 122.6mg窒素/
g
) はl
¥
1o
r
i
t
ae
ta
.
l43) の方法で調製し
g
) は組合貿易(東京)より供与されたもの
た。ポテトタンパク質 (pp、122.6mg窒素/
で、ポテトの搾汁を蒸気下、 pH 5.0~5.5 で凝固させることにより調製した。 カゼイン
(125.5mg窒素/
g
) と大豆タンパク質 (SP、1
2
6.
2mg窒素/
g
) は NewZ
e
a
l
a
n
dD
a
i
r
yBoard
(
W
e
l
l
i
n
g
t
o
n、NewZ
e
a
l
a
n
d
) と不二製油(大阪)からそれぞれ購入した。RP、PP、SP
の食物繊維含量は Proskye
ta
.
l の方法
1
6
)
を用いて測定し、それぞれ 1
1、46、1
8g
l
k
gで
あった。カゼイン、 RP、PP、SPの見かけの消化率は Njaaの方法
9
7
) に従い等窒素の条
件下で行い、以下の計算式から算出した。
見かけの消化率(%) = {(窒素摂取量一糞中窒素排池量)/窒素摂取量}
x 100
カゼイン、 RP、PP、SPの見かけの消化率は、それぞれ 96、94、92、930
/
0 であった。
CS (コーンスターチ W) は日本食品加工(東京)から、また、比t¥Sは S
t
a
r
c
hA
u
s
t
r
a
l
a
s
i
a
(
L
a
n
eCove、NewS
o
u
t
hWales、A
u
s
t
r
a
l
i
a
) よりそれぞれ購入した。第 I章の試験結果
すなわち回-直腸吻合ラットにおいて求めた HAS中の RS含量は、 Prosky法
1
6
)
で測定
した食物繊維含量と近似したため、本試験で使用したデンフ。
ンの RS含量は、 Prosky法
7
3
1
4
) で測定した食物繊維含量として規定した。その結果、
CSに RSは検出されなかった
5
0g
/
k
gの RSを含んでいた。 また、吉田らの方法
が
、 HASは 2
9
8
)
に従い凍結乾燥卵白
0
0Cで 3
0分間湿熱処理することにより人工的にレジスタントプロテインを調製し
を1
0
た (
a
r
t
i
f
i
c
i
a
lr
e
s
i
s
t
a
n
tp
l
叫e
i
n
;ARP)
0
ARPの見かけ の消化率は 6
30/
0で
、あった。
2
.動物実験
0
実験動物は、 SD系雄ラット(日本エスエノレシ一、浜松)を用い、室温 23+1C、相
0
"
'
7
0
%、 1
2時間の明暗周期 (
8
:
0
0~こ点灯)の条件下、ステンレス製ケージ内
対湿度 6
で個別飼育した。 ラットは搬入後、少なくとも 5日間は標準飼料(カゼインー C
S飼料、
T
a
b
l
e1
9
)を与えた後、体重を基準に振り分 け試験飼料および水道水を自由摂取させた。
飼育期間中、体重および飼料摂取量は、毎日、飼料を交換する直前に記録した。
なお、動物実験は、山之内製薬動物実験管理委員会において定められた「動物実験に
関する指針」に則って実施した。
実験1. CS摂取時のラット盲腸内発酵に対するカゼイン、 RP
、ppおよび S
Pの影響
体重 201~226 gのラット
2
4匹を馴化した後、 4群に分けカゼイン、 RP、ppおよび SP
のいずれかを 2
5
0g
/
k
g含む飼料を 1
5日間にわたり自由摂取させた。この実験で、は炭水
S単独とし、タンパク質源以外の飼料組成は標準飼料(カゼインー CS飼料、
化物源を C
T
a
b
l
e1
9
) に従った。糞便は試験終了直前の 3日間に採取し、凍結乾燥後、・2
0Cで保存
0
した。飼育終了後、ラットはジエチノレエーテル麻酔下にて 1
3時から 1
6時の間に屠殺
0 ml スクリューキャップ付
し、盲腸は摘出した後、重量を測定した。盲腸内容物は 5
きの容器に移し、有機酸測定時まで2
0Cで保存した。盲腸組織は生理食塩水で、洗浄し、
0
ろ紙で、余分な水分を吸い取った後、重量を測定した。
実験 2
. HAS摂取時のラット盲腸内発酵に対するカゼイン、 RP、PPおよび S
Pの影
響
体重 170~ 1
8
3gのラット
2
4匹を馴化した後、 4群に分けカゼイン、 RP、ppおよび SP
のいずれかを 2
5
0g
/
k
g含む飼料を 1
0日間にわたり自由摂取させた。タンパク質および
S飼料、 T
a
b
l
e1
9
) に従った。HASは C
Sと置
炭水化物源以外は標準飼料(カゼインー C
2
0
0g
/
k
g飼料)した。糞便の回収および分析、ならびに盲腸内容
き換えることで添加 (
7
4
物の採取および分析は実験!と同様に行った。
. HAS摂取時のラット盲腸内発酵に対する飼料中 pp濃度の影響
実験 3
体重 170~183 gのラット 2
4匹を馴化した後、 6群に分け、 PPを飼料 1k
g当たり O、
1
0、3
0、5
0、 1
0
0および 2
5
0g含む飼料のうち、いずれかを自由摂取させた。 タンパク
質および炭水化物源以外は標準飼料(カゼインー CS飼料、 T
a
b
l
e1
9
) に従った。孔
t
¥Sは
CSと置き換えることで添加 (
2
0
0g
/
k
g飼料)した。PPはカゼインと置き換えることに
より、段階的に添加し、飼料中のタンパク質含量は一定 (
2
5
0g
/
k
g飼料)にした。すな
わち、 25%PP飼料はカゼインを含んで、いない飼料である。試験試料の採取および分析
は実験 lと同様に行った。
実験 4
. 回一直腸吻合ラットにおける HAS摂取時の糞中への窒素およびデンプン排
池量に対する飼料中 pp濃度の影響
a
b
l
e19) で期 11 化したラット 36 匹(体重 200~250 g
)
標準飼料(カゼインー CS飼料、 T
をN
i
s
h
i
m
u
r
ae
ta
.
l41)の方法に従い、回-直腸吻合術に供した。手術後、 24時間ラット
は絶食、絶 7
,Kに保った。また、手術後 3 日間は、毎日 10μlのマイシリンゾル(東洋
醸造、静岡)を筋注した。 この後、 7~10 日間は標準飼料(カゼインー CS 飼料、 Table 1
9
)
を摂取させたが、 5日目には成長速度は一定 (
5
7g/日)に達していた。手術後の回復
期を経て、体重が 2β50~
寸、
た 6種の実験飼料のうちのいずれかを 9 日問摂取させた。試験終了直前の 3 日間には
0
2
0Cで保存した。
糞便を採取し、凍結乾燥した後、 -
. HAS摂取時のラット盲腸内発酵に対する ARPの影響
実験 5
体重 190~215 gのラット 1
8匹を馴化した後 3 群に分け、試験飼料をそれぞれ 1
0日
間摂取させた。タンパク質および炭水化物源以外は標準飼料(カゼイン-CS飼料、 T
a
b
l
e
1
9
) に従った。2群には、タンパク質源として 250g
/
k
gのカゼインを、また炭水化物源
6
5
5g
/
k
g
) または HAS (
2
0
0g
/
k
g
) を摂取させた(以下、カゼインー CS飼料
として CS (
またはカゼ、
インー HAS飼料と表現する) 他の 1群には、飼料 1kg当たりカゼイン 1
9
0
0
g、
ARP6
0gならびに、 HASを 2
0
0g含む飼料を摂取させた(以下、カゼイン+ARP-HAS
飼料と表現する)
0
HASは等量 (
2
0
0g
/
k
g飼料)の CSと置き換えることで添加した。
7
5
~
試験試料の採取および分析は実験 1と同様に行った
O
3
.分析方法
盲腸内 pHは、内容物をホモジネートし、一部を等重量の蒸留水で希釈した後、コン
パクト pHメー ター(モデ、ル C
l、堀場、東京)にて測定した。盲腸内の有機酸(ギ酸、
酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、 n
-酪酸 イソ吉草酸、 n・吉草酸、クエン酸、リンゴ酸、
コハク酸、乳酸)量は、 S
h
i
m
p
a
c
kSCR-1
02Hカラム(30cm,内径 8mm,島津製作所、
京都)および電気伝導度検出器 (CDD
・
6A、島津製作所、京都)を装着した HPLC(LC-6A、
島津製作所、京都)を用い、内部標準法によって測定した。すなわち、 3
0
0mgの盲腸
内容物を 0.
7ml の蒸留水で、懸濁し、さらに 0
.
3mg
/
mlのクロトン酸(内部標準)を含む
10mM水酸化ナトリウム溶液 1mlを加え均一化した後 、1
0,
0
0
0 X gで 1
5分間遠心
し上清を得た。 この上清 1ml にクロロホルム 1ml を加え、十分混和し、さ らに遠心
分離によって得られた水層 3μl を分析に供した。糞便中の窒素含量は K
j
e
l
d
a
h
l法 29)
によって測定した。糞便中のデンフ。
ン含量は、 1
0
0Cで 3
0分間、ジメチルスルホキシ
0
ド中で加熱した後、市販キット (MegazymeT
o
t
a
lS
t
a
r
c
hA
s
s
a
yK
i
t、MegazymeA
u
s
t
r
a
li
a、
o
r
i
t
ae
ta
l
S
y
d
n
e
y、A
u
s
t
r
a
l
i
a
)を用いて測定した 25)。糞便中の中性ステロールの分析は、 M
4
6
)
の方法に従い、内部標準として 5α ーコレスタンを用い、糞便中含量を算出した。
本試験では、コレステロールおよびコプロスタノールの合計を中性ステロールと規定
した。
4
.統計学的解析
各実験群の平均値の差は ANOVAを行った後、 DUl
1c
a
nの多重比較検定
検定した。B
a
r
t
l
e
t
t検定
8
2
)
3
3
)
によって
により分散が均一でない時には、データを対数変換し、
ANOVAで分析した後、多重比較を行った。コプロスタノーノレ/コレステロール比は、
データを対数変換した後でも分散が均一でないため、 K
r
u
s
k
a
l
-W
a
l
l
i
s およ び
・
110Vt
w
o
s
a
m
p
l
e検定 82) によって解析し、メジアンおよび範囲で示した。
K
o
l
m
o
g
o
r
o
v
S
m
i
l
全ての検定は p
< 0.05の時、有意差ありとみなした。盲腸組織重量、内容物、pH、
有機酸、ならびに糞中 へのデンプンおよび窒素排池量と 、食事中タンパク質レベルとの
相関は、回帰分析を行った
。
3
4
)
7
6
-
T
a
b
l
e1
9
.C
o
m
p
o
s
i
t
i
o
no
fc
a
s
e
i
n
c
o
r
n
s
t
a
r
c
h
b
a
s
e
dd
i
et
.
:
I
ngr
e
d
i
e
n
t
g
l
k
g
C
a
s
e
i
n
C
o
r
n
s
t
a
r
c
h
C
o
r
no
i
l
M
i
n
e
r
a
lm
i
x
t
u
r
eI
V
i
t
a
m
i
nm
i
x
t
u
r
eI
250
655
50
35
1
0
B
a
s
e
do
nAIN-76.
I
7
7
実験結果
実験1.
CS摂取時のラット盲腸内発酵に対するカゼイン、 RP、ppおよび S
Pの影響
実験 lでは、糖質源として
CSを、またタンパク質源として 4種(カゼイン、 RP、
p
pおよび S
p
)のうちのいずれかを摂取させた。飼料摂取量は群問で差が認められなカ
ったが、体重増加量は
p
p飼料群がカゼインおよび S
P飼料群に比べ有意に低い値を示
T
a
b
l
e2
0
) 0 盲腸組織重量は群間で差が認められなかったが、盲腸内容物重量は
した (
p
p飼料群が他の 3群に比べ有意に高い値を示した (
T
a
b
l
e2
0
) 盲腸内 pHは P
P飼料
0
群が最も低く、カゼ、イン飼料群が最も高く、他の 2群はこれらの中間で、あった。
盲腸内の主要な
SCFAは、全群とも酢酸で、あったが、カゼイン飼料群の酢酸プール
サイズは他の 3群に比べやや低し¥傾向を示したい=0
.
0
9
7、T
a
b
l
e2
0
) 。 プロピオン酸
フ。ーノレサイズ、は群間で、差がなかった。盲腸内のコハク酸プールサイズはカゼイン飼料
Pおよび RP飼料群で有意に低い値を示したが、これら 3群の酪酸プールサ
群に比べ S
P飼料群の酪酸プールサイズは群問で最も高い値を示
イズに差は認められなかった。 P
したが、コハ ク酸プールサイズもカゼ、イン飼料群とほぼ同等で、比較的高い値を示した。
実験 2
.
HAS摂取時のラット盲腸内発酵に対するカゼイン、 RP、PPおよび S
Pの影
響
P
P飼料群の飼料摂取量および体重増加量は群間で最も低い値を示した (
T
a
b
l
e2
1
)。
RPおよび S
P飼料群の飼料摂取量は群間で最も高い値を示し、カゼイン飼料群は中間
の値を示した。S
Pおよびカゼイン飼料群の体重増加量は群問で最も高い値を示したが、
RP飼料群との聞に有意な差は認められなかった。HAS飼料を摂取した時の盲腸組織重
量 (
T
a
bl
e2
1
) は、全ての試験群で、
CS飼料を摂取したラットの値(実験 l
、T
a
b
l
e2
0)
に比べ 2倍程度高い値を示した。盲腸組織重量は、 RPおよび
カゼイン飼料群で最も高く、また
P
P飼料群で最も低く、
S
P飼料群ではこれらの中間で、あった。比t¥S飼料を摂
T
a
bl
e2
1
) は全ての群で、
取した時の盲腸内容物重量 (
CS飼料を摂取したラッ ト(実
験l
、T
a
b
l
e2
0
) に比べ数倍高い値を示した。各群の盲腸内容物重量は組織重量と同様
の傾向を示し、 RPおよび P
P飼料群で最も低く、カゼイン飼料群で最も高く、また
飼料群ではこれらの中間で、あった。 HAS飼料の摂取により盲腸内
S
P
p
H(
T
a
b
l
e2
1)は
、
CS飼料を摂取したラット(実験 l
、T
a
b
l
e2
0
) に比べ著しく低い値を示し、 RPおよび
78
『司.
.
.
.
PP飼料群の盲腸内 pHは、カゼインおよび SP飼料群 に比べ低い値を示した。また盲腸
1
'
=ー
0
.
7
1
1、p<0
.
0
0
0
1
)および内容物重量 (
,
.=
ー0
.
8
4
9、p<0
.
0
0
01
)
内 pHは盲腸組織重量 (
に対して負の相関を示した。
CS飼料を用いた実験 lと同様に、 HAS飼料を摂取したラットの盲腸内の酢酸および
プロヒ。
オン酸プーノレサイズは飼料中タンパク質による影響を受けなかった (
T
a
b
l
e2
1
)。
しかし、酪酸およびコハク酸プーノレサイズは群間で有意な差が認められた。カゼイン飼
料群のコハク酸プーノレサイズは他の 3群に比べ有意に高く、一方、 RPおよび PP飼料
群では最も低い値を示したが、盲腸内コハク酸濃度と盲腸内 pHとの聞には負の相関が
認められたか=ー 0
.
6
7
5、p<0
.
0
0
0
3
) 0 酪酸プールサイズはカゼイン飼料群で最も低く、
PP飼料群で最も高い値を示した。
カゼイン飼料群の糞便乾燥重量は他の 3 群に比べやや低い値を示したが、有意な差
はなかった (
T
a
b
l
e21
) 0 糞中窒素排f
世量にも同様の傾向が認められ、カゼイン飼料群
は群問で最も低い値を示し、一方、 RPおよび PP飼料群はカゼイン飼料群に比べ有意
に高い値を示した。また、 SP飼料群の糞中窒素排池量はこれら試験群の中間で、あった。
糞中デンプン排世量は、カゼイン飼料群が群間で最も高く、 PP飼料群で最も低く、ま
た SP飼料群ではこれらの中間で、あった。RP、PPおよび SP飼料群の糞中への中性ステ
ロール排池量は、カゼイン飼料群に比べ有意に高い値を示した。 RPおよび PP飼料群
のコプロスタノール/コレステローノレ比
(
1
1
10I
I
m
ol
)
はカゼイン飼料群に比べ有意に高
し1値を示した。
実験 3. HAS摂取時のラット盲腸内発酵に対する飼料中 pp濃度の影響
25%PP飼料群の飼料摂取量は群問で最も低い値を示したが、 00
/
0 および 1
%PP飼料
T
a
b
l
e2
2
) 0 体重増加量は 25%PP飼料群が
群との聞に有意な差は認められなかった (
群間で最も低い値を示したが、他の試験群間に差はなかった。盲腸組織重量は、 25%PP
飼料群が群問で最も低い値を示し、他の試験群は 2501
0PP飼料群に比べ有意に高い値を
T
a
b
l
e2
2
)0 1
% PP飼料群の盲腸組織重量は、群間で最も高い値を示したが、
示した (
50
/
0P
P飼料群との間に有意な差は認められなかった。 250
/
0P
P飼料群の盲腸内容物重量
は群問で最も低い値を示し、 00
/
0P
P飼料群を除く他の 4群との差は有意で、あった。盲腸
内 pHは 0
'
"
'
'
50
/
0 P
P飼料群が他の 2群 (
1
00
/
0お
よび、 250
/
0 P
P飼料群)に比べ有意に低い
"
"
'
50
/
0 P
P飼料群聞に有意な差はなかった。 また盲腸内 pHは 2
50
/
0 P
P
値を示したが、 0
79
飼料群で最も高い値を示した (
T
a
b
l
e2
2
)
0
飼料中 PP含量は、盲腸内の酢酸およびプロピオン酸プーノレサイズに影響を与えなか
F
i
g
.9-A
) 0 10% お
ったが、酪酸およびコハク酸プーノレサイズを顕著に変化させた (
r
'
'
5% PP飼料群に比べ有意に高
よび 25%PP飼料群の盲腸内の酪酸プールサイズは、 O
F
i
g
.
い値を示した。盲腸内酪酸およびコハク酸濃度についても同様の傾向が認められた (
9・ B) 0
糞便乾燥重量は、 100
/
0 および 2
5%PP飼料群が他の飼料群に比べ有意に高い値を示
し
、 O%PP飼料群で最も低い値を示した。飼料中 PP含量は糞中デンプン排准量との聞
に負の相関 (r=ー
0.
345、p<0
.
0
3
9
4
) を、糞中窒素排池量と の聞には正の相関 (
r= 0
.
7
7
5、
p <0
.
0
0
01)を示した。糞中への中性ステローノレ排池量および糞中のコプロスタノール
/コレステロール比
(
1
1
1
0
1
1
1
1
1
01)は飼料中 の PP含量にと
もない増加し、 50
/
0、1
0% およ
び 25%PP飼料群の糞中への中性ステロール排池量は 00
/
0P
P飼料群に比べ有意に高い
値を示した。30
/
0、1
00
/
0 および 2
50
/
0P
P飼料群のコプロスタノール/コレステローノレ比
/
0P
P飼料群に比べ有意に高い値を示した (
Ta
b
l
e2
2
)
は
、 00
0
実験 4
. 回一直腸吻合ラットにおける HAS摂取時の糞中への窒素およびデンプン排
池量に対する飼料中 PP濃度の影響
実験 3 と同様に 0
'
"
'
'
2
50/0 の PPを添加した飼料を回直腸吻合ラットに摂取させた
F
i
g
.10)0 0%PP
ところ、糞中のデンプン/窒素比は飼料中 PP含量に応じて低下した (
飼料群のデンプン/窒素比は 1
8
.
5で、あったが、 25%PP飼料群では 8
.
0にまで低下した。
この変化は、糞中へのタンパク質排池量が増加したためであり、デンプン排池量に変化
はなかった。
実験 5
. HAS摂取時のラット盲腸内発酵に対する ARPの影響
カゼインー孔t¥S飼料またはカゼ、イン+ARP-HAS飼料を摂取した群の飼料摂取量は、
T
a
b
l
e2
3
) 、各群の体重増加量に差はな
カゼインー CS飼料群に比べ有意に低かったが (
かった。実験 l、2で認められた様に、カゼイン・ HAS飼料群の盲腸内容物および盲腸
組織重量は、カゼインー CS飼料に比べ有意に高い値を示したが、カゼイン+ARP-HAS
飼料群とカゼイン-CS飼料群と の聞に差はなかった。盲腸内 pHは、カゼイン・ HAS飼
料で最も低く、カゼイン+ARP-HAS飼料で中間の値を、また、カゼインー CS飼料では
80
‘司."
最も高い値を示した。
HASを摂取した群の盲腸内 SCFAプーノレサイズおよびコハク酸プールサイズは、 C
S
を摂取した群に比べ有意に高い値を示したが、カゼインー HAS飼料群とカゼイン+ARP
-HAS飼料群の比較では、 ARPの添加により酪酸のプールサイズが上昇し、逆にコノ¥
ク酸プールサイズが減少することが明らかになった。
糞便乾燥重量は、カゼインー C
S飼料群とカゼインー比札S飼料群で、は差がなかったが、
HAS飼料群では先の 2群に比べ有意に高くなった。糞中デンフ。
ン排池
カゼイン+ARP量は、カゼインーHAS飼料が他の 2群に比べ有意に高い値を示した。一方、糞中窒素排
池量は、カゼインーC
S飼料群とカゼイン・ HAS飼料群で、は差がなかったが、カゼイン+
ARP-HAS飼料群では先の 2群に比べ、 2倍以上高い値を示した。糞中コプロスタノー
ル/コレステローノレ比は、 HASを摂取した群が C
Sを摂取した群に比べ有意に高い値
を示した。
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考察
本章では、
HAS摂取時に盲腸内で多量に検出されるコハク酸が、盲腸内 pH、盲腸内
容物および盲腸組織重量に与える影響について検討し、さらに、この発酵パターンの制
御(酪酸産生量の増大)を目的とした栄養素(難消化性タンパク質)の検索を行った。
ラット
93)
またはブタ
比
I
¥Sの摂取は、
9
9
)
に比I¥Sを摂取させた従来の試験結果から予測されたとおり、
CSの摂取に比べ、盲腸内の SCFAフ。
」ールを有意に高くした (
T
a
b
l
e
s2
0、
21
) 。この 比
I
¥S摂取による S
CFAプールの増大は、 HASに大量の RSが含まれること
と符号しており、
HAS中の RSが腸内細菌叢にとって良い発酵基質であることを示し
ている。
CFA量を指標に
これまで HASの盲腸内発酵は酢酸、プロピオン酸、酪酸および総 S
論じられており
93、99
)
た。 しかし本章では、
、その他の重要と考えられるカパノ
ボン酸についての記載はなかっ
CS飼料においても盲腸内にはかなりの量のコハク酸が存在し、
その量は飼料中のタンパク質源にもよるが、酪酸と同等、またはそれ以上であることが
明らかになった (
T
a
b
l
e2
0
)0 一方、 HASとともにカゼインを摂取した群(カゼイン -HAS
飼料群)の盲腸内で最も多量に検出されたカルボン酸は
SCFAではなくコハク酸であ
T
a
b
l
e2
1
) 。 カゼ
り、この時のコハク酸プールサイズは約 600μmol にまで達した (
インー HAS飼料群の盲腸内コハク酸レベルは酢酸レベルと同等であったが、タンパク質
源を
RP、P
Pあるし¥は S
Pにした群では、コハク酸は減少し、酪酸が増大した (
T
a
b
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)
0
なかでも RPは著しくコハク酸量を低下させ、
P
Pは酪酸量を増大させた (
T
a
b
l
e2
1
)。
これらの結果から、タンパク質源が孔I¥Sの盲腸内発酵に質的な影響を及ぼすことは明
らかであり、この原因には各タンパク質の消化率の違いが関与していると考えられた。
、P
Pま
糞中コプロスタノール/コレステロール比は、カゼインー HAS飼料群に比べ RP
たは
S
PHAS飼料群で高い値を示したが (
T
a
b
e
I
2
1
) 、これは、盲腸内に窒素(未消化
タンパク質)が供給されたことにより、 RP
、P
Pおよび S
P
比I¥S飼料群では盲腸内細菌
種の相対的割合が変化したことを示している 。 したがって、
RP、P
Pおよび S
P
H
A
S飼
料群と、カゼイン・ HAS飼料群における発酵パターンの差は、盲腸内細菌叢の変化に起
因すると考えられる 。
カゼインー HAS飼料群では大量のコハク酸蓄積が認められるわけであるが、現在のと
ころその理由は明らかでない。コハク酸は腸内細菌の正常な発酵産物であり、プロピオ
8
8
司
司
.
,
ン酸合成の中間体でもある 8
7
)
O
R
Pまたは P
P-HAS飼料群では、コハ ク酸プーノレサイ
ズが低下し、逆に酪酸プーノレサイズは増加するが、プロピオン酸プーノ
レサイズは変化し
なかった (
T
a
b
l
e21)
0
したがって、カゼインー孔t
¥S飼料群で認められたコハク酸の蓄
積は、代謝中間体の異常蓄積によるものではないと考えらえる。しかし、このコハク酸
Hである。HAS
の蓄積は大腸内環境を考える上で重要である。最も顕著なのは盲腸内 p
飼料群の盲腸内 p
Hは C
S飼料群に比べ極めて低い値を示し (
T
ab
le
s20、21)、カゼイ
P、P
Pまたは S
P
H
A
S飼料群の盲腸内 pH とコハク酸プーノレサイズとの間には負
ン
、 R
の相関が認められた (
r=ー
0.
6
7
5、p<0
.
0
0
03
) 。盲腸および結腸でのコハク酸吸収の正
確な機序はあまり知られていないが、コハク酸は乳酸と同様に吸収速度は遅いと考え
8
)
O この前提にもとづけば、 HASを摂取した群で、認められた盲腸内 p
Hの
られている 8
低下はコハク酸の蓄積によると考えられる。 HAS摂取によるコハク酸プーノレサイズの
増大は、盲腸組織重量にも影響を与えているようである。すなわち、比企 S 摂取時の盲
S摂取時の約 2倍で、あった (
T
ab
le
s20、21
)
。これまで、ベクチンのよう
腸組織重量は C
な発酵性の高い炭水化物はラットの盲腸粘膜組織(上皮細胞)の増殖を促進するが、こ
C
FAによる局所的な効果によるものと考えられていた
れは S
・
90,9
1)
。 しかし、カゼイン
HAS飼料群の盲腸組織重量は、盲腸内の総 SCFA量(酢酸、プロピオン酸および酪酸
の合計
(
T
a
b
l
e2
1)が同等で、あった飼料群 (
RPまたは P
P-比l
¥S飼料群)に比べ高い
値を示した。本章で得られた結果、すなわち、 HASを摂取したラットの結果から考え
CFAのフ。
ールサイズの増大だけでは、盲腸組織重量の増加を説明できそうにな
ると、 S
い。コハク酸のプーノレサイズが大き いことそれ自体が、あるいはオリゴ糖を摂取させた
ラットで報告されている様に
8
0
)
盲腸内 p
Hの低下が、盲腸組織の増殖を刺激している
Hと負の相関を示し、盲腸
のかもしれない。この仮説は、盲腸の組織重量が、盲腸内 p
内コハク酸量とは正の相関を示すということからも支持される (
T
a
b
l
e2
1)。
本章では、S
P(
30
.
7
1
1
1g/日)、 R
P(
15.
6mg/日)、または P
P(
5
.
6mg/日) ーHA
S飼料
群の糞中デンプン排池量が、カゼイン (
5
0
.
31
1
1g/日) ー比l
¥S飼料群に比べ有意に低い値
Ta
b
le21)0 この結果は、 RPおよび P
Pが
、 HASの大腸内
を示すことを明らかにした (
での発酵を促進するのに有効であることを示唆しており、上述した様な盲腸内 S
CFA
のパターンの変化に現れていた。 さらに、 R
P(
8
2
.
7
1
1
1g/日)、 P
P(
8
0.
61
1
1g/日)または
S
P(
6
2.
9mg/日)四HAS飼料群では、カゼ、
イン(30.
2mg/日) -HAS飼料群に比べ、糞中
世量が高い値を示した (
T
ab
l
e21
)
窒素排f
0
飼料中 P
P濃度を段階的に増加させること
8
9
『喝司'
で、糞中デンプン排池量が低下し、逆に糞中窒素排池量は増加する傾向が認められたが
(
T
ab
le2
2
) 、これらの結果は盲腸内でのデンプン発酵:効率が改善されたことを示して
いる。また、発酵効率が改善されたことで、盲腸内有機酸パターン、すなわちコハク酸
F
i
g
.
9
)。 したがって、 RPま
および酪酸の濃度および、フ。
ーノレサイズは大きく変化した (
たは ppを同時に摂取することで、比企Sの発酵効率は改善され、酪酸の産生量は増大し、
P飼料群では糞中窒
またコハク酸の産生量は減少すると考えられた。 RP、ppおよび S
素排池量の増大が認められたが、これは未消化タンパク質だけでなく、排池される菌体
タンパク質量の増加をも反映していると思われる
1
0
0,1
0
1
)
。 しかし、糞中窒素排池量に
対する未消化タンパク質と細菌タンパク質の関与の程度については今後の課題である。
腸内細菌の主要な発酵基質は炭水化物と窒素であり、当然、細菌が増殖するとタンノ 。
ク質合成の要求が高まる 。内因性タンパク質(例えば消化酵素や脱落した粘膜細胞)を
含め、小腸で、消化されないタンパク質は、大腸での発酵基質となる
1
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1・1
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)O
しかし、
HAS のように発酵性に富んだ炭水化物が多量に存在する時、カゼ、インのような消化率
の高いタンパク質が唯一のタンパク質源である場合には、大腸内での急速な細菌増殖
を維持するための窒素源が不足すると考えられる。 この考えは、ラットに高濃度の RS
を摂取させた実験において、血流から盲腸内へのアンモニア流入量が大幅に増加する
としづ事実からも支持される
8
5
)O
また、 HASの発酵速度は比較的速いため、この窒素
欠乏はさらに悪化すると考えられる
8
4
)
。 したがって、カゼイン四HAS飼料群では炭水
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"
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"
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25
%P
P を添加した
化物と窒素の比がアンバランスになってくる可能性がある 。 0
HAS飼料を摂取 したラッ トの回腸から排准されるデ、ンフ。ン/窒素比は、飼料中 ppレベ
ノレとともに顕著な変化を示した (
F
ig
.
1
0)0 P
Pの添加は、カゼイン-HAS飼料群での炭
水化物/窒素比のアンバランスを修正するものと考えられる。消化率の低いその他の
タンパク質(すなわち RPおよび Sp) もこのアンバランスを修正すると考えられる。
CE
ム
市販の粉末飼料 (
日本クレア、東京)に HASを添加 (
20
0g
/
k
g飼料)した実験
では、盲腸内の有機酸はほとんど全てが S
CF
A であり、コハク酸は検出限界以下であ
9
6
)O 市販の飼料には 4
0
/
0 以上の粗繊維と 2
0
"
'
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30
% のタンパク質が含まれてい
った句、
るが、このタンパク質の中には植物細胞のマトリックスに捕えられ、小腸で、全く消化さ
れないものもある。さらに、市販の飼料中に存在する発酵されにくい繊維(例えばリグ
ノセルロース)は、細菌に接着表面を提供することによって細菌の増殖を促すと考えら
れる。したがって、盲腸内でコハク酸が蓄積するのは炭水化物/窒素比がアンバランス
9
0
だか らであり、それが盲腸内細菌叢に影響を与えると考え るのは妥当である。この仮説
RPHAS飼料群では、盲腸内のコハク
は、カゼイン四 HAS飼料群に比べ、カゼイン+A
Hが上昇、また、 SCFAの産生量が改善されたことか ら
酸量が有意に低下し、盲腸内 p
T
a
b
l
e2
3
) 0 したがって、未消化で大腸に流入するタンパク 質、すなわ
も支持される (
ち、レジスタントプロテインおよびレジスタントペプチドは、炭水化物/窒素比のアン
Sの盲腸内での発酵を制御するのに重要な役割を果たすと考えら
バランスを修正し、 R
れる。
G
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l104) および C
h
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く0 と C
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g
sl05) は、西洋食を摂取している人々では、
1日当たり 1
2 g以下の未消化タンパク質が大腸内に流入すると報告している。 また、
メタアナリシスの結果、タンパ ク質摂取量の増加は結腸癌のリスクを増大させること
が明らかにされている
l
)O
これは、フェノール、 p-クレゾール、インドール、アミンお
よびアンモニアなどの有害と認められているタンパク質代謝の副産物が、結腸内に多
く蓄積するためであろう
。これらのデータはラットにおける本章の結果とは対照的
1
0
6
)
であり、ヒトの食事における R
Sとレジスタントプロテインのバランスについて考える
CFAを産生する RSの有益性を評価してい
時には注意しなければならない。 しかし、 S
S (通常、飼
る実験のほとんどは、消化率の非常に高いタンパク質と、比較的大量の R
料の 1
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3
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/
0
) を含む精製あるいは半精製飼料をラットに摂取させ行ったものである。
したがって、実験をデザインする時には、使用するタンパク質源について、特に注意し
なければならない。
これまで、食事性タンパク質の質の評価では、消化性とアミノ酸組成のみが重要な
因子であると考えられてきた
。 しかし、レジスタントプロテインおよびペプチドは、
1
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7
)
Sとの相互作用を通して重要な生理学的役害J
I
大腸組織における酪酸の供給において、 R
を果たしていると推測された。
9
1
総括
従来、デ、
ンフ。
ンは小腸管腔内または小腸粘膜上で、ほぼ 1000
/
0
がグ、
ルコースに分解され
9
8
0年代初頭、食物繊維の定量方法が改良さ
吸収されると考えられてきた。 しかし、 ]
れる途中で食物繊維として定量されるデンプン (RS) の存在が明らかになった。現在
RSは
、
「健康なヒトの小腸内で、消化されないデンプンおよびデンプンの部分分解物の
総称」と定義されており
5
)
、食物繊維と類似の消化管内動態を示し、また類似の生理
nνi
v
oでの消化率をはじめとした
作用を有することが明らかになりつつある。しかし、 i
RSの基礎的データは少ないのが現状である。一方、食物繊維の重要性は欧米諸国と同
様に本邦においても十分に認識されており、食物繊維摂取量を増加させる目的で食品
中への食物繊維強化が行われているが、食感を損なうなどの理由からこの試みは必ず
しも成功していなし 10 しかし、 RSのうちタイプ 2に分類される比L¥Sは
、 CSと全く同
様の食感を示し、さらに糊化温度が 1
5
4度以上と高く通常の加熱調理後も高い RS含量
を示す 20)O したがって、比t
¥Sは、これまでの食生活を極端に変化させることなく、自
然に十分量の RS摂取を可能にするものと期待される。そこで本研究では RS源として
比企 Sを用い、 RSの食物繊維様作用を明らかにする目的で、糖質代謝、脂質代謝、糞便
排准および大腸内発酵に及ぼす影響について、第 I章から第 V 章にわたり、詳細に検討
した。
第 I章では、 HAS の生理作用を予測するうえで重要な消化管内動態を知るため、回
-直腸吻合ラットを用いて HASの小腸内消化率を求めた。この結果、 HASの小腸内消
化率はおよそ 70%で
、 CS (
]000
/
0
) に比べ明らかに低く、 HASは摂取エネルギー量の制
限に寄与することを明らかにした。 したがって、普段の生活において十分量の HASを
食事に取り入れれば、体脂肪率、血中の中性脂肪濃度の抑制をもたらし、ひいては肥満
の防止にも役立つと考えられた。そこで、第 E章では、比較的低用量から高用量(飼料
中 ]00
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4
00
/
0
) までの HAS をラットに摂取させた時の脂質代謝および体脂肪蓄積に
ついて詳細に検討した。この結果、比絡を摂取した群 (10%、20% および 40%HAS飼
料群)では HAS 非摂取群 (SU または CS 飼料群)に比べ、体脂肪/体たんぱく質比
および副皐丸脂肪組織重量の有意な低下または、低下傾向が認められた。また、血清脂
質(トリグリセリド、コレステローノレおよびリン脂質)濃度ならびに肝臓中トリグリセ
92
リド含量は、飼料中 HAS濃度の増加に伴い低下する傾向が認め られた。 HASは、摂取
エネノレギー量の制限に加え、食後血糖値の急激な上昇の抑制、すなわちエネノレギー供給
速度の低下を介して、血中トリグリセリドおよびコレステロール濃度を低値に保ち、さ
らに体脂肪の蓄積を抑制することが明らかとなった。
第 I章および第 E章の結果から、 HAS の長期的(継続的)な摂取は肥満および総摂
取エネルギー量の増加との関連が指摘されているインスリン非依存性糖尿病および乳
ガンなどに対して予防効果を示すことが推測された。なかでも乳ガンは、近年、本邦に
おいて食生活の西欧化に伴い増加傾向にあり、一方で、食物繊維を豊富に含む食事によ
り、そのリスクが低下することが示唆されている
60,61)
。そこで、第田章では、乳ガン
モデルのうち、カロリー依存性 66) およびエストロゲン依存性 59) の増殖を示し、また、
インスリンが腫療の増殖因子の一つである 67)D~在BA 誘発ラット乳ガンモデルを用い、
比
L
¥Sの腫蕩増殖の抑制効果について検討した。 この結果、 HAS飼料群では、 CS飼料
群に比べ、乳ガン発症の時期が遅延し、また、担ガンラット当たりの腫蕩数および腫蕩
重量が低下することが認められた。血中エストラジオール濃度および糞中エストラジ
オーノレ排世量は、比企S飼料群と CS飼料群の問で有意な差は認められなかった。一方
、
食後血糖値上昇は、 HASを胃内に経口的に投与した群が、 CSを投与した群に比べ明ら
かに低い値を示した。HAS はエストロゲ、ン代謝には影響を与えず、緩和なエネルギー
摂取量の制限および食後血糖値(インスリン値)の上昇抑制により乳ガンの増殖を抑制
することが示唆された。
R
S
) は、食物繊維と同様に大腸内容物の重量および体積
大腸へ流入したデ、ンフ。
ン (
(カサ)を増大させることで排便反射を促し排便を促進すると考えられるが、 RSの一
部(または大半)は、腸内細菌により発酵を受け SCFA を含む有機酸やガスへと変換
されるため、デンプン自体によるカサの効果はさほど期待できなし 1かもしれない。一方
、
食物繊維は発酵を受け腸内細菌の増殖を促進し、その結果菌体重量が増加することで
糞便量が増加すると報告されている
激が報告されていることから
1
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O
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また、 SCFAによる大腸組織の嬬動運動の刺
、RSは、菌体の増加によるカサの増大に加え、 SCFA
の作用によって排便を促進する可能性がある。そこで、第 N章では、 HAS の排便促進
効果について調べるため、ラットに比怖を含む飼料を摂取させ、糞便量、盲腸内容物
重量、盲腸内での SCFA を含む有機酸の産生量および糞中への菌体排池量について検
討した。この結果、 HASの排便促進作用は、大腸に流入した HASが腸内細菌の発酵基
質となり、菌体の増殖を促し大腸内容物のカサを増加させることによって発現すると
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) の HAS摂取時には、総 SCFA量を
考えられた。また、比較的多量(飼料中 2
上回るとコハク酸が検出され、このコハク酸は大腸内で浸透圧源となり大腸管腔内の水
分量を増加させることで大腸内容物のカサを増大させると推測された。
ta
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.80)は、難消化性オリゴ糖をラットに摂取させ、盲腸内 pHおよび盲
最近、 Hoshie
腸内有機酸量について検討しているが、盲腸内 pHの低下には SCFAではなく、コハク
酸の貢献度が大きく、また、コハク酸は盲腸組織の増殖を刺激している可能性があると
推測している。第 IV章の結果、すなわち、比t¥.S を摂取したラットの盲腸内には SCFA
量を上回る多量のコハク酸が検出されたことを勘案すれば、 HAS 摂取時には、コハク
酸が盲腸内 pH、盲腸内容物および組織重量などの盲腸内環境を変化させている可能性
がある。そこで、第 V章では、 HAS摂取時の盲腸内コハク酸量が盲腸内環境に与える
影響について検討した。この結果、コハク酸は盲腸内 pHを低下させることが明らかに
なった。また、多量のコハク酸ならびに、低下した盲腸内 pHは盲腸組織を肥大化させ
ることが示された。 さらに第 V 章では、 HAS の盲腸内発酵の制御を目的とした栄養素
の検索を行った結果、 HAS ~こ加え難消化性タンパク質(レジスタントプロテイン)を
同時に摂取することでコハク酸産生量は低下し、逆に、生理活性の高い SCFA、特に酪
酸産生量を格段に増加させることが可能であることを明らかにした。
以上、第 I章から第 V章にわたり、 RS源としての HAS の生理作用について詳細に
検討した結果、 HAS は食物繊維と同様に、脂質代謝および糖質代謝へ影響を与え、摂
取エネルギー量の制限、エネルギー供給速度の低下(食後血糖値の上昇抑制)を介して、
生理効果を発現し、また、 HAS は大腸内で発酵基質となり菌体の増殖を介して大腸内
容物を増加させ、排便を促進することが示された。 さらに、 HAS に加えレジスタント
プロテインを同時に摂取することにより、盲腸内で酪酸産生量が格段に増加すること
が明らかとなった。
現在、本邦での l 日当たりのデンプン摂取量を 140g前後とし、 C
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11)の
試算にもとづき全デンプン摂取量の 5
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0 が RS と仮定すれば、本邦における!日当た
りの RS摂取量はおよそ 7g になる。これは現在の食物繊維摂取量から比較すると無視
できない量である。食物繊維と異なり、食品に添加しても食感を著しく損なうことのな
い HASは、肥満、糖尿病および大腸ガン等の予防に適した食品素材であると考えられ
た。
94
謝辞
本研究を遂行するにあたり、終始多大なるご指導とご鞭援を賜り、また、本論文の
作成にあたり、ご指導ならびにご校閲頂きました愛媛大学農学部教授海老原清
先
生に衷心より感謝申し上げます一。
本研究の機会を与えられ、また種々のご教示を賜りました大妻女子大学教授
修八
桐山
先生に深甚なる謝意を表します。
過分のご便宜ならびにご配慮を賜りました山之内製薬株式会社コンシューマー製品
研 究 所 長 斎 藤 武 博 士 に 感 謝 の 意 を 表 し ま す。また、本研究を行うにあたり終始あ
たたかく親身なご指導を頂きました山之内製薬株式会社コンシューマー製品研究所
森 田 達 也 博 士 に 心 か ら 感 謝 致 し ま す。
本研究は山之内製薬株式会社コンシューマー製品研究所探索研究グ、
ノレーフ。
で、
行った
ものであり、当グ、
ルーフ。
の皆様のご協力を得て遂行することができました。 大橋
氏、猪飼利圭氏、長谷耕二
氏に感謝の意を表します。また、常にあたたかい励まし
を頂きました東京農業大学名誉教授
先生に深謝致します。
晃
五島孜郎
先生、ならびに熊本大学
北野隆雄
文献
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J Cance
ヘ69,937-942(1994).
2
) 平成 7年 版 国 民 栄 養 の現状(厚生省保健医療局健康増進栄養課監修) ,第一出版,
東京, 1
9
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