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第13回レスキューロボットコンテストにおける 計算機システムと競技分析

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第13回レスキューロボットコンテストにおける 計算機システムと競技分析
第 13 回レスキューロボットコンテストにおける
計算機システムと競技分析
⃝ 小枝 正直(大阪電気通信大学),小島 篤博(大阪府立大学),
山内 仁(岡山県立大学),桝永 沙織(レスキューロボットコンテスト実行委員会),
レスキューロボットコンテスト実行委員会
Summary of Computer System for 13th Rescue Robot Contest
⃝ Masanao KOEDA, Atsuhiro KOJIMA, Hitoshi YAMAUCHI, Saori MASUNAGA,
and Executive Committee of Rescue Robot Contest
Abstract— レスキューロボットコンテストで運用している計算機システムは,レスキューダミーか
ら送信されるセンサデータに基づく救助能力の定量的評価,競技状況の管理,観客への情報提示等が
主な役割である.本報告では,第 13 回レスコンにおける計算機システム概要と主な変更点についてま
とめ,得られた競技データから近年のコンテストの傾向を分析する.
はじめに
1.
レスキューロボットコンテスト(以下,レスコ
ン)[1] は,大規模都市災害における遠隔操縦型ロ
ボットを用いた救助活動を想定したもので,要救助
者を模したダミー(通称ダミヤン [2])を優しく且
つ迅速に救助し,識別1 することが評価項目となっ
ている.
本コンテストでは我々が独自に開発している計
算機システム [3, 4] を用いて競技を運営している.
本システムではリレーショナルデータベース(以
下 DB)を中核にし,
•
•
•
•
•
•
競技状況の入力及び管理
ダミヤンから得られるデータの蓄積
得点の計算
観客への競技状況提示
ダミヤン情報の入力
識別情報の入力
等の処理を行う複数のサブシステムから構成され
ている.これまでに,仮想 OS 利用によるシステ
ム負荷 [5],ダメージインデクスとブルーフラグの
競技分析 [6],識別情報入力タイミング [7],模擬競
技によるシステム全体の負荷 [8],DB の非同期コ
ミットの有効性 [9] 等を調査してきた.
本稿では,まず第 13 回における計算機システム
概要について述べ,競技ポイント,フラグ等の傾
向についてまとめる.
1
各ダミヤンが持つ識別因子(眼の色,声の周波数,体重,
白黒マーカーパターン,眼の点滅パターン)を正答すること
でポイントが加算される.
2.
計算機システム概要
本計算機システムは以下のサブシステムで構成
され,Fig.1,2 のように接続されている.
Master Server(基幹システム)最 新 の 競 技 状
況,ダミヤンのセンサ値等を蓄積するための
DB,後述する Entry に必要な Web サーバ
と PHP 等が動作している.OS には Ubuntu
10.04 LTS Server amd64,DB には postgresql,Web サーバには apache を用いた.
Receiver(ダミヤンデータ受信システム) 1 競
技あたり 6 体(予選では 2 体)ずつフィー
ルドに配置されるダミヤンのセンサ値を,
Bluetooth により 10[Hz] で読み取り,Master
Server の DB に逐次記録する.本サブシステ
ムは Visual Basic により実装されている.
Entry(情報入力インタフェース)競技中に発生
する各種イベントやダミヤンのキャリブレー
ションデータ及びセンサ値補正情報を入力す
Master Server
HTTP
Web Server
Entry x2
Web Browser
PHP
Receiver
RDBMS
ODBC
Ident x2
Java
Damiyan
Mouse
Visual Basic
JDBC
Score
Bluetooth
Visual Basic
UDP
Display x2
Team Member
in Control Room
VGA
Visual Basic
Fig.1 計算機システム構成
Projector x2
予選・本選システムを統合 予選競技が本選に近
い形で競技が実施されるようになった.具体
的には,センサ値によるダミヤンのダメージ
評価と識別情報入力の実施等がある.これま
では予選・本選でのルールの違いが大きかっ
たため,別々のシステムを用いていたが,今
回からこれらを統合して同じシステムを利用
した.これにより開発やメンテンナンスが大
幅に省力化された.ただし,ダミヤン数や競
技順,前面プロジェクタ数等の競技・運営上
の違いは残っており,これらはシステムの運
用で適宜対処した.
Fig.2 ネットワーク構成
るインタフェースを提供する.本サブシステ
ムは PHP と JavaScript により実装されてお
り,Web ブラウザ(今回は Internet Explorer
を使用)経由で操作する.
Display(競技情報表示システム)競技会場内に
設置された大型ディスプレイ等に競技情報を
表示する.本サブシステムは Visual Basic に
より実装されている.
Ident(識別情報入力システム)競技チームが識
別情報を入力するためのシステムで,各チー
ムのコントロールルーム内に設置されている.
本サブシステムは Visual Basic により実装さ
れている.
Score(競技進行管理システム)ダミヤンの痛み
計算や競技進行の管理のためのシステムで,
必要な情報を Display へ送信する.本サブシ
ステムは Master Server 上で動作している.
Java により実装されており,DB との連携に
は JDBC を用いている.
Master Server をラップトップ PC で運用 東
京での予選が始まり,システム一式の遠距離
輸送が必要となった.そこで過重で搬送が
特に困難であった Master Server 用ワークス
テーションをラップトップ PC(Lenovo 社
製 ThinkPad T410 (CPU: Core i7 M620
(2.67GHz, 2Core x 2HyperThread), Mem:
8GB, SSD: PLEXTOR PX2D256M2S))に
変更して可搬性向上を図った.以前のワーク
ステーションと比較して,CPU クロックの
点では大差なく,運用上支障が出るような
性能の低下は感じられなかった.またサー
バ仮想化ソフトウエアには,これまでと同
様に VMware 社製 VMware ESXi5(無償
版)を用い,仮想 OS は Master Server 用の
UbuntuOS のみとした.
識別情報入力の変化
4.
第 10∼13 回における識別情報入力の入力率2 ,
各識別因子の回答率3 及び正答率4 を Fig.3 に示す.
第 13 回では識別情報入力率が 8 割を超え,識別の
認知度が一層向上したことが分かる.一方,回答
率・正答率に関しては昨年と大きな変化は見られ
ず,頭打ち状態である.特に周波数と体重の正答
率は 2 割程度に留まっており,アナログデータ処
理の難しさが表れている.
ポイント・フラグに関して
5.
Fig. 4 に予選・本選における平均ミッションポ
イント5 ,平均フィジカルポイント6 ,Fig.5 に平均
2
3.
計算機システム変更点
第 13 回レスコンでの計算機システムの主な変更
点について以下にまとめる.
識別入力数/総ダミヤン数
各識別因子入力数/識別入力数
4
各識別因子正答数/各識別因子入力数
5
ミッションポイント総和/総ダミヤン数
6
フィジカルポイント総和/総ダミヤン数
3
10th
11th
12th
13th
10th
100
100
100
80
80
80
60
60
%
20
40
40
20
20
0
11th
12th
13th
%
0
10th
12th
60
%
40
11th
13th
0
眼の色 周波数
(a) 識別情報入力率
体重
マーカ
点滅
眼の色 周波数
(b) 各識別因子の回答率
体重
マーカ
点滅
(c) 各識別因子の正答率
Fig.3 識別情報入力の変化
35
東京予選
神戸予選
本選
30
25
20
15
10
5
0
平均ミッションポイント
平均フィジカルポイント
1.8
1.6
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
Fig.4 ポイントの変化
東京予選
300
250
200
150
100
平均イエローフラグ数
本稿では第 13 回レスコンで運用した計算機シス
テムの概要と近年の競技ポイントの動向について
述べた.今後もシステムの安定性と耐障害性を高
め,観客への分かりやすい情報提示を目指す.
謝辞
コンテスト運営に必要な多数の PC や周辺機器
を毎年,無償レンタル頂いている株式会社富士通シ
ステムズ・ウエスト様に心より感謝申し上げます.
8
ミッションポイント総和/延べ競技チーム数
ミッションポイント総和/延べ競技チーム数
平均レッドフラグ数
Fig.5 フラグ数の変化
おわりに
7
ファーストミッション ファイナルミッション 平均競技ポイント
平均確定ポイント 平均確定ポイント
350
本選では平均イエローフラグ数が約半減してい
ることが分かる.これは私有地侵入時のイエロー
フラグ多発により思い切ったレスキュー活動を阻
害しているのではないか,との懸念からイエロー
フラグ提示基準を緩和したことに起因すると思わ
れる.しかし,Fig. 6 のファイナルミッション進
出チームの平均確定ポイントを見る限り,大きな
変化は見られず,妥当な判断であったと思われる.
参考文献
本選
400
イエローフラグ数7 ,平均レッドフラグ数8 をまと
めた.東京予選ではミッションポイント,フィジ
カルポイントともに低く,神戸予選との大幅なレ
ベル差が感じられる.また,本選でのポイントは
総じて高く,本選進出チームのレベルの高さが窺
える.
6.
神戸予選
50
0
11th
12th
13th
Fig.6 ポイントの変化
[1] レスキューロボットコンテスト:http://rescuerobot-contest.org/
[2] 沖,升谷 他:“レスキューロボットコンテストに
おける新レスキューダミーの提案” ,SI2006,
1G3-5, pp.294-295, 2006.
[3] 山内,小島,小枝:“レスキューロボットコンテ
スト競技運営支援システムのデータベース設
計と実装”,計測自動制御学会論文誌,Vol.47,
No.2, pp.134-139, 2011.2.
[4] 小島,小枝,山内:“レスキューロボットコンテ
ストのための競技運営支援システムの開発と
評価”,電子情報通信学会論文誌,Vol.J93-D,
No.10, pp.2317-2325, 2010.
[5] 小枝,小島,山内,桝永 他:“第 12 回レス
キューロボットコンテストにおける計算機シ
ステム”,SI2012, pp.881-884, 2012.
[6] 小枝,小島,山内,桝永 他:“第 11 回レスキュー
ロボットコンテストにおける計算機システム概
要と競技分析”,SI2011, pp.1200-1202, 2011.
[7] 小枝,小島,山内,桝永 他:“第 10 回レス
キューロボットコンテストにおける計算機シ
ステムの概要”,SI2010, pp.486-489, 2010.
[8] 小枝,小島,山内 他:“第 9 回レスキューロボッ
トコンテストにおける計算機システムの性能
評価”,SI2009, 3M3-6, pp.1999-2002, 2009.
[9] 小枝,小島,山内 他:“第 8 回レスキューロ
ボットコンテストにおける計算機システムの
性能評価”,SI2008, 3A3-4, pp.935-936, 2008.
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