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フシデ及びその進化系における形態的・生態的特徴の記載と考察

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フシデ及びその進化系における形態的・生態的特徴の記載と考察
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フ シ デ 及 び そ の 進 化 系 に お け る 形 態 的・生 態 的 特 徴 の 記 載 と 考 察 GrayTerre
フシデ及びその進化系における形態的・生態的特徴の記載と考察
―― 生物学 的 視点からみるポケモンの魅力
GrayTerre @GrayTerre
はじめに
本誌には「生物学に携わる人によるポケモン考察」の募集に賛同する形で寄稿させて
いただくこととなった。私が大学で専門とする分野とは若干のズレはあるのだが、今回
は「フシデ、ホイーガ、ペンドラーについて主になぜその姿なのか?どんな生活をして
いる の か?」に つ いて考察 し た。
なぜこのポケモンたちなのか、というのはやはり単純に彼らが好きだからというのが
大きいのだが、それとともにゲーム中でペンドラーが土煙を上げてボールから出てくる
シーンが非常に印象的だったからである。虫なのに、なんだこの重量感は、と驚いた。
現実の生き物では有り得ないことでもポケモン界ではまかり通っている。そんな不思議
の一 つ を垣間 見 た気が し て、今 回 題材 として取り上げ た。
フシデ、ホイーガ、ペンドラーはそれぞれムカデポケモンと呼ばれていることから、
ムカデをモチーフにしたポケモンであることは明らかである。しかし、多くのポケモン
がそうであるようにこれらの 3 種は実在するムカデとは明らかに異なる形態的、生態的
特徴を有している。その相違点から上記 3 種の形態、生態の詳細を記載し、ポケモンの
キャラク ター性 の 魅力を生 物 学とい う 視点から考察していきたい。
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フ シ デ 及 び そ の 進 化 系 に お け る 形 態 的・生 態 的 特 徴 の 記 載 と 考 察 GrayTerre
1. フシデ
1.1. 形態、及び名称の由来
体節数は 6。歩肢は 4 対。第 2 節が隆起している。体色は頭部、第 2 節、尾節は赤、第 3
節から第 5 節のみ緑を呈する。体節の下部及び歩肢は黒色である。円筒状の体はムカデ
より もタ マヤ スデに 似 る。
「フシデ」は「節」(節足動物であるムカデがモチーフ)、「ムカデ」、「ヤスデ」(ムカデ
に似 た節 足動 物。ヤ スデ 綱 は倍脚 綱 とも)などから命名されたと考えられる (*1)。
1.2. 生態
アニメの描写より、フシデは土壌動物であり地中で生活している。主な生息環境が地
中となると、眼が退化しているものが多いが、フシデの目は頭部と比較して大きく、ま
た地上での他のポケモンとの戦闘においても不自由なく行動している点からフシデの行
動範囲が地下に限らないことは明らかである。むしろ、ノコッチやモグリューに代表さ
れる地中性が明らかなポケモンでも目が退化している様子はなく、ポケモンにおいては
地中性でも目は退化せず、重要な器官として形質は維持されているのかもしれない。
また、1 匹のリーダー格のフシデを中心に非常に大きな集団で行動していることが確
認できる。加えて触角を震わせて「いやなおと」を使用していたため、触角は発音器官
としての役割も担っていると考えられる(触角で発音する実際の生物はイセエビなどが
挙げられる)。
「いやなおと」はホイーガとペンドラーもレベルアップで習得するため、
この 2 種も触 角 が発音 器官 と して機 能 しているのだろう。
天敵に対して噛みついて反撃をし、毒を与えることが図鑑の記述から分かるため、フシ
デには実際のムカデのように顎肢があり、毒腺も有していると考えられる。さらに「まる
くなる」
「ころがる」を覚えている点から、フシデの体は球状になれる構造であると推測
できる。この特徴は実際のムカデにはなく、まさにタマヤスデのものである。以上の点か
ら、フシデは 2 種類の防衛法を巧みに使い分けて天敵から身を守っていると考えられる。
フシデの食性はムカデの生態からおそらく肉食性であると推測されるが、オレンの実
の果汁を吸っていた点より雑食性、あるいは植食性である可能性もある。しかし、オレ
ンの実などのきのみは現在判明しているポケモン全種が摂食可能であるため、食性の議
論に持ち出すことは不適当かもしれない。また、実際のヤスデは腐食食性であり、土壌
中で暮らすフシデにとっては豊富な食糧源となり得るためこちらの可能性も十分ある。
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フ シ デ 及 び そ の 進 化 系 に お け る 形 態 的・生 態 的 特 徴 の 記 載 と 考 察 GrayTerre
2. ホイーガ
2.1. 形態、及び名称の由来
体節数は 6。歩肢は目視では確認できない。タマヤスデのように球状姿勢を取る。中
心部に眼を持つ。第 1 節と第 4 節に 1 対の長く伸びた角に近い触角を持ち、第 2,3,5,6 節に
もスパイク状の棘を有する。全体的に薄紫を呈し、各節のスパイク状の棘や触角の間に
鮮やかな赤紫色の円形の模様を有する(便宜上本稿では無回転時の通常姿勢において 1
対の長い触角が上向きに付属している節を第 1 節とし、以下時計回りに第 2 節から第 6 節
とす る)。 「ホイーガ」は「ホイール」(車輪)、「いが」(栗などの棘のある外皮)、「スティトノス
ナ・スト リーガ 」(クロ アチア 語 でゲジ )などから命名さ れた と考 えら れる (*1)。
2.2. 生態
フシデ及びその進化形の 3 種の中で、実際のムカデと最も異なる生態を呈するのはホ
イー ガだ ろう。
まず、ムカデは球状に体を丸めることをしないが、ホイーガは球状姿勢を常にとる。
体を 球 状にす る という 点 では前 述 のようにタマヤスデにむしろ近いかもしれない。
加えてまゆムカデという呼称であるが、繭とは「活動が停止または鈍い活動状態にある
動物を包み込んで保護する動物から分泌されたもの、または砂利などの体外の物質の覆
い」である(*2)。ホイーガの場合は刺激などが無い場合は動くことはないが、天敵に襲わ
れた場合などは激しく回転して攻撃をするため、活動状態は鈍いとは言えない。よってま
ゆムカデという呼称は慣習的なものであると推測され、生物学的には繭には当たらない。
また、球状姿勢であるだけでは自分から転がり出すことはできないため、何らかの方
法で重心を移動させて回転運動を行っていると考えられる。実際に「ポケモン立体図鑑
BW」においてホイーガは回転開始前に後ろにいったん仰け反るような動きをしたあと
振り 子 のよう に 重心を 前 に持って きて、さらにはそこから 跳躍 も行っている。
アニメの描写において、ホイーガは回転移動時に第 1,4 節にある長い触角の先端を接
地させるように回転していた。つまりタイヤ状の体を触角で支えて回転を行っていたの
である。しかし、これは 2 対しかない細長い触角では非常に困難な動作と考えられ、現
実的な描写ではないと考えられる。ポケモンカードのイラスト (*3) や、3DS 専用ゲーム
ソフト「スーパーポケモンスクランブル」におけるホイーガのモーションでは、アニメ
のような回転ではなく、触角を外殻に沿わせる形で折り畳んで回転する様子が表現され
てい たの で、後者 の 方が 生 態的考 察 においては信頼できるものだろう。
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フ シ デ 及 び そ の 進 化 系 に お け る 形 態 的・生 態 的 特 徴 の 記 載 と 考 察 GrayTerre
加えて注目したいのは、回転しているには外殻部分のみで、中心の眼の部分は回転し
ていない点である。外殻と本体が分離しているということが推測されるが、本体が通常
のムカデのように外骨格を持つのか、完全変態類のように軟弱な芋虫状かという 2 つの
仮説を立てられる。あくまでムカデに近い生き物として推測するため、ここでは本体は
外骨格を持つと仮定する。そうすると、栄養分やエネルギーを余計に費やしてでも外殻
を獲得することにメリットがあるはずである。本体と外殻が分離していれば回転しなが
ら周囲の様子を視認できるため、天敵や獲物の位置を正確に捉えつつ回転移動で接近す
ることが可能だろう。さらに外骨格と外殻の二重構造であれば天敵からの攻撃もより防
げるだろう。ステータス上でも防御が高く、わざの「てっぺき」を使用するのはこの形
質に由来しているのかもしれない。以上から、ホイーガは逃げるためだけに回転運動を
獲得 した ので はなく、攻守 両方が 可 能な形質として獲得したのだと考えられる。
外殻が本体と分離していると考えると、「ポイズンテール」や特性の「どくのトゲ」
でどうやって毒を分泌しているのかという疑問が生じる。毒を分泌するのは本体であ
る。おそらく外殻の触角(あるいは尾肢)部分には小さな穴があり、そこから毒を外部
へ放出するのではないだろうか。外殻にも触角があるのはフシデが自分の体を覆うよう
に外 殻 を形成 す るため だ ろう。
3. ペンドラー
3.1. 形態、及び名称の由来
体節数は 10。歩肢は 2 対だが、姿勢から頸部とも呼称できる第 2 節から第 5 節、及び第
8 節には付属肢由来と考えられる小さな爪がある。この爪には筋肉もあるようでわずか
ではあるが動かすことが可能で、獲物に食い込ませることもある。頭部にある 1 対の触
角は感覚器官としての機能は失っており (*4)、攻撃のための角となっている。尾肢は角
とほぼ同じ形状である。全体的に鮮やかな赤紫色で、腹部は黒色。角と尾肢には紫色の
縞模 様、頭 部と尾 節 を 除く各 節 には紫 色の楕円形の模様 があ る。
「ペンドラー」は「スコロペンドラ」
(オオムカデ属の学名)から命名されたと考えられ
る (*1)。
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