Comments
Description
Transcript
問題1 - 金沢大学理工学域自然システム学類 生物学コース
平成25年度(10月期)及び平成26年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験 専攻名 試験科目名 問 題 用 紙 自然システム学専攻(生命システムコース)(一般選抜) P. 1/7 生物学 問題1 次の問 1 と 2 に答えなさい。 問 1 ヒトの異化代謝に関する以下の文章の[ A ] [ F ]に適切な語を入れなさい。 解糖系で 1 分子のグルコースは[ A ]にまで分解され、この間に 2 分子の ATP と、2 分子の [ B ]が生成される。嫌気的な条件下において[ A ]は、乳酸脱水素酵素の働きにより[ C ]に変 換され、その際に 2 分子の[ D ]が生じる。好気的な条件下では、[ A ]はアセチル CoA に変換 され、アセチル CoA のアセチル基は[ E ]に転移されクエン酸回路に取り込まれる。解糖系やク エン酸回路で生成された[ B ]や FADH2 は電子運搬体として働き、ミトコンドリア内膜に存在す る電子伝達系に電子を渡す。電子伝達系に渡された電子は最終的に[ F ]が受け取り、その結 果、水が生じる。 問 2 以下の文章を読んで 1)~ 4)に答えなさい。 ヘキソキナーゼを精製し、この酵素の活性を調べることにした。はじめに、精製したヘキソキ ナーゼのタンパク質の濃度を定量したところ 3 mg/ml であった。つぎに、反応溶液 970 µl に上 記の酵素溶液 30 µl を加え酵素反応を開始した。グルコース濃度が 10 mM のとき、酵素反応 の初速度は 180 µM/min であった。その後、基質濃度を何点か変えて、それぞれの基質濃度 における酵素反応の初速度を求め Km 値を 50 µM と算出した。また、ヘキソキナーゼのアイソ ザイムであるグルコキナーゼを用い同様の実験を行ったところ、Km 値は 5 mM であった。 1) タンパク質の濃度を定量的に測定する方法はいくつかある。そのうちの1つをあげ、定量 原理とその定量時に注意する点(短所)を述べなさい。 2) 酵素反応速度を変化させる要因を 3 つ答えなさい。 3) ヘキソキナーゼの分子量は 10 万であることが分かっている。グルコース濃度が 10 mM の 時の kcat (s-1)を求めなさい(途中の計算過程も書きなさい)。 4) アイソザイムが存在する生理的意義についてヘキソキナーゼを例にあげて考察しなさ い。 平成25年度(10月期)及び平成26年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験 専攻名 試験科目名 問 題 用 紙 自然システム学専攻(生命システムコース)(一般選抜) P. 2/7 生物学 問題2 ヒトの食物の消化及び食欲に関する問 1∼4 に答えなさい。 問 1 機械的消化と化学的消化の違いを答えなさい。 問 2 消化酵素の分泌にはホルモンが関わる場合がある。例えば、胃に食物が入ると、ホルモ ン A が分泌され胃酸が分泌される。次に、胃で強い酸性を持つ食物が十二指腸に入るとホル モン B が分泌され、ホルモン B により消化酵素が分泌され、中和される。ホルモン A と B の名 称を答え、消化酵素に含まれる中和成分の名称を答えなさい。 問 3 消化酵素のうち、タンパク質の消化に関わる消化酵素は、2 通りの方法で自己の組織を 消化しないように防御している。その方法について、胃を例にして説明しなさい。 問 4 レプチンはフィードバック機構によって食欲を調節している。レプチンを分泌する器官/ 組織の名称を答え、フィードバック機構について説明しなさい。次に、マウスを用いてレプチン の作用を証明するには、1)どのような実験を設定して、2)何を測定すればよいか、さらに、3) それぞれの実験における予想される結果、を答えなさい。 平成25年度(10月期)及び平成26年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験 専攻名 試験科目名 問 題 用 紙 自然システム学専攻(生命システムコース)(一般選抜) P. 3/7 生物学 問題3 次の問 1 と 2 に答えなさい。 問 1 ホメオティック(Hox)遺伝子に関して、次の 1)∼4)に答えなさい。 1) ショウジョウバエのホメオティック変異体の例(名称)を 1 つあげ、その表現型を説明しなさ い。 2) ショウジョウバエにおける Hox 複合体の遺伝子構成の特徴を述べなさい。 3) ショウジョウバエ Hox 複合体の空間的な発現様式の特徴を述べなさい。 4) ショウジョウバエとマウスの Hox 複合体を比較して、その遺伝子構成と空間的な発現様式 の共通点と相違点を述べなさい。 問 2 発生において重要な働きをしている遺伝子産物を(ア)∼(ク)より 4 つ選び、動物種をあ げ、その種における役割を説明しなさい。 (ア)Pax6 (イ)Pit-1 (ウ)Sox9 (エ)β-Catenin (オ)MyoD (カ)Macho-1 (キ)Noggin (ク)Goosecoid 平成25年度(10月期)及び平成26年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験 専攻名 試験科目名 問 題 用 紙 自然システム学専攻(生命システムコース)(一般選抜) P. 4/7 生物学 問題4 次の問 1 と 2 に答えなさい。 問1 遺伝子発現調節に関わる多くのタンパク質は、DNA 上で同一のタンパク質やわず かにアミノ酸配列の異なるタンパク質と二量体を形成する。単量体ではなく二量体を形 成する利点について、200 字以内で説明しなさい。また、DNA との結合に関わるタンパ ク質のドメインを3種類記しなさい。 問2 がん抑制遺伝子 p53 は、ヒト腫瘍細胞のゲノム中の全遺伝子の中で、最も頻繁に 変異が見つかっている遺伝子である。また、変異型 p53 アレル(allele)の配列解析から、 変異型 p53 アレルの大多数(約 75%)はミスセンス変異である。腫瘍形成において、 ミスセンス変異 p53 タンパク質は、野生型 p53 タンパク質に対してどのような作用を示 すと考えられるか、その機序を含めて 400 字以内で説明しなさい。ただし、ヒト腫瘍細 胞は、変異型 p53 アレルと野生型 p53 アレルを1つずつ持つヘテロ接合性の細胞である とする。 平成25年度(10月期)及び平成26年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験 問 題 用 紙 自然システム学専攻(生命システムコース)(一般選抜) 専攻名 試験科目名 生物学 P. 5/7 問題5 次の問1 3に答えなさい。 問1 生態学において提出されている以下の1) 4)の仮説の中から2つを選び、その意 味を説明しなさい。 1) 赤の女王仮説 2) HSS仮説 3) ランナウェイ仮説 4) ニッチ類似限界仮説 問2 ①膜翅目昆虫では、倍数体が雌に、半数体が雄に分化する半倍数性の性決定機構 がある。図1はその性決定機構に基づく繁殖機構と親子間の遺伝子の受け継ぎの概要図 である。膜翅目昆虫では、この性決定機構によって両親からの遺伝子の受け継ぎが娘と 息子間で異なり、兄弟姉妹間で遺伝子の共有確率に偏りが生じる。D. W. ハミルトンは この遺伝子共有確率を血縁度として提唱した。これらについて以下の 1)と2)に答えな さい。 図1 膜翅目昆虫の遺伝子の受け継ぎの概要図。四角は遺伝子を示す。 1) 下線部①について、膜翅目昆虫の他に半倍数性の性決定機構を持つ昆虫の種名を 以下のa fから1つ選び、記号で答えなさい。 a ヤマトシロアリ b タケツノアブラムシ c ワモンゴキブリ d タガメ e ミナミキイロアザミウマ f キイロショウジョウバエ 平成25年度(10月期)及び平成26年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験 専攻名 試験科目名 問 題 用 紙 自然システム学専攻(生命システムコース)(一般選抜) P. 6/7 生物学 2) 図1の条件下で、ハミルトンの提唱した概念による血縁度を、 ①娘(姉妹)間と、 ②娘と息子(兄妹)の間で、それぞれ計算して求めなさい。計算過程がわかるよう に記しなさい。 問3 1つの生物群集に含まれる種の組み合わせの豊富さを示す尺度として①種多様 性がある。異なる生物群集の種多様性を比較する時、多様性指数や相対優占度曲線が利 用される。図2は温帯の森林における木本植物群集の相対優占度曲線である。この図に ついて、以下の1) 3)に答えなさい。 1) 下線部①について、種多様性を決める2つの要素をそれぞれ記しなさい。 2) 図2の縦軸は相対優占度(群集中にその種が占める割合)であるが、横軸は何を 示しているか、答えなさい。 3) 図中に、①高山のハイマツ林と②熱帯雨林の木本植物種の相対優占度曲線を描き なさい。解答用紙の図中に、①と②のそれぞれの曲線がわかるように描きなさい。 図2 温帯の森林の木本種の相対優占度曲線 平成25年度(10月期)及び平成26年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験 専攻名 試験科目名 問 題 用 紙 自然システム学専攻(生命システムコース)(一般選抜) 生物学 P. 7/7 問題6 次の文章を読んで、以下の問 1 3 に答えなさい。 ある地域に分布する地層に含まれる化石を調査したところ、種 A が下位の地層に、種 B が上 位の地層に限定的に産出した。なお、種 A、 B は近縁である。 問1 天変地異説の立場から、この観察結果の原因を説明しなさい。 問 2 ダーウィンは同じ観察結果を進化という概念を用いて説明した.天変地異説と進化説のう ち、どちらが妥当かを推定するためには、どのような観察を行えば良いか、答えなさい。また、 どのような結果が得られれば進化説が妥当であると判断できるか、答えなさい。 種 X は種 Y、 Z と近縁だが、種 Y および Z とは成熟時のサイズと形態が明確に異なる。種 X に特異な形態が進化した過程を推定するため、3種について、齢とサイズ変化の関係および 成熟する齢を調べたところ、図1の結果を得た。なお、図1では、サイズ、齢は相対的な値とし て示されている。また、3種について、図2に示すような系統関係が得られている。 問 3 種 X の形態とサイズの進化過程を、異時性の観点から推定しなさい。