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第7回 アクターネットワーク理論 - Keio University

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第7回 アクターネットワーク理論 - Keio University
第7回
アクターネットワーク理論
情報環境論
110906
手法として:社会技術アンサンブル
(sociotechnical ensembles)
2|7
テクノロジーの社会的構成アプローチ
Social construction of technology
システムズアプローチ
Systems approach
アクター・ネットワークアプローチ
Actor-network approach
keio university
fklab
1
EPOR/SCOTアプローチの問題点
3|7
 技術と社会の相互構成
 技術が社会的に構成される
 社会が技術によって構成される=社会グループ
もこれによって変化するはず
 技術そのものの変化
 社会とは独立の技術的理由は?
 ただ受動的に社会から選択される?
Law, J.「とどのつまり、社会学者は説明の単純性
を求めるにあたって社会に特権を与えるのを好
む」(Bijkerほか, 1987)
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Callon, M.
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4|7
 Callon, M. (1987) Society in the making: The
study of technology as a tool for sociological
analysis. (In Bijker et. al., 1987)
 1980年初めごろ~「アクターネットワーク
理論」
 フランスにおける電気自動車(VEL)の導
入に関する研究
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2
VELの導入事例
5|7
 フランス電力公社(EDF)- 1970年代初頭
に提唱したプロジェクト
 ガソリン車=公害や騒音の元凶
 ポスト工業化社会の消費者へ
 社会運動も好意的
駆動モーター, 蓄電池
シャーシ, ボディ
CGE
Renault
政府からの補助金
イメージ図:VELと写真は関係ありません。
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VELプロジェクトの構成
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6|7
 第1世代:鉛蓄電池
 次世代:あたらしい蓄電池+燃料電池で
90k/hを実現
↑
プラチナに替わる安価かつ安全な触媒
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3
VELの構成要素をどう考えるか
7|7
社会的ファクター
{消費者,社会運動,省庁}
+
{蓄電池,燃料電池,触媒}
 Callon:「もし電子が自分の役割を果たさず、ある
いはもし触媒が汚染されるようになったら、ユー
ザーが新しい乗り物を拒否するのと同様に悲惨な
結果となる。」(Bijkerほか, 1987所収)
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プロジェクトの破綻

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8|7
社会的なファクターではなく…
燃料電池の触媒 → 安価だが、使用の
過程で汚染を受けやすい。
 CGE社による亜鉛空気蓄電池
↑
でっちあげ!?を暴露(Renault)


不完全な技術を使うと、充電ステーションの巨大
ネットワークが必要となる。
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4
収束
9|7
 Renault: 現状の小さな技術的な問題の解決
…として再定義(redefinition)
 公共交通の整備による環境汚染の解決
 ガソリン自動車の燃費改善
→
ガソリン車反
対運動も収束
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アクター・ネットワーク
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10|7
さまざまな要素が関与
長期に渡って、安定した関係をむすぶ必要
がある
「アクター ・ネットワークは、アクター だけにも
ネットワークだけにも還元できない。…それはある
時間相互に結びついた生物や無生物の一連の要素か
ら構成されている。」(Bijkerほか, 1987所収)
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5
Law, J.
11|7
 John Law: 現代の組織の成り立ち、意思決定の
仕組み
 「なぜ」ではなく「どのように」と問いを
立ててみる。
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安定したネットワーク
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12|7
人間的・生物的アクター {社会}
+
技術的・無生物的アクター
{蓄電池}
これらが「おなじ土俵」で論じられる。
双方をふくむネットワークが強固であることによっ
て、技術が安定して存在する。
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6
ある研究所にて
13|7
 所長は、さまざまな「もの」によって成り立っている。
ただし、それは所長が「もの」に集約できるというこ
とではない。もし今の所長室が火災で焼き尽くされ、
来客用のコーヒールームに移動しなければならなく
なったとしても、所長であり続けるはずだ。しかし、
もしも彼の電話が取り外されたら、そして秘書がいな
くなったら、あるいはまた彼のところに回されてきて
いた書類が回ってこなくなったら、本社に出張できな
くなったら、来客を招くことができなくなったら、そ
れでも彼は所長であり続けられるだろうか。
 (John Law, Organizing Modernity)
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ある研究所にて
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14|7
 このことは、何もすべて「もの」に集約されるという
ことでは決してなくて、所長はその人物だからこそ所
長を努められるということなのであるが、人物だけで
なく、電話や書類や出張や来客などの「もの」や「こ
と」も一緒になって、所長というものを成り立たせて
いるのである。(John Law, Organizing Modernity)
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7
エンジニア=社会学者
15|7
 技術の成否はどのような要素に規定されるか
 社会
 技術
 すぐれたエンジニアは、技術的な要素だけではな
く、社会的な要素にも注意をはらう必要がある。
→ エンジニアかつ社会学者
(engineer-sociologist)であるべき
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「事実」としての認識
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16|7
 (アクター)ネットワークが安定している
ときには、そのメカニズムが当たり前のこ
ととして忘れ去られてしまう。
 「適当」な原因と結果の対応として人々に理解
される
 もっともらしさ – 確証性への誘惑 “temptation
of certainty”
 マトゥラーナ&バレーラ(1997)『知恵の樹』(ち
くま学芸文庫)
 ブラックボックス化
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8
アクターネットワーク理論の評価
17|7
 ネットワークの質的差異(文化のちがいな
ど)をどう理解するか
 ネットワーク全体を統御する仕組み(法律
など)をどう扱うか
 法律・習慣・文化・歴史・風土
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ペーパークリップと設計
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18|7
 身近で“あたりまえ”すぎて、ふだんはさほど注
意をはらわないモノ
 いまあるモノが、最善のモノであるとはかぎらな
い
 あたらしいアイデアの正当化の方法
 同じような条件下で二種類のクリップのどっちの力が強
いかを、客観的に判断できるか?
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9
「わかる」のしくみ
19|7
 西林克彦(1997)『「わかる」のしくみ:「わかったつ
もり」からの脱出』新曜社
 孫の手
←
麻姑(中国伝説の仙女)
 「姑余山で仙道を修め、その爪は長く鳥の爪に似、後漢の蔡
経が、これで痒い所を掻いてもらえば愉快この上もないだろ
うと考えたという」
 麻姑をやとうて痒きを掻く(物事が思いのままになること、
物事がよく行き届くこと)
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「わかったつもり」
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20|7
 「わかっていない」ことだけが認識の進展の妨げ
になっているわけではない。
 ある種の「わかった」状態は、そこに人を安心させて留
めてしまい、結果として認識の進展を妨害する危険性が
ある。
 「わかっていない」と思わないため、情報収集、探索、
すでに持っている考えの検討をはじめることはない。
 技術と社会との関係性を「わかったつもり」に
なっていないか…。
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10
コンセプトワークに向けて
21|7
例:あたらしい価格概念
 時価:タイミングによって価格が変動
 場価:場所や店によって価格が変動
 機価:せっかくだから…という意識から購
入に結びつく価格帯
 私価:じぶんのこだわりがあるジャンルに
ついては通常よりも高額を支払いうる価格
帯
関沢ほか(2002
)『シチュエーションマーケティング』
』より
関沢ほか(2002)
「状況」の理解と情報環境との接触
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22|7
積極的に関わりたい
「情報チャネル」
楽しむための「オモチャ」
何か利益を得るための試行
錯誤
新しい体験を得るための試
行錯誤
長期的な
その場で満足
ベネフィット
仕事や社会とのむすびつき
や安全性を高めるための明
瞭な「道具」
ステータスや信頼性を示す
わかりやすい「シンボル」
あればそれでいい
関沢ほか(2002
)『シチュエーションマーケティング』
』より
関沢ほか(2002)
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11
情報環境との接触
23|7
 オモチャ:楽しむために接する
 情報チャネル:サービス内容
 シンボル:ブランド名・サービスイメージ
 道具:みんなが使っているから…
関沢ほか(2002
)『シチュエーションマーケティング』
』より
関沢ほか(2002)
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「状況」の理解
fklab
24|7
積極的に関わりたい
感性的要因
長期的な
論理的要因
その場で
ベネフィット
満足
なかなか
手をださない
ステータス
あればそれでいい
関沢ほか(2002
)『シチュエーションマーケティング』
』より
関沢ほか(2002)
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12
ケータイ環境の理解
25|7
積極的に関わりたい
•実用的
ここがスタート?
•ベネフィット
感性にアピール・新しい体験・個
人向け・最先端で遊ぶ
•時間の節約
あたらしいサービス
•堅実さ
長期的な
その場で満足
ベネフィット
•明確さ
•明確さ
•使いやすさ
•楽しさ
•安心
•ブランドイメージ
•社会的受容・普及
•デザイン
あればそれでいい
関沢ほか(2002
)『シチュエーションマーケティング』
』より
関沢ほか(2002)
手法として:社会技術アンサンブル
(sociotechnical ensembles)
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26|7
テクノロジーの社会的構成アプローチ
Social construction of technology
システムズアプローチ
Systems approach
アクター・ネットワークアプローチ
Actor-network approach
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13
Hughes, T.
27|7
 ヒューズ(1983)『電力の歴史』(平凡社)
Networks of power
 技術システム
 問題解きのための巨大で複雑な存在
 「社会的に構成されていると同時に、社会
を作り上げるものである」
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技術システムの構成要素
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28|7
 物理的人工物(physical artifact):発電機、ト





ランスなど
組織(organization):企業、電力会社、投資銀
行など
科学的要素:論文、大学教育など
法的人工物(legislative artifact):規制
天然資源
* 人工物ではないがシステムの要素:発明家、科
学者、エンジニア、マネージャー、投資家、労働
者
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14
システムとしての成り立ち
29|7
 各要素が相互に作用し、システムの共通の
目的のために奉仕する。
 ひとつの要素の変化は、他の要素に変化を
引き起こす。
 技術システムは、物理的要素と非物理的要素を
ふくむ
⇔
アクター・ネットワーク
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技術システムの構築
fklab
30|7
 発明家-企業家(inventor-entrepreneur)
 ref. カロン:エンジニア-社会学者(engineersociologist)
 有能なシステム構築:技術的要素だけでは
なく、組織も構築する。
 エジソン(アメリカ):電球だけでなく電力会
社もつくる
 スワン(イギリス):電球だけ
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15
ヒューズのアイデア
31|7
 ヒ ュ ー ズ ( 1983 ) → カ ロ ン の 「 ア ク
ター・ネットワーク」の本質的な部分はす
でにふくまれていた。
 法律、教育への視点
 要素間のちがいにも着目
 物理的人工物、組織、科学的要素、法的人工物、
資源、人間
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電力システムの発展
fklab
32|7
 近代の巨大システムの発展パターン
発明
開発
技術革新
成長するシステムは、おおまかにこれらの
フェーズから構成される。
移転
成長
競争
安定
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16
発展のフェーズとアクター
1.
2.
3.
33|7
発明・開発の時期:発明家-企業家が決定的な問
題を解く
技術革新・競争・成長の時期:管理者-企業家が
意思決定を担う
安定・合理化の時期:財政家-企業家とコンサル
タントエンジニア が決定的 な問題 を解決 する
(政治的影響力)
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34|7
 「企業、発電所や電灯を所有するこ
と、これらはすべて発明である」
 発明は成長のどの時期でも起こっている。
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17
電力システムの発展
35|7
•19c終わり~20cはじめ:発明家たちの活躍
発明
開発
•電灯(エジソン);タービン(パーソ
ンズ)
•企業に発明を売る
技術革新
移転
成長
•システムへと統合
•製造、セールス、サービス
•発電所、電球を供給する会社
•一定の負荷(電力消費)が必要
•電力企業の合併
競争
安定
•夜間照明だけでなく工場の動力にも使用
→ 発電施設の効率的な利用
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技術システムの受容と普及
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36|7
 1880年代:アメリカで生まれた電力システ
ムがヨーロッパに技術移転
1920年
 ロンドン
 ベルリン
小規模発電所
大規模発電所
55
6
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18
1920年のロンドンとベルリン
37|7
 ロンドン:地域の自治体に電力規制の権限(国家
的なネットワークは1926年の法律制定で実現)
 ドイツ:水力発電(アルプス)+火力発電(工業
地帯)→ 経済的にも望ましい
法律、地理的要素、歴史などが
電力ネットワークの特徴を規定する
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鉛筆と人間
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38|7
 Petroski, H. (1989) The pencil: A history of design and
circumstance. Knopf. H. ペトロスキー(1993)『鉛筆
と人間』昌文社
ひとつの夢は、どのようにしてモノの形にな
るのだろうか。工学技術的方法とは、たんな
る思いつきが現実のモノになり熟成する過程
である
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19
構成
39|7











忘れられた道具
「鉛の筆」の謎
鉛筆前史
木製鉛筆の登場
イギリスの石墨発見
現在の鉛筆はフランスでつ
くられた
ドイツの鉛筆職人
アメリカの鉛筆開拓者
森の職人 H・D・ソロー
ロンドン万博で行われた実
験
ドイツのブランド合戦











アメリカ初の鉛筆工場
世界鉛筆戦争
芯を支える木
技術者が心のなかで描くも
の
折れない芯
鉛筆削りとシャープペンシ
ル
レーニンが認めた米国のビ
ジネスマン
競争、恐慌、そして戦争
鉛筆先進国と後進国
完璧な鉛筆
どこにでもあるモノの物語
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40|7
keio university
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20
アブサン
41|7
アプサント(absinthe):アブサン
アルコール分70%! 一種の厳格
症状を呈して、中毒に陥りやすい。
19c半ばからヨーロッパに急速に普
及し、世紀末にはパリで大流行し、
中毒患者が続出した。
アブサン:悪魔の酒 / 緑の魔女
アブサンドリンカー(ピカソ)
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描かれた“カフェ”
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42|7
•アブサン禁止!
•1908年:スイス
•1915年:フランス
カフェにて(ドガ)
副題:アブサンドリンカー
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21
夜のカフェ
43|7
ゴッホ
カフェとは人を破滅させることが
出来る場所であり、犯罪人にも出
来る邪悪な力を持っている場所で
ある。
カフェでゴーギャンめがけて突然
アブサンの入ったグラスを投げつ
ける事件を起こした。
翌日には背後からゴーギャンをか
みそりを持って襲った。
夜のカフェ(ゴッホ)
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カフェ・ドゥ・ムーラン
fklab
44|7
映画『アメリ』のカフェ:モンマルトル
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22
課題2:情報環境を思い描く
45|7
社会仮説:社会的意味・インパクト
(たとえば、大学生活はどう変わるか)
技術:実現可能性・運用
コンセプト
(たとえば、実際にどのような“サービス”が可
能か実験する)
かたち:シチュエーションの具体化
(たとえば、実際にタグの形状を変えてみる)
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23
Fly UP