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認知症医療の今 認知症医療の今 認知症医療の今
(2) 2006 年 1 月 2 日(月曜日) 週刊 医学界新聞 (第三種郵便物認可) 第 2664 号 新年号特集「認知症に挑む」 カラー解説 認知症医療の今 疾患別ケアと医療 Normal 池田 学 (愛媛大学助教授・神経精神医学) 本稿では,認知症の診断手順と疾患別特徴,最新の疾患別ケアと治療法, 今後の認知症医療の課題と展望について述べてみたい。 INPH 最近の疫学調査からわかること アルツハイマー病 脳血管性認知症 前方型認知症 レビー小体型 認知症 その他 大学病院外来 N=147 67% 10 11 7 6 単科精神病院 N=158 60 25 9 4 2 中山町 N=60 37 47 3 12 AD 2 図1 認知症の原因疾患の内訳 第1回中山町調査の結果と同時期の1年間の大学病院ならびに精神 科病院専門外来の初診患者の内訳 CBD 2% その他 4% DLB 7% VaD 10% FTLD 13% 図5 正常, 特発性正常圧水頭症(INPH) , ADのMRI像の比較(大阪大学精神医学教室・ AD 65% 数井裕光氏提供) ADではび漫性の脳萎縮が認められるが, INPHで は円蓋部の脳溝の消失( ) と脳室の著明な拡大 ( )が認められる。 ▼ 【予防可能なもの】 (Ikeda et al.Dement Geriatr Cogn Disord,2004) 図2 愛媛大学の専門外来の初診認知症 例の内訳(330人:1996-2002年) 軽い病気, けが ADが65%と圧倒的に多い。 (CBD=大脳皮質基 底核変性症, FTLD, DLB=後出) 何もしない・横になる することがない 悪循環 精神機能低下 (やる気の低下) 体力低下 起立性低血圧 感覚機能低下 疲れやすい 張り合いがない やる気がない 面白く感じない 廃用症候群 認知症・寝たきり 図6 廃用症候群 診断手順と疾患別特徴 認知症そのものの診断 ■認知症であるか否かの診断 ●認知症と間違えやすい状態 (正常老化に よる物忘れ, うつ病, せん妄, 健忘症, 失語症, など)を認知症と鑑別 ■認知症の診断 ●認知症の原因疾患を診断 ■病態(障害)の診断 ●病態 (障害内容)を詳細に評価 図3 認知症の診断手順 ■治療が困難な疾患 ●アルツハイマー病, ピック病, ハンチントン病, 脊髄小脳変性症 などの変性疾患 100 ●多発性脳梗塞, 脳出血, ビンスワンガー病などの血管障害 【治療可能なもの】 VaD 80 ●正常圧水頭症, 慢性硬膜下血腫, 脳腫瘍 などの外科的疾患 ●甲状腺機能低下症, ビタミン欠乏症 などの代謝性疾患 ●脳炎, 髄膜炎などの炎症性疾患 図4 認知症の原因疾患 AD 90 ■治療が可能な疾患 原因疾患の診断とその対応 (Ikeda et al. JNNP,2004) (%) ■予防が重要な疾患 70 60 50 40 【予防・治療法が ないもの】 30 20 10 0 妄想 幻覚 興奮 うつ 不安 多幸 無関心 脱抑制 易刺激性 異常行動 図7 ADとVaDの精神症状の比較(第1回中山町調査から) 2006 年 1 月 2 日(月曜日) 週刊 医学界新聞 第 2664 号 (第三種郵便物認可) (19) カラー解説 「認知症医療の今」 R L P A L R 図11 前頭側頭型認知症のSPECTとMRI画像 A P 前頭葉の著明な血流の低下と限局性脳萎縮が認められる。 (Mori et al. Neurology,inpress) 図10 レビー小体型認知症に対するドネペジ ルの治療効果 着色部分はドネペジルの投与により血流が改善した部 位。幻視の減少とともに, 低下していた両側後頭葉の 血流が改善している(N=20)。 (Ishii et al. Eur J Nucl Med Mol Imaging,2005) 図8 早期ADにおける後部帯状回の糖代 謝低下 (兵庫県立姫路循環器病センター・石井 一成氏提供) 早期アルツハイマー病患者でFDG-PETにより得 られた脳ブドウ糖代謝画像を正常高齢者と比較し て有意に代謝が低下している部位(図中着色部分) をMRI立体画像と重ね合わせたもの。 60 25 * ▲ 40 * * ▲ ▲ ▲ 30 20 10 ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 0 *P<0.001 FTLD VaD ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ AD normal ▲ SRI total score SRI total score 50 **P<0.1 vs Baseline ** ▲ ** ▲ ** ** ▲ ▲ 8週 12週 0 Base line 2週 4週 (Ikeda et al. Dement Geriatr Cogn Disord, 2004) (Shigenobu et al. Psychiatry Research, 2002) 図12 前方型認知症の常同行動の頻度(左)とフルボキサミンによる治療(右)。 これからの認知症医療 認知症医療の課題 N=104 死亡 13.5% 健常高齢者 36.5% 転出 12.5% 調査拒否 5.8% AD CVD 1.9% MCI 8.7% 10.6% VaD 4.8% その他の認知症5.8% (Ishikawa et al. Int J Geriatr Psychiatry,inpress) 図13 地域在住MCI例の5年後の転帰 NPI delusions score 12 ZBI total score 88 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲ P<0.001 ▲ ▲▲ ▲ ▲▲ ▲▲▲ ▲ 6 ▲ ▲ ▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲ 0週 12 週 ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲ ▲ ▲▲▲ 0 ▲ ▲ ▲ ▲ 0週 12 週 (Shigenobu et al. Int J Geriatr Psychiatry,2002) 図9 リスペリドンによるアルツハイマー病の物盗られ妄想の治療 リスペリドン(平均1.1mg)の投与による物盗られ妄想の減少(左) と, 主たる介護 者の介護負担の減少(右)。 わが国の認知症の医療・ 研究に関する今後の展望