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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title Author(s) Citation Issue Date URL 70年代アメリカにおける住宅産業の構造変化と住宅政策 豊福, 裕二 経済論叢別冊 調査と研究 (2002), 24: 43-60 2002-04 https://doi.org/10.14989/44536 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 経済論叢別冊 調査 と研 究 ( 京都大学)第24号,2002年 4月 7 0 年代 アメ リカにおける 住宅産業の構造変化 と住宅政策 豊 は じめに 現代のアメ リカ経済 において,住宅 に対する 福 裕 かにあって,住宅産業は 「 競争的な」産業 とみ なされているのである。 こうした零細性,分散性の原因 として,従来, 投資は,民間部門の投資項 目のなかで も最大の 住宅 とい う商品の特性,すなわち土地 との一体 比重 を占める項 目の一つである。1 9 9 8 年のアメ 性 とそれに規定 された住宅の個別性,地域性 な リカの GDP をみる と,新規の住宅建設は民 間 どが指摘 されて きた。つ ま り第一 に,住宅は土 3. 5%を占め,既設住宅への家 固定資本形成の2 地 と一体であ り,その生産 には必ず現場での組 賃支払等,住宅サー ビス に対する支出は個人消 立行程 を必要 とするため,工場でのプレハブ生 費支出の1 4. 3%を占める。 これは GDP全体 に 産 には輸送 コス ト上の限界が存在す ること,第 対す る比率でいえばそれぞれ4. 1%,9. 7%にあ 二 に,住宅の土台 となる土地 には全 く同一条件 た り,両者 を合計す ると住宅部門の割合は実 に の ものは存在せず, また住宅 に対す る好みは多 1 3. 8%に達す る1 ) 。 これ に住宅投資の二次的波 様 であることか ら,商品の規格化が困難である 及効果,すなわち家電製 品等の さまざまな消費 こと, これ らの特性が工場内での大量生産 を困 財及びサービス需要の発生 を加味すると,住宅 難 に し,スケールメリッ トの実現 を妨 げて きた 投資が国民経済 に与 える影響 はさらに大 きい も とい うのである。 の となろう。 しか しなが ら,零細性,分散性 の存在 は,住 しか しなが ら, この ような住宅部 門のマクロ 宅産業の上位企業 と,圧倒的多数 を占める中小 経済的重要性 とは対照的 に,住宅 を供給する部 零細企業 とが,同一の市場 において対等 に競争 門,すなわち住宅産業の構造 は,今 日において で きることを必ず しも意味 しない。今 日では, も過度の零細性,分散性 を特徴 としている。 自 両者の間にはすでに乗 り越 えがたい格差が存在 動車,鉄鋼な どの基幹産業部 門が少数の上位企 してお り,前者 は後者 に対 して,資金調達等の 業への集中を特徴 としているのに対 し,住宅産 面で圧倒 的な優位性 を保持 しているのである。 業 における市場集中度 は低 く,住宅建設 にたず 住宅産業の発展過程 において, この ような上 さわる企業の うち上位 1 0社の年間住宅着工戸数 位企業 と下位企業-の明確 な分化が最初 に生 じ 9 9 8 年で約1 1万 3千戸,同年の総着 の合計 は,1 工戸数の 7%を占め るにす ぎない2)。一握 りの たのは,1 9 6 0 年代末か ら7 0 年代初頭 にかけての 巨大企業-の集中が進 むアメ リカの諸産業のな て忘 れ られ た産業」 とい う形容が な され るほ こ とである。それ以前 には,「 資本主義 によっ ど3),住宅産業 においては零細業者 と伝統的な 1) 数字 は実 質 ドル に も とづ く。Sur v e yo fCur r e ntBus i - ,Sept ember1999,D-2,D6. ne s s 2) 上位 1 0社 の着 工 戸 数 につ い て は,Bul l d e r誌 の ホー ム ペ ー ジ に よ る。 ( ht t p・ . // bui l der 3. hw. net /mont hl y/ t bul l der l OO/)。 また 総 着 工 戸 数 に つ い て は, Depar ,Ho u s i n g mentofCommer ce,Bur eau oft he Cens us St ar t s ,による 。 生産技術 とが大勢 を占めていた。 しか し1 9 7 0 年 3) sc hl es i nger ,T,Er l i c h,M. 了も Hous i ng.TheI ndus t r y Capi t al i s m Di dn' tFor get " ,1 n Cr i t i c alPe r s pe c t i v e sO n Ho u s i 7 1 g,eds.by Br a t t ,R. G. ,Har t man, C,Meyerson A ,Templ eUnl Ver S l t yPr es s.1986,p 1 39 . 4 4 調査 と研究 第2 4 号 ( 2 0 0 2 .4) 代 には,M&A 等 を通 じた上位企業への集 中傾 以上の ような先行研究の到達点 をふ まえて, 向が生 じる とともに,モー ビルホームやモジュ 本稿では,住宅 ブーム終駕後の動向 をも視野 に ラー住宅 な ど, そ れ まで点 的 な存在 にす ぎな 入れて,70年代 に生 じた住宅産業の構造変化の かった生 産方式 が,住 宅市場 において一定 の 特質 を明 らか に したい。住宅の商品特性 に規定 シェアを占めるようになる 今 日のアメリカの されなが らも,住宅産業がいかに資本主義的に 住宅産業の基本的構造 は,ほぼこの時期 に形成 発展 して きたのか を解明す ることが本稿 の最終 された といえるのである。 的 な狙いである。 なお,以下で住宅産業 とい う 。 本稿 の課題 は, この ような住宅産業の構造変 場 合, そ れ は 標 準 産 業 分 類 で 「 建設業 化の特質 を,当時の住宅政策の展開 との関わ り において考察する ことにある。 とい うの も,別 ( Cons t r uc t i onI ndus t r y) 」に含 まれる住宅建設 業のみならず,モー ビルホーム製造業,モジュ 稿で明 らかに した ように, ジ ョンソン及びニク ラー住宅製造業 な ど,多様 な住宅生産者 を含ん ソン政権期 の住宅政策 は,住宅産業 に対す る積 でいることに留意 されたい。 極的な市場創出政策 としての性格 を有 している か らであ る4)。 なかで もニ クソン政権期 には, 住宅 の工場生 産化 ( i ndus t r i al i z a t i on)5)の推進 Ⅰ 60年代前半 までの住宅産業の構造 60年代後半 に現れた変化の特徴 を浮 き彫 りに など,住宅の供給構造それ 自体 を変革 しようと す るため に, まず戦後か ら60年代前半 までの住 する試みが行 われてお り,住宅産業の構造変化 宅産業の基本的構造 を概観するのが本節の 目的 を考察す る うえで住 宅政策 の評価 が不可欠 と である。 しか しなが ら, この作業はそれほ ど容 なっている。 易ではない。 なぜ なら,建設業 についての全国 なお, これ まで の先行研 究 としては,L.グ レプラ-及 び L.グッ ドキ ンの ものが代表的で 的調 査 で あ る 『 建 設 業 セ ンサ ス』 (Ce ns uso f Co ns t r uc t i o nI ndus t r y ) は, 1939年 を 最 後 に ある6 ) 。いずれ も70年代初頭 に刊行 された もの 1 967年 まで実施 されてお らず,当時の住宅産業 で,当時の住宅産業 における上位企業の急速 な 構造 を知 りうるマ クロ的な統計 デー タは皆無 に 成長が分析対象 となっている とりわけグレプ 等 しいか らである。 したが って以下の叙述 は, ラ-の著作 は,上位企業の経営構造 を本格的に い くつかの先行研究 をもとに当時の住宅産業の 。 分析 した数少 ない研究の一つ といえる 。 しか し なが ら,いずれ も住宅政策 についての評価 を欠 諸特徴 を素描す るにとどまらざるをえない。 さて,戦後初期の住宅産業の特徴 は,一言で くとともに,時期 的制約 ゆえに,第一次 オイル いえば C.アブラムスの次の ような表現- ショック後の住宅 ブーム終幕の影響 を考慮 に入 築業界 は,資本家の系列か ら除け ものにされて れてお らず, ブーム的要素 を差 し引いた住宅産 お り,わずかに儀礼上の呼び名 として 『 産業』 業の発展方向 を析 出するには至 っていない。 4) 拙 稿 「 「 偉 大 な社 会」 期 ア メ リカの住 宅 政 策- 得 層 向 け住 宅 助 成 を中心 に一 低所 」『経 済 論 叢』 第 165巻 5 ・6号,2000年 5 ・6月参照。 5) 1 ndus t r i al i z at l On は, 通常 「工 業 化」 と訳 され るが, ndus t r l al l Z at l On は 以 下 で 述 べ る よ う に, この 時期 の l とい う名前 を もらっているにす ぎない7 ) - 建 に 凝集 されている。 これは,冒頭でふれた 「 資本 主義 によって忘れ られた産業」 とい う表現 とも 重 なるが,そこで念頭 に置かれていたのは住宅 産業の次の ような特質である。 部分 的 なプ レハ ブ生 産で はな く,住宅建設 をほぼ工場 生 第一 に,住宅産業 とい う産業の規模 を特定す 産 に置 き換 える とい う志 向 を持 った ものであ ったため, ること自体が困難であるような,産業の零細性 本稿 で は 「 上場 生産 化」 と した。 6) Gr ebl er . L,I , ar ge Sc a l e Ho u s i n g an d Re alEs t at e ,Pr aegerPubl i s her s ,1973.及び Goodkl n.LM I Fi r ms Wh e nRe alEs t at ean dHo meBui l di n gBe c o meBL gBu S l ,Chaner s n e s s:Me r ge r s ,Ac qul S I S 1 0 n San dJo mtVe nt ur e s B( ) oks ,1 974 7) Abr ams ,C . " The Res i dent i a lCons t r uct i on l ndus - t r y" l n Th e St r uc t ur eo f Ame r i c a nI n du s t r y ,ed by Adams ,W ,TheMacml l l anCo,1 954,p 121.(時 事通 信 社 訳 『ア メ リカの 産業 構 造』 時 事 通 信 社 , 1 957年, 1 43ペ ー ジ)。 7 0 年代 アメリカにおける住宅産業の構造変化 と住宅政策 45 と流動性 である。当時の建設業者の圧倒的多数 ズ社である。 同社 は,部品の規格化 とプ レハ ブ gene r a lc ont r a c t or ) と呼 は,総合 請負 業 者 ( 化,現場の生産過程への流れ作業の導入 な どを ばれる零細 な建設業者 と,そ もそ も事業所 を持 先駆的 に採用 して住宅の大量生産 を実現 し,す たず,仕事 のある時だけ請負業者 を自認す る個 95 0年代 には年間数千戸の生産規模 を実現 でに1 人業者 によって占め られてお り,事業所数や従 してい た 業員数 を確定すること自体が困難であった。 ま 。 当時の大規模建設業者の動向については統計 た, これ ら建設業者の多 くは住宅以外の各種建 的な資料が乏 しく,全国的な実態 を知 ることは 設事業 にも従事す るため,建設業一般か ら区別 容易 で ない。 しか し,J.P.ヘルゾ ッグに よる して 「 住宅建設業」 を取 り出す ことさえ容易で カリフォルニア州北部地域 に関す る研究 は,当 はなかった。第二 に,以上の ような零細性 ゆえ 時の住宅建設業の動向を知 るうえで貴重 な素材 に,住宅産業 においては固定資本投資が最小限 を提供 して くれる。 これは, カリフォルニア州 に抑 えられ,他産業 に比べ ると伝統的な生産技 北部の45の郡で活動する住宅建設業者の うち, 術が優位 を占めていたことである。 アブラムス 1950年 か ら60年 の1 0年間に年 間1 00戸 以上住宅 大量生産 と科学技術が他 の工業で原価 を が ,「 を生産 した企業 を大規模建設業者 とし,それ ら いち じる しく低下 させた ことに くらべ ると,建 を対象 に実態調査 を行った ものである 8世紀 築業者は,20世紀の環境 にあ りなが ら,1 査結果か ら,ヘルゾ ッグは次の ように結論 して の道具 と工法 をい じりまわ してい る」8)と述べ いる。 第一 に,大規模建設業者 に関す るデー タ ているように,戦後初期 の住宅産業は多分 に小 は,①生産量の安定性,②住宅建設への専門性, 経営的性格 を残 した ものであった。 ③経営の継続性 を示 してお り,建設業一般 と区 しか しなが ら,1 950年代 に入ると,次第に住 この調 。 別 される-産業部 門 としての住宅建設業の存在 宅産業にも一定の変化が見 られるようになる。 950年 には同地 を裏付 けていること,第二 に,1 それ は,未曾有 の住 宅 ブーム を背景 と して, 域の新規着工戸数の約 3分の 1にす ぎなかった マーチャン トビル ダー ( me r c ha ntbui l de r )あ 960年 には 4分の 大規模建設業者の シェアが ,1 るいはその事業形態 の特徴 か ら投機的建設業者 3前後 にまで上昇するなど,住宅建設業 におい ( s pe c ul a t i vebui l de r ) と呼 ばれ る一群 の建設 て大規模企業の急連 な成長が見 られること, し 業者が成長 したことであ る。 か し第三 に,年 間1, 00戸 を超 えるような企業 マーチ ャン トビルダー とは,総合請負業者の は例外的であ り, また上位企業の入れ替わ りも ように注文 に応 じて建設 を行 うのではな く,土 激 しいため,一部企業への集中傾向はほ とん ど 地の取得 ・造成か ら住宅建設 まで を一貫 して行 見受 け られないこと,そ して第四に,生産技術 い,建売で住宅 を販売す る建設業者の ことであ や経営組織等,経営内部の構造 については1 0年 る。 投機的建設業者 と呼 ばれたのは,収益 の大 間でそれほ ど大 きな変化は見 られないことであ 半が土地の値上が り益 に もとづいていたか らで 0年代 には,「 住宅 る9 ) 。 つ ま り,少 な くとも5 あるが,その ような事業形態 を可能 に したのは, 建設業」 を担 う一定規模の企業群が形成 されて 郊外 における安価 な農地や未利用地の存在 と, いた ものの,全体 としてみれば住宅産業は依然 郊外住宅 に対す る旺盛 な需要であった。 として分散的であ り,その生産性 はけっ して高 マーチ ャン トビルダーの大半はやは り零細 な い ものではなかった と考えられる。 業者であったが, なかには大規模 な土地 を購入 しか しなが ら, こうした生産部面の零細性 に し,そこで住宅の大量建設 を行 う建設業者 も存 もかかわ らず,戦後の住宅建設数 は急激な伸 び 在 した。その代表例が レビッ ト・アン ド・サ ン 9) Her zg,JP ITh eDJ V n a mi c so fLa r g e -Sc al eHo u s e b ui l d一 mg ,TheRegent soft heUnl Ver S l t yOfCal l f or na、1963, pp 7780. o l 8) I b i d. ,p 11 6 ( 邦訳 1 3 6ペ ー ジ)0 46 調査 と研究 第2 4 号 ( 2 0 0 2 .4) を示 した。1944年 に1 3万9, 000戸 にまで落 ち込 95 0年 には んでい た新規民 間住宅着工戸 数 は1 1 9 0万8, 00 0戸 にまで達 した10)。 これは,戦時中 に抑 制 されて きた住宅需要 と,戦後 のベ ビー Ⅰ Ⅰ 60年代 にお ける住宅政策の展開 1 住宅補助金の拡大と住宅の工場生産化への関心 - ジョンソン政権期- ブームに伴 う住宅需要 とが重 なったことに加 え 1 960年代 に入る と,それ までの住宅政策は大 て,次の ような連邦政府の住宅政策が住宅需要 きな転換 を迫 られることになる。 貧困問題や都 の拡大 を促 したためであった。 市間題 に対す る社会的関心の高 ま りを背景 とし 戦後の住宅政策 は,国民の居住水準 における て,低所得者層 向け住宅の供給が住宅政策の中 ナシ ョナル ・ミニマムの保障 とい う社会政策的 心的課題 として浮上 して きたためである。 すで 目標 を掲 げつつ も,その実硯のための手段 とし に述べ たように,従来の政策は中 ・高所得者層 て,民 間企業す なわち住宅産業の最大限の活用 に対す る持家政策 を優先 し,公共住宅の供給 を を位置づ けていた。 これは,住宅政策の もう一 著 しく制限す る ものであった。 このため,低所 つの 目的 として,住宅産業界の安定 と,それを 得者層が入居 しうる低 コス トかつ良質な住宅の 通 じた完全雇用経 済の促進 とい う経済政策的な 供給 は絶対的 に不足 し,彼 らの集 中する都心部 役割が意識 されていたためである。 このため実 のスラム化が深刻 な社会問題 となっていた。60 際の政策運営 においては,低所得者層向けの公 年代 における 「 貧困の再発見」や公民権運動 な 共住宅の供給 は絶 えず制限 され,民間部門を活 どの社会運動 の高揚, さらに全米各地での都市 用 した中 ・高所得者層向けの持家政策 に政策の 暴動の発生 などは, こうした問題-の社会的関 重点が置かれるこ とになった。 心 を急速 に強め,連邦政府の政策的対応 を促す 持家政策の中心 をな していたのは,連邦住宅 庁 ( Feder a lHous i ngAdmi ni s t r a t i on‥FHA) ことになった。 低所得者層 を対象 とした住宅政策は,60年代 と退 役 軍 人 庁 ( ve t er a n' sAdmi ni s t r at i on : を通 じて徐 々に拡充 され, ジ ョンソン政権 にお VA) による住宅 モーゲージ ( 抵 当融資) に対 いてひとつの画期 を迎 える。 その内容 は多岐 に する信用保証 と,持家所有者 に対す るモーゲー わたるが,住宅産業 に与 えた影響 とい う観点か ジ利子 の非課税措置である。 この うち,戦後の らすると,以下の 2点 に注 目 しなければならな 住宅建設 を促進す るうえで中心的な役割 を果た い。第一 は,低所得者層向け住宅の供給主体 と したのは,住宅モ ーゲージに対する信用保証で して民 間部 門の積極的活用が図 られ,低所得者 あった。 とい うの も, この制度がで きる以前は, 層向け住宅 に対する連邦政府の助成が,事実上 建設事業の リスクの高 さゆえに,建設業者が金 住宅産業 にとっての有効需要の創 出策 として機 融機関か ら融資 を受 けるのは容易ではなかった 能 したことである。 第二は,低所得者層向け住 が,連邦政府がモーゲージの元利払いを金融機 宅の供給増 とい う政策課題の達成 をめ ぐって, 関に保証するようになると,あ らか じめ政府の 住宅産業の生産性 の向上 を求める議論,す なわ 保証 を取 り付 けてお きさえすれば,建設業者は ち住宅の工場生産化 による住宅価格の引 き下げ 容易 に運転資金 を取得で きるようになったか ら を求める議論が登場 したことである。 である。 こうして,住宅産業の零細性 にもかか 第-の点 については,すでに別稿 で分析 した わ らず,戦後の住宅建設は堅調 な伸 びを示す こ ので ここでは詳述 しないが,その主 な内容 は以 とになった。 下の とお りである。 第一 に,低 コス ト住宅の供 給方法 として,間接供給方式,す なわち民 間部 門の供給す る住宅 に対 し,その市場価格 と低所 1 0) 数 字 は, Hi s t o r i c a lSt at L S t i c S ,Co l o malTi me st o1970 , Ser l eS156-159に よる。 得者層 が負担 しうる入居 コス トとの差額 を政府 が負担す る方式が広 く採用 された。具体 的には, 7 0 年代 アメリカにおける住宅産業の構造変化 と住宅政策 47 低所得者層の負担 しうる家賃 と実勢家賃 との差 遠 は見 られ ないため,以 下 で は主 と して カイ 額 を助成する家賃補助 プ ログラム,低所得者層 ザー委員会の報告書 をもとに当時の議論の特徴 向け住宅の建設 に民 間金融機関が低利融資 を行 を見てお きたい。 い,市場金利 との差額 を助成する利子補給 プロ カイザー委員会 の最終報告書 は,「アメ リカ グラムなどがそれである。第二 に,公共住宅の の住宅産業の将来」 と題 した結論部分 において, 供給 において も民間部門の活用が図 られ,民 間 住宅 コス ト削減の見通 し,住宅産業の効率性, 賃貸住宅 を公共住宅 として買い上げた り,借 り 工業化 の有効性 な どについて言及 している。 そ 上げた りする制度が導入 された。そ して第三 に, れによる と,住宅 コス ト削減の主要 な手段 とし これ ら低 コス ト住宅の建設 目標が数値 目標 とし ∋技術革新 とコ て次の 4点が指摘 されている。 ( て法律 に明記 され,それ に対する連邦政府の補 ス ト削減の妨 げ となっている既存の制度的障害 助金が拡充 された。具体 的 には,1 96 8年住宅 ・ 都 の除去,②研究 ・開発事業の推進,③建設戸数 市 開発 法 ( Hous i nga ndUr banDe vel opme nt Actof1 968,以下 1 96 8年法 と略す) によって, の安定,④ハ イテク住宅産業 を支 える,試験機 関や専 門協会 などの新機関の設立,である1 2 ) 。 以後1 0年間の建設 目標が2, 6 00万戸 と定め られ, この うち① は, ダグラス委員会の調査結果 を受 うち600万戸 が補助金付 きの低所得者層 向け住 けた もので,地域 間の統一性がな く,時代遅れ 宅 に割 り当て られた。これ ら一連の政策 は, 連邦 で過度 に厳 しい建築規準の存在や,低所得者層 政府の助成 によって低所得者層向け住宅 とい う 向け住宅の建設 を排除するゾーニ ング規制の存 新 たな市場が創出 される ことを意味 していた11)。 在が,住宅市場 を分断 し,住宅の大量生産 を妨 もっとも, この ような補助金の拡充は,必然 げているとい う認識 に基づいている。 また③ は, 的に連邦政府 による財政支出の拡大 を要請 した。 住宅需要が周期的に変動 し,建設戸数が安定 し とりわけ60年代 の後半 には住宅価格の高騰が顕 ないことが,住宅産業 における大規模 な設備投 著 とな り,補助金 支 出の大 幅 な増額 は必至 で 資 を妨 げているとい う認識 を示 している。 ここ あった。 このため,上記 の ような施策 と並行 し には,住宅 コス トの削減のためには,大量生産 て,第二の政策路線,す なわち住宅産業の生産 技術 の開発 と同時 に,それに見合 った大量販売 性 の向上 によ り住宅の市場価格その ものを引 き 市場の確立 を進めなければな らない とい う,当 下げる方法が検討 される ことになる。 その役割 時の考 え方が反映 されていた。 9 67年 に相次いで創設 された, を担 ったのが,1 もっとも, カイザー委員会は,大量生産 ・大 全 米 都 市 問題 委 員 会 ( Nat i onalCommi s s i on 量販売 による規模 の経済性や,工場生産化の効 onUr ba nPr obl ems ,通称 ダグラス委員会) と 率性 について必ず しも無条件 に評価 していたわ 大統領都市住 宅委 員会 ( Pr e s i de nt ' sCommi t - けではない。例 えば規模の経済性 については, t e eonUr ba nHous i ng,通称 カイザー委員会) であった。前者では,主 として建築規準や住宅 その実硯のためには,①住宅建設市場の安定化, ②住宅及び土地開発規制に盛 り込 まれている古 規準,ゾーニ ング規制,税制 など,住宅市場 を い条項や,地域間の規制の不統一性の改革,③ とりま く制度的要因が検討 され,後者では,主 住宅の標準化,④ プレハブの大型 コンポーネン として住宅生産 に関わる諸要因,す なわち資材, トの輸送及 び取扱技術 の向上, な どが不可欠で 労働力,資金等の調達 コス トや量産技術の開発 あるとしなが らも,仮 にこれ らの条件がすべ て 等の問題が検討 された。その結論 はそれぞれの 達成 されて も,少数大企業の寡 占状態 は成立 し 最終報告書 にまとめ られているが,住宅 コス ト ないだろうとしている13)。 ここには,従来の工 削減の見通 しについては さほ ど大 きな見解の相 ll) 以上の点 について,詳 しくは,前掲の拙稿 を参照 され たい。 1 2) ThePr es i de nt ' sCommi t t eeOn Ur ba n Hous i ng,A De c e ntHome ,1968.p.208 d,p.2 09. 1 3) Ibi 48 第2 4 号 ( 2 0 02.4) 調査 と研究 場生産化 の試みが依然 として伝統 的 な現場生産 一つ は,市場 集成 ( mar keta ggr e ga t i on) と呼 を上 回る効率性 を実現す るには至 ってお らず, ばれ,住宅市場 の分断 を もた らしている建築法 住宅の大量生産へ の見通 しが立 たない ことに対 規,輸送規制,労働協約 な どを改革 し, よ り大 す る率直 な事実認識が反映 されていた と考 え ら 規模 で均一 な市場 を形成 しようとす る ものであ れる。 実際, 同報告書 においては,工場生産化 る。 もう一つ は,新 しい住宅生産 システムの開 の技術 を用いた大量生産が在来工法 と比較 して 発支援 であ り,連邦政府 の認定 した住宅 システ 効率的か否か とい う点 について,明確 な結論 は ム生産者 に対 し,研 究開発資金 を同政府が助成 述べ られていない。 す る とい うものである 。 これは さらに三段 階 に この ように, ジ ョンソン政権期 においては, 分 かれ, コンペ方式で生産 システムの提案 を募 住宅の工場生産化 が展望 されなが らも,その推 集 し,認定生産者 を決める第一段 階,い くつか 進 について明確 な方向性が確定 され るには至 ら の実験用 区画で試作す る第二段 階,実用的な大 なか った。両委員 会の成果の集大成 ともいえる 量生産 に移行 す る第三段 階か ら成 り立 っていた。 1 9 68年法 において も,上述 の ように,低所得者 この ように,大量生産技術 の開発 のみ な らず, 層向け住宅助成の拡充や住宅建設 目標 の策定 な その前提 と しての大量販売市場 の確立が一体 と どが盛 り込 まれる一方で,供給側 の助成 につい なって提起 されている点 に, ダグラス委員会及 ては,新技術 の研 究開発 に対 し一定の補助金が びカイザー委員会 の認識 の具体化 を見 て取 るこ 付与 され るに とどまった。工場生産化が本格的 とがで きよう。 に推進 されるため には,次 に見 るようにニ クソ つ ぎに,突破計画の具体 的内容 について見 て ン共和党政権 の登場 を待 たねばな らなかったの み よう。 まず市場集成 については,工場生産住 である。 宅 を許容す る建築法規 を州 レベルで制定 した り, 工場生産ユ ニ ッ トの輸送 に要す る鉄道及び高速 2 住宅の工場生産化の推進- ニクソン政権期- 道路料金 を引 き下げる努力が なされたほか,莱 ジ ョンソン政権期 において基本的枠組みが示 熟練労働者 を工場 で雇用 した り,逆 に熟練 した された住宅の工場 生産化 は,ニクソン政権 の発 建築労働者 を工場 での作業 に雇用で きるよう, 足 とともに急速 に具体化 されてい く。 それ を早 労働組合 との間で新 たな労働協約の締結が試み 968年法 の発効 によって住宅 めたのは,すでに1 られた。 また住宅生産 システムの開発 について 政策の枠組みが規 定 されている もとで,共和党 3 5 社 が参加 し,最終 は,第一段 階の コ ンペ に2 政権 としての独 自性 を示 したい とす るニ クソン 審査 に残 った37の企業 グループか ら22グループ 4) ,住宅 ・都市 開発省 の新長官 に 政権 の意 向 と1 が住宅 システム生産者 として認定 されることに 任命 されたジ ョー ジ ・ロムニーの イニ シアチブ なった。第 1表 は, この第一段 階の コンペ にお であった。 アメ リカン ・モー タース社の会長で いて最終審査 に残 った37グループの代表企業名 あった ロムニー は, 自動 車 生 産 と同様 の大量 を示 した ものである。それ による と, アルコア 生産技 術 が住 宅生 産 に も応 用 可 能 で あ る との 社, ボイス ・カスケー ド社,ゼネラル ・エ レク 969年 5月 に, 突 破 計 画 信 念 に も とづ き, 1 トリック社, USスチール社 な どのほか,ベ ク ( Oper a t i onBr e akt hr ough) と呼 ばれ る工場 生 テル社,マーチ ン ・マ リエ ッタ社, ダウ ・ケ ミ 産化推進 のための プロジェク トを打 ち出 した。 カル社 な ど, アメリカを代表す る企業が軒並み 突破計画 は,主 に 2つの内容か らなっている 。 参加 していることがわかる。 各生産 システムの 詳細 について ここではふれないが,いずれ も, 1 4) Downs、A‥ " The Succes sand Fai l ur e ofFeder al I I ous l ng Pol i cy"i n Th eGr e atSo c i e t y Le s s o n sfo rt h e Fut ur e ,edsbyGl nZ ber g,E,andSol ow,RM ,Nat 1 0nalAf f al r S,I n°. .1 974,p 135 自らの主業種部 門で開発 した技術 や システム, 新素材 な どを住宅生産 に応用 しようとした もの である 。 その大半 は,あ らか じめ工場生産 され 7 0 年代 アメリカにおける住宅産業の構造変化 と住宅政策 第 1表 49 突破計画のコンペ-の参加企業 アローデ ックス ベクテル アルコア ボール ・ブラザーズ ボイス ・カスケー ド クリスティア-ナ ・ウェスタン ・ス トラクチャーズ デスコン/ コンコ-デイア フォレス ト・シティ ・エ ンタープライズ ゼネラル ・エ レク トリック ヘ ンリー C.ペ ック ハ-キュリーズ ホーム ・ビルディング キーン レヴイソト・テクノロジー マテリアル ・システムズ モジュール ・コミュニテ ィーズ ナショナル ・ホームズ ペ ン トム リパブリック ・スチール ルーズ ・ウェイツ ショルツ ・ホームズ デベロップメン ト・コープ ・オブ ・アメリカ ダウ ・ケ ミカル ハウジング ・デベロップメン ト マーチ ン ・マ リエ ッタ ミッドシティ ・デベロッパーズ オムニフォーム レッドマン ・インダス トリー レルペ ック リング ・ブラザーズ セク トラ ・アメリカ テ ックリー ト・コンソーシアム U. S.スチール アーバ ン ・システムズ ・デベロップメン ト シェリー ・システム ス ターリング ・ホ-メックス TRW システムズ ・グループ 注1):最終審査 に残 ったグルー プの代表企業名のみ を示 してい る 各 グループは単独 の場 合 もあれば、複数企業の場合 もある 2):左側 に示 したのが、第二段階 に進 んだ22グループ。右側 の 1 5グループは落選。 出所 . 'Pr o fe s s i o nalBui l d e r ,Feb 1 970.よ り作成O た平 面パ ネルや立体 モ ジ ュー ル を現 場 で結 合 す る シス テ ム を志 向 してお り, それ まで の伝 統 的 な 2〝×4〝 (ツーバ イ フ ォー) 工 法 とは一 線 を 画 してい た15)。 この ように, プ ロ ジ ェ ク トへ の参加 者 の大半 走 的 で あ った。 Ⅰ Ⅰ Ⅰ 住 宅産 業 の構造変 化 と住 宅政 策 0年代 後半 か ら70年 冒頭 で も触 れ た よ うに,6 代 初頭 にか け て,住 宅産業 の構 造 は大 き く変容 が異 業種 部 門の大企 業 で あ った とい う事 実 は, した。住 宅建 設 業 にお いて上位 企 業へ の集 中傾 この計 画が,従 来 の住 宅建 設業 者 か らの要請 と 向が生 じる と と もに, モー ビルホ ームや モ ジュ い うよ りも,異業 種 部 門か ら住 宅 産 業へ の参 入 ラー住 宅 な どの工 場 生 産住 宅 の製造 業者 が成 長 の機 会 と して位 置 づ け られ てい た こ とを示 して し,今 日の住 宅 産業 の基本構 造 が形 成 され たか い る。 実際,住 宅建 設 業 者 の業界 団体 で あ る仝 らで あ る 。 この よ うな60年代 後半 に現 れ た変化 米住 宅建設 業者協 会 ( Nat i onalAs s oci at i onof の特 質 と, そ れ に対 して前節 で述べ た住 宅 政 策 HomeBui l der s:NAHB) は,在 来 工 法 の方 が が与 えた イ ンパ ク トを明 らか にす る こ とが 本節 効 率 的で あ る と して,工場 生 産化 の推 進 には否 の課題 で あ る 。 1 5) 突破計画で採用 された住宅生 産 システムについては, 『 建築生産』1 9 71 年 5月号 か ら1 97 3年 7月号 にかけての, 鈴 木 -氏 に よ る連 載 「 Oper at i onBr eakt hr oug h 」 に詳 しい 。 1 住宅建設業における構造変化 第 Ⅰ節 で述 べ た よ うに,住 宅建 設 業 の零細 構 造 は,60年代 半 ば にお いて も基 本 的 には変 わ ら 5 0 調査 と研究 第24号 ( 2 002.4) なか った。建設業 セ ンサス による と,1 9 67年 の ら1 972年初頭 にかけての同部 門 にお ける M&A 住宅建設 に従事 す る企業 の うち,約 3分 の 1は の うち,被 買収企 業 の年 間売上が 1 00 0万 ドル以 wi t houtpa yr ol l )企業 常雇 の従 業員 のい ない ( 件 で, その うち2 2 件 は1 969年 と 上 のケース は47 であ り,従業員 の いる企業約 1 1万社 について も, 1 97 0年 の 2年 間 に集 中 して い た20)。 また, M. そ の8 3. 1% は従 業 員 数 1 0名 に満 た ない企 業 で グ ッ ドキ ンに よる と,住宅 関連企業 の株式公 開 あ った16)。 これ ら零細業者 の多 くは職 人や不動 969年 には8 8社 ,1 97 0年 には45 社 であ り, は,1 産業者 な どの個 人業者であ り,モーゲージ信用 これ ら1 33社 に よる資本調達額 は,両年 にお け が潤沢 な時 には住 宅建設 に従事 し,モーゲージ 5 0 億 ドルの3. 8%に もの る全業種企業 の調達額 1 信用 が逼迫 す る とその間は別 の事業 を営 む とい ぼ っ た 21)。 ) 。 この ことは, う行動様式 を特徴 としていた17 モーゲージ金利が変動す る と,それが直接的に住 宅着工数 の増 減 に帰結す る こ とを意味 していた。 しか しなが ら,住宅建設業 において も,6 0年 こう した M&A や株式公 開 を促 進 したの は, 主 として次 の ような要 因であった 。 第一 は,長期 的 な住宅需要の拡大予測 に よ り, その当時,住宅産業 の将来性 が有望視 されてい 代後半 か ら7 0年代 初頭 にかけて比較 的大規模 な た こ とであ る。1 9 6 0年代後半 とい う時期 は,戟 企業が成長 し,上位企業へ の一定 の集 中傾 向が 後 のベ ビー ブー ム世代 が成 人 に な る時 期 にあ 968年か ら72年 にか け 見 られ る ようにな った。1 た ってお り,膨大 な住宅需要の発生が予想 され て, 年 間売 上 額 1 0 00万 ドル以 上 の企 業 数 は, 9 68年法 が 2, 6 00万戸 とい う住 宅建 てい たが ,1 11 9社 か ら369社- と増加 し, また年 間2 00戸 以 設 目標 を設定 した こ とに よって, こう した需要 上 を生産す る企業 の住宅着工戸数 に占め るシェ 予測が裏付 け され ることになった。つ ま り, コ アは,1 969年 か ら1 972年 にか けて1 7%か ら2 8% ング ロマ リッ ト型 の M&A ブー ム に陰 りが見 に上昇 した。 しか も,その2 8%の うち約 4分 の え始 め ていた当時 の株式市場 に とって,住 宅関 3は,年 間着 工戸 数 1 00 0戸 以上 の225社 に よる 2 ) 。 連株 は有力 な成長株 とみ な されたのであ る2 ものであ った18)。 こう した数値 は,以前 には例 第二 の, そ して よ り直接 的 な要 因は,1 9 69年 外 的 な存在 にす ぎなか った大規模建設業者が, 0年 にか けて生 じた信用逼迫 であ る。 これ か ら7 い まや一定 の企業 群 として登場 した ことを意味 は,零細 業者 に とっては住宅建設 か らの一時撤 していた19)。 退 を意味す るだけであ ったが,すで に投資 を活 9 69年か 上位企業- の集 中傾 向は, と りわけ1 発化 していた大規模 業者 に とっては,深刻 な資 0年 にか けての,不動産 開発 や住宅建設部 門 ら7 金調達難 を意味 した。 このため, それ まで個 人 にお け る活発 な M&A と株 式 公 開 に よって促 企 業的色彩 の漬か った住 宅建設業者 は,株式 を 進 され た。L.グ レプ ラ一 に よれ ば,1 96 4年 か 公 開す るか, M&A を通 じて大企業 の傘下 に入 るかの二者択 一 を迫 られ るこ とになった。 いず 1 6) Depar t me ntof Comme r c e,Bur e a u oft he Cens us , Th e1 97 2 Ce n s u sO f Co n S t r u C t i o 7 1I ndu s t r i e s ,1 975,pp. 1-ll. , 1 7) De par t me ntof Hous i ng a nd ur ba n De ve l opment Ho u s i n gi nt h eSe ve nt i e s ,1 973,pp.71 3. 1 8) I b i d. ,pp 79. 1 9) このような状況を象徴しているのが,1 96 8年の,住宅 建設大手1 1 社による住宅生産者会議 (Counci lofHous - i ngPr oduc er s ) の設立である。住宅建設業者の業界団 体としては,すでに NAHB が存在していたが,新しい 団体は,過去 3年間に年間最低500戸以上の生産実績が あることを入会の条件とするなど,上位企業のための団 体という性格を明確にしていた。以上の点について,詳 n,o p.c L t . ,PP 7679,を参照されたいO しくは,Goodki れ を選択 す るか は企業 の性格 によって異 なるが, 一般 に創業者一族 によるワ ンマ ン経営 を特徴 と す る企 業 の場 合,情 報公 開 を嫌 って M&A が 選択 され るケースが多 く23),それが住宅産業の参入 を も くろむ異業種部 門の大企業 の利害 と 2 0) Gr ebl er ,o p.c i t . ,pp.81 9 n,o p.c i t . ,pp.8283. 21) Goodki 2 2) I b L d. ,p 3 2. 2 3) この点ついて詳 しくは, I b i d . ,pp.1 32-1 39,及び Ei c hl er ,N,Th eMe r c h antBui l d e r s ,The MI T Pr e s s , 1 982,pp 151-1 57, を参照されたい。 5 1 7 0年代 アメリカにおける住宅産業の構造変化 と住宅政策 第 2表 買収年次 大企業による住宅及 び不動産企業の主要な買収事例 買 収 企 業 主要業種 被買収企業 Ki n gs b e r r yHo me s S. V. Hu n s a k e r 被買収企業 1 9 6 4 1 9 6 4 Bo i s eCa s c a d e Oc c i d e n t a lPe t r o l e u m 1 9 6 5 1 9 6 5 1 9 6 5 U. S. Pl y wo o d Ch a mp i o nPa p e r 製紙 .木材 Le we r s Co nCh e mc o 塗料及び関連化学製品 Na s h u a& Co o k e Ma n u f a c t u r l n g EV a n sPr o d u c t s 建 かノフォルニアの建設業者 ハワイの土地開発業者 1 9 6 6 Oc c i d e n t a lPe t r o l e u m 木材加工 石油 住宅 ( モジ の概要 ュラー)製造業者 移動住宅製造業者 Ca p p杖o me s プレカット住宅の専門業者 Be nDe a n eGr o u p G Ce o n r a e l r a R l i t d ) g e e V e P l o r o p p m e e r n t i t e C so r p. Ar V i d aCo r pt カリフォルニアの建設業者 木材加工 木材加工 Ra yA. Wa t t 発業者 カリフォルニアの建設業者 木材加工 Pe U . r ma Bu i l t S . La n dCo. La k eAr r o wh e a dDe V .Co. K Di V c o Wa y n e 建設業者 築資材 1 9 6 6 Ci t yⅠ n Ve s t l n g 1 9 6 6 We s t i n g h o u s eEl e c t r i c l 恥r l Pe n nCe n t r a 1 暖房 石油 .空調その他 1 9 打 1 舛丁 Bo i s eCa s c a d e Bo i s eCa s c a d e 1 9 6 7 l o 灯 l O r i T l 輔† Bo i s eCa s c a d e Bo i s eCa s c a d e Bo i s eCa s c a d e Te n n e c o 石油 工 1 9 6 8 1 9 6 8 1 9 6 8 1 9 6 8 Ⅰ TT Ame r i c a nSt a n d a r d Pe n nCe n t r a l Co mmo n we a l t hUn i t e d コングロマリット( 通信) Le V i t r n Co u n t yLa n dCo. カリフォルニアの開発 .建設業者 t& So ns 鉄道 空調その他製造 G Wi r e l a l i t a S mLyo nDe V. Co. o u t h w e s t C o r p . 石油 .不動産他 Su n s e tl n t e r n. P e t r l e u m 住宅建設業者の最大手 1 9 6 8 Wh i t t a k e rCo r p. 鋼材その他 電機 鉄道 木材加工 木材加 配管 . Ve c t o TCo. フロリダの土地開 開発業者 開発業者 移動住宅製造業者 か)フォルニアの建設業者 土地開発業者 6 0 年代に土地開発 .建設業に 建 l o 榊 Ame r i c a nFi n a n c i a l 金融 Co n t i n e n t a 1 9 榊 CNAFi n a n c i a 1 金融 La r wi nGr o u po l H me s 1 9 6 9 1 り 6 t j l 輔g 1 9 村 1 9 6 9 1 兆9 1 P 榊 i NACo r p . GACCo r p. We y e r h a e u s e r We y e r ha e u s e r Ci t yⅠ n V e s t l n g Mo n u me n t a lCo r p EV a n sPr o d u c t S. 1 9 6 9 Fu q u aⅠ n d u s t r i e s 1 9 6 9 7 0 AV c oCo r p. フロリダ フロリダの土地開発業者 進出 設 .請負業者 M. J . Br o c k& So n s コングロマリット( 金融) Gu l fAme r i c a nLa n dCo. 土地開発 .建設業者 かノフォルニアの建設業者 カリフォルニアの建設 .請負業者 土地開発業者 土地 暖房 .空調その他 建築資材 保険 Qu a d r a n tCo r p. Pa r d e eCo n s t r u c t i o nCo . Gu e r d o nⅠ n d u s t r i e s Mo n u me n t a lPr o p e r t i e s レジャー関連の複 Ri d g eHo me s プレカット住宅の専門業者 木材及び木材加工 木材及び木材加工 航空機 合企業 Ha f t Ga i n e s フロリダの土地開発 .建設業者 1 9 7 0 1 9 7 0 1 灯り Ⅰ n t e r n a t i o n a lPa p e r Co l u m b i a B r o a d c a S t i n gSy S t e m Ae t n aL i f e & C a s u a l t y 放送 保険 AV c oCo mmu n i t yDe ,.Co r p. Do n a l dL. Br e nCo. K i n g b e i l o. Ul r b a n t n VC . & De V. 1 9 7 0 Ce r r oCo r p . 鉱業 Le a d e r s h 1 9 7 0 1 9 7 0 Ⅰ n l a n dSt e e lCo r p . 鉄鋼 i pHo u s i n gSys t e ms Sc h o l t zHo me s 1 9 7 0 1 9 7 0 1 9 7 0 1 リ 丁 い Pi h i l i p Mo r r i S n g e r Co. sCo . Mo n o g r a mhd u s t r i e s A m e r i c a n Cy a n a id m Be t h l e h e mS t e e l 部品他 製紙 開発業者 かリオルニア及びネバダの大手住宅建設業者 移動住宅製造業者 建設-投資業者 Co. ミシンその他機器製造 Be s c oGr o u p タバコ Mi s s i o nVi e j oCo. レクリエーション用土地開発業者 南かノフォルニアの建設業者 アパート建設業者 シカゴの建設-投資業者 建設及びモービルホームパーク開発業者 住宅 ( モジュラー)製造業者 建設業者 土地開発業者 化学 鉄鋼 Ri n gBr o t h e r s Er V i n C o. Mu l t i c o n Co n s t r .Co. 住宅建設業者 アパート及びタウン 移動住宅製造業 衛生設備他 1 町 Na t i o n a lGy p s u m 石膏 DMHCo mpa n y 1 9 7 1 1 9 7 1 We y e r h a e u s e r We y e r h a e u s e r 木材及び木材加工 Ce n t e n n i a lC o n s t r u c .Co. We s t mi n s t e rC o . 木材及び木材加工 か )フォルニアのアパート建設業者 ハウス建設業者 者 テキ ノースカロライナの住宅建設 サスの建設業者 5 2 調査 と研究 第2 4 号 ( 2 0 0 2.4) 一致する ところ となった。第 2表 は,1960年代 第 3表 住 宅産業上位 2 5 社の事業構成の変化 半 ばか ら70年代 初頭 にか けての M&A の主 な 1 9 6 9 事例 を示 した ものであるが,石油か ら金融 まで 計 合 あ りとあ らゆる業種の大企業が買収企業 として 登場 していること,その結果, レビッ ト・アン ド・サ ンズ社 の ような住宅大手企業 まで もが大 企業の傘下 に取 り込 まれたことが見 て取れ よう。 0 0. 0 3 2. 7 6 7. 3 4 1 5 5. 4 8 0. 3 1 3 3 l l. 9 8 3, 6 0 9 1 5 5, 2 9 0 低層 アパ ト ート 中層 アパ ー ト の有する豊富 な資金 を活用 して,あるいは資本 高層 アパ ー ト 12 45. 4 5 4. 6 4 2 9 5 3. 6 1. 9 8. 8 1. 0 一戸建住宅 集合住宅 アパ ー こうして,住宅建設業の上位企業 は,大企業 市場か ら直接資金 を調達することによって積極 1 0 0. 0 1 9 7 タウ ンハ ウス 的に規模拡大 を進 めていった。その特徴 は,た んに大量生産 によるスケールメリッ トを追求す るとい うよ りも, む しろ事業の多角化 を推 し進 参考 出所 : : 総着工戸数( Depar t ment戸) t h eS v e n t i eUr ,Ho u s i n gm ment o fHo u s l ne g a n d ban Devel opより作成 22. , s ,1 973,p.7- めるこ と,す なわち,複数地域 ( mul t i a r ea), 複数事業 ( mul t i pr oj ec t )経営の追求 にあった。 これは,従来の住 宅建設業者の圧倒 的部分が単 1 968年法で新設。されたセクシ ョン235や2 一の市場かつ一戸 建住宅 に特化 した事業 を行 っ れているプログラムであるこ条 によって規定 さ て きたのに対 し,複数の市場 に進出 し,一戸建 の ように略称 される。 以下 もとか ら,一般 にこ 住宅か ら集合住宅や タウンハ ウス24)などへ事業 子補給 プログラムは,一定金利以上 同様。) な どの利 国住宅法の第235条及び第236 全 36 ( 構成 を拡大 す る とい う ものであ る。例 えば, いて政府の補助が受 けられたことかの負担 につ 1 969年 の年 間着工戸数上位約500社 についてみ の信用逼迫期 に有利 な事業拡 ら,1969年 る と,事業領域 としている州の数は,上位 25社 用 された。第 1図は,連邦政府 大の手段 として利 で平均 9. 04州,26-200位 の企業で2. 6州,201 住宅の全住宅 に占める割合 をみ による補助付 き 24州 と,上位企業 ほ ど多 くの州 -5 00位 では1. モーゲージ金利の高騰 ととも た ものであるが, にまたが って事業展 開をす る傾向が強 くなって していることがわかる。 上位 にその比率が上昇 いる25)。 また,同 じく上位25社の事業構成 をみ ログラムの利用状況 を正確 に把握す 企業 による補助 プ ると,第 3表 に示 されているように,1969年か きないが, グ レプラ一による と,1 ることはで ら72年 にかけて一戸建住宅の割合が低下 し,代 200戸以上 を生産 した企業 による補971年 に年間 わって高層 アパ ー トや タウンハ ウスな どの集合 ムに もとづ く着工戸数は2 住宅の割合が増大 していることがみて とれる。 戸数の約40% を占 この ような多角的事業経営のメリッ トは,市場 助 プログラ 000戸で,全着工 0万1 他方,事業の多角化 と並行 2 6)。 めていた の規模が限 られ,かつその地域特有の景気循環 おける川下部 門への統合 も進 して,住宅産業 に の影響 を受 ける といった,単一市場 に特化す る 住宅 ロー ンの融資業務 を行 うんだ。す なわち, ことの リスクを回避で きる点 にあった。 会社の設立である。 モーゲーモーゲージ金融子 ところで,事業 の多角化 に際 して,上位企業 モーゲージ市場が逼迫 してい ジ金融子会社 は, が積極的に活用 したのが連邦政府の低所得者層 安定的な資金供給 を行 うととる際 に,親会社 に 向け住宅補助 プログラムであった。 とりわけ, 促進のために市場金利 よ りも低金 もに,住宅の販売 行 うことが可能であったため,70利での融資 を 24) タウンハ ウス とは,一世帯用の住宅で,居住単位が壁 で仕切 られた長屋造 りの建物のことを指す。 25) Depar t mentoff l ous i nga ndUr banDevel opment ,o p. c L t . ,Pp.711 7. 立が相次 いだ27 年代初頭 に設 ) 。それはまた,資金調達面での 7 0 年代 アメ リカにお ける住宅産業 の構造変化 と住宅政策 第 1図 補助付住宅の着工戸数 と金利 の推移 ( 単位 :%) ( 単位 :万戸 ) 2 5 0 2 0 0 1 5 0 1 0 0 5 0 0 0 1 0 2 4 6 8 1 9 6 3' 6 4 ' 6 5 ' 6 6 ' 6 7 ' 6 8 ' 6 9 ' 7 0 ' 7 1 ' 7 2 ' 7 3 1 9 7 4 出所 :補助付住宅 については,U. S.Congr e s s ,He a r i ngb e f or et h Cur r e ntEc o no mi cSi t u at i o nandOut l o o kfo rt h eHo u s mgI n d u soi eJ ntEc onoml CCommi t t e e, pa r t me ntofCommt s i on,p 16,非補助 住 宅 につ いて は,De r y ,94t hCon gr es sl s tSes d e r c e , Bu r e a uoft heCens us Ho , e r alRe s e r v eB u l l e t m, よ u s i n gSt ar t s ,モ-ゲ-ジ金利 上位企業の優位性 を高める もの については, 以上のように,住宅建設業者 であった。 は,連 補助 にもとづ く住宅需要の拡大 に依拠 邦政府 の 市場集成 を前提 とした大量生産では しつつ も, それでは, この ような工場生産住 り作成。 対 し,突破計画は どの ような影響 を及 宅の普及 ぼ に だろうか。あらためてこの間題 を検討 してしたの 突破計画 における住宅生産 システムの みよう。 らを ろ分断 された市場 を前提 とし,それ な く, む し 上記の 4つの タイプの うち, とりわけ み合わせることで規模 重点 を置いていた。工場生産比率が 複数組 開発 は, ( 参と③ に は④ であったが,それは建築法規上は 最 も高いの 2 住宅の工場生産 拡大 を追求 していった。 6 0年代後半 におけるもう一つの変 化 の進展 ,「住 住宅 とみ な されなかったため 標準的な 産化」 の推進 とい う目的か らは,建築 宅の工場生 生産住宅が住宅市場 において一定の化 は,工場 致 し,かつ工場生産比率が高い② と( 法規 に合 め るようになったことであ る。 工場生産住 シェアを占 れたのである。 コンペ によって選ば 参が重視 さ は, LSIシステムズの分 類 に よる と,( 宅 と ムの多 くは, さらにそれを木材ではれたシステ カッ ト住宅,②パ ネル化住 宅,③モジ ヨプ レ びセ クショナル住宅,④ モー ビルホー ュラー及 リー トや な くコンク する もの鋼材等の新素材によって生産 しようと しか し,量産技術 であった。 によって住宅 コス トを低減 1 2 8), それ らを合 計 した生産戸数 を さすが ムの は, 4つ 97 3年 には7 7万 4, 0 00戸 と, 1- 4世帯 びモー ビルホ 住宅及 \び となった住宅部材の販売用パ セ ク シ ョナ ル住 宅 ( ッケージ。③ ジュラー及 modul ar / s ec t i ona lモ ho us e) 工場 で生産 され,最小 限の現場労働 で組み立 てる ように 設計 ( moされた,立体型の住宅ユニ ッ ト。④ モー ビルホーム るに至 ったか29ら工場生産住宅 ームの総生産戸数の2 . 7%を占め 2 8) 7 )。 0年代 に関す るデー7 タを収集 してい している LSIシステ 産住 宅 を次 の 4種 に分類 る 。① プムズは,工場 レカ ッ ト住宅生 ( pr ec ut hou s e) 事前 材 加工 のをほ られていない住宅部 pa nel i z e d 販 売どこ 用 パしてあるが,組 ッケー ジ。② み立 パ ネて ル化 住宅 ( hous e)- 壁 パ ネルや屋根, 床 な どの平面 コ ンポー ネ ン トの他, さ まざ まな建築部 材,設備 な どが セ ッ ト/ 立 体b 型 の住 宅 ユニ ッ工場 で生 産 され る, 台車 のつ い た l l eh om e) o fHo us i n gMa nu fa c t ト。 ( LSISys t ems ,Th eRe dBo o k ur e r s , 1 986,pp I I I i V) な お, そ れ ぞ れの特 徴 につ いて は , Re i del ba c h,JA.Jr l arHo u s i n gi nRe a . ,Mo duモ ジュラーハ l ,Ca hne rBooks .1 970 ( 『 鈴 木-釈 L 29 )した。 F e 97 4年) も参照 ウジ ング』工業調査 会,1 5 3 5 4 調査 と研究 第24号 ( 2002.4) す る とい う目的か らす る と,その成果 は満足 の とを意味 していた32)。 い くものではなか った。 もともと各 グループの この ように,突破計画 は,効率的な量産技術 シス テ ム は,多 分 に実験 的, 挑 戦 的 な もので の開発 とい う点では基本的 に失敗 であ った とい あった とはいえ,第二段 階 を終 えた時点で,そ えるが,工場生産住宅- の社会的認知 を高める の大半が実用性 に乏 しく, また実用 的であ った とい う点では一定 の成功 を収 めた。 したが って, として も在来工法 の コス トを上回ることが判明 コンクリー トや鋼材 を用 いた工場生産住宅 こそ した。効率 的な量産技術 の開発 は突破計画の主 普及 しなかった ものの,従来 か らの木造 モジュ 眼であっただけに, この結果 は計画その ものに ラー住宅やモー ビルホームな どは,上述 の よう 対す る失望や批判 を招 くことになった。一般 に, に一定の生産の伸 びを示 した。そのなかで も特 突破計画 は失敗であった と評価 されることが多 に急激 な増加 を示 したのがモー ビルホームの生 いが,その場合の根拠 とされているのは主 とし 産であ った。 て この点である30)。 すで に述べ た ように,モー ビルホームは建築 もっ とも,突破計画 を全体 として見 た場合, 法規上の住宅 とはみなされず,住宅 ロー ンの対 それが工場生産住 宅の普及 に果た した役割 は決 象 に もな りえなかったため,従来その需要 は限 して少 な くはなか った。その一つが,同計画の られた ものであった。 しか し工場生産住宅への もう一つの軸であ る市場集成 における成果であ 社会的認知が高 まる とともに,モー ビルホーム まず建 築法 規 の問題 で は, 第二段 階が終 969年 には,モー を取 り巻 く環境 も変化 した。1 0州の うち20の州で工場生 わった時点 で,全米 5 ビルホームの購 入融資 に対 して FHA が信用保 産住宅 を許容す る法が制定 され, また輸送 コス 証 を行 うようにな り, さらにモー ビルホーム ・ トの問題 では,モ ー ビルホームやモ ジュラー住 パー クと呼ばれるモー ビルホームを設置す る専 宅生産者の働 きか けによ り,高速道路料金の値 用用地の開発 に対 して も, FHA の保証 が受 け 下げや運送規制の緩和がはか られた。 さらに労 970年 には,1 9 68 られるようになった3 3 ) 。 また1 働力の面 では,大工 ・電気工 ・配管工 の全 国組 年 法 で定 め られ た住 宅建 設 目標 が改訂 され, 合やその他 の建設労働組合 との間で,工場 内で モー ビルホームの生産が建設 目標 に取 り入れ ら る 。 ) 。 の住宅生産 に関す る労働協約が締結 された31 0年代初頭 には,上 れることになった34)。さらに7 こう して,市場集成の取 り組み を契機 として, 述の ように,突破計画 に もとづいて,工場生産 次第 に工場生産住 宅 を受 け入れる土壌が醸成 さ 化 を妨 げるさまざまな制度的障害が除去 された。 れていった。 この ような環境 の変化 を背景 として,モー ビ もう一つは,住宅生産 システムの開発が間接 0年代後半 か ら7 0年代初頭 に ルホームの生産 は6 的 に与 えた影響である。第一段 階の コンペの結 かけて急激 な増加 を示 した。第 2図 に示 したよ 莱,連邦政府 による直接 的 な補助 を受 け られた 962年 うに,その市場 シェアは着実 に上昇 し,1 のは22の グループであったが, コンペ に応募 し 97 3年 には には 7% にす ぎなかった ものが, 1 た企業 の総数 は235社 であ り, その多 くは落選 22%にまで達 した。住宅価格全般が高騰す る も 後 も工場生産住宅へ の取 り組 み を継続 した。 こ とで,工場内での量産が可能 なモー ビルホーム の ことは,直接的 な計画 よ りもはるか に大 きな は,比較的低価格 での供給が可能だったか らで 親模 で,工場生産化 に向けた投資が行 われた こ 3 0) 突 破 計 画 に対 す る批 判 と して は,Hous e& Home誌 に掲 載 され た次 の よ うな論説 が あ る。 Robl nS On,M 上 " Pl ea s e,l e t ' Snots t a r ta l lt hatnons ens ea bouti ndus - "Hous e@ Ho me ,Nove mber , t r i a l i z e d hous i ng a ga i n, 1973,pp.6371 建築生 産』1 97 2 年1 0月号,1 0 4-1 06ページo 31 『 ) 973年 を ある。 しか しその ような増加傾 向 も,1 境 として急速 に減少 に転 じることになる。 第一 3 2) 同上誌,108-109ページ。 33) Rei del ba L C h,o p. c i t .( 邦訳,63ページ) 0 3 4) Mes s a gef r om t hePr es i de ntoft heUni t ed St a t e s , Se c o n dAm u alRe po r to nNa t i o n alHo u s i n g Go al s ,91 5 t Congr e s s ,2ndSe s s i on,Apr l 12,1 970,p 1 4. 7 0 年代 アメリカにおける住宅産業 の構造変化 と住宅政策 第 2図 モー ビルホームの出荷数 とそのシェアの推移 万戸 7 0 6 0 5 0 4 0 3 0 2 0 1 0 0 ' ' ' 1 9 6 2' 6 36 4' 6 56 6' 6 7' 6 86 9' 7 0' 71' 7 2' 7 3' 7 4' 7 5' 7 6' 7 7' 7 8' 7 91 9 8 0 t ur e dHo us 出所 :Manu mgDe fac 2 1 万戸 0 5 0 l e r 第a 3 図 ,Oc 民 t1 間住宅着工戸数の推移 980 より作成。 ■ ー + 一 一 粒 一 - 総数 一 2 5戸 戸以 -建 4戸 上集合 集合 ▲一、 `/ / \ \ヽ ゝJ \\/ ′ ー ▲ー \ ヽ ヽ 7 2' 7 3' 7 4' 7 5' 7 6' 7 7' 7 8' 7 9 1 9 6 4' 6 5' 6 6' 6 7' 6 8' 6 9' 7 0' 71 ' o heCe 出所 :U. S.Bur ea uoft 9 8 0 ns us ,Co ns t r uc t i ,Sm e sCnRe po r t s 20,Ho us i n gSt ar t s ,より作成1 1 0 5 0 次 オイルショックな どを契機 として,70 。 頭 の住宅ブームが終蔦 に向か うか らである 年代初 。 の増加 を示 し,1 9 ず, れは次 に見 るように,モー ビルホームのみなそ ら 伸 びが著 大の規模 に達 した。なかで も着工戸数の しかったのが集合住宅であ り,1 966年 戦後最 ,住宅着工戸数は43% 600戸 とい う 72年 には235万6, か あった。 住宅産業全体 に深刻 な影響 を及ぼす もので Ⅰ 1 住宅Ⅴ ブー住宅 ブームの終蔦 と住宅産業 ムの終蔦 と大企業の撤退 1 969年か ら 70年 にかけ 場金利が低下する と, アメ ての信用逼迫の後,市 リ した ように, ブームが発生 した。 第 3図 に示 カでは空前の住宅 197 0年か ら71年 にかけて 5 5 5 6 調査 と研究 4 号 ( 2 0 0 2 .4) 第2 を目的 と して, セ クシ ョン236な どの補助金が 勝 と金利 の上昇が進み,建築過剰が顕著 になる 拡充 された こと, さらに賃貸住宅- の投資 に対 と, シ ンジケ- シ ヨンは一転 して建 設 業者 に す る税制優遇措置 が採用 された ことな どが影響 とっての桂桔- と転化 す る。 なぜ な ら,固定価 していた。 格ですで に販売契約が な された後 では, コス ト しか しなが ら, この ような空前 の住宅 ブーム 上昇分 を価格 に転嫁す ることもで きず, さらに 973年か ら75年 にかけて終幕 を迎 えること ち,1 その契約 は しば しば投資家 に対す る利潤保証 を になる。 直接 的な原 因は, インフレ圧力の増大 伴 っていたため,賃貸料収入の減少 を企業側が に伴 う建築資材価格の高騰 と金利 の上昇,それ 負担せ ざるをえなか ったか らである。 これはア に拍車 をかけた第一次 オイルシ ョック,そ して パ ー ト事業 を積極化 していた企業 に対 し,巨額 低所得者層 向けの連邦補助 プログラムの停止で ) 。 の損失 をもた らす ことになった37 あった35)。それは成長 を続 けていた住宅産業 を アパ ー ト事業 に よる損失 は, と りわけ60年代 一転 して不況 に陥 らせ ることになるが, なかで 末 に株式公 開 した企業や大企業の傘下 に入 った も最 も深刻 な影響 を受 けたのは,事業 を多角化 企業 において深刻 であ った。 これ らの企業 は, し,集合住宅の建設 を活発化 していた上位企業 投資家や親会社の要求 に応 えて短期 間で一定の であった。 なぜ な ら,当時の住宅 ブームは次の 収益 を確保す ることを迫 られていたため に,収 ような特徴 を有 していたか らである。 益性 の高い集合住宅, なかで も短期 間で利潤 を 第一 に,上位企 業 を中心 とす る集合住宅への 確保で きるシンジケ-シ ョンに対 して積極的 に 投資の急増 によ り,集合住宅の建築が過剰化 し 投 資 を行 ってい たか らで あ る。 その典 型例 が 9 7 0 ていた ことである。賃貸住宅の空室率 は,1 I TT 社 と レビッ ト ・ア ン ド ・サ ンズ社 の ケー 年 には全 国平均 で 5. 3%であったが,1 9 7 4年 に スであ り, レビッ ト社 は,親会社 の要求 に応 え 2% に上 昇 し, と くに建 築 過 剰 が顕 著 で は6. 97 3 るため にアパ ー ト事業 に深入 りした結果 ,1 6 ) 。 この あった南部では 8%にまで達 していた3 年 に1, 400万 ドルの損 失 を計上 し,大手企 業 の ため,第 3図 に示 した ように,集合住宅の新規 地位 か ら完全 に脱落す ることになった38)0 着工戸数 は,一戸 建て住宅 のそれ よ りもはるか I TT 社 の ケース は,1 97 4年 の レビッ ト社 の 0年代後半のブー に急激 な減少 を示 し, しか も7 売却で終止符が打 たれたが,その他 にも,大企 ム期 において も, その着工戸数 は 目立 った回復 業 と住宅建設業者 との合併 が不調 に終 わった例 をみることはなか った。 は少 な くなか った。異業種部 門に属す る大企業 第二 に, アパー トの建設及 び販売 に際 して不 は,住宅産業の特性 を理解せず,短期的 な利潤 動産 シンジケ-シ ョンが活用 された ことである。 の確保 を期待 していたため,子会社 の経営方針 これは,複数の投 資家の資金 を集めて不動産 に と対立 してその トップの辞任 を招 くケースや, 投資す る手法 で,投資家 に とっての メ リッ トは あるいは従来の経営手法が通用 しない ことがわ 主 に不動産所有 に伴 う節税効果 にあ ったが,一 かる と,早 々に住宅産業か ら撤退す るケースが 方建設業者 に とっての メリッ トは, シ ンジケ- 多か った。 さきの第 2表 に登場 した例 でいえば, シヨンとの間で販売契約 を結ぶ と, アパー トを 968年 にベ ン ・ オ クシデ ン タル ・オ イ ル社 は 1 建設す る以前 の段 階で手数料収入 を得 ることが デ ィー ン ・グルー プ を, ア メ リカ ン ・ス タ ン で き,それが しば しば建設事業 による利潤 を上 971年 に ウ イリア ム ・ライ ア ン ・ ダー ド社 は 1 回ることにあ った。 しか し,建築資材価格の高 デ ィベ ロ ップ メ ン ト社 を, イ ンターナ シ ョナ 35) 連邦補助 プログラムの停止 について,詳 しくは,拙稿, 前掲論文 を参照 されたい。 3 6) Depa r t mentofHous i ng a nd Ur ba n De ve l opment 、 HUDSt at i s t i c alYe ar b o o ko f1 977,p・365. 37) 以上の ようなアパ ー ト建設 とシンジケ- シ ョンとの関 C hl e r ,o p.c i t . ,pp 1 77-1 79. ,及 び , 係 に つ い て は, EI Pr o fe s s i o na lBul l d e r ,Jul y1 975.pp 8081 を参照 した。 3 8) pr o fe s s i o n alBui l d e r ,Jul y1 974,p 94. 7 0 年代 アメリカにおける住宅産業の構造変化 と住宅政策 5 7 ル ・ペーパー社は1 9 7 2年 に ドナル ド・L・ブレン 況期 を乗 り越 えた上位企業 は, タウンハ ウスや 社 をそれぞれ売却 し, また各種不動産事業 に進 集合住宅 などへ と製品構成 を多様化する ととも 出 していたボイス ・カスケー ド社 も,1 971年か に,買収 などを通 じてモー ビルホーム,モジュ ら7 2年にかけてほ とん どの子会社 を手放 した39)。 ラー住宅 などの工場生産住宅の分野 に進出 し, こうして,異業種部 門か らの住宅産業への参 さらに土地開発やモーゲージ金融 な どの関連業 入は,住宅建設業者の買収 とい う方法で も, ま 務 を事業部門に加 えて,従来の複数事業経営 を た突破計画の ような主業種部門の技術の応用 と 一層徹底 していった。 こうして住宅産業の上位 い う方法で も,次第 にその限界が明 らか となっ 企業は,活動範囲 を全国に広 げ, さらに-企業 た。住宅 ブームの終若 に よって,住宅需要の右 内において各種 の住宅需要 に対応で きる体制 を 肩上が りの拡大が これ以上期待で きないことが 整 えることで,住宅市場 に固有の不安定性,す わかると,大企業の関心 は後退 し,一部の企業 なわち金利の変動 や需要の変動 に伴 うリス クを を除いて住宅産業か ら撤退 していった。ロムニー ヘ ッジ し,全体 として安定 した利潤 を獲得で き 長官が展望 した,大量生産体制の確立による住宅 る体制 を構築 していった。突破計画が,大量販 産業の変革は,ついに実現することはなかった。 売市場 と大量生産技術の確立 によって住宅市場 それでは,その後の住 宅産業は現実 には どの に固有の障害 を克服することを意図 していた と ような発展方向をた どったのだろうか。最後 に す ると,上位企業 は,む しろそれに適応するこ この点 について検討 してお こう。 とによって,規模 の拡大 を実現 していった とい ) 。 えよう41 2 上位企業の成長 と生産過程の変革 それでは,工場生産化への取 り組みは,住宅 住宅ブームの終蔦 によって,集合住宅 を事業 ブーム期の一過性の ものにとどまったのだろう の中心に据 えていた企業が苦境 に立 たされる一 か。決 してそ うではない。それは突破計画が意 方で,一戸建 て住宅 を中心 に据 えるなどして被 図 した ような革命的な変化 こそ もた らさなか っ 害 を比較的小 さく抑 えた上位企業は,不況 を乗 た ものの,徐 々に, しか し確実 に生産過程 の変 り切 るとともに,一般 に次の ような発展方向 を 革 を実現 していった。 た どった。 突破計画が 目指 したのは, 自動車産業のア ッ 第一は,地理的な事業領域のいっそ うの拡大 セ ンブリ-ラインの ように,住宅生産 を現場生 である。7 0年代初頭 の段 階で,すでに上位企業 産か ら工場生産へ と置 き換 えることであった。 の事業領域 は複数の州 に及 んでいたが,7 0年代 しか し,それ とは異 な り,工場生産技術 は,む を通 じてそれはさらに拡大 し,80年代初頭 には しろ現場生産 と工場生産 とを効率的に組み合わ 全国的な展開をみせ るようになった。例 えば, せ るとい う形態で浸透 した。新 しい技術 によっ 1 973年 に生産量で第 1位 であった リンカーン ・ て部品生産は着実 に現場生産か ら工場生産へ と 2の州 を事業領域 として プロパテ ィ社 は,当時1 置 き換 え られてい き,建設労働者の役割は,吹 いたが,1 9 83年 にはそれはほぼ全国 にまで拡大 第 にプ レハ ブ部 品の組み立 て役 へ と変化 して し,同 じく第 2位 であった U.S.ホーム社 も, いった42)。第 4表 は,工法別 に見た住宅生産戸 1 9 73年の 9州か ら,1 983年 には3 0州 にまで事業 数の推移 を示 した ものである。 それによると, 領域 を拡大 した40)。 工場生産住宅 よ りも,工場生産技術 を利用 した 第二は,事業部門の多角化の推進である。 不 建設業者 による住宅の シェアが一貫 して上昇 し 39) この ような破綻 の経 緯 につ いて は,Goodki n,o p.c a t . , pp 1 45-1 56,に詳 しい。 40) 1 9 7 3年 につ いては, Hous e@ Home ,Ma r c h1 974,1 9 83 年 については,Bui l de r ,Ma y1 984,を参照。 生産 よりも,現場生産 と工場生産の組み合わせ ていることがわかる。 このことは,完全 な工場 41) Schl es l nger ,Er l i c ho pc t t . ,p 1 49. l d "pp 1 53-1 54 42) I b 5 8 調査 と研 究 第 4表 第2 4 号 ( 2 0 0 2.4) 工法別 の住 宅生産戸 数 の推 移 宅 建設業者 工場生産技 を用 い る に モ ー工場 ビル生産住 パ プレ ネル化 カット. . 術 モ ジ ュ ラー ホーム 建 その他 に設業者 よる住 の 合 計 1 9 7 2 5 7. 6 2 2. 1 よる住 宅 1 6. 3 寡 数 1 9 7 6 1 9 7 4 1 9 7 8 2 4 3 2. 9 2 7. 6 7 1 4. 1 7 1 2 1. 7 1 2. 6 1 5. 9 2 3 4 6 6 3 1 0 6. . 8 9 1. 9 1 1 0 7 1 2 6 5 2 0 2. . 7 4 9 5 1 8 3. 萎 1 9 8 0 1 9 82 1 9 8 4 1 9 8 6 21. 6 2 3. 9 2 9. 5 2 1 5. 8 1 0. 0 1 5. 4 1 5. 0 6 6. 1 1 6. 4 2 9. 1 47. 1 7 6. 7 4 1 1 8. 5 9 7. 4 1 5 0. 7 碍 1 9 7 2 1 9 7 4 1 97 6 2 8. 4 2 6. 0 1 6 . 5 9. 0 1 0. 9 l l. 6 l l 4 1 7. . 0 8. 0 1 0. 0 1 0 6 3 1. . 2 5 2. 7 5 2. 4 6 7 7. 5 1 0 10. 0 0 0 . 0 1 5 4. 7 比 成 ) % 1 9 8 0 7 8 1 9 82 1 8 2 5. 0 2 4. 5 l l. 8 1 3 0. 3 1 2. 8 1 2. 7 4 6 0 1. 5 5 5. 8 1 0 0. 0 1 0 0. 0 1 9 8 4 6 1 8 9. 7 6 1 l 0 l. 2 0 0 2 2 1 6 9. 8 3 5 0 1 4 8. 4 9 1 0 0. 0 ノ ) コ ( 宅 注 出所 :1 :L -S 4 戸建住宅についての合計。 , I nc . ,Th eRe dBo ,1 9 8 6 ,p. o ko fHo u s i n gManu fac t ur e r s I Sy s t e ms 第 5表 工 場 生産住 宅 上位 1 0州 ( 1の市場 シェア 名 州 9 8 0年) ( 単位 :%) 1 5.より作成o においては,工場生産住宅 はかな り一定の地域 めるに至 っている。 第 5表 は,工場生産住宅 の比重 を占 1 2 イ リノイ 地域名 シェア ウェス トバ ー ジニ ア 中西部 3 4 アイオ ワ 中西部 コネチ カ ッ ト 北衷部 5. , 1 42 3 8 3 4 7 7. 3 が読 み取 れ る。 これ らの地域 で は現場労働 こと 6 5 サ ウス ダコタ 中西部 3 4. 6 産 コス トが低 くなるためである。 こうして,工 7 8 イ メ ウリ ンデ ィス コ ィアナ ンシ ン 中西部 3 0 1. 4 3 9 1 0 ラン ド オハ ー イオ 北衷部 中西部 ニューヨー ク 北衷部 2 6. 9 6. 6 シェアが高い上位 10州 を示 した ものである の いずれ も中西部及び北東部 に集中 しているが, が不足 してい るため,工場 生産住 宅 の方が生 者 ト5 住宅、 注 :各州の全住宅着工戸数 に占める、プレカッ 2 . 2 パネル化住宅、モジュラー住宅の合計戸数の割 出所 :CMRAs s o c i a t e s ,I n c . ,Th eRe dBo o ko f 合。 i n gManu fa c t ur e Ho u s - の方が,生産効 している とい 場生産化への取 なが らも,着実り に住 組みは,地域的な差異 宅産業 の なか に浸 透 を伴 して い いった 関連 ところで,以上の 。 ような工場生産化の浸透 と ような注 して,住宅産業の生産過程 目すべ き変化 においては次の ,より作成。 T I S1981 率 において優位であることを示 えようにみると,各工法別の市場 もっとも,地域別 。 シェアには大 きなば らつ きがあ り, 7 0 年代アメリカにおける住宅産業の構造変化と住宅政策 5 9 ope ns hop)制43) におけるオープン・ショップ ( の導入が進め られた ことによる ものである。 そ の進展 と直接的にどのような関連があるかにつ の狙いは,い うまで もな く非組合労働者の活用 な くとも工場生産技術の浸透 による熟練技術 の による労働 コス トの削減であった。 オープン ・ 解体が,一定の技術水準の維持 とい う面で建設 0年代 を通 じて急速 に浸 透 し, シ ョップ制 は7 労働組合が果た して きた意義 を低下 させ,その いてここで十分明 らかにす る余裕 はないが,少 NAHB が会員企業 に対 して実施 した調査 に よ 交渉力 を弱めたことは確かである。 この ことは, 9 6 9 年 に非組合労働者 を雇用 していた企 る と,1 住宅の商品特性 に規定 されなが らも,住宅産業 業 は全国で5 2%であったが,1 9 7 6 年 には9 2%に が着実 に資本主義的な発展 をとげていることを まで上昇 した。 しか もそれは小規模企業 ほ ど顕 示 している証左 といえよう。 著で,年間5 0 1 戸以上 を建設す る企業では7 2% お わ りに であったのに対 し,1 0 戸未満の企業では9 4%で あった44)0 本稿 を締め くくるにあた り, これ までの考察 オープン ・シ ョップ制の推進の背景 には,建 設業者のみならず,建設業者の顧客の側か らの によって明 らか となったことをい ま一度要約 し てお こう。 要求 も伏在 してい た。6 0年代 後半以 降 の急激 貧困問題 に対応 した6 0 年代 の住宅政策は,低 なイ ンフ レに よって,工場 その他 大型施 設 の 所得者層 向け住宅 という住宅産業 に とっての新 9 6 9 建設 コス トの高騰 に直 面 した大企 業 は, 1 たな市場 を創出す る と同時 に,住宅の工場生産 年 に建 設利 用 者 に よる 反 イ ン フ レ円卓 会議 化 に向けた取 り組みを現実化 させ,住宅産業へ ( cons t r uc t i onUs e r s 'Ant i Ⅰ nf l a t i onRoundt a bl e ) の投資 を促進す る契機 となった。異業種部門の を結成 し,建設 コス トの引 き下げを要求 した。 大企業 は,既存の住宅産業の買収 と,工場生産 この会議 は1 9 7 2 年 にビジネス ・ラウン ドテーブ 化への 自社技術 の応用 とい う 2つのルー トを通 Bus i nes sRoundt a bl e) に統合 され, その ル ( じて住宅産業へ と参入 し,既存の住宅産業はま 要求は産業界全体 の要求 となっていった。 ビジ た,その機会 を積極的に活用す ることで規模拡 ネス ・ラウ ン ドテー ブ ルは,表 立 って オー プ 0 年代初頭 には,住宅建設 大 をとげていった。7 ン ・ショップ制 を推進 したわけではないが,ス 業 において上位企業の成長が進 む とともに,工 トライキを起 こ した組合労働者 を建設工事か ら 場生産住宅が住宅市場 において一定の シェアを 排除するなどして,建設業者の運動 を後方か ら 支援する役割 を果た した45)。 これは工場建設 な 占めるに至 った。 もっとも, この ような変化 は,一方で多分 に どの分野で生 じた要求であった とはいえ,住宅 ブーム的な要素 を含 んだもので もあった。異業 を含む建設労働全体 に広 く影響 を与 えず にはお 種部門による住宅産業の買収 は, とりわけその かなかった。 ブームに乗 り, さ らにそれ を促 進す る もので オープン ・シ ョップ制の普及が,工場生産化 あったため,住宅 ブームの終若 とともに限界 を 露呈す ることになった。 また,工場生産化の試 43) オープ ン ・シ ョップ とは,組合員であるか否 か を雇用 の条件 としない労働協約 の ことを指す。反対 に クローズ ド・シ ョップ ( c l os e ds hop) の場 合,協 定 を結 んで い る組合の組合員以外 は雇用 す ることがで きない。 44) Suml C hr a s t ,M. ,Fr a nkel ,S. A,Th ePr o fi l eo ft h e Bul l d e ra ndHi sI ndus t r y ,p.203,Sumi c hr a s t ,M. ,Ahl ul a,G. ,Shee han, RJ . ,Pr o fi l eo ft h eBui l d e r ,NAHB, wa l 1 979,p.1 58. I . R. ,Nor t hr up,D, 0,OpenSho pCo ns t r uc 45) Nor t hr up,f t i o nRe v i s e d ,Tr us t ee sofUnl Ve r S l t y OfPe nns yl va ni a 1 984,pp.2425. み も,実用化 には乏 しく,異業種部門に参入の 機会 を提供 す る ものではない こ とが 明 らか と なった。 こうして大企業の多 くは住宅産業か ら 撤退 し,突破計画 によって展望 された,住宅産 業 を大量生産技術 の支配す る産業 に転換する と い う試みは,ついに実現 されない ままに終わっ た。 . しか しなが ら,7 0年代初頭 に生 じた変化 は, 6 0 調査 と研究 第24号 ( 2002.4) 決 して一過性の ものにとどまらなかった。住宅 働者の 自立性の基盤が掘 り崩 されることにはか 産業の上位企業 は,あ らゆる住宅ニーズに対応 ならなかった。 で きるよう事業部 門を多角化す ることで,住宅 この ように,住宅産業 における構造変化 は, 市場 に固有の リス クに適応 し,経営規模 を拡大 突破計画が 目指 したような革命的な ものではな していった。 また,住宅生産の部面では,工場 く,む しろ漸進的な ものであった46)。 しか しそ 生産化の技術が着実 に取 り入れ られ,現場生産 の変化 は,住宅産業が決 して 「 資本主義 によっ と工場生産の組み合 わせ による生産過程 の合理 て忘れ られた産業」ではな く, む しろ着実 に資 化が追求 された。 それは言い換 えれば,建設労 本主義的な発展 をとげていることを示 している 働 における熟練技術が着実 に解体 され,建設労 のである。 46) Pr o fe S S i o n alBui l d e r誌 は,突破計 画 の発足 か ら2 0年 目 に特 集記事 を組 み,工場 生 産化 の到達 に関 して,建築家 で コ ンサ ル タン トであ る ステ ィーブ ン ・ウ インター氏 の 次 の よ うな発言 を紹 介 してい る。「産業 の変化 は,革命 的 とい う よ りもむ しろ漸 進 的 で あ っ た。 そ れ は非常 に ゆ っ く りと した,漸 進 的 な成 長 で あ った。 」Pr o fe s s i o nal 06. Bul l d e r ,Jul y1 989,p 1