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滅び行く旅芸人ガイネ 青空の下で進む文化復興活動

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滅び行く旅芸人ガイネ 青空の下で進む文化復興活動
連載:アジアの旅芸人(3)
滅び行く旅 芸 人 ガ イ ネ
田村 仁
大ヒマラヤ山脈を背景にしたネパールの
が、ガイネという楽師たちである。ガイネも
カトマンズ盆地は長い歴史の中で政治・文
最下層のカーストに属するが、ダマイと異な
化の中心地として栄えてきた。町なかには
るのはガイネがネパール全土の町や村を行
歴代の王宮跡や数多くのヒンドゥー教や仏
動範囲にした旅芸人で、音楽だけを生きる
教寺院が立ち並ぶ。また広場や街角のいた
糧にしたプロの音楽集団であることだ。
るところに得体の知れない様々な神々が祀
ガイネは木をくりぬいた手作りのサーラン
られていて、そのすさまじい宗教的な雰囲
ギという 4 弦の弓奏楽器を携えて村から村
気に圧倒されてしまう。
へと渡り歩く。彼らは神々の物語や昔の英
カトマンズの町を歩いていると突然けた
雄伝説そして愛や自然を歌い語ることを得
たましい太鼓、ラッパ、笛の音が鳴り響き、
意とし、娯楽の少ない村々を回り哀愁を帯
演奏しながら行進する楽師たちの姿をよく
びた歌と演奏を聞かせながら村人たちを楽
見かける。この楽師たちはヒンドゥー教の
しませてきた。
カースト制度の中で生きるダマイという低い
しかし今では山村部にもラジオやテレビ
カーストの人々である。彼らは日頃、仕立て
が普及し、ガイネたちの生活が脅かされそ
職人なぞを生業とし、祭礼や結婚式の際に
の数は急激に減少しているという。放浪の
は祝賀の雰囲気を盛り立てる音楽集団とし
旅芸人として生き続けてきたガイネたちも、
て今でも不可欠な存在である。
近代化という波の中で行き場を失い消え果
また専業の音楽集団として欠かせないの
てる運命にあるようだ。 (写真は筆者提供)
バクタプールの寺院前で、少年のソプラノを交
えたきれいなハーモニーで歌い語るガイネ
たむら ひとし
写真家。1967 年より毎年アジア各国に出掛け、文化
遺産や生活文化等の写真取材を続けている。著書『ヒ
マラヤ仏教王国』全 2 巻 (1986 年、三省堂 )、
『密林の
王土アンコール』(1994 年、恒文社 ) など多数。
アジア太平洋現地発
アフガニスタン
青空の下で進む文化復興活動
長岡 正哲
ながおか まさのり
バーミヤン全景
ユネスコカブール事務所 文化事業専門企画官。1968 年生まれ。米国コロンビア大学大
学院修了。2004 年 4 月よりユネスコカブール事務所勤務。文化事業企画専門官として
アフガニスタンの文化事業全般を担当。同国の文化事業予算の立案、実施及び補正予算
事業の評価などを通じ、文化遺産保護のための政策及び方針の策定に従事。
アフガニスタンでは日中、青い空が一面
ユネスコのゲストハウスでも以前、小さなさ
びとは先人がこれまで築いてきた多様な文
に広がっています。先日出張したバーミヤン
そりが出て、寝ているオーストラリア出身の
化や宗教とともに生活してきましたので、あ
は高度 2500m にありますので、夏でも木陰
教育担当の首を刺しましたが、少し腫れた
る一定の宗教に属する「像」などに嫌悪を
に入れば涼しく過ごせます。ちょうど日本の
くらいで命に別状はありませんでした。現
感じるどころか、日々の生活の一場面として
高原にいるようです。街中では現在でも馬
地の人によると、北部のマジャリシャリフで
すんなり捉えているようです。カブール博物
が荷車を引いている姿が見られますし、道
は捕らえたさそりを乾燥させ、パウダー状に
館に所蔵されていたさまざまな宗教に裏打
端の屋台ではカバブを初め、肉や野菜をパ
粉々にした後、タバコの中に巻いたり水パ
ちされた文物は、旧ソ連による侵攻から旧
イ生地で包んで揚げたサモサや、アイスクリ
イプに入れて吸ったりするそうですが私はま
タリバン政権崩壊までの間で、略奪、破壊
ームなども売っており、小さいながら活気に
だ見た事がありません。
に遭いましたが、それらに誇りと愛着、畏
満ちた街の喧騒の中に、日本の都会では見
現地のイスラム教徒の人々は、仏教を背
敬の念を感じ、保存を希求しているのもア
られなくなってしまった何か懐かしいにぎや
景としたバーミヤンの遺跡や壁画をどのよう
フガン人です。アフガニスタンの文化復興は
かな風景が広がっています。
に思っているのでしょうか ? よく聞かれる質
まだまだ始まったばかりです。国際的な協
こんな気候のせいか、土とレンガを使っ
問です。アフガニスタンには仏教遺跡だけ
力や、アフガン人自身の更なる努力が必要
て作られる伝統的な家屋では、たまにさそ
でなく、紀元前以来隆盛を極めた時々の王
です。毎日の地道な努力が今日も青い空の
りが天井から現われます。カブールにある
朝による建築物が創られてきましたが、人
下で続いています。
(写真は筆者提供)
ACCUニュース No.362 2007.7
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