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宝石紹介003

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宝石紹介003
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
ちょっとした宝石紹介
ちょっとした宝石紹介
- 003 -
- 003 今回はコパルと琥珀
妖精眠る?
タイムカプセルは出番待ち
紹介:hiros
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
No.3
・コパルや琥珀の産地は
ご存じの方は世界中で採れるのを知っていると思います。多少稀
コパルと琥珀
紹介:hiros コパルや琥珀は樹液などが化石化した天然樹脂です。色つやも
様々で内包物に植物の茎や昆虫などが含まれたりして興味深いので
すが、残念なことに琥珀に比べてコパルを宝飾材料とみなさない方
が多いようです。そんな可哀相なコパルを特集です。
※コパルは半化石化していると説明さ
れています・・・
少な産地もありますが、日本を除くどこの産地も普通に採れるよう
ですから絶産になる心配はしばらく不要です。問題は採算の都合な
どで採掘しない場合があります。
・大きなコパル
他の宝飾素材とは違って大きな塊で産出される場合もあります。
切り株程度の大きい物が実際に採れるそうです。水晶やトルマリン
なども稀に巨晶で産出されますが、鉱物の巨晶はマクロ結晶でコパ
ルや琥珀は有機質の樹脂の塊なのが違います。
(左)羽虫が入ったコパル
(右)琥珀
上のコパルは完璧にコレクション用です。長軸方向に続いている
一般的には琥珀は知っているけどコパルって何?と質問されるこ
とが多いですので簡単に説明します。
孔は蔓みたいな物が入っていたようで、清掃中に泥と一緒にいっぱ
い出てきました。当時の植物の化石なのですが洗い流してます。
コパルは主にコロンビアなどの中南米産の天然樹脂です。数百万
年前程度の若い半化石化した物をコパルとし、これに対して数千万
年以上の古くて化石化した物を琥珀としているようです。実際に全
ての産地を詳しく調査されているかは疑問ですが・・・
この冊子で取り上げるコパルは全数コロンビア産です。特徴は透
明度がよい・虫入りが豊富・安価なことです。
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
左は上のコパルを孔の方向から
見た状態です。
蔓の入っていた跡がレンコンみ
たいになっています。
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
・面白いコパルも少々紹介します
・琥珀も少し紹介します
コパルにも産地によって内包物や色合いが違います。一般的なコ
コパルばかりでなく琥珀と琥珀を使った製品も少々紹介します。
パルから珍しい物まで少しですが紹介します。
素材が東欧諸国産琥珀となっていますが実際には違う物もありそう
です。
始めは一般的なレモンイエローの
綺麗なコパルです。品物としては良
く流通しているタイプなのですが、
1段目はポーランド産として購入
した琥珀のルースですが、実際の産
原材料の中で多くを占めているわけ
ではありません。色と透明度などの
地は不明です。当然加熱着色などの
処理はされているはずですが、それ
条件が揃った物は少ないです。
でも色ムラなどが多くて値段の割に
は質は良くないです。
2段目のコパルは多少褐色に近い
2段目は加熱処理によって星を作
色合いですが透明度は良い物です。
小さな羽アリかハエの仲間が多めに
り出しているタイプで、琥珀の加工
で良く行われている処理です。天然
入っていますので、小さな生き物が
苦手な方は辛い一品です。
の加熱処理なしで均一にフラク
チャーを内包する琥珀や原石は考え
にくいのです。
溶剤テストしたルースです。
さらにゴキブリの仲間らしい昆虫
がいらっしゃるコパル。このあたり
3段目は琥珀ビーズの3連ブレス
は珍しいルースなのですが、実際に
加工して身につけるのはタブーな感
レットです。こちらは良心的価格で
入手できたのですが、変なルースよ
じがします。多数の方が避けるのは
必至です。
りも手間がかかっています。国内で
加工したのではなくて、産出国で製
品化した物みたいです。
4段目はクモです。このルースな
らば加工してアクセサリーにしても
実害は少ないでしょう。もっとも珍
4段目は色違いの琥珀を貼り合わ
せてからカットしてブレスレットに
品ですから加工を考えたりしません
加工した物です。これも手間がか
が・・・ 結構高価です。
かっていますが、東欧諸国で製品化
しているために比較的安価に入手し
ました。
コパルは生き物などを閉じこめたタイムカプセルを磨いてますか
ら、普通の石とは違った楽しみです。
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
・蛍光するタイプの琥珀
・コパルは宝飾品に使えないのでしょうか?
琥珀には紫外線で蛍光するタイプが存在します。一般にはドミニ
琥珀を取り扱っている業者さんは口を揃えて「コパルは琥珀のイ
カ産のブルー・アンバーが有名ですが、アクセサリーのためにブ
ミテーション」と説明します。理由は軟らかい・熱に弱い・比重が
ラックライトを持ち歩くお客さんはいないでしょうから(笑)無理
違うなどなど・・・本当のところはそんなに弱いのでしょうか?
に買う物ではないです。
リーフ(葉)デザインのドミニカ
産です。全体が蛍光するワケではな
く、脈状の部分的な蛍光です。産地
アクセサリーを身につけてからドライヤーなどを使ってしまった
場合や暖房機の近くに放置した場合を想定して、長い時間の強烈な
加熱乾燥を試しました。
(1段目)実験前のコパル
ブランドが先行しているので、とに
かく高価です。
(2段目)実験後のコパル
琥珀として扱われている中では若
いほうです。
70~80℃前後とされている
ファンヒーター吹き出し口の直近に
短波紫外線で蛍光させました。
30分間放置してます。この程度の
温度の場合は極端に変形や溶け出
偽札判別用のLEDライトは可視光
の青色光が大量に出ているので、撮
し・発火はないのですが、内部に気
泡やクラックが発生します。
影などにの用途にはオススメできま
せん。
実験後は白濁して透明度が落ちて
見えますが、内部に発生した細かい
気泡が原因です。小規模のクラック
ディーラーさんから蛍光するタイプ
も発生していますが強度が極端に落
ち込むまでには至りません。
もあるけど「これは蛍光しません」
とされていましたが・・・ 短波紫
表面を詳しく観察すると(3段目
こちらはメキシコ産の琥珀です。
の写真)樹脂の層が表面に達してい
る部分でシワになります。これは温
外線で僅かに蛍光してくれます。
ちょっとお得な気分ですね。
度変化の影響も考えられますが、ど
うやら乾燥しすぎて表面に発生した
細かな割れみたいです。
※短波紫外線は鉱物の鑑別にも利用され
ますが、殺菌用途や非破壊検査に使われ
る光源です。直接視たり長時間皮膚に当
てていると有害ですので注意が必要で
す。
コパルはちょっとした熱で溶けると噂されていますが、現実には
溶けるよりも乾燥するが正しいようです。
※ご自分のコレクションを痛めますので試さないでください
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
・さらに高温にさらすとどうなるのか?
・不慮の事故の場合は?
貼り合わせで固定しているアクセサリー類は全滅の温度域で結構
ライターなどの熱源に近づいた場合(炎に近づいた場合)は当然
危険です。ファンヒーターが起動直後で最高温で動作中に放置して
溶けます。これはどんなアクセサリーでも被害は甚大です。
みました。吹き出し口の金属フィンは火傷では済まない温度です。
ライターの場合は炎から1cm程
(1段目)加熱前
(2~3段目)開始20分程度
度ならば2~3秒で溶け出します。
さらに炙り続けると激しく溶けて気
加熱開始20分程度で細かい気泡
泡を発生します。同時に色が濃く
なって、失敗すると火がついたりも
が出ますが、全体的には破損などに
は至りません。
します。
2段目は実際に燃焼しているとこ
ろです。煤を出しながら燃焼すると
さらに加熱(4段目)していると
クラックに沿って収縮してしまい、
カリカリに焼いた鳥皮(ヒナ皮)み
ころはプラスチックと同じです。
たいな外観です。予想したほどボロ
ボロにはなりませんが、強度は確実
※しつこく燃え続けるので試さない
でください
に弱くて手で割れます。
揮発性のクリーナー(シンナーなど)に漬け込むとどうなるか調
この時に接していた吹き出し口の
金属フィン温度は100℃以上に
べます。今回は一般的なシンナーを用意しました。
なっていたようで、接した部分が部
分的に溶解しました。このまま忘れ
コパルは容易に溶けました。
シンナーを染み込ませたティッシュ
たまま放置したら発火しかねない状
態でかなり危険でした。
にコパルの色が移っているのが判る
と思います。加熱処理したコパルも
ここまでひどい放置は考えられま
溶けます。
琥珀の場合は強めのシンナーでも
せんが「溶ける」とうるさい方が多
いので実験しました。実際には「表
溶けません。
面が溶ける」のではなくて「内部に
気泡が成長して壊れる」みたいで
実は仕上げに使っている「つや出
し剤」には溶剤が含まれます。コパ
す。表面まで変形する頃には「揮
発」や「発火寸前」なのです。
ルの場合は、研磨成分と溶剤成分両
方を利用して仕上げているのです。
研磨剤だけではいつまで磨いても艶
が出ません。
※発火の恐れがあり危険ですので試さないでください
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
(次ページに続く)
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
飲食中のトラブルでお酒がかかってしまうことがありますので試
・コパルを製品化するまで
しました。泡盛など30度前後のお酒では10分間浸透していても
アクセサリーの素材としてコパルを譲り受けるときにはある程度
変化はありません。よほどの高濃度では結果が変わることもあり得
綺麗に洗浄済みで、物によっては半製品の状態にまで加工されてい
ますが、そんなアルコールを飲むことはありません。むしろお酒に
ます。そのためまったくの原物から加工をすることは稀です。
含まれる糖分などがベタつくので、汚れたら綺麗に拭き取るか洗浄
します。艶が落ちたらワックスやオリーブオイルでメンテします。
こちらは泥の付着しているコパル
を水洗いして乾燥させた状態です。
※つや出しや清掃にシンナーなどは使用しないでください
ガラガラと大量に洗うと細かい物を
壊してしまいますので、バケツの底
・表面の艶が消えてしまった場合は
コパルや琥珀などの自然樹脂の場合、表面が乾燥で劣化しないよ
が見える程度にしておきます。使用
するバケツなどの容器はポリ製を使
うに保湿?油分?が必要みたいです。昔の宝物で乾燥した場所に保
用した方がコパルに傷が付きにくい
ので無難です。
管されていた琥珀製品などが干からびてしまった写真を見たことが
ありますが、水分などには強いので水没していた発掘品は綺麗なま
まなのが面白いです。
形を整えたり大きさを揃えたり
我々が普通に生活する空間ならば劣化を心配することはないので
と、目的のパーツに仕上げていきま
す。ネックレスやチョーカーに使う
ます。その場合は、磨き仕上げの最後にワックスやオリーブオイル
場合は孔あけしますが、エポキシ樹
脂などで孔を補強するとトラブルが
で磨き上げるのと同様に手入れをします。
減ります。
すが、洗剤で洗浄したりすると表面を痛めて艶が消えることがあり
磨き仕上げの最後を研
用する方が多いのです
組み上がるとこんな感じになりま
す。見た目よりも軽くて冷たくない
が、私の場合はオリーブ
ので、アクセサリーをよく分かって
オイルで行います。
いる人の贅沢です。
溶剤入りの研磨剤で磨
いて拭き取り後に少量の
安価な素材とは言われますが、全
体を揃えて組み上げると高価な物に
オイルで拭き取りする
なります。
磨剤入りのワックスを使
と、表面に残留した溶剤
成分と研磨剤を除去しや
その他にも、ペンダント・トップ
すいですし表面が傷つき
なども魅力的です。色々な素材と組
にくくなります。
み合わせて楽しみます。
製品によっては表面保護にコーティングポリマーを使用すること
がありますが、オリーブオイルの方が仕上がりはよいです。仕上げ
てしまうと表面の硬さは琥珀もコパルも大差ありません。
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
※左の写真は黒蝶貝と組み合わせている
例。クロスだけサンストーンです。
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
・東欧諸国の業者さんが行う琥珀の処理
・コパルも琥珀も区別無く
前の方のページでも触れましたが、バルト地方で採掘された琥珀
コパルと琥珀の線引きは化石化の年代が一般化している様です
は「ほとんどが加熱処理済み」です。現地業者のWebでは「古くか
が、製品となってからは区別するほどの差違がありません。
らされている処理なので問題ない」と書いておりました。
噂が多い比重について実験してみると、ほとんど差がみられませ
んでした。溶剤テストなどで違いがありますので耐候性に関しては
アクセサリーを楽しむだけだったら悩む必要はありませんが、コ
レクターが気にするのは加熱処理などカット以外の行為です。普及
若干注意が要りますが、溶剤でアクセサリーを清掃する人はいない
と思います・・・
品とプレミア品では値段も違いますから、「天然無処理琥珀」とし
て高価な品物を購入したのに処理品では問題です。
コパルも琥珀も調達以外で区
琥珀の加熱処理は「亜麻仁油」で高温処理すると綺麗&丈夫にな
別する意味が無いです。一般的
に小さいビーズ素材は既製の琥
珀ビーズを使った方が楽です。
るのと、油に染料を混ぜて加熱処理すると色調の統一が出来るのだ
とか。つまり、琥珀の丈夫さは亜麻仁油の耐候性に因る可能性が高
大きめのパーツには自由に加工
く、さらに色調まで変更しているとなると「コランダムのエンハン
ビーズは琥珀にすると製作コス
ストの告知無し」よりも困ったことなのです。
トを調整できます。
したコパルを使い、脇の細かい
写真はコパルのチョーカー
しかし、もとから処理される素材だと承知して、加熱処理も加工
の工程だと解釈すると状況が変わります。単調になりがちな琥珀に
・暖かなアクセサリー
星が発生すると内部からキラキラするわけですから店頭では付加価
宝飾店で琥珀色に輝く大型のアクセサリーを目にする機会がある
値が出ます。原材料の歩留まりを改善できて付加価値も付くわけで
すし、アクセサリーとして加工する際には必須になるのです。
と思います。国内の加工品は久慈琥珀さんの製品が有名ですが、現
在の材料はほとんど輸入だと思われます。その他の琥珀製品となる
と出所はよくわかりません。むしろ、出所が判ったところで何にも
どうしても無処理の物が欲しい方は北米産やミャンマー産を入手
意味がありませんので、自分の感性がピッピと来る製品を購入した
する方が無難ですが、あれこれ考えないで処理も何にもしないで安
価に流通しているコパルを買った方が気も財布も楽です(笑)
方がいいのです。
※北米産は人件費の関係で、ミャンマー産は流通事情と需要の関係
で高価になっています。
提供をされていて為になりますので一度訪問してみてください。
※久慈琥珀さんは久慈市に琥珀館を開設してますし、Webでも情報
・思い出のテーマ
私が宝飾関連に踏み出すきっか
けになったのが、若いときに購入
した久慈琥珀の製品でした。
気がついたときには琥珀の魅力
に引き込まれていたのでした。
コパルなどはピントの深度で見え方が変化します
久慈琥珀のタイピン
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
(終わり)
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
No.3追補
コパルと琥珀(追補)
紹介:hiros コパルと琥珀を亜麻仁油の中で加熱する簡単な実験を行いまし
た。どのような変化が発生するのか?期待したいところです。
加熱前 加熱後
上の写真は加熱前・後のコパルです。写真では変化していないよ
うに見えますが、茶色のキズの部分が太く目立つようになりまし
た。現物では加熱後の方が若干黄色く見える程度で、色が極端に変
化するようには感じられません。変化無し~弱変程度です。
琥珀の場合は劇的な変化があります。
既に加熱処理がされている可能性があり
ましたが、同じロットの琥珀ビーズをバ
ラして一方を加熱しました。
左の写真は琥珀
左側は加熱前・右側は加熱後
確実に色が濃くなって琥珀色が燃えるような朱に変わってます。
このタイプの色合いは結構製品に見かけます。再生琥珀は透明度が
悪いのでアクセサリーには使われないと説明されていましたが、朱
色の大きめのビーズとして販売されています。見かけはヘタな琥珀
よりも綺麗でしたのでアクセサリーとしては問題ないと思います
が、蒐集家の方は注意が必要な色合いになります。
今回は亜麻仁油(発火点300℃~)を使って加熱してみました
が、安全を見て加熱は130℃程度まででした。琥珀の変色は10
0℃未満でも十分で、コパルの場合は90℃付近が限界です。
(終わり)
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
今回は宝石紹介本の第3回目としてコパルと琥珀を選びまし
た。琥珀の陰に隠れてなかなか注目されないコパルをもっと
知って欲しいのが切っ掛けでWebにも特集を組んでいました
が、言葉一つ間違えば反論が大量に届きそうな題材なので
Webよりも言葉を選んで編集しました。
最後まで読んで頂いた皆さんと、貴重なコパルや情報を分け
***************************
て頂いたディーラーさんに感謝です。
ちょっとした宝石紹介
- 003 -
コパルと琥珀
発行:2006年5月
***************************
著者:鈴木浩之(hiros)
関連ホームページ:
http://homepage.mac.com/hiros99/
誤記などには十分に注意をしておりますが、万一誤りなど
がございましても内容に関する責任は負いかねます。
(c)hiros - 2006
宝石紹介003ネット版(c)hiros 2006
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