人種主義の興隆と急進化

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こと！
講義内容をまとめたレジュメを，HPから印刷し
て持参することになっていました。特別な理由
があって，もって来られなかった人は，申し出て
ください。（いま）
2013年度 学部共通科目
「科学と人間」
第８回（６月７日）
講義
「人種主義の興隆と急進化
～ナチ・ドイツによるユダヤ人大虐殺まで」
（今井晋哉）
http://web.ias.tokushima-u.ac.jp/
shin-kokusai/scienceandhumanity/top.html
目次
１．西洋近代における人種主義の興隆
２．人種主義と他の「思想」との結合
３．ナチ・ドイツによる「外」に向けた人種主義政策
～＊～＊～＊～≪↓は６月14日に≫～＊～＊～＊～
４．人種主義の疑似科学性と恣意性
１．(１) 人種主義
●人間を生物学的特徴や遺伝学的特性によっ
ていくつもの種に区分し，人種を本来固定的･
不変なものと考え，それを精神的･文化的な
特質と結びつけ，人種間に先天的に優劣が
存在するとする独断
１．(２) 19世紀半ば以降における
人種主義の興隆
●「人種」
人類社会の発展を説明する論理として利用さ
れるように。
●時代背景
★ヨーロッパによる非ヨーロッパ世界の植民地化
★ナショナリズムの勃興 など
１．(２) 19世紀半ば以降における
人種主義の興隆
●『人種不平等論』(1853-55年)
★アーリア人 (Aryan, Arier)
最も高貴で勇敢，健康で勤勉。他の人種を
支配する宿命をもつ。
→20世紀前半のドイツ知識層にも影響。
２．(１) 「社会ダーウィン主義」との結合
●「社会ダーウィン主義」
★「生存競争」こそが社会の進歩の原動力
★「自然選択」(natural selection)・「適者生
存」(survival of the fittest) ＝自由放任主義
によって社会は全体としては改善される。
２．(１) 「社会ダーウィン主義」との結合
●一部の人種主義者
人類の歴史を人種間の生存競争，
優秀な人種による適者生存の歴史と
解釈。
２．(２) 反ユダヤ主義との結合
①ユダヤ人に対する伝統的な偏見・差別
ー宗教的・文化的な偏見・差別
★中世には職業差別
→ゲットー(ghetto)へ隔離。
★中世共同体のアウトサイダーとして賤民視。
☆18世紀末ぐらいまで： ユダヤ人をユダヤ
教団への帰属によって定義。
２．(２) 反ユダヤ主義との結合
②西洋近代世界におけるユダヤ人「解放」
☆市民権を与え，キリスト教徒との形式的平
等を実現する代わりに，ヨーロッパ社会へ
の同化を求める。
→形式的・部分的には実現。
２．(２) 反ユダヤ主義との結合
③人種主義的な反ユダヤ主義の台頭
★19世紀後半，ユダヤ人を生物学・人類学的
「人種」と捉える論調が台頭。
→宗教・文化にかかわりなく「血統」の点で
永遠に異質な存在。
→ドイツでは，帝国創建後，20世紀初頭，
とくにヴァイマル共和国期に急拡大。
３．(1)ナチ・ドイツ
●「ナチ(ス)」“Nazi(s)”
★「国民社会主義者」の意。
★ナチ党やナチ党員一般を指す。
●「ナチ党」＝「国民社会主義ドイツ労働者党」
★党首：アドルフ・ヒトラー（1889－1945年）
★反自由主義，反議会主義，反共産主義，
自民族中心主義などを唱える。
３．(1)ナチ・ドイツ
★地方自治を実質的に廃止。
★全権委任法により国会の機能を停止。
★ 「アーリア人種＝健康なドイツ民族」
のみによって構成される社会・国家を追求。
３．(２)ナチズムの世界観・歴史観
★「ユダヤ人」と人種間生存闘争で，世界の歴
史と現状とを説明。
★ユダヤ人
＝否定的な諸現象の背後にある原因
＝記号，世界を説明するキーワード
３．(３)ナチ・ドイツによる反ユダヤ
政策の発動と急進化（超概略）
①反ユダヤ政策の発動
●ユダヤ人の移住＝追放に重点。
②ナチスの抱え込んだ難問
「国内」および占領地に多数の貧困なユダヤ
人を抱え込む。
③ユダヤ人移住＝追放政策の行詰り
●「ポーランド総督府領」へ移送
→ゲットーへ隔離。
３．(３)ナチ・ドイツによる反ユダヤ
政策の発動と急進化（超概略）
④独ソ戦と「ホロコースト」の始まり
●ナチス
★第二次世界大戦＝「人種間戦争」
★対ソ戦＝「世界観戦争」
●国防軍の後から侵攻した親衛隊行動部隊
ユダヤ人を大量射殺。
※ゲットーの惨状
※射殺という方法にも限界。
３．(３)ナチ・ドイツによる反ユダヤ
政策の発動と急進化（超概略）
⑤「ユダヤ人問題の最終解決」＝計画的大量
ガス殺へ
★「強制収容所」(Konzentrationslager)
※Lager [独]＝camp [英]
★「絶滅収容所」(Vernichtungslager)＝「殺人工場」
★「ホロコースト」によるヨーロッパ各地のユダ
ヤ人の犠牲者総数＝560－586万人
小テスト（１）
★人種主義についての↓の記述のなかから 正しい
ものを一つ選んでください。
①混血により人種間の差異は小さくなり，人類の文化
は高度化すると主張した。
②人種の差異は環境によるもので，人種間の優劣を
根拠づけて証明するのはむずかしいと考えた。
③近代ドイツに固有の考え方だった。
④人類の歴史を優秀な人種による適者生存の歴史と
解釈する者もいた。
小テスト（2）
★ユダヤ人をめぐる歴史についての↓の記述のなかか
ら正しいものを一つ選んでください。
①ユダヤ教徒たちは自らゲットーと呼ばれる自治区を
形成して共同生活を送っていた。
②第二次世界大戦が終わるまで，ユダヤ教徒に市民
権が与えられることはなかった。
③ユダヤ人を人種として捉える考え方によれば，ユダ
ヤ人との共生は永遠に不可能とされた。
④ドイツでは，ナチ政権以前には反ユダヤ主義が唱え
られることはほとんどなかった。
小テスト（３）
★「ナチ(ス)」という語の元の意味は？
①国家資本主義者
②国民社会主義者
③社会民主主義者
④急進民族主義者
⑤維新帝国主義者
小テスト（４）
★ナチズムについての↓の記述のなかから正しいもの
を一つ選んでください。
①異文化間交流に意欲的だった。
②自民族の利害を中心に考えたが，同じぐらい他民
族のことも尊重していた。
③健康なドイツ民族のみからなる社会・国家をつくろう
とした。
④ユダヤ人を最初から絶滅させるつもりだった。
小テスト（５）
★ナチ・ドイツによる反ユダヤ政策についての↓の記述
のなかから正しいものを一つ選んでください。
①戦争が思うように進まず，当初のユダヤ人移住=追
放政策が行き詰ったことが大量殺戮へつながった。
②ユダヤ人を害虫などにたとえたナチスは，射殺とい
う手法を最もスムーズだと考えた。
③初めから計画的にユダヤ人を殺害していった。
④絶滅収容所といっても，ユダヤ人のためのキャンプ
設備も一応整っていた。
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