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医薬品等の特許権の存続期間の 延長登録制度及びその運用の在り方
平成26年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 医薬品等の特許権の存続期間の 延長登録制度及びその運用の在り方 に関する調査研究報告書 平成27年2月 一般財団法人 知的財産研究所 要 約 背景 平成26年5月30日の知的財産高等裁判所・大合議判決は、上告受理申立中であり、現 行制度の運用の在り方が問われている。また、特許権の存続期間の延長登録制度の重 要性が増大し、同制度及びその運用に対するユーザの関心も高い。 調査目的 今後の同制度の在り方を検討する基礎資料とするために、現行の制度とその運用へ の我が国ユーザの評価や、各国における同様の制度とその運用状況や実態、近年の判 例等、最新の情報を収集しまとめる。 公開情報調査 書籍・インターネット情報等で米国、欧州(英国、ドイツ)、韓国、中国、カナダの 延長登録制度や医薬品・農薬の販売承認に関する制度、文献、判例等の調査 国内アンケート 医薬品・農薬・再生医 療製品等の関連企業 有識者による検討 海外質問票 171者に対して、延長 特許権等について 米国、欧州、中国、韓 登録制度の利用実態 の知見を有する学 国、カナダを対象 や意見についてアン 識経験者(2名)、 ・特許権の存続期間の ケート調査を実施 弁理士(1名)、関 延長登録制度の有無、 連企業知財担当者 概要の調査 (3名)による検 ・特許権の存続期間の 討。 延長登録制度に関わ 有識者会議(3回) る判例や関連制度の 実施 調査 国内ヒアリング 企業11者を対象 ・延長登録制度につい ての実態を国内アン ・各国の医薬品(農薬) ケートの結果を基に の販売承認制度の調 ヒアリングにより調 査 査 まとめ ・平成26年5月30日大合議判決により、延長された特許権の効力範囲が不明確となり、 先発メーカー、後発メーカーのいずれにとっても不都合な状態となっている。 ・延長制度の在り方については、特許法の趣旨を踏まえ、処分と関係する特許権者と 第三者とのバランス、イノベーションの進展への寄与、国際的動向等の観点から検討 がなされるべきである。 - i - Ⅰ.序 1.本調査研究の背景・目的 我が国の特許法において、「特許権の存続期間は、特許出願の日から20年をもって終了 する。」(特許法第67条第1項)と規定されている。特許権の存続期間の延長登録制度は、 存続期間の例外として設けられているものであり、「特許発明の実施について安全性の確 保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であって当該処分の目的、手続等か ら見て当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受け ることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があったとき は、5年を限度として延長登録の出願により延長することができる。」(同条第2項)と規 定されている。特許法第67条第2項でいう処分としては、現在、①農薬取締法に基づく農薬 の登録(特許法施行令第3条第1号)、②医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の 確保等に関する法律(以下「医薬品医療機器等法」という。)に基づく医薬品、体外診断 用医薬品、再生医療等製品(動物用医薬品を含む)の承認・認証(同条第2号)が対象とさ れている。 延長登録の出願に関する特許庁の審決の取消訴訟において、平成21年5月29日、知財高裁 が審決を取り消す旨の判決を言い渡したため、特許庁が上告受理申立てを行ったところ、 上告を棄却する旨の最高裁判決が平成23年4月28日になされた。これを受けて、産業構造審 議会知的財産政策部会特許制度小委員会の特許権の存続期間の延長制度検討WGにおいて、 審査基準の改訂の検討がなされ、最高裁判決と齟齬しないように審査基準が改訂された。 しかしながら、改訂された審査基準に基づいて行われた審決が、平成26年5月30日、知的財 産高等裁判所の大合議判決によって取り消され、改訂された審査基準の解釈について見解 が出された。同判決には上告受理申立てがなされており、確定はしていないが改訂された 審査基準の運用を否定する内容のものであるため、特許権の存続期間の延長登録制度の運 用の在り方が問われている状況にある。 安全性の確保等を目的とする法律による許認可は、ビジネスのグローバル化や技術の複 雑化・高度化等により変化しており、特に、医薬品分野においては、新規有効成分の医薬 品開発競争の激化、新剤型や新用法・用量の医薬品や再生医療製品の開発等により、特許 権の存続期間の延長登録制度の重要性が増大している。そのような状況において、特許権 の存続期間の延長登録制度及びその運用に対するユーザの関心が高いことから、現行の制 度及びその運用に対する我が国ユーザの評価、各国における同様の制度及びその運用状況 や実態の調査等、今後の特許権の存続期間の延長登録制度及びその運用の在り方を検討す るに資する基礎資料を整備することが必要となっている。 各国の特許権の存続期間延長制度については、平成20年度の産業財産権制度問題調査研 - ii - 究において、一定の調査が行われているが、その後に出された判例や各国制度の運用状況 等の情報が欠落しているため、最新の各国の動向についても把握する必要がある。 2.本調査研究の実施方法 本調査研究では、現行の特許権の存続期間の延長登録出願制度において、当該制度のユ ーザの利用実態及びその他の当該制度により影響を受ける関係者の意見を収集し、当該制 度の現状及びニーズを把握し、さらに、制度改正も視野に入れた検討をするために、国内 アンケート調査及び国内ヒアリング調査を行ってユーザの意見を収集した。また、諸外国 における当該制度の実態や運用及び関連制度等を把握するために、米国、欧州(欧州連合、 ドイツ、英国)、カナダ、中国及び韓国の知的財産庁や医薬品等の規制庁等について海外質 問票調査を行った。また、国内外公開情報調査により海外制度等を調査及び検討した。併 せて、有識者6名による有識者会議を開催し、調査項目・検討の方向性についての助言を得 た。 Ⅱ.我が国の特許権の存続期間の延長登録出願制度 1.特許権の存続期間の延長登録制度の趣旨 我が国の特許制度は、発明に係る技術の公開の代償として一定期間その権利の専有を認 め、これによって発明を保護しつつ、一般の利用に供し、もって産業の発展を図ることを 目的としているが、一部の分野では、安全性の確保等のための政府の法規制に基づく許認 可を得るに当たり所要の実験によるデータの収集及びその審査に相当の長期間を要するた め、その間はたとえ特許権が存続していても権利の専有による利益を享受し得ず、その期 間に相当する分だけいわば特許期間が侵食されているという問題を生じていた。 このような法規制そのものは、その趣旨からして必要欠くべからざるものであるが、そ の結果として、当該規制対象分野全体として、かつ、不可避的に、本来享受できるはずの 特許期間がその規制に係る期間の分だけ享受し得ないこととなる。しかも、これらの規制 の審査期間の短縮には、安全性の確保等の観点からおのずから限界があった。 このような事態は、特許制度の基本に関わる問題であるため、昭和62年(1987年)の特 許法改正において、特許権の存続期間の延長制度が創設された。 特許権の存続期間の延長登録制度は、安全性の確保等の法規制の処分を受けるに当たり、 所要の実験・審査等に長期間を要することにより特許発明の実施ができない分野について は、発明の保護に著しく欠ける現状となっており、特許発明を利用するだけの第三者の立 場が余りにも有利となっていることに鑑み、特許権の存続期間を延長して、発明の保護を - iii - 手厚くすることによって、その利用との均衡を図ろうとしたものである。 2.特許権の存続期間の延長登録制度の概要 我が国における特許権の存続期間の延長登録制度は、平成11年(1999年)の特許法改正 を経て、現在に至っている。 特許法においては、 「安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分で あってその目的、手続等から見て当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとし て政令で定める処分を受けることが必要であるために、特許発明の実施をすることができ ない期間があったときは、5年を限度として、延長登録の出願により特許権の存続期間を延 長することができる」(特許法第67条第2項)と規定されており、制度の概要は以下のとお りである。 (1)延長登録の理由となる処分 延長登録の理由となる処分は、以下の処分である。 特許法施行令第三条(延長登録の理由となる処分) ①農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)第二条第一項の登録(同条第五項の再登録 を除く。)、同法第六条の二第一項(同法第十五条の二第六項において準用する場合を含む。) の変更の登録及び同法第十五条の二第一項の登録(同条第六項において準用する同法第二 条第五項の再登録を除く。) ②医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法 律第百四十五号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第十四条第一項に規定する医薬品 に係る同項の承認、同条第九項(医薬品医療機器等法第十九条の二第五項において準用す る場合を含む。)の承認及び医薬品医療機器等法第十九条の二第一項の承認 ③医薬品医療機器等法第二十三条の二の五第一項に規定する体外診断用医薬品に係る同項 の承認、同条第十一項(医薬品医療機器等法第二十三条の二の十七第五項において準用す る場合を含む。)の承認及び医薬品医療機器等法第二十三条の二の十七第一項の承認 ④医薬品医療機器等法第二十三条の二の二十三第一項に規定する体外診断用医薬品に係る 同項の認証及び同条第六項の認証 ⑤医薬品医療機器等法第二十三条の二十五第一項の承認(医薬品医療機器等法第二十三条 の二十六第五項の申請に基づく医薬品医療機器等法第二十三条の二十五第一項の承認を除 く。)、医薬品医療機器等法第二十三条の二十五第九項(医薬品医療機器等法第二十三条の 三十七第五項において準用する場合を含む。)の承認及び医薬品医療機器等法第二十三条の 三十七第一項の承認(同条第五項において準用する医薬品医療機器等法第二十三条の二十 - iv - 六第五項の申請に基づく医薬品医療機器等法第二十三条の三十七第一項の承認を除く。) (2)延長される期間 「特許発明の実施をすることができなかった期間」 (政令で定める処分を受けることが必 要であるために特許発明の実施をすることができなかった期間)があったときは、5年を限 度として延長登録の出願により存続期間を延長することができる。 なお、規制法の目的、趣旨及び内容により、多種多様な試験が行われているが、以下の ①-③の全ての要件を満たす試験を行う期間でなければ、 「特許発明の実施をすることがで きなかった期間」に含めることはできないとされている。 ①処分を受けるために必要不可欠であること ②その試験の遂行に当たって方法、内容等について行政庁が定めた基準に沿って行う必要 があるため、企業の試験に対する自由度が奪われていること ③処分を受けることに密接に関係していること 具体的には、医薬品、体外診断用医薬品及び再生医療等製品の場合は、臨床試験を開始 した日又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、承認が申請者に到達 した日、すなわち申請者が現実にこれを了知し又は了知し得る状態におかれた日の前日ま での期間とされており、農薬の場合は、化合物名を明示して行った委託圃場試験を開始し た日(依頼日等)又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、登録申請 者に到達した日、すなわち申請者が現実にこれを了知し又は了知し得る状態に置かれた日 の前日までの期間とされている。 (3)延長登録の出願 特許権の存続期間の延長登録をするためには、特許法第67条第2項の政令で定める処分を 受けてから3か月以内(特許法施行令第4条)に、特許権者が出願を行わなければならず、 延長登録の出願は、特許権の存続期間の満了後はすることができない(特許法第67条の2第3 項)。 なお、特許権が共有に係るときは、共同で出願しなければならない(同条第4項)。 (4)延長登録の出願の効果 延長登録の出願があったときは、拒絶査定が確定するか、延長登録があるまでは、存続 期間は延長されたものとみなされる(特許法第67条の2第5項)。 - v - (5)審査 延長登録の出願の審査は、審査官が行い、特許法第67条の3第1項各号のいずれかに該当 するときはその出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならず、審査官は、拒絶 をすべき旨の査定をしようとするときは、出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期 間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。 拒絶査定を受けた出願人は、その査定に不服があるときは、拒絶査定不服審判を請求す ることができる。 審査官は、延長登録の出願について拒絶の理由を発見しないときは、延長登録をすべき 旨の査定をしなければならない。 (6)存続期間が延長された場合の特許権の効力 存続期間が延長された場合の特許権の効力は、 「その延長登録の理由となった特許法第67 条第2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定 の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該 特許発明の実施以外の行為には、及ばない。」(特許法第68条の2)とされている。 (7)特許公報への掲載 特許権の存続期間を延長した旨の登録があったときは、特許法第67条の3第4項に規定さ れた事項が特許公報に掲載される。なお、 「特許権の存続期間の延長登録の出願」及び「特 許権の存続期間の延長登録」について公開されている情報は、特許電子図書館(IPDL)の 「経過情報検索」・「経過情報(範囲指定検索)」で確認することができる。 Ⅲ.国内アンケート調査及び国内ヒアリング調査のまとめ 医薬分野では、全体として、新薬メーカーも後発品メーカーも、平成21年5月29日の知財 高裁判決以前の特許庁の運用を評価する傾向にあり、平成23年4月28日の最高裁判決で判示 された事例以外については、従来の運用が一定のバランスの基になされていたと評価がな されており、上記最高裁判決を受けた改訂審査基準による運用も一定の評価がなされた。 平成26年5月30日の知財高裁大合議判決については、新薬メーカー、後発品メーカーの双 方とも、大合議判決の傍論部分でなされた延長された特許権の効力の解釈について、延長 された期間の特許権の効力範囲を不安定化させる要因であるとする回答が多い。特に、新 薬メーカーは、延長された特許権の効力が大合議判決のように解釈されるのであれば、制 - vi - 度改正が必要であるという意見もある。 しかしながら、大合議判決で示された延長された特許権の効力の実務への影響について の認識は、企業間で濃淡が認められる。また、制度改正についても、どのような改正をす べきか、どのような改正が現実的か等の認識について企業間で相違がある。 農薬分野では、農薬に求められる高い安全性、長いデータ保護期間など、医薬とは違う 状態もあり、農薬メーカーのニーズと、医薬メーカーのニーズが一致しないこともある。 農薬分野では、農薬が登録されるまでは、特許権が重要視されているが、農薬が登録さ れれば、むしろ農薬取締法や農薬登録制度やその運用で実質的な保護が確保されているよ うである。 再生医療分野は、ごく最近に特許権の存続期間の延長登録制度の対象となった分野であ り、まだ、実際に延長登録の対象となった案件もないが、今後様々な事例が生じることが 予想される。 Ⅳ.海外の特許権の延長制度と関連制度 1. 米国 1984年9月に、「医薬品の価格競争及び特許期間の回復に関する1984年法(Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984) 」が発効した。この法律は、“薬 価競争”を推進したワックスマン議員と、“特許期間の回復”を推進したハッチ議員の名 をとって、ハッチ・ワックスマン法と呼ばれており、generic業界が推す簡略新薬申請手続 (ANDA:abbreviated new drug application)法と研究開発志向型企業の特許期間回復法 が盛り込まれている。 米国における特許存続期間の延長登録制度は、特許法第155条、特許法第156条、及び特 許規則(37 C.F.R. Patent Rules)特許存続期間の調整及び延長§1.710~§1.791、審査 基準(MPEP)§2710において規定されており、その制度の概要は以下のようになっている。 (1)延長登録の理由となる製品 人又は動物用医薬品、医療機器、食品添加物、着色料が延長登録の理由となる製品であ る。 - vii - (2)延長される期間 医薬品に関しては、治験届(IND:Investigational New Drug)の日から承認申請(NDA: New Drug Application)の日までの期間の半分と、承認申請日から承認日までの期間との合 計(特許法第156条(c)、(g)(1))で、5年を限度とする期間が延長される。 ただし、相当な注意(Due Deligence)が認められない期間は削減され(特許法第156条 (c)(1))、許可の日(医薬品の場合は承認日)から期間延長された場合の特許期間満了日ま での期間は14年を超えることはできない(特許法第156条(c)(3))。 延長は、最初の満了日(延長されない場合の満了日)から延長される(特許法第156条(a))。 (特許規則§1.775~§1.779において、特許存続期間延長の計算方法の詳細が規定されて いる。) (3)延長できる特許 延長できる特許は、製品に関する特許、製品を使用する方法に関する特許、製品を製造 する方法に関する特許である。一つの製品について、特許権者の選択する一つの特許(必 ずしも最初の特許ではない)のみが、1回だけの最初のNDA(New Drug Application)の承 認との関連において延長される。 (4)申請 特許権者又は代理人が、法律の規定に基づいて許可を受けた日(医薬品の場合はNDA承認 取得日)から60日以内に申請書を提出しなければならない(特許法第156条(d)(1))。 審査期間が特許権存続期間の満了後にまで及ぶと特許権者またはその代理人が合理的に 判断する場合には、PTO長官に対し暫定延長申請書を提出することができる(特許法第156 条(d)(5)(A))制度があるため、例えば、NDA承認前に特許権が満了する場合であっても延 長が認められる。 (5)審査 USPTO(米国特許商標庁)からFDAへ通知されて行政審査期間が決定された後、USPTOが延 長期間を決定する。 - viii - (6)存続期間が延長された場合の特許権の効力 ベースとなる特許と同じ保護範囲を有し、承認された製品に限るが、用途についてはそ の後の新たな承認に関わる用途も含まれる。 (ここで製品とは、承認された製品の活性成分 (”active ingredient”)をいう。) 2.欧州 欧州においては、特許に基づく排他権の利用期間の消失や、欧州が起源となる医薬品の シェアの低下、財源不足による医薬品研究の質の低下、さらには研究拠点がより恵まれた 保護を与える非加盟国に移動する懸念などから、米国、日本及び韓国における特許権存続 期間延長制度と同様の制度創設を求める動きが強まったが、欧州特許条約(EPC)は1991 年12月17日にEPC第63条を改正する法律が採択されたものの(注:Official Journal EPO 1992、 1ff.)、その改正は1997年7月4日に発効するまで待たなければならなかった。 1973年EPC第63条は2000年EPC第63条としてそのまま引き継がれており、EPC第63条(2)項 及び同(b)号で、各締結国において、当該国において市場に流通させる前に法律によって要 求される行政承認手続の必要な製品、その製法、その用途に関する特許については、国内 特許に適用されるのと同じ条件で、欧州特許の期間延長又は特許期間の満了と同時に相当 する保護を付与する権利を制限しないことを定めている。 一方、EECにおいては、日米の特許権存続期間の延長登録制度に相当する補足保護証明 (SPC:Supplementary Protection Certificate)制度の導入を目的とした1990年5月8日の 欧州委員会の提案(Com 90/0101 Final)を受けて、欧州議会で審議された後、1992年6月 18日に欧州閣僚理事会によるEEC規則1768/92が公布され、1993年1月2日に各EU加盟国で施 行され、スイス、アイスランド、リヒテンシュタイン、又はノルウェーといったEU非加盟 国においても、医薬品の特許期間延長の取得に関する同様の国内規定を設けている。 EEC規則1768/92の前文には、共同体及び欧州において医薬製品の開発には長期の年月と 高額な研究費とを必要とするものであるから、その研究開発を奨励するためには十分な保 護をしなければならないこと、ジェネリック製品の製造業者がその製品の市場参入に遅れ る点については既に考慮されている旨が述べられている。 なお、このEEC規則1768/92は、その後改正され、2009年7月6日にEEC規則469/2009に置き 換わった。 さらに、農薬(Plant protection product)に対しても、補足保護証明書制度を適用す べく、1994年と1995年の欧州委員会の提案(Com 94/0579 Final及びCom 95/0456 Final)を 受けて、1996年7月23日、欧州議会と欧州閣僚理事会はEC規則1610/96を採択し、1997年発 効した。 - ix - EUにおける補足保護証明制度は欧州連合の加盟国に適用されるが、補足保護証明書は国 ごとに申請・取得する必要がある。 (1)補足保護証明の対象製品 人間用医薬品、獣医学的医薬品及び農薬が、補足保護証明の対象となる製品である。 (2)延長される期間 補足保護証明の有効期間は、特許出願日から最初の医薬品流通認可発行日までの期間か ら5年を差し引いた期間(延長期間は5年以下、承認日から満了日までの期間は最大15年) である。特許登録日は延長される期間に影響を及ぼさない。 (3)延長できる特許 医薬品については、製品、製品の取得方法、製品の用途を保護する特許であって、証明 書の付与を受ける手続上、その所有者が指定したもの(「基本特許」という。)である。 農薬については、製品、製剤、製造方法、製品の用途を保護する特許であって、証明書 の付与を受ける手続上、その所有者が指定したもの(「基本特許」という。) (4)申請 特許権者又はその承継人が出願を行わなければならない。基本特許を付与され、製品流 通許認可を取得した、加盟国の工業所有権管轄官庁に申請する。 (5)補足保護証明制度の保護範囲(SPC) 医薬に関するEU規則469/2009第4条及び第5条並びに農薬に関するEU規則1610/96第4条及 び第5条並びにそれぞれの判例法がSPCの保護範囲を規定している。 SPCは、基本特許の保護範囲内における販売承認された「製品」 (Product)の医薬又は農 薬としての使用(用途)を保護する。SPCにより保護される用途は最初の販売承認(SPCが ベースとしたもの)で言及された用途だけでなく、SPCの期間中にベースとなる特許で保護 され、承認された全ての用途である。このことは、後の用途についての販売承認を受けた ものが第三者でも適用される。 ECJはNovartis-C-574/11において、SPCが、単一の活性成分(A)について付与されている - x - 場合、それはまた、単一の活性成分(A)についてのベースとなる特許が活性成分(A+B)の 組合せにおいて活性成分Aの使用に対して保護を及ぼすのと同様に、活性成分(A)を包含 する活性成分(A+B)の組合せに対してもSPCが保護を及ぼすと判示された。 なお、各製品にはただ一つの証明書が付与されることになっており、製品(Product)は、 厳密な意味で一つの活性成分(active ingredient)であると解釈される。このため、ある活 性成分の新たな用量又は異なる塩若しくはエステルといった製品への変更には、SPCが新た に付与されることはなく、SPCの保護範囲は、主要薬効だけでなく、その塩、エステルを含 むものにも及び、小児用医薬品を保護するSPCに対して期間延長が与えられた場合には、保 護範囲は当該医薬品の小児用途に制限されない。 3.韓国 韓国では、医薬品・農薬に関して、許可又は登録に必要な有効性、安全性等の試験が長 期間所要される場合、実質的に特許権による独占権を享有する期間が短くなるため、5年の 範囲内で当該医薬品・農薬の特許権存続期間を延長することで、他の製品の特許権存続期 間と衡平性を合わせるため、1986年12月31日の法律改正で、特許権存続期間延長の制度が 導入された(旧特許法第53条2項ほか)。当時の制度は、日本の政令に相当する大統領令で 定められる特許発明の対象その他の要件に従って、特許庁長が延長申請を審査し、延長を 承認するという制度であった。 その後の改正により、特許権者が特許期間の延長登録出願を行い、その出願を審査官が 審査し、登録査定や拒絶査定を行うという手続を導入し、更に延長登録の無効審判制度も 規定された。 その後、さらに、韓国と米国の間での自由貿易協定(Free Trade Agreement;FTA)の締 結に伴って、韓国特許法の改正法が韓米FTAが発効した2012年3月15日に施行された。 韓国の過去の存続期間延長制度は米国、欧州よりは日本の制度と類似していたが、2013 年の特許法施行令の改正以後、米国、欧州の制度と類似するものとなり、日本の制度とは 多少差が生じた。例えば、日本の平成23年4月28日最高裁の見解とは異なり、韓国国内では 新たな剤形について追加で許可を受けても、以前に許可された製品と有効成分が同一であ れば、追加の存続期間延長は許容されない。 (1)延長登録の理由となる製品(特許法施行令第7条) 人又は動物用医薬品(薬事法第31条第2項・第3項又は第42条1項)及び農薬(農薬管理法 第8条第1項、農薬管理法第16条第1項又は農薬管理法第17条第1項)である。 - xi - (2)延長される期間 臨床試験又は農薬登録に必要な試験期間と行政処理期間の合計で、5年を限度として延長 が認められる(特許法第89条)。 また、試験前、待機期間は延長期間に参入せず、実際に試験を行った期間のみ延長期間 に参入される。なお、外国で実施する臨床試験の場合、韓国における行政検討期間のみが 認定される。 審査遅延に基づく延長期間(特許法第92条の2~5)と、許可等に基づく延長期間は合算 されない。 (3)延長できる特許(特許法施行令第7条) 延長できる特許は、最初に許可を受けた、新物質(薬効を現わす活性部分の化学構造が 新しい物質)を有効成分とする医薬品または農薬(又は原体)に関連した全ての特許(化 合物、用途を限定した組成物、製造方法、剤形の発明)である。 (4)申請 特許発明を実施するために他の法令の規定によって許可や登録等を受けた場合、その許 可又は登録等を受けてから3か月以内かつ特許権満了6か月前に、特許権者が出願を行わな ければならず、共有に係る特許権は共同で出願しなければならない(特許法第90条)。 (5)審査 審査官が出願審査を行う(特許法第91条)。拒絶査定を受けた者は、その査定に不服があ るときは拒絶査定不服審判を請求することができる(特許法第132条の3)。 (6)存続期間が延長された場合の特許権の効力 承認された物及び用途の特許発明の実施行為に限る(特許法第95条)。 特許法第95条の法文句上、追加承認された用途や第三者が受けた承認に関わる用途は含 まれないと解釈される。「用途」は、「許可を受けた有効成分の機能・効果」を意味し、こ れが同一であれば、用法・用量、製法などが異なる実施の形態に対しても、延長された特 許権の効力は及ぶ。 - xii - Ⅴ.まとめ 特許権の存続期間の延長登録制度の導入時においては、新規有効成分、新規効能効果の 開発のためのインセンティブが重要視されており、研究開発の成果としての物質特許や用 途特許の保護が重要であったが、科学技術の進歩に伴い、DDS(ドラッグ・デリバリー・シ ステム)に関する技術も、医薬分野の研究の大きな柱の一つとなっていることは事実であ り、DDSに関する研究開発のインセンティブを高めることが重要である。その観点から、既 に承認を受けている有効成分及び効能・効果と同一ではあるが、剤形等が異なる医薬品の 承認がなされた場合に、DDSに関する特許発明に延長登録を認めることは、特許権の存続期 間の延長制度の趣旨からも妥当であり、最高裁平成23年4月28日判決を受けて改訂された審 査基準は、それに適合するものである。 知財高裁平成26年5月30日大合議判決は、既に承認を受けている有効成分及び効能・効果 と同一ではあるが、剤形等が異なる医薬品の承認がなされた場合に、物質特許及び用途特 許の延長登録を認めるものであり、DDSに関する特許発明に延長登録を認めることとは本質 を異にするものである。大合議判決が医薬分野の研究の大きな柱である新規有効成分や新 規効能効果の研究のインセンティブに悪影響を与えるものであってはならない。今回の調 査研究におけるアンケート結果やヒアリング、有識者会議においても、新規有効成分や新 規効能効果の研究のインセンティブへの悪影響等、大合議判決に関する疑問の声は、多く のユーザから寄せられた。 延長登録の要件のうち、「特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受 けることが必要であつたとは認められないとき」の要件に関して、改訂審査基準において は、特許請求の範囲に記載された特許発明(発明特定事項)をもとに、先行処分との関係 についての判断を行うこととしている。 特許権の存続期間の延長制度の趣旨が「特許発明の実施をすることができなかった期間」 を回復するものである以上、先行処分により実施が可能となった特許発明について、発明 特定事項を基に判断することは、特許法における「特許発明の実施」の解釈を行う上で適 切であるとも考えられる。 そのような解釈を行なったとしても、既に承認を受けている有効成分と及び効能・効果 と同一で、剤型等が異なる医薬品の承認がなされた場合に、DDSに関する特許発明が延長登 録の対象となることは、改訂審査基準からも明らかであり、既に承認を受けている有効成 分及び効能・効果と同一で、剤型等が異なる医薬品の承認がなされた場合に、物質特許や 用途特許について延長登録の対象とすることの妥当性は、新規有効成分や新規効能効果の 研究開発のインセンティブの観点から、DDSに関する特許発明を延長登録の対象とすること とは、峻別して、議論する必要がある。 延長された特許権の効力の解釈については、最高裁平成23年4月28日判決においては、言 - xiii - 及がなされておらず、延長登録された特許権の効力をめぐる侵害訴訟の事例もないことか ら、延長登録された特許権の効力の解釈についての裁判所の見解は、まだ確定していない。 しかしながら、延長登録された特許権の効力の及ぶ範囲は、特許権の延長登録がされた後 の特許発明の実施が専有される範囲を規律するものであることから、特許請求の範囲に記 載された特許発明(発明特定事項)を基に解釈を行うことは特許法の解釈として妥当であ る。そのような解釈がなされても、延長登録されたDDSに関する特許権の効力の及ぶ範囲は、 (先行処分で延長された他の特許権の効力との間で重複する部分が存在する可能性もある が、)不当に制限されることはないが、大合議判決の傍論で示された見解のとおりの解釈が なされ、先行処分により延長された特許権の効力が制限されると、特許権の存続期間の延 長制度の趣旨である新規有効成分や新規効能効果の研究のインセンティブへの悪影響が懸 念される。 今回の調査研究における有識者会議においても、日本製薬工業協会の議員から、同協会 として「物質特許の効力が、延長対象処分の用法・用量により細分化される考え方は受け 入れ難い」という意見が表明されている。 大合議判決でなされた延長された特許権の効力の解釈は、諸外国の特許権の延長登録制 度における延長された特許権の効力の解釈とも異なるものであり、特許権の存続期間の延 長登録制度の趣旨が新規有効成分に新規な効能効果を見出し、品質、有効性及び安全性が 確保された医薬品を世の中に送り出すことに対するインセンティブを高めることにあるこ とから、延長された物質特許や用途特許の効力については、従来の解釈を維持すべきとす る意見もある。 このため、延長された特許権の効力の解釈については、発明の保護と利用のバランス(発 明の保護と他社の研究成果を利用する側の立場への配慮)の観点から検討がなされる必要 がある。 また、先行処分により延長された特許権の効力が制限され、大合議のいう「均等物や実 質的に同一と評価される物」の解釈も不明であることにより、既に承認を受けている有効 成分と効能・効果が同一で、剤型等が異なる医薬品の承認がなされた場合に、既に延長さ れている物質特許や用途特許についても、再度、延長登録の出願を行う必要が生じること となる。この場合、延長登録を行う特許権者の特許管理の負担の増大(延長登録の出願に 要する費用の増大及び延長登録の出願が可能な期間に出願を行うための管理負担の増大) のみならず、特許権の存続期間の満了によって市場に参入しようとする者の監視負担の増 大を招来することにも留意する必要がある。特許権の存続期間の満了によって市場に参入 しようとする者にとっては、市場参入が可能になる時期をできるだけ早期に確定し、その ための準備を行う必要があるが、大合議判決の判断に沿った運用・効力範囲の解釈が行わ れることは、延長登録を行おうとする特許権者及び特許権の存続期間の満了によって市場 に参入しようとする者の双方に問題を生じることともなる。 - xiv - 知財高裁大合議判決については、現在、上告受理の申立てがなされていることもあり、 最高裁による判断が待たれるが、特許権の存続期間の延長登録のあり方については、特許 法の趣旨を踏まえ、処分と関係する特許権者と第三者とのバランス、イノベーションの進 展への寄与等の観点から検討がなされるべきであり、最高裁においてはこのような観点か ら判断がなされることが期待される。 - xv - はじめに 我が国の特許法において、「特許権の存続期間は、特許出願の日から20年をもって終了 する。」(特許法第67条第1項)と規定されている。特許権の存続期間の延長登録制度は、 存続期間の例外として設けられているものであり、「特許発明の実施について安全性の確 保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であって当該処分の目的、手続等か ら見て当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受け ることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があったとき は、5年を限度として延長登録の出願により延長することができる。」(同条第2項)と規 定されている。そして、延長登録出願の審査は、平成23年4月28日の最高裁判決を受けて改 訂された審査基準に沿って行われてきた。しかしながら同審査基準に基づいて行われた審 決が、平成26年5月30日、知的財産高等裁判所の大合議判決によって取り消され、改訂され た審査基準の解釈について見解が出された。同判決は、上告受理申立中であり確定してい ないが、改訂された審査基準の運用を否定する内容のものであるため、存続期間の延長登 録制度の運用の在り方が問われている。また、存続期間の延長登録制度の重要性は増大し、 制度及びその運用に対するユーザの関心も高い。 本調査研究は、このような背景を踏まえ、特許権の存続期間の延長登録制度において、 ユーザの利用実態を把握し、我が国制度の現状を整理するとともに、諸外国の産業財産権 登録制度における特許権の延長制度の実態を調査・分析し、さらに、延長制度に対するユ ーザーニーズの有無とその妥当性について調査・分析を行った。 本調査研究で得られた延長登録制度の課題に係る報告が、今後特許庁における制度改正 や運用改善の基礎資料になるとともに、登録手続におけるユーザの利便性を高めるための 参考資料となれば幸いである。 最後に、本調査研究の遂行に当たり、アンケート調査、ヒアリング調査及び質問票にご 協力いただいた企業、特許事務所及び法律事務所、各国知的財産庁、各国規制庁、及び各 国のコンサルト会社の関係各位に、この場を借りて深く感謝を申し上げる次第である。 平成27年2月 一般財団法人 知的財産研究所 「医薬品等の特許権の存続期間の延長登録制度及びその運用の在り方に関する調査研究」 有識者会議名簿 (敬称略、五十音順) 議長 熊谷 健一 明治大学法科大学院 教授 淳 農薬工業会・推薦 議員 柴山 クミアイ化学工業株式会社 研究開発部 知財課 課長 畠山 藤田 桝田 宮内 悦司 日本ジェネリック製薬協会 知的財産研究委員会 委員長 節 祥子 正雄 東和薬品株式会社 管理本部 法務部長 平木国際特許事務所 弁理士 東京大学大学院 薬学系研究科 特任講師 日本製薬工業協会 知的財産委員会 専門委員 第一三共株式会社 知的財産部 特許第2グループ長 オブザーバー 滝口 尚良 特許庁 審査第一部 調整課 審査基準室 室長 石原 徹弥 特許庁 審査第一部 調整課 審査基準室 基準企画班長 蛭田 敦 特許庁 審査第一部 調整課 審査基準室 基準企画班長 吉森 晃 特許庁 審査第一部 調整課 審査基準室 課長補佐 今井 聖和 特許庁 審査第一部 調整課 審査基準室 基準企画班 基準調査係長 北村 英隆 特許庁 審査第二部 福祉機器 室長 冨永 保 特許庁 審判部 審判官 三上 晶子 特許庁 審査第三部 有機化学 三平 圭祐 一般財団法人知的財産研究所 常務理事 川俣 洋史 一般財団法人知的財産研究所 研究第二部長 岩井 勇行 一般財団法人知的財産研究所 統括研究員 中島 栄彦 一般財団法人知的財産研究所 主任研究員 梶原 克哲 一般財団法人知的財産研究所 研究員 内田 剛 一般財団法人知的財産研究所 研究員 審査官 事務局 目 次 要約 有識者会議名簿 Ⅰ. 序 ··································································1 1. 検討の背景 ························································1 2. 本調査研究の目的 ··················································2 3. 本調査研究の実施方法 ··············································2 (1) 公開情報調査 (i) 調査概要 ······················································2 (ⅱ) 調査対象国 ····················································2 (2) 国内アンケート調査 ··············································3 (i) 国内アンケート調査概要 ········································3 (ⅱ) 国内アンケート調査実施対象企業 ································3 (3) 国内ヒアリング調査 ··············································3 (i) 国内ヒアリング調査概要 ········································3 (ⅱ) 国内ヒアリング調査実施対象企業 ································3 (4) 海外質問票調査 ··················································4 (i) 海外質問票調査概要 ············································4 (ⅱ) 海外質問票調査実施対象 ········································4 (5) 有識者会議の設置 ················································5 (ⅰ) 目的 ··························································5 (ⅱ) 有識者会議の概要 ··············································5 Ⅱ. 我が国の特許権の存続期間の延長登録制度 ······························6 1. 特許権の存続期間の延長登録制度の導入の背景 ························6 2. 特許権の存続期間の延長登録制度の趣旨 ······························6 3. 特許権の存続期間の延長登録制度の概要 ······························7 (1) 延長登録の対象となる処分 ········································7 (2) 延長される期間 ··················································8 (3) 延長登録の出願 ··················································9 (4) 延長登録の出願の効果 ············································9 (5) 審査 ····························································9 (6) 存続期間が延長された場合の特許権の効力 ·························10 (7) 特許公報への掲載 ···············································10 4. 特許権の存続期間の延長登録制度の運用状況 ·························11 (1) 平成23年改訂前の審査基準 ·······································11 (2) 知財高裁平成21年5月29日判決 ····································12 (3) 最高裁平成23年4月28日判決 ······································13 (4) 産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会特許権の存続期間の 延長制度検討WGにおける検討 ·····································13 (5) 改訂審査基準の概要 ·············································17 (6) 知財高裁平成26年5月30日大合議判決 ······························18 (7) 延長登録出願件数の変遷 ·········································19 (8) 薬事法改正(再生医療製品の導入に伴う改訂) ·····················19 (9) 薬事制度と医薬品の保護 ·········································20 (ⅰ) 新薬開発の流れ ···············································21 (ⅱ) 医薬品の販売承認 ·············································22 (ⅲ) 一部変更承認申請 ·············································24 (ⅳ) 申請書類 ·····················································24 (ⅴ) ジェネリック医薬品の開発の流れ ·······························28 (ⅵ) ジェネリック医薬品の販売承認 ·································29 (ⅶ) ジェネリック医薬品製造販売申請における特徴 ···················30 (ⅷ) バイオシミラー医薬品 ·········································31 (ⅸ) 医薬品の再審査制度 ···········································32 (ⅹ) パテントリンケージ ···········································33 (10) 農薬の製造販売登録 ···········································34 (ⅰ) 農薬開発 ·····················································34 (ⅱ) 農薬の製造販売の登録制度 ·····································35 (ⅲ) 申請の種類 ···················································37 (ⅳ) 申請のための提出書類 ·········································37 (ⅴ) ジェネリック農薬の申請 ·······································39 (ⅵ) 農薬のデータ保護 ·············································39 (ⅶ) パテントリンケージ ···········································40 (11) 試験研究のための実施行為に関する特許権侵害の免責規定 ·········40 Ⅲ. 国内アンケート調査及び国内ヒアリング調査結果 ·······················41 1. 国内アンケート調査 ···············································41 (1) 国内アンケート調査実施概要 ·····································41 (2) 国内アンケート調査回答の集計結果抜粋 ···························43 2. 国内ヒアリング調査 ···············································74 (1) 国内ヒアリング調査先 ···········································74 (i) ヒアリング調査対象選択方針 ···································74 (ⅱ) ヒアリング調査対象内訳 ·······································74 (2) 国内ヒアリング調査結果 ·········································75 (i) ヒアリング事項 ···············································75 (ⅱ) ヒアリング結果概要 ···········································75 Ⅳ. 海外の特許権の延長制度と関連制度 ···································91 1. 米国 ·····························································91 (1) 延長登録の理由となる製品 ·······································91 (2) 延長される期間 ·················································92 (3) 延長できる特許 ·················································92 (4) 申請 ···························································92 (5) 審査 ···························································92 (6) 存続期間が延長された場合の特許権の効力 ·························92 (7) 医薬品の販売承認の流れ ·········································95 (8) 承認事項の(一部)変更の承認申請 ······························101 (9) データ保護 ····················································102 (10) 試験研究のための実施行為に関する 特許権侵害の免責規定(ボーラー条項) ························103 (11) オレンジブック(Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations;通称orange book) ····················104 (12) 2. 医薬品の承認情報の公示 ······································104 欧州 ····························································105 (1) 補足保護証明の対象製品 ········································106 (2) 延長される期間 ················································106 (3) 延長できる特許 ················································106 (4) 申請 ··························································106 (5) 補足保護証明制度の保護範囲 ····································107 (6) 医薬品の販売承認の流れ ········································113 (7) 承認事項の(一部)変更の承認申請 ······························115 (8) データ保護 ····················································116 (9) 農薬の販売登録の流れ ··········································117 (10) 販売登録の(一部)変更の登録申請 ····························120 (11) データ保護 ··················································120 (12) 登録情報の公示 ··············································120 (13) 試験研究のための実施行為に関する特許権侵害の免責規定 ········120 3. 韓国 ····························································121 (1) 延長登録の理由となる対象製品 ··································121 (2) 延長される期間 ················································121 (3) 延長できる特許 ················································122 (4) 申請 ··························································122 (5) 審査 ··························································122 (6) 存続期間が延長された場合の特許権の効力 ························122 (7) 医薬品の販売承認の流れ ········································123 (8) 承認事項の(一部)変更の承認申請 ······························128 (9) パテントリンケージ ············································128 (10) データ保護 ··················································131 (11) 承認情報の公示 ··············································131 (12) 農薬の販売登録の流れ ········································131 (13) 登録事項の(一部)変更の登録申請 ····························132 (14) データ保護 ··················································133 (15) 登録情報の公示 ··············································133 (16) 試験研究のための実施行為に関する特許権侵害の免責規定 ········134 4. カナダ ··························································135 (1) 延長登録制度の導入 ············································135 (2) ジェネリック医薬品の参入に関する最近の判例 ····················138 (3) 医薬品の販売承認の流れ ········································143 (4) 承認事項の(一部)変更の承認申請 ······························145 (5) Notice of Compliance (NOC)の手続 ······························147 (6) データ保護 ····················································148 (7) 承認情報の公示方法 ············································148 (8) 試験研究のための実施行為に関する特許権侵害の免責規定 ··········149 5. 中国 ····························································150 (1) 延長登録制度 ··················································150 (ⅰ) 賛成説 ······················································150 (ⅱ) 反対説 ······················································151 (ⅲ) その他 ······················································153 (ⅳ) ユーザからの要望 ············································155 (2) ジェネリック医薬品の参入に関する近年の判決 ····················156 (3) 医薬品の販売承認の流れ ········································159 (4) 承認事項の(一部)変更の承認申請 ······························166 (5) パテントリンケージ ············································166 (6) データ保護 ····················································168 (7) 承認情報の公示方法 ············································168 (8) 試験研究のための実施行為に関する特許権侵害の免責規定 ··········169 6. Ⅴ. 米国、欧州、韓国の延長制度比較一覧 ······························170 知財高裁平成26年5月30日大合議判決 (平成25年(行ケ)第10195-8号)に関する一考察 ·························177 1. はじめに ························································177 2. 事案の検討 ······················································177 (1) 概観(全体像) ················································178 (2) 対象医薬品 ····················································180 (3) 対象特許権における延長登録の効果 ······························182 3. 本事案の実社会への影響 ··········································184 4. むすびにかえて ··················································187 Ⅵ. まとめ-特許権の存続期間の延長制度の在り方についての一考察 ········189 1. はじめに ························································189 2. 特許権の存続期間の延長制度の導入時の議論 ························189 (1) 延長登録の対象となる分野 ······································189 (2) 延長登録の要件 ················································190 (3) 延長登録された特許権の効力 ····································192 3. 審決取消訴訟の判決及び平成23年の審査基準改訂について ············193 (1) 知財高裁平成21年5月29日判決(判時2047号11頁) ·················193 (2) 最高裁平成23年4月28日判決 ·····································194 (3) 最高裁判決を踏まえた審査基準の改訂 ····························195 (4) 知財高裁平成26年5月30日大合議判決(判時2232号3頁) ············196 4. おわりに-検討すべき論点を中心に ································196 (1) 延長登録の要件 ················································197 (2) 延長された特許権の効力 ········································198 (3) 延長登録の出願の実務への影響 ··································199 (4) 最後に ························································199 資料編 資料編I 国内アンケート調査 国内アンケート調査 ··················································204 資料編Ⅱ 国内ヒアリング調査 国内ヒアリング調査 ··················································356 資料編Ⅲ 海外質問票調査 海外質問票調査 ······················································402 なお、本報告書は有識者会議での議論を基に各議員が分担執筆している。このため各報 告書の内容は、会議での議論を踏まえた各議員の見解をそのまま掲載している。各報告の 執筆分担は以下のとおりである。 Ⅰ. 熊谷議員 Ⅱ. 熊谷議員 (Ⅱ.(9)は宮内議員、畠山議員、Ⅱ.(10)は柴山議員に執筆協力いただいた。) Ⅲ. 藤田議員 Ⅳ. 藤田議員 Ⅴ. 桝田議員 Ⅵ. 熊谷議員 なお、本調査研究に当たっては、以下の方々にもご協力いただいた。 米国特許商標庁 英国知的財産庁 ドイツ特許商標庁 韓国特許庁 アメリカ食品医薬品局 欧州医薬品庁 英国化学物質規制委員会 ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁 韓国食品薬品安全省 韓国農村振興庁 カナダ産業省 カナダ保健省 中国国家食品薬品監督管理総局 DLA Piper LLP(US) DLA Piper UK LLP 金・張法律事務所 Nelligan O'Brien Payne LLP 北京林達劉知識産権代理事務所 株式会社 グロービッツ ( Globizz corp. ) LKC Switzerland Ltd 吉田法務事務所 ハニカム・テクノリサーチ株式会社 ジェトロ・ソウル事務所 ジェトロ・デュッセルドルフ事務所 Ⅰ. 序 1. 検討の背景 我が国の特許法において、 「特許権の存続期間は、特許出願の日から20年をもって終了す る。」 (特許法第67条第1項)と規定されている。特許権の存続期間の延長登録制度は、存続 期間の例外として設けられているものであり、 「特許発明の実施について安全性の確保等を 目的とする法律の規定による許可その他の処分であって当該処分の目的、手続等から見て 当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けること が必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があったときは、5 年を限度として延長登録の出願により延長することができる。」 (同条第2項)と規定されて いる。特許法第67条第2項でいう処分としては、現在、①農薬取締法に基づく農薬の登録(特 許法施行令第3条第1号)、②医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関す る法律(以下「医薬品医療機器等法」という。 )に基づく医薬品、体外診断用医薬品、再生 医療等製品(動物用医薬品を含む)の承認・認証(同条第2号)が対象とされている。 延長登録の出願に関する特許庁の審決の取消訴訟において、平成21年5月29日、知財高裁 が審決を取り消す旨の判決1を言い渡したため、特許庁が上告受理申立てを行ったところ、 平成23年4月28日に、上告を棄却する旨の最高判判決2が言い渡された。これを受けて、産 業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会特許権の存続期間の延長制度検討WGにお いて、審査基準の改訂の検討がなされ3。最高裁判決と齟齬しないように審査基準が改訂さ れた。しかしながら、改訂された審査基準に基づいて行われた審決が、平成26年5月30日、 知的財産高等裁判所の大合議判決4によって取り消され、改訂された審査基準の解釈につい て見解が出された。同判決は、上告受理申立中であり確定していないが、改訂された審査 基準の運用を否定する内容のものであるため、存続期間の延長登録制度の運用の在り方が 問われている状況にある。 安全性の確保等を目的とする法律による許認可は、ビジネスのグローバル化や技術の複 雑化・高度化等により変化しており、特に、医薬品分野においては、新規有効成分の医薬 品開発競争の激化、新剤型や新用法・用量の医薬品や再生医療製品の開発等により、存続 期間の延長登録制度の重要性が増大している。そのような状況において、存続期間の延長 1 知財高判 平成21年5月29日 判時2047号11頁 平20(行ケ)第10458号 (平20(行ケ)第10459号~第10460号は裁判所ウェブサイト) 2 最一小判 平成23年4月28日 民集65巻3号1654頁 平成21年(行ヒ)第326号 (平成21年(行ヒ)第324号~第325号は裁判所ウェブサイト) 3 平成23年12月28日に改訂され、同日に係属中の延長登録出願及び同日以降に行われた延長登録出願の審査に適用され た。 4 知財高判 平成26年5月30日 判時2232号3頁 平25(行ケ)第10195号 (平25(行ケ)第10196号~第10198号は裁判所ウェブサイト) - 1 - 登録制度及びその運用に対するユーザの関心が高いことから、現行の制度・運用に対する 我が国ユーザの評価、各国における同様の制度及びその運用状況や実態の調査等、今後の 延長登録制度及びその運用の在り方を検討するに資する基礎資料を整備することが必要と なっている。各国の特許権の存続期間延長制度については、平成20年度の特許庁の産業財 産権制度問題調査研究5において、一定の調査が行われているが、その後に出された判例や 各国制度の運用状況等の情報が欠落しているため、最新の各国の動向についても把握する 必要がある。 2. 本調査研究の目的 現行の医薬品等の特許権の延長登録制度及びその運用状況、今後の延長登録制度及びそ の運用の在り方を検討するに資する基礎資料を収集することを目的とする。 具体的には、現行の制度とその運用への我が国ユーザの評価や、各国における同様の制 度とその運用状況や実態、近年の判例等、最新の情報を収集しまとめた。 3. 本調査研究の実施方法 (1) 公開情報調査 (ⅰ) 調査概要 本調査研究に関連する書籍、論文、調査研究報告書、審議会報告書、法・判例等検索デ ータベース(有料含む)及びインターネット情報等を利用した調査を実施し、各国ごとに 整理及び分析を行い、報告書に取りまとめた。 (ⅱ) 調査対象国 米国、欧州(医薬品の特許補足保護証明書;SPC)に係る規則と関連する判例を調査した。 欧州の中でもSPCをめぐる裁判が比較的多い英国・ドイツの各国裁判所における主要判例も 調査)、韓国、中国、カナダ(制度の有無のみならず業界の動き等を調査)を含む、6か国・ 地域について調査した。 5 平成20年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書「医療技術等の特許権存続期間及び医療方法についての特許制 度の在り方に関する調査研究報告書」1-102頁 (財団法人 比較法研究センタ、平成21年2月) (http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/200301honpen.pdf [最終アクセス日2015年2月16日]) - 2 - (2) 国内アンケート調査 (ⅰ) 国内アンケート調査概要 以下の観点からの質問項目を設定し、アンケート調査を実施した。 ①我が国の現行制度・運用に対する意見、改善提案 ②海外の特許期間延長制度の利用 ③海外の制度と比較した際の我が国の制度のメリット・デメリット (ⅱ) 国内アンケート調査実施対象企業(合計171者) 国内アンケート調査は下記団体の加盟企業及び特許権の延長登録出願件数の多い企業か ら171者を選択し実施した。 ・日本製薬工業会 ・日本ジェネリック製薬協会(正会員) ・農薬工業会(正会員) ・再生医療イノベーションフォーラム (再生医療に関する期間延長制度検討WGメンバー) ・過去5年間で延長登録出願を行ったことがある企業 (3) 国内ヒアリング調査 (ⅰ) 国内ヒアリング調査概要 以下の観点から質問項目を設定し、国内アンケート回答者の中から選択した企業に対し て国内ヒアリング調査を実施した。 ①我が国の現行制度・運用に対する意見、改善提案 ②海外の特許期間延長制度の利用 ③海外の制度と比較した際の我が国の制度のメリット・デメリット (ⅱ) 国内ヒアリング調査実施対象企業(合計11者) 医薬品関係8者 - 3 - ・主に新薬開発を行っている企業 2者 ・新薬開発とジェネリック医薬品の開発を行っている企業 ・主にジェネリック医薬品の開発を行っている企業 4者(外資1者を含む) 2者(外資1者を含む) 農薬関係2者 ・主に新薬開発を行っている企業 1者 ・新薬開発とジェネリック農薬の開発を行っている企業 その他 1者 1者 ・再生医療製品の開発を行っている企業 (4) 海外質問票調査 (ⅰ) 海外質問票調査概要 1者 海外公開情報調査の結果を踏まえて、情報を充実化させる必要がある要素(運用実態、 判例分析等)について海外質問票調査を行った。 (ⅱ) 海外質問票調査実施対象(合計17者) 米国 米国特許商標庁(USPTO) アメリカ食品医薬品局(FDA) 米国法律事務所(DLA Piper LLP) 欧州 英国知的財産庁(UKIPO) ドイツ特許商標庁(DPMA) 欧州医薬品庁(EMA) 英国化学物質規制委員会(CRD) ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL) 欧州法律事務所(DLA Piper UK LLP) 韓国 韓国特許庁(KIPO) 食品薬品安全省(MFDS) 農村振興庁(RDA) 韓国法律事務所(金・張法律事務所) カナダ カナダ保健省(Health Canada) - 4 - カナダ法律事務所(Nelligan O'Brien Payne LLP) 中国 国家食品薬品監督管理局(CFDA) 中国法律事務所(北京林達劉知識産権代理事務所) また、各国の医薬品・農薬の規制庁への質問票調査は各国の申請手続に熟練したコンサ ルタント会社を介して行った。 (5) 有識者会議の設置 (ⅰ) 目的 本調査研究に関して専門的な視点からの検討、分析、助言を得るために、特許権の存続 期間の延長登録制度について豊かな知見を有する学識経験者、企業の知的財産部門関係者、 弁理士からなる調査研究有識者会議を設置した。 (ⅱ) 有識者会議の概要 有識者会議は、学識経験者2名、企業関係者3名、弁理士1名の計6名で構成し、3回にわた って議論を行った。 - 5 - Ⅱ. 我が国の特許権の存続期間の延長登録出願制度 1. 特許権の存続期間の延長登録制度の導入の背景 特許制度は、発明を公開する代償として一定期間その発明を実施する権利の専有を認め るものであり、これによって発明を保護しつつ、一般の利用に供することにより、もって 産業の発展を図ることを目的とするものであるが、1970年代後半より、医薬品等の一部の 技術分野においては、安全性の確保等のための法規制に基づく処分(許認可等)を得るに 当たり所要の実験データの収集及びその審査に相当の期間を要するため、その間はたとえ 特許権が存続していても、特許発明の実施をすることができず、権利の専有による利益を 十分に享受することができないことが問題となっていた。 この問題を解決するために、我が国において、昭和62年(1987年)の特許法改正におい て、特許権の存続期間の延長制度が創設され、昭和63年(1988年1月)より施行された。 なお、海外の同様の制度として、米国においては、1984年9月に医薬品等の特許権存続期 間延長制度が制定されており、韓国及びオーストラリアにおいても同様の延長制度が創設 された6。 欧州においても、米国、日本及び韓国のような国における特許権存続期間延長制度に刺 激され、同様の制度創設を求める動きが強まり、フランスでは1990年11月26日の特許法改 正で補足保護証明(Supplementary Protection Certificate)が付与されるようになった。 欧州特許条約(EPC)は1991年12月17日にEPC第63条を改正する法律が採択された(注: Official Journal EPO 1992, 1ff.)が、その改正は1997年7月4日に発効するまで待たなけ ればならなかった7。一方、EUにおいては、欧州理事会は、日米の特許権存続期間の延長登 録制度に相当する補足保護証明制度に関するEEC規則1768/92が1992年に公布された(1993 年1月に発効)8。 2. 特許権の存続期間の延長登録制度の趣旨9 我が国の特許制度は、発明に係る技術の公開の代償として一定期間その権利の専有を認 め、これによって発明を保護しつつ、一般の利用に供し、もって産業の発展を図ることを 目的としているが、一部の分野では、安全性の確保等のための政府の法規制に基づく許認 可を得るに当たり所要の実験によるデータの収集及びその審査に相当の長期間を要するた 6 7 8 国際委員会「各国における特許期間延長制度」特許管理 Vol.41 No.10(487)、1991年、1289-1300頁 EPO長官通達OJ EPO 7/1997 後藤晴男(訳) 「医薬の追加保護証明書の創設に関する1992年6月18日の理事会規則」AIPPI Vol.38 No.8、1993年、3-6 頁 9 特許庁総務部総務課制度改正審議室『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説(第19版)』特許庁、平成25年、222頁 - 6 - め、その間はたとえ特許権が存続していても権利の専有による利益を享受し得ず、その期 間に相当する分だけいわば特許期間が侵食されているという問題を生じていた。このよう な法規制そのものは、その趣旨からして必要欠くべからざるものであるが、その結果とし て、当該規制対象分野全体として、かつ、不可避的に、本来享受できるはずの特許期間が その規制に係る期間の分だけ享受し得ないこととなる。しかも、これらの規制審査期間の 短縮には、安全性の確保等の観点からおのずから限界があった。 このような事態は、特許制度の基本に関わる問題であるため、昭和62年(1987年)の特 許法改正において、特許権の存続期間の延長登録制度が創設された。 特許権の存続期間の延長登録制度は、安全性の確保等の法規制の処分を受けるに当たり、 所要の実験・審査等に長期間を要することにより特許発明の実施ができない分野について は、発明の保護に著しく欠ける現状となっており、特許発明を利用するだけの第三者の立 場が余りにも有利となっていることに鑑み、特許権の存続期間を延長して、発明の保護を 手厚くすることによって、その利用との均衡を図ろうとしたものである。 3. 特許権の存続期間の延長登録制度の概要 我が国における特許存続期間の延長登録制度は、昭和62年(1987年)の特許法改正によ って導入され、平成11年(1999年)の特許法改正を経て、現在に至っており、その概要は 以下のとおりである。 現在の規定は、 「安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であっ てその目的、手続等から見て当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政 令で定める処分を受けることが必要であるために、特許発明の実施をすることができない 期間があったときは、5年を限度として、延長登録の出願により特許権の存続期間を延長す ることができる」(特許法第67条第2項)10である。 (1) 延長登録の理由となる処分 延長登録の理由となる処分は、以下の処分である。 特許法施行令第三条 ①農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)第二条第一項の登録(同条第五項の再登 録を除く。)、同法第六条の二第一項(同法第十五条の二第六項において準用する場合を 含む。)の変更の登録及び同法第十五条の二第一項の登録(同条第六項において準用する 10 昭和62年(1987年)の特許法改正においては、2年以上という下限が設けられていたが、平成11年(1999年)の特許 法改正により取り除かれた。 - 7 - 同法第二条第五項の再登録を除く。) ②医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年 法律第百四十五号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第十四条第一項に規定する医 薬品に係る同項の承認、同条第九項(医薬品医療機器等法第十九条の二第五項において 準用する場合を含む。)の承認及び医薬品医療機器等法第十九条の二第一項の承認 ③医薬品医療機器等法第二十三条の二の五第一項に規定する体外診断用医薬品に係る同 項の承認、同条第十一項(医薬品医療機器等法第二十三条の二の十七第五項において準 用する場合を含む。)の承認及び医薬品医療機器等法第二十三条の二の十七第一項の承認 ④医薬品医療機器等法第二十三条の二の二十三第一項に規定する体外診断用医薬品に係 る同項の認証及び同条第六項の認証 ⑤医薬品医療機器等法第二十三条の二十五第一項の承認(医薬品医療機器等法第二十三 条の二十六第五項の申請に基づく医薬品医療機器等法第二十三条の二十五第一項の承認 を除く。)、医薬品医療機器等法第二十三条の二十五第九項(医薬品医療機器等法第二十 三条の三十七第五項において準用する場合を含む。)の承認及び医薬品医療機器等法第二 十三条の三十七第一項の承認(同条第五項において準用する医薬品医療機器等法第二十 三条の二十六第五項の申請に基づく医薬品医療機器等法第二十三条の三十七第一項の承 認を除く。) (2) 延長される期間 「特許発明の実施をすることができなかった期間」 (政令で定める処分を受けることが必 要であるために特許発明の実施をすることができなかった期間)があったときは、5年を限 度として延長登録の出願により存続期間を延長することができる。 なお、規制法の目的、趣旨及び内容により、多種多様な試験が行われているが、以下の ①-③の全ての要件を満たす試験を行う期間でなければ、 「特許発明の実施をすることがで きなかった期間」に含めることはできないとされている11。 ①処分を受けるために必要不可欠であること ②その試験の遂行に当たって方法、内容等について行政庁が定めた基準に沿って行う必 要があるため、企業の試験に対する自由度が奪われていること ③処分を受けることに密接に関係していること 具体的には、医薬品、体外診断用医薬品及び再生医療等製品の場合は、臨床試験を開始 した日、又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、承認が申請者に到 達した日、すなわち申請者が現実にこれを了知し又は了知し得る状態におかれた日の前日 11 特許庁調整課審査基準室『特許・実用新案審査基準』(第VI部 年、9頁 - 8 - 特許権の存続期間の延長」3.1.3(1))特許庁、2015 までの期間12とされており、農薬の場合は、化合物名を明示して行った委託圃場試験を開 始した日(依頼日等)、又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、登録 申請者に到達した日、すなわち申請者が現実にこれを了知し又は了知し得る状態におかれ た日の前日までの期間とされている13。 (3) 延長登録の出願 特許権の存続期間の延長登録をするためには、特許法第67条第2項の政令で定める処分を 受けてから3か月以内(特許法施行令第4条)に、特許権者が出願を行わなければならず、 延長登録の出願は、特許権の存続期間の満了後はすることができない(特許法第67条の2第3 項)。なお、特許権が共有に係るときは、共同で出願しなければならない(同条第4項)14。 (4) 延長登録の出願の効果 延長登録の出願があったときは、拒絶査定が確定するか、延長登録があるまでは、存続 期間は延長されたものとみなされる(特許法第67条の2第5項)。 (5) 審査 延長登録の出願の審査は、審査官が行い、特許法第67条の3第1項各号のいずれかに該当 するときはその出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならず、審査官は、拒絶 をすべき旨の査定をしようとするときは、出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期 間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。拒絶査定を受けた出願人 は、その査定に不服があるときは、拒絶査定不服審判を請求することができる。 審査官は、延長登録の出願について拒絶の理由を発見しないときは、延長登録をすべき 旨の査定をしなければならない。 なお、特許法第67条の3第1項各号の規定は以下のとおりである。 特許法第六十七条の三 審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願が次の各号の 12 最二小判 平成11年10月22日 民集第53巻7号1270頁 平成10(行ヒ)43 特許庁調整課審査基準室『特許・実用新案審査基準』(第VI部 特許権の存続期間の延長」3.1.3(2))特許庁、2015 年、9頁 14 昭和62年(1987年)の特許法改正の制度導入当時は、延長登録出願は、本来の特許権の存続期間の満了前6月以降は することができないとされていたが、平成11年(1999年)の特許法改正により、一定の条件を満たせば延長登録の出願 をすることができることとなった(特許法第67条の2の2)。 13 - 9 - いずれかに該当するときは、その出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければなら ない。 一 その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必 要であつたとは認められないとき。 二 その特許権者又はその特許権についての専用実施権若しくは通常実施権を有す る者が第六十七条第二項の政令で定める処分を受けていないとき。 三 その延長を求める期間がその特許発明の実施をすることができなかつた期間を 超えているとき。 四 その出願をした者が当該特許権者でないとき。 五 その出願が第六十七条の二第四項に規定する要件を満たしていないとき。 (6) 存続期間が延長された場合の特許権の効力 存続期間が延長された場合の特許権の効力は、 「その延長登録の理由となった特許法第67 条第2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定 の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該 特許発明の実施以外の行為には、及ばない。」(特許法第68条の2)とされている。 なお、特許法第68条の2の規定は以下のとおりである。 特許法第六十八条の二 特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の 規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延 長登録の理由となつた第六十七条第二項の政令で定める処分の対象となつた物(その 処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該 用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。 (7) 特許公報への掲載 特許権の存続期間を延長した旨の登録があったときは、特許法第67条の3第4項に規定さ れた事項が特許公報に掲載される。なお、 「特許権の存続期間の延長登録の出願」及び「特 許権の存続期間の延長登録」について公開されている情報は、特許電子図書館(IPDL)の 「経過情報検索」・「経過情報(範囲指定検索)」で確認することができる15。 15 IPDLウェブサイト http://www1.ipdl.inpit.go.jp/RS1/cgi-bin/RS1P002.cgi[最終アクセス日2015年2月16日] な お、平成27年3月20日22時をもってIPDLはサービス終了し、同年3月23日より、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat) にサーヒス移行予定 - 10 - 4. 特許権の存続期間の延長登録制度の運用状況 昭和62年(1987年)の特許法改正による特許権の存続期間の延長登録制度導入以降の運 用状況は、以下のとおりである16。 (1) 平成23年改訂前の審査基準 平成23年改訂前の「審査基準 第Ⅵ部 特許権の存続期間の延長」の下では、a)有効成 分(物)及び効能・効果(用途)が同一であって製法、剤型等のみが異なる医薬品に対して承 認が与えられている場合には、そのうちの最初の承認に基づいてのみ延長登録が認められ る、b)一の処分に対応する特許権が複数ある場合は、要件を満たせば、いずれも延長登録 が個別に認められる、c)一の特許権に対応する処分が複数あるときは、要件を満たせば、 異なる複数の処分に基づく同一の特許権の存続期間の延長登録が処分ごとに認められる、 等の運用がなされていた17。 上記a)は、延長の対象となる特許が物質発明(請求項に有効成分に相当する事項のみが 記載された発明)や用途発明(請求項に有効成分及び効能・効果に相当する事項のみが記 載された発明)の場合のみならず、製剤発明(有効成分、効能・効果の他、剤型に相当す る事項が記載された発明)の場合であっても適用されていた。そのため、製剤発明に係る 特許権についての延長登録の出願は、有効成分及び効能・効果は同一であるが剤型の異な る先行処分に係る医薬品が、当該製剤発明の構成要件を充足しない場合であっても、先行 処分の存在を理由に拒絶されていた。図表Ⅱ―1に当時の審査基準の運用をまとめたものを 示す。 16 詳細は、今村玲英子「「特許権の存続期間の延長」の改訂審査基準について」AIPPI Vol.57 No.10,26-40頁参照。 第6回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ配布資料「資料2 現行の運用について」特許庁 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/entyou-wg06_shiryou/02.pdf[最終アクセス日2015年2月16日] 17 - 11 - 【図表Ⅱ―1】当時の審査基準の運用18 平成21年5月29日の判決以前の高裁判決は、物質特許、用途特許のみならず、製剤特許の 場合においても、上記のような審査基準に基づく運用を支持するものであった。 (2) 知財高裁平成21年5月29日判決19 本判決は、製剤発明に係る特許権についての延長登録の可否が争われた事件において、 当該延長登録の出願の理由となる医薬品の処分(後行処分)と、有効成分及び効能・効果 が同じ先行医薬品の処分(先行処分)が存在する場合であっても延長登録が認められると して、特許庁の従来の審査基準に基づく審決を取り消した。 具体的には、「『その特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であった』 との事実が存在するといえるためには、〔1〕『政令で定める処分』を受けたことによって 禁止が解除されたこと、及び〔2〕 『政令で定める処分』によって禁止が解除された当該行 為が『その特許発明の実施』に該当する行為に含まれることが前提となり、その両者が成 立することが必要である」とされ、 「本件においては本件先行処分が存在するものの、本件 先行処分を受けることによって禁止が解除された行為が本件発明の技術的範囲に属し、本 件発明の実施行為に該当するという関係が存在するわけではない。結論として、本件先行 処分の存在は、本件発明の実施に当たり、 『政令で定める処分』を受けることが必要であっ たことを否定する理由とはならない」とされた。 さらに、傍論ではあるが、延長された特許権の効力の及ぶ範囲に関し、 「特許発明が医薬 品に関わるものである場合には、その技術的範囲に含まれる実施態様のうち、薬事法所定 18 第6回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ配布資料「資料2 現行の運用について」特許庁 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/entyou-wg06_shiryou/02.pdf[最終アクセス日2015年2月16日] 7頁参照 19 知財高判 平成21年5月29日 判時2047号11頁 平20(行ケ)第10458号~第10460号 - 12 - の承認が与えられた医薬品の『成分』、『分量』及び『構造』によって特定された『物』に ついての当該特許発明の実施、及び当該医薬品の『用途』によって特定された『物』につ いての当該特許発明の実施についてのみ、延長された特許権の効力が及ぶものと解するの が相当である(もとより、その均等物や実質的に同一と評価されるものが含まれることは、 技術的範囲の通常の理解に照らしても当然であるといえる)。」とされた。 DDS製剤に関しては、日本DDS学会が特許庁に平成18年12月20日付け要望書を提出してお り、この中で、特許庁の特許権存続期間の延長登録の出願に対する審査の改善についての 意見が述べられていた(知財高裁に対しても資料として提出されていた)。 (3) 最高裁平成23年4月28日判決20 上記知財高裁判決に対し、特許庁は上告受理申立てを行ったが、平成23年4月28日、最高 裁は特許庁の上告を棄却した。 最高裁判決においては、 「特許権の存続期間の延長登録出願の理由となった医薬品の製造 販売承認(後行処分)に先行して、同じ「有効成分」及び「効能・効果」を有する医薬品 (先行医薬品)について、既に同製造販売承認(先行処分)がされている場合であっても、 該先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲 にも属しないときは、先行処分がなされていることを根拠に、当該特許権の特許発明の実 施に後行処分を受ける必要性であったとは認められないということはできない」と判示さ れた。 なお、この最高裁判決においては、先行処分に係る医薬品が特許発明の技術的範囲に属 する場合ついては判断されなかった。 (4) 産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会特許権の存続期間の延長制度 検討WGにおける検討21 平成20年6月に知的財産戦略本部において決定された「知的財産推進計画2008」において、 特許権の存続期間の延長制度の見直しを行うことが盛り込まれたことに基づいて、平成20 年10月30日から、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会特許権の存続期間の 延長制度検討WGにおいて延長登録制度についての検討が行われていた(第1回~第5回)が、 平成21年5月29日の知財高裁判決に対して特許庁が上告受理申立てを行ったことから、WG は最高裁判決が出るまで中断されていた。最高裁判決を受けてWGが再開され、第6回会合(平 20 最一小判 平成23年4月28日 民集65巻3号1654頁 平成21年(行ヒ)第326号 第6回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ配布資料「資料4 運用案(事務局案)」特許庁、3頁 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/entyou-wg06_shiryou/04.pdf[最終アクセス日2015年2月16日] 21 - 13 - 成23年8月19日開催)及び第7回会合(同年10月24日開催)において、 「特許権の存続期間の 延長」の審査基準の改訂について検討が行われた。 事務局から提示された二つの運用案、日本製薬工業協会から提出された案及び日本ジェ ネリック製薬協会から提出された案と、これらに対する意見は、以下のとおりである。 ・運用案1(図表Ⅱ―2参照) 処分の対象となった医薬品の製造販売等の行為又は農薬の製造・輸入等の行為が、特 許発明の実施行為に該当しない場合に、特許法第67条の3第1項第1号の拒絶理由となると するもの(処分により禁止が解除された行為が特許発明の実施に該当する行為である場 合に、延長を認めるもの)である。運用案1については、各特許の延長申請が細切れにな り、延長された場合の特許権の効力が狭く解されるおそれがあるので、問題があり、現 在の運用との乖離(かいり)が大きくなるため混乱が生じる可能性があるとの意見が出 された。 ・運用案2(図表Ⅱ―3参照) 運用案1の場合に加えて、先行処分によって実施できるようになっていたと認められる 特許発明の範囲(「物」と「用途」によって特定される特許発明の範囲22)に、本件処分 の対象となった製品が含まれる場合に、特許法第67条の3第1項第1号の拒絶理由となると するもの(処分により禁止が解除された行為が特許発明の実施に該当する行為であり、 かつ、本件処分の対象となった製品が、先行処分によって実施できるようになっていた と認められる特許発明の範囲に含まれない場合に、延長を認めるものであり、先行処分 によって実施できるようになっていたと認められる範囲を、 「物」と「用途」の観点で考 えるが、常に、 「物=有効成分」、 「用途=効能・効果」としていた従来の運用の考え方を 変更するもの)である。運用案2については、最高裁判決と齟齬しない範囲で現在の運用 との整合をとりつつ修正したものであり、賛同できる。どのようなケースでも一貫した 説明ができる考え方とすることも望ましいとの意見が出されたが、より具体的な事例に 適応したときに、現行の運用とどのような差異が生じるのか不明である等、更に検討す べき事項もあるとの意見も出された。 ・製薬協案(図Ⅱ―4参照) 有効成分並びに効能及び効果を同じくする医薬品について薬事法第14条1項による製 造販売の承認がされている場合であっても、先行処分の医薬品が延長対象となる特許発 22 「物」と「用途」によって特定される特許発明の範囲を 医薬品の承認書に記載された事項又は農薬の登録票に記載 された事項のうち、特許発明の発明特定事項に該当するすべての事項及び用途に該当する事項によって特定される範囲 とし、発明特定事項に用途を特定する事項が含まれる場合には、 「特許発明の発明特定事項に該当するすべての事項」は 「用途に該当する事項」を包含する。 - 14 - 明の技術的範囲に属しないときは、延長登録の対象とするものである。製薬協案につい ては、最高裁判決の要旨から導かれる内容のみの変更では、一貫性が保証されず再び問 題が生じる可能性があるとの意見が出された。 ・ジェネリック協会案 「特許発明の実施」が可能となった最初の処分に基づく延長のみを許容する(一の特 許につき1回のみの延長とする)ものであり、先行医薬品が(後行処分による)延長登 録出願にかかる特許権のいずれの請求項にかかる特許発明の技術的範囲にも属しないと きであって、当該後行処分が延長の対象となる特許発明の実施を承認するものであれば、 DDS製剤等の改良発明についても特許権存続期間の延長を認めるものである。ジェネリッ ク協会案については、特許法第68条の2の効力規定とのバランスから見て問題があり、現 行運用を大きく変更するものであるため混乱が生じる可能性もあるとの意見が出された。 WGでの検討の結果、事務局運用案1とジェネリック協会案はいずれも運用の大きな変更と なるため、採用は難しいとされ、事務局運用案2を基本としつつ、製薬協案も考慮して、審 査基準改訂案を作成することとなった。そして、存続期間の延長登録の出願の審査が停止 されているという現状に鑑み、審査基準の改訂を早急に進め、早期に審査を再開すること が重要である認識で一致し、発明特定事項に着目する改訂案の考え方は、論理に一貫性が あり、最高裁判決と齟齬するものでもなく妥当であり、知財高裁判決とは考え方が異なる ものの、存続期間の延長登録の可否の結論において、現行運用からの乖離が大きくなく妥 当であるとして、審査基準改訂案をパブリックコメント手続に付すことが了承された。そ の一方で、特許法第67条の3第1項第1号の判断についての透明性の確保を求める意見、既に 存続期間の延長登録が認められた特許権に無効理由が生じることを懸念する意見、延長さ れた場合の特許権の効力の及ぶ範囲が、技術レベルが高い医薬品の承認に基づく存続期間 の延長登録のみを認める制度とすることなどについて、法改正・政令改正も視野に入れた 長期的な議論も必要であるとの意見も出された。 - 15 - 【図表Ⅱ―2】運用案123 【図表Ⅱ―3】運用案224 23 第6回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ配布資料「資料4 運用案(事務局案)」特許庁、3頁 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/entyou-wg06_shiryou/04.pdf[最終アクセス日2015年2月16日] 24 第6回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ配布資料「資料4 運用案(事務局案)」特許庁、4頁 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/entyou-wg06_shiryou/04.pdf[最終アクセス日2015年2月16日] - 16 - 【図表Ⅱ―4】延長制度の対象となる処分25 (5) 改訂審査基準の概要 産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会特許権の存続期間の延長制度検討WG における議論、及びパブリックコメント手続を経て、特許法第67条の3第1項第1号における 「特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であった」について、最高裁判 決と齟齬しないようにすることに加え、最高裁判決が判示した先行処分が特許発明の技術 的範囲に属しない場合を含め、いかなる事例にも一貫した説明ができるように、審査基準 が改訂され、平成23年12月28日に公表された。 改訂審査基準においては、承認や登録の対象となる医薬品や農薬は、承認書や登録票等 に記載された多数の事項で特定されたものであるのに対し、特許発明は技術的思想の創作 を「発明特定事項」(出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事 項)によって表現したものであるから、特許法第67条の3第1項第1号の判断における「特許 発明の実施」は、処分の対象となった医薬品その物の製造販売等の行為又は処分の対象と なった農薬その物の製造・輸入等の行為と捉えるのではなく、処分の対象となった医薬品 の承認書又は農薬の登録票等に記載された事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する 全ての事項(「発明特定事項に該当する事項」)によって特定される医薬品の製造販売等の 行為又は農薬の製造・輸入等の行為と捉えることとされた。 ただし、存続期間が延長された場合の特許権の効力(特許法第68条の2)については、処 25 第6回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ配布資料「資料5 日本製薬工業協会提出資料」特許庁、 4頁 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/entyou-wg06_shiryou/05.pdf[最終アクセス日2015年2月 16日] - 17 - 分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている 場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての特許発明の実施」以外の行為に 特許権の効力が及ばないことを規定しており、医薬品の承認及び農薬の登録においては用 途に該当する事項が定められていることから、用途を特定する事項を発明特定事項として 含まない特許発明の場合には、処分の対象となった医薬品の承認書又は農薬の登録票等に 記載された事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する全ての事項及び用途に該当する 事項(「発明特定事項及び用途に該当する事項」)によって特定される医薬品の製造販売等 の行為又は農薬の製造・輸入等の行為と捉えることとされた。 そして、①処分の対象となった医薬品の製造販売の行為又は農薬の製造・輸入の行為が、 延長登録の出願に係る特許発明の実施行為に該当しない場合、②延長登録の出願に係る特 許発明のうち、処分の対象となった医薬品又は農薬の「発明特定事項に該当する事項」 (用 途を特定する事項を発明特定事項として含まない特許発明においては、本件処分の対象と なった医薬品又は農薬の「発明特定事項及び用途に該当する事項」)によって特定される範 囲が、先行処分によって実施できるようになっていた場合には、 「特許発明の実施に政令で 定める処分を受けることが必要であった」とは認められないとされた。 (6) 知財高裁平成26年5月30日大合議判決26 先行処分から用法・用量の点のみを変更した後行処分を受けたことに基づいて行われた、 物質発明、及び用途発明に係る特許権の存続期間の延長登録出願を、特許庁は、改訂され た審査基準の解釈に従って拒絶する審決をした(なお、この事案は、先の最高裁判決が判 示しなかった、先行処分に係る医薬品が特許発明の技術的範囲に属しないものである)と ころ、平成26年5月30日、知財高裁大合議判決はこの審決を取消した。 そして、改訂審査基準について、 「特許庁による審査基準の上記改訂は、上記最高裁判決 が判示するところを超えて、独自の立場からされたものであり、前記のとおり、同号の規 定の文言から離れるものであって、これを採用することはできない」とした。 さらに、傍論ではあるが、延長された特許権の効力の及ぶ範囲について、 「特許権の延長 登録制度及び特許権侵害訴訟の趣旨に照らすならば、医薬品の成分を対象とする特許発明 の場合、特許法第68条の2によって存続期間が延長された特許権は、「物」に係るものとし て、 「成分(有効成分に限らない。)」によって特定され、かつ、 「用途」に係るものとして、 「効能・効果」及び「用法・用量」によって特定された当該特許発明の実施の範囲で、効 力が及ぶものと解するのが相当である」とした。 特許庁は、この判決を不服として、上告受理申立てを行った。 26 知財高判 平成26年5月30日 判時2232号3頁 平25(行ケ)第10195号~第10198号 - 18 - (7) 延長登録出願件数の変遷 延長登録出願の件数は、図Ⅱ-5に示されるとおり、平成21年(2009年)を境に増加し、 平成23年(2011年)12月28日の審査基準の公表後、平成24年(2012年)に一旦減少したかに 見えたが、平成25年(2013年)に再び増加に転じている。延長登録出願の負担が増大して おり、ジェネリック製品を製造する企業の監視負担も増大しているものと推測される。 【図表Ⅱ-5】我が国の延長登録出願件数の推移27 350 300 250 200 150 100 50 0 (8) 薬事法改正(再生医療製品の導入に伴う改訂) 平成25年11月27日に公布された「薬事法等の一部を改正する法律」により、再生医療等 製品なる新たな製品区分が規定され、従来は医薬品に分類されていた遺伝子導入医薬品や、 従来は医療機器に分類されていた細胞シートなどが、新区分に分類されることとなった。 産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会再生医療等製品の特許権の存続期間検 討WGにおいて、特許権の存続期間の延長制度における再生医療等製品の取扱いについて検 討され、2回の審議を経て、再生医療等製品の製造販売の承認に基づく特許権の存続期間の 延長については、①再生医療等製品を新たに特許権の存続期間の延長対象とする、②条件 及び期限付承認後の再度の申請に基づく承認を特許権の存続期間の延長対象としない、③ 改正法の施行日以降になされた延長登録出願のみ、特許権の存続期間の延長対象とすると の結論が得られた。その後、当WGでの結論を踏まえ、特許権の存続期間の延長対象を定め る特許法施行令第3条の改正、審査基準の改訂が行われた。 (図表Ⅱ―7に改正後の新承認制 27 IPDLの各年の延長登録出願数から算出(2015年1月28現在) - 19 - 度の概要を示した。) 【図表Ⅱ-7】改正後の新承認制度28 (9) 薬事制度と医薬品の保護 医薬品については、特許法による保護(特許権)とは別に、医薬品、医療機器等の品質、 有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称「医薬品医療機器等法」)による保護が与え られている。 医薬品医療機器等法では、既承認医薬品と有効成分、投与経路、効能・効果、用法・用 量等が異なる医薬品(いわゆる新薬)については、その有効性・安全性を確保する観点か ら、販売承認を受けた日から一定期間(再審査期間29;最長10年間)当該医薬品の使用成 績調査を行い、その結果等を当局に報告することが義務付けられており、当該期間内は、 後発医薬品の承認申請ができないこととされている(新薬のデータ保護)。 28 第1回再生医療等製品の特許権の存続期間検討ワーキンググループ配付資料「資料4 改正薬事法上の再生医療等製 品の特許法における取扱いについて」特許庁、14頁 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/saisei-wg01_shiryou/04.pdf[最終アクセス日2015年2月16日] 29 厚生労働省医薬食品局長通知「新有効成分含有医薬品の再審査期間について」薬食発第0401001号 - 20 - さらに、医薬品医療機器等法に明確な規定はないが、新薬の物質特許、用途特許の存続 期間中は、原則として後発品を承認しないとする運用30(いわゆるパテントリンケージ) が行われ、実質的に、次の承認のタイミングまで新薬の特許期間が最長6か月間延長されて いる。 これら制度運用は、専ら新薬開発のインセンティブや医薬品の有効性・安全性の確保、 後発品の安定供給の確保防止を意図するものであるとされる。 (ⅰ) 新薬開発の流れ31 図表Ⅱ―8に新薬開発の流れを示す。 【図表Ⅱ―8】新薬開発の流れ32 新薬の開発期間は9~17年の長期間33が必要とされ、また、開発に数百億円の開発費が掛 30 厚生労働省医政局経済課長・厚生労働省医薬食品局審査管理課長「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価 収載に係る医薬品特許の取扱いについて」医政経発第0605001号、薬食審査発第0605014号 31 日本製薬工業会「日本の薬事行政」http://www.jpma.or.jp/about/issue/gratis/pdf/12yakuji.pdf[最終アクセス日 2015年2月16日] 32 日本製薬工業会「岡山県後発医薬品の安心使用のための協議会(2010年5月31日)」資料より引用 http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/60126_252271_misc.pdf[最終アクセス日2015年2月16日] 33 日本製薬工業会「てきすとぶっく製薬産業2014-2015」8頁 - 21 - かるといわれている。なお、臨床試験から承認審査に掛かる期間が延長登録出願の対象期 間となる。 (ⅱ) 医薬品の販売承認34 医薬品の製造販売をするものは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保 等に関する法律第14条第1項の規定により、品目35ごとに厚生労働大臣の承認を受けるこ とが義務付けられている。 次に図表Ⅱ―9に医薬品の審査業務のフローチャートを示す。 34 本節の執筆については全体として「医薬品製造販売指針2012」 (レギュラトリーサイエンス学会、じほう社)、平成18 年度厚生労働科学研究費補助金 「医薬品・医療機器開発に対する理解増進に関する研究」、独立行政法人医薬基盤研究 所(https://www.nibio.go.jp/guide/top.html[最終アクセス日2015年2月16日])を参考にした。 35 ①同一販売名で表せるもの、②有効成分とその分量(又はその濃度)が異ならないもの、③著しく剤型が異ならない もの - 22 - 【図表Ⅱ―9】医薬品の審査業務のフローチャート36 製造販売承認審査は申請者が承認申請書と必要とされる資料等を医薬品医療機器総合機 構(PMDA)に提出することによって行う。審査関連業務では、申請が行われると、医薬品 の品目ごとに品質、有効性、安全性の審査をPMDAの同一審査チームが必要に応じて申請者 と外部専門家が協議をしながら行う。医薬品の審査とは、申請された医薬品について、十 分な科学的データが得られているかどうか、厳密な薬効評価が行われ、適切な使用対象(効 能・効果)と使用方法(用法・用量等)が決められているかどうか、疾病の治療や診断へ の貢献が確認されているかどうかを、申請資料を基に再検証する作業を指す。そして、そ 36 「審査関連業務の概要」PMDA http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline.html[最終アクセス日2015年2月16 日] - 23 - の審査結果が厚生労働省に通知され、薬事・食品衛生審議会37の審議を経て、承認・不承 認が決定される。新医薬品・通常品目に係る審査では平均で1~2年(平成23年度11.5月) の期間が掛かっている38。 (ⅲ) 一部変更承認申請 既承認の医薬品の有効成分以外の成分若しくは分量、用法・用量、効能・効果、一部の 剤型変更、製造方法又は規格及び試験方法、貯蔵方法及び有効期間欄等の変更(医薬品、 医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第9項)を一部変更承認 申請で行うことができる39。なお、有効成分若しくはその分量又は一部の剤型の変更につ いては新規の承認申請で行う40。また、変更内容が軽微なものについては軽微変更届で行 う41。 (ⅳ) 申請書面4243 申請は国際的に共通化されたCTD(common Technical Document、eCTD)によって紙媒体若 しくは電子データで提出を行う44。 以下、図表Ⅱ―10~図表Ⅱ―14に主な販売承認の申請の際に必要な提出資料を記載する。 【図表Ⅱ―10】新有効成分含有医薬品の申請時の提出資料 審査項目45 提出資料46 イ 起原又は発見の経緯及 1 起原又は発見の経緯に関する資料 37 厚生労働省薬事・食品衛生審議会「資料1薬事・食品衛生審議会について(概要)」 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/dl/s0126-12a.pdf[最終アクセス日2015年2月16日] 38 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「PMDAの業務と最近の取組み」 http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/presentation/executives/EX-B-4narita.pdf[最終アクセス日2015年2月16 日]http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/presentation/executives/EX-B-4narita.pdf[最終アクセス日2015年2月 16日] 39 厚生省薬務局長通知「薬事法の一部を改正する法律の施行について」薬発第483号 40 ただし、承認内容を変更する場合に、新規の承認によるか、一部変更によるかは、その変更により当該品目の同一性 や同等性が失われるか否かにつき総合的に判断して決めるべきとされている。「医薬品製造販売指針2012」(レギュラト リーサイエンス学会、じほう社)108頁 41 厚生労働省医薬食品局審査管理課長「改正薬事法に基づく医薬品等の製造販売承認申請書記載事項に関する指針につ いて」薬食審査発第0210001号、「医療用医薬品等の承認申請等に関する質疑応答集(Q&A)について」H.17.12.1 42 厚生労働省医薬食品局長「医薬品の承認申請について」薬食発1121第2号 43 各申請書面は次のURLから取得できる。JPMAウェブサイト http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/info/download/syoninshinsei.html[最終アクセス日2015年2月16日] 44 将来的には電子データでの申請に移行する。 (厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「承認申請時の 電子データ 提 出に関する 基本的考え方について」薬食審査発0620第6号 45 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36 年厚生省令第1号)施行規 則第40条第1項第1号で規定する資料 46 厚生労働省医薬食品局長「医薬品の承認申請について」薬食発1121第2号、別表1及び別表2 - 24 - び外国における使用状況等 2 外国における使用状況に関する資料 3 特性及び他の医薬品との比較検討等 ロ 製造方法並びに規格及 1 構造決定及び物理的化学的性質等に関する資 び試験方法等 料 2 製造方法に関する資料 3 規格及び試験方法に関する資料 ハ 安定性 1 長期保存試験に関する資料 2 苛酷試験に関する資料 3 加速試験に関する資料 ニ 薬理作用 1 効力を裏付ける試験に関する資料 2 副次的薬理・安全性薬理に関する資料 (3 その他の薬理に関する資料) ホ 吸収、分布、代謝、排泄 1 吸収に関する資料 2 分布に関する資料 3 代謝に関する資料 4 排泄に関する資料 (6 その他の薬物動態に関する資料) ヘ 急性毒性、亜急性毒性、 1 単回投与毒性に関する資料 慢性 2 反復投与毒性に関する資料 毒性、催奇形性その他の毒 3 遺伝毒性に関する資料 性 (4 がん原性に関する資料) 5 生殖発生毒性 〃 (6 局所刺激性に関する資料) (7 その他の毒性に関する資料) ト 臨床試験の成績 臨床試験成績に関する資料 チ 法第五十二条第一項に 添付文書等記載事項に関する資料 規定する添付文書等記載事 項 (()内の資料については個々の医薬品により判断される) 【図表Ⅱ―11】新投与経路医薬品の申請時の提出資料 審査項目 提出資料 イ 起原又は発見の経緯及 1 起原又は発見の経緯に関する資料 び外国における使用状況等 2 外国における使用状況に関する資料 - 25 - 3 特性及び他の医薬品との比較検討等 ロ 製造方法並びに規格及 2 製造方法に関する資料 び試験方法等 3 規格及び試験方法に関する資料 ハ 安定性 1 長期保存試験に関する資料 2 苛酷試験に関する資料 3 加速試験に関する資料 ニ 薬理作用 1 効力を裏付ける試験に関する資料 (2 副次的薬理・安全性薬理に関する資料) (3 その他の薬理に関する資料) ホ 吸収、分布、代謝、排泄 1 吸収に関する資料 2 分布に関する資料 3 代謝に関する資料 4 排泄に関する資料 (6 その他の薬物動態に関する資料) ヘ 急性毒性、亜急性毒性、 1 単回投与毒性に関する資料 慢性 2 反復投与毒性に関する資料 毒性、催奇形性その他の毒 (4 がん原性に関する資料) 性 5 生殖発生毒性に関する資料 (6 局所刺激性に関する資料) (7 その他の毒性に関する資料) ト 臨床試験の成績 臨床試験成績に関する資料 チ 法第五十二条第一項に 添付文書等記載事項に関する資料 規定する添付文書等記載事 項 【図表Ⅱ―12】新効能医薬品の申請時の提出資料 審査項目 提出資料 イ 起原又は発見の経緯及 1 起原又は発見の経緯に関する資料 び外国における使用状況等 2 外国における使用状況に関する資料 3 特性及び他の医薬品との比較検討等 ニ 薬理作用 1 効力を裏付ける試験に関する資料 ホ 吸収、分布、代謝、排泄 (1 吸収に関する資料) (2 分布に関する資料) (3 代謝に関する資料) - 26 - (4 排泄に関する資料) (6 その他の薬物動態に関する資料) ト 臨床試験の成績 臨床試験成績に関する資料 チ 法第五十二条第一項に 添付文書等記載事項に関する資料 規定する添付文書等記載事 項 【図表Ⅱ―13】新剤形医薬品の申請時の提出資料 審査項目 提出資料 イ 起原又は発見の経緯及 1 起原又は発見の経緯に関する資料 び外国における使用状況等 2 外国における使用状況に関する資料 3 特性及び他の医薬品との比較検討等 ロ 製造方法並びに規格及 2 製造方法に関する資料 び試験方法等 3 規格及び試験方法に関する資料 ハ 安定性 1 長期保存試験に関する資料 2 苛酷試験に関する資料 3 加速試験に関する資料 ホ 吸収、分布、代謝、排泄 1 吸収に関する資料 2 分布に関する資料 3 代謝に関する資料 4 排泄に関する資料 (6 その他の薬物動態に関する資料) ト 臨床試験の成績 臨床試験成績に関する資料 チ 法第五十二条第一項に 添付文書等記載事項に関する資料 規定する添付文書等記載事 項 【図表Ⅱ―14】新用量医薬品の申請時の提出資料 審査項目 提出資料 イ 起原又は発見の経緯及 1 起原又は発見の経緯に関する資料 び外国における使用状況等 2 外国における使用状況に関する資料 3 特性及び他の医薬品との比較検討等 ニ 薬理作用 1 効力を裏付ける試験に関する資料 ホ 吸収、分布、代謝、排泄 1 吸収に関する資料 - 27 - 2 分布に関する資料 3 代謝に関する資料 4 排泄に関する資料 (6 その他の薬物動態に関する資料) ト 臨床試験の成績 臨床試験成績に関する資料 チ 法第五十二条第一項に 添付文書等記載事項に関する資料 規定する添付文書等記載事 項 (ⅴ) ジェネリック医薬品の開発の流れ ジェネリック医薬品47は、先発医薬品と同じ有効成分を含有し、そのバイオアベイラビ リティ(未変化体又は活性代謝物が体循環血中に入る速度と量)が先発医薬品と同等であ ることがヒトにおける試験(生物学的同等性試験)で確認され又はこれが合理的に推定さ れることにより、先発医薬品に比べて簡略なデータを添付することにより承認を受けるこ とのできる医薬品であって、その効能・効果、用法・用量は先発医薬品と原則同一である。 そして、添加剤の種類やその配合量が先発医薬品と異なることはあるが、医薬品添加物と して使用が許される添加剤は厚労省によりその使用が認められたものに限られており、ジ ェネリック医薬品の承認審査においては、生物学的同等性に関する資料を基に有効性や安 全性に違いがないことが確認される。なお、添加剤48は、その用途により、賦形剤、安定 剤、保存剤、緩衝剤、矯味剤、懸濁化剤、乳化剤、着香剤、溶解補助剤、着色剤、粘稠剤 などと呼ばれることがある。 <添加剤49> 「添加剤は、製剤に含まれる有効成分以外の物質で、有効成分及び製剤の有用性を高め る、製剤化を容易にする、品質の安定化を図る、または使用性を向上させるなどの目的で 用いられる。製剤には、必要に応じて、適切な添加剤を加えることができる。ただし、用 いる添加剤はその製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害でなければならない。ま た、添加物は有効成分の治療効果を妨げるものであってはならない。」 47 「ジェネリック医薬品への疑問に答えます」厚生労働省、平成24年7月 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/dl/jene-qa.pdf[最終アクセス日2015年2月16日] 48 「医薬品添加剤について」日本ジェネリック製薬協会ウェブサイト http://www.jga.gr.jp/pdf/tenkazai.pdf[最終 アクセス日2015年2月16日]、「ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、先発医薬品とは使用する添加剤が違うのだから、 先発医薬品と同じと言えないのではないか 」厚生労働省ウェブサイト http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/dl/jene-qa2_0002.pdf[最終アクセス日2015年2 月16日] 49 「第16改正日本薬局方(平成23年3月24日)」 厚生労働省告示第65号 - 28 - 次に図表Ⅱ-15に経口固形製剤のジェネリック医薬品の開発・申請の開発期間を示す。 【図表Ⅱ-15】経口固形製剤のジェネリック医薬品の開発・申請の開発期間50 項目 必要期間 有効成分の選定と規格及び試験方法の設定 2~3年 対照薬となる先発製剤の選定 製剤処方設計 試験製剤の製造、規格及び試験方法の設定 安定性試験(加速試験) 溶出挙動の類似性の確認と生物学的同等性試験 申請資料の作成 申請承認 1年 上図のように、ジェネリック医薬品の開発には、3~4年の歳月と、1品目につき1億円程 度の開発費が掛かるといわれている。また、一般的には、ジェネリック医薬品は、先発医 薬品の再審査期間終了後に申請され、先発医薬品に関わる物質特許等の満了後に承認され る。ジェネリック医薬品の承認と薬価収載は、現在は承認が2月と8月、薬価収載が6月と12 月となっている。(なお、新薬については3月、6月、9月及び12月に収載される。) (ⅵ) ジェネリック医薬品の販売承認 ジェネリック医薬品の販売承認は先発医薬品と同様に所定の資料をPMDAに提出すること によって行う。図表Ⅱ―16にジェネリック医薬品の申請時に必要とされる提出資料を示す。 【図表Ⅱ―16】ジェネリック医薬品の申請時の提出資料 審査項目 提出資料 ロ 製造方法並びに規格及 (2 製造方法に関する資料) び試験方法等 3 規格及び試験方法に関する資料 ハ 安定性 3 加速試験に関する資料 ホ 吸収、分布、代謝、排泄 5 生物学的同等性に関する資料 チ 法第五十二条第一項に 添付文書等記載事項に関する資料(製造方法の変 規定する添付文書等記載事 更又は試験方法の変更等、添付文書の記載に変更 50 「ジェネリック医薬品FAQ」日本ケミファ株式会社ウェブサイト https://www.nc-medical.com/faq/development/01.html[最終アクセス日2015年2月16日] - 29 - 項 を生じない内容に関する申請に限り、原則とし て、チの資料の添付は要しない。) (ⅶ) ジェネリック医薬品製造販売申請における特徴 ・「基本効能」申請・承認(「虫食い」申請) 平成21年4月に後発医薬品についての承認審査について大きく政策転換され、先発品に用 途特許が存在していても、物質特許が満了し、かつ、再審査期間が終了していれば、後発 品を承認するという方向性が打ち出された51。 後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱い(抜粋)52 1.後発医薬品の薬事法上の承認審査にあたっては次のとおり取り扱うこと。なお、以 下について、特許の存否は承認予定日で判断するものであること。 (1)先発医薬品の有効成分に特許が存在することによって、当該有効成分の製造その ものができない場合には、後発医薬品を承認しないこと。 (2)先発医薬品の一部の効能・効果、用法・用量(以下、「効能・効果等」という。) に特許が存在し、その他の効能・効果などを標榜する医薬品の製造が可能である場合に ついては、後発医薬品を承認できることとすること。この場合、特許が存在する効能・ 効果等については承認しない方針であるので、後発医薬品の申請者は事前に十分確認を 行うこと。 (3)なお、効能・効果等の開発に伴い、既に製造販売の承認を与えられている医薬品 と明らかに異なる効能・効果等が認められた医薬品等については、原則として、4年間 の再審査期間を付すこと等とされているので、申し添える。 承認審査に係る医薬品特許情報の取扱いについて(抜粋)53 1.収集する特許情報の対象については、当面、既承認の医療用医薬品(体外診断用医 薬品を除く。以下同じ。)の有効成分に係る物質特許又は用途特許(ただし、特許期間 が満了しているものを除く。)についての情報とすること。 2.上記1に係る特許権者(特許出願人)又は当該特許に係る成分を有効成分として医 薬品の承認を取得している者は、再審査の調査期間終了前(既に再審査の調査期間が終 了しているものであっても特許期間が満了していない場合には特許期間満了まで)に、 51 山名美加「医薬品のライフサイクルマネジメントと知的財産」、 Law&Technology No.52 2011/7 厚生労働省医政局経済課長「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る 医薬品特許の取扱いについて」医政経発第0605001号、薬食審査発第060514号 53 厚生省薬務局審査課長「承認審査に係る医薬品特許情報の取扱いについて」薬審第762号(平成21年6月5日一部改正) 52 - 30 - 別紙の医薬品特許情報報告書に必要事項を記入し、独立行政法人医薬品医療機器総合機 構一般薬等審査部宛に直接提出すること。ただし、提出は任意とし、一般には公開しな いものとする。 3.新規有効成分含有医薬品の再審査の調査期間終了後に同一有効成分の医療用医薬品 の製造販売承認申請を行う者は、当該有効成分に係る物質特許又は用途特許の有無及び 物質特許又は用途特許がある場合には承認後速やかに製造又は輸入販売できることを 示す資料を添付すること。 これにより、先発医薬品の効能・効果、用法・用量などについて一部特許権が存在して いても、その部分を削除した申請が認められることとなり、結果として先発医薬品とジェ ネリック医薬品との間に効能・効果、用法・用量に違いのある医薬品が生じることとなっ ている。そして、先発医薬品企業としては、先発医薬品に希少効能を追加して特許権の存 続期間の延長を獲得し、ジェネリック医薬品の参入を遅らせていたいわゆる「EVER GREEN」 戦略が従来に比べてとりづらくなった54。 ・ジェネリック医薬品の規格55そろえ 厚労省は、ジェネリック医薬品使用促進のために、先発医薬品が持つ全ての規格をそろ える(全規格収載)ことを求めている565758。 (ⅷ) バイオシミラー医薬品 先発メーカーのバイオ医薬品の後発品の場合は、一般の低分子医薬品の後発品と違い、 先発医薬品と同様の製品を製造することが難しく、また、審査項目も非常に多くなってい る。結果として、開発期間として5年程度、開発費用として50~100億円が掛かるといわれ ている59。図表Ⅱ―17にバイオシミラー製品の販売承認申請時に提出する資料を示す。 54 日本ジェネリック製薬協会知的財産研究委員会「知的財産研究委員会活動報告」JGA NEWS、2009年7月16号、8頁 (http://www.jga.gr.jp/pdf/news/archives/JGA_No.016.pdf[最終アクセス日2015年2月16日]) 55 ”成分又は本質については規格を設定するとともに、その配合目的及び分量を記載すること。"(「医薬品の承認申請 書の記載事項について」(医薬審第39号)) 56 厚生労働省医政局長「後発医薬品の必要な規格を揃えること等について」 (医政発第0310001号)、"後発品については、 その収載に当たり必要な規格がすべてそろっていることを原則とするとともに、安定供給を確保するよう指導すること っとする"(医政発第0310002号) 57 「「後発医薬品の必要な規格を揃えること等について」のQ&Aについて」厚生労働省医政局経済課 58 「後発医薬品前規格収載の対応期限終了」、JGA NEWS、2012年4月、第48号、1頁 (http://www.jga.gr.jp/pdf/news/JGA_No.048.pdf[最終アクセス日2015年2月16日]) 59 役に立つ薬の情報~専門薬学「バイオシミラーとジェネリック医薬品との違い」 http://kusuri-jouhou.com/nyuumon/generic26.html[最終アクセス日2015年2月16日] - 31 - 【図表Ⅱ―17】バイオ後続品の申請時の提出資料 審査項目60 提出資料 イ 起原又は発見の経緯及 1 起原又は発見の経緯に関する資料 び外国における使用状況等 2 外国における使用状況に関する資料 3 特性及び他の医薬品との比較検討等 ロ 製造方法並びに規格及 1 構造決定及び物理的化学的性質等に関する資 び試験方法等 料 2 製造方法に関する資料 3 規格及び試験方法に関する資料 ハ 安定性 1 長期保存試験に関する資料 (2 苛酷試験に関する資料) (3 加速試験に関する資料) ニ 薬理作用 1 効力を裏付ける試験に関する資料 ホ 吸収、分布、代謝、排泄 (1 吸収に関する資料) (2 分布に関する資料) (3 代謝に関する資料) (4 排泄に関する資料) (6 その他の薬物動態に関する資料) ヘ 急性毒性、亜急性毒性、 (1 単回投与毒性に関する資料) 慢性 2 反復投与毒性に関する資料 毒性、催奇形性その他の毒 (6 局所刺激性に関する資料) 性 (7 その他の毒性に関する資料) ト 臨床試験の成績 臨床試験成績に関する資料 チ 法第五十二条第一項に 添付文書等記載事項に関する資料 規定する添付文書等記載事 項 (ⅸ) 医薬品の再審査制度 我が国においては、再審査制度が実質的にデータ保護として機能している。 再審査(医薬品医療機器等法第14条の4)61とは、新薬について、承認後一定期間が経過 60 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号)施行規則 第40条第1項第1号で規定する資料 61 「再審査制度・再評価制度について(特定保健用食品の表示許可制度専門調査会H23.2.28)」厚生労働省医薬食品局審 査管理課 http://www.cao.go.jp/consumer/history/01/kabusoshiki/tokuho/doc/110228_shiryou5.pdf[最終アクセス 日2015年2月16日] - 32 - した後に、企業が実際に医療機関で使用されたデータを集め、承認された効能効果、安全 性について、再度確認する制度である。図表Ⅱ-18に主な医薬品の再審査期間を示す。 【図表Ⅱ-18】主な再審査期間 期間 新医薬品の種類 10年 希少疾病用医薬品 長期の薬剤疫学的調査が必要なもの 8年 新有効成分医薬品 6年 新医療用配合剤(新規性により4年もある) 新投与経路医薬品 4年 新効能・効果医薬品 新用法・用量医薬品 また、再審査期間と特許存続期間満了日の関係について、約2割が再審査期間終了日のほ うが特許存続期間満了日より長くなっていたとの報告62がされている。 (ⅹ) パテントリンケージ 再審査制度と異なり、医薬品医療機器等法に規定はないが、行政指導として運用されて いる制度である。後発医薬品の製造販売の承認に当たって、特許係争を未然に防止し、医 薬品の安定供給を確保する観点から、先発医薬品に関する特許の有無が考慮されている。 図表Ⅱ―19に後発医薬品の承認審査時における特許の取扱いを示す。 62 科 尾﨑由起子「博士論文要旨 医薬品産業市場における市場独占権に関する考察」一橋大学大学院 国際企業戦略研究 http://www.ics.hit-u.ac.jp/jp/phd/article_ozaki.pdf[最終アクセス日2015年2月16日] - 33 - 【図表Ⅱ―19】後発医薬品の承認審査時における特許の取扱い ・有効成分の製造そのものができない場合、後発品を承認しない ・特許が存在する効能・効果等は承認しないが、特許が切れた効能・効果は承認する ・特許の存否は承認予定日で判断する。特許係争が懸念される品目は、薬価収載前に先発 薬メーカーとジェネリック薬メーカーが事前調整すること。 (10) (ⅰ) 農薬の製造販売登録 農薬開発 図表Ⅱ―20に農薬開発の流れ63を示す。 63 「農薬の基礎知識詳細」農林水産省 セス日2015年2月16日] http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tisiki/tisiki.html#kiso4_1[最終アク - 34 - 【図表Ⅱ―20】 過程 項目 内容|年次 合成、生物活性検定 探索研究 類緑化合物の検索 ポット特性試験 薬効薬害試験 小規模圃場試験 委託圃場試験、適用拡大 急性毒性(経口、経皮、吸入) 刺激性(皮膚、眼、アレルギー) 変異原性 毒性試験 催奇形性 繁殖毒性(2世代) 反復経口投与神経毒性 発がん性(2年2動物) 生体内運命 動物、作物、土壌、水中運命 残留試験 予備試験、資料作成、分析 水産・有用生 魚毒性 物影響試験 蚕、ミツバチ、鳥、天敵 分析法(原体、製剤、残留) 原体製造研究、プラント設計製造設備投資 製造研究など 製剤研究 規格など 設備投資 特許 登録申請 研究 段階 PhaseⅠ -1 0 1 開発段階 PhaseⅡ 2 3 4 5 PhaseⅢ 6 登録 7 8 9 市販 10 11 生産 販売 農薬は、食用となる作物等に使用され、環境への影響も注意すべき化学物質や生物であ るため、農薬取締法に基づいて輸入、製造、販売、そして使用に至るまで全ての過程で厳 しく規制されている。新たな農薬の開発には、農薬取締法に基づき様々な試験成績等を整 えて農薬登録を申請することが必要であり、およそ10年の歳月と数十億円にのぼる経費が 必要といわれている。 特許権の存続期間の延長制度の対象としては農薬登録申請時に必要な委託圃場試験(成 分を特定した場合)等に係る期間と登録申請から登録となるまでの期間が対象となってい る。 (ⅱ) 農薬の製造販売の登録制度64 農薬は、その安全性の確保を図るため、 「農薬取締法」に基づき、製造、輸入から販売そ して使用に至る全ての過程で厳しく規制され、国(農林水産省)に登録65された農薬だけ が製造、輸入及び販売できるという仕組みが設けられている。 農薬取締法では次のようなことが規定されている。 ・無登録農薬の製造・輸入・販売・使用の禁止 (農薬の登録義務、農薬販売者の届け出、適正表示のない農薬の販売禁止、無登録農薬の 使用禁止など) 64 本節は農林水産省ウェブサイト「農薬の基礎知識詳細」 (http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tisiki/tisiki.html[最終アクセス日2015年2月16日])を参考に作成した。 65 農薬取締法第2条第1項 - 35 - ・農薬使用基準に違反する農薬使用の禁止(使用基準順守義務など) ・罰則(販売に係る義務違反、使用に係る義務違反) (その他の関連法規:毒物及び劇物取締法、食品衛生法) ①農薬の販売登録の仕組み 農薬の製造者又は輸入者は独立行政法人農林水産省安全技術センター(FAMIC)を経由し て農林水産省に申請を行う66(農薬登録は殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、 植物成長調整剤、その他の7種類に分類し、この分類に従って行う67)。申請は、申請者が、 申請書、農薬の薬効、薬害、毒性及び残留性等に関する試験成績を記載した書類並びに農 薬の見本等をFAMICに提出することによって行われる。実際の登録検査はFAMICで行われ、 この結果から農林水産省が登録の可否を判断する。実際の申請の流れを図表Ⅱ―21に示す。 【図表Ⅱ―21】検査の仕組み68 ②FAMICでの検査の内容 FAMICでは申請者から提出された試験成績に基づき、次の三つの検査を行う。 66 農薬取締法第2条第2項 農薬工業会「教えて!農薬Q&A」 http://www.jcpa.or.jp/qa/a4_01.html[最終アクセス日2015年2月16日] 68 農林水産省「農薬の基礎知識詳細」 http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tisiki/tisiki.html#kiso4_1[最終アク セス日2015年2月16日] 67 - 36 - 【図表Ⅱ―22】FAMICで行われる検査 検査名 検査内容 薬効の検査 申請された方法に基づく使用による病害虫や雑草の防除 の効果 薬害の検査 申請された方法に基づき使用により、使用した作物とそ の周辺の作物及び後作物への影響(害) 安全性の検査 農薬使用者の安全性、農薬が使用された農作物を食べた 場合の安全性及び散布された環境に対する安全性 (試験機関における毒性試験、残留試験、薬物動態試験、 環境への影響試験) (ⅲ) 申請の種類 主な農薬登録申請には、図表Ⅱ―23のような申請がある。 【図表Ⅱ―23】主な農薬登録申請の種類 申請書 内容 農薬登録申請 新規申請時及び再登録申請時(3年毎) 農 薬 登 録 事 項 変 既登録剤の農薬登録申請書第7項(適用病害虫の範囲及び 更登録申請 (ⅳ) 使用方法)を変更する場合 申請のための提出書類 農薬登録申請のためには申請書に、図表Ⅱ―24の資料を添えて提出する必要がある。 【図表Ⅱ―24】農薬登録申請のための提出資料 試験項目 提出書類 1)薬効に関する試 適用病害虫に対する薬効に関する試験成績 験成績 (農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる薬剤 にあっては、適用農作物等に対する薬効に関する試験成 績) 2)薬害に関する試 ア 適用農作物に対する薬害に関する試験成績 験成績 イ 周辺農作物に対する薬害に関する試験成績 ウ 後作物に対する薬害に関する試験成績 - 37 - 3)毒性に関する試 ・急性毒性を調べる試験 験成績 ア 急性経口毒性試験成績 イ 急性経皮毒性試験成績 ウ 急性吸入毒性試験成績 エ 皮膚刺激性試験成績 オ 眼刺激性試験成績 カ 皮膚感作性試験成績 キ 急性神経毒性試験成績 ク 急性遅発性神経毒性試験成績 ・中長期的影響を調べる試験 ケ 90日間反復経口投与毒性試験成績 コ 21日間反復経皮投与毒性試験成績 サ 90日間反復吸入毒性試験成績 シ 反復経口投与神経毒性試験成績 ス 28日間反復投与遅発性神経毒性試験成績 セ 1年間反復経口投与毒性試験成績 ソ 発がん性試験成績 タ 繁殖毒性試験成績 チ 催奇形性試験成績 ツ 変異原性に関する試験成績 ・急性中毒症の処置を考える上で有益な情報を得る試験 テ 生体機能への影響に関する試験成績 ・動植物体内での農薬の分解経路と分解物の構造等の情 報を把握する試験 ト 動物体内運命に関する試験成績 ナ 植物体内運命に関する試験成績 ・環境中での影響をみる試験 ニ 土壌中運命に関する試験成績 ヌ 水中運命に関する試験成績 ネ 水産動植物への影響に関する試験成績 ノ 水産動植物以外の有用生物への影響に関する試験成 績 ハ 有効成分の性状、安定性、分解性等に関する試験成 績 - 38 - ヒ 水質汚濁性に関する試験成績 4)残留性に関する ア 農作物への残留性に関する試験成績 試験成績 土壌への残留性に関する試験成績 イ 農薬登録事項変更登録申請においては、申請書と登録票、変更後の薬効、薬害、毒性及 び残留性に関する試験成績を記載した書類並びに農薬の見本を提出して、変更の登録を申 請することができる(農薬取締法第6条の2)。 (ⅴ) ジェネリック農薬の申請 農産第8147号農林水産省農産園芸局長通知に次のように記載されているように、ジェネ リック農薬の販売登録の際には条件によって試験成績の一部が免除されることがあり得る。 試験成績の代替69について (1)農薬の登録申請において提出することとされている試験成績の一部が、既に他の 登録申請において提出されており、かつ、これらの試験成績を当該申請に係る農薬の試 験成績として利用することができると認められる場合には、申請者は、別記様式による 試験成績代替書を当該試験成績に代えて提出することができる。この場合において、利 用しようとする試験成績を提出した者が当該申請者と異なる場合にあっては、当該申請 者は、利用しようとする試験成績を提出した者が当該試験成績を利用して差し支えない 旨を記した書類を添付しなければならない。 しかしながら医薬品と異なり、先行登録者がジェネリック農薬について当該試験成績書 の使用を認めるケースはほとんどない。また、新規農薬登録と同等の研究開発・登録コス トが掛かるため参入障壁が比較的高いことが報告されている70。 (ⅵ) 農薬のデータ保護 農産第8147号農林水産省農産園芸局長通知に次のように記載されており、15年間のデー タ保護が認められている。 試験成績の代替71について 69 農林水産省農産園芸局長通知「農薬の登録申請に係る試験成績について」農産第8147号 OATアグリオ株式会社「平成26年12月期 決算短信」http://www.oat-agrio.co.jp/pdf/info_150210_01.pdf[最終アク セス日2015年2月16日] 71 農林水産省農産園芸局長通知「農薬の登録申請に係る試験成績について」農産第8147号 70 - 39 - (2)農薬の登録申請において提出することとされている試験成績の一部(第1の(3) のアからウまで及びトからネまで並びに(4)のアからウまでの試験成績に限る。)が 既に他の登録申請において15年以上前に提出されており、かつ、登録申請しようとして いる農薬が現に登録を受けてから15年以上経過しているものとその成分、物理的化学的 性状、人畜に対する毒性その他の特性が同等であると認められる場合には、申請者は、 別記様式による試験成績代替書を当該試験成績に代えて提出することができる。 (ⅶ) パテントリンケージ 農薬の登録申請において、先発農薬に係る特許の取扱いに関する審査の規定はない。た だし、申請書には、特許情報を記載する欄として、農薬登録申請時に提出する資料の「開 発の経緯」の欄(農薬登録申請時に提出する資料について(ドシエガイダンス)平成26年5 月15日参照)に物質特許について記載すること、 「農薬(製剤)及び原体の成分組成、製造 方法等に関する報告書」の「7.原体の製造方法等」の欄に製造方法に関する特許を記載す ることができる。 (11) 試験研究のための実施行為に関する特許権侵害の免責規定 特許法第69条第1項に「特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、 及ばない。」と規定されており、後発メーカーの製造承認試験は特許法第69条第1項の「試 験」に該当するかどうかが争われていたが、後発医薬品訴訟に係る最高裁判決72では、① 仮に特許権存続期間に後発医薬品の製造承認に必要な臨床試験が行えないとすると、実質 的に特許権の存続期間満了後も第三者が当該発明を自由に利用できなくなること、②特許 権者は特許発明の独占的実施による経済的利益は確保されることを理由として、医薬品の 製造承認申請のために必要な臨床試験のための特許発明の実施が、特許法第69条第1項の 「試験又は研究」に該当することが判示され、一連の混乱は収拾された73。なお当該判決 は医薬品だけでなく農薬に関する特許発明にも及ぶものと解されている。 72 最小二判 平成11年4月16日 民集53巻4号627頁 平成10(受)153 総合科学技術会議知的財産戦略専門調査会(第17回)「資料1「試験又は研究」の例外について」内閣府 http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/ip/haihu17/siryo1.pdf[最終アクセス日2015年2月16日] 73 - 40 - Ⅲ. 国内アンケート調査及び国内ヒアリング調査結果 1. 国内アンケート調査 (1) 国内アンケート調査実施概要 下記の要領で国内アンケート調査を実施した。 <アンケート送付先> ・日本製薬工業会 ・日本ジェネリック製薬協会(正会員) ・農薬工業会(正会員) ・再生医療イノベーションフォーラム (再生医療に関する期間延長制度検討WGメンバー) ・過去5年間で延長登録出願を行ったことがある企業 合計171者 <実施期間> 実施:平成26年11月17日~平成26年12月9日(回収期間12月29日までに送付されたものを集 計) <協力依頼> 各協会に協力依頼 ・日本製薬工業会 ・日本ジェネリック製薬協会 ・農薬工業会 ・再生医療イノベーションフォーラム <回収結果> 回答数81件 以下のアンケート結果については、回答者の属性に応じた答えを比較をするために、回 答者をType1~Type5に分類して比較を行った。図表Ⅲ―1に分類した対象と回答者数を示す。 なお、Type1~Type5に分類されない回答者数は、15件あった。 - 41 - 【図表Ⅲ―1】回答者内訳 医薬品 対象 回答者数 Type1 *1 新薬のみ 11 Type2 *2 新薬とジェネリック 27 Type3 *3 ジェネリックのみ 8 Type4 *4 新薬のみ 9 Type5 *5 新薬とジェネリック又 11 農薬 はジェネリックのみ *1:1-1の所属機関を問う設問で①「日本製薬工業協会」と11-1のジェネリック申請時 の迷いを問う設問で⑤「ジェネリック医薬品の承認申請をしていない」を選択した企業 *2:1-1の所属機関を問う設問で①「日本製薬工業協会」を選択し、11-1のジェネリッ ク申請時の迷いを問う設問で⑤「ジェネリック医薬品の承認申請をしていない」を選択し なかった企業 *3:1-1の所属機関を問う設問で②「日本ジェネリック製薬協会」を選択し、①「日本製 薬工業協会」を選択しなかった企業 *4:1-1の所属機関を問う設問で③「農薬工業会」と23-1のジェネリック申請時の迷い を問う設問で⑤「ジェネリック農薬の承認申請をしていない」を選択した企業 (医薬品については11-1で未記入が2企業) *5:1-1の所属機関を問う設問で③「農薬工業会」を選択し、23-1のジェネリック申請 時の迷いを問う設問で⑤「ジェネリック医薬品の承認申請をしていない」を選択しなかっ た企業 (農薬については2企業が23-1のジェネリック申請時の迷いを問う設問で⑤「ジェネリック 医薬品の承認申請をしていない」について未記入) - 42 - (2) 国内アンケート調査回答の集計結果抜粋 *以下は国内アンケート調査質問票の質問項目と回答の抜粋となっている。 Q1.貴社の所属する団体と海外での事業実績について Q1-1.国内での所属する団体を、下記の選択肢からお選びください。(複数回答可) 各所属団体の企業から回答を得ることができた。 【図表Ⅲ―2】設問Q1-1の回答 件数 1 日本製薬工業協会 2 日本ジェネリック製薬協会 3 農薬工業会 4 再生医療イノベーションフォーラム 5 それ以外の団体 無回答 回答者数 40 12 22 10 14 2 81 割合 49.4% 14.8% 27.2% 12.3% 17.3% 2.5% 100.0% Q2.貴社(単体)の資本金について下記の選択肢から一つお選びください。 回答者の企業規模は、資本金50億円以上の企業が54.3%と多く、その中でも医薬品の新薬 開発企業(Type1)の規模が大きかった。 【図表Ⅲ―3】設問Q2の回答 1 1000万円未満 2 1000万円以上、5000万円未満 3 5000万円以上、1億円未満 4 1億円以上、3億円未満 5 3億円以上、10億円未満 6 10億円以上、50億円未満 7 50億円以上 無回答 回答者数 0 1 2 5 8 20 44 1 81 - 43 - 0.0% 1.2% 2.5% 6.2% 9.9% 24.7% 54.3% 1.2% 100.0% 0% 20% 全体 012 5 8 40% 60% 20 80% 100% 44 1 1 2 type1 0 1 0 2 type2 0 2 1 8 6 0 17 3 4 1 5 type3 0 2 1 4 1 0 6 type4 0 1 0 type5 0 1 0 2 2 2 4 4 0 4 7 無回答 0 図表Ⅲ―4に本国内アンケート調査の回答者の業種内訳のデータを示す。本国内アンケー ト調査では、医薬品関連企業63者、農薬関連企業22者の合計81者の回答を得た。 【図表Ⅲ―4】回答者の業種内訳(複数回答可) 件数 1 B.医薬品 2 C.農薬 無回答 63 22 0 81 回答者数 以下、 ( 割合 77.8% 27.2% 0.0% 100.0% )内の質問番号は、対応する農薬関連の質問番号である。また、以下の図表は、 設問に対する回答を示す表、医薬の回答を示すグラフ、農薬の回答を示すグラフの順に示 した。ただし、Q6-1とQ18-1、Q8-3とQ20-3については、設問に対する医薬の回答を示す表、 医薬の回答を示すグラフ、農薬の回答を示す表、農薬の回答を示すグラフの順に示した。 B-1.特許権の存続期間の延長登録制度の利用状況 Q3(Q15).国内における特許権の存続期間の延長登録制度の利用について Q3-1(Q15-1).国内における特許権の存続期間の延長登録出願の有無について、下記 の選択肢から一つお選びください。 - 44 - 医薬の回答者の69.8%、農薬の回答者の59.1%が延長登録出願をしたことがあると回答 した。また、延長出願をしたことがない理由としては「延長登録出願の要件を満たす案件 がない」(データについては資料編Q3-2、Q15-2参照)との回答が多かった。 【図表Ⅲ―5】設問Q3-1(Q15-1)の回答(回答の左側が医薬、右側が農薬である) 件数(件) 割合(%) 44/13 69.8/59.1 18/8 28.5/36.4 1/1 1.6/4.5 63/22 100 1 延長登録出願をしたことがある 2 延長登録出願をしたことがない 無回答 回答者数 0% 20% 40% 全体 60% 80% 44 100% 18 type1 1 11 type2 0 25 1 2 1 1 無回答 type3 0 0% 全体 8 20% 40% 60% 80% 100% 1 13 type4 type5 0 8 7 1 2 6 5 0 0 2 無回答 Q4(Q16).海外における特許権の存続期間の延長登録制度の利用について Q4-1(Q16-1).海外で医薬品(農薬)の製造販売等の承認(登録)を受けたことがあ るかどうか(複数回答可) - 45 - 農薬の回答者の方が医薬の回答者よりも米欧州等への販売承認(登録)の申請率が高い。 また、医薬においては、選択肢4.その他の国として、中国と回答する件数が多かった。 【図表Ⅲ―6】設問Q4-1(Q16-1)の回答(回答の左側が医薬、右側が農薬である) 件数 20/12 20/11 23/10 16/7 32/7 1/3 63/22 1 ある(米国) 2 ある(欧州) 3 ある(韓国) 4 ある 5 ない 無回答 回答者数 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 1 31.7% 2 31.7% 60.0% 36.5% 3 25.4% 4 50.8% 5 無回答 50.0% 割合(%) 31.7/54.5 31.7/50.0 36.5/45.5 25.4/31.8 50.8/31.8 1.6/13.6 100/100 1.6% Q4-2(Q16-2).海外で医薬品(農薬)の特許権の存続期間の延長登録出願をしたこと があるかどうか(*米国には農薬に関する特許権の延長制度がないので農薬以外の品目 で延長登録出願を行ったことがある場合) (複数回答可) 延長出願制度の利用者は、医薬の方が農薬よりも若干多くなっている。また、医薬で選 択肢4の「その他の国」としてはオーストラリアが多く挙げられた。 - 46 - 【図表Ⅲ―7】設問Q4-2(Q16-2)の回答(回答の左側が医薬、右側が農薬である) 1 ある(米国) 2 ある(欧州) 3 ある(韓国) 4 ある 5 ない 無回答 件数(件) 22/2 21/5 21/5 10/1 35/12 1/3 63/22 * 回答者数 0.0% 1 2 3 4 5 無回答 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 割合(%) 34.9/9.1 33.3/22.7 33.3/22.7) 15.9/12 55.6/54.5 1.6/13.6 100/100 50.0% 60.0% 34.9% 33.3% 33.3% 15.9% 55.6% 1.6% B-2.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度の在り方 Q5(17).特許権の存続期間の延長の期間について Q5-1(Q17-1).特許権の存続期間の延長の期間を見直すとしたらどうすべきか なお、B-2.(以下のQ5~Q8/Q17~Q20)の質問は、将来、我が国の延長登録出願制度に 関する規定・運用を改正すると仮定した場合、どのような制度にユーザのニーズがあるか を調査するものであるという前提で、質問を行った。 医薬の66.7%が現行の5年を希望(選択肢1)しているが、農薬関係者については40.9% にとどまっており、選択肢2の現行より長くすべきが50%と多くなっている。農薬では起算 日を算定するための委託圃場試験に季節要因など自然の影響があるため、特許権の侵食期 間が長くなることが有識者より理由の一つとして挙げられた。また、選択肢2を選んだ理由 としては「臨床試験に掛かった期間全てを延長すべき」、「承認の取得に要する期間が現実 に5年より長いため」、 「5年でも開発のインセンティブを向上させるには不十分であるため」、 - 47 - 「投資の回収、利益の確保が十分でない」、 「農薬登録の取得には5年以上掛かる場合がある から」などの意見が挙げられた。 また、欧米のように14年又は15年の上限を設けることについては、不要との回答が73% (データについては資料編Q5-2、Q17-2参照)と多く、「欧米の当該規定は第三者の市場 参入を促進する目的で制定されたものであり、特許権者の権利保護を趣旨とする我が国の 延長制度においてあえて導入する必要はない」、「古い薬剤であっても、新たな適応症の開 発は意義があり、産業発達には貢献し得る。そのためにはやはり多大なコストがかかり利 益回収の期間は必要である」、「ただし、最長14年ないし15年は、長過ぎると思う。意図的 に浸食期間を延ばす申請者が現れることになり兼ねない。法目的の産業の発達を阻害して は本末転倒になる。具体的には、特許法では最長10年が妥当と考え、更に保護が必要であ れば、農薬取締法上で制度設計することが望ましい。」などの意見が挙げられた。 【図表Ⅲ―8】設問Q5-1(Q17-1)の回答(回答の左側が医薬、右側が農薬である) 件数(件) 割合(%) 42/9 66.7/40.9 15/11 23.8/50.0 3/1 4.8/4.5 3/1 4.8/4.5 63/22 100/100 1 現行と同様、5年とすべき 2 現行の5年より長くすべき 3 現行の5年より短くすべき 無回答 回答者数 0% 全体 type1 20% 40% 60% 80% 42 100% 15 8 3 3 3 1 0 2 3 type2 21 type3 6 6 0 - 48 - 2 0 0 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 9 11 1 1 2 type4 type5 3 6 5 5 0 3 無回答 1 0 Q5-3(Q17-3).我が国の特許権の存続期間の延長登録制度における延長期間の算定方 法を見直すべきか否か 医薬の76.2%が現行の算定方法(選択肢1)を支持しており、特にType2の企業は90%以 上が支持している。しかしながら、農薬については選択肢1の支持者は54.5%にとどまって いる。選択肢1を選んだ理由としては、「現行の算定式は薬事法等により発明を実施するこ とができなかった期間を延長するという延長制度の趣旨に即している」、反対の理由として は「特許権の設定登録の日」を起算日とすることは見直すべき。特許権者等の責によらな い事由(庁での審査)によって延長期間が侵食されるおそれがある制度設計は好ましくな い」などの意見が挙げられた。 【図表Ⅲ―9】設問Q5-3(Q17-3)の回答(選択肢は医薬向けで、()内は農薬向けの修正 個所。また、回答の左側が医薬、右側が農薬である。) 件数(件) 割合(%) 1 2 3 無回答 現行の算定方法(承認(登録)を受けるのに必要な試験を開始した日又 は特許権の設定登録日のいずれか遅い方の日から承認が申請者に到 達した日の前日までの期間)を見直す必要はない 現行の算定方法を見直すべき 分からない 回答者数 - 49 - 48/12 76.2/54.5 7/4 6/5 2/1 63/22 11.1/18.2 9.5/27.3 3.2/4.5 100/100 0% 20% 40% 全体 60% 80% 48 100% 7 6 2 1 type1 7 1 2 2 1 3 type2 24 type3 1 2 0 6 0% 20% 40% 2 60% 無回答 0 80% 100% 1 全体 type4 type5 12 4 4 5 2 7 1 3 2 2 2 0 3 0 無回答 Q6(Q18).特許権の存続期間の延長登録が認められる要件について Q6-1.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において対象となる特許発明の種類と して望ましいもの(複数回答可) Q18-1.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において対象となる特許発明の種類と して望ましいもの(複数回答可) 医薬は50%以上がいずれの種類の特許発明についても延長が認められること(選択肢1 ~6の全てを選択)を支持しているが、タイプ別に見ていくと、Type3の医薬品ジェネリッ ク企業、Type4、Type5の農薬関連企業では選択肢1、選択肢2には高い支持があるものの、 選択肢3~選択肢6についてはいずれも40%以下の支持となっている。いずれの種類の特許 も対象とする理由(選択肢1~6の全てを選択)としては、 「侵食を受けている点では特許の 種類に差はない」 「先発メーカーの保護を十分にすることで、新しい新薬を開発させる発明 創作の意欲を向上させるため」などの理由が挙げられ、特許の種類を制限する理由につい ては、 「様々な種類の特許に特許延長が付与される状況は、各々の特許期間が不確定となる 期間が多分に存在することにより無用な特許係争を誘発するおそれがある」などの意見が - 50 - 挙げられた。 【図表Ⅲ―10】設問Q6-1の回答(医薬) 件数 1 2 3 4 5 6 7 無回答 有効成分となる化学物質等の発明 特定の疾病に対する治療用途に特徴のある剤、組成物、製造のための 使用の発明 特定の用法・用量による特定の疾病に対する治療用途に特徴のある 剤、組成物、製造のための使用の発明 剤形・製剤に特徴のある発明 合剤・併用剤の発明 化学物質や製剤等の製法の発明 その他 回答者数 0% 20% 40% 60% 80% 63% 71% 3 13% 4 5 6 7 無回答 13% 0% 5% 0%4% 0% 2% 0% 0% 0% 60% 44% 56% 56% - 51 - 84.1% 45 71.4% 43 38 35 3 1 63 68.3% 60.3% 55.6% 4.8% 1.6% 100.0% 100% 81% 91% 68% 74% 82% 25% 53 94% 91% 96% 100% 84% 81% 91% 1 2 59 割合 93.7% 82% 全体 type1 type2 type3 73% 【図表Ⅲ―11】 設問Q18-1の回答(農薬) 件数 1 2 3 4 5 6 無回答 有効成分となる化学物質等の発明 特定の病害虫や雑草に適用するもの等、用途に特徴のある剤、組成 物、使用方法の発明 剤形・製剤に特徴のある発明 合剤・併用剤の発明 化学物質や製剤等の製法の発明 その他 回答者数 0% 20% 40% 60% 80% 1 56% 64% 73% 2 3 4 5 6 無回答 0%5%9% 5% 0% 0% 36% 22% 55% 23% 33% 18% 22% 32% 45% 19 割合 86.4% 14 63.6% 8 5 7 1 1 22 36.4% 22.7% 31.8% 4.5% 4.5% 100.0% 100% 86% 82% 100% 全体 type4 type5 Q6-2(Q18-2).新規有効成分含有医薬品についての最初の承認に基づいて、延長可能 となる対象特許はどうあるべきか 医薬では60.3%、農薬では54.5%が関連する全ての特許について延長可能となること(選 択肢1)を支持している。内訳をみるとType1の先発企業では72.7%が選択肢2と、Type3の ジェネリック企業では75%が選択肢1と回答しており、各タイプの特徴が表れた。また選択 肢1を選んだ理由としては、「現行制度では、延長された特許権の効力が及ぶ範囲が剤形・ 効能効果・用法用量ごとに非常に細切れに解釈されるおそれがあり、結果的に、非常に多 くの延長登録出願を行わざるを得ず、出願人の負担が非常に増えている。また、医療の発 展のために新たな効能について承認を取得したにもかかわらず、本来の特許期間満了後で あったために特許延長が認められず、逆に当該新たな効能についていわゆる虫食い承認に よりジェネリック医薬品を促すになってしまい、特許延長制度が新たな承認取得のモチベ ーションを低下させることがある。以上の懸念を克服するためには、米国の特許延長制度 - 52 - と同様に、一つの医薬品につき一つの特許権の延長に限るべきと考える。ただし、ここで 「医薬品」には、生物学同等性を有する範囲(承認に臨床試験を必要としない程度)の剤 形変更等は含むが、DDS製剤や配合剤など新たに臨床試験を必要とするような新しい剤形は 新しい「医薬品」として扱い、先行品とは別に特許延長の対象とすべきと考える。併せて、 延長された特許権は、その医薬品の延長期間中に(本来の特許期間満了後も含む)承認を 受けた全ての剤形・効能効果・用法用量に効力が及ぶべきと考える。なお、剤形・効能効 果・用法用量等の一変承認ごとに延長手続をせずとも、一変承認後に自動的に権利範囲が 拡張するべきと考える。」のように、延長された特許権の効力が及ぶ範囲に関する大合議判 決の傍論への懸念から制度改正を望む意見や、 「諸外国の特許法とのハーモナイゼーション のため」、 「対象特許の監視が容易なため」などが挙げられ、選択肢2を選んだ理由としては 「医薬品がクレームに含まれれば、その種類を問わず複数の特許に侵食は生じ得る。その 中から一つだけとしなければならない根拠が不明であり、医薬品によっては複数の特許か らなる束で保護されるケースもあると考えられるので、全てを対象とすべき」、「先発メー カーの保護を十分にすることで、新しい新薬を開発させる発明創作の意欲を向上させるた め」などが挙げられた。 【図表Ⅲ―12】設問Q6-2(Q18-2)の回答(回答の左側が医薬、右側が農薬である) 件数(件) 割合(%) 20/8 31.7/36.4 38/12 60.3/54.5 3/1 4.8/4.5 2/1 3.2/4.5 63/22 100/100 1 関連する1つの特許に限るべき 2 関連する全ての特許とするべき 3 その他 無回答 回答者数 0% 20% type2 type3 60% 80% 100% 1 全体 type1 40% 20 38 2 3 2 8 9 1 0 18 6 0 1 - 53 - 1 0 2 3 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 8 12 1 1 2 type4 type5 3 5 4 1 0 7 0 3 無回答 Q6-3(Q18-3).新規有効成分を含有する医薬品(農薬)についての最初の承認(登録) を受けた後、一部変更承認(登録)に基づいて特許権の存続期間の延長登録を認めるべ きか 一部変更の承認・登録については全体として、約56%が条件によって認めること(選択 肢2または選択肢3)を支持している。一方で農薬関連企業だけを見ると、認めるべきでな い(選択肢1)、条件付きで認めるべき(選択肢2又は選択肢3)、無条件で認めるべき(選択 肢4)がほぼ等しく分かれている。選択肢1を選んだ理由としては「最初の承認時に特許権 が成立していなかったが、一変承認時に特許権が成立していた場合、第三者から突然特許 が延長したように見え、予測可能性が低くなり、妥当ではないと考える。」「一部変更承認 は権利者の私的な理由による場合もあり、延命戦略に利用される可能性も否定できないか ら」、「後発品、後続品メーカーの調査負担軽減のため、一変事項に価値があれば、別途特 許権で保護されるはず」、選択肢2を選んだ理由としては、 「一部変更承認にまで延長を認め るのは過剰な保護である」、選択肢3を選んだ理由としては、 「当該延長された特許権の効力 が及ぶ範囲に属する程度の一変は先行処分対象の医薬品と医薬品(有効成分を含む製剤) として大差がない」、「一変に係る医薬品は延長登録出願の対象特許発明を実施出来ないこ とによる権利者の不利益も少ないため」、選択肢4を選んだ理由としては「選択肢1~選択肢 3については、延長対象特許が物質特許の場合、適応拡大の承認に基づく延長出願が不可と なるため」との意見が挙げられた。 - 54 - 【図表Ⅲ―13】設問Q6-3(Q18-3)の回答(選択肢は医薬向けで、()内は農薬向けの修 正個所を示す。回答の左側が医薬、右側が農薬である) 件数(件) 割合(%) 1 2 3 4 5 無回答 最初の承認(登録)に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既 に認められていたか否かにかかわらず、認めるべきではない 最初の承認(登録)に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既 に認められていたのであれば、認めるべきでない 最初の承認(登録)に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既 に認められており、一部変更承認(登録)に係る医薬品(農薬)が、当該 延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属するのであれば、認めるべき でない 最初の承認(登録)に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既 に認められていたか否かにかかわらず、認めるべき その他 回答者数 0% 20% 40% 60% 80% 8/7 12.7/31.8 10/3 15.9/13.6 25/4 39.7/18.2 13/7 20.6/31.8 5/0 2/1 63/22 7.9/0 3.2/4.5 100/100 100% 1 全体 8 type1 1 10 25 1 13 5 5 2 1 3 0 2 3 4 type2 3 type3 5 12 2 0% 6 3 20% 10 3 40% 60% 0 80% 5 無回答 100% 1 全体 7 3 4 7 01 2 3 type4 3 2 2 2 0 4 5 type5 4 1 2 - 55 - 4 0 無回答 Q6-6(Q18-6).仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特 許発明の技術的範囲に含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって「特許発明 の実施」が可能となった範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権 の延長登録を許容するとした場合、後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延 長登録を認めるか否かの判断基準として、いずれが望ましいか 医薬については「特許発明が実施可能になった範囲」が薬事法上の一定の承認事項によ って画される(選択肢1)と考えるものと、特許発明の発明特定事項に該当する事項によっ て画される(選択肢2)と考えるものが、それぞれ、38.1%と34.9%によって支持されて拮 抗している。また、医薬系では新薬メーカーのType1では薬事法上の一定の承認事項によっ て画される(選択肢1)と考えるものが多いが、農薬系では新薬メーカーのType4では農薬 取締法上の一定の承認事項によって画される(選択肢1)と考えるものは少ない。選択肢1 を選んだ理由としては、 「どのような内容の特許でも治験期間中は実施できないから」、 「延 長登録出願に関する訴訟リスクをなくすためには、よりシンプルに全ての延長登録を認め るべきである。延長の効果(特許法第68条の2)の話は別問題である」、「「特許」の期間延 長に係る事項であるが、医薬品の承認事項に関係しており医薬品に関する処分の点から判 断する必要があるため」、「農薬登録票に記載される程度の事項によって延長登録出願の審 査が行われなければ、出願人及び第三者のそれぞれの衡平を保てないと考える。出願審査 の過程で、農薬登録票の記載事項に加えて、更なる情報の提出が出願人に求められる事態 が生じれば、第三者による閲覧を制限しない限り、企業秘密の流出をおそれて、審査継続 を断念する事態が生じることが懸念される。また、閲覧を制限した場合、第三者が延長さ れた特許権の効力が及ぶ範囲を確認できない事態を招きうる」、選択肢2を選んだ理由とし ては「薬事法上の承認事項により画されるのであれば、データ保護(再審査)のような薬 事法上の保護と何ら変わりがない。特許法による保護としては不十分といわざるを得ない」、 「特許法において特許発明として保護するのであれば、発明特定事項に該当する事項によ って画されるべきである。特許発明を医薬品に初めて適用したことに対するインセンティ ブとして、一定の技術的範囲を伴って保護を与えるべきと考える」などの意見が挙げられ た。 また、医薬において、仮に選択肢1の判断基準とすることとした場合、有効成分及び効能・ 効果のいずれかに違いがあれば延長登録を認めるとする意見が、33.3%で最多であった(デ ータについては資料編Q6-6参照)。 - 56 - 【図表Ⅲ―14】設問Q6-6(Q18-6)の回答(選択肢は医薬向けで、( )内は農薬向けの 修正個所を示す。回答の左側が医薬、右側が農薬である) 件数(件) 割合(%) 1 2 3 4 無回答 6-1(18-1).の選択肢に挙げたものを含めどのような内容の特許発 明の場合にも一律に、薬事法上(農薬取締法)の一定の承認(登録)事 項の点で、先行処分に係る医薬品(農薬)と後行処分に係る医薬品(農 薬)との間に違いがあれば、延長登録を認める(すなわち、先行処分に よって特許発明の実施が可能となった範囲は、どのような内容の特許発 明の場合にも薬事法(農薬取締法)上の一定の承認事項によって画され る) 特許発明の内容(発明特定事項)を考慮し、先行処分に係る医薬品(農 薬)の承認(登録)事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項 と、後行処分に係る医薬品(農薬)の承認(登録)事項のうち特許発明の 発明特定事項に該当する事項との間に違いがあれば、延長登録を認め る(すなわち、先行処分によって特許発明の実施が可能となった範囲 は、先行処分に係る医薬品(農薬)の承認(登録)事項のうち特許発明の 発明特定事項に該当する事項によって画される) 分からない その他 回答者数 0% 20% 40% 60% 80% 24/4 38.1/18.2 22/7 34.9/31.8 7/8 8/2 2/1 63/22 11.1/36.4 12.7/9.1 3.2/4.5 100/100 100% 1 全体 24 22 7 8 2 2 type1 6 type2 type3 1 11 1 11 6 3 1 0 1 0 - 57 - 3 4 0 4 1 0 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 type4 4 7 1 8 4 2 2 2 1 2 3 0 4 type5 3 3 5 0 無回答 Q7(Q19).存続期間が延長された特許権の効力について Q7-1(Q19-1).特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、延長された特許権 の効力が及ぶ範囲については、どのような範囲とすることがふさわしいか 延長の効力について、全体としては60%以上が「現行法と同様の「処分の対象となった 物」及び「用途」により特定される範囲」(選択肢1)を選択している。特にType3とType5 においては80%を超えて顕著な傾向がある。 【図表Ⅲ―15】設問Q7-1(Q19-1)の回答(回答の左側が医薬、右側が農薬である) 件数(件) 割合(%) 1 2 無回答 現行法と同様「処分の対象となった物」及び「用途」により特定される範 囲 その他 回答者数 - 58 - 39/16 61.9/72.7 23/4 1/2 63/22 36.5/18.2 1.6/9.1 100/100 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 39 23 1 type1 7 4 0 type2 17 10 0 7 0% type4 type5 2 無回答 type3 全体 1 20% 40% 1 60% 80% 0 100% 1 16 4 6 3 10 2 0 1 0 2 無回答 Q7-2(Q19-2).仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、現行特許 法第68条の2と同様「処分の対象となった物」及び「用途」により延長された特許権の 効力が及ぶ範囲を制限することとする制度を採用する場合、延長された特許権の効力が 及ぶ範囲を制限する観点としてはいずれがふさわしいか 延長の効力について、 「処分の対象となった物」及び「用途」により特定される範囲とし た場合に、効力の及ぶ範囲を限定する観点としては、医薬系では50%以上が特許発明の発 明特定事項に該当する事項の観点で制限すること(選択肢2)を支持しており、特にType3 のジェネリック医薬品メーカーで支持が高い。農薬系では農薬取締法上の観点での制限(選 択肢1)と発明特定事項に該当する事項の観点での制限(選択肢2)とが拮抗している。そ の他(選択肢3)としては、「延長の基礎となる承認の内容の少なくとも一部に依存してな され得る承認かどうかで、延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限する」、「物は有効成 分、用途は効能・効果(適応症)が好ましい」との意見が出された。選択肢1を選んだ理由 - 59 - としては「特許権を実施できなかった範囲をカバーできると考えるため」、 「選択肢2では承 認されていなかった実施態様まで延長された特許権の効力範囲が拡大するおそれがある」 などが挙げられ、選択肢2を選んだ理由としては、 「選択肢1の場合、先行処分に基づく延長 登録による特許権の効力範囲は医薬品医療機器等法の審査事項(成分、分量、構造、用法、 用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効性及び安全性)のうちの ある一定の事項間で違いがあれば効力が及ばないこととなる。例えば成分であって有効成 分以外の成分(賦形剤など)が異なるものについては先発医薬品と異なる成分であっても 後発医薬品として承認されているという実態があるが、そのような後発医薬品に延長され た特許権の権利範囲が及ばないこととなり、実質的に特許独占期間の回復がなされていな いことになり、延長制度の趣旨に反する」、「権利範囲を定める際には、発明特定事項を考 慮すべきであり(延長の有無にこだわらず)、さらに条文の規定により、「用途」を考慮す るべきである」、「特許期間延長の対象となるものは特許権であり、行政処分を受けた物の 技術範囲とは異なるものと考える」、「国が要請する安全性確認のための試験データを取得 するために権利活用ができなかった期間を回復させるために延長する、との元来の制度主 旨からすれば、どのような用途・用量・製剤であろうと、発明範囲に属する農薬登録取得 手続のために権利活用ができなかったので、当該特許請求の範囲全体が延長範囲と認定さ れるべきである(欧州と同様に)。登録された用途・用量にまで限定した範囲でしか効力が 及ばなければ、登録された農薬と一部が異なる用途・用量で実施している第三者に権利行 使不能となり、そもそも排他権である特許権が実質的には延長されていないことになる」 などの意見が挙げられた。 また、薬事法上の一定の承認事項の観点から制限(選択肢1)するとした場合に医薬につ いて、 「処分の対象となった物」を「承認された医薬品の有効成分のみ」とする39.7%、 「用 途」を「承認された医薬品の効能・効果」とする41.3%、 「承認された医薬品の効能・効果 及び用法・用量」とする31.7%が支持した(資料編Q7-2、Q19-2に続く質問参照)。 【図表Ⅲ―16】設問Q7-2(Q19-2)の回答(選択肢は医薬向けで、()内は農薬向けの修 正個所を示す。回答の左側が医薬、右側が農薬である) 件数(件) 割合(%) 1 2 3 4 無回答 6-1(18-1).の選択肢に挙げたものを含めどのような内容の特許発 明の場合にも一律に、薬事法(農薬取締法)上の一定の承認(登録)事 項の観点で、延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限する 特許発明の内容(発明特定事項)を考慮し、医薬品(農薬)の承認(登 録)事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項及び用途に該 当する事項の観点で、延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限する 分からない その他 回答者数 - 60 - 16/9 25.4/40.9 35/9 55.6/40.9 6/3 4/0 2/1 63/22 9.5/13.6 6.3/0 3.2/4.5 100/100 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 16 35 6 4 2 2 type1 5 type2 4 7 type3 15 1 0% 1 1 0 3 1 1 7 20% 40% 0 60% 80% 3 4 無回答 100% 1 全体 type4 9 9 3 3 5 01 1 0 2 3 4 type5 6 4 1 0 無回答 Q8(Q20).特許権の存続期間の延長登録の要件と延長された特許権の効力の関係につい て Q8-1(Q20-1).仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特 許発明の技術的範囲に含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって「特許発明 の実施」が可能となった範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権 の延長登録を許容するとした場合、薬事法第14条第1項又は第9項(農薬取締法第2条第1 項又は第6条の2第1項))に基づく承認(登録)を受けることによって禁止が解除される 「特許発明の実施」の範囲と、延長された特許権の効力の及ぶ範囲は、一致させるべき か否か 承認を受けることによって禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲と、延長された 特許権の効力の及ぶ範囲は原則として一致させるべきと考える意見(選択肢1+選択肢2) が医薬では63.5%、農薬では54.6%と多くの支持があった。また選択肢1を選んだ理由とし - 61 - ては、 「一致させないと、権利範囲が曖昧になる可能性が高いため」、 「禁止が解除された範 囲が延長となった特許権の効力の及ぶ範囲と考えるから」、選択肢2を選んだ理由として「解 除範囲よりも効力範囲が均等論等による範囲を超えて明らかに広い場合には、同じ効力範 囲で複数回の延長登録が認められるケースが生じ得るが、第三者の権利保護の観点からは これは望ましくない」、選択肢3の理由としては「延長された特許権の効力の及ぶ範囲を広 く認め、処分の度ごとに延長登録出願をしなければならないような煩瑣を回避するため」、 「延長登録の基礎となった処分(承認)に依拠する医薬品に効力が及ばないのであれば、 制度の目的を果たしていない。効力の及ぶ範囲は、その観点を加味するべき」、「むしろ一 致させることはできないということを前提にして制度設計をすべき。例えば用途を限定し て差止めを行なうことは不可能に思える」、「厳密に一致させると延長される特許権の効力 が非常に狭いものとなってしまい、実質的に排他権としての特許権の延長の効力を失う」 などが挙げられた。 【図表Ⅲ―17】設問Q8-1(Q20-1)の回答(回答の左側が医薬、右側が農薬である) 1 2 3 4 5 6 7 無回答 一致させるべき 均等論等で効力範囲が多少拡張することはあるとしても、原則として一 致させるべき 一致させるべきでない、一致させる必要はない 一部一致させるべき どちらでもよい 分からない その他 件数(件) 割合(%) 19/6 30.2/27.3 回答者数 0% 全体 20% 19 type1 3 type2 7 type3 40% 60% 21 2 80% 11 3 10 6 5 03 3 1 0 1 0 2 0 2 0 2 - 62 - 33.3/27.3 11/2 5/0 0/1 3/6 3/0 1/1 63/22 17.5/9.1 7.9/0 0/4.5 4.8/27.3 4.8/0 1.6/4.5 100/100 100% 2 6 21/6 0 1 2 3 4 5 6 7 無回答 0% 20% 全体 6 40% 6 60% 80% 2 01 6 100% 1 2 01 3 4 type4 2 4 2 0 1 0 5 6 type5 4 1 0 1 5 0 7 無回答 Q8-3.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、米国のように、特許 権の延長登録は、有効成分についての最初の承認に基づくものでなければ認めないとし た場合、新たに追加承認された効能・効果にも効力を及ぼすべきか。 Q20-3.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、米国のように、特許 権の延長登録は、有効成分についての最初の登録に基づくものでなければ認めないとし た場合、新たに追加登録された「適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑制 に用いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的)」にも効力を及ぼ すべきか 米国のような制度とした場合、新たに追加承認された効能・効果にも効力を及ぼすべき かという点に対して、60%以上が効力を及ぼすべきと考えているが、Type3のジェネリック メーカーにおいては及ぼすべきではないという意見が多い。選択肢1の理由としては、「新 たに追加承認された効能・効果にも延長の効力が及ばない場合には、その部分について特 許権の延長が認められず、第三者に自由に利用されることになり不合理であるため」、選択 肢2の理由としては「最初の承認しか認められないのであれば、追加承認された効能・効果 にも効力を及ぼすべきと考えるが、延長される期間が、最初の承認のものによって決まっ てしまうので、別々に延長期間が決められるべきと思う」などが挙げられた。 - 63 - 【図表Ⅲ―18】設問Q8-3の回答(医薬) 件数 1 追加承認された新たな効能・効果にも効力を及ぼすべき 2 追加承認された新たな効能・効果に効力を及ぼすべきでない 3 どちらでもよい 4 分からない 5 その他 無回答 回答者数 0% 20% 40% 60% 43 12 1 2 0 5 63 80% 割合 68.3% 19.0% 1.6% 3.2% 0.0% 7.9% 100.0% 100% 1 全体 43 type1 12 1 20 5 10 2 0 1 0 3 4 type2 type3 20 5 3 101 5 5 0 無回答 【図表Ⅲ―19】設問Q20-3の回答(農薬) 件数(件) 割合(%) 1 2 3 4 5 無回答 追加登録された新たな適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又 は抑制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用 目的)にも効力を及ぼすべき 追加登録された新たな適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又 は抑制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用 目的)に効力を及ぼすべきでない どちらでもよい 分からない その他 回答者数 - 64 - 14 63.6% 3 13.6% 2 2 0 1 22 9.1% 9.1% 0.0% 4.5% 100.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 14 3 2 2 2 01 3 type4 7 0 2 0 4 5 type5 B-3 6 3 0 2 0 無回答 現行の特許権の存続期間の延長登録制度に対するユーザの評価 Q9(Q21).我が国と海外の特許権の存続期間の延長登録制度との比較について Q9-1(Q21-1).我が国の特許権の延長登録制度と海外の特許権の延長登録制度(審査 遅延に関する延長登録制度を除く)とを比較した場合の、我が国の制度のメリット・デ メリット ・我が国制度のメリット 医薬については、多くの者が、①承認を受けた医薬品ごとに対象となる複数の特許権を 延長登録することができること、②一つの特許権について承認内容に応じて複数回の延長 登録をすることができること、③試験期間及び審査期間がそのまま延長期間に算入される こと、④欧米のように承認日から延長された期間を含めて最長14年ないし15年という制限 がないこと等を挙げており、新薬創出のインセンティブとなっているとの認識が強い。 農薬については、①米国のように延長対象を医薬に限っていないこと、②延長期間の算定 方法がシンプルであること、③公的機関の試験成績を提出すればよいので、申請しやすい ことが挙げられている。 ・我が国制度のデメリット 医薬については、①延長された特許権の効力の及ぶ範囲が不明確であること、②承認ご とに対象特許について延長登録出願を行わなければならず手続も煩雑であり、コストがか かることを挙げる者が多く、特に、大合議判決により、延長された特許権の効力の及ぶ範 囲が不明確になるとともに、延長登録出願の手続きがより煩雑になることを挙げる者が多 かった。その他、①延長期間の算出方法が複雑であること(欧州のように特許出願の時点 を延長期間の始期とすることが望ましい)、②延長登録出願に係る閲覧等に対する営業秘密 - 65 - 保護が不十分であること、③対象特許の監視が大変であること、④後発医薬品の参入可能 時期が分りにくいこと等の意見もあった。 後発医薬品メーカーからは、複数の特許に効能・効果等が異なるごとに特許期間の延長 が付与され、これらの特許の特許期間が定まらず、無用な特許係争を誘発するおそれがあ ること、欧米に比べて、延長が認められるかの基準が不明確である等の意見があった。 農薬についても、延長された特許権の効力が明確でないこと、個別の農薬登録を取得す る度に延長登録の出願が必要となり煩雑であること、延長が認められる期間を「年月日」 単位とするのは、 「日」単位と対比した場合、特許登録日や農薬登録の登録日によって、若 干の日数の有利不利が生じること等の意見があった。 Q10(Q22).特許権の存続期間の延長登録制度に関する判決や審査基準改訂に伴う影響 について Q10-1(Q22-1).平成21年5月29日知財高裁判決、それに続く平成23年4月28日最高裁 判決、平成23年12月28日の改訂審査基準の施行、あるいは平成26年5月30日知財高裁大 合議判決の前後において、特許権の存続期間の延長登録出願の出願戦略について変化が あったかどうか(複数回答可) 医薬系も農薬系も「変化がなかった」(選択肢5)という回答が約半数と最も多かった。 医薬系企業においては22社が「いずれかに変化があった」 (選択肢1~選択肢4の少なくとも いずれかを選択)と回答し、そのうち10社が「複数の時点で変化があった」(選択肢1~選 択肢4の二つ以上を選択)を選択しており、2社が選択肢1~選択肢4をすべて選択した、つ まり「全てで変化があった」と回答した。 変化の内容として「剤形変更に基づく出願を行うようになった。」、 「分量や用法用量等の みが異なる承認であっても全て延長出願することとした」などが挙げられた。 【図表Ⅲ―20】 設問Q10-1(Q22-1)の回答(回答の左側が医薬、右側が農薬である) 1 平成21年5月29日知財高裁判決の前後で変化があった 2 平成23年4月28日最高裁判決の前後で変化があった 3 平成23年12月28日の改訂審査基準の施行の前後で変化があった 4 平成26年5月30日知財高裁大合議判決の前後で変化があった 5 変化がなかった 無回答 回答者数 - 66 - 12/0 4/0 11/0 10/1 32/12 9/9 63/22 19/0 6.3/0 17.5/0 15.9/4.5 50.8/54.5 14.3/40.9 100/100 0% 10% 20% 3 40% 0% 0% 全体 17% 18% type1 30% 0% 16% 19% 13% type2 27% type3 45% 4% 63% 9% 13% 0% 4 51% 52% 14% 無回答 3 70% 15% 5 2 60% 6% 4 1 50% 19% 27% 22% 25% 1 2 30% 20% 40% 60% 80% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0%5%9% 全体 type4 type5 55% 55% 5 無回答 100% 67% 41% 33% 36% Q11(Q23).ジェネリック医薬品の承認申請に関して Q11-1(Q23-1).ジェネリック医薬品(農薬)の製造販売の承認(登録)を申請する に当たって、延長された特許権の効力の及ぶ範囲に該当製品が含まれるか否かの判断で 迷うことがあるか 医薬ではジェネリック製品の承認申請をしている企業の多くが、延長された特許権の効 力の及ぶ範囲に該当製品が含まれるかに関して迷いを持っており(選択肢1と選択肢2を選 択)、Type3では全ての企業が迷いを感じている。一方農薬のType5では迷いがあると迷いが ないの回答者が拮抗している。 (Type1とType4では抽出条件としてこの選択肢を選択していないものを条件として用いて いるので0となっている。) また、その原因としては80%以上が「延長された特許権の効力の及ぶ範囲が不明確」と - 67 - 回答している(資料編Q11-2及びQ23-2の回答参照)。 【図表Ⅲ―21】 設問Q11-1(Q23-1)の回答(選択肢は医薬向けで、 ()内は農薬向けの 修正個所を示す。回答の左側が医薬、右側が農薬である) 件数(件) 割合(%) 8/1 12.7/4.5 19/1 30.2/4.5 4/1 6.3/4.5 1/3 1.6/13.6 18/9 28.6/40.9 5/2 7.9/9.1 5/3 7.9/13.6 3/2 4.8/9.1 63/22 100/100 1 迷うことが多い 2 迷うことがある 3 あまり迷うことはない 4 迷うことはない 5 ジェネリック医薬品(農薬)の承認(登録)申請をしていない 6 どちらでもない 7 その他 無回答 回答者数 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 8 19 4 1 18 5 5 2 3 3 type1 0 11 0 4 5 type2 4 13 4 10 3 2 0 6 7 type3 2 0% 全体 6 20% 1 1 1 40% 3 type5 60% 9 type4 0 0 80% 2 100% 3 2 9 1 1 1 3 0 0 2 - 68 - 3 0 無回答 1 2 3 4 5 6 7 無回答 Q12(Q24).試験データ保護と特許権の存続期間の延長登録について Q12-1.新規有効成分を含む医薬品の製造者は、薬事法第14条の4の再審査期間(試験 データの保護)によって保護されているが、それに加えて特許権の存続期間の延長によ る保護を受けることが有効である場合とその理由 Q24-1.現在農薬の登録申請において、 「農薬の登録申請において提出することとされている試験成績の一部が既に他の登録 申請において15年以上前に提出されており、かつ、登録申請しようとしている農薬が現 に登録を受けてから15年以上経過しているものとその成分、物理的化学的性状、人畜に 対する毒性その他の特性が同等であると認められる場合には、申請者は、試験成績代替 書を当該試験成績に代えて提出することができる」 との運用がなされており、新規有効成分を含む農薬については約15年の試験データの保 護が与えられておりますが、それに加えて特許権の存続期間の延長による保護を受ける ことが有効である場合とその理由 ・有効である場合及び理由 医薬については、一般に、再審査期間より特許延長による保護期間のほうが長い場合が 多く、新薬開発に時間がかかり有効成分特許の残り期間が短くなった場合、延長制度によ る追加保護が有効なことを挙げる者が多く、再審査期間のみでは新薬の研究開発費用を回 収することが困難であり、新規有効成分医薬品及び新規効能効果の研究開発のインセンテ ィブとして特許期間の延長が必要であるとの認識が強い。また、データ保護では、後発医 薬品の承認申請のための行為を超えたもの、例えば(期間満了後の)販売のための大量備 蓄・製造などの行為について排除できないため、存続期間の延長による保護は新薬メーカ ーにとっては必須であるとの意見もあった。 後発医薬品メーカーからは、再審査満了でも基本特許が存在すれば後発品の承認を取得 することができないとの意見があった。 農薬については、データ保護制度の変更に備えるため、農薬登録申請における試験デー タの保護は経済的な障壁であり、特許権の延長は国が認めた権利の保護であり質が全く異 なるため有効と考えるとの意見があった。また、権利侵害の観点から、特許法第100条~第 106条により、特許権者は権利行使しやすぐ因果関係やその立証が容易となり、水際で差し 止めることが可能であり、抑止効果も期待できるが、農薬取締法や不正競争防止法では、 因果関係やその立証は容易ではない場合があり、時間と費用が増大するとの意見もあった。 Q13(Q25).医薬品の販売承認における特許情報の参照について - 69 - Q13-2(Q25-2).我が国においても、医薬品とその医薬品に関連した特許権のリスト を設け、第三者が容易にそのリストを閲覧できる制度を設けるべきか 「設けるべき」 (選択肢1)については医薬の60.3%が支持しており、特にType3のジェネ リック医薬品メーカーの支持が大きい。一方では農薬では設けるべき(選択肢1)と回答し たものは18.2%と少なかった。 「その他」 (選択肢4)としては、 「制度を設けて新薬と後発のバランスを考慮した制度を 検討するべき」、「当社では、特許情報は社外秘のため、情報を掲載されるのには問題があ る」、「対象特許が明確になるメリットもあるが、米国のANDA訴訟のような訴訟が増えるデ メリットもある」などの意見が挙げられた。 【図表Ⅲ―22】設問Q13-2(Q25-2)の回答(回答の左側が医薬、右側が農薬である) 件数(件) 38/4 9/8 7/6 7/0 2/4 63/22 1 設けるべき 2 設けなくてよい 3 どちらでもよい 4 その他 無回答 回答者数 0% 20% 40% 60% 80% 割合(%) 60.3/18.2 14.3/36.4 11.1/27.3 11.1/0 18.2/3.2 100/100 100% 1 全体 38 9 7 7 2 2 type1 type2 type3 5 0 2 17 3 6 8 1 3 3 10 0 - 70 - 4 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 type4 4 8 1 6 0 4 4 4 2 0 3 4 type5 3 4 2 0 2 無回答 Q14(Q26).我が国の特許権の存続期間の延長登録制度についてその他のご意見 (医薬) 延長登録の理由となる処分、延長された特許権の効力等不明確な点が多くなり、予見可 能性等にも支障を生じているとの意見が多かった。 そして、新薬の研究開発に対するインセンティブとして導入された制度であることを十 分に考慮して、延長登録の要件及び延長された特許権の効力の及ぶ範囲が設定されるべき であり、先発企業は、新規有効成分含有医薬品の保護を重要視しており、処分を受けた「医 薬品」のみが保護されるのでは新規有効成分の保護として不十分であり、新規有効成分の 研究開発のインセンティブを欠くという趣旨の意見が多かった。 特許庁の改訂審査基準に対しては、①製剤特許については、医薬品に採用された製剤成 分をピンポイントで保護するのでは不十分であり、医薬品に採用された特許発明(製剤技 術)を技術思想として保護すべきであり、承認を受けた製剤成分をピンポイントで保護す るだけでは簡単に迂回されてしまい、明細書には同等の性能を有する代替製剤成分が発明 として記載されているので、一定の範囲で保護されないと延長制度の価値は失われてしま うので、特許発明を技術思想として捉え、発明特定事項の単位(一定の幅を持つ単位)で 特許発明の実施を解釈している改訂審査基準は妥当と考える、②最高裁の判示に反しない 範囲でとりうる一つの考え方であり、特許庁と出願人企業などステークホルダーの議論を 経て作られたものであり、企業として妥当と考える、③改訂審査基準により、将来の剤型 変更承認に備え、剤型ごとに分割出願しておく必要が生じているが、分割出願をしなくて もその剤型が従属クレームとして規定されているのであれば、存続期間の延長登録を認め てほしい等の意見があった。 大合議判決に対しては、①新規有効成分医薬品の初回承認により延長された物質特許の - 71 - 効力の及ぶ範囲が用法用量により制限されることは望ましくなく、新規有効成分の医薬品 としての開発に対するインセンティブとして、効能効果の範囲で効力が及ぶことを求める 意見が多く、仮に、製剤成分や用法用量の追加処分と新規有効成分医薬品の処分に対して 与えられる延長効力が同列であれば、大合議判決が示した延長機会が得られたとしても何 の価値もなく、新規有効成分医薬品の研究開発のインセンティブを確保するためには、新 規有効成分の初回処分に基づく延長効力は欧米の延長制度と同じレベルに維持すべき、② 登録要件のみを見た場合、大合議判決の示した基準は概ね妥当と考えることもできるが、 効力の及ぶ範囲を登録要件と一致させること、すなわち、延長された特許権の効力の及ぶ 範囲が延長対象となった医薬品の承認事項に制限されるということになると、登録要件と して許容することはできず、登録要件を発明特定事項で判断する(発明特定事項を一定の 範囲を持った技術思想として捉える)特許庁の現行審査基準が妥当、③「その均等物や実 質的に同一と評価される物」の範囲まで効力が及ぶとしているが、不十分であり、延長さ れた特許発明を利用した範囲にまで効力を及ぼすことが必要、④医薬品の特許には、選択 発明が多くあり、わが国の延長制度では、複数特許の延長、複数回の延長を認めているた め、選択発明に当たる特許が後行処分によって初めて禁止権が解除されるケースもあるた め、広いクレームの特許権が先行処分で延長され、用法用量や特殊な剤形に係る選択発明 の特許権が後行処分によって延長された場合、延長部分の効力は、重複して認められ、新 たな延長を認めたからといって、先の延長された特許の権利範囲を狭める必要がない、⑤ 延長登録要件及び延長された特許の効力範囲の解釈には、反対であり、大合議判決の考え 方は、制度導入時に想定された、本来あるべき姿からかけ離れており、現行審査基準を維 持すべきであり、大合議判決に沿った審査基準に変更すべきではないが、現行法では、本 来期待される延長の効力範囲を期待することが難しくなってきているため、法改正の必要 がある(複数特許、複数承認での延長は認められなくとも、欧州のように、ベーシックパ テントを選択し、延長出願を行い、後に得られた追加適応症の承認等にも全て延長の効力 が及び、5年の延長期間が得られやすい制度が望ましい)等の意見があった。 また、改良製剤や改良新薬(異なる塩やエステル)のように先行処分の新規有効成分を そのまま利用した医薬品(改良新薬)を研究開発することは奨励されるべきであり、それ らに新たな特許権を設定して保護することは妥当であるが、先行処分の新規有効成分に延 長された特許が存在する場合、改良新薬はその利用発明として延長された特許権の効力の 及ぶ範囲に入るべきであり、延長された特許権の効力が後発品に及ぶのに対して、同じ有 効成分を有する改良新薬に及ばないのはバランスを欠き、改良新薬は先行処分の医薬品と 競合するものであり、先行処分の特許権者の同意を得て、または研究開発の効率を考慮し て特許権者と共同して研究開発するのが現在の一般的な事業形態であるので、このような 事業形態の基礎を覆すような延長制度であってはならないとの意見もあった。 さらに、延長された特許権の効力に関するガイドラインの制定を求める意見が多く、IPDL - 72 - において、特許権の存続期間の延長登録出願を調べられるようにしてほしいとの意見もあ った。 後発医薬品メーカーからは、①特許権の実施できない期間を補填する必要性は理解でき るが、欧米と比較して我が国の延長登録制度は広範に特許権者の権利を保護する傾向にあ り、複数の延長登録出願が存在し、それを管理しなくてはならない後発医薬品メーカーに とっては多大な負担となっており、無用な特許係争の誘発のみならず、先発医薬品メーカ ー、後発医薬品メーカー双方にとって好ましいことではない、②米国のオレンジブックの ように、各品目に係る特許権の存在と延長期間を含む満了日を明確にし、延長登録の認め られる場合に一定の制限(例えば欧米のように1回のみとする、等)を設ける等により、複 数の延長登録出願が存在する状況を解消することで、各品目に対する特許権の存在をより 安定的な状況とすべき、③延長登録の効力が及ぶ範囲について確認する手段が特許法上整 備されておらず、物質特許及び用途特許の延長登録の場合、厚労省の審査対象となるため 延長期間中は承認取得が困難であり、民事訴訟で争うことも不可能なので、特許法上で何 らかの手当てがなされるべき等の意見があった。 (農薬) 特許法第68条の2で延長される特許権の効力範囲を制限するのは、権利者が不当に有利と なって産業の発展を阻害することを防止するためであろうが、大合議判決のように余りに も詳細に限定してしまうと、本来は排他権である特許権の効力がなくなることとなるとい う意見、判例が積み重ねられて、制度の見直しを繰り返されているが、審査基準に対する 裁判所の判断は厳しいものであり、審査基準の改定のみでは、安定した運用の確立は困難 な状況にあり、審査基準の改定にとどまらず、法改正が必要等の意見があった。 - 73 - 2. 国内ヒアリング調査 (1) (i) 国内ヒアリング調査先 ヒアリング調査対象選択方針 我が国の延長登録制度利用が比較的多い医薬品製造企業や農薬製造企業、海外への延長 登録出願が比較的多い米国研究製薬工業協会や欧州製薬団体連合会に加盟する企業、さら には、国内外でジェネリック医薬品を製造する企業等から11者を選択した。 (ii) ヒアリング調査対象内訳 国内ヒアリングは下記の要領で実施した。 医薬品関係8者 ・Type1企業2者 ・Type2企業4者(外資1者を含む) ・Type3企業2者(外資1者を含む) 農薬関係2者 ・Type4企業1者 ・Type5企業1者 その他 1者 ・Typeに分類できない企業1者(再生医療関係) - 74 - (2) 国内ヒアリング調査結果 (i) ヒアリング事項 国内アンケート項目のうち、①医薬品や農薬の最初の承認・登録に基づき延長可能とな る特許の数について、②登録要件、延長の効力についての項目(<一部変更承認・登録に 基づく延長登録の判断>、<延長された特許権の効力>、<延長登録の要件と延長された 特許権の効力の関係>について、それぞれ選択肢を選択した理由をヒアリングし; 国内アンケート項目とは別に③延長登録に関する実務において問題になったこと、例え ば、 ・延長登録の要件、延長された特許権の効力、海外の制度と比較した場合の実務上の問 題点、④判決や審査基準の改訂が原因で延長登録出願戦略を変更などの事例、⑤制度改正 必要性、必要であれば、その時期、⑥大合議判決に対する意見・感想。最高裁判決に期待 する事項、等について、結果を匿名とする前提で、ヒアリングした。 (ii) ヒアリング結果概要 ヒアリング結果は、医薬品、農薬、再生医療に分けて、その概要を以にまとめた。 なお、医薬品については、ヒアリング調査対象者をType1、Type2、Type3と分けたが、多 くのヒアリグでは、Type2企業(新薬及びジェネリック)は、新薬企業(Type1)としての意 見を述べられたので、ジェネリック側の意見として述べられた部分を除き、Type1及Type2 は両者を合わせて医薬品(新薬開発企業)として記載し、ジェネリック側の意見を述べられ たところは(新薬及びジェネリック製品開発企業)とし、Type3企業は(ジェネリック製品 のみ開発企業)としてまとめた。 (a) 医薬品 ①医薬品や農薬の最初の承認・登録に基づき延長可能となる特許の数について【問6-2 関連】 医薬品(新薬開発企業) 新薬企業では、関連する特許全てと回答したものが多いが、これは、従来からの物質特 許、用途特許、用法・用量特許等開発段階に従い出願された、出願日が異なる複数の特許 権を延長登録の対象とする考え方を支持していることを反映している。 他方、延長可能となる特許権を一つに限るべきであると回答したものは、その選択理由 - 75 - として、現在は1の承認で沢山の特許を延長できるが一回の延長登録出願の効力が狭くなり、 物質特許で全ての製品を保護できなくなるのであれば問題になってくるとの危惧から、法 律改正を求めていることを挙げている。法律改正を求める立場からは、後発品の利用促進 の観点や、国際調和を勘案した現実的な法律改正の方向性としては、欧米型の延長対象特 許は1特許でやむを得ないと考え方をするものもいる。 さらに、複数の特許、その全てについて、延長登録出願の手続を行うのは手間が掛かる から、仮に先行処分の延長登録の段階で後行処分の範囲まで延長特許の効力範囲が広がる のであれば、対象特許を一つに限定した方が簡便であると考えるものもいる。 他方、関連特許全てと回答したもの中には、まだ法律改正などは考慮せずに回答された ように思われるところもあった。 医薬品(ジェネリック製品のみ開発企業) ジェネリック企業は、対象特許が1特許のみというのが先発後発両者にとっても望ましい と考えている。複数特許権を選択できるとすると、第2用途の特許が成立した場合が問題で あり、特許権を1特許に限ることで新薬企業にとっても、後発品企業にとっても不測の事態 を防げるとの意見があった。また、国際調和の観点より主に米国と欧州との調和を図るべ きだとの見解もあった。 また、製剤や製法等の周辺特許は、基本特許よりもだいぶ後に特許出願されるものであ るため、そもそも基本特許の延長期間よりも長い場合が多い。したがって、これらの周辺 特許が延長されていてもいなくても、これらを回避してジェネリックを開発しなければな らないことに変わりはないのでこれらの登録延長は必要ないのではないかとの意見もあっ た。 ②登録要件、延長の効力についての下記アンケート項目で選択肢を選んだ理由について 詳しく教えてください。(それぞれの選択肢のメリット・デメリット) ・【問6-3】 <一部変更承認・登録に基づく延長登録> ・【問6-6】 <一部変更承認・登録に基づく延長登録の判断において、先行処分にお ける実施が可能となった範囲> 医薬品(新薬開発企業) 既に新規有効成分含有医薬について最初の承認を受けた後、一部変更承認に係る延長登 録を認めるか否かについて 延長された特許権の効力が明確であれば、 「③最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期 間の延長登録が既に認められており、一部変更承認に係る医薬品が、当該延長された特許 - 76 - 権の効力が及ぶ範囲に属するのであれば、認めるべきでない」との考えるものの、現状、 延長された特許権の効力が不明確なので、一部変更承認についても全て延長登録を認める べきであるとの考えのものもある。 他方、延長された特許権の効力不明確性を解消するための法律改正も視野に入れた回答 者は、回答としては「その他」を選択しつつも、 「最初の承認に基づいて、同じ特許権の存 続期間の延長登録が既に認められていた場合、最初の承認に基づいて認められた存続期間 について、新たな一部変更承認で認められた範囲に効力が及ぶとするべき。」と回答するも のもあった。 また、平成21年以前の運用、あるいは、現行の審査基準の「特許発明の内容(発明特定 事項)を考慮し、先行処分に係る医薬品の承認事項のうち特許発明の発明特定事項に該当 する事項と、後行処分に係る医薬品の承認事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する 事項との間に違いがあれば、延長登録を認める(すなわち、先行処分によって特許発明の 実施が可能となった範囲は、先行処分に係る医薬品の承認事項のうち特許発明の発明特定 事項に該当する事項によって画される)」という運用がよいとの意見もある。また、前記の いわば従来運用において先行承認を保護範囲に包含しない独立特許が存在している場合に は一部変更承認での登録延長を認めるとする声もある。 いずれにせよ、延長された特許権の効力が大合議判決傍論により不明確となったことが 質問の回答に影響している。 医薬品(ジェネリック製品のみ開発企業) ジェネリック企業は、一部変更承認に基づいて延長登録を認めているのは3極の中では日 本のみであり、国際調和の観点から望ましくないと考えているものもある。また、国際的 な基準と調和すると国際的な戦略が容易になる、ジェネリックメーカーにとって戦略が簡 単になるのは非常に大きなメリットである、欧米の戦略と日本の戦略を立てる際に参考に できるなどの意見が出された。 さらに、発明性があるような効能・効果や用法・用量の変更であれば、それらに関連す る特許を別途に権利化をしていくべきであって、基本となる特許を何度も延長登録する必 要はないのではないかとの指摘もあった。 【7-1】.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、延長された特許権の効力 が及ぶ範囲については、どのような範囲とすることがふさわしいか 医薬品(新薬開発企業) 現行法における「物」及び「用途」の意味が極めて曖昧で、延長された特許権の効力に - 77 - 関する判例がないため、権利行使の確実性に不透明さが増していると考えているとする意 見が多数ある。特に、大合議判決傍論の考え方のように、医薬における有効成分以外の成 分で限定される可能性についての危惧が大きく、特別法の制定等、効力範囲を疑義のない よう形で法制化を望む声がある。 先発企業の中には、先発医薬品の調査・資料に基づいて承認される後発品医薬品につい ては、少なくとも効力が及ぶという制度も検討の余地があると考えるもいる。 さらに、法改正をし1特許に延長対象を制限する制度がよいと考える立場からは、有効成 分が先行処分と同一の場合、後の処分に基づく新たな特許権存続期間延長登録出願は不要 とし、先に延長登録した特許権の効力範囲が、後の処分に係る用途に関して自動的に拡張 する方が望ましいと考えている。 他方、 「用途」にかかわらず「処分の対象となった物」全てに効力が及ぶ場合を考えると、 最初の承認に基づく延長登録後は全ての効能・効果について延長されたことになるが、効 力を特定する範囲に用途(効能・効果)を加え、最初の承認に基づく延長の効力範囲を限 定しつつ効能・効果の拡大時には延長登録の可能性を残すことで、アンメットメディカル ニーズに対応した効能・効果の拡大を図ることができるので、現行制度と同じがよいと考 える企業もある。同様に延長された特許権の効力は、有効成分と効能・効果で区切るのが 望ましいという声もある。 医薬品(ジェネリック製品のみ開発企業) 効力は、ものは有効成分のみ、用途は効能効果にするという形が一番はっきりしていた。 つまり、平成21年高裁判決以前の審査基準の考え方が分かりやすかったとの指摘もあった。 「今回の大合議判決傍論で示された考え方で解釈した場合、後発医薬品が生物学的に同 等であるものだとしても、権利範囲外であることは一応は主張できると思われる。」、 「また、 例えば、後発医薬品が先発医薬品と添加剤を変えたことによって、技術的なメリットがあ るのであれば、別発明として、より権利範囲外であるとの主張はしやすいと思われる。」と、 大合議判決の傍論の解釈によれば後発品が参入しやすくなるとの指摘がある。 「延長された 特許権の効力が後発医薬品のどこまで及ぶかについて争いになった事例が過去にないため 不明であるが、そもそもの考え方として物質特許が延長されている期間内に後発医薬品が 参入することを認める制度設計が本当にいいのかは疑問であるとの意見や、新薬を創製し て承認を得られるまでに多大な労力をかけているのであるから、投資の回収をできる制度 設計にすべきと」の意見が、ジェネリックメーカーからも出された。 【8-1】.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特許発明 - 78 - の技術的範囲に含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって「特許発明の実 施」が可能となった範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延 長登録を許容するとした場合、薬事法第14条第1項又は第9項に基づく承認を受けること によって禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲と、延長された特許権の効力の及 ぶ範囲は、一致させるべきか否か 医薬品(新薬開発企業) 本質問では、新たな存続期間延長登録制度として、回答者がどのような制度を念頭に置 いているかが、選択肢の選択に影響しているものと考えられる。幾つかの企業は、現状を 基準に回答している。 現行の運用を肯定的に捉える企業は、延長登録の要件となる処分を受けることが必要で あった「特許発明の実施」の範囲と、延長された場合の特許権の効力の範囲とは、一致し ていると考えるのが、現行制度と同じであり業界への影響が無いので、合理的であるとし ている。 また、原則一致させるべきとの立場からは、処分により実施の禁止が解除される範囲(「解 除範囲」)よりも延長された特許権の効力の及ぶ範囲(「効力範囲」)が狭いことは、制度趣 旨から明らかに不合理であるが、他方、解除範囲よりも効力範囲が明らかに広い場合、均 等論等による範囲を超えて明らかに広い場合では、複数回の延長登録が認められる場合、 初回承認で延長された効能だけでなく、全ての効能に効力が及ぶとした場合には、初回承 認で延長された範囲と後行処分で延長された効力範囲が明らかに重なってくる、そうした 場合、後行処分での延長期間が長い場合は第三者の立場からいえば不測の事態が生じる場 合がある。そうなると、第三者の不利益が大きいと考える。 これに対し、薬事法で禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲を、承認された医薬 品そのものと捉えて、薬事法で禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲と、延長され た特許権の効力の及ぶ範囲を完全に一致させてしまうのは、承認された医薬品そのものの 点の範囲にしか効力が及ばず、後発品に効力が及ばないため問題であり、後発品企業が容 易に参入できるので、そもそも、延長制度の意味がなくなると考える回答者もある。 また、一部一致を選択したある回答者は、次のように考えている。医薬の承認では、有 効成分、効能効果、用法用量、分量、等全てが審査されて承認される、承認されたものに 完全に一致するよう、延長された特許権の効力の及ぶ範囲が限定されると、実質的に存続 期間延長の効果がなくなる。そこで、クレームの事項と承認事項を比べて重なる部分は狭 い範囲となることは致し方ないと考えているが、例えば、多数の物質をクレームする物質 特許であれば、医薬の存続期間延長においては、有効成分と物質特許がたまたま重なり合 った部分に限定されるが、それ以外の成分は限定されないべきである。 他方、 「効力と登録要件は別」との考え方は、現実的には認められないと考えられるので、 - 79 - それだったら1個の延長で効力範囲を広くして、効力と登録要件が一致しているということ が現実的ではないかと考える回答者もいる。なお、効力の広がる範囲としては、エステル (特許化合物のエステル誘導体)までは考えていない、延長登録の対象となる先発医薬品 がカリウム塩でと後発医薬品がカルシウム塩等の塩違いがあった時に、延長後の効力範囲 に後発医薬品が入らないと困るとの意見があった。 医薬品(ジェネリック製品のみ開発企業) (既になされた古い延長登録された特許権の効力に関する意見ではあるが)新薬企業は、 現状、含量と剤型ごとに一つ一つ対応する延長出願がされているが、以前は代表剤型一個 と有効成分だけで延長出願されてので、そのような古い延長登録の効果は、有効成分の含 量追加、剤形の軽微な変更には及ぼすべきであると考えている。 また、 (大合議判決の解釈としての回答であるが)再延長を認めるとした場合は、厳密性 をもって狭くした方がよいと考えるものもある。 ③延長登録に関する実務において問題になったことがあれば可能な範囲で具体的に教 えてください。 ・延長登録の要件が問題になったことがある。か、例えば、登録要件を満たさないと考 えて延長登録出願を断念した、あるいは延長登録出願が拒絶された等。 ・延長された特許権の効力が問題になったことがある。か、例えば、後発メーカーを排 除できなかった、訴訟を断念した、あるいはジェネリック医薬品の開発・販売を中止し た等。 ・海外の制度と比較した場合の実務上の問題点(制度を含んでも構わない)に関する海 外ユーザの意見などご存知でしたら教えてください。 (登録要件) 医薬品(新薬開発企業) 延長登録できるものの判断・基準が揺れ動いているため、十分な手当てができていない 可能性があると考えている。また、平成23年に審査基準が改訂された後は、医薬品の承認 事項と発明特定事項の対応の関係を証明する要件が厳しくなったと考えるものもあった。 現行の審査基準では問題は生じていない。 (効力) 医薬品(新薬及びジェネリック製品開発企業) 「ある疾患の中の特定の患者群についてのみ承認が下り、その後、追加でその疾患全体に - 80 - 承認が下りた場合に、最初の承認時に狭い範囲で延長となり、次の承認時に残り部分が延 長されることとなるが、同じ疾患に関するにもかかわらず、特許の存続期間の満了期間が ズレることとなり、虫食い申請が認められるのか迷うことがある。」との指摘があった。 医薬品(ジェネリック製品のみ開発企業) 先発品の追加承認で、効能が追加されるだけなら対応はできるが、効能が一つにまとめ られる問題が生じる。厚労省には、医療過誤防止という観点があり、後発品の虫食い承認 が難しくなる。 (海外との比較) 医薬品(新薬開発企業) 国際調和を考えると1承認1特許が良いのではないか。今の発明特定事項で考えていくこ とも分りにくいようだ。 各国との比較でいうと日本は複数回延長ができるというのがあって、日本の方が手厚い ということもあるし、期間も長いことがある。 米国ではハッチ・ワックスマン法と期間延長が組み合されている。アメリカ並みの訴訟 社会も問題と思う。導入するのであれば欧州タイプのパテントリンケージがないタイプが 良いのではないか。 医薬品(ジェネリック製品のみ開発企業) 日本の延長登録制度は、外国には分かりづらいのではないか。効力範囲がどこまで及ぶ のかは、特に紛争事例もないため、説明しにくい。 ④判決や審査基準の改訂が原因で延長登録出願戦略を変更したことがあれば具体的に 教えてください。(変化として、出願件数を増やした、分割出願を行った、あるいは特 許請求の範囲の記載を変更した、どのような議論がなされたか等) 医薬品(新薬開発企業) 大合議判決が確定するまで、他社も含めて延長出願の件数が増えるであろうし、特許庁 での滞留件数も増えるであろうから、不安定な状況は続くと思われると考えていると考え るものもある。 また、最初の平成21年高裁判決以降全部出すようにしたので出願件数が増えたとの回答 もある、今回の大合議判決に関しては現在様子を見ている、平成21年の知財高裁判決の後 で、有効成分・効能効果同一のもので延長登録を行ったことはあるとの声が複数聞かれた。 - 81 - 他方、以前から出願にチャレンジしてきたこともあるのでこれらの前後で変化はなかっ たとの回答もあった。 医薬品(ジェネリック製品のみ開発企業) 先発企業の延長出願が増えたのでそのチェックが大変面倒になったが、大合議判決によ れば延長された特許権の効力範囲が狭くなりジェネリック医薬品の参入のチャンスは広が ったかもしれないと考えているとの回答もあった。 ⑤制度改正についてお考えを教えてください。 ・抜本的な改正が必要だと思う場合は、改正の時期や方法(法改正、審査基準改訂、ガ イドライン作成など)を教えてください。 ・また、どのように改正するのが望ましいと思いる。か。例えば、平成26年大合議判決 型、現行審査基準型、平成21年知財高裁判決以前型、欧米の1特許1延長型など、分る範 囲で登録要件や効力範囲、先に延長された権利との関係はどう整理するのか、なども教 えてください。 医薬品(新薬開発企業) 新薬企業間(製薬協)では、現状特に延長された特許権の効力に不安定性があるという ことでは一致していると由である。 また、複数の回答者から、法改正を直ちにやってもらってよいと回答があったが、最高 裁の結論を見てもよいとの回答もあった。 複数の回答者から、基本的には特許権の存続期間延長制度創設当初の運用が一番安定し ていた、あるいは現在の審査基準がよくできているとの指摘があった。 個別意見の概要を、以下に列挙する。 ・審査基準が頻繁に変わるのは好ましくなく、法律に基づいて誰もが納得のいく審査基準 にするか、法律自体を分かりやすくするかを行う必要があるかもしれない。理想的にはシ ンプルな制度がよいが、会社の立場や状況はそれぞれ異なるため、なかなかまとまらない のではないか。 ・ある回答者は、最初の承認に関しては一特許に限り1回の延長を認める、一つの特許を選 んでその効力を広くとるような制度、例えば、欧州のように追加適応症とか、後の承認が カバーできるような制度の方が、細切れの延長がたくさんできるような制度よりも良いと 考えている。ビジネス面からも、最初に1特許1延長で広い効力のほうが複数特許複数延長 で各特許が狭い効力である場合に比べて製品が保護されると考えている。現在は、1の承認 - 82 - で、延長機会は多いが、一回の延長登録された特許権の効力が狭くり、物質特許で全ての 製品を保護できなくなるのであれば問題である。複数特許の延長ができるがその各々の効 力範囲が狭い場合と、1特許の延長しかできないがその効力範囲が広い場合のどちらがいい かという話になると、物質特許の延長をきちんとした方が良いと考えている。製剤で市場 を独占できることを見込んでビジネスを計画する企業はなく、普通は物質特許満了日で計 算して、後何年と計画しているはずである。 ・現状は、効力範囲の判断が揺らいでいるので法改正を望んでいる。効力範囲が不明確と いうのが現状の最大の問題点である。平成21年判決以前の審査基準によるプラクティスを 支持している。有効成分と効能効果で区切るという制度は、欧米も同様のプラクティスを 採用しているし、先発品の権利を保護するという点ではリーズナブルと考えている。DDS のケースのように優れた製剤で一個一個特許を取ったようなケースで、最高裁で判決され たような手当をすれば良いのではないか。 ・適用時期についてはいろんなパターンがあるが施行日以降の特許出願とするのは余りに も限定過ぎると思う。施行日以降の特許登録や延長出願、承認なりにするのが適切だと思 う。 ・基本的には、今の審査基準のシステムが良くできているので維持して欲しい。改正が必 要であれば時期は最高裁の判断が出てすぐに改正してもらいたい。想定される法改正のプ ロセスは、最高裁判決が出て、審査基準を変えて、問題が出てきて初めて法改正を検討す るようになる。そうするとどこかの会社が犠牲になることになる。それは好ましくないの で最高裁判決が出てからすぐに法改正が望ましい。最高裁が出て大合議に合わせるだけな ら審査基準を変えるだけで済むのかもしれないが、それは好ましくない。 ・現行法には効力範囲で分りづらいものがある。先発にも後発にも分りやすい制度の方が よいと思っている、平成21年の知財高裁判決の時も感じていたが、法改正の必要性がある と感じている。従前の審査基準の考え方を立法化してもよいが、最高裁で扱われたDDSの場 合については、手当してらう必要があると考えている。また、法律改正で解釈範囲が明確 化されることを望んでいる。なお、個々の延長登録された特許権の効力が狭くなって穴が 開くという制度となるのであれば、むしろ1特許1承認という形の1回限りの延長登録の方が 良い。特に物質特許で5年間延長できることが必須である。物質特許の効力が狭められるの は困る。 ・全てのメーカーが納得する基準等は作るのは難しく、時間が掛かるのではないか。 薬剤投与デバイスの技術は進んできていると思われる。これらは臨床試験も必要である が、現行の制度では延長されないがこの点も検討したらどうか。(仮に制度改正された場 合、)例えば、制度改正前に延長されているものの権利の効力範囲は遡及して適用されない こととなると思うが、その辺をどう明示し、先発企業側と後発企業側が納得できる制度と するかは難しいと思われる。 - 83 - ・特許庁での審査期間が長期に及ぶと特許期間は浸食されることとなるため、出願人の責 によらない特許期間は浸食を回復するような制度設計を検討いただきたいと考える。 医薬品(新薬及びジェネリック製品開発企業) ファーストジェネリックとするためには、特許権の存続期間が切れる時期を完全に調べ る必要がある。その際、特許が複数あるなど、調査は非常に複雑である。 医薬品(ジェネリック製品のみ開発企業)) 制度改正はすべきだと思う。1特許1延長がよいが、制度を一から作ることになるのです ぐには難しいかと思う。 時期については、遠くない将来の方がよいと思っているが、効力範囲のこともあるため、 審査基準の改訂だけでは難しく、仮に法律改正になった場合には、どのようなきっかけで 行うかということもあるいうこともある。 (現行法の解釈を)明確化して欲しいと思っているのはどこのジェネリック会社も同じ であるが、どのように明確化するかの考えは会社によって異なる。 ジェネリック側としては、開発時期を決定するに当たって、厚労省が募集している未承 認薬の開発要請の情報も、特許情報とは別に確認しているが、更に延長登録が細分化され ると監視対象が増えるのが問題である。 ⑥大合議判決に対する意見・感想。最高裁判決に期待する事項等。 医薬品(新薬開発企業) 大合議判決傍論は困るという点では、先発メーカー、後発メーカーとも一致していると いえる。 また、複数の回答者から、医薬の効果効能に加えて、用法用量も、用途と考えることは できないかとの指摘が出された。 また、最高裁で、効力がどこまで及ぶかが一番気になるところであるから、特許法第68 条の2について指針が示されることを望むものもあった。 以下に個々の意見の概要を掲げる。 (安定性) 不安定な期間が続くことは余り好ましくないため、最高裁判所には早く判断して欲しい。 (効力に関する傍論部分) 大合議判決は、登録要件だけ見れば不自然ではないが、傍論の効力の考え方に危惧を持 - 84 - つ。用法用量は用途と読めるのか読めないのかは気になるところではある。広義に見れば 用途であるが、大合議判決を是とするなら用量用法も用途と解すべきである。その解釈も それほど曲解というわけではない、広義では用途である。ただ、どちらかというとこの考 えが否定されて、用法用量は用途ではないと判断されると安心感はある。登録要件よりは 効力の方で賛成反対が変わってくると思う。 現在の運用で問題がなかったが、大合議判決で傍論が出てしまったことが大きな問題で ある。業界の意見は反映されない効力範囲まで傍論で述べられたが、実情と乖離しており、 大合議判決傍論に従って判断されるのであれば、法改正を希望する 登録要件と効力範囲は裏腹と考えるのが一番リーズナブルだ。大合議判決は歓迎しない。 複数の承認に延長を認めるが効力範囲を狭くするという考え方は支持できない。最高裁判 決も期待できない。延長登録の機会は増えるが潜在的なリスクとして、考えていたものよ り効力範囲が狭く、穴が開いているところにジェネリックが入り込んできてしまうことが 挙げられる。有効成分以外の全ての付加性成分も効力範囲に影響するとなると特許権は簡 単に回避できるので延長制度の意味が無くなるに等しいと考える。 また、最高裁の判決において、特許法第68条の2についてのコメントを出してほしい。効 力がどこまで及ぶかが一番気になるところである。 (細切れ出願) 承認を得るごとに、細切れに出願するのは手間だし、分量が異なる製剤にも承認が下り るが、それを全部延長出願するためにずっとフォローしていかないといけない。このため の手間も、コストも掛かる。大合議判決で、あそこまで細切れの延長登録が必要という内 容にされるとは思ってもいなかった。 (追加承認) 今回の大合議判決で考えると、初回承認は時間が掛かるので臨床試験が5年くらい掛かる。 追加効能になると、特に追加の用法用量の適応症の申請になると短い時間になる。一回目 の承認と2回目の承認で得た物質特許の延長の期間に差が出る。そうすると短い期間延長し か取れなかった承認の後発医薬品は、長い方の延長登録期間の満了前に上市できるという 状況になる。そんな状況であるのに短い期間延長しか取れない追加効能承認をとるのかと いう話が出てきて追加効能承認取得に対するインセンティブが低下しかねない。追効承認 や追加剤型承認などは患者さんにとっては良い話なので、特許制度としてそれをきちんと サポートしてもらいたいというのが先発メーカーとしての考え方である。それに対するイ - 85 - ンセンティブがなくなるのはマイナスである。 (用途について) また、延長登録における「用途」の考え方に関しては柔軟性を持ってもらいたい。現行 では、効能・効果欄の記載だけで一律に判断されているが、用法・用量欄の記載であると か、 「効能・効果に関連する使用上の注意」欄の記載が用途を構成すると判断される場合が あっても良いと考える。 先行処分の医薬品が特許発明に属するという考え方で考えると延長登録要件を満たさな くても、効能・効果のように用法・用量も用途とみなすという立場で、効能・効果の追加 で更なる延長ができるなら、用法・用量すなわち用途が違うから2回目の延長ができるとい う整理はできると考えている。薬事法と特許法の用語がずれているのが問題ではあるが、 特許では用途、薬事法では効能・効果、用法・用量になっている。 万人に分りやすくて安心感があるのは、特許庁の最初の審査基準、有効成分、効能効果 説。それにプラス別特許があれば延長登録ができるということで平成23年最高裁判決の要 件で立法化しても良いのかもしれない。 (均等の範囲) 大合議判決では均等の範囲とか実質同一という表現が使われていたがどういった範囲を 示すのか不明確だ。判決に成分(有効成分に限らない。)」と書いてあるが、何を意図して 記載したのか分からない。 医薬品(ジェネリック製品のみ開発企業) 大合議判決が確定しても、傍論については、効力が制限されるとも読めるし、不明確で ある。傍論の部分をもう少しはっきりすれば大賛成できる。もっとも、以前の「物」は有 効成分だったころには問題は生じなかった。 (b) 農薬 農薬分野の置かれた状況 先ず、農薬は医薬品の置かれている状況が異なる点が指摘された。農薬は、特定の製剤、 含有率、処方、使用作物等が限定された状態で農薬登録される。他方、延長登録の対象も 特定の範囲に限定される。登録された農薬は、農薬登録で保護され、他社が参入できない 状態であるため、同様の範囲に限定された特許権の存続期間延長制度では意味がないとの 指摘があった。日本では、特許権は農薬登録されるまでの農薬開発期間は重要であるが、 - 86 - 農薬登録されると、農薬登録で保護されており、特許権の延長登録の果たす役割は非常に 狭い。また、ジェネリック参入に関していえば、データプロテクション制度で長期間保護 されているため、極論すると、開発化合物が決まったら、それに関する特許の権利は余り 必要ない。そのような背景もあり、農薬メーカーからの特許権存続期間の延長出願は、活 用されているメーカーもあるが、総じて限定的である。 ①医薬品や農薬の最初の承認・登録に基づき延長可能となる特許の数について いずれの回答者も「②全ての特許とすべき。」と回答している。その理由として以下をあ げている。例えば有効成分18-1からどれか対象となる特許を限るとした場合、そういう特 許がまだ有効に存続している期間であれば延長登録の対象となるが、有効成分、物質発明 の特許が満了した後に農薬登録が取得できたケースがある。そういった場合、他の特許で はカバーされているかもしれないが、物質特許では保護されていない、そういうものが延 長の対象にならないと困るというケースがありえる。なお、種類が選べれば一つでもよい。 ②登録要件、延長の効力について <一部変更承認・登録に基づく延長登録> 農薬の変更の登録によって、特許法第68条の2でいうところの異なる用途の登録が認めら れたのであれば、存続期間が延長された場合の特許権の効力が及ぶ範囲も異なるものであ るから、各々が独立して延長登録が認められるべきであると考えるとの意見があった。 <延長された特許権の効力> ・クレーム範囲全体に延長登録を認めるべきと考えるとの意見、欧州は延長登録出願の 手続が日本と比べて簡単であり、延長登録の効力範囲も広いので望ましいという意見があ った。 また一方、農薬の場合、効力範囲が明確ならよい、延長登録の要件と延長された特許権 の効力の関係については、基本的には一致することが好ましいと考えるとの意見もあった。 ③延長登録に関する実務において問題になったことがあれば可能な範囲で具体的に教 えてください。 要件、効力について特に問題がないとの意見がある一方で、日本の延長登録出願の手続 は複雑であるとの指摘もある。欧州のように提出する書類が少なくなれば、マスクしてま - 87 - で秘密情報を出す必要もなくなるのではないかとの意見もあった また、農薬の試験は、季節や天候条件等で制限される場合もある。その影響で試験が行 えなかったとしても延長の期間算定の対象にならない。た農薬登録を取得する過程におい て、化合物の名前を伏せた形での試験が行われるが、その試験は延長の期間算定の対象に ならない。この名前を伏せた形での試験も物によって1~2年程度要する。このような期間 も参入してもらえると有り難いとの意見も出された。 ④判決や審査基準の改訂が原因で延長登録出願戦略を変更したことがあれば具体的に 教えてください。 「細かく延長登録出願をするようになったということもない。」との回答があった。そも そも、今の延長の枠組みの中ではインパクトは少ないとのことである。 ⑤制度改正についてお考えを教えてください。 抜本的な改正が必要だと思う場合は、改正の時期や方法(法改正、審査基準改訂、ガ イドライン作成など)を教えてください。 農薬の場合、明確にならなければいけないところが明確になっていないという状況が続 いているのでその点では制度改正をした方が良いと考えているとの声がある。 また、クレーム全体で延長が認められる制度が望ましいとの指摘もあった。 ⑥大合議判決に対する意見・感想。最高裁判決に期待する事項 いずれの回答者も、農薬と医薬品との状況の違いから、大合議判決は農薬分野には大き な影響はないと判断している。 (c) 再生医療 再生医療分野が置かれている状況について 再生医療等製品が延長登録対象として新たに認められたが、延長登録制度に関してはま だ厳密なところまで検討できていない。延長登録制度よりも特許権を成立させることにウ エイトが置かれている。 ・再生医療等製品は、医薬品と比べても認可にかなりの時間を要する。特許権の存続期間 20年の間に製品化できるか否かという問題がある。また、前提として、知財高裁大合議判 - 88 - 決は、再生医療等製品に合致しない所が多々ある。 ①医薬品や農薬の最初の承認・登録に基づき延長可能となる特許の数について 再生医療等製品は、化学物質の特許が前提の医薬品と異なり、複数の特許が関連して成 立するものが多いため、関連する特許を一括して延長登録が認められるべきであると回答 があった。 ②登録要件、延長の効力について<一部変更承認・登録に基づく延長登録> 薬事法上の話と特許法上の話を完全に一致させることは難しいとの意見があった。薬事 承認されたものは全て延長登録を認めるべきで、たとえ、一部変更承認であったとしても、 手間が掛かるものであるため、臨床データが必要となるものに関しては、 (同じ特許権であ っても、)延長登録を認めてもらいたいとの意見が出された。 【7-1】.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、延長された特許権の効 力が及ぶ範囲については、どのような範囲とすることがふさわしいか なるべく効力範囲は広い方がよいが、過度にする必要はない。再生医療等製品も「用量」 について、サイズや数量など、薬事上の制限が掛かる可能性があるとの見方が出された。 ⑤制度改正についてお考えを教えてください。 抜本的な改正が必要だと思う場合は、改正の時期や方法(法改正、審査基準改訂、ガ イドライン作成など)を教えてください。 再生医療製品は、企業ではなく、医師の研究がスタートであるため、早期の発表が求め られており、初期の段階で特許出願をしなければならない。このため、研究方針の変更も あって、特許のクレーム範囲と承認申請の範囲とに食い違いを生じやすく、クレームの記 載に苦労する。 (延長登録制度もクレームの範囲内の承認でなければ延長を認められないが、 その点の証明が難しくなる可能性がある。)新たな延長制度では、再生医療分野について、 このような点を配慮いただけないかと考えるとの意見が出された。 また、他規制法で使用が制限されるものについては、例外なく延長登録を認めた方がよ いかと考える。医療機器も認められるべきであると考えている。医療機器といっても様々 なものがあるが、例えば、人体に与えるリスクによって薬事法上で分類化されるクラスに - 89 - 応じて延長登録を認めてもよいのではないかとの指摘があった。 業界内では、再生医療等製品が延長登録対象となる議論が中心である。改正薬事法では、 製品化を早く進めるために条件付き承認が導入されたが、延長登録制度に関していえば、 当時、条件付き承認と本承認のいずれかを延長の起算日とするかが議論となった。改正薬 事法では、条件付き承認を起算日とすることになったが、条件付き承認の段階では、効果 等の試験は終わっておらず、費用の持ち出しの方が多い。一方で、本承認を起算日とする と特許権の存続期間が満了してしまうという問題があるとの指摘があった。 また、再生医療製品は、医薬品と異なり消耗品ではなく、大量生産ができない。存続期 間が延びても投資が回収できないおそれがあるとの見解も示された。 ⑥大合議判決に対する意見・感想。最高裁判決に期待する事項 今後、再生医療製品は次々と世に出てくるであろうし、事例も出てくるであろうが、現 状は日本では二つしか製品化されておらず、事例も少ない。ただ今回の知財高裁大合議判 決について最高裁がどのように判断するかは関心を持っているとの回答があった。 - 90 - Ⅳ. 海外の特許権の延長制度と関連制度 調査研究の対象国・地域である米国、欧州連合、英国、ドイツ、カナダ、中国、韓国に おける、特許権の存続期間の延長登録制度に関連する法令・制度等について述べる。 1. 米国 1984年9月に、「医薬品の価格競争及び特許期間の回復に関する1984年法(Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984)」が発効した。この法律は、“薬 価競争”を推進したワックスマン議員と、 “特許期間の回復”を推進したハッチ議員の名を とって、ハッチ・ワックスマン法と呼ばれており74、ジェネリック業界が推す簡略新薬申 請手続(ANDA:abbreviated new drug application)法と研究開発志向型企業の特許期間 回復法が盛り込まれている。 米国における特許権の存続期間の延長登録制度は、特許法第155条、特許法第156条、及 び特許規則(37 C.F.R. Patent Rules)特許存続期間の調整及び延長75§1.710~§1.791、 審査基準(MPEP)§271076において規定されており、その制度の概要は以下のようになっ ている。 (1) 延長登録の理由となる製品77 延長登録の理由となる製品は、人又は動物用医薬品、医療機器、食品添加物、着色料で ある。 (2) 延長される期間78 医薬品に関しては、治験届(IND:Investigational New Drug)の日から承認申請(NDA: New Drug Application)の日までの期間の半分と、承認申請日から承認日までの期間との合 計(特許法第156条(c)、(g)(1))で、5年を限度とする期間が延長される。ただし、相当な 注意(Due Deligence)が認められない期間は削減され(特許法第156条(c)(1))、許可の日 74 竹田和彦『特許の知識〔第8版〕』2006年3月、 530-539頁 2710 Term Extensions or Adjustments for Delays Within the USPTO Under 35 U.S.C. 154 [R-11.2013] http://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/mpep-9020-appx-r.html#d0e330993[最終アクセス日2015年2月11日] 76 Subpart F - Adjustment and Extension of Patent Term ADJUSTMENT OF PATENT TERM DUE TO EXAMINATION DELAY 1.701 Extension of patent term due to examination delay under the Uruguay Round Agreements Act http://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s2710.html[最終アクセス日2015年2月11日] 77 米国特許法第156条(f) 78 松井祥二「特許制度の国際的整合化と医薬品分野の特許権期間延長制度に見られる非整合」AIPPI Vol.53 No.6、2008 年、2-17頁 75 - 91 - (医薬品の場合は承認日)から期間延長された場合の特許期間満了日までの期間は14年を 超えることはできない(特許法第156条(c)(3))。延長は最初の満了日(延長されない場合 の満了日)から延長される(特許法第156条(a))。特許規則§1.775~§1.779において、特 許存続期間延長の計算方法の詳細が規定されている。 (3) 延長できる特許 延長できる特許は、製品に関する特許、製品を使用する方法に関する特許、製品を製造 する方法に関する特許である。 一つの製品について、特許権者の選択する一つの特許(必ずしも最初の特許ではない) のみが、1回だけの最初のNDA(New Drug Application)の承認との関連において延長され る。 (4) 申請 特許権者又は代理人が、法律の規定に基づいて許可を受けた日(医薬品の場合はNDA承認 取得日)から60日以内に申請書を提出しなければならない(特許法第156条(d)(1))。審査 期間が特許権存続期間の満了後にまで及ぶと特許権者又はその代理人が合理的に判断する 場合には、米国特許商標庁長官に対し暫定延長申請書を提出することができる(特許法第 156条(d)(5)(A))制度があるため、例えば、NDA承認前に特許権が満了する場合であっても 延長が認められる。 (5) 審査 USPTO(United States Patent and Trademark Office;米国特許商標庁)からFDAへ通知 されて行政審査期間が決定された後、USPTOが延長期間を決定する79。 (6) 存続期間が延長された場合の特許権の効力 ベースとなる特許と同じ保護範囲を有するが、承認された製品に限られる。ただし、用 途についてはその後の新たな承認に関わる用途も含まれる。 (ここで製品とは、承認された 製品の活性成分(”active ingredient”)をいう80) 79 平成17年度特許庁委託産業財産権研究推進事業「米国の医薬・バイオ関連分野におけるプロパテント政策の動向 -ハ ッチ・ワックスマン法を中心に-」知的財産研究所、33-34頁 80 35 U.S. Code §156(f) - 92 - その他の判例等 ・Glaxo Operations U.K. Ltd. v. Quigg, (Fed. Cir.1990) Glaxoがcefuroximeのエステルであるcefuroxime axetilについて承認を得、特許権 存続期間延長(PTE)出願をしたところ、USPTOは、既にcefuroximeの塩が既に承認さ れていたので、特許法第156条における製品、つまり活性成分(active ingredients) とは、活性部分(active moiety),つまりcefuroximeであるとして拒絶した。これに対 して、裁判所(CAFC)は、 「製品」 (“product” in 35 U.S.C. § 156(a)(5)(A))とは、 「活性成分」(“active ingredient.”)を意味すると判断した。 ・Hoechst-Roussel Pharms. Inc. v. Lehman, (Fed. Cir. 1997)81 販売承認申請の行動が特許の存続期間の回復の出願に帰するものであると判示し た。 ・Merck & Co, Inc. V. Hi-Tech Pharmacal Co., Inc., (Fed. Cir. 2007)82 米国特許法第156条は、明示的に特許法第253条に基づくターミナル・ディスクレー マーに言及していないが、特許法第156条に基づく特許存続期間の延長が、ターミナ ル・ディスクレーマーによっては排除されないと判断された。 ・Arnold Partnership v. Dudas, (Fed. Cir. 2004) 8384 重酒石酸ヒドロコドンとイブプロフェンという二つの活性成分からなる複合薬が、 最初の販売の要件を満たさないので、特許期間延長は認められないと判断された。 ・Pfizer Inc. v. Dr. Reddy's Laboratories Ltd., (Fed. Cir. 2004) ハッチ・ワックスマン法(特許法第156条)の権利期間回復規定は、 「医薬品」を活 性成分のあらゆる塩又はエステルを含むものと規定している。地裁は909特許の期間 延長の効力は、FDA認可を受けた製品である活性成分(“active ingredient”)のアム ロジピンベシル酸塩に限られると判断したが、CAFCは'909特許の期間延長の効力は、 FDA認可を受けたアムロジピンベシル酸塩に限定されるのではなく、マレイン酸アム ロジピンにも及ぶと判断された。 81 「Hoechst-Roussel Pharmaceuticals、 Inc. v. Lehman」Matthew Hinsch http://scholarship.law.berkeley.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1165&context=btlj[最終アクセス日2015年2月 11日] 82 「特許/第156条、第253条/ターミナルディスクレーマー特許の存続期間延長」I.P.R. Vol.21 No.5、2007年、231-235 頁 83 「複合薬に関する特許と期間延長」 I.P.R. Vol.18 No.5、2004年、277-280頁 84 知財高判 平成17年5月30日 判時1919号137頁 平成17年(行ケ)第10012号 - 93 - ・MERCK & CO. INC v. TEVA PHARMACEUTICALS USA, INC., (Fed. Cir. 2003) Merk社は、アレンドロン酸のナトリウム塩を骨粗鬆等に対する医薬品として販売し ていたが、特許期間が延長された特許は用途発明(方法クレーム)であり、化合物の 塩をクレームに記載していなかった。Teva社らは、Merk社の製品と同一の塩でANDA申 請をし、Merk社の特許を侵害しないか無効であることを主張したが、特許侵害である と判示された。 ・PhotoCure ASA v Kappos, (Fed. Cir. 2010)85. アミノレブリン酸メチル塩酸塩(MAL 塩酸塩)の特許権の存続期間の延長の可否に ついての裁判例に関する。特許商標庁(USPTO)は、既にアミノレブリン酸塩酸塩(ALA 塩酸塩)の特許権について延長が認められており、 「活性成分(“active ingredient”)」 とは、「活性部分(“active moiety”)」のことであり、MAL塩酸塩はALA塩酸塩のエス テルであるから、活性部分は同じだとしてMAL塩酸塩の特許権の延長を認めなかった。 延長登録出願人は、地裁に出訴したところ、地裁は、存続期間延長の要件を満たすと した。そして、CAFCは、米国特許商標庁(USPTO)の判断を否定し、活性成分はMAL塩 酸塩であり、ALA塩酸塩はMAL塩酸塩の塩でもエステルでもないとして、特許権の存続 期間の延長を認めた地裁判決を支持した。そして、CAFCは、米国特許商標庁(USPTO) の判断を否定し、活性成分はMAL塩酸塩であり、ALA塩酸塩はMAL塩酸塩の塩でもエス テルでもないとして、特許権の存続期間の延長を認めた。なお、特許権者は、MAL塩 酸塩はALA塩酸塩に比較して優れていることを示して特許を取得しており、また、FDA の審査においてもMAL塩酸塩は新規医薬として承認されている。USPTOは、 (上記した) Pfizer Inc. v. Dr. Reddy's Laboratories Ltd.で示された解釈に沿うべきである旨 主張したが、CAFCは、Pfizer Inc.は延長された特許権の侵害を「塩」を変更するこ とにより回避できるかが問題であって、登録要件に関するものではないとした。 ・Genetics Institute, LLC v. Novartis Vaccines, (Fed. Cir. 2011)86 特許権の存続期間の延長は、特許権全体に認められるのか、特定の特許クレームだ けに認められるのかが問題となった際、特許権全体に認められると判断した。 ・Ortho-McNeil and Daiichi Sankyo v. Lupin, (Fed. Cir. 2010)87 85 中道徹「専門実務研究」横浜弁護士会 第6号2012(平成24年)124頁 月刊The Lawyers 2011年11月号(第145回) (http://www.patest.co.jp/cafc/2011/cafc20111102.html)[最終アクセ ス日2015年2月11日] 87 「US Court of Appeals Decides Enantiomer Patent Term Extension Case」(「The SPC blog(Tuesday, 11 May 2010) http://thespcblog.blogspot.jp/2010/05/us-court-of-appeals-decides-enantiomer.html[最終アクセス日2015年2月 11日] 86 - 94 - ラセミ混合物に対する先行処分は、そのラセミ混合物の単一のアイソマーに対する 特許権の存続期間延長の妨げにならないと判断した。 (7) 医薬品の販売承認の流れ 米国の医薬品承認は、米国保健福祉省・食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)88の医薬品評価研究センター(Center for Drug Evaluation and Research;CDER)と 生物製剤評価研究センター(Center for Biologics Evaluation and Research;CBER)が 所管している。新薬承認には、CDERに対して新薬の承認申請(New Drug Application、NDA) を申請する必要がある。バイオ医薬品承認はCBERが所管し、申請者はBiological License Application (BLA)を申請する。モノクローナル抗体やサイトカイン等の一部バイオ医薬品 は管轄が変更されて、CDERで承認審査が行われるようになった89。 1984年9月24日のThe Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984 (通称Hatch-Waxman法;ハッチワックスマン法)90の施行により、ジェネリック医薬品は、 ANDA(Abbreviated New Drug Application ; 簡略型医薬品申請)による承認申請をすること ができるようになった。ANDA申請においては、NDA申請で要件となっている前臨床試験及び 臨床試験データの提出は課されていないが、新薬との生物学的同等性(bioequivalence) を科学的に証明する必要がある。 ANDAにより、ジェネリック医薬品製造者が従前の制度に比べて簡略的に承認取得するこ とが可能になり、ジェネリック医薬品の流通を促進すると同時に、ハッチワックスマン法 上特許期間の延長制度が導入され、新薬製造者は承認申請による特許期間の実質的喪失を 補うために、特許期間の延長を最長5年まで申請することができるようになった。 現在のところバイオ医薬品のジェネリック(Biosimilar;バイオシミラー)のためのANDA 申請が認められていないため91、本項では、バイオ医薬品を除く医薬品に関する承認の流 れを図表Ⅳ―1に記す。 88 Food and Drug Administration(http://www.fda.gov/ [最終アクセス日2015年2月11日]) 「Combination Products」(FDA) http://www.fda.gov/CombinationProducts/JurisdictionalInformation/ucm136265.htm [最終アクセス日2015年1月30日] 90 「Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984」 http://thomas.loc.gov/cgi-bin/bdquery/z?d098:SN01538:@@@D&summ2=m&|TOM:/bss/d098query.html [最終アクセス日2015年1月30日] 91 Bruce S. Manheim, Jr., Patricia Granahan and Kenneth J. Dow「Follow-on Biologics」Ensuring Continued Innovation in the Biotechnology Insudtry, Health Affairs, 25, no.2(2006):394-404頁[最終アクセス日2015年1月30日] 89 - 95 - 【図表Ⅳ―1】92販売承認の流れ 新薬承認までのステップ ①Pre-clinical Research: 新薬の開発研究と動物実験を含む前臨床試験の期間 ②Investigative New Drug (IND) 申請:前臨床試験から臨床試験に移行するためには、 FDAへIND申請し、臨床試験を実施する承諾を得る。 ③NDA申請:臨床試験完了後に、新薬の承認を取得するための申請。NDA申請から承認 までのステップ詳細は、以下の図表Ⅳ―2を参照。 92 「Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984」 http://www.fda.gov/Drugs/DevelopmentApprovalProcess/SmallBusinessAssistance/ucm053131.htm [最終アクセス日2015年2月11日] - 96 - 【図表Ⅳ―2】NDA申請の流れ93 ・NDA申請における特許情報の利用について 新薬承認申請時には、申請医薬品に係る全ての特許情報を提出することが要求されてい る。特許情報が公開されるのは、新薬承認後、FDAのForm 3542を提出し、それが受理され てからである。新薬承認後に特許を取得する場合には、特許権者は取得から30日以内に申 請する必要がある。この場合、ジェネリック医薬品申請が特許申請前に行われていれば、 ANDA申請者はPatent Certificationを提出する必要はない。 新薬承認申請時に提出が課されている特許の種類は、以下の3種類となる。 ・医薬品成分(原材料)特許: Drug substance (ingredient) patents ・医薬品製品(配合・成分)特許: Drug product (formulation and composition) patents ・用途特許(Method of use patents) 新薬承認申請時の特許情報の提出には、製法特許(Process Patents)は含まれない94。 93 「The CDER Handbook」CDER、19頁http://www.fda.gov/downloads/AboutFDA/CentersOffices/CDER/UCM198415.pdf 終アクセス日2015年2月11日] 94 「Small Business Assistance: 180-Day Generic Drug Exclusivity」FDA - 97 - [最 上記の特許情報はFDAに対する新薬承認申請に利用されるが、2003年6月18日に発表され たFinal regulations95では、FDAが受理しないとする特許4種類が告知された。 ①医薬品の包装に関する特許(Patent claiming packaging of a drug) ②承認医薬品の代謝成分に関わる特許(Patent on metabolites of approved drugs) ③中間体に関わる特許(Patent on intermediates may not be listed) ④新薬承認を取得した際の医薬品の用途以外の用途(Patent claiming a method of using a drug other than the method approved in the NDA) 新薬承認申請時に提出が課されている特許の情報は、以下の4項目となる4。 ・特許番号及び特許が無効となる日(Patent number and the date of which the patent will expire) ・特許の種類:医薬品の成分、医薬品又は用途(Type of patent (drug, drug product, or method of use) ・特許権者の氏名(Name of the patent owner) ・特許権者が米国以外の国に居住している場合は、特許権者の米国代理人の氏名ある いは米国でのビジネスを維持又は米国に居住している申請者(If the patent owner reside outside of the US, the name of an agent of the patent owner or applicant who resides or maintains a place of business with the US) FDAが利用する特許の情報は、FDAに提出が要求される上記4項目となる。 図表Ⅳ―3にANDA申請の流れを示す。 http://www.fda.gov/drugs/developmentapprovalprocess/smallbusinessassistance/ucm069964.htm 2015年2月19日] 95 68Fed. Reg.36,676 (June 18, 2003) - 98 - [最終アクセス日 【図表Ⅳ―3】ANDA申請の流れ96 ・ANDA申請時の特許情報について ANDA申請には、特許証明書(Patent Certification)を提出することが要求される。特 許証明書には、以下の4種類がある97 ①Paragraph I Certification: 製品に関する特許情報が登録されていないという証明書 (to certify such patent information has not been filed) ②Paragraph II Certification: 登録されている新薬の特許が無効であるという証明書 (to certify that the patent on the listed drug has expired) ③Paragraph III Certification: 特許が無効になる日の証明書 (to certify that the date on which the patent will expire) ④Patent IV Certification: 承認済の新薬の特許が無効又は実施不可能、あるいはANDA 申請時点で、ジェネリック医薬品の製造、使用又は販売が特許権を侵害しない旨の証明 書 ( to certify that a patent claimed to apply to the listed drug is invalid, 96 「The CDER Handbook」CDER、30頁 http://www.fda.gov/downloads/AboutFDA/CentersOffices/CDER/UCM198415.pdf [最終アクセス日2015年2月11日] 97 「Small Business Assistance: 180-Day Generic Drug Exclusivity」FDA http://www.fda.gov/drugs/developmentapprovalprocess/smallbusinessassistance/ucm069964.htm [最終アクセス日2015年2月2日] - 99 - unenforceable, or will not be infringed by manufacture, use, or sale of the drug covered by the ANDA) Patent IV Certificationを提出した場合ANDA申請者は、当該特許権者に対しANDA申請の 旨を通知する義務を負う98。 ハッチワックスマン法上、Paragraph IV Certification7によるANDA申請の場合、特許が 無効になる以前に申請することができる。その際、最初のANDA申請者に対し180日間の保護 期間(独占権)が与えられる。ANDA申請者は、FDAに①”Paragraph IV Certification”― 対象の特許が無効、あるいはジェネリック医薬品が特許侵害をしていない旨の証明書、さ らに、特許権者に対して②ANDA申請を通知することが義務付けられている。特許権者は、 ANDA申請通知から45日以内に特許侵害訴訟を提起することができる。その時点でANDA申請 プロセスは30ヵ月延長されるが、その間特許の有効期限が切れるか、特許が無効あるいは 特許の侵害ではないとの判決が下った場合は、その限りではない。この30ヵ月間に、特許 権者がジェネリック医薬品市販開始前に特許権を主張するする機会が与えられることにな る。 ・ANDA申請に伴う訴訟について 前記のように最初のANDA申請者に対して180日間の保護期間が与えられるので、ジェネリ ックメーカーがANDA申請を他社に先んじて行うインセンティブとなっていることが考えら れる。次にANDA訴訟の流れと分析結果を図表Ⅳ―4に示した。 98 「Small Business Assistance: 180-Day Generic Drug Exclusivity」,FDA http://www.fda.gov/drugs/developmentapprovalprocess/smallbusinessassistance/ucm069964.htm [最終アクセス日2015年2月2日] - 100 - 【図表Ⅳ―4】Patent IV Certificationに基づくANDA訴訟の流れと争点99 日本においては、物質特許、用途特許が存在する場合厚労省による後発品の承認が行わ れず、また製剤特許等においては後発品メーカーが特許を回避するという形で市場に参入 するといわれている100が、米国の場合の分析結果によると幅広い種類の特許が争点となっ ていることから、後発品メーカーが幅広い選択肢を持って市場参入を画策していることが 分る。 (8) 承認事項の(一部)変更の承認申請 米国連邦規則集第21巻314.70条上101、スペルミス等の編集上の軽微な変更、又は承認さ れた申請書上の変動幅内でない場合は、一度認められた医薬品の販売承認の内容の一部変 更する場合、申請者は米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)に対して当該変更に関する承 認取得又は通知をしなければならない。変更については図表Ⅳ―5に示しすような区分が存 在する。 【図表Ⅳ―5】同条上の変更には、以下の様な4種類の区分がある。102 区分 区分の説明 要件概要 大きな変更 医薬品の安全性と効能に関 当該変更を申請する場合は、 (major change) 事 前 連して医薬品の性質、強さ、 Prior Approval Supplement 承 認 補 完 ( Prior 品質、純度、有効性に対し大 と明記しなければならない。 99 2012年度第1小委員会の活動報告「『米国ANDA関連訴訟判決における判断傾向の分析」( 「米国ANDA関連判決における判断傾向の分析」知財管理、Vol.63、No.8、2013、1233-1251頁 100 本調査研究ヒアリング結果より 101 21CFR314.70 102 「Guidance for Industry Changes to an Approved NDA or ANDA」FDA http://www.fda.gov/downloads/drugs/guidancecomplianceregulatoryinformation/guidances/ucm077097.pdf〔最終ア クセス日 2015年2月3日〕 - 101 - Approval きな悪影響をもたらす可能 申請者はFDAに対して公衆衛 Supplement) 性のある変更。 生(例:医薬品不足)又は変 更の遅れた場合に申請者に 多大な困難を課する ことを 理由として事前承認補完の レビューの迅速処理をリク エストすることができる。 中 程 度 の 変 更 医薬品の安全性と効能に関 変更をした医薬品流通の最 (Moderate change) 連して医薬品の性質、強さ、 低30日前迄にFDAに対して補 30日事前届出補完 品質、純度、有効性に対し中 完を提出する義務を負う。 (Supplement-Changes 程度の悪影響をもたらす可 FDAは、レビュー後の判断で Being Effected in 30 能性のある変更。 流通を差止める権利を保持 days) している。 中 程 度 の 変 更 FDAが受理した時点で流通可 当 該 補 完 の 場 合 、 (Moderate change) 能という判断をする一定の Supplement-Changes 事後届出補完 中程度の変更。 Being Effected と い う ラ ベ ル 表 示 (Supplement-Changes をする義務が課されている。 Being Effected) FDAは、レビュー後の判断で 流通を差止める権利を持っ ている。 軽微な変更 change) (minor 医薬品の安全性と効能に関 申請者は当該変更を次回の 年次報告 連して医薬品の性質、強さ、 年次報告書上記載しなけれ (Annual Report) 品質、純度、有効性に対し軽 ばならない。 微な悪影響をもたらす可能 性のある変更。 (9) データ保護 FDAにより承認されたことがない化合物を含む製品のための新薬販売承認申請に対して は、5年間の保護期間が付与されている。特許無効又は侵害をしていないことの証明書があ る場合、ANDAは4年後に申請することができる。以前に承認された活性成分を含む医薬品の 場合、申請書類に申請者による新しい臨床試験報告が含まれるときには、3年間の保護期間 - 102 - が与えられる。例えば、承認された医薬品の活性成分、濃度、用量、投薬方法又は使用条 件に影響する変更に関し、当該医薬品の承認のために臨床試験が不可欠である場合は、保 護期間が与えられる103。 (10) 試験研究のための実施行為に関する特許権侵害の免責規定(ボーラー条項) ハッチワックスマン法104は、食品医薬品化粧品法第501j条105を修正し、二つの公共政策 のゴールを達成するために1984年に制定された。その内の一つは、新薬の製造者に対して 価値ある新薬の開発投資を埋め合わせるだけの意味のある特許の保護を与えることであり、 もう一つのゴールは、消費者が低価格のジェネリック医薬品の利益を享受することを可能 にすることである。 同法は、ジェネリック医薬品の承認プロセスであるANDAを立法化した。106ANDAは、ジェ ネリック医薬品の承認プロセスを簡略化し、医薬品の申請者は、安全性と効能を証明する ための臨床試験のデータを提出する義務を免除されている107。 ANDAの立法化により、特許法にも一定の条件の下、医薬品のFDA承認等を得るために行う 特許発明の使用行為を特許権侵害から免責する条項である、合衆国法典第35巻第271条 (e)(1)(通称ボーラー条項108)が加えられた109。 ボーラー条項上、ANDAのための開発及びFDAへの情報提出目的に適切に関連した特許権が 付与された医薬品のテスト等は特許権の侵害行為から除外されている110。 103 「Small Business Assistance: Frequently Asked Questions for New Drug Product Exclusivity」,FDA http://www.fda.gov/Drugs/DevelopmentApprovalProcess/SmallBusinessAssistance/ucm069962.htm 〔最終アクセス日 2015年1月27日〕 104 「Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984」 (Hatch-Waxman Amendment) [最終アクセ ス日2015年2月11日] 105 Section 505(j), Federal Food, Drug, and Cosmetic Act[最終アクセス日2015年2月11日] 106 「Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984」 (Hatch-Waxman Amendments) ,FDA http://www.fda.gov/newsevents/testimony/ucm115033.htm [最終アクセス日 2015年1月26日] 107 「Abbreviated New Drug Application (ANDA): Generics」FDA http://www.fda.gov/Drugs/DevelopmentApprovalProcess/HowDrugsareDevelopedandApproved/ApprovalApplications/A bbreviatedNewDrugApplicationANDAGenerics/ [最終アクセス日 2015年1月26日] 108 Roche Products v. Bolar Pharmaceuticals, 733 F.2d 858, 221 USPQ 937 (Fed. Cir. 1984) 109 35USC271(e)(1) 110 「2750 Patent Term Extension for Delays at other Agencies under 35 U.S.C. 156 [R-11.2013]」,USPTO http://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s2750.html[最終アクセス日2015年2月11日] - 103 - (11) オレンジブック(Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations; 通称orange book) 新薬(先発)メーカーは、米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)への新薬申請時に関連 する特許の情報を提出する必要がある111。米国連邦規則集第21巻314.53112上新薬の販売承 認の申請者は、申請する医薬品の特許ライセンスを受けていない者が製造、使用又は販売 をした場合、特許権者により特許侵害訴訟の提起が通常は予想される新薬申請の対象であ る医薬品の、各特許に関する情報を所定の書式にて提出する義務を負っている。本条項の 目的上、対象となる特許は物質特許、製品特許及び使用方法に関する特許である。 FDA は 提 出 さ れ た 情 報 を 、 Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations 通称オレンジブック)上で掲載している。 (12) 医薬品の承認情報の公示 米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)のDrugs@FDA113というウェブサイト上、医薬品の 承認審査に係る情報等(承認項目、ラベル情報、承認書等)が公示されている。同サイト 上、医薬品名、活性成分、申請番号等による検索が可能であり、さらには月毎に申請され た医薬品の検索もすることができる。 新たに承認された医薬品に関する情報は、週毎に更新されるFDAのNew and Generic Drug Approvals114上で公示されている。同サイトでは、医薬品名、活性成分、剤形、申請の種類 等の情報が記載されている。 さらに、FDAのInformation for Customer115上では、消費者向けに米国国立衛生研究所 (NIH; National Institutes of Health)の医薬品、サプリメント、ハーブの投薬量、副 作用等に関する情報を検索することができるMedlinePlus116、FDAの副作用を回避すること をサポートする目的で提供されているMedication Guides 等へのリンクが記載されている。 111 FDA CDERのDrug Information Specialistの回答より 21CFR314.53 113 「Drugs@FDA」FDA http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/drugsatfda/ 〔最終アクセス日 2015年1月22日〕 114 「New and Generic Drug Approvals」FDA http://www.fda.gov/Drugs/NewsEvents/ucm130961.htm 〔最終アクセス日 2015年1月22日〕 115 「Information for Customer」FDA http://www.fda.gov/drugs/resourcesforyou/consumers/ 〔最終アクセス日 2015年1月22日〕 116 「MedlinePlus」FDA http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/druginformation.html 〔最終アクセス日 2015年1月22日〕 112 - 104 - 2.欧州 欧州においては、特許に基づく排他権の利用期間の消失や、欧州が起源となる医薬品の シェアの低下、財源不足による医薬品研究の質の低下、さらには研究拠点がより恵まれた 保護を与える非加盟国に移動する懸念など117から、米国、日本及び韓国における特許権存 続期間延長制度と同様の制度創設を求める動きが強まっていた。しかし、欧州特許条約 (EPC; European Patent Convention)では、1991年12月17日にEPC第63条を改正する法律 が採択されたものの(注:Official Journal EPO 1992, 1ff.)、その改正は1997年7月4日に 発効するまで待たなければならなかった118。EPC1973の第63条はEPC2000の第63条としてそ のまま引き継がれており、EPC第63条(2)項及び同(b)号で、各締結国において、当該国にお いて市場に流通させる前に法律によって要求される行政承認手続の必要な製品、その製法、 その用途に関する特許については、国内特許に適用される同じ条件で、欧州特許の期間延 長又は特許期間の満了と同時に相当する保護を付与する権利を制限しないことを定めてい る。 一方EECにおいては、日米の特許権存続期間の延長登録制度に相当する補足保護証明 (SPC:Supplementary Protection Certificate)制度の導入を目的とした1990年5月8日の 欧州委員会の提案(Com 90/0101 Final)を受けて、欧州議会で審議されたのち、1992年6 月18日に欧州閣僚理事会によるEEC規則1768/92が公布され、1993年1月2日に各EU加盟国で 施行される一方で、スイス、アイスランド、リヒテンシュタイン、又はノルウェーといっ たEU非加盟国も、医薬品の特許期間延長の取得に関する同様の国内規定を設けている119。 このEEC規則1768/92の前文には、共同体及び欧州において医薬製品の開発には長期の年月 と高額な研究費とを必要とするものであるから、その研究開発を奨励するためには十分な 保護をしなければならないこと、ジェネリック製品の製造業者がその製品の市場参入の遅 れる点については既に考慮されている旨が述べられている。なお、このEEC規則1768/92は、 その後改正され、2009年7月6日にEEC規則469/2009に置き換わった120。 さらに、農薬(Plant protection product)にも補足保護証明書制度を適用すべく、1994 年と1995年の欧州委員会の提案(Com 94/0579 Final及びCom 95/0456 Final)を受けて、1996 年7月23日、欧州議会と欧州閣僚理事会はEC規則1610/96を採択し、1997年発効した。補足 保護証明制度は欧州連合の各加盟国に適用されるが、補足保護証明書は国ごとに申請・取 得する。 117 平成20年度産業財産権制度問題調査研究報告書「医療技術等の特許権存続期間及び医療方法についての特許制度の在 り方に関する調査研究報告書」財団法人 比較法研究センター、35-36頁、(他にRegulation(EC)No.469/2009前文など) 118 EPO長官通達OJ EPO 7/1997 119 RalfPerrey「欧州において医薬品に与えられる保護の特異性」AIPP、Vol.54 No.8、2009 468-474頁 120 「欧州知的財産ニュース Vol.33」JETROデュッセルドルフセンター http://www.jetro.go.jp/world/europe/ip/archive/pdf/news_033.pdf[最終アクセス日2015年2月11日] - 105 - (1) 補足保護証明の対象製品 補足保護証明の対象製品は、人間用医薬品121122、獣医学的医薬品123、農薬124125である。 (2) 延長される期間 補足保護証明の有効期間は、特許出願日から最初の医薬品流通認可発行日までの期間か ら5年を差し引いた期間(延長期間は5年以下、承認日から満了日までの期間は最大15年) である126。したがって、特許登録日は延長される期間に影響を及ぼさない。 (3) 延長できる特許 ・医薬品等 延長ができる特許は、製品、製品の取得方法、製品の用途を保護する特許であって、証 明書の付与を受ける手続上、その所有者が指定したもの(「基本特許」という)127。 ・農薬 延長ができる特許は、製品、製剤、製造方法、製品の用途であって、証明書の付与を受 ける手続上、その所有者が指定したもの(「基本特許」という)128 (4) 申請 特許権者又はその承継人が出願を行わなければならない129。基本特許を付与され、製品 流通許認可を取得した、加盟国の工業所有権管轄官庁に申請する130。 121 Regulation(EC)No.469/2009 Article 2 Directive(EC)NO.2001/83は一部修正されている(Directive(EC)NO.2004/27、2002/98/EC、2003/63/EC、2002/24/EC、 2002/27/EC) 123 Directive(EC)NO.2001/82は一部修正されている(Directive(EC)NO.2009/9、2004/28) 参考:" Veterinary EU Legislation",FVE http://www.fve.org/veterinary/medicines.php[最終アクセス日2015年2月 11日] 124 Regulation(EC) No.1610/96 125 Regulation 1107/2009 126 Regulation(EC)No.469/2009、Regulation(EC) No.1610/96いずれもArticle 13 127 Regulation (EC)No.469/2009 128 Regulation (EC) No 1610/96 Article 1.8 129 Regulation(EC)No.469/2009、Regulation(EC) No.1610/96いずれもArticle 6 130 Regulation(EC)No.469/2009、Regulation(EC) No.1610/96いずれもArticle 9 122 - 106 - (5)補足保護証明制度の保護範囲 医薬に関するEU規則469/2009第4条及び第5条並びに農薬に関するEU規則1610/96第4条及 び第5条並びにそれぞれの判例法が、SPCの保護範囲を規定している。 SPCは、基本特許の保護範囲内における販売承認された「製品」 (Product)の医薬又は農 薬としての使用(用途)を保護する。SPCにより保護される用途は最初の販売承認(SPCが ベースとしたもの)で言及された用途だけでなく、SPCの期間中にベースとなる特許で保護 され、承認された全ての用途である。これは後の用途についての販売承認を受けたものが 第三者でも関係ない。 さらに、ECJはNovartis-C-574/11において、SPCが、単一の活性成分(A)について付与さ れている場合、それはまた、単一の活性成分(A)についてのベースとなる特許が活性成分 (A+B)の組合せにおいて活性成分Aの使用に対して保護を及ぼすのと同様に、活性成分(A) を包含する活性成分(A+B)の組合せに対してもSPCが保護を及ぼすと判示した。 各製品にはただ一つの証明書が付与されることになっており、この場合、ある一つの製 品(Product)は厳密な意味である一つの活性成分(active ingredient)であると解釈される。 このため、ある活性成分の新たな用量又は異なる塩若しくはエステルといった製品への変 さらには、SPCが新たに付与されることはあり得ない。 判例法によると、以下のようなものは一般には活性成分とは認められない。 ・ただ一つの成分だけが活性を持ち、他の成分はこの有効性を高めるためのものである ような組合せ(判例C-431/04 MIT)。 ・アジュバントC-210/13 GSK(ただし、例えば植物保護製品C-11/13 Bayer Cropscience 中の毒性緩和剤と比較のこと)。 さらに、ベースとなる特許と同じ保護カテゴリがSPCに適用される。組成物特許に基づい て付与されたSPCは物質としての製品を保護する。方法特許に基づいて付与されたSPCは、 製品の製造方法を保護し、それぞれの国の法律に基づいて、それはまた、製品自体を保護 することもあり得る(例えば、ドイツ特許法第9条第3号)。用途特許に基づいて付与された SPCは、製品の特許が付与された使用を保護する。 SPCの保護範囲は、主要薬効だけでなく、その塩、エステルを含むものにも及ぶ131。また、 131 「1996年7月23日の欧州政令1610/96の(農薬学関係製品のSPC設定に関するもの)前文13及び14、《注:これは同時に 欧州政令1768/92の解釈としても通用する》にて以下のような判断が行われた。“基となる特許が主要薬効成分だけでな く(塩やエステルのような)副次成分も保護しているとき、SPC(補足保護証明)は特許と同じ保護を(副次成分にも)与え る。)」(「特許とMA(医薬品市場販売認可)の相互影響について」Cabinet Beau de Lomenie http://www.bdl-ip.com/upload/Etudes/bdl_etude_jp_brevets22.pdf[最終アクセス日2015年2月11日]) - 107 - 小児用医薬品を保護するSPCに対して期間延長が与えられた場合、保護範囲は当該医薬品の 小児用途に制限されない132。 医薬品に対するものと植物保護製品に対するものとでSPC規則の法的解釈に差異が生じ ないようにしなければならない。例えば規則(EC) No. 469/2009の第3条(a)に関する判決は 規則(EC) No. 1610/96にも適用される。しかしながら、異なる製品それぞれの承認手続に 固有のことがらに関する場合などのように、判決をこれらの規則両方に適用できない場合 もある。 ・SPC登録の要件についての重要な判例 Eli Lilly - C-493/12133 Eli LillyにおいてECJは、SPCによって保護されるべき製品がベースとなる特許において 「特定」されている必要があるという要件を更に規定した。 上に説明したように、SPCが指示する製品は、EU規則469/2009第3条a)に従い、有効な特許 によって保護されている必要がある。この規定の文言によっても、当該製品が特許請求の 範囲に記載されている必要があるか否かは不明のままである。Medeva(ドケット番号: C-322/10)でECJは既に、製品が「特定」されている必要があるとの判決を下した。 これらの考察に基づき、Eli LillyはHuman Genome Sciencesのベースとなる特許の文言 は、この製品にSPCが付与されるに足るほど、十分に製品を特定していないと異議を申し立 てた。ベースとなる特許の関連する文言は以下のとおりである:「全長ニュートロカインαポリペプチド又はニュートロカイン-αポリペプチドの細胞外ドメインと特異的に結合 する単離された抗体又はその部分」。Eli Lillyによれば、この文言は、MedevaでECJによっ て規定された要件を満たしていなかった。なぜなら、この文言は、 「問題の抗体、特に、特 異的な一次抗体配列に関しては何の説明も与えておらず、いずれのニュートロカイン-αエ ピトープに抗体が結合しているとクレームされているのかについても、どの中和活性が発 揮されるとクレームされているのかについても、なんら機能的な情報を開示していないか らである。」Human Genome Sciencesは、これに反対し、選択された機能的な定義は一般的 な文言であると述べ、これは欧州特許庁によって受け入れられた。ECJは、特許クレームに 含まれる構造式も、ベースとなる特許において製品を定義するのに十分であるが、それだ けでなく、特許クレーム内の機能的な記載も「それらのクレームに基づいて、とりわけ、 発明の説明に照らして解釈し、必要に応じてEPC第69条及びこの規定の解釈に関するプロト コルによって、クレームが、暗黙裡にであれ必然的かつ具体的には問題の有効成分に関す 132 133 RalfPerrey「欧州において医薬品に与えられる保護の特異性」AIPP、Vol.54 No.8、2009 469頁 別添資料III、欧州法律事務所向け質問16への回答 - 108 - るものであるとの結論に到達可能であることを条件に」十分であると最終的に判示した。 ただし、本件のような場合には、SPCの付与を拒絶することも可能である旨指摘した。 この判決によってECJは、構造式は、Medevaによって要求される特許クレーム中で製品「特 定」として十分であることを明らかにした。さらに、ECJは、機能が製品を「特定」するの に十分となるための条件を示した。しかし、実際には、ECJの抽象的な要件を適用するのは 大変である。それらは解釈の余地を残しているからである。 その他の判例等 ・C-31/03134 Pharmacia Italia v Deutsches Patentamt (2004) 「Cabergoline」を活性成分とする医薬品「Dostinex」TMの販売承認に対するSPCが、 過去に「Cabergoline」を活性成分とする獣用医薬品「Galastop」TMに対する承認があ ったことを理由に認められなかった事例。 ・C-130/11135 Neurim Pharmaceuticals v Comptroller General of Patents (1991) 先に付与された販売認可の対象となる医薬品が基本特許の保護範囲に含まれない場合において は、先の販売認可の対象となる医薬品が同一の活性成分を含んでいたとしても、その販売認可が 存在するという理由によってSPC付与の可能性がなくなるものではない。 ・C-181/95136 Biogen v SmithKline Beecham (1997) 医薬製品が複数の基本特許によって保護されている場合、基本特許のそれぞれの保 有者に対してそれぞれの基本特許に対して一つのSPCが認められるとした事例。 ・C-202/05137 Yissum Research & Development Company of the Hebrew (2007) Article 1(b) of Regulation No 1768/92で規定される「製品」(”product”)は有 効成分(”active substance”または”active ingredient”)によって規定され、用 途によっては規定されないことを示した事例。 134 「JUDGMENT OF THE COURT (Fifth Chamber)19 October 2004」InfoCuria http://curia.europa.eu/juris/document/document.jsf?text=&docid=49232&pageIndex=0&doclang=en&mode=lst&dir=& occ=first&part=1&cid=114698#Footnote1[最終アクセス日2015年2月23日] 135 「欧州連合司法裁判所,第二医薬用途発明の特許権の存続期間延長が可能であると判決」JETROデュッセルドルフ事務所 http://www.jetro.go.jp/world/europe/ip/pdf/20120721.pdf[最終アクセス日2015年2月11日] 136 「Judgement of 23 Jan 1997, C-181/95 (Biogen)」IP Curia.eu http://www.ipcuria.eu/details.php?t=1&reference=C-181/95[最終アクセス日2015年2月23日] 137 「ORDER OF THE COURT (Eighth Chamber)17 April 2007」 http://curia.europa.eu/juris/showPdf.jsf;jsessionid=9ea7d2dc30dddd26e5760ba3478ba929983fefd0804c.e34KaxiLc 3qMb40Rch0SaxuPb3z0?text=&docid=61626&pageIndex=0&doclang=en&mode=lst&dir=&occ=first&part=1&cid=145430[最 終アクセス日2015年2月23日] - 109 - ・C-207/03138 Novartis v Comptroller General of Patents(2005) スイスでなされた医薬品に対する販売承認が自動的にEEAでの販売承認としてみな されることが示された事例。 ・C-322/10139 Medeva BV v Comptroller General of Patents (2011) 問題となっている製品・製品の組合せと基本特許の範囲外の成分を組合せた製品を 対象とする販売承認に基づいて、当該製品・製品の組合せにつきSPC を付与すること はできる(クレームA+B、販売承認A+B+C、SPCの対象A+B) ・C-431/04140 Massachusetts Institute of Technology (MIT) case (2006) 既知の活性成分と不活性な添加剤の組合せからなる新規な剤型(”a novel formulation”)はSPCで保護されないという事例。 ・C-442/11141 Novartis AG v Actavis UK Ltd (2012) 製品AについてSPCが付与されれば、同SPCの保有者は、基本特許において可能であ った範囲につき、AとBからなる配合剤に対して侵害訴訟を提起する権利を有する。 ・C-443/12142 Actavis Group v Sanofi (2013) 基本特許が保護する活性成分について既にSPCを取得しているとき、SPCが、当該基 本特許がそれ自体を保護するものではない活性成分と組合せた医薬品についても特 許存続期間延長効果をもたらすので、基本特許が保護する活性成分と他の活性成分と を組合せた医薬品についての別のSPCを追加取得することによって、当該活性成分の みに基づく当該延長効果を更に延長することは許されない。 ・C-484/12143 Georgetown University v Octrooicentrum Nederland (2013) 幾つかの異なる製品それぞれがそれ自体当該「基本特許」によって保護されており、 138 「JUDGMENT OF THE COURT (Second Chamber)21 April 2005」 http://curia.europa.eu/juris/showPdf.jsf?text=&docid=58140&pageIndex=0&doclang=en&mode=lst&dir=&occ=first& part=1&cid=122243[最終アクセス日2015年2月23日] 139 「欧州連合司法裁判所,医薬品特許の保護期間延長に関する判決」JETROデュッセルドルフ事務所 http://www.jetro.go.jp/world/europe/ip/pdf/20111126.pdf[最終アクセス日2015年2月11日] 140 「Judgement of 4 May 2006, C-431/04 (Massachusetts Institute of Technology)」 http://ipcuria.eu/details.php?t=1&reference=C-431/04[最終アクセス日2015年2月23日] 141 「欧州連合司法裁判所,医薬品特許の保護期間延長に関する判決」JETROデュッセルドルフ事務所 http://www.jetro.go.jp/world/europe/ip/pdf/20111126.pdf[最終アクセス日2015年2月11日] 142 「欧州連合司法裁判所,特許権の存続期間延長の要件の解釈について3件の予備的判決を下す」JETROデュッセルドルフ事務 所 http://www.jetro.go.jp/world/europe/ip/pdf/20140114.pdf[最終アクセス日2015年2月11日] 143 「欧州連合司法裁判所,特許権の存続期間延長の要件の解釈について3件の予備的判決を下す」JETROデュッセルドルフ事務 所 http://www.jetro.go.jp/world/europe/ip/pdf/20140114.pdf[最終アクセス日2015年2月11日] - 110 - 販売承認を受けた医薬品に含まれている場合には、原則として、当該「基本特許」に 基づき、それらの幾つかの異なる製品ごとにSPCを取得することが可能。 ・C-493/12144 Eli Lilly and Company Ltd v Human Genome Sciences Inc. (2013) SPCの保護対象となるべき活性成分が必ずしも基本特許のクレーム中で構造によっ て特定される必要はなく、欧州特許のクレーム解釈に係るEPC第69条及びその解釈に 関する議定書に基づいて、当該基本特許のクレームが問題の活性成分に黙示的である が必然的にそして具体的に関連すると判断されれば、当該基本特許との関係でSPCの 保護対象たり得る(前述)。 なお、基本特許におけるクレームされた活性成分、販売承認(Marketing Approval;MA) された活性成分製品、及び補充的保護を受けようとする活性分(SPCの対象)、そしてそれ らSPCが許可されるか否かの関係については、参考資料III中欧州法律事務所向け質問Q3に 記載の表も参照されたい。 ・ジェネリック製造業者の市場参入についての判例について Olainfarm - C-104/13145 OlainfarmにおいてECJは、二つの別々の問題に決定を下した。まず、EU指令2001/83 第10条2a)項で使用される「リファレンス医薬製品」という用語を更に定義する必要が あった。さらに、ECJは、リファレンス医薬製品についてのMAの保有者は、リファレン ス医薬製品のジェネリックのMAに反対する個別の権利を有しているかどうかを決定し なければならなかった。 EU指令2001/83第10条によると、ジェネリック製造業者は、ジェネリック製品につい てのMAを得るために、ある一定の条件の下で、オリジナル製品のMAのために実施され た試験や研究を参照できる。このオリジナル製品は「リファレンス医薬製品」と呼ば れている。このようなリファレンス医薬製品も、EU指令2001/83第10条aに基づいてMA が付与されている医薬製品といえるかどうかは明らかでない。医薬製品の活性成分が EUにおいて十分に確立されている場合、後者の規定は、MAの要件を容易にする。EU指 令2001/83第10条2a)項は、EU指令2001/83第6条及び第8条により承認された医薬製品の みを指す。 ECJは、EU指令2001/83第10aによる「十分に確立された用途」-MAもEU指令2001/83 第10条2a)項でカバーされているとの判決を下した。したがって、リファレンス医薬製 144 「欧州連合司法裁判所,特許権の存続期間延長の要件の解釈について3件の予備的判決を下す」JETROデュッセルドルフ事務 所 http://www.jetro.go.jp/world/europe/ip/pdf/20140114.pdf[最終アクセス日2015年2月11日] 145 別添資料III、欧州法律事務所向け質問16への回答 - 111 - 品もEU指令2001/83第10条aの促進要件によって承認された医薬製品となり得る。 第二の問題はリファレンス製品のジェネリックのMAに反対する個別の権利に関する もので、これについては、ECJは、リファレンス医薬製品についてのMAの所有者は、リ ファレンス医薬製品のジェネリックのMAに異議申立てをする権利を有するとの判決を 下した。ECJは、リファレンス医薬製品のMAの所有者は「他の医薬製品の製造業者が、 当該他の医薬製品についてのMAを得るために、前臨床試験及び臨床試験といった試験 や治験を自ら行うのではなく、前者の製品についてのMAの申請に関する書類に含まれ る前臨床試験及び臨床試験の結果を参照する権利があることを受け入れることが求め られている」ことを考慮し、この考慮に基づいてこの判決を行った。ECJの見解では、 これは、参照のための条件が遵守されていることを要求するリファレンス医薬製品に ついてのMAの所有者の権利につながる。 ECJの判決は、リファレンス医薬製品という用語の解釈を更に明確にし、既にそれぞ れのドイツの法律の下で認識されていた異議を申し立てる権利を確認するものである。 ・英国の制度について 英国において、EEC規則1768/92の公布を受けて、英国特許庁が、当時の1977年特許法を 適 用 し て 補 足 保 護 証 明 の 手 続 を 実 施 で き る よ う に 、 1992 年 に 、 特 許 規 則 Patents Regulations 1992 (SI 1992/3091)と特許規程Patents Rules(SI 1992/3162)が、1993年 にそれを改定する特許規程Patents Rules (SI 1993/947)が制定され、また、EC規則1610/96 の公布を受けて、同様に、1996年に、特許規則Patents Regulations 1996(SI 1996/3120) が制定され、1997年に、上記二つの特許規程を置き換える形で、特許規程Patents Rules (SI 1997/64)が制定された。2007年12月17日に、上記特許規則を置き換える形で、特許規則 Patents Regulations 2007(SI 2007/3293)によって1977年特許法に第128B条が挿入され、 EEC規則1768/92及びEC規則1610/96に基づく補足保護証明が英国特許法上明記され、別表4A に条文の対応関係等が示されている。 ・ドイツの制度について ドイツでは、補足保護証明に関する準用する条文及び審査手続等が規定されている特許法 第16a条及び第49a条が、1993年3月23日の特許法改正法により導入され、その後数回の改正 を経て、最近では2007年9月5日に改正されている。そのほか、特許法第30条第1項、第81 条、及び第142条、並びに特許規則Ⅴ部(第19条~第21条)、特許料金法第3条及び第7条、 ガイドライン146等が関係する。 146 「Richtlinien für das Prüfungsverfahren bei ergänzenden Schutzzertifikaten」 http://www.deutsches-patentamt.de/docs/service/formulare/patent/p2799.pdf[最終アクセス日2015年2月11日] - 112 - (6) 医薬品の販売承認の流れ 欧州域内の医薬品の承認審査は大きく分けて1)中央承認審査方式と2)各国レベルでの 承認があり、各国レベルでの相互認証審査方式(Mutual Recognition Procedure)は加盟国 で得られた承認を他の加盟国が承認する方式で、分散承認審査方式(Decentrakused Procedure)は承認を得たい他の加盟国と共通認証により承認する。 EMA(欧州医薬品庁;European Medicines Agency)は、中央承認審査方式(centralised procedure)で人用又は動物用医薬品の欧州連合(EU)内での販売承認申請に対し科学的評 価を担当している。 中央審査方式下において、製薬会社はEMAにのみ販売承認申請を提出する。欧州委員会に より販売承認が付与された場合、全EU加盟国に加え欧州経済領域(European Economic Area: EEA)諸国であるアイスランド、リヒテンシュタインとノルウェーにも同時に販売承認が与 えられる。 法律により、販売承認を受理した場合のみ、製薬会社は医薬品の市販を開始できる。 臨 床試験に関しては、現在、その認可は加盟国レベルで規制されている。臨床試験における EMAの主な役割は、データの評価、GCP及びデータベースの管理である147。図表Ⅳ―6に中央 承認審査方式による販売承認の流れを示す。 147 「Clinical trials in human medicines」EMA http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/special_topics/general/general_content_000489.jsp&mid=WC 0b01ac058060676f[最終アクセス日2015年2月11日] - 113 - 【図表Ⅳ―6】中央承認審査方式による販売承認の流れ EMAにおける承認申請の概要は以下のとおり148である: ①適格性の要請の送付(Submission of eligibility request) ②申請書出願意思の届出(Notification of intention to submit an application) 審査担当官(ラポーター)の任命(Appointment of rapporteurs) ③事前相談(Pre-submission meeting) ④申請書の提出(Submission of the application) ⑤科学的評価(Scientific evaluation) ⑥ヒト用医薬品委員会(Committee for Human Medicinal Products: CHMP)の評価意 見書(CHMP scientific opinion) 148 「Clinical trials in human medicines」EMA http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/special_topics/general/general_content_000489.jsp&mid=WC 0b01ac058060676f[最終アクセス日2015年2月11日] - 114 - ⑦販売承認に関する欧州委員会の判断(European Commission decision on the marketing authorisation) ・ジェネリック医薬品に関して EMAはEUにおけるジェネリック医薬品の販売承認審査を行う責任があり、次の場合、EMA で審査が行われる:1)先発医薬品がEMAにより中央承認審査で承認された、2)ジェネリッ ク医薬品が重要な技術革新や患者に利点をもたらす。 先発医薬品から活性成分の安全性及び効能に関する情報が入手可能なため、通常、ジェネ リック医薬品会社は、1)医薬品の品質に関する情報、2)ジェネリック医薬品が生体内に おける活性成分濃度が先発医薬品と同じレベルになることを証明が必要になる。ジェネリ ック医薬品の承認後、全ての医薬品について、EMAはその安全性を監視する149。また、EMA はジェネリック医薬品の申請時における特許問題に関与しない。 欧州規則No726/2004第81条及び欧州指令2001/83/EC第126条には、医薬品販売承認機関 (規制当局)は、欧州規則と欧州指令に記載された理由以外で、医薬品の承認販売を拒絶、 保留、取消しすることはできない旨、規定されている。そして、欧州規則と欧州指令では、 医薬品の審査は、品質、安全性、有効性に関わる科学的基準(criteria)に基づいて行われ なければならず、これらの基準は公衆衛生に配慮されたもので、それ以外の基準を考慮し てはならないとされる。(EUパテントリンケージPHARMA SECTOR INQUIRY final report, p.130, EUROPEAN COMMISSION, 8 July 2009より) (7) 承認事項の(一部)変更の承認申請 販売承認済みの内容の一部変更は可能であり、規則に説明されている。変更は、そのリ スクに基づいて、タイプIA、IB、II及び適用拡大150に分けられている。図表Ⅳ―7に一部変 更の種類を示す。 149 「Generic medicines」EMA http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/special_topics/document_listing/document_listing_000335. jsp&mid=WC0b01ac0580514d5c[最終アクセス日2015年2月11日] 「Questions and answers on generic medicines」EMA http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Medicine_QA/2009/11/WC500012382.pdf[最終アクセス日 2015年2月11日] 「Data exclusivity / Generics / Biosimilars: Regulatory and procedural guidance」EMA http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/regulation/document_listing/document_listing_000211.jsp& mid=WC0b01ac0580031b0a[最終アクセス日2015年2月11日] 150 「Human post-authorisation Q&A: Introduction」EMA http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/regulation/general/general_content_000166.jsp&mid=WC0b01 ac0580023399[最終アクセス日2015年2月11日] 「COMMISSION REGULATION (EC) No 1234/2008of 24 November 2008」,Official Journal of the European Union http://ec.europa.eu/health/files/eudralex/vol-1/reg_2008_1234/reg_2008_1234_en.pdf[最終アクセス日2015年2月 11日] - 115 - 【図表Ⅳ―7】一部変更の種類 種類 内容 IA 大きな変更(major variation)であり、品質、安全性、効能に大 きな悪影響を与える可能性のある変更(ただし下記の販売承認は除 く)。医薬品市販承認取得者(MAH)は、規制庁のウェブサイトに提 示された提出期限までに必要書類を提出。ただし、緊急安全使用制 限(Urgent Safety Restriction)に関する変更申請は、直ぐに提 出しなければならない。いかなる場合であっても15日以内に規制庁 に申請する必要がある。 IB 医薬品の品質、安全性あるいは効能といった製品情報にわずかな悪 影 響 を 与 え る 、 又 は 全 く 与 え な い よ う な 軽 微 な 変 更 (minor variation) で 、 施 工 前 の 事 前 承 認 は 必 要 と さ れ て い な い ( ‛ do-and-call’ process)。さらに、タイプIAはその提出時期でタイ プIAIN(施工後、直ちに通知/提出する必要のある変更)とIA(施 工直後に提出しなればならないような変更ではなく、12か月以内に 提出)に分類される。 II タイプIA、II及び販売承認の拡大に該当しない軽微な変更であり、 施工前に規制庁に通知する必要がある。規制庁による施工前の変更 の可否の判断に30日間待つ必要がある(‛tell, wait and do’ procedure)。 適用拡大 その最初の販売承認の場合と同じ手順で評価される。拡大申請が必 要な変更の主なカテゴリーは、1)原薬への変更、2)投与濃度、形 態及び経路の変更である。タイプIIも内容によっては、販売承認の 拡大に該当する場合がある。 (8) データ保護 先発医薬品の最初の承認から8年間は、いわゆる「データの保護(data exclusivity)」 期間とし、その後、販売承認を得るために、ジェネリック医薬品の適用を申請することが できる。 また、先発医薬品の最初の承認から10年間は、いわゆる「販売保留期間(Market protection period)」とし、その後、承認されたジェネリック医薬品は市販可能になる。 同保護期間は、規則(EC)726/2004の第14(11)条(Article 14(11) of Regulation (EC) No 726/2004)の規定により、中央承認審査で承認された製品に適用される。 - 116 - 指令2001/83/ECの第10(1)条(Article 10(1) of Directive 2001/83/EC)の第4サブパラ グラフに基づき、10年間の販売保留期間は、既存の治療法との比較において、有意な臨床 学的利益をもたらす新規治療適応症の承認に対し1年間の延長が可能である。販売保留期間 の延長は、先発医薬品のグローバル販売承認(global marketing authorisation)に適用 される。したがって、ジェネリック医薬品は、新規治療適応症の有無にかかわらず、11年 の期間満了まで上市されない。また、この期間延長の申請は、最初の販売承認が付与され てから最初の8年の間に新規適応症が承認されなければならない。これら保護の全期間は、 11年を超えることはできない。したがって、この指令2001/83/ECの第6(1)条(Article 6(1) of Directive 2001/83/EC)の意味する範囲内で1度だけ「グローバル販売承認(global marketing authorisation)」ごとに使用できる。さらに、医薬品のデータ保護の期間中、 この医薬品の前臨床及び臨床ファイルに含まれているデータ及び書類の閲覧やEU内若しく は第三国における情報公開法を介して得たデータは、生物学的に同等であることを示すた めの他の製品の安全性及び効能を確認する手順において、指令2001/83/ECの第10条 (Article 10 of Directive 2001/83/EC)の枠組みや他の手順(Articles 8(3),10a or 10b) 下であろうと他の申請者や規制庁に使われることはない。 (9) 農薬の販売登録の流れ EUにおける農薬の規制システムは、1)EUでの評価による農薬原体の承認と2)各加盟国 による農薬製剤の登録の2過程がある。しかし農薬製品の認可に対し、ゾーン域内の相互承 認が導入されている。 全ての農薬原体及び製品は規則(EC)1107/2009(Regulation (EC) No 1107/2009)に従う。 ・農薬原体(活性成分)について 申請者は、基本情報、物理化学的性状、分析方法、毒性及び代謝試験、植物、飼料及び 食品残留試験、環境動態及び挙動ならびに環境毒性試験からなるデータ要求項目に従って 実 施 し た 全 て の デ ー タ を 提 出 し な け れ ば な ら な い 。 デ ー タ 要 求 項 目 : Document SANCO/10181/2013 – rev. 2.1, 13 May 2013: Guidance document for applicants on preparing dossiers 承認は、審査担当(ラポーター)加盟国(Rapporteur Member State: RMS)に全データ を提出後、次のような手順を経て行われる151: 151 「Approval of active substances」European Commission http://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/approval_active_substances/index_en.htm[最終アクセス日2015年2月 11日] - 117 - ・RMSが評価書草案(Draft Assessment Report :DAR)を作成 ・全加盟国がDARをピアレビュー ・欧州食品安全機関(European Food Safety Authority:EFSA)がDARに対する意見/ 結論を発表 ・フード・チェーン及び動物の健康に関する常設委員会(Standing Committee on the Food Chain and Animal Health)が承認、非承認について投票 ・委員会による採択 ・EU官報に公示 この手順には2年半から3年半を要するが、この期間は活性成分等の難しさで大幅に変わ ってくる。最初の承認後、10年間は活性成分のデータ保護期間に相当し、再評価は10年ご とに行われる。 ・農薬製品について 活性成分の承認後、加盟国は申請者によって提出された全データを評価し、製品販売承 認を発行することができる。データ要求項目:Document SANCO/10181/2013– rev. 2.1, 13 May 2013: Guidance document for applicants on preparing dossiers しかし規則(EC)No 1107/2009は、ゾーン域内相承認(第33-第39条)及び相互承認(第40第42条)の2種類の基本的な方法を提示している。また、これらは、特定の直接的に関与す るタイムラインと手順があり、下記のようにEUガイダンスで別途詳述されている。 規則(EC)No1107/2009において、ゾーン域内承認は、製品の承認あるいは承認の変更のた めの標準的な手順であり、移行措置後の2011年6月14日以降の全申請に対して適用する。ゾ ーン域内承認手順は、製品の再登録を容易にするために指令91/414/EEC下で開発された自 発 的 再 登 録 ワ ー ク シ ェ ア リ ン グ 手 順 ( voluntary re-registration work-sharing procedure)と同様である。可能な限り、この自主的手順は、両プロセス間のスムーズな移 行を可能にするために、規則(EC) No1107/2009のゾーン域内承認手順と整合性を持たせた。 相互承認は、加盟国での全承認に適用し、指令91/414/EECを遵守し、この指令又は規則 (EC)No1107/2009のいずれかで付与される。 CRD(Chemicals Regulation Directorate;英国化学物質規制委員会)では、植物保護製 品に関する欧州の法規制(規則(EC)No1107/2009)が2011年6月14日に発行され、英国でも 直接適用される。この法規制は、スコットランドと北アイルランドにおける独立した同様 の法規制とともに、英国でPlant Protection Product Regulations 2005により施工された 植物保護製品の旧EU法規制(Council 指令91/414/EEC)に置き換わった。 規則(EC)No1107/2009は、直接英国に適用されるが、各国の法規制は、その操作を支える - 118 - ため、また以前の手数料の法に代わる新しい手数料及び料金の導入のため、必要であった。 これらの新規定は、以下の法規制152で施工された: Plant Protection Products Regulations 2011; Plant Protection Products Regulations (Northern Ireland) 2011; and Plant Protection Products (Fees and Charges) Regulations 2011 ド イ ツ で は 、 植 物 保 護 製 品 は 、 BVL ( Bundesamt für Verbraucherschutz und Lebensmittelsicherheit; 連邦消費者保護食品安全庁)で承認された場合のみ市販又は輸 入される。通常の手順とは別に、植物防疫法の第15条(Art. 15 of the Plant Protection Act)に従って、その決定がEU手順(Art. 15c PflSchG)にのっとって行われなかった活性 成分を含む製品の場合又は製品が既に他の加盟国で承認(Art.15c PflSchGに従った相互承 認)されている場合の手続を簡素化するために、暫定的な認可が付与される。 規則(EC)No1107/2009は、現行法を構成し、2011年6月14日以降直ちに発行される。しか し、規制には多くの経過措置が含まれている。例えば、カットオフの施行日にまだ処理が 終了していない承認申請に対しては、旧法規制に従って処理が継続される。 2011年6月14日以降、国内法の基盤は、植物防疫保護製品の市販の認可あるいは承認に関 して直ちに発行される欧州連合(EU)の条項の暫定的実施に関する法律(the act on provisional implementation of provisions in the European Union)で構成される(経 過法transitional law)。 はじめに、この経過法(transitional act)は、現行の植物保護法(Plant Protection Act) と同時期に有効である。どちらも再編の植物保護法に関する法律により、後に置き換えら れる(「新植物保護法」“new Plant Protection Act“)153。 ・ジェネリック農薬の販売登録について 登録のプロセスは、非ジェネリック農薬と同じである154。また、CRD及びBVLは登録審査 において、特許情報を使用することはなく、また、特許問題に関与しない。 152 「The Plant Protection Products Regulations 2011」UK http://www.legislation.gov.uk/uksi/2011/2131/pdfs/uksi_20112131_en.pdf[最終アクセス日2015年2月11日] 153 「Authorisation procedure for plant protection products」Federal Office of Consumer Protection and Food Safety http://www.bvl.bund.de/EN/04_PlantProtectionProducts/01_AuthorizationReviewActSub/PlantProtectionProducts_ authorizationReviewActSub_node.html[最終アクセス日2015年2月11日] 154 「GUIDANCE DOCUMENTON THE ASSESSMENT OF THE EQUIVALENCE OF TECHNICAL MATERIALS OF SUBSTANCES REGULATED UNDER Regulation (EC) No 1107/2009」,European Commission Health and Consumers Directorate-General http://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/guidance_documents/docs/wrkdoc23_en.pdf[最終アクセス日2015年2月 11日] - 119 - (10) 販売登録の(一部)変更の登録申請 適用拡大、対象作物の拡大などが可能である155。 (11) データ保護 指令(EEC)91/414にリストされた保護された試験は、新規活性成分については発行日か ら10年間、既存活性成分については発効日から5年間保護される156。 (12) 登録情報の公示 農薬の原体の通知は欧州(EC)で行われる157。販売承認の第三者に対する公示は、販売 承認の許可がされた国の管轄官庁158が行う。 (13) 試験研究のための実施行為に関する特許権侵害の免責規定 ・EUでの規定 (指令(EC)2004/27)Article 10.6に、試験研究とトライアルは特許権又は医薬品に対す るSPCの侵害にならない旨規定されている。 ・英国での規定 特許法第60条(i)に医薬品の販売許可のための特許発明の内容に関わる実験目的で行わ れる行為が特許侵害を構成しない旨記載されている。 ・ドイツでの規定 特許法第11条に医薬品の販売許可のための特許発明の内容に関わる実験目的のための行 為に対しては特許権の効力が及ばない旨規定されている。 155 「The Applicant Guide Contents: UK Guidance」HSE http://www.pesticides.gov.uk/guidance/industries/pesticides/topics/pesticide-approvals/pesticides-registra tion/applicant-guide/the-applicant-guide-contents-uk-guidance[最終アクセス日2015年2月11日] http://www.bvl.bund.de/EN/04_PlantProtectionProducts/12_Fachmeldungen_EN/2011/Changes_authorisation_proced ure.html[最終アクセス日2015年2月11日] 156 「Changes to the authorisation procedure for plant protection products」Federal Office of Consumer Protection and Food Sagery http://wcropchemicals.com/wp-content/uploads/2012/11/Shanghai-2012-EU-Pesticides-Market-and-Regulations1.p df[最終アクセス日2015年2月11日] 157 「Pesticides database」EC http://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/pesticides_database/index_en.htm[最終 アクセス日2015年2月11日] 158 英国特許法翻訳 http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/england/tokkyo.pdf[最終アクセス日2015年2 月11日] ドイツ特許法翻訳 http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/germany/tokkyo.pdf[最終アクセス日2015年2 月11日] - 120 - 3.韓国 韓国では、医薬品・農薬とように、許可又は登録に必要な有効性、安全性等の試験が長 期間所要される場合、実質的に特許権による独占権を享有する期間が短くなるため、5年の 範囲内で当該医薬品・農薬の特許権存続期間を延長することで、他の製品の特許権存続期 間と衡平性を合わせるため、1986年12月31日の法律改正で、特許権存続期間延長の制度が 導入されたが(旧特許法第53条第2項ほか)、これは日本の政令に相当する大統領令で定め られる特許発明の対象その他の要件に従って、特許庁長が延長申請を審査し、延長を承認 するという制度であった。 その後の改正により、特許権者が特許期間の延長登録出願を行い、その出願を審査官が 審査し、登録査定や拒絶査定を行うという手続を導入し、さらに延長登録の無効審判制度 も規定された。その後さらに、韓国と米国の間での自由貿易協定(FTA)の締結に伴って、 韓国特許法の改正法が韓米FTAの発効した2012年3月15日に施行された。 韓国の過去の存続期間延長制度は米国、ヨーロッパよりも日本の制度と類似していたが、 2013年の特許法施行令の改正以後、米国、ヨーロッパの制度と類似するものとなり、日本 の制度とは多少差が生じた。例えば、日本最高裁平成21(行ヒ)第326号の見解とは異なり、 国内では新たな剤形について追加で許可を受けても、以前に許可された製品と有効成分が 同一であれば、追加の存続期間延長は許容されないという点で差がある。 (1) 延長登録の理由となる製品(特許法施行令第7条159) 延長の理由となる製品は、人又は動物用医薬品(薬事法第31条第2項・第3項又は第42条 第1項)、農薬(農薬管理法第8条第1項、第16条第1項又は第17条第1項)である。 (2) 延長される期間160 臨床試験又は農薬登録に必要な試験期間と行政処理期間の合計で、5年を限度として延長 が認められる(特許法第89条)。また、試験前、待機期間は延長期間に参入せず、実際試験 した期間のみ延長期間に参入される。なお、外国で実施する臨床試験の場合、韓国におけ る行政検討期間のみが認定161される。 審査遅延に基づく延長期間(特許法第92条の2~5)と、許可等に基づく延長期間は合算 されない。 159 韓国特許法施行令(http://choipat.com/menu31.php?id=15&category=0&keyword=[最終アクセス日2015年2月11日]) 韓国特許法(http://choipat.com/menu31.php?id=14&category=0&keyword=[最終アクセス日2015年2月11日]) 161 根拠規定は、 「特許権存続期間の延長制度運用に関する規定(特許庁告示第2012-34号、2012.10.22. ,一部改正)」 第4条 160 - 121 - (3) 延長できる特許(特許法施行令第7条)162 最初に許可を受けた、新物質(薬効を現わす活性部分の化学構造が新しい物質)を有効 成分とする医薬品又は農薬(又は原体)に関連した全ての特許(化合物、用途を限定した 組成物、製造方法、剤形の発明) (4) 申請 特許発明を実施するために他の法令の規定によって許可や登録等を受けた場合、その許 可又は登録等を受けてから3か月以内かつ特許権満了6か月前に、特許権者が出願を行わな ければならず、共有に係る特許権は共同で出願しなければならない(特許法第90条)。 (5) 審査 審査官が出願審査を行う(特許法第91条)。拒絶査定を受けた者は、その査定に不服があ るときは拒絶査定不服審判を請求することができる(特許法第132条の3)。 (6) 存続期間が延長された場合の特許権の効力 承認された物及び用途の特許発明の実施行為に限る(特許法第95条)。特許法第95条の法 文句上、追加承認された用途や第三者が受けた承認に関わる用途は含まれないと解釈され る。しかし、ここで「用途」は「許可を受けた有効成分の機能・効果」を意味し、これが 同一であれば、用法・用量、製法などが異なる実施の形態に対しても、延長された特許権 の効力は及ぶ。 ・効力に関する最近の判例 侵害差止仮処分事件(ソウル中央地方法院2009年3月19日言渡2009カ合235)は、用量が 異なる同一用途のジェネリック製品に対して、延長された特許権の効力を認めた。 ・ジェネリック製品の市場参入に関する最近の判例 ファイザーのリリカ製品に関わる特許侵害差止仮処分事件(ソウル中央地方法院2014年2 162 「PTE出願の対象になる「新物質」の範囲を具体的にどこまで認めるかは、まだ明確な基準が出ていない状況である ため、今後、韓国特許庁のPTE制度運用に注目する必要がある。 」 (「「新物質」に対する最初の許可などに対してのみ、特 許権の存続期間延長を許容」KIM&CHANG、IP Newsletter、August 2013 http://www.kimchang.com/newsletter/templates/newsletter_jp_august_article06.html[最終アクセス日2015年2月11 日]) - 122 - 月5日言渡2013カ合1717) ジェネリックの製品説明書上の用途は特許を受けた用途と異なるが実際許可を受けた用 途は特許の用途と同一であるという理由で侵害が認められた。 (7) 医薬品の販売承認の流れ 医薬品の販売承認に関する慣例法令を図表Ⅳ―8に示す。 【図表Ⅳ―8】関連法令及び告示 <MFDS回答> ○医薬品許可(届出)関連法令条項及び食薬処告示 ・「薬事法」(法律第12450、2014.3.18)第31条(製造業許可等)、第42条(医薬品等輸入 許可) ・「医薬品等の安全に関する規則」(総理令第1098号、2014.10.10)第4条(製造販売・ 輸入品目の許可申請)、第5条(製造販売・輸入品目申告)、第9条(安全性・有効性に関 する資料)、第10条(基準及び試験方法に関する資料) ・「医薬品の品目許可・申告・審査規定」(食薬処告示第2014-178号、2014.10.31) 図表Ⅳ―9に医薬品製造販売・輸入品目許可(届出)の対象を示す。 【図表Ⅳ―9】医薬品製造販売・輸入品目許可(届出)の対象 ・「医薬品品目許可及び届出解説書(2014.7)」参照 品目許可対象 品目届出の対象 医薬品製造販売(輸入)品目許可 医薬品製造販売(輸入)品目届出 □届出対象医薬品に該当しない医薬品 □届出対象医薬品 1.新薬 1.大韓民国薬典又は食品医薬品安全処長 2.許可取得したことのない新規医薬品 が認める公定書及び医薬品集に載ってい 3.安全性・有効性審査対象の医薬品 る品目。ただし、国内で許可されてない品 -新しい資料提出医薬品:新しい染(異 目は除外 性体)、新しい効能群、新しい組成、新し 2.大韓民国薬典外韓薬(生薬)規格集に載 い投与経路、新しい用法用量、新しい剤 っている品目 型など 3.食品医薬品安全処長が成分の種類・規 -国内に使用例のない新しい添加剤を 配合する場合 格・含量及び処方などを標準化して告示し た医薬品等標準製造基準に合う品目 - 123 - -89年1月1日以降製造(輸入)品目許可 4.食品医薬品安全処長が基準及び試験方 された専門医薬品で、新薬と同一医薬品 法を告示した品目 (剤型が異なる同一投与経路の品目を含 5.安全性・有効性審査対象の医薬品でな む) く、品目許可・申告された品目と有効成分 -「医薬品同等性確保の必要対象医薬品 の種類、規格及び分量(液状剤型の場合は 指定」(食薬処告示)に収載された医薬品 濃度)、剤型、効能・効果、用法・用量が -許可・届出済みの品目と用法・用量は 同一である品目 同一だが、剤型の特殊性が認められた製 剤 4.登載医薬品の安全性・有効性に関する 資料を根拠に申請した医薬品 5.放射性医薬品 6.誤乱用の懸念のある医薬品 7.生物学的製剤、遺伝子組み換え医薬品、 細胞培養医薬品、遺伝子治療剤、細胞治 療剤、人胎盤由来医薬品 8.国際共通技術文書で作成され、許可を 受けた医薬品 ※「医薬品等の安全に関する規則」第5条 9.麻薬 ※「医薬品の品目許可届出・審査規定」第 ※「麻薬類管理に関する法律」第21条 3条及び第25条 ※「医薬品等の安全に関する規則」第4 条 ※「医薬品の品目許可届出・審査規定」 第3条及び第25条 図表Ⅳ―10に医薬品製造販売・輸入品目許可の詳細手順を示す。 - 124 - 【図表Ⅳ―10】医薬品製造販売・輸入品目許可の詳細手順 申請 受付 品目許可 申請 許可・届出対 象、手数料、 cpp検討特許 関係確認など 申請者 (製造業 (輸入)者) ・医薬品審査 調整課 ・6つの地方庁 (医療製品安 全課)など 予備審査 審査 許可申請資料 の要件検討 ・安全性・有効性 ・基準及び試験 方法など ・原料医薬品登 録(DMF)資料 ・新薬・改 良新薬再 審査対象 指定 ・医薬品審査部 ・地方庁有害物 質分析課 ・医薬品審 査調整課 ・6つの地 方庁(医療 製品安全 課)など 医薬品審査調 整課 許可 評価・実態調査 製造施設及び管 理基準評価 ・海外製造所(医 薬品品質課) ・国内製造所 (6つの製造所、 医療製品査察課 等) 図表Ⅳ―11に医薬品製造販売・輸入品目届出の詳細手順を示す。図表Ⅳ―12に医薬品許 可(届出)提出資料を示す。 - 125 - 【図表Ⅳ―11】医薬品製造販売・輸入品目届出の詳細手順 - 126 - 7 2 1 - 資料提出 医薬品 ・安全性・有効性に関する資料 ・基準及び試験方法 ・GMP 資料 許可対象 医薬品 安全性・有効性審査対象医薬 品 新薬 ・基準及び試験 方法 ・生物学同等性 試験資料(該当 する場合、比較 溶出試験資料) ・GMP 資料 ・基準及び試 験方法 ・理化学的同 等性試験資 料 ・GMP 資料 1989 年 1 月 1 日以 降の新薬と同一医 薬品(同一投与経 路を含む) ・基準及び試験 方法 ・生物学同等性 試験資料 ・安定性試験資 料 ・GMP 資料 特殊剤型 医薬品 許可対象 医薬品 ・基準及び試験 方法 ・生物学同等性 試験資料 ・GMP 資料 医薬品同等性確保 必要対象の医薬品 「医薬品同等性確 保必要対象医薬品 安全性・有効性審査対象医薬品 <注射剤等> ・基準及び試験 方法 ・GMP 資料 <錠剤、座剤、カ プセル剤> ・基準及び試験 方法 ・比較、溶出試 験資料 ・GMP 資料 専門 医薬品 ・基準及び試験 方法 ・ 比較溶出試 験資料 ・GMP 資料 単一成分医薬 品として錠剤、 座剤、カプセル 剤 ・基準及び試 験方法 ・GMP 資料 複合成分医薬 品又はシロッ プ剤、液剤など 一般 医薬品 届出対象 医薬品 許可済み(届出)品目と有効成分の種類、規格、分量、剤型、効能・効果、用法・用量が 同一医薬品(ジェネリック医薬品) 【図表Ⅳ―12】医薬品許可(届出)提出資料 (8) 承認事項の(一部)変更の承認申請 ①変更事項、変更内容によって変更申請書、変更事由書と根拠書類を食品医薬安全処(又 は地方庁)に提出 ②申請者が提出する書類 ・申請書 ・許可書(届出書) ・変更事由及びその根拠書類 ・基準及び試験方法変更が必要な場合:基準及び試験方法に関する資料 ・安全性有効性審査が必要な場合:安全性有効性審査に関する資料 ・生物学的同等性試験計画書、生物学的同等性試験、比較臨床試験計画書等 医薬品変更許可(届出)関連法令条項及び食薬処告示条項 ・「薬事法第31条第9項(製造業許可等) ・「医薬品等の安全に関する規則」第8条(許可事項等の変更許可申請等) ・「医薬品の品目許可・申告・審査規定」第3条の2(医薬品の許可申告変更処理) (9) パテントリンケージ ・医薬品特許目録登載手順 ①医薬品品目許可を取得した者(輸入者を含む)で、その該当医薬品の特許権を保有した 者、又は②医薬品品目許可を取得した者(輸入者を含む)で、その該当医薬品の特許権者か ら実施権を取得した者は医薬品特許目録集に該当特許権の登載を申請する。 登載対象の特許権は物質、組成物、剤型、又は医薬的用途に関する特許である。(医薬品 等の安全に関する規則第18条第3項第1号) また該当医薬品の許可事項の中で、主成分及びその規格、原料薬品及びその分量、剤型、 効能・効果及び用法・用量と直接関連する特許権だけが登載できる。(医薬品等の安全に関 する規則第18条第3項第2号) ・特許権者への通知 上記のように特許目録に登載された医薬品を根拠に許可を申請する者は、特許権者と品 目許可権者に通知しなければならない。(医薬品等の安全に関する規則第19条第1項) 食薬処は通知有無を確認し、通知された場合だけに該当医薬品を許可している。この時 に特許の種類による差はない。 食薬処は特許庁によって登録された特許権を基に登載、通知制度を運営していない。別 途特許内容に関して、特許庁と協議したりはしない。 - 128 - ・医薬品特許目録搭載163について 医薬品特許目録登載関連法令条項及びガイドライン164は次のものとなる。 ・「薬事法」第31条の3、第42条の4項 ・「医薬品等の安全に関する規則」第18条 ・「医薬品許可特許連携制度細部運営要領」 以下は医薬品特許目録搭載事項の抜粋である。 1.医薬品特許目録登載対象 ・物質、組成物、剤型、又は医薬的用途に関する特許 ・新薬、新しい剤型、新しい組成、新しい効能効果又は用法用量の医薬品 2.医薬品特許目録への登載 1)登載申請者 ・医薬品品目許可を取得した者(輸入者を含む)で、その該当医薬品の特許権を保有した 者 ・医薬品品目許可を取得した者(輸入者を含む)で、その該当医薬品の特許権者から実施 権を取得した者 2)申請時期 ・品目許可日から30日以内 ・許可を受けてから特許権が登録された場合は特許登録日から30日以内 3)登載基準(要件) ・該当医薬品の許可事項の中で、主成分及びその規格、原料薬品及びその分量、剤型、 効能・効果及び用法・用量と直接関連する特許権 ・該当医薬品の許可事項の中で食薬処長が認めた安全性・有効性及び品質と直接関連す る ・特許権存続期間が残っている ・該当医薬品品目許可が有効である ・特許権者から受けた実施権が有効である 4)登載申請方法及び提出資料 食薬処の医薬品電子申請サイトを通じて申請 <提出資料> ・申請書 163 医薬品特許登載目録 http://medipatent.mfds.go.kr/mfds?cmd=driOLi001[最終アクセス日2015年2月11日] 164 このガイドラインは「食品医薬品安全処ホームページ (www.mfds.go.kr)>法令資料>法令情報>指針、ガイドライン、 解説書」で閲覧できる。 - 129 - ・特許登録原簿写本、登録公告用特許公募写本、特許資料を根拠に作成した特許請求項 に関する説明資料、特許権者と品目許可権者が異なる場合は実施許可書又は契約書、特 許権者が代理人を選任した場合はその証明書類 5)登載申請内容の公開及び第3者の情報提供 登載申請が形式要件(特許権有効、品目許可有効など)を満たした場合はその申請事実を 医薬品特許登載目録集のホームページに公開する。公開事項は品目許可権者、品目名、 特許番号、特許存続期間など。 利害関係者や第3者は意見又は意義提出は可能 6)登載申請内容の変更 登載決定の前に申請者は申請内容を変更できる。 7)登載申請の処理 ・申請内容が登載基準を満たせば、該当医薬品の特許情報を特許目録に登載し、その内 容を医薬品特許目録集に公開する。 ・申請受付から登載申請書の処理期間は45日 8)医薬品許可事項変更及び特許情報変更による特許目録変更 医薬品変更許可や特許登録原簿の特許情報に変更がある場合は変更事項が発生した火か ら30日以内に変更申請をする。 ・韓国の許可特許連携制度における通知制度(医薬品許可特許連携制度細部運営要領)の抜 粋を以下に示す。 1.許可申請事実の通知制度 登載医薬品の安全性・有効性に関する資料を根拠に医薬品の品目許可(変更を含む)を申 請した者は申請日から7日以内に登載医薬品の品目許可を取得した者と特許権者に品目 許可を申請したことを知らせる。 2. 通知制度と品目(変更)許可の管理 1)食薬処は品目許可を取得した者などに対する通知有無に関係なく申請内容を検討す る。ただし、通知義務違反があった事が分かった場合、品目許可の取消しを進める。 2)安全性・有効性審査結果、適合の場合は特許関係確認書に従って、次の条件付で許可 ①登載医薬品に関する特許権が無効又は該当特許権を侵害してないと判断し、通知後に 許可申請 →上記内容の特許関係確認書に根拠し条件付許可、もし訴訟提起、裁判所の判決な どあった場合は直ぐ連絡を求める。もしこのような条件を履行しなかった場合は許可の 取消し - 130 - ②登載医薬品に関する特許権の存続期間が満了した後に販売するために許可申請した場 合 →上記内容を根拠にする条件付許可、もし条件を履行しなかった場合は許可の取消し 3.承認審査(品目許可審査)において食薬処自ら特許情報を用いるのではなく、許可申 請者からの通知有無や当事者ら(許可権者と許可申請者)の確認によって許可を下して いるのが分かる。 4.通知の結果、特許訴訟等が発生した場合は訴訟の間は許可審査は停止される。 (10) データ保護 新薬の場合、 「薬事法」第22条第1項によって製造販売・輸入品目許可日から6年を再審査 期間として規定している。(医薬品等の安全に関する規則第22条第1項)再審査までの間は既 存のデータは保護される。 (11) 承認情報の公示 医薬品許可事項はMFDSホームページ165及びオンライン医薬図書館166に公開している。 (12) 農薬の販売登録の流れ 農薬登録の関連規定は、農薬管理規定第8条~第17条である。 農薬品目登録の手順は次のとおりである。 ・農薬品目登録申請 製造業者又は輸入業者は農薬品目登録申請書に薬効・薬害・毒性・残留性等の試験成 績書を添付し、農薬試料と一緒に農村振興庁長に提出 ・登録申請書類等の検討及び専門委員会の審議 提出書類の検討及び試料検査(国立農業科学院) 農薬専門家で構成された専門委員会(安全性及び生物活性に関する)審議 ・農薬安全性審議委員会の審議 関係部署、消費者・農薬業者・生産者・農業人団体役員、専門家で構成された農薬安 全性審議委員会による審議 165 166 MFDS ウェブサイト (http://ezdrug.mfds.go.kr[最終アクセス日2015年2月11日]) MFDSウェブサイト (http://drug.mfds.go.kr[最終アクセス日2015年2月11日]) - 131 - ・農薬品目登録及び登録証の発行 法第9条第3項各号のいずれか一つに該当しない場合には登録される。 図表Ⅳ―13に農薬登録の流れを示す。 【図表Ⅳ―13】農薬登録の流れ ・農薬再登録制度(農薬管理法第11条規定)について 農薬品目登録の後、10年毎に品目別に新しい情報を通して農薬の安全性を周期的に行政 が確認するための制度(1996年に導入された。) ・農薬の登録審査における特許情報利用の有無 登録審査の手順において、特許情報を利用しない。 ・ジェネリック農薬の販売登録について 新規登録と同一。ただ登録後10年が経過した場合には薬効及び薬害、残留性、毒性試験 成績書が免除される。(ただし、登録済み品目と製造処方が同一な場合に限る。)また、ジ ェネリックメーカーが承認申請した場合は、先発メーカーの過去の申請と原体などと比べ るなど、登録審査中に過去の申請内容と比べる事はない。 (13) 登録事項の(一部)変更の登録申請 一度認められた農薬の販売登録の内容の一部変更の登録申請手続の関連法令は農薬管理 法第13条、同法施行規則第17条である。 ・変更登録項目について - 132 - ①適用対象における病害虫及び農作物の範囲、農薬の使用方法及び使用量 ②品目の製造処方 ・変更登録の手順について -施行規則別紙第19号書式で変更登録の申請(書類及び試料添付) ① 適用対象における病害虫及び農作物の範囲、農薬の使用方法及び使用量を変更する場 合は次の書類を添付 ア. 品目登録証又は製品登録証 イ. 理化学的分析成績書(自社検査成績で代替可能) ウ. 薬効及び薬害試験成績書 エ. 残留性試験成績書 オ. その他に変更内容を証明できる試験成績書(該当変更事項がある場合だけ提出) ② 品目の製造処方を変更する場合 ア. 時間経過による該当性質・状態の変化資料 イ. 登録されたそれぞれの農作物に対して実施した薬効・薬害試験成績書(主剤以 外のその他成分の種類又は投入割合を変更する場合だけ提出する。) ウ. その他成分に関する物質の安全保健資料(主剤以外のその他成分の種類を変更 する場合には提出する。) エ. 人と家畜に対する毒性、環境及び動物・植物に対する影響試験成績書(毒性が 高くなるおそれがあると判断される場合には提出する。) (14) データ保護 10年の試験等のデータの保護期間が認められている。 (15) 登録情報の公示 農薬管理システム167で農薬登録情報を提供している。 次のような情報が提供される。 品目名、一般名、商標名、毒性情報、登録番号、登録日、農作物、適用病害虫、使用 167 RDAウェブサイト(http://epmso.rda.go.kr[最終アクセス日2015年2月11日]) - 133 - 適期及び方法、希釈倍数(10g当たり使用量)、安全使用基準、主成分の含有量(%) (16) 試験研究のための実施行為に関する特許権侵害の免責規定 特許法第96条(特許権の効力が及ばない範囲)に規定され、特許権の効力は、研究又は試 験(「薬事法」による医薬品の品目許可・品目申告及び「農薬管理法」による農薬の登録の ための研究又は試験を含む)をするための特許発明の実施には及ばない。 - 134 - 4. (1) カナダ 延長登録制度の導入 欧州連合―カナダ包括的な経済と貿易協定(EU-Canada Comprehensive Economic And Trade Agreement or CETA)が、昨年2014年9月26日締結されたことによりカナダの知的財 産権法、特に医薬品関連特許権に関する法律(特許権存続期間の延長等)の改正が近い将 来に行われることが予想される。 ・導入が予想される制度概要168について ①「一つの特許権、一回のみ(2項、4項)」 ②「特許出願日から新薬承認日までの期間から5年を差し引いた期間(4項)」 ③「2年ないし5年を超えない期間(4項)」 ④「延長された期間については、輸出を目的とした製造、販売の申出等については、効力 を制限できる(5項)」 ・延長制度導入に関するカナダ国内での議論について 2007年にカナダと欧州連合による首脳会議がドイツ、ベルリンで開かれ双方が更に緊密 な経済連携を目指すための共同調査を行うことに合意した。翌年、2008年10月16日には、 “欧州連合―カナダ間の緊密な経済連携によるコストと利益に関する共同調査報告 (Assessing the costs and benefits of a closer EU-Canada economic partnership169) ” を作成・公表された。カナダと欧州連合は協定交渉の開始及び合意を目指し共同で協議範 囲の選定・作成を行うためのグループを設立し、 “カナダ―欧州連合共同報告書:包括的経 済協定に向けて(Canada-European Union Joint Report: Towards a Comprehensive Economic Agreement170)”を作成。これを受け、2009年5月にカナダと欧州連合双方より包括的経済 と貿易協定の協議を開始するとが発表され、同年10月には第一回の公式協議が開かれた171。 様々な経済・貿易の分野での協議が行われたが、その中に医薬品に関する特許権及び特許 期間に関する協議も含まれており、特にCETA第9.2条(現医薬品に対する特有の保護に関す 168 「Consolidated CETA Text」CETA http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2014/september/tradoc_152806.pdf[最 終アクセス日2015年2月11日] 169 「Assessing the costs and benefits of a closer ER-Canada economic partnership」, EC,Government of Canada http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2008/october/tradoc_141032.pdf[最終アクセス日2015年2月11日] 170 「Canada-European Union Joint Report: Towards a Comprehensive Economic Agreement」, Government of Canada http://www.international.gc.ca/trade-agreements-accords-commerciaux/agr-acc/eu-ue/can-eu-report-can-ue-rap port.aspx?lang=eng[最終アクセス日2015年2月11日] 171 Negotiation Toward a Comprehensive Economic and Trade Agreement (CETA) Between Canada and the European Union (http://www.parl.gc.ca/HousePublications/Publication.aspx?DocId=5431905&File=87) [最終アクセス日2015年2月11 日] - 135 - る規約(Sui Generis protection for Pharmaceutical))に関しては、欧州連合から提案が なされた。欧州連合からの原案に関しては、特許で保護されている医薬品と植物保護製品 で販売承認・認可の遅れの為に権利者が特許有効期間を有効に使用することができない時 に5年を超えない期間の延長(特許権利の復元期間)、また、医薬品が小児用に利用される 場合のさらなる6か月の期間延長を規約することが提案された。 このような提案を歓迎する動きは新薬開発会社外にもあった。特に、今後の雇用創作を 考慮する際に、新薬開発会社が新薬に対して費やす平均投資額に着目し、そして、こうい った新薬開発会社が活躍する他の先進国の特許制度(特に医薬品関連に関する知的財産権 に対する保護制度・整備状況)と比較をした場合に、CETA・欧州連合が要求している規約 文は今までカナダで不整備であった知的財産権に対する保護の強化を目指すものであり、 総合的に考えると望ましいとする意見もあった172。 ただ、カナダジェネリック医薬品協会(Canada Generic Pharmaceutical Association) による調査報告173によると、この提案文章には幾つかの問題が有り、カナダ政府に幾つか の提案を行っている。一つが、今の規約文のままだと、特許期間が最長25年6か月となって しまうこと。そして、もう一つが、この特許期間延長がどの医薬品のどの特許(特に、複 数の特許が医薬品と関連している場合)に対して許されるのか、又は、全ての特許に対し て延長が許されるのか等の規定が明らかではないことが問題となった。これについて、カ ナ ダ ・ ジ ェ ネ リ ッ ク 医 薬 品 協 会 は 、 欧 州 連 合 の 特 許 期 間 延 長 制 度 ( Supplementary protection certificate)、及び米国の制度を例に挙げ、更なる限定、明瞭化が必要だと訴 えた174。 最終的に合意されたCETA第9.2条の文章によると、医薬品が小児科用に転用される際の更 なる6か月の延長に関しての規約文は削除され(この協定上の義務にはしないとの判断であ り、各々の判断により6か月の更なる延長を付け加えることに関しては異議を持たない)、 また期間延長に関しては医薬品に関連する一つの特許(複数特許の場合は申請者が選択) について2年から5年を超えない延期を受けることができることや、その他の細かな限定が 成文化されることとなった175。 172 「IMPROVING CANADA’S DRUG PATENT PROTECTION: GOOD FOR CANADA, GOOD FOR TRADE」 Brian Lee Crowley and Kristina Lybecker http://policyoptions.irpp.org/wp-content/uploads/sites/2/assets/po/the-liberal-renewal/crowley.pdf[最終ア クセス日2015年2月11日] 173 「The Canada-European UnionComprehensive Economic & Trade Agreement」CGPA http://www.canadiangenerics.ca/en/news/docs/02.07.11CETAEconomicImpactAssessment-FinalEnglish.pdf[最終アク セス日2015年2月11日] 174 「The Canada-European UnionComprehensive Economic & Trade Agreement」CGPA http://www.canadiangenerics.ca/en/news/docs/02.07.11CETAEconomicImpactAssessment-FinalEnglish.pdf[最終アク セス日2015年2月11日] 175 CETA第9.2条第4項の一部を下記に抜粋する。 “Each Party shall provide that the period of sui generis protection shall be for a period equal to the period which elapsed between the date on which the application for a patent was filed and the date of the first authorisation to place the product on the market of that Party as a pharmaceutical product reduced by a period - 136 - 欧州での特許期間の延期制度の今までの実績等を考えると、恐らくカナダ政府が2年を延 期の上限にするのではないかという憶測が流れているのは、上記のように延長期間の規約 が成文化されたためかと考える。 こ れ に 対 し て 、 カ ナ ダ 研 究 に 基 づ く 製 薬 会 社 協 会 ( Canada's Research-Based Pharmaceutical Companies)は、「カナダはG7の中で唯一特許権復元制度のない国である。 この特許権復元制度(特許期間延長制度)は、新薬開発会社が長引く制度や政府の承認手 続により失われた期間を最長2年取り戻すことができるようにする制度である。我々は、世 界レベルの科学技術、研究施設、そして基礎基盤を持っている。CETA協定を完了、実現し ていくことがカナダを世界クラスの投資目的地にする第一歩である。我々の知的財産権保 護制度を強化することは、世界的な競争の中でカナダの地位を強化するために重要である。 国際的なリーダーになることは革新的な医薬品やワクチンの研究・開発に対する投資を更 に導くこととなる」176というコメントを公開している。 カナダ・ジェネリック製薬会社協会の会長のジムケオン氏は、CETA合意によりジェネリ ック製薬会社が市場に介入する機会が遅れることを非難し、下記のようなコメントを出し ている。CETA合意によりジェネリック製薬会社の市場介入が遅れることにより“州政府の 厚生政策に対する費用、従業者の医薬品補償保険を後援する雇用者の負担、そしてその他 の自己負担をしなくてはいけないカナダ人の出費が増えることになる。また、特許期限の 延長に関する規約をCETAに含めたことに対してもがっかりしたが、政府が特許期限延長に 対して2年の上限を設けたことに対しては評価する。”177また、この特許期間延長に関して、 “ジェネリック医薬品の輸出やそのための行為”に対してはその効力が及ばないよう例外 を設けたことには満足している178。 現時点での、CETA合意を受けて行われたカナダでの特許法の変更に関しては、昨年の法 改正案Bill C-43に特許法条約に準拠するための法改正が盛り込まれ、2014年12月16日に可 決された(近い未来にこの改正された特許法が施行される予定)。ただ、この法改正案(Bill C-43)には、CETAのその他の義務に準拠するための法改正案(特許期間の延長等)は含ま れてなく、近い未来に、特許法のみならず、特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則 (Patented Medicine (Notice of Compliance) Regulations)や食品及び医薬品に関する 規則(Food and Drug Regulations)の改正を含めて提案・協議されることになると思われる。 of five years. Notwithstanding the previous paragraph, the duration of the sui generis protection may not exceed a period of two to five years, to be established by each Party.“ 176 「Canada’s Research-Based Pharmaceutical Companies (Rx&D) commends the Government of Canada on CETA, and advises prompt implementation」,R&D http://www.canadapharma.org/news.asp?a=view&id=97[最終アクセス日2015年2 月11日] 177 「Canadian Generic Pharmaceutical Association Statement Regarding Agreement in Principle in CETA Negotiations」 CGPA http://www.canadiangenerics.ca/en/news/oct_18_13.asp[最終アクセス日2015年2月11日] 178 「Canadian Generic Pharmaceutical Association Statement Regarding Agreement in Principle in CETA Negotiations」 CGPA http://www.canadiangenerics.ca/en/news/oct_18_13.asp[最終アクセス日2015年2月11日] - 137 - (2) ジェネリック医薬品の算入に関する最近の判例 最近のカナダの特許関連訴訟・判例のほとんどが、特許取得済医薬品(医薬品販売承認) 規則またその運用上から派生してきている訴訟となる。ただ、本規則がどのようにカナダ 厚生省によって運用されているのかという観点からから見た場合、ジェネリックメーカー の市場参入に関する最も重要な判例の一つは、2006年にカナダ最高裁判所における Astrazeneca Canada Inc v Canada (Minister of Health)事件の判決と考える。 この事件は、ジェネリックメーカー、アポテックス社(Apotex Inc.)が、オメプラゾー ル(omeprazole、胃酸抑制薬の一つ)に対してジェネリック版医薬品販売承認申請を1993 年に提出した。アストラゼネカ社(Astrazeneca Canada Inc)は、オメプラゾールを、カ ナダで1989年より1996年までの間のみ販売していた。その後も、カナダにおけるこの医薬 品の販売を停止したにもかかわらず、アストラゼネカ社は、特許取得済医薬品(医薬品販 売承認)規則にのっとり、新たに取得した二つの特許をこの薬品と関連付けてカナダ厚生 省が管理する特許リストに登録し続けた。アポテックス社は、1989年版の薬と生物学的に 同等な薬品をもって医薬品販売承認を申請し、カナダ厚生省より販売承認を受けた。争点 は、カナダ厚生省は正しくアポテックス社に販売承認を交付したのかであったが、これは、 基本的に大きく二つの大きな問題があり、1)ジェネリックメーカーは、医薬品販売許可を 受ける際、特許リストに新たに付け加えられた特許に対して何かしら対処をしなくてはい けないのか、そして、2)特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則第5条(1)項は、ジェ ネリックメーカーが実際に対象としている医薬品(ジェネリックメーカーがコピーしてい る・コピーしようとしている医薬品)のみを参照としているのか、それとも、その医薬品 のいかなる製剤も参照とするのかであった。この判決において、最高裁判所の特許取得済 医薬品(医薬品販売承認)規則の解釈では以下のとおりである。 特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則はジェネリックメーカーが実際にコピーをし ている・あるいはコピーをしようとしている医薬品に関連している特許のみを対象として いるのであって、その後に追加された特許でジェネリックメーカーが何の利益も享受でき ないものは対象としていないということである。結局、アストラゼネカ社の訴えは許され ず、カナダ厚生局がアポテックス社にたいして交付した医薬品販売承認を認める判決を出 した。 この判決以前は、ジェネリックメーカーがジェネリック版の医薬品に対する医薬品販売 承認を申請する際は、そのジェネリック版医薬品が参照する特許取得済医薬品登録に関連 する特許の全てに対して対処しなくてはいけなかったわけだが、この判決後は、カナダ厚 生省による特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則の運用に対するアプローチがこの判 決に沿う形に変わることとなった。 - 138 - ・新薬特許者等が、ジェネリック申請者への訴えを提起して一旦ジェネリックの参入を阻 止した後にそれが覆った場合に、ジェネリック申請者等に生じたいかなる損失をも補填す る責を負う旨の規則<NOC8(1)-(6)>について 一般的な枠組み ジェネリック申請者が特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則第5条(1)(b)にのっとっ て申立通知を提出した場合は、新薬特許者は同規則第6条をもって連邦裁判所にカナダ厚生 省に対してジェネリック申請者にジェネリック医薬品に対する医薬品販売承認を出さない ように指令するよう申請する。この申請により、連邦裁判所が判決を下すまでジェネリッ ク申請者が市場に介入することを阻止し、また、カナダ厚生省でのジェネリック申請者の 申請手続を24か月間(あるいは、連邦裁判所が判定を下すまで)凍結する。 同規則第8条は、裁判所がジェネリック申請者に医薬品販売承認が下されるべきだったと 判断したときに与えられる救済手段である。これに関しては、連邦裁判所による、Apotex Inc. v. Pfizer Canada Inc., 2013 FC 493の判決文内でこの規則がどのように解釈される べきかが説明されている。 “もし新規開発医薬品特許者が[同規則第6条によるジェネリック 医薬品に対する医薬品販売承認]禁止命令申請に失敗した場合、特許に対して侵害している かあるいは特許は無効であるかどうかの判断を裁判所が行っている期間、市場に介入がで きなかったジェネリックメーカーに対して損害賠償により救済をすることを同規則は許し ている。”179この点について、裁判所では、同規則第6条と第8条の関連性を強調している。 なので、同規則第8条に関係する範囲は、同規則第6条をもって示された問題点に関連する ものだけとなる180。なので、この規則第8条をもって損害に対する救済請求をする際に、ジ ェネリック申請者は、二つの要件を証明し満たさなくてはいけない。 ①新規開発医薬品特許者による同規則第6条(1)項の申請(禁止命令(prohibition order)の申請)が却下された、そして、 ②同規則の為に、ジェネリック申請者は市場に参入することが阻まれ期間、ジェネリ ック申請者は損失を被った181。 基本的に、ジェネリック申請者が市場参入を阻まれた期間は、ジェネリック申請者がさ もなければ販売承認を受けた日から、ジェネリック申請者が実際に販売承認を受けた期日 までの期間を示す。 したがって、同規則第8条の観点から見ると、新薬特許者がジェネリック申請者への訴え を提起して一旦ジェネリックの参入を阻止した後にそれが覆ったか否かといった事実は自 体には特に問題はないが、ジェネリック申請者が市場参入を阻まれた期間が法定での係争 179 180 181 Apotex Inc. v. Pfizer Canada Inc., 2013 FC 493, paragraph 6 Apotex Inc. v. Pfizer Canada Inc., 2013 FC 493, paragraph 22 Apotex Inc. v. Pfizer Canada Inc., 2013 FC 493, paragraph 53 - 139 - 期間分延びることになるので、損害賠償額に多少影響が関わってくると考えられる。 ・特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則第8条事件数、及び頻度について 特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則第8条を基に判決文の検索をした結果、286件 (2015年1月1日現在)の判例で、同規則が引用されている。この結果を見ても、カナダで はジェネリック申請者によって損害賠償・救済を求める訴訟がかなりの頻度で訴訟・係争 されていることが分る。 ・特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則第8条係争主要点について 係争点でやはり、問題になってくるのは救済手段、賠償額の評価及び定量化である。 ①救済手段 ジェネリック申請者に対して、特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則第8条において どの様な救済手段が適当かということが、最近のテバ・カナダ社 対 ファイザー カナ ダ社事件(Teva Canada Limited v. Pfizer Canada Inc, 2014 FCA 138)連邦控訴裁判所 により考慮された。この事件は、それまで行われていた様々なバイアグラに関連する訴訟 後に、ジェネリック申請者であるテバ 許者、ファイザー カナダ社(以後、テバ社)が、新規開発医薬品特 カナダ社(以後、ファイザー社)に対して、補償損害賠償に加えて、 懲罰・報復的損害賠償金を求めて起こした訴訟である。この判決で、裁判所は、一般的に 特許権等侵害訴訟では懲罰・報復的損害賠償を裁判所が下すこともあるかも知れないが、 施行されている法律・規則が明示的に、あるいは暗黙的にその様な懲罰・報復的損害賠償 を除外している場合はその範囲ではないという見解を示した。特許取得済医薬品(医薬品 販売承認)規則第8条は、まさに、このとおりであり、懲罰・報復的損害賠償の要求に関し ては却下された。なので、基本的に、同規則第8条で許される救済に懲罰・報復的損害賠償 は含まれない。 ②賠償額の評価及び定量化 賠償額の評価をする際に様々な事実を基に裁判所が考慮・決定するが、近年の判例から、 基本的には下記の5つの工程に沿って裁判所は賠償額の評価・定量化を行う。 (a)賠償責任期間を特定する(関連する期間) (Determine the period of liability [the Relevant Period]); (b)該当する賠償責任期間中の係争医薬品に関連する市場の全体的な規模を特定する (関連する医薬品市場) (Determine the overall size of the market for the relevant pharmaceutical [the Relevant Pharmaceutical Period); - 140 - Market] during the Relevant (c)該当する賠償責任期間中に関連する医薬品市場規模のうちで、ジェネリックメーカ ーたちにより供給されたであろう市場規模を特定する(ジェネリック市場) (Determine the portion of the Relevant Pharmaceutical Market that would have been held by generic manufacturers during the Relevant Period [The Generic Market]); (d)特定されたジェネリック市場のうち、原告者によって供給されたであろう市場規模 を特定する(原告の失った売上量) (Determine the portion of the Generic Market that would have been held by the plaintiff [the Plaintiff’s Lost Volume]);そして、 (e)原告が、特定した原告の失った売上量に対して被ったであろう損害を定量化する (原告の失った純益)(Quantify the damages that would have been suffered by the plaintiff in respect of the Plaintiff’s Lost Volume [the Plaintiff’s Net Lost Profit])。182183184 アポテックス社 対 メルク社事件(Apotex Inc v Merck & Co, 2009 FCA 187)におい ては、特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則第8条(5)項に則り、ジェネリック申請者 が特許権侵害に関与していた証拠を提出しその証拠が、損害賠償額の決定に影響を与えた 一例である。この事件は、アポテックス社がメルク社(Merck & Co)のアレンドロネイト (Alendronate、骨粗鬆症治療薬の一つ)のジェネリック版に対する医薬品販売承認申請手 続上で、アポテックス社が市場介入を阻止されていた期間に対する賠償を請求裁判である。 この件でメルク社は、もしアポテックス社が医薬品販売承認申請を受けていたとしたらア ポテックス社はメルク社の特許を侵害していたので、アポテックス社は同規則第8条(1)項 の損害賠償を受ける資格がない、と主張した。なぜなら、同規則は“特許侵害の開始を早 めないために定められた法定での手続延期による結果からなる損害を、特許侵害者に賄う” という意図ではない、と更に主張した。これは、マルク社が、慣習法(Common Law)の教 義である、“ex turpi causa action non oritur”(ラテン語で、“原告の違法あるいは不道 徳な行為からは訴因は生じない“の意)を加味し、同規則第8条(1)項を解釈するべきであ る185と、訴えた。これについて、裁判所は、“ex turpi causa action non oritur”による 例外は、同規則第8条(1)項には存在しないが、同規則第8条(5)項は裁判所に対して様々な 事実・事情を全体的に、微妙な意味合いを含めて考慮するよう規定しており、また、この 項において、裁判所が特定な事実状況において適切である補償額(無補償も含めて)を評 価する権限を与えている186。なので、ジェネリックメーカーがもし参照している特許済医 薬品の関連特許を侵害していたと裁判所によって認定された場合は補償額が減少されたり 182 183 184 185 186 Teva Canada Ltd. v. Pfizer Canada Inc., 2014 FC 248 Sanofi-Aventis Canada Inc v Teva Canada Limited, 2012 FC 552 Apotex Inc v Sanofi-Aventis, 2012 FC 553 Apotex Inc v Merck & Co, 2009 FCA 187, paragraph 33. Apotex Inc v Merck & Co, 2009 FCA 187,paragraph 38 - 141 - あるいは無補償であるという判断をすることもある187188。 なお、同規則第8条(4)項の定める裁判所が決めるジェネリック申請者に対する補償であ るが、基本的にはジェネリック申請者が同規則により医薬品販売承認の遅れにより市場介 入ができなかったことで被った損失あるいは、その間に上げることができたであろう利益 に対するものである189。 ・市場参入を阻まれた期間について 先にも述べたが、基本的に、ジェネリック申請者が市場参入を阻まれた期間は、ジェネ リック申請者がさもなければ販売承認を受けた日から、ジェネリック申請者が実際に販売 承認を受けた期日までの期間を示す。ただ、テバ カナダ社 対 ファイザー カナダ社 事件(Teva Canada Limited v. Pfizer Canada Inc., 2014 FC 248)においては、この市 場参入を阻まれた期間がいつから始まったかについてが争われた。この事件は、テバ社が、 ファイザー社のヴェンァファクシン(Venlafaxine、鬱病、パニック症等の治療薬の一つ) のジェネリック版医薬品に対する販売承認申請を行い、申立通知(Notice of Allegation) 提出時に、本薬の関連特許の一つの有効期限の終了を待つことに同意したため、市場参入 を阻まれた期間の開始日はその特許の有効期限終了日であるという判断を、裁判所は示し た。また、損害賠償額を考慮する際、裁判所はテバ社に対して、テバ社がジェネリック医 薬品を現実的に市場に提供できたであろうという期日、又はイザー社に対しては、競合他 社がいつ頃市場介入できたであろうかという証拠の提出を要求することにより、市場の大 きさ等の検討を行った。 ・今後の課題について 賠償額の評価及び定量化に関しては、判例で幾つか未解決の部分がある。特に、上記に も示した賠償額の評価・定量化するための5つの工程において、架空のジェネリック市場規 模の算出を裁判所がしなくてはいけないが、例えば、ジェネリックメーカー達が関連医薬 品市場に介入を開始してからジェネリックメーカーがその最大達成可能販売量に到達する までの期間(ramp-up period)に対する考慮・取扱については裁判所により多少意見が分 かれるところもある。その様な中、昨年、2014年10月30日に、アポテックス社 対 サノ フィ―アヴェンティス事件(Apotex Inc. v. Sanofi-Aventis, 2014 FCA 68)の連邦控訴 裁判所による判決がカナダ最高裁判所に控訴され、本年2015年4月14日に口頭陳述が行われ る予定である。これは、カナダ最高裁判所が検討する初めての特許取得済医薬品(医薬品 販売承認)規則第8条における訴訟であり、その動向・最高裁判所の見解については注目が 187 188 189 Apotex Inc v Merck & Co, 2011 FCA 364 at para 37 Apotex Inc v Pfizer Canada Inc, 2013 FC 493 at para 24 Apotex Inc v Pfizer Canada Inc, 2013 FC 493 atparagraph 89 - 142 - 集まるところである。 (3) 医薬品の承認の流れ カナダの医薬品販売承認は、カナダ保健省(Health Canada)の治療製品局(Therapeutic Products Directorate (TPD))が所管している。TPD及び外部の専門家が安全性、効能及び 品質につき審査をし、医薬品レビュープロセスを通過した医薬品のみが販売を認められる 190 。下記は、カナダにおける医薬品承認の流れである。承認申請から承認までに掛かる期 間は、平均18か月である。 図表Ⅳ―14に医薬品の上市前から上市後の流れを示す。 【図表Ⅳ―14】医薬品の上市前から上市後の流れ TPD申請から販売承認までの流れ ①新薬の申請をするためには、新薬承認申請(New Drug Submission)をTPDに提出す る。その際には、医薬品の安全性、効能及び品質に関する情報とデータ、前臨床と臨 床研究、製造、包装及びラベルに関する詳細、副作用等に関する情報も同時に提出す る 必 要 が あ る 。 一 般 的 に 新 薬 の 申 請 者 は 、 カ ナ ダ の 保 健 省 の 特 許 登 録 (Patent 190 「How are drugs reviewed in Canada?」〔カナダ保健省回答参照〕 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/alt_formats/hpfb-dgpsa/pdf/prodpharma/reviewfs_examenfd-eng.pdf〔最終アクセ ス日2015年1月19日〕 - 143 - register)191のために、Form IV patent listを提出する。192 ②TPDは、提出された情報を詳細にわたり審査する。 ③TPDは、潜在的な有効性とリスクを評価するために安全性、効能及び品質に関するデ ータを検討する。 ④TPDは、医薬品のラベルやカタログ等の、医療関係者や患者に提供することが予定さ れている情報をレビューする。 ⑤レビュー後に有益性がリスクを上回ると判断した場合、販売が承認され、Notice of Compliance (NOC)とDrug Identification Number (DIN)が発行される193。 ・特許リストへの登録のための要件について 特許が付与された医薬品に関する規則(NOC)上、新薬の販売承認申請者は、申請時の特許リ スト上の特許が以下のいずれかを含むことを条件として、新薬に係る特許をカナダ保健省 に登録することができる。図表Ⅳ―15に新薬に関する特許の登録の流れを示す。 【図表Ⅳ―15】新薬に関する特許の登録 ―NOC上承認された有効成分に関する請求 ―NOC上承認された製剤に関する請求 ―NOC上承認された用量に関する請求 ―NOC上承認された用途に関する請求 ・ジェネリック医薬品の承認と特許について カナダにおいてジェネリック医薬品を上市するためには、Notice of Compliance(NOC) を取得する必要がある。ジェネリック医薬品は通常、食品と医薬品に関する規則(FDR) C.08.002.1上に規定されているAbbreviated New Drug Submission (ANDS;後発品申請)にて、 販売承認を申請することができる。 191 Paten register [カナダ保健省回答]http://pr-rdb.hc-sc.gc.ca/pr-rdb/index-eng.jsp〔最終アクセス日 2015年 1月31日〕 192 「Form IV Patent List - Patented Medicines (Notice of Compliance)」,Health Canada http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/applic-demande/form/priv_briv-eng.php 〔最終アクセス日 2015年1月29日〕 193 「How drugs are reviewed in Canada: What are the steps in the review process for a drug?」 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/alt_formats/hpfb-dgpsa/pdf/prodpharma/reviewfs_examenfd-eng.pdf 〔最終アク セス日2015年1月19日〕 - 144 - ANDS申請された医薬品は、参照されている新薬と薬学的、生物学に同等であり、投薬や 使用方法などが同じである必要がある。ANDSの承認を得たジェネリック医薬品は、参照さ れたカナダの医薬品との生物学的同等性証明を受け、その旨はNOC194上に記載される195。 さらにNOC取得の要件として、NOC規則の5.(1)上ジェネリック医薬品の申請者は、特許リ スト (Patent list)上の参照した新薬に係る特許に関して、下記のいずれかを選択する必 要がある196。図表Ⅳ―16にNOCに関する手続の流れを示す。 【図表Ⅳ―16】NOCに関する手続 特許の種類(物質、用途など)に基づく後続の処分への影響に関して、カナダ保健省か らの回答は入手できなかったが、上記の様に有効成分、用途に限定した規定は特にないた め、種類に基づく後続処分への影響は特にないものと思われる。 (4) 承認事項の(一部)変更の承認申請 1994年4月、カナダ保健省はChanged to Marketed New Drug Productという指針を発表し た。同指針の目的は、販売承認後の医薬品に対する変更の段階的な構造構築とSupplemental New Drug Submission (SNDS) の申請を減少させることにより、同省のレビュー業務の負担 194 Patented Medicines (Notice of Compliance) Regulations: C.08.002.1. SOR/95-411, s. 5 「Notice of Compliance」 Health Canada http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/notices-avis/index-eng.php 〔最終アクセス日 2015年1月31日〕 196 Patented Medicines (Notice of Compliance) Regulations: SOR/93-133 195 - 145 - を軽減することにある。変更は、安全性と効能へのインパクトを鑑みて変更の程度により、 図表Ⅳ―17に示した4種類の区分に分けられている197。 【図表Ⅳ―17】登録内容の変更承認手続 区分 区分の説明 要件概要 LEVEL I: 著しく相違する新薬(A new 医薬品の安全性、効能、品質及 当該変更を申請する場合は、カナダ保健 drug that are “significantly び効果的な使用、又はそのいず 省に対して推奨される補足書類と共に different”)補完的な新薬承認 れかに対して潜在的なインパク SNDS又はSANDSを申請する必要がある。 (Supplemental New Drug トがあり、販売承認を受けてい 製造者は、NOCが発行される迄は変更を Submission る医薬品に大きな相違をもたら することが出来ない (SNDS)) 補完的な簡略新薬承認 す変更 (Supplemental Abbreviated New Drug Submission (SANDS)) LEVEL II: 通知を要する変更 医薬品の安全性、効能、品質及 当該変更をする場合は、カナダの保健省 (Notifiable changes (NC)) び効果的な使用、又はそのいず に対して推奨される補足書類と共にNC れかに対して潜在的なインパク を提出する必要がある。製造者は、No トがあるが、NOCの発行を要件と Objection Letterが発行される迄は変 しない変更 更をすることが出来ない LEVEL III: 年次通知 医薬品の安全性、効能、品質及 当該変更の場合は、カナダ保健省による (Annual Notification) び効果的な使用、又はそのいず 事前のレビュー無しで変更することが れかに対して潜在的に軽微なイ できる。LEVEL IIIの変更は、年次通知 ンパクトのある変更 に記載する必要がある LEVEL IV: 変更の記録 LEVEL I 、II 、III以外の変更 当該変更の場合は、カナダ保健省による (Record of changes) であり、医薬品の安全性、効能、 事前のレビュー無しで変更することが 品質及び効果的な使用にインパ できる。変更は、Good Manufacturing クトが無いと考えられている変 Practices (GMP) 更 によって医薬品の記録上記載すること 198 に準拠して、製造者 が義務付けられている。 197 「Post-Notice of Compliance (NOC) Changes: Framework Document」Health Canada http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/applic-demande/guide-ld/postnoc_change_apresac/noc_pn_framework_ ac_sa_cadre-eng.php〔最終アクセス日: 2015年1月31日〕 198 「Good Manufacturing Practices」Health Canada http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/compli-conform/gmp-bpf/index-eng.php[最終アクセス日2015年2月11日] 〔最終アクセス日 2015年1月31日〕 - 146 - ・ジェネリック医薬品の承認について ジェネリック医薬品は、販売承認の申請時に参照している新薬と同じ有効成分を同量含 有していなければならない。製造者がジェネリック医薬品の品質、安全性又は効能に変化 をもたらさないことを証明できる場合は、賦形剤、着色剤等の添加物は新薬と同じである 必要はない。 安全性と効能を証明するために、製造者はジェネリック医薬品が新薬と同等の効果があ ることをバイオ・アベイラビリティ試験等により証明する義務を負う199。 (5) Notice of Compliance (NOC)の手続 1993年に施行された特許法のセクション55.2上200のThe Patented Medicines (Notice of Compliance ) Regulations (NOC)201の立法趣旨は、製薬業界の革新的な発明の保護と安価 なジェネリック医薬品流通の促進である。 同法は、ジェネリック医薬品の製造業者等が「カナダ法上要件となっている、製品情報 の開発と提出に適切に関連する」特許権が付与された製品又はプロセスを使用及び販売す る際に、通常特許侵害となる可能性のある行為に例外を与えている。 カナダにおいてジェネリック医薬品の上市をするためには、Notice of Compliance (NOC) を取得する必要がある202。NOC取得のためのANDS申請の際に、ANDSの申請者は新薬の特許期 間が終了するまではNOCが発行されないことを受諾する、又はNotice of Allegation (NOA) を新薬の製造者に送達して特許の無効、虚偽等を主張することができる。新薬の製造者が ジェネリック医薬品の承認差止請求をする場合は、NOAの送達から45日以内にカナダ連邦裁 判所に対し申請をする必要がある。請求手続が開始されると、ジェネリック医薬品の販売 承認を24か月禁止する仮処分が下される。裁判所は、NOAの正当性を判断し、命令を下す203。 裁判所がジェネリック医薬品の製造者に有利な判断を下す、又は当該特許期間が終了しな い限りは、ジェネリック医薬品に対するNOCは24か月間発行されない。つまり新薬の製造者 がジェネリック医薬品の承認差止めを請求したことにより自動的に仮処分が下されるシス テムとなっている。204 199 「The Safety and Effectiveness of Generic Drugs」Health Canada http://www.hc-sc.gc.ca/hl-vs/iyh-vsv/med/med-gen-eng.php〔最終アクセス日 2015年2月1日〕 〔カナダ保健省回答参 照〕 200 「Patent Act, RSC 1985, c P-4」Canadian Legal Information Institute http://www.canlii.org/en/ca/laws/stat/rsc-1985-c-p-4/latest/rsc-1985-c-p-4.html 〔最終アクセス日 2015年2月3日〕 201 SOR/93-133 202 「Notice of Compliance」 Health Canada http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/notices-avis/index-eng.php 〔最終アクセス日 2015年1月31日〕 203 SOR/93-133 204 「The Patented Medicines (Notice of Compliance) Regulations」Parliament of CANADA http://www.parl.gc.ca/Content/LOP/ResearchPublications/prb0614-e.htm#endnote14〔最終アクセス日 2015年2月3 - 147 - 上記の裁判所の判断はNOAの正当性を判断するための司法レビューであり、新薬に付与さ れた特許権の侵害を主張する特許権侵害訴訟とは別である。1993年3月のNOC施行後、カナ ダにはジェネリック医薬品の承認につき、新薬メーカーの特許権を主張する2種類の制度が ある。これらのシステムは、前述したジェネリック医薬品に係る特許侵害となる可能性の ある行為に対する例外とのバランスを保つことを意図している。 NOCは1998年、1999年、2006年、2008年、2010年及び2011年に改正されている205。1998 年の改正で、前述したジェネリック医薬品の販売承認の禁止は30か月から24か月に短縮さ れた206。カナダにおける特許権侵害訴訟では、特許権者(原告)側に侵害行為の立証責任 がある。この場合は新薬製造者に立証責任があるが、前述したジェネリック医薬品の販売 承認(NOC)を差し止める制度においては、新薬製造者側に特許の侵害を立証する責任はな い。 NOC上のジェネリック医薬品承認禁止の訴えと、従来からの特許権侵害訴訟の2つの現行 制度の影響及び、それらがNOCの立法趣旨である新薬とジェネリック医薬品のバランスを保 っているか、という問いかけに対する明白な答えはないようであるが、以上を鑑みると、 カナダにおける現行の新薬メーカーの特許権主張に基づく2種類の制度は、薬事承認に少な からず影響を及ぼしていると考えられる。 (6) データ保護 データ保護は、Food and Drug Regulations, Section C.08.004.1で、ジェネリック申請 まで6年、ジェネリック販売まで8年の保護期間が認められている (7) 医薬品の承認情報の公示方法 カナダ保健局は、同国において使用が許可されている人と動物、さらに殺菌向け医薬品 の情報データベースであるDrug Product Database (DPD)を管理している。同データベース には、約15000製品に関する情報が提供されており、企業は上市の前に保健局にそれらの情 報を提供する。同データベース上には、承認された医薬品のブランド及び企業名、有効成 分、流通状態、クラス等に関する情報が公示されている207。なお、医薬品の承認審査状況 に関しては、現在のところ公示されていない。 日〕 205 「Therapeutic Products Directorate Statistical Report 2013/2014」Health Canada http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/pubs/drug-medic/patmrep_mbrevrap_2013-eng.php〔最終アクセス日 2015年2月3日〕 206 Dominique Valiquet; Law and Government Division; 4 May 2006 207 「Drug Product Database」 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/databasdon/index-eng.php [最終アクセス日2015年1月21日] - 148 - さらに、カナダ保健局は、医薬品関連特許情報が保存されているPatent Register208を管 理している。同データベースは毎日更新され、1993年3月12日以降の人と動物に使用される 医薬品成分と関連する特許がアルファベット順にリストされており、成分名及びブランド 名等により閲覧を希望する特許情報を検索することができる209。 (8) 試験研究のための実施行為に関する特許権侵害の免責規定210 特許法第55.2条(例外)(6)の規定により特許の主題に関連した試験の目的のみでする 特許発明の使用は特許の侵害の例外とされている。 208 「Patent Registerの概要」 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/patregbrev/index-eng.php 〔最終アクセス日2015年1月21日〕 209 「Patent Register」 http://pr-rdb.hc-sc.gc.ca/pr-rdb/index-eng.jsp 〔最終アクセス日2015年1月21日〕 210 カナダ特許法翻訳 http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/canada/tokkyo.pdf[最終アクセス日2015年2 月11日] - 149 - 5. (1) 中国 延長登録制度 中国は、現在、特許権の存続期間の延長制度を有していない。中国国内では特許権の存 続期間の延長制度に関して次のような議論がなされている。 (ⅰ) 賛成説 ①国際製薬連盟(IFPMA)と中国外商投資企業協会薬品研究開発業界委員会(RDPAC)は2006 年、「知的財産権の運用による製薬革新の奨励」というテーマでフォーラムを共催したが、 同フォーラムで討論された主な内容は、特許延長の問題であった。 中国人民大学商事法律科学研究センタ研究者である姚歓慶は、中国国内における医薬品等 に係る特許権の延長登録制度の導入に賛成し、その理由について下記のとおり説明した。 まず、技術イノベーションを推し進める角度からみれば、医薬品等に係る特許権の延長登 録制度の導入は医薬業界の発展を奨励することができる。また、医薬品等に係る特許権の 延長登録制度を導入するで、企業は先薬の研究開発段階でより多くの時間を費やすので、 医薬品の品質を重視させることになり、客観的に、医薬品の品質を向上させることができ る。かつ、医薬業界の知的財産権への保護意識を向上させ、医薬業界への投資促進、医薬 品に係る研究開発の深化、及び医薬品のイノベーション等にも有益である211。 ②中国の医薬業界にとって、医薬品に係る特許権の延長登録制度の導入は、下記のような メリットとデメリットがある。 (a)先薬メーカーのイノベーションを奨励し、先薬の研究開発を促進する。 (b)医薬品製造業への投資を引きつけ、医薬品製造業の発展を推し進める。 (c)後発薬の発売を遅らすことになるので、中国のジェネリックメーカーの発展に悪影 響を与える。ただし、長い目で見れば、特許権の延長登録制度は、先薬の研究開発を より促進することになるので、ジェネリックメーカーの生産ラインを拡充し、かつ、 ジェネリックメーカーの寿命を延長することができる。 (d)消費者にとっては、より良い先薬を選ぶことができる一方、薬品を購入するコスト が高くなる。 211 王円、陳恵「专利延长未到火候」 (和訳―特許権の延長登録制度の導入は未熟だ) 『医薬経済報』2006年11月1日第001 版 薛原「跨国药企:延长药品专利 知识产权局:尚未列入议程」(和訳―国際医薬品製造メーカー医薬品に係る特許権の延 長登録制度を導入 知的財産権局 まだ議論されていない)『健康報』2006年10月24日第003版 - 150 - 上記のように、特許権の延長登録制度には、プラス面とマイナス面があり、それを全て 包括して考える必要がある。外国の医薬品等に係る特許権の延長登録制度は、一定の参考 価値はあるものの、そのまま導入してはならず、中国の実情に基づいて、慎重に検討しな ければならない。しかも、企業の研究開発への奨励と特許権濫用の防止との間のバランス を図ることも、深く検討すべきである212。 ③医薬品が開発され、食品薬品監督管理局の許可を得て発売ができるまで、往々にして特 許保護期間の半分以上の時間が掛かり、残りの特許保護期間内では研究開発のコストすら 回収することができない。したがって、製薬メーカーの研究開発を促進するために、医薬 品等に係る特許権の保護期間を延長することが必要である。ただし、特許権の延長登録制 度の導入に関して、中国では、関係法律規定が十分でなく、かつ、先薬が少なく、特許薬 が更に少ないので、当該制度を導入する意味がなく、たとえ導入しても、受益者は外国製 薬メーカーで、中国メーカーは却って市場シェアを失うことになり兼ねないという反対理 由がある。しかしながら、中国では実際には、先薬を研究開発する人材も資金も不足して おらず、不足しているのは、人材と資金を集める仕組みなのである。医薬品等に係る特許 権の延長登録制度が導入されれば、これらの人材と資金を製薬メーカーに集めることがで き、医薬業界のイノベーションとグローバル化を推し進めることができるので、是非導入 すべきである213。 (ⅱ) 反対説 ①中国国家知識産権局専利局医薬生物発明審査部部長である張清奎は、「新興国にとって、 医薬品等に係る特許権の延長登録制度を導入することは現実的なことではない。」という観 点を打ち出し、医薬品等に係る特許権の延長登録制度の導入に反対した。また、その理由 について、「医薬品等に係る特許権の延長登録制度を導入するか否かについて考慮する際、 特許権者の利益のみならず、公共的な利益も考慮しなければならない。公共の利益から見 れば、医薬品等に係る特許権の延長登録制度を導入すると、医薬品等の価格が高くなる。 また、医薬品等に係る特許権の延長登録制度についての経験がまだ絶対的に不足している。 EUからの関連研究報告は不十分で、関連データも完全ではないので、今、特許権の延長登 録制度を導入するのは困難である。」と説明した214。 212 楊莉李野「浅析药品专利期延长制度」 (和訳-医薬品等に係る特許権の延長登録に関する概論) 『中国新薬雑誌』2007 年第16巻第12期 213 耿円円「论我国专利法“bolar例外”条款及专利保护期延长制度的关系」(和訳-我が国の専利法での「bolar例外」 条項と特許権の延長登録制度との関係について)『中国商界』2010年第12期 214 王円、陳恵「专利延长未到火候」(和訳―特許権の延長登録制度の導入には時期尚早)『医薬経済報』 2006年11月1 日第001版 - 151 - ②中国医薬法の専門家である徐青松は、医薬品等に係る特許権の延長登録制度の導入を反 対し、その理由について、下記のとおりに述べた。(a)特許権の保護期間が存在するからこ そ、製薬メーカーに絶え間なく先薬の研究開発を継続させることができる。確かに、先薬 の開発には、大量の時間と費用を投入することが必要であり、かつ、特許権の保護期間が 満了すると、後発薬による激しい競争にも直面することになる。しかし、企業にとっては、 先薬だけに頼っているわけにはいかず、廉価でかつ売れる後発薬を開発して利益をもうけ、 それによって、先薬の開発に必要な資金を確保することが必要である。つまり、先薬開発 には、後発薬による経済的サポートが必要なのである。(b)後発薬があるからこそ、薬品の 価格が合理的な範囲内に維持できているので、現在の国家政策に合致しているといえる。 (c)中国は、新興国である。中国の事情に鑑み、今、医薬品等に係る特許権の延長登録制度 を導入すれば、特許権の濫用を招くおそれがあり、かつ、公共の健康の保障と発展にも支 障を生じる可能性がある215。 ③米国では、先薬を開発する積極性を奨励するために、医薬品等に係る特許権の延長登録 制度を実施している。しかし、中国では、米国のような医薬品等に係る特許権の延長登録 制度を導入するべきではない。なぜなら、まず、先薬が少ない中国において、特許権の保 護期限を延長すると、国内の製薬メーカーにとって不利で、逆に元の市場シェアまで失う ことになるおそれがる。また、中国は、米国と比べ、法律制度がまだ整備されていない。 そして、中国の「薬品管理法」と「専利法」とがはっきりとリンクしていないので、当該 制度を投入し、ある行政部門より主導して推進しても、実際運用において、いろいろな阻 害や問題が生じる可能性が高い。なお、中国において、漢方薬に対する知的財産権保護は、 大きい難題であるが、当該問題においては、米国の制度を参考にする価値はほとんどない216。 ④中国の医薬品業界の特殊な事情に鑑み、今後しばらくの間は、医薬品等に係る特許権の 延長登録制度を導入すべきでない。その理由は、下記のとおりである。 (a)中国では、先薬が少ない状況に鑑み、特許権の延長登録制度を導入すれば、国内企 業に不利に働き、逆に元の市場シェアも失うおそれがある。 (b)中国では、医薬品等に係る全面的な法律システムがまだ整っていない。そして、米 国と比べて、例えば、どのような仕組みを採用すれば、国家食品薬品監督管理局と国家 知識産権局との間で医薬品登録と医薬品特許権との関連事項をリンクさせることがで 215 徐青松「药品专利保护不易延长(和訳―医薬品に係る特許権の延長登録制度を導入しないほうがよい) 『健康報』2006 年10月31日第003版 216 董麗楊悦「美国药品专利期延长与市场独占期规定研究」(和訳-米国の医薬品等に係る特許権の延長登録と市場独占 期間に関する研究)『中国医薬導刊』2006年第8巻第5期(総第46期) - 152 - きるのか、とのような問題に関する規定が不十分で整備が必要であある。すなわち、中 国における医薬品特許権に関する連結制度はまだ構築されていない。このような状況に おいて、医薬品等に係る特許権の延長登録制度を導入すれば、必ずしも行政管理部門の 間の法執行の混乱を生じさせるおそれがある217。 (ⅲ) その他 米国、欧州、日本などの先進国は、現在、医薬品等に係る特許権に対して延長保護制度 を実施している。しかし、多くの国は、当該制度に関し、依然として、保守的な態度を取 っている。先薬の発売後、特許権の有効期限も間もなく満了する状況下で、どのように特 許制度を利用して発売後の先発薬に対する特許権保護期間を合理的に延長するかは、製薬 メーカーにとって、とても重要な課題となっている。よく利用されている対策としては、 下記の方法が挙げられる。 (a)適当な出願時期を選択して、医薬品等に係る特許権の保護期間を延長する。 特許出願について、適切なタイミングで行うことがとても重要である。早いタイミン グで出願すると競業者に早期に技術を公開することになり、かつ、有限な特許保護期間 を浪費することになり、反対に、出願が遅過ぎると、競業者に先取り出願されるおそれ があり、その場合、自社の技術成果をみすみす無駄にしてしまうことになるだけではな く、競業者による特許コントロールを受けることになる。通常、出願時期を選択する際 に、以下の要素を考慮する必要がある。 ⅰ医薬品等に係る発明の完成度。特許出願の最低限を満たす必要がある。 ⅱ競業者の進展状況。先取り出願されることを防止すべきである。 ⅲマーケティング。特許権出願登録と医薬品許可登録の進展に留意し、できるだけ両 方の歩調を合わせ、かつ、シリーズ製品の発売プランと市場のニーズの両方に配慮を するべきである。 (b)選択発明を通じて医薬品等に係る特許権の保護期間を延長する。 選択発明とは、現有技術に公開された広い範囲の中から、目的を持って現有技術で言 及されていない狭い範囲・物を選択した発明のことをいう。権利者が選択発明を適切に 応用すると、選択発明を利用して、先行特許権者とクロスライセンスするか、又は交渉 をすることができる。なお、企業は、医薬品等に係る特許を出願する際に、基礎発明構 217 丁錦希「美国药品专利期延长制度浅析——Hatch-Waxman法案对我国医药品工业的启示」(和訳-米国の医薬品等に係る 特許権の延長登録に関する研究――Hatch-Waxman法案が我が国の医薬品製造業界への啓発) 『中国医薬工業雑誌』2006年 第37期 - 153 - 成のみ開示し、好ましい態様を留保し、基礎特許権の保護期間が満了する直前又はその 後、留保する発明構成に基づいて、改めて特許を出願する方法によって、医薬品等に係 る特許権の保護期間を合理的に延長することができる。 (c)周辺発明を通じて医薬品等に係る特許権の保護期間を延長する。 周辺発明とは、上位にある基礎発明の周囲でそれと関連し、かつ、それに制限される 下位の改良発明を開発することをいう。企業は、上位となる製品について特許を出願し た後、それに基づいて、より良い製造方法、新たな用途、又は他の下位製品に関する開 発を継続して行い、かつ、それに関連する発明特許も引き続き出願することができる。 そうすると、周辺発明は、基礎発明に対し、絶え間なくサポートをすることができるの で、当該方法によって、特許権のある医薬品を全面的に保護することができるだけでは なく、市場シェアに関する実際的な保護期間及びコントロール期間も延長できる。 (d)優先権を利用して医薬品等に係る特許権の保護期間を延長する。 中国の特許法によれば、出願人は発明又は実用新案について外国で最初に特許出願し た日から12か月以内に、中国で同一の主題をもって特許出願するときは、優先権を享有 することができる。また、特許の保護期間は、実際の出願日から起算するので、優先権 を利用して、医薬品等に係る特許権の保護期間を最大12か月延長できる。 (e)他の行政手段を利用して医薬品等に係る特許権の保護期間を延長できる。 中国では、医薬品関連の知財権保護に関する法律規定などが多数あるので、法律に基 づく司法保護と行政規定に基づく行政保護を求めることができる。例えば、漢方薬の特 許権者は、「中薬品種保護条例」を利用して、保護期間が満了する直前に、その薬品の 市場独占期限を更に延長することができる。また、もし、先薬の研究開発にかなり時間 が掛かった場合、先薬の5年以下の安全監視測定期限及び6年間のデータ独占性への保護 期間を利用して、市場独占期間を更に延長することもできる。 (f)ノウハウと特許を総合的に利用して医薬品等に係る特許権の保護期間を延長する。 企業は、医薬品等に係る技術の研究開発の難易度、リバース・エンジニアリングの可 能性、競業者の技術レベル等を総合的に考慮した上、関連技術について、特許出願をす るか、それとも、ノウハウとして留保するかを決めることができる。ノウハウとして留 保した場合、秘密保持にさえ留意すれば、特許権の保護期間にかかわらず、関連医薬品 の市場における独占地位を維持することができる。なお、競業者が関係技術の開発実力 を有するようになった場合、先に特許出願をすることで、関連技術の保護期間を延ばす ことができる。 - 154 - (g)商標と結び付けて医薬品等に係る特許権の保護期間を延長する。 特許権保護の期限性と商標保護の持続性に基づき、製薬メーカーは、医薬品等に係る 特許権の保護期間の満了後、商標権を利用して、当該医薬品の市場優位を保持すること ができる218。 (ⅳ) ユーザからの要望 ①2006年10月24日付の『健康報』によれば、ある国際的な製薬企業の薬品登録担当者は、 中国の製薬メーカーの後発薬の製造能力が高いので、先薬は特許権の保護期間の満了後、 その競争力が弱くなり、企業に大きな損失を与えるので、特許権の延長登録制度を導入す ることを希望した219。 ②2006年11月1日付の『医薬経済報』によれば、北京百奥薬業有限責任公司の総経理である 候全民は、 「先薬の場合、関連許可書の取得にかなり時間が掛かるので、特許権保護により 利益を得られる時間が短過ぎる。中国は、WTOに加入したので、他の国と同じルールを守る べきである。しかも、中国では、ほとんどの先薬に対する後発薬が既に発売されているの で、延長制度の導入による業界への影響はそれほど大きくない。なお、今後の発展を考慮 しても、医薬業界のイノベーションを奨励するべきである。」という理由で、特許権の延長 登録制度を導入することを提案した220。 ③2010年3月12日付の『新華日報』によれば、中国のバイオ医薬業界は成長が加速化してい るものの、イノベーション力が弱く、かつ、国際競争力も強くない。江蘇恒瑞医薬股份公 司の董事長である孫飄揚は、医薬行業のイノベーションを奨励するために、先薬の発売後 の特許保護期間を適当に延長することを提案した。 ④2013年4月3日付の『中国業界研究サイト』の報道によれば、医薬品等に係る特許権の延 長登録制度の導入について、北大縦横管理コンサルティング集団の医薬業務担当パートナ ーである史立臣は、 「中国医薬市場において、医薬品の特許保護は外国企業からの投資によ って支えられ、医薬市場における高い収益を保障している。医薬品に対する特許保護が不 十分だと、外資企業の中国における生存能力と競争力に影響を与える。」と表明した。これ に対して、中国外商投資企業協会薬品研究開発業界委員会(RDPAC)のメディアディレクタ 218 鄧声菊朱俊英何黎清「专利药品保护期的延长策略」 (和訳-特許権ある医薬品の保護期間への延長戦略) 『中国発明与 専利』2009年第6期 顧潤豊「延长专利药品保护期的策略简析」(和訳-特許権ある医薬品の保護期間への延長戦略に関する研究)『中国発明 与専利』2011年第10期 顧潤豊孫長龍「企业如何延长专利药品保护期?」 (和訳-企業はどうして特許権ある医薬品の保護期間を延長できるか?) 『中国知的財産権報』2012年1月11日第005版 219 薛原 「跨国药企:延长药品专利 知识产权局:尚未列入议程」 (和訳―国際医薬品製造メーカー医薬品に係る特許権 の延長登録制度を導入 知的財産権局 まだ議論されていない)『健康報』2006年10月24日第003版 220 王円、陳恵「专利延长未到火候」(和訳―特許権の延長登録制度の導入は未熟だ)『医薬経済報』 2006年11月1日第 001版 - 155 - ーである左玉増は、 「確かに、中国において、先薬にとって、特許権保護により利益を得ら れる期間が短過ぎる。」と述べ、医薬品等に係る特許権の延長登録制度を導入すべきである という態度を示した。 ⑤2014年3月12日付の『浙江日報』によれば、「中国の特許保護期間は20年であるが、一つ の先薬は特許出願から発売されるまで往々にして10年以上掛かるので、発売後の特許保護 期間は10年に足りない。」というのが現状で、全国人民代表で、かつ、貝達薬業有限公司董 事長である丁列明は、先薬発売後の特許保護期間を適切に延長し、医薬企業のイノベーシ ョンを奨励することを提案した。 (2) ジェネリック医薬品の参入に関する近年の判決 ・ジェネリックメーカーの市場参入に関する重要な判例 判例① 事件名称: サノフィ・サンテラボ公司と江蘇恒瑞医薬股份有限公司との間の発明特許権侵害及び不正 競争紛争事件 当事者: 再審申請人(一審原告、二審被上訴人) :サノフィ・アベンティス公司(以下「サノフィ社」 という) 被申請人(一審被告、二審上訴人):江蘇恒瑞医薬股份有限公司(以下「恒瑞社」という) 一審被告:上海国大東信薬房有限公司 裁判所名称:最高裁判所 事件番号: (2009)民申字第861号 最終審決日:2009年12月27日 判例の出所:北大法宝司法判例データベース 事件の概要: フランスの製薬メーカーであるサノフィ社は、中国の恒瑞社が2002年から製造・販売し ていた「艾素」という医薬品が自社の新薬「ドセタキセル(タキソテール)」に係る2件の 発明特許権(出願日はそれぞれ1993年9月28日と1995年7月7日)を侵害し、かつ、関連宣伝 行為が不正競争行為に該当したという理由によって、訴訟を提起した。 一審裁判所は審理を経て、恒瑞社に対して、不正競争及び特許権侵害行為を直ちに差し 止め、サノフィ社の経済的な損失等を賠償することを命じる判決を言い渡した。 恒瑞社は一審判決を不服として、上訴を提起した。二審裁判所は、恒瑞社の不正競争行 為に関する一審裁判所の判決を維持した。しかし、特許権侵害問題について、二審裁判所 は、サノフィ社が一審段階で自ら鑑定を委託したことに対し、当該鑑定報告書等は、一審 - 156 - 裁判所の委託により得られた鑑定報告書の結論を覆すことができないと認定し、かつ、サ ノフィ社の補充鑑定請求も許可せず、特許権侵害行為については構成しないと認定した。 これに対し、サノフィ社は再審を申し立てたが、最高裁判所は二審裁判所の意見を認め、 サノフィ社の再審請求を却下した。 コメント: 技術的問題が複雑な医薬品に係る特許権侵害紛争事件において、当事者が最初からいか に巧みに鑑定という手段を利用するかということは、往々にして訴訟の勝敗を左右するこ とになる。 判例② 事件名称: 杭州賽諾菲安萬特民生製薬有限公司が深セン海王薬業有限責任公司と上海科院薬房有限公 司を訴えた発明特許権侵害紛争事件 当事者: 原告 杭州賽諾菲安萬特民生製薬有限公司(以下「賽諾菲社」という) 被告1 深セン海王薬業有限責任公司(以下「海王社」という) 被告2 上海科院薬房有限公司(以下「科院薬房」という) 裁判所名称: 上海市第一中等裁判所 事件番号:(2006)滬一中民五(知)初字第379号 最終審決日:2010年06月24日 判例の出所:北大法宝司法判例データベース 事件の概要: 徳彪薬品股份有限公司は951944436号発明特許権(以下、「係争特許権」という)の権利 者であり、原告の賽諾菲社に中国での独占実施権を許諾した。賽諾菲社は、海王社が製造 した「艾克博康」という注射液が係争特許権の権利範囲に入っているという理由で、海王 社と当該注射液の販売者である科院薬房に対して、訴訟を提起した。海王社は、係争特許 権に対して、無効審判を提起し、かつ、本件訴訟において、 「艾克博康」注射液に使用され ている技術は公知技術であるので、係争特許権を侵害することにならないと抗弁した。 一審裁判所は審理を経て、海王社によって使用された技術的ソリューションは、公知技 術に比べて進歩性がなく、かつ無効審判を通じて無効になった発明の構成及び技術常識と の簡単な組合せに該当すると認定し、賽諾菲社の訴訟上の請求を棄却した。判決後、当事 者の何れも上訴を提起しなかったので、一審判決は既に効力を生じた。 コメント: 本来、特許権の権利範囲に入っていると訴えられた全部の構成要件が、1件の公知技術 の相応する構成要件と同一又は実質的相違がない場合、 「公知技術の抗弁」が成立する。本 - 157 - 件において、被疑侵害技術は公知技術に該当しないが、進歩性がなく、かつ、特許権の権 利範囲に入ることができないという面から見れば、公知技術と実質的な相違がない。その ため、裁判所は、 「公知技術の抗弁」の規定を類推的に適用して、被告が侵害を構成しない という判決を言い渡した。 判例③ 事件名: (アメリカ)イーライリリー公司と江蘇豪森薬業股份有限公司との間の発明特許権侵害紛 争事件 当事者: 上訴人(一審原告)イーライリリー公司(以下「イーライリリー社」という) 被上訴人(一審被告)江蘇豪森薬業股份有限公司(以下「豪森社」という) 裁判所名称:最高裁判所 事件番号:(2009)民三終字第6号 最終審判決日:2010年12月03日 判例の出所:北大法宝司法判例データベース 事件の概要: イーライリリー社は、中国で「ゲムシタビン及びゲムシタビン塩酸塩」という抗癌剤に 係る3件の発明特許権(以下、「係争特許権」という)を取得した。イーライリリー社は、 豪森社が係争特許権の製法を利用して、 「ゲムシタビン及びゲムシタビン塩酸塩」を製造・ 販売し、自社の係争特許権を侵害したという理由で訴訟を提起した。 本件において、イーライリリー社は、最初の一審訴訟で敗訴し、最高裁判所に上訴を提 起したが、最高裁判所は、手続違反という理由で、本件を原審裁判所に差し戻し、再審理 するという裁定を下した。 二回目の一審訴訟で、一審裁判所は、鑑定機関に技術鑑定を依頼し、また、鑑定意見に 基づいて、豪森社が提出した薬品に関する研究・製造方法と係争特許権の請求項に記載さ れた方法が同一ではないので、豪森社の関連行為が係争特許権侵害行為に該当しないと認 定し、イーライリリー社の訴訟上の請求を棄却するという判決を言い渡した。 イーライリリー社は当該一審判決を不服として、再度、最高裁判所に上訴を提起した。 しかし、二審裁判所は審理を経て、二回目の一審段階で行われた技術鑑定による鑑定意見 を採用し、一審裁判所の判決を維持し、イーライリリー社の上訴を棄却した。 コメント: 本件において、豪森社は二審で勝訴し、ようやく自社が製造した薬品を販売できたが、 イーライリリー社の差止請求によって、裁判所は訴訟前の差止命令を下したので、本件の 一審及び二審の裁判の約8年間で、豪森社は薬品を販売できなかったので、莫大な損失を被 - 158 - ることになった。また、イーライリリー社は最終的に敗訴したが、市場独占地位を確保す るという面から見れば、その目的をある程度で達成できたといえる。 (3) 医薬品の販売承認の流れ 臨床試験から販売前までの薬品登録は「薬品登録管理弁法」第11条に規定されており、 販売は含まない。販売は「薬品流通監督管理弁法」で規定されている。 ・臨床試験から販売前までの医薬品登録申請 薬品登録申請は①新薬申請、②ジェネリック医薬品申請、③輸入薬品申請及び補充申請、 ④再登録申請の5つの申請手続がある。 ①新薬申請 新薬申請には臨床試験に係る許可と生産許可申請の2つの手続がある。臨床試験に係る許 可の流れを(a)に、生産許可申請に係る許可の流れを(b)に示す。 (a) 臨床試験に係る許可 臨床試験に係る許可の流れを図表Ⅳ―18にまとめた。 (i) 審査期間の短縮 「薬品登録管理弁法」第45条に規定された申請が適用できる場合、特殊審査の申請 を提出できる。申請できるか、否かの判断は薬品審査センタ-が行う。特殊審査は図 表Ⅳ―18に示す審査期間を短縮できる。 (ⅱ) 申請資料の提出 申告資料の提出は1回限りであり、当局受理後、新しい技術資料の補充は不可能であ る。このため、新しい技術資料の追加が必要な場合、申請を取り下げることが必要と なる。ただし、特殊審査への変更や薬品安全性の新情報の補充はこの限りではない。 (ⅲ) 有効期間 「薬物臨床試験許可文書」の有効期間は3年であり、3年内に臨床試験を行わなけれ ばならない。3年以内に臨床試験が完了しない場合、再申請が必要となる。臨床試験の 結果はCFDA CDEに申請・公告が必要となる。 - 159 - 【図表Ⅳ―18】臨床試験に係る許可の流れ-新品種 順番 事 1 2 項 主管当局 提出資料 臨床前の研究を 「薬品登録管理弁 完成後、申告資料 省級食薬監局 法」の付属書類を を提出 参照 形式審査、受理 備考 省級食薬監局 受理後5日間内 に:①現場検査; 3 ②申告資料の初 省級食薬監局 回審査 CFDが薬品審査セ 4 審査意見、検査報 ン タ - 及 び 申 請 省級食薬監局 告、申告資料 者にの連絡 技術審査、必要な 審査期間: 場合、申請者に資 CFDA薬品審査セン 5 新規申告資料90日 料 を 補 充 す る 要 タ- 補充資料30日 求ができる CFDA へ 審 査 を 審 6 告 「薬物臨床試験 7 許可文書」を送達 (b) CFDA CFDA 技術審査意見 「薬物臨床試験許 可文書」 有効期間3年 生産許可申請 生産許可申請に係る流れを図表Ⅳ―19にまとめた。CFDAは新品種の生産許可に対して監 視期間を設ける権限を有している。 「薬品登録管理弁法」には設定範囲(新品種の定義、監 視期間等)が明示されている221。CFDAは監視期間にある新品種に関してはその他の企業の 生産許可や内容の変更、輸入許可を受け付けない。監視期間満了後、ジェネリック医薬品 申請あるいは薬品輸入申請が可能となる。生産許可取得後、2年以内に生産を開始しない場 合、CFDAは他の企業に生産許可申請を開始すること、かつ監視期間も設定する権利を有す る。 221 「薬品登録管理弁法」付属書類6 - 160 - 【図表Ⅳ―19】 順番 事 生産許可申請に係る流れ-新品種 項 主管当局 提出資料 薬物の臨床試験を完 成後、 1 備考 「薬品登録管理 ①省級食薬監局 弁法」の付属書類 ① 申告資料を提出 を参照 ② 調製標準品の原 ② 中 国 食 品 薬 品 材 料 と 資 料 を NIFDC 検 定 研 究 院 2 へ申告 (NIFDC) 形式審査、受理 省級食薬監局 受理後5日間内に:① 省級食薬監局 現場調査;②申告資 料に最初審査を行い 3 ③ 3ロットサンプル 省級食薬監局 を抽出、薬品検査所 へ標準再審の通知を 出す ① CFDA薬品審査セ 省級食薬監局 審査意見、検査報 ンタ-に報告、且つ 告、申告資料 申請者に通知 4 ② 薬品標準に再審 を行い、且つCFDA薬 薬品標準再審意 品審査センタ-、省 薬品検査所 見 級食薬監局、申請者 に送る 技術審査、申請者に 5 資料を補充する要求 ができる 審査周期: CFDA 薬 品 審 査 セ 新 規 申 告 資 料 150 ンタ- 日 補充資料50日 申請者に生産現場検 査を申請と通知、且 6 つCFDA食品薬品審査 検査センタ-に知ら CFDA 薬 品 審 査 セ ンタ- せる - 161 - 申請者が6か月以内 CFDA 食 品 薬 品 審 7 に現場検査申請を提 査検査センタ- 出 ①30日以内に、現場 CFDA 食 品 薬 品 審 検査を行う;② 8 査検査センタ- 1ロットサンプルを 抽出して、上記薬品 検査所に送る。 ①10日以内にCFDA薬 CFDA 食 品 薬 品 審 品審査センタ-へ送 査検査センタ- 現場検査報告 る ②検査後、報告を 9 CFDA薬品審査センタ -に送る、省級食薬 薬品検査所 監局と申請者にCCす 薬品登録検査報 告 る。 技術審査意見、現 総合意見を形成後、 CFDA 薬 品 審 査 セ 場検査報告、薬品 10 CFDAへ審査を審告 ンタ- 登録検査報告、全 て資料 ①「新薬証書」を送 達 11 ②申請者が「薬品生 ①「新薬証書」 産許可証」と生産条 CFDA ②「薬品承認文書 件を備えている場 番号」 承認文書番号有効 期間5年 合、同時に「薬品承 認文書番号」を送達 ②ジェネリック医薬品の申請 ジェネリック医薬品の申請における臨床試験及び生産許可申請の流れを図表Ⅳ―20にま とめた。なお、留意点として、申請者は医薬品製造企業の営業許可を取得しており、かつ 「薬品生産許可証」に明記する生産範囲と申請内容と整合性が確保されていることが要求 されている。 - 162 - 【図表Ⅳ―20】臨床試験及び生産許可申請の流れ-ジェネリック医薬品 順番 事 項 主管当局 提出資料 備考 「薬品登録管理 1 申告資料を提出; 省級食薬監局 弁法」の付属書類 を参照 2 形式審査、受理 省級食薬監局 受理後5日間内に:① 省級食薬監局 現場調査;②生産現場 検査;③申告資料を審 3 査 ③ 現場で、連続生産 省級食薬監局 の3ロットサンプルを 抽出、薬品検査所へ送 って検査 4 ① CFDA薬品審査セン 省級食薬監局 審査意見、検査報 タ-に報告、且つ申請 告、生産現場検査 者に通知 報告、申告資料 ② サンプル検査、結 果 を CFDA 薬 品 審 査 セ ンタ-、省級食薬監 薬品登録検査報 薬品検査所 告 局、申請者に送る 技術審査、必要な場 5 合、申請者に資料を補 充する要求ができる 審査周期: CFDA薬品審査セン 新規申告資料 タ- 160日 補充資料53日 技術審査意見、現 6 総合意見を形成後、 CFDA薬品審査セン 場検査報告、薬品 CFDAへ審査を審告 タ- 登録検査報告、全 て資料 「薬品承認文書番号」 7 或は「薬物臨床試験許 CFDA 可文書」を発行、送る 8 「薬物臨床試験 許可文書」或は 「薬品承認文書 番号」 臨床試験且つ登録公CFDA薬品審査セン臨床試験資料 - 163 - 臨床試験が必要 であれば、流れ8 ~10を行う 告。完成後、技術評価 タ- を申告 9 CFDAへ審査を審告 CFDA 10 「薬品承認文書番号」 CFDA を送達 技術意見 「薬品承認文書 番号」 有効期間5年 ③輸入薬品の申請 国外の製造業者の所在国の輸出許可を取得した場合、輸入許可申請に入れる。輸出許可 を取得していない場合、CFDAの対象医薬品の安全性、有効性等の確認を経て、輸入許可を 取得することできる。図表Ⅳ―21に輸入医薬品の臨床試験及び生産許可申請の流れを示す。 (a) 期間短縮 CFDA承諾:輸入試験申告は110営業日、輸入登録は170営業日以内に許可を決定する。医 薬品登録検査が必要な場合、薬品登録検査と同時に包括的技術審査を行うことが可能であ る。 (b) 提出書類 製剤の場合、医薬品に直接接触する包装材料・容器の法的適合性に係る証明書類を提出 する必要がある。また、原料薬と補助材料が未許可の場合、生産プロセス、品質指標、検 査方法等の研究資料などを提出する必要がある。 (c) 分包医薬品 省級食薬監局に申請し、CFDAが審査及び「薬品補充申請許可文書」を発行する。 【図表Ⅳ―21】臨床試験及び生産許可申請の流れ-輸入医薬品 順番 事 1 2 項 申告資料を提出; 形式審査、受理(5日) 主管当局 提出資料 備考 CFDA 行 政 受 理 サ 全 シ リ ー ズ 申 告 資 ービスセンタ- 料 CFDA 行 政 受 理 サ ービスセンタ- - 164 - CFDA が 現 場 検査、サンプ ル抽出でき る NIFDCに登録検査、審査 中 国 食 品 薬 品 検 3 確 定 或 は 審 査 評 価 等 を 定研究院(NIFDC) 行うことを通知(30日) ①サンプル検査、標準再 ①薬品検査所 審 ② NIFDC 薬品登録検査報告、周期:85日、 再 審 後 の 輸 入 薬 品 5と同時に行 ②専門家を集まって技 標準 術審査を行う 4 う 補充資料: 技術評価を送る(90日)、 CFDA 薬 品 審 査 セ 資料を補充する要求が ンタ- できる 4か月内 補充資料審 査:30 日 5 6 CFDA へ 審 査 を 審 告 ( 20 日) 10 日 を 延 長 CFDA できる 「 薬 物 臨 床 試 験 許 可 文 CFDA 行 政 受 理 サ 「 薬 物 臨 床 試 験 許 書」を送達(10日) ービスセンタ- 可文書」 有効期間3年 ①臨床試験;②且つCFDA ①GCP実験室 7 薬 品 審 査 セ ン タ - に 登 ② CFDA 薬 品 審 査 録公告 8 申請者が資料を申告 9 形式審査、受理(5日) センタ- CFDA 行 政 受 理 サ 臨床試験資料、その ービスセンタ- 他変更補充資料 CFDA 行 政 受 理 サ ービスセンタ- 補充資料: 包 括 的 技 術 審 査 ( 150 10 日)、資料を補充する要 求ができる 4か月内 CFDA 薬 品 審 査 セ 補充資料審 ンタ- 査:50 日 11 12 総 合 意 見 を CFDA へ 審 査 を審告(20日) 10 日 ほ ど 延 CFDA 長可能 「輸入薬品登録証」を送 CFDA 行 政 受 理 サ 達(10日) ービスセンタ- 「輸入薬品登録証」有効期間5年 ・医薬品の販売 - 165 - 「薬品流通監督管理弁法」第8~第10、第17条に基づき、許可場所以外で医薬品を貯蔵あ るいは販売してはならない。したがって、生産企業、経営企業の販売においては、 「薬品生 産許可証」あるいは「薬品経営許可証」の取得が要求されている。なお、医薬品は営業許 可の範囲以内で販売されなければならない。具体的には医薬品の生産企業は「薬品生産監 督管理弁法」に基き、 「薬品生産許可証」を取得すること、さらに「薬品生産質量管理規範 認証管理弁法」と「薬品生産質量管理規範(2010年修訂)」に基き、GMP認証を得ることが 要求されている。 他方、医薬品の経営企業は「薬品経営許可証管理弁法」に基き、 「薬品経営許可証」を取 得すること、さらに「薬品経営質量管理規範認証管理弁法」と「薬品経営質量管理規範」 に基き、GSP認証を得ることが要求されている。 ④再登録申請222 医薬品の承認証明書の有効期限が満期に達した後も、申請者が引き続き当該医薬品の製 造又は輸入を行おうとする場合に行う登録申請をいう。 (4) 承認事項の(一部)変更の承認申請 新薬、後発医薬品、又は輸入医薬品の申請が承認された後に、その承認事項又は内容に 対し、変更、追加、削除を行うために補完申請を行うことができる。 (医薬品登録管理弁法 第12条)223 (5) パテントリンケージ ①ジェネリック申請・承認手続開始に関する特許権者への告知及びその対応 承認審査過程中においては、 「薬品登録管理弁法」第18条に基き、特許権の帰属に関する 情報のみを提示する必要があり、他の情報は用いられない。帰属に関する情報は特許権の 帰属状態、他社への権利侵害に係る声明である。声明の見本を図表Ⅳ―22に示す。したが って、承認審査への影響はほとんどない。 【図表Ⅳ―22】:権利侵害に係る声明の見本 222 医薬品登録管理弁法第12条(https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/pdf/invest_053.pdf 2015年2月11日]) 223 医薬品登録管理弁法第12条(https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/pdf/invest_053.pdf 2015年2月11日]) - 166 - [最終アクセス日 [最終アクセス日 権利を侵さない声明(見本) 国家食品薬品監督管理総局: ***項目は*****会社が自主開発の既存国家標準の医薬品である。本申請中の薬物、 処方、プロセス等は、他者の権利を侵さない。権利侵害に抵触する場合、弊社は発生し 得る現象に全責任を負うことをここに声明する。 *****会社 *年*月*日 ②ジェネリック医薬品の申請の際に先発医薬品の特許情報の影響224 ・承認審査では、CFDAは他者の権利侵害に係る権利の声明の有無のみ確認し、当局が特許 の照合はしない。 ・CFDAは「薬品登録管理弁法」第19条に基き、申請医薬品が特許期間中であるかなどの確 認はしない。 ・申請者は声明に係る関連法律に関して全ての責任を負うべきだと考える。 ・パテントリンケージの運用・機能について CFDA薬品審査センタに確認したところ、 「CFDAは特許の権利侵害に関わる審査は実施しな い」との回答が得られた。また、 「薬品登録管理弁法」第18条より、特許権に係る争議が発 生した場合、当事者が解決するものとし、CFDAの審査では争議の有無は影響しない。しか しながら、「特許法」第69条の「Bolar例外原則」に基き、医薬品申請中、特許を使用する ことは権利を侵す行為とは認定されないとされる。「特許法」第11条に基き、「許諾販売」 などの行為は禁じられている(例:企業は公開ツールで取得した医薬品承認文書番号公衆 に医薬品の生産開始に係る情報として宣伝する等)。以下に特許法第11条及び第69条を以下 に示す。 特許法 第11条 発明及び実用新案の特許権の付与後、本法に別途規定がある場合を除き、いかな る企業又は個人も特許権者の許諾を受けずに、その特許を実施すること、即ち、生産経 営を目的として、その特許製品を製造、使用、許諾販売、販売、輸入すること、又はそ の特許方法を使用すること、又は当該特許方法により直接獲得した製品を使用、許諾販 売、販売、輸入することはできない。 224 CFDA薬品審査センタ-からのヒアリング回答 - 167 - 第69条 以下の状況のいずれかがある場合は特許権侵害とみなさない。 (四)専ら科学研究と実験のために関係特許を使用する場合。 (五)行政認可に必要な情報を提供するために、特許に掛かる医薬品又は医療機器 を製造、使用、輸入する場合、及び専らそのために特許に掛かる医薬品又は医療機器を 製造、輸入する場合。 ③ ジェネリック申請・承認手続と侵害性判断の関係(判断方法とその取扱い) 医薬品申請・承認手続において、特許紛争が起きた場合には、特許関連法、規則に従っ て解決されなければならない。 ④ ジェネリック申請者に対するインセンティブ 特に規定はない。 (6) データ保護 医薬品登録管理弁法第20条及び医薬品管理法実施条例第35条の規定に基づき、新規化学 物質を含む医薬品について、6年間は、許可を取得した申請者の同意を得ることなく、これ ら未公開のデータを用いた申請に対して承認を与えないものとする。ただし、提出された データが申請者自身により独立に収集されたものである場合は、この限りでないことが規 定されている225。 (7) 承認情報の公示方法 図表Ⅳ―23のような情報が公式サイトで交付されている。 【図表Ⅳ―23】公示情報 番 号 1 2 サイト www.sfda.gov.cn/WS01/CL0 371 www.sfda.gov.cn/WS01/CL0 579 公布事項 申告指南書類 CFDA受理工作手配公告 225 中国医薬品登録管理弁法局令28号http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/pdf/invest_053.pdf[最終アクセス 日2015年2月11日] - 168 - www.cde.org.cn/transpare nt.do www.sfda.gov.cn/WS01/CL0 135 www.ccd.org.cn/ccdweb/vi ew?id=9 3 4 5 www.ccd.org.cn/ccdweb/vi ew?id=4 6 7 8 9 10 11 12 13 www.nicpbp.org.cn/direct ory/web/WS02/CL0006 www.cde.org.cn/transpare nt.do?method=spxlList&ta sktype=xb www.cde.org.cn/transpare nt.do?method=spxlList&ta sktype=fb www.cde.org.cn/transpare nt.do?method=adjust www.chinadrugtrials.org. cn/eap/clinicaltrials.pr osearch www.sfda.gov.cn/WS01/CL0 636 www.sfda.gov.cn/WS01/CL0 377 受理品種、審査中品種公示 登録進捗総合調べ 輸入薬品境外生産現場検査任務公告 ① GMP認証、臨床試験機構資質認定等の 公告 ② GMP認証審査公示 ③ 薬品登録、GLP、GCP現場検査予告、 公告 NIFDC薬品登録検査進捗、報告書調べる 等 新規申告資料審査進捗 補充資料審査進捗 審査任務調整公示(企業取り下げる、順 番調整等) 臨床試験情報公示 費用徴収公示(不明送金、領収書確認等) 許可文書送達情報 14 app1.sfda.gov.cn/datasea rch/face3/dir.html 許可した国産薬品、輸入薬品、補充申請、 臨床試験機構、生産企業、GMP認証、経 営企業、GSP認証、薬品包装材料、OTC説 明書サンプル、薬品広告、インターネッ ト薬品取引、ネット薬屋等の公示; 薬品登録関連特許情報公開、申告受理状 況の公示 15 www.cde.org.cn/drugInfo. do?method=init&frameStr= 5 既にある承認文書番号と審査中品種情 報 (8) 試験研究のための実施行為に関する特許権侵害の免責規定 専利法第69条(四)に研究と実験のために関係特許を使用する場合は特許権侵害とみな されない旨規定されている。 - 169 - 6. 米国、欧州、韓国の延長制度比較一覧 図表Ⅳ―24に米国、欧州、韓国の延長制度比較一覧を示す。 【図表Ⅳ―24】米国、欧州、韓国の延長制度比較一覧 質問項 米国 欧州 韓国 ・特許 医薬品の販売承認を取得 医薬品の販売承認を取得 医薬品の販売承認を取得 権の存 するために失われる特許 するために失われる特許 するために失われる特許 続期間 期間の回復と、ジェネリ 期間の埋め合わせ。特許 期間の埋め合わせ。 の延長 ックメーカーの特許権の 保護の強い国へ研究拠点 登録制 権利期間内の試験研究容 が移転することを防止。 度の趣 認とのつりあい(ハッ 旨 チ・ワックスマン法). ・延長 特許法第156条(f) Regulation(EC)NO.469/2 特許法第89条、特許法施 登録の 医薬製品(人又は動物用 009 第2条 行令第7条 対象と 医薬品、抗生物質、人又 人間用医薬品(Directive •薬事法第31条第2項・第3 なる処 は動物用生物的医薬品)、 (EC)NO.2001/83) 項又は第42条第1項の規 分又は 医療機器、食品添加物、 獣医学的医薬品 定により品目許可を受け もの 着色料 (Directive なければならない医薬品 (EC)NO.2001/82) •農薬管理法第8条第1 Regulation(EC) No. 項・第16条第1項・第17条 1610/96 第1項の規定により登録 目 第2条 農薬 しなければならない農薬 (Regulation 91/414/、 もしくは原剤 Regulation 1107/2009) ・「新物質」に対する最 初の許可 - 170 - ・延長 特許法第156条(a)柱書 Regulation(EC) 特許法施行令第7条 登録の き、同条(a)(2) NO.469/2009 ・最初に品目許可を受け 対象と 製品、製品の使用方法、 第1条(C) た医薬品に限定する]の なる特 製品の製造方法の特許の 基本特許(製品(医薬品 発明、最初に登録した農 許 うち申請人の選んだ一つ の活性成分又は活性成分 薬又は原剤に限定する) の特許のみ。 の組合せ)自体、製品の の発明(例:物質特許、剤 (h) 製品に関する同一の 取得方法、製品の応用を 形特許、製法特許など) 行政審査を理由として、 保護する特許)であって、 ・一つの許可又は登録に 他の特許の存続期間延長 保有者が指定したもの ついて、複数の特許(物質 がされていないこと、 特許、製法特許、用途特 (37CFR§1.720、1.785な 許)が係わる場合、前記の ど) 複数の特許全部につい て、それぞれ存続期間の 延長が可能。 ・延長 特許法第156条(a) Regulation(EC) 特許法第89条、特許法第 が認め (1) 特許存続期間が、延 NO.469/2009 91条、特許法施行令第7条 られる 長申請が提出される前に 第3条 ・他の法令の規定によっ ための 満了していないこと 延長の申請日において、 て許可されている。 要件 (2) 特許存続期間が、延 以下の①~④を満たすも ・一つの特許に含まれて 長されていないこと の。 いる、同一の有効成分に (3) 延長申請が、特許に ①SPCの対象となる製品 ついて、複数の許可があ 係る記録上の所有者又は は有効な基本特許により る場合、初の許可に限っ その代理人によって提出 保護されている。 て存続期間の延長登録を されること ②当該製品を医薬品とし 受けることができる。 (4) 製品が、商業的販売 て上市するための有効な • 許可を受けた有効成分 又は使用の前に行政審査 承認が付与されている。 が特許請求の範囲に記 期間の適用を受けている ③当該製品が既にSPCの 載。 こと 対象になっていない。 • 特許権の満了後はでき (5)製品の商業的販売又 ④上記の有効な承認が、 ない。 は使用に関する当該行政 当該製品を医薬品として 審査期間後の許可が、当 上市するための最初の承 該行政審査期間の根拠と 認でなければならない。 なった法律の規定に基づ いて製品に関して最初に - 171 - 許可された商業的販売又 は使用であること ・延長 特許法第156条 Regulation(EC) 期間 (g)(6)(A)、(c)(2)、(3) NO.469/2009 特許法第89条 5年以下 5年以下(承認日から満了 第13条(括弧内の規定の 日までの期間は最大14 根拠は「前文」(9)) 年) 5年以下(承認日から満了 日までの期間は最大15 年) ・延長 特許法第156条(a)(2) Regulation 特許法第89条 回数 1回のみ (EC)NO.469/2009 第3条 1回のみ 1回のみ ・延長 特許法第156条(b)(1) Regulation 特許法第95条 された その製品に関して承認さ (EC)NO.469/2009 延長登録の理由となった 特許権 れた用途に限定される。 第4条 許可等の対象物(その許 基本特許の保護範囲内に 可等において、物に対し おいて、承認の対象とな 特定の用途が定められて る製品、及び証明書の期 いる場合にはその用途に 間満了前に当該製品につ 使用される物)に関する いて承認されている医薬 その特許発明の実施のみ の効力 としての用途。(ここで、 及ぶ。 「製品」とは、医薬品の 有効成分又は有効成分の 組合せを意味する。) - 172 - ・延長 特許法第156条(d)(1) Regulation(EC) 特許法第90条第2項 登録出 承認日から60日以内 NO.469/2009 ・承認日から3か月以内 願の時 第7条、第9条 期的制 承認日から6か月以内に 限 各国毎の承認に基づいて 各国毎に別個に行う ・延長 米国特許商標庁の特許法 (ドイツ)少なくとも二 の可否 的管理室(Office of 名の特許審査官(報告者、 第92条) の審査 Patent Legal 評価者)及び主席(通常 を行う Administration)の弁護 特許部門長) 機関、 士 (英国)関連する技術領 資格者 他の選 審査官(特許法第91条、 域の特許審査官から 認められない 2つの異なる製品(一方の Aの物質特許に対してA 択肢の 製品は有効成分Aを含み、 の許可が最初の許可なの 発明に 他方の製品は有効成分B 対する を含む)について2つの別 基づいた延長は認めらな 追加の 個のSPCを得ることが可 い。Bが以前に許可を受け 延長の 能と思われる。(ただし たことがない物質であっ 可否226 ECJの判決はない) て、配合剤の許可がB成分 で、他の後行許可に を含む医薬品としては最 初の許可である場合に は、他物質関連の特許は この配合剤の許可に基づ いて存続期間延長出願を できると思われる(判決 等はない)。 延長の 医薬品製品が有効成分A 認められない。(Actavis 特許法(第89条第1項)に 認めら とBから構成されている v Sanofi事件参照) れた成 場合、PTEの製品として適 間延長は対象物質に関係 分含有 格であるためには、成分 なく一回のみ可能となっ 配合剤 の一つは、それ以前に承 ているので、有効成分Bの 226 よると、特許権の存続期 物質A又はBを選択肢とする化学物質発明に係る特許権について、有効成分Aを含む医薬品の先行承認を受けた後、先 行承認に基づく延長登録に加えて、後行承認に基づいて新たな延長登録が現行法では認められるかどうか - 173 - に対す 認されていてはならない 後行処分に基づいた延長 る延長 は不可能(ただし判決等 の可否 はない) 227 ・第三 USPTO(特許情報(延長期 販売承認の許可がされた 特許法第92条 者に対 間、延長後満了日)、企 国の管轄官庁が公告 KIPOから公報発行 する公 業名、製薬品名、一部新 INPADOC(espacenet) 示方法 薬承認日記載あり) UKIPO(特許情報(延長期 間、延長後満了日)、企 業名、製薬品名) ・医薬 FDAによる承認。(FDC 新薬等については欧州医 医薬品はMFDSにて審査 品、農 505(b)(1)) 薬品庁(European 薬事法第31条の2(原料医 薬等に 一部変更申請有(NDA: Medicines Agency、EMA、 薬品の登録など) 関する FDC 505(b)(2)) 旧EMEA)による審査。 承認 Directive 2004/27/EC 一部変更有(薬事法第31 (処 (Directive 2001/83/EC 条の2③) 分)承 Regulation 認、一 (EC)NO726/2004 韓国 部変更 Regulation (EEC) (一部変更も第2条) 承認 No2309/93 ) 農薬管理法第2条 一部変更有 (Regulation(EC)NO.123 4/2008 第9条~第11条 など) 農薬 一部変更有(Guidance document on renewal、 withdrawal and amendment of authorisations under Regulation (EC) No 1107/2009 13170 227 有効成分Aに関する化学物質発明に係る特許権について、有効成分Aを含む医薬品で先行承認を受けた後、有効成分A と有効成分B(有効成分Bは別の医薬品の有効成分として既に承認されたもの)を含有する配合剤で後行承認を受けた場合、 後行承認に基づく延長登録が現行法では認められるかどうか - 174 - rev.p.7) データ データ保護期間5年 医薬品 保護 (Hatch-Waxman 8年(Directive 2004/27 (薬事法第32条(新薬な Exclusivity: 第10条第1項) どの再審査)) FDC 505(c)、505(J)) 再審査期間6年 (+2年の発売保留) (+1年の画期的効能) 農薬 農薬 10年 10年 (Regulation(EC)No1107 /2009) ボーラ 35USC§ 271(e)(1) ー条項 DIRECTIVE Article 2004/27/EC 特許法第96条 10.6 パテン ジェネリックの承認 申請者は、対象ごとに許 トリン (ANDA: FDC 505(j)) 可と関連した請求項を記 ケージ 関連:CFR Title 21 part 載し、許可された事項や 314、21U.S.C.A.§355 特許請求項との関係を詳 ・新薬申請(NDA)の承認 しく記載した説明書を提 を受けた先発メーカー 出しなければならない。 は、その医薬品に関する 薬事法第31条の3(医薬品 物質特許、製造特許、使 特許リスト①) 用方法に関する全ての特 グリーンリストへの登 許を特定し、FDAに情報提 載の対象となる特許は、 供しなければならないこ 物質、剤形、組成、又は ととなっており、提出さ その医薬的用途に関する れた特許はFDAが管理す もので、当該医薬品の主 る「Approved Drug な成分及びその規格、原 Products With 料薬品、剤形、効能・効 Therapeutic 果、及び用法・用量と直 Equivalence 接的に関連しなければな Evaluations」(通称オレ らなく、当該医薬品の品 ンジブック)に掲載され 目許可時に提出された資 - 175 - る。(21 CFR314.53 料により認められた安全 ( Forms FDA3542 and 性・有効性及び品質と直 3542a)) 接的に関連したものでな ければならない。 特許登載申請が要件を 満たした場合、MFDS は特許をグリーンリスト に登載して公告する。 薬事法第31条の3(医薬品 特許リスト②) ANDA申請(薬事法第31条 の4(品目許可申請の事実 を通知)) - 176 - V. 知財高裁平成26年5月30日大合議判決(平成25年(行ケ)第10195-8号) に関する一考察 ~アバスチン®事件の実社会へのインパクト 議員 1. 桝田祥子(東京大学大学院 薬学系研究科) はじめに 本章では、知財高裁大合議判決(平成25年(行ケ)第10195から第10198号、以下、特に断 りがなければ4件全体を「本判決」、4件全体に関わる事案を「本事案」という)に関し、後 発医薬品の市場参入に与える影響等、実社会へのインパクトを具体的に検討することを目 的とする。まず、4判決の対比により本事案の全体像を概観し、次に、対象となったアバス チン®点滴静注(一般名:ベバシズマブ(遺伝子組換え)注)の特徴を把握した上で、本判決 に基づき対象特許権2件が延長登録された場合の効果について、審決(不服2011-8105号か ら2011-8108号)時の状況と比較しながら、主として実社会へのインパクトに関して検討を 行う。 2. 事案の検討 本事案は、医薬品「アバスチン®点滴静注(一般名:ベバシズマブ(遺伝子組換え)注、以 下、本剤という) 」に関する二つの特許権(特許3398382号、特許3957765号)について、同 医薬品に関する「処分の対象となった物について特定された用途」のうち「効能・効果」 「用法・用量」のみが異なる後行処分229(以下、本処分という) が同一の先行処分228に対し、 について、特許3398382号では追加的に、特許3957765号では先行処分で延長登録の機会を 逸したにもかかわらず(後述)新たに、延長登録が認められた事例である。 本事案では、特許庁審査基準の改訂(平成23年12月28日)の契機となったパシーフ®事件 (平成20年(行ケ)第10458-60号、平成21年(行ヒ)第324から326号)とは異なり、 先行医 薬品が本件二つの特許権の技術的範囲に属することに争いはなく、また、本処分(販売名 「アバスチン点滴静注用100mg/4mL」又は「同400mg/16mL」、有効成分「ベバシズマブ(遺 伝子組換え)」、効能・効果「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」、用法・用量「他 の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブとして1回7.5mg/kg(体重) を点滴静脈内注射する。投与間隔は3週間以上とする。」)は、「処分の対象となったもの」 228 延長登録の理由となる処分:薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認、処分を特定する番号:承認番 号21900AMX00910000又は21900AMX00921000 229 延長登録の理由となる処分:薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認、処分を特定する番号:承認番 号21900AMX00910000又は21900AMX00921000 - 177 - が先行処分と重複し、 「処分の対象となった物について特定された用途」は、先行処分と同 一の効能・効果であり、用法・用量のみ異なっている。 以下に、全体像、対象医薬品の特徴、対象特許権における延長登録の効果について、検 討を行う。 (1) 概観(全体像) 本事案の4つの事件(以下、各判決を195号、196号、197号、198号という)を概観するた め、対比表を図表Ⅴ―1にまとめた。 - 178 - 9 7 1 - 処分日:2007/4/18 販売名: アバスチン点滴静注用 400mg/16mL 用途(略):結腸・直腸癌 1 回 5.0mg または 10.0mg/kg(体重) /2 週毎 不服2011-8106号 請求日:2011/4/18 審決日:2013/3/5 100mg/4mL 用途(略):結腸・直腸癌 1回5.0mgまたは10.0mg/kg(体重) /2週毎 不服2011-8105号 請求日:2011/4/18 審決日:2013/3/5 用途(略):結錫・直腸癌 用途(略):結腸・直腸癌 販売名: アバスチン点滴静注用 400mg/16mL 100mg/4mL 処分日:2007/4/18 販売名: アバスチン点滴静注用 販売名:アバスチン点滴静注用 承認番号:21900AMX00921000 承認番号:21900AMX00921000 承認番号:21900AMX00910000 <問題となった先行処分> 拒絶査定日:2011/1/6 拒絶査定日:2011/1/6 承認番号:21900AMX00910000 出願日:2009/12/17 出願日:2009/12/17 <問題となった先行処分> 延長出願 2009-700157 延長出願2009-700156 延長期間:5 年 拒絶査定日:2011/1/6 登録日:2003/2/14 登録日:2003/2/14 延長期間:5年 出願日:2009/12/17 審査請求日:1999/10/25 審査請求日:1999/10/25 1 回 7.5mg/kg(体重)/3 週毎 延長出願2009-700158 出願日:1992/10/28 出願日:1992/10/28 1回7.5mg/kg(体重)/3週毎 登録日:2007/5/18 特許 3398382 号(用途) 特許 3398382 号(用途) 審決日:2013/3/5 請求日:2011/4/18 不服 2011-8107 号 /2 週毎 1 回 5.0mg または 10.0mg/kg(体重) 用途(略):結腸・直腸癌 100mg/4mL 販売名: アバスチン点滴静注用 処分日:2007/4/18 承認番号:21900AMX00910000 <問題となった先行処分> 延長期間:2 年 3 月 30 日 1 回 7.5mg/kg(体重)/3 週毎 用途(略):結腸・直腸癌 100mg/4mL 販売名: アバスチン点滴静注用 承認番号:21900AMX00910000 審査請求日:2000/8/25 出願日:1998/4/3 特許 3957765 号(物質) 判決日:2014/5/30 判決日:2014/5/30 平成 25 年(行ケ)第 10197 号 平成 25 年(行ケ)第 10196 号 判決日:2014/5/30 対比表 平成25年(行ケ)第10195号 【図表Ⅴ―1】知財高裁大合議判決 審決日:2013/3/5 請求日:2011/4/18 不服 2011-8108 号 /2 週毎 1 回 5.0mg または 10.0mg/kg(体重) 用途(略):結腸・直腸癌 400mg/16mL 販売名: アバスチン点滴静注用 処分日:2007/4/18 承認番号:21900AMXOO921000 <問題となった先行処分> 延長期間:2 年 3 月 30 日 1 回 7.5mg/kg(体重)/3 週毎 用途(略):結腸・直腸癌 400mg/16mL 販売名: アバスチン点滴静注用 承認番号:21900AMX00921000 拒絶査定日:2011/1/6 出願日:2009/12/17 延長出願 2009-700159 登録日:2007/5/18 審査請求日:2000/8/25 出願日:1998/4/3 特許 3957765 号(物質) 判決日:2014/5/30 平成 25 年(行ケ)第 10198 号 4事件とも、平成21年12月17日にされた延長登録出願(拒絶査定日平成23年1月6日)につ いて、拒絶査定不服審判(審決日平成25年3月5日)を経て、知財高裁(判決日平成26年5 月30日)で争われた事例であり、パシーフ®高裁判決(平成20年(行ケ)第10458-60号、判決 日平成21年5月29日)、パシーフ®最高裁判決(平成21年(行ヒ)第324から326号、判決日平 成23年4月28日)、新特許庁審査基準に改訂(平成23年12月28日に係属中の延長登録出願、 それ以降に行われた延長登録出願について適用)と時期を同じくしている。 195号、196号は、用途特許(特許3398382号)に関するものであり、197、198号は、物質特 許(特許3957765号)に関するものである。195号と196号、並びに、197号と198号のそれぞれ 異なる点は、延長登録出願における、 「処分の対象となったもの」について、本剤の「分量」 が100mg/4mLあるいは400mg/16mLである点、また、この「分量」(規格違い)によって「処 分を特定する番号」が、承認番号21900AMX00910000あるいは21900AMX00921000である点で ある。なお、 「分量」については、延長された特許権の効力範囲を特定しない、というのが 本判決の傍論で判示されており、195号と196号、並びに、197号と198号のそれぞれについ ては、延長された特許権の効力範囲は同一となり、法的効果に違いはないと考えられる。 4事件とも、問題となった先行処分は、本剤の製造販売承認時(平成19年4月18日)のもの であり、本処分(平成21年12月17日)とは「効能・効果」が同一であり「用法・用量」が異 なる。なお、用途特許に関しては、当該先行処分においても延長登録が認められている。 本事案では、用途特許が物質特許よりも先に出願がされている。用途特許は、平成4 年 10月28日に特許出願され、ほぼ7年後の平成11年10月25日(当時の審査請求期間は7年)に 審査請求され、平成15年2月14日に登録されている。一方、物質特許は、平成10年4月3日に 出願され、約2年5か月後に審査請求されたが、審査に7年弱の期間を要し、本剤の初回承認 時までに、特許権の設定登録がされておらず、初回承認ときは、延長登録要件を満たして いなかった。 (2) 対象医薬品 本剤は、従来の抗がん剤が、主としてがん細胞そのものを攻撃するのに対し、がん細胞 が増殖する際に必要な栄養分等を運ぶ血管新生を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制 する新たな作用機序をもつ。通常、がんの化学療法は、異なる作用機序をもつ複数の抗が ん剤を組合せて定期的に投与し、がん種に応じて、世界的に確立された標準化学療法230が 用いられている。本剤は、血管新生阻害作用によりがん細胞増殖抑制効果を生ずるため、 230 例えば、転移性結腸・直腸がん症例に対して、カペシタビン・オキサリプラチン療法(XELOX療法)、オキサリプラ チン・フルオロウラシル・ホリナートカルシウム療法(FOLFOX4療法)、イリノテカン塩酸塩水和物・フルオロウラシル・ ホリナートカルシウム療法(IFL療法)、フルオロウラシル・ホリナートカルシウム療法(5-FU/LV療法)等、非小細胞肺 がん症例に対して、カルボプラチン・パクリタキセル療法(CP療法)、ゲムシタビン・シスプラチン療法(GC療法)等 - 180 - 既存の標準化学療法に上乗せ(アドオン)して用いるのが基本となる。 図表Ⅴ―2に、本剤の効能・効果、用法・用量等をまとめた231。 【図表Ⅴ―2】アバスチン点滴静注の効能・効果、用法・用量等 効能・効果 用法・用量 製造・効追・用法変更追加等 治 療 切 除不 他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズ 2007 年 4 月 18 日 能 な 進 行・ マブ(遺伝子組換え)として 1 回 5mg/kg(体重)又は 10mg/kg アバスチン点滴静注用 100mg/4ml: 再 発 の 結 (体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は 2 週間以上とする。 21900AMX00910 腸・直腸癌 アバスチン点滴静注用 400mg/16ml: 21900AMX00921 他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズ 2009 年 9 月 18 日 マブ(遺伝子組換え)として 1 回 7.5mg/kg(体重)を点滴静脈 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんに対し 内注射する。投与間隔は 3 週間以上とする。 て用法・用量の追加 扁 平 上 皮癌 他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズ 2009 年 11 月 6 日 を 除 く 切除 マブ(遺伝子組換え)として 1 回 15mg/kg(体重)を点滴静脈 効能・効果及び用法・用量の追加 不 能 な 進 内注射する。投与間隔は 3 週間以上とする。 行 ・ 再 発の 非 小 細 胞肺 癌 卵巣癌 2013 年 11 月 22 日 効能・効果及び用法・用量の追加 手 術 不 能ま パクリタキセルとの併用において、通常、成人にはベバシズマ 2011 年 9 月 26 日 た は 再 発乳 ブ(遺伝子組換え)として 1 回 10mg/kg(体重)を点滴静脈内 効能・効果及び用法・用量の追加 癌 注射する。投与間隔は 2 週間以上とする。 悪 性 神 経膠 通常、成人にはベバシズマブ (遺伝子組換え) として 1 回 10mg/kg 2013 年 6 月 14 日 腫 (体重)を 2 週間間隔又は 10mg/kg(体重)を 3 週間間隔で点 効能・効果及び用法・用量の追加 滴静脈内注射する。なお、患者の状態により投与間隔は適宜延 長すること。 本剤は、平成19年4月18日に、効能・効果「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」、 用法・用量「他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子 組換え)として1回5mg/kg(体重)又は10mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔 は2週間以上とする。(以下、5 or 10mg/kg(体重)、2週毎という)」として、二つの規格・ 含量「1バイアル中、ベバシズマブ(遺伝子組換え)100mg含有」「1バイアル中、ベバシズ マブ(遺伝子組換え)400mg含有」で、中外製薬株式会社により製造販売承認が取得された。 以来、4種のがん(悪性神経膠腫を除く)に関して、標準化学療法との併用(アドオン)を 基本とする用法・用量で追加承認がされている。なお、再審査期間は、悪性神経膠腫を除 いて、初回承認の平成19年4月18日から8年間、悪性神経膠腫では、効能・効果追加承認さ れた平成25年6月14日から10年間となっている。 本事案が問題になったのは、効能・効果「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」 に対し、用法・用量が2度にわたり承認されたことによる。初回承認の用法・用量「5mg or 10mg/kg(体重)、2週毎」は、標準化学療法であるFOLFOX4療法(オキサリプラチン・フルオ 231 本剤インタビューフォームより作成 - 181 - ロウラシル・ホリナートカルシウム療法)の投与間隔に合わせて用量設定されたものであ る。2度目の承認の用法・用量「他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバ シズマブ(遺伝子組換え)として1回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔 は3週間以上とする。 (以下、7.5mg/kg(体重)、3週毎という)」は、XELOX療法(カペシタビ ン・オキサリプラチン療法)に対応したものである。本剤の用法・用量が「5 or 10mg/kg(体 重)、2週毎」 「7.5mg/kg(体重)、3週毎」の2回に分かれたのは、日本におけるFOLFOX療法と XELOX療法の承認に時間差が生じたことが一因であると考えられる232。 本剤の国内売り上げは、順調に伸び、平成25年には754億円(平成24年655億円、平成23 年564億円)233となり、中外製薬株式会社の売上トップ製品となっている。抗体医薬である が、既に、協和キリン富士フイルムバイオロジクス(FKB)社がバイオシミラーの開発に取り 組み、平成26年から臨床試験開始予定であることがプレスリリース(平成24年10月24日)234 されており、特許切れ後には、バイオシミラーの参入が予想される。 (3) 対象特許権における延長登録の効果 本判決に基づき延長登録が認められた場合の権利状況、並びに、審決時235の権利状況に ついて、図表Ⅴ―3及び図表Ⅴ―4にまとめた。なお、延長された特許権の効力範囲(特許法 第68条の2)については、図表Ⅴ―3においては本判決の傍論で示された知財高裁の見解を前 提とし、図表Ⅴ―4においては、特許庁の見解236を前提とした。 232 オキサリプラチン(販売名:エルプラットⓇ点滴静注液、ヤクルト株式会社)のインタビューフォームによれば、日 本においては、FOLFOX療法は2005年3月、XELOX療法は2009年9月に承認されている。 233 中外製薬アニュアルレポートより作成 234 「協和キリン富士フイルムバイオロジクス大腸がんなどに高い治療効果を持つ抗VEGF ヒト化モノクローナル抗体製 剤「ベバシズマブ」のバイオシミラー医薬品の開発開始を決定」富士フィルム株式会社、協和発酵キリン株式会社 http://fujifilmkyowakirin-biologics.com/ja/information/article_0002.html [最終アクセス日2015年2月19日] 235 不服2011-8105号から不服2011-8108号(審決日2013年3月5日) 236 「「特許権の存続期間の延長」の審査基準改訂案に対する御意見の概要及び回答」のNo.11(特許庁調整課審査基準室、 2011年12月28日) http://www.jpo.go.jp/iken/pdf/tokkyoken_encyo_kekka/kaitou.pdf[最終アクセス日2015年2月23 日] - 182 - 【図表Ⅴ―3】本判決に基づき延長登録が認められた場合の権利状況(効能・効果「結腸・ 直腸癌」) 出願日 審査請求日 承認日 延長期間 権利満了日 登録日 特 許 1992/10/28 3398382 2007/4/18 4年2月3 2003/2/14 (用法 日 2016/12/31 9 年 8 月 13 「物」に係るものとして、 日 「成分(有効成分に限らな 5or10mg/kg,2W) 2009/9/18 い。)によって特定され、 5年 2017/10/28 (用法 8 年 1 月 10 かつ、「用途」に係るもの 日 として、「効能、効果」及 び「用法、用量」によって 7.5mg/kg,3W) 特 許 1998/4/3 3957765 2000/8/25 2007/4/18 2007/5/18 (用法 (物質) 効力範囲(見解) 有効期間 1999/10/25 (用途) 実質特許 なし 2018/4/3 10 年 11 月 16 特定された当該特許発明 日 の実施の範囲で、効力が及 ぶものと解するのが相当 5or10mg/kg,2W) 2009/9/18 2 年 3 月 30 (用法 日 2020/8/2 10 年 11 月 16 日 7.5mg/kg,3W) 本判決に基づき延長登録が認められた場合、用途特許3398382号は、延長特許権の効力範 囲が、効能・効果「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌(以下、特に断りのないか ぎりは単に結腸・直腸癌という)」及び用法・用量「5 or 10mg/kg(体重)、2週毎」で特定 される権利については、4年2月3日の延長期間が認められ、権利満了日は平成28年12月31 日となる。また、延長特許権の効力範囲が、効能・効果「結腸・直腸癌」及び用法・用量 「7.5mg/kg(体重)、3週毎」で特定される権利については、5年の延長期間が認められ、権 利満了日は平成29年10月28日となる。物質特許3957765号は、延長特許権の効力範囲が、効 能・効果「結腸・直腸癌」及び用法・用量「5 or 10mg/kg(体重)、2週毎」で特定される権 利については、延長登録が認められず、権利満了日は平成30年4月3日となる。また、延長 特許権の効力範囲が、効能・効果「結腸・直腸癌」及び用法・用量「7.5mg/kg、 3週毎」 で特定される権利については、2年3月30日の延長期間が認められ、権利満了日は平成32年8 月2日となる。 【図表Ⅴ―4】 審決時の権利状況(効能・効果「結腸・直腸癌」) 出願日 審査請求日 承認日 延長期間 権利満了日 登録日 特 許 1992/10/28 3398382 1999/10/25 2007/4/18 4年2月3 (用法 日 2016/12/31 9 年 8 月 13 第 67 条の 3 第 1 項第 1 号 日 における「特許発明の実施 5or10mg/kg,2W) (本件処分の対象となっ 2009/9/18 た医薬品又は農薬の『発明 (用法 特定事項(及び用途)に該 当する事項』によって特定 7.5mg/kg,3W) 特 許 3957765 (物質) 1998/4/3 効力範囲(見解) 有効期間 2003/2/14 (用途) 実質特許 2000/8/25 2007/4/18 2007/5/18 (用法 なし 2018/4/3 10 年 11 月 16 される医薬品の製造販売 日 等の行為又は農薬の製 造・輸入等の行為)の範囲 5or10mg/kg,2W) 2009/9/18 8 年 7 月 16 (=禁止解除範囲)と原則 (用法 日 一致 7.5mg/kg,3W) - 183 - 一方、審決時の状況においては、用途特許3398382号は、延長特許権の効力範囲が、効能・ 効果「結腸・直腸癌」で特定される権利(用法・用量では限定されない)については、初 回承認(平成19年4月18日)時に、4年2月3日の延長期間が認められ、権利満了日は平成28年 12月31日となる。また、延長特許権の効力範囲が、効能・効果「結腸・直腸癌」で特定さ れる権利については、初回承認時に延長登録が認められず、権利満了日は平成30年4月3日 となる。 本判決と審決の延長登録の効果を比較すると、本判決においては、同一の効能・効果に 対する先行処分があっても、用法・用量が異なる場合には、そのそれぞれに延長登録が認 められるため、審決時の状況に比べて、用途特許においては、効能・効果「結腸・直腸癌」 のうち用法・用量「7.5mg/kg(体重)、3週毎」で特定される権利について、延長期間が4年2 月3日から5年に延び、特許権の存続期間が9月28日伸長する。物質特許においても、効能・ 効果「結腸・直腸癌」のうち用法・用量「7.5mg/kg(体重)、3週毎」で特定される権利につ いて、新たに延長期間2年3月30日が認められ、特許権の存続期間が2年3月30日伸長する。 3. 本事案の実社会への影響 以上の検討を踏まえて、本事案の実社会への影響について、主として後発医薬品市場参 入時期との関係において、考察を行う。 上述のとおり、本判決と審決の延長登録の効果の相違は、本判決では、効能・効果「結 腸・直腸癌」のうち、用法・用量「7.5mg/kg(体重)、3週毎」で特定される権利についての 権利満了日が、用途特許では平成28年12月31日から平成29年10月28日、物質特許では平成 30年4月3日から平成32年8月2日となる点である(図表Ⅴ―3、図表Ⅴ―4参照)。 仮に、本事案において、用途特許と物質特許のみが、本剤の後発品参入を阻止できる特 許権だったとした場合、後発品が参入できる時期は、特許切れの時期が、より遅い物質特 許の権利満了日以降となる237。 ところで、厚生労働省の現行の後発医薬品承認手続では、先発医薬品の物質特許及び用 途特許が存在する場合には、後発医薬品を承認しないのが原則であるが、 「先発医薬品の一 部の効能・効果、用法・用量(以下、「効能・効果等」という。)に特許が存在し、その他 の効能・効果等を標ぼうする医薬品の製造が可能である場合については、後発医薬品を承 237 なお、本判決においては、延長された特許権の効力範囲は、 「物」に係るものとして, 「成分(有効成分に限らない。)」 によって特定され,かつ,「用途」に係るものとして,「効能,効果」及び「用法,用量」によって特定された当該特許 発明の実施の範囲で,効力が及ぶものと解するのが相当とされているが、 「成分」が一部異なる後発医薬品に対する延長 特許権の権利行使ができるか否かは、議論の余地が残る。 - 184 - 認できることとすること。この場合、特許が存在する効能・効果等については承認しない 方針であるので、後発医薬品の申請者は事前に十分確認を行うこと。」との行政指導がなさ れており238、効能・効果ごとに先発医薬品の特許が切れた場合には、後発医薬品はその効 能・効果ごとに承認を取ることができる(いわゆる虫食い承認)。ただし、本剤の効能・効 果「結腸・直腸癌」のように、効能・効果が同一で用法・用量が複数ある場合には、用法・ 用量に関して一部の特許(物質・用途)が切れても、効能・効果全体で特許(物質・用途) が切れていなければ、後発医薬品の承認はされない可能性がある。 図表Ⅴ―5に、本剤(効能・効果「結腸・直腸癌」に限る)の後発医薬品の事実上の市場 参入時期となる後発医薬品薬価収載時期と、それに伴う先発医薬品の薬価下落時期となる 先発品薬価改定時期について、本判決による延長登録の場合と審決による延長登録の場合 を記載した。なお、本判決による延長登録の場合は、後発医薬品の承認が「効能・効果」 ごとにされるか「用法・用量」ごとにされるかを区別して、一覧にまとめた。 【図表Ⅴ―5】後発品薬価収載、先発品薬価改定時期の比較(予想) 大合議判決による 延長登録の場合 後発品承認 「効能・効果」ごと に認められた場合 「用法・用量」ごと に認められた場合 審決時の状況 「効能・効果」ごと に認められた場合 物質特許満了日 後発品薬価収載 2018/4/3 2020/11 (5or10mg/kg,2w 毎) 2020/8/2 (7.5mg/kg,3w 毎) 2018/4/3 2018/11 (5or10mg/kg,2w 毎) 2020/8/2 2020/11 (7.5mg/kg,3w 毎) 2018/4/3 2018/11 (効能・効果全体) 先発品薬価改訂 2022/4 2020/4 2020/4 現行制度においては、後発品(バイオシミラー製品)の薬価収載は年2回、5月と11月で あり、通常、厚生労働省より承認を受けた後発品は、その直後の機会に薬価収載される。 また、先発品の薬価改定は、偶数年の4月にされるが、後発品が薬価収載された後、初めて の薬価改定においては、通常、先発品の薬価は数割減となる239。先発品企業にとっては、 後発品薬価収載は、後発品市場参入による販売シェア低下を意味し、その後2年以内に行わ れる先発品薬価改定は、薬価下落による売上減を意味する。この2つの時期が、先発品企業 の売上に与える影響は大きく、企業経営の観点から、特許戦略により、できるだけこれら の時期を遅らせるための努力がなされるのが一般的である。 238 厚生労働省医政局経済課長「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いにつ いて」医政経発第0605001号、薬食審査発第0605014号 239 アバスチン®点滴静注は、発売7年目の2013年度売上が754億円であり、このペースで売上げが伸びれば、2020年には年 間売上が1000億円程度を超えると予想され、後発品参入後の薬価下落による売り上げに対する影響は、数百億円規模に なる可能性がある。 - 185 - 図表Ⅴ―5で示すとおり、本判決により延長登録が認められた場合、本剤に関する後発品 薬価収載時期及び先発品薬価改定時期は、後発品承認が、効能・効果ごとで認められた場 合と用法・用量ごとに認められた場合で異なる。 仮に、厚生労働省により、本剤の後発品の承認が、効能・効果ごとで認められると判断 された場合には、用法・用量「5 or 10mg/kg(体重)、2週毎」で特定される権利の存続期間 が満了しただけでは、後発品の承認はされず、用法・用量「7.5mg/kg(体重)、3週毎」で特 定される権利についての存続期間が満了して初めて、効能・効果「大腸・直腸癌」に関し て、後発品の承認がされる。すると、平成32年8月2日の物質特許切れ後、後発品が承認さ れ、直後の後発品薬価収載(平成32年11月)以降、後発品が市場参入する。そして、先発 品薬価下落が起こる薬価改定は平成34年4月となる。 一方、本剤の後発品の承認が、用法・用量ごとで認められると判断された場合には、用 法・用量「5 or 10mg/kg(体重)、2週毎」ならび「7.5mg/kg(体重)、3週毎」で特定される 権利それぞれについての存続期間が満了した後に、効能・効果「大腸・直腸癌」のうちそ れぞれの用法・用量に関して、後発品の承認がされる。すると、用法・用量「5 or 10mg/kg(体 重)、2週毎」については、平成30年4月3日の物質特許切れ後、後発品が承認され(ただし 平成30年5月の薬価収載には間に合わない可能性が高い)、後発品薬価収載(平成30年11月) 以降、後発品が市場参入する。用法・用量「7.5mg/kg(体重)、3週毎」については、平成32 年8月2日の物質特許切れ後、後発品が承認され、直後の後発品薬価収載(平成32年11月) 以降、後発品が市場参入する。そして、先発品薬価下落が起こる薬価改定は平成32年4月と なる。 審決時の状況と比べると、本判決による効果は、仮に、厚生労働省による後発品承認が、 効能・効果ごとに認められた場合には、後発品薬価収載とそれに伴う後発品の市場参入は2 年遅くなり(平成30年11月から平成32年11月)、先発品薬価改定による薬価下落も2年遅くな る(平成32年4月から平成34年4月)。一方、厚生労働省による後発品承認が、用法・用量ご とに認められた場合には、後発品薬価収載とそれに伴う後発品の市場参入は、効能・効果 「大腸・直腸癌」のうち用法・用量「5 or 10mg/kg(体重)、2週毎」に関しては、審決の場 合と同時期(平成30年11月)となり、用法・用量「7.5mg/kg(体重)、3週毎」に関しては、 2年遅くなり(平成30年11月から平成32年11月)、先発品薬価改定による薬価下落は、審決の 場合と同時期(平成32年4月)となる。 本判決により同一の効能・効果に関し用法・用量ごとに延長登録がされると、厚生労働 省による後発品承認が、効能・効果ごと又は用法・用量ごとのいずれで認められた場合に も、以下のような問題が生じることが予想される。すなわち、厚生労働省の後発品承認が - 186 - 効能・効果ごとに認められた場合には、用法・用量「5 or 10mg/kg(体重)、2週毎」で特定 される権利については平成30年4月3日に権利満了するにもかかわらず、用法・用量 「7.5mg/kg(体重)、3週毎」で特定される権利が満了する平成32年8月2日までは後発品承認 がされることはなく、実質的に用法・用量「5 or 10mg/kg(体重)、2週毎」で特定される権 利も含めて効能・効果「大腸・直腸癌」全体で、平成32年8月2日まで、先発品「アバスチ ン®点滴静注」の市場独占状態が続くこととなる。また、それに伴い、薬価下落による先発 品売上減の影響が大きい先発品薬価改定時期が平成34年4月になる。一方、厚生労働省の後 発品承認が用法・用量ごとに認められた場合には、効能・効果「結腸・直腸癌」のうち用 法・用量「5 or 10mg/kg(体重)、2週毎」についてのみ承認された後発医薬品が市場に出回 り、医療現場で用いられることとなる240。 4. むすびにかえて 以上の検討により、本判決により延長登録が認められた場合には、本剤の後発品(効能・ 効果「結腸・直腸癌」)の市場参入時期が、審決時の権利状況に比べて、最大で2年程度遅 れる可能性があることを明らかにした。この後発品市場参入時期の遅れ及び先発品薬価下 落時期の遅れが、我が国の医療保険財政に与える影響については、今後慎重に検討する必 要があるが、決して小さくはないと考えられる241。また、用法・用量ごとに延長登録を認 め、一つの特許権に対し、延長期間が異なる効力範囲を多く存在させることは、後発品が 承認される範囲(効能・効果ごと又は用法・用量ごと)及び時期を予見しにくい状況にす ることを示した。掛かる後発品市場参入に対する本判決の影響は、延長登録された特許権 の効力範囲の問題242とともに、更に詳細に検討する必要があるが、少なくとも、我が国の 後発医薬品使用促進政策に逆行することはないように留意するべきである。 もちろん、上記にかかわらず、特許権の存続期間の延長登録の制度趣旨からして、特許 発明を実施する意思及び能力があってもなお、特許発明を実施することができなかった特 許権者に対して、 「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除されることとなっ た特許発明の実施行為について、当該「政令で定める処分」を受けるために必要であった 期間、特許権の存続期間を延長する措置を講じることによって、特許発明を実施すること 240 なお、本件については、現場に混乱を生じさせるという理由で、厚生労働省の後発品承認は、用法・用量ごとにされ ず、効能・効果ごとにされる可能性の方が高いと考えられる。 241 アバスチンR点滴静注は、発売7年目の2013年度売上が754億円であり、このペースで売上げが伸びれば、2020年には 年間売上が1000億円程度を超えると予想され、後発品参入後の薬価下落による売り上げに対する影響は、数百億円規模 になる可能性がある。アバスチンR点滴静注の薬価下落が2年遅れれば、更に2年間、1000億規模の売上は維持されること となる 242 なお、本判決においては、延長された特許権の効力範囲は、 「物」に係るものとして, 「成分(有効成分に限らない。)」 によって特定され,かつ,「用途」に係るものとして,「効能,効果」及び「用法,用量」によって特定された当該特許 発明の実施の範囲で,効力が及ぶものと解するのが相当とされているが、 「成分」が一部異なる後発医薬品に対する延長 特許権の権利行使ができるか否かは、議論の余地が残る。 - 187 - ができなかった不利益の解消を図るべきである。しかしながら、本事案においては、特許 発明を実施することができなかった不利益以上の保護を特許権者に与えているようにもと れる。 まず、物質特許(3957765号)は、特許権の設定登録が遅れたことが原因で、初回製造承 認時(平成19年5月18日)に延長登録が認められなかったと考えられるが、これまでの延長登 録実務を大きく変更してまでも、効能・効果「結腸・直腸癌」に対する2度目の承認(用法・ 用量「7.5mg/kg(体重)、3週毎」)で、救済する事情があったのかどうか疑問である。 次に、効能・効果「結腸・直腸癌」に対する2度目の承認である「7.5mg/kg(体重)、3週 毎」の用法・用量は、これまでの延長登録実務を大きく変更してまでも延長登録制度で保 護すべき対象であるか否かは、以下の点について、再考を要する。 本処分について延長登録を認めることは、厚生労働省の後発品承認の実務状況からし て、実質的には効能・効果「結腸・直腸癌」全体での独占状態の延長を認めることに もなりかねない。 1度目の承認である「5 or10mg/kg(体重)、2週毎」に対して、発明の程度に差異はない と考えられる。本剤は、医療現場では、2週毎の標準化学療法(FOLFOX療法など)に対 して5mg/kgが汎用され、3週間毎の標準化学療法(XELOX療法)に対して7.5mg/kgが使 用されており、現場の医師にとっては、単に投与間隔に応じて用量を増減している感 覚であるし、薬物動態的にも効果の程度は同等である。 本剤は、複数他剤(標準化学療法)との併用が基本であることから、他剤における標 準化学療法の研究開発、申請・承認の状況に応じて、本剤の用法・用量に関する国内 臨床試験の内容・実施時期243、申請・承認時期にずれが生じるのは必然である。 本章では、本事案の実社会へのインパクトについて、後発医薬品の市場参入への影響を 中心に検討を行なった。特許権の存続期間の延長登録の制度は、規制産業に対する特許保 護の例外として規定されているが、当該規制産業の特殊事情を踏まえ、対世的効力を勘案 して制度設計がなされるべきである。医薬品産業においては、新薬を開発するインセンテ ィブを製薬企業に与えるのは当然のことながら、一方で、比較的安価な後発医薬品の安定 供給を確保するという観点での国民に対する配慮も必要であろう244。 243 本剤インタビューフォームによれば、用法・用量「7.5mg/kg(体重), 3週毎」の承認に際し、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験(JO19380 試験)が新たに実施されたと解される。 244 本章の内容は、平成27年1月9日第2回有識者会議にて桝田祥子(東京大学大学院薬学系研究科)が行った発表を基に、 本人が記載したものである。 - 188 - Ⅵ. まとめ-特許権の存続期間の延長登録制度のあり方についての一考察 1. はじめに 昭和62年(1987年)の特許法改正において、特許権の存続期間の延長登録制度が設けら れ、安全性の確保等の法規制の処分を受けるための所要の実験・審査等に長期間を要する ことにより相当な期間にわたり特許発明の実施ができない分野について、特許権の存続期 間の延長を行うこととされた。 特許権の存続期間の延長登録制度が設けられることにより、特許権が存続しているにも かかわらず、特許発明の実施をすることができず、発明の保護に著しく欠けていたという 状況の改善が図られたが、特許権の存続期間の延長制度は、あくまで、特許法の例外とし て設けられたものであり、制度の在り方の検討を行う際には、最高裁平成11年4月16日判決 (民集53巻4号627頁)においても判示されているように、発明の保護とともに、他社の研 究成果を利用する側の立場への配慮を行うことが重要であることから、発明の保護と利用 とのバランスを考慮しつつ、延長登録の対象となる分野、延長登録の要件、延長登録され た特許権の効力等についての検討を行う必要がある。 以下、我が国における特許権の存続期間の延長登録制度の導入時になされた議論、制度 の運用に影響を与えた判決、判決を踏まえた審査基準の改訂等について紹介しつつ、特許 権の存続期間の延長制度の在り方について検討することとしたい。 2. 特許権の存続期間の延長登録制度の導入時の議論 (1) 延長登録の対象分野 安全性の確保等のための法規制は、その趣旨からして必要欠くべからざるものであり、 法規制をクリアするために、ある程度の期間を要することは、制度上、やむを得ないこと である。 このため、特許権の存続期間の延長登録制度における延長登録の対象分野については、 「特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処 分であって当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要す るものとして政令で定めるものを受けることが必要である」(特許法第67条2項)ことが要 件とされており、処分の目的を達成するためには、どのように早く手続を運んでも、やむ を得ず、相当の期間を要してしまう分野を延長登録の対象分野とすることとしている245。 245 特許庁総務部総務課制度改正審議室『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説(第19版)』特許庁、平成25年、222 頁 - 189 - したがって、安全性の確保等の法規制がなされている分野が全て延長登録の対象分野と なるわけではなく、 「処分を的確に行うには相当の期間を要する」と認められる分野のみが 延長登録の対象として政令で指定されるわけであるが、一般的に、法規制をクリアするた めには、2年程度を要し、その程度の特許期間の侵食は、特許権者の保護に著しく欠けるも のではないと考えられたことから、「相当な期間」の目安は、「2年以上」とされた246。 なお、知的財産推進計画2008の提言を受けて開催された産業構造審議会知的財産政策部 会特許制度小委員会の特許権の存続期間の延長制度検討WGにおいては、延長登録の対象分 野については、安全性等の審査に係る期間の「平均」を検討し、平均的に相当の期間を要 し、その間、特許発明が実施できないため、他の技術分野よりも発明の保護が著しく欠け るという状況が生じているか否かにより判断するものとし、特許法の趣旨を踏まえ、処分 と関係する特許権者と第三者とのバランス、イノベーションの進展への寄与、国際的動向 等の政策的観点についても検討すべきであるとされている247。 (2) 延長登録の要件 延長登録の要件(特許法第67条の3第1項)のうち、特に重要なものは、 「特許発明の実施 に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められない とき」である。 特許権の存続期間の延長登録制度の趣旨は、特許権者は何らの法規制もなければ特許発 明の実施をすることができたにもかかわらず、特許法第67条2項の政令で定める処分を受け ることが必要であるためにその実施が妨げられている場合に、当該特許権の存続期間の延 長を認めることであるから、処分を受けることによって禁止が解除された範囲と特許発明 (特許権)の範囲に重複している部分がなければ、特許発明の実施に当該処分を受けるこ とが必要であったとは認められないこととなる248。 また、処分を受けることによって禁止が解除された範囲と特許発明(特許権)の範囲に 重複する部分があっても、先行処分を受けることにより、特許発明の実施をすることがで きるようになっている場合には、後行処分を受けることは、特許発明の実施に必要であっ たとは認められないことから、延長登録を受けることはできないこととされた。 処分を受けることによって禁止が解除された範囲と特許発明(特許権)の範囲の重複を いかに判断するかは、法規制の本質を踏まえて検討がなされるべきであるが、我が国の特 246 新原浩朗『改正特許法解説』有斐閣、84頁 産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会「特許権の存続期間の延長制度検討WG中間とりまとめ(案)平 成21年7月16日」 (http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/entyou-wg05_shiryou/shiryou03.pdf[最終ア クセス日2015年2月23日] 248 特許庁総務部総務課制度改正審議室『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説(第19版)』特許庁、平成25年、230 頁 247 - 190 - 許権の存続期間の延長登録制度においては、延長登録の対象分野は、政令で定められるこ ととなっており、法律において、政令指定される分野の法規制の本質を踏まえた具体的要 件を規定することは困難であるため、個々の法規制の本質を踏まえつつ、それぞれの分野 における解釈を明確にする審査基準が策定された。 薬事法等の規制法では、有効成分、用途、製法等の要素を特定して処分が行われるため、 処分を受けることにより禁止が解除される範囲は、これらの要素を全て特定したものであ るとの考え方もあったが、薬事法等の法規制の本質は、その立法趣旨から見て、ある特定 の物(又は特定の用途に使用する物)を製造・販売等することを規制することにあり、処 分において特定される要素のうち、物(又は特定の用途に使用する物)が最も重要な要素 となるため、処分を受けた物(又は、物と用途)が特許請求の範囲に記載されている場合 には、その特許発明の実施に当該処分を受けることが必要であったと認めることとした249。 また、物と用途が同一である処分が複数ある場合、すなわち、有効成分及びその用途が 同一で剤型、用法、用量等のみが異なる複数の処分が与えられた場合についても、それぞ れの処分に基づいて複数回の延長登録を認めることとする考え方もあったが、同様の考え 方で、最初の処分を受けることによって製造・販売等の禁止が解除され、その有効成分と 効能・効果の組合せについて特許発明の実施ができるようになったと考え、最初の処分に 基づいてのみ、延長登録を行うことを認め、その後の処分については、特許発明の実施に 処分を受けることが必要であったとは認めないこととした250。 なお、用途の追加については、先行処分を受けた用途と後行処分を受けた用途が一部共 通している場合(先行処分が下位概念の用途であり、後行処分が上位概念の用途の場合等) は、後行処分も特許発明の実施に必要であったと認めることとした251。 延長登録の要件についてこのような運用を行うことは、研究開発の成果の中核である物 質特許や用途特許の保護を的確に行い、研究開発のインセンティブを高め、イノベーショ ンの進展に寄与するという観点からも妥当なものであった。 延長登録の要件を延長登録の対象となる分野毎に法律に規定せずに、規制法の趣旨を解 釈した運用を行うことは、延長登録の対象分野を政令で定める以上、やむを得ないことで あり、制度の趣旨を踏まえた運用を行うためにも妥当なものであると考えられ、特許権の 存続期間の延長登録制度導入当時は、医薬品の分野においては、剤型や用法・用量等に特 徴のある発明について延長登録出願がなされることはほとんどなかったこともあり、運用 上の問題は生じておらず、裁判所(審決取消訴訟)においても支持されていた。 249 250 251 平山 孝二 『詳説改善多項制・特許権の存続期間の延長制度』発明協会、189頁 平山 孝二 『詳説改善多項制・特許権の存続期間の延長制度』発明協会、192頁 平山 孝二 『詳説改善多項制・特許権の存続期間の延長制度』発明協会、196頁 - 191 - (3) 延長登録された特許権の効力 延長登録された特許権の効力は、「延長登録の理由となった特許法第67条第2項の政令で 定める処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定めら れている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施 以外の行為には、及ばない」(特許法第68条の2)とされている。 特許権の存続期間の延長登録制度の趣旨は、特許権者は何らの法規制もなければ特許発 明の実施をすることができたにもかかわらず、特許法第67条2項の政令で定める処分を受け ることが必要であるためにその実施が妨げられている場合に、当該特許権の存続期間の延 長を認めるものであるため、処分を受けることによって禁止が解除された範囲と特許発明 (特許権)の範囲の重複している部分に延長された場合の特許権の効力が及び、重複して いる部分以外には効力が及ばないこととなるが、延長登録された特許権の効力は、特許法 の解釈として、処分の対象となった物を、処分において定められる特定の用途について、 実施する場合にのみ(については全て)及ぶこととされた。 法規制による禁止が解除された範囲については、個々の法規制の趣旨に基づき判断せざ るを得ないが、既に述べたように、法規制による処分は、安全性の確保等を図る観点から、 多くの要素を特定した形で行われることが一般的である。例えば、医薬品の場合には、有 効成分や効能・効果に加え、剤型、用法、用量、製法等も特定され、これらの要素のいず れかを変更するときには、新たな処分(製造承認)を受けることが求められることから、 処分を受けることにより禁止が解除される範囲は、これらの要素を全て特定した範囲であ り、承認に基づいて、特許権の存続期間を延長した場合の特許権の効力は、その範囲とす べきであるとの考え方もあり得るが、医薬品に関する法規制の本質は、ある物質を医薬品 として、特定の効能・効果用に製造・販売することであると考えることができる252ことか ら、有効成分及び効能・効果が同一であれば、剤型、用法、用量、製法等が異なる実施の 形態にも、延長後の特許権の効力が及ぶと解釈することが妥当であると考えられた253。 延長登録された特許権の効力をこのように解釈することは、研究開発の成果の中核であ る物質特許や用途特許の保護を的確に行い、研究開発のインセンティブを高め、イノベー ションの進展に寄与するという観点からも妥当なものであった。 252 253 新原浩朗『改正特許法解説』有斐閣、106頁 特許庁総務部総務課制度改正審議室『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説(第19版)』特許庁、平成25年、234 頁 - 192 - 3. 審決取消訴訟の判決及び平成23年の審査基準改訂について 特許権の存続期間の延長制度の導入から20年が経過した平成20年(2008年)に作成され た知的財産推進計画2008において、特許権の存続期間延長制度を抜本的に見直すことが提 言された。具体的には、カルタヘナ法上の遺伝子組換え生物の使用承認に係る手続やiP S細胞由来の生物材料の承認手続のほか、DDSのような革新的な製剤技術等を用いた医薬も 対象に追加するなどの制度の対象の見直しについて検討し、あわせて、延長の要件、延長 する特許権の数及び回数、延長された特許権の効力範囲などを含めた制度全般の在り方に ついて、国際的な動向等も踏まえつつ、総合的な検討を行うこととされた。 DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)とは、薬物の効果を最大限に発揮させるために 理想的な体内動態に制御する技術・システムのことであり、必要最低限の薬物を、必要な 場所(臓器、組織等)に、必要なとき(タイミング及び期間)に供給することを目指す技 術・システムである254。 従来の特許権の存続期間の延長登録制度においても、DDSに関する特許発明自体は、延長 登録の対象とされていたが、同一の有効成分と効能・効果の医薬品が既に先行承認を受け ている場合には、剤型や用法・用量等のみが異なる後行承認に基づく延長登録は認められ ていなかった。このため、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の特許権の 存続期間の延長制度検討WGにおいて、DDSに関する特許発明について、同一の有効成分と効 能・効果の医薬品が既に先行承認を受けている場合であっても、延長登録の対象とするこ とについての検討が行われた。 (1) 知財高裁平成21年5月29日判決(判時2047号11頁) 特許権の存続期間の延長制度検討WGにおける検討の開始後に、審決取消訴訟において、 先行承認を受けている有効成分と効能・効果が同一であり、剤型や用法・用量等のみが異 なる後行承認を受けた場合、DDSに関する特許発明が延長登録の要件を充足しているとする 判決がなされた。 判決においては、先行処分が存在するものの、先行処分を受けることによって禁止が解 除された行為が本件発明の技術的範囲に属し、本件発明の実施行為に該当するという関係 が存在していない場合には、延長登録の要件を充足する(特許発明がDDSに関するものであ る場合、先行処分の対象となった先行医薬品は、DDSに関する特許発明の技術的範囲に含ま れないため、「特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必 要であつたとは認められないとき」に該当しない)とされた。 254 平成22年度 特許出願技術動向調査報告書「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」特許庁、1頁 https://www.jpo.go.jp/shiryou/pdf/gidou-houkoku/22drag_delivery.pdf [最終アクセス日2015年2月23日] - 193 - 判決は、同一の有効成分と効能・効果の医薬品が先行承認を受けている場合に、物質特 許や用途特許等が延長登録の要件を充足するか否か(特許発明が物質特許や用途特許であ る場合、先行処分の対象となった先行医薬品は、物質特許や用途特許の特許発明の技術的 範囲に含まれる)についてまで判示したものではない。しかし、判決においては、傍論と してではあるが、先行処分に関わる延長登録の効力の及ぶ範囲に関し、 「特許発明が医薬品 に関わるものである場合には、その技術的範囲に含まれる実施態様のうち、薬事法所定の 承認が与えられた医薬品の『成分』、『分量』及び『構造』によって特定された『物』につ いての当該特許発明の実施、及び当該医薬品の『用途』によって特定された『物』につい ての当該特許発明の実施についてのみ、延長された特許権の効力が及ぶものと解するのが 相当である」とされた。このため、既に承認を受けた医薬品と同一の有効成分と効能・効 果であっても、 『分量』、 『構造』等の異なる承認を受けた場合の物質特許や用途特許に関す る延長登録の可能性についても影響を及ぼすものとも考えられた。 (2) 最高裁平成23年4月28日判決(民集65巻3号1654頁) 上記判決の上告審である最高裁判決においては、 「特許権の存続期間の延長登録出願の理 由となった医薬品の製造販売承認(後行処分)に先行して、同じ「有効成分」及び「効能・ 効果」を有する医薬品(先行医薬品)について、既に同製造販売承認(先行処分)がされ ている場合であっても、先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る 特許発明の技術的範囲にも属しないときは、先行処分がなされていることを根拠に、当該 特許権の特許発明の実施に後行処分を受ける必要であったとは認められないということは できない」とされた。 最高裁判決においては、 「先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係 る特許発明の技術的範囲にも属しないとき」に、先行医薬品に係る処分がされていること を理由として特許法第67条の3第1項1号の規定を適用することはできないとされたことか ら、少なくとも先行医薬品が特許発明の技術的範囲に属しない場合においては、特許庁の 従来の運用(物=有効成分、用途=効能・効果と解釈し、既に承認を受けている有効成分 と効能・効果と同一の医薬品に関する後の承認に延長登録を認めないとする運用)は最高 裁判決と齟齬を生じることとなった。 なお、最高裁判決においては、 「先行医薬品が、延長登録出願に係る特許権のいずれの請 求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは、先行処分により存続期間が延長さ れ得た場合の特許権の効力の及ぶ範囲(特許法第68条の2)をどのように解するかによって 上記結論が左右されるものではない」とし、延長登録された特許権の効力の解釈について は、言及されなかった。このため、特許権の存続期間の延長登録制度の導入時になされた 延長登録された特許権の効力の及ぶ範囲についての解釈が否定されたわけではない。 - 194 - (3) 最高裁判決を踏まえた審査基準の改訂 最高裁判決を受け、既に出願された延長登録出願を適切に審査するために、早急に運用 を見直す必要があったことから、特許権の存続期間の延長制度検討WGにおいて、最高裁判 決に整合する審査基準の改訂の検討が行われた255。 最高裁判決は、先行医薬品が本件特許発明の技術的範囲に属しない場合についての判断 を示したものであり、先行医薬品が本件特許発明の技術的範囲に属する場合についての判 断を示したものではなかったが、延長登録の出願の運用は、統一的に行われることが望ま しいことから、先行医薬品が本件特許発明の技術的範囲に属する場合、すなわち、既に承 認を受けた医薬品と同一の有効成分と効能・効果で、 『分量』、 『構造』等の異なる承認を受 けた場合の物質特許や用途特許に関する延長登録の可能性についても検討が行われた。 特許権の存続期間の延長制度検討WGにおいては、特許権の存続期間の延長制度の趣旨と の関係についても検討がなされ、特許権の設定登録後において、安全性の確保等の観点か ら、特許権者自身が特許発明の実施をすることができなかった場合の利害調整については、 本来は当該分野における法制度において対応すべきものであり、特許権の存続期間の延長 は、当該分野における法制度で十分に対応することが困難な場合に例外的に認められるも のであることにも留意しつつ、検討が行われた。そして、特許権の存続期間の延長を行う か否かの判断は、①当該処分の内容と特許発明の実施との関係、②先行処分と当該特許発 明の関係に基づいて、あくまで特許法上の解釈により行うこととし、処分の対象とされた 事項のうち、特許請求の範囲に記載されている発明特定事項に該当する事項で特定される 行為によって特許発明の実施との関係を判断することとされた。 改訂された審査基準は、最高裁の判示事項と整合するのみならず、従来の運用との整合 性にも留意しつつ、種々の特許請求の範囲の記載に対しても適切に対応できるものであり、 的確かつ安定的な運用の観点からも妥当なものであると評価されるものであった。 なお、特許庁は、延長登録された特許権の効力の及ぶ範囲について、審査基準の改訂に 対する意見募集(パブリックコメント手続)において寄せられた意見への回答として、 「特 許法第67条の3第1項第1号における「特許発明の実施(本件処分の対象となった医薬品又は 農薬の『発明特定事項(及び用途)に該当する事項』によって特定される医薬品の製造販売 等の行為又は農薬の製造・輸入等の行為)の範囲」と、特許法第68条の2における「本件処 分により存続期間が延長された場合の特許権の効力の範囲」は、原則として一致している と解釈することが合理的である」との解釈を示した。 255 特許権の存続期間の延長制度検討WGにおける検討の概要については、第II.4.(4)章参照 - 195 - (4) 知財高裁平成26年5月30日大合議判決(判時2232号3頁) 知財高裁大合議判決においては、上記知財高裁判決とは異なり、先行処分を受けた医薬 品が特許発明の技術的範囲に属する場合について、特許庁の改訂審査基準の考え方を否定 した256。 大合議判決は、用法・用量のみが異なる後行処分を受けた場合に、先行処分を受けた医 薬品が特許発明の技術的範囲に属する物質特許及び用途特許について、延長登録の対象と すべきであるとしたものであり、後行処分における有効成分と効能・効果が先行処分と同 一である点は、上記知財高裁判決と同様であるが、延長登録の対象とされた特許は、物質 特許及び用途特許であり、DDSに関する特許でない点において、上記知財高裁判決とは異な っている。 大合議判決においては、改訂審査基準について、「特許庁による審査基準の上記改定は、 上記最高裁判決が判示するところを超えて、独自の立場からされたものであり、前記のと おり、同号の規定の文言から離れるものであって、これを採用することはできない」とさ れた。 なお、大合議判決においては、上記知財高裁判決と同様に、傍論ではあるが、延長され た場合の特許権の効力の及ぶ範囲について、 「特許権の延長登録制度及び特許権侵害訴訟の 趣旨に照らすならば、医薬品の成分を対象とする特許発明の場合、同法第68条の2によって 存続期間が延長された特許権は、 「物」に係るものとして、 「成分(有効成分に限らない。)」 によって特定され、かつ、「用途」に係るものとして、「効能、効果」及び「用法、用量」 によって特定された当該特許発明の実施の範囲で、効力が及ぶものと解するのが相当であ る」とし、延長登録の効力の及ぶ範囲についての特許庁の解釈も否定された。 4. おわりに-検討すべき論点を中心に 特許権の存続期間の延長登録制度の導入時においては、新規有効成分、新規効能効果の 開発のためのインセンティブが重要視されており、研究開発の成果としての物質特許や用 途特許の保護が重要であったが、科学技術の進歩に伴って、DDSに関する技術も医薬分野の 研究の大きな柱の一つとなっていることは事実であり、DDSに関する研究開発のインセンテ ィブを高めることが重要であることは明らかである。 その観点から、既に承認を受けている有効成分と効能・効果と同一ではあるが、剤型等 が異なる医薬品の承認がなされた場合に、DDSに関する特許発明に延長登録を認めることは、 特許権の存続期間の延長制度の趣旨からも妥当であり、最高裁判決を受けて改訂された審 256 知財高裁大合議判決の詳細については、V章(枡田先生の論考)参照 - 196 - 査基準は、それに適合するものである。 知財高裁大合議判決は、既に承認を受けている有効成分と効能・効果と同一ではあるが、 剤型等が異なる医薬品の承認がなされた場合に、物質特許及び用途特許の延長登録が認め られるとしたものであり、最高裁判決の射程外であり、DDSに関する特許発明に延長登録を 認めることとは本質を異にするものである。 大合議判決の判旨のとおりの運用がなされることにより、医薬の研究開発の大きな柱の ひとつである新規有効成分や新規効能効果の研究開発のインセンティブに悪影響を与える ものであってはならないことはいうまでもないことである。今回の調査研究におけるアン ケート結果やヒアリング、有識者会議においても、新規有効成分や新規効能効果の研究開 発のインセンティブへの悪影響等、大合議判決に関する疑問の声は、多くのユーザから寄 せられており、検討すべき論点も少なくない。 (1) 延長登録の要件 既に述べたように、「特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受ける ことが必要であつたとは認められないとき」という要件に関して、改訂審査基準において は、あくまで、特許請求の範囲に記載された特許発明(発明特定事項)を基に、先になさ れた処分との関係についての判断を行うこととしている。 特許権の存続期間の延長登録制度の趣旨が「特許発明の実施をすることができなかった 期間」を回復するものである以上、先の処分により実施が可能となった特許発明について、 発明特定事項を基に判断することは、特許法における「特許発明の実施」の解釈を行う上 で適切であり、個々の法規制による処分の際に特定される要素のうち、発明特定事項以外 のものも考慮し、 「特許発明の実施」の解釈を行うことは、特許法上の解釈として妥当では ないと考えられる。 そして、先の処分により実施が可能となった特許発明について、発明特定事項を基に判 断する解釈がなされたとしても、既に承認を受けている有効成分及び効能・効果と同一で、 剤型等が異なる医薬品の承認がなされた場合に、DDSに関する特許発明が延長登録の対象と なることは、改訂審査基準からも明らかであるが、既に承認を受けている有効成分及び効 能・効果と同一で、剤型等が異なる医薬品の承認がなされた場合に、物質特許や用途特許 についてまで延長登録の対象とすることの妥当性は、新規有効成分や新規効能効果の研究 開発のインセンティブの観点から、DDSに関する特許発明を延長登録の対象とすることとは、 峻別して議論する必要があろう。 - 197 - (2) 延長された特許権の効力 知財高裁判決(平成21年5月29日)においては、傍論ではあるが、先行処分に関わる延長 登録された特許権の効力の及ぶ範囲に関して述べられていたが、上告審である最高裁判決 においては、延長登録された特許権の効力の解釈についての言及はなされていないことに 加え、延長登録された特許権の効力をめぐる侵害訴訟の事例もないことから、延長登録さ れた特許権の効力の解釈についての裁判所の見解は、まだ確定していない。 大合議判決においては、知財高裁判決(平成21年5月29日)と同様に、傍論ではあるが、 再度、特許権の存続期間が延長された場合の特許権の効力の及ぶ範囲についての解釈がな されており、特許庁の解釈が否定されている。 延長された特許権の効力の及ぶ範囲は、特許権の延長登録がされた後の特許発明の実施 が専有される範囲を規律するものであることから、延長された特許権の効力について、特 許請求の範囲に記載された特許発明(発明特定事項)を基に解釈を行うことは、特許法の 解釈として妥当であり、発明特定事項以外の事項も考慮し、延長登録された特許権の効力 の及ぶ範囲の解釈を行うことは、特許法上の解釈として妥当ではないとも考えられる。 延長された特許権の効力について、特許請求の範囲に記載された特許発明(発明特定事 項)をもとに解釈を行ったとしても、延長されたDDSに関する特許権の効力の及ぶ範囲が不 当に制限されることはない(先行処分で延長された他の特許権の効力との間で重複する部 分が存在する可能性はある)。 大合議判決で示された見解のとおりの解釈がなされ、先行処分により延長された特許権 の効力が従来の解釈よりも制限されることとなると、特許権の存続期間の延長登録制度の 趣旨である新規有効成分や新規効能効果の研究開発のインセンティブへの悪影響が懸念さ れている。 今回の調査研究における有識者会議においても、日本製薬工業協会の議員から、同協会 として「物質特許の効力が、延長対象処分の用法・用量により細分化される考え方は受け 入れ難い」という意見が表明されている。 大合議判決でなされた延長された特許権の効力の解釈は、諸外国の特許権の延長登録制 度における延長された特許権の効力の解釈とも異なるものであり、特許権の存続期間の延 長登録制度の趣旨が新規有効成分に新規な効能効果を見いだし、品質、有効性及び安全性 が確保された医薬品を世の中に送り出すことに対するインセンティブを高めることにある ことから、延長された物質特許や用途特許の効力については、従来の解釈を維持すべきと する意見もある。 このため、延長された特許権の効力の解釈については、発明の保護と利用のバランス(発 明の保護と他社の研究成果を利用する側の立場への配慮)の観点から検討がなされる必要 がある。 - 198 - (3) 延長登録の出願の実務への影響 大合議判決を踏まえると、先行処分により延長された特許権の効力が制限されることや 大合議で示された「均等物や実質的に同一と評価される物」の解釈も不明であることによ り、既に承認を受けている有効成分と効能・効果と同一で、剤型等が異なる医薬品の承認 がなされた場合に、既に延長されている物質特許や用途特許についても、再度、延長登録 の出願を行う必要が生じることとなる。 このことは、延長登録を行う特許権者の特許管理の負担の増大、すなわち、延長登録の 出願に要する費用の増大及び延長登録の出願が可能な期間(処分後3月以内)に出願を行う ための管理負担の増大のみならず、特許権の存続期間の満了によって市場に参入しようと する者(いわゆるジェネリック医薬品/農薬を開発・製造し、又は販売しようとする者) の監視負担の増大を招来することとなる。厚生労働省は、新薬の特許権の存続期間が満了 後でなければ、ジェネリック医薬品の製造承認を認めないとする運用を行っており、特許 権の存続期間の満了によって市場に参入しようとする者にとっては、市場参入が可能とな る時期(特許権の存続期間の満了)をできるだけ早期に確定し、そのための準備を行う必 要があるが、その時期の確定をすることが困難になることから、大合議判決に沿った運用・ 効力範囲の解釈が行われることとなると、延長登録を行おうとする特許権者及び特許権の 存続期間の満了によって市場に参入しようとする者の双方に問題が生じることとなる。 (4) 最後に 知財高裁大合議判決については、現在、上告受理の申立てがなされていることもあり、最 高裁による判断が待たれるが、特許権の存続期間の延長登録の在り方については、特許法 の趣旨を踏まえ、処分と関係する特許権者と第三者とのバランス、イノベーションの進展 への寄与等の観点から検討がなされるべきであり、最高裁においてはこのような観点から 判断がなされることが期待される。 - 199 - 資料Ⅰ 国内アンケート調査 【実施概要】 <国内アンケート調査 実施概要> <アンケート送付先> ・日本製薬工業会 ・日本ジェネリック製薬協会(正会員) ・農薬工業会(正会員) ・再生医療イノベーションフォーラム (再生医療に関する期間延長制度検討 WG メンバー) ・過去 5 年間で延長登録出願を行ったことがある企業 合計 171 者 <実施期間> 実施:平成 26 年 11 月 17 日~平成 26 年 12 月 9 日(回収期間 12/29 までに送付されたもの を集計) <協力依頼> 各協会に協力依頼 ・日本製薬工業会 ・日本ジェネリック製薬協会 ・農薬工業会 ・再生医療イノベーションフォーラム <回収結果> 回答数 81 件 以下のアンケート結果については、回答者の属性に応じた答えを比較をするために、回 答者を Type1~Type5 に分類して比較を行った。図表Ⅲ―1 に分類した対象と回答者数を示 す。 なお、Type1~Type5 に分類されない回答者数は、15 件あった。 医薬品 Type1 新薬のみ*1 11 Type2 新薬とジェネリック*2 27 Type3 ジェネリックのみ*3 8 農薬 - 204 - Type4 新薬のみ:*4 9 Type5 新薬とジェネリック又はジ 11 ェネリックのみ*5 *1:1-1の所属機関を問う設問で①「日本製薬工業協会」と11-1のジェネリック 申請時の迷いを問う設問で⑤「ジェネリック医薬品の承認申請をしていない」を選択した 企業を新薬開発のみの企業(Type1)とした。 *2:1-1の所属機関を問う設問で①「日本製薬工業協会」を選択し、11-1のジェ ネリック申請時の迷いを問う設問で⑤「ジェネリック医薬品の承認申請をしていない」を 選択しなかった企業を新薬開発とジェネリック薬品開発を行う企業(Type2)とした。 *3:1-1の所属機関を問う設問で②「日本ジェネリック製薬協会」を選択し、①「日 本製薬工業協会」を選択しなかった企業をジェネリック薬品開発のみを行う企業(Type3) とした。 *4:1-1の所属機関を問う設問で③「農薬工業会」と23-1のジェネリック申請時 の迷いを問う設問で⑤「ジェネリック農薬の承認申請をしていない」を選択した企業 (医薬品については11-1で未記入が 2 企業) *5:1-1の所属機関を問う設問で③「農薬工業会」を選択し、23-1のジェネリッ ク申請時の迷いを問う設問で⑤「ジェネリック医薬品の承認申請をしていない」を選択し なかった企業を新薬開発のみの企業(Type4)とした。 (農薬については 2 企業が23-1のジェネリック申請時の迷いを問う設問で⑤「ジェネ リック医薬品の承認申請をしていない」について未記入)を選択した企業を新薬開発とジ ェネリック薬品開発を行う企業(Type5)とした。 - 205 - 【質問票】 平成26年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究 「特許権の存続期間の延長登録制度の在り方に関する調査研究」 に関するアンケートご協力のお願い 平成26年11月 一般財団法人 知的財産研究所 経済産業省 特許庁 拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。 平素は、知的財産権行政及び知的財産研究所の活動にご理解・ご協力いただき、厚く御 礼申し上げます。 我が国において、薬事法1に基づく医薬品(動物用医薬品を含む)の承認及び農薬取締法 に基づく農薬の登録を受けるために特許発明の実施ができなかった特許権を対象に、5年を 限度として延長登録の出願によりその特許権の存続期間を延長することができる延長登録 制度が用いられてきました。 近年、ビジネスのグローバル化や技術の複雑化・高度化等に対応して政府の許認可が変 化し続けていること、新規有効成分を含有する医薬品開発競争が激化してきていること、 さらに、確定してはいないものの、平成26年5月30日の知的財産高等裁判所の大合議判決(現 在、特許庁が最高裁に上告受理申立て中)によって現行の延長登録制度の運用の在り方が 問われている状況にあることから、今後の延長登録制度及びその運用の在り方を検討する に資する基礎資料を収集することを目的として、 「特許権の存続期間の延長登録制度の在り 方に関する調査研究」を行うこととなりました。 本アンケート調査は、この調査研究の一環として行われるもので、延長登録制度の利用 実態、並びに、手続及び制度上の課題等について、皆さまのご経験とご意見をお聞きする ことを目的とするものです。アンケートの設問については差し障りのない範囲でお答えい ただければ結構ですので、できる限り多くのご意見をお寄せくださいますようお願い申し 上げます。 ご多用中のところ誠に恐縮ではございますが、趣旨をご理解の上、ご協力賜わりますよ う、宜しくお願い申し上げます。 敬具 1 薬事法は改正されて「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称:医薬品医療機器 等法)」となり、平成26年11月25日に施行されます。本調査研究は改正前の薬事法に基づいて設問を設定しておりますの であらかじめご了承ください。 - 207 - アンケート全体に関するお願い 【回答方法】 ①同封のアンケート用紙に回答をご記入いただくか、②以下のウェブサイトにアクセス していただき、ダウンロードした電子ファイルに回答をご入力ください。 ダウンロード先: http://www.iip.or.jp/jp_/etouroku.html ご回答は、平成26年11月1日現在の業務等に基づいてご記入をお願いします。 選択肢を選択する設問については選択肢の番号の左側のチェックボックス(☐)にチェ ック(☑)を入れてください。選択肢に記入を求める枠が設けられたもの、自由記載の枠 が設けられたものについては、枠内で自由にご意見を記入してください(記入しきれない ものについては別途用紙を追加していただきいずれに対する意見なのかを明記してくだ さい)。 【返信方法】 平成26年12月9日(火)までに、①同封の返信用封筒にて郵送いただくか、②電子ファ イルを以下のE-mailアドレス宛に送信してください。 E-mailアドレス: [email protected] 【機密管理】 ご回答いただいた内容は、本調査の目的以外には一切使用いたしません。特許庁関係者、 知的財産研究所担当部門の必要最小限の従業員のみがアクセス可能とし、外部からのアク セスは厳重に管理します。また、特許庁ホームページにおいて公表予定の本調査研究報告 書に分析結果を掲載しますが、回答者が特定されるような記載は行いません。 本アンケート調査に当たり、「株式会社アドレス」に回答の集計等の業務を委託してお ります。このため、返信用封筒の宛先は「株式会社アドレス」になっております点はあら かじめご了承ください。同社とは「個人情報保護管理に関する誓約書」を取り交わしてい ます。 ご回答いただいたアンケート調査結果に基づき、後日、追加のアンケートや、電話や訪 問によるヒアリング調査をお願いする場合があります。その際には、重ねてのご協力をよ ろしくお願い申し上げます。 【お問合せ先】 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-11精興竹橋共同ビル5F 一般財団法人 知的財産研究所 担当:中島・梶原・内田([email protected]) TEL:03-5281-5672/FAX:03-5281-5676 - 208 - 平成26年度産業財産権制度問題調査研究 「特許権の存続期間の延長登録制度の在り方に関する調査研究」に関するアンケート <回答者情報> 企業名・所属 記入者ご氏名 電話番号 FAX 番号 E メールアドレス A.企業の基本情報 1.貴社の所属する団体と海外での事業実績について 1-1.国内での所属する団体を、下記の選択肢からお選びください(複数回答可)。 ☐①日本製薬工業協会 ☐②日本ジェネリック製薬協会 ☐③農薬工業会 ☐④再生医療イノベーションフォーラム ☐⑤それ以外の団体( ) 1-2.貴社が海外の団体にも所属されていれば、その団体名をご記入ください(複数回 答可)。 ( ) 2.貴社(単体)の資本金について下記の選択肢からひとつお選びください。 ☐①1000万円未満 ☐②1000万円以上、5000万円未満 ☐③5000万円以上、1億円未満 ☐④1億円以上、3億円未満 ☐⑤3億円以上、10億円未満 ☐⑥10億円以上、50億円未満 ☐⑦50億円以上 - 209 - ※以下は医薬品2と農薬3とのパートに分かれます。従事されている事業に対応するパートに おいて、回答をお願いします。回答いただくパートにチェックをお願いします(医薬品と 農薬のいずれの事業も行っている場合は、可能な範囲で両パートにお答えください)。 ☐B.医薬品 2 3 ☐C.農薬 ここで「医薬品」とは改正前薬事法第十四条第一項に規定される「医薬品」を指す。 ここで「農薬」とは農薬取締法第二条第一項に規定される「農薬」を指す。 - 210 - B.医薬品 B-1.特許権の存続期間の延長登録制度の利用状況 3.国内における特許権の存続期間の延長登録制度の利用について 3-1.国内における特許権の存続期間の延長登録出願の有無について、下記の選択肢か らひとつお選びください。 ☐①延長登録出願をしたことがある ☐②延長登録出願をしたことがない 3-2.問3-1で番号②と答えた方はその理由を、下記の選択肢からひとつお選びくだ さい。 ☐①再審査制度で十分に保護されるので延長登録出願の必要がない ☐②延長登録出願の要件を満たす案件がない ☐③延長登録出願のやり方が分からない ☐④その他( ) 4.海外における特許権の存続期間の延長登録制度の利用について 4-1.海外で医薬品の製造販売等の承認を受けたことがあるかどうか、ある場合にはそ の国・地域を、下記の選択肢からお選びください(複数回答可)。 ☐①ある(米国) ☐②ある(欧州) ☐③ある(韓国) ☐④ある(その他: ) ☐⑤ない 4-2.海外で医薬品の特許権の存続期間の延長登録出願をしたことがあるかどうか、あ る場合にはその国・地域を、下記の選択肢からお選びください(複数回答可) 。 ☐①ある(米国) ☐②ある(欧州) ☐③ある(韓国) ☐④ある(その他: ) ☐⑤ない - 211 - B-2.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度の在り方 現行特許法の延長登録に関する規定の特許庁の解釈(平成23年12月28日施行 特許庁審 査基準による運用)を否定する大合議判決が、平成26年5月30日に言い渡され、現在、特許 庁が最高裁判所に上告受理申立てを行っております。B-2(以下の5.~8.)の質問は、 将来、我が国の延長登録出願制度に関する規定・運用を改正すると仮定した場合、どのよ うな制度にユーザーのニーズがあるかを調査するものですので、その前提で回答をお願い します。 5.特許権の存続期間の延長の期間について 5-1.特許権の存続期間の延長の期間を見直すとしたらどうすべきか、下記の選択肢か らひとつお選びください。またその理由をお答えください。 ☐①現行と同様、5年とすべき ☐②現行の5年より長くすべき ☐③現行の5年より短くすべき 理由(自由記載) 5-2.欧米のように承認日から延長された期間を含めて最長14年ないし15年という制限 を導入することが必要か否か、下記の選択肢からひとつお選びください。またその理由を お答えください。 ☐①必要 ☐②不要 ☐③その他( ) 理由(自由記載) 5-3.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度における延長期間の算定方法を見直す べきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください。またその理由をお答えください。 ☐①現行の算定方法(承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録日 のいずれか遅い方の日から承認が申請者に到達した日の前日までの期間)を見直す必要 はない - 212 - ☐②現行の算定方法を見直すべき ☐③分からない 理由(自由記載) 6.特許権の存続期間の延長登録が認められる要件について 6-1.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において対象となる特許発明の種類とし て望ましいものを下記の選択肢からお選びください、また、その理由をお答えください(複 数回答可) 。 ☐①有効成分となる化学物質等の発明 ☐②特定の疾病に対する治療用途に特徴のある剤、組成物、製造のための使用の発明 ☐③特定の用法・用量による特定の疾病に対する治療用途に特徴のある剤、組成物、製造 のための使用の発明 ☐④剤形・製剤に特徴のある発明 ☐⑤合剤・併用剤の発明 ☐⑥化学物質や製剤等の製法の発明 ☐⑦その他( ) 理由(自由記載) 6-2.新規有効成分含有医薬品についての最初の承認に基づいて、延長可能となる対象 特許はどうあるべきか、下記の選択肢からひとつお選びください、またその理由をお答え ください。 ☐①関連する1つの特許に限るべき ☐②関連する全ての特許とするべき ☐③その他( ) 理由(自由記載) - 213 - 6-3.新規有効成分含有医薬品についての最初の承認を受けた後、一部変更承認に基づ いて特許権の存続期間の延長登録を認めるべきか、下記の選択肢からひとつお選びくださ い(ただし、最初の承認に係る医薬品も一部変更承認に係る医薬品も、延長登録出願の対 象特許権の特許発明の技術的範囲に属するものとする)、またその理由をお答えください。 ☐①最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべきではない ☐②最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたので あれば、認めるべきでない ☐③最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められており、一部 変更承認に係る医薬品が、当該延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属するのであれば、 認めるべきでない ☐④最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべき ☐⑤その他( ) 理由(自由記載) 6-4.物質A又はBを選択肢とする化学物質発明に係る特許権について、物質Aを有効成分 として含む医薬品の最初の承認を受けた後に、物質Bを有効成分として含む医薬品の後の承 認を受けた場合、当該後の承認に基づいて当該特許権について延長登録を認めるべきか否 か、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答えください。 ☐①最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべきではない ☐②最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたので あれば、認めるべきでない ☐③最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められており、後の 承認に係る医薬品が、当該延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属するのであれば、認 めるべきでない ☐④最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべき ☐⑤その他( ) 理由(自由記載) - 214 - 6-5.選択肢として物質Aは包含するが物質Bは包含しない化学物質発明に係る特許権に ついて、物質Aを有効成分として含有する医薬品についての最初の承認を受けた後、物質A と物質B(物質Bは別の医薬品の有効成分として既に承認されたもの)を含有する配合剤に 関する後の承認を受けた場合、当該後の承認に基づいて当該特許権について延長登録を認 めるべきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答えくだ さい。 ☐①最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべきではない ☐②最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたので あれば、認めるべきでない ☐③最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められており、後の 承認に係る配合剤が、当該延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属するのであれば、認 めるべきでない ☐④最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべき ☐⑤その他( ) 理由(自由記載) 6-6.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特許発明の技 術的範囲に含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって「特許発明の実施」が可 能となった範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を許 容するとした場合、後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を認めるか 否かの判断基準として、いずれが望ましいか、下記の選択肢からひとつお選び下さい。ま た、その理由をお答えください。 ☐①6-1.の選択肢に挙げたものを含めどのような内容の特許発明の場合にも一律に、 薬事法上の一定の承認事項の点で、先行処分に係る医薬品と後行処分に係る医薬品との 間に違いがあれば、延長登録を認める(すなわち、先行処分によって特許発明の実施が 可能となった範囲は、どのような内容の特許発明の場合にも薬事法上の一定の承認事項 によって画される) ☐②特許発明の内容(発明特定事項)を考慮し、先行処分に係る医薬品の承認事項のうち 特許発明の発明特定事項に該当する事項と、後行処分に係る医薬品の承認事項のうち特 - 215 - 許発明の発明特定事項に該当する事項との間に違いがあれば、延長登録を認める(すな わち、先行処分によって特許発明の実施が可能となった範囲は、先行処分に係る医薬品 の承認事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項によって画される) ☐③分からない ☐④その他( ) 理由(自由記載) 仮に、問6-6の①の判断基準とすることとした場合、 「一定の承認事項」がどのような 事項である場合に後行処分に基づく延長登録を認めるべきか、下記の選択肢からひとつお 選びください。 ☐①有効成分及び効能・効果のいずれかに違いがある(有効成分以外の成分、分量、用法・ 用量に違いがあっても、後行処分に基づく延長登録は認められない) ☐②成分(有効成分に限らない)及び効能・効果のいずれかに違いがある(分量、用法・ 用量に違いがあっても、後行処分に基づく延長登録は認められない) ☐③成分(有効成分に限らない)、分量、効能・効果及び用法・用量のいずれかに違いが ある ☐④すべての承認事項のうちのいずれかに違いがある ☐⑤分からない ☐⑥その他( ) 仮に、問6-6の②の判断基準とすることとした場合、延長登録の対象となる特許権に 係る特許発明が発明特定事項として用途に該当する事項を有しない場合(例えば、特許発 明が有効成分に係る物質発明である場合)、「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途 に該当する事項」を考慮すべきか否かについてお答えください。 ☐①「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途に該当する事項」を考慮すべき(先行 処分に係る医薬品と有効成分が同じであっても効能・効果に違いがあれば、後行処分に 基づいて、物質発明に係る特許権の延長登録が認められる) ☐②「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途に該当する事項」を考慮すべきでない (先行処分に係る医薬品と有効成分が同じであれば効能・効果に違いがあっても、後行 処分に基づいて、物質発明に係る特許権の延長登録は認められない) ☐③分からない ☐④その他( ) - 216 - 7.存続期間が延長された特許権の効力について 7-1.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、延長された特許権の効力が及 ぶ範囲については、どのような範囲とすることがふさわしいか、下記の選択肢からひとつ お選びください、また、その理由をお答えください。 ☐①現行法と同様「処分の対象となった物」及び「用途」により特定される範囲 ☐②その他( ) 理由(自由記載) 7-2.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、現行特許法68条の2と 同様「処分の対象となった物」及び「用途」により延長された特許権の効力が及ぶ範囲を 制限することとする制度を採用する場合、延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限する 観点としてはいずれがふさわしいか、下記の選択肢からひとつお選びください、また、そ の理由をお答えください。 ☐①6-1.の選択肢に挙げたものを含めどのような内容の特許発明の場合にも一律に、 薬事法上の一定の承認事項の観点で、延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限する ☐②特許発明の内容(発明特定事項)を考慮し、医薬品の承認事項のうち特許発明の発明 特定事項に該当する事項及び用途に該当する事項の観点で、延長された特許権の効力が 及ぶ範囲を制限する ☐③分からない ☐④その他( ) 理由(自由記載) 仮に、問7-2.の①の判断基準とすることとした場合、 (1) 「処分の対象となった物」 及び(2) 「用途」としてふさわしい承認事項を、下記の選択肢からお選びください。 (1)「処分を受けた物」 ☐①承認された医薬品の有効成分のみ ☐②承認された医薬品の成分(有効成分に限らない) ☐③承認された医薬品の成分(有効成分に限らない)及びその分量 ☐④承認された医薬品の成分(有効成分に限らない)、その分量及び剤型 ☐⑤承認された医薬品そのもの - 217 - □⑥分からない ☐⑦その他( ) (2)「用途」 ☐①承認された医薬品の効能・効果 ☐②承認された医薬品の効能・効果及び用法・用量 □③分からない ☐④その他( ) 8.特許権の存続期間の延長登録の要件と延長された特許権の効力の関係について 8-1.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特許発明の技 術的範囲に含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって「特許発明の実施」が可 能となった範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を許 容するとした場合、薬事法4第14条第1項又は第9項に基づく承認を受けることによって禁止 が解除される「特許発明の実施」の範囲と、延長された特許権の効力の及ぶ範囲は、一致 させるべきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答えく ださい。 ☐①一致させるべき ☐②均等論等で効力範囲が多少拡張することはあるとしても、原則として一致させるべき ☐③一致させるべきでない、一致させる必要はない ☐④一部一致させるべき(一致すべき部分: ) ☐⑤どちらでもよい ☐⑥分からない ☐⑦その他( ) 理由(自由記載) 8-2.問8-1で、番号②を選択された方にお伺いします。上記回答で効力範囲が拡張 する範囲としてどのような範囲が妥当かお答えください(自由記載) 。 4 薬事法は改正され「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称:医薬品医療機器等 法) 」となり、平成26年11月25日に施行されますが、本調査研究は改正前の薬事法に基づいて以降の設問を設定してお りますので、旧法に基づきお答えください。 - 218 - 8-3.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、米国のように5、特許権 の延長登録は、有効成分についての最初の承認に基づくものでなければ認めないとした場 合、新たに追加承認された効能・効果にも効力を及ぼすべきか、下記の選択肢からひとつ お選びください、また、その理由をお答えください。 ☐①追加承認された新たな効能・効果にも効力を及ぼすべき ☐②追加承認された新たな効能・効果に効力を及ぼすべきでない ☐③どちらでもよい ☐④分からない ☐⑤その他( ) 理由(自由記載) B-3 現行の特許権の存続期間の延長登録制度に対するユーザーの評価 9.我が国と海外の特許権の存続期間の延長登録制度との比較について 9-1.我が国の特許権の延長登録制度と海外の特許権の延長登録制度(審査遅延に関す る延長登録制度を除く)とを比較した場合の、我が国の制度のメリット・デメリットをお 答えください。 (観点の例:期間・回数、延長期間の算定方法、延長の効果(権利行使)、延長対象、承認 との関係、延長手続等について。海外の延長登録制度を利用していない場合は我が国制度 を利用する上でメリット及びデメリットと思うことを記載してください。) 我が国制度のメリット(自由記載) 我が国制度のデメリット(自由記載) 5 米国では、特許権の存続期間の延長は、有効成分(製品)についての最初の承認に基づくものでなければ認められず、 同じ有効成分(製品)に関して新たに承認された用途にも特許権の効力が及ぶものとされている(米国特許法 section 156(b)参照)。 - 219 - 10.特許権の存続期間の延長登録制度に関する判決や審査基準改訂に伴う影響について 10-1.平成21年5月29日知財高裁判決、それに続く平成23年4月28日最高裁判決、平成 23年12月28日の改訂審査基準の施行、あるいは平成26年5月30日知財高裁大合議判決の前後 において、特許権の存続期間の延長登録出願の出願戦略について変化があったかどうかに ついて下記の選択肢からお選びください(複数回答可。また、平成26年5月30日知財高裁大 合議判決については出願戦略の変更について検討したことがあれば変化があったとしてく ださい)。また、変化があった場合はどのような変化があったか(わかる範囲で理由と共に) その概要をお答えください。 ☐①平成21年5月29日知財高裁判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) ☐②平成23年4月28日最高裁判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) ☐③平成23年12月28日の改訂審査基準の施行の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) ☐④平成26年5月30日知財高裁大合議判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) ☐⑤変化がなかった - 220 - B-4.その他 11.ジェネリック医薬品の承認申請に関して 11-1.ジェネリック医薬品の製造販売の承認を申請するに当たって、延長された特許権 の効力の及ぶ範囲に該当製品が含まれるか否かの判断で迷うことがあるか、下記の選択肢 からひとつお選びください。 ☐①迷うことが多い □②迷うことがある □③あまり迷うことはない ☐④迷うことはない ☐⑤ジェネリック医薬品の承認申請をしていない ☐⑥どちらでもない ☐⑦その他 ( ) 11-2.問11-1で番号①または②を選択した方にお伺いします。判断で迷う原因と して考えられるものについて、下記の選択肢からお選びください(複数回答可) 。 ☐①特許発明自体が不明確 ☐②延長された特許権の効力の及ぶ範囲が不明確 ☐③その他( ) 12.試験データ保護と特許権の存続期間の延長登録について 12-1.新規有効成分を含む医薬品の製造者は、薬事法第14条の4の再審査期間(試験デ ータの保護)によって保護されていますが、それに加えて特許権の存続期間の延長による 保護を受けることが有効である場合とその理由をお答えください。 有効である場合及び理由(自由記載) 13.医薬品の販売承認における特許情報の参照について 13-1.2009年6月5日付けの厚生労働省医薬食品局審査管理課と医政局経済課課長連名 通知6において、 6 医政経発第 0605001 号、薬食審査発第 0605014 号の通知 - 221 - (1)先発医薬品の有効成分に特許が存在することによって、当該有効成分の製造その ものができない場合には、後発医薬品を承認しない (2)先発医薬品の一部の効能・効果、用法・用量(以下、「効能・効果等」という。) に特許が存在し、その他の効能・効果等を標ぼうする医薬品の製造が可能である場合に ついては、後発医薬品を承認できる こととなりましたが、先行医薬品の特許が存在することを、確認することができるか、下 記の選択肢からひとつお選びください(①を選択した場合は、その確認手段についても、 お答えください。)。 ☐①確認できる (確認手段: ) ☐②一部は確認できるが完全には確認できない (確認手段: ) ☐③確認できない □④その他( ) 13-2.我が国においても、米国のオレンジブックや韓国のグリーンリストのように、 医薬品とその医薬品に関連した特許権のリストを設け、第三者が容易にそのリストを閲覧 できる制度を設けるべきか、下記の選択肢からひとつお選びください。 ☐①設けるべき ☐②設けなくてよい ☐③どちらでもよい ☐④その他( ) 14.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度についてその他のご意見があれば、自由 にお答えください(自由記載) https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/entyou-wg05_shiryou/sankou_2.pdf - 222 - ご協力いただきましてありがとうございました。 - 223 - C.農薬 C-1.特許権の存続期間の延長登録制度の利用状況 15.特許権の存続期間の延長登録制度の利用状況について 15-1.国内における特許権の存続期間の延長登録出願の有無について、下記の選択肢 からひとつお選びください。 ☐①延長登録出願をしたことがある ☐②延長登録出願をしたことがない 15-2.問15-1で番号②と答えた方はその理由を下記の選択肢からひとつお選びく ださい。 ☐①薬効、薬害、毒性、残留性に関する試験成績が15年間保護される7ので延長登録出願 の必要がない ☐②延長登録出願の要件を満たす案件がない ☐③延長登録出願のやり方が分からない ☐④その他( ) 16.海外における特許権の存続期間の延長登録制度の利用 16-1.海外で農薬の製造・輸入のための登録を受けたことがあるかどうか、ある場合 にはその国・地域を、下記の選択肢からお選びください(複数回答可)。 ☐①ある(米国) ☐②ある(欧州) ☐③ある(韓国) ☐④ある(その他: ) ☐⑤ない 16-2.海外で農薬についての特許権の存続期間の延長登録出願をしたことがあるかど うか、ある場合にはその国・地域を、下記の選択肢からお選びください(複数回答可)*。 ☐①ある(米国)(品目:☐医薬、☐医療機器、☐食品添加物、☐着色料) ☐②ある(欧州) ☐③ある(韓国) ☐④ある(その他: ) ☐⑤ない *米国については農薬についての特許権の存続期間の延長登録出願制度がないので農薬以 7 「平成12年11月24日付け12農産第8147号農林水産省農産園芸局長通知」参照 - 224 - 外の品目で延長登録出願を行ったことがある場合に選択してください(その場合、その品 目について該当するものにチェックしてください)。 C-2.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度の在り方 現行特許法の延長登録に関する規定の特許庁の解釈(平成23年12月28日施行 特許庁審 査基準による運用)を否定する大合議判決が、平成26年5月30日に言い渡され、現在、特許 庁が最高裁判所に上告受理申立てを行っております。C-2(以下の17.~20.)の質問 は、将来、我が国の延長登録出願制度に関する規定・運用を改正すると仮定した場合、ど のような制度にユーザーのニーズがあるかを調査するものですので、その前提で回答をお 願いします。 17.特許権の存続期間の延長の期間について 17-1.特許権の存続期間の延長の期間を見直すとしたらどうすべきか、下記の選択肢 からひとつお選びください。また、その理由をお答えください。 ☐①現行と同様、5年とすべき ☐②現行の5年より長くすべき ☐③現行の5年より短くすべき 理由(自由記載) 17-2.欧米のように承認日から延長された期間を含めて最長14年ないし15年という制 限を導入することが必要か否か、下記の選択肢からひとつお選びください。またその理由 をお答えください。 ☐①必要 ☐②不要 ☐③その他( ) 理由(自由記載) 17-3.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度による延長期間の算定方法を見直す べきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください。またその理由をお答えください。 - 225 - ☐①現行の算定方法(登録を受けるのに必要な試験を開始した日、又は特許権の設定登録 日のいずれか遅い方の日から登録が申請者に到達した日の前日までの期間)を見直す必 要はない ☐②現行の算定方法を見直すべき ☐③分からない 理由(自由記載) 18.特許権の存続期間の延長登録が認められる要件について 18-1.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において対象となる特許発明の種類と して望ましいものを下記の選択肢からお選びください(複数回答可)、また、その理由も お答えください。 ☐①有効成分となる化学物質等の発明 ☐②特定の病害虫や雑草に適用するもの等、用途に特徴のある剤、組成物、使用方法の発 明 ☐③剤形・製剤に特徴のある発明 ☐④合剤・併用剤の発明 ☐⑤化学物質や製剤等の製法の発明 ☐⑥その他( ) 理由(自由記載) 18-2.新規有効成分を含有する農薬についての最初の登録に基づいて、延長可能とな る対象特許はどうあるべきか、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由 をお答えください。 ☐①関連する1つの特許に限るべき ☐②関連する全ての特許とするべき ☐③その他( ) 理由(自由記載) - 226 - 18-3.新規有効成分を含有する農薬についての最初の登録を受けた後、農薬取締法第6 条の2第1項に規定する農薬の変更の登録に基づいて特許権の存続期間の延長登録を認める べきか、下記の選択肢からひとつお選びください(ただし、最初の登録に係る農薬も変更 の登録に係る農薬も、延長登録出願の対象特許権の特許発明の技術的範囲に属するものと する)、また、その理由をお答えください。 ☐①最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべきではない ☐②最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたので あれば、認めるべきでない ☐③最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められており、登録 事項変更登録に係る農薬が、当該延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属するのであれ ば、認めるべきでない ☐④最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべき ☐⑤その他( ) 理由(自由記載) 18-4.物質A又はBを選択肢とする化学物質発明に係る特許権について、物質Aを有効成 分として含む農薬の最初の登録を受けた後に、物質Bを有効成分として含む農薬の後の登録 を受けた場合、当該後の登録に基づいて当該特許権について延長登録を認めるか否か、下 記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答えください。 ☐①最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべきではない ☐②最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたので あれば、認めるべきでない ☐③最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められており、後の 登録に係る農薬が、当該延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属するのであれば、認め るべきでない ☐④最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべき ☐⑤その他( ) - 227 - 理由(自由記載) 18-5.選択肢として物質Aは包含するが物質Bは包含しない化学物質発明に係る特許権 について、物質Aを有効成分として含有する農薬についての最初の登録を受けた後、物質A と物質B(物質Bは別の農薬の有効成分として既に登録されたもの)を含有する配合剤に関 する後の登録を受けた場合、当該後の登録に基づいて当該特許権について延長登録を認め るべきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答えくださ い。 ☐①最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべきではない ☐②最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたので あれば、認めるべきでない ☐③最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められており、後の 登録に係る農薬が、当該延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属するのであれば、認め るべきでない ☐④最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否 かにかかわらず、認めるべき ☐⑤その他( ) 理由(自由記載) 18-6.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特許発明の 技術的範囲に含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって特許発明の実施が可能 となった範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を許容 するとした場合、後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を認めるか否 かの判断基準として、いずれか望ましいか、下記の選択肢からひとつお選び下さい。また、 その理由をお答えください。 ☐①18-1.の選択肢に挙げたものを含めどのような内容の特許発明の場合にも一律に、 農薬取締法上の一定の登録事項の点で、先行処分に係る農薬と後行処分に係る農薬との 間に違いがあれば、延長登録を認める(すなわち、先行処分によって特許発明の実施が 可能となった範囲は、どのような内容の特許発明の場合にも農薬取締法上の一定の承認 - 228 - 事項によって画される) ☐②特許発明の内容(発明特定事項)を考慮し、先行処分に係る農薬の登録事項のうち特 許発明の発明特定事項に該当する事項と、後行処分に係る農薬の登録事項のうち特許発 明の発明特定事項に該当する事項との間に違いがあれば、延長登録を認める(すなわち、 先行処分によって特許発明の実施が可能となった範囲は、先行処分に係る農薬の登録事 項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項によって画される) ☐③分からない ☐④その他( ) 理由(自由記載) 仮に、問18-6の①の判断基準とすることとした場合、 「一定の登録事項」がどのよう な事項である場合に後行処分に基づく延長登録を認めるべきか、下記の選択肢からひとつ お選びください。 ☐①有効成分及び適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑制に用いられる薬剤 にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的)のいずれかに違いがある(有効成分 以外の成分、含有量、使用方法に違いがあっても、後行処分に基づく延長登録は認めら れない) ☐②成分(有効成分に限らない)及び適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑 制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的)のいずれかに違 いがある(含有量、使用方法に違いがあっても、後行処分に基づく延長登録は認められ ない) ☐③成分(有効成分に限らない)、含有量、適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進 又は抑制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的)及び使用 方法のいずれかに違いがある ☐④すべての登録事項のうちのいずれかに違いがある ☐⑤分からない ☐⑥その他( ) 仮に、問18-6の②の判断基準とすることとした場合、延長登録の対象となる特許権 に係る特許発明が発明特定事項として用途に該当する事項を有しない場合(例えば、有効 成分に係る物質発明である場合)、「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途に該当す る事項」を考慮すべきか否かについてお答えください。 ☐①「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途に該当する事項」を考慮すべき(先行 - 229 - 処分に係る農薬と有効成分が同じであっても適用病害虫の範囲に違いがあれば、後行処 分に基づいて、物質発明に係る特許権の延長登録が認められる) ☐②「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途に該当する事項」を考慮すべきでない (先行処分に係る農薬と有効成分が同じであれば適用病害虫の範囲に違いがあっても、 後行処分に基づいて、物質発明に係る特許権の延長登録は認められない) ☐③分からない ☐④その他( ) 19.存続期間が延長された特許権の効力について 19-1.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、延長された特許権の効力が 及ぶ範囲については、どのような範囲とすることがふさわしいか、下記の選択肢からひと つお選びください、また、その理由をお答えください。 ☐①現行法と同様「処分の対象となった物」及び「用途」により特定される範囲 ☐②その他( ) 理由(自由記載) 19-2.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、現行特許法第68条 の2と同様「処分の対象となった物」及び「用途」により延長された特許権の効力が及ぶ範 囲を制限することとする制度を採用する場合、延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限 する観点としてはいずれがふさわしいか、下記の選択肢からひとつお選びください、また、 その理由をお答えください。 ☐①18-1の選択肢に挙げたものを含めどのような内容の特許発明の場合にも一律に、 農薬取締法上の一定の登録事項の観点で、延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限する ☐②特許発明の内容(発明特定事項)を考慮し、農薬の登録事項のうち特許発明の発明特 定事項に該当する事項及び用途に該当する事項の観点で、延長された特許権の効力が及 ぶ範囲を制限する ☐③分からない ☐④その他( ) 理由(自由記載) - 230 - 仮に、問19-2.の①の判断基準とすることとした場合は、(1)「処分の対象となっ た物」及び(2) 「用途」としてふさわしい承認事項を、下記の選択肢からお選びください。 (1)「処分の対象となった物」 ☐①登録された農薬の有効成分のみ ☐②登録された農薬の成分(有効成分に限らない) ☐③登録された農薬の成分(有効成分に限らない)及びその含有量 ☐④登録された農薬の成分(有効成分に限らない)、その含有量及び剤型 ☐⑤登録された農薬そのもの □⑥分からない ☐⑦その他( ) (2)「用途」 ☐①登録された農薬の適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑制に用いられる 薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的) ☐②登録された農薬の適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑制に用いられる 薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的)及び使用方法 □③分からない ☐④その他( ) 20.特許権の存続期間の延長登録の要件と延長された特許権の効力の関係について 20-1.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特許発明の 技術的範囲に含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって「特許発明の実施」が 可能となった範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を 許容するとした場合、農薬取締法第2条第1項又は第6条の2第1項に基づく登録を受けること によって禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲と、延長された特許権の効力の及ぶ 範囲は、一致させるべきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理 由についてお答えください。 ☐①一致させるべき ☐②均等論等で効力範囲が多少拡張することはあるとしても、原則として一致させるべき ☐③一致させるべきでない、一致させる必要はない ☐④一部一致させるべき(一致すべき部分: ) ☐⑤どちらでもよい ☐⑥分からない ☐⑦その他( ) 理由(自由記載) - 231 - 20-2.問20-1で、番号②を選択された方にお伺いします。上記回答で効力範囲が 拡張する範囲としてどのような範囲が妥当かお答えください(自由記載)。 20-3.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、米国のように8、特許 権の延長登録は、有効成分についての最初の登録に基づくものでなければ認めないとした 場合、新たに追加登録された「適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑制に用 いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的)」にも効力を及ぼすべきか、 下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答えください。 ☐①追加登録された新たな適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑制に用いら れる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的)にも効力を及ぼすべき ☐②追加登録された新たな適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑制に用いら れる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的)に効力を及ぼすべきでない ☐③どちらでもよい ☐④分からない ☐⑤その他( ) 理由(自由記載) C-3 現行の特許権の存続期間の延長登録制度に対するユーザーの評価 21.我が国と海外の特許権の存続期間の延長登録制度との比較について 21-1.我が国の特許権の延長登録制度と海外の特許権の延長登録制度(審査遅延に関 する延長登録制度を除く)とを比較した場合の、我が国の制度のメリット・デメリットを お答えください。 (観点の例:期間・回数、延長期間の算定方法、延長の効果(権利行使)、延長対象、承認 との関係、延長手続等について。海外の延長登録制度を利用していない場合は我が国制度 8 米国では、特許権の存続期間の延長は、有効成分(製品)についての最初の承認(医薬品等)に基づくものでなけれ ば認められず、同じ有効成分(製品)に関して新たに承認された用途にも特許権の効力が及ぶものとされている(米国 特許法 section 156(b)参照)。 - 232 - を利用する上でメリット及びデメリットと思うことを記載してください。) 我が国制度のメリット(自由記載) 我が国制度のデメリット(自由記載) 22.特許権の存続期間の延長登録制度に関する判決や審査基準改訂に伴う影響について 22-1.平成21年5月29日知財高裁判決、それに続く平成23年4月28日最高裁判決、平成 23年12月28日の改訂審査基準の施行、あるいは平成26年5月30日知財高裁大合議判決の前後 において、特許権の存続期間の延長登録出願の出願戦略について変化があったかどうか、 下記の選択肢からお選びください(平成26年5月30日知財高裁大合議判決については出願戦 略の変更について検討したことがあれば変化があったとしてください)。また、変化があっ た場合はどのような変化があったか(わかる範囲で理由と共に) 、その概要をお答えくださ い。 ☐①平成21年5月29日知財高裁判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) ☐②平成23年4月28日最高裁判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) ☐③平成23年12月28日の改訂審査基準の施行の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) - 233 - ☐④平成26年5月30日知財高裁大合議判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) ☐⑤変化がなかった C-4.その他 23.ジェネリック農薬の登録申請に関して 23-1.ジェネリック農薬の登録を申請するに当たって、延長された特許権の効力の及 ぶ範囲に該当製品が含まれるか否かの判断で迷うことがあるか、下記の選択肢からひとつ お選びください。 ☐①迷うことが多い □②迷うことがある □③あまり迷うことはない ☐④迷うことはない ☐⑤ジェネリック農薬の登録申請をしていない ☐⑥どちらでもない ☐⑦その他( ) 23-2.問23-1で①または②を選択した場合には、判断で迷う原因として考えられ るものについて、下記の選択肢からお選びください(複数回答可)。 ☐①特許発明自体が不明確 ☐②延長された特許権の効力の及ぶ範囲が不明確 ☐③その他( ) 24.試験データ保護と特許権の存続期間の延長登録について 24-1.現在農薬の登録申請において、 農薬の登録申請において提出することとされている試験成績の一部が既に他の登録申 請において15年以上前に提出されており、かつ、登録申請しようとしている農薬が現に 登録を受けてから15年以上経過しているものとその成分、物理的化学的性状、人畜に対 する毒性その他の特性が同等であると認められる場合には、申請者は、試験成績代替書 - 234 - を当該試験成績に代えて提出することができる との運用がなされており、新規有効成分を含む農薬については約15年の試験データの保護 が与えられておりますが、それに加えて特許権の存続期間の延長による保護を受けること が有効である場合とその理由をお答えください。 有効である場合及び理由(自由記載) 25.農薬の登録申請時における特許情報の参照について 25-1.ジェネリック農薬について登録申請する際に、先行農薬の特許が存在すること を、確認することができるか、下記の選択肢からひとつお選びください(①を選択した場 合は、その確認手段についても、お答えください)。 ☐①確認できる。 (確認手段: ) ☐②一部は確認できるが完全には確認できない。 (確認手段: ) ☐③確認できない ☐④その他( ) 25-2.我が国において登録された農薬とその農薬に関連した特許権のリストを設け、 第三者が容易にそのリストを閲覧できる制度を設けるべきか、下記の選択肢からひとつお 選びください。 ☐①設けるべき ☐②設けなくてよい ☐③どちらでもよい ☐④その他( ) 26.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度についてその他のご意見があれば自由に お答えください(自由記載) - 235 - ご協力いただきましてありがとうございました。 - 236 - 【国内アンケート調査・結果】 特許権の存続期間の延長登録制度の在り方に関する調査研究【集計結果】 1.貴社の所属する団体と海外での事業実績について 1-1.国内での所属する団体を、下記の選択肢からお選びください(複数回答可)。 件数 1 日本製薬工業協会 2 日本ジェネリック製薬協会 3 農薬工業会 4 再生医療イノベーションフォーラム 5 それ以外の団体 無回答 回答者数 40 12 22 10 14 2 81 割合 49.4% 14.8% 27.2% 12.3% 17.3% 2.5% 100.0% 2.貴社(単体)の資本金について下記の選択肢からひとつお選びください。 件数 1 1000万円未満 2 1000万円以上、5000万円未満 3 5000万円以上、1億円未満 4 1億円以上、3億円未満 5 3億円以上、10億円未満 6 10億円以上、50億円未満 7 50億円以上 無回答 回答者数 0 1 2 5 8 20 44 1 81 - 238 - 割合 0.0% 1.2% 2.5% 6.2% 9.9% 24.7% 54.3% 1.2% 100.0% 0% 20% 全体 012 5 8 40% 60% 20 80% 100% 44 1 1 2 type1 0 1 0 2 type2 0 2 1 8 6 0 17 1 3 4 5 type3 0 2 1 4 1 0 6 type4 0 1 0 type5 0 1 0 2 2 2 4 4 0 4 0 7 無回答 ※以下は医薬品 と農薬 とのパートに分かれます。従事されている事業に対応するパート において、回答をお願いします。回答いただくパートにチェックをお願いします(医薬品 と農薬のいずれの事業も行っている場合は、可能な範囲で両パートにお答えください)。 件数 1 B.医薬品 2 C.農薬 無回答 63 22 0 81 回答者数 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 70.0% 80.0% 77.8% 1 27.2% 2 無回答 60.0% 0.0% - 239 - 割合 77.8% 27.2% 0.0% 100.0% 90.0% B.医薬品 B-1.特許権の存続期間の延長登録制度の利用状況 3.国内における特許権の存続期間の延長登録制度の利用について 3-1.国内における特許権の存続期間の延長登録出願の有無について、下記の選択肢か らひとつお選びください。 件数 1 延長登録出願をしたことがある 2 延長登録出願をしたことがない 無回答 回答者数 0% 全体 type1 type2 20% 40% 44 18 1 63 60% 44 80% 18 11 100% 1 0 25 割合 69.8% 28.6% 1.6% 100.0% 1 2 1 1 無回答 type3 0 8 0 3-2.問3-1で番号②と答えた方はその理由を、下記の選択肢からひとつお選びくだ さい。 件数 1 再審査制度で十分に保護されるので延長登録出願の必要がない 2 延長登録出願の要件を満たす案件がない 3 延長登録出願のやり方が分からない 4 その他 無回答 回答者数 - 240 - 0 16 0 2 0 18 割合 0.0% 88.9% 0.0% 11.1% 0.0% 100.0% 11.1% 0.0% 0.0% 1 2 3 4 無回答 88.9% 4.海外における特許権の存続期間の延長登録制度の利用について 4-1.海外で医薬品の製造販売等の承認を受けたことがあるかどうか、ある場合にはそ の国・地域を、下記の選択肢からお選びください(複数回答可)。 件数 1 ある(米国) 2 ある(欧州) 3 ある(韓国) 4 ある 5 ない 無回答 20 20 23 16 32 1 63 回答者数 0.0% 1 2 3 4 5 無回答 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 31.7% 31.7% 36.5% 25.4% 50.8% 1.6% 回答4のその他の国 ・ライセンシーが承認を受けた。米、欧、韓、中 ・中国、台湾、シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピン、インド等 ・中国他 ・中国 ・カナダ、中国、メキシコ、オーストラリア、インド他多数 ・中国 ・フィリピン、タイ等多数 ・台湾、オーストラリア、イスラエル等 ・中国、タイ、ブラジル、メキシコ、コロンビア ・中国、英国、オーストラリア ・オーストラリア、ロシア、台湾等 - 241 - 割合 31.7% 31.7% 36.5% 25.4% 50.8% 1.6% 100.0% ・外資系の企業であるため、本社が承認申請を行っている。 4-2.海外で医薬品の特許権の存続期間の延長登録出願をしたことがあるかどうか、あ る場合にはその国・地域を、下記の選択肢からお選びください(複数回答可) 。 件数 1 ある(米国) 2 ある(欧州) 3 ある(韓国) 4 ある 5 ない 無回答 22 21 21 10 35 1 63 回答者数 0.0% 1 2 3 4 5 無回答 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 割合 34.9% 33.3% 33.3% 15.9% 55.6% 1.6% 100.0% 60.0% 34.9% 33.3% 33.3% 15.9% 55.6% 1.6% 回答4のその他の国 ・台湾 ・オーストラリア、ロシア、台湾、スイス ・オーストラリア ・台湾、オーストラリア、イスラエル等 ・オーストラリア、イスラエル ・オーストラリア ・オーストラリア、ロシア、台湾 ・外資系の企業であるため、本社が承認申請を行っている。 B-2.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度の在り方 現行特許法の延長登録に関する規定の特許庁の解釈(平成 23 年 12 月 28 日施行 特許庁 審査基準による運用)を否定する大合議判決が、平成 26 年 5 月 30 日に言い渡され、現在、 特許庁が最高裁判所に上告受理申立てを行っております。B-2(以下の5.~8.)の質問 は、将来、我が国の延長登録出願制度に関する規定・運用を改正すると仮定した場合、ど のような制度にユーザーのニーズがあるかを調査するものですので、その前提で回答をお 願いします。 5.特許権の存続期間の延長の期間について 5-1.特許権の存続期間の延長の期間を見直すとしたらどうすべきか、下記の選択肢か - 242 - らひとつお選びください。またその理由をお答えください。 件数 1 現行と同様、5年とすべき 2 現行の5年より長くすべき 3 現行の5年より短くすべき 無回答 42 15 3 3 63 回答者数 割合 66.7% 23.8% 4.8% 4.8% 100.0% 4.8% 4.8% 1 23.8% 2 3 無回答 66.7% 0% 20% 全体 type1 40% 60% 80% 42 100% 15 8 3 3 3 1 0 2 3 type2 21 type3 6 6 0 2 0 無回答 0 ①の理由 Type1 ・現状で問題ない。また、見直すべき積極的な理由もない。 ・国際調和の観点から ・5 年から変更する合理的な理由が無く、また他国とのハーモナイズの観点から現行の延長 期間のままでよいと考えます。 ・延長の期間を見直すには、実質的な特許権の浸食期間を調査して検討すべきだと思いま す。 Type2 ・侵食の回復という趣旨を踏まえれば、浸食期間は概ね 5 年であろうし、期間の変更はこ れまでのバランスを崩すと考えられるので、特段の事情が無い以上変更すべきでない。合 - 243 - わせて、欧米も 5 年であるから。 ・本来の 20 年の期間に対して 5 年の延長は相当であるから。また、現行制度と同じであり 業界への影響が無いから。 ・現行法に定める延長の最大期間は、製薬企業の特許権の侵食期間の実態調査結果を元に 制定されたものであり、それを否定する新たなデータがない限り、変更すべきではない。 ・延長制度の趣旨に照らし合わせて、現行の 5 年が妥当と考えられるため。 ・国際調和の観点から他国と同様にするのが望ましい。 ・先発企業からすれば、長いに越したことはないが、他国とのバランスからみて妥当と考 えます。 ・国際的にハーモナイズされていることが望ましいため 延長期間に大きな変更を加える ことは権利者と第三者の利益のバランスを変更することになり望ましくないため ・医薬品に係る特許権の存続期間延長については、特許発明の権利範囲に及ぶ発明特定事 項特定の難しさと医薬品承認申請手続きに係る時間のバランスが難しく、運用上は個別的 な判断を強いられることが現状と考えております。例えば、同じ成分を用いて用法・用量、 効能・効果が異なる医薬品の薬事申請を行う場合、先行医薬品で特許発明を実施していた としても別途申請に期間を要することが生じます。この場合 2 回の薬事申請に要した期間 が 5 年では足りないことが起こる可能性を考えております。一方で、認められる範囲で複 数回の延長申請する事例も想定されると考えます。従いまして、延長の期間を原則 5 年と し、権利者に不服が生じる場合には個別事情を審判に上げ、最大 5 年の追加延長が認めら れても良いのではないかと考えます。 Type3 ・現行の制度が一番妥当と思われるから ・欧米の延長制度を考慮し、最大延長期間については特に変更する必要はないと考えます。 ・国際調和 ・諸外国の特許法とのハーモナイゼーションのため。 その他 ・発明の過度な保護は却って技術革新を阻害する ・権利は、他者の権利とのバランスの上になりたつものであるから。また、国際的なハー モナイゼーションが必要 ・独占期間が、長すぎると産業の発達を阻害することになる。 ・ハーモナイゼーションのため。 ・殺虫剤、殺菌剤など抵抗性害虫等が発生し、独占権を延長しても、実質的に使用できな いから。 ・再生医療等製品に限って言えば、条件付き承認が認められる場合、臨床治験の期間はそ - 244 - れほど長くないのかもしれないから。 ②の理由 Type1 ・臨床試験にかかった期間すべてを延長すべき Type2 ・開発の為に要した期間で特許権の行使が制限された場合、その間の開発費用や労力を考 慮すると、5 年では短い場合がある。 ・先発医薬品メーカーの新薬販売における利益を得る機会を十分に与えることで、先発メ ーカーの研究開発を促進させるため ・承認の取得に要する期間が現実に 5 年より長いため。 ・臨床試験の長期化等で、特許期間の侵食が従来に比べより大きくなっている その他 ・新薬研究開発のインセンティブを上げ、促進させるため ・医薬品は薬事法に基づく承認を得なければ販売できず、特許が成立しても実施できる期 間が短いことから現状の延長期間の 5 年でも開発のインセンティブを向上させるには不十 分であるため。 ・今後承認までの期間が長くなる可能性もあり、5 年では十分保護が得られなくなるため。 新薬の研究開発には多額の研究開発費が必要となり、承認時期が遅くなった場合等では、 必ずしも 5 年間の延長では、投資の回収、利益確保の観点で十分でない場合がある。 ・当社の扱う再生医療等製品の承認が短期間(5 年程度)で得られるものでないため。 ③の理由 Type3 ・5 年より短くしても権利者は投資回収が充分可能である。それよりも後発品上市が遅れる ことによるデメリット(医療費増加)の方が大きい。 その他 ・ジェネリックの有効利用の促進をすべきと考える 5-2.欧米のように承認日から延長された期間を含めて最長 14 年ないし 15 年という制 限を導入することが必要か否か、下記の選択肢からひとつお選びください。またその理由 をお答えください。 - 245 - 件数 1 必要 2 不要 3 その他 無回答 14 46 2 1 63 回答者数 割合 22.2% 73.0% 3.2% 1.6% 100.0% 3.2% 1.6% 22.2% 1 2 3 無回答 73.0% 0% 20% 全体 40% 60% 14 80% 100% 46 21 type1 1 10 0 type2 3 23 10 1 2 3 type3 7 1 無回答 0 ③その他 ・有効成分・基本用途に関する発明は制限なし、あるいは、有効成分に関する最初の承認 時の延長登録期間には制限なしが良い。(type2) 理由 ・発明の実用化に多額の投資と時間を要しない発明まで長期に保護する必要はない。その ような特許はエバーグリーニングが目的だから。一方で、物質・用途(効能効果)に関す る特許は制限を設けるべきでない。実用化促進の企業努力が十分に報われないから。 ①の理由 Type2 ・同一特許が複数会延長できる日本では、欧米より多少開発期間が長くても欧米と同様に 上限を設けるのが良い(無用に独占期間を長くすべきではない) ・特許発明の技術範囲を独占する期間として、通常の存続期間を超えるような実施可能期 - 246 - 間を与えることは改良発明の創作や実施の妨げになり、産業の発達に寄与するという特許 法における発明の位置付けに反する状況をもたらすと考えております。開発期間が比較的 長い医薬品において無制限に延長可能な状態は適当でないと考えます。 Type3 ・制限が無いと実質的に先発品の再審査期間を延長することになるから ・現在、日本では物質や用途に限らず、複数の種類の特許が延長を受けられる可能性があ り、さらに効能追加等でさらなる延長が付与され得ます。また、延長登録出願の審査にも それなりの期間を要するため、その間、上のような複数の特許の特許期間が不確定となり、 無用な特許係争を誘発するおそれがあります。このような制度を導入することで、特許延 長の期間が幾分安定するものと考えます。 ・一定限度とすることで医薬発明が促進されると考えられる。 制限を設けないと古い発明が他国よりも長く保護されることになり産業の発達が阻害され る可能性があるから。 ・安易な特許権延長は医療費増加につながる。また、先発メーカーのイノベーションが低 滞しかねない。 その他 ・グローバル化された世界なので、国際的なハーモナイゼーションより、統一的な精度が 好ましい。 ・承認日から 14 ないし 15 年とする方が、審査期間の長短の問題がなくなって良い。公平 性が上がる。 ・保護と利用のバランスを考慮したら必要。 ・制限を設けることで、後発品の開発、販売が促されるため。 ②の理由 Type1 ・現状で問題ない。 ・制限する根拠が見当たらない ・5-3、①のような制度があれば、早期に薬を開発し、上市するインセンティブとなるため。 ・薬事法等により発明を実施することができなかった期間を延長するという特許延長制度 の趣旨から、延長期間の制限を設けるべきではないと考えます。 ・実質的な延長期間は変わらないため。 ・臨床試験にかかった期間すべてを延長すべき Type2 - 247 - ・侵食された特許期間は法定の延長期間の範囲では保護されてしかるべきと考えるから。 制度が複雑になり混乱が生じる ・発明の実用化に多額の投資と時間を要しない発明まで長期に保護する必要はない。その ような特許はエバーグリーニングが目的だから。一方で、物質・用途(効能効果)に関す る特許は制限を設けるべきでない。実用化促進の企業努力が十分に報われないから。 延長制度の趣旨は、規制により実施できなかった期間を回復させる制度であるので、それ とは別個の期間の制限を加えることは妥当ではないから。 ・浸食された期間は極力延長制度により保護されるようにすべきなので。 ・欧米の当該規定は、第三者の市場参入を促進する目的で制定されたものであり、特許権 者の権利保護を趣旨とする我が国の延長制度において敢えて導入する必要はない。 ・承認日から画一的に期間を設定すると、製造販売できなかった期間が、その期間よりも 長いメーカーにとって不利益になるため ・現行のように、単純に、薬事法による規制のために実施できなかった期間を延長させる 制度のほうが、合理的であるため。 ・延長制度の趣旨が特許権の侵食期間の回復が目的であるので、14 年等で判断するのでは なく、侵食期間で判断すべきである。 ・開発費の高騰、開発期間の長期化に伴い、延長期間を限定する理由がないため。 ・古い薬剤であっても、新たな適応症の開発は意義があり、産業発達には貢献し得る。そ のためにはやはり多大なコストがかかり、利益回収の期間は必要である。 ・早期の承認取得等の企業努力が報われない。 ・特許発明を実施できなかった期間を回復する制度であるため ・存続期間の延長は、発明を実施できなかった期間の回復を目的としており、延長期間最 大 5 年の制限以外に権利期間の制限を設けるべきではない。 ・現状を鑑みて、制限を導入しなくても問題ない。 ・そのような制限を設ける理由を見いだせない。 ・現行の日本にない上限を導入する必要はない。万が一導入するとしたら、新薬創出加算 の対象となる薬価加算の 15 年維持を享受する為にも、14 年以下ではなく 15 年以上を望む。 ・現行制度と比較して、承認日から延長された期間を含めて最長 14 年ないし 15 年として も、実質的に違いがない。 Type3 ・現行制度で十分に権利行使出来ているから その他 ・新薬研究開発のインセンティブを上げ、促進させるため ・特許権存続期間延長登録制度の趣旨の一貫性のため。制限を設ける合理性が認められな - 248 - い。 ・承認から 14 年又は 15 年という制限を設けることで、特許期間が既存の制度より短くな る可能性があるため(例えば承認までの期間が 10 年以内であった場合)。 ・煩雑な延長制度は不要。 ・ジェネリックの有効利用の促進をすべきと考える ・存続期間の延長が最長五年という制限があるので、最長年数という制限はなくともよい。 ・早期承認の取得は、企業努力の成果という面もあり、また、制限を導入しない、現行制 度の存続期間(延長含む)は、第三者の利益とのバランスを考慮しても、適切である。 ・当社の扱う再生医療等製品の承認が短期間(5 年程度)で得られるものでないため。 5-3.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度における延長期間の算定方法を見直す べきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください。またその理由をお答えください。 件数 1 2 3 無回答 現行の算定方法(承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許 権の設定登録日のいずれか遅い方の日から承認が申請者に到達した日 の前日までの期間)を見直す必要はない 現行の算定方法を見直すべき 分からない 回答者数 9.5% 割合 48 76.2% 7 6 2 63 11.1% 9.5% 3.2% 100.0% 3.2% 11.1% 1 2 3 無回答 76.2% 0% 20% 40% 全体 type1 60% 80% 48 100% 7 7 1 6 2 2 1 2 1 3 type2 type3 24 1 2 0 6 2 ①の理由 - 249 - 0 無回答 Type1 ・現行制度のような、特許発明を実施できなかった期間を、回復する制度が、望ましい。 ・現行の算定式は、薬事法等により発明を実施することができなかった期間を延長すると いう特許延長制度の趣旨に即していると考えます。 ・現行法で特に問題ないと考えているため。 Type2 ・現行の算定方法で特に問題ないから。 ・特許発明を実施することができなかった期間として、現行の算定方法は妥当である。現 行審査基準における「前臨床試験期間は、医薬品の有効成分である化学物質の有用性を研 究開発する期間としての性格が濃く、一般の分野でいう製品開発期間に近いものと考えら れ、承認を受けることに密接に関係した試験期間とは必ずしもいえないため、特許発明の 実施をすることができなかった期間に含まれない。」とする見解を支持する。また、現行制 度と同じであり業界への影響が無いから。 ・現行の算定方法は、特許期間のうち侵食された期間を回復するという我が国の延長制度 の趣旨に沿った合理的な方法であると考える。 ・現行の算出方法が妥当と考えられるため。 ・現状のままで問題ない。 ・延長期間に大きな変更を加えることは望ましくないため。見直す場合、欧州のように起 算日を特許出願日とすることにより、延長期間を算出するための特許庁による審査が大幅 に簡素化されるとともに、延長登録された権利が安定化されること(延長期間をめぐる係 争がなくなる)が期待される ・医薬品の薬事申請に必要な試験を実施する期間及び承認申請における審査期間を含めれ ば適当と考え、また、追加で存続期間延長申請を行う時にも該当期間の認定が比較的に容 易と考えるためです。 ・見直す必要性を見いだせない。 ・現行の制度で、特段の問題を抱えていないので。 ・算定基準が明確である。 Type3 ・現行の算定方法が一番妥当と思うから ・特にありません。 ・合理的と考えられる。 ・現行の制度に特に不合理な点は見当たらない。 その他 - 250 - ・現行の制度で特段の問題が生じていない。 ・臨床試験の期間も特許権を行使できなかったのは事実なので。 ・願制度は、欧米で採用されている制度を基に作成されたものであり、不都合、世界調和 で改正するだけで十分。余計なことに金をかける必要性は少ない。 ・実施できない期間を延長するという趣旨に従えば、この算定方法が合理的であるように 思える。 ・特許権の存続期間の延長制度の趣旨から、特許発明の実施が制限される期間である現行 の算定方法は適切である。 ・特許期間延長を求める実態に合っているものと考えます。 ②の理由 Type1 ・ 「特許権の設定登録の日」を起算日とすることは見直すべき。特許権者等の責によらない 事由(庁での審査)によって延長期間が浸食されるおそれがある制度設計は好ましくない。 Type2 ・基本的な考え方の変更は不要であるが、もう少し表現を明確にして欲しい。 Type3 ・欧米のように承認日から延長された期間を含めて最長 14 年ないし 15 年という制限を導 入してはどうか。 その他 ・経験上、法律は常に後追いとなる宿命から、見直すチャンスがあるときには、常に問題 が内在していると考え見直す姿勢が必要と考える。 ・起算日は見直し、緩和してもよい気がする ③の理由 Type2 ・浸食期間を適切に反映している計算方式と考えるが、一方で、効力範囲とのバランス が悪いようにもみえ、もし、効力範囲が、延長登録に対応して細切れと解釈されるなら、 総合的に延長登録要件と、効力範囲の関係を明確化した改正をしたほうがよい。 6.特許権の存続期間の延長登録が認められる要件について 6-1.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において対象となる特許発明の種類とし て望ましいものを下記の選択肢からお選びください、また、その理由をお答えください(複 - 251 - 数回答可) 。 件数 1 2 3 4 5 6 7 無回答 有効成分となる化学物質等の発明 特定の疾病に対する治療用途に特徴のある剤、組成物、製造のための 使用の発明 特定の用法・用量による特定の疾病に対する治療用途に特徴のある 剤、組成物、製造のための使用の発明 剤形・製剤に特徴のある発明 合剤・併用剤の発明 化学物質や製剤等の製法の発明 その他 回答者数 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 59 割合 93.7% 53 84.1% 45 71.4% 43 38 35 3 1 63 68.3% 60.3% 55.6% 4.8% 1.6% 100.0% 90.0% 100.0% 93.7% 1 2 3 4 5 6 7 無回答 84.1% 71.4% 68.3% 60.3% 55.6% 4.8% 1.6% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 2 3 全体 4 type1 type2 5 type3 6 7 無回答 ⑦その他 ・バイオマーカーの発明(type2) ・医薬品に使用された全ての発明(type2) ・全ての発明(type2) 選んだ理由 - 252 - Type1 ・特許発明の実施ができなかったという点は、発明によらない。 ・制限を設けるべきではない。 ・対象となる特許発明の種類は、広く認められるべきであるため。 ・米国や欧州等でも、 広く認められている。 ・薬事法等により発明を実施することができなかった期間を延長するという特許延長制度 の趣旨から、延長できる特許の種類は制限されるべきではないと考えます。 ・上記発明を実施するために承認を受けるためには臨床試験が必要であり、特許権の浸食 期間を生じるため。 Type2 ・承認を受けるために全く新しいプロトコル(対象患者が異なるような)の治験をおこな う必要のある場合などに限定されるべき(物質+用途) 。製剤改良等は他社は回避可能であ る、延長する意味がない。無用に独占期間を長くすべきではない。 ・延長された特許権の効力の及び範囲を欧米の「物」の観点で規定し、5 年を超える延長期 間を認めれば、有効成分となる化学物質等の発明についてだけ延長を認めれば十分である が、用途特許等しか存在しない場合を想定し、権利者が延長すべき特許を選択できるよう にしておくとよい。 ・承認を受けた医薬品に関連する特許は如何なる特許であっても延長が認められてよいと 考える。侵食を受けている点では、特許の種類に差は無い。 ・上記はいずれもその特許発明の実施に承認を受けることが必要である発明でありうるか ら。また、現行制度と同じであり業界への影響が無いから。 ・現行どおり、すべての特許発明が延長の対象となるべきである。 ・侵食された特許期間の回復は、対象となる医薬品に関係するあらゆる特許発明について 認められるべきであり、特定のもの(たとえば有効成分)に限定されるべきではない。 ・先発メーカーの保護を十分にすることで、新しい新薬を開発させる発明創作の意欲を向 上させるため ・承認を取得することにより初めてクレーム記載の内容が実施できるようになったのであ れば、特許発明の種類を問わず、延長の対象となるべきと考えるため。 ・研究開発の投資を回収するためには、従来通り、多くの特許が認められるべきである。 ・特許発明の種類を限定する理由が無い。 ・発明の種類によらず、 「侵食された特許期問」の有無で判断すべきである。 ・特許発明を実施できなかった期間を回復する制度であるため ・但し、医薬品として本 質的な部分に関係しない発明まで延長されるべきではない(平成 26 年 5 月 30 日知財高裁 判決、平成 24 年(行ケ)第 10399 号 審決取消請求事件) 承認された医薬品が実施品に該当する特許は、特許発明の種類に関わらず延長の対象とす - 253 - べき。 ・有効成分となる化学物質等の発明(①)及び、特定の用法・用量による特定の疾病に対 する治療用途…(③)については、該当する特許発明の技術的範囲として審査官や審判官 等に認定される位に、該特許明細書に記載されているのであれば存続期間延長が認められ ることが適当と考えます。一方で、当初明細書において実施可能な範囲まで記載されない (一般的な例示程度の記載である)場合に、より具体的な技術範囲を開示する後願改良発 明との利用関係も生じることが容易に想定され、その権利期間にも影響を及ぼすことはよ ろしくないと考えております。 ・承認時に存続している、製品を保護し得る特許は、全て対象となるべき。 ・例えば、①~⑥のうちいずれか 1 件しか特許が存在しない状況下、係る治験を行って承 認を取得した場合、この特許は延長対象とされるべきである。 ・合剤・併用剤は②~④、⑥でカバーされることが多いと考える。 Type3 ・旧来の特許庁の方針で十分であるから、むやみに延長を認めるべきではない。 ・様々な種類の特許に特許延長が付与される状況は、各々の特許期間が不確定となる期間 が多分に存在することになり、無用な特許係争を誘発するおそれがあると考えます。 ・改良発明の促進につながると考えられるため ・②~⑥のケースは特許発明の過剰な保護であり産業の発達を阻害する原因となりうるか ら。 ・安易に延長対象を増やしてエバーグリーニングを認めるという事態は避けるべきと考え ます。 ・最初に出願・登録になるものであって、最も重要な特許である。上記特許につき、1 回認 めれば充分な保護が得られると思う。 その他 ・③及び⑤については臨床現場において医師により適宜実施されるべきことであり、自由 診療制度導入を考慮すると、早期に解放すべき。 ・物質特許を基本に延長されるべきだと考える。 ・特許延長制度を設けた際の主旨からすれば、実質的に特許期間が侵食された期間につい ては、何らかの保護を与えるべきであろう。 ・開発意欲の増大 ・薬事法上の承認を必要とするために実施できなかった発明については、すべて延長登録 を認めるのが一貫性ある解釈。 ・薬理効果は、基本的に AI の性能に起因することが大きいので、製剤は不必要。 ・同一の剤形の変更でも投与経路や用量まで変更する等の新しい剤形を使用する場合があ - 254 - り、当該剤形は承認を受けるまでに相当量の臨床データを必要とし、当該データ採取のた めの時間を要するため。 ・薬事法による試験・審査等により実施できない特許権については、存続期間の延長登録 が認められるべきと思います。 ・技術的意義が明らか ・臨床試験等の投資が必要 ・疾病間の境界が不明瞭であるため、限定した方がよい。 ・直接的に対象となる発明を延長対象とするのがよい。 ・特許権の存続期間の延長制度の趣旨から、厚生労働省の承認まで、実施が制限されてい る範囲に関しては、延長登録が認められるべきである。 ・薬事法等の行政処分が必要な場合は全て、基本的に特許期間の延長対象となるものと考 えます。 6-2.新規有効成分含有医薬品についての最初の承認に基づいて、延長可能となる対象 特許はどうあるべきか、下記の選択肢からひとつお選びください、またその理由をお答え ください。 件数 1 関連する1つの特許に限るべき 2 関連する全ての特許とするべき 3 その他 無回答 回答者数 20 38 3 2 63 割合 31.7% 60.3% 4.8% 3.2% 100.0% 4.8% 3.2% 31.7% 1 2 3 無回答 60.3% - 255 - 0% 20% 60% 80% 100% 1 全体 type1 40% 20 38 2 type2 type3 3 2 8 9 1 0 18 6 0 1 1 0 2 3 無回答 ③その他 ・国際的なコンセンサスを得る方向で調整すべき(その他) ・物質特許と用途特許のみ(type3) ・効力との関係による。(type1) 理由 ①の理由 Type1 ・現行制度では、延長された特許権の効力が及ぶ範囲が剤形・効能効果・用法用量ごとに 非常に細切れに解釈される恐れがあり、結果的に、非常に多くの延長登録出願を行わざる を得ず、出願人の負担が非常に増えています。また、医療の発展のために新たな効能につ いて承認を取得したにもかかわらず、本来の特許期間満了後であったために特許延長が認 められず、逆に当該新たな効能についていわゆる虫食い承認によりジェネリック医薬品を 促すになってしまい、特許延長制度が新たな承認取得のモチベーションを低下させること があります。以上の懸念を克服するためには、米国の特許延長制度と同様に、1 つの医薬品 につき 1 つの特許権の延長に限るべきと考えます。ただし、ここで「医薬品」には、生物 学同等性を有する範囲(承認に臨床試験を必要としない程度)の剤形変更等は含みますが、 DDS 製剤や配合剤など新たに臨床試験を必要とするような新しい剤形は新しい「医薬品」と して扱い、先行品とは別に特許延長の対象とすべきと考えます。 併せて、延長された特 許権は、その医薬品の延長期間中に(本来の特許期間満了後も含む)承認を受けた全ての 剤形・効能効果・用法用量に効力が及ぶべきと考えます。なお、剤形・効能効果・用法用 量等の一変承認ごとに延長手続をせずとも、一変承認後に自動的に権利範囲が拡張するべ きと考えます。 Type2 ・延長された特許の明確化、制度のハーモナイゼーションの観点から。 - 256 - ・対象特許の監視が容易になるため ・法改正の場合、医療費抑制のため後発医薬品の使用が推奨される中、研究開発投資の回 収や新薬創出のインセンティブを考慮しても、複数特許の延長に理解が得られるかは不透 明である。欧米との国際調和の観点も考慮されるべきであろう。 ・全ての特許の場合、特許による保護期間が長期間にわたり、GE・バイオシミラーの参入 が妨げられる。 Type3 ・様々な種類の特許に特許延長が付与される状況は、各々の特許期間が不確定となる期間 が多分に存在することになり、無用な特許係争を誘発するおそれがあると考えます。 ・諸外国の特許法とのハーモナイゼーションのため。 ・国際調和の観点より現行の延長制度は改めるべきです。 ・1 の特許の 1 回延長を認めることで充分投資回収はできると思う。 その他 ・後発品、後続品メーカーの調査負担等の軽減のため。 ・有効成分は、特許で十分守られていると思う。 ・権利関係が煩雑になっている。関連する特許を 1 件に絞るべき。 ②の理由 Type1 ・先発品の網羅的な保護 ・特許発明の実施ができなかったという点は、発明によらない。 ・特許権の浸食期間が生じた特許に対しては補填すべきと考えるため。 ・いかなる種類の特許も臨床試験中は特許を実施することができないから Type2 ・医薬品がクレームに含まれれば、その種類を問わず複数の特許に侵食は生じ得る。その 中から 1 つだけとしなければならない根拠が不明であり、医薬品によっては複数の特許か らなる束で保護されるケースもあると考えられるので、全てを対象とすべき。 ・上記はいずれもその特許発明の実施に承認を受けることが必要である特許でありうるか ら。また、現行制度と同じであり業界への影響が無いから。 ・侵食された特許期間の回復は、対象となる医薬品に関係するあらゆる特許発明について 認められるべきであり、特定のもの(たとえば有効成分)に限定されるべきではない。 ・先発メーカーの保護を十分にすることで、新しい新薬を開発させる発明創作の意欲を向 上させるため - 257 - ・関連する特許が複数ある状況で、延長の対象特許が 1 つに限られる理由がないと考えら れるため。 ・研究開発の投資を回収するためには、従来通り、多くの特許が認められるべきである。 なし ・現行法の「侵食された特許期間の回復」という主旨に賛同する。その主旨に沿うと②が 妥当である。 ・特許発明を実施できなかった期間を回復する制度であるため ・但し、医薬品として本 質的な部分に関係しない発明まで延長されるべきではない 存続期間の延長は、発明を実施できなかった期間の回復を目的としており、該当する特許 は全て延長可能とすべき。 ・医薬品では化学物質そのもの、疾患用途、用法・用量、剤型等の技術的範囲で出願され ることが一般的であるため、存続期間延長申請を行う者の保有する対象特許のうち延長申 請を希望する該当特許を考慮することで、対象となる医薬品と発明を特定する技術的な範 囲を比較することが可能であると考えるからです。 ・この点において、現行の日本の制度を変更する必要はない。 その他 ・製剤や製法特許の権利範囲は、一般的に狭く、迂回可能な場合が多い。後発会社との権 利保護と後発品推奨政策(医療費低減目的)のバランスを考えた時、関連する全ての特許 を延長対象としても影響は少ないと考えています。 ・事実として関連するすべての特許発明が実施できなかったため。 新規有効成分含有医薬品が複数の特許に関連することはしばしばあることであり、関連特 許を全て含まなければ新規有効成分含有医薬品について部分的に特許が延長されないとい う不都合が生じるため。 ・関連する特許が 1 つとは限らないため。 ・特許権は、別々に生じており、それぞれの発明について、実施が制限されており、制度 趣旨から、延長対象は、関連する全ての特許とするべき。 ・薬事法等の行政処分が必要な場合は全て、基本的に特許期間の延長対象となるものと考 えます。 ③の理由 ・基本的には物質特許と用途特許に限定すべき。(type3) ・周辺特許を継続的に出願することにより、実質延長される方策をとっている企業が多い 中、関連特許全てを延長対象にすることも、ひとつの考え方であるが、いろいろな場合が 出現すると考えられる。故に、国際的なコンセンサスを得る方向で調整すべき。(その他) ・不明 - 258 - ・一つの特許では、守れないものがあり、それで複数の特許を出しているので、その考え から。(その他) 6-3.新規有効成分含有医薬品についての最初の承認を受けた後、一部変更承認に基づ いて特許権の存続期間の延長登録を認めるべきか、下記の選択肢からひとつお選びくださ い(ただし、最初の承認に係る医薬品も一部変更承認に係る医薬品も、延長登録出願の対 象特許権の特許発明の技術的範囲に属するものとする)、またその理由をお答えください。 件数 1 2 3 4 5 無回答 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべきではない 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたのであれば、認めるべきでない 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れており、一部変更承認に係る医薬品が、当該延長された特許権の効 力が及ぶ範囲に属するのであれば、認めるべきでない 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべき その他 回答者数 7.9% 3.2% 割合 8 12.7% 10 15.9% 25 39.7% 13 20.6% 5 2 63 7.9% 3.2% 100.0% 12.7% 1 2 15.9% 20.6% 3 4 5 無回答 39.7% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 8 type1 1 type2 3 10 1 25 5 13 1 5 2 3 0 6 10 2 3 4 type3 5 2 12 3 3 0 5 無回答 ⑤その他 ・少なくとも、 「一部変更承認に係る医薬品が当該延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属 - 259 - し、かつ一部変更承認に基づく延長期間が最初の承認に基づく延長期間と同じかそれより 短くなる場合」を除き、認めるべき(type1) ・物質(物の)特許について、用途が同じ場合には認められるべきでない。用途が異なれ れば、認められるべき。(type2) ・一部変更承認を受けるために臨床試験が必要な場合には、最初の承認に基づいて同じ特 許権の存続期間の延長登録が既に認められていたか否かにかかわらず、認めるべき(type1) 最初の承認に基づいて、同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていた場合、最 初の承認に基づいて認められた存続期間について、新たな一部変更承認で認められた範囲 に効力が及ぶとするべき。(type2) 理由 ①の理由 Type1 ・1 つの医薬品につき 1 つの特許の延長を認めるべきとの考えのもと、①を選択しました。 ②では、最初の承認時に特許権が成立していなかったが、一変承認時に特許権が成立して いた場合、第三者から突然特許が延長したように見え、予測可能性が低くなり、妥当では ないと考えます。 Type2 ・関連のないものでも延長できてしまうのは禁止すべき。 Type3 ・一部変更承認は権利者の私的な理由による場合もあり、延命戦略に利用される可能性も 否定できないから その他 ・後発品、後続品メーカーの調査負担軽減のため、一変事項に価値があれば、別途特許権 で保護されるはず。 ・煩雑になるだけであり、認めるべきではない。 ②の理由 Type2 ・一部変更承認にまで延長を認めるのは過剰な保護である。 ・ (一変申請の様なものについてまで延長を認める必要はない)既に延長登録が認められて おり、特許権者に十分「医薬品の販売等」をできなかった期間の利益回収をする機会があ たえられるため - 260 - 延長できる回数は 1 回限りとし、延長された期間の効力が及ぶ範囲は物と用途を限定する ことなく、特許権自体が延長されることとされたい。 Type3 ・基本的には欧米と同じく、一特許一延長のみとすべきと考えるから。 ・改良発明の促進 ・一部変更承認に基づいて延長登録を認めているのは 3 極の中では日本のみであり、国際 ハーモの観点から望ましくないと考えます。 ③の理由 Type2 ・医薬品の軽微な変更(一部変更承認等)の度ごとの延長登録出願の煩瑣を回避するため。 延長登録の要件となる処分を受けることが必要であった「特許発明の実施」の範囲と、延 長された場合の特許権の効力の範囲とは、一致していると考えるのが合理的であるので (「特許権の存続期間の延長」の審査基準改訂案に対する御意見の概要及び回答(平成 23 年 12 月 28 日特許庁調整課審査基準室)の No.11) 、最初の承認に基づく延長登録の特許権 の効力範囲に後の一部変更承認変更に係る医薬品が含まれているのであれば、後の一部変 更承認は登録要件を満たさないと考えるべきであるから。また、現行制度と同じであり業 界への影響が無いから。 ・延長された特許権の効力が及ぶ範囲は、 「処分の対象となった物について特定された用途」 に限られるべきであるので、最初の承認に基づく延長登録出願の効力が及ぶ範囲に一部変 更承認に係る医薬品が属するのであれば、認めるべきでない。 ・現行法の趣旨からして。 ・新規な効能効果を追加する一部変更承認について延長登録を認めるべき(既に延長され た特許権の効力が及ぶ範囲に属しないため) 。 ・効能効果が同一で用法用量が異なる一部 変更承認について延長登録しなくてもよい(既に延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属 するため) 。 ・最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長が 5 年認められているのであれば、 同じ特許権の効力範囲が及ぶ範囲に属するものは、余程の事情があり、不服審判等の手続 きで審査されない限り認められるべきでないと考えます ・この議論は、効力の範囲と一体で考えるべきである。 ・当該延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属する程度の一変は先行処分対象の医薬品と 医薬品(有効成分を含む製剤)として大差がない。 Type3 ・すでに延長登録の認められた範囲について、再度別の延長登録を認めることになれば、 - 261 - 特許期間が不明確な状況になると考えます。 ・一変に係る医薬品は延長登録出願の対象特許発明を実施出来ないことによる権利者の不 利益も少ないため(最初の承認により特許期間延長は認められてる上、一変前の製剤は販 売可能)延長を認める必要はないと考える。 ・すでに最初の処分で禁止が解除されているから。 その他 ・一部変更の内容によると思うので、③としました。 ・但し、延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属するのか否か?分からない場合がありま す。延長された特許権の効力について、明確な判断基準が必要かと思います。 ・既に第三者の実施を制限している範囲(特許権の存続期間が延長された場合の特許権の 効力範囲)に対して、再度、延長を認めることは、過度に特許権者を保護することに繋が るため。 ④の理由 Type2 ・もし、延長された特許権の効力が及ぶ範囲が明確であるならば、③も妥当な選択肢であ り 得るが、これが不明確である現状においては特許権者の権利保護の観点から④が妥当。 ・①~③については、延長対象特許が物質特許の場合、適応拡大の承認に基づく延長出願 が不可となるため ・承認内容との関係で可否を決めるべき。 その他 ・一部変更であろうと、それが承認されるまではその技術内容は実施できなかったことに 変わりはなく、それは補償されるべきである。③における前提が事実とは思えないが、仮 にそのような前提が成り立ち、それでも重ねて延長登録を認めても特許権者は同一であり、 排他的範囲が不当に拡大するわけではなく、実害はない。 ・最初の承認である先行処分と用法・用途等を異にする場合には、当該先行処分では後行 処分に係る販売行為の禁止は解除されておらず、発明行為の実施も解除されていないため。 承認を得なければ実施できなかった発明として、別であることは明らかだから ・一部変更承認されたものについては、発明を実施できなかったので、延長を認めるべき。 但し、可能であれば、後から承認された内容のみが延長保護されるようにするべき。 ・薬事法等の行政処分が必要な場合は全て、基本的に特許期間の延長対象となるものと考 えます。 ⑤の理由 - 262 - Type2 ・承認の内容に関わらず追加承認の都度延長登録を可能とする制度では、仮に延長登録後 の効力範囲もその承認の内容に制限されるとすると、十分な製品保護が図れず、追加適応 症等に係る医薬品開発のインセンティブを失わせる結果につながりかねない。つまり、上 述の大合議判決の立場は受け入れられない。 ・延長の回数は 1 回に制限されたとしても、 先行処分や後の一部変更承認によって得られる効力範囲が広く認められれば、追加適応症 等に係る医薬品開発のインセンティブが失われることはないと思われる。 6-4.物質 A 又は B を選択肢とする化学物質発明に係る特許権について、物質 A を有効 成分として含む医薬品の最初の承認を受けた後に、物質 B を有効成分として含む医薬品の 後の承認を受けた場合、当該後の承認に基づいて当該特許権について延長登録を認めるべ きか否か、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答えください。 件数 1 2 3 4 5 無回答 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべきではない 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたのであれば、認めるべきでない 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れており、後の承認に係る医薬品が、当該延長された特許権の効力が 及ぶ範囲に属するのであれば、認めるべきでない 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべき その他 回答者数 0.0% 3.2% 割合 7 11.1% 6 9.5% 18 28.6% 30 47.6% 0 2 63 0.0% 3.2% 100.0% 11.1% 9.5% 1 2 3 47.6% 4 28.6% - 263 - 5 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 type1 0 7 6 18 30 2 9 02 0 2 3 4 type2 4 type3 4 2 6 13 1 5 0 0 5 無回答 ①の理由 Type3 ・A の先行処分によって延長された発明特定事項が A に関するもので、B による当該後の処 分によって延長される発明特定事項が B に関するもののみであれば、複数回の延長は理解 できる。しかしながら、権利者の意図的な延命措置に利用される可能性の方が大きいため、 ①が適切だと思われる(A による延長より、B による延長の方が、延長期間が長い場合があ る)。 その他 ・特許権者は、分割出願等により、A、B につき別出願する機会があったにもかかわらず一 出願とした。 ②の理由 Type2 ・延長できる回数は 1 回限りとし、延長された期間の効力が及ぶ範囲は物と用途を限定す ることなく、特許権自体が延長されることとされたい。物質 A の承認により延長された権 利範囲は、物質 B に及ぶこととされたい。 ・最初の承認に基づいて同じ特許の存続期間の延長登録が既に認められていた場合には、 特許発明の実施の禁止が解除されたものとして延長登録を拒絶することで問題ないと考え ます。なぜなら、A も B も当初明細書に実施可能な状態で開示されているものと考えるから です。 Type3 ・すでに延長登録の認められた範囲について、再度別の延長登録を認めることになれば、 特許期間が不明確な状況になると考えます。 ・A の物質特許の権利期間が本来認められるべきである期間より長くなる可能性がある。 ・新規有効成分として物質 B が承認されるときは認めるべきですが、例えば B が A のエス - 264 - テル、プロドラッグ、塩などの場合は延長不要と考えます。 ・二重に延長を認めることになるので。 ③の理由 Type2 ・最初の承認に基づいて延長された特許権の効力が及ぶのであれば、再度の延長登録を認 める必要性はないが、最初の延長の効力が及ばない場合には、侵食された特許期間の回復 という制度趣旨に則り、延長登録が認められるべきと考えるから。 ・延長登録の要件となる処分を受けることが必要であった「特許発明の実施」の範囲と、 延長された場合の特許権の効力の範囲とは、一致していると考えるのが合理的であるので (「特許権の存続期間の延長」の審査基準改訂案に対する御意見の概要及び回答(平成 23 年 12 月 28 日特許庁調整課審査基準室)の No.11) 、最初の承認に基づく延長登録の特許権 の効力範囲に後の一部変更承認変更に係る医薬品が含まれているのであれば、後の一部変 更承認は登録要件を満たさないと考えるべきであるから。また、現行制度と同じであり業 界への影響が無いから。なお、質問の趣旨が不明確な点がありました。 「物質 A 又は B を選 択肢とする化学物質発明」の場合、③の「後の承認に係る医薬品が、当該延長された特許 権の効力が及ぶ範囲に属する」ような場合、はあるのでしょうか?物質 A がラセミ体、B が光学異性体の場合でしょうか? ・現行法の趣旨からして。 その他 ・一部変更の内容によると思うので、③としました。 ・但し、延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属するのか否か?分からない場合がありま す。延長された特許権の効力について、明確な判断基準が必要かと思います。 ・既に第三者の実施を制限している範囲(特許権の存続期間が延長された場合の特許権の 効力範囲)に対して、再度、延長を認めることは、過度に特許権者を保護することに繋が るため。なお、一般的なケースであれば、有効成分が異なる、物質別は、最初の承認によ り、延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属さないと考えられる。 ④の理由 Type1 ・特許発明の実施ができなかった期間がある限り補填されるべき ・製品毎に対応すべき ・延長された特許権は、承認を受けた医薬品に対して効力が及ぶと考えるので、後行医薬 品(物質 B)の承認のよる特許延長は先行医薬品(物質 A)の承認とは独立して認められる べきと考えます。 - 265 - 先の承認と後の承認とでは有効成分が異なるので、認めるべきであると考えるため。 ・物質 B の承認を得るには、物質 B についての治験が必要であり、その期間は特許を実施 できないから Type2 ・物質が異なるのであれば、個別に延長を認めるのは制度の主旨にう合致している。 ・B について実施出来るようになったのは、後の承認で初めてであるので、最初の承認に関 わらず認めるべきと考える。 ・上記 6-3 の理由に加え、物質 B を有効成分として含む医薬品の後の承認を受けるために は、フルセットの臨床試験を含む長期間の研究開発を要する。先の承認と同一の特許権だ からといって後の承認の延長登録を認めないのは形式的に過ぎ、特許権者の権利保護とい う制度趣旨に明らかに反している。また、分割出願により A と B を別の特許権とすれば両 者の延長登録が認められることからすれば、単なる分割出願の手続きの有無で結果が異な ることになり、不合理である。 ・物質 A と B は別ものであり各成分に独立して延長登録されるから ・B は、承認前に薬事法の規制により実施できなかったのであるから、B の承認後の延長登 録も認められるべき。 ・最初の承認と後の承認では有効成分が異なるため、双方認めるべきである。 ・物質 A,B 個別に有効性、安全性の評価が必要であるため。 ・原則、新規有効成分含有医薬品の研究開発にインセンティブを与えるため、既に延長さ れた特許権であっても新規有効成分ごとに独立した延長登録が認められるべき。 ・但し、 先に延長登録を受けた有効成分を利用する有効成分(先に処分を受けた有効成分の塩また はエステル)の処分にまで延長機会を与えるかどうかは薬事承認の状況に依存する。先の 有効成分の審査データを参照して承認されるようであれば延長機会を与える必要はない。 利用関係にある有効成分は、先の有効成分の承認により延長された特許権の効力の及ぶ範 囲とするべき。 ・有効成分が異なるため、新規有効成分含有医薬品の最初の承認だから。 ・③の状況を想定し難く、④を選択しました。が、本質的には③を選択すべきかもしれな いと悩んではいます。 ・有効成分が異なる。 その他 ・ 「同じ特許権」といってもその内容には広がりがある。①、②では不必要な別出願を誘発 する。③の「…属するのであれば」は現実にはありえない設問 ・最初の承認に係る先行処分と後行処分の対象となる用法・用途等が異なる場合には、先 行処分では後行処分の販売行為の禁止は解除されていない以上、後行処分の発明行為の実 - 266 - 施も解除されていないため。 ・承認を得なければ実施できなかった発明として、別であることは明らかだから ・薬事法上、全く別の製品であるため。(配合量変更や薬効変更のみとは異なる) 延長の対象を「B のみ」に出来ればよりよいと考える ・薬事法等の行政処分が必要な場合は全て、基本的に特許期間の延長対象となるものと考 えます。 6-5.選択肢として物質 A は包含するが物質 B は包含しない化学物質発明に係る特許権 について、物質 A を有効成分として含有する医薬品についての最初の承認を受けた後、物 質 A と物質 B(物質 B は別の医薬品の有効成分として既に承認されたもの)を含有する配合 剤に関する後の承認を受けた場合、当該後の承認に基づいて当該特許権について延長登録 を認めるべきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答え ください。 件数 1 2 3 4 5 無回答 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべきではない 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたのであれば、認めるべきでない 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れており、後の承認に係る配合剤が、当該延長された特許権の効力が 及ぶ範囲に属するのであれば、認めるべきでない 最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべき その他 回答者数 3.2% 3.2% 割合 11 17.5% 10 15.9% 16 25.4% 22 34.9% 2 2 63 3.2% 3.2% 100.0% 17.5% 1 2 34.9% 15.9% 3 4 5 無回答 25.4% - 267 - 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 11 type1 0 10 16 3 22 2 22 6 0 2 3 4 type2 type3 6 4 3 8 1 8 4 10 0 5 無回答 ⑤その他 ・少なくとも、 「後の承認に係る医薬品が最初の承認に基づいて延長された特許権の効力が 及ぶ範囲に属し、かつ後の承認に基づく延長期間が最初の承認に基づく延長期間と同じか それより短くなる場合」を除き、認めるべき(type1) ・新たな疾病によるかどうかによって判断(その他) ・最初の承認に基づいて、同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められていた場合、 最初の承認に基づいて認められた存続期間について、当該後の承認で認められた配合剤中 の有効成分について、延長された特許の効力が及ぶとするべき。(type2) 理由 ①の理由 Type2 ・配合剤 AB の承認によって初めて物質 A にかかる特許権が実施できるようになったわけで はないので、認められるべきでない。 ・A+B は改良発明として別途特許されるべきであり、選択肢として物質 A は包含するが物質 B は包含しない化学物質発明に係る特許権が延長の対象にならないと考えます。 Type3 ・A と B の配合剤として新しい出願を行うべき。 ・最初の承認により、権利行使が可能となっているから。 その他 ・A+B について出願し、別途特許権による保護を図ればよい。その価値がないものについて 延長してまで保護する必要はない ②の理由 Type2 - 268 - 実施できなかって期間を補てんするものであり、B ではすでに A で実施できる状態であった ため実施できなかった期間にあたらない ・物質 A の承認により延長された権利範囲は、物質 A と物質 B の配合剤にも及ぶこととさ れたい。 Type3 ・基本的には欧米と同じく、一特許一延長のみとすべきと考えるから。 ③の理由 Type2 ・最初の承認に基づいて延長された特許権の効力が及ぶのであれば、重ねて延長登録を認 める必要性はないから。 ・延長登録の要件となる処分を受けることが必要であった「特許発明の実施」の範囲と、 延長された場合の特許権の効力の範囲とは、一致していると考えるのが合理的であるので (「特許権の存続期間の延長」の審査基準改訂案に対する御意見の概要及び回答(平成 23 年 12 月 28 日特許庁調整課審査基準室)の No.11) 、最初の承認に基づく延長登録の特許権 の効力範囲に後の一部変更承認変更に係る医薬品が含まれているのであれば、後の一部変 更承認は登録要件を満たさないと考えるべきであるから。また、現行制度と同じであり業 界への影響が無いから。 ・A 単剤で延長登録された後、配合剤についても延長を認めてしまうと、一度延長を認めた 単剤について同一物に重複した延長を認めてしまうため ・患者の利便性を向上させるため 2 つの単剤を単純に組み合わせただけの配合剤(Fixed Dose Combination)であれば新たな延長登録を与えるべきではない。単剤の承認により延 長された特許権の効力の及ぶ範囲とするべき。 ・ただし、2 つの単剤を組み合わせること により新たな用途(効能効果)が付加された配合剤であれば、有効成分の新たな用途(効 能効果)について延長登録されるべき。 ・なお、2 つの薬剤を組み合わせた配合剤を開発 するには一定の臨床試験が必要とされる場合もあり、有用な配合剤開発にインセンティブ を与えるために延長対象とするという考え方もある。 ・但し、最初の承認で延長された特許権の効力は配合剤にも及ぶべきと考えるので本件延 長を認めるべきではなく、結果としては選択肢②と同義と考える。 Type3 ・すでに延長登録の認められた範囲について、再度別の延長登録を認めることになれば、 特許期間が不明確な状況になると考えます。 ・延長の効力が及ぶ範囲とセットで判断されるべきです。 ・二重に延長を認めることになるので。 - 269 - その他 ・但し、延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属するのか否か?分からない場合がありま す。延長された特許権の効力について、明確な判断基準が必要かと思います。 ・既に第三者の実施を制限している範囲(特許権の存続期間が延長された場合の特許権の 効力範囲)に対して、再度、延長を認めることは、過度に特許権者を保護することに繋が るため。 ④の理由 Type1 ・特許発明の実施ができなかった期間がある限り補填されるべき ・延長された特許権は、承認を受けた医薬品に対して効力が及ぶと考えるので、後行医薬 品(物質 A と物質 B の配合剤)の承認のよる特許延長は先行医薬品(物質 A)の承認とは独 立して認められるべきと考えます。 ・配合剤の承認を受けるためには臨床試験が必要であり、特許権の浸食期間を生じるため。 Type2 ・配合剤の形態であっても、企業は一定の試験を経て承認を得ている。B を構成に含む特許 であったか否かは出願戦略等にもよる。少なくとも、A+B については配合剤のための試験、 承認により初めて実施出来るものであるから。A からみて、新たな用途とも位置づけられる から。なお、薬事上も、配合剤については新たな再審査期間が設定される。 ・上記 6-3 の理由に加え、物質 B を有効成分として含む医薬品の後の承認を受けるために は、フルセットの臨床試験を含む長期間の研究開発を要する。先の承認と同一の特許権だ からといって後の承認の延長登録を認めないのは形式的に過ぎ、特許権者の権利保護とい う制度趣旨に明らかに反している。また、分割出願により A と B を別の特許権とすれば両 者の延長登録が認められることからすれば、単なる分割出願の手続きの有無で結果が異な ることになり、不合理である。 ・最初の承認と後の承認では有効成分が異なるため、双方認めるべきである。 ・配合剤について、特許期間の侵食があったので。 その他 ・配合剤にも延長された特許権の効力が及ぶとする解釈も考えられるが、そのような特許 権の効力制限論(特許法 68 条の 2)を混入させて議論する必要のない④が妥当。延長され た存続期間の満了により排他権が消滅する時期も緻密に定められることになる。 ・最初の承認である先行処分と用法・用途等を異にする場合には、先行処分では販売行為 の禁止は解除されていない以上発明行為の実施も解除されていないため。 ・承認を得なければ実施できなかった発明として、別であることは明らかだから - 270 - ・薬事法上全く別の製品であるため。(配合量変更や薬効変更のみとは異なる) ・物質 A と物質 B を含有する配合剤の用途、効果等が物質 A の特許権に係わるものであれ ば、特許期間の延長対象となるものと考えます。 ⑤の理由 Type2 ・追加配合剤に係る承認の都度延長登録を可能とする制度では、仮に延長登録後の効力範 囲もその承認の内容に制限されるとすると、十分な製品保護が図れず、追加配合剤に係る 医薬品開発のインセンティブを失わせる結果につながりかねない。 ・延長の回数は 1 回 に制限されたとしても、先行処分によって得られる効力範囲が広く認められ、後の一部変 更承認や後の承認で認められた配合剤中の有効成分にも延長の効力が及べば、追加配合剤 等に係る医薬品開発のインセンティブが失われることはないと思われる。 配合剤が剤形・製剤に特徴のあるものであれば認めるべき その他 ・追加効果なら認めるべきではない。 6-6.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特許発明の技 術的範囲に含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって「特許発明の実施」が可 能となった範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を許 容するとした場合、後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を認めるか 否かの判断基準として、いずれが望ましいか、下記の選択肢からひとつお選び下さい。ま た、その理由をお答えください。 件数 1 2 3 4 無回答 6-1.の選択肢に挙げたものを含めどのような内容の特許発明の場合 にも一律に、薬事法上の一定の承認事項の点で、先行処分に係る医薬 品と後行処分に係る医薬品との間に違いがあれば、延長登録を認める (すなわち、先行処分によって特許発明の実施が可能となった範囲は、 どのような内容の特許発明の場合にも薬事法上の一定の承認事項に よって画される) 特許発明の内容(発明特定事項)を考慮し、先行処分に係る医薬品の承 認事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項と、後行処分に 係る医薬品の承認事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項 との間に違いがあれば、延長登録を認める(すなわち、先行処分によっ て特許発明の実施が可能となった範囲は、先行処分に係る医薬品の承 認事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項によって画され る) 分からない その他 回答者数 - 271 - 割合 24 38.1% 22 34.9% 7 8 2 63 11.1% 12.7% 3.2% 100.0% 3.2% 12.7% 1 38.1% 11.1% 2 3 4 無回答 34.9% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 24 22 7 8 2 2 type1 6 type2 type3 1 11 1 3 11 6 1 0 1 0 3 4 0 4 1 0 無回答 ④その他 ・延長は 1 回のみ認められるべき(その他) ・発明の内容を考慮すべきと考えるが、発明特定事項に該当する事項によって画されるべ きではないと考える。 (type2) ・延長された特許権の効力の及ぶ範囲を欧米の「物」の観点で規定し、処分の度ごとの延 長登録出願の煩瑣を回避し、客観的にも明確なものとする。(type2) ・一つの承認につき一つの特許が延長されるべき(type3) ・先行医薬品が延長登録出願に係る特許権の特許発明の技術的範囲に属しないときは、延 長登録を認める。(type1) ・効力範囲と一体に考えるべき。(type2) 理由 ①の理由 Type1 ・後行処分を受けるために特許権の浸食期間を生じているため。 ・どのような内容の特許でも治験期間中は実施できないから Type2 ・延長登録出願に関する訴訟リスクをなくすためには、よりシンプルにすべての延長登録 - 272 - を認めるべきである。延長の効果(特許法 68 条の 2)の話は別問題である。 ・処分により実施の禁止が解除された範囲と延長された特許権の効力範囲を原則一致させ るのがもっとも論理的整合性が高い制度設計となるが、特許権者の権利の充分な保護の観 点からは、延長された特許権の効力範囲は、特許発明の技術的範囲に属する限り同一の有 効成分、効能・効果の全域に及ぶとするのが望ましい。 「特許権の存続期間の新たな延長登 録制度」においては、疑義がないよう、これを明文化するのが望ましい。 ・先行処分とは異なるため、後行処分は臨床試験が必要であったのであるから、承認事項 を基に判断するのが合理的である。 ・侵食期問の回復がある以上、承認取得前に禁止されている範囲は延長を認めるべき。 発明の内容を考慮せず、広い権利範囲が延長されることとされたい。 Type3 ・延長判断が比較的容易であると思われるから。 その他 ・延長登録制度の目的に適う ・特許法の解釈上、②のように発明特定事項を考慮することはどこからも導けない。 あくまで承認事由に対して延長は行われるべきである。 ・ 「特許」の期間延長に係る事項であるが、医薬品の承認事項に関係しており医薬品に関す る処分の点から判断する必要があるため。 ・特許権の存続期間の延長制度の趣旨を考慮し、実施が制限されていた範囲については、 延長が認められるべきであり、発明の内容に差異をつける、合理的な理由が見出せないた め。 ・薬事法等の行政処分が必要な場合は全て、基本的に特許期間の延長対象となるものと考 えます。 ②の理由 Type2 ・6-3.の理由にて述べたとおり、延長登録の要件となる処分を受けることが必要であった 「特許発明の実施」の範囲と、延長された場合の特許権の効力の範囲とは、一致している と考えるのが合理的であり、その他の制度は想定しがたい。そうすると、上記①の場合、 先行処分に基づく延長登録による特許権の効力範囲は医薬品医療機器等法の審査事項(成 分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効 性及び安全性)のうちのある一定の事項間で違いがあれば効力が及ばないこととなる。た とえば成分であって有効成分以外の成分(賦形剤など)が異なるものについては先発医薬 品と異なる成分であっても後発医薬品として承認されているという実態があるが、そのよ - 273 - うな後発医薬品に延長された特許権の権利範囲が及ばないこととなり、実質的に特許独占 期間の回復がなされていないことになり、延長制度の趣旨に反するから。また、現行制度 と同じであり業界への影響が無いから。 ・効能追加の際等医薬品の効能の違いによって「実施できなかった」期間は異なるため、 違いを認めるべきである。 ・薬事法上の承認事項により画されるのであれば、データ保護(再審査)のような薬事法 上の保護と何ら変わりがない。特許法による保護としては不十分といわざるを得ない。 ・ 特許法において特許発明として保護するのであれば、発明特定事項に該当する事項によっ て画されるべきである。特許発明を医薬品に初めて適用したことに対するインセンティブ として、一定の技術的範囲を伴って保護を与えるべきと考える。 ・発明特定事項が先行処分に係る医薬品の承認事項と後行処分に係る医薬品の承認事項で 該当内容が異なる事態であれば延長登録を考慮されることで問題ないと考えられるが、む やみに長い延長は回避すべきであると考えます。 ・選択肢②の条件を採用すれば、先行処分に基づいて為された先の延長の効力の範囲が不 当に狭く解釈される必要が無くなると考える為。 ・発明特定事項にない薬事法上の項目までを考慮する必要はない。 Type3 ・先行処分に係る医薬品の承認事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項が特許 発明の実施が可能となった範囲と考えるから。 ・上記後行処分を認めることを前提とした場合は、先行処分と後行処分において特許発明 の発明特定事項に重複があることは、6-3 の理由の通り好ましくないと考えます。 ・均等物となる医薬品の期間延長を防ぐため。 ・後行処分によって延長される発明特定事項は、先行処分と重複しない範囲に限定される べきである。 ③の理由 Type1 ・質問における「特許発明の実施が可能となった範囲」が効力範囲とリンクしているかど うか、またどの程度リンクしているかにより、回答が異なる。少なくとも、先行処分に基 づく延長の効力範囲に入らない部分(期間を含む)がある場合は、認めるのが望ましい。 ④の理由 Type2 ・先方処分と後行処分に違いがあれば、物質、用途特許に限って延長を認めるのが良い ・延長された特許権の効力範囲に関する疑義を廃し、制度のハーモナイゼーションにも資 - 274 - するから。 ・有効成分が先行処分と同一の場合、後の処分に基づく特許権存続期間延長登録出願は不 要とし、後の処分時にその特許権について自動的に効力範囲が拡大される方が望ましい。 仮に、問6-6の①の判断基準とすることとした場合、 「一定の承認事項」がどのような事 項である場合に後行処分に基づく延長登録を認めるべきか、下記の選択肢からひとつお選 びください。 件数 1 2 3 4 5 6 無回答 有効成分及び効能・効果のいずれかに違いがある(有効成分以外の成 分、分量、用法・用量に違いがあっても、後行処分に基づく延長登録は 認められない) 成分(有効成分に限らない)及び効能・効果のいずれかに違いがある(分 量、用法・用量に違いがあっても、後行処分に基づく延長登録は認めら れない) 成分(有効成分に限らない)、分量、効能・効果及び用法・用量のいずれ かに違いがある すべての承認事項のうちのいずれかに違いがある 分からない その他 回答者数 割合 21 33.3% 5 7.9% 11 17.5% 8 6 6 6 63 12.7% 9.5% 9.5% 9.5% 100.0% 9.5% 1 9.5% 33.3% 2 3 9.5% 4 5 12.7% 6 7.9% 無回答 17.5% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 21 5 11 8 6 6 6 2 3 type1 type2 2 0 2 2 8 3 3 7 2 2 2 2 0 3 4 5 6 type3 5 2 ⑥その他 - 275 - 0 1 無回答 ・延長は 1 回のみ認められるべき、との考え(その他) ・基本的に③と同じで、成分については、賦形剤のような、効能・効果が変わらない成分 のみが違う場合は、認めるべきでない。(特許発明の実施形態が実質的に変わらない。) (type2) ・上記理由欄に記載した事項が、ここでも言える(type1) ・③において分量を除いたもの(type1) ・有効成分、分量、効能・効果及び用法・用量のいずれかに違いがある(type2) ・後行処分が先行処分の剤形・効能効果・用法用量に関する一変承認の場合、延長登録を 認めるべきではなく、一方、後行処分が新規な DDS 製剤や配合剤などの新規な医薬品とし ての承認であれば、延長登録を認めるべきと考えます。なお、上記のとおり、承認される 効能効果全部に延長された特許権の効力が及ぶべきと考えるため、用途は考慮しません。 (type1) ・異る疾病(その他) ・先行処分により延長された特許権の効力が及ぶ範囲、後発処分の内容、後発メーカーが 承認を得るために必要な事項を、総合的に考慮し、先発メーカー、後発メーカー、双方の 利益の考慮し、「一定の承認事項」を定めるべき。(その他) 仮に、問6-6の②の判断基準とすることとした場合、延長登録の対象となる特許権に係 る特許発明が発明特定事項として用途に該当する事項を有しない場合(例えば、特許発明 が有効成分に係る物質発明である場合)、「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途に 該当する事項」を考慮すべきか否かについてお答えください。 件数 1 2 3 4 無回答 「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途に該当する事項」を考慮す べき(先行処分に係る医薬品と有効成分が同じであっても効能・効果に 違いがあれば、後行処分に基づいて、物質発明に係る特許権の延長登 録が認められる) 「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途に該当する事項」を考慮す べきでない(先行処分に係る医薬品と有効成分が同じであれば効能・効 果に違いがあっても、後行処分に基づいて、物質発明に係る特許権の延 長登録は認められない) 分からない その他 回答者数 - 276 - 割合 27 42.9% 13 20.6% 6 3 14 63 9.5% 4.8% 22.2% 100.0% 22.2% 1 2 42.9% 4.8% 3 4 9.5% 無回答 20.6% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 27 13 6 3 14 2 type1 4 type2 0 3 13 type3 2 1 8 3 3 0 2 4 1 1 4 4 0 無回答 ④その他 ・上記理由欄に記載した事項が、ここでも言える(その他) ・①に加え、用法用量等も考慮すべき。(Type1) ・①でよいと考えるが②が悪いということではない。(type2) 7.存続期間が延長された特許権の効力について 7-1.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、延長された特許権の効力が及 ぶ範囲については、どのような範囲とすることがふさわしいか、下記の選択肢からひとつ お選びください、また、その理由をお答えください。 件数 1 2 無回答 現行法と同様「処分の対象となった物」及び「用途」により特定される範 囲 その他 回答者数 - 277 - 割合 39 61.9% 23 1 63 36.5% 1.6% 100.0% 1.6% 36.5% 1 2 無回答 61.9% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 39 23 1 type1 7 4 0 type2 17 10 0 1 2 無回答 type3 7 1 0 ②その他 ・延長は 1 回のみ認められるべきとの考え(その他) ・承認事項により特定される範囲及びその均等の範囲。(type2) ・延長された特許権の効力の及ぶ範囲を欧米の「物」の観点で規定し、処分の度ごとの延 長登録出願の煩瑣を回避し、客観的にも明確なものとする。(type2) ・発明特定事項に係わる延長された処分の対象となった範囲(type3) ・特許請求の範囲内で、成分、効能・効果、用法・用量により特定される範囲で、その他 の医薬品(ジェネリック医薬品)の承認を阻止できる範囲(type2) ・処分の対象となった医薬品の有効成分および効能・効果により特定される範囲(type2) ・延長登録の基礎となった処分(承認)に依拠する医薬品(後発医薬品など)(type1) 基本的には現行法と同様であるが、複数の延長登録の「処分の対象となった物」及び「用 途」がいずれも一致する場合には、その複数の延長登録のいずれに基づくかを被疑侵害物 ごとに判断する。(その他) ・他の要素に関連して先行処分と異なる内容の処分を得たもの、例えば「分量」、「構造」 といった要素も含む。(その他) ・先発医薬品の調査・資料に基づいて、承認される医薬品については、少なくとも効力が 及ぶ。(type1) ・①に加え、用法・用量(type2) ・ジェネリックの参入が押さえられる範囲(type2) - 278 - ・権利範囲全て(特許権自体が延長される)(type2) ・物質のみ(その他) 6・-2 のとおり、新規な医薬品として承認を受けた医薬品の延長期間中に承認を受けた全て の剤形・効能効果・用法用量に効力が及ぶべきと考えます。(type1) ・延長登録の対象となる処分、処分に必要な試験、後発メーカーが承認を得るために必要 な事項等を総合して、効力が及ぶ範囲を設定する(その他) ・「有効成分」及び「効能?効果」並びに「(存在すれば)他の発明特定事項」(type2) ・物として「成分」、用途として「効能、効果」及び「用法、用量」(その他) 理由 ①の理由 Type1 ・①の範囲であれば、特許権を実施できなかった範囲をカバーできると考えるため。 Type2 ・仮に、 「用途」にかかわらず「処分の対象となった物」すべてに効力が及ぶ場合を考える と、最初の承認に基づく延長登録後は全ての効能・効果について延長されたことになる。 医薬品の開発では、その困難性から、途中で一部の限られた患者についての効能効果につ いてのみ先に承認を取得し、その後に想定した効能・効果について承認を取得することが ままある。効力を特定する範囲に用途(効能・効果)を加え、最初の承認に基づく延長の 効力範囲を限定しつつ効能・効果の拡大時には延長登録の可能性を残すことで、アンメッ トメディカルニーズに対応した効能・効果の拡大をはかることができる。また、現行制度 と同じであり業界への影響が無いから。 ・ 「処分の対象となった物」及び「用途」によって、範囲がある程度明確に特定されるため。 制度の導入趣旨から「処分の対象となった物」と競合するような特許発明の実施に対して 効力が及ぶよう、 「物」と「用途」については事案の個別事情に基づいて判断していただき たい。 ・当初選択した用途と同様に実施の機会を与えられていると考えるため。 Type3 ・権利範囲が明確に定まっていると好ましい。 ・処分対象の物と用途でよいが、現行法でも、延長後の権利範囲について明確でないケー スが多い。 ・権利範囲が明確。 その他 - 279 - ・現行法と新制度が根本的に変わらないのであれば、現行法と同じシステムしか思いつか ないし、同じで良いと考える。 ・特許法第 67 条第 1 項第 1 号の拒絶理由に関して、薬事法上の実施の禁止解除=承認され た特許権と解する場合には、 「処分の対象となった物」及び「用途」により特定される範囲 とイコールになるため。 ②の理由 Type1 ・6-2 のとおり、現行法では弊害が多いと考えるからです。 Type2 ・物質特許を延長した場合の効力範囲が、医薬品そのものに限定される場合、延長の意味 をなさず、ジェネリックの進出の促進に繋がる。従って、研究開発の投資が回収できず、 知的創造サイクルが上手く回らず、つまり、将来への研究開発に投資できず、産業の発達 の阻害要因となる。 ・新有効成分の初発の承認については、効能、効果で特定される範囲までと考える。 ・有効成分が先行処分と同一の場合、後の処分に基づく特許権存続期間延長登録出願は不 要とし、後の処分時にその特許権について、後の処分に係る用途に関して自動的に効力範 囲が拡大される方が望ましい Type3 ・発明特定事項に係わる延長された処分の対象となった範囲に限定すべきと考える。 その他 ・延長された特許権の効力がどこまでの範囲まで及ぶのか?不明確な場合があります。例 えば、特許請求の範囲には、処分の対象となった物を含むが具体的な有効成分に関する記 載が無い特許の場合、延長された特許権の効力がどこまでの範囲まで及ぶのか?不明確か と思います。 ・特許権者(先発メーカー)および第二者(後発メーカー)の双方の利益を考慮して、延 長された特許権の効力が及ぶ範囲を設定するべきであり、それぞれの利益が考慮する際に は、 「延長された特許権の効力が及ぶ範囲」は単独で議論できるものではなく、上記記載事 項を総合的に考慮すべきである。 ・煩雑にならないように。 ・効力については過度に拡大させる必要はないものと考えます。今回の知財高裁大合議判 決の範囲が妥当なものと考えます。 - 280 - 7-2.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、現行特許法 68 条の 2 と同様「処分の対象となった物」及び「用途」により延長された特許権の効力が及ぶ範囲 を制限することとする制度を採用する場合、延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限す る観点としてはいずれがふさわしいか、下記の選択肢からひとつお選びください、また、 その理由をお答えください。 件数 1 2 3 4 無回答 6-1.の選択肢に挙げたものを含めどのような内容の特許発明の場合 にも一律に、薬事法上の一定の承認事項の観点で、延長された特許権 の効力が及ぶ範囲を制限する 特許発明の内容(発明特定事項)を考慮し、医薬品の承認事項のうち特 許発明の発明特定事項に該当する事項及び用途に該当する事項の観 点で、延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限する 分からない その他 回答者数 割合 16 25.4% 35 55.6% 6 4 2 63 9.5% 6.3% 3.2% 100.0% 6.3% 3.2% 25.4% 9.5% 1 2 3 4 無回答 55.6% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 16 35 6 4 2 2 type1 5 type2 type3 7 1 4 15 1 1 0 3 1 1 7 0 3 4 無回答 ④その他 ・延長の基礎となる承認の内容の少なくとも一部に依存してなされ得る承認かどうかで、 延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限する(type1) ・②但し、考慮する発明特定事項を明確にすべき。(type2) ・一律ではあるが、物は有効成分、用途は効能・効果(適応症)が好ましい。(type2) - 281 - 理由 ①の理由 Type1 ・①の範囲であれば、特許権を実施できなかった範囲をカバーできると考えるため。 Type2 ・現行法における「物」および「用途」の意義が極めて曖昧なため、判決例の欠如とあい まって権利行使の確実性に不透明さが増している。医薬品に関する特許権のみについて延 長された特許権の効力範囲を別途規定することが全ての技術分野に亘る汎用性を旨とする 我が国の特許法の性質と相容れないことは承知しているが、特別法の制定等の立法技術を 駆使して、上述の効力範囲を疑義のないよう形で法制化して頂きたい。 ・侵食された特許期問の回復という制度の趣旨より。 ・発明の内容を考慮せず、広い権利範囲が延長されることとされたい。 Type3 ・処分の対象と効力の範囲はできるだけ一致させるべき。 その他 ・②では承認されていなかった実施態様まで延長された特許権の効力範囲が拡大する恐れ がある。 ・特許法第 68 条の「物」を「有効成分」に、 「用途」を「効能・効果」と置き換えて判断 されている経緯から、薬事法の承認事項の観点で制限される必要があるため。 ②の理由 Type2 ・ 「処分の対象となった物」及び「用途」により延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限 することとする制度を採用するのであれば、その観点では、できるだけ広い効力範囲を認 めるべきと考えるから。 ・DDS 技術や、再生医療技術において、適切な保護をするために必要と考える。 6・-6.の理由で述べたとおり、上記①の場合、先行処分に基づく延長登録による特許権の 効力範囲は医薬品医療機器等法の審査事項(成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、 効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効性及び安全性)のうちのある一定の事項間 で違いがあれば効力が及ばないこととなる。たとえば成分であって有効成分以外の成分(賦 形剤など)が異なるものについては先発医薬品と異なる成分であっても後発医薬品として 承認されているという実態があるが、そのような後発医薬品に延長された特許権の権利範 囲が及ばないこととなり、実質的に特許独占期間の回復がなされていないことになり、延 - 282 - 長制度の趣旨に反する。また、上記②は現行制度と同じであり業界への影響が無いから。 効力が制限される行為について、画一的に処理するとたとえば医薬品の名称について慣用 名等の実質的に同一の範囲にも効力が制限される可能性があるため ・薬事法上の承認事項により画されるのであれば、データ保護(再審査)のような薬事法 上の保護と何ら変わりがない。特許法による保護としては不十分といわざるを得ない。特 許法において特許発明として保護するのであれば、発明特定事項に該当する事項によって 画されるべきである。特許発明を医薬品に初めて適用したことに対するインセンティブと して、一定の技術的範囲を伴って保護を与えるべきと考える。 ・特になし。 Type3 ・制限すべき一番妥当な範囲と考えるから。 ・特にありません。 ・上記の際、なるべく権利範囲を明確にしてほしい。 ・①②どちらでも良いが、明確にすることが最優先すべき事項である。 その他 ・6-1 の③⑤のカテゴリーについては延長は不要 ・権利範囲を定める際には、発明特定事項を考慮すべきであり(延長の有無に拘わらず)、 更に条文の規定により、 「用途」を考慮するべきである。 ・特許期間延長の対象となるものは特許権であり、行政処分を受けた物の技術範囲とは異 なるものと考えます。 ④の理由 Type1 ・後発品や後発品として開発し得る独立した新薬の参入によって、先行品の承認に基づく 延長の意味が薄れる状況(シェアの低下、薬価引下げ幅の拡大を含む)は避けるべき。 Type2 ・延長が認められる特許の数や、同一特許における回数が 1 つに制限されたとしても、効 力範囲として、追加適応症も含むできる限り広い範囲が認められれば、追加適応症の開発 等のインセンティブが失われないと思われるためである。 その他 ・物と用途の二元論にこだわるべきでないと考える。 - 283 - 仮に、問7-2.の①の判断基準とすることとした場合、(1)「処分の対象となった物」 及び(2) 「用途」としてふさわしい承認事項を、下記の選択肢からお選びください。 (1)「処分を受けた物」 件数 1 2 3 4 承認された医薬品の有効成分のみ 承認された医薬品の成分(有効成分に限らない) 承認された医薬品の成分(有効成分に限らない)及びその分量 承認された医薬品の成分(有効成分に限らない)、その分量及び剤型 5 承認された医薬品そのもの 6 分からない 7 その他 無回答 回答者数 12.7% 25 4 3 割合 39.7% 6.3% 4.8% 8 12.7% 5 5 5 8 63 7.9% 7.9% 7.9% 12.7% 100.0% 1 2 7.9% 3 39.7% 4 7.9% 5 7.9% 6 12.7% 0% 20% 7 4.8% 6.3% 40% 60% 無回答 80% 100% 1 全体 25 4 3 8 5 5 5 8 2 3 type1 4 0 1 2 0 1 3 0 4 5 type2 10 2 2 4 3 1 1 4 6 7 type3 3 2 0 2 0 1 0 無回答 ⑦その他 ・有効成分以外の成分が対象となっていない特許の場合は上記①、有効成分以外の成分を 対象とする特許の場合は有効成分と特許対象となっている成分(②)(type1) ・承認された医薬品の成分(有効成分に限らない)及び剤型(type2) ・延長登録の基礎となった処分(承認)に依拠してなされる承認申請(type1) - 284 - ・発明特定事項を考慮する(type3) ・原則、承認された医薬品の有効成分で判断すべきだが、新規な DDS 製剤や配合剤などの 新規な医薬品としての承認された医薬品であれば、医薬品として後行処分の医薬品とは異 なると判断すべきと考えます。(type1) (2)「用途」 件数 1 承認された医薬品の効能・効果 2 承認された医薬品の効能・効果及び用法・用量 3 分からない 4 その他 無回答 回答者数 割合 41.3% 31.7% 6.3% 6.3% 14.3% 100.0% 26 20 4 4 9 63 14.3% 1 6.3% 41.3% 2 6.3% 3 4 無回答 31.7% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 26 20 4 4 9 2 type1 3 type2 4 13 type3 1 9 5 3 0 3 0 5 3 4 0 無回答 ④その他 ・新規用法•用量の場合は②、新規有効成分/新規効能•効果/新規剤形等のその他の場合 は上記①(type1) ・上記(1)の用途(ただし、特定の項目で制限して考えるべきではない)(type1) ・承認される効能効果全部に延長された特許権の効力が及ぶべきと考えるため、用途は考 慮しません。(type1) ・承認された医薬品の効能・効果とすべきであるが、有効成分が先行処分と同一の場合、 後の処分に基づく特許権存続期間延長登録出願は不要とし、後の処分時にその特許権につ - 285 - いて、後の処分に係る用途に関して自動的に効力範囲が拡大される方が望ましい。(type2) 8.特許権の存続期間の延長登録の要件と延長された特許権の効力の関係について 8-1.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特許発明の技 術的範囲に含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって「特許発明の実施」が可 能となった範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を許 容するとした場合、薬事法 第 14 条第 1 項又は第 9 項に基づく承認を受けることによって 禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲と、延長された特許権の効力の及ぶ範囲は、 一致させるべきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答 えください。 件数 1 2 3 4 5 6 7 無回答 一致させるべき 均等論等で効力範囲が多少拡張することはあるとしても、原則として一 致させるべき 一致させるべきでない、一致させる必要はない 一部一致させるべき どちらでもよい 分からない その他 回答者数 4.8% 4.8% 1.6% 0.0% 7.9% 19 割合 30.2% 21 33.3% 11 5 0 3 3 1 63 17.5% 7.9% 0.0% 4.8% 4.8% 1.6% 100.0% 1 2 30.2% 3 4 17.5% 5 6 7 33.3% 0% 全体 20% 19 type1 3 type2 7 type3 40% 60% 21 2 無回答 80% 11 3 10 100% 5 03 3 1 2 6 6 0 1 0 2 0 2 0 2 ④一致 - 286 - 0 1 2 3 4 5 6 7 無回答 ・有効成分と効能・効果(用途)(type1) ・有効成分(物質)(type2) ・承認された医薬品の有効成分(その他) ・承認された医薬品と、当該特許権の発明特定事項の重複する部分。(type1) ・有効成分(type2) ⑦その他 ・延長は 1 回に限り認められるべきとの考え。 (その他) ・⑦ただし、有効成分および効能効果について。(type2) 理由 ①の理由 Type1 ・新たに剤形・効能効果・用法用量に関する一変承認を受けたとき、承認より禁止を解除 された範囲まで、延長された特許権が自動的に拡張されるべきと考えます。 ・制度趣旨から考えて延長された特許権の効力の及ぶ範囲を拡げるべきではないと考える。 Type2 ・6-3.の理由で述べたとおり、延長登録の要件となる処分を受けることが必要であった「特 許発明の実施」の範囲と、延長された場合の特許権の効力の範囲とは、一致していると考 えるのが合理的であるから(「特許権の存続期間の延長」の審査基準改訂案に対する御意見 の概要及び回答(平成 23 年 12 月 28 日特許庁調整課審査基準室)の No.11)。また、現行制 度と同じであり業界への影響が無いから。 ・一致させないと、権利範囲があいまいになる可能性が高いため。 ・開発の投資を回収するため。 Type3 ・禁止が解除された範囲が延長となった特許権の効力の及ぶ範囲と考えるから。 ・禁止が解除される範囲以外の範囲を延長させる理由がないと思われます。 その他 ・特許権存続期間延長制度の趣旨から自然に導かれる結論なので。 ・特許期間が延長したことで延長される特許権は、該当する「特許発明の実施」の範囲と 同一であることが合理的であり、その範囲を超えて延長されることは特許権者が不合理に 利益を得てしまうことになるため。 - 287 - ②の理由 Type2 ・処分により実施の禁止が解除される範囲(「解除範囲」)よりも延長された特許権の効力 の及ぶ範囲(「効力範囲」)が狭いことは、制度趣旨から明らかに不合理である。解除範囲 よりも効力範囲が均等論等による範囲を超えて明らかに広い場合には、同じ効力範囲で複 数回の延長登録が認められるケースが生じ得るが、第三者の権利保護の観点からはこれは 望ましくない。 ・延長の出願の際、将来的に有用となる技術範囲全てを記載することは難しいため。また 特許権の効力でも均等を認めているため、延長でも認めるべきである。 権利として保有されている特許の発明は実施可能であるため、延長する機会を得る対象も 実施範囲に近似しているべきと考えるためです。 ・制度としてはできる限りシンプルなものがよいし、仮に登録範囲と効力範囲が異なる場 合を想定する場合に、合理的な説明を想起できない。 効力の及ぶ範囲の解釈がしやすい。 Type3 ・添加剤の相違のみによって効力範囲が制限されるのは権利者に酷。 その他 ・発明の趣旨より、原則一致させるべきである。但し、完全に一致されることにより、特 許権者の延長の保護の利益が図れない場合には、均等論等により、多少拡張させるべきで ある。なお、均等論といっても、技術的範囲の解釈に使用する均等論とは基準は、異なり、 上記課題(趣旨)を考慮して、基準を決定するべきである。 ③の理由 Type1 ・延長登録の基礎となった処分(承認)に依拠する医薬品に効力が及ばないのであれば、 制度の目的を果たしていない。効力の及ぶ範囲は、その観点を加味するべき。 Type2 ・延長された特許権の効力の及ぶ範囲を広く認め、処分の度ごとに延長登録出願をしなけ ればならないような煩瑣を回避するため。 ・承認を受けることによって禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲は、薬事承認を 受けた医薬品に制限されるべきではない。延長特許の効力の及ぶ範囲を薬事承認の範囲に 制限すると、延長特許の効力の及ぶ範囲が狭くなり容易に迂回できてしまう。制度の導入 趣旨から承認された医薬品と競合するような特許発明の実施に対して効力が及ぶよう、 「特 - 288 - 許発明の実施」については事案の個別事情に基づいて判断していただきたい。 広い権利範囲が延長されることとされたい。 その他 ・特許期間延長の対象となるものは特許権であり、行政処分を受けた物の技術範囲とは異 なるものと考えます。 ④の理由 Type2 ・薬事法上の承認基準が、新規有効成分であるから。 ・但し、将来、韓国の改良新薬のような薬剤が承認されるようになる場合には、延長前の 権利に包含されていることを条件として改良新薬を含む範囲とするべきである。 8-2.問8-1で、番号②を選択された方にお伺いします。上記回答で効力範囲が拡張 する範囲としてどのような範囲が妥当かお答えください(自由記載) 。 ・後発医薬品(ジェネリック)として承認される範囲(=先発医薬品と同等性を示せる範 囲)が考えられる。(Type2) ・侵害性判断と同様(type2) ・均討と判断される範囲(その他) ・ケースバイケースであるが、薬事法上、承認される効能・効果と特許請求の範囲で使わ れる用途クレーム上の文言は、必ずしも一致するものでは無い。(その他) ・均等論の判断基準に従う。(type2) ・有効成分の水和物や、光学異性体については、有効成分の効力範囲に含まれるような効 能がほとんど変わらない場合は、均等を認めるべきである。(type2) ・用法用量が同じ場合の分量違い、用法用量・投与経路が変わらない剤形違い(type2) ・延長された期間についてジェネック医薬品が入らない、すなわちジェネリック医薬品の 「同等性」の範囲までは拡張すべき。(type2) ・新たな技術を含む剤型や用途など、国内で別に特許される技術範囲であれば特に慎重に 考慮すべきと考えます。当初明細書に実施可能なレベルで開示されているのかが問題かと 思います。(type2) ・有効成分の再含量追加、剤型の軽微な変更(錠⇔○○錠、カプセル)(type3) ・添加剤の相違まで(type3) ・物:有効成分の塩が異なる化合物 用途:実質的に同一の効能・効果と考えられるもの (例:軽度のアルツハイマーと重度のアルツハイマー)(type2) ・後発メーカーの承認申請に必要な事項を考慮して、均等の範囲を設定すべきである。(そ - 289 - の他) ・添加剤の有無や相違等の医薬品の効能・効果及び用法・用量に影響のない部分。(type2) 8-3.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、米国のように 、特許権 の延長登録は、有効成分についての最初の承認に基づくものでなければ認めないとした場 合、新たに追加承認された効能・効果にも効力を及ぼすべきか、下記の選択肢からひとつ お選びください、また、その理由をお答えください。 件数 1 追加承認された新たな効能・効果にも効力を及ぼすべき 2 追加承認された新たな効能・効果に効力を及ぼすべきでない 3 どちらでもよい 4 分からない 5 その他 無回答 回答者数 3.2% 1.6% 43 12 1 2 0 5 63 割合 68.3% 19.0% 1.6% 3.2% 0.0% 7.9% 100.0% 0.0% 7.9% 1 2 19.0% 3 4 5 68.3% 0% 20% 40% 60% 80% 無回答 100% 1 全体 43 type1 12 1 20 5 10 2 0 1 0 3 4 type2 type3 20 3 5 5 101 0 5 無回答 ①の理由 Type1 ・そうでないと、例えば虫食いでの後発品参入が可能となり、最初の承認対象の効能・効 果についての延長の意味が薄れることにもなる。 ・第 2 医薬特許が十分に保護されないことになって、特許権者に不利益となるため。 ・追加された効能についても、承認されるまでは特許を実施できないから、何らかの形で - 290 - 特許が延長されるべきと考える Type3 ・特許権者の新規効能・効果承認取得の意欲をそがないようにすべき。 ・追加承認された新たな効能・効果に効力が及ばないとすると、前記承認を得ることで実 質的に医薬品の保護期間が短縮される可能性があります。新薬メーカーがそうした研究開 発を行わなくなることが予想され、これは産業の発達を阻害するものと思われます。 その他 ・ 「有効成分についての最初の承認に基づくものでなければ認めない」との制限を設けるの であれば、その代償が必要。 ・新たに追加承認された効能・効果にも延長の効力が及ばない場合には、その部分につい て特許権の延長が認められず、第三者に自由に利用されることになり不合理であるため。 効能追加のためには、試験が必要であり、当該期間に関しても、特許権者(先発メーカー) を保護することが、制度趣旨から、適切であると考えるため。 ・行政処分を受ける手続きを行なった以上、少なくともその技術内容についての特許権は 確保しておきたいため。 ②の理由 Type2 ・最初の承認しか認められないのであれば、追加承認された効能・効果にも効力を及ぼす べきと考えるが、延長される期間が、最初の承認のものによって決まってしまうので、別々 に延長期間が決められるべきと思う。 ・この場合には、延長された特許権の効力の及ぶ範囲を「物」の観点で規定し、追加承認 された新たな効能・効果にも先の延長された特許権の効力が及ぶと解するのが妥当である から。 ・新規有効成分についての承認が、承認に必要な試験として最も費用と期間がかかるので、 この投資を回収すべく、医薬用途すべてに効力が及ぶことが必要と考える。 ・延長登録できない権利範囲内の効能・効果に延長の効力が及ばなければ、その効能・効 果を適切に保護できなくなる。 ・範囲の把握が容易になるため ・初回承認の場合と同様、新たな効能・効果の追加承認のための試験にも多大な費用と時 間を要することからすれば、制度趣旨からしても新たに追加承認された効能・効果にも当 然に効力が及ぶべきである。 ・効能追加に対するインセンティブ確保のため。 適応拡大の場合、延長ができないため - 291 - ・追加承認により一部効能申請が可能となると、「侵食された特許期間の回復]という制度 の趣旨が損なわれる。 ・追加された効能効果に延長特許の効力が及ばないと、虫食い申請により後発品の早期参 入を許容することになる。後発品の参入により市場を失うだけでなく先発品の薬価まで引 き下げられることになる。効能効果の追加のための研究開発にインセンティブを与えるた め、追加承認された効能効果にも保護を与えるべきである。 ・この制度が採用された場 合でも、現行制度で運用されているように効能ごとに延長期間を設定することが望ましい。 延長の対象となる承認を制限するのであれば、広い権利範囲が延長されることとされたい。 同一特許における回数が 1 つに制限されたとしても、効力範囲としては、できる限り広い 範囲が認められれば、追加適応症の開発等のインセンティブが失われないと思われるため である。 ・制度の主旨に基づき整合性を考えれば当然と考える。 ・追加承認も保護されるべき。 その他 ・虫喰い申請は調査・申請ともに煩雑である。菌種などで延長があった場合、医療現場で は菌種を特定した医薬品の提供はできないため、虫喰い申請は認められず、実質後付けの 延長となる。 Type3 ・延長の効力範囲は、有効成分についての最初の承認の効能・効果に限定すべきと考える から。 ・効能・効果について新しく出願するべき。 ・権利者の意図的な製品延命戦略を誘発するだけである。 ③の理由 Type2 ・新たな技術を含む剤型や用途など、国内で別に特許される技術範囲であれば特に慎重に 考慮すべきと考えます。当初明細書に実施可能なレベルで開示されているのかが問題かと 思います。新たな技術を含む剤型や用途など、国内で別に特許される技術範囲であれば特 に慎重に考慮すべきと考えます。当初明細書に実施可能なレベルで開示されているのか が・問題かと思います。 B-3 現行の特許権の存続期間の延長登録制度に対するユーザーの評価 9.我が国と海外の特許権の存続期間の延長登録制度との比較について 9-1.我が国の特許権の延長登録制度と海外の特許権の延長登録制度(審査遅延に関す - 292 - る延長登録制度を除く)とを比較した場合の、我が国の制度のメリット・デメリットをお 答えください。 (観点の例:期間・回数、延長期間の算定方法、延長の効果(権利行使)、延長対象、承認 との関係、延長手続等について。海外の延長登録制度を利用していない場合は我が国制度 を利用する上でメリット及びデメリットと思うことを記載してください。) 我が国制度のメリット(自由記載) Type1 算定方法が妥当 •複数特許が対象となっている点 る点 •新有効成分に関する承認以外の承認も対象となってい •補填されるべき特許発明の実施ができなかった期間が一番補填され得る点 ・延長期間が比較的長い ・延長登録の機会が多い(複数特許、複数回) ・複数件、複数回の延長が可能 ・延長期間に足切りや、上市時期に紐づいた上限などが ない 延長登録を受ける回数・対象が多岐にわたるためイノベーションの促進が期待できる。 ・延長登録の対象となる処分や、延長登録が認められる回数について、自由度が高く、新 薬創出や、様々な適応拡大等のインセンティブとなっている。 ・1つの医薬品につき複数の延長登録ができ、多面的な保護ができる点。 ・承認日から14 年以内等の制限がなく、物質特許より出願時期が遅い製剤特許などの周辺特許であっても、 十分に製品を保護できる点。 ・我が国では、剤型変更承認でも存続期間延長登録手続が取れる。 ・医薬品に関連するすべての特許が延長されること ・最初の承認だけでなく、承認対象 すべてが延長されること Type2 ・複数の特許が延長できる。 ・承認ごとに期間も、複数特許に対しても認められるという点でよいと思う。実施が禁止 されていた期間が解除されたことによって、その分の延長が認められるのがよいと思う。 一つの特許で複数回延長出来ること ・複数の特許について延長登録出願出来る。 ・同一の処分に基づいて複数の特許を延長できる。複数の異なる処分で同一の特許を複数 回延長できる。承認されてから14年ないし15年といった、延長された後の特許期間につい ての別個の制限が無い。 ・延長の機会が多い(対象となる特許も対象となる承認も複数可) 。 ・複数の特許が対象となるため、広い範囲での保護が可能となる - 293 - ・期間・回数、延長期間の算定方法、延長対象、承認との関係、延長手続等については欧 米の制度と同等か、より優れていると考える。 ・追加効能の際にも、その追加された効能について延長が認められるため。独占権が十分 であるから。 ・一つの承認に対して、複数の特許の延長登録出願することが可能であり、また、承認ご とに延長登録出願を行うことができるため、先発企業のインセンティブが確保しやすい。 延長の対象特許が多く、特許の質等により、LCMを図れる可能性がある。 ・複数回の延長なので、開発費用の回収の面で有利であること。 ・複数の特許を延長できる。 ・複数特許の延長。 ・承認を受けた医薬品ごとに対象となる複数の特許権を延長登録することができる。 一つの特許権について承認内容に応じて複数回の延長登録をすることができる。 ・ ・試験 期間及び審査期間がそのまま延長期間に算入される。米国では試験期間の1/2が延長期間に 算入される。韓国では海外で実施した試験の期間および審査期間のうち申請者の自責期間 は延長期間に算入できない。 ・欧米のように承認日から延長された期間を含めて最長14 年ないし15年という制限がない。 1承認に対し複数特許が延長される点。 ・複数の特許が延長され得る。 ・臨床試験の期間がそのまま延長期間となり得る。 ・1つの承認に基づいて、複数特許を延長できる。 ・1承認で複数の関連特許を延長できること ・複数の特許による広範な保護が可能。 Type3 ・新薬メーカーにとっては有利な制度 ・新薬メーカーにとっては、複数の特許に対し、効能・効果が追加される毎(最近では用 法・用量が変更される場合も)に特許期間の延長を受けることができ、強い権利保護が達 成されると考えられます。しかし、ジェネリック医薬品メーカーからすれば、上記特許の 特許期間の管理等が極めて煩雑になります。総じて、新薬メーカー側に有利な制度となっ ていると考えます。 ・改良発明が促進される可能性がある。 ・過剰なインセンティブ制度がないため一部の後発品メーカーに市場を独占されるリスク が低い。 ・複数回延長できる。権利者の権利を優遇している ・ジェネリック医薬品メーカーにとっては一切なし ・延長が複数回認められるから、先発メーカー(権利者)にとって保護が手厚い。一方後 発メーカー(第三者)においては、調査範囲の増加、基本特許の実質的延長にもつながり - 294 - かねず、後発品上市の妨げになる可能性が大。 その他 ・延長制度を利用したことがないので、メリット、デメリットとも不明。但し、欧州の場 合は、特定の特許権については延長が1回限り認められ、承認事項にかかわらず、その特許 権の全ての権利(全フーレム)が保護される制度であり、権利者にとって、後発メーカー にとっても分かり良い制度ではないか。 ・認められれば、一律なので、わかりやすい。 ・同じ医薬品に対して、延長申請が、複数回申請できる。 ・同一承認で延長できる特許の数に制限がないこと、同一特許について延長できる回数に 制限がない、臨床試験の期間も全部計算に入れられるなど、蚕食された特許権の存続期間 を回復する、という趣旨に比較的忠実であり、新薬創出の意欲増進に役立っている ・海外のように延長機関について承認から14年又は15年という制限がないため、20年間に 加えた5年間の特許期間を保証されること。 ・分かりません。 ・一つの承認について複数の特許の期間延長が可能。 一つの特許について複数の承認に 基づく期間延長が可能。 ・ (海外の延長登録制度を利用していないので我が国制度を利用する上で)延長手続きの対 象として、再生医療等製品が加わったこと。 ・実施が制限される範囲に適した延長登録制度となっており、趣旨に準じた制度となって いる。 ・1つの特許権に複数の処分があるとき、延長登録が処分ごとに認められていること ・1 つの処分に複数の特許権があるとき、各特許権に延長が認められていること 我が国制度のデメリット(自由記載) Type1 ・効果が小さい(範囲、対象など) ・効力の範囲がより不明確な点 ・制度自体が複雑で難解 ・効力が予見できない(リスクあり) ・特許権者等の責によらない事由(庁の審査遅延 など)であっても、設定登録が遅れた場合には延長期間が浸食されるおそれがある。 ・ 複数件、複数回の延長が可能であるがゆえに、手続き・コスト・管理上の負担が大きい。 延長手続きが煩雑 欧州に比較すると、申請期間が短い ・効力範囲について、示した裁判例が未だ無いこと。 ・延長登録出願に係る閲覧等に対する、 営業秘密保護が不十分である。 ・制度がわかりにくい点。 ・延長された特許権の効力が及ぶ範囲が狭く解釈される恐れ - 295 - があり、剤形・用量毎に非常に多くの延長登録を行わなければならない点。 6-2で記載し たとおり、現状の制度では、医療の発展のために新たな効能について承認を取得したにも かかわらず、本来の特許期間満了後であったために特許延長が認められず、逆に当該新た な効能についていわゆる虫食い承認によりジェネリック医薬品を促すになってしまい、特 許延長制度が新たな承認取得のモチベーションを低下させることがある点。 ・承認を受けるごとに存続期間延長登録出願が必要であり、出願毎に出願費用がかか る。 ・EC (医薬品発明の補完保護制度SPC)の場合には、対象特特許が係属中であればよ く、登録されていない特許出願でも保護されるが、我が国では、対象特許が登録となって いる必要がある。 ・承認により保護期間が異なること Type2 ・効果範囲が狭い。 ・制度が複雑である。先発優位な制度である。 ・効力範囲が不明なため、製品(規格)ごとに延長登録出願せざるを得ない ・延長の対象とされている特許が不明確。処分の都度、延長登録出願の可否を検討せざる を得ず煩雑。延長された特許権の効力範囲が不明確。 ・延長登録要件は条文規定が曖昧であることから、解釈に幅を生じて訴訟が起きている。 効力範囲についても、条文規定が曖昧で、不明確な状況が続いている。効力範囲について、 仮に、承認毎に、特許発明が実施でなかった部分(製品に係る解除された効力範囲)に及 ばなかったとすると、特に「用途」について用法・用量を考慮することになると、権利範 囲が小間切れとなり、GEの虫食い許可を許す可能性があり、使い難い制度、あるいは、制 度に欠陥がある、と言わざるをえない。 ・不明確な運用により訴訟が後を絶たない。 ・対象特許の監視が大変である。 ・現行法、特に68条の2の文言が曖昧なため、権利行使に大きな不確実性を生じさせている。 ・存続期間満了後にも延長登録出願できるようにしてほしい。 ・米国では小児適用に対する6か月の延長制度があるが、日本ではそのような小児適用に対 する延長制度が存在せず、小児適用を申請する企業側へのメリットがない ・適応拡大の場合、適応拡大に基づく延長期間が付与されるため、最初の承認の延長期間 より短くなる可能性がある。従って、物質特許の延長に関しては、適応拡大の用途の場合、 欧米の制度と比較すると、物質特許の延長期間が短くなる可能性がある。 ・延長した範囲が不明確であること。 ・延長の効果(権利範囲)が不明確、延長制度が定まっておらず予測性が低くなっている (審査基準で運用を変更するので、安定性が低い)。 ・ジェネリックの侵害に対し、権利行使の範囲が不明確になる。複数延長可能なためジェ - 296 - ネリック参入時期が分かりにくい。 ・延長された特許権の効力の及ぶ範囲が不明確である。 ・延長期間の算出方法が複雑で ある。欧州のように特許出願の時点を延長期間の始期とすることが望ましい。これにより 審査の簡素化と権利の安定化が期待される。 ・承認ごとに対象特許について延長登録出 願を行わなければならず手続きも煩雑である。 ・延長後の効力が及ぶ範囲が不明確。 ・特許権の効力の範囲が、明確ではない現状 ・延長後の効力範囲に関する規定(特68条の2)が曖昧で不明確である(特に、延長登録範 囲との関係において) 。 ・効力の範囲の予見性が乏しい状況に陥っていること 複数の特許により広範に保護されているため、GE/バイオシミラーの開発が困難。 未だ、権利解釈、延長の可否が判決によって確立されていない点。 Type3 ・後発メーカーにとって不利な制度。 ・メリットの項で述べたように、複数の特許に効能・効果等が異なるごとに特許期間の延 長が付与されることから、これらの特許の特許期間が定まらず、無用な特許係争を誘発す るおそれがあります。欧米に比べて、どのような種類の特許に延長が認められるかの基準 が不明確である点も我が国制度のデメリットと考えます。 ・複雑で分りずらい。 ・欧米に比べて延長登録対象の特許の保護が厚いと感じられる。 延長後の権利範囲が分かりにくく、不必要な係争を招いている。 細切れの延長登録が認められているため、効力の及ぶ範囲や期間が不明瞭であり、第三者 に不測の不利益を与えることがある。 ・権利範囲があいまいになる可能性がある。配合剤と単剤の関係など その他 ・延長制度を利用したことがないので、メリット、デメリットとも不明。但し、欧州の場 合は、特定の特許権については延長が1回限り認められ、承認事項にかかわらず、その特許 権の全ての権利(全フーレム)が保護される制度であり、権利者にとって、後発メーカー にとっても分かり良い制度ではないか。 ・諸々の状況の考慮や、微妙な判断をつけにくいのではないかと思う。 ・2011年の改正後、どの特許が延長可能なのかわかり難くなってしまった。 ・特許権の存続期間の延長登録出願が認められるかどうか、および延長された特許権の効 力範囲について不明確な部分があり、新薬メーカー、ジェネリックメーカーとも、確信を もって事業判断ができない問題がある。 - 297 - ・第三者から営業秘密に関する開示の申出が行われることがあり、場合によってはデータ の開示を行わなければならなくなるリスクがあること。 ・分かりません。 ・延長された期間における効力の範囲があいまい。特許庁の対応が判例について行ってい ない。 ・複数の特許の延長、薬効追加毎の延長など、調査が煩雑になる。菌種などの追加延長は 虫喰い申請はできないため、後付けで何度でも延長できる問題が起こりうる。 ・分らない。 ・ (海外の延長登録制度を利用していないので我が国制度を利用する上で)延長手続きの期 限(三月以内)が短いのでもう少し長くしてもよいのではないか。 ・特に想定されない。 ・対象製品の範囲が狭いこと(医薬品、農薬に限定されている。) ・効果範囲が狭い。 ・延長制度を利用したことがないので、メリット、デメリットとも不明。但し、欧州の場 合複数の特許により広範に保護されているため、GE/バイオシミラーの開発が困難。 10.特許権の存続期間の延長登録制度に関する判決や審査基準改訂に伴う影響について 10-1.平成 21 年 5 月 29 日知財高裁判決、それに続く平成 23 年 4 月 28 日最高裁判決、 平成 23 年 12 月 28 日の改訂審査基準の施行、あるいは平成 26 年 5 月 30 日知財高裁大合議 判決の前後において、特許権の存続期間の延長登録出願の出願戦略について変化があった かどうかについて下記の選択肢からお選びください(複数回答可。また、平成 26 年 5 月 30 日知財高裁大合議判決については出願戦略の変更について検討したことがあれば変化があ ったとしてください)。また、変化があった場合はどのような変化があったか(わかる範囲 で理由と共に)その概要をお答えください。 件数 1 平成21年5月29日知財高裁判決の前後で変化があった 2 平成23年4月28日最高裁判決の前後で変化があった 3 平成23年12月28日の改訂審査基準の施行の前後で変化があった 4 平成26年5月30日知財高裁大合議判決の前後で変化があった 5 変化がなかった 無回答 回答者数 - 298 - 12 4 11 10 32 9 63 割合 19.0% 6.3% 17.5% 15.9% 50.8% 14.3% 100.0% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 19.0% 1 2 3 4 5 無回答 6.3% 17.5% 15.9% 50.8% 14.3% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 1 2 全体 type1 3 type2 4 type3 5 無回答 ①平成 21 年 5 月 29 日知財高裁判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) Type1 ・"変化の概要:剤形変更に基づく出願を行うようになった。 理由:延長が認められる可 能性が出てきたから。" ・分量や用法用量等のみが異なる承認であっても全て延長出願することとした。 ・なし ・DDS 製剤等について製剤特許の延長を検討するようになった。 Type2 ・従前は延長登録の対象と考えられていなかった新剤形医薬品承認について、延長登録の 対象となる可能性が生じたので、延長登録出願を行った。 ・先行処分と有効成分および効能・効果が同一の後行処分について、延長登録出願をおこ なうようになった。 ・製剤特許についても延長が認められる可能性が出てきたため、従来は不可だと考えられ ていた製剤特許も延長出願を行うこととなった。 ・効能・効果が同一かつ同じ有効成分であっても出願する。 - 299 - ・有効成分の用量を追加した承認で延長登録出願を実施した。 ・有効成分及び効能効果 により延長登録の要件が判断されてきた運用が否定されたため。 ・剤型追加承認(効能・効果の追加なし)に基づいて、該当する製剤特許の延長登録出願 を行うこととした。 Type3 ・出願戦略への変化ではありませんが、これまで延長登録が認められ得なかった剤形変更 された製剤についても延長登録の可能性が生じ、それに係る先発医薬品メーカーからの延 長登録出願が相次いだため、後発医薬品開発時期の広範な見直しが必要となりました。 ・含量、剤型ごとの小まめな延長出願が増加した。 その他 ・事業会社に対し、より積極的に延長登録出願を勧めるようになった。 ☐②平成23年4月28日最高裁判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) Type2 ・剤形のみが異なる製剤にも延長登録が認められるようになり、先発医薬品メーカーの保 護が厚くなり、特許戦略の幅が広くなったため ・製剤特許についても延長が認められる可能性が出てきたため、従来は不可だと考えられ ていた製剤特許も延長出願を行うこととなった。 ・効能・効果が同一かつ同じ有効成分であっても出願する。 ・有効成分及び効能効果が先行医薬品と同じであっても製剤変更のような一部変更承認を 受けたときに延長登録出願を行うことにした。 その他 ・製剤特許についても延長対象になり得ると理解して、実施法をカバーする様に、しっか りと出願して権利化する様になった。(重み付けが変わった) ・①と同様であるが、予想されたものでインパクトは少ない。 ☐③平成23年12月28日の改訂審査基準の施行の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) Type1 ・剤型変更による追加承認で延長登録を受けられるための戦略を検討した。 ・これまでは、各種剤型を従属クレームに含んだ製剤特許を1件で維持しておけば良かった が、将来の剤型変更承認に備えて、各剤型ごとに分割出願しておく必要が生じている。 - 300 - ・製剤変更等を積極的に考えるようになった Type2 ・1つの特許出願の中の下位概念(従属クレーム)について将来的に延長登録出願の可能性 があれば、面倒でも別途分割出願を行う必要性が生じた。 ・改訂審査基準の施行で延長登録出願の対象となるものが変更になったので、それに従っ て延長登録出願の対象を変更した。 ・有効成分と効能効果が同様であっても、例えば剤形追加等の承認に基づいても延長登録 出願を積極的に行う方針とした。また、延長された特許権の効力が、すべての容量に対し て及ぶか不明であるため、全容量に対して延長登録出願を確実に行うこととした ・審査基準を基に延長の可能性があるものは全て出願を行うこととなった。 ・クレームの記載内容。分割出願の考慮。それによって延長の可否が影響されるから。 特許請求の範囲と先行処分、後行処分を対比し、出願要否を検討する。 ・発明特定事項(最上位)により登録要件が判断されるため、将来の一部変更承認におけ る延長機会を確保する目的で分割出願の必要性を検討することとした。 ・製剤特許の延長、剤形変更に伴う延長登録出願を検討 ・延長登録出願の機会を設ける ためにクレームの内容、分割出願要否を検討。 ・先の処分が包含されない発明特定事項を有する特許を、当該発明特定事項に基づいた治 験にて延長することを考えるようになった。 その他 ・①②の判断より後退した内容であり、延長登録出願については否定的な方向に作用する が、そもそもこの改訂審査基準は違法と考えていたため、審決取消訴訟の必要はあるもの の、さほど重視しなかった。 ・ 「有効成分」と「効能・効果」が過去の承認と同一であっても、新たな製剤について別の 承認が得られれば、当該承認に基づく製剤特許の延長登録が認められたため。 ☐④平成26年5月30日知財高裁大合議判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) Type1 ・変化の概要:剤形変更に基づく出願を行うようになった。 理由:延長が認められる可 能性が出てきたから。 ・用法用量等のみの一変承認についても延長登録を検討するようになった。 ・どのような承認においても実施できなかった期間がある特許について延長出願を考える ようになった Type2 - 301 - ・薬事法に基づく処分によって特許に侵害された期間があると考えれば、先の処分によっ て実施が可能となっていたかどうかに拘らず延長登録出願を行う必要性が生じた。 ・従前は延長登録の対象と考えられていなかった新用法医薬品等の承認について、延長登 録の対象となる可能性が生じたので、延長登録出願を行うこととした。 ・③に加え、用法・用量が異なる場合、塩等が異なる場合についても延長の可能性があれ ば、延長出願を行う。 ・用法用量にかかる一部変更承認について延長登録出願の必要性を検討することとした。 用法・用量のみが異なる後行処分にて、先の処分によって延長済である特許延長を考える ようになった。 Type3 ・用量の追加等、少しでも異なる点があり、その点を権利範囲とする特許権の期間がすべ からく延長されるとなれば、これまで以上に多数の延長出願がされることが予想され、そ れら情報の管理により多くの時間をかける必要が生じると思われます。 その他 ・概ね妥当な判決であり、法改正がなければ今後はこの解釈となると予想され、延長登録 可能性の不確実性は減少した。また、効力に関する傍論も頼もしい内容です。 ・延長の対象や、延長された特許権の効力が及ぶ範囲に、不明な部分があるため、可能性 がある範囲は、幅広く、延長登録出願を行う方針となった。 11.ジェネリック医薬品の承認申請に関して 11-1.ジェネリック医薬品の製造販売の承認を申請するに当たって、延長された特許権 の効力の及ぶ範囲に該当製品が含まれるか否かの判断で迷うことがあるか、下記の選択肢 からひとつお選びください。 件数 1 迷うことが多い 2 迷うことがある 3 あまり迷うことはない 4 迷うことはない 5 ジェネリック医薬品の承認申請をしていない 6 どちらでもない 7 その他 無回答 回答者数 - 302 - 8 19 4 1 18 5 5 3 63 割合 12.7% 30.2% 6.3% 1.6% 28.6% 7.9% 7.9% 4.8% 100.0% 7.9% 4.8% 1 12.7% 2 7.9% 3 4 30.2% 5 6 28.6% 7 1.6% 6.3% 0% 20% 40% 60% 無回答 80% 100% 1 全体 8 19 4 1 18 5 5 2 3 3 type1 0 11 0 4 5 type2 4 13 4 10 3 2 0 6 7 type3 2 6 0 無回答 ⑦その他 ・大合議判決まではあまり迷わなかったが判決後迷うことになった(type2) 11-2.問11-1で番号①または②を選択した方にお伺いします。判断で迷う原因と し て 考 え ら れ る も の に つ い て 、 下 記 の 選 択 肢 か ら お 選 び く だ さ い ( 複 数 回 答 可 )。 件数 1 特許発明自体が不明確 2 延長された特許権の効力の及ぶ範囲が不明確 3 その他 無回答 回答者数 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 6 22 2 0 27 50.0% 70.0% 80.0% 90.0% 22.2% 1 81.5% 2 7.4% 3 無回答 60.0% 割合 22.2% 81.5% 7.4% 0.0% 100.0% 0.0% - 303 - 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 6 22 20 2 type1 0 type2 type3 3 16 2 10 8 0 3 無回答 ③その他 ・特許権の有効性に疑義がある。(その他) ・IPDL 上の特許情報上では記載されておらず、延長情報にのみあること(type2) 12.試験データ保護と特許権の存続期間の延長登録について 12-1.新規有効成分を含む医薬品の製造者は、薬事法第14条の4の再審査期間(試験デ ータの保護)によって保護されていますが、それに加えて特許権の存続期間の延長による 保護を受けることが有効である場合とその理由をお答えください。 有効である場合及び理由(自由記載) Type1 ・新薬開発のモチベーション増加 ・臨床の規模等にもよるが、再審査期間だけでは投資を回収できないケースがあり得る。 また、適応拡大や新投与経路などの場合には、再審査期間が短い。 ・独占期間が長くなる場合がある ・研究開発努力によってその期間が短縮され、特許出願から医薬品承認までの期間が短か った場合:研究開発努力に対する適切なインセンティブとしてデータ保護と延長期間がほ ぼ同時に終わるとしても、データ保護では、後発医薬品の承認申請のための行為を超えた もの、例えば(期間満了後の)販売のための大量備蓄・製造などの行為について排除でき ないため ・存続期間の延長による保護は新薬メーカーにとっては必須である。研究開発型製薬企業 では、特許出願から18年間は累積的なキャッシュフローが損益分岐点に到達しないと言わ れているため。 ・保護対象が異なり、一般的に延長期間を含む、特許権の存続期間が再審査期間より長い ため、多様な保護が図れる。 ・再審査期間より特許権の延長された存続期間が長いケースがあり、再審査期間だけで十 分ではないと考えます。 ・特許権の方が保護期間が長い場合 治験に時間や費用がかかった場合、再審査期間では 投資回収ができないことがあり、新薬の開発を断念する場合がある - 304 - Type2 ・データ保護期間が終了後でも後発品の参入をおさえられる ・特許満了のほうが長くなる場合 ・医薬品の開発には多大な費用と労力を要することから、再審査期間によっては十分な開 発投資の回収が図れない場合に、再審査期間経過後の後発品の参入障壁として特許が有効 に機能するために存続期間の延長による保護が必要であるから。 ・再審査期間にまで、影響する特許延長なら、仕方ないが、そうでなければ、すべきでは ない。 ・再審査期間よりも特許による延長期間が長い場合。例えば、用途等については長い再審 査期間を得られないため、特許期間延長により、より多くの期間を確保できれば新薬メー カーは利益回収が出来るため適用追加等を積極的に行うことが出来る。その結果、患者は 新たな適用により治療が受けられるメリットもある。 ・再審査期間による保護は新有効成分については承認後8年であり、特許による保護の方が 通例は長期にわたる。 ・再審査期間終了日よりも特許権の存続期間満了日が後になる場合や、再審査がない場合 は、製品を保護できるのは特許権のみとなる期間が生じる為。 ・再審査期間と比較して、特許延長による保護が長い場合にのみ、有効である。同じ期間 であれば、特に有効な面はないと思われる ・再審査期間よりも延長された特許期間のほうが長い場合が多くあり、特許期間の延長制 度は極めて有効に機能している。 ・先発医薬品メーカーの保護を二重に行えるため ・再審査期間は新薬で8年であるため、それ以上の独占権の確保のためには特許権が有効で ある。また、効能追加や剤形追加を行っても再審査期間は新たに与えられない可能性があ るが、特許では、効能追加による一部変更承認後に延長登録出願を行うことや、剤形追加 による一部変更承認後に新剤形に係る特許があれば当該特許の延長登録出願を行うことが 可能であるため、再審査期間よりも長期に亘り独占権を確保できる可能性があるため。 ・薬事保護より、延長期間の方が長い場合、延長制度は非常に有効である。 データ保護期間を超えて、保護を受けることが必要となるケースがあるため ・一般に、再審査期間より特許延長による保護期間のほうが長い場合が多い ・新薬開発 に時間がかかり有効成分特許の残り期間が短くなった場合、延長制度による追加保護が有 効となる。 め ・再審査期間のみでは新薬の研究開発費用を回収することが困難であるた ・新規有効成分医薬品及び新規効能効果の研究開発のインセンティブとして特許期間 の延長が必要である ・再審査期間よりも特許権による保護期間が長い場合、独占期間が延長されることとなり 有効である。 - 305 - ・開発期間が非常に長くかかった場合に再審査期間により保護されることは、特許延長申 請不可能な場合に有効かと思います。 ・競合他社が同じ有効成分、同じ効能で開発する可能性がある場合。 ・長期の臨床試験が必要であった場合 (理由) :再審査期間を超える特許期間が得られれ ば、特許権者は適切に開発に要した費用を回収する機会を得ることができるので、新薬開 発のインセンティブが働くため。 ・特許権の存続期間を延長することによって、その満了日が再審査期間満了日より約1.5年 以上遅くなる場合。特に、新薬創出加算が消失することによる薬価改定を免れる場合。 再審査期間が5年より短い又は特許の存続期間内で終了する場合、延長期間の方が長いこと がある。 Type3 ・有効である。後発品の参入阻止となるから。 ・延長された特許権の存続期間が長い場合がある ・新規有効成分を含む医薬品をA社が開発し販売した場合、後発メーカーは再審査期間中そ の医薬品を販売出来ない。一方、独自でその医薬品を開発したB社がいた場合、B社は再審 査期間中に関係なくその医薬品を販売可能である。しかし、特許権が存在した場合、後発 メーカーはもちろん独自開発を行ってきたB社もその医薬品を販売出来ない。 ・有効である場合は少なく、新規有効成分医薬品の製品寿命の延命戦略にしか利用されて いない。 ・再審査満了でも基本特許が存在すれば後発品の承認を取得することができない。 その他 ・再審査期間による保護は、特許権の本来の満了期間がまだ相当残存して承認を得られた 場合には、それだけでは不足することになる。例えば再審査期間の終了日が本来の満了日 の前である場合等 ・新規有効成分を含む医薬品の承認には、実験結果の蓄積が必要であり、時間がかかるた めかと考える。 ・特許出願の時期と承認の時期を、上手にコントロールすれば再審査期間に加えて、特許 延長による保護期間の延長が期待できる。 ・出願人の責によらず登録が遅くなることはあり得る。特許登録が遅れた場合は、特許延 長と再審査の期間は重ならなくなる。 ・双方の保護が重なった期間については、有効で ある理由は思いつかない。 ・延長された特許権の存続期間の終期の方が再審査期間の終期より遅いことは十分に考え られ、有効である。 ・再審査期間による保護と、特許権の存続期間は独立したものであり、特許による保護の - 306 - ほうが長い場合には、特許の保護が有効である。 ・再審査期間による保護期間よりも、特許権の存続期間の延長による保護期間の方が長い 場合には、特許権の存続期間の延長による保護を受けることが有効かと思います。 有効。特許発明の保護は必要である。 ・再審査期間による保護より、特許権の存続期間の延長による保護期間が長い場合には、 独占期間が長く、有効である。 ・「試験データの保護」の対象は医薬品そのものであり、「特許権の存続期間の延長」の対 象は、それよりも広い。巨額を投資して開発された新薬(技術)は十分に保護されるべき ものと考えます。 13.医薬品の販売承認における特許情報の参照について 13-1.2009 年 6 月 5 日付けの厚生労働省医薬食品局審査管理課と医政局経済課課長連 名通知 において、 (1)先発医薬品の有効成分に特許が存在することによって、当該有効成分の製造そのも のができない場合には、後発医薬品を承認しない (2)先発医薬品の一部の効能・効果、用法・用量(以下、 「効能・効果等」という。) に 特許が存在し、その他の効能・効果等を標ぼうする医薬品の製造が可能である場合につい ては、後発医薬品を承認できることとなりましたが、先行医薬品の特許が存在することを、 確認することができるか、下記の選択肢からひとつお選びください(①を選択した場合は、 その確認手段についても、お答えください。 ) 件数 1 確認できる 2 一部は確認できるが完全には確認できない 3 確認できない 4 その他 無回答 回答者数 7.9% 3.2% 22 31 2 5 3 63 割合 34.9% 49.2% 3.2% 7.9% 4.8% 100.0% 4.8% 34.9% 1 2 3 4 無回答 49.2% - 307 - 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 type1 22 2 2 5 7 type2 type3 31 0 1 12 3 3 1 15 4 ①確認手段 Type1 ・IPDL、各種有料 DB ・いくつから特許 DB を調査すれば確認は容易 Type2 ・特許調査 ・商用データベース ・IPDL ・データベース(商用を含む)及び添付文書 ・特許調査 ・商業データベースなど ・サイエンスレポート等 ・網羅的な特許調査を行う。 ・特許調査の実施、特許資料の購入 ・特許 DB(IPDL、商用 DB)、登録原簿等 ・特許データベース Type3 ・IPDL、STN ・商用データベースを用いた調査、延長情報など ・有料データベースの活用 その他 ・IPDL ・従来通り特許調査すれば出来るはず ・化学構造検索による。 - 308 - 2 1 3 0 4 0 無回答 IPDL など ・調査の関連会社、外部の調査会社、書籍を活用し、確認することができる ②確認手段 Type1 ・添付文書 ・特許 DB 検索 ・各種特許データベース、医薬品開発情報、米国 Orange Book の情報等 ・有効成分非限定の製剤特許など、調査に限界がある場合がある。 ・特許文献のデータベースによる検索 ・商用データベース、サンエイレポート Type2 ・複数のデータベースで確認できるが、他にはないということの確信を得るのはなかなか 難しいかもしれない。 ・特許調査や参考として米国のオレンジブックの利用、ブランド会社の「謹告」GE 社に対 する特許権の注意喚起の企業広告 ・IPDL 開示情報 ・市販データベース ・特許データベースによる特許調査。公報発行前は確認できない。 ・FFDA のオレンジブック、HEALTH CANADA で支技特許を調査する。 ・IPDL 他、商用データベース ・特許調査で、公開前のものは確認できない。 ・IPDL 等の調査ツール(公開分のみ)、企業 IR 情報等。 ・株式会社サンエイファーム本や、データベースによる検索。 ・先行技術調査 Type3 ・STN、IPDL、WIPO での検索調査 ・IPDL 等無料の特許検索サービスの利用、その他有料検索サービスの利用により確認可能。 ただし、完全に確認できたかどうかの確証は得られない。 ・IPDL 等の特許データベースでの特許調査 ・データベースでの検索 その他 ・IPDL 等も含めた特許データベース検索を使用することで、かなりの部分を確認できる。 - 309 - ・弁理士等の専門家に調査を依頼する。 ・特許調査および先行医薬品の分析 ・米国オレンジブック記載の特許のファミリーサーチ ④その他 Type1 ・先行医薬品が記載されていると思われる特許に当たって特定する。 その他 ・言葉で書くと明確に見えるが、なかなか確認できないグレーな場合もあると思われる。 ・一般的には特許調査を行うことにより他社特許を調べることができるが、本事例の経験 はない ・そのような状況になったことがない。 13-2.我が国においても、米国のオレンジブックや韓国のグリーンリストのように、 医薬品とその医薬品に関連した特許権のリストを設け、第三者が容易にそのリストを閲覧 できる制度を設けるべきか、下記の選択肢からひとつお選びください。 件数 1 設けるべき 2 設けなくてよい 3 どちらでもよい 4 その他 無回答 38 9 7 7 2 63 回答者数 11.1% 割合 60.3% 14.3% 11.1% 11.1% 3.2% 100.0% 3.2% 1 11.1% 2 3 60.3% 14.3% 4 無回答 - 310 - 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 38 9 7 7 2 2 type1 5 type2 0 2 3 17 type3 6 8 1 3 3 10 0 4 無回答 ④その他 Type1 ・その他の状況による ・制度を設けて新薬と後発のバランスを考慮した制度を検討するべき ・当社では、特許情報は社外秘のため、情報を掲載されるのには問題がある。 Type2 ・対象特許が明確になるメリットもあるが、米国の ANDA 訴訟のような訴訟が増えるデメリ ットもある。 その他 ・米国の制度の様にオレンジブックに挙げた特許でないと侵害訴訟に利用できない等の強 制力のあるルールにしないと、その閲覧制度を作ってもあまり意味が無いと思う。 (本当に そこまでできますか?)⇒関連法規がいくつかあるので大変かと思料します。 14.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度についてその他のご意見があれば、自由 にお答えください(自由記載) Type1 ・米国(韓国)と比較すると、日本の先発品会社は戦える手段が少ないのではないか(後 発品促進の国策は仕方ないとしても)。 ・登録要件、効力範囲ともに、実務のうえでできるだけ判断し易くあるべき。 ・抜本的な見直しの時期に来ていると思う ・最近の最高裁や大合議判決を見ると、延長された特許権の効力が及ぶ範囲が剤形・効能 効果・用法用量ごとに非常に細切れになることを懸念しています。現状では、延長された 特許権における権利範囲が不明確であり、例えば、先発メーカーがカプセル剤で承認を取 得して有効成分の物質特許の延長登録をおこなった場合では、ジェネリックメーカーが生 物学同等性を有する範囲で錠剤等に剤形を変更することにより、特許権の権利範囲を不当 - 311 - に回避できてしまう恐れがあります。もっと制度設計をシンプルにしていただきたいと考 えています。 ・改訂審査基準の発表によって、将来の剤型変更承認に備えて、各剤型ごとに分割出願し ておく必要が生じているが、分割出願をしなくてもその剤型が従属クレームとして規定さ れているのであれば、存続期間の延長登録を認めてほしい。 ・特許庁のIPDLにおいて、 特許権の存続期間の延長登録出願を調べられるようにしてほしい。 Type2 ・延長登録の対象となる処分、延長された特許権の効力等不明確な点が多くなり、予見可 能性等にも支障を生じている。この際、先発医薬品メーカー、後発医薬品メーカー双方の 意見を聴取し、延長制度の根幹に立ち返って抜本的な法改正に取り組む時期にあるのでは ないか。 ・延長された特許権の効力範囲は現在も不明確と考える。判例の蓄積も期待できないため、 司法や行政が積極的にガイドライン等を設けることを期待する。 ・特許庁の現行審査基準は、最高裁の判示に反しない範囲でとりうる一つの考え方であり、 法のユーザーである特許庁と出願人企業などステークホルダーの議論を経て作られたもの である。企業として妥当と考える。 ・訴訟リスクのない、わかり易いルールを要望する。 ・延長された効力の範囲を明確にすることが必要と思われる。 ・現行の審査基準は、平成23年4月28日最高裁判決の判示事項の曲解に基づくものであり、 すでに平成26年5月30日知財高裁大合議判決によっても指摘されているように間違ったプ ラクティスとなっている。一方、平成21年5月29日知財高裁判決およびそこに示された登録 要件の判断基準を追認した平成26年5月30日知財高裁大合議判決自身も、傍論として示され た延長された特許権の効力範囲が今後の権利行使に大きな不確実性を投げかけるものであ り、特許権者の権利保護に悪影響を及ぼしている。早急に法改正を行い、平成21年5月29日 知財高裁判決以前のプラクティスと同様、登録要件については有効成分と効能・効果で一 律判断することとし(ただし、平成23年4月28日最高裁判決で問題とされたようなケースに ついては、判示事項そのままに、先行処分の対象が特許発明の技術的範囲に含まれない場 合においては後行処分による延長登録を認めればよい)、延長された特許権の効力範囲につ いても、同一の有効成分と効能・効果の全てに及ぶことを明文化することが望ましい。 現状、延長後の効力範囲が不明確なので、ガイドライン等により予測性を高めて欲しい。 延長登録制度に関する現行特許法の条文の規定は不明確な点が多いため、審査基準等の改 訂による条文解釈の変更等のみでは安定した延長登録制度の運営が困難である。そのため、 延長登録可能性及び延長された特許の効力範囲について予見性の高い制度となるよう特許 法を改正すべきである。 ・医薬品の特許には、選択発明が多くあります。もともと選択発明を認める以上、重複し - 312 - た権利が存在することは想定済です。日本の延長制度では、複数特許の延長、複数回の延 長を認めているため、選択発明に当たる特許が、後行処分によって初めて禁止権が解除さ れるケースも多いと思います。延長制度でも、この「選択発明」を考慮する必要があるの ではないでしょうか。つまり、広いクレームの特許権が、先行処分で延長され、用法用量 や特殊な剤形に係る選択発明の特許権が、後行処分によって延長された場合、延長部分の 効力は、重複して認められるというものです。新たな延長を認めたからといって、先の延 長された特許の権利範囲を狭める必要がない、という制度であっても、問題ないのではな いかと思います。 ・新薬の研究開発に対するインセンティブとして導入された制度であることを十分に考慮 して、延長登録の要件及び延長された特許権の効力の及ぶ範囲が設定されるべきです。先 発企業は新規有効成分含有医薬品の保護を重要視しています。処分を受けた「医薬品」の みが保護されるのでは新規有効成分の保護として不十分であり、新規有効成分の研究開発 のインセンティブを欠く制度になってしまいます。特に、新規有効成分医薬品の初回承認 により延長された物質特許について、効力の及ぶ範囲が用法用量で制限されることは望ま しくありません。新規有効成分を医薬品として開発したことに対するインセンティブとし て、従来どおり、効能効果の範囲で効力が及ぶ制度を希望します。 新規有効成分に新規 な効能効果を見出し、品質、有効性および安全性が確保された医薬品として世の中に送り 出すことに対して、延長制度は強力なインセンティブを与えるべきと考えます。新規有効 成分含有医薬品については、延長制度の導入当初より運用されている通り、有効成分と効 能効果により延長された特許権の効力の及ぶ範囲を設定する運用は継続されるべきと考え ます。 製剤特許については、医薬品に採用された製剤成分をピンポイントで保護するの では不十分であり、医薬品に採用された特許発明(製剤技術)を技術思想として保護する のが好ましいと考えます。承認を受けた製剤成分をピンポイントで保護するだけでは簡単 に迂回されてしまいます。明細書には同等の性能を有する代替製剤成分が発明として記載 されているのですから、一定の範囲で保護されないと延長制度の価値は失われます。この 点、特許発明を技術思想として捉え、発明特定事項の単位(一定の幅を持つ単位)で特許 発明の実施を解釈している改訂審査基準は妥当と考えます。 延長特許の効力を決定する 「用途」を効能効果と共に用量用法で特定するべきかについては十分に議論されるべきで す。効能効果について初回処分か、2回目以降の追加処分であるかにより切り分けるべきと 考えます。今回の事案のように効能効果が同じで新規な用法用量を追加する処分であれば、 2回目の処分に基づく延長効力が用法用量で特定されることも考えられます。しかし、効能 効果の初回処分に基づく延長効力についてまで用法用量の特定を加えるのは、先発企業に とって新薬の研究開発のインセンティブを欠くものと考えます。 製剤成分や用法用量の 追加による特許延長について判例が先行しています。これらの処分に延長機会を与えるこ とは差し支えありませんが、延長機会が細分化することにより延長特許の効力まで細分化 されてしまうとしたら大問題です。特に新規有効成分の初回処分による特許延長はこれら - 313 - と同列に扱われるべきではありません。新規有効成分医薬品の研究開発のインセンティブ を確保するためには、新規有効成分の初回処分に基づく延長効力は欧米の延長制度と同じ レベルに維持しなければならないと考えます。仮に、製剤成分や用法用量の追加処分と新 規有効成分医薬品の処分に対して与えられる延長効力が同列だというのであれば、大合議 判決が示した延長機会が得られたとしても何の価値もありません。新規有効成分および新 規効能効果を確実に保護することが、先発企業にとって医薬品開発のインセンティブとな り得るのであって、そもそも、延長制度が導入された趣旨であります。薬事法第1条の法目 的に「医薬品の研究開発の促進」という文言がありますが、特許法の延長制度は薬事法の 法目的にも合致するものとして導入された経緯を思い出していただきたく思います。 登 録要件のみを見た場合、大合議判決の示した基準は概ね妥当と考えることもできますが、 効力の及ぶ範囲を登録要件と一致させること、すなわち、延長された特許権の効力の及ぶ 範囲が延長対象となった医薬品の承認事項に制限されるということになると、登録要件と して許容することはできません。登録要件を発明特定事項で判断する(発明特定事項を一 定の範囲を持った技術思想として捉える)特許庁の現行審査基準のほうが妥当と思われま す。 裁判所は「その均等物や実質的に同一と評価される物」の範囲まで効力が及ぶとし ていますが不十分です。延長された特許発明を利用した範囲にまで効力を及ぼすことが必 要と考えます。 改良製剤や改良新薬(異なる塩やエステル)のように先行処分の新規有 効成分をそのまま利用した医薬品(改良新薬)を研究開発することは奨励されるべきであ り、それらに新たな特許権を設定して保護することは妥当と考えます。しかし、先行処分 の新規有効成分に延長された特許が存在する場合、改良新薬はその利用発明として延長さ れた特許権の効力の及ぶ範囲に入るべきと考えます。延長された特許権の効力が後発品に 及ぶのに対して、同じ有効成分を有する改良新薬に及ばないのはバランスを欠きます。改 良新薬は先行処分の医薬品と競合するものであり、先行処分の特許権者の同意を得て、ま たは研究開発の効率を考慮して特許権者と共同して研究開発するのが現在の一般的な事業 形態です。このような事業形態の基礎を覆すような延長制度であってはならないと考えま す。 先発企業は、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献するために新薬開発を行って います。その結果として、また、そのインセンティブとして特許期間延長が認められるも のと認識しています。追加承認の取得に対して延長機会が与えられることは好ましいこと であり、薬事承認の取得戦略に影響することもあります。しかし、追加承認により特許が 延長されることが、新規有効成分医薬品の初回承認により延長された特許の効力に影響す るのであるなら、先発企業にとって大きなディスインセンティブであるといわざるを得ま せん。中国や韓国のように先発企業の医薬品を模倣し後発医薬品や改良医薬品を創製する ことを産業政策として奨励するというのであれば、今回の判決(特に効力の考え方)を全 ての期間延長登録に適用することは妥当と思われます。先発企業の権利を制限し、改良医 薬品企業の保護育成につながる判決だからです。既に先発企業が育成されたわが国の製薬 産業には、そのような産業政策は不要であり、新規有効成分医薬品の開発を奨励する制度 - 314 - 運用でなければならないと考えています。先発企業による新規有効成分医薬品の研究開発 が停滞すれば、改良医薬品企業や後発医薬品企業のビジネス参入機会が減少し、製薬産業 全体の衰退に繋がることは自明です。わが国の製薬産業の更なる発展に貢献するよう延長 制度の在り方を検討して頂くことを希望します。 ・延長後の効力が及ぶ範囲が明確となる延長登録制度の構築を望む。 ・特になし。 ・既に延長登録されている特許権が不安定にならないようにして頂きたい。 ・大合議判決の、延長登録要件及び延長された特許の効力範囲の解釈には、反対です。大 合議判決の考え方は、制度導入時に想定された、本来あるべき姿からかけ離れていると思 われます。審査基準については、現行審査基準を維持するとの主張を行うべきであり、大 合議判決に沿った審査基準に変更することを求めるべきではないと考えます。細切れの延 長登録が認められる制度は、おのずと、延長された特許の効力範囲も狭く解釈されると考 えられます。一方、現行法では、本来期待される延長の効力範囲を期待することが難しく なってきているため、法改正への活動を行う必要があると考えます。法改正を行う場合、 現在のような複数特許、複数承認での延長は難しくなると考えます。しかし、仮に、1回、 1特許の延長であっても、欧州のように、ベーシックパテントを選択し延長出願を行い、後 に得られた追加適応症の承認等にも全て延長の効力が及び、5年の延長期間が得られやすい 制度が望ましいと考えます。ベーシックパテントの延長の効力が細切れになり、製剤特許 や用法用量に特徴がある特許などが複数延長できるよりも、ベーシックパテントの延長の 効力範囲を本来認められるべき広い範囲で得られる方が、望ましいと考えます。また、1回、 1特許の延長制度であれば、ジェネリック団体も受け入れることが期待できます。 延長後の効力の範囲が不明瞭な状況が長引くのは回避すべきである。 Type3 ・欧米と同様、一特許一回のみの延長登録制度にすべきと考える。 ・特許権の実施できない期間を補填する必要性については理解できますが、一方で、欧米 と比較して我が国の延長登録制度は広範に特許権者の権利を保護する傾向にあり、その結 果複数の延長登録出願が存在し、それを管理しなくてはならない後発医薬品メーカーにと っては多大な負担となっております。そのような煩雑さは無用な特許係争を誘発すること は言うまでもなく、これは先発医薬品メーカー、後発医薬品メーカー双方にとって好まし いことではないと思慮いたします。希望を述べるならば、米国のオレンジブックのように、 各品目に係る特許権の存在と延長期間を含む満了日を明確にし、延長登録の認められる場 合に一定の制限(例えば欧米のように1回のみとする、等)を設ける等により、複数の延長 登録出願が存在する状況を解消することで、各品目に対する特許権の存在をより安定的な 状況とすることができると考えます。 ・日本の特許延長登録制度における特許延長可能回数は欧米と比較して多いが医薬品のい - 315 - わゆる「虫食い申請」が認められているため、現行の制度により先発メーカー・後発メー カーのどちらかが一方的に不利益を被るわけではない。しかし、グローバル化の流れに乗 るためには国際的な考え方とのハーモナイゼーションは必須であると考えられるため、中 長期的な視点から現在の特許延長可能回数について再検討してはどうかと思う。 ・延長出願の登録要件については特許法上はもちろん、判例なども存在しますが、延長登 録の効力が及ぶ範囲について確認する手段が特許法上整備されていません。特に物質特許 および用途特許の延長登録の場合、厚労省の審査対象となるため延長期間中は承認取得が 困難であり、これゆえ、民事訴訟で争うことも不可能です。特許法上で何らかの手当てが なされるべきではないでしょうか。 ・1医薬品1回延長が理解容易で予見性が高くてよいと思う。 その他 ・後発品、後続品の利用促進の観点からして、過度な特許権による発明の保護は適切では ない。又、発明の保護により、技術革新が阻害される側面もある。延長が認められ出願か ら25年経過するまで特許が存在することで、発明の利用が制限される。 ・現在、色々な判例が出てきて、どの特許が延長できるのか、外部専門家(弁理士等)で も、明解な回答ができなくなって来ました。これなら、欧米の様に延長申請できる特許は1 件だけにした方が、シンプルで良い様に思う時があります。 ・現行法では登録要件、効果とも不明確な部分があり、これを裁判例で補うのは限界があ るので、立法的解決が望まれる。 ・制度趣旨にのっとった運用が強く望まれる。 ・新規医薬品は国民に利益をもたらす一 方、医薬品開発には以前より長い期間、多くの投資が必要となっている業界の現状を鑑み、 医薬品の特許保護を強化すべきと考える。 ・延長制度は必要であるが、複数の特許の延長、薬効追加毎の延長など、煩雑な延長制度 は不要。 ・製法などに関する発明の延長登録出願について、製造販売承認申請書で第三者に開示し ない部分(黒塗り部分)についても延長が認められるような救済手段があってもよいので はないか。 ・前問でも回答したことですが、延長登録制度の・対象製品を広げるべき(例えば医療機 器)であり、 ・延長期間を、5年より長くしていただきたく希望します。 - 316 - C.農薬 C-1.特許権の存続期間の延長登録制度の利用状況 15.特許権の存続期間の延長登録制度の利用状況について 15-1.国内における特許権の存続期間の延長登録出願の有無について、下記の選択肢 からひとつお選びください。 件数 1 延長登録出願をしたことがある 2 延長登録出願をしたことがない 無回答 回答者数 13 8 1 22 割合 59.1% 36.4% 4.5% 100.0% 4.5% 1 36.4% 2 59.1% 0% 全体 20% 40% 80% 100% 1 13 type4 type5 60% 無回答 8 7 6 1 2 5 0 0 2 無回答 15-2.問15-1で番号②と答えた方はその理由を下記の選択肢からひとつお選びく ださい。 - 317 - 件数 1 2 3 4 無回答 割合 薬効、薬害、毒性、残留性に関する試験成績が15年間保護される ので 延長登録出願の必要がない 延長登録出願の要件を満たす案件がない 延長登録出願のやり方が分からない その他 回答者数 12.5% 0 0.0% 5 0 2 1 8 62.5% 0.0% 25.0% 12.5% 100.0% 0.0% 1 2 25.0% 3 4 62.5% 無回答 0.0% ④その他 ・ジェネリックの参入はないと考えていたから(type4) ・原体メーカーでない。(type5) 16.海外における特許権の存続期間の延長登録制度の利用 16-1.海外で農薬の製造・輸入のための登録を受けたことがあるかどうか、ある場合 にはその国・地域を、下記の選択肢からお選びください(複数回答可)。 件数 1 ある(米国) 2 ある(欧州) 3 ある(韓国) 4 ある 5 ない 無回答 12 11 10 7 7 3 22 回答者数 0.0% 1 2 3 4 5 無回答 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 割合 54.5% 50.0% 45.5% 31.8% 31.8% 13.6% 100.0% 60.0% 54.5% 50.0% 45.5% 31.8% 31.8% 13.6% - 318 - ④ ・AR,TW,PCT 加盟国 ・中国 東南アジア アフリカ各国 ・多数の国 ・中東、南米 ・各国 16-2.海外で農薬についての特許権の存続期間の延長登録出願をしたことがあるかど うか、ある場合にはその国・地域を、下記の選択肢からお選びください(複数回答可)*。 件数 1 ある(米国) 2 ある(欧州) 3 ある(韓国) 4 ある 5 ない 無回答 2 5 5 1 12 3 22 回答者数 0.0% 1 2 3 4 5 無回答 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 割合 9.1% 22.7% 22.7% 4.5% 54.5% 13.6% 100.0% 60.0% 9.1% 22.7% 22.7% 4.5% 54.5% 13.6% ④ ・ウクライナ 台湾 ・当社は、特許の管理をすべて英国本社で行っているため、世界の様々な国で行っている *米国については農薬についての特許権の存続期間の延長登録出願制度がないので農薬以 外の品目で延長登録出願を行ったことがある場合に選択してください(その場合、その品 目について該当するものにチェックしてください)。 件数 1 医薬 2 医療機器 3 食品添加物 4 着色料 無回答 2 0 0 0 0 2 回答者数 - 319 - 割合 100.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0% 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 120.0% 100.0% 1 2 0.0% 3 0.0% 4 0.0% 無回答 0.0% C-2.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度の在り方 現行特許法の延長登録に関する規定の特許庁の解釈(平成 23 年 12 月 28 日施行 特許庁 審査基準による運用)を否定する大合議判決が、平成 26 年 5 月 30 日に言い渡され、現在、 特許庁が最高裁判所に上告受理申立てを行っております。C-2(以下の17.~20.)の 質問は、将来、我が国の延長登録出願制度に関する規定・運用を改正すると仮定した場合、 どのような制度にユーザーのニーズがあるかを調査するものですので、その前提で回答を お願いします。 17.特許権の存続期間の延長の期間について 17-1.特許権の存続期間の延長の期間を見直すとしたらどうすべきか、下記の選択肢 からひとつお選びください。また、その理由をお答えください。 件数 1 現行と同様、5年とすべき 2 現行の5年より長くすべき 3 現行の5年より短くすべき 無回答 9 11 1 1 22 回答者数 割合 40.9% 50.0% 4.5% 4.5% 100.0% 4.5% 4.5% 40.9% 1 2 3 無回答 50.0% - 320 - 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 9 11 1 1 2 type4 3 type5 6 5 5 0 1 0 3 無回答 理由 ①の理由 ・現状で特に問題はない(type5) ・農薬登録制度に基づく保護との兼ね合いで考えるべき事項であり、一概に決められない が、特許権の存続期間の延長という形での権利保護が 5 年を超える期間を設けられるべき ではない。(type5) ・具体的な理由は挙げられませんが、法令改正を実施すると混乱を招く恐れがあると思わ れます。(type5) ②の理由 ・開発に某大な費用がかかり、実施までの時間もかかるので、20~25 年では短すぎる。 (type4) ・農薬登録の取得には 5 年以上かかる場合があるから。(type5) ・登録認可までの期間が長くかかる場合もある。(type4) ・新薬の開発コストを確実に回収するため(type4) ・公的な許諾が得られる迄に必要とする開発期間が反映されるべきと考えるから。(type5) ・登録に時間が掛るため。(type5) ・特許発明を実施できない浸食された期間を延長すべき。現状、5 年では足りず、農薬登録 の審査期間のみでも相当かかる場合がある。(type5) ・開発には 5 年以上要する場合が多く、延長制度の主旨である権利を使用することができ なかった期間をカバーしきれていない(type4) ③の理由 ・ジェネリックの有効利用を図るべき(type5) 17-2.欧米のように承認日から延長された期間を含めて最長 14 年ないし 15 年という - 321 - 制限を導入することが必要か否か、下記の選択肢からひとつお選びください。またその理 由をお答えください。 件数 1 必要 2 不要 3 その他 無回答 6 11 4 1 22 回答者数 割合 27.3% 50.0% 18.2% 4.5% 100.0% 4.5% 18.2% 27.3% 1 2 3 無回答 50.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 6 11 4 1 2 type4 type5 2 5 4 2 5 2 0 0 3 無回答 ③その他 ・現状を分析してきめる(type4) ・どちらでもよい。(type5) 理由 ①の理由 ・延長期間が、特許庁の審査スピードに左右されないため(type4) ・農薬の開発・登録に時間及び費用が掛るため。(type5) ・但し、最長 14 年ないし 15 年は、長すぎると思う。意図的に浸食期間を延ばす申請者が 現れることになり兼ねない。法目的の産業の発達を阻害しては本末転倒になります。具体 的には、特許法では最長 10 年が妥当と考え、さらに保護が必要であれば、農薬取締法上で - 322 - 制度設計することが望ましい。(type5) ・開発には 5 年以上要する場合が多く、延長制度の主旨である権利を使用することができ なかった期間をカバーしきれていない(type4) ②の理由 ・期間設計はシンプルな方が良い(type2) ・承認前から特許料の納付が必要となり、コスト面で困る。(type5) ・ジェネリックの有効利用を図るべき(type4) ③の理由 ・現在の日本の農薬登録制度の下においては、 「承認日から~最長 14 年ないし 15 年」は特 段必要とは考えないが、今後欧米のようなデータプロテクト期間の制度へ変更されるとし た場合には必要と考える。(type5) 17-3.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度による延長期間の算定方法を見直す べきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください。またその理由をお答えください。 件数 1 2 3 無回答 現行の算定方法(登録を受けるのに必要な試験を開始した日、又は特許 権の設定登録日のいずれか遅い方の日から登録が申請者に到達した日 の前日までの期間)を見直す必要はない 現行の算定方法を見直すべき 分からない 回答者数 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 割合 12 54.5% 4 5 1 22 18.2% 27.3% 4.5% 100.0% 60.0% 54.5% 1 18.2% 2 27.3% 3 4.5% 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 type4 type5 12 4 4 5 2 7 1 3 2 理由 ①の理由 - 323 - 2 2 0 3 0 無回答 ・特に重要視していないため改正に興味がない(type4) ・見直すべき算定方法が想定できない。また、算定方法の見直しは複雑化を招くので、審 査の遅延に繋がるため、望ましくない。(type5) ・最大 5 年の制限以外は現在の内容で良いと考える。(type5) ・実際、本試験を行う前に予備試験等を実施するが、予備試験期間は考慮しなくとも最長 5 年の浸食期間は、容易に算定できる。但し、延長期間が最長 10 年となった場合、算定方法 を見直すべきと考えます。(type5) ・算定の考え方自体は特に問題は感じない(type4) ・具体的な理由は挙げられませんが、法令改正を実施すると混乱を招く恐れがあると思わ れます。(type5) ②の理由 ・実施してから時間がたっており現状を分析する必要有(type4) ・欧州の制度のようにすべき(type4) 18.特許権の存続期間の延長登録が認められる要件について 18-1.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において対象となる特許発明の種類と して望ましいものを下記の選択肢からお選びください(複数回答可) 、また、その理由もお 答えください。 件数 1 2 3 4 5 6 無回答 有効成分となる化学物質等の発明 特定の病害虫や雑草に適用するもの等、用途に特徴のある剤、組成 物、使用方法の発明 剤形・製剤に特徴のある発明 合剤・併用剤の発明 化学物質や製剤等の製法の発明 その他 回答者数 0.0% 1 2 3 4 5 6 無回答 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 19 割合 86.4% 14 63.6% 8 5 7 1 1 22 36.4% 22.7% 31.8% 4.5% 4.5% 100.0% 90.0% 100.0% 86.4% 63.6% 36.4% 22.7% 31.8% 4.5% 4.5% - 324 - 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 2 全体 3 type4 4 type5 5 6 無回答 理由 ・応用も対象とした場合、権利のグレーゾーンが大きくなるため、シンプルにすべき。 (type4) ・ノウハウになる分野、発明と考えられるため。(type5) ・物資と用途が登録されるから(type4) ・単純で明確な制度にすべき(type4) ・対象となる農薬登録に基づいて禁止が解除された実施行為が、特許発明の技術的範囲に 属すると解されるのであれば、特許発明の種類によって区別されるべきではない。(type5) 許認可の為に実施不可であった期間を補う為には全ての登録について延長が認められるべ きであるが、そうすると細切れ的に権利も不明瞭なものとなる。そういう面からは現在の 運用の判断で良いと考える。(type5) ・発明から登録には時間が掛るため。(type5) ・承認を得るためには、いずれも特許発明の実施期間が浸食されるため。(type5) ・現在の日本の農薬登録制度では活性物質の用途、製剤、合剤等のそれぞれに関して登録 取得が必要で、そのための試験データ取得に必要な期間は特許権の権利活用ができない状 況は同様であり、何れのカテゴリーの発明であっても、権利活用ができなかった期間を回 復させる、という意味で、同様に延長が認められるべきと考える(type4) ・有効成分の開発には多額の費用と時間を費やすので、権利存続期間として相当な年数が ある方が良いと思います。(type5) 18-2.新規有効成分を含有する農薬についての最初の登録に基づいて、延長可能とな る対象特許はどうあるべきか、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由 をお答えください。 - 325 - 件数 1 関連する1つの特許に限るべき 2 関連する全ての特許とするべき 3 その他 無回答 回答者数 8 12 1 1 22 割合 36.4% 54.5% 4.5% 4.5% 100.0% 4.5% 4.5% 36.4% 1 2 3 無回答 54.5% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 8 12 1 1 2 type4 type5 3 5 4 1 0 7 0 3 無回答 理由 ①の理由 ・応用も対象とした場合、権利のグレーゾーンが大きくなるため、シンプルにすべき。 (Type4) 単純で明確な制度にすべき(type4) ・多くの付随又は関連特許を保護延長してしまうと、有効な防除技術の普及を阻害してし まうこともあると思います。(type5) ②の理由 ・関連する 1 つの特許に限る場合には、その基準作りが必要になるものの、画一的な基準 を設定することは困難と考える。(type5) ・内容に特許性があるから別特許になっているのであり、延長される対象とすべきと考え る(type5) - 326 - ・登録農薬の保護には全ての特許の延長が必要な場合がある。(type5) ・特許発明の実施に浸食期間が発生すれば、考慮すべきと考えます。(type5) ・実施できなかった特許は全て対象にすべき。(type4) ・どのような権利であれ、権利活用ができなかった事実は同じであり、それぞれ独立に延 長が認められるべき(type4) 18-3.新規有効成分を含有する農薬についての最初の登録を受けた後、農薬取締法第 6 条の 2 第 1 項に規定する農薬の変更の登録に基づいて特許権の存続期間の延長登録を認め るべきか、下記の選択肢からひとつお選びください(ただし、最初の登録に係る農薬も変 更の登録に係る農薬も、延長登録出願の対象特許権の特許発明の技術的範囲に属するもの とする)、また、その理由をお答えください。 件数 1 2 3 4 5 無回答 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべきではない 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたのであれば、認めるべきでない 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れており、登録事項変更登録に係る農薬が、当該延長された特許権の 効力が及ぶ範囲に属するのであれば、認めるべきでない 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべき その他 回答者数 割合 7 31.8% 3 13.6% 4 18.2% 7 31.8% 0 1 22 0.0% 4.5% 100.0% 0.0% 4.5% 31.8% 1 2 31.8% 3 4 5 13.6% 18.2% - 327 - 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 7 3 4 7 01 2 3 type4 3 2 2 2 0 4 5 type5 4 1 2 4 0 無回答 理由 ①の理由 ・単純で明確な制度にすべき(type4) ・延長の主旨を考えれば②でも良いと考えるが、現行制度に準じる方が良いと考える。 (type5) ・登録を取得した段階で公知な技術とみなしても良いと思われます。(type5) ②の理由 ・変更するのであれば別特許で権利を持てるから。(type4) ③の理由 ・新規有効成分を含有する場合、妥当と思われる。(type5) ④の理由 ・農薬の変更の登録によって、特許法第 68 条の 2 でいうところの異なる用途の登録が認め られたのであれば、存続期間が延長された場合の特許権の効力が及ぶ範囲も異なるもので あるから、各々が独立して延長登録が認められるべきであると考える。(type5) ・現行制度で、各判例での法解釈で運用する限りでは上記のとおり判断する。しかし、後 の設問の回答に示すように、延長される権利範囲、即ち権利の効力は、欧州等と同様に特 許されたクレーム全体に及ぶことが好ましい。 (特許法 68 条の 2 で規定する「特許権の効 力」を極力広く解釈すべきであり、農薬登録された用法・用量にまで限定すべきではない) (type4) ⑤の理由 ・農薬の場合、最初の登録で全てをカバーする訳でなく、毎年の様に事項変更するので、 特許も延長登録が必要である。(type5) - 328 - 18-4.物質 A 又は B を選択肢とする化学物質発明に係る特許権について、物質 A を有 効成分として含む農薬の最初の登録を受けた後に、物質 B を有効成分として含む農薬の後 の登録を受けた場合、当該後の登録に基づいて当該特許権について延長登録を認めるか否 か、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答えください。 件数 1 2 3 4 5 無回答 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべきではない 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたのであれば、認めるべきでない 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れており、後の登録に係る農薬が、当該延長された特許権の効力が及 ぶ範囲に属するのであれば、認めるべきでない 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべき その他 回答者数 割合 5 22.7% 1 4.5% 4 18.2% 11 50.0% 0 1 22 0.0% 4.5% 100.0% 0.0% 4.5% 22.7% 1 2 3 4.5% 4 50.0% 5 18.2% 0% 20% 40% 60% 80% 無回答 100% 1 全体 5 1 4 11 01 2 3 type4 2 1 2 4 0 4 5 type5 3 0 1 7 0 無回答 理由 ①の理由 ・登録を取得した段階で公知な技術とみなしても良いと思われます。(type5) - 329 - ③の理由 ・物質 A 皮は B を選択肢とする場合の設問は特許権の効力は及ばないので延長は認められ るべきと考えます(type3) ④の理由 ・延長された特許権の効力が及ぶ範囲は、登録を受けた物質に限定すべきであり、物資が 異なれば延長は認めるべき(type4) ・各々の物質の農薬登録によって、特許法第 68 条の 2 でいうところの異なる物の登録が認 められたのであれば、存続期間が延長された場合の特許権の効力が及ぶ範囲も異なるもの であるから、各々が独立して延長登録が認められるべきであると考える。(type5) ・A と B は別の物質であり、登録に要する試験等も別々のものと考えられるから。(type5) ・A 及び B のいずれかが最も適しているかは後日でないと判断できないため。(type5) 物質 B を有効成分として含む農薬の登録にも、別個に浸食された期間が発生するから。 (type5) ・前問と同様、現行制度では物質 A による延長対象は物質 A の用途・製剤に限られ、後の 登録の物質 B も同様に限定される。従って物質 A の延長の有無に関わらず、独立して延長 が認められるべきである。しかし、前問同様に 68 条の 2 の効力範囲が限定されず、物質 B も効力範囲内と解釈されるならば、新たに認める必要はない(type4) 18-5.選択肢として物質 A は包含するが物質 B は包含しない化学物質発明に係る特許 権について、物質 A を有効成分として含有する農薬についての最初の登録を受けた後、物 質 A と物質 B(物質 B は別の農薬の有効成分として既に登録されたもの)を含有する配合剤 に関する後の登録を受けた場合、当該後の登録に基づいて当該特許権について延長登録を 認めるべきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答えく ださい。 件数 1 2 3 4 5 無回答 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべきではない 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたのであれば、認めるべきでない 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れており、後の登録に係る農薬が、当該延長された特許権の効力が及 ぶ範囲に属するのであれば、認めるべきでない 最初の登録に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認めら れていたか否かにかかわらず、認めるべき その他 回答者数 - 330 - 割合 8 36.4% 1 4.5% 4 18.2% 7 31.8% 1 1 22 4.5% 4.5% 100.0% 4.5% 4.5% 1 36.4% 2 3 31.8% 4 5 無回答 4.5% 18.2% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 8 1 4 7 1 1 2 3 type4 4 1 2 2 0 4 5 type5 4 0 1 5 1 0 無回答 ⑤その他 ・新たな対象(type5) 理由 ①の理由 ・テクニカルな実質延長をまねく危険は排除すべき(type4) ・制限がなくなるのではないか?(type5) ・単純で明確な制度にすべき(type4) ・A に関すると先行処分があるから認められるべきではない(type5) ・登録を取得した段階で公知な技術とみなしても良いと思われます。(type5) ③の理由 ・設問の特許権は実施できていたのだから認められないと考えます。(type4) ・既に延長の効力を享受しており、延長された権利範囲内の新たな使用法の一つである配 合剤を開発したからと言って、重ねての延長は認めるべきではない。別途、A+B の配合剤の 特許権が存在するのであれば、当該配合剤の特許に関して別途、延長の適否を独立に判断 すべきである。(type4) ④の理由 - 331 - ・物質 A と物質 A+物質 B とが、特許法第 68 条の 2 でいうところの異なる物に該当するか否 かは判断が明確ではないが、通常は配合剤にする目的としては、用途の拡大が想定される。 してみれば、少なくとも物質 A の登録と物質 A+物質 B の登録との用途の点で異なる部分に 関しては、延長登録が認められるべきである。(type5) ・配合剤の保護には、延長が必要である。(type5) ・物質 A と B の配合剤に関する特許発明であれば、当該配合剤の農薬取締法の承認を得る ために浸食された期間を延長させるのが妥当と考える。(type5) 18-6.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特許発明の 技術的範囲に含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって特許発明の実施が可能 となった範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を許容 するとした場合、後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を認めるか否 かの判断基準として、いずれか望ましいか、下記の選択肢からひとつお選び下さい。また、 その理由をお答えください。 件数 1 2 18-1.の選択肢に挙げたものを含めどのような内容の特許発明の場 合にも一律に、農薬取締法上の一定の登録事項の点で、先行処分に係 る農薬と後行処分に係る農薬との間に違いがあれば、延長登録を認める (すなわち、先行処分によって特許発明の実施が可能となった範囲は、 どのような内容の特許発明の場合にも農薬取締法上の一定の承認事項 によって画される) 特許発明の内容(発明特定事項)を考慮し、先行処分に係る農薬の登録 事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項と、後行処分に係 る農薬の登録事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項との 間に違いがあれば、延長登録を認める(すなわち、先行処分によって特 許発明の実施が可能となった範囲は、先行処分に係る農薬の登録事項 のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項によって画される) 3 分からない 4 その他 無回答 回答者数 9.1% 4.5% 割合 4 18.2% 7 31.8% 8 2 1 22 36.4% 9.1% 4.5% 100.0% 18.2% 1 2 3 4 36.4% 31.8% - 332 - 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 type4 4 7 1 8 4 2 2 2 1 2 0 3 4 type5 3 3 5 0 無回答 ④その他 ・発明の内容を考慮すべきと考えるが、発明特定事項に該当する事項によって画されるべ きではないと考える。(type4) ・有効成分が同一の場合、先行処分のみ延長を認めるべき(type4) 理由 ①の理由 ・農薬登録票に記載される程度の事項によって延長登録出願の審査が行われなければ、出 願人および第三者のそれぞれの衡平を保てないと考える。出願審査の過程で、農薬登録票 の記載事項に加えて、更なる情報の提出が出願人に求められる事態が生じれば、第三者に よる閲覧を制限しない限り、企業秘密の流出を畏れて、審査継続を断念する事態が生じる ことが懸念される。また、閲覧を制限した場合、第三者が延長された特許権の効力が及ぶ 範囲を確認できない事態を招きうる。(type5) ・農薬取締法上の制限を受け、特許発明を自由に実施することができないため。(type5) ②の理由 ・現行の主旨と同じと考えられるから。(type2) ・発明特定事項に含まれる範囲で農薬登録を取得するために権利行使できなかったので、 延長登録も基本的にはその範囲で認められるべきである。特定の製剤・用途に限定された 農薬登録の範囲でしか効力を認められないならば、そもそも排他権である特許権としての 効力は無いに等しく、延長登録の意味がない。(type4) 仮に、問18-6の①の判断基準とすることとした場合、 「一定の登録事項」がどのような 事項である場合に後行処分に基づく延長登録を認めるべきか、下記の選択肢からひとつお 選びください。 - 333 - 件数 1 2 3 有効成分及び適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑制 に用いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的)の いずれかに違いがある(有効成分以外の成分、含有量、使用方法に違 いがあっても、後行処分に基づく延長登録は認められない) 成分(有効成分に限らない)及び適用病害虫の範囲(農作物の生理機能 の増進又は抑制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲 及び使用目的)のいずれかに違いがある(含有量、使用方法に違いが あっても、後行処分に基づく延長登録は認められない) 成分(有効成分に限らない)、含有量、適用病害虫の範囲(農作物の生 理機能の増進又は抑制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物など の範囲及び使用目的)及び使用方法のいずれかに違いがある 4 すべての登録事項のうちのいずれかに違いがある 5 分からない 6 その他 無回答 回答者数 18.2% 22.7% 割合 5 22.7% 0 0.0% 2 9.1% 2 6 3 4 22 9.1% 27.3% 13.6% 18.2% 100.0% 1 2 3 0.0% 13.6% 4 9.1% 5 6 9.1% 無回答 27.3% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 5 0 2 2 6 3 2 4 3 type4 1 0 1 1 2 2 1 4 5 6 type5 4 0 1 0 3 1 2 無回答 ⑥その他 ・基本的に③と同じで、成分については、賦形剤のような、効能・効果が変わらない成分 のみが違う場合は、認めるべきでない。(特許発明の実施形態が実質的に変わらない。) (type4) ・有効成分に違いがある(type4) ・異る対象(type5) - 334 - 仮に、問18-6の②の判断基準とすることとした場合、延長登録の対象となる特許権に 係る特許発明が発明特定事項として用途に該当する事項を有しない場合(例えば、有効成 分に係る物質発明である場合)、「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途に該当する 事項」を考慮すべきか否かについてお答えください。 件数 1 2 3 4 無回答 「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途に該当する事項」を考慮す べき(先行処分に係る農薬と有効成分が同じであっても適用病害虫の範 囲に違いがあれば、後行処分に基づいて、物質発明に係る特許権の延 長登録が認められる) 「発明特定事項に該当する事項」に加え「用途に該当する事項」を考慮す べきでない(先行処分に係る農薬と有効成分が同じであれば適用病害 虫の範囲に違いがあっても、後行処分に基づいて、物質発明に係る特許 権の延長登録は認められない) 分からない その他 回答者数 割合 8 36.4% 4 18.2% 6 0 4 22 27.3% 0.0% 18.2% 100.0% 18.2% 0.0% 1 36.4% 2 3 4 27.3% 無回答 18.2% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 type4 8 4 3 6 3 0 2 4 0 1 2 3 4 type5 5 1 3 0 2 無回答 19.存続期間が延長された特許権の効力について 19-1.特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、延長された特許権の効力が 及ぶ範囲については、どのような範囲とすることがふさわしいか、下記の選択肢からひと つお選びください、また、その理由をお答えください。 - 335 - 件数 1 2 無回答 現行法と同様「処分の対象となった物」及び「用途」により特定される範 囲 その他 回答者数 割合 16 72.7% 4 2 22 18.2% 9.1% 100.0% 9.1% 18.2% 1 2 無回答 72.7% 0% 全体 type4 20% 40% 60% 80% 100% 1 16 4 6 type5 3 10 2 0 1 0 2 無回答 ②その他 ・承認事項により特定される範囲及びその均等の範囲。(type4) ・有効成分及び用途(type4) ・物(化合物)の製法なども含めるべき(type5) 理由 ①の理由 ・「処分の対象となった物」の定義が明確になれば、現行法と同様でよい。(type5) 用量で延長が認められると同一製品名によっても異なるものとして存在することにな り、・まぎらわしい事象が増加すると考えられるから。(type5) ・現行法と同様の範囲において延長が認められなければ、延長する利点も少なくなり、解 釈に混乱を生じる恐れがあると思います。(type5) - 336 - ②の理由 ・処分の対象となった物に製造法及びその中間体を有する特許発明であったのなら、特許 権の効力が及ぶよう希望する。(type5) ・国が要請する安全性確認のための試験データを取得するために権利活用ができなかった 期間を回復させるために延長する、との元来の制度主旨からすれば、どのような用途・用 量・製剤であろうと、発明範囲に属する農薬登録取得手続のために権利活用ができなかっ たので、当該特許請求の範囲全体が延長範囲と認定されるべきである(欧州同様に)。登録 された用途・用量にまで限定した範囲でしか効力が及ばなければ、登録された農薬と一部 が異なる用途・用量で実施している第三者に権利行使不能となり、そもそも排他権である 特許権が実質的には延長されていないことになる。(type4) 19-2.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、現行特許法第 68 条 の 2 と同様「処分の対象となった物」及び「用途」により延長された特許権の効力が及ぶ 範囲を制限することとする制度を採用する場合、延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制 限する観点としてはいずれがふさわしいか、下記の選択肢からひとつお選びください、ま た、その理由をお答えください。 件数 1 2 3 4 無回答 18-1の選択肢に挙げたものを含めどのような内容の特許発明の場合 にも一律に、農薬取締法上の一定の登録事項の観点で、延長された特 許権の効力が及ぶ範囲を制限する 特許発明の内容(発明特定事項)を考慮し、農薬の登録事項のうち特許 発明の発明特定事項に該当する事項及び用途に該当する事項の観点 で、延長された特許権の効力が及ぶ範囲を制限する 分からない その他 回答者数 割合 9 40.9% 9 40.9% 3 0 1 22 13.6% 0.0% 4.5% 100.0% 0.0% 4.5% 13.6% 1 40.9% 2 3 4 無回答 40.9% - 337 - 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 type4 9 9 3 3 5 01 1 0 2 3 4 type5 6 4 1 0 無回答 理由 ①の理由 ・農薬登録票に記載される程度の事項によって延長登録出願の審査が行われなければ、出 願人および第三者のそれぞれの衡平を保てないと考える。出願審査の過程で、農薬登録票 の記載事項に加えて、更なる情報の提出が出願人に求められる事態が生じれば、第三者に よる閲覧を制限しない限り、企業秘密の流出を畏れて、審査継続を断念する事態が生じる ことが懸念される。また、閲覧を制限した場合、第三者が延長された特許権の効力が及ぶ 範囲を確認できない事態を招きうる。(type5) ・延長の理由として適切と考えられる為(type5) ・現行法と同様の範囲において延長が認められなければ、延長する利点も少なくなり、解 釈に混乱を生じる恐れがあると思います。(type5) ②の理由 ・国が要請する安全性確認のための試験データを取得するために権利活用ができなかった 期間を回復させるために延長する、との元来の制度主旨からすれば、どのような用途・用 量・製剤であろうと、発明範囲に属する農薬登録取得手続のために権利活用ができなかっ たので、当該特許請求の範囲全体が延長範囲と認定されるべきである(欧州同様に)。登録 された用途・用量にまで限定した範囲でしか効力が及ばなければ、登録された農薬と一部 が異なる用途・用量で実施している第三者に権利行使不能となり、そもそも排他権である 特許権が実質的には延長されていないことになる。(type4) 仮に、問19-2.の①の判断基準とすることとした場合は、(1)「処分の対象となった 物」及び(2)「用途」としてふさわしい承認事項を、下記の選択肢からお選びください。 (1)「処分の対象となった物」 - 338 - 件数 1 2 3 4 登録された農薬の有効成分のみ 登録された農薬の成分(有効成分に限らない) 登録された農薬の成分(有効成分に限らない)及びその含有量 登録された農薬の成分(有効成分に限らない)、その含有量及び剤型 5 登録された農薬そのもの 6 分からない 7 その他 無回答 回答者数 9 0 1 割合 40.9% 0.0% 4.5% 6 27.3% 1 2 0 3 22 4.5% 9.1% 0.0% 13.6% 100.0% 1 13.6% 0.0% 2 9.1% 3 40.9% 4 4.5% 5 6 27.3% 0% 20% 40% 4.5% 60% 7 0.0% 無回答 80% 100% 1 全体 9 01 6 1 2 0 3 2 3 4 type4 5 0 2 0 1 0 1 5 6 type5 4 0 1 4 1 0 1 7 無回答 (2)「用途」 件数 1 2 3 4 無回答 登録された農薬の適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑 制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的) 登録された農薬の適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑 制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的) 及び使用方法 分からない その他 回答者数 - 339 - 割合 6 27.3% 10 45.5% 3 0 3 22 13.6% 0.0% 13.6% 100.0% 13.6% 0.0% 27.3% 1 13.6% 2 3 4 無回答 45.5% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 6 type4 10 3 3 4 0 3 1 0 1 2 3 4 type5 3 6 1 0 1 無回答 ③に回答 ・農薬の用途が異なっていても殺菌剤が殺虫剤として作用することもあるし、その逆もあ る。従って用途としての細目の違いは無いこともあり不適切と考える(type5) 20.特許権の存続期間の延長登録の要件と延長された特許権の効力の関係について 20-1.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特許発明の 技術的範囲に含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって「特許発明の実施」が 可能となった範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を 許容するとした場合、農薬取締法第 2 条第 1 項又は第 6 条の 2 第 1 項に基づく登録を受け ることによって禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲と、延長された特許権の効力 の及ぶ範囲は、一致させるべきか否か、下記の選択肢からひとつお選びください、また、 その理由についてお答えください。 - 340 - 件数 1 2 3 4 5 6 7 無回答 一致させるべき 均等論等で効力範囲が多少拡張することはあるとしても、原則として一 致させるべき 一致させるべきでない、一致させる必要はない 一部一致させるべき どちらでもよい 分からない その他 回答者数 0.0% 4.5% 6 割合 27.3% 6 27.3% 2 0 1 6 0 1 22 9.1% 0.0% 4.5% 27.3% 0.0% 4.5% 100.0% 1 27.3% 2 27.3% 3 4 5 4.5% 0.0% 9.1% 0% 20% 全体 6 40% 6 6 7 27.3% 60% 80% 2 01 6 無回答 100% 1 2 01 3 4 type4 2 4 2 0 1 0 5 6 type5 4 1 0 1 5 0 7 無回答 理由 ②の理由 ・後行処分に基づく範囲はすでに先行処分の範囲が実施・延長されているため、実施でき なかった範囲に一致させるべき。(type4) ③の理由 ・むしろ一致させることはできないということを前提にして制度設計をすべき。→たとえ ば用途を限定して差止めを行なうことは不可能に思える。(type4) ・厳密に一致させると延長される特許権の効力が非常に狭いものとなってしまい、実質的 に排他権としての特許権の延長の効力を失う(type4) - 341 - ⑤の理由 ・「処分の対象となった物」および「用途」の考え方とリンクするが、『一致させるべき』 とは考えないものの、一致するはず。延長が認められた期間に、均等論は認めるべきでは ない。(type5) ⑥の理由 ・物質特許に含まれる範囲は均等論として同一と考えられ、実施の範囲とはきわめて限定 的であるから(type5) 20-2.問20-1で、番号②を選択された方にお伺いします。上記回答で効力範囲が 拡張する範囲としてどのような範囲が妥当かお答えください(自由記載)。 ・後発医薬品(ジェネリック)として承認される範囲(=先発医薬品と同等性を示せる範 囲)が考えられる。(ジェネリック医薬品に準じて)(type4) ・いわゆる均等論の範囲で個別に判断されるものと考えます。(type4) 20-3.仮に、特許権の存続期間の新たな延長登録制度において、米国のように 、特許 権の延長登録は、有効成分についての最初の登録に基づくものでなければ認めないとした 場合、新たに追加登録された「適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又は抑制に用 いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用目的)」にも効力を及ぼすべきか、 下記の選択肢からひとつお選びください、また、その理由をお答えください。 件数 1 2 3 4 5 無回答 追加登録された新たな適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又 は抑制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用 目的)にも効力を及ぼすべき 追加登録された新たな適用病害虫の範囲(農作物の生理機能の増進又 は抑制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物などの範囲及び使用 目的)に効力を及ぼすべきでない どちらでもよい 分からない その他 回答者数 - 342 - 割合 14 63.6% 3 13.6% 2 2 0 1 22 9.1% 9.1% 0.0% 4.5% 100.0% 0.0% 4.5% 9.1% 1 9.1% 2 3 4 13.6% 63.6% 5 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 14 3 2 2 2 01 3 type4 7 0 2 0 4 5 type5 6 3 0 2 0 無回答 理由 ①の理由 ・最初の承認しか認められないのであれば、追加承認された効能・効果にも効力を及ぼす べきと考えるが、延長される期間が、最初の承認のものによって決まってしまうので、別々 に延長期間が決められるべきと思う。(type4) ・追加登録された適用病害虫の範囲に効力が及ばなければ、延長期間中でもジェネリック の参入を許し、新薬の保護が不十分となる(type4) ・延長の対象とされる特許権は、有効成分にかかる物質特許であるとの前提が必要と考え るが、各国の制度と調和を図るべき。(type5) ・用途は後日登録される場合があるため。(type5) ・現在の最長 5 年の下では、申請数が増えるかは疑問が残る。(type5) ・申請に制限を設けるのであれば、その分、効力は広く認めなければ不合理(type4) ・有効成分とその用途の開発は別物と考えているため。(type5) ②の理由 ・新しい発見になると思われる。(type5) ・用途が異なれば登録に必要なデータも異なり必要な試験期間、認可手続も異なるから別 に延長が認められるべきと考える。(type5) - 343 - C-3 現行の特許権の存続期間の延長登録制度に対するユーザーの評価 21.我が国と海外の特許権の存続期間の延長登録制度との比較について 21-1.我が国の特許権の延長登録制度と海外の特許権の延長登録制度(審査遅延に関 する延長登録制度を除く)とを比較した場合の、我が国の制度のメリット・デメリットを お答えください。 (観点の例:期間・回数、延長期間の算定方法、延長の効果(権利行使)、延長対象、承認 との関係、延長手続等について。海外の延長登録制度を利用していない場合は我が国制度 を利用する上でメリット及びデメリットと思うことを記載してください。) 我が国制度のメリット(自由記載) ・承認ごとに期間も、複数特許に対しても認められるという点でよいと思う。実施が禁止 されていた期間が解除されたことによって、その分の延長が認められるのがよいと思う。 (type4) ・韓国と比較した場合、延長期間の算定方法がシンプルであり、その説明のための資料も 少なくて済む。(type5) ・公的機関の試験成績を提出すれば足り、期間算定の最長5年を申請しやすい。実際の浸食 期間が8年ないし10年であるため。(type5) ・米、中のように延長対象を医薬に限っていない点だけは評価できる。(type4) ・実施例がないため具体的な理由は記載できません。(type5) 我が国制度のデメリット(自由記載) ・未だ、権利解釈、延長の可否が判決によって確立されていない点。(type4) ・複数の処分と複数の特許に対して、たすきがけで延長申請が可能なため、手続きが煩雑 すぎる。 条文が不明確のため、法的安定性に欠ける。(type4) ・農薬登録に関しては、農薬取締法第6条の2第1項に規定する農薬の変更の登録が繰り返し 行われることが多いため、その都度、延長登録出願を行った場合には、行政にも出願人に も相当の負荷がかかる。延長が認められる期間を「年月日」単位とするのは、 「日」単位と 対比した場合、特許登録日や農薬登録の登録日によって、若干の日数の有利不利が生じる。 (type5) ・同日に同一有効成分を含む複数の農薬(剤型等異なる)が登録となった場合、複数の延 長手続事案が発生し、その範囲(延長の効力の発生する)が明確ではない為、複数の手続 を行う必要があり、煩雑である。(type5) ・延長期間の最長5年をさらに延ばしてほしい。農薬登録を受けるために、農水省に膨大な 試験成績等を提出していることから、特許庁との連携を図り、簡便な手続きで特許の延長 登録制度を利用できるようにしてほしい。(type5) ・延長が認められる効力範囲が狭すぎて、排他権としての特許権の効力が実質的には延長 - 344 - されていない。 個別の農薬登録を取得する度に延長登録の出願が必要となり煩雑 ・出 願手続が煩雑で、提出書類も多すぎる。(欧州のように単純明快が良い)(type4) ・実施例がないため具体的な理由は記載できません。(type5) 22.特許権の存続期間の延長登録制度に関する判決や審査基準改訂に伴う影響について 22-1.平成 21 年 5 月 29 日知財高裁判決、それに続く平成 23 年 4 月 28 日最高裁判決、 平成 23 年 12 月 28 日の改訂審査基準の施行、あるいは平成 26 年 5 月 30 日知財高裁大合議 判決の前後において、特許権の存続期間の延長登録出願の出願戦略について変化があった かどうか、下記の選択肢からお選びください(平成 26 年 5 月 30 日知財高裁大合議判決に ついては出願戦略の変更について検討したことがあれば変化があったとしてください)。ま た、変化があった場合はどのような変化があったか(わかる範囲で理由と共に) 、その概要 をお答えください。 件数 1 平成21年5月29日知財高裁判決の前後で変化があった 2 平成23年4月28日最高裁判決の前後で変化があった 3 平成23年12月28日の改訂審査基準の施行の前後で変化があった 4 平成26年5月30日知財高裁大合議判決の前後で変化があった 5 変化がなかった 無回答 回答者数 0.0% 1 0 2 0 3 0 200.0% 400.0% 600.0% 800.0% 1000.0% 0 0 0 1 12 9 22 1200.0% 1 4 12 5 9 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 2 全体 3 type4 4 type5 5 無回答 - 345 - 割合 0.0% 0.0% 0.0% 4.5% 54.5% 40.9% 100.0% 1400.0% ☐①平成21年5月29日知財高裁判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) ・特記無し ☐②平成23年4月28日最高裁判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) ・特記無し ☐③平成23年12月28日の改訂審査基準の施行の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) ・特記無し ☐④平成26年5月30日知財高裁大合議判決の前後で変化があった 変化の概要とその理由(自由記載) ・延長効力の及ぶ範囲が不明確であることがはっきりしたので可能性のある延長手続は全 て実施していくこととした。(type5) C-4.その他 23.ジェネリック農薬の登録申請に関して 23-1.ジェネリック農薬の登録を申請するに当たって、延長された特許権の効力の及 ぶ範囲に該当製品が含まれるか否かの判断で迷うことがあるか、下記の選択肢からひとつ お選びください。 件数 1 迷うことが多い 2 迷うことがある 3 あまり迷うことはない 4 迷うことはない 5 ジェネリック農薬の登録申請をしていない 6 どちらでもない 7 その他 無回答 回答者数 - 346 - 1 1 1 3 9 2 3 2 22 割合 4.5% 4.5% 4.5% 13.6% 40.9% 9.1% 13.6% 9.1% 100.0% 4.5% 4.5% 4.5% 9.1% 1 2 13.6% 3 13.6% 4 9.1% 5 6 7 40.9% 0% 全体 20% 1 1 1 40% 3 9 type4 0 type5 60% 無回答 80% 2 100% 3 2 9 1 1 1 3 0 0 2 3 0 1 2 3 4 5 6 7 無回答 ⑦その他 ・延長された特許権の存続期間において、対象となるジェネリック農薬の登録申請をして いない(type5) ・申請していない。(type5) 23-2.問23-1で①または②を選択した場合には、判断で迷う原因として考えられ るものについて、下記の選択肢からお選びください(複数回答可) 。 件数 1 特許発明自体が不明確 2 延長された特許権の効力の及ぶ範囲が不明確 3 その他 無回答 回答者数 0.0% 1 2 3 無回答 20.0% 40.0% 60.0% 0 2 0 0 2 80.0% 100.0% 0.0% 100.0% 0.0% 0.0% - 347 - 割合 0.0% 100.0% 0.0% 0.0% 100.0% 120.0% 0% 20% 40% 全体 0 60% 80% 2 100% 0 type4 0 type5 0 1 2 3 2 0 無回答 24.試験データ保護と特許権の存続期間の延長登録について 24-1.現在農薬の登録申請において、 農薬の登録申請において提出することとされている試験成績の一部が既に他の登録申請に おいて15年以上前に提出されており、かつ、登録申請しようとしている農薬が現に登録を 受けてから15年以上経過しているものとその成分、物理的化学的性状、人畜に対する毒性 その他の特性が同等であると認められる場合には、申請者は、試験成績代替書を当該試験 成績に代えて提出することができる との運用がなされており、新規有効成分を含む農薬については約15年の試験データの保護 が与えられておりますが、それに加えて特許権の存続期間の延長による保護を受けること が有効である場合とその理由をお答えください。 有効である場合及び理由(自由記載) ・特許権利と試験成績の所有権利は一緒に考えられない。内容が良く理解できない。(type5) ・データ保護制度の従来の変更に備えるため(type4) ・現実的には、有効な場面が想定できません。(type5) ・特許権が存続する限り保護すべきである。(type5) ・権利侵害の観点から、特許法100条~106条により、特許権者は権利行使しやすぐ因果関 係やその立証が容易となる。水際で差し止めることが可能であり、抑止効果も期待できる。 一方、農薬取締法や不正競争防止法では、因果関係やその立証は容易ではない場合があり、 時間と費用が増大する。(type5) ・農薬登録申請における試験データの保護は経済的な障壁であり、特許権の延長は国が認 めた権利の保護であり質が全く異なるため有効と考える。(type4) 25.農薬の登録申請時における特許情報の参照について 25-1.ジェネリック農薬について登録申請する際に、先行農薬の特許が存在すること を、確認することができるか、下記の選択肢からひとつお選びください(①を選択した場 合は、その確認手段についても、お答えください)。 - 348 - 件数 1 確認できる。 2 一部は確認できるが完全には確認できない。 3 確認できない 4 その他 無回答 回答者数 27.3% 6 4 4 2 6 22 割合 27.3% 18.2% 18.2% 9.1% 27.3% 100.0% 27.3% 1 2 3 4 9.1% 無回答 18.2% 18.2% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 6 type4 4 4 4 2 2 0 6 2 3 3 4 type5 2 2 4 2 1 ①確認手段 ・構造検索を行う。(type4) ・化学情報協会が運営するデータベースを利用(type4) ・ホームページ上(type5) ・CA(type4) ・商用データベースを利用する(type5) ・延長登録出願情報(type4) ②確認手段 ・特許データベース等(type4) ・有効成分について特許調査すれば可能と考える。(type5) ④その他 - 349 - 無回答 ・確認したことがない(type5) 25-2.我が国において登録された農薬とその農薬に関連した特許権のリストを設け、 第三者が容易にそのリストを閲覧できる制度を設けるべきか、下記の選択肢からひとつお 選びください。 件数 1 設けるべき 2 設けなくてよい 3 どちらでもよい 4 その他 無回答 4 8 6 0 4 22 回答者数 18.2% 割合 18.2% 36.4% 27.3% 0.0% 18.2% 100.0% 18.2% 1 0.0% 2 3 4 27.3% 無回答 36.4% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 全体 type4 4 8 1 6 0 4 4 4 2 0 3 4 type5 3 4 2 0 2 無回答 ④その他 ・農薬に関して特許を取得していないため回答できません。(type1) 26.我が国の特許権の存続期間の延長登録制度についてその他のご意見があれば自由に お答えください(自由記載) ・実務上大きなウエートを占めていないため、深い検討はしていないが、最高裁判決は意 外であった。同じ薬剤が存在した場合拡囲を限定して差止めるなど不可能と思われ、最高 裁判断を止めるために法改正をするという考え方はあるのかもしれない。(type4) - 350 - ・従来通りで、自由競争とすべきと考える。(type5) ・より単純で明確な制度にすべき(type4) ・特に直近では、医薬品分野が主導で、当該制度に関わる判例が積み重ねられて、制度の 見直しを繰り返されているが、審査基準に対する裁判所の判断は厳しいものであり、審査 基準の改定のみでは、安定した運用の確立は困難な状況にある。審査基準の改定にとどま らず、法改正など施して長期的に安定した運用の確立のための制度を改めるタイミングが、 平成26年5月30日知財高裁大合議判決に対する最高裁の判断の時に迫っていると考える。 (type5) ・20年の特許存続期間の満了後に、特許発明に係る最初の農薬登録を受けた場合、条件付 きで延長期間を担保する制度を設けてほしい。我が国の農薬開発力は、欧米に負けていな いと思う。今後も世界をリードして持続的に新規化合物を創出するため、一層プロパテン ト化を進め、存続期間の延長登録制度も含めた制度設計を希望します。(type5) ・特許法68条の2で延長される特許権の効力範囲を制限するのは、権利者が不当に有利とな って産業の発展を阻害することを防止するためであろうが、今回の大合議判決のようにあ まりにも詳細に限定してしまうと、本来は排他権である特許権の効力がなくなることとな る。自らの実施技術が延長された特許権の範囲に入っている、という事実を獲得するだけ が目的のユーザーは、登録に必要だった各々の用途、用量全てに関して延長登録を出願で きる状態を作りたいと考え、用途・用量まで限定して狭く解釈し、後に続く農薬登録を全 て延長登録出願できるようにしたいのかもしれないが、そこで得られる権利には排他権と しての特許権の効力は非常に狭く、殆ど保有する意味を見いだせない。第三者が効力範囲 外の用途・用量で農薬登録を取得してしまえば、限定された範囲の延長登録特許権では差 止請求できない。何のための特許権なのだろうか?(type4) - 351 - 資料Ⅱ 国内ヒアリング調査 【実施概要】 <国内ヒアリング調査実施概要> <ヒアリング調査対象選択方針> 我が国の延長登録制度利用が比較的多い医薬品製造企業や農薬製造企業、海 外への延長登録出願が比較的多い米国研究製薬工業協会や欧州製薬団体連合会 に加盟する企業、さらには、国内外でジェネリック医薬品を製造する企業等か ら11者を選択した。 <ヒアリング調査対象内訳> 国内ヒアリングは下記の要領で実施した。 医薬品関係8者 ・Type1企業2者 ・Type2企業4者(外資1者を含む) ・Type3企業2者(外資1者を含む) 農薬関係2者 ・Type4企業1者 ・Type5企業1者 その他 1者 ・Typeに分類できない企業1者(再生医療関係) - 356 - 【質問項目及び回答】 ①医薬品や農薬の最初の承認・登録に基づき延長可能となる特許の数について【問6- 2、18-2関連】 「・法改正をした場合ということになるが、実際に法律改正された際に複数の特許権の 延長が維持されるかというところを結果的に考えた場合に、医療費の抑制政策があるし 後発医薬品の利用促進という点からもなかなか難しいのではないかと思う。国際調和の 点からも一つにすることになるのではないかと思う。 ・法改正をしないで現行審査基準の改定をするということであれば現行審査基準を維持 するというのが当社の考えかたで、一方、アンケートの回答については法改正をする場 合を前提とした弊社の考え方ということになる。延長可能となる特許の種類としては、 現行法の下では関連するすべての特許が望ましいと考えている。」 (Type2) 「・侵食された特許期間の回復は、対象となる医薬品に関係するあらゆる特許発明につ いて認められるべきであり、特定のもの(たとえば有効成分)に限定されるべきではな いのですべての特許とするべき。医薬品は物質特許だけではなく、いろいろな特許で保 護されているので等しく侵食期間を延長して頂きたい。一つ選ぶことになれば物質特許 をほとんどの企業が選ぶことになると思うが、仮に、物質特許の延長の効力がすべての 承認された効能効果に及ぶとしても、物質特許よりも後の用途、製剤特許については侵 食期間が回復されないことになるので不利益を被ることになる。したがって、欧米流に 特許を一つに絞るのは条件付きであっても支持できない。後に認められる承認に対する 延長期間は長くなる場合も短くなる場合もある。どちらが得かはわからないが両方のパ ターンがある。 (一つ選ぶことになった場合、物質特許以外を選ぶことはどうか?)他の製剤とか、用 途とか、結晶の特許などの物質特許以外の特許はいずれ無効にされるリスクが物質特許 に比べて高い。そういった要素が延長するときには物質特許にしようという判断材料と して働く。 ・開発の流れとして、基本的に物質特許を出願する際に、その時に志向した用途で開発 がまずなされる。第 2 医薬用途として特許をだせるチャンスはあるがそちらを最初の承 認として取るのは極めてまれ。特許を取れるが延長対象になりえない場合が圧倒的に多 くなる。 (6-1のバイオマーカー発明とは?)遺伝子の発現解析をしてこの患者さんはこうい う医薬が効きやすいというような発明のこと。 (複数延長のメリットは?)製品の寿命が長くなるということ。製剤特許等は迂回すれ ばジェネリックを出せるので、物質以外の製剤とか製法とかは延長しても必ずしも後発 品を抑えることはできないが、少なくとも全く同じ製品は出せない。 」(Type2) - 358 - 「〔選択肢③その他(効力との関係による。)の回答に関して〕 ・新薬メーカーにとっては、開発した新薬がしっかりと守られることが大前提であり、 それが守られるのであればどちらの制度であってもかまわない。 ・当然新薬メーカーにとっては、延長の機会が多ければ多いほどよいが、効力が弱いも のとなってしまっては意味がない。 ・医薬品の承認取得のために先発医薬品企業は労力や費用を投じるが、それに見合うだ けのインセンティブが必要である。仮にたくさんの特許が延長できたとしても簡単にジ ェネリックに参入される制度であればあまり意味がない。 ・ (医薬品の一部変更承認申請に関して、)用法用量などの小さな変更であったとしても、 臨床開発を行わざるを得ないため、その時間と労力を考慮してもらえないとしたら理不 尽であると考える。 ・今の制度のデメリットとしては、効力範囲の狭い複数の延長登録がなされるがために、 効力範囲に穴が空いてしまうケースが想定される。また、かつての審査基準の際に延長 登録されたものについては必要な対応がとれないためリスクが生じる問題がある。また、 多数の延長出願が必要となるため、維持管理に負担・コストがかかる。」(Type1) 「・いずれもその特許発明の実施に承認を受けることが必要である発明でありうるから すべての特許が延長登録出願の対象となるべき。また、現行制度と同じであり業界への 影響が無いから。 ・複数特許が延長できる形であれば、物質特許で延長を取り、つづいて用途特許で延長 をとる。用法・用量特許でもとれるとなると、出願時期がずれているので長い間保護が 得られる。複数特許が対象になるのは選ばなくても全部とれるというのがメリット。欧 米型だとどれかを選ばないといけない。」(Type2) 「・関連するすべての特許とすべきと考えている。ライフサイクルマネジメントを念頭 に置いていろいろな保護を求めている。ライフサイクルマネジメントに資する権利であ ればその延長を図りたいというのが根本にある。 ・現行の制度の立てつけで考えれば複数特許複数承認がこれが伸ばされるべきというの が根本。ただこの反射として効力範囲が狭くなること、特に物質特許の最初の承認に基 づく効力がオールマイティではないのではないのかという疑問が生じる。誰も争ってい ないので答えはないのかもしれないが。登録要件が緩く、複数重ねる裏腹として効力は 狭いんだという考えもある。そういった意見には反対だが、もしそうなるのであれば欧 米のように 1 特許 1 延長というのもあり得る話かと思う。 (基本的には物質特許を取って、派生特許を取っていくというのが研究開発スタイル?) その通り。PUMA 品(小児用途販売承認)、あるいは、再審査期間が 8 年オーファンは 10 年は後発が参入できないのでそれに依拠するビジネスモデルも0ではないが、基本と - 359 - しては物質特許で保護するものを基本と考えている。」 (Type1) 「・国際調和の観点より現行の延長制度は改めるべき。主に米国と欧州との調和を図る べき。 (欧米では承認のメカニズムが違ったり、延長制度もことなっているがどのような点で 統一すべきとお考えか?)期間算定は日本式で良いが、対象特許が1件のみというのが 先発後発両者にとっても良いと思う。先発にとってももちろんだが、後発にとっても不 測の事態を防ぐという点で助かる。 (複数可能とした場合のデメリットは?)第2用途の特許が成立した場合が困る。弊社 の関わった事件として、カルベシロール慢性心不全特許があって、カルベシロールとい うβブロッカーの製品が低含量品にのみ慢性心不全の効能があった。そちらで先発が用 途特許を成立させて、無効審判を争った際に7年くらいかかった。知財高裁と特許庁の 間で行ったり来たりして。延長とは関係ないかもしれないが延長が適用されるような時 期に承認がされたら対象になるので。このような事例が後発企業にとっては支障になる。 欧州の場合、第2用途特許が認められるが、欧州の場合は先発のデータ保護期間が非常 に長い。承認後8+2年。特許の SPC よりデータ保護期間が長いことがしばしばある。 SPC の場合は第二用途は延長されないのであまり支障にはならない。 (5-2のところで上限があったほうがいいのか?)複数回の延長を認めるのであれば 延長の上限を入れてもらいたい。 (1回であればどうか?)不要だと思う。先発メーカーがそれだけ開発に掛かったのであ れば制限がないのもやむを得ない。 (6-1のところで、①②を選ばれているが、これは最初の承認?追加承認の時?)最 初の1回なら種類を増やしてもよいが、追加も認めるならば①②という形にしてもらい たい。」(Type3) 「〔選択肢①の回答の理由について〕 ・先発企業の立場でいえば、複数の特許、その全てについて、延長登録出願の手続きを 行うのは手間がかかる。仮に先行処分の延長登録の段階で後行処分の範囲まで延長特許 の効力範囲が広がるのであれば、対象特許を1つに限定した方が簡便である。 ・知財高裁大合議判決の内容で解釈されると、先発企業の立場でいえば、効力範囲は狭 いと感じる。後発企業の立場でいえば、狭い解釈でも構わないが、裁判してみないと効 力範囲がはっきりしないという状況では参入しづらいと考える。権利範囲が不明確であ るならば、広くはっきりとした基準が示されていた方が、個人的には、 (後発企業として も)好ましいのではないかと考える。 ・一方で、DDS 製剤に関して、製剤特許に相当するものを新薬として開発をしているが、 有効成分自体の特許は別会社のものであるため、(延長対象を 1 つの特許に限定すると - 360 - なると、 )製剤特許については期間延長の恩恵は受けられない場合もでてくる。公知医薬 の別用途開発でも同様である。 ・またジェネリック側の開発の観点でいうと、権利が複雑すぎて、どこまでが特許で守 られており、どこからがオープンで使える技術なのかが分かりづらいところが問題であ る。 ・(知財高裁大合議判決に関し、)用法・用量までは細かく特許上違うものと解釈するの は細分化しすぎではないかと考える。一方で、対象を 1 つの特許とし、適応症が異なる にもかかわらず同じ物と解釈するのはまとめすぎと考える。 ・先発企業にしても後発企業にしても、予見性が低い制度ではやりにくいと思われる。 ・日本だけ制度があまりに異なるのは問題である。」(Type2) 「〔選択肢①(1 つの特許に限るべき)を回答した理由について〕 ・さしたる理由があるわけではないが、現実的には、重要な特許から派生した周辺を守 る特許まで延長登録できたとしても、果たして有効なものなのか疑問である。 ・製品に関連する特許を全て延長登録出願できたとしても、特許庁等での事務手続き負 担等の社会的コストまで考えると、そこまでの意味はないのではないか。製品を保護す るの必要な特許に限った方が、社会的コストまで考えると良いのではないかと考える。 ・沢山ある関連する特許全てが製品を守るために有効であるとは考えられない。製品を 守るために必要な特許を 1 つ選んで延長登録すればそれでいいのではないか。 ・競争優位の意味で保護できる特許はなるべく多い方がよいことの理屈は理解できるが、 全体的に見て、社会的コストまで含めて考えると、製品を十分に保護できる特許だけを 権利者側が選んで延長登録することで十分なのではないか。 ・有効成分そのものの特許であったり、その有効成分を特定疾患に使うことに関する特 許があると、その製品に関してはそもそもジェネリックは追いかけられない。 ・製剤や製法等の周辺特許は、基本特許よりもだいぶ後に特許出願されるものであるた め、そもそも基本特許の延長期間よりも長い場合が多い。したがって、これらの周辺特 許が延長されていてもいなくても、これらを回避してジェネリックを作らなければなら ないことに変わりはない。 ・周辺特許が延長されたとしても、競争優位の意味では有効かもしれないが、そもそも ジェネリック企業はこれらの特許を回避して承認を得なければならない蓋然性が高く、 また一端、回避してジェネリックに投資すると簡単に設計は変えられない。薬事承認の 内容を変更する手続きを経ない限り、勝手に製造方法等は変えられるものではなく、例 えば、製剤の特許が切れて、その製剤の方がコストメリットがあるとしても、そこまで はしないことの方が多いのではないか。」(Type3) - 361 - (農業) 「・農薬の場合、「②すべての特許とすべき。 」たとえば有効成分18-1からどれか対 象となる特許を限るとした場合、そういう特許がまだ有効に存続している期間であれば 延長登録の対象となるが、有効成分、物質発明の特許が満了した後に農薬登録が取得で きたケースがあると、そういった場合、他の特許ではカバーされているかもしれないが、 物質特許では保護されていない、そういうものが延長の対象にならないと困るというケ ースがありえる。そのため、18-1の設問のどれかに絞るような制度になると困る。 ・種類が選べれば1つでもよい。大体は①-⑤でカバーされている。海外では遺伝子組 みかえ作物と関連した用途発明とかも特許がとれるのでそういったものも考えられる」 (Type5) 「〔選択肢②を回答した理由について〕 ・農薬は、特定の製剤、含有率、処方、使用作物等が限定された状態で農薬登録される が、延長登録の対象も特定の範囲に限定される。その意味で日本の延長制度はほとんど 意味がないと考える。農薬登録で保護され、他社が参入できない状態であるため、同様 の範囲に限定された延長特許では意味がない。特許権を保有しているとの宣伝にしかな らない。 ・排他権であるべきものが、自己の実施を保証しているだけの役割となっている。 ・例えば、ある特定の化合物の置換基を少し変えたもので他社が参入してきた場合、そ の特定の化合物にしか農薬登録や延長登録の効力が及ばないため、権利行使できない。 ・十分な保護が図れていない以上、せめて様々な特許に延長登録を認めるべきと考えて ②と回答したが、それでも延長登録の効力がないことには変わりはない。 ・有効成分と効能効果のみで限定されるとしても、効力範囲は狭いと考える。 ・日本の延長登録出願はやめようかと思っているぐらいである。 ・一方で欧州では、特許された化合物自体がそのまま延長登録の対象となり、排他権と しての役割も発揮できるものであるため、意味がある。基本特許の化合物自体が延長さ れる制度であれば、延長の対象特許は 1 件でもよいと考える。 ・(農薬開発には時間がかかる。)農薬取締法の登録を受けてから、特許権の存続期間の 満了まで、10 年もあればかなり良い方である。 ・ジェネリック参入に関していえば、データプロテクション制度で長期間保護されてい るため、極論すると、開発化合物が決まったら、それに関する特許の権利はあまり必要 ない。一方、東南アジア等では、データプロテクションが甘い国が多く、第三者が勝手 に先発企業が提出したデータを使用して農薬登録の申請をしてしまう。裁判でどの程度 勝てるのかという問題はあるが、特許権が頼りであり、延長登録制度も欲しいと考える。 ・苦労して開発した活性成分の基本骨格部分については、他社の参入障壁となるよう、 広いクレーム範囲での延長登録を認めて欲しい。」(Type4) - 362 - (再生医療) 「〔選択肢②(関連する全ての特許とするべき)と回答した理由について〕 〈前提(再生医療製品の状況)〉 ・再生医療等製品が延長登録対象として新たに認められたが、延長登録制度に関しては まだ厳密なところまで検討できていない。延長登録制度よりも特許権を成立させること にウエイトが置かれている。 ・再生医療等製品は、医薬品と比べても認可にかなりの時間を要する。特許権の存続期 間 20 年の間に製品化できるか否かのレベルの話である。 ・知財高裁大合議判決は、再生医療等製品に合致しない所が多々ある。 〈理由〉 ・一部変更承認といっても、安全性・安定性等に関して長期間にわたる試験データが必 要とされており、企業としても覚悟を持って取り組んでいることでもあるため、承認が 得られた場合には、関連する特許権について全て延長登録を認めてほしいと考える。 ・再生医療等製品は、化学物質の特許が前提の医薬品と異なり、複数の特許が関連して 成立するものが多いため、関連する特許を一括して延長登録を認めてほしいと考える。 〔再生医療等製品特許の存続期間について〕 ・再生医療等製品は、開発に時間を要し、承認が得られる頃には、ほとんどの特許権の 存続期間が満了していることが現実である。その意味でも、少なくとも開発に要した期 間は延長登録を認めてほしいと考える。 ・(再生医療等製品の現状から考えると、)延長期間は 5 年でも足りない。 〔医療特許について〕 ・(運用により、一部の医療関連発明について特許が認められるようになったが、 )それ でも十分ではない。 ・再生医療等製品は、物自体で解決するというよりも、その物をどのように使用するの かがポイントとなるが、体内で使用されるものであるため、特許の対象外となってしま う。延長登録制度よりも、医療方法の特許対象化や、権利化されるようにクレームを表 現することが話題となる場合が多い。 ・製品化に時間を要するベンチャー企業にとっては、資金を集めるためにも特許の重要 性は高いため、特許対象となるか否かは大きな話である。 〔再審査期間について〕 ・再生医療等製品は、例えば、細胞が人ごとに異なるなど、化学物質のように規格を正 - 363 - 確に決めることができるものではない。後発品についてまだ誰も考える余裕はないので はないか。 」 ②登録要件、延長の効力についての下記アンケート項目で選択肢を選んだ理由およびに ついて詳しく教えてください。(それぞれの選択肢のメリット・デメリット) ・【問6-3、18-3】 <一部変更承認・登録に基づく延長登録> 「〔選択肢②を回答した理由について〕 ・一部変更承認には幅があり、例えば、効能・効果、用法・用量等の変更が発明性があ るほどのものなのかという観点がある。発明性があるような効能・効果や用法・用量の 変更であれば、それらに関連する特許を別途に権利化をしていくべきであって、そこを 延長登録すべきである。同じ特許を何度も延長登録する必要はないのではないか。 ・我が国の産業競争力をどうするかの観点からも、第三者も含めて改良発明を促進する やり方のがよいのではないか。一部変更承認の中でも、少しの違いしかないものまで延 長して保護する必要はないと考える。 ・改良発明の実施品を市場に投入できるインセンティブのある制度でないと、ジェネリ ック企業としても食い扶持に困ることになってしまう。その意味では、改良発明の実施 品の市場投入を促進するような制度はあるべきである。既存の薬剤の安全性・有効性を 高める等の改良は患者さんにとってもメリットがあることである。 」 (Type3) 「・属しない部分、独立した特許が存在していてその特許が先行承認でカバーされてい ない、それに関しては 2 回目もありかと考えている。」(Type1) 「・この選択肢については選択を迷ったが、やはり一番合うものがなかったので「その 他」を選択した。制度改正をするのであれば 1 特許 1 延長という制度を希望しているの で、設問として、これに合致しているものがあるのか、設問として不明確と感じたこと もある。追加効能の場合は延長登録をしないでも自然に効力範囲が広がるという欧米型 が望ましいという考え方だったのでどれに該当するのかの判断が難しかった。どちらか という②、③に近いが効力が不明確なので選択できなかった。効力範囲との関係で決ま ってくる。 ・選択肢に関わらず、 「最初の承認に基づいて、同じ特許権の存続期間の延長登録が既に 認められていた場合、最初の承認に基づいて認められた存続期間について、新たな一部 変更承認で認められた範囲に効力が及ぶとするべき。」と考えている。 」(Type2) 「・もし、延長された特許権の効力が及ぶ範囲が明確であるならば、 「③最初の承認に基 づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認められており、一部変更承認に係る医 - 364 - 薬品が、当該延長された特許権の効力が及ぶ範囲に属するのであれば、認めるべきでな い」も妥当な選択肢であり得るが、これが不明確である現状においては特許権者の権利 保護の観点から「④最初の承認に基づいて同じ特許権の存続期間の延長登録が既に認め られていたか否かにかかわらず、認めるべき」が妥当。特許権の効力の及ぶ範囲が不明 確であるとは、効力が争われたケースがないからはっきりしていないということ。結果 として、効力がどこまで及んでいるかわからないままやっている現状となっている。高 裁判決で傍論が書かれたためなおさら効力範囲が曖昧になっている。 製品開発については、延長されることが前提で議論される。有効成分については延長さ れるものとして、他社が入ってこないものとしてビジネスを組んでいるので不明確な現 状は問題となっている。 ・高裁判決に応じて、効力の狭くなったようにみえる部分についてはジェネリックが入 ってくることもケースによってはあり得ると考えている。 」(Type2) 「・延長登録の要件となる処分を受けることが必要であった「特許発明の実施」の範囲 と、延長された場合の特許権の効力の範囲とは、一致していると考えるのが合理的であ るので(「特許権の存続期間の延長」の審査基準改訂案に対する御意見の概要及び回答(平 成 23 年 12 月 28 日特許庁調整課審査基準室)の No.11)、最初の承認に基づく延長登録 の特許権の効力範囲に後の一部変更承認変更に係る医薬品が含まれているのであれば、 後の一部変更承認は登録要件を満たさないと考えるべきであるから。また、現行制度と 同じであり業界への影響が無いから。」(Type2) ・一部変更承認に基づいて延長登録を認めているのは 3 極の中では日本のみであり、国 際ハーモの観点から望ましくないと考える。国際ハーモすると国際的な戦略が容易にな る。ジェネリックメーカーにとって戦略が簡単になるのは非常に大きなメリットである。 欧米の戦略と日本の戦略を立てる際に参考にできるということ。 (戦略の話で管理とは違うのか?)また別です。こまごまとした延長毎に虫食い申請、効 能の一部削除とかをしているとなかなか市場に参入しにくいという経済的なデメリット が発生する。そういう意味でも一回にしてもらえるとありがたいと思っている。 (開発しているあいだに法的な状態が事時刻的と変わる不都合さもあるのか?)もちろん ある。承認間際になって変わっていて問題に思うこともある。 (再審査期間も終わっていて申請をしていてそういう状況のなかで、特許切れを待って いたのに、いつのまにか変わっていたということか?)糖尿病とかでよくあるが、最初 は併用薬を指定しての延長登録だったが、のちのち全部そういう併用薬の縛りがなくな ったような包括的な延長登録をされることがあってそういう場合は対応に苦慮すること がある。糖尿病の場合は段階を追って治療されていくらしく、最初は食事療法だけ、運 動療法だけとか、当初の承認はこのような患者さんに限って投与しなさいという形で承 - 365 - 認されているが、だんだん併用薬が追加承認になっていき、最終的には全ての縛りがな くなったような形できれいに地ならしがされたような効能効果に対して延長登録がされ る場合がある。 (厚労省の承認としては、症例を特定する効能効果とか用途はどういうように書いてあ るのか?2型糖尿病全部とか?)2型糖尿病というような形で書いてあり、そうすると ジェネリックメーカーは困る。 (経済的なダメージがあるのか?)申請までにかかる費用というのはそれほどでも。非常 にといえば非常になんですが、一つのジェネリックの特徴は開発経費が先発に比べれば 小さいということもある。それといろいろな商品を開発しているということを考えると、 一品の開発コストそんなに高いわけではないが、規模としては相対的に大きい。それが 止まるということは営業戦略、経営的にはデメリットがある。予定された時期に承認さ れるということで予算を考えているのでそれがなくなるということはそれだけ減るとい うことです。 (そういうことはよくおこるのか?)ときどきある。 (米国においては事情が変わってくるのか?)一回の承認の時に延長されるだけなので。 効能も先発と同じものが取れるし。第二用途は別ですが。抗菌薬などもそう。抗菌薬の 方がわかりやすかったかもしれない。日本では対象菌種と対象疾病がどんどん追加され て25年間満了したというようなこともあった。クラビットのケースでは腸チフスか何 か延長されて、トータルとして全体の承認は下さないと厚労省に言われて大変だったこ ともある。コレラとかペストとか炭疽とか日本では発症例がでないようなものでも。 (特殊な抗菌剤のころは虫食いが認められていなかったということでは?)そのころは 虫食いが認められなかったのでまるまる認められなかったこともあり得た。 (開発に続く上市のタイミングを決めていたにもかかわらず、その後に法的安定性が見 えなくなるような仕組みになっていることが延長制度の問題であると?)問題の一つと考 えている。 」 (Type3) 「〔選択肢③の回答の理由について〕 ・効力範囲が広く解釈されることが前提ではあるが、同じ特許権の効力範囲内に含まれ るのであれば、一回目の処分のみに延長登録を認めることで十分ではないかと考える。 ただ一部変更といっても様々であり、一部変更によっては、先行処分における特許権の 範囲外となっている場合もあるため、その場合は延長登録が認められてもよいと考える。 ・ジェネリック側としても、一部変更承認の度に延長登録出願がなされ、またそれによ って延長期間もそれぞれ異なってくるとなると、複雑で分かりづらい。 ・(知財高裁大合議判決に関し、)一部の用法・用量に特許権が存続していた場合に虫食 い申請がなされ、それが認められると、先発品と後発品の使い分けにおいて、医療の現 場サイドが困る面もあるのではないか。 - 366 - ・実際に MR から医者に特許上使用できる用法・用量について説明したとしても、それ が全て行きわたっているかという問題がある。ジェネリック側からすると、いくら努力 したとしても、使用するのは医者であるため、それが係争につながるのが恐い。」 (Type2) (農薬) 「・農薬の場合、農薬の変更の登録によって、特許法第 68 条の 2 でいうところの異な る用途の登録が認められたのであれば、存続期間が延長された場合の特許権の効力が及 ぶ範囲も異なるものであるから、各々が独立して延長登録が認められることが好ましい と考える。 」 (Type5) (再生医療) 「〔選択肢④と回答した理由について〕 ・薬事法上の話と特許法上の話を完全に一致させることは難しいと考える。その意味で トラブルを起こさないためにも薬事承認されたものは全て延長登録を認めるべきと考え る。 ・一部変更承認であったとしても、手間がかかるものであるため、臨床データが必要と なるものに関しては、その見返りとして、(同じ特許権であっても、 )延長登録を認めて ほしい。 ・再生医療等製品も、当初承認されたものと異なる形態であれば、臨床データが必要と なる。個人的には、その都度、延長登録をとっていきたい立場である。 ・特殊な技術分野であり、その基本的な特許はほとんど抑えてしまっているため、ポー トフォリオは分かり易い状態となっている。 ・後発メーカーが参入しようとする場合、再生医療等製品は物だけではない所もあるた め、大変な面があるのではないか。 」 ・ 【問6-6、18-6】 <一部変更承認・登録に基づく延長登録の判断において、先 行処分における実施が可能となった範囲> 「〔選択肢②の回答の理由について〕 ・効力の解釈を薬事法上まで考慮して行うのは、分かりづらいと考える。特許権を侵害 しているか否かは、発明特定事項で判断するので、その方が効力範囲がイメージしやす い。 ・(選択肢②とした場合、 )将来を想定してクレームを細分化して記載するのは可能な範 囲である。 - 367 - ・医薬品には再審査期間もあり、延長された特許期間よりも再審査期間の方が長い場合 もあるため、その意味でも延長登録制度をあまり細かく規定し、手当てを厚くしなくて もよいのではないか。実際に先発企業が延長登録出願が可能であるにもかかわらず、出 願をしていない場合もみられる。その場合は、再審査期間の方が長かったり、延長され た物質特許の存続期間が用途特許等のそれよりも長かったりするケースである。先発企 業も手間を考えているのではないか。 ・日本の再審査期間は、少なくとも低分子に関しては米国と比べても長く認められてお り、また特許の存続期間と再審査期間の満了日はそこまでズレも生じていないことから、 延長登録制度はプラスアルファの位置付けと考えられているのではないかと思わなくも ない。」(Type2) 「〔選択肢④(一つの承認につき、一つの特許が延長されるべき)との回答について〕 ・追加的な一部変更に関しては、同じ特許について認められるべきではない。 ・考え方として、A 化合物について B 効能・効果で最初の承認を得たときにカバーする 特許がなく延長登録をしなかったとしても、その後、A 化合物について C 効能・効果で 一部変更承認が認められた際に、C 効能・効果について特許があれば、その特許につい て延長登録は認められてもよいかと考える。仮にさらに A 化合物について D 効能・効果 について一部変更承認が得られ、C 効能・効果と別に D 効能・効果について特許が成立 しているのであれば、その特許にも延長登録を認めてもよいのではないかと考える。 ・ (物質特許があるが、製造承認の方が早くて延長登録の対象ではなかった場合、その後、 用法・用量の一部変更承認があったときに延長登録を認めるべきか否かについて、 )それ は認めるべきではない。特許を実施ができなかったことの救済をどう考えるのかという 点からすると、最初の承認事項を実施に含む特許が後で成立したからといって、その後 の一部変更承認が得た際にその特許の延長を認めべきとは考えない。 ・第 2 医薬用途も別途特許を取っていない限り延長すべきでない。 」 (Type3) 「〔選択肢①を選択した理由について〕 ・医薬品の承認を取得するためにどれだけの労力を費やしたかで考えるべきであり、そ の意味では特許発明の実施が最初かどうかではなく、承認事項が最初かどうかをみて欲 しい。 ・例えば、広い範囲でクレームされている物質特許があり、そこから構造が違う医薬品 をそれぞれ出した場合に、最初の処分に基づいてのみしか延長が認められないのはおか しな話である。クレーム範囲内に含まれるのであれば、改良された医薬品に対しても個 別に延長を認めるべきである。また最初の処分に基づいてクレーム範囲全体に権利範囲 が及ぶのもおかしいため、承認されたものを基本に考えるべきである。 ・(選択肢②のデメリットとして、 )クレームの記載や分割出願等のやり方で延長できる - 368 - か否かが決まることもあり、好ましくないと思われる。また海外からみても分かりづら いのではないか。」(Type1) 「・効力範囲が広がらないほうを選んだ」(Type3) 「・「その他」を選んだ理由は選択肢として適切なものがなかったから。「有効成分が先 行処分と同一の場合、後の処分に基づく特許権存続期間延長登録出願は不要とし、後の 処分時にその特許権について自動的に効力範囲が拡大される方が望ましい。 」と考えてい る。 ・欧米の制度を考えているので、有効成分と記載した。まずは有効成分について権利が 与えられるべきと考える。用途としては、日本で言えば効能効果に近いものが考えられ る。 ・ 「特許権の存続期間の新たな延長登録制度においても、同一の特許発明の技術的範囲に 含まれる先行処分が存在しても当該先行処分によって「特許発明の実施」が可能となっ た範囲に属しない後行処分に基づいて当該特許発明に係る特許権の延長登録を許容す る」という制度にデメリットがある。こういう制度に対するニーズがない。 ・仮に法改正しないでという話になれば、現行審査基準がよいという話なので有効成分 の物質特許については従来通りであるので、追加新剤型承認、製剤特許、パシーフの件 をどうするのかという話は残るが今の従来通りの運用ということになる。」(Type2) 「・処分により実施の禁止が解除された範囲と延長された特許権の効力範囲を原則一致 させるのがもっとも論理的整合性が高い制度設計となるが、特許権者の権利の充分な保 護の観点からは、延長された特許権の効力範囲は、特許発明の技術的範囲に属する限り 同一の有効成分、効能・効果の全域に及ぶとするのが望ましい。 「特許権の存続期間の新 たな延長登録制度」においては、疑義がないよう、これを明文化するのが望ましい。 ・薬事法上の一定の承認事項の点で認めるほうが良い。弊社の回答は一貫して平成21 年の知財高裁判決以前の審査基準で構わないと考えているのでそれに基づいて書いてい る。」(Type2) 「・延長登録の要件となる処分を受けることが必要であった「特許発明の実施」の範囲 と、延長された場合の特許権の効力の範囲とは、一致していると考えるのが合理的であ り、その他の制度は想定しがたい。そうすると、上記①の場合、先行処分に基づく延長 登録による特許権の効力範囲は医薬品医療機器等法の審査事項(成分、分量、構造、用 法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効性及び安全性)の うちのある一定の事項間で違いがあれば効力が及ばないこととなる。たとえば成分であ って有効成分以外の成分(賦形剤など)が異なるものについては先発医薬品と異なる成 - 369 - 分であっても後発医薬品として承認されているという実態があるが、そのような後発医 薬品に延長された特許権の権利範囲が及ばないこととなり、実質的に特許独占期間の回 復がなされていないことになり、延長制度の趣旨に反するから。また、現行制度と同じ であり業界への影響が無いから。現行審査基準が良いだろうと思っている。」 (Type2) 「・問6-6の前提であれば、先行医薬品が延長登録出願に係る特許権の特許発明の技 術的範囲に属しないときは、延長登録を認めるべきという考えもある。これが認められ るなら「②特許発明の内容(発明特定事項)を考慮し、先行処分に係る医薬品の承認事 項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項と、後行処分に係る医薬品の承認事項 のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項との間に違いがあれば、延長登録を認め る(すなわち、先行処分によって特許発明の実施が可能となった範囲は、先行処分に係 る医薬品の承認事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する事項によって画される)」 の場合でも良い。」(Type1) (農薬) 「・農薬の場合、①農薬登録票に記載される程度の事項によって延長登録出願の審査が 行われなければ、出願人および第三者のそれぞれの衡平を保てないと考える。出願審査 の過程で、農薬登録票の記載事項に加えて、更なる情報の提出が出願人に求められる事 態が生じれば、第三者による閲覧を制限しない限り、企業秘密の流出を畏れて、審査継 続を断念する事態が生じることが懸念される。また、閲覧を制限した場合、第三者が延 長された特許権の効力が及ぶ範囲を確認できない事態を招きうる。 」 (Type5) (再生医療) 「〔選択肢①と回答した理由について〕 ・臨床試験を必要とした製品である以上、その承認範囲内については少なくとも延長登 録を認めてほしい(可能であれば、それ以上の範囲で認めてほしい) 。」 - 370 - ・【問7-1、19-1、7-2、19-2】 <延長された特許権の効力> 「(現行法と同様と御回答頂いていますが、効力はどのように考えているのか?)その下 に書いてあるように、ものは有効成分のみ、用途は効能効果にするということ。そうい う形が一番はっきりしていた。平成21年高裁判決以前の審査基準の考え方がわかりや すかった。大合議判決が確定すればそれはそれで対応できるが今どうなるかわからない 状態。昔の方がわかりやすかったという点で良かったというのもある。 (有効成分で特定された延長の効力範囲が広すぎるとすると、ちょっとなにかジェネリ ックを出すときに同じ先発品を対象として出すときでも特許権が邪魔をして入れない状 況になりえるのではないか?)基本的には剤型違いの開発になるので、剤形新薬みたいな ことを想定されていると思うが、物質の特許が基本的に切れていれば製剤特許さえクリ アできれば延長は関係ないのであまり特許権が縛りになることは少ない。剤形特許は有 効成分だけで特許は成立しないので他の添加剤とかいろいろなファクタで規定されるの で回避が可能となる。物質特許はどうしようもない。 ・物質特許とか用途特許とかの延長はもちろんかと思うが、製剤特許とかにまでなると ちょっと順序付けしても良いかと思う。製剤特許については厚労省の承認条件にもない ので、ジェネリックメーカーにしてみれば用途や物質に比べると何とかしようという気 持ちがわいてくる。 (物質特許で有効成分で限定して考えてあまり実害はないのか?)ない。昔の審査基準 がそれなりによかった。わかりやすかったし。 (昔の制度で行くと延長の権利範囲がひろく解釈されそうだが、大合議判決に従って権 利範囲が品目で制限されてくるとジェネリックとしては有利になるのか?)なる。ちょっ と含量変えれば、剤形変えればということでできるようになる。ただ、今のところその 通りですよという保証がないのが問題。効力についての判例が一例もない。」 (Type3) 「・現行法における「物」および「用途」の意味が極めて曖昧で、判決例の欠如とあい まって権利行使の確実性に不透明さが増すこととなっている。医薬品に関する特許権の みについて延長された特許権の効力範囲を別途規定することが全ての技術分野に亘る汎 用性を旨とする我が国の特許法の性質と相容れないことは承知しているが、特例法の制 定等の立法技術を駆使して、上述の効力範囲を疑義のないような形で法制化して頂きた い。 ・再審査期間を延ばすというような薬事法での手当は難しいと思う。いま医薬品産業は 成長産業の一つといわれているので、特例法で、医薬品産業促進法のような形で医薬品 の特許期間延長制度について新たな法律を作ることも選択肢の一つである。 ・今一番問題とされているのは、高裁判決の傍論において 68 条の 2 でいう「処分の対 象となった物」が有効成分以外の成分も含むとされている部分だと思うが、仮に侵害訴 - 371 - 訟で後発側が後発品は有効成分以外の成分が先発品と異なるため特許非侵害であると主 張した場合には、先発側としては、たとえ有効性部分以外の成分が違っても薬効は変わ らず、それは傍論でいうところの「均等物や実質的に同一と評価される物」の範囲内な ので効力範囲内に含まれると主張せざるを得ない。今後の裁判では傍論でいう「均等物 や実質的に同一と評価される物」の解釈が大きな争点になると思う。 」(Type2) 「〔選択肢①を回答した理由について〕 ・(現行法と同様とした場合、)処分の対象となった物は有効成分、用途は効能・効果と すべきと考える。」(Type2) 「・おそらく裁判所では、全く同一の実施対応でなければ権利主張できないとの話には ならないのではないか。実際は特許の技術的範囲と実施品を重ねて判断されると思われ る。例えば、A 化合物(フリーの塩)を含む物質特許が延長されているとして、その特 許期間中に他社が A 化合物の塩酸塩を、B 効能・効果で実施した場合、それが侵害か否 かの問題は現実には発生するのではないか。 ・ (生物学的同等性をもって基本的に延長された特許の効力範囲に入るか否かの議論は成 立するかについて、 )延長された特許の効力が後発医薬品のどこまで及ぶかがについて争 いになった事例が過去にないため分からないが、そもそもの考え方として物質特許が延 長されている期間内に後発医薬品が参入することを認める制度設計が本当にいいのかは 疑問である。ただ今回の大合議判決で解釈した場合、後発医薬品が生物学的に同等であ るものだとしても、権利範囲外であることは一応は主張できると思われる。また例えば、 後発医薬品が先発医薬品と添加剤を変えたことによって、技術的なメリットがあるので あれば、別発明として、より権利範囲外であるとの主張はしやすいと思われる。 ・ただし、新薬を創製して承認を得られるまでに多大な労力をかけているのであるから、 投資の回収をできる制度設計にすべきとは思う。 〔問 7-2 で選択肢②、問 7-2(2)「用途」で選択肢②を選んだ理由について〕 ・大合議判決の解釈としての回答である。大合議判決の解釈で本当にいいのかについて は問題意識はある。 ・例えば 1 日 2 回の用法・用量のところ、1 日 1 回に変えた場合に権利主張できないと なるのはおかしいと考える。」(Type3) 〔選択肢②その他(延長登録の基礎となった処分(承認)に依拠する医薬品(後発医薬 品など)〕 ・先発品メーカーの開発努力にタダ乗りする形で、後発品の承認が得られる制度にする ことはありえない。先発品の添加物を少し変えただけのものは、臨床開発の必要がなく、 先発品の開発データを実質的に利用して承認申請もできるため、それに効力が及ばない - 372 - とするのはおかしいのではないか。必要条件として、先発品の開発データに依拠したも のにまで効力が及ぶような制度にしてもらわないと困る。 」(Type1) 「・有効成分が先行処分と同一の場合、後の処分に基づく特許権存続期間延長登録出願 は不要とし、後の処分時にその特許権について、後の処分に係る用途に関して自動的に 効力範囲が拡大される方が望ましい」(Type2) 「・仮に、 「用途」にかかわらず「処分の対象となった物」すべてに効力が及ぶ場合を考 えると、最初の承認に基づく延長登録後は全ての効能・効果について延長されたことに なる。医薬品の開発では、その困難性から、途中で一部の限られた患者についての効能 効果についてのみ先に承認を取得し、その後に想定した効能・効果について承認を取得 することがままある。効力を特定する範囲に用途(効能・効果)を加え、最初の承認に 基づく延長の効力範囲を限定しつつ効能・効果の拡大時には延長登録の可能性を残すこ とで、アンメットメディカルニーズに対応した効能・効果の拡大をはかることができる。 また、現行制度と同じであり業界への影響が無いから。今の審査基準がうまくワークし ている。」 (Type2) 「・先発医薬品の調査・資料に基づいて承認される医薬品については、少なくとも効力 が及ぶという制度も検討の余地がある。ここで、先発医薬品の調査・資料に基づいて、 承認される医薬品とはジェネリック医薬品を指している。これは現行法とは離れるが、 米国法の規定で、建てつけがうまくできている。米国では、リファーする行為が侵害と 認められ、リファーする行為を封じている。ただ、米国法では独自開発してくる人を抑 止することができない。日本法の場合は米国のようには現行法では解釈できないと思う。 我々が失った特許期間は回復して欲しいというのが本音。 」(Type1) (農薬) 「・農薬の場合、効力範囲が明確ならよい。 」 (Type5) 「〔選択肢②を回答した理由について〕 ・クレーム範囲全体に延長登録を認めるべきと考える。 ・欧州は延長登録出願の手続きが日本と比べて簡単であり、延長登録の効力範囲も広い。」 (Type4) (再生医療) 「〔選択肢②と回答した理由について〕 - 373 - ・正直には、なるべく効力範囲は広い方がよいが、過度にする必要はない。 ・再生医療等製品も「用量」について、サイズや数量など、薬事上の制限がかかる可能 性がある。 ・再生医療等製品の特徴として、特定の限られた技術分野であるため、誰が何をやって いるか把握しやすい。またノウハウ部分の要素が多い。 」 ・【問8-1、20-1】 <延長登録の要件と延長された特許権の効力の関係> 「(8-1について、一部一致とはどのようなことか?)高裁の判決でも医薬のいろいろ な承認事項が列記されていたが、医薬の承認というのは全て、有効性成分、効能効果、 用法用量、分量、あそこに書いてあるものすべての合わせ技の承認。それだけに限定さ れるとリスキーだし、実質延長の効果が無力化される、そんなに狭い範囲になると延長 制度がいらないということになる、そういうことは裁判所はないと思うが、我々はクレ ームの事項と承認事項を比べてかぶさっているところは点みたいな狭い範囲、それは致 し方ない、有効成分、物質特許というオールマイティかなりひろい何百万という化合物 を本来保護している特許であっても医薬の延長期間においては一化合物だけが伸びたと、 それと照らした時に有効成分と物質特許がたまたま重なり合ったのが、有効成分のパー ツだから点だけどあとはなんでもよい。製剤特許でなにか添加剤、ステアリン酸マグネ シウムとそれの上位概念がクレームされた滑沢剤があったとしても、滑沢剤全部ではな く、ステアリン酸マグネシウムだけ、均等範囲を含めるか含めないか。クレームされた 事項に関しては各々点に制限されることは致し方ないと思うが、そうでない限りは各々 オールマイティに見て頂きたい。用途はつねに限定されているか。用途の解釈も課題が あるが。用途は効能効果に限られずというのは用法用量を読み込むという考え方もある。 (登録要件と効力が一致しているものはどうか?)登録要件は先日の大合議判決だけ見 ると決しておかしくないと思うが、効力と裏腹と考えると即座に反対という姿勢にな る。」(Type1) 「・延長登録の要件となる処分を受けることが必要であった「特許発明の実施」の範囲 と、延長された場合の特許権の効力の範囲とは、一致していると考えるのが合理的であ るから(「特許権の存続期間の延長」の審査基準改訂案に対する御意見の概要及び回答(平 成 23 年 12 月 28 日特許庁調整課審査基準室)の No.11)。また、現行制度と同じであり 業界への影響が無いから。」(Type2) 「(「均等論の範囲での効力範囲の拡張程度」を選ばれており、理由として、有効成分の 含量追加、剤形の軽微な変更と書かれていますがこれはどういうことか?)今は含量と - 374 - 剤型ごとに一つ一つ対応する延長出願がされていたが、かっては代表剤型一個と有効成 分だけで延長出願されていたからそういう古い案件の手当ては認めるべきという趣旨。 (均等の範囲とはその辺を考えているのか?)その通り。含量とかささいな剤型の変更、 錠剤を OD 錠かしましたとかカプセルを錠剤としましたとか。ジェネリック医薬品とし て認められる範囲とか。今の大合議判決を厳密に解釈すると添加剤が違えばそれで適用 が受けられないと読めるが、そこまではさすがに先発企業がちょっと気の毒かと思う。 普通はあり得ないと思う。 (ジェネリック業界としてはどうなんでしょうか?これは正しいという意見もあるの か?)いると思うが、一般的に考えればあり得ないと思う。特許として考えるとものす ごく変な方向に行くと思う。延長制度が崩壊してしまう。先発メーカーの研究意欲を失 わせるようなことはまずいと思う。権利は権利として認めるべき。正当な権利は弊社と しても重々尊重している。」 「・例えば、乳糖をマルトースに代えたなどといったところまでは完全に一致させる必 要はない。 」 (Type2) 「〔選択肢①を回答した理由について〕 ・大合議判決の解釈としての回答である。再延長を認めるとした場合は、厳密性をもっ て狭くした方がよいと考える。」 (Type3) 「〔選択肢③の理由について〕 ・(現在の状況において、 )完全に一致させてしまうのは後発品に効力が及ばないため問 題である。 ・承認された医薬品そのものの点の範囲にしか効力がないとすると、後発品企業が簡単 に参入できてしまうため、何のための延長制度がよくわからなくなるし、実態上何も保 護されていないものとなる。制度趣旨にそぐわない。 ・海外メーカーからも分かり易い制度にすべきであり、海外メーカー参入の阻害になる 可能性がある。」(Type1) 「・会社によっては「効力と登録要件は別」という主張をして何件も延長を認めて欲し いが、効力は皆広いという都合が良いことを言っている企業もあるが、現実的にはそれ は認められないと思われるので、それだったら1個の延長で効力範囲を広くして、効力 と登録要件が一致しているということが現実的ではないかと思う。 ・効力の広がる範囲としては、エステル(特許化合物のエステル誘導体)までは考えて いない。例えば、延長登録の対象となる先発医薬品がカリウム塩で後発医薬品がカルシ ウム塩等の塩違いがあった時に、延長後の効力範囲に後発医薬品が入らないと困るので - 375 - 例として挙げた。 (ジェネリック医薬品と認められる範囲ではどうか?)有効成分の塩を変えるだけで特許 を回避されるのでは問題があり、物質特許で抑えられる範囲で広げて後発医薬品として 許可される範囲に効力が及ばないと実質的に延長をする意味がない。 ・韓国ではエステル違いで承認されたりしている。日本の企業で苦しんだケースもある ようだ。日本では、先発医薬品がカルボン酸で、後発医薬品がそのエステル誘導体であ る場合、後発品として承認されない。」(Type2) 「・処分により実施の禁止が解除される範囲(「解除範囲」)よりも延長された特許権の 効力の及ぶ範囲(「効力範囲」)が狭いことは、制度趣旨から明らかに不合理である。解 除範囲よりも効力範囲が均等論等による範囲を超えて明らかに広い場合には、同じ効力 範囲で複数回の延長登録が認められるケースが生じ得るが、第三者の権利保護の観点か らはこれは望ましくない。 ・解除範囲よりも効力範囲が狭いとは、 「発明特定事項に該当する事項」で実施の禁止が 解除されたと擬制される範囲が決まって、効力範囲が薬品の品目に限られる場合を考え ている。 ・解除範囲よりも効力範囲が明らかに広い場合とは、均等論の範囲を超えて明らかに広 い場合で、例えば、複数回の延長承認を認める場合で、初回承認で延長された効能だけ でなく、すべての効能に効力が及ぶとした場合には、初回承認で延長された範囲と後行 処分で延長された効力範囲が明らかに重なってくる、そうした場合、後行処分での延長 期間が長い場合は第三者の立場からいえば不測の事態が生じる場合がある。そうなると、 第三者の不利益が大きいと思う。平成21年知財高裁の事件の際に特許庁が述べていた、 短冊形の効能毎に期間が延びるモデルだと重なる範囲がないのでわかりやすいので第三 者からもいつ切れるか予測しやすいと思う。 」 (Type2) (農薬) 「・農薬の場合、効力の関係については、基本的には一致することが好ましいと考える。」 (Type5) (再生医療) なし - 376 - ③延長登録に関する実務において問題になったことがあれば可能な範囲で具体的に教え てください。 ・延長登録の要件が問題になったことがありますか、例えば、登録要件を満たさないと 考えて延長登録出願を断念した、あるいは延長登録出願が拒絶された等。 ・延長された特許権の効力が問題になったことがありますか、例えば、後発メーカーを 排除できなかった、訴訟を断念した、あるいはジェネリック医薬品の開発・販売を中止 した等。 ・外国出願している企業向け:海外の制度と比較した場合の実務上の問題点(制度を含 んでも構わない)に関する海外ユーザの意見などご存知でしたら教えてください。 「・現行の審査基準の基では問題は生じていない。 効力について問題になったことは ない。(海外の制度と比較すると日本の制度は?)日本の制度は保護が手厚い。複数回延 長、一承認で複数の延長ができるので最大限利用できるように特許を出願している。 (海外ユーザからハーモナイゼーションの希望などはあるか?)ない。 (海外関係者に対 して制度情報の提供はしているのか?)している。」(Type2) 「・登録要件においては出願をチャレンジしているので出願を断念するということはあ まりない。 ・効力範囲について危惧はしているが特に物質特許について効力が狭くなるという懸念 は今のところ生じていない。それ以外のセカンダリパテント、製剤・製法などは、効力 以前に本来特許自体を回避する形で後発は参入してくる。物質特許は延長を含めてその 特許権の存続期間中は後発医薬品の算入を厚労省は認めない。逆に言うと効力は現行法 上はわからないということで終わってしまいそう。 (海外制度と日本の制度を比較したらどうか?)国際ハーモを考えると 1 承認 1 特許が 良いのではないか。今の発明特定事項で考えていくこともわかりにくいようだ。最近は 結構特許の審査基準や判決も英語で出回っているが、それでもわかりにくい (複数回延長とか、複数特許延長とか、延長登録の期間をとか(徒過)して延長を取れ なかったようなことはないのか?)そういった事例は今のところない。2,3回目の追加 効能とかの承認に対する延長登録出願ということになれば期間を渡過(徒過)するリスク はあると思う。 (各国との比較で言うと日本は複数回延長ができるというのがあって、日本の方が手厚 く保護されていると思うか?)手厚いということもあるし、期間も長いことがある。日本 の場合、承認に時間がかかるということもあるが、日本だけ権利がのこっているという 品目もある。 」(Type1) 「・前述の後から適応症が増えてきたりして参入できなかった事例など。ドネぺジルの - 377 - 高度アルツハイマー効能が追加された時もひと騒動あった。効能追加によってドネペジ ル製剤の効能かステージの縛りが外れてまとまった、つまり軽度~中度アルツハイマー と高度アルツハイマーがまとまったが、同時に高度アルツハイマー効能について特許期 間延長登録が認められ、基本的にはジェネリックは先発と同じ効能にしないといけない のでそこで、当局と1,2年揉めた。効能が追加されるだけなら対応はできる。効能が 一つにまとめられるとやっかいになる。延長対象外の旧効能のところだけで承認頂戴と いう交渉が厚労省と必要となる。 (認められる可能性としては一応あるのか?)あるけれどもなかなか厚労省は認めない。 医療過誤防止という建前がある。 (実際に認められた例はあるのか?)実際にドネぺジルが経度~中等度の効能だけで発売 することができた。ただ、当初予定の発売時期よりも2年遅かった。 」(Type3) 「・延長登録出願の手続きにおいて、特に問題となった経験はない。 ・ (先発品の特許が、)物(有効成分)と用途(適応症)の観点で延長されている分には、 効力範囲について判断に迷った事例は今のところはない。製剤特許等の延長特許に関し ては、そのものを回避するといった対策をとっている。延長特許の効力の判断は今のと ころそれ程は問題となっていない。 ・ただし、延長特許の効力範囲とは別のところで判断に迷う場合もある。例えば、用法・ 用量の特許や一部の医療技術特許等、様々な特許が認められるようになってきているが、 効力範囲が狭い特許が乱立した場合に、ジェネリック品の製造販売行為が一部効力範囲 に該当するかもしれないといった点で迷う場合がある。 ・ある疾患の中の特定の患者群についてのみ承認が下り、その後、追加でその疾患全体 に承認が下りた場合に、最初の承認時に狭い範囲で延長となり、次の承認時に残り部分 が延長されることとなるが、同じ疾患に関するにもかかわらず、特許の存続期間の満了 期間がズレることとなり、虫食い申請が認められるのか迷うことがある。 ・バイオシミラーに関して、延長登録制度が特別に問題となることはない。通常のジェ ネリックと同じである。 ・新たにジェネリックを出そうとする場合、注目しなければならない特許はたくさんあ り、またそれぞれの特許について延長登録の有無を調べたり、再審査期間を調べたりす るなどの必要がある。それらを全部確認して承認申請可能な時期を検討することは相当 に複雑な作業であり、 (知財高裁大合議判決の内容にしたがって、)さらに複雑にしてし まうのは疑問である。 ・先発品の効力範囲が狭いからといっても、特許権が満了していない箇所が一部にある と、病院側でのジェネリックの使用が避けられる傾向にある。」(Type2) 「・延長された特許権の効力がどこまで及ぶかについては、パシーフ事件後に検討する - 378 - ようになった。後発医薬品の開発着手の時期について検討した事例はある。 ・日本の延長登録制度は、外国には分かりづらいと考える。効力範囲がどこまで及ぶの かは、特に紛争事例もないため、説明できない。」(Type3) 「・延長登録できるものの判断・基準が揺れ動いているため、十分な手当てが出来てい ない可能性がある。例えば、パシーフ事件の前までは、細かな変更承認についてまで延 長出願できていないし、また延長出願ができていたとしても拒絶査定等の段階で諦めて いた可能性がある。 ・審査基準が改正された後は、医薬品の承認事項と発明特定事項の対応の関係を証明す るのに手間がかかる問題がある。 」 (Type1) 「・登録要件について、従来は用量のみが違う承認に基づく延長登録出願は拒絶されて いた。拒絶されたものはそのまま放置されている。 ・効力について、複数回の延長を認める制度となると、最初の承認に基づいては5年延 長できるが、一般に、後の承認に基づいては延長期間が短くなる。バラバラに延長登録 されると後の承認による効力範囲についての延長期間が短くなってそこでジェネリック が入ってくると困る。やはり一回で幅広く5年取るのが好ましい。 ・今まで延長の特許権の効力に関する判決は一例もない。各企業が独自の解釈で効力範 囲を判断すると、無用な争いにもつながるので困る。 (外国制度と比較するとどうか?)米国だとハッチワックスマン法と期間延長が同時に入 っている。承認から4年で特許のチャレンジができる、それが導入されると特許権の法 的安定性が減少する。アメリカ並みの訴訟社会も問題と思う。 ・米国では延長される特許の対象が日本と異なるということがあるが、医薬品特許で考 えれば大きな違いはない。 ・韓国では海外臨床の期間が期間延長の対象として認められるかどうか、どちらかよく わかないという時代が続いていた。最近はわからないが少なくとも2,3年前には海外 臨床試験が認められたり認められなかったりした。」(Type2) 「・医薬品の場合はどれも重要なケースであるので、少しでも可能性があれば出願する というのが弊社の立場である。登録要件については用法用量の扱いが重要だと思う。弊 社は従来より複数の用量で承認を受けた場合は複数の用量で全部出願してきた。 (出願の時期的制限があるのでその都度、承認と対応する特許の対応関係をチェックし たりする負担はあるのか?)メリットに比べればそれほどの手間ではない。 (出願数の増加についてどう思うか?) 規格について、たとえば10mg錠と20mg 錠で別に承認が下りた場合、当社では両方で以前から延長登録出願を出願していたが他 のメーカーではそうしていない会社もあった。特許庁が延長された特許権の効力は同時 - 379 - に承認されたすべての製品に及ぶと説明していたので、一つの規格でしか延長登録して いない会社も結構あった。それが最近のいくつかの判決で効力範囲があやふやになって きたので、用法用量別に出願するようにした会社が出てきて出願数がふえているのはあ ると思う。 (今までなぜ訴訟があまり起きなかったのか?)今までは、厚労省が非常に強いパテント リンケージの制度を採用し、物質特許と用途特許が満了するまで後発品を一切承認しな いという方針を取っていたので物質特許とか用途特許とかについては裁判で争う必要が なかったというのが原因の一つだと思う。 (今後効力範囲が不明であると、パテントリンケージを判断する厚労省の判断も不明確 だからさらに心配だということもあるのか?)そういうことはあると思う。 (厚労省が物質と用途特許はみているということだが、それ以外の特許を延長すること の意義は弱くなったりしないのか。 )製剤特許などは広い権利範囲を取るのは難しい。製 剤特許は持っていても迂回されるケースがほとんどだが、自社製品と全く同じものが出 せないという意味で製剤特許は持っている意義があり、その特許期間延長にも意義があ る。 (欧米と日本の制度を比べるとどうか?)制度設計は欧米に比べればかなり違う制度。 違うけれども、欧米に合わせたほうが良いとは考えていない。外資の会社にとってはわ かりにくい面もあるかもしれないがそれに合わせて調和させる必要もない。日米以外に も延長の在る国が複数あり、それぞれ皆異なる制度設計であり、日本だけ他に合わせる 必要もない。 」(Type2) (農薬): 「・農薬の場合、特にない。」(Type5) 「・日本の延長登録出願の手続きは複雑である。欧州のように提出する書類が少なくな れば、マスクしてまで秘密情報を出す必要もなくなるのではないか。 ・農薬の試験は、季節や天候条件等で制限される場合もある。その影響で試験が行えな かったとしても延長の期間算定の対象にならない。また農薬登録を取得する過程におい て、化合物の名前を伏せた形での試験が行われるが、その試験は延長の期間算定の対象 にならない。この名前を伏せた形での試験も物によって 1~2 年程度要する。このよう な期間も参入してもらえると有難い。」(Type4) (再生医療) なし - 380 - ④判決や審査基準の改定が原因で延長登録出願戦略を変更したことがあれば具体的に教 えてください。 (変化として、出願件数を増やした、分割出願を行った、あるいは特許請 求の範囲の記載を変更した、どのような議論がなされたか等)【問10-1関連】 「・平成21年の知財高裁判決の後で、有効成分・効能効果同一のもので延長登録を行 ったことはある。その他のターニングポイントでは出願の機会がなかったので特に変化 はなかった。 (平成21年判決の当時の業界の状況は?)判決を支持している企業だけではなかった。 効力範囲に疑義が生じることを予想していた。パンドラの箱を開けてしまったという感 があった。 」 (Type2) 「・以前から出願にチャレンジしてきたこともあるのでこれらの前後で変化はなかった。 分割出願する、しないで登録できる、できないが変わるという現行制度の判断形式は不 思議な気がするが、別の特許権ということになれば妥当な考えということもできる。当 社では以前から分割もしていたので、この点についても変化はなかった。ただ、大合議 判決以降、より分割もしないといけないという意識は高まっている。あまりテクニック で変わるというのは良い気がしないが別の特許権といわれればしょうがない。譲渡も別 にできるし。分割は別のもの、一つのものだとクレームを 10 だけ譲渡とかはできない し。」 「・先発企業の延長出願が増えたのでそのチェックが大変面倒になった。チャンスは広 がったかもしれない。特許庁も最近の実務運用では剤型ごとに延長期間がバラバラにな ってきているのでそれは大合議に合った流れなのかと感じている。大合議判決後に特許 庁の運用が変わった。剤型ごとにばらばらな延長期間になった。 (剤型ごとに延長期間がバラバラになるというのは、効能効果での延長がされていれば 延長期間が一義的に決まっていたが、効能効果が同じでも剤型が違っているとバラバラ に延長期間が決まってくるということ?)たとえば、顆粒剤でも250mgが3年4か 月だったのが、500mgだと2年9ヶ月とかそういう事例も出てきた。効能効果も同 じ、剤形も同じ、含量が違うだけでも延長期間が違うものが最近では散見されるように なってきた。 」(Type1) 「・①の最初の高裁判決以降全部出すようにしたので出願件数が増えた。 ・今回の大合議判決に関しては現在様子を見ている。」 (Type2) - 381 - 「〔選択肢④を回答した理由について〕 ・(延長に関する判決や審査基準改訂の前後での変化はないが、)用法・用量の特許が認 められるように審査基準が変更になってからは、後にクレームアップできる記載を追加 したりするなどの対応を検討した。 ・(知財高裁大合議判決が支持された場合に、 )延長登録の出願数は増えていくだろうと 思われる。承認が得られる毎に延長登録出願を行っていくスタンスになるのではないか。 開発品に関する特許出願については、早期審査をかけるなど、早期の権利化を図ってい るが、延長登録出願が増えるとなると、さらに前倒しになる可能性がある。」 (Type2) 「・先発品の特許の監視のやり方は変えていない。ただし、アバスチンの大合議判決後、 例えば、用量の一変に基づく延長登録出願等を行っている企業も当然にあり、件数とし ての監視負担は必然的に増えるであろう。」 (Type3) 「・(知財高裁大合議判決の状態のままとすると、)今後は延長出願は増えるであろう。 ・大合議判決が確定するまで、他社も含めて延長出願の件数が増えるであろうし、特許 庁での滞留件数も増えるであろうから、不安定な状況は続くと思われる。 ・どこまで成果があがっているかは分からないが、承認事項との対応関係の証明を容易 にするなどのために、クレーム記載方法も検討するようになった。 」 (Type1) (農薬) 「・農薬の場合、特にない。」(Type5) 「〔選択肢⑤「変化がなかった」との回答について〕 ・細かく延長登録出願をするようになったということもない。 ・(他社の延長登録の効力が障害となるケースがあるか否かに対して、 )現実的には、延 長登録まで既に進んでいる化合物の周辺は探索しつくされている。開発で出てきたもの の周辺でより良いものがないかを探すケースの方が多いのではないか。延長されるのは、 化合物、用途、用量まで特定された、非常に限定された権利範囲なので、特許的には障 害にならない。 ・延長登録出願の公報で他社の動向のチェックはしていない。公開公報等で他社の動向 をみている。新しい化合物としてどんなものを注目して特許出願しているか、どのよう なものが特許になったのかまでは追いかけるが、開発されて上市された化合物まではほ とんど追いかけていない。一方、ジェネリック企業は確認するであろう。 ・特許が切れた後、ジェネリックがすぐに参入してくるケースは国内ではない(農薬登 録があり、また農薬の場合は流通経路等の問題もある。) 。一方、中国や東南アジアでは、 ジェネリックがすぐに入ってくるケースがある。 - 382 - ・海外では、経路は不明であるが純正品でないものが商標を似せて出回っている場合も ある。 ・農薬のマーケットは、日本ではトータルで減少しているが、世界的に見るとまだ需要 は伸びる状況である。 」 (Type4) (再生医療) なし ⑤制度改正についてお考えを教えてください。 ・抜本的な改正が必要だと思う場合は、改正の時期や方法(法改正、審査基準改定、ガ イドライン作成など)を教えてください。 ・また、どのように改正するのが望ましいと思いますか。例えば、平成 26 年大合議判 決型、現行審査基準型、平成 21 年知財高裁判決以前型、欧米の 1 特許 1 延長型など、 わかる範囲で登録要件や効力範囲、先に延長された権利との関係はどう整理するのか、 なども教えてください。 「・すぐに改正してもらっても構わない。 ・以前の出願に関しては出願時の法を適用するという形がよく、特に移行期間を設ける 必要はない。 ・製薬協としての方針は決まっていないが、大合議判決には不安定性があるということ では一致している。現在、細かく場合分けをして検討を進めている。 ・法改正する際には現行法で延長が認められた特許の効力をどう解釈するかも重要。後 から狭いと言われても困る。 ・最高裁判決で現行法の法律では適応できない状況になっているということを一言言っ てもらったら法改正につながるかもしれない。 ・最初の承認に関しては、1 特許に限り 1 回の延長を認めるというのが当社の考え方。 一つの特許を選んでその効力を広くとるような制度、例えば、欧州のように追加適応症 とか、後の承認がカバーできるような制度の方が、細切れの延長がたくさんできるよう な制度よりも良い。ビジネスとしても、最初に 1 特許 1 延長で広い効力のほうが複数特 許複数延長で各特許が狭い効力である場合に比べて製品が保護される。 ・医薬品に関しては、物質特許が絶対的な特許権である。物質特許ですべての製剤をカ バーできればよい。現在は1の承認で沢山の特許を延長できるが一回の延長登録出願の 効力が狭くなり、物質特許ですべての製品を保護できなくなるという話になってくると そちらのほうが問題になってくる。複数特許の延長ができるがその各々の効力範囲が狭 い場合と、1特許の延長しかできないがその効力範囲が広い場合のどちらがいいかとい - 383 - う話になると、物質特許の延長をきちんとしたほうが良いというスタンス。 ・製剤で独占できることをみこんでビジネスを見込んでいる企業はないと思う。普通は 物質特許の満了日で計算して、あと何年という形で計画している。多くの企業は、製剤 特許とかセカンドパテントで市場を独占できると思っていないと思うので一個の物質特 許で広い効力範囲に変えても影響はないと思う。 ・現行法を作った時は製剤特許の問題もあったが、当時は物質特許をとにかく延長した いという要望があってあまり issue として入れたくないという事情があった。 ・実利を取って物質特許だけを延長できるようにしようというのが産業界の意見だった。 ・基本的には創設当初の運用が一番安定していた。 ・期間については5年より伸びたほうが良いが実態と合わせると5年程度で妥当ではな いかというところ。米国のように臨床期間が 1/2 というのもメリットもない、米国のよ うに承認から14年という足切を入れる意味はないと考えている。日本の制度でも欧州 の制度でも5年取れていれば問題ない。 ・日本の制度を検討するにあたりとりあえず欧米型を考慮に入れればよいと思う。」 (Type2) 「・現状は、効力範囲の判断が揺らいでいるので法改正を望んでいる。効力範囲が不明 確というのが現状の最大の問題点である。弊社としては、平成21年判決以前の審査基 準によるプラクティスを支持している。全てを掬い取ろうとするとどうしても細かいわ かりづらい制度にならざるを得ない。効力も細切れにならざるを得ない。有効成分と効 能・効果で区切るという制度は、欧米もそういうプラクティスを採用しているし、先発 品の権利を保護するという点ではリーズナブルな切り口と考えている。DDS のケースの ように優れた製剤で一個一個特許を取ったようなケースで、初めて当時のプラクティス の問題が明らかになった。そういうケースだけ最高裁で判決されたような手当をすれば 良いのではないか。 ・改正の時期については最高裁の判断を待つ必要はないと思うが、特許庁が上告を行っ ており、即時の法改正を支持しないのであればすぐに改正することは難しいと思う。 ・適用時期についてはいろんなパターンがあるが施行日以降の特許出願とするのはあま りにも限定過ぎると思う。施行日以降の特許登録や延長出願、承認なりにするのが適切 だと思う。 ・延長の回数については1回にするか複数にするかはどっちが得かはさまざまなケース を詳細に分析しないとわからない。詳細な分析で 1 回でも十分に補てんできるとなれば 物質特許についてはそれでも構わない。但し、初回承認の時には製剤特許とか他の特許 が成立していないことがあり、そうすると侵食期間がないことになって延長が認められ ないので、物質特許以外の特許については後行処分で延長できる機会を与える必要があ るかもしれない。日本の立法の問題だと思うのだが、医薬品についてのみ延長された特 - 384 - 許権の効力をどこまで個別的に規定できるかというと、特許法の改正で手当てするのは 難しいと思う。68条の2には、効力の及ばない範囲は書いてあるが、及ぶ範囲につい ては明確に書いていない。複数の承認に効力が及ぶという表現を条文の中に書き込める とは思えない。 現行法の条文の中で「物」と書いているところが困る。もうすこし確定的に解釈できる ように書いてもらわないと判断ができない。高裁の傍論が入ってくるともっと困るが、 「物」だと毎々疑義が生じるのが必然だと思う。 「物」のところを医薬品特許については 明確に有効成分と書くとか、特許法に盛り込むことはできないと思われるので、特例法 や政令でそこを明確にして頂きたい。 (「物」っていうのは68条の2の解釈においてのものと禁止範囲の解釈の先行処分との 同一性を見るものの二つがあるが、有効成分と限定してしまうと68条の2では製薬企 業にとっては広く、ちょっと剤型が変わっても、例えば平成21年判決のケースのよう な話で全然違う bioavailability もっているものでも排除できてしまう、そういうところ まで意図しているのか?)そこは難しいところで、画期的な後発技術までカバーしてしま うのは独占に過ぎるのではないかという意見も尤もだが、制度設計にそれをどう盛り込 むかというと難しい。新しい有効成分を見つけるのが先発企業の最大のイノベーション なのでその権利を先発企業に与えても良いのではないかというのが尤もだと思う。 (平成 21 年以前のプラクティスに戻ったとしたらジェネリックも受け入れると思う か?)感触としては反対するのではないか、最近の知財高裁の傍論というのは延長の効 力を狭く解釈する余地を残すものなので歓迎しているのではないか? 元の制度に戻す のはジェネリックとしては不利なのではないかと思う。 」 (Type2) 「・基本的には、今の審査基準のシステムが良くできているので維持して欲しい。改正 が必要であれば時期は最高裁の判断が出てすぐに改正してもらいたい。想定される法改 正のプロセスは、最高裁判決が出て、審査基準を変えて、問題が出てきて初めて法改正 を検討するようになる。そうするとどこかの会社が犠牲になることになる。それは好ま しくないので最高裁判決が出てからすぐに法改正が望ましい。最高裁が出て大合議に合 わせるだけなら審査基準を変えるだけで済むのかもしれないが、それは好ましくない。 」 (Type2) 「・(制度改正についての)時期については、遠くない将来の方がよいと思っているが、 効力範囲のこともあるため、審査基準の改訂だけでは難しく、仮に法律改正になった場 合には、どのようなきっかけで行うかということもあるため、近々に行うことにはなら ないのではないか。 ・ (現行法の解釈を)明確化して欲しいと思っているのはどこのジェネリック会社も同じ であるが、どのように明確化するかの考えは会社によって異なる。 - 385 - ・延長された特許の効力範囲について争いがない理由の 1 つとして、厚生労働省が後発 医薬品を承認しないことが挙げられると思われる。」(Type1) 「・現行法には効力範囲でわかりづらいものがある。先発にも後発にもわかりやすい制 度の方が支障がないかと思っている、平成21年の知財高裁判決の時も感じていたが法 改正の必要性があると感じている。改正の時期としては、大合議判決の結論が出る、最 高裁の結果を見ても良いのかもしれない。DDS の最高裁判決以前から登録要件は柔軟で、 その観点はありがたいが裏腹に考える義理はないが、要件の裏腹に考えると効力は狭く なってしまう。要件は柔軟で、効力はオールマイティという考えもある。効力といって いるのは物質特許の効力。特許法のものと用途を最高裁でひっくり返された、従前の審 査基準の考え方を立法化してもある意味よいのかと思う、この場合、DDS のようなもの は加えてもらう必要がある。制度改正で解釈範囲をはっきりしてくれるといい。昔の審 査基準はわかりやすくて、それが良いと信じている会社も多い。条文と照らし合わせる とおかしいと感じるところはある。もともと特許法と薬事法のずれがあるのでそれを合 致させるのも一つの解決かもしれない。 「(欧米の制度と現行の日本の形だとどちらが望ましいか)物質特許の効力範囲が広いオ ールマイティなのか、合わせ技で匹敵するものが保護されるのか、そこが保護されるの であれば、できるだけ幅広く権利で多様な保護が図れることが望ましい。延長を無視し ても各々20 年独立した権利を保持しているが、それがそれぞれ延長されることはありが たいという考え方もある。一個一個が狭くなって穴が開くという制度であれば 1 特許 1 承認という形の 1 回限りでも構わない。特に物質特許で 5 年間延長できることはゆずれ ない、そこは先発メーカー共通していると思う、それ以上のプラスアルファも欲しいけ れども失うものがあるならいらない。物質特許の効力が狭められるのは困る。 「(以前の審査基準はジェネリック側にも受け入れられると思うか?)万人にわかりやす い点では受け入れ可能かと思う。物質、有効成分、効能効果が違えば 2 回目の延長でき るし、それが同じならダメ、効力というのも有効成分、効能効果と読みかえられるので あれば。そのままの特許法にしても良いのかもしれない。薬事法のほうは変えることは できないと思う。」(Type1) 「・制度改正はすべきだと思う。1特許1延長がよいが、制度を1から作ることになる のですぐには難しいかと思う。ただ、TPP の関連で外国から圧力があれば早期に実現さ れることもあると思う。オーストラリアとカナダに導入しろと迫っているのが欧米型の 1特許1延長だろうから一緒に入ってくれれば都合が良い。 (今の制度でも効力がはっきりしてくればそれでもよいのか?)それはある。今一番不 - 386 - 透明な時期。21年の判決で物=有効成分が否定されてしまってどうしようかなと思う。 よろしくない。枠組みがはっきりすれば対応はできる。 (制度改正を0から始めたとき都合の良いものはあるのか?)先行したジェネリックに 6か月の先発権をあたえることもあるが、延長の効力を確認する法的手段を確保して欲 しい。ジェネリックメーカーにとってはその手段がない。 当社が特許庁に判定を求めたが門前払いだった。民事で解決したいと思っても特許の延 長期間中は承認が下りないため民事に持っていくこともできない。いまのところ効力を 確認する手段については八方ふさがりの状況。これはちょっとジェネリックにとって不 公平な状況である。法律改正で条文に効力が明確に規定されればそれはそれでもよい。 その他、欧米の制度をながめていると、特許リストを先発が出しているので、そういう 制度はあったほうがよい。とても公平な制度だと思う。 (米国は ANDA とかもついているがその辺は?)弊社にとってはそちらの方が有利にな る。特許チャレンジを常日頃検討している。いざ、チャレンジをしても、結果を他のジ ェネリックメーカーとシェアして利益が薄くなるよりはそういう制度がよい。他の会社 がどう考えているかはわからないが。」(Type3) 「・(制度改正に関し、 )全てのメーカーが納得する基準等は作るのは難しく、時間がか かるのではないか。 ・薬剤投与デバイスの技術は進んできていると思われる。これらは臨床試験も必要であ るが、現行の制度では延長されない。 ・(仮に制度改正された場合、)例えば、制度改正前に延長されているものの権利の効力 範囲は遡及して適用されないこととなると思うが、その辺をどう明示し、先発企業側と 後発企業側が納得できる制度とするかは難しいと思われる。 ・公知申請で新しい用法・用量の変更が迅速に承認される場合があるが、それに基づく 延長登録がなされると、通常の開発品のように完全にはつかみ切れていない。またジェ ネリック側としては、開発時期を決定するにあたって、厚労省が募集している未承認薬 の開発要請の情報も、特許情報とは別に確認しているが、さらに延長登録が細分化され ると監視対象が増える。 ・ファーストジェネリックとするためには、特許権の存続期間が切れる時期を完全に調 べる必要がある。その際、特許が複数あるなど、調査は非常に複雑である。」 (Type2) 「・審査基準が頻繁に変わるのは好ましくはないため、法律に基づいて誰もが納得のい く審査基準にするか、法律自体を分かりやすくするかを行う必要があるかもしれない。 ・理想的にはシンプルな制度がよいが、会社の立場や状況はそれぞれ異なるため、なか なかまとまらないのではないか。 ・新薬メーカーと一概にいっても、競合分野の有る無し、またジェネリックを扱ってい - 387 - るか否か等によってそれぞれ意見は異なると思われる。 」 (Type3) (農薬) 「農薬の場合、明確にならなければいけないところが明確になっていないという状況が 続いているのでその点では制度改正をしたほうが良いと考えている。 」(Type5) 「・クレーム全体で延長が認められる制度が望ましい。 」 (Type4) (再生医療) 「〔制度改正について〕 〈再生医療分野に適した延長登録制度に関して〉 ・今後、再生医療製品は次々と世に出てくるであろうし、事例も出てくるであろうが、 現状は日本では 2 つしか製品化されておらず、事例も少ない。ただ今回の知財高裁大合 議判決について最高裁がどのように判断するかは関心を持っている。 ・再生医療製品は、企業ではなく、医師の研究がスタートであるため、早期の発表が求 められており、初期の段階で特許出願をしなければならない。 ・このため、研究方針の変更もあって、特許のクレーム範囲と承認申請の範囲とに食い 違いを生じやすく、クレームの記載に苦労する。 (延長登録制度もクレームの範囲内の承 認でなければ延長を認められないが、その点の証明が難しくなる可能性がある。 ) 〈医療機器に関して〉 ・他法で使用が制限されるものについては、例外なく延長登録を認めた方がよいかと考 える。医療機器も認められるべきである。 ・医療機器といっても様々なものがあるが、例えば、人体に与えるリスクによって薬事 法上で分類化されるクラスに応じて延長登録を認めてもよいのではないか。 〈延長登録制度に関する業界内の議論について〉 ・業界内では、再生医療等製品が延長登録対象となる議論がメインである。改正薬事法 では、製品化を早く進めるために条件付き承認が導入されたが、延長登録制度に関して いえば、当時、条件付き承認と本承認のいずれかを延長の起算日とするかが議論となっ た。 ・改正薬事法では、条件付き承認を起算日とすることになったが、条件付き承認の段階 では、効果等の試験は終わっておらず、費用の持ち出しの方が多い。一方で、本承認を 起算日とすると特許権の存続期間が満了してしまうという問題がある。 - 388 - 〈再生医療製品の特許が延長された場合の金額的な影響について〉 ・再生医療製品のマーケットサイズは、経産省がまとめた資料によれば、潜在的には医 薬品にも負けないレベルである。 ・ (医薬品と異なり消耗品ではなく、大量生産ができない。存続期間が延びても投資が回 収できないおそれがある。)」 ⑥大合議判決に対する意見・感想。最高裁判決に期待する事項(争点は67条の3第1 項1号であるが、大合議が傍論として判示した68条の2についても判断を示すべき 等)。 「〔最高裁判決に期待すること〕 ・不安定な期間が続くことはあまり好ましくないため、早く判断して欲しい。 」 (Type1) 「・物質特許を早く成立させて 5 年間の延長を取るというのが普通のやり方。 ・現在の運用で問題がなかったが、大合議判決で傍論が出てしまったことが大きな問題 だった。 ・業界の意見は反映されない状況で効力範囲までかかれてしまい実情とあっていない。 大合議判決では困るので、大合議判決が確定するのであれば法改正をまずやってもらい たい。他社さんは意見が割れているので製薬協としてはまとまっていない。 ・承認を得るごとに、細切れに出願するのは手間だし、分量が異なる製剤にも承認が下 りるが、それを全部延長出願するためにずっとフォローしていかないといけない。この ための手間も、コストもかかる。大合議判決で、あそこまで細切れの延長登録が必要と いう内容にされるとは思ってもいなかった。 ・今回の大合議判決で考えると、初回承認は時間がかかるので臨床試験が5年くらいか かる。追加効能になると、特に追加の用法用量の適応症の申請になると短い時間になる。 一回目の承認と2回目の承認で得た物質特許の延長の期間に差が出る。そうすると短い 期間延長しか取れなかった承認の後発医薬品は、長い方の延長登録期間の満了前に上市 できるという状況になる。そんな状況であるのに短い期間延長しか取れない追加効能承 認をとるのかという話が出てきて追加効能承認取得に対するインセンティブが低下しか ねないというのが今の答えになるのではないか。追効承認や追加剤型承認などは患者さ んにとっては良い話なので、特許制度としてそれをきちんとサポートしてもらいたいと いうのが先発メーカーとしての考え方。それに対するインセンティブがなくなるのはマ イナスである。」(Type2)) 「・登録要件と効力範囲は裏腹と考えるのが一番リーズナブルだが、なんでもかんでも - 389 - 延長を認めてその分、効力範囲を狭くするという大合議判決の考え方は支持できない。 一気に以前のプラクティスに戻せという判決はおそらく出ないので上告中のジェネンテ ック事件の最高裁判決にも期待できない。 ・延長登録の機会は増えるが潜在的なリスクとして、考えていたものより効力範囲が狭 くてジェネリックを出されてしまう。穴が開いているところにジェネリックが入り込ん できてしまう。有効成分以外のすべての不活性成分も効力範囲に効いてくるとなると特 許を簡単に回避できるので延長制度の意味が無くなるに等しい。 ・用途の考え方に関しては柔軟性を持ってもらいたい。現行では、効能・効果欄の記載 だけで一律に判断されているが、用法・用法欄の記載であるとか、昨年のイレッサのケ ースで知財高裁で負けたが、 「効能・効果に関連する使用上の注意」欄の記載が用途を構 成すると判断される場合があっても良いと思う。イレッサのケースは、抗がん剤の発明 で先行処分では「効能・効果に関連する使用上の注意」欄に他の医薬での治療例がない 患者には有効性及び安全性が確立されていないと書かれていたのが、後行処分では注意 書きがとれた。最初に投与する抗がん剤としても使えるのではないかということで一変 承認を取って延長登録出願をしたもの。A 社の先行処分の時の当局とのやり取りが判決 に書かれており、そういうところを参酌すると判決自体には納得するが、先行処分で当 局とそのようなやり取りをしていなかったら延長登録が認められてもよかったケースか もしれない。 」(Type2) 「(均等の範囲とかそういったものはどう考えるか?)大合議判決では均等の範囲とか実 質同一という表現が使われていたがどういった範囲を示すのか不明確だ。判決に成分(有 効成分に限らない。) 」と書いてあるが、何を意図して記載したのかわからない。」 (Type2) 「(大合議判決については率直のところどう思うか?)登録要件だけ見ればそんなに不自 然ではないが、登録要件をみれば一変レベルの着色剤が変わりました、赤が黄色になり ましたというのもすべて承認事項なので、それでも登録できるという解釈もリスキーで はあるができる。ただ登録要件だけ見ればおかしくはないと思う。効力のところの怖さ はある。そうすると用法用量は用途と読めるのか読めないのかは気になるところではあ る。 (傍論がなければ納得できるのか?)広義に見れば用途なんですが、特許庁の主張に共感 するところが多い。大合議判決を是とするなら用量用法も用途としないといけない。そ の解釈もそれほど曲解というわけではない、広義では用途なので。ただ、どちらかとい うとこの考えが否定されて、用法用量は用途ではないと判断されると安心感はある。登 録要件よりは効力の方で賛成反対が変わってくると思う。 (今回の大合議だと対象の承認では用量用法は変わっているが、独立で特許があるわけ じゃない、その場合は延長すべきなのか?)先行処分の医薬品が特許発明に属するとい - 390 - う考え方で考えるとダメというのもあるが、用途なのか用途でないのか、効能効果のよ うに用法用量も用途なんですという立場であれば、効能効果追加で更なる延長ができる なら、用法用量すなわち用途が違うから 2 回目の延長ができるという整理はできる。薬 事法と特許法の用語がずれているのが問題ではあるが、特許では用途、薬事法では効能 効果用法用量になっている。用途がなんですかという答えによって対応関係が変わって くる。 ・万人にわかりやすくて安心感があるのは、特許庁の最初の審査基準、有効成分、効能 効果説。それにプラス別特許があれば延長登録ができるということでパシーフ最高裁判 決で立法化しても良いのかもしれない。今回最高裁に上がるのか上がらないのか、その 際に用法用量は用途になるのかどうかが争点になると思う。用途であるなら存続期間は 延びてしかるべき、用途でないなら延びなくてもよい。 」 (Type1) 「・大合議判決が確定しても、効力とのリンケージについてはどうか、傍論については、 効力が制限されるとも読めるし、不明確。あくまでも審査の基準としての判断というよ うな逃げを打たれてしまった。 (そういうところは明確になったほうがよろしいという?)そう考える。ただ、明確化 する手段がジェネリックメーカーにないのが困ったところです。 ・傍論の部分をもう少しはっきりすれば大賛成できる。 ・昔は有効成分=ものだったころにはなにも問題なかった。 「(有識者コメント:法律にどう書くかという問題もあるし、物質特許・用途特許におけ るものの考え方とDDS特許・製剤におけるものの考え方もちがうはずなのに一律に考 えるとおかしくなる。じゃあどう区別するんだというところはなかなか難しい。62年 のころはDDSのことなんか考えていなかった。物質特許の延長に当時の考え方をもち こまれると、本来の制度が崩壊してしまう。製薬メーカーも同じ危惧をもたれている。) (ジェネリック医薬品の促進をするに当たって、特許制度的にできることはないかと考 えていて、ハッチワックスマン法的にインセンティブをあたえて入っていくというのは 有るかなと思うが、ほかにこう特許制度えればジェネリックがもっと浸透しやすくなる のにという前向きな制度設計、法的な安定性を確保できる制度設計にすべきであるが、 もうすこし前向きにできることは?) ・特許制度だけではどうしようもないことがあり、厚労省とセットして変えていかない と。たとえば後発品の薬価収載は年2回と限定されており、物質特許が承認日より一日 後でも半年後になる。そのあたりも参入が遅れる原因になる。ただ、そのあたりは厚労 省の問題だから。 ・今までは特許庁の無効審決だけでは承認しない、知財高裁判決が必要という厚労省の 運用だったが、2年前の8月の承認のときに突然、無効審判の審決書もしくは裁判所の 判決書などがあれば良いという運用に変更され、その根拠となる約20年前の事務連絡 - 391 - が公開された。厚労省の運用も急に変わることもあり、困る。」(Type3) 「・(最高裁の判決において、)特許法 68 条の 2 についてのコメントを出してほしい。 効力がどこまで及ぶかが一番気になるところである。」 (Type2) 「〔用法・用量が違う特許が残っている場合に、虫食い申請が認められない可能性につい て〕 ・特定の用法・用量に特許がある場合、特許がない用法・用量について後発医薬品が承 認される可能性自体はあると考える。」(Type3) (農薬) 「・農薬の場合、特段のコメントなし。」(Type5) 「・知財高裁大合議判決は前提が限られた効力範囲の話であるため、クレーム範囲全体 に効力範囲を及ぶべきとの立場である以上、あまり関係ないと考えている。 ・農薬と医薬は化合物の開発は似ているが、事業として考えると非常に大きな違いがあ る。 ・農薬は、米国や中国では延長登録の対象にならない。日本、欧州、韓国は対象となる。 ・農薬の場合も各国で有効性試験が必要となり、それにしたがって各国で農薬登録を取 得する。毒性データ等の一部は、国によって日本の試験データを活用できる。 」 (Type4) (再生医療) なし ⑦延長登録出願の対象発明のとして、 【問6-1、問18-1】の各選択肢について選ん だ、または選ばなかった理由を教えてください。 「・(改良発明として特許が得られるような発明であれば延長は認めてもよいと考え る。)」(Type3) 「〔選択肢①~⑥を選択した理由について〕 ・(先発品メーカーの立場として、 )例えば、選択肢①だけでよいとする回答があるとす れば不思議である。 ・物質特許が満了した中で、公知のものを改良した製品等を上市するケースもあり、こ の場合、 (選択肢①のように)化学物質等の発明しか対象とならないとすると、延長登録 - 392 - が受けられない可能性もあることから、対象発明について制限を設けるべきではない。 既存の薬が他の医薬用途に使えないか探索することは盛んになってきており、また新た な医薬用途の開発に対するインセンティブにもなる。 ・(選択肢①のみであると、)物質特許がないために延長登録が受けられないとして医薬 品開発を諦めるケースも考えられる。」(Type1) 「・1 つの承認に関しては、1 特許に限り 1 回の延長を認めるというのが当社の考え方 で、その 1 特許については出願人が関連する特許すべての中から選択できるようにする のが望ましいと考える。結果的には物質特許や用途特許が選ばれることになるのかもし れないが。ものによっては物質特許がなく、用途特許が一番のベーシックパテントの場 合もあるので選択できるほうが良い。 ・有効成分に関する技術思想に基づかない特許、例えば製剤特許などについてはその権 利範囲をどうするかまでは検討していないが、製剤特許はベーシックパテントに選ばれ ることはないだろうから問題もないと思われる。ベーシックパテントとなるのは、物質 特許ではない場合でもせいぜい用途特許くらいだろう。 」 (Type2) 「〔選択肢⑤以外を選択した理由について〕 ・併用剤で延長登録出願を行うのはあまり聞かない。合剤は延長登録出願をし得る。」 (Type2) (農業) なし なし (再生医療) なし ⑧その他 〔その他〕 「・米国のようなオレンジブック制度があると後発企業としてはありがたい。先発企業 側が関連する特許を明示していた方がやりやすい。」(Type2) 〔米国のオレンジブック制度の導入の可否について〕 - 393 - 「・監視はジェネリック企業の宿命として行っている。オレンジブック制度の導入の可 否については、明確なパテントリンケージを認めることとなるため、現状においてそれ が良いかは答えがない。薬価収載に関する事項等、薬事制度を含めて全体的に制度がど うあるべきか考えるべきである。明確になるところがあったほうがよいと思う一方で、 個人的には、法律・運用の解釈において争える余地を残してもよいのではないかとも思 う。 〔延長登録制度の運用で困っている点について〕 ・延長登録出願の包袋を取り寄せて、何をもって延長されたのか、その特許発明の実施 であったのか等を検証しようとしても営業秘密として内容が見れない状態となっている。 したがって、延長登録の無効審判請求をしようとしても、その根拠を示すことが非常に 難しい。また公示能力がきちんとなされていないと、効力範囲がわかりづらいと考える。 独占範囲がどこまでかが第三者から見てわからないような営業秘密の保護はバランス的 にも問題がある。 ・会社によっては、延長登録出願のほとんどの内容をマスクしている場合がある。その 特許発明の実施であったかどうかも分からない。物質特許はまだ分かり易いが、原薬の 結晶形態や製造方法、製剤の製造方法の特許等は判断できない。 ・物質特許や用途特許は分かり易いが、延長期間の算定に関する箇所がマスクされてい る場合があるとその部分は検証できない。 ・独占権を与える前提であれば、営業秘密としてマスキングされるべき箇所は、個人情 報は別としても、ほぼ無しとしてもよいのではないか。 」 (Type3) 「(外国の制度と比べてのメリット・デメリット) ・欧米の制度は、手続きとしても簡単で分かりやすい。 」 (Type1) (特許庁への要望) 「・(延長期間の算定方法における起算日に関し、)特許庁での審査期間に時間がかかっ てしまえば、その分特許期間は浸食されることとなるため、出願人の責によらないこと でもあり、このような制度設計は変えていただきたいと考える。」 「・統計データがつかえるものなのか疑問を感じる。各社の出願戦略とか活かせるもの があるのか。アメリカなんかは施行規則改正するときは経済効果の予測がセットになっ て出てくる。 」(Type2) 「(2回目の延長を認めることによって適応拡大等にもインセンティブが働くことが我 が国制度のメリットであるとのことですが、それを認めない欧米型では新薬開発のイン センティブしかないということとか?)なかなか難しい所であるが、日本だけで適用拡大 - 394 - もあるし、研究開発の戦略が変わってきていて、従来は 1 番目の用途が開発期間・経費 がかかっていたが、そのような開発は成功確率が低いので、できるところからやるとい う戦略にかわってきており、2,3番目の用途が実は一番患者数が多く開発が難しく長 期の開発期間をかけているということも起こり得る状況になっている。そういう場合で も日本の制度なら小規模なものから大規模なものまでカバーできるのでメリットがある。 インセンティブとは、そういう制度が有ればやる無ければやらないというわけでは必ず しもないがギリギリのところなどで、無ければやらなかったが有ったのでやったという ような経済的評価に響いてくるのであるかと思う。 (営業秘密保護が不十分とはどういうことか?)延長登録出願の審査において意見書等 を出すが、その閲覧請求により無効審判を請求した者には開示される。無効審判を請求 した者は我々と一番利害関係があるのでそこに開示されるのは困る。延長登録出願の審 査においては実際に特許のクレーム範囲に含まれるか等のチェックが入ってくる案件も ある。この場合、延長登録を受けるためには、我々があまり出したくない情報も出さざ るを得ないということになる。無効審判がかけられるとオープンにしないといけない。 場合によってはぎりぎりのところで営業秘密を守るために延長登録出願を断念すること もありえるかもしれない。 (出願の審査に関係ないところを黒塗りにすると、今度は延長の条件に影響する可能性 がある。判断のポイントになるところだから出さざるを得ないが、審査官審判官が判断 した証拠は残さないといけない。面接などでも良いかもしれない。 )インカメラとか、先 方の代理人レベルは大丈夫だが、先方の企業の人には見て欲しくないというようなこと もある。 (6-1のところで米国や欧州でも広く認められているというところですが米国もなん で延長対象の特許の種類は何でも選べるのですか?)米国でも選択はなんでもできる。 通常は物質しか選ばないが。 (延長が短いために、開発を断念することもあるのか?)めったにないが、最初に考えて いた開発がドロップして、しばらくしてから発表などがあって違う疾患に効くのではな いか?思ってそこから開発しようとしたら物質特許も残存期間が短いから駄目、というよ うな場合はあり得る。5 年だったらやめたけど 10 年だったらやっていたというような事 例は普通はない。イレギュラーなのはたまにあるがそういう場合は再審査で賄うと覚悟 してやることはある。 (日本の期間算定はインセンティブになるのか?)米国や韓国にくらべるとよい。特許を 早くとらないといけないというデメリットはある。欧州は出願で見るので気にしないで 良い。日本は販売承認の 5 年前に登録になればよい。」 (これから制度改正をする場合に業界の皆様の意見として、団体としての意見がないと できないが、スケジュール感というのはあるのか?)現状でまとめるのが非常に難しい。 - 395 - まとまるかどうかも見えていない。昔は製薬協が先発、日薬連が後発というわかりやす い構図だったが、最近は先発メーカーでジェネリックを積極的に売っているとこもある し、もっと純粋な先発メーカー、外資もあるし、複雑になっている。最高裁の判断を待 っているのではないか。一つにまとまるとしたら最高裁の判断の後ではないか。」 (Type1) 「(ジェネリック製品を開発する際に、先発メーカーとしては後発医薬品がいつ入ってく るかが大きなポイントになる、薬価改定で薬価が落ちるという観点ですけども、いずれ どんな場合でもどの時点で延長されたとしても、第二用途が認められるかどうかによら ずともどのタイミングで入ってくるかが非常に興味があるところだと思うが、参入する 側としてはどのような形で参入するのがこのましいと思うのか?)一刻も早く、どんなに 小さくても入りたい。相対的なものではあるが、開発と薬価が連動してくる。薬価は売 れば必ず低下傾向。ジェネリックの場合はどうしても先行する薬価に合わせられる。早 く市場に出せるものがあるのであれば出せるときに出したいというのが原則。例外はあ るが。 (今回のアバスチンの場合、5または10mgで2週毎と、7.5mgの3週毎という のがあって、最初の方が実は特許が1,2年早く切れるが、その部分だけ早く後発品が 早く入れるという状況がおこりうると思うか?)基本的には無理だと思う。当局が全規 格そろえて売りなさいと指導してくる。明確にこの効能について用量はこれしか使えな いというようなもので明確ならいいが、効能にどこか共通する分があると、共通する部 分というのは例えば規格が二つあるとかそういうものあればそろえて申請しなさいとな るので、この話はグレーゾーンではあるがおそらくジェネリックは出せないと思う。承 認にならないと思う。 ・規格が5mgと10mgがあって、効能が全く違うものがあって、ある効能について 特許があった場合は、その効能は削除してその他の承認は取ることはできるが、5mg だけとかそういうことになるとおそらくむずかしい。ジェネリック品と特許の関係をう まく調整できれば承認が得られるが無理な場合はえられない。含量、剤形を理由とした 虫食いは承認されないと思う 。 (効能効果が規格さえ合っていれば虫食いであっても承認が下りる という話でしたが この点の国際調和はどうでしょうか?)米国でも効能の一部削除はできる、全規格対応 の指示は出てないので自由度は高い。欧州も虫食い申請できる。 (ジェネリックメーカーの足並みはそろっているのか?)各社各様と思う。協会自体にも 問題がある、中小企業が多いことや、各社各様の立場があって、それぞれ利害関係が一 致しない。大手はわりと考えたりするが、そこまでできないメーカーも多い。ジェネリ ックのなかも意見が割れている。 (厚労省の規制が厳しいのか?)パテントリンケージが厳しい。表向きはリンケージな - 396 - しといっているが厳然としてある。民事で対応できるように変えてもらえると自由度が あがる。現状では厚労省からの通知で縛られている。 (承認されれば事前調整などもあるが、承認されないので民事的な手段が取れないので チャレンジは無効審判しかできないということか。)用途特許は無効審判で対応する。物 質特許はどうしようもない。日本では無理。物質特許に対する特許チャレンジとしては 延長登録無効審判が可能な場合がある程度。用途特許にチャレンジした品目は無効審決 がおりないと承認されない。予告審決ではだめだと厚労省審査管理課担当官にいわれた。 振り子が先発よりによっているように思う。 」 (Type3) (農薬) 「・農薬の場合、特段のコメントなし。」(Type5) 〔業界団体での議論について〕 「・会社によって、延長登録制度に対する方針が全く異なるように感じる。」 (Type4) (再生医療) なし - 397 - 資料Ⅲ 海外質問票調査 【実施概要】 <海外質問票調査実施概要> 海外公開情報調査の結果を踏まえて、情報を充実化させる必要がある要素(運 用実態、判例分析等)について下記対象者に対して海外質問票調査を行った。 <海外質問票調査実施対象(合計17者)> 米国 米国特許商標庁(USPTO) アメリカ食品医薬品局(FDA) 米国法律事務所(DLA Piper LLP) 欧州 英国知的財産庁(UKIPO) ドイツ特許商標庁(DPMA) 欧州医薬品庁(EMA) 英国化学物質規制委員会(CRD) ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL) 欧州法律事務所(DLA Piper UK LLP) 韓国 韓国特許庁(KIPO) 食品薬品安全省(MFDS) 農村振興庁(RDA) 韓国法律事務所(金・張法律事務所) カナダ カナダ保健省(Health Canada) カナダ法律事務所(Nelligan O'Brien Payne LLP) 中国 国家食品薬品監督管理局(CFDA) 中国法律事務所(北京林達劉知識産権代理事務所) また、各国の医薬品・農薬の規制庁への質問票調査は各国の申請手続に熟練 したコンサルタント会社を介して行った。 - 402 - 【質問項目及び回答】 【米国】 <米国特許商標庁(USPTO)向け質問事項と回答> (USPTO からの回答を翻訳したものを掲載した) (延長制度の導入) Q1. 医薬品や農薬等の販売承認・登録に関わる特許権の存続期間の延長制度の 導入の趣旨・経緯を教えてください。また、延長制度導入にあたり新薬の研究 開発にインセンティブを与えることが導入趣旨に含まれますか。 新薬の研究開 発にインセンティブを与える上で重視すべき発明は何であり、何処まで効力を 与えるべく制度設計されたか、特に以下の観点について教えてください。 行政審査に基づく特許期間延長の権利は、医薬品価格競争および特許期間復活 法(the Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act; 1984, Pub. L. No. 98-417, 98 Stat. 1585) (21 U.S.C. 355(b), (j), (l); 35 U.S.C. 156, 271, 282 で成文化されている) (ハッチ・ワックスマン法(Hatch-Waxman Act)) の産物である。この法律は、通常の「特定の製品は市販前に行政機関によって 承認を受けなければならないという要件によって生じる特許期間」に対する2 つのひずみを除くことを求めるものであった。Eli Lilly & Co. v. Medtronic Inc., 496 U.S. 661, 669, 15 USPQ2d 1121, 1126 (1990)。第一のひずみとは、 製品は行政機関からの承認なしに商業的に市販することができないので、特許 権者は特許の初期の数年間、特許期間を失うということであった。第二のひず みは特許期間の終了後に発生していたもので、それは、競争者が特許満了前に FDA 承認を受けるために必要な試験及び他の活動を始めることが許されなかっ たので、特許満了後直ぐに市場に参入することができなかったことである。 35 U.S.C. 156 として成文化された法律の一部が、行政機関による市販前政府承 認を受けるべき特定の製品の研究開発に新しいインセンティブを創出するよう 設計された。この法規により、特定のヒト用医薬品、食品添加物または着色添 加物、医療機器、動物用医薬品および獣医学上の生物学的製品に関する特許の 所有者は、行政機関からの市販前政府承認を待つ間に失った時間の幾らかを、 それらの特許の期間に回復させることができる。35 U.S.C. 156(a)の下の特許 期間の延長に由来する権利は、35 U.S.C. 156(b)に定められているが、クレー ムごとに限定されていない。むしろ、156 のサブセクション(a)は、 「製品、製品 を使用する方法、又は製品を生産する方法をクレームする特許の期間は、延長 されるものとする。」と示している。Genetics Institute LLC v. Novartis Vaccines and Diagnostics Inc., 655 F.3d 1291, 99 USPQ2d 1713 (Fed. Cir. 2011)を参照されたい。しかしながら、 35 U.S.C. 156(b)に準じて、例えば特 - 404 - 許が承認された製品に加えて他の製品をクレームする場合、追加の製品に対す る排他的な特許権は、特許の元々の満了日で切れる。 特許期間の延長と引き換えに、議会は法制上、35 U.S.C. 271(e)が適用される 製品について、Roche Products v. Bolar Pharmaceuticals, 733 F.2d 858, 221 USPQ 937 (Fed. Cir. 1984)を覆し、そして 例えば、略式新薬申請(Abbreviated New Drug Application (ANDA))のための開発および情報提出のためにのみ特許 薬を作成し試験することは、侵害行為ではないものとすると定めた。35 U.S.C. 271(e)(1)。ハッチ・ワックスマン法及び侵害訴訟の議論については、Donald O. Beers et al., Generic and Innovator Drugs: A Guide to FDA Approval Requirements, Eighth Edition, Wolters Kluwer Law & Business, 2013, 4.05. を参照されたい。さらに、議会は、FDA が連邦食品医薬品化粧品法のセクション 505(b)のもとでそれまで承認されていなかった有効成分又は有効成分の塩もし くはエステルに関して5年間の独占権を販売申請者に付与するものと ANDA を定 めた。21 U.S.C. 355(j)(4)(D)(ii)。また、Lourie, Patent Term Restoration: History, Summary, and Appraisal, 40 Food, Drug and Cosmetic L. J. 351, 353-60 (1985)を参照されたい。さらに、Lourie, Patent Term Restoration, 66 J. Pat. Off. Soc’y 526 (1984)も参照されたい。 (1)延長対象として重視された特許発明の種類(延長対象を有効成分の特許 発明に限定するか、その他の特許発明も対象とするか) 製品は、延長された特許の期間を有する可能性がある特許でクレームされると き、指定された行政審査期間の対象となる。「製品」という用語は、35 U.S.C. 156(f)で以下のように定義されている: (1)「製品」という用語は以下を意味する: (A)医薬製品。 (B)連邦食品医薬品化粧品法に基づく規則に従う任意の医療機器、食品 添加物又は着色添加物。 (2)「医薬製品」という用語は、以下: (A)新規医薬品、抗生物質薬品又はヒト用生物学的製品(これらの用語 は、連邦食品医薬品化粧品法及び公衆衛生法において使用されるとおりであ る);又は (B)新規の動物用医薬品もしくは獣医学上の生物学的製品(これらの用 語は、連邦食品医薬品化粧品法及びウイルス・血清・毒素法において使用され るとおりである)であって、組換え DNA、組換え RNA、ハイブリドーマ技術もし くは部位特異的遺伝子操作技術を含む他の方法を使用して一次的に製造されな - 405 - いもの の単一体として又は別の活性成分と組合せた、活性成分(活性成分の塩又はエ ステルを含む)を意味する。 (2)有効成分の特許を延長対象とした場合、延長された特許の効力の及ぶ範 囲(新薬に対応する後発品のみに及ぶのか、新薬と同じ有効成分を含む全ての 医薬品に効力が及ぶか、異なる塩やエステルなどを有効成分とする改良新薬ま で効力が及ぶか) 特許権の範囲は、35 U.S.C. 156(b)によって定められている。米国特許商標庁 は権利行使を行う当事者ではないので、我々は、延長期間中の権利の範囲につ いて詳述することはできない。有機小分子製剤の分野においてこの論争に達し た連邦巡回控訴裁判所からの唯一のケース: Pfizer Inc. v. Dr. Reddy’s Labs., 359 F.3d 1361, 69 USPQ2d (BNA) 2016 (Fed. Cir. 2004)を参照された い。これは Pfizer の特許クレームとの関連で、「ジェネリックの」出願人が異 なる塩を含む製品の承認を要求するために、35 U.S.C. 156(f)の下で何が「製 品」と見なされたかを説明したものである。しかしながら、潜在的な抵触を決 定するためには、連邦巡回控訴裁判所が Genetics Institute LLC v. Novartis Vaccines and Diagnostics Inc., 655 F3d 1291, 99 USPQ2d 1713, (Fed. Cir. 2011)において指摘したように、延長した特許は、その延長期間の間、抵触審判 に巻き込まれる可能性がある。 (延長の対象となる処分について) Q2.延長登録の対象となる承認として医薬品、医療機器、食品添加物及び着色料 の販売承認であると理解していますが内容に相違はありますか。医薬品に含ま れるものとして、具体的な対象を教えてください(例えば、低分子化合物や生 物製剤など)。また新たに追加となる承認(permission)について検討されている ものはありますか。 製品の定義は、35 U.S.C. 156 に定められているが、それは同様に FDA 又は USDA によって施行される法律によって規定されることもできる。35 U.S.C. 156 の中 で言及された法律によって規定された“ヒト用生物学的製品”又は“獣医学上 の生物学的製品”の定義を参照して下さい。ヒト用医薬製品、動物用医薬製品、 食品添加剤及び医療機器は、連邦食品医薬品化粧品法のもとで規定されている。 (延長の対象となる特許について) - 406 - Q3. 米国特許法第 156 条(a)「製品の使用方法」には「製品を用いた人間の治療 方法」も含まれるのですか。また対象特許を条文の規定のように制限した理由 は何ですか。 35 U.S.C. 156 で明示された文言は、延長される可能性のある特許を限定してい る。延長されるべき特許は、製品をクレームしている必要があり、あるいは製 品を使用する方法又は製品を製造する方法をクレームしている必要がある。こ の理由に関して、ハッチ・ワックスマン法を成立させる際に、議会は、ヒト患 者を治療する方法に関するクレームは、米国国内において特許を受けることが できる発明であり、したがって、承認された医薬製品を投与することによって 患者を治療する方法に関する特許のクレームは、期間延長を受ける資格を有し 得る、ということを理解した。 (延長が認められる要件について) Q4.米国特許法第 156 条(a)(2) 「特許存続期間が,延長されていないこと」に 関連し、物質 A 又は B を選択肢とする化学物質発明に係る特許権について、有 効成分 A を含む医薬品の先行承認を受けた後、有効成分 B を含む医薬品の後行 承認を受けた場合、先行承認に基づいて存続期間が延長されていれば、後行承 認に基づく再度の延長は認められないという理解でよいですか。 はい。たとえ特許が複数の新規医薬製品をクレームしていたとしても、同じ特 許は、2回以上延長することはできない。 (延長期間算定について) Q5.延長期間は、臨床試験実施申請(IND)から新薬申請(NDA)までの期間の 1/2 と NDA から承認までの期間との合計であり、最大5年、かつ、承認日から満了 日までの期間は最大 14 年であると理解していますが、内容に相違はありますか。 またそのようにした理由を教えてください。 延長期間 = RRP - PGRRP - DD - ½ (TP - PGTP) ここで、「RRP」は、行政審査期間の合計日数であり、 「PGRRP」は、特許が発行 された日及びその日より前の RRP の日数であり、 「DD」は、申請人が適切な注意 を払って行動しなかったことが分かった RRP 中の日数であり、 「TP」は、35 U.S.C. § 156 のサブセクション(g)の段落(1)(B)(i)、(2)(B)(i)、(3)(B)(i)、(4)(B)(i) 及び(5)(B)(i)に記載されている試験段階期間であり、そして「PGTP」は、特許 が発行された日及びその日より前の TP の日数であり、ここで、半日は½ (TP - - 407 - PGTP)の減法のため、無視する。 法定上限は、計算された期間を、特許終了時点で最大5年、又は承認された日 から特許満了まで14年間と計算される市場独占合計期間、どちらか少ない方 に制限するようになっている。 Q6.IND から NDA までの期間の間に明らかに臨床試験を行っていない期間があっ た場合に、この期間は、延長期間から除外されますか。 もし医薬製品が、IND が実施されておらず FDA によって承認された場合、 156(g)(1)(B)(i)における行政審査期間はゼロであろう。したがって、いかなる 延長も、その期間が特許付与後に生じたものである限り、FDA が NDA を審査する のにかかった期間にのみ基づくであろう。 (延長された特許権の効力) Q7.延長された特許権の効力を、実際に販売許可を得た医薬品自体よりも広く認 めている理由は何ですか。 法律により、延長期間の間の保護範囲が規定されている。議会が、当時の証拠 に基づいて、延長期間の間に特許権者に与えられる権利の範囲を決定した。 我々は貴所に、その法律が起案された理由を説明するために立法経緯を精査す ることを提案します。 Q8.「承認された用途」とは、その後の新たな承認に関わる用途も含み、第三者 が受けた承認に関わる用途も含むとの理解でよいですか。また、ここでいう「用 途」とは、特定の疾病に使用することのみならず、特定の疾病に使用する際の 用法や用量等の使い方は含まれるのですか。 我々が知る限り、第三者の使用に関する理論が、この国の裁判所で検証された ことはない。延長期間の間に実施できる多くのことは、特許それ自体のクレー ムに依存するであろう。 (延長登録出願の手続) Q9.延長登録出願の申請書に記載すべき事項は、以下の(1)~(5)と理解し ていますが、内容に相違はありますか。 - 408 - (1) 認可製品及び行政審査を生じさせた連邦法の表示 (2) 延長が求められている特許の表示,及び認可製品又は認可製品を使用し若 しくは製造する方法をクレームする当該特許に係る各クレームの表示 (3) 長官が延長,及び延長によって生じる権利に対する特許の適格性を決定す ることを可能にする情報,及び長官及び厚生長官又は農務長官が延長期間を決 定することを可能にする情報 (4) 申請人が該当する行政審査期間中に認可製品に関して行った活動の簡単 な説明及び当該活動についての重要な日付 (5) 長官が要求する特許その他の情報 上記で列挙された項目は、法的要件である。米国特許商標庁は、ハッチ・ワッ クスマン法の規定を実施する際、規則の中でもとりわけ、特許期間延長の申請 のための全ての規制要件を定める 37 C.F.R. 1.740(a)を発布した。 (延長の可否の審査を行う者) Q10. 延長登録申請の審査は、特許庁の審査官が担当しているのでしょうか。違 う場合にはどのような資格者ですか。 特許期間延長のための申請の審査を行う者は、米国特許商標庁の特許法的管理 室(Office of Patent Legal Administration)の弁護士(attorney)である。 全ての者が法律の学位を有しており、また全員が科学、典型的にはライフサイ エンスの教育を受けている。 (第三者に対する公示方法) Q11. 第三者に公示される内容は、特許情報(延長期間、延長後の満了日)、企 業名、製薬品名、一部新薬承認日と理解しておりますが、内容に相違はありま すか。また、「承認された用途」については公示されないのですか。 米国特許商標庁は、公式特許記録の延長記録部を作成する。貴所が列挙した情 報の大半は、延長証明書に示された項目であるが、それは延長された特許のフ ァイル履歴内にある最終判断通知書という文書であり、貴所が上記で記載した 情報を列挙するものである。FDA が新規医薬製品を承認する際、その医薬製品は、 特定の効能について承認されるのであって、IND と NDA が、特定の意図する患者 集団のための医薬製品の安全で効果的な用途について情報を FDA に提供するよ うに、全ての用途について承認されるのではない。FDA からのヒト用医薬品のた めのこれらの「承認」状は、FDA のウェブサイト: - 409 - http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/drugsatfda/で、特定のヒト用 医薬製品について検索し、承認履歴を精査するによって入手可能である。これ は、米国特許商標庁が提供又は保持する情報ではない。 (その他) Q12.医療機器、食品添加物及び着色料における延長登録出願の審査と、医薬品 における延長登録出願の審査とでは何か違いがありますか。 製品が規制され承認される方法には相違がある。したがって、そのわずかな相 違は、法律用語を理解するために実務にあたる弁護士の側の知識を必要とする。 *Please take it into consideration that it is possible that your answers are opened in the report. If there are answers which are not desirable for open, please inform me of them. - 410 - <アメリカ食品医薬品局(FDA)向け質問事項と回答> (FDA への質問は株式会社 グロービッツを介して行った) 米国における医薬品の販売承認と関連特許の影響に関する調査報告書 Q1. 医薬品(ジェネリック医薬品を含む)の承認(治験・試験~販売)の流れと、その中での特 許情報が利用されるかどうか、承認審査における特許情報の用いられ方・影響を教えてください (特許の種類(物質、用途など)によって後続の処分が変わることはあればそれについても教え てください)。 米国の医薬品承認は、米国保健福祉省・食品医薬品局 (FDA)9の Center for Drug Evaluation and Research (CDER)と Center for Biologics Evaluation and Research (CBER)が所管している。 新薬承認には、CDER に対して New Drug Application (NDA)を申請する必要がある。バイオ医薬 品承認は CBER が所管し、申請者は Biological License Application (BLA)を申請する。モノク ローナル抗体やサイトカイン等の一部バイオ医薬品は管轄が変更されて、CDER で承認審査が行わ れるようになった10。 1984 年 9 月 24 日の The Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984 (通 称 Hatch-Waxman 法)11の施行により、ジェネリック医薬品は、Abbreviated New Drug Application (ANDA)による承認申請をすることが出来るようになった。ANDA 申請においては、NDA 申請で要件 となっている前臨床試験および臨床試験データの提出は課されていないが、新薬との生物学的同 等性(Bioquivalency)を科学的に証明する必要がある。 ANDA によりジェネリック医薬品製造者が従前の制度に比べて簡略的に承認取得することが可能 になり、ジェネリック医薬品の流通を促進すると同時に、Hatch-Waxman 法上特許期間の延長制度 が導入され、新薬製造者は承認申請による特許期間の実質的喪失を補うために、特許期間の延長 を最長 5 年まで申請することが出来るようになった。 現在のところバイオ医薬品のジェネリック(Biosimilar)のための ANDA 申請が認められていな いため12、本項では、バイオ医薬品を除く医薬品に関する承認の流れを記する。 9 Food and Drug Administration http://www.fda.gov/ [最終アクセス日 2015 年 1 月 30 日] http://www.fda.gov/CombinationProducts/JurisdictionalInformation/ucm136265.htm [最終アクセス日 2015 年 1 月 30 日] 11 Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984 http://thomas.loc.gov/cgi-bin/bdquery/z?d098:SN01538:@@@D&summ2=m&|TOM:/bss/d098query.html [最終アクセス日 2015 年 1 月 30 日] 12 Bruce S. Manheim, Jr., Patricia Granahan and Kenneth J. Dow, ‘Follow-on Biologics’: Ensuring Continued Innovation in the Biotechnology Insudtry, Health Affairs, 25, no.2(2006):394-404. [最終アクセス日 2015 年 1 月 30 日] 10 - 411 - 13 新薬販売承認の流れ 新薬承認までのステップ 1. Pre-clinical Research: 新薬の開発研究と動物実験を含む前臨床試験の期間 2. Investigative New Drug (IND) 申請:前臨床試験から臨床試験に移行するためには、 FDA へ IND 申請し、臨床試験を実施する承諾を得る。 3. NDA 申請:臨床試験完了後に、新薬の承認を取得するための申請。NDA 申請から承認 までのステップ詳細は、以下のチャートを参照。 13 http://www.fda.gov/Drugs/DevelopmentApprovalProcess/SmallBusinessAssistance/ucm053131.htm[最終アク セス日 2015 年 1 月 30 日] - 412 - NDA 申請の流れ 米国保健福祉省・食品医薬品局 http://www.fda.gov/cder/handbook/nda.htm NDA 申請における特許情報の利用について: 新薬承認申請時には、申請医薬品に係る全ての特許情報を提出することが要求されている。特許 情報が公開されるのは、新薬承認後、FDA の Form 3542 を提出し、それが受理されてからである。 新薬承認後に特許を取得する場合には、特許権者は取得から 30 日以内に申請する必要がある。 この場合、ジェネリック医薬品申請が特許申請前に行われていれば、ANDA 申請者は Patent Certification を提出する必要はない14。 新薬承認申請時に提出が課されている特許の種類は、以下の 3 種類となる。 医薬品成分(原材料)特許: Drug substance (ingredient) patents 医薬品製品(配合・成分)特許: Drug product (formulation and composition) patents 用途特許(Method of use patents) 新薬承認申請時の特許情報の提出には、生産工程特許(Process Patents)は含まれない15。 14 http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/CFR-1999-title21-vol5/xml/CFR-1999-title21-vol5-sec314-53.xml[ 最 終 ア クセス日 2015 年 1 月 30 日] submission patent information 15 http://www.fda.gov/drugs/developmentapprovalprocess/smallbusinessassistance/ucm069964.htm [ 最 終 ア クセス日 2015 年 2 月 2 日] - 413 - 上記の特許情報は FDA に対する新薬承認申請に利用されるが、2003 年 6 月 18 日に発表された Final regulations16では、FDA が受理しないとする特許 4 種類が告知された。 (1) 医薬品の包装に関する特許(Patent claiming packaging of a drug) (2) 承認医薬品の代謝成分に関わる特許(Patent on metabolites of approved drugs) (3) 中間体に関わる特許(Patent on intermediates may not be listed) (4) 新薬承認を取得した際の医薬品の用途以外の用途(Patent claiming a method of using a drug other than the method approved in the NDA) 新薬承認申請時に提出が課されている特許の情報は、以下の 4 項目となる 4。 特許番号および特許が無効となる日(Patent number and the date of which the patent will expire) 特許の種類:医薬品の成分、医薬品または用途(Type of patent (drug, drug product, or method of use) 特許権者の氏名(Name of the patent owner) 特許権者が米国以外の国に居住している場合は、特許権者の米国代理人の氏名あるいは 米国でのビジネスを維持または米国に居住している申請者 (If the patent owner reside outside of the US, the name of an agent of the patent owner or applicant who resides or maintains a place of business with the US) FDA が利用する特許の情報は、FDA に提出が要求される上記 4 項目となる。 16 68Fed. Reg.36,676 (June 18, 2003) - 414 - ANDA 申請の流れ: 米国保健福祉省・食品医薬品局 ANDA 申請時の特許情報について: ANDA 申請には、特許証明書(Patent Certification)を提出することが要求される。特許証明書 には、以下の 4 種類がある17 (1) Paragraph I Certification: 製品に関する特許情報が登録されていないという 証明書 (to certify such patent information has not been filed) (2) Paragraph II Certification: 登録されている新薬の特許が無効であるという証 明書 (to certify that the patent on the listed drug has expired) (3) Paragraph III Certification: 特許が無効になる日の証明書 (to certify that the date on which the patent will expire) (4) Patent IV Certification: 承認済の新薬の特許が無効または実施不可能、ある いは ANDA 申請時点で、ジェネリック医薬品の製造、使用または販売が特許権を 侵害しない旨の証明書 17 http://www.fda.gov/drugs/developmentapprovalprocess/smallbusinessassistance/ucm069964.htm [最終アクセス日 2015 年 2 月 2 日] - 415 - (to certify that a patent claimed to apply to the listed drug is invalid, unenforceable, or will not be infringed by manufacture, use, or sale of the drug covered by the ANDA) Patent IV Certification を提出した場合 ANDA 申請者は、当該特許権者に対し ANDA 申請の旨を 通知する義務を負う18。 Hatch-Waxman 法上、Paragraph IV Certification7 による ANDA 申請の場合、特許が無効になる以 前に申請することが出来る。その際、最初の ANDA 申請者に対し 180 日間の保護期間(独占権) が与えられる。ANDA 申請者は、FDA に(1)”Paragraph IV Certification”― 対象の特許が 無効、あるいはジェネリック医薬品が特許侵害をしていない旨の証明書、さらに特許権者に対し て(2)ANDA 申請を通知することが義務付けられている。特許権者は、ANDA 申請通知から 45 日 以内に特許侵害訴訟を提起することが出来る。その時点で ANDA 申請プロセスは 30 ヵ月延長され るが、その間特許の有効期限が切れるか、特許が無効あるいは特許の侵害ではないとの判決が下 った場合は、その限りではない。この 30 ヵ月間に、特許権者がジェネリック医薬品市販開始前 に特許権を主張するする機会が与えられることになる。 18 http://www.fda.gov/drugs/developmentapprovalprocess/smallbusinessassistance/ucm069964.htm [最終アクセス日 2015 年 2 月 2 日] - 416 - Q2.医薬品の販売承認に関して、次の制度があると理解していますが、相違はありますか。また、 制度の概要と運用について教えてください。 (1) 一度認められた医薬品の販売承認の内容の一部変更の承認申請手続 米国連邦規則集第 21 巻 314.70 条上19、スペルミス等の編集上の軽微な変更、または承認 された申請書上の変動幅内でない場合は、一度認められた医薬品の販売承認の内容の一 部変更する場合、申請者は米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)に対して当該変更に関 する承認取得または通知をしなければならない。 同条上の変更には、以下の様な 4 種類の区分がある。20 区分 区分の説明 要件概要 重篤な変更 医薬品の安全性と効能に関連 して医薬品の性質、強さ、品質、 純度、有効性に対し大きな悪影 響をもたらす可能性のある変 更。 当該変更を申請する場合は、 Prior Approval Supplement と 明記しなければならない。申請 者は FDA に対して公衆衛生 (例:医薬品不足)または変更 の遅れた場合に申請者に多大 な困難を課する ことを理由と して事前承認補完のレビュー の迅速処理をリクエストする ことが出来る。 医薬品の安全性と効能に関連 して医薬品の性質、強さ、品質、 純度、有効性に対し中程度の悪 30 日事前届出補完 影響をもたらす可能性のある (Supplement-Changes 変更。 Being Effected in 30 days) 変更をした医薬品流通の最低 30 日前迄に FDA に対して補完を 提出する義務を負う。FDA は、 レビュー後の判断で流通を差 止める権利を保持している。 (major change)事前 承認補完(Prior Approval Supplement) 中程度の変更 (Moderate change) 中程度の変更 (Moderate change) FDA が受理した時点で流通可能 当該補完の場合、 という判断をする一定の中程 Supplement-Changes Being 度の変更。 Effected というラベル表示を 事後届出補完 する義務が課されている。FDA は、レビュー後の判断で流通を (Supplement-Changes 19 21CFR314.70 http://www.fda.gov/downloads/drugs/guidancecomplianceregulatoryinformation/guidances/ucm077097.pdf 〔最終アクセス日 2015 年 2 月 3 日〕 20 - 417 - Being Effected) 軽微な変更 (minor change) 年次報告 (Annual Report) 差止める権利を持っている。 医薬品の安全性と効能に関連 申請者は当該変更を次回の年 して医薬品の性質、強さ、品質、 次報告書上記載しなければな 純度、有効性に対し軽微な悪影 らない。 響をもたらす可能性のある変 更。 (2) 新薬メーカーの臨床試験のデータの保護期間 FDA により承認されたことがない化合物を含む製品のための新薬販売承認申請に対して は、5 年間の保護期間が付与されている。特許無効または侵害をしていないことの証明書 がある場合、ANDA は 4 年後に申請することが出来る。以前に承認された活性成分を含む 医薬品の場合、申請書類に申請者による新しい臨床試験報告が含まれるときには、3 年間 の保護期間が与えられる。例えば、承認された医薬品の活性成分、濃度、用量、投薬方 法または使用条件に影響する変更に関し、当該医薬品の承認のために臨床試験が不可欠 である場合は、保護期間が与えられる。21 (3) 第三者による、ジェネリック医薬品製造のための試験や、追加の効能等探索のた めの試験に対する特許権侵害の免責(ボーラー条項) Hatch-Waxman 法22 は、食品医薬品化粧品法第 501j 条23を修正し、2 つの公共政策のゴー ルを達成するために 1984 年に制定された。その内の一つは、新薬の製造者に対して価値 ある新薬の開発投資を埋め合わせるだけの意味のある特許の保護を与えることであり、 もう一つのゴールは、消費者が低価格のジェネリック医薬品の利益を享受することを可 能にすることである。 同法は、ジェネリック医薬品の承認プロセスである Abbreviated New Drug Application (ANDA)を立法化した。24ANDA は、ジェネリック医薬品の承認プロセスを簡略化し、医薬品 の申請者は、安全性と効能を証明するための臨床試験のデータを提出する義務を免除さ れている25。 21 http://www.fda.gov/Drugs/DevelopmentApprovalProcess/SmallBusinessAssistance/ucm069962.htm 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 27 日〕 22 Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984 (Hatch-Waxman Amendment) 23 Section 505(j), Federal Food, Drug, and Cosmetic Act 24 http://www.fda.gov/newsevents/testimony/ucm115033.htm [最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日] 25 http://www.fda.gov/Drugs/DevelopmentApprovalProcess/HowDrugsareDevelopedandApproved/ApprovalApplicat ions/AbbreviatedNewDrugApplicationANDAGenerics/ [最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日] - 418 - ANDA の立法化により、特許法にも一定の条件の下、医薬品の FDA 承認等を得るために行 う特許発明の使用行為を特許権侵害から免責する条項である、合衆国法典第 35 巻 271 条 (e)(1)(通称ボーラー条項26)が加えられた。27 ボーラー条項上、ANDA のための開発および FDA への情報提出目的に適切に関連した特許 権が付与された医薬品のテスト等は特許権の侵害行為から除外されている。28 26 Roche Products v. Bolar Pharmaceuticals, 733 F.2d 858, 221 USPQ 937 (Fed. Cir. 1984) 27 35USC271(e)(1) http://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s2750.html 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日〕 28 - 419 - Q3.新薬申請(NDA)の承認を受けた先発メーカーは、その医薬品に関する物質特許、製造特許、 使用方法に関するすべての特許を特定し、FDA に情報提供しなければならず、提出された情報は、 FDA が管理する「Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations」(通 称 orange book)に掲載されるとの理解でよいですか。また、例えば、物質特許とは、化合物だ けを指し、配合剤の特許などは特定する必要がないのかなど、物質特許がどのように解釈されて 運用されているのか教えてください。 新薬(先発)メーカーは、米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)への新薬申請時に関連する特 許の情報を提出する必要がある29。米国連邦規則集第 21 巻 314.5330上新薬の販売承認の申請者は、 申請する医薬品の特許ライセンスを受けていない者が製造、使用または販売をした場合、特許権 者により特許侵害訴訟の提起が通常は予想される新薬申請の対象である医薬品の、各特許に関す る情報を所定の書式にて提出する義務を負っている。本条項の目的上、対象となる特許は物質特 許、製品特許および使用方法に関する特許である。 FDA は提出された情報を、Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations (通称オレンジブック)上で掲載している。 29 30 FDA CDER の Drug Information Specialist の回答 21CFR314.53 - 420 - Q4. 医療機器、食品添加物、着色料の承認について、医薬品の承認との違いはありますか。 (1)医療機器の承認 FDA が所管する医療機器は、クラスⅠ、 Ⅱ、 Ⅲの 3 種類に分類される。クラスⅠの医療機器に 関しては、市販前届出(Premarket Notification: 510(k))は必要ないが、クラスⅡの医療機器 には 510(k)の市販前届出が必要である。クラスⅢの医療機器に関しては、市販前承認(Pre-market Approval: PMA)を取得する必要がある31。 市販前届出(Premarket Notification: 510k)の流れ32 31 How to Market Your Device http://www.fda.gov/MedicalDevices/DeviceRegulationandGuidance/HowtoMarketYourDevice/default.htm 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 23 日〕 32 510(k) Submission Process http://www.fda.gov/MedicalDevices/DeviceRegulationandGuidance/HowtoMarketYourDevice/default.htm 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 23 日〕 - 421 - 市販前承認(Pre-market Approval: PMA)の申請プロセス33 33 PMA Review Process http://www.fda.gov/MedicalDevices/DeviceRegulationandGuidance/HowtoMarketYourDevice/PremarketSubmiss ions/PremarketApprovalPMA/ucm047991.htm#steps〔最終アクセス日 2015 年 1 月 23 日〕 - 422 - (2)食品添加物の承認 食品添加物として米国で新規の使用を認められるためには、「食品添加物申請 (Food Additive Petition)」を提出し、FDA の許可を受けなければならない。食品添加物の許可または許可の修 正を申請する場合は、食品添加物の名称、化学的情報(化学名や成分)、物理的・化学的・生物 学的特性等の添加物に関する全ての情報、使用目的、使用量、安全性に関するデータ等を FDA に 提出する必要がある。FDA は申請書の受領後、原則 15 日以内に受理の可否を通知する。受理され た場合には、受理通知書の日付から 30 日以内に、提出された情報のうち、安全性のデータや安 全性を証明するために行った実験方法、副作用報告、食品添加物に含まれる原材料のリスト等が 情報開示される。なお、当局から情報あるいはサンプル等を提供するよう要求された場合はすみ やかに提出することが必要である。申請者が申請受理日から 180 日以内に提出をしなかった場合 は、その申請は却下される34。 (3)着色料の承認 米国で着色料を食品に使用するためには、「着色料申請 (Color Additive Petition)」FDA の承 認を受ける必要がある。申請者は、化学名、商標名、分子式・分子量・化学構造等の構造情報、 製造過程、特性等を含む着色料に関する全ての情報、使用量、使用法、安全性等に関する情報を FDA に申請する必要がある。申請の際、米国在住の申請者、法定代理人、委任代理人による署名 が必要である。FDA は、申請書の受領後、原則 15 日以内に受理の可否を通知する。受理された 場合には、受理通知書の日付から 30 日以内に、提出された情報のうち、安全性のデータや安全 性を証明するために行った実験方法、副作用報告、食品添加物に含まれる原材料のリスト等が情 報開示される。なお、当局から情報あるいはサンプル等を提供するよう要求された場合は速やか に提出する必要がある。申請者が申請受理日から 180 日以内に提出をしなかった場合は、その申 請は却下される。 申請する着色料が牛・豚・羊等の畜肉、畜肉の加工品、または鶏・七面鳥等の家きん肉の加工品 に使用される場合は、FDA より申請書が米農務省(USDA35)に転送され、同省においても審査され る36。 34 35 36 食品医薬品化粧品法第 409 条(b)、21CFR 171.1 the U.S. Department of Agriculture 21CFR 71.1 - 423 - Q5.医薬品の承認について、第三者に対する公示方法や公示内容を教えてください(オレンジブ ックの他に)。 米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)の Drugs@FDA37というウェブサイト上、医薬品の承認審査 に係る情報等(承認項目、ラベル情報、承認書等)が公示されている。同サイト上、医薬品名、 有効成分、申請番号等による検索が可能であり、さらには月毎に申請された医薬品の検索もする ことが出来る。 新たに承認された医薬品に関する情報は、週毎に更新される FDA の New and Generic Drug Approvals38上で公示されている。同サイトでは、医薬品名、有効成分、剤形、申請の種類等の情 報が記載されている。 さらに FDA の Information for Customer39 上では、消費者向けに米国国立衛生研究所(NIH)の 医薬品、サプリメント、ハーブの投薬量、副作用等に関する情報を検索することが出来る MedlinePlus40、FDA の副作用を回避することをサポートする目的で提供されている Medication Guides 等へのリンクが記載されている。 以上 免責事項 本報告書は、信頼出来ると思われる情報に基づき作成しておりますが、内容の正確性および完全 性を保証するものではありません。グロービッツ社は、本報告書の記載内容に関して生じた直接 的または間接・派生的な損害および利益の損失に対して一切の責任を負うものではありません。 37 Drugs@FDA http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/drugsatfda/ 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 22 日〕 38 New and Generic Drug Approvals http://www.fda.gov/Drugs/NewsEvents/ucm130961.htm 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 22 日〕 39 Information for Customer http://www.fda.gov/drugs/resourcesforyou/consumers/ 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 22 日〕 40 MedlinePlus http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/druginformation.html 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 22 日〕 - 424 - <米国法律事務所向け質問事項と回答> (DLA Piper LLP (US)が作成したものの翻訳) お求めに応じ、我々は医薬についての米国の特許期間延長(PTE)に関するご質問に 対する回答と分析を提供する。ご承知のように、PTE は、市販前に必要な FDA の承認 により事実上「失われた」特許期間を特許所有者に対し復元するプロセスを指す。 35USC§156 は、PTE のために米国の法律を体系化し、以下の回答全体を通して参照 されている。 I. 延長登録の対象となる処分 1. 延長登録の対象となる承認について、追加又は除外を望む声はありますか。 法律 35USC§156 は、規制当局の承認プロセスに関連する特許期間延長のための要件 を規定する。小分子薬に関連する特許については、この法律は次の要件を設定して いる。 ・特許が、製品、製品の使用方法または製品の製造方法をクレームしていること ・PTE 申請が提出される前に、特許の存続期間が満了していないこと ・特許が、§156 による PTE を以前に受けていないこと ・申請は特許権者またはその代理人が提出しなければならない ・特許でクレームされている製品が、商業的販売または使用の前に、規制当局によ る審査を受けるべき対象となっていること ・規制当局による審査中の製品は、製品について最初に商業的販売や使用を許可さ れたものであること。 製品ごとに 1 件の特許のみが PTE を受けることができる。言い換えれば、企業は医 薬品をカバーするいくつかの特許(例えば、組成物特許、製造方法または同じ医薬 品の使用についての第三の特許)を有することがあるが、これらの特許のうちの1つ のみが PTE を受けることができる。申請人は、PTE を受ける特許を選択できる。 特許ごとに1つの製品のみが PTE の保護を受けることができる。例えば、特許は、 複数の医薬品をカバーするクレームを有することがあるが、1つの医薬品のみが PTE のベースとなり得るのであり、その1つの医薬品のみが PTE の利益を享受できる。 II. 延長登録の対象となる特許 2. 医薬品の承認に基づいて存続期間が延長される特許のクレームとして、現行法で 規定されているもの(製品、製品の使用方法、製品の製造方法など)以外に、何を追 加すべきと考えますか?(例えば、製品を製造するための装置、製品の中間体など) 追加すべきと考える場合、どのようなクレームですか? 準拠法の下では、特許クレームが、その商業的販売や使用前に規制当局による審査 の対象となる製品、またはその製品の使用方法またはその製品の製造方法をカバー している場合のみ、特許は特許期間延長を受けることができる。(35USC§156) 法律によって規定されるように、中間体および代謝物をカバーするクレームは、「製 - 425 - 品」をカバーしていないので PTE を受けることができない。製品を製造するための 装置およびパッケージングのような医薬品の商業化をカバーし得る他のタイプのク レームもまた、法律の下で許可されていない。多くの場合、医薬品製品の組成物、 使用方法および製造方法をカバーするクレームはいくつかの別個の特許に分離され る。これらの特許の1つのみが特許期間延長を受けることができる。申請人は、他 の資格要件を満たしている場合(質問 1 に対する回答を参照)、PTE を取得する特許 を選択できる。 3. 製品(新規有効成分)に関する最初の承認に基づいて、関連する複数の特許権の 延長登録が認められることを望む声はありますか。 35USC§156 の下では、製品の最初の商業的販売や使用が許可されると特許権者は、 製品に対する組成物、製造方法または使用方法のクレームを有する単一の特許につ いて特許期間延長の申請を行うことができる。そのため、承認された製品につき1 つの特許のみが PTE の対象である。 PTE は単一の特許についてのみ入手可能であるが、PTE 申請は複数の特許について可 能である点に注意していただきたい。PTE の申請人は、PTE の最終決定を受けるまで、 これらの複数の特許のどれを延長するか選ぶ必要はない。 我々の知る限りでは、この問題に関する議論はない。しかし、研究開発型の製薬会 社は、追加の PTE の可能性を感謝するであろうと想定できる。 III. 延長が認められるための要件 4. 製品(有効成分)に関する最初の承認により特許権の存続期間の延長が認められ た後、同一製品(同一有効成分)に関する後行承認(が行われた場合に、後行承認に 基づいて同一特許権の存続期間の再延長を望む声はありますか。 35USC§156 の下では、製品についての最初の商業的販売または使用が許可された後、 特許権者は、特許期間延長の申請を行うことができる。特許に PTE が許可された後 は、同じ製品について、後行承認に基づいて追加 PTE を受けることができない。 一般的に、PTE の復元は PTE 申請のベースとなる特定の FDA 承認製品にのみ適用され る。事態の進展によっては、この回復は、商業的に重要でないままで終わることも あり得る。例えば、あるバイオ製薬会社が、医薬品 A および医薬品 B を含む医薬品 のクラスをカバーした幅広い製品の特許を有し、特許は 2015 年に満了するものとす る。FDA が 2013 年に医薬品 A を承認した場合、同社は PTE を申請でき、2020 年まで ずっと追加の保護を確保し得る。しかし、この PTE は医薬品 A のみを保護する。医 薬品 B は、それが承認され A よりもはるかに成功したことが判明したとしても、2015 年の後は保護されないことになる。 我々の知る限りで、この問題に関する議論はない。しかし、研究開発型の製薬会社 は、追加の PTE の可能性を感謝するであろうと想定できる。 - 426 - 5. 物質 A 又は B を選択肢とする化学物質発明に係る特許権について、有効成分 A を 含む医薬品の先行承認を受けた後、先行承認に基づく延長登録に加えて、後行承認 に基づいて新たな延長登録が現行法では認められますか。認められない場合、認め て欲しいと望む声はありますか。 特許に PTE を付与された後は、同一または異なる製品の後行承認に基づいて追加の PTE を得ることはできない。さらに、PTE が、製品 A と製品 B についてのクレームの 特許に対し、製品 A に基づいて付与されている場合、上記 4 に記したように、PTE は 製品 A についてのみに適用され、製品 B に適用されるクレームは、本来の特許期間 の終了時に満了となる。 製品自体または製品を使用する方法をカバーする特許とは対照的に、医薬品または バイオロジックの製造方法をカバーする特許に関しては PTE の扱いを異にする曖昧 な規定がある。新薬申請またはバイオロジックライセンス申請など、適用される規 制審査プロセスを経ているならば、製造特許の PTE 保護には最初に承認された製品 に加え、任意の他の医薬品またはバイオロジック製品の製造が含まれる。上記 4 に 記したのと同じ例を使用すると(但し、特許が医薬品の製造方法をクレームしてい るとする)、製薬会社は 2020 年まで他者が A または B のいずれかを製造するために その方法を使用するのを禁止できるであろう(A と B の両方が適用される規制審査プ ロセスを経たとする)。 6. 有効成分 A に関する化学物質発明に係る特許権について、有効成分 A を含む医薬 品で先行承認を受けた後、有効成分 A と有効成分 B(有効成分 B は別の医薬品の有効 成分として既に承認されたもの)を含有する配合剤で後行承認を受けた場合、後行承 認に基づく延長登録が現行法では認められますか。認められない場合、認めて欲し いと望む声はありますか。 2 つの有効成分、A または B を有する医薬品製品をクレームする特許の存続期間を延 長するためには、A または B のいずれかが以前に販売されていてはならない。医薬品 製品が有効成分 A と B から構成されている場合、PTE の製品として適格であるために は、成分の1つは、それ以前に承認されていてはならない。医薬品製品が有効成分 A と B から構成され、A と B の両方が個々に事前承認を受けた場合には、PTE はその配 合剤には入手不可である。 2008 年 6 月には、米国特許商標庁(「PTO」)は、医薬品製品のシムビコート(フマ ル酸ホルモテロール二水和物ブデソニド)吸入エアゾールをカバーするアストラゼ ネカの米国特許第 5674860(「'860 特許」)は特許期間延長(「PTE」)について不適 格であると判断した。PTO の決定は、PTE は以前に承認された 2 種の有効成分(相乗 的に作用して新製品を作り出しているとされる)を含有する医薬品製品には使用で きないという同庁の立場を明確にしている点で重要である。 35USC§156 における PTE 法の下では、(1)特許の存続期間が満了しておらず、(2) 特許は、以前に延長されておらず、(3)PTE 申請が新薬申請(「NDA」)の承認の 60 - 427 - 日以内に、記録上の所有者によって PTO に提出されており、(4)クレームされてい る製品、使用、または製造方法が、それが市販される前に、「規制審査期間」に服 しており、(5)NDA が、最初の許可された医薬品製品の商用使用であるのであれば、 医薬品をクレームする特許の存続期間は、特許の本来の満了日から延長されるもの である。この場合、シムビコート NDA は、ブデソニドまたはフマル酸ホルモテロー ル二水和物の最初の許可された商用使用ではなく、また、PTE 申請は 60 日の法定期 間内に提出されなかったため、PTO は、アストラゼネカの PTE 申請を拒絶した。 FDA は 12 歳以上の喘息患者の長期維持治療について 2006 年 7 月 21 日にシムビコー トを承認した。シムビコートは以前に承認された 2 種の有効成分を含有している。 2006 年 9 月 19 日には、アストラゼネカは、PTO に PTE 申請を提出した。アストラゼ ネカはその申請において、「ブデソニドとフマル酸ホルモテロール二水和物の組み 合わせは新しい有効成分として FDA による十分な科学的な審査を必要としていた」 ので’860 特許は PTE の対象となるという立場を取っている。アストラゼネカは、明 らかに PTO の特許審査手順マニュアル(「MPEP」)に依拠していた。MPEP は関連部分 において、「相乗効果を有することも薬理学的相互作用を有することも示されてい ない 2 つの有効成分を有する承認された製品は、2 種の有効成分からなる単一の有効 成分を有するものとはみなされない」と記載している。この記載は、2 つの以前に承 認された有効成分が相乗的に相互作用するのであれば、PTE の対象となる新製品を生 じるものであるという可能性を提起すように思われる。 PTO は、EMLA(リドカイン;プリロカイン)局所クリームに関する 1994 年の決定で、 以前に承認された有効成分を含有する配合剤製品の PTE の問題を最初に検討した (我々の知る限り)。このケースで、PTO は 35USC§156 の立法経緯に合わせ、2 つの 以前に個別に承認された有効成分の組み合わせをクレームする特許は、「組み合わ せにより何らかの強化された効果があるにもかかわらず」PTE の対象ではないと判断 した。さらに最近では、2004 年には、米国連邦巡回控訴裁判所は、Arnold Partnership v. Dudas において「当裁判所は、特に法律の文言が相乗的な組み合わせと非相乗的 な組み合わせを区別していない以上、相乗効果が[PTE]政策についての適切な区別で あるとは思わない」と述べた。これらの決定にもかかわらず、特許権者は、おそら く上で引用した MPEP の文言の曖昧さゆえか、以前に承認された 2 種の有効成分を含 む併用薬製品をカバーする特許について PTE の可能性を提起し続けてきた。 IV. 延長期間 7. 延長期間が最大で5年であることについて、当該期間の拡大や短縮を望む声はあ りますか。 5 年以内の期間、特許を延長できる。すべての場合において、特許延長を含む製品の 総特許寿命は製品の承認日から 14 年、または言い換えれば、販売可能になった時か ら 14 年を超えることができない。承認後の製品の特許寿命が 14 年以上を有する場 合、製品は特許延長の対象ではない。 - 428 - 規制審査期間は、特許延長のための基礎である。基本的に、規制審査期間は 2 つの 部分、すなわち、試験段階および承認段階から構成されている。ヒトの医薬品製品 の試験段階は、治験薬免除(治験新薬申請)の効力発生日から販売申請(新薬申請) の初期提出までの期間である。承認段階は、販売申請の提出から承認までの期間で ある。 PTE の長さを計算する際に、すべての規制期間は試験段階と承認機関の承認段階に分 けられる。延長されるべき特許が発行された後に発生する規制審査期間が、次の計 算による算入の対象である。 第一に、規制審査期間の各段階は、申請人がその段階中にデューデリジェンスを持 って行動しなかったすべての時間が短縮される。時間の短縮は、FDA が、企業がデュ ーデリジェンスを持って行動しなかったことを認めた後にはじめて発生する。 第二に、そのような短縮後、試験段階中に残っている時間の半分が承認段階の残り 時間に追加され延長対象の合計期間を構成する。 第三に、販売申請の承認の日以降の総残り特許期間が 14 年を超えることになる場合 を除き適格期間のすべてを算入できる。延長の期間にさらなる制限は、延長期間が 5 年を超えることができないということである。 例えば、最長である 5 年の延長の対象となる承認された医薬品製品が、その規制審 査期間の終了時に本来の特許期間が 10 年残っていた場合、その後、5 年のうちの 4 年間を延長に算入できる。 我々の知る限り、最大 5 年の PTE の期間を延長ないし短縮しようという議論はない。 しかし、我々は、研究開発型製薬会社が 5 年を超えた PTE 最長期間の延長を感謝す るであろうと想定する。対照的に、我々は、ジェネリック医薬品製造業者は期間が 短縮されれば感謝するであろうと想定する。 8. 承認日から満了日までの期間が最大14年に制限されていることについて、当該 期間の拡大や短縮、あるいは制限の撤廃を望む声はありますか。 我々の知る限りでは、期間を延長または短縮しようという議論はない。しかし、質 問 7 に関して説明したように、我々は、研究開発型製薬会社は最長期間の延長を感 謝するであろうと想定する。対照的に、我々は、ジェネリック医薬品製造業者は期 間が短縮されれば感謝するであろうと想定する。14 年の期間をカバーしている 35USC156(C)(3)の規定は現在有効である。 35USC 156 特許期間の延長 (c)サブセクション(a)に基づく期間延長を受ける資格のある特許の存続期間は、次 の場合を除き、特許が付与された日の後にその承認製品に対して生じた規制審査期 間と等しい期間を延長されるものとする。 - 429 - (1)規制審査期間の各期間は、規制審査期間の当該期間中に延長申請人がデューデリ ジェンスを持って行動しなかった時、サブセクション(d)(2)(B)に基づいて決定され る期間分を短縮される。 (2)パラグラフ(1)によって要求される短縮をした後、延長期間はサブセクション(g) のパラグラフ(1)(B)(i)、(2)(B)(i)、(3)(B)(i)、(4)(B)(i)および(5)(B)(i)に規定 される期間における残存期間の半分のみを含むものとする。 (3)規制審査期間の根拠となった法律の規定に基づいて行われた承認製品について の承認の日以降における特許存続期間中の残存期間を、(1)および(2)に基づいて変 更された規制審査期間に加算した場合において、その残存期間が 14 年を超えるとき は、延長期間は、前記の両期間の合計が 14 年を超えないように短縮される。また (4)いかなる場合も、2 以上の特許がサブセクション(e)(1)に基づいて、いずれかの 製品に対する同一の規制審査期間を延長されることはない。 9. 延長期間が、臨床試験実施申請(IND)から新薬申請(NDA)までの期間の 1/2 と、N DAから承認までの期間の合計であることについて、見直しを望む声はありますか。 PTE の長さを計算する際に、前述したように、FDA の規制審査期間の長さは、PTE の 長さを計算することで一体化されている。FDA はその規制審査期間の決定は、次のい ずれかの事象の後、最終的なものと考えている:1)デューデリジェンスの申立てを 提出するための 180 日間の期間の満了期限、または 2)時宜に適した提出された改訂 請求、デューデリジェンスの申立て、またはヒアリング請求についての決定。 デューデリジェンスの申立てを提出して、FDA によって決定された規制審査期間の長 さに異議を唱えることができる。何人も、規制審査期間決定の公表後より 180 日以 内は FDA にデューデリジェンスの申立てができる。このような申立書は、規制審査 期間中に製品について FDA の承認を求めるにあたり特許期間回復の申請人がデュー デリジェンスを持って行動しなかったとして FDA の決定に異議を申し立てるもので ある。 デューデリジェンスの申立てに加えて、申請人は、FDA によって決定された規制審査 期間の長さに異議を申し立てるデューデリジェンスのヒアリングを請求できる。何 人も、FDA のデューデリジェンスの決定の公表後 60 日以内に、FDA がデューデリジ ェンスの決定に関する非公式ヒアリングを行うよう請求できる。 V. 延長回数 10. 1つの特許について複数回の延長を望む声はありますか 否。同じ特許の複数の延長を登録することは不可能である。 35USC§156(c)(4)によると、 「いかなる場合も、2 以上の特許がサブセクション(e)(1) に基づいて、いずれかの製品に対する同一の規制審査期間を延長されることはない」。 このように、1 件のみの特許に対する期間は、いずれかの製品の規制審査期間につい て延長できる。 - 430 - 同じ特許についての PTE の複数の申請が 2 つのシナリオで発生する可能性がある。 第一に、同一の特許であっても申請人が異なれば、PTE について複数の申請を提出で きる。これが起こると、適切な場合には、特許の存続期間の延長証明書は、特許期 間の延長についての最初の申請に基づいて発行される。(37CFR§1.785(a)。)ここで、 特許権者とその代理人のみが PTE を申請できるので、このシナリオは、複数の当事 者が共同所有している特許に限定しているようだ。 第二に、同じ出願人は、同じ特許について複数の PTE 申請を提出できる。このよう な状況が発生した場合、特許権者には、延長を望む製品を選ぶための期間(通常は 1 ヶ月)が与えられる。選定の際には、申請人は、同時に明確に他の非選定製品につい ては PTE 申請を撤回しなければならない。特許権者が、設定された期間内に単一の 製品を選定しなかった場合、特許庁は、製品のうち特定した 1 件の特許について延 長の証明書を発行する。 VI. 延長された特許権の効力 11. 延長された特許権の効力が及ぶ範囲について、現行法の規定を変更する必要は ありますか。ある場合には、どのように変更すべきだと考えられますか。 35USC§156 の下では、PTE を受けた特許はベースとなる特許と同じ保護範囲を有す るが、承認された製品に限定される。我々の知る限りでは、PTE で特許の保護範囲拡 張を求める議論はない。上記 4.における我々の例は、この質問に関連している。我々 は、PTE の現在の法定スキームに対して変更は行われるべきではないと考えている。 最初の承認された医薬品についての 1 回の延長を特許出願人に提供することは、失 われた時間や規制当局の承認プロセスの遅れを補うためのメカニズムである。また、 PTE を取得した原特許でカバーされることがあり得た製品のフォローのために特許 出願人が被る(財務的/経済的その他の)損害を評価することは困難であろう。 *:***** 35USC§156 に基づく PTE を有する特許は、基本特許と同一の保護範囲を有するが、 承認された製品に限定される。この意味において、35USC§156(b)は、 (b) (d)(5)(F)に定める場合を除き,本条に基づいて存続期間が延長された特許から 生じる権利は,特許の存続期間が延長されている期間中,(1) 製品をクレームして いる特許に関しては, (A) 特許存続期間の満了前は, (i) 該当する行政審査の根拠となった法律の規定に基づき,又は (ii) (g)(1),(4)若しくは(5)に記載した行政審査の根拠となった法律の規定に基づ き,及び (B) 特許延長の基礎となった行政審査期間の満了以後は,その製品に関して承認さ れた使用に限定されるものとし, (2) 製品の使用方法をクレームしている特許に関しては, (A) 特許存続期間の満了前は, (i) 該当する行政審査の根拠となった法律の規定に基づき,及び - 431 - (ii) (g)(1),(4)若しくは(5)に記載した行政審査の根拠となった法律の規定に基づ き,及び (B) 特許延長の基礎となった行政審査期間の満了以後は,特許によってクレームさ れ,かつ,その製品に関して承認された使用に限定されるものとし,また (3) 製品の製造方法をクレームしている特許については, (A) 認可製品,又は (B) (g)(1),(4)若しくは(5)に記載した行政審査期間の対象とされた場合の製品を, 作るために使用される製造方法に限定されるものとする。 本条において使用するときは,「製品」は,認可製品を含む。 換言すれば、クレーム範囲全体に及ぶのではなく、承認された製品を含め範囲だけ である。 承認された製品は、米国 FDA によって承認されたように、出願人の PTE 出願におい て特定される。有効な医薬化合物以外、承認された製品は、その PTE 出願中に、他 の成分、効果、効能、用法及び用量によって具体的に定義されることは要求されな い(つまり、承認された製品は、承認された製品が FDA の承認を受けた、特定の投 与量、有効性又は適応症に限定されるものではない)。 PTE 承認出願は、出願人が、1)承認された製品を特定し、2)出願人が延長を求めてい る特許を特定し、かつ、3)承認された製品に向けられているクレームを特定するこ とを求めている。出願人は、一般名(tadalifil)、化学名(6R、12AR)-2、3、6、7、 12、12a-ヘキサヒドロ-2-メチル-6-(3,4 メチレンジオキシフェニル)-ピラジボ-[2’、 1’:6,1]ピリド[3,4-b]インドール-1,4 ディオーネ)、化学構造、代替的な化学名及 び商品名(Cialis)によって承認された製品を具体的に定義している。出願の 4 頁 において、出願人は、延長が求められている特許を発明者の名前、特許番号、発行 日、及び満了日を指定して特定している。さらに、出願人は、5 頁で、どのクレーム が承認された製品に向けられているか、及びそのクレームについての明細書でのサ ポートを含め、特許のクレームが、承認された製品、又は使用方法、又は承認され た製品を製造する方法を含むという陳述書を提出している。 Thus the extension was not limited to the besylate salt of amlodipine. 用語「承認された製品」が、延長された保護範囲に属するものと解釈された訴訟が ある。Pfizer Inc. v. Dr. Reddy’s Laboratories, Ltd.において、Dr. Reddy は、 米国特許 4572909(以下「909 特許」)の PTE によってファイザーに付与された保護 範囲は、アムロジピンのベシル酸塩が、承認された製品として特定されているので、 ベシル塩以外のアムロジピンの塩には及ばないと主張した。Pfizer Inc. v. Dr. Reddy’s Laboratories, Ltd., 359 F.3d 1361, 1366 (Fed. Cir. 2004)参照。裁判 所は、延長を特定の承認された塩に限定する Dr. Reddy の試みは不十分であると判 断し、909 特許の延長された期間はアムロジピン及び任意の塩又はエステルを含むと 結論付けた。同上。 このように、延長は、アムロジピンのベシル酸塩に限定されなかった。 適格性及び行使の両方について保護範囲に関する幾つかの論争が存在する。質問 7 及び 8 に関して説明したように、新薬メーカ及びジェネリック医薬品メーカとの間 - 432 - での緊張がしばしば証明されている。この緊張は付録 B2 で強調されている。これは、 成文法に基づいて付与された保護範囲の文脈で、35 USC§156 がどのように解釈され るかの要約並びに法的分析を提供する法的分析記事である。ジェネリック医薬品メ ーカは、承認された製品の解釈など、法定言語の狭い解釈を好み、一方、新薬メー カは、より広い解釈を好む。 我々は、PTE を規定する法的枠組みの変更に関する議論を何ら認識していない。我々 は、PTE に関する現在法定枠組みに対して何ら変更が行われるべきではないと考えて いる。 特許出願人に、最初に承認された医薬について一回の延長を提供することは、規制 当局の承認手続における失われた時間又は遅れを補う仕組みである。PTE を取得する 原特許に含まれるかもしれない後発品について特許出願人になされた損害(財務的 /経済的又はその他)を評価することは困難であろう。 12. 延長された特許権の効力は、その製品に関して承認された用途に限定されます が、その後の新たな承認に関わる用途も含み、第三者が受けた承認に関わる用途も 含むとの理解でよいですか。追加承認された用途に効力が及ぶ点に対する賛否いず れかの声はありますか。 35USC§156(c)(4)と§156(d)(5)(F)によれば、製品について認可された既存の用途 に基づく特許期間の延長は、資格を備えたその後の新たな用途をカバーするように 解釈できる。但し、資格を備えたその後の新たな用途が、特許の存続期間満了前に 承認された場合に限る。ここで、資格を備えたその後の新たな用途は、それらが、 以下に記載の要件を満たすのであれば、特許権者または第三者によって得ることが できる。1 製品をクレームする特許については、資格を備えたその後の新たな用途は、既存の 承認された用途に基づいて暫定延長の期間中、規制当局による審査中である何らか の用途を含む。 製品の使用方法をクレームする特許については、資格を備えたその後の新たな用途 は、特許によってクレームされ、製品について承認された何らかの使用に限定され る。ここで、資格を備えたその後の新たな用途も、既存の承認された用途に基づい て暫定延長の期間中、規制当局による審査中でなければならない。 製品の製造方法をクレームする特許の場合、資格を備えた方法は、承認された製品 または既存の承認に基づいて暫定延長期間中に規制当局による審査がされている製 品のいずれかを製造するために使用される製造方法に限定されるであろう。 我々の知る限り、追加の用途をカバーすることに対して賛成・反対の議論はない。 もっとも、我々の意見では、追加の用途をカバーすることに対して反対の議論はあ り得るだろう。それによって、特許権者は、彼らが以前に努力も投資も行っていな い用途について特許を延長することが可能になるからである。例えば、特許は、特 許権者が、実際のデータを持っていなかったものを含む多くの疾患をカバーする医 - 433 - 薬品の使用に関する一般的なクレームを含むことができる。このような疾患の治療 が、その後、第三者に対し承認された場合、オリジナルの特許権者も恩恵を受ける ことができるようになる。 13. ジェネリック医薬品の製造販売の承認を申請するに当たって、延長された特許 権の効力の及ぶ範囲に該当製品が含まれるか否かの判断で迷うことはありますか。 迷うことがあるとすれば、それはどのような理由からですか。 FDA「オレンジブック」は、ブランド医薬品を含む組成物及び適用可能な有効期限 (PTE を含む)を列挙している。(21CFR§314.53)。ジェネリック薬メーカも、どの 医薬品が PTE を有する特許を生み出したかについての公開 FDA 情報にアクセスでき る。 また、公開された特許の表紙に、当初の特許期間に対する延長(PTE を含む)及び調 整が列挙されている。ジェネリック医薬品メーカは、ジェネリック医薬品の承認申 請より十分前に、特許調査を行い、侵害分析を行うために適切な特許弁護士を雇う であろう。 しかし、製造方法を含む特許は、オレンジブックに列挙されていない。それが PTE を受けた製造特許の場合、特許調査及び特定された製造特許の適用性の分析がなけ れば、ジェネリック製品が PTE を有する特許に含まれるかどうかは直ぐには分から ない。 質問 11 に対する回答はここでも重要である。Pfizer Inc. v. Dr. Reddy’s Laboratories, Ltd.において強調されたように、ジェネリック製品が、期間が延長 された特許権に含まれるかどうかを決定する際にはかなりの困難があり得る。 VII. (延長登録出願の手続) 14. 承認日から 60 日以内に延長登録出願を行うという時期的制限について、当該期 間の拡大や短縮を望む声はありますか。 35USC156 の下で、特許の存続期間の延長の申請は、製品が法律の規定(その法律の規 定の下で、適用される規制審査期間が商業的販売または使用のために発生した)の下 で商業的販売または使用許可を受けた日から 60 日の期間内に記録された特許権者ま たはその代理人が提出しなければならない。 35USC156(d)(1)を参照していただきたい。60 日の期間に関するこの文言は、米国発 明法によって明らかにされている。この法律においては「製品が本項第2文の許可 を受領した日を決定する目的で、そのような許可が営業日東部時間 16:30 以降に送 信されたか、または営業日でない日に送信された場合には、製品は、翌営業日にそ のような許可を受けるものとみなす。前文の目的のために、「営業日」という用語 は、毎週月曜日、火曜日、水曜日、木曜日または金曜日を意味し、タイトル 5 のセ クション 6103 の下での法的休日を除く」と規定している。AIA セクション 37 および 35USC156 を参照していただきたい。USPTO は、正式に申請が正式に完了したかどう か、および特許が延長の対象であるか否かを判断する。法律は、米国特許商標庁長 官が 35USC156 に準拠して 60 日以内に特許期間の延長の申請書の提出があったこと を、農務省長官または保健社会福祉省長官に通知し申請書のコピーを渡さなければ ならないとしている。庁長官からの申請の受領後 30 日以内に、各省長官は、適用さ - 434 - れる規制審査期間の長さを決定し、決定を庁長官に通知する。庁長官が特許が延長 の対象であると判断した場合、庁長官は、適切な法的規定に基づいて特許の延長期 間を計算し、適切な延長証明書を発行する。(35USC156)。 企業が 60 日の期限を徒過するケースがあった。例えば、Medicines Company(MDCO) は、2000 年に 62 日目に PTE を申請した。同社は 2010 年にバージニア州東部地区で USPTO を訴え、最終的には PTE を受けたが、このケースは正にぴったりの事実であり 60 日の期間の計算に関する質問に基づいている。(Angiomax; No. 1:10-cv-81-CMH/TCB)。 USPTO はまた上記 6 に記載した例でアストラゼネカが 1 日だけ提出期限を徒過してい たという理由で PTE を否んだ。これは弁護士が計算間違いをしたものである。 VIII. 第三者に対する公示方法 15. 承認情報や特許情報へのアクセス性について、満足していますか。 我々は、承認情報と特許情報へのアクセス性には概ね満足している。 我々の意見では、全体として米国法曹界が同意するだろう。米国での承認情報と特 許情報は、特許所有者だけでなく、第三者にも広くアクセス可能である。非常に限 られた事例では、特許権者は、特許情報へのアクセスを制限できる。例えば、特許 権者は、出願または特許が「秘密」とみなされることまたは出願の非公開を請求で きる。しかしそのような例はまれである。公的に利用可能な PTE 承認情報、特許情 報並びに承認された医薬品情報に関して、以下にリンクをまとめた。 http://www.uspto.gov/patents/resources/terms/156.jsp 35USC§156 の下で延長された特許と特許期間のリストを提供する。 http://www.uspto.gov/portal-home.jsp 特許および特許出願についてのすべての書誌情報とファイル履歴が含まれている特 許出願情報検索(PAIR)データベースへのアクセスを提供する。 http://patft.uspto.gov/ 公開された米国出願および発行された米国特許を含む検索データベースへのアクセ スを提供する。 http://assignment.uspto.gov/ USPTO の譲渡証データベースへのアクセスを提供する。 http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/ob/ 承認された医薬品製品に関する様々な情報を含む FDA「オレンジブック」へのアクセ スを提供する。 - 435 - 【質問項目及び回答】 【欧州】 <英国知的財産庁(UKIPO)向け質問事項と回答> (UKIPO からの回答を翻訳したものを掲載した) (制度の趣旨等) Q1. 特許権の存続期間の延長制度の導入の趣旨・経緯を教えてください。また、 延長制度導入にあたり新薬の研究開発にインセンティブを与えることが導入趣 旨に含まれますか。新薬の研究開発にインセンティブを与える上で重視すべき 発明は何であり、何処まで効力を与えるべく制度設計されたか教えてください。 医薬品や植物保護製品の SPC 制度は当該領域における研究にインセンティブ を与えるべく設計されたものです。 こうした製品は、これらが安全であることを示すための試験や治験を経た後 でなければ、関係当局による市販の承認を得られません。特許権者は市販の承 認を得るまでこの種の製品に対する特許を実施できませんが、承認を待つ長い 期間も 20 年の特許存続期間に算入されてしまいます。 排他的使用期間内に適切な収益を得ることを可能にする十分な保護が得られ ないかぎり、EU ではこうした製品の開発が続けられなくなると懸念されていま した。SPC 体制はこの問題に取り組むものです。 SPC 制度は(全加盟国において直接効果を有する)EU 規則によって制定され ています。これは EU 加盟国間で特許存続期間延長制度を調和させる意図のもと で行われました。 EU 規則(EC) No. 469/2009 及び(EC) No. 1610/96 に準拠しているとはいえ、 SPC は国家の権利であるため、1 つの医薬品又は植物保護製品が加盟国ごとに 別々の SPC を持つことも有り得ます。 Q2. 延長対象として重視された特許発明の種類(延長対象を有効成分の特許発 明に限定するか、その他の特許発明も対象とするか) SPC の取得条件は SPC 規則第 3 条に定められています。SPC は単一の「製品」 に対して取得できますが、この「製品」は単一の活性成分であっても、複数の 活性成分の組み合わせであっても構いません。各製品にはただ1つの証明書が - 437 - 付与されることになっており、この場合、ある1つの製品は厳密な意味である 1つの活性成分であると解釈されます。このため、ある活性成分の新たな用量 又は異なる塩若しくはエステルといった製品への変更には、SPC が新たに付与さ れることはありません。 判例法によると、以下のようなものは一般には活性成分とは認められません。 ・ただ1つの成分だけが活性を持ち、他の成分はこの有効性を高めるため のものであるような組合せ(判例 C-431/04 MIT)。 ・アジュバント C-210/13 GSK(ただし、例えば植物保護製品 C-11/13 Bayer Cropscience 中の毒性緩和剤と比較のこと)。 Q3. 有効成分の特許を延長対象とした場合、延長された特許の効力の及ぶ範囲 (新薬に対応する後発品のみに及ぶのか、新薬と同じ有効成分を含む全ての医 薬品に効力が及ぶか、異なる塩やエステルなどを有効成分とする改良新薬まで 効力が及ぶか) 特許それ自体は延長されません。SPC は、その有効期間内に市販が承認されて いる特許の主題のみを保護する、(特許とは)独立した特許に類似の権利です。 SPC は上記の全てを、これらが当該特許の範囲に含まれている場合に限り、保 護します。 (延長の対象となる処分について) Q4. SPC の対象は、人又は動物用医薬品、植物保護製品であると理解しています が、内容に相違はありますか。 SPC は(人及び動物用)医薬品並びに植物保護製品に対して取得できます。 医薬品に対する SPC に関する規則(EC) No. 469/2009 によると、SPC を取得で きる製品は以下の通りでなければなりません: ・有効な基本特許によって保護されている; ・指令 2001/83/EC (人用医薬品)又は指令 2001/82/EC (動物用医薬品)又 は後続の法的等価物に定められた行政承認手続きに従っている; ・既存の SPC の主題になっていない。 - 438 - 植物保護製品に対する SPC に関する規則(EC) No. 1610/96 によると、SPC を 取得できる製品は以下の通りでなければなりません: ・有効な基本特許によって保護されている; ・EU 指令 91/414/EEC 又は後続の(1つ若しくは複数の)法的等価物に定 められた行政承認手続きに従っている; ・既存の SPC の主題になっていない。 (延長の対象となる特許について) Q5. 規則の第 1 条(C)でいう「製品の用途を保護する特許」としては、②特定 の疾病に対する治療用途特許、③特定の用法・用量による特定の疾病に対する 治療用途特許、④剤形・製剤特許は含まれますか。 判例 C-322/10 Medeva は、請求項の記述によって活性成分が「特定」されて おり、当該発明の「発明上核となる進歩」に他ならないと述べています (判例 C-443/12 Actavis を参照)。 しかしながら、469/2009 の第 1 条(C)及び規則(EC) No.1610/96 の第 1 条 9 の定義は、基本特許を構成できる要素を限定するものとして解釈されないため、 以下を保護するような請求項は第 1 条及び第 3 条 (a)を満たし得ます。 ・活性成分; ・(薬剤の)新しい治療用途; ・(1 つ又は複数の)活性成分の作製方法; ・(1 つ又は複数の)活性成分の処方; ・機能の定義(例えば C-493/12 Eli Lilly において標的抗体との相互作用 によって定義される抗体) Q6. 規則第 1 条(C)でいう「保有者が指定したもの」とは、1つの製品(医薬 品の活性成分又は活性成分の組合せ)に関連する特許が複数あった場合に、1 つの特許権に限るという意味ですか。 第 1 条(c)中の「保有者が指定したもの」との文言は、その製品が複数の特許に 保護されていたとしても、保有者は製品ごとにただ1つの SPC に限られます。 このことは規則(EC) No. 1610/96 の第 3 条 2 によって補強されています。また、 規則(EC) No. 1610/96 の説明部分 17 を参照することにより、このことは規則 (EC) No. 469/2009 にも適用されます。 - 439 - 第 3 条 2 により、1つの製品に対する同一申請者による複数の SPC は認めら れません。しかし、同じ製品に対してであっても、異なる基本特許がこの製品 を保護していると認められる限り、異なる申請者が SPC を取得することはでき ます(判例 C-482/07 を参照)。その特許が複数の活性成分を保護する場合、特許 ごとに複数の SPC を取得することも可能です (判例 C-443/12 Actavis を参照) 。 (延長が認められる要件について) Q7. この条文((EC) NO.469/2009 第 3 条)の解釈について、参考としている重 要判決があれば教えてください。 規則(EC) No. 469/2009 に関連する判例法は以下の通りです。 ・第 3 条(a)について: C-322/10 Medeva;C-422/10 Georgetown;C-630/10 Queensland;C-443/12 Actavis;C-493/12 Eli Lilly;C-484/12 Georgetown;C-392/97 Farmitalia ・第 3 条(b)について: C-322/10 Medeva ・第 3 条(c)について: C-482/07 AHP;C-484/12 Georgetown;C-443/12 Actavis ・第 3 条(d)について: C-130/11 Neurim 規則(EC) No. 1610/96 に関連する判例法は以下の通りです。 ・第 3 条(a)について: C-11/13 Bayer Cropscience ・第 3 条 1 (b)について: C-210/12 Sumitomo;C-229/09 Hogan Lovells 他の質問への返信において、また別の判例法を参照する場合があります。判 決文へのリンクは添付資料に示しました。 上記のリストは網羅的ではないことに御留意ください。更なる詳細や裁判判 例への参照については特許審査基準(the Manual of Patent Practice)中の SPC の項(SPM3.01~SPM3.06 及び SPP3.01~SPP3.03)を御覧ください: https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/f ile/391737/manual_of_patent_practice.pdf - 440 - (延長された特許権の効力) Q8. 規則の第4条の「証明書の期間満了前に当該製品について承認されている 医薬としての用途」とは、その後の新たな承認に関わる用途も含み、第三者が 受けた承認に関わる用途も含むとの理解でよいですか? 規則(EC) No. 469/2009 の第 4 条中の「証明書の期間満了前に当該製品につい て承認されている医薬としての用途」とは、第 3 条(b)で用いられる市販承認の もとでの用途だけでなく、基本特許の範囲に属する同一の製品の、後に承認さ れる医薬品としてのいずれの用途も、当該 SPC によって保護されることを意味 します。第三者機関によって発行された承認も含まれます。 Q9. また、ここでいう「用途」とは、特定の疾病に使用することのみならず、 特定の疾病に使用する際の用法や用量等の使いかたは含まれますか? ここでの「用途」は特定の疾病に対する製品の利用、一定の容量又は投与レジ メンに対する承認(ただしこのような承認が取得された場合に限る)を含み、 基本特許の範囲内で提供されるものです。 (延長の可否の審査を行う者) Q10. UKIPO において、実際に担当する者の資格を教えてください。 SPC 審査官は関連する技術領域の特許審査官から選ばれます。審査官は理学、工 学又は数学分野の少なくとも学士号を有しています。多くの審査官は博士号を 有しています。 (第三者に対する公示方法) Q11. 第三者に対する公示内容として、特許情報(延長期間、延長後の満了日)、 企業名、製薬品名を記載することとなっていると理解していますが、内容に相 違はありますか。「承認された用途」については公示されないのですか。 申請が提出されると、当方(IPO)は以下を公示します: 申請者氏名;製品名、市販承認番号、特許番号及び名称、SPC 番号、申請日 SPC が付与されると、当方は以下を公示します: 申請者氏名、製品名、市販承認番号、特許番号及び名称、SPC 番号、受理日、 - 441 - 最大 SPC 期間 申請の効力が発生すると、当方は以下を公示します: 申請者氏名、製品名、市販承認番号、特許番号及びタイトル、SPC 番号、発 効日、SPC 期間満了日 SPC 期間が満了すると、当方は以下を公示します: 申請者氏名、製品名、市販承認番号、特許番号及びタイトル、SPC 番号、SPC 期間満了日 SPC を小児科領域用に延長する場合にも、規則(EC) No. 1901/2006 の要件に 照らした結果として SPC 期間の延長は同様に行います。 当方による公示の例は以下で御覧ください。 http://www.ipo.gov.uk/p-pj-stitch.pdf?sections=7&jnl=6554 (その他) Q12.農薬に関して、原体についての EU と、製剤に関しての英国での審査がある と理解している。Regulation No.1610/96 Article13 の最初の販売承認とは、 英国での製剤に関する販売承認を意図するものでしょうか?また、農薬と医薬の 間で延長の手続きで何らかの違いがあれば教えてください。 医薬品に対するものと植物保護製品に対するものとで SPC 規則の法的解釈に差 異が生じないようにしなければなりません。例えば規則(EC) No. 469/2009 の第 3 条(a)に関する判決は規則(EC) No. 1610/96 にも適用されます。しかしながら、 異なる製品それぞれの承認手続きに固有のことがらに関する場合などのように、 判決をこれらの規則両方に適用できない場合もあることに御留意ください。 (規則(EC) No. 1610/96 において指令 91/414/EEC を無効にすると言及され ている)規則(EC) No. 1107/2009 は、植物保護製品の承認の付与に関する認可 基準を規定しています。 植物保護製品の市販の承認は、欧州連合加盟国それぞれの責任において行わ れます(相互承認を条件とするものであっても構いません)。 - 442 - <ドイツ特許商標庁(DPMA)向け質問事項と回答> (DPMA からの回答を翻訳したものを掲載した) DPMA 質問事項 Q1. 特許権の存続期間の延長制度の導入の趣旨・経緯を教えてください。また、 延長制度導入にあたり新薬の研究開発にインセンティブを与えることが導入趣 旨に含まれますか。新薬の研究開発にインセンティブを与える上で重視すべき 発明は何であり、何処まで効力を与えるべく制度設計されたか教えてください。 医薬品の SPC の導入の理由は欧州委員会の 1990 年 4 月 11 日付背景説明資料(COM (90) 101 final – Syn 255)に列挙されており、植物保護製品の SPC の導入の 理由は欧州委員会の 1994 年 12 月 9 日付背景説明資料(COM(94)579 final 94/0285(COD))に列挙されている。 さらに、それらは、欧州規則(EC)1768/92 及び 1610/96 の前文(リサイタル) に含まれている。 SPC の導入により、特許権者は、認可を必要とする医薬品及び植物保護製品につ いて、医薬用/植物保護製品を上市するための最初の承認から計算された排他 的使用の最大 15 年間の十分な実際の保護期間が付与され得る。 Q2. 延長対象として重視された特許発明の種類(延長対象を有効成分の特許発 明に限定するか、その他の特許発明も対象とするか) 欧州規則(EC)469/2009 の 1 条 1 項 c 号及び欧州規則(EC)1610/96 の 1 条 9 項によると、SPC のための基本特許は、有効成分/物質又は有効成分/物質の組 合せ又はその製剤、それらを得るための方法、又はそれらの適用を保護する、 物の特許であり得る。 Q3. 有効成分の特許を延長対象とした場合、延長された特許の効力の及ぶ範囲 (新薬に対応する後発品のみに及ぶのか、新薬と同じ有効成分を含む全ての医 薬品に効力が及ぶか、異なる塩やエステルなどを有効成分とする改良新薬まで 効力が及ぶか) 欧州規則(EC)469/2009 及び 1610/96 の 4 条に従い、証明書によって付与され る保護は、基本特許によって付与される保護の範囲内で、対応する医薬品/植 物保護製品を上市する、及び証明書の満了前に承認されていた医薬品/植物保 - 443 - 護製品として、製品のいかなる用途についての承認に含まれる製品にのみ及ぶ。 証明書は、したがって、4 条に規定されている保護の制限を条件として、基本特 許と同一の効果を有する(欧州規則(EC)469/2009 及び 1610/96 の 5 条参照)。 欧州司法裁判所(CJEU)は、Novartis AG v Actavis UK Ltd.事件、C-442/11, で 2012 年 2 月 9 日の命令において、SPC は基本特許と同一の効果を有すること を確認した。その事件で、保護証明書は、したがって、証明書が付与された有 効成分(バルサルタン)に限定されるものではなく、その有効成分(バルサル タン)と他の有効成分と(ヒドロクロロチアジド)の組合せも、特許のように、 保護する。 基本特許は有効成分及びその誘導体(塩及びエステル)を含む場合、有効成分 /物質に付与された証明書は、医薬品/植物保護製品として、有効成分/物質 及びその誘導体に同一の保護を与える(欧州規則(EC)469/2009 の 22 条、CJEU, C-392/97, Farmitalia [idarubicin]に関連して、欧州規則 1610/96 の前文 13 及び 17)。 Q4.カナダと EU の EPA の影響はあるのか? ドイツ特許商標庁はこの質問に対する情報を持たない。 (延長の対象となる処分について) Q5. SPC の対象は、人又は動物用医薬品、植物保護製品であると理解しています が、内容に相違はありますか。 SPC は、薬用/植物保護製品として市場に上市する承認に含まれる製品、つまり、 承認によって参照されている有効成分/物質又は有効成分/物質の組合せにつ いて付与される。このことは、各規則のそれぞれ 1 条 9 項、1 条 b 項における「製 品」の定義と関連して 3 条及び 4 条から分かる。 ドイツ特許庁のウェブサイトでは、DPMAregister 経由で、SPC が出願された又 は付与された製品の名前を検索することができる。 (延長の対象となる特許について) Q6. 規則の第 1 条(C)でいう「製品の応用を保護する特許」としては、②特定 の疾病に対する治療用途特許、③特定の用法・用量による特定の疾病に対する 治療用途特許、④剤形・製剤特許は含まれますか。 欧州規則(EC)469/2009 の 1 条によると、全ての種類の医薬品特許、すなわち、 - 444 - 医薬品の有効成分を言及している全ての特許カテゴリは SPC の基本特許として 指定することができる:第一又は第二の効能効果のための特定の目的のための 物の特許、医薬品を得るための製法特許、用途特許(特定の疾患を治療するた めの使用=第二効能効果)。このことは、医薬品の有効成分の投与量又は投与 に関する全ての上記カテゴリの特許にも適用される(例えば、欧州特許庁拡大 審判合議体決定 G 0002/08, Dosage regime/ABBOTT RESPIRATORY, OJ EPO 2010, 456)。 欧州規則(EC)1610/96 の 1 条 9 項による用途特許は、例えば、特定のペストを 治療するための使用、特定の植物のための、又は具体的投与量又は投与方法で の適用を含む。 Q7. 規則の第 1 条(C)でいう「保有者が指定したもの」とは、1つの製品(医 薬品の活性成分又は活性成分の組合せ)に関連する特許が複数あった場合に、 1つの特許権に限るという意味ですか。 出願人が同じ製品に対して複数の特許を保持している場合は、その製品につい て一以上の証明書は付与されない。このことは、植物保護製品のための証明書 のための欧州規則(EC)1610/96 の 3 条 2 項一文から分かり、前文 17 に基づく医 薬品の証明書についても準用されて有効である。したがって、出願人は、証明 書のために使用することができる基本特許の一つを決定しなければならない。 しかし、同一製品について複数の特許の複数の権利者は、それぞれ、証明書が 付与され得る(CJEU 決定, C-181/95, Biogen v Smithkline,及び欧州規則 1610/96 の 3 条 2 項,二文)。 (延長が認められる要件について) Q8. この条文((EC) NO.469/2009 第 3 条)の解釈について、参考としている重 要判決があれば教えてください。 SPC 付与手続に関する重要な欧州決定及び国内判決は以下のとおり: Judgment of the CJEU of 12 June 1997, C-110/95, GRUR Int. 1997, 908 "Yamanouchi Pharmaceutical Co." Judgment of the CJEU of 23 January 1997, C-181/95, GRUR Int. 1997, 363 – “Biogen/Smithkline“ Judgment of the CJEU of 16 September 1999, C-392/97, GRUR Int. 2000, 69 - "Farmitalia" Judgment of the CJEU of 4 May 2006, C-431/04, GRUR 2006, 694 - - 445 - "Massachusetts Institute of Technology (MIT)" Order of the CJEU of 17 April 2007, C-202/05, Mitt 2007, 308 - "Yissum" Judgment of the CJEU of 3 September 2009, C-482/07, GRUR Int. 2010, 41 "AHP Manufacturing" Judgment of the CJEU of 11 November 2010, C-229/09, GRUR Int. 2011, 41 "Iodosulfuron" Judgment of the CJEU of 28 July 2011, C-427/09, PharmR 2011, 375 "Galantamin" Judgment of the CJEU of 24 November 2011, C-322/10, GRUR 2012, 257 "Medeva" Judgment of the CJEU of 24 November 2011, C-422/10, GRUR Int. 2012, 144 –“Georgetown University“ Judgment of the CJEU of 8 December 2011, C-125/10, GRUR Int. 2012, 146 – “Merck Sharp & Dohme Corp.“ Order of the CJEU of 25 November 2011, C-518/10, GRUR-RR 2012, 55 - "Yeda" Order of the CJEU of 25 November 2011, C-630/10, OJEU 2012, no. C 73, 10 - "University of Queensland”„ Order of the CJEU of 25 November 2011, C-6/11, OJEU 2012, no. C 73, 10 "Daiichi Sankyo Company" Order of the CJEU of 9 February 2012, C-442/11, GRUR Int. 2012, 523 "Novartis" Judgment of the CJEU of 19 July 2012, C-130/11, GRUR Int. 2012, 910 - "Neurim Pharmaceuticals" Order of the CJEU of 14 November 2013, C-210/13, GRURPrax 2014, 14“Adjuvans“ Judgment of the CJEU of 17 October 2013, C-210/12, GRUR Int. 2013, 1129 -“Clothianidin“ Order of the CJEU of 14 November 2013, C-617/12, GRURPrax 2014, 13 – "Astrazeneca" Judgment of the CJEU of 12 December 2013, C-484/12, GRUR 2014, 160 -“Georgetown University II“ Judgment of the CJEU of 12 December 2013, C-443/12, GRUR 2014, 157 –„Actavis/Sanofi“ Judgment of the CJEU of 12 December 2013, C-493/12, GRUR 2014, 163 –“Eli Lilly/ HGS“ Judgment of the CJEU of 19 June 2014, C-11/13, Bayer CropScience v DPMA, - 446 - C-11/13, GRUR 2014, 756- “Bayer CropScience/ DPMA“ [Safener] Order of the German Federal Court of Justice of 17 June 1997, BlPMZ 1998, 31 - "Idarubicin" Order of the German Federal Court of Justice of 15 February 2000, BlPMZ 2000, 280 - "Idarubicin II" Order of the German Federal Court of Justice of 17 July 2001, GRUR 2002, 47 - "Idarubicin III" Order of the German Federal Court of Justice of 29 January 2002, GRUR Int. 2002, 609 - "Sumatriptan" Order of the German Federal Court of Justice of 8 July 2008, GRUR 2008, 890 - "Anti-Helicobacter-Präparat" Judgment of the German Federal Court of Justice of 9 June 2011, GRUR 2011, 999 - "Memantin" Order of the German Federal Patent Court of 19 October 1995, BlPMZ 1997, 61 - "Ceftibuten" Order of the German Federal Patent Court of 23 June 2005, Mitt. 2006/73 - "Porfimer" Order of the German Federal Patent Court of 12 May 2011, PharmR 2011, 361 – "Tenofovir" Judgment of the German Federal Patent Court of 20 March 2012, (3 Ni 16/08) - "Iodosulfuron" Judgment of the German Federal Patent Court of 4 February 2014, (3 Ni 5/13), GRUR 2014, 1073 – “Telmisartan“ (延長された特許権の効力) Q9. 規則の第4条でいう「証明書の期間満了前に当該製品について承認されて いる医薬としての用途」とは、その後の新たな承認に関わる用途も含み、第三 者が受けた承認に関わる用途も含むとの理解でよいですか? はい。新しい用途が基本特許の保護の範囲内にない場合を除き、証明書の満了 前に付与された当該有効成分の他の用途の後の承認は、第三者による承認の含 め、それぞれ、当該保護証明書に含まれている。 Q10. また、ここでいう「用途」とは、特定の疾病に使用することのみならず、 特定の疾病に使用する際の用法や用量等の使いかたは含まれますか? - 447 - 欧州規則(EC)469/2009 の 4 条も、それらが基本特許の保護範囲に入ることを 条件として、例えば、有効成分の新しい投与方法について付与された証明書の 期間中の承認に関する。 (延長の可否の審査を行う者) Q11. DPMA において、実際に担当する者の資格を教えてください。 ドイツ特許法(Patentgesetz)49a 条に従い、特許部門は SPC 出願の審査に責任 を負っている。 特許部門は、少なくとも二名の特許審査官(報告者、評価者)及び主席(通常 特許部門長)が参加している場合には定足数を構成する (特許法 27 条 3 項参照)。 特定の法的問題の場合に、法律資格を有する構成員も参加することができる。 SPC 出願は化学技術分野の特許部門において審査されている。 (第三者に対する公示方法) Q12. 第三者に対する公示内容として、特許情報(延長期間、延長後の満了日)、 企業名、製薬品名を記載することとなっていると理解していますが、内容に相 違はありますか。「承認された用途」については公示されないのですか。 欧州規則(EC)469/2009 及び 1610/96 の 11 条は、書誌データの公開に関する規 定を含んでいる。これらの規定に従い、特に、権利者名、基本特許番号、製品 (有効成分/物質又は有効成分/物質の組成物)の名称、ドイツ及び EU 市場で の製品の上市の最初の承認の番号及び日付、並びに証明書の期間が公開される。 医薬用途は公開されない。 (その他) Q13.農薬に関して、原体についての EU と、製剤に関しての英国での審査がある と理解している。Regulation No.1610/96 Article13 の最初の販売承認とは、 英国での製剤に関する販売承認を意図するものでしょうか?また、農薬と医薬の 間で延長の手続きで何らかの違いがあれば教えてください。 欧州規則(EC)1610/96 の 13 条 1 項によると、製品を植物保護製品として共同 体市場に上市する最初の承認は、植物保護製品の SPC の期間を計算するために 決定的である。 その承認は、製品が欧州連合の他の加盟国において植物保護製品として承認さ - 448 - れていない限り、ドイツの販売承認であり得る。欧州連合の他の加盟国におけ る先の承認の場合、当該承認は、期間を計算するときに考慮されなければなら ない。 医薬品の SPC のための欧州規則(EC)469/2009 の 13 条とは対照的に、欧州規則 (EC)1610/96 の 13 条 3 項は、同一製品に関する(その加盟国、よって欧州連 合における)最終承認が続く場合は、欧州連合加盟国での仮の最初の販売承認 だけが考慮されなければならない。 13 条を参照する承認は、欧州連合加盟国の規制当局による、製品を植物保護製 品として上市することの承認であって、欧州員会による欧州規則(EC)1107/2009 に従う承認でないことに注意。 - 449 - <欧州医薬品庁(EMA)、英国化学物質規制委員会(CRD)、ドイツ連邦 消費者保護・食品安全庁(BVL)向け質問事項と回答> (各機関への質問は LKC Switzerland Ltd を介して行った) 報告書 欧州における、医薬品や農薬の販売承認と関連特許の影響に関する調査 一般財団法人 知的財産研究所委託プロジェクト 調査期間:2014 年 12 月 19 日~2015 年 1 月 28 日 著者:マイク ニール、石川 理恵子 LKC Switzerland Ltd Hauptstrasse 10 P.O. Box 167 4414 Füllinsdorf Switzerland Phone: +41 (61) 906 8500 Fax: +41 (61) 906 8509 Web: www.LKC-ltd.com 平成 27 年 1 月 28 日 - 450 - Contents 1. プロジェクトスコープおよび緒言 ........................................... 452 2. 調査の要約 ............................................................... 453 表1 欧州規制庁からの回答の要約-EMA ....................................... 454 表 2: 欧州規制庁からの回答の要約 – 植物保護製剤 .............................. 461 Appendix A: List of References .............................................. 468 Appendix B: Questionnaires provided to EMA, BVL and CRD ...................... 470 Appendix C: Copies of Responses received from EMA, BVL and CRD ............... 474 Appendix D: Secondary Patents for Crop Protection in Europe .................. 478 - 451 - 1. プロジェクトスコープおよび緒言 本調査の主な目的は、欧州における医薬品および農薬の登録手順と関連特許の影響を調査す ることである。 プロジェクトスコープは、欧州の下記 3 規制庁に具体的に質問し、その結果を 2015 年 1 月 28 日までに一般財団法人知的財産研究所(以下「知財研」)、東京都千代田区神田錦町 3-11 精興竹橋共同ビル 5F に報告することである: 欧州医薬品庁(European Medicines Agency: EMA) ドイツ農薬規制庁(Bundesamt für Verbraucherschutz und Lebensmittelsicherheit: BVL) 英国化学物質規制委員会(Chemical Regulation Directorate: CRD) 欧州における規制の手順を理解するにあたり、大きな影響を与える重要な側面である特許保 護とデータ保護を区別することは重要である。 特許保護(Patent protection): データ保護が規制庁にとって重要であり、規則・指令にも記載されているのに対し、通常、 特許保護は、規制庁や登録手続きにおよぼす影響は少ない。 一般的には、欧州における特許は、有効成分に対して 20 年間有効であり、それ自身の特許 が切れた後でも、補充的保護証明書(supplementary protection certificates:SPC)とし て知られる特許期間延長、されに、製剤、混合剤および他の物理的形態に関するさらなる特 許も特許期間延長を可能にすることがある。 特許期限が切れた後も、これらを保持する会社の規制データにアクセスできないことで、欧 州におけるジェネリック製品の登録を防ぐことができる。 参考として、作物保護のための二次的特許に関する詳細を付録 D に記載した。 データ保護(Data Protection): 欧州における農薬市場と規制に関する概要を示した下記文献「EU Crop Protection market and Regulations 2012 by Claudio Mereu, Field Fisher Waterhouse LLP, Belgium 」は、 データ保護とデータ共有の必要について概説しているのでこちらを参照。 http://wcropchemicals.com/wp-content/uploads/2012/11/Shanghai-2012-EU-PesticidesMarket-and-Regulations1.pdf EMA, BVL and CRD への質問状の送付: 知財研からのいくつかの質問内容に対し、規制庁に代わって弊社が回答可能であったため、 付録 B に示したとおり、質問内容を一部変更し、それぞれの規制庁に送った。 受け取った回答は、照合し、付録 C に示した。 - 452 - 2. 調査の要約 知財研によって設定された 6 週間の間に、EMA および CRD からの正式な回答は得られず、電 話により各規制庁に直接接触したが、規制局が正式な回答を提供するまで待つよう指示され、 2 月上旬までに全ての回答を得ることができた。 期限内に規制庁からの正式な回答はなかったため、関連するウェブサイトや文献および欧州 における農薬や医薬品規制庁にける規制、知的財産(Intellectual Property: IP)および データ保護の関連情報は、関連するウェブサイト文献から入手し(関連する有益なウェブサ イトを付録 A に示した)、その内容を本報告書にまとめ、回答を受領後、その内容を確認、 修正および補足した。 結論として、特許保護に関しては、農薬および医薬品の欧州規制庁は安全面での責任を有す るものの、特許に関する責任は有していない。 データ保護は、欧州内の全ての規制庁において重要なため、弊社は CRD と BVL に追加でこの 点を質問した。 EMA は、ジェネリックの規制において、バイオアベイラビリティや製剤の類似性を重視する のに対し、農薬の規制庁は、主に脊椎動物を含む試験・研究の重複使用に関して懸念をもっ ている。 - 453 - 表1 No 1 欧州規制庁からの回答の要約-EMA 質問内容 医薬品(ジェネリック薬品も含む)の販 売承認(治験~販売)の流れを教えてく ださい。 回答 欧州域内の医薬品の承認審査は大きく分けて 1)中央承認審査方式と 2)各国レベルでの承 認があり、各国レベルでの相互認証審査方式 (Mutual Recognition Procedure)は加盟国で 得られた承認を他の加盟国が承認する方式 で、分散承認審査方式(Decentrakused Procedure)は承認を得たい他の加盟国と共通 認証により承認する。 http://www.ich.org/fileadmin/Public_Web_ Site/Training/ASEAN_Q5C_workshop_May_201 1/ASEAN_Intro_ICH_GCG.pdf EMA は、中央承認審査方式(centralised procedure)で人用または動物用医薬品の欧州 連合(EU)内での販売承認申請に対し科学的 評価を担当している。 中央審査方式下において、製薬会社は EMA に のみ販売承認申請を提出する。欧州委員会に より販売承認が付与された場合、全 EU 加盟国 に加え欧州経済領域(European Economic Area: EEA)諸国であるアイスランド、リヒテ ンシュタインとノルウェーにも同時に販売承 認が与えられる。 法律により、販売承認を受理した場合のみ、 製薬会社は医薬品の市販を開始できる。新規 有効成分以外に中央審査方式で審査できる該 当医薬品の種類については、以下を参照して ください: central authorisation of medicines. EMA の科学評価作業の殆どは、EEA 諸国のメン バーや患者、消費者および医療・専門家機関 の代表で構成された科学委員会によって行わ れる。これらの委員会は EU 域内の医薬品の開 発、評価および監理に関する異なるタスクが ある:scientific committees 臨床試験に関しては、現在、その認可は加盟 国レベルで規制されている。臨床試験におけ る EMA の主な役割は、データの評価、GCP およ びデータベースの管理である: http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?c url=pages/special_topics/general/general _content_000489.jsp&mid=WC0b01ac05806067 6f EMA における承認申請の概要は以下の通りで あり、具体的なフローチャートを図 1 に示す: 1. 適格性の要請の送付(Submission of - 454 - No 質問内容 回答 eligibility request) 2. 申請書出願意思の届出(Notification of intention to submit an application) 3. 審査担当官(ラポーター)の任命 (Appointment of rapporteurs) 4. 事前相談(Pre-submission meeting) 5. 申請書の提出(Submission of the application) 6. 科学的評価(Scientific evaluation) 7. ヒト用医薬品委員会(Committee for Human Medicinal Products: CHMP)の 評価意見書(CHMP scientific opinion) 8. 販売承認に関する欧州委員会の決定 (European Commission decision on the marketing authorisation) http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/docu ment_library/Brochure/2011/03/WC50010423 3.pdf http://www.ulb.ac.be/medecine/pharmed/at aglance/Regulatoty_affairs.ppt ジェネリック医薬品に関して: EMA は EU におけるジェネリック医薬品の販売 承認審査を行う責任があり、次ぎの場合、EMA で審査が行われる:1)先発医薬品が EMA によ り中央承認審査で承認された、2)ジェネリッ ク医薬品が重要な技術革新や患者に利点をも ららす。 先発医薬品から有効成分の安全性および効能 に関する情報が入手可能なため、通常、ジェ ネリック医薬品会社は、1)医薬品の品質に関 する情報、2)ジェネリック医薬品が生体内に おける有効成分濃度が先発医薬品と同じレベ ルになることを証明が必要になる。 ジェネリック医薬品の承認後、全ての医薬品 について、EMA はその安全性を監視する。 http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?c url=pages/special_topics/document_listin g/document_listing_000335.jsp&mid=WC0b01 ac0580514d5c - 455 - No 2 医薬品の販売 承認に関し て、次の制度 があると理解 しています が、相違はあ りますか。ま た、制度の概 要と運用につ いて教えてく ださい。 質問内容 回答 http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/docu ment_library/Medicine_QA/2009/11/WC50001 2382.pdf http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?c url=pages/regulation/document_listing/do cument_listing_000211.jsp&mid=WC0b01ac05 80031b0a 一度認められた医薬品の 販売承認の内容の一部変 更の承認申請手続 販売承認済みの内容の一部変更は可能であ り、規則に説明されている。変更は、そのリ スクに基づいて、タイプ IA、IB、II および販 売承認の拡大に分けられている: http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?c url=pages/regulation/general/general_con tent_000166.jsp&mid=WC0b01ac0580023399 http://ec.europa.eu/health/files/eudrale x/vol-1/reg_2008_1234/reg_2008_1234_en.p df タイプ II は、重篤な変更(major variation)であり、品質、安全性、効能 に大きな悪影響を与える可能性のある変 更(ただし下記の販売承認は除く)。医 薬品市販承認取得者(MAH)は、規制庁の ウェブサイトに提示された提出期限まで に必要書類を提出。ただし、緊急安全使 用制限(Urgent Safety Restriction)に 関する変更申請は、直ぐに提出しなけれ ばならない。いかなる場合であっても 15 日以内に規制庁に申請する必要がある。 タイプ I は、医薬品の品質、安全性ある いは効能といった製品情報にわずかな悪 影響を与える、または全く与えないよう な軽微な変更(minor variation)で、施工 前の事前承認は必要とされていない (’do-and-call’ process)。さらに、 タイプ IA はその提出時期でタイプ IAIN (施工後、直ちに通知/提出する必要のあ る変更)と IA(施工直後に提出しなれば ならないような変更ではなく、12 ヶ月以 内に提出)に分類される。 タイプ IB は、タイプ IA、II および販売 承認の拡大に該当しない軽微な変更であ り、施工前に規制庁に通知する必要があ る。規制庁による施工前の変更の可否の - 456 - No 質問内容 回答 判断に 30 日間待つ必要がある(’tell, wait and do’ procedure)。 新薬メーカーの臨床試験 のデータの保護期間(8 年間)と、追加として 2 年の発売保留(画期的効 能の医薬品について更に 1 年の追加の保護期間) 販売承認の拡大(extension of a marketing authorisation)は、その最初 の販売承認の場合と同じ手順で評価され る。拡大申請が必要な変更の主なカテゴ リーは、1)原薬への変更、2)投与濃度、 形態および経路の変更である。タイプ II も内容によっては、販売承認の拡大に該 当する場合がある。 先発医薬品(reference medicinal products) のデータの保護期間(data exclusivity)と 販売保留期間(Market protection period) に関する情報は次のウェブサイトに詳述され ている: http://ec.europa.eu/health/files/eudrale x/vol-2/a/vol2a_chap1_2013-06_en.pdf 2005年11月20日以降に初めて承認申請書の提 出を行った先発医薬品について、指令 2001/83/EC(Directive 2001/83/EC)とその 後の改正および規則(EC)726/2004 ( Regulation (EC) No 726/2004)により導 入された新たな保護期間が適用される。すな わち、最初の承認から8年間のデータ保護 (data exclusivity)期間と10年間の販売保 留期間(Market protection period)および 新規治療適応症の承認に対し1年間の延長が 認められる。 先発医薬品の最初の承認から8年間は、いわゆ る「データの保護(data exclusivity)」期 間とし、その後、販売承認を得るために、ジ ェネリック医薬品の適用申請することができ る。 また、先発医薬品の最初の承認から10年間は、 いわゆる「販売保留期間(Market protection period)」とし、その後、承認されたジェネ リック医薬品は市販可能になる。同保護期間 は、規則(EC)726/2004の第14 (11)条(Article 14(11) of Regulation (EC) No 726/2004)の 規定により、中央承認審査で承認された製品 に適用される。 指令2001/83/ECの第10 (1)条(Article 10(1) of Directive 2001/83/EC)の第4サブパラグ ラフに基づき、10年間の販売保留期間は、既 存の治療法との比較において、有意な臨床学 - 457 - No 質問内容 3A 第三者による、ジェネリ ック医薬品製造のための 試験や、追加効能等探索 のための試験に対する特 許侵害の免責 販売承認の過程での特許情報の入手経路 3B 3C 承認審査における特許情報の用いられ 方・影響を教えてください(特許の種類 (物質、用途など)によって後続の処分 に影響することはありますか) 特許の内容について特許庁と相談するこ とはありますか。 回答 的利益をもたらす新規治療適応症の承認に対 し1年間の延長が可能である。販売保留期間の 延長は、先発医薬品のグローバル販売承認 (global marketing authorisation)に適用 されます。従って、ジェネリック医薬品は、 新規治療適応症の有無に係らず、11年の期間 満了まで上市されないであろう。また、この 期間延長の申請は、最初の販売承認が付与さ れてから最初の8年の間に新規適応症が承認 されなければならない。これら保護の全期間 は、11年を超えることはできません。従って、 この指令2001/83/ECの第6 (1)条(Article 6(1) of Directive 2001/83/EC)の意味する 範囲内で1度だけ「グローバル販売承認 (global marketing authorisation)」ごと に使用できる。さらに、医薬品のデータ保護 の期間中、この医薬品の前臨床および臨床フ ァイルに含まれているデータおよび書類の閲 覧やEU内もしくは第三国における情報公開法 を介して得たデータは、生物学的に同等であ ることを示すための他の製品の安全性および 効能を確認する手順において、指令 2001/83/ECの第10 条(Article 10 of Directive 2001/83/EC )の枠組みや他の手順 (Articles 8(3),10a or 10b)下であろうと他 の申請者や規制庁に使われることはない。 EMA は特許問題に関与しない。 EMA は特許問題に関与しない。ただし、規制庁 が要求した場合は申請者に要求できる。 EMA は特許問題に関与しない。 EMA は特許問題に関与しない。 4 パテントリンケージの制度の導入の予定 はありますか。 現段階では予定していない。 5 販売承認の第三者に対する公示は、販売 承認が許可された国の管轄官庁が行うも のと理解していますが、内容に相違はあ りますか。 EMA は中央承認審査方式の範囲内に含まれ る医薬品の科学的評価に関与し、欧州委員会 (European Commission)で販売承認された 医薬品を第三者に公示している。しかし、EMA が関与しない各加盟国での分散もしくは相 - 458 - No 質問内容 6 公示内容は、各国共に共通するものなの か、各国毎に開示される内容が異なるの か教えてください。 回答 互認証審査(decentralised or mutual recognition procedures)によって販売承認 された医薬品に関しては各国の管轄当局が 公示する。 各国で承認された医薬品の公示内容に関して は下記の通り、各国で異なるが、中央審査方 式で EMA に審査された医薬品は EMA から公示 される。 イギリスの医薬品・医療製品規制庁 (Medicines and Healthcare Products Regulatory: MHRA)における医薬品情報(SPC および PILS)は次ぎのウェブサイトで検索で きる: http://www.mhra.gov.uk/Safetyinformation /Medicinesinformation/SPCandPILs/?indexC har=A#retainDisplay ドイツ連邦保健省( Federal Ministry of Health)のウェブサイト: http://www.pharmnet-bund.de/dynamic/en/a m-info-system/index.html 現在、EMA は欧州で使用されている全ての医薬 品の評価をおこなっていないが、EMA は、CHMP により評価され、欧州委員会が中央承認で販 売承認を付与した全ての医薬品を以下のウェ ブサイトに公示している。あわせて評価レポ ート(EPAR)も同サイトから入手可能である。 http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?c url=pages/medicines/landing/epar_search. jsp&mid=WC0b01ac058001d124 - 459 - - 460 - 1 6 4 - 1 No. 表 2: 農薬(ジェネリック農 薬を含む)の販売の登 録(登録に必要な試験 ~販売)の流れを教え てください。 質問内容 農薬製品 農薬原体 (有効成 分) 全体 回答 この手順には 2 年半から 3 年半を要するが、この期間は有効成分等の難しさで大幅に変わってきます。 最初の承認後、10 年間は有効成分のデータ保護期間に相当し、再評価は 10 年ごとに行われます。 有効成分の承認後、加盟国は申請者によって提出された全データを評価し、製品販売承認を発行するこ とができる。データ要求項目:Document SANCO/10181/2013– rev. 2.1, 13 May 2013: Guidance document for applicants on preparing dossiers しかし Regulation (EC) No 1107/2009 は、ゾーン域内相承認(33-39 条)および相互承認(40-42 条) の 2 種類の基本的な方法を提示している。また、これらは、特定の直接的に関与するタイムラインと手 順があり、下記のように EU ガイダンスで別途詳述されている。 承認は、審査担当(ラポーター)加盟国(Rapporteur Member State: RMS)に全データを提出後、次 のような手順を経て行われる: http://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/approval_active_substances/index_en.htm -RMS が評価書草案(Draft Assessment Report :DAR)を作成 -全加盟国が DAR をピアレビュー -欧州食品安全機関(European Food Safety Authority:EFSA)が DAR に対する意見/結論を発表 -フード・チェーンおよび動物の健康に関する常設委員会(Standing Committee on the Food Chain and Animal Health)が承認、非承認について投票 -委員会による採択 -EU 官報に公示(付属書 I に掲載) CRD BVL EU における農薬の規制システムは、1)EU での評価による農薬原体の承認 と 2)各加盟国による農薬製 剤の登録の 2 過程がある。しかし農薬製品の認可に対し、ゾーン域内の相互承認が導入されている。 全ての農薬原体および製品は規則(EC)1107/2009 (Regulation (EC) No 1107/2009)に従う。. 申請者は、基本情報、物理化学的性状、分析方法、毒性および代謝試験、植物、飼料および食品残留試 験、環境動態および挙動ならびに環境毒性試験からなるデータ要求項目に従って実施した全てのデータ を提出しなければならない。データ要求項目:Document SANCO/10181/2013– rev. 2.1, 13 May 2013: Guidance document for applicants on preparing dossiers 欧州規制庁からの回答の要約 – 植物保護製剤 2 6 4 - No. 質問内容 ドイツでは、植物保護製品は、BVL で承認された場合のみ市販もしくは輸入される。通常の手順とは別 に、植物防疫法の第 15 条(Art. 15 of the Plant Protection Act)に従って、その決定が EU 手順(Art. 15c PflSchG)にのっとって行われなかった有効成分を含む製品の場合もしくは製品が既に他の加盟国で 承認(Art. 15c PflSchG に従った相互承認)されている場合の手続きを簡素化するために、暫定的な認 可が付与される。 Regulation (EC) No 1107/2009 は、現行法を構成し、2011 年 6 月 14 日以降直ちに発行される。しかし、 規制には多くの経過措置が含まれている。例えば、カットオフの施行日に未だ処理が終了していない承 認申請に対しては、旧法規制に従って処理が継続される。 http://www.legislation.gov.uk/uksi/2011/2131/pdfs/uksi_20112131_en.pdf CRD では、植物保護製品に関する欧州の法規制(Regulation (EC) No 1107/2009)が 2011 年 6 月 14 日 に発行され、英国でも直接適用される。この法規制は、スコットランドと北アイルランドにおける独立 した同様の法規制と共に、英国で Plant Protection Product Regulations 2005 により施工された植物 保護製品の旧 EU 法規制(Council Directive 91/414/EEC)に置き換わった。 Regulation (EC) No 1107/2009 は、直接英国に適用されますが、各国の法規制は、その操作を支えるた め、また以前の手数料の法に代わる新しい手数料および料金の導入のため、必要であった。これらの新 規定は、以下の法規制で施工された: Plant Protection Products Regulations 2011; Plant Protection Products Regulations (Northern Ireland) 2011; and Plant Protection Products (Fees and Charges) Regulations 2011 CRD BVL Regulation (EC) No 1107/2009 において、ゾーン域内承認は、製品の承認あるいは承認の変更のための 標準的な手順であり、移行措置後の 2011 年 6 月 14 日以降の全申請に対して適用する。ゾーン域内承認 手順は、製品の再登録を容易にするために Directive 91/414/EEC 下で開発された自発的再登録ワークシ ェアリング手順(voluntary re-registration work-sharing procedure)と同様である。可能な限り、 この自主的手順は、両プロセス間のスムーズな移行を可能にするために、Regulation (EC) No 1107/2009 のゾーン域内承認手順と整合性をもたせた。 相互承認は、加盟国での全承認に適用し、Directive 91/414/EEC の付属書 II、III および VI を遵守し、 この Directive もしくは Regulation (EC) No 1107/2009 のいずれかで付与される。 回答 3 6 4 - 特許情報の入手経路 3A ジェネリ ック農薬 一度認められた農薬の登録に関し て、その登録内容の変更が認めら れていれば、その制度がどのよう に運用されているか教えてくださ い。 質問内容 2 No. BVL は特許情報を使用しない。 http://www.bvl.bund.de/EN/04_PlantProtection Products/12_Fachmeldungen_EN/2011/Changes_au thorisation_procedure.html 申請者用ガイドは、CRD に申請書を提出するための 手順、どのように申請書を処理し、申請書に含むべ き内容および申請完了後に何が起こるかに関する ガイダンスを提供している。 ガイドに加え、農薬および補助剤登録のさまざまな 場面に対処するための UK ガイダンスも利用でき る。これらのドキュメントへのリンクは申請者用ガ イド内でも見つけられるが、下記のサイトからこれ らも入手できる: http://www.pesticides.gov.uk/guidance/indust ries/pesticides/topics/pesticide-approvals/p esticides-registration/applicant-guide/the-a pplicant-guide-contents-uk-guidance CRD は特許問題に関与しない。 適用拡大、対象作物の拡大などが可能 適用拡大、対象作物の拡大などが可能 http://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/guidance_documents/docs/wrkdoc23_en.pdf CRD BVL 2011 年 6 月 14 日以降、国内法の基盤は、植物防疫保護製品の市販の認可あるいは承認に関して直ちに 発行される欧州連合(EU)の条項の暫定的実施に関する法律(the act on provisional implementation of provisions in the European Union)で構成される(経過法 transitional law)。 はじめに、この経過法(transitional act)は、現行の植物保護法(Plant Protection Act)と同時期 に有効である。どちらも再編の植物保護法に関する法律により、後に置き換えられる(「新植物保護法」 “new Plant Protection Act“). http://www.bvl.bund.de/EN/04_PlantProtectionProducts/01_AuthorizationReviewActSub/PlantProt ectionProducts_authorizationReviewActSub_node.html 登録のプロセスは、非ジェネリック農薬と同じである。 なお、データ保護に関しては後述の Q7 を参照。 回答 4 6 4 - 販売承認の第三者に対する公示 は、販売承認の許可がされた国の 管轄官庁が行うものと理解してい ますが、内容に相違はありますか。 また、公示内容は、 農薬製品 各国共に共通するも のなのか、各国毎に 開示される内容が異 なるのか教えてくだ さい。 5 7 データ保護に関する追加情報 農薬原体 農薬の登録と、その農薬に関わる 特許とに関するパテントリンケー ジの導入の予定はありますか。 4 6 登録審査における特許情報の用い られ方・影響を教えてください(特 許の種類(物質、用途など)によ って後続の処分が変わることはあ りますか)。 質問内容 3B No. 登録承認製品の通知は、各国内で行われる。 ドイツにおける公示およびオンライン検索: http://www.bvl.bund.de/EN/04_PlantProtection Products/02_AuthorizedPlantProtectionProduct s/02_OnlineDatabase/PlantProtectionProducts_ onlineDB_node.html 次のウェブサイトにおける Q&A を下記に示す: CRD は、データ保護に関連する法律で定められたデ ータ保護規則に従います。 デ ー タ 保 護 に つ い て は 、 Regulation (EC) No. 1107/2009 の第 V 章の規則 (regulations in Chapter V)(第 59 条以降参照)。BVL は、これらのルールを CRD は、新規または既存の有効成分を含む新製品の BVL は、新規または既存の有効成分を含む新製品の 登録の検討前に、特定の有効成分あるいは製剤にお 登録の検討前に、特定の有効成分あるいは製剤にお けるデータ保護について確認していますか? けるデータ保護について確認していますか? 原体の通知は欧州(EC)で行われる: http://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/pesticides_database/index_en.htm 登録承認製品の通知は、各国内で行われる。 イギリスにおける公示およびオンライン検索: https://secure.pesticides.gov.uk/pestreg/ 内容に相違ありません。 第三者は、オンライン検索で確認できます。 (質問 No.6 のウェブサイトを参照) BVL は登録手続き中に特許情報を使用しない。 CRD は、特許に関連する検索を導入する予定はな い。 内容に相違ありません。 第三者は、オンライン検索で確認できます。 (質問 No.6 のウェブサイトを参照) BVL BVL は登録手続き中に特許情報を使用しない。 CRD CRD は特許問題に関与しない。 回答 5 6 4 - No. 質問内容 データ保護期間の満了時に、これらのデータが、新 規製品やその用途に関連していることを示すこと ができる場合、その承認のための要件を満たすため どのように保護されたデータを引用して、製品のた めの申請書を作成するのか? 承認時に、提出されたデータが保護されているかど うかについて添付書簡でお知らせします。これに は、提出データの要約および各試験に関連した保護 期間の詳細を含む。この情報は、データ保有者にの み提供され、Regulation (EC) 1107/2009 の第 60 条下での要求がない限り、一般に入手することはで きません。 Directive 91/414/EEC 下で付属書 I に掲載(リス トアップ)の目的あるいは Regulation (EC) 1107/2009 下での承認のために提出されたデータ は、その有効成分の評価書(Review Report)に記 載される。 申請時に提出されたデータが保護されているかど うかは、どのように見つけるのか? http://www.pesticides.gov.uk/guidance/indust ries/pesticides/topics/pesticide-approvals/p esticides-registration/applicant-guide/the-a pplicant-guide-the-protection-of-data CRD http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriSe rv.do?uri=OJ:L:2009:309:0001:0050:EN:PDF BVL 適用する。 これまでの植物保護製品の承認について、EU 加盟 国はそれぞれ申請者に通知しなければならない (BVL: www.bvl.bund.de/infopsm )。現在、欧州委 員会は、植物保護製品の EU データベースの構築を 計画している。初期段階では、このデータベースは、 販売承認を管理する規制庁と申請者に開示され る。 中期的には、承認情報がこのデータベースに 設定され、その後一般に公開される。それは、植物 保護製品に含まれる有効成分の承認状況に関する EU の デ ー タ ベ ー ス と し て 既 に 存 在 し て い る : http://ec.europa.eu/sanco_pesticides/pu blic 回答 6 6 4 - No. 質問内容 製品データのリストは、申請者の問い合わせを介し て提供することができます(上記データリスト&ネ 製品/用途のデータが保護されていないかどうか は、どのように確認できますか? 附属書 II にリストされた保護された試験は、新規 有効成分については発行日から 10 年間、既存有効 成分については発効日から 5 年間保護される。リス トされた日は、Inclusion Directive で指定され、 保護された試験のリストは、リスト後、直ぐに審査 担当(ラポーター)加盟国から入手できる(また、 多くはウェブサイトで見つけることができる-再登 録ガイダンス(Re-Registration Guidance )ペー ジにリンクされたリストを参照) 有効成分のデータが保護されていないかどうかは、 どのように確認できますか? Sanco Guidance Doc 10597/2003 に従って、有効成 分の新資源(new source)が、先発資源と技術的 に同等であること;新製品(およびその用途)が先 発製品に十分匹敵すること、および必要な評価基準 に変更がないこと;さらに引用したデータが保護さ れていないこと。 我々はこの種の申請を評価するときに、以下の点を チェックする(適宜): CRD にこれらデータを引用することができる。 回答 BVL 7 6 4 - No. 質問内容 CRD ゴシエーションの脊椎動物を用いた試験規定の重 複の回避に関するセクションを参照)。我々は、承 認のための申請を考慮以外に、製品/用途データの 保護がはずれているかどうかを確認することはで きません(申請者からの問い合わせを介してこれを 行うことはできない点を注意してください)。 しかし、あなたは、データが先発製品が最初に販売 された日に起算して保護されていない可能性を評 価することはできます。また、製剤変更が製品のデ ータ保護状況に影響を与える可能性があること、農 林水産省(MAFF)/政府承認農薬製品 (Ministerially Approved Pesticide Product: MAPP)番号の変更は、製剤変更の歴史的背景を反 映していることを覚えておく必要があります。 回答 BVL Appendix A: List of References European Medicine References: Institute/Paper European Medicines Agency Website http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?cur l=pages/home/Home_Page.jsp&mid= EMA: Central authorisation of medicines http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?cur l=pages/about_us/general/general_content_0 00109.jsp&mid=WC0b01ac0580028a47 EMA: Data Requirements for Human Medicines http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?cur l=pages/regulation/landing/human_medicines _regulatory.jsp&mid EMA: Guidance for Applicants http://ec.europa.eu/health/documents/eudra lex/vol-1/index_en.htm http://ec.europa.eu/health/documents/eudra lex/vol-2/index_en.htm EMA: List of Member States http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?cur l=pages/partners_and_networks/general/gene ral_content_000219.jsp&mid=WC0b01ac0580031 74e EMA: List of Approved substances http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?cur l=pages/medicines/landing/epar_search.jsp& mid=WC0b01ac058001d124 EMA: Generics Procedure http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?cur l=pages/regulation/document_listing/docume nt_listing_000211.jsp&mid=WC0b01ac0580031b 0a http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/docume nt_library/Regulatory_and_procedural_guide line/2009/10/WC500004018.pdf European Crop Protection References: Institute/Paper Website Agrochemicals and plant protection http://www.innovatelegal.co.uk/article_agr products: a brief guide to negotiating ochemicals.htm the European patent landscape - 468 - The EU Crop Protection market and Regulations 2012 by Claudio Mereu, Field Fisher Waterhouse LLP, Belgium http://wcropchemicals.com/wp-content/uploa ds/2012/11/Shanghai-2012-EU-Pesticides-Mar ket-and-Regulations1.pdf http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUri REGULATION (EC) No 1107/2009 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL Serv.do?uri=OJ:L:2009:309:0001:0050:EN:PDF of 21 October 2009 concerning the placing of plant protection products on the market and repealing Council Directives UK Legislation http://www.legislation.gov.uk/all?title=pe sticides The Plant Protection Products Regulations 2011 UK HSE /CRD Website applicants http://www.legislation.gov.uk/uksi/2011/21 31/pdfs/uksi_20112131_en.pdf – Guide to http://www.pesticides.gov.uk/guidance/indu stries/pesticides/topics/pesticide-approva ls/pesticides-registration/applicant-guide /the-applicant-guide-contents-uk-guidance UK Database of Authorised Products https://secure.pesticides.gov.uk/pestreg/ Chemical Regulations Directorate's obligations under the Data Protection Act 1998. http://www.pesticides.gov.uk/guidance/indu stries/pesticides/topics/detergents/data-p rotection-policy CRD Applicant Guide to Data protection http://www.pesticides.gov.uk/guidance/indu stries/pesticides/topics/pesticide-approva ls/pesticides-registration/applicant-guide /the-applicant-guide-the-protection-of-dat a EU Commission data base of approved substances http://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/ pesticides_database/index_en.htm BVL Website – Guide to applicants http://www.bvl.bund.de/EN/04_PlantProtecti onProducts/01_AuthorizationReviewActSub/Pl antProtectionProducts_authorizationReviewA ctSub_node.html BVL –Changes to Registrations http://www.bvl.bund.de/EN/04_PlantProtecti onProducts/12_Fachmeldungen_EN/2011/Change s_authorisation_procedure.html BVL Database of Authorised Products http://www.bvl.bund.de/EN/04_PlantProtecti onProducts/02_AuthorizedPlantProtectionPro ducts/02_OnlineDatabase/PlantProtectionPro ducts_onlineDB_node.html - 469 - General References: Institute/Paper Website European Patent Office http://www.epo.org/ FAQ - Patent & IP basics http://www.epo.org/service-support/faq/basics.html Appendix B: Questionnaires provided to EMA, BVL and CRD EMA Q1.Regarding the approval of pharmaceuticals, Please let us know whether the contents are correct or not Approval applications procedure for approval of partial changes in the approved items : 1) Data protection period (generic application non-acceptance) of 8 years and further generic drugs sale pending period of 2 years drugs (in addition, further 1 year for innovative efficacy pharmaceuticals) for clinical study data of Pharmaceutical companies developing new drugs 2) Disclaimer of patent infringement to the studies of research/investigation of additional efficacies of generic drugs and trials for manufacture of generic drugs which are performed the third party. Q2 .Please let us know: 1) How you obtain the patent information/route in the process of approval, 2) How you use the patent information during evaluation for registration and how this information impacts the approval process, 3) Do you have opportunity to discuss with the patent office about patent contents. Q3.Do you have any plans of introduction of patent linkage between applications and available patent information. Q4.We understand that the official notice of marketing approval to third parties is normally performed by the competent authority in the country whom approved registration. Is our understanding correct? - 470 - Q5.Please let us know whether the contents of the official notice are common among the countries in EU or different between each country. BVL Sehr geehrte Damen und Herren, LKC Switzerland ist eine Consultingfirma mit Tätigkeitsschwerpunkt Europäische Regulierung mit Sitz in der Schweiz und Grossbritannien. Im Auftrag eines Kunden möchten Ich gerne eine Reihe von Fragen bezüglich des Einflusses von Patent- und Datenschutz auf den Regulierungsprozess in Deutschland beantworten. Die Fragen im Einzelnen Bezüglich des Patentschutzes: 1. Werden bestehende Patente für bestimmte Wirksubstanzen oder Formulierungen vom BVL überprüft bevor die Registrierung neuer Produkte mit neuen oder bereits existierenden Wirkstoffen bewertet wird? 2. Falls ja, bewertet das BVL nur Patente für Wirkstoffe oder auch für Formulierungen, Mischungen, Anwendungsbedingungen, etc. (Sekundärpatente). 3. Falls nein, beabsichtigt das BVL in Zukunft Suchkriterien bezüglich des Einflusses von Patentschutz einzuführen? Bezüglich des Datenschutzes: 1. Wird bestehender Datenschutz für bestimmte Wirksubstanzen oder Formulierungen vom BVL überprüft bevor die Registrierung neuer Produkte mit neuen oder bereits existierenden Wirkstoffen bewertet wird? 2. Falls ja, bewertet das BVL nur Datenschutz für Wirkstoffe oder auch für Formulierungen, Mischungen, Anwendungsbedingungen, etc. Bezieht sich dies nur auf den Datenschutz für Wirbel/Säuge-Tierstudien? 3. Falls nein, beabsichtigt das BVL in Zukunft Suchkriterien bezüglich des Einflusses von Datenschutz einzuführen? Desweiteren, gemäss meines Wissens werden in Deutschland genehmigte Registrierungen im Pestizid Register eingetragen. Bestehen gemäss ihres Wissens solche oder ähnliche Pläne auch für eine Europäische Datenbank bzw. ein europäisches Register für Registrierungen? Für eine schnelle Beantwortung meiner Fragen wäre Ich Ihnen sehr dankbar. Bitte kontaktieren sie mich jederzeit falls Sie weitere Informationen benötigen. - 471 - Mit freundlichen Grüssen Mike Neale CRD From: Mike Neale Sent: 19 December 2014 14:07 To: pesticides&[email protected] Cc: Matthew Kane; Rieko Ishikawa; Mike Neale Subject: Data protection and Patent Protection in the UK and the influence on the Regulatory Process. Dear Sirs, LKC Switzerland is a Regulatory consultancy, based in Switzerland and the UK, engaged in European Regulatory activities. We have been requested by a client to obtain information from the UK Government on the influence of patent protection and data protection on the Regulatory process in UK. The questions are as follows: Patent Protection 1. Does CRD review the patents available on specific active ingredients or formulations before considering registrations for new products containing new or existing active ingredients? 2. If so, does CRD consider patents on only active ingredients or covering formulations, mixtures, use patterns etc (secondary patents) 3. If not, does CRD have plans to introduce a search aspects for patent influence in future? Data Protection 1. Does CRD review the data protection available on specific active ingredients or formulations before considering registrations for new products containing new or existing active ingredients? - 472 - 2. If so, does CRD consider data protection on only active ingredients or covering formulations, mixtures, etc)? Is CRD only interested in Data protection for mammalian studies? 3. If not, does CRD have plans to introduce a search aspects for data protection in future? In addition, I understand that UK approved registration are included in the Pesticide Register of UK Authorised Products. Are you aware of any plans to have a European wide data base/register of registrations? We would be very grateful for a rapid answer to these questions. If we can provide any further information, please do not hesitate to contact us, With best regards - 473 - Appendix C: Copies of Responses received from EMA, BVL and CRD EMA - 474 - BVL - 475 - - 476 - CRD - 477 - Appendix D: Secondary Patents for Crop Protection in Europe An excellent review of examples of Secondary patents has been conducted by Dr. Duncan Curley from Innovatelegal, London. http://www.innovatelegal.co.uk/article_agrochemicals.htm A summary is provided below What are secondary patents? Some examples of the kinds of patents - often called ‘secondary patents’ – that can affect the date on which an agrochemical product can be marketed in Europe are as follows. The compound cyprodinil is an old molecule that is still marketed as the fungicide Unix® by Syngenta. This compound was patented in 1988. The patent on the compound expired in 2008, but there is a further patent that claims a particular crystalline form of cyprodinil called Form B. The patent on Form B does not expire in European markets until November 2014. Another example is fenvalerate, an old insecticide that was first invented and patented in 1973. Fenvalerate is actually composed of two related forms of the same chemical, that are generically called enantiomers. It is often the case that one enantiomer will be more biologically active than the other enantiomer. A later patent (now expired) filed in 1977 therefore claimed esfenvalerate, based on the purified, single enantiomer insecticide. Further active substances that have been patented in this way are fenoxaprop-P-ethyl and the herbicide metolachlor. Formulations A tactic that is often used to prolong the lifecycle of an active substance is to patent a new formulation containing it. BASF have for example obtained a patent that is valid for a number of European markets that protects until 2019 a concentrated liquid composition that consists of an azole fungicide (most preferably metconazole) and one or more additional fungicidally active ingredients, including in particular chlorothalonil or kresoxim-methyl, existing as a suspension of fine particles in the composition, together with a solubilising agent and a dispersing agent. Mixtures A further patenting strategy that has been deployed heavily in the agrochemical sector is to patent mixtures of active substances, with a claim to synergistic activity. Examples of such patented mixtures include propamocarb and chlorothalonil, prothiconazole (Proline®) and various other fungicides in synergy (e.g. prothiconazole and fluoxastrobin, marketed as Fandango®), the herbicide halosulfuron-methyl with either atrazine or cyanazine and picoxystrobin and cyproconazole (marketed as Furlong®). New uses A final example is the patenting of a new use of an existing active substance. An example of this kind can be shown using the extremely valuable chemical patented by Syngenta - 478 - called azoxystrobin. Azoxystrobin is the active substance in a $1 Billion per year fungicide product that is called in some countries Amistar®. Azoxystrobin is the subject of European patent number 0,382,375. This patent expired in several European countries in April 2011, but many further patents have been granted, which may prolong Syngenta’s exclusivity in relation to this molecule. For example, Syngenta has obtained a family of patents which claim a fungicidal composition that includes azoxystrobin for an application in an aquatic environment, including paddy fields, where it may be used to control fungal growth on rice plants. - 479 - <欧州法律事務所(DLA Piper UK LLP)向け質問事項と回答> (DLA Piper UK LLP からの回答を翻訳) (延長登録の対象となる処分) Q1. 医薬品や農薬の SPC の対象となる販売承認・販売登録について、追加又は 除外を望む声はありますか。 A1. 現在、SPC は EU 規則 469/2009(医薬品)及び EU 規則 1610/96(農薬)に基づ く医薬品及び農薬にのみ関する。もっとも、他の医薬製品又は積極的に移植可 能な医薬デバイスを、それらの医薬製品又は医薬デバイスが医療機器について の CE マーキング等と同等な行政上の承認を必要とするのであれば、医薬品と同 様に取り扱うべきではないかという議論がなされている。しかし、同等な取扱 いをすることに対しては、EU 規則 469/2009 第 3 条 b)の文言は EU 指令 2001/83 (ヒト用医薬品)及び EU 指令 2001/82(動物用医薬品)に従う承認手続について のみ言及した特定的な文言である、という有力な反論がある。さらに、積極的 に移植可能な製品についての EU 指令 90/385 による CE マーキングのための手続 は、医薬品の承認手続と同等な高い基準を有するものではない。しかし、ドイ ツ連邦特許裁判所のある小法廷は、ガラス微小球及び放射性同位元素からなり、 が ん 治 療 の た め に 使 用 さ れ る 製 品 「 TheraSphere( 登 録 商 標 )イ ッ ト リ ウ ム -90 ガラス微小球」に関して、この移植可能な医薬デバイスには SPC が適用可能で あると判示している(2010 年 1 月 26 日付連邦特許裁判所判決、ドケット番号 14 W( pat)12/07)。 こ の 判 決 と は 反 対 に 、 連 邦 特 許 裁 判 所 の 別 の 小 法 廷 は 、 CE マーキングの承認は SPC のための前提条件を満たすのには十分ではないとの判 決を下している(2010 年 2 月 4 日付連邦特許裁判所判決、ドケット番号 15 W ( pat)25/08)。 こ の 論 争 に 関 し て は 欧 州 司 法 裁 判 所 ( 「 ECJ」 )の 判 決 が な い の で、これは現時点では未解決のままである。 この議論以外では、医薬品又は農薬についての販売承認・登録のプロセスの大 きな変更は、EU の立法レベルで計画されていない。さらに、EU 規則 469/2009 (医薬品)及び EU 規則 1610/96(農薬)の改正や立法レベルでの他の変更も意図 - 480 - されていない。 (延長登録の対象となる特許) Q2. SPC の対象は、現行法で規定されている「特許で保護された製品であって、 行政上の認可手続を必要とするもの」以外に、何を追加すべきと考えますか。 A2. 上述のように、SPC は、それぞれ、EU 規則及び指令に規定されている医薬 品又は農薬について得ることができる。他の医薬製品及び積極的に移植可能な 製品についての承認としての CE マーキングに関する議論以外では、我々の知る 限り、他の製品についての SPC を必要とするものはない。 Q3. 最 初 の 承 認 に 基 づ い て 、 関 連 す る 複 数 の 特 許 権 の 延 長 登 録 が 認 め ら れ る こ とを望む声はありますか。 A3. この質問に答えるためには、第一に、EU 内での SPC 制度の現状を説明する のが役立つだろう。 EU 規則 469/2009(医薬品)第 3 条によると、SPC は、(i)当該製品が、EU 指令 2001/83 及び EU 指令 2001/82 によって医薬製品として、有効な販売承認(「MA」) の対象となっており、(ii)当該製品は、それ以前に既に SPC の対象となってお らず(iii)SPC が依拠すべき MA が、当該製品についての最初の MA である場合に 、 ベースとなる有効な特許で保護されている製品について取得できる。この文脈 において、製品は EU 規則 469/2009 の医薬製品(第 1 条 b))の有効成分の有効成 分又はこれらの組み合わせとして定義される。EU 規則 1610/96 第 3 条によると、 MA が指令 91/414/EEC(EU 指令 1107/2009 に置き換え)によって律せれる場合だ け、同じ条件が農薬に適用される。「製品」という用語はまた、植物保護製品 の有効成分として又は有効成分の組み合わせとして定義される(EU 規則 1610/96 第 1 条 8 号)。SPC はベースとなる特許の直接の延長ではなく、付与された製品 についてのものである。もっとも、SPC を付与するプロセスにおいては、ベース となる特許が重要な役割を果たす(下記 A4 参照)。すべての ECJ の判決を通じ ての核心部分は「特許ごとに 1 つだけの SPC」があるということである。しかし、 ECJ は、この見方はケースごとに区別する必要があることに気づいており、これ - 481 - は、以下にさらに説明するそれぞれの判例法に反映されている。 SPC の範囲は、ベースとなる特許によって限定される。すなわち、MA が、特許 を取得した有効成分の組み合わせ(組み合わせ A+B)のうちの 1 つだけの有効成 分(有効成分 A)を対象とする場合、SPC は付与され得ない。もし、SPC を得るべ き製品が、特許の範囲を超えている場合、すなわち、特許が、1 つの有効成分(A) 又 は い く つ か の 有 効 成 分 の 、 あ る 組 み 合 わ せ ( A+B)の み を カ バ ー し て い る が 、 製 品 が 、 有 効 成 分 ( A+B+C)と い っ た 、 よ り 広 範 な 組 み 合 わ せ か ら な る 場 合 、 た とえ MA がこの製品(A+B+C)をカバーする場合であっても、この製品(A+B+C)の SPC は得ることができない。もっとも、特許を取得した有効成分(A)又は特許を 取得した有効成分の組み合わせ(A+B)のみからなる製品についての SPC は、有 効成分のより広範な組み合わせ(A+B+C)からなる製品の MA を挙げることによっ て得ることができる。 下の表は、ベースとなる特許の範囲、MA の範囲及び得られる SPC の範囲の関係 についての ECJ による主要な判例法をまとめたものであり、また、ECJ のそれぞ れの事件名とドケット番号を示す。 SPC は承認された製品についてのものであるとしても、それはまた、ベースとな る特許にも言及する。この特許は、SPC が最終的に付与する保護範囲を規定する 上でも重要である(下記 A12 参照)。 同一の製品についてベースとなっている特許がいくつかあり(かつ、それらす べてがベースとなっている)、同じ特許権者がそれらを所有している場合、この 同一の製品についての SPC は、ベースとなっている特許のうちの 1 つに対して 付与される。特許権者は、SPC に関連するものとした特許を決定する必要がある。 その他の特許は 20 年の通常の特許期間経過により満了する。同一の製品につい てのそのような特許を異なる特許権者が所有している場合、それらはすべて 別々の SPC を取得できる。企業グループによっては広く分かれているものもあ るため、1 特許権者としてみなされる関連会社を特定するのが複雑になって、上 記の区別が困難を引き起こす可能性もある。 SPC は EU の権限ではなく、EU の個別の加盟国によって付与される。そのため、 - 482 - SPC の範囲は、常にそれを付与した加盟国に限定されている。したがって、特許 権者は、彼が特許保護の延長を望む各加盟国において SPC を申請する必要があ る。もっとも、これらの「パラレルな」SPC は、EU 内の同じ「最初の MA」に関 する必要がある。 我々の知る限りでは、概ね、この SPC の制度を変更するような要求はない。も っとも、法曹界は、SPC 規則は「急場しのぎ」でつくられたもので、それを充実 させる判例法を必要としていると考えている。そのため、規則自身で SPC 制度 のさらなる詳細を規定し、判例法の不確実性を不要にするように、規則の改正 が求められている。SPC に関する EU 規則は絶えず ECJ による判決の対象となる ので、ECJ は、将来の判決で SPC 制度のその一般的な認識を変えるかもしれない。 議論は、現在の解釈は特許権者にとって制限が厳しすぎ、特許権者の研究開発 活動に対し経済的利益を確保するために延長する必要がある、といったような ものである。 (延長が認められるための要件) Q4. SPC の対象について、最初の承認(authorization)により延長が認められた 後、別の承認が行われた場合に、後行処分までに要した期間について再延長を 望む声はありますか。 A4. この問題は、ECJ でもいくつかのケースで論点となっている。この点で最も 重要なものは以下のものである。Yissum-ドケット番号:C-202/05 及び Neurimドケット番号:C-130/11(どちらの判決も付録 1 に収録)。これらは、以下のル ールをもたらしている: 製品の第二医薬用途に対して MA が許可された場合は、それぞれの製品について SPC を取得するのは一般的には不可能である。なぜなら、同じ製品について第一 医薬用途に対する先行承認が既に存在するからである(理由:EU 規則の「製品」 についての定義は、有効成分の使用を含むのではなく、有効成分自体を含むだ けである)。ただし、これは SPC がベースとする特許が、最初の MA が指示する 用途をカバーしている場合のみである。したがって、第一医薬用途が、問題に - 483 - なっている SPC が指示する特許でカバーされていない場合、最初の MA に関係な く、この SPC は付与されるであろう。また、第一医薬用途が最初、ベースとな る同一の特許でカバーされていた場合でも、特許権者は、特許の範囲を限定す ることにより、第二医薬用途について(よって、第一医薬用途を除いて)SPC を 取得する機会を有する。これにより ECJ は、ジェネリック企業が市場から長期 間にわたって排除されない(これは競争につながり、薬価を引き下げる)ように もしているわけである。一方、ECJ はまた、SPC により特許を延長することによ って償却されるべき第二医薬用途におけるさらなる研究投資も認識している。 ここに述べた ECJ のアプローチは、法曹界において、バランスのとれた公正な ものだと認識されている。 Q5. 物質 A 又は B を選択肢とする化学物質発明に係る特許権について、有効成 分 A を含む医薬品(又は農薬)の承認 を受けた後、有効成分 B を含む医薬品(又 は農薬)の後行承認を受けた場合、先の承認に基づく延長登録に加えて、後の承 認に基づいて新たな延長登録が現行法では認められますか。認められない場合、 認めて欲しいと望む声はありますか。 A5. 既存の判例法によると、また A3 で上述したように、SPC は、特定の製品、 したがって、それを構成する有効成分に関連付けされている(EU 規則 469/2009 第 1 条 b)及び EU 規則 1610/96 の 8 における製品の定義)。したがって、ここで 説明したシナリオでは、2 つの異なる製品-一方の製品は有効成分 A を含み、他 方の製品は有効成分 B を含む-について 2 つの別個の SPC を得ることが可能と 思われる。しかし、我々の知る限り、この問題に関しての ECJ の判決はない。 ECJ は、Georgetown-C-484/12 において、わずかに異なるシナリオを決定したの みである。このケースでは、特許は、有効成分の組み合わせ(A+B+C)に加えて、 それぞれの有効成分(A;B;C)を別々に保護していた。ECJ は、この場合、2 つの 別個の SPC、すなわち、有効成分の組み合わせからなる製品についての SPC と、 単一の有効成分(例えば A)からなる製品についての SPC が可能であると判示し た。その認定において、ECJ は、これは、1 件の特許明細書においてクレームを 組み合わせる代わりに別個の特許を申請することによる製薬会社のバイパス戦 - 484 - 略のコストを回避できるので好ましいと述べている。しかし、ECJ はこの場合、 1 件の相互 MA に 2 つの SPC を関連付けている。この文脈において、ECJ は、こ れらの 2 つの別々の SPC に幾分かの重複があっても、それらは同じ日に期間満 了すると指摘した。これは Q5 で説明したシナリオでは異なるだろう。そこでは、 最初の MA は有効成分 B に言及もしないだろうし SPC が異なる満了期限を有する ためである。Neurim(既に上に引用)での ECJ の判決も異なるシナリオをカバー している。このケースでは、問題となる製品が同一であったが第一医薬用途は ベースとなる特許により保護されていないか、もはや保護されていなかったた めである。したがって、2 つの別個の製品について 2 つの別個の特許を持つのと 同様の、この集まりを検討するのには十分な理由があるが、ECJ がこのようなシ ナリオをどう決定するかは不明なままである。 我々の知る限りでは、この問題に関する議論はない。しかし、研究開発型の製 薬会社が第 2 の SPC の可能性を望むのは想定できる。 Q6. 有効成分 A に関する化学物質発明に係る特許権について、有効成分 A を含 む医薬品(又は農薬)で承認を受けた後、有効成分 A と有効成分 B を含有する配 合剤で後の承認を受けた場合、後の承認に基づいて延長登録が現行法では認め られますか。認められない場合、認めて欲しいと望む声はありますか。 A6. ECJ は、そのような第 2 の SPC が不可能であることを Actavis v Sanofi(既 に上で引用)において判決した。裁判所の判決は、合理的な期間の後にはジェネ リック医薬品の市場を開くべきだという考慮に基づいている。このようなシナ リオでは研究開発型の製薬企業が第 2 の SPC を望むと想定できるが、我々の知 る限りでは、最近において、立法や ECJ による法の解釈の変更を求める議論は ない。 (延長期間) Q7. 延 長 期 間 が 最 大 5 年 で あ る こ と に つ い て 、 期 間 の 拡 大 や 縮 小 を 望 む 声 は あ りますか。 - 485 - A7. 我 々 の 知 る 限 り で は 、 そ の よ う な 議 論 は な い 。 し か し な が ら 、 研 究 開 発 型 の製薬会社は SPC の最大期間が長くなることを望むであろうと想定できる。他 方、同様に、ジェネリック製造業者は期間が短縮されることを望むであろうと 想定できる。 EU 規則 1901/2006 第 36 条との関連で、EU 規則 469/2009(医薬品)第 13 条(3) によれば、小児研究に関わる場合は、SPC の期間はさらに 6 ヶ月延長できる点に 注意していただきたい。 Q8. 製品の承認日から SPC による保護の存続期間が最大 15 年であることについ て、期間の拡大や縮小を望む声はありますか。 A8. A7 で上述したのと同じことが適用される。我々の知る限りでは特に議論は ない。 Q9. 延長期間が、出願から承認までの期間から 5 年を引いた期間であることに ついて、見直しを望む声はありますか。 A9. 我々の知る限りでは、この点で特に議論はない。 (延長回数) Q10. 1つの特許について複数回の延長を望む声はありますか A10. A5 で先に引用した判例法は、特許権者が複数の SPC を申請しようとしたり、 そうすることでさらに SPC の期間を延長しようとするのは非常によくあること であると示している。しかし、我々の知る限りでは、既存の SPC 制度以上に特 許のさらなる延長を望む声は法曹界にはない。 (延長された特許権の効力) Q11. SPC によって付与される保護範囲について、現行法の規定を変更する必要 はありますか。ある場合どのように変更するべきとお考えですか。 A11. EU 規則 469/2009 第 4 条及び第 5 条並びに EU 規則 1610/96 第 4 条及び第 5 - 486 - 条によると、SPC はベースとなる特許と同じ保護範囲を有するが、SPC が付与さ れた製品に限定され(製品は EU 規則 469/2009 第 1 条 b)及び EU 規則 1610/96 第 1 条 8 号に定義される)医薬又は農薬としての用途に限られる。 我々の知る限りで、SPC の保護範囲の拡張を求めることに関する議論はない。 Q12. SPC によって付与される保護範囲は、医薬品であるか農薬であるかによら ず、基本特許の保護範囲内において、承認の対象となる製品、及び証明書の期 間満了前に当該製品について承認されている医薬としての用途に及ぶとされて いますが、その後の新たな承認に関わる用途も含み、第三者が受けた承認に関 わる用途も含むとの理解でよいですか。現行法はどうなっているのか、変更す べき点がないか教えてください。 A12. EU 規則 469/2009 第 4 条及び第 5 条並びに EU 規則 1610/96 第 4 条及び第 5 条並びにそれぞれの判例法が、SPC の保護範囲を規定している。 SPC により保護される用途は最初の MA(SPC がベースとしたもの)で言及された 用途だけでなく、SPC の期間中にベースとなる特許で保護され、承認されたすべ ての用途である。これは後の用途についての MA を受けたのが第三者でも関係な い。第二医薬用途についての MA に基づいて SPC を得る可能性については、上記 の A4 をご参照いただきたい。 さらに、ECJ は Novartis-C-574/11(判決は付録 1 に収録)において、SPC が、単 一 の 有 効 成 分 ( A)に つ い て 付 与 さ れ て い る 場 合 、 そ れ は ま た 、 単 一 の 有 効 成 分 ( A)に つ い て の ベ ー ス と な る 特 許 が 有 効 成 分 ( A+B)の 組 み 合 わ せ に お い て 有 効 成分 A の使用に対して保護を及ぼすのと同様に、有効成分(A+B)の組み合わせ において、この有効成分の使用に対しても保護を及ぼすと判示した。 さらに、ベースとなる特許と同じ保護カテゴリが SPC に適用される。組成物特 許に基づいて付与された SPC は物質としての製品を保護する。方法特許に基づ いて付与された SPC は、製品の製造方法を保護し、それぞれの国の法律に基づ いて、それはまた、製品自体を保護することもあり得る(例えば、ドイツ特許 法第 9 条 3 号)。用途特許に基づいて付与された SPC は、製品の特許が付与され た使用を保護する。 - 487 - 我々の知る限りでは、SPC の保護範囲について意図的な変化はない。 Q13. ジ ェ ネ リ ッ ク 医 薬 品 の 製 造 販 売 の 承 認 や ジ ェ ネ リ ッ ク 農 薬 の 販 売 登 録 を 申請するに当たって、SPC によって付与される保護範囲に該当製品が含まれるか 否かの判断で迷うことはありますか。迷うことがあるとすれば、それはどのよ うな理由からですか。 A13. ドイツでは弁護士は MA の申請をしない。これは通常、それぞれの製薬又 は農薬会社の薬事部門によって行われる。したがって、我々はこの点について 自分自身での経験がない。我々はそれぞれのインターネットフォーラムで検索 したが、この問題に関する関連性の高い結果は得られなかった。 (延長登録出願の手続) Q14. 承認日から6ヶ月以内に SPC のための出願を行うという時期的制限につい て、延長や短縮を望む声はありますか。 A14. 我々の知る限りでは、SPC の申請のための期間制限の延長又は短縮に関す る要望はない。しかし、承認日と SPC 申請の締め切り日の間の時間枠は短い。 それゆえ、期限の徒過を回避するために、薬事部門は特許部門や外部の特許代 理人と緊密に連携することが不可欠である。 (第三者に対する公示方法) Q15. 承認情報、特許情報へのアクセス性に満足していますか。 A15. ドイツでは弁護士は SPC の申請をしない。したがって、承認情報がどの程 度満足行くように入手可能なのか我々は情報を持っていない。しかし、我々の 知る限りではヨーロッパには承認薬についての利用可能なある種の登録簿があ る。すべての薬剤が、EU 当局ではなく、国家当局によって承認されているとい う事実のために、情報のアクセス性は異なる。EU 当局によって承認された医薬 品について www.eudrapharm.eu で承認薬についての利用可能なオンライン登録 簿がある。ドイツでは、承認薬について多数の印刷された登録簿が存在する。 さらに、いくつかの商業オンラインデータベースが存在する。利用料金無料の - 488 - 登録簿が www.pharmanet-bund.de で入手可能であるが、承認薬に関するすべて の情報が含まれているわけではない。農薬に関しては、消費者保護・食料・農 業ドイツ連邦省が www.bvl.bund.de でオンラインデータベースを提供している。 特許情報に関しては、欧州特許は www.register.epo.org でヨーロッパ特許登録 簿から入手可能になっている。さらに、欧州特許の各国部分及び各国特許は、 それぞれの国の登録簿から入手可能になっている。ドイツでは、国の登録簿は www.departis.dpma.de で入手できる。 Q16. (特に 2008 年以降について) 欧州において、延長登録の登録要件や、権利の効果・範囲に関して争った重要 な判例があれば簡単に教えてください。また、欧州において、ジェネリックメ ーカーの市場参入に関して争った重要な判例があれば簡単に教えてください。 A16. A3 に ま と め た 判 例 法 と 上 記 の 質 問 へ の 回 答 で 言 及 し た 追 加 の 判 例 法 の リ ストをご参照いただきたい(Yissum、Neurim、Novartis)。 さらに、ECJ の 2 件の最近の先例を下記に示す。これは、それぞれ、SPC を登録 するための要件及びジェネリック製造業者の市場参入に関して重要である: SPC 登録の要件についての先例: Eli Lilly - C-493/12(付録 1 に収録) Eli Lilly において ECJ は、SPC によって保護されるべき製品がベースとなる特 許において「特定」されている必要があるという要件をさらに規定した。 上に説明したように、SPC が指示する製品は、EU 規則 469/2009 第 3 条 a)に従い、 有効な特許によって保護されている必要がある。この規定の文言によっても、 当該製品が特許請求の範囲に記載されている必要があるか否かは不明のままで ある。Medeva(ドケット番号:C-322/10)で ECJ は既に、製品が「特定」されて いる必要があるとの判決を下した。 これらの考察に基づき、Eli Lilly は Human Genome Sciences のベースとなる特 許の文言は、この製品に SPC が付与されるに足るほど、十分に製品を特定して いないと異議を申し立てた。ベースとなる特許の関連する文言は以下の通りで - 489 - ある:「全長ニュートロカイン-α ポリペプチド[...]又は[...]ニュートロカイ ン-α ポリペプチドの細胞外ドメイン[...]と特異的に結合する単離された抗体 又はその部分」。Eli Lilly によれば、この文言は、Medeva で ECJ によって規 定された要件を満たしていなかった。なぜなら、この文言は、「問題の抗体、 特に、特異的な一次抗体配列に関しては何の説明も与えておらず、いずれのニ ュ ー ト ロ カ イ ン -α エ ピ ト ー プ に 抗 体 が 結 合 し て い る と ク レ ー ム さ れ て い る の かについても、どの中和活性が発揮されるとクレームされているのかについて も、なんら機能的な情報を開示していないからである。」 Human Genome Sciences は、これに反対し、選択された機能的な定義は一般的な文言であると述べ、こ れは欧州特許庁によって受け入れられた。ECJ は、特許クレームに含まれる構造 式も、ベースとなる特許において製品を定義するのに十分であるが、それだけ でなく、特許クレーム内の関数式も「それらのクレームに基づいて、とりわけ、 発明の説明に照らして解釈し、必要に応じて EPC 第 69 条及びこの規定の解釈に 関するプロトコルによって、クレームが、暗黙裡にであれ必然的かつ具体的に は問題の有効成分に関するものであるとの結論に到達可能であることを条件 に」十分であると最終的に判示した。争点となっている特許クレームは、これ らの基準を満たしておらず、ECJ は Human Genome Sciences が、さらに、その発 明を特定するため何らかの手段、例えば、SPC がベースとすることができるさら なる研究やその後の特許、も取らなかったことを指摘した。 この判決によって ECJ は、構造式は、Medeva によって要求される特許クレーム 中で製品「特定」として十分であることを明らかにした。さらに、ECJ は、関数 式が製品を「特定」するのに十分となるための条件を示した。しかし、実際に は、ECJ の抽象的な要件を適用するのは大変である。それらは解釈の余地を残し ているからである。 ジェネリック製造業者の市場参入についての先例: Olainfarm - C-104/13(付録 1 に収録) Olainfarm において ECJ は、2 つの別々の問題に決定を下した。まず、EU 指令 2001/83 第 10 条 2a)項で使用される「リファレンス医薬製品」という用語をさ - 490 - らに定義する必要があった。さらに、ECJ は、リファレンス医薬製品についての MA の保有者は、リファレンス医薬製品のジェネリックの MA に反対する個別の権 利を有しているかどうかを決定しなければならなかった。 EU 指令 2001/83 第 10 条によると、ジェネリック製造業者は、ジェネリック製品 についての MA を得るために、ある一定の条件の下で、オリジナル製品の MA の ために実施された試験や研究を参照できる。このオリジナル製品は「リファレ ンス医薬製品」と呼ばれている。このようなリファレンス医薬製品も、EU 指令 2001/83 条 10a に基づいて MA が付与されている医薬製品と言えるかどうかは明 らかでない。医薬製品の有効成分が EU において十分に確立されている場合、後 者の規定は、MA の要件を容易にする。EU 指令 2001/83 条 10 条 2a)項は、EU 指 令 2001/83 第 6 条及び第 8 条により承認された医薬製品のみを指す。 ECJ は、EU 指令 2001/83 第 10a による「十分に確立された用途」-MA も EU 指令 2001/83 第 10 条 2a)項でカバーされているとの判決を下した。したがって、リ ファレンス医薬製品も EU 指令 2001/83 条 10a の促進要件によって承認された医 薬製品となり得る。 第 2 の問題はリファレンス製品のジェネリックの MA に反対する個別の権利に関 するもので、これについては、ECJ は、リファレンス医薬製品についての MA の 所有者は、リファレンス医薬製品のジェネリックの MA に異議申立をする権利を 有するとの判決を下した。ECJ は、リファレンス医薬製品の MA の所有者は「他 の医薬製品の製造業者が、当該他の医薬製品についての MA を得るために、前臨 床試験及び臨床試験といった試験や治験を自ら行うのではなく、前者の製品に ついての MA の申請に関する書類に含まれる前臨床試験及び臨床試験の結果を参 照する権利があることを受け入れることが求められている」ことを考慮し、こ の考慮に基づいてこの判決を行った。ECJ の見解では、これは、参照のための条 件が遵守されていることを要求するリファレンス医薬製品についての MA の所有 者の権利につながる。 ECJ の判決は、リファレンス医薬製品という用語の解釈をさらに明確にし、既に それぞれのドイツの法律の下で認識されていた異議を申し立てる権利を確認す るものである。 - 491 - Q17. 新薬メーカーの医薬品の臨床試験や、農薬の安全性試験等のデータ保護期 間による保護に加えて、SPC による保護を受けることが有効である場合とその理 由をお答えください。 A17. SPC の保護は、医薬品の臨床試験、農薬の安全性研究等についてのデータ 保護とは無関係である。データの保護が無効であることが SPC の前提条件なの ではない。したがって、我々の知る限りではデータ保護規定が SPC の許容性に 対して及ぼす影響はない。もっとも、これらの試験及び研究のためのデータ保 護は薬事部門に属しており、我々は、この分野において具体的な経験を有して いない。 SPC の保護は SPC の所有者に保護された製品を製造し、頒布する独占的権利を許 諾する。データ保護の規定は、初期 MA のためにオリジナルの製造業者によって 実施された試験や研究をジェネリック製造業者が参照することを禁止するだけ である。医薬品に関しては、オリジナル製品の臨床試験の参照は、オリジナル 製品の MA から 8 年間、ブロックされている。これらの時間制限は、特許又は SPC 保護に関係なく適用される。したがって、特許又は SPC 保護が全くない場合、 ジェネリック製造業者は、リファレンス医薬製品に適用されるデータ保護をバ イパスして、MA のために独自の試験や研究を行うことで市場に参入できる。さ らに、ジェネリック製品の MA は、オリジナル製品の承認の後わずか 10 年で付 与される。 (その他) Q18. 欧州の SPC 制度と他国とで特許権の延長登録制度(審査遅延に関する延長 登録制度を除く)を比較した場合に、欧州の制度についてメリット又はデメリッ トと思うことがあれば、お答えください。 (観点の例:期間・回数、延長期間の算定方法、延長の効果(権利行使)、延長 対象、承認との関係、延長手続き等) 欧州の SPC システムの利点: ・SPC と MA に関するデータ保護は、互いに独立している。 - 492 - ・一般的に SPC は、ベースとなる特許と同じ権利を付与し、したがって、保護 された有効成分の他の組み合わせにおける使用も保護されている。 ・SPC は、EU 内の最初の MA に基づいている。この結果、すべての EU 加盟国に おける存続期間は同様の計算となり、該当する MA に関すると疑義が回避される。 ・SPC の再延長は最初から除外されているため、特許及び SPC によって付与され る最大の保護を容易に計算できる。 ・ある特定の条件下では、SPC はまた、第二医薬用途に使用可能である。 欧州の SPC システムの欠点: ・特許/製品ごとの SPC の数はまだ ECJ によって解決されていない。各 EU 規則 の文言は限られているため、非常に多くの判例法が必要になる。 ・医薬品及び農薬以外の製品グループも承認手続きは長く掛かるのに、それぞ れの EU 規則の文言によると、SPC は医薬品及び農薬のみに適用される。 ・ SPC の申請期間が比較的短い。 Q19. 欧州の SPC 制度又は日本における特許権の存続期間の延長登録制度につい て、その他の意見はありますか。 A19. SPC の欧州のシステムは関係するすべての当事者にとって利益のバランス がうまく取れることを目指している。一方では、研究開発型の製薬企業に、掛 かった研究費を補償するための機会を与え、さらなる研究を行う動機づけを与 えるためには、その経済的利益を保護する必要がある。他方では、ジェネリッ ク製造業者に市場を開放し、競争、及び、製品についてよりバランスのとれた 価格設定をつくりだすことが公衆衛生の利益にかなっている。これは、長い時 間が掛かる承認プロセスを補償するものとして SPC を得る可能性をもたらすが、 特許/製品あたりの SPC の期間と数は制限されることになる。 - 493 - (追加質問に対する回答) 11 February 2015 補足保護証明書により提供される保護の範囲 まず、特許期間自体がEU法の下で延長されないことに注意すべき必要があ る。補足保護証明書(「SPC」)は、独立した権利であり、基本特許の終了後に 補足的な保護をもたらすものである。このように、SPC の主題は、特許発明や、 販売承認の認められた特定の製品(product)のいずれでもない。 紛 ら わ し い こ と で は あ る が 、 SPC の 主 題 は 、 E U の 規 定 ( 農 薬 に 対 す る EU Regulation 1610/96 と医薬品に対する EU Regulation 469/2009)によって 、 製品(product)として定義されている。医薬品という意味においては製品とは医 薬製品の有効成分(active ingredient)または有効成分の配合(combination) と し て 規 定 さ れ て い る ( EU Regulation 469/2009 の Article 1b ) 。 EU Regulation 1610/96 の Article 3 によれば、農薬に対しても同様の条件が適用 されている。それ故に、SPC の保護の範囲は、その医薬または農薬の用途におけ る特定の許可された製品のそれぞれの有効成分を中心とするものである。 従って、SPC の適用された最初の販売承認("MA")の、例えば用法、効能、効 果といった更なる一面は SPC の保護範囲を制限するものではない。基本特許の 範囲が、その保護範囲を SPC に制限する。こうして、基本特許の範囲が SPC に 読み込まれなければならない。それ故に、もし、基本特許の主題が有効成分の 特定の用法を含むものであれば、この有効成分のこの用法だけが SPC によって カバーされるものである。 結果として、SPC の保護範囲は基本特許の保護範囲よりも広いものとなること はない。しかしながら、基本特許が誘導体(塩やエステル)をカバーするもの であれば、SPC の保護範囲はこれらの誘導体にまで拡張される。この点に関して は Medeva 事件(C-322/10)で ECJ が、それぞれの誘導体は、均等論によってカ バーされるだけでなく、基本特許の請求項で十分に特定されていることが必要、 と判断したことによる。 - 494 - 我々は、EU 内でこの問題についての更なる判例法や論争を関知していない。 - 495 - 【質問項目及び回答】 【韓国】 <韓国特許庁(KIPO)向けの質問事項と回答> (KIPO への質問はジェトロ・ソウル事務所を介して行った) (制度導入の趣旨・経緯について) Q1. 医薬品や農薬等の販売承認・登録に関わる特許権の存続期間の延長制度の導入の 趣旨・経緯を教えてください。また、延長制度導入にあたり新薬の研究開発にインセン ティブを与えることが導入趣旨に含まれますか。 新薬の研究開発にインセンティブを 与える上で重視すべき発明は何であり、何処まで効力を与えるべく制度設計されたか、 特に以下の観点について教えてください。 (1)延長対象として重視された特許発明の種類(延長対象を有効成分の特許発明に限 定するか、その他の特許発明も対象とするか) (2)有効成分の特許を延長対象とした場合、延長された特許の効力の及ぶ範囲(新薬 に対応する後発品のみに及ぶのか、新薬と同じ有効成分を含む全ての医薬品に効力が及 ぶか、異なる塩やエステルなどを有効成分とする改良新薬まで効力が及ぶか) A1. □特許権延長期間延長制度の導入趣旨について ○医薬品・農薬とように、許可又は登録に必要な有効性、安全性等の試験が長期間所 要される場合、実質的に特許権による独占権を享有する期間が短くなるため、5 年の範 囲内で当該医薬品・農薬の特許権存続期間を延長することで、他の製品の特許権存続期 間と衡平性を合わせるためのものです。 □特許権存続期間延長制度の導入経緯について ○米国が 1980 年から持続的に物質特許の導入を要求し、物質特許と共に同制度を導 入する特許法改正(案)を 1986 年 5 月 1 日に立法予告し、1986 年 12 月 31 日に法律第 3891 号(施行日:1987.7.1.以下、旧特許法という)で公布しました。 □同制度導入時、新薬研究開発にインセンティブを支給するとの導入趣旨の有無につい て ○旧特許法改正による同制度の導入時、新薬研究開発にインセンティブを支給すると いう導入趣旨はありません。 (延長の対象となる処分について) Q2.延長登録の対象となる処分として、新たに追加を検討されているものはありますか。 A2.現在、韓国特許庁長は延長登録の対象追加について検討しているものはありません。 (延長期間) Q6-1.臨床試験又は農薬登録に要する試験期間(特許権の設定登録の日又は最初の被験 - 497 - 者選定の日等のうち、遅い日から最終の被験者観察期間の終了日等) と 行政処理期間 (許可又は登録関連書類の受付の日から医薬品の許可の日)との合計であり、最大で5年 間であると理解していますが、内容に相違ありますか。このように算出する根拠は何で すか。 A6-1.同制度の延長期間は、最大 5 年で正しいです。算出根拠は、貴下が提示したとお り、臨床試験又は農薬登録に必要な試験期間と行政処理期間です。 Q6-2.また、外国での臨床試験の場合は、韓国での行政検討期間のみが認められると理 解しておりますが、その根拠となる条文等があれば教えてください。 A6-2.外国で実施する臨床試験の場合、韓国における行政検討期間のみを認定する根拠 規定は、「特許権存続期間の延長制度運用に関する規定(特許庁告示第 2012-34 号、 2012.10.22.,一部改正)」第 4 条です。 Q6-3.実際に試験を開始できるまでに必要な待ち期間を算入するかどうか教えてくだ さい。 A6-3.試験前、待機期間は延長期間に参入せず、実際試験した期間のみ延長期間に参入 しています。 (延長回数) Q7. 特許権の存続期間の延長を1回のみに制限している理由は何ですか。 A7.同制度は、物質特許と共に導入したものであって、新物質を主成分とし、新薬又は 新農薬として許可又は登録を受けた製品に対する特許権存続期間を延長する、特許法上、 極例外的な規定ですので、一つの特許に対し 1 回以上延長する理由がありません。 ※同告示第 3 条(延長回数)①一つの特許に対する許可等による特許権の存続期間は 1 回に限る。 (ジェトロ注:2015 年 1 月 1 日に改正特許法が施行され、上記告示の内容が現在は特 許法第 89 条に規定されている。) (延長された特許権の効力) Q8.特許法 95 条の括弧内でいう「物」とは何を意味しますか。95 条にいう「特定の用 途」とは、最初に承認された用途のみならず、その後の新たな承認に関わる用途も含み、 第三者が受けた承認に関わる用途も含みますか。また、ここでいう「用途」とは、特定 の疾病に使用することのみならず、特定の疾病に使用する際の用法や用量等の使いかた は含まれますか? A8.特許法第 95 条は、許可等による存続期間が延長された場合の特許権効力に対する 規定であり、「もの」及び「特定した用途」に対する意味又は解釈は、特許法院(司法 - 498 - 部)裁判官の固有権限であるため、特許庁長が回答する事項ではありません。 ※特許法(法律第 12753 号,2014.6.11.,一部改正)第 95 条(許可等による存続期間 が延長された場合の特許権の効力)第 90 条第 4 項に基づき、特許権の存続期間が延長 された特許権の効力は、その延長登録の理由となった許可等の対象物件(その許可等に おいて物件にたいし特定の用途が定まっている場合は、その用途に使われる物件)に関 するその特許発明の実施行為にのみ及ぶ。 (延長の手続き) Q10. 農薬に関し、韓国では外国企業が新規有効成分を登録する際には、有効成分の原 体登録とそれを実施する製品としての製剤登録の 2 つが必要となると理解しておりま す。この制度下では、原体登録が先んじた場合には、製剤登録が取得するまでは販売(実 施)はできないことになり、最初の承認(原体登録)がなされたとしても実施はできま せん。 ここで、最初の登録に係る期間しか特許期間の延長が認められないとすると、原体登録 の承認から、製剤販売の登録までの期間は特許発明を実施することができないにもかか わらずその期間は補償されないことになり、制度の趣旨に反するように思われます。 そこで農薬に関する特許期間延長の手続について、以下の点をご教授ください。 ① 事実関係の確認として、特許期間延長申請の起算日となる「登録日」が、「原体 登録日」、「製剤登録日」のどちらを指すのか、 ② これらの登録時期が前後した場合、「3か月以内」の起算点は、先の登録時なの か、後の登録時なのか、 ③ 先行登録までが延長対象となる場合、特許発明を実施できなかった先行登録と後 行登録との間の期間を延長すべきとの議論はありますか。 A10.韓国特許庁長は、貴下の質疑のような問題についての問い合わせや関連団体又は 業界から嫌疑をうけたことがないため、同問題について議論したことはありません。 (その他) Q14.審査遅延による延長制度の運用(特許法92条の2~5、2012年開始)によ り、従来の許可に伴う特許権の存続期間の延長制度に何か影響はありますか。また、審 査遅延に基づく延長期間と、許可等に基づく延長期間は合算されますか。 A14.合算されません。 - 499 - 調査報告書 吉田法務事務所 <食品薬品安全省(MFDS)向けの質問事項と回答> (MFDS への質問は吉田法務事務所を介して行った) 一般財団法人 知的財産研究所 御中 MFDS 関連調査を実施致しましたので、結果を下記に報告致します。 記 1. 着手日 :平成 26 年 12 月 29 日(月) 2. ご依頼内容: 2014 年 12 月締結しました契約書の MFDS 質問事項 MFDS 質問事項 Q1. 医薬品(ジェネリック医薬品を含む)の承認(治験・試験~販売)の流れと、その中での 特許情報が利用されるかどうか、承認審査における特許情報の用いられ方・影響を教えて く ださい(特許の種類(物質、用途など)によって後続の処分が変わることはあればそれに つ いても教えてください)。 Q2.医薬品の販売承認に関して、次の制度があると理解していますが、相違はありますか。 また制度の概要と運用について教えてください。 (1)一度認められた医薬品の販売承認の内容の一部変更の承認申請手続 (2)新薬メーカーの臨床試験のデータの保護期間(6 年間) Q3.販売承認の過程での特許情報の入手経路と、承認審査における特許情報の用いられ方・ 影響 を教えてください(特許の種類(物質、用途など)によって後続の処分に影響することは あり ますか)。また、特許の内容について特許庁と相談することはありますか。 Q4.グリーンリストに掲載する登載クレームを確定するための手続を教えてください。 Q5.医薬品の承認について、第三者に対する公示方法や公示内容を教えてください(グリー ン リストの他に)。 *Q1 と Q3 の質問が重複していると判断しました。 3. 調査方法: 頂いた質問内容を食品・医薬品安全処(MFDS)へ照会し文書で回答を得ました。 下記に、MFDS から得た回答の文書(5 枚)を添付致します。 4. 回答内容:以下、MFDS からの回答内容を入れた調査内容となります。 - 500 - 調査報告書 吉田法務事務所 MFDS から回答は韓国語から日本語に翻訳しております。 (質問、回答の順に記載しております。) 調査内容 「MFDS からの回答要約」 ○医薬品許可(届出)関連法令条項及び食薬処告示は次の通りです。 ・「薬事法」(法律第 12450、2014.3.18)第 31 条、第 42 条 ・「医薬品等の安全に関する規則」(総理令第 1098 号、2014.10.10)第 4 条、第 5 条、第 9 条、 第 10 条 ・「医薬品の品目許可・申告・審査規定」 ○医薬品許可過程における特許情報の利用方法及び‘医薬品特許目録’登載方法と関連する法 令条項 とガイドラインは次の通りです。 ・「薬事法」第 31 条の 3、第 31 条の 4、第 42 条第 4 項 ・「医薬品等安全に関する規則」第 18 条、第 19 条 ・「医薬品許可特許連携制度細部運営要領」 ※上記以外に「医薬品品目許可及び届出解説書(2014.7)」を参考させていただいております。 ご質問表に対する回答は以下にまとめております。 ---------------------------------以 下------------------------------------- Q1-1)医薬品の許可(届出)の流れ 1. 関連法令及び告示 <MFDS 回答> ○医薬品許可(届出)関連法令条項及び食薬処告示 ・「薬事法」(法律第 12450、2014.3.18)第 31 条(製造業許可等)、第 42 条(医薬品等輸入許可) ・「医薬品等の安全に関する規則」(総理令第 1098 号、2014.10.10)第 4 条(製造販売・輸入品目 の許可申請)、第 5 条(製造販売・輸入品目申告)、第 9 条(安全性・有効性に関する資料)、第 10 条(基準及び試験方法に関する資料) ・「医薬品の品目許可・申告・審査規定」(食薬処告示第 2014-178 号、2014.10.31) ※(参考)「薬事法」抜粋 http://www.law.go.kr/lsInfoP.do?lsiSeq=152038&efYd=20141219#0000 第 31 条(製造業許可等) ② 第 1 項による製造業者がその製造(他の製造業者に製造を委託する場合を含む)した医薬品を販売 する 場合には総理令の定めによって品目毎に食品医薬品安全処長の製造販売品目許可(以下品目許可)を 受け たり、製造販売品目届出(以下品目届出)をしなければならない。 - 501 - 調査報告書 吉田法務事務所 第 42 条(医薬品等輸入許可) ① 医薬品等を輸入しようとする者(以下輸入者)は総理令の定めによって品目毎に 食品医薬品安全処長 ② の許可を受けたり、届出をしなければならない。許可済みまたは届出済み事項を変更する場合も 同じ ③ である。 ※(参考)「 医薬品等の安全に関する規則 」抜粋 http://www.law.go.kr/lsInfoP.do?lsiSeq=160382&efYd=20141219#0000 第 4 条(製造販売・輸入品目の許可申請) ① 法第 31 条第 2 項から第 4 項まで又は法第 42 条第 1 項により、医薬品等の製造販売・輸入品目許可 ② を受けようとする者は別紙第 4 号書式の医薬品等製造販売輸入品目許可申請書(電子申請を含む )に ③ 次の各号の書類(電子文書を含む)を添付し、食品医薬品安全処長(医薬品同等性の立証が必要 ④ な医薬品製造販売・輸入品目許可の場合は地方庁長)に提出するものとする。 第 5 条(製造販売・輸入品目申告) 法第 31 条第 2 項・第 4 項又は法第 42 条第 1 項により、届出をする医薬品は次の各号による。 第 9 条(安全性・有効性に関する資料) 医薬品等の製造販売・輸入品目許可又は品目変更許可を受けたり、製造販売・輸入品目届出又は品 目変更届出をしようとする者が提出する安全性・有効性に関する資料は次の各号の資料(電子文書を 含む)とする。 第 10 条(基準及び試験方法に関する資料) 法第 31 条第 11 項または法第 42 条第 5 項によって医薬品等の製造販売・輸入・品目許可又は品目 変更許可を受けようとする者はその品目の製造と品質管理のための基準及び試験方法に関する資料 を提出するものとする。 2. 医薬品製造販売・輸入品目許可(届出)の対象 ・「医薬品品目許可及び届出解説書(2014.7)」参照 品目許可対象 医薬品製造販売(輸入)品目許可 □届出対象医薬品に該当しない医薬品 1.新薬 2.許可取得したことのない新規医薬品 3.安全性・有効性審査対象の医薬品 -新しい資料提出医薬品:新しい染(異性体)、新 しい効能群、新しい組成、新しい投与経路、新し い 用法用量、新しい剤型など -国内に使用例のない新しい添加剤を配合する場合 -89 年 1 月 1 日以降製造(輸入)品目許可された専 門医薬品で、新薬と同一医薬品(剤型が異なる同一 投与経路の品目を含む) -「医薬品同等性確保の必要対象医薬品指定」(食 薬処告示)に収載された医薬品 -許可・届出済みの品目と用法・用量は同一だ が、 剤型の特殊性が認められた製剤 4.登載医薬品の安全性・有効性に関する資料を根 拠 に申請した医薬品 品目届出の対象 医薬品製造販売(輸入)品目届出 □届出対象医薬品 1.大韓民国薬典または食品医薬品安全処長が認める 公定書及び医薬品集に載っている品目。但し、国内 で許可されてない品目は除外 2.大韓民国薬典外韓薬(生薬)規格集に載っている品 目 3.食品医薬品安全処長が成分の種類・規格・含量及 び 処方などを標準化して告示した医薬品等標準製造基 準 に合う品目 4.食品医薬品安全処長が基準及び試験方法を告示し た 品目 5.安全性・有効性審査対象の医薬品でなく、品目許 可 ・申告された品目と有効成分の種類、規格及び分量 ( 液状剤型の場合は濃度)、剤型、効能・効果、用法・ 用量が同一である品目 - 502 - 調査報告書 吉田法務事務所 5.放射性医薬品 6.誤乱用の懸念のある医薬品 7.生物学的製剤、遺伝子組み換え医薬品、細胞培 養 医薬品、遺伝子治療剤、細胞治療剤、人胎盤由来 医薬品 8.国際共通技術文書で作成され、許可を受けた医 薬品 9.麻薬 ※「麻薬類管理に関する法律」第 21 条 ※「医薬品等の安全に関する規則」第 4 条 ※「医薬品の品目許可届出・審査規定」第 3 条及 び第 25 条 ※「医薬品等の安全に関する規則」第 5 条 ※「医薬品の品目許可届出・審査規定」第 3 条及 び第 25 条 3. 医薬品製造販売・輸入品目許可の詳細手順 申請 受付 品目許可 申請 許可・届出対 象、手数料、 cpp検討特許 関係確認など 申請者 (製造業 (輸入)者) ・医薬品審査 調整課 ・6つの地方庁 (医療製品安 全課)など 予備審査 審査 許可申請資料 の要件検討 ・安全性・有効性 ・基準及び試験 方法など ・原料医薬品登 録(DMF)資料 ・新薬・改 良新薬再 審査対象 指定 ・医薬品審査部 ・地方庁有害物 質分析課 ・医薬品審 査調整課 ・6つの地 方庁(医療 製品安全 課)など 医薬品審査調 整課 評価・実態調査 製造施設及び管 理基準評価 ・海外製造所(医 薬品品質課) ・国内製造所 (6つの製造所、 医療製品査察課 等) - 503 - 許可 調査報告書 吉田法務事務所 4. 医薬品製造販売・輸入品目届出の詳細手順 ・大韓民国薬典 ・ 食品医薬品安全処長が認める公定書及び医 薬品集に載っている品目 ・ 食品医薬品安全処長が基準及び試 験方法を告示した品目 はい 食品医薬品安全処長が標準化して 告示した医薬品等標準製造基準に 合う品目 はい いいえ 電子申請:医薬品の製造販 売・輸入品目届書 電子申請:医薬品の製造販 売・輸入品目届書 ・輸入品の場合は製造販売証 明書 ・GMP 査察状況の評価資料 ・その他添付資料 (DMF 資料、主成分製造業者 に関する資料、委受託契約書 など) ・基準及び試験方法に関する 資料 ・輸入品の場合、製造販売証 明書 ・GMP 実施状況の評価資料 ・その他の添付資料 (DMF 資料、主成分製造業者に関す る資料、委受託契約書など) 医薬品品目届出書発行 - 504 - 電子申請:医薬品の製造販売・ 輸入品目届書 ※基準及び試験方法に関する 資料提出の免除 ・医薬品等の安全に関する規則 第 28 条第 5 号による別表 1 の 医薬品製造及び品質管理基準 への適合判定を受けてない品 目は例外 ※品目毎の事前 GMP 評価資 料の提出は免除 ・輸入品の場合は製造販売証明 書・その他添付資料 (DMF 資料、主成分製造業者に 関する資料、委受託契約書な ど) 5 0 5 - 資料提出 医薬品 ・安全性・有効性に関する資料 ・基準及び試験方法 ・GMP 資料 許可対象 医薬品 安全性・有効性審査対象医薬品 新薬 5.医薬品許可(届出)提出資料 吉田法務事務所 ・基準及び試験方 法 ・生物学同等性試 験資料(該当する 場合、比較溶出試 験資料) ・GMP 資料 ・基準及び試験 方法 ・理化学的同等 性試験資料 ・GMP 資料 1989 年 1 月 1 日以 降の新薬と同一医 薬品(同一投与経路 を含む) ・基準及び試験方 法 ・生物学同等性試 験資料 ・安定性試験資料 ・GMP 資料 特殊剤型 医薬品 許可対象 医薬品 ・基準及び試験 方法 ・生物学同等性 試験資料 ・GMP 資料 専門 医薬品 <注射剤等> ・基準及び試験方 法 ・GMP 資料 <錠剤、座剤、カ プセル剤> ・基準及び試験方 法 ・比較、溶出試験 資料 ・GMP 資料 医薬品同等性確保 必要対象の医薬品 「医薬品同等性確 保必要対象医薬品 安全性・有効性審査対象医薬品 ・基準及び試験方 法 ・ 比較溶出試験資 料 ・GMP 資料 単一成分医薬 品として錠剤、 座剤、カプセル 剤 一般 医薬品 ・基準及び試験 方法 ・GMP 資料 複合成分医薬 品又はシロッ プ剤、液剤など 届出対象 医薬品 許可済み(届出)品目と有効成分の種類、規格、分量、剤型、効能・効果、用法・用量が同一医薬品(ジ ェネリック医薬品) 調査報告書 調査報告書 吉田法務事務所 Q1-2)医薬品の許可(届出)の流れの中での特許情報が利用されるかどうか、承認審査における特許 情報の用いられ方・影響を教えてください(特許の種類(物質、用途など)によって後続の処分が 変わることはあればそれについても教えてください) <MFDS 回答> ○特許目録に登載された医薬品(以下「登載医薬品」)の安全性・有効性に関する資料を根拠し、医 薬 品許可を申請する者は特許権者等に通知するように規定しています。これに関する法令条項及び ガイドラインは次の通りです。 ・「薬事法」第 31 条の 3、第 31 条の 4、第 42 条の 4 項 ・「医薬品等の安全に関する規則」第 18 条、第 19 条 ・「医薬品許可特許連携制度細部運営要領」(このガイドラインは「食品医薬品安全処ホームページ (www.mfds.go.kr)>法令資料>法令情報>指針、ガイドライン、解説書」で閲覧できます。 ※韓国の許可特許連携制度における通知制度(医薬品許可特許連携制度細部運営要領) 1.許可申請事実の通知制度 登載医薬品の安全性・有効性に関する資料を根拠に医薬品の品目許可(変更を含む)を申請した者は申 請日から 7 日以内に 登載医薬品の品目許可を取得した者と特許権者に品目許可を申請したことを知 らせる。 2. 通知制度と品目(変更)許可の管理 1)食薬処は品目許可を取得した者などに対する通知有無に関係なく申請内容を検討する。ただし、通 知義務違反があった事が分かった場合、品目許可の取消しを進める。 2)安全性・有効性審査結果、適合の場合は特許関係確認書に従って、次の条件付で許可 ① 登載医薬品に関する特許権が無効又は該当特許権を侵害してないと判断し、通知後に許可申請 →上記内容の特許関係確認書に根拠し条件付許可、もし訴訟提起、裁判所の判決などあった場合 は直ぐ連絡を求める。もしこのような条件を履行しなかった場合は許可の取消し ② 登載医薬品に関する特許権の存続期間が満了した後に販売するために許可申請した場合 →上記内容を根拠にする条件付許可、もし条件を履行しなかった場合は許可の取消し 3.承認審査(品目許可審査)において食薬処自ら特許情報の用いられるのではなく、許可申請者から の通知有無や当事者ら(許可権者と許可申請者)の確認によって許可を下しているのが分かります。 4.通知の結果、特許訴訟等が発生した場合は訴訟の間は許可審査は停止されます。(MFDS 電話確認) ※(参考)「薬事法」抜粋 http://www.law.go.kr/lsInfoP.do?lsiSeq=152038&efYd=20141219#0000 第 31 条の 3(医薬品特許目録) ① 第 31 条第 2 項又は第 3 項によって医薬品の品目許可を取得した者は、品目許可を受けた医薬品に - 506 - 調査報告書 吉田法務事務所 関する特許権の特許権者、存続期間、権利範囲など、総理令に定める事項(以下特許情報)を医薬 品 特許目録(以下特許目録)に登載するために食品医薬品安全処長に登載申請をしなければならない 。 ② 食品医薬品安全処長は第 1 項による登載申請を受けた医薬品に関する特許権が総理令が定めた 対象 及び基準を満たせば、該当医薬品に関する特許情報を特許目録に登載しなければならない。 第 31 条の 4(品目許可申請の事実を通知) ① 登載医薬品の安全性・有効性に関する資料を根拠に、第 31 条第 2 項又は第 3 項による医薬品の 品目 許可を申請した者は登載医薬品の品目許可を取得した者と特許権者(以下特許権者等)に品目許 可 を申請した事実等、総理令で定めた事項を知らせなければならない。 ※(参考)「 医薬品等の安全に関する規則 」抜粋 http://www.law.go.kr/lsInfoP.do?lsiSeq=160382&efYd=20141219#0000 第 18 条(医薬品特許目録登載等) ① 法第 31 条の 3 第 1 項及び法第 42 条第 4 項により、製造販売・輸入品目許可を医薬品の特許権に関 する第 2 項各号の事項(以下特許情報)を医薬品特許目録(以下特許目録)に登載しようとする者は 、 製造販売・輸入品目許可を受けた日から 30 日以内に別紙第 18 号書式の医薬品特許目録登載申請 書 (電子申請書を含む)に次の各号の書類(電子文書を含む)を添付し食品医薬品安全処長に提出しな けれ ばならない。 第 19 条(製造販売・輸入品目許可申請事実の通知) ① 法第 31 条の 4 第 1 項及び第 42 条第 4 項により登載医薬品の安全性有効性に関する資料を根拠に医 薬品の製造販売輸入品目許可を申請した者は申請日から 7 日以内に登載医薬品の製造販売・輸入 品 目許可を取得した者は特許権者に次の各号の事項を通知しなければならない。 1. 製造販売輸入品目許可申請日 2. 登載医薬品に関する特許権の存続期間満了前に商業的に製造輸入し、販売する目的で登載医 薬品 の安全性・有効性に関する資料に根拠する生物学的同等性試験資料等を提出し、製造販売輸 入品 目許可を申請した事実 3. 登載医薬品に関する特許権が無効又は製造販売輸入品目許可を申請した医薬品が該当特許権 を 侵害してないという判断の根拠 ② 第 1 項によって通知した者は通知した事実を証明できる書類を速やかに食品医薬品安全処長に提 出 しなければならない。 Q2.医薬品の販売承認に関して、次の制度があると理解していますが、相違はありますか。また 制度の 概要と運用について教えてください。 (1)一度認められた医薬品の販売承認の内容の一部変更の承認申請手続 (2)新薬メーカーの臨床試験のデータの保護期間(6 年間) - 507 - 調査報告書 吉田法務事務所 1. 変更申請手順 <MFDS 回答> ○医薬品変更許可(届出)関連法令条項及び食薬処告示条項は次の通りです。 ・「薬事法第 31 条第 9 項(製造業許可等) ・「医薬品等の安全に関する規則」第 8 条(許可事項等の変更許可申請等) ・「医薬品の品目許可・申告・審査規定」第 3 条の 2(医薬品の許可申告変更処理) ※(参考)「薬事法」抜粋 http://www.law.go.kr/lsInfoP.do?lsiSeq=152038&efYd=20141219#0000 第 31 条(製造業許可等) ⑨第 1 項から第 4 項までにおいて、許可を受けた事項又は届出事項のうち、総理令で定めた事項を 変更 しようとする場合によって変更許可又は変更届でをしなければならない。 ※(参考)「 医薬品等の安全に関する規則 」抜粋 第 8 条(許可事項等の変更許可申請等) ① 法第 31 条第 9 項または法第 42 条によって医薬品等の製造業者・輸入者または委託製造販売業者 が ② その許可又は届出事項を変更する場合は…次の各号の区分による申請書又は届書にその許可証又 は ③ 届書と変更事由書及びその根拠書類(第 4 条各号の書類を含む)を添付し食品医薬品安全処長に提 出 ④ する。(電子文書を含む) ※(参考) 「医薬品の品目許可・申告・審査規定」 第 3 条の 2(医薬品の許可申告変更処理) ① 第 3 条による許可又は届出品目の許可・届出項目を「医薬品等の安全に関する規則」第 8 条第 1 項 に ② よって変更許可又は変更届出をする場合、変更事項は同告示第 10 条から第 21 条までの規定に適 合 ③ しなければならない。また第 6 条によって国際共通技術文書を作成し許可または届出した品目は 、 ④ 国際共通技術文書で作成して変更許可、または変更届出をしなければならない。 1.変更事項、変更内容によって変更申請書、変更事由書と根拠書類を食品医薬安全処(又は地方庁)に 提出 2.申請者が提出する書類 ・申請書 ・許可書(届出書) ・変更事由及びその根拠書類 ・基準及び試験方法変更が必要な場合:基準及び試験方法に関する資料 ・安全性有効性審査が必要な場合:安全性有効性審査に関する資料 ・生物学的同等性試験計画書、生物学的同等性試験、比較臨床試験計画書など 2. 新薬メーカーの臨床試験のデータの保護期間 <MFDS 回答> ○新薬の場合、「薬事法」第 22 条第 1 項によって製造販売・輸入品目許可日から 6 年間再審査 - 508 - 調査報告書 吉田法務事務所 を与 えています。 新薬の場合、許可取得日から 6 年を再審査期間として規定しています。(医薬品等の安全に関する 規則第 22 条第 1 項)ですので、再審査までの間は既存のデータは保護されるという意味になるそうで す。(MFDS 担当官に電話確認) Q3.販売承認の過程での特許情報の入手経路と、承認審査における特許情報の用いられ方・影響 を 教えてください(特許の種類(物質、用途など)によって後続の処分に影響することはありま す か)。また、特許の内容について特許庁と相談することはありますか。 <MFDS 回答> ○医薬品特許目録登載手順 ・①医薬品品目許可を取得した者(輸入者を含む)で、その該当医薬品の特許権を保有した者、 又は ②医薬品品目許可を取得した者(輸入者を含む)で、その該当医薬品の特許権者から実施権を取 得し た者は医薬品特許目録集に該当特許権の登載を申請します。 ・登載対象の特許権は物質、組成物、剤型、又は医薬的用途に関する特許です。(医薬品等の安 全 に関する規則第 18 条第 3 項第1号) ・また該当医薬品の許可事項の中で、主成分及びその規格、原料薬品及びその分量、剤型、効 能・ 効果及び用法・用量と直接関連する特許権だけが登載できます。(医薬品等の安全に関する規則 第 18 条第 3 項第 2 号) ○特許権者への通知 ・上記のように特許目録に登載された医薬品を根拠に許可を申請する者は、特許権者と品目許 可 権者に通知しなければなりません。(医薬品等の安全に関する規則第 19 条第 1 項) ・食薬処は通知有無を確認し、通知された場合だけに該当医薬品を許可しています。 ・この時に特許の種類による差はございません。 ○食薬処は特許庁によって登録された特許権を基に登載、通知制度を運営しています。別途特 許 内容に関して、特許庁と協議したりはしません。 ※Q1-2)と同じ内容の質問です。 承認審査の過程では上記のような通知制度があります。※ Q1-2)の韓国の許可特許連携制度にお ける通知制度と品目許可管理の内容をご参照ください。 Q4.グリーンリストに掲載する登載クレームを確定するための手続 <MFDS 回答> ○医薬品特許目録は「グリーンリスト」という名称は使用しておりません - 509 - 調査報告書 吉田法務事務所 ○医薬品特許目録登載関連法令条項及びガイドラインは次の通りです。 ・「薬事法」第 31 条の 3、 第 42 条の 4 項 ・「医薬品等の安全に関する規則」第 18 条 ・「医薬品許可特許連携制度細部運営要領」(このガイドラインは「食品医薬品安全処ホームページ (www.mfds.go.kr)>法令資料>法令情報>指針、ガイドライン、解説書」で閲覧できます。 ※韓国の許可特許連携制度における特許目録登載 1. 医薬品特許目録 登載対象 ・物質、組成物、剤型、又は医薬的用途に関する特許 ・新薬、新しい剤型、新しい組成、新しい効能効果又は用法用量の医薬品 2. 医薬品特許目録 への登載 1) 登載申請者 ・医薬品品目許可を取得した者(輸入者を含む)で、その該当医薬品の特許権を保有した者 ・医薬品品目許可を取得した者(輸入者を含む)で、その該当医薬品の特許権者から実施権を取得し た者 2) 申請時期 ・品目許可日から 30 日以内 ・許可を受けてから特許権が登録された場合は特許登録日から 30 日以内 3) 登載基準(要件) ・該当医薬品の許可事項の中で、主成分及びその規格、原料薬品及びその分量、剤型、効能・ 効果及び用法・用量と直接関連する特許権 ・ 該当医薬品の許可事項の中で食薬処長が認めた安全性・有効性及び品質と直接関連する ・特許権存続期間が残っている ・該当医薬品品目許可が有効である ・特許権者から受けた実施権が有効である 4) 登載申請方法及び提出資料 食薬処の医薬品電子申請サイトを通じて申請 <提出資料> ・申請書 ・特許登録原簿写本、登録公告用特許公募写本、特許資料を根拠に作成した特許請求項に関する 説明資料、特許権者と品目許可権者が異なる場合は実施許可書又は契約書、特許権者が代理人を選 任した場合はその証明書類 5) 登載申請内容の公開及び第 3 者の情報提供 登載申請が形式要件(特許権有効、品目許可有効など)を満たした場合はその申請事実を医薬品 特許登載目録集のホームページに公開する。公開事項は品目許可権者、品目名、特許番号、 特許存続期間など。 利害関係者や第 3 者は意見又は意義提出は可能 6) 登載申請内容の変更 登載決定の前に申請者は申請内容を変更できる。 7) 登載申請の処理 ・申請内容が登載基準を満たせば、該当医薬品の特許情報を特許目録に登載し、その内容を医薬 品特許目録集に公開する。 ・申請受付から登載申請書の処理期間は 45 日 - 510 - 調査報告書 吉田法務事務所 8) 医薬品許可事項変更及び特許情報変更による特許目録変更 医薬品変更許可や特許登録原簿の特許情報に変更がある場合は変更事項が発生した火から 30 日 以内に変更申請をする。 参照 ■医薬品特許登載目録 http://medipatent.mfds.go.kr/mfds?cmd=driOLi001 Q5.医薬品の承認について、第三者に対する公示方法や公示内容 <MFDS 回答> ○医薬品許可事項は MFDS ホームページ(http://ezdrug.mfds.go.kr)及びオンライン医薬図書館 (http://drug.mfds.go.kr)に公開しております。 ■MFDS 電子申請サイト 検索語:業者名、製品許可番号、製品名、主 原料、、 ■オンライン医薬図書館サイト - 511 - 調査報告書 製品名検索 詳細検索 - 512 - 吉田法務事務所 調査報告書 吉田法務事務所 <農村振興庁(RDA)向けの質問事項と回答> (RDA への質問は吉田法務事務所を介して行った) 一般財団法人 知的財産研究所 御中 RDA 関連調査を実施致しましたので、結果を下記に報告致します。 記 5. 着手日 :平成 26 年 12 月 29 日(月) 6. ご依頼内容: 2014 年 12 月締結しました契約書の RDA 質問事項 RDA 質問事項 Q1.農薬(ジェネリック農薬を含む)の登録(各種試験~販売)の流れと、その中での特許 情報が利用されるかどうか、登録審査における特許情報の用いられ方・影響を教えてくだ さい(特許の種類(物質、用途など)によって後続の登録が変わることはあればそれにつ いても教えてください)。 Q2.農薬の販売登録に関して、次の制度がありますか。また、存在する場合は、その制度と その運用の概要を教えてください。 (1)一度認められた農薬の販売登録の内容の一部変更の登録申請手続 (2)新薬メーカーの安全性試験等のデータの保護期間 (3)第三者による、ジェネリック農薬製造のための試験や、追加の薬効等探索のための 試験に対する特許権侵害の免責 Q3. 特許情報の入手経路と、登録審査における特許情報の用いられ方・影響を教えてください (特許の種類(物質、用途など)によって後続の処分がかわることはありますか)。 また特許の内容について特許庁と相談することはありますか。 Q4. パテントリンケージの制度はありますか。また導入の予定はありますか。 Q5.農薬の登録内容を第三者に公示する方法や公示内容を教えてください。 7. 調査方法: 頂いた質問内容を農村振興庁(RDA)へ照会し文書で回答を得ました。 下記に、RDA から得た回答の文書(6 枚)を添付致します。 今回の調査に対して回答した RDA 担当官は以下の通り。 (主務官:イムヨンジュ、農業研究官:バクヨンギ、農資材産業課長:ベクヨンヒョン) 8. 回答内容:以下、RDA からの回答内容となります。 RDA から回答を得た文書を韓国語から日本語に翻訳しております。 (質問、回答の順に記載しております。) - 513 - 調査報告書 吉田法務事務所 Q1.農薬(ジェネリック農薬を含む)の登録(各種試験~販売)の流れと、その中での特許情報 が利用されるかどうか、登録審査における特許情報の用いられ方・影響を教えてください(特 許 の種類(物質、用途など)によって後続の登録が変わることはあればそれについても教えてく だ さい)。 RDA 回答 ■関連規定:農薬管理規定第 8 条~第 17 条 ■農薬品目登録の手順 ○農薬品目登録申請 -製造業者または輸入業者は農薬品目登録申請書に薬効・薬害・毒性・残留性等の試験成績書 を添付し、農薬試料と一緒に農村振興庁長に提出 ○登録申請書類等の検討及び専門委員会の審議 -提出書類の検討及び試料検査(国立農業科学院) -農薬専門家で構成された専門委員会(安全性及び生物活性に関する)審議 ○農薬安全性審議委員会の審議 -関係部署、消費者・農薬業者・生産者・農業人団体役員、専門家で構成された農薬安全性審 議委員会による審議 ○農薬品目登録及び登録証の発行 -法第 9 条第 3 項各号のいずれか一つに該当しない場合には登録される ※農薬管理法第 9 条第 3 項各号 1.申請書の記載事項に虚偽事実がある場合 2.該当農薬の薬効が著しいほど低く、農薬として価値がない場合 3.申請書に書かれた内容に従って該当農薬を使用すると、農作物に害が出た場合 4.該当農薬の使用・取扱要領に従っても人と家畜に害を及ぼすおそれがある場合 5.該当農薬が多量使われたら、水棲生物に害を及ぼすおそれがある場合 6.申請書に書かれた内容に従って該当農薬を使うと、農作物に残留し、その農作物を利用する 人 と家畜に害を及ぼすおそれがある場合 7.申請書に書かれた内容に従って該当農薬を使うと、農耕地等の土壌に残留し、土壌生態系を 破 壊するおそれがあり、その農耕地で育った農作物を利用する人と家畜に害を及ぼすおそれがあ る 場合 8.該当農薬が多量使われた場合、「水質及び水生態系保存に関する法律」第2条第9号による 公 共水域の水質が汚染され、水生生態系を破壊するおそれがあり、その水を利用する人と家畜に 害 を及ぼすおそれがある場合 9.該当農薬の名称がその主要成分または効果において誤解を招くおそれがある場合 - 514 - 調査報告書 吉田法務事務所 農薬登録体系 製造(輸入)業者 農村振興庁 (登録・登録証交付) 「申請」 「登録申請書類の提出」 検討期間 ・新規:9 ヶ月 ・変更:3 ヶ月 農村振興庁 国立農業科学院 (登録申請書の検討) 農薬安全性審議委員会 安全性・品目管理専門委員会 農薬再登録:農薬管理法第 11 条規定 農薬品目登録の後、10 年毎に品目別に新しい情報を通して農薬の安全性を周期的に行政が確認す るための制度(1996 年に導入された。) ■特許情報利用の有無 ○登録審査の手順において、特許情報を利用しません。 Q2.農薬の販売登録に関して、次の制度がありますか。また、存在する場合は、その制度とそ の運用の概要を教えてください。 (1)一度認められた農薬の販売登録の内容の一部変更の登録申請手続 (2)新薬メーカーの安全性試験等のデータの保護期間 (3)第三者による、ジェネリック農薬製造のための試験や、追加の薬効等探索のための試験 に対する特許権侵害の免責 (1)一度認められた農薬の販売登録の内容の一部変更の登録申請手続 ○関連法令:農薬管理法第 13 条、同法施行規則第 17 条 ○変更登録項目 ①適用対象における病害虫及び農作物の範囲、農薬の使用方法及び使用量 ②品目の製造処方 ○変更登録の手順 -施行規則別紙第 19 号書式で変更登録の申請(書類及び試料添付) ① 適用対象における病害虫及び農作物の範囲、農薬の使用方法及び使用量を変更する場合は 次の書類を添付 ア. 品目登録証または製品登録証 イ. 理化学的分析成績書(自社検査成績で代替可能) ウ. 薬効及び薬害試験成績書 エ. 残留性試験成績書 オ. その他に変更内容を証明できる試験成績書(該当変更事項がある場合だけ提出) ② 品目の製造処方を変更する場合 ア. 時間経過による該当性質・状態の変化資料 イ. 登録されたそれぞれの農作物に対して実施した薬効・薬害試験成績書(主剤以外のその 他成分の種類または投入割合を変更する場合だけ提出する。) - 515 - 調査報告書 吉田法務事務所 ウ. その他成分に関する物質の安全保健資料(主剤以外のその他成分の種類を変更する場合 には提出する。) エ. 人と家畜に対する毒性、環境及び動物・植物に対する影響試験成績書(毒性が高くなる おそれがあると判断される場合には提出する。 ) (2)新規農薬の製造所における安全性試験等のデータの保護期間 ○10 年 (3)第三者による、ジェネリック農薬製造のための試験や、追加の薬効等探索のための試験に 対する特許権侵害の免責 ○新規登録と同一。ただ登録後 10 年が経過した場合には薬効及び薬害、残留性、毒性試験成績 書が免除される。(ただし、登録済み品目と製造処方が同一な場合に限る。) (参考解釈)新規登録と同一であり、特許情報を利用しない為、特許権の免責制度は無いことに なります 。 (追加質問)承認のところで、ジェネリックメーカーが承認申請した場合は、先発メーカーの過 去の申請と原体などを比べて同じものがあると承認しないということになるのでしょうか? 〇いいえ、登録審査中に過去の申請内容と比べる事はない。 Q3. 特許情報の入手経路と、登録審査における特許情報の用いられ方・影響を教えてください (特許の種類(物質、用途など)によって後続の処分がかわることはありますか)。 また特許の内容について特許庁と相談することはありますか。 ○該当事項無し。 (追加質問)また、韓国の農薬の販売登録においては特許情報を利用しないとのことですが、特 許の処理については完全に当事者間に任せられているということでしょうか?(韓国では先発メ ーカーなどはあまりないのか) 〇はい、そうです。そもそも韓国では新薬があまりない。 Q4. パテントリンケージの制度はありますか。また導入の予定はありますか。 ○該当事項無し。 Q5.農薬の登録内容を第三者に公示する方法や公示内容を教えてください。 ○農薬管理システムで農薬登録情報を提供しています。 -サイト:http://epmso.rda.go.kr -提供情報:品目名、一般名、商標名、毒性情報、登録番号、登録日、農作物、適用病害虫、 使用適期及び方法、希釈倍数(10g 当たり使用量)、安全使用基準、主成分の含有量(%) - 516 - 調査報告書 吉田法務事務所 「農薬管理システムページ」 検索語 - 517 - 調査報告書 吉田法務事務所 農薬登録現況の照会画面 検索語:品目名、一般名、商標名、作物名、病害虫名 以上 平成 27 年 1 月 15 日 東京都北区中里 2-6-14-401 吉田法務事務所 代表 吉田武史(行政書士・薬剤師) TEL:03-5944-5013 /FAX:03-5980-1036 HP : http://yakuji.net/ E-mail : [email protected] 【注意事項】 :上記内容は照会時の内容であり、将来における法改正、法解釈までも担保する ものではない。また、行政指導の性質上、担当官により裁量の範囲内で回答が変わる可能性 も含まれる内容である。 - 518 - <韓国法律事務所(金・張法律事務所)向け質問事項と回答> (立法の趣旨について) Q1. 医薬品の販売承認を取得するために失われる特許期間の埋め合わせのための制度 という理解でよいですか。制度の存在自体について、国内ユーザーからの批判などはあ りますか。 国内ユーザーからの批判などはないと把握されます。 (延長登録の対象となる処分) Q2. 延長登録の対象となる処分について、追加あるいは除外を望む声はありますか。 延長登録の対象となる処分について、追加あるいは除外を望む声は、現在のところない と把握されます。ただし、処分の基礎となる医薬品の許可を限定する特許法施行令第 7 条に関する改正(2013 年 4 月 3 日施行)が比較的最近なされたため、改正された制度の 施行による問題が今後現れればこれに対する改善の意見がある可能性があります。 <特許法施行令第 7 条> 第 7 条(許可等による特許権の存続期間の延長登録出願対象発明)法第 89 条第 1 項で「大 統領令で定める発明」とは、次の各号のいずれか 1 つに該当する発明をいう。 1.特許発明を実施するために「薬事法」第 31 条第 2 項・第 3 項または第 42 条第 1 項に よって品目許可を受けた医薬品[新物質(薬効を示す活性部分の化学構造が新しい物質 をいう。以下、本条で同じである)を有効成分として製造した医薬品として、最初に品 目許可を受けた医薬品に限定する]の発明 (延長登録の対象となる特許) Q3. 延長登録制度の対象となる特許発明について、現行法ではどのような特許が対象と なっていますか。また、現行法で規定されている特許以外に、何を追加すべきと考えま すか。 医薬(動物の医薬を含む)及び農薬が延長登録制度の対象です。それ以外の発明の追加 については全く論議がありません。 Q4. 最初の承認に基づいて、関連する複数の特許権の延長登録が認められるようですが、 関連する1つの特許権に制限することを望む声はありますか。 現在のところ、そのような動きはないと把握されます。 (延長が認められるための要件) Q5.延長登録制度の対象となる特許発明について、最初の許可又は登録(先行処分)に より延長が認められた後、別の許可又は登録(後行処分)が行われた場合に、後行処分 までに要した期間について再延長を望む声はありますか。 Q2.で申し上げた特許法施行令第 7 条の改正案を検討する段階で一部製薬会社(多国籍 製薬会社)が後行処分に基づいた再延長を主張しましたが、上記施行令が確定して施行 されている現在の段階では、後行処分に基づいた再延長は不可です。 - 519 - Q6.物質 A 又は B を選択肢とする化学物質発明に係る特許権について、有効成分 A を含 む医薬品(又は農薬)の先行処分を受けた後、有効成分 B を含む医薬品(又は農薬)の 後行処分を受けた場合、先行処分に基づく延長登録に加えて、後行処分に基づいて新た な延長登録を認めてほしいという意見はありますか。 特許法(第 89 条第 1 項)によると、特許権の存続期間延長は対象物質に関係なく一回の み可能です。従って、上記のような場合、有効成分 B の後行処分に基づいた延長は不可 能です。現在のところ、このような法規定について他の意見や動きはないと把握されま す。 <特許法第 89 条第 1 項> 第 89 条(許可等による特許権の存続期間の延長)①特許発明を実施するために他の法令 によって許可を受けるか登録等をしなければならず、その許可または登録等(以下「許 可等」という)のために必要な有効性・安全性などの試験によって長期間が要される大 統領令で定める発明の場合には、第 88 条第 1 項にもかかわらず、その実施することが できなかった期間に対して 5 年の期間までその特許権の存続期間を一回のみ延長でき る。 Q7.有効成分 A に関する化学物質発明に係る特許権について、有効成分 A を含む医薬品 (又は農薬)で先行処分を受けた後、有効成分 A と有効成分 B を含有する配合剤で後行 処分を受けた場合、後行処分に基づいて延長登録を認めてほしいという意見はあります か。 上記のような場合、A 物質特許に対して A の許可が最初の許可なので、他の後行許可に 基づいた延長は認められません。ただし、B が以前に許可を受けたことがない物質であ って、A+B 配合剤の許可が B 成分を含む医薬品としては最初の許可である場合には、B 物質関連の特許はこの配合剤の許可に基づいて存続期間延長出願をすることができま す。これは、最近改正された特許法施行令と関連する事項であるため、まだ他の意見は ないと把握されます。 Q8.承認により禁止が解除される特許発明の実施という概念はありますか。あるとすれ ば、先行処分によって特許発明の実施が可能となった範囲に属しない後行処分に基づい て、特許権の延長登録を認めることが、現行法で許容されていますか。(先行処分に係 る医薬品又は農薬と後行処分に係る医薬品(又は農薬)とが相違する場合等を想定) 延長された特許権の効力はその許可された対象物を許可された用途に使用する場合に のみ及びます(特許法第 95 条)。従って、特許の他の部分の実施が後行処分によって可 能になったとしても追加の延長は許容されません。 <特許法第 95 条> 第 95 条(許可等による存続期間が延長された場合の特許権の効力)第 90 条第 4 項によっ て特許権の存続期間が延長された特許権の効力は、その延長登録の理由になった許可等 の対象物(その許可等において物に対して特定の用途が定められている場合には、その 用途に使用される物)に関するその特許発明の実施行為にのみ及ぶ。 (延長期間) Q9.延長期間が最大5年であることについて、期間の拡大や縮小を望む声はありますか。 これに対する変更を要求する動きはないと把握されます。 - 520 - Q10.欧米のように(例えば米国の 14 年)、許可日又は登録日から満了日までの期間に制 限を設けることを望む声はありますか。 そのような動きはないと把握されます。 Q11.延長期間の算出方法として、臨床試験又は農薬登録に要する試験期間(特許権の設 定登録の日又は最初の被験者選定の日等のうち、遅い日から最終の被験者観察期間の終 了日等)と行政処理期間(許可又は登録関連書類の受付の日から医薬品の許可又は農薬 の登録の日)との合計であることについて、異なる算定方法を望む声はありますか。 異なる期間算定方法を望む声はないと把握されます。 (延長回数) Q12. 1つの特許について複数回の延長を望む声はありますか、あるとしたら、どのよ うな場合ですか。 特許権存続期間の延長は例外的に認めると見る視角が優勢で、1つの特許について複数 回の延長を望む声はまだないと把握されます。 5 (延長された特許権の効力) Q13.特許法 95 条改正の趣旨を教えてください。また、延長された特許権の効力が及ぶ 範囲について、さらに現行法の規定を変更することを望む声や改正を検討していること があれば簡単に教えてください。 Q8.でご説明した通り、特許法第 95 条の実質的内容は改正されておらず(単に表現のみ 「実施行為以外には及ばない」から「実施行為にのみ及ぶ」に修正)、Q2.でご説明した 通り、特許法施行令第 7 条が実質的に改正されました。改正の趣旨は米国やヨーロッパ でのように用途などは考慮せず、許可された物質が新物質の場合にのみその最初の許可 に基づいて存続期間延長を許容するということです。結果的に対象特許の範囲は縮小さ れましたが、延長された特許の効力範囲には変動がありません。 Q14.延長された特許権の効力は、医薬品であるか農薬であるかによらず、延長登録の理 由と成った許可等の対象物(特定の用途が定められた物の場合には、その用途に使用さ れる物)に関する特許発明の実施行為にのみ及ぶと規定されていますが、この用途には、 追加承認された用途や第三者が受けた承認に関わる用途も含まれますか。また、ここで いう「用途」とは、特定の疾病に使用することのみならず、特定の疾病に使用する際の 用法や用量等の使いかたは含まれますか? 特許法第 95 条の法文句上、追加承認された用途や第三者が受けた承認に関わる用途は 含まれないと解釈されます。しかし、ここで「用途」は「許可を受けた有効成分の機能・ 効果」を意味し、これが同一であれば、用法・用量、製法などが異なる実施の形態に対 しても、延長された特許権の効力は及びます(ソウル中央地方法院 2009 年 3 月 19 日言 渡 2009 カ合 235 侵害差止仮処分事件)。 Q15.ジェネリック医薬品の製造販売の承認を申請するに当たって、延長された特許権の - 521 - 効力の及ぶ範囲に該当製品が含まれるか否かの判断で迷うことはありますか。迷うこと があるとすれば、それはどのような理由からですか。 ジェネリック医薬品はオリジナル医薬品と同等性が認められなければならないため、延 長された特許権の効力が及ぶ範囲に該当する製品であるどうかの判断には特に疑問の 余地がないといえます。 (延長登録出願の手続) Q16.承認日から3ヶ月以内に延長登録出願を行うという時期的制限について、期間の拡 大や短縮を望む声はありますか。 出願時期など延長登録制度の手続要件に対する変更を望む声は現在のところないと把 握されます。 (第三者に対する公示方法) Q17.承認情報、特許情報へのアクセス性について、満足していますか。 はい。満足しています。 Q18.韓国において、延長登録の登録要件や、権利の効果・範囲に関して争った重要な判 例があれば簡単に教えてください。また、韓国において、ジェネリックメーカーの市場 参入に関して争った重要な判例があれば簡単に教えてください。 延長登録の登録要件や、権利の効果・範囲に関して韓国ではまだ先例が蓄積されておら ず、上記で言及したソウル中央地方法院 2009 年 3 月 19 日言渡 2009 カ合 235 特許権侵 害差止仮処分事件において、用量が異なる同一用途のジェネリック製品に対して、延長 された特許権の効力を認めました。 一方、延長された特許権の効力に関するものではありませんが、ファイザーのリリカ製 品に関わる特許侵害差止仮処分事件(2014 年 2 月 5 日言渡 2013 カ合 1717)において、ジ ェネリックの製品説明書上の用途は特許を受けた用途と異なるが実際許可を受けた用 途は特許の用途と同一であるという理由で侵害が認められました。 Q19.データ保護期間による保護に加えて、特許権の存続期間の延長による保護を受ける ことが有効である場合とその理由をお答えください。 延長された特許権の効力は同一の用法・用量のジェネリック製品だけでなく、用法・用 量などを異にした製品にも及び得るという点で追加の保護を提供すると見ることがで きます。 Q20. MFDS がグリーンリストに特許情報を掲載する際に、登載クレームとして、元の特 許請求の範囲からは改変された内容とする点について、ユーザーからの批判等はありま すか。 MFDS の登載実務は何回かの変更があり、現在は初期の「登載クレーム」形態の代わり に、特許請求項をそのまま登載しながら、ただし、特許請求項と製品との「直接関連性 審査情報」(以前の「登載クレーム」と事実上同一)を表の形式でともに記載しています。 - 522 - しかし、現在国会に係属中の薬事法改正案によると、ジェネリック通知範囲と販売制限 制度はいずれも特許請求項を基準に運用される予定であり、「直接関連性審査情報」は 製品と関連する特許情報を後発医薬品会社に提供する程度の意味のみ有するようにな ると思われます。従って、現登載実務については特別な批判意見はないと理解しており ます。 (その他) Q21.韓国と他国とで特許権の延長登録制度(審査遅延に関する延長登録制度を除く)を 比較した場合に、韓国の制度についてメリット又はデメリットと思うことがあれば、お 答えください。 (観点の例:期間・回数、延長期間の算定方法、延長の効果(権利行使)、延長対象、 承認との関係、延長手続き等) 韓国制度のメリット (自由記載: ) 韓国制度のデメリット (自由記載: ) 韓国の存続期間延長制度に関する 2013 年の特許法施行令の改正は、米国とヨーロッパ の存続期間延長制度と類似の基準を適用をする方向になされたので、現行の制度におい て外国と比較して明確な長短所はないと思われます。 Q22.韓国又は日本における特許権の存続期間の延長登録制度について、その他の意見は ありますか。 過去の存続期間延長制度は米国、ヨーロッパよりは日本の制度と類似しましたが、2013 年の特許法施行令の改正以後、米国、ヨーロッパの制度と類似するものとなり、日本の 制度とは多少差が生じたと思われます。即ち、日本最高裁平成 21 行(匕)第 326 号の見 解とは異なり、国内では新たな剤形について追加で許可を受けても、以前に許可された 製品と有効成分が同一であれば、追加の存続期間延長は許容されないという点で差があ ると思われます。 - 523 - 【質問項目及び回答】 【カナダ】 <カナダ保健省(Health Canada)向け質問事項と回答> (カナダ保健省への質問は株式会社 グロービッツを介して行った) カナダにおける医薬品の承認と関連特許の影響に関する調査報告書 Q1. 医薬品(ジェネリック医薬品を含む)の承認(治験・試験~販売)の流れと、その中で特 許情報が利用されるかどうか、承認審査における特許情報の用いられ方・影響を教えてください (特許の種類(物質、用途など)によって後続の処分が変わることはあればそれについても教え てください)。 1.医薬品の承認と特許 カナダの医薬品販売承認は、カナダ保健省(Health Canada)の 治療製品局 (Therapeutic Products Directorate (TPD))が所管している。TPD および外部の専門家が安全性、効能および品 質につき審査をし、医薬品レビュープロセスを通過した医薬品のみが販売を認められる41。下記 は、カナダにおける医薬品承認の流れである。承認申請から承認までにかかる期間は、平均 18 か月である。 医薬品の上市前から上市後の流れ 41 How are drugs reviewed in Canada? 〔カナダ保健省回答参照〕 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/alt_formats/hpfb-dgpsa/pdf/prodpharma/reviewfs_examenfd-eng.pdf 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 19 日〕 - 525 - TPD 申請から販売承認までの流れ (1) 新薬の申請をするためには、新薬承認申請(New Drug Submission)を TPD に提出す る。その際には、医薬品の安全性、効能および品質に関する情報とデータ、前臨床と 臨床研究、製造、包装およびラベルに関する詳細、副作用等に関する情報も同時に提 出する必要がある。一般的に新薬の申請者は、カナダの保健省の特許登録 (Patent register)42のために、Form IV patent list を提出する。43 (2) TPD は、提出された情報を詳細にわたり審査する。 (3) TPD は、潜在的な有効性とリスクを評価するために安全性、効能および品質に関する データを検討する。 (4) TPD は、医薬品のラベルやカタログ等の、医療関係者や患者に提供することが予定さ れている情報をレビューする。 (5) レビュー後に有益性がリスクを上回ると判断した場合、販売が承認され、Notice of Compliance (NOC)と Drug Identification Number (DIN)が発行される。44 特許リストへの登録のための要件 特許が付与された医薬品に関する規則(NOC)上、新薬の販売承認申請者は、申請時の特許リスト 上の特許が以下のいずれかを含むことを条件として、新薬に係る特許をカナダ保健省に登録する ことが出来る。 42 Paten register [カナダ保健省回答参照] http://pr-rdb.hc-sc.gc.ca/pr-rdb/index-eng.jsp 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 31 日〕 43 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/applic-demande/form/priv_briv-eng.php 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 29 日〕 44 How drugs are reviewed in Canada: What are the steps in the review process for a drug? http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/alt_formats/hpfb-dgpsa/pdf/prodpharma/reviewfs_examenfd-eng.pdf 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 19 日〕 - 526 - ジェネリック医薬品の承認と特許 カナダにおいてジェネリック医薬品を上市するためには、Notice of Compliance(NOC)を取得す る必要がある。ジェネリック医薬品は通常、食品と医薬品に関する規則(FDR) C.08.002.1 上に規 定されている Abbreviated New Drug Submission (ANDS)にて、販売承認を申請することが出来 る。 ANDS 申請された医薬品は、参照されている新薬と薬学的、生物学に同等であり、投薬や使用方法 などが同じである必要がある。ANDS の承認を得たジェネリック医薬品は、参照されたカナダの医 薬品との生物学的同等性証明を受け、その旨は NOC45上に記載される。46 45 Patented Medicines (Notice of Compliance) Regulations: C.08.002.1. SOR/95-411, s. 5 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/notices-avis/index-eng.php 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 31 日〕 46 - 527 - さらに NOC 取得の要件として、NOC 規則の 5. (1)上ジェネリック医薬品の申請者は、特許リスト (Patent list)上の参照した新薬に係る特許に関して、下記のいずれかを選択する必要がある47。 特許の種類(物質、用途など)に基づく後続の処分への影響に関して、カナダ保健省からの回答 はいただけなかったが、弊社の見解においては、上記の様に有効成分、用途に限定した規定は特 に無いため、種類に基づく後続処分への影響は特に無いものと思われる。 47 Patented Medicines (Notice of Compliance) Regulations: SOR/93-133 - 528 - Q2 一度、販売承認を受けた後にその販売承認について、その一部を変更する承認申請があればど のような運用がなされているか教えてください。 1994 年 4 月、カナダ保健省は Changed to Marketed New Drug Product という指針を発表した。 同指針の目的は、販売承認後の医薬品に対する変更の段階的な構造構築と Supplemental New Drug Submission (SNDS) の申請を減少させることにより、同省のレビュー業務の負担を軽減すること にある。変更は、安全性と効能へのインパクトを鑑みて変更の程度により、以下の 4 種類の区分 に分けられている。48 区分 区分の説明 要件概要 LEVEL I: 重篤に相違する新薬 (A new drug that are “significantly different”) 補完的な新薬承認(Supplemental New Drug Submission (SNDS)) 補完的な簡略新薬承認 (Supplemental Abbreviated New Drug Submission (SANDS)) LEVEL II: 通知を要する変更 (Notifiable changes (NC)) 医薬品の安全性、効能、品質お よび効果的な使用、またはその いずれかに対して潜在的なイ ンパクトがあり、販売承認を受 けている医薬品に大きな相違 をもたらす変更 当該変更を申請する場合は、カナダ保 健省に対して推奨される補足書類と共 に SNDS または SANDS を申請する必要が ある。製造者は、NOC が発行される迄は 変更をすることが出来ない 医薬品の安全性、効能、品質お よび効果的な使用、またはその いずれかに対して潜在的なイ ンパクトがあるが、NOC の発行 を要件としない変更 医薬品の安全性、効能、品質お よび効果的な使用、またはその いずれかに対して潜在的に軽 微なインパクトのある変更 LEVEL I 、II 、III 以外の変 更であり、医薬品の安全性、効 能、品質および効果的な使用に インパクトが無いと考えられ ている変更 当該変更をする場合は、カナダの保健 省に対して推奨される補足書類と共に NC を提出する必要がある。製造者は、 No Objection Letter が発行される迄 は変更をすることが出来ない 当該変更の場合は、カナダ保健省によ る事前のレビュー無しで変更すること が出来る。LEVEL III の変更は、年次 通知に記載する必要がある 当該変更の場合は、カナダ保健省によ る事前のレビュー無しで変更すること が出来る。変更は、Good Manufacturing Practices (GMP) 49に準拠して、製造者 によって医薬品の記録上記載すること が義務付けられている。 LEVEL III: 年次通知 (Annual Notification) LEVEL IV: 変更の記録 (Record of changes) Q3 同じ有効成分を有する医薬品に対する追加の処分の要件や、ジェネリックメーカーによる適応 症の追加の承認の可否など教えてください。 48 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/applic-demande/guide-ld/postnoc_change_apresac/noc_pn_fram ework_ac_sa_cadre-eng.php 〔最終アクセス日: 2015 年 1 月 31 日〕 49 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/compli-conform/gmp-bpf/index-eng.php 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 31 日〕 - 529 - ジェネリック医薬品は、販売承認の申請時に参照している新薬と同じ有効成分を同量含有してい なければならない。製造者がジェネリック医薬品の品質、安全性または効能に変化をもたらさな いことを証明出来る場合は、賦形剤、着色剤等の添加物は新薬と同じである必要はない。 安全性と効能を証明するために、製造者はジェネリック医薬品が新薬と同等の効果があることを バイオアベイラビリティ試験等により証明する義務を負う。50 Q4. 審査状況や、関連特許情報、承認情報などに関する公示方法などを教えてください。 カナダ保健局は、同国において使用が許可されている人と動物、さらに殺菌向け医薬品の情報デ ータベースである Drug Product Database (DPD)を管理している。同データベースには、約 15000 製品に関する情報が提供されており、企業は上市の前に保健局にそれらの情報を提供する。同デ ータベース上には、承認された医薬品のブランドおよび企業名、有効成分、流通状態、クラス等 に関する情報が公示されている。51 尚、医薬品の承認審査状況に関しては、現在のところ公示 されていない。 さらにカナダ保健局は、医薬品関連特許情報が保存されている Patent Register52を管理してい る。同データベースは毎日更新され、1993 年 3 月 12 日以降の人と動物に使用される医薬品成分 と関連する特許がアルファベット順にリストされており、成分名およびブランド名等により閲覧 を希望する特許情報を検索することが出来る。53 Q5. ジェネリック医薬品承認禁止の訴えと特許権侵害訴訟とを2本立てで争う現行制度が、薬事 承認に与える影響について教えてください。 この質問につきカナダ保健省からは回答をいただけなかったが、本分野での経験が多い弊社の経 験に基づき、以下に医薬品承認への影響を考察した。 50 http://www.hc-sc.gc.ca/hl-vs/iyh-vsv/med/med-gen-eng.php 〔カナダ保健省回答参照〕 〔最終アクセス日 2015 年 2 月 1 日〕 51 Drug Product Database http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/databasdon/index-eng.php [最終アクセス日 2015 年 1 月 21 日] 52 Patent Register の概要 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/patregbrev/index-eng.php 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 21 日〕 53 Patent Register http://pr-rdb.hc-sc.gc.ca/pr-rdb/index-eng.jsp 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 21 日〕 - 530 - 1993 年に施行された特許法のセクション 55.2 上54の The Patented Medicines (Notice of Compliance ) Regulations (NOC)55の立法趣旨は、製薬業界の革新的な発明の保護と安価なジェ ネリック医薬品流通の促進である。 同法は、ジェネリック医薬品の製造業者等が「カナダ法上要件となっている、製品情報の開発と 提出に適切に関連する」特許権が付与された製品またはプロセスを使用および販売する際に、通 常特許侵害となる可能性のある行為に例外を与えている。 カナダにおいてジェネリック医薬品の上市をするためには、Notice of Compliance (NOC)を取得 する必要がある56。NOC 取得のための ANDS 申請の際に、ANDS の申請者は新薬の特許期間が終了す るまでは NOC が発行されないことを受諾する、または Notice of Allegation (NOA)を新薬の製造 者に送達して特許の無効、虚偽等を主張することが出来る。新薬の製造者がジェネリック医薬品 の承認差止め請求をする場合は、NOA の送達から 45 日以内にカナダ連邦裁判所に対し申請をする 必要がある。請求手続きが開始されると、ジェネリック医薬品の販売承認を 24 ヶ月禁止する仮 処分が下される。裁判所は、NOA の正当性を判断し、命令を下す57。裁判所がジェネリック医薬 品の製造者に有利な判断を下す、または当該特許期間が終了しない限りは、ジェネリック医薬品 に対する NOC は 24 ヶ月間発行されない。つまり新薬の製造者がジェネリック医薬品の承認差止 めを請求したことにより自動的に仮処分が下されるシステムとなっている。58 上記の裁判所の判断は NOA の正当性を判断するための司法レビューであり、新薬に付与された特 許権の侵害を主張する特許権侵害訴訟とは別である。1993 年 3 月の NOC 施行後、カナダにはジェ ネリック医薬品の承認につき、新薬メーカーの特許権を主張する 2 種類の制度がある。これらの システムは、前述したジェネリック医薬品に係る特許侵害となる可能性のある行為に対する例外 とのバランスを保つことを意図している。 NOC は 1998 年、1999 年、2006 年、2008 年、2010 年および 2011 年に改正されている59。1998 年 の改正で、 前述したジェネリック医薬品の販売承認の禁止は 30 ヶ月から 24 ヶ月に短縮された60。 カナダにおける特許権侵害訴訟では、特許権者(原告)側に侵害行為の立証責任がある。この場 54 http://www.canlii.org/en/ca/laws/stat/rsc-1985-c-p-4/latest/rsc-1985-c-p-4.html 〔最終アクセス日 2015 年 2 月 3 日〕 55 SOR/93-133 56 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/notices-avis/index-eng.php 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 31 日〕 57 SOR/93-133 58 http://www.parl.gc.ca/Content/LOP/ResearchPublications/prb0614-e.htm#endnote14 〔最終アクセス日 2015 年 2 月 3 日〕 59 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/pubs/drug-medic/patmrep_mbrevrap_2013-eng.php 〔最終アクセス日 2015 年 2 月 3 日〕 60 Dominique Valiquet; Law and Government Division; 4 May 2006 - 531 - 合は新薬製造者に立証責任があるが、前述したジェネリック医薬品の販売承認(NOC)を差止め る制度においては、新薬製造者側に特許の侵害を立証する責任は無い。 NOC 上のジェネリック医薬品承認禁止の訴えと、従来からの特許権侵害訴訟の 2 つの現行制度の 影響および、それらが NOC の立法趣旨である新薬とジェネリック医薬品のバランスを保っている か、という問いかけに対する明白な答えは無いようであるが、以上を鑑みると、カナダにおける 現行の新薬メーカーの特許権主張に基づく 2 種類の制度は、薬事承認に少なからず影響を及ぼし ていると考えられる。 以上 免責事項 本報告書は、信頼出来ると思われる情報に基づき作成しておりますが、内容の正確性および 完全性を保証するものではありません。グロービッツ社は、本報告書の記載内容に関して生 じた直接的または間接・派生的な損害および利益の損失に対して一切の責任を負うものでは ありません。 - 532 - <カナダ法律事務所(NelliganO'BrienPayneLLP)向け質問事項と回答> Wing T. Yan, Tel: (613) 231-8343, Fax: (613) 788-3686, [email protected] Taiji Yoshino, Tel: (613) 231-8265, Fax: (613) 364-4159, [email protected] Memorandum To: Date: January 30, 2015 Re: Institute of Intellectual Property re: Research - 36267-1 拝復、 貴所におかれましては益々ご盛栄のこととお慶び申し上げす。 貴所よりご依頼によりカナダでの特許権の存続期間の延長登録制度に関する調査を 行いましたので報告いたしますので、ご高覧ください。尚、後日ご依頼がありまし た欧州連合―カナダ包括的な経済と貿易協定(EU-Canada Comprehensive Economic And Trade Agreement or CETA)で協議された内容を、特許期間延長に限りまとめ、 追記いたしましたのでご高覧ください。 もし、不明瞭な点やご質問等ございましたらいつでもお気軽にご連絡ください。 敬具 ウィング - 533 - T. ヤン WTY/tys 注釈: 判例の引用で、事件名の後に 4 桁数、アルファベットによる 2 或いは 3 字の記号、 及び 2 桁から 3 桁の数字(例えば、2014 FCA 68)が示されているが、はじめの 4 桁数は西暦で判決が出された年、次のアルファベットは判決を出した裁判所、例え ば、FC は連邦裁判所(Federal Court)による判決、FCA は連邦控訴裁判所(Federal Court of Appeal)、そして SCC はカナダ最高裁判所(Supreme Court of Canada) となる。そして、最後の数字は判決番号を示している。 - 534 - 質問1: 医薬品等の販売承認に関する特許権存続期間の延長登録制度の導入に関して 行われた議論について教えてください。(ジェネリック医薬品販売促進と、 新薬メーカーの開発促進とのバランス)。 回答1: はじめに、特許権自体の存続期間を直接延長する手段は現在カナダではあり ません。基本的に現在の特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則・制度で は、特許取得済医薬品が販売承認を受けた後、ある程度の期間、カナダ厚生 省がジェネリックメーカーに対してジェネリック医薬品の販売承認の交付を すること禁じており、場合によってはこの期間が特許存続期間を超えること もあります。 特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則(Patented Medicine (Notice of Compliance) Regulations)が施行されたのは 1993 年となります。現行の規 則導入前の議論に関しましては、歴史的背景及び法改正の変遷をまとめるこ とにより、回答させて頂きます。 カナダでは過去(1923 年より)特許取得済医薬品の価格を抑えるために特許 取得済医薬品等に関しては強制実施・使用権制度を採択していた(1969 年の 法改正後の強制特許実施使用料は4%に固定)61。 1983 年に、1969 年度からの政策の公平性の再考し、且つ、カナダでの製薬業 界の成長を即すために、議会が製薬業界調査委員会を設立(イーストマン委 員会(Eastman Commission))した。その結果、1987 年に特許法改正に関す る法案(Bill C-22)を作成し、それが採択された。この法改正により、特許 取得済医薬品に対する強制実施・使用権の発行を一定期間禁止する制度を導 入した62。 61 Douglas, Kristen et al., Patent Protection for Pharmaceutical Products in Canada -Chronology of Significant Events、http://www.parl.gc.ca/content/LOP/ResearchPublications/prb9946-e.htm〔最終アクセ ス日 2015 年 1 月 26 日〕 62 同上 - 535 - 1983 年以降も、この強制実施・使用権制度に関しては、当時の製薬業界(新 規開発医薬品業者)から根強い批判を受けていた。その後、世界的な特許権 の強制実施・使用権制度の排除の意向・機運が高まり、様々な国内外の批判や 当時の制度排除への圧力がさらに強まっていった。そんな中、関税及び貿易 に関する一般協定(General Agreement On Tariffs and Trade あるいは、GATT) での多国間交渉上の影響もあり、1992 年 1 月にカナダ政府は、知的所有権の 貿 易 関 連 の 側 面 に 関 す る 協 定 ( Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights or TIRIPS)の草案の支持を表明することと なり、強制実施・使用権制度の廃止を目指すこととなった63 64 。 これをもって、TIRIPS65、及び、北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement)66の準拠・実現・実施をすべく67、また、それまで批判のあった新 薬開発者の権利の保護と、カナダ国民に安価な医薬品を届けるという相反す る目的の平等性・均衡性を改善するため、1992 年に特許改正に関する法案 (Bill C-91)を作成し、それが採択され、翌年 1993 年 2 月に、この法改正 が施行された。これにより、カナダはそれまでの強制実施・使用権制度を廃 止し、医薬品販売承認制度へと移行した。 尚、欧州連合―カナダ包括的な経済と貿易協定(EU-Canada Comprehensive Economic And Trade Agreement or CETA)が、昨年 2014 年 9 月 26 日締結さ れたことによりカナダの知的財産権法、特に医薬品関連特許権に関する法律 (特許権存続期間の延長等)の改正が近い将来に行われることが予想される。 63 Smith, Margaret, “PATENT PROTECTION FOR PHARMACEUTICAL PRODUCTS UNDER THE WORLD TRADE ORGANIZATION AGREEMENTS AND THE NORTH AMERICAN FREE TRADE AGREEMENT”, Law and Government Division, Feb 20, 1997 http://publications.gc.ca/Collection-R/LoPBdP/MR/mr145-e.htm〔最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日〕 64 Douglas, Kristen et al., Patent Protection for Pharmaceutical Products in Canada -Chronology of Significant Events、http://www.parl.gc.ca/content/LOP/ResearchPublications/prb9946-e.htm〔最終アクセ ス日 2015 年 1 月 26 日〕 65 TRIPS, Articles 28 and 33, http://www.wto.org/english/docs_e/legal_e/27-trips.pdf〔最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日〕 66 NAFTA, Article 1709 https://www.nafta-sec-alena.org/Home/Legal-Texts/North-American-Free-Trade-Agreement#A1709〔最終アク セス日 2015 年 1 月 26 日〕 67 Smith, Margaret, “PATENT PROTECTION FOR PHARMACEUTICAL PRODUCTS UNDER THE WORLD TRADE ORGANIZATION AGREEMENTS AND THE NORTH AMERICAN FREE TRADE AGREEMENT”, Law and Government Division, Feb 20, 1997 http://publications.gc.ca/Collection-R/LoPBdP/MR/mr145-e.htm〔最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日〕 - 536 - 特許期間延長に関する合意について―欧州連合―カナダ包括的経済と貿易協 定が締結されるまでの経緯、及び予想される今後の影響 2007 年にカナダと欧州連合による首脳会議がドイツ、ベルリンで開かれ双方 がさらに緊密な経済連携を目指すための共同調査を行うことに合意した。翌 年、2008 年 10 月 16 日には、“欧州連合―カナダ間の緊密な経済連携による コストと利益に関する共同調査報告(Assessing the costs and benefits of a closer EU-Canada economic partnership68)”を作成・公表された。カナ ダと欧州連合は協定交渉の開始及び合意を目指し共同で協議範囲の選定・作 成を行うためのグループを設立し、“カナダー欧州連合共同報告書:包括的 経 済 協 定 に 向 け て ( Canada-European Union Joint Report: Towards a Comprehensive Economic Agreement69)”を作成。これを受け、2009 年 5 月に カナダと欧州連合双方より包括的経済と貿易協定の協議を開始するとが発表 され、同年 10 月には第一回の公式協議が開かれた70。様々な経済・貿易の分 野での協議が行われたが、その中に医薬品に関する特許権及び特許期間に関 する協議も含まれており、特に CETA9.2 条(現 医薬品に対する特有の保護 に関する規約(Sui Generis protection for Pharmaceutical))に関しては、 欧州連合から提案がなされた。欧州連合からの原案に関しては、特許で保護 されている医薬品と植物保護製品で販売承認・認可の遅れの為に権利者が特 許有効期間を有効に使用することができない時に 5 年を超えない期間の延長 (特許権利の復元期間)、また、医薬品が小児用に利用される場合のさらな る 6 ヶ月の期間延長を規約することが提案された。 このような提案を歓迎する動きは新薬開発会社外にもあった。特に、今後の 雇用創作を考慮する際に、新薬開発会社が新薬に対して費やす平均投資額に 着目し、そして、こういった新薬開発会社が活躍する他の先進国の特許制度 68 http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2008/october/tradoc_141032.pdf〔最終アクセス日 日〕 2015 年 1 月 26 69 http://www.international.gc.ca/trade-agreements-accords-commerciaux/agr-acc/eu-ue/can-eu-report-canue-rapport.aspx?lang=eng〔最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日〕 70 Negotiation Toward a Comprehensive Economic and Trade Agreement (CETA) Between Canada and the European Union (http://www.parl.gc.ca/HousePublications/Publication.aspx?DocId=5431905&File=87) 〔最終アクセス 日 2015 年 1 月 26 日〕 - 537 - (特に医薬品関連に関する知的財産権に対する保護制度・整備状況)と比較 をした場合に、CETA・欧州連合が要求している規約文は今までカナダで不整 備であった知的財産権に対する保護の強化を目指すものであり、総合的に考 えると望ましいとする意見もあった71。 た だ 、 カ ナ ダ ジ ェ ネ リ ッ ク 医 薬 品 協 会 (Canada Generic Pharmaceutical Association)による調査報告72によると、この提案文章にはいくつかの問題が 有り、カナダ政府に幾つかの提案を提議を行っている。1 つが、今の規約文の ままだと、特許期間が最長 25 年 6 ヶ月となってしまうこと。そして、もう一 つが、この特許期間延長がどの医薬品のどの特許(特に、複数の特許が医薬 品と関連している場合)に対して許されるのか、または、全ての特許に対し て延長が許されるのか等の規定が明らかではないことが問題となった。これ について、カナダジェネリック医薬品協会は、欧州連合の特許期間延長制度 (Supplementary protection certificate)、及び米国の制度を例に挙げ、 更なる限定、明瞭化が必要だと訴えた73。 最終的に合意された CETA9.2 条の文章によると、医薬品が小児科用に転用さ れる際の更なる 6 ヶ月の延長に関しての規約文は削除され(この協定上の義 務にはしないとの判断であり、各々の判断により 6 ヶ月の更なる延長を付け 加えることに関しては異議を持たない)、また期間延長に関しては医薬品に 関連する 1 つの特許(複数特許の場合は申請者が選択)について 2 年から 5 年を超えない延期を受けることができることや、その他の細かな限定が成文 化されることとなった。 尚、CETA9.2 条 4 項の一部を下記に抜粋する。 “Each Party shall provide that the period of sui generis protection shall be for a period equal to the period which 71 http://policyoptions.irpp.org/wp-content/uploads/sites/2/assets/po/the-liberal-renewal/crowley.pdf 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日〕 72 http://www.canadiangenerics.ca/en/news/docs/02.07.11CETAEconomicImpactAssessment-FinalEnglish.pdf 〔最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日〕 73 同上 - 538 - elapsed between the date on which the application for a patent was filed and the date of the first authorisation to place the product on the market of that Party as a pharmaceutical product reduced by a period of five years. Notwithstanding the previous paragraph, the duration of the sui generis protection may not exceed a period of two to five years, to be established by each Party.“ (文中の強調は 幣所が追加) 欧州での特許期間の延期制度の今までの実績等を考えると、おそらくカナダ 政府が 2 年を延期の上限にするのではないかという憶測が流れているのは、 上記のように延長期間の規約が成文化された為かと考える。 これに対して、カナダ研究に基づく製薬会社協会(Canada's Research-Based Pharmaceutical Companies)は、“カナダは G7 の中で唯一特許権復元制度の ない国である。この特許権復元制度(特許期間延長制度)は、新薬開発会社 が長引く制度や政府の承認手続きにより失われた期間を最長 2 年取り戻すこ とが出来るようにするせいどである。…「我々は、世界レベルの科学技術、 研究施設そして、基礎基盤をもっている。CETA 協定を完了、実現していくこ とがカナダを世界クラスの投資目的地にする第一歩である。我々の知的財産 権保護制度を強化することは、世界的な競争の中でカナダの地位を強化する ために重要である。国際的なリーダーになることは革新的な医薬品やワクチ ンの研究・開発に対する投資をさらに導くこととなる」”74というコメントを 公開している。 カナダジェネリック製薬会社協会の会長のジム ケオン氏は、CETA 合意によ りジェネリック製薬会社が市場に介入する機会が遅れることを非難し、下記 のようなコメントを出している。CETA 合意によりジェネリック製薬会社の市 74 http://www.canadapharma.org/news.asp?a=view&id=97〔最終アクセス日 - 539 - 2015 年 1 月 26 日〕 場介入が遅れることにより“州政府の厚生政策に対する費用、従業者の医薬 品補償保険を後援する雇用者の負担、そしてその他の自己負担をしなくては いけないカナダ人の出費が増えることになる。また、特許期限の延長に関す る規約を CETA に含めたことに対してもがっかりしたが、政府が特許期限延長 に対して 2 年の上限を設けたことに対しては評価する。”75 また、この特許 期間延長に関して、“ジェネリック医薬品の輸出やそのための行為”に対し てはその効力が及ばないよう例外を設けたことには満足している76。 現時点での、CETA 合意を受けて行われたカナダでの特許法の変更に関しては、 昨年の法改正案 Bill C-43 に特許法条約に準拠するための法改正が盛り込ま れ、2014 年 12 月 16 日に可決された(近い未来にこの改正された特許法が施 行される予定)。ただ、この法改正案(Bill C-43)には、CETA のその他の義 務に準拠するための法改正案(特許期間の延長等)は含まれてなく、近い未 来に、特許法のみならず、特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則(Patented Medicine (Notice of Compliance) Regulations)や食品及び医薬品に関する 規則(Food and Drug Regulations)の改正を含めて提案・協議されることに なると思われる。 75 76 http://www.canadiangenerics.ca/en/news/oct_18_13.asp〔最終アクセス日 同上 - 540 - 2015 年 1 月 26 日〕 質問2: カナダにおける、ジェネリックメーカーの市場参入に関する重要な判例があ れば教えてください。 回答2: 最近のカナダの特許関連訴訟・判例のほとんどが、特許取得済医薬品(医薬 品販売承認)規則またその運用上から派生してきている訴訟となります。た だ、本規則がどのようにカナダ厚生省によって運用されているのかという観 点からから見た場合、ジェネリックメーカーの市場参入に関する最も重要な 判例のひとつは、2006 年にカナダ最高裁判所における Astrazeneca Canada Inc v Canada (Minister of Health)77事件の判決と考えます。 この事件は、ジェネリックメーカー、アポテックス社(Apotex Inc.)が、オ メプラゾール(omeprazole、胃酸抑制薬のひとつ)に対してジェネリック版 医薬品販売承認申請を 1993 年に提出した。アストラゼネカ社(Astrazeneca Canada Inc)は、オメプラゾールを、カナダで 1989 年より 1996 年までの間 のみ販売していた。その後も、カナダにおけるこの医薬品の販売を停止した にも関わらず、アストラゼネカ社は、特許取得済医薬品(医薬品販売承認) 規則に則り、新たに取得した2つの特許をこの薬品と関連付けてカナダ厚生 省が管理する特許リストに登録し続けた。アポテックス社は、1989 年版の薬 と生物学的に同等な薬品をもって医薬品販売承認を申請し、カナダ厚生省よ り販売承認を受けた。争点は、カナダ厚生省は正しくアポテックス社に販売 承認を交付したのかであったが、これは、基本的に大きく 2 つの大きな問題 があり、1)ジェネリックメーカーは、医薬品販売許可を受ける際、特許リ ストに新たに付け加えられた特許に対して何かしら対処をしなくてはいけな いのか、そして、2)特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則 5 条(1)項 は、ジェネリックメーカーが実際に対象としている医薬品(ジェネリックメ ーカーがコピーしている・コピーしようとしている医薬品)のみを参照とし ているのか、それとも、その医薬品のいかなる製剤も参照とするのか、であ 77 Astrazeneca Canada Inc v Canada (Minister of Health), 2006 SCC 49 - 541 - った。この判決において、最高裁判所の特許取得済医薬品(医薬品販売承認) 規則の解釈では以下のとおりである。 特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則はジェネリックメーカーが実際に コピーをしている・或いはコピーをしようとしている医薬品に関連している 特許のみを対象としているのであって、その後に追加された特許でジェネリ ックメーカーが何の利益も享受できないものは対象としていないということ である。結局、アストラゼネカ社の訴えは許されず、カナダ厚生局がアポテ ックス社にたいして交付した医薬品販売承認を認める判決を出した。 この判決以前は、ジェネリックメーカーがジェネリック版の医薬品に対する 医薬品販売承認を申請する際は、そのジェネリック版医薬品が参照する特許 取得済医薬品登録に関連する特許の全てに対して対処しなくてはいけなかっ た訳だが、この判決後は、カナダ厚生省による特許取得済医薬品(医薬品販 売承認)規則の運用に対するアプローチがこの判決に沿う形に変わることと なった。 - 542 - 問3: 新薬特許者等が、ジェネリック申請者への訴えを提起して一旦ジェネリック の参入を阻止した後にそれが覆った場合に、ジェネリック申請者等に生じた いかなる損失をも補填する責を負う旨の規則<NOC8(1)-(6)>に関して、 この規定に当てはまる事件がどの程度起こっているのか、問題になっている のか? 回答3: 一般的な枠組み ジェネリック申請者が特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則 5 条(1)(b) に則って申立通知を提出した場合は、新薬特許者は同規則 6 条をもって連邦 裁判所にカナダ厚生省に対してジェネリック申請者にジェネリック医薬品に 対する医薬品販売承認を出さないように指令するよう申請する。この申請に より、連邦裁判所が判決を下すまでジェネリック申請者が市場に介入するこ とを阻止し、また、カナダ厚生省でのジェネリック申請者の申請手続きを 24 ヶ月間(或いは、連邦裁判所が判定を下すまで)凍結する。 同規則 8 条は、裁判所がジェネリック申請者に医薬品販売承認が下されるべ きだったと判断したときに与えられる救済手段である。これに関しては、連 邦裁判所による、Apotex Inc. v. Pfizer Canada Inc., 2013 FC 493 の判決 文内でこの規則がどのように解釈されるべきかが説明されている。“もし新 規開発医薬品特許者が[同規則 6 条によるジェネリック医薬品にたいする医薬 品販売承認]禁止命令申請に失敗した場合、特許に対して侵害しているか或い は特許は無効であるかどうかの判断を裁判所が行っている期間、市場に介入 ができなかったジェネリックメーカーに対して損害賠償により救済をするこ とを同規則は許している。”78 この点について、裁判所では、同規則 6 条と 8 条の関連性を強調している。なので、同規則 8 条に関係する範囲は、同規則 6 条をもって示された問題点に関連するものだけとなる79。なので、この規則 78 Apotex Inc. v. Pfizer Canada Inc., 2013 FC 493, paragraph 6 79 同上、paragraph 22 - 543 - 8 条をもって損害に対する救済請求をする際に、ジェネリック申請者は、2 つ の要件を証明し満たさなくてはいけない。 1) 新規開発医薬品特許者による同規則 6 条(1)項の申請(禁止命令 (prohibition order)の申請)が却下された、そして、 2) 同規則の為に、ジェネリック申請者は市場に参入することが阻まれ期 間、ジェネリック申請者は損失を被った80。 基本的に、ジェネリック申請者が市場参入を阻まれた期間は、ジェネリック 申請者がさもなければ販売承認を受けた日から、ジェネリック申請者が実際 に販売承認を受けた期日までの期間を示す。 なので、私どもの理解だと、同規則 8 条の観点からみると、新薬特許者がジ ェネリック申請者への訴えを提起して一旦ジェネリックの参入を阻止した後 にそれが覆ったか否かといった事実は自体には特に問題はないが、ジェネリ ック申請者が市場参入が阻まれた期間が法定での係争期間分延びることにな るので、損害賠償額に多少影響が関わってくると考える。 特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則 8 条事件数、及び頻度: 特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則 8 条をもとに判決文の検索をした 結果、286 件(2015 年 1 月 1 日現在)の判例で、同規則が引用されている。 この結果を見ても、カナダではジェネリック申請者によって損害賠償・救済 を求める訴訟がかなりの頻度で訴訟・係争されていることがわかる。 特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則 8 条係争主要点: 係争点でやはり、問題になってくるのは救済手段、賠償額の評価及び定量化 である。 (1) 救済手段 80 Apotex Inc v Pfizer Canada Inc, 2013 FC 493, paragraph 53. - 544 - ジェネリック申請者に対して、特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則 8 条においてどの様な救済手段が適当かということが、最近のテバ 対 ファイザー カナダ社 カナダ社事件(Teva Canada Limited v. Pfizer Canada Inc, 2014 FCA 138)連邦控訴裁判所により考慮された。この事件は、それまで行 われていた様々なバイアグラに関連する訴訟後に、ジェネリック申請者であ るテバ カナダ社(以後、テバ社)が、新規開発医薬品特許者、ファイザー カナダ社(以後、ファイザー社)に対して、補償損害賠償に加えて、懲罰・ 報復的損害賠償金を求めて起こした訴訟である。この判決で、裁判所は、一 般的に特許権等侵害訴訟では懲罰・報復的損害賠償を裁判所が下すこともあ るかも知れないが、施行されている法律・規則が明示的に、或いは暗黙的に その様な懲罰・報復的損害賠償を除外している場合はその範囲ではないとい う見解を示した。特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則 8 条は、まさに、 このとうりであり、懲罰・報復的損害賠償の要求に関しては却下された。な ので、基本的に、同規則 8 条で許される救済に懲罰・報復的損害賠償は含ま れない。 (2) 賠償額の評価及び定量化 賠償額の評価をする際に様々な事実をもとに裁判所が考慮・決定するが、近 年の判例から、基本的には下記の5つの工程に沿って裁判所は賠償額の評 価・定量化を行う。 1. 賠償責任期間を特定する(関連する期間)(Determine the period of liability [the Relevant Period]); 2. 該当する賠償責任期間中の係争医薬品に関連する市場の全体的な 規模を特定する(関連する医薬品市場)(Determine size of the market for the relevant Relevant Pharmaceutical pharmaceutical Market] during Period); - 545 - the overall the Relevant [the 3. 該当する賠償責任期間中に関連する医薬品市場規模のうちで、ジェ ネリックメーカたちにより供給されたであろう市場規模を特定す る(ジェネリック市場)(Determine the portion of the Relevant Pharmaceutical Market that would have been held by generic manufacturers during the Relevant Period [The Generic Market]); 4. 特定されたジェネリック市場のうち、原告者によって供給されたで あろう市場規模を特定する(原告の失った売上量)(Determine the portion of the Generic Market that would have been held by the plaintiff [the Plaintiff’s Lost Volume]);そして、 5. 原告が、特定した原告の失った売上量に対して被ったであろう損害 を定量化する(原告の失った純益)(Quantify the damages that would have been suffered by the plaintiff in respect of the Plaintiff’s Lost Volume [the Plaintiff’s Net Lost Profit])。 81 82 アポテックス社 83 対 メルク社事件(Apotex Inc v Merck & Co, 2009 FCA 187) においては、特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則 8 条(5)項に則り、ジ ェネリック申請者が特許権侵害に関与していた証拠を提出しその証拠が、損 害賠償額の決定に影響を与えた一例である。この事件は、アポテックス社が メルク社(Merck & Co)のアレンドロネイト(Alendronate、骨粗鬆症治療薬 のひとつ)のジェネリック版に対する医薬品販売承認申請手続き上で、アポ テックス社が市場介入を阻止されていた期間に対する賠償を請求裁判である。 この件でメルク社は、もしアポテックス社が医薬品販売承認申請を受けてい たとしたらアポテックス社はメルク社の特許を侵害していたので、アポテッ クス社は同規則 8 条(1)項の損害賠償を受ける資格がない、と主張した。なぜ なら、同規則は“特許侵害の開始を早めないために定められた法定での手続 81 82 83 Teva Canada Ltd. v. Pfizer Canada Inc., 2014 FC 248 Sanofi-Aventis Canada Inc v Teva Canada Limited, 2012 FC 552 Apotex Inc v Sanofi-Aventis, 2012 FC 553 - 546 - き延期による結果からなる損害を、特許侵害者に賄う”という意図ではない、 とさらに主張した。これは、マルク社が、慣習法(Common Law)の教義であ る、“ex turpi causa action non oritur”(ラテン語で、“原告の違法或 いは不道徳な行為からは訴因は生じない“の意)を加味し、同規則 8 条(1)項 を解釈するべきである84と、訴えた。これについて、裁判所は、 “ex turpi causa action non oritur”による例外は、同規則 8 条(1)項には存在しないが、同 規則 8 条(5)項は裁判所に対して様々な事実・事情を全体的に、微妙な意味合 いを含めて考慮するよう規定しており、また、この項において、裁判所が特 定な事実状況において適切である補償額(無補償も含めて)を評価する権限 を与えている85。なので、ジェネリックメーカーがもし参照している特許済医 薬品の関連特許を侵害していたと裁判所によって認定された場合は補償額が 減少されたり或いは無補償であるという判断をすることもある86 87 。 尚、同規則 8 条(4)項の定める裁判所が決めるジェネリック申請者に対する補 償であるが、基本的にはジェネリック申請者が同規則により医薬品販売承認 の遅れにより市場介入ができなかったことで被った損失或いは、その間に上 げることができたであろう利益に対するものである88。 市場参入を阻まれた期間 先にも述べたが、基本的に、ジェネリック申請者が市場参入を阻まれた期間 は、ジェネリック申請者がさもなければ販売承認を受けた日から、ジェネリ ック申請者が実際に販売承認を受けた期日までの期間を示す。 ただ、テバ カナダ社 対 ファイザー カナダ社事件(Teva Canada Limited v. Pfizer Canada Inc., 2014 FC 248)においては、この市場参入を阻まれ た期間がいつから始まったかについてが争われた。この事件は、テバ社が、 ファイザー社のヴェンァファクシン(Venlafaxine、鬱病、パニック症等の治 療薬のひとつ)のジェネリック版医薬品に対する販売承認申請を行い、申立 84 Apotex Inc v Merck & Co, 2009 FCA 187, paragraph 33. 85 同上、paragraph 38 86 Apotex Inc v Merck & Co, 2011 FCA 364 at para 37 Apotex Inc v Pfizer Canada Inc, 2013 FC 493 at para 24 87 88 同上、paragraph 89 - 547 - 通知(Notice of Allegation)提出時に、本薬の関連特許のひとつの有効期 限の終了を待つことに同意したため、市場参入を阻まれた期間の開始日はそ の特許の有効期限終了日であるという判断を、裁判所は示した。また、損害 賠償額を考慮する際、裁判所はテバ社に対して、テバ社がジェネリック医薬 品を現実的に市場に提供できたであろうという期日、また、ファイザー社に 対しては、競合他社がいつ頃市場介入できたであろうかという証拠の提出を 要求することにより、市場の大きさ等の検討を行った。 今後の課題 賠償額の評価及び定量化に関しては、判例でいくつか未解決の部分がある。 特に、上記にも示した賠償額の評価・定量化するための5つの工程において、 架空のジェネリック市場規模の算出を裁判所がしなくてはいけないが、例え ば、ジェネリックメーカー達が関連医薬品市場に介入を開始してからジェネ リックメーカーがその最大達成可能販売量に到達するまでの期間(ramp-up period)に対する考慮・取扱については裁判所により多少意見が分かれると ころもある。その様な中、昨年、2014 年 10 月 30 日に、アポテックス社 対 サノフィ―アヴェンティス事件(Apotex Inc. v. Sanofi-Aventis, 2014 FCA 68)の連邦控訴裁判所による判決がカナダ最高裁判所に控訴され、本年 2015 年 4 月 14 日に口頭陳述が行われる予定である。これは、カナダ最高裁判所が 検討する初めての特許取得済医薬品(医薬品販売承認)規則 8 条における訴 訟であり、その動向・最高裁判所の見解については注目が集まるところであ る。 以上 - 548 - 【質問項目及び回答】 【中国】 <国家食品薬品監督管理局(CFDA)向け質問事項と回答> (CFDA への質問はハニカム・テクノリサーチ株式会社を介して行った) (中国)医薬品承認に関する CFDA 質問事項 2015 年 1 月 受託者:ハニカム・テクノリサーチ株式会社 - 550 - 1. 質問事項 当該調査においては、以下の 4 つの質問事項に係る中国の医薬品の現状を把握することを目的と した。なお、以下の事項を考慮し、調査を実施している。 ・本調査は化学薬品を主として、且つ当局から却下される状況を想定しない。 ・本報告は問合せ事項だけに対してのみ一般性調査を行う。 ・補充申請と再登録申請は各種許可証の取得後のため、本調査は対象外である。 ・申告過程の各項目の審査・許諾に係る期間は異なる。 ・ 許可項目徴収費用は計価額[1995]340 号「薬品審査、検査費用徴収標準を調整に関する通知」 (http://www.sda.gov.cn/WS01/CL0056/10756.)を参照することため、本調査の対象範囲ではな い。 なお、臨床試験終了後、承認までの期間は通常 2 年以上を要し、2006 年申請した案件も審査中で ある(例:受理番号 CXZS0600940)。 問い 1.:医薬品(ジェネリック医薬品を含む)の承認(治験・試験~販売)の流れを教えてくだ さい。 問い 2:販売承認の過程での特許情報の入手経路と、承認審査における特許情報の用いられ方・ 影響を教えてください(特許の種類(物質、用途など)によって後続の処分に影響することはあ りますか) 。また、特許の内容について特許庁と相談することはありますか。 問い 3:医薬登録規則第 18 条(2007 施行)に規定されたパテントリンケージは、どのように運 用され、機能していますか。 問い 4:審査状況や、関連特許情報、承認情報などに関する公示方法などを教えてください。 2. 調査結果 2.1 薬品登録の流れ(ジェネリック医薬品を含む) 臨床試験から販売前までの薬品登録は「薬品登録管理弁法」第 11 条に規定されており、販売は 含まない。販売は「薬品流通監督管理弁法」で規定されている。臨床試験から販売前までの薬品 登録を 2.1.1 に、販売に関しては 2.1.2 に示す。 2.1.1 医薬品登録申請(販売前まで) 薬品登録申請は①新薬申請、②ジェネリック医薬品申請、③輸入薬品申請及び補充申請、④再登 録申請の 5 つの申請手続きがある。 (1) 新薬申請 新薬申請には臨床試験に係る許可と生産許可申請の 2 つの手続きがある。臨床試験に係る許可の 流れを①に、生産許可申請に係る許可の流れを②に示す。 ① 臨床試験に係る許可 臨床試験に係る許可の流れを表 1 にまとめた。 a) 審査期間の短縮 「薬品登録管理弁法」第 45 条に規定された申請が適用できる場合、特殊審査の申請を提出でき る。申請できるか、否かの判断は薬品審査センタ-が行う。特殊審査は表 1 に示す審査期間を短 縮できる。 b) 申請資料の提出 申告資料の提出は 1 回限りであり、当局受理後、新しい技術資料の補充は不可能である。このた め、新しい技術資料の追加が必要な場合、申請を取り下げることが必要となる。ただし、特殊審 査への変更や薬品安全性の新情報の補充はこの限りではない。 - 551 - c) 有効期間 「薬物臨床試験許可文書」の有効期間は 3 年であり、3 年内に臨床試験を行わなければならない。 3 年以内に臨床試験が完了しない場合、再申請が必要となる。臨床試験の結果は CFDA CDE に申請・ 公告が必要となる。 表 1:臨床試験に係る許可の流れ-新品種 順番 1 2 3 4 事 項 主管当局 臨床前の研究を完成後、申告資料を提 省級食薬監局 出 形式審査、受理 省級食薬監局 受理後 5 日間内に:①現場検査;②申 省級食薬監局 告資料の初回審査 CFD が薬品審査センタ-及び申請者 省級食薬監局 にの連絡 5 技術審査、必要な場合、申請者に資料 CFDA 薬品審査センタ を補充する要求ができる - 6 7 CFDA へ審査を審告 「薬物臨床試験許可文書」を送達 CFDA CFDA 提出資料 備考 「薬品登録管理弁法」の付属書 類を参照 審査意見、検査報告、申告資料 審査期間: 新規申告資料 90 日 補充資料 30 日 技術審査意見 「薬物臨床試験許可文書」 有効期間 3 年 ② 生産許可申請 生産許可申請に係る流れを表 2 にまとめた。CFDA は新品種の生産許可に対して監視期間を設ける 権限を有している。 「薬品登録管理弁法」付属書類 6 には設定範囲(新品種の定義、監視期間等) が明示されている。CFDA は監視期間にある新品種に関してはその他の企業の生産許可や内容の変 更、輸入許可を受け付けない。監視期間満了後、ジェネリック医薬品申請(2.1.1(2))あるい は薬品輸入申請が可能となる。生産許可取得後、2 年以内に生産を開始しない場合、CFDA は他の 企業に生産許可申請を開始すること、かつ監視期間も設定する権利を有する。 表2 順番 1 2 3 4 5 6 7 8 生産許可申請に係る流れ-新品種 事 項 主管当局 提出資料 備考 「薬品登録管理弁法」の付属 薬物の臨床試験を完成後、 ①省級食薬監局 書類を参照 ① 申告資料を提出 ② 調製標準品の原材料と資料を NIFDC ②中国食品薬品検定 へ申告 研究院(NIFDC) 形式審査、受理 省級食薬監局 受理後 5 日間内に:①現場調査;②申告 省級食薬監局 資料に最初審査を行い ③ 3 ロットサンプルを抽出、薬品検査 省級食薬監局 所へ標準再審の通知を出す ① CFDA 薬品審査センタ-に報告、且つ 省級食薬監局 審査意見、検査報告、申告資 申請者に通知 料 ② 薬品標準に再審を行い、且つ CFDA 薬 品審査センタ-、省級食薬監局、申請者 薬品検査所 薬品標準再審意見 に送る 審査周期: 技術審査、申請者に資料を補充する要求 CFDA 薬品審査センタ 新規申告資料 150 日 ができる - 補充資料 50 日 申請者に生産現場検査を申請と通知、且 CFDA 薬品審査センタ つ CFDA 食品薬品審査検査センタ-に知 - らせる 申請者が 6 ヶ月以内に現場検査申請を CFDA 食品薬品審査検 提出 査センタ- ①30 日以内に、現場検査を行う;② CFDA 食品薬品審査検 1 ロットサンプルを抽出して、上記薬品 査センタ- 検査所に送る。 - 552 - 9 10 11 ①10 日以内に CFDA 薬品審査センタ-へ CFDA 食品薬品審査検 現場検査報告 送る 査センタ- ②検査後、報告を CFDA 薬品審査センタ -に送る、省級食薬監局と申請者に CC 薬品検査所 薬品登録検査報告 する。 技術審査意見、現場検査報 CFDA 薬品審査センタ 総合意見を形成後、CFDA へ審査を審告 告、薬品登録検査報告、全て - 資料 ①「新薬証書」を送達 ①「新薬証書」 承認文書番号有効期 ②申請者が「薬品生産許可証」と生産条 CFDA ②「薬品承認文書番号」 間5年 件を備えている場合、同時に「薬品承認 文書番号」を送達 (2) ジェネリック医薬品の申請 ジェネリック医薬品の申請における臨床試験及び生産許可申請の流れを表 3 にまとめた。なお、 留意点として、申請者は医薬品製造企業の営業許可を取得しており、且つ「薬品生産許可証」に 明記する生産範囲と申請内容と整合性が確保されていることが要求されている。 表 3:臨床試験及び生産許可申請の流れ-ジェネリック医薬品 順番 事 1 申告資料を提出; 2 形式審査、受理 省級食薬監局 受理後 5 日間内に:①現場調査;②生産 省級食薬監局 現場検査;③申告資料を審査 ③ 現場で、連続生産の 3 ロットサンプ 省級食薬監局 ルを抽出、薬品検査所へ送って検査 ① CFDA 薬品審査センタ-に報告、且つ 省級食薬監局 申請者に通知 ② サンプル検査、結果を CFDA 薬品審査 薬品検査所 センタ-、省級食薬監局、申請者に送る 3 4 項 主管当局 省級食薬監局 5 技術審査、必要な場合、申請者に資料を CFDA 薬品審査センタ 補充する要求ができる - 6 総合意見を形成後、CFDA へ審査を審告 7 「薬品承認文書番号」或は「薬物臨床試 CFDA 験許可文書」を発行、送る 8 9 10 提出資料 備考 「薬品登録管理弁法」の付属 書類を参照 審査意見、検査報告、生産現 場検査報告、申告資料 薬品登録検査報告 審査周期: 新規申告資料 160 日 補充資料 53 日 技術審査意見、現場検査報 CFDA 薬品審査センタ 告、薬品登録検査報告、全て - 資料 臨床試験が必要であ 「薬物臨床試験許可文書」或 れば、 流れ 8~10 を行 は「薬品承認文書番号」 う 臨床試験且つ登録公告。完成後、技術評 CFDA 薬品審査センタ 臨床試験資料 価を申告 - CFDA へ審査を審告 CFDA 技術意見 「薬品承認文書番号」を送達 CFDA 「薬品承認文書番号」 有効期間 5 年 (3)輸入薬品の申請 国外の製造業者の所在国の輸出許可を取得した場合、輸入許可申請に入れる。輸出許可を取得し ていない場合、CFDA の対象医薬品の安全性、有効性等の確認を経て、輸入許可を取得することで きる。 ① 期間短縮 CFDA 承諾:輸入試験申告は 110 営業日、輸入登録は 170 営業日以内に許可を決定する。医薬品登 録検査が必要な場合、薬品登録検査と同時に包括的技術審査を行うことが可能である。 - 553 - ② 提出書類 製剤の場合、医薬品に直接接触する包装材料・容器の法的適合性に係る証明書類を提出する必要 がある。また、原料薬と補助材料が未許可の場合、生産プロセス、品質指標、検査方法等の研究 資料などを提出する必要がある。 ③ 分包医薬品 省級食薬監局に申請し、CFDA が審査及び「薬品補充申請許可文書」を発行する。 表4 順番 事 1 申告資料を提出; 2 形式審査、受理(5 日) 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 項 臨床試験及び生産許可申請の流れ-輸入医薬品 主管当局 提出資料 CFDA 行政受理サービ 全シリーズ申告資料 スセンタ- CFDA 行政受理サービ スセンタ- 備考 CFDA が現場検査、 サンプル抽出でき る NIFDC に登録検査、審査確定或は審査評 中 国 食 品 薬 品 検 定 研 価等を行うことを通知(30 日) 究院(NIFDC) ①薬品検査所 ①サンプル検査、標準再審 薬品登録検査報告、再審後の輸 周期:85 日、5 と同 ② NIFDC ②専門家を集まって技術審査を行う 入薬品標準 時に行う 技術評価を送る(90 日) 、資料を補充す CFDA 薬品審査センタ る要求ができる - 補充資料: 4 ヶ月内 補充資料審査:30 日 10 日を延長できる CFDA へ審査を審告(20 日) CFDA 「薬物臨床試験許可文書」を送達(10 CFDA 行政受理サービ 「薬物臨床試験許可文書」 有効期間 3 年 日) スセンタ- ①GCP 実験室 ①臨床試験;②且つ CFDA 薬品審査セン ②CFDA 薬品審査セン タ-に登録公告 タ- CFDA 行政受理サービ 臨床試験資料、その他変更補充 申請者が資料を申告 スセンタ- 資料 CFDA 行政受理サービ 形式審査、受理(5 日) スセンタ- 補充資料: 4 ヶ月内 包括的技術審査(150 日)、資料を補充 CFDA 薬品審査センタ 補充資料審査:50 する要求ができる - 日 総合意見を CFDA へ審査を審告(20 日)CFDA 10 日ほど延長可能 CFDA 行政受理サービ 「輸入薬品登録証」を送達(10 日) 「輸入薬品登録証」 有効期間 5 年 スセンタ- 2.1.2 医薬品の販売 「薬品流通監督管理弁法」第 8~10、17 条に基づき、許可場所以外で医薬品を貯蔵あるいは 販売してはならない。したがって、生産企業、経営企業の販売においては、「薬品生産許可証」 あるいは「薬品経営許可証」の取得が要求されている。なお、医薬品は営業許可の範囲以内で販 売されなければならない。具体的には医薬品の生産企業は「薬品生産監督管理弁法」に基づき、 「薬品生産許可証」を取得すること、さらに「薬品生産質量管理規範認証管理弁法」と「薬品生 産質量管理規範(2010 年修訂)」に基き、GMP 認証を得ることが要求されている。 他方、医薬品の経営企業は「薬品経営許可証管理弁法」に基き、「薬品経営許可証」を取得す ること、さらに「薬品経営質量管理規範認証管理弁法」と「薬品経営質量管理規範」に基き、GSP 認証を得ることが要求されている。 2.2 特許に関する事項 - 554 - 中国の特許情報は下記の 2 つのウェブサイトから取得することが可能である。 ① 中国特許公告公布システム(データ管理者:国家知識産権局) 1985 年 9 月以降の申請公告、授権公告を検索可能である。データ更新頻度は毎週である。 URL:http://epub.sipo.gov.cn/ ② 特許検索とサービスシステム(データ管理者:国家知識産権局) 特許検索と特許分析サービス機能が設定されている。 URL:http://www.pss-system.gov.cn/sipopublicsearch/search/searchHome-searchIndex.shtml 2.2.1 入手経路と影響 (1) 販売承認の過程での特許情報の入手経路 上記の中国特許公告公布システムを用いた「販売承認の過程での特許情報の入手経路」をラパ チニブ(Lapatinib)を実例とし、示すこととした。なお、ラパチニブ(Lapatinib)は現在、以下の 情報を有している。 ・ 特許権者(Applicant) : 葛兰素集団有限会社(GLAXO GROUP LTD) ・ 国際公布番号 WO9935146 (日本特許番号 JP3390741) 上記の情報に基き、ヨーロッパ特許局 espacenet にて授権番号である CN1292788 (A) CN1134438 (C)を取得する。次に中国特許公告公布システムを用いて図 1 に示す情報を取得する。 図 1:特許情報-実例 (2) 承認審査における特許情報の用いられ方・影響 ① 特許情報の用いられ方 承認審査過程中においては、 「薬品登録管理弁法」第 18 条に基き、特許権の帰属に関する情報 のみを提示する必要があり、他の情報は用いられない。帰属に関する情報は特許権の帰属状態、 他社への権利侵害に係る声明である。声明の見本を図 2 に示す。したがって、承認審査への影響 はほとんどない。 図 2:権利侵害に係る声明の見本 権利を侵さない声明(見本) 国家食品薬品監督管理総局: ***項目は*****会社が自主開発の既存国家標準の医薬品である。本申請中の薬物、処方、プ ロセス等は、他者の権利を侵さない。権利侵害に抵触する場合、弊社は発生しうる現象に全責任 を負うことをここに声明する。 *****会社 *年*月*日 - 555 - ② 特許情報の影響、当局への相談 CFDA 薬品審査センタ-へ電話で特許侵害に係る確認した。 ・ 承認審査では、CFDA は他者の権利侵害に係る権利の声明の有無のみ確認し、当局が特許の照 合はしない。 ・ CFDA は「薬品登録管理弁法」第 19 条に基き、申請医薬品が特許期間中であるかなどの確認 はしない。 ・ 申請者は声明に係る関連法律に関して全ての責任を負うべきだと考える。 2.2.2 パテントリンケージの運用・機能 CFDA 薬品審査センターに電話確認したところ、 「CFDA は特許の権利侵害に関わる審査は実施しな い」との回答が得られた。また、 「薬品登録管理弁法」第 18 条より、特許権に係る争議が発生し た場合、当事者が解決するものとし、CFDA の審査では争議の有無は影響しない。しかしながら、 「特許法」第 69 条の「Bolar 例外原則」に基き、医薬品申請中、特許を使用することは権利を侵 す行為とは認定されないとされる。 「特許法」第 11 条に基き、「許諾販売」などの行為は禁じら れている(例:企業は公開ツールで取得した医薬品承認文書番号公衆に医薬品の生産開始に係る 情報として宣伝する等) 。以下に特許法第 11 条及び第 69 条を以下に示す。 特許法 第 11 条 発明及び実用新案の特許権の付与後、本法に別途規定がある場合を除き、如何なる企業 又は個人も特許権者の許諾を受けずに、その特許を実施すること、即ち、生産経営を目的として、 その特許製品を製造、使用、許諾販売、販売、輸入すること、又はその特許方法を使用すること、 又は当該特許方法により直接獲得した製品を使用、許諾販売、販売、輸入することはできない。 第 69 条 以下の状況のいずれかがある場合は特許権侵害とみなさない。 (四)専ら科学研究と実験のために関係特許を使用する場合。 (五)行政認可に必要な情報を提供するために、特許にかかる医薬品又は医療機器を製造、 使用、輸入する場合、及び専らそのために特許にかかる医薬品又は医療機器を製造、輸入する場 合。 (1) パテントリンケージの運用の実例 ラパチニブを実例として、以下に示す方法を用いて、受理及び審査状況の把握することが可能で あるを示した。 ① 受理 表 5 に示す W3 を用いて原料薬ジェネリック情報を取得する。取得した情報を図 3 に示す。葛兰 素有限会社は 1999.1.8 に中国でそのシリーズの化合物の特許を申請した。「特許法」第 42 条に よって、発明特許の期限は申請日から二十年、この特許の期限日は 2019 年 1 月 7 日。 「薬品登録 管理弁法」第 19 条規定によると、期限日前 2 ヶ月、即ち 2017 年 1 月にラパチニブを登録申請を 提出できるが、実際状況は 2013 年 7 月 17 日に CFDA 薬品審査センタ-は生産登録の申告材料を 受けった、且つ技術審査流れに入った。 図 3:原料薬ジェネリック情報 - 556 - ② 審査状況 表 5 に示す W4 で、この件の全局情報を確認可能である。取得した情報を図 4 に示す。さらに、 W8 及び W9 においても審査状況を確認することが可能である。図 5 に示す。 図 4:審査状況 図 5: (2)動向 2014 年 2 月 、 CFDA は 「 薬 品 登 録 管 理 弁 法 ( 修 正 草 案 )」 に 関 す る パ ブ コ メ を 募 集 し た (http://www.gov.cn/gzdt/2014-02/20/content_2616012.htm) 。 当該草案においては第 19 条では審査において特許期間の満了の有無を考慮しないことを改訂し た。すなわち、申請者以外が中国特許権を取得した医薬品に対して、登録申請を提出できること となった。 2.4 薬品登録の公示 薬品登録公示に係る関連サイトを表 5 に示す。なお、行政などの公式情報ではないものの、丁 香园フォーラムより、プロフェッショナルフォーラムの特許、新薬開発の関連情報が得られる。 ・ 知識産権ページ:http://www.dxy.cn/bbs/board/204 ・ 新薬ページ:http://xdrug.dxy.cn/bbs/board/114 臨床試験の進捗状況は表 5 の W11 で確認可能であり、図 6 に実例を示す。 図 6:臨床試験の進捗状況 - 557 - 表5 公式サイトで公布する情報 番号 サイト 公布事項 1 www.sfda.gov.cn/WS01/CL0371 申告指南書類 2 www.sfda.gov.cn/WS01/CL0579 CFDA 受理工作手配公告 3 www.cde.org.cn/transparent.do 受理品種、審査中品種公示 4 www.sfda.gov.cn/WS01/CL0135 登録進捗総合調べ 5 www.ccd.org.cn/ccdweb/view?id=9 輸入薬品境外生産現場検査任務公告 6 www.ccd.org.cn/ccdweb/view?id=4 ① GMP 認証、臨床試験機構資質認定等の公告 ② GMP 認証審査公示 ③ 薬品登録、GLP、GCP 現場検査予告、公告 7 www.nicpbp.org.cn/directory/web/ WS02/CL0006 NIFDC 薬品登録検査進捗、報告書調べる等 8 www.cde.org.cn/transparent.do?me thod=spxlList&tasktype=xb 新規申告資料審査進捗 9 10 11 www.cde.org.cn/transparent.do?me thod=spxlList&tasktype=fb www.cde.org.cn/transparent.do?me thod=adjust www.chinadrugtrials.org.cn/eap/c linicaltrials.prosearch 補充資料審査進捗 備考 審査任務分類 ご選択くださ い 審査部門ご選 択ください 審査任務調整公示(企業取り下げる、順番調整等) 臨床試験情報公示 12 www.sfda.gov.cn/WS01/CL0636 費用徴収公示(不明送金、領収書確認等) 13 www.sfda.gov.cn/WS01/CL0377 許可文書送達情報 14 app1.sfda.gov.cn/datasearch/face 3/dir.html 許可した国産薬品、輸入薬品、補充申請、臨床試験機 構、生産企業、GMP 認証、経営企業、GSP 認証、薬品 包装材料、OTC 説明書サンプル、薬品広告、インタネ ット薬品取引、ネット薬屋等の公示; 薬品登録関連特許情報公開、申告受理状況の公示 15 www.cde.org.cn/drugInfo.do?metho d=init&frameStr=5 既にある承認文書番号と審査中品種情報 - 558 - ①情報は二週 間位遅れる場 合がある②特 許情報は 2012 年までしか更 新してない LINDA LIU GROUP < 中 国 法 律 事 務 所 (北 京 林 達 劉 知 識 産 権 代 理 事 務 所 )向 け 質 問 事項と回答> 調査報告書 ご依頼内容 中国における医薬品等の特許権の存続期間の延長登録出願制度についての下記 の質問票の質問項目について調査し、回答すること。 【延長登録】質問票 (特許権の期間延長制度の導入の検討) Q1 . 中 国 国 内 で 医 薬 品 や 農 薬 等 の 販 売 承 認 や 登 録 承 認 の 手 続 き に よ る 特 許 権 の 存続期間の消失に関係する特許権の延長登録制度の導入の議論がなされたこと があれば教えてください。 Q2.中 国 の ユ ー ザ ー か ら 、特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 要 望 す る 声 が あ る か 教 え て く ださい。 (重要判例) Q3.中 国 に お い て 、ジ ェ ネ リ ッ ク メ ー カ ー の 市 場 参 入 に 関 す る 重 要 な 判 例 が あ れ ば紹介してください。 - 559 - LINDA LIU GROUP LLP 回 答 Q1.中 国 国 内 で 医 薬 品 や 農 薬 等 の 販 売 承 認 や 登 録 承 認 の 手 続 き に よ る 特 許 権 の 存 続 期間の消失に関係する特許権の延長登録制度の導入の議論がなされたことがあれ ば教えてください。 結論 中国国内で医薬品や農薬等の販売承認や登録承認の手続きによる特許権の存続 期間の消失に関係する特許権の延長登録制度の導入の議論がなされたことがあり ます。 説明 医薬品や農薬等に係る特許権の延長登録制度の導入に関する中国国内での議論 について、下記のとおり説明します。 Ⅰ.賛成説 1. 国 際 製 薬 連 盟 ( IF P M A) と 中 国 外 商 投 資 企 業 協 会 薬 品 研 究 開 発 業 界 委 員 会 ( RDPAC)は 2 0 0 6 年 、「 知 的 財 産 権 の 運 用 に よ る 製 薬 革 新 の 奨 励 」と い う テ ー マ で フ ォ ー ラ ム を 共 催 し た が 、同 フ ォ ー ラ ム で 討 論 さ れ た 主 な 内 容 は 、特 許 延 長 の 問 題 であった。 中 国 人 民 大 学 商 事 法 律 科 学 研 究 セ ン タ ー 研 究 者 で あ る 姚 歓 慶 は 、中 国 国 内 に お け る 医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 の 導 入 に 賛 成 し 、そ の 理 由 に つ い て 下 記 の と お り 説 明 し た 。ま ず 、技 術 イ ノ ベ ー シ ョ ン を 推 し 進 め る 角 度 か ら み れ ば 、医 薬 品 等に係る特許権の延長登録制度の導入は医薬業界の発展を奨励することができる。 ま た 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す る で 、企 業 は 先 薬 の 研 究 開 発 段 階 で よ り 多 く の 時 間 を 費 や す の で 、医 薬 品 の 品 質 を 重 視 さ せ る こ と に な り 、客 観 的 に 、医 薬 品 の 品 質 を 向 上 さ せ る こ と が で き る 。且 つ 、医 薬 業 界 の 知 的 財 産 権 へ の 保 護 意 識 を 向 上 さ せ 、医 薬 業 界 へ の 投 資 促 進 、医 薬 品 に 係 る 研 究 開 発 の 深 化 、及 び 医 薬 品 の イ ノ ベ ー シ ョ ン 等 に も 有 益 で あ る 89。 2. 中 国 の 医 薬 業 界 に と っ て 、 医 薬 品 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 の 導 入 は 、 下 記のようなメリットとデメリットがある。 89 王円、陳恵 「专利延长未到火候」 (和訳―特許権の延長登録制度の導入は未熟だ) 『医薬経済報』 2006 年 11 月 1 日第 001 版 薛原 「跨国药企:延长药品专利 知识产权局:尚未列入议程」(和訳―国際医薬品製造メーカー 医薬品に係る 特許権の延長登録制度を導入 知的財産権局 まだ議論されていない) 『健康報』 2006 年 10 月 24 日第 003 版 - 560 - LINDA LIU GROUP ①先薬製造メーカーのイノベーションを奨励し、先薬の研究開発を促進する。 ②医薬品製造業への投資を引きつけ、医薬品製造業の発展を推し進める。 ③ 後 発 薬 の 発 売 を 遅 ら す こ と に な る の で 、中 国 の ジ ェ ネ リ ッ ク メ ー カ ー の 発 展 に 悪 影 響 を 与 え る 。但 し 、長 い 目 で 見 れ ば 、特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 は 、先 薬 の 研 究 開 発をより促進することになるので、ジェネリックメーカーの生産ラインを拡充し、 且つ、ジェネリックメーカーの寿命を延長することができる。 ④ 消 費 者 に と っ て は 、よ り 良 い 先 薬 を 選 ぶ こ と が で き る 一 方 、薬 品 を 購 入 す る コ ストが高くなる。 上 記 の よ う に 、特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 に は 、プ ラ ス 面 と マ イ ナ ス 面 が あ り 、そ れ を 全 て 包 括 し て 考 え る 必 要 が あ る 。外 国 の 医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 は 、 一 定 の 参 考 価 値 は あ る も の の 、そ の ま ま 導 入 し て は な ら ず 、中 国 の 実 情 に 基 づ い て 、 慎 重 に 検 討 し な け れ ば な ら な い 。し か も 、企 業 の 研 究 開 発 へ の 奨 励 と 特 許 権 濫 用 の 防 止 と の 間 の バ ラ ン ス を 図 る こ と も 、 深 く 検 討 す べ き で あ る 90。 3.医 薬 品 が 開 発 さ れ 、食 品 薬 品 監 督 管 理 局 の 許 可 を 得 て 発 売 が で き る ま で 、往 々 に し て 特 許 保 護 期 間 の 半 分 以 上 の 時 間 が か か り 、残 り の 特 許 保 護 期 間 内 で は 研 究 開 発 の コ ス ト す ら 回 収 す る こ と が で き な い 。し た が っ て 、製 薬 メ ー カ ー の 研 究 開 発 を 促進するために、医薬品等に係る特許権の保護期間を延長することが必要である。 但 し 、特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 の 導 入 に 関 し て 、中 国 で は 、関 係 法 律 規 定 が 十 分 で な く 、且 つ 、先 薬 が 少 な く 、特 許 薬 が 更 に 少 な い の で 、当 該 制 度 を 導 入 す る 意 味 が な く 、た と え 導 入 し て も 、受 益 者 は 外 国 製 薬 メ ー カ ー で 、中 国 メ ー カ ー は 却 っ て 市 場 シ ェ ア を 失 う こ と に な り か ね な い と い う 反 対 理 由 が あ る 。し か し な が ら 、中 国 で は 実際には、先薬を研究開発する人材も資金も不足しておらず、不足しているのは、 人 材 と 資 金 を 集 め る 仕 組 み な の で あ る 。医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 が 導 入 さ れ れ ば 、こ れ ら の 人 材 と 資 金 を 製 薬 メ ー カ ー に 集 め る こ と が で き 、医 薬 業 界 の イ ノ ベ ー シ ョ ン と グ ロ バ ー ル 化 を 推 し 進 め る こ と が で き る の で 、ぜ ひ 導 入 す べ き で あ る 91。 90 楊莉 李野 「浅析药品专利期延长制度」 (和訳-医薬品等に係る特許権の延長登録に関する概論) 『中国新 薬雑誌』 2007 年第 16 巻第 12 期 91 耿円円 「论我国专利法“bolar 例外”条款及专利保护期延长制度的关系」 (和訳-我が国の専利法での「bolar 例外」条項と特許権の延長登録制度との関係について) 『中国商界』 2010 年第 12 期 - 561 - LINDA LIU GROUP Ⅱ.反対説 1. 中 国 国 家 知 識 産 権 局 専 利 局 医 薬 生 物 発 明 審 査 部 部 長 で あ る 張 清 奎 は 、 「 新 興 国 に と っ て 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す る こ と は 現 実 的 な こ と で は な い 。」と い う 観 点 を 打 ち 出 し 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 の 導 入 に 反 対 し た 。ま た 、そ の 理 由 に つ い て 、「 医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す る か 否 か に つ い て 考 慮 す る 際 、特 許 権 者 の 利 益 の み な ら ず 、公 共 的 な 利 益 も 考 慮 し な け れ ば な ら な い 。公 共 の 利 益 か ら み れ ば 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す る と 、医 薬 品 等 の 価 格 が 高 く な る 。ま た 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 に つ い て の 経 験 が ま た 絶 対 的 に 不 足 し て い る 。 EU か ら の 関 連 研 究 報 告 は 不 十 分 で 、関 連 デ ー タ も 完 全 で は な い の で 、今 、特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す る の は 困 難 で あ る 。 」 と 説 明 し た 92。 2. 中 国 医 薬 法 の 専 門 家 で あ る 徐 青 松 は 、 医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 の 導 入 を 反 対 し 、そ の 理 由 に つ い て 、下 記 の と お り に 述 べ た 。① 特 許 権 の 保 護 期 間 が 存 在 す る か ら こ そ 、製 薬 メ ー カ ー に 絶 え 間 な く 先 薬 の 研 究 開 発 を 継 続 さ せ る こ と が で き る 。確 か に 、先 薬 の 開 発 に は 、大 量 の 時 間 と 費 用 を 投 入 す る こ と が 必 要 で あ り 、且 つ 、特 許 権 の 保 護 期 間 が 満 了 す る と 、後 発 薬 に よ る 激 し い 競 争 に も 直 面 す る こ と に な る 。し か し 、企 業 に と っ て は 、先 薬 だ け に 頼 っ て い る 訳 に は い か ず 、廉 価 で 且 つ 売 れ る 後 発 薬 を 開 発 し て 利 益 を 儲 け 、そ れ に よ っ て 、先 薬 の 開 発 に 必 要 な 資 金 を 確 保 す る こ と が 必 要 で あ る 。つ ま り 、先 薬 開 発 に は 、後 発 薬 に よ る 経 済 的 サ ポ ー ト が 必 要 な の で あ る 。② 後 発 薬 が あ る か ら こ そ 、薬 品 の 価 格 が 合 理 的 な 範 囲 内 に 維 持 で き て い る の で 、現 在 の 国 家 政 策 に 合 致 し て い る と 言 え る 。③ 中 国 は 、新 興 国 で あ る 。中 国 の 事 情 に 鑑 み 、今 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す れ ば 、特 許 権 の 濫 用 を 招 く お そ れ が あ り 、且 つ 、公 共 の 健 康 の 保 障 と 発 展 に も 支 障 を 生 じ る 可 能 性 が あ る 93。 3. 米 国 で は 、 先 薬 を 開 発 す る 積 極 性 を 奨 励 す る た め に 、 医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 実 施 し て い る 。し か し 、中 国 で は 、米 国 の よ う な 医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す る べ き で は な い 。な ぜ な ら 、ま ず 、先 薬 が 少 な い 中 92 王円、陳恵 「专利延长未到火候」 (和訳―特許権の延長登録制度の導入には時期尚早) 『医薬経済報』 2006 年 11 月 1 日第 001 版 93 徐青松 「药品专利保护不易延长(和訳―医薬品に係る特許権の延長登録制度を導入しないほうがよい) 『健 康報』 2006 年 10 月 31 日第 003 版 - 562 - LINDA LIU GROUP 国 に お い て 、特 許 権 の 保 護 期 限 を 延 長 す る と 、国 内 の 製 薬 メ ー カ ー に と っ て 不 利 で 、 逆 に 元 の 市 場 シ ェ ア ま で 失 う こ と に な る お そ れ が る 。ま た 、中 国 は 、ア メ リ カ と 比 べ 、法 律 制 度 が 未 だ 整 備 さ れ て い な い 。そ し て 、中 国 の「 薬 品 管 理 法 」と「 専 利 法 」 と が は っ き り と リ ン ク し て い な い の で 、当 該 制 度 を 投 入 し 、あ る 行 政 部 門 よ り 主 導 し て 推 進 し て も 、実 際 運 用 に お い て 、い ろ い ろ な 阻 害 や 問 題 が 生 じ る 可 能 性 が 高 い 。 な お 、中 国 に お い て 、漢 方 薬 に 対 す る 知 的 財 産 権 保 護 は 、大 き い 難 題 で あ る が 、当 該 問 題 に お い て は 、 ア メ リ カ の 制 度 を 参 考 に す る 価 値 は 殆 ん ど な い 94。 4. 中 国 の 医 薬 品 業 界 の 特 殊 な 事 情 に 鑑 み 、 今 後 暫 く の 間 は 、 医 薬 品 等 に 係 る 特 許権の延長登録制度を導入すべきでない。その理由は、下記のとおりである。 ① 中 国 で は 、先 薬 が 少 な い 状 況 に 鑑 み 、特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す れ ば 、国 内企業に不利に働き、逆に元の市場シェアも失うおそれがある。 ② 中 国 で は 、医 薬 品 等 に 係 る 全 面 的 な 法 律 シ ス テ ム が 未 だ 整 っ て い な い 。そ し て 、 ア メ リ カ と 比 べ て 、例 え ば 、ど の よ う な 仕 組 み を 採 用 す れ ば 、国 家 食 品 薬 品 監 督 管 理局と国家知識産権局との間で医薬品登録と医薬品特許権との関連事項をリンク さ せ る こ と が で き る の か 、と の よ う な 問 題 に 関 す る 規 定 が 不 十 分 で 整 備 が 必 要 で あ あ る 。即 ち 、中 国 に お け る 医 薬 品 特 許 権 に 関 す る 連 結 制 度 は ま だ 構 築 さ れ て い な い 。 こ の よ う な 状 況 に お い て 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す れ ば 、必 ず し も 行 政 管 理 部 門 の 間 の 法 執 行 の 混 乱 を 生 じ さ せ る お そ れ が あ る 95。 Ⅲ.その他 ア メ リ カ 、ヨ ー ロ ッ パ 、日 本 な ど の 先 進 国 は 現 在 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 に 対 し て 延 長 保 護 制 度 を 実 施 し て い る 。し か し 、多 く の 国 は 、当 該 制 度 に 関 し 、依 然 と し て 、保 守 的 な 態 度 を と っ て い る 。先 薬 の 発 売 後 、特 許 権 の 有 効 期 限 も ま も な く 満 了 す る 状 況 下 で 、ど の よ う に 特 許 制 度 を 利 用 し て 発 売 後 の 先 薬 に 対 す る 特 許 権 保 護 期 間 を 合 理 的 に 延 長 す る か は 、製 薬 メ ー カ ー に と っ て 、と て も 重 要 な 課 題 と な っ て い る。よく利用されている対策としては、下記の方法が挙げられる。 ① 適当な出願時期を選択して、医薬品等に係る特許権の保護期間を延長する。 94 董麗 楊悦 「美国药品专利期延长与市场独占期规定研究」 (和訳-米国の医薬品等に係る特許権の延長登録と 市場独占期間に関する研究) 『中国医薬導刊』 2006 年第 8 巻第 5 期(総第 46 期) 95 丁錦希 「美国药品专利期延长制度浅析——Hatch-Waxman 法案对我国医药品工业的启示」(和訳-米国の医薬品 等に係る特許権の延長登録に関する研究――Hatch-Waxman 法案が我が国の医薬品製造業界への啓発) 『中国医薬 工業雑誌』 2006 年第 37 期 - 563 - LINDA LIU GROUP 特 許 出 願 に つ い て 、適 切 な タ イ ミ ン グ で 行 う こ と が と て も 重 要 で あ る 。早 い タ イ ミ ン グ で 出 願 す る と 競 業 者 に 早 期 に 技 術 を 公 開 す る こ と に な り 、か つ 、有 限 な 特 許 保 護 期 間 を 浪 費 す る こ と に な り 、反 対 に 、出 願 が 遅 す ぎ る と 、競 業 者 に 先 取 り 出 願 さ れ る お そ れ が あ り 、そ の 場 合 、自 社 の 技 術 成 果 を み す み す 無 駄 に し て し ま う こ と になるだけではなく、競業者による特許コントロールを受けることになる。通常、 出願時期を選択する際に、以下の要素を考慮する必要がある。 ⅰ医薬品等に係る発明の完成度。特許出願の最低限を満たす必要がある。 ⅱ競業者の進展状況。先取り出願されることを防止すべきである。 ⅲ マ ー ケ テ ィ ン グ 。特 許 権 出 願 登 録 と 医 薬 品 許 可 登 録 の 進 展 に 留 意 し 、で き る だ け 両 方 の 歩 調 を 合 わ せ 、且 つ 、シ リ ー ズ 製 品 の 発 売 プ ラ ン と 市 場 の ニ ー ズ の 両 方 に 配慮をするべきである。 ②選択発明を通じて医薬品等に係る特許権の保護期間を延長する。 選 択 発 明 と は 、現 有 技 術 に 公 開 さ れ た 広 い 範 囲 の 中 か ら 、目 的 を 持 っ て 現 有 技 術 で 言 及 さ れ て い な い 狭 い 範 囲・物 を 選 択 し た 発 明 の こ と を 言 う 。権 利 者 が 選 択 発 明 を 適 切 に 応 用 す る と 、選 択 発 明 を 利 用 し て 、先 行 特 許 権 者 と ク ロ ス ラ イ セ ン ス す る か 、ま た は 交 渉 を す る こ と が で き る 。な お 、企 業 は 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 を 出 願 す る 際 に 、基 礎 発 明 構 成 の み 開 示 し 、好 ま し い 態 様 を 留 保 し 、基 礎 特 許 権 の 保 護 期 間 が 満 了 す る 直 前 ま た は そ の 後 、留 保 す る 発 明 構 成 に 基 づ い て 、改 め て 特 許 を 出 願 す る 方 法 に よ っ て 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 保 護 期 間 を 合 理 的 に 延 長 す る こ と が で き る。 ③周辺発明を通じて医薬品等に係る特許権の保護期間を延長する。 周 辺 発 明 と は 、上 位 に あ る 基 礎 発 明 の 周 囲 で そ れ と 関 連 し 、か つ 、そ れ に 制 限 さ れ る 下 位 の 改 良 発 明 を 開 発 す る こ と を 言 う 。企 業 は 、上 位 と な る 製 品 に つ い て 特 許 を 出 願 し た 後 、そ れ に 基 づ い て 、よ り 良 い 製 造 方 法 、新 た な 用 途 、ま た は 他 の 下 位 製 品 に 関 す る 開 発 を 継 続 し て 行 い 、か つ 、そ れ に 関 連 す る 発 明 特 許 も 引 き 続 き 出 願 す る こ と が で き る 。そ う す る と 、周 辺 発 明 は 、基 礎 発 明 に 対 し 、絶 え 間 な く サ ポ ー ト を す る こ と が で き る の で 、当 該 方 法 に よ っ て 、特 許 権 の あ る 医 薬 品 を 全 面 的 に 保 護 す る こ と が で き る だ け で は な く 、市 場 シ ェ ア に 関 す る 実 際 的 な 保 護 期 間 及 び コ ン トロール期間も延長できる。 ④優先権を利用して医薬品等に係る特許権の保護期間を延長する。 - 564 - LINDA LIU GROUP 中 国 の 特 許 法 に よ れ ば 、出 願 人 は 発 明 又 は 実 用 新 案 に つ い て 外 国 で 最 初 に 特 許 出 願 し た 日 か ら 12 ヶ 月 以 内 に 、 中 国 で 同 一 の 主 題 を 以 っ て 特 許 出 願 す る と き は 、 優 先 権 を 享 有 す る こ と が で き る 。ま た 、特 許 の 保 護 期 間 は 、実 際 の 出 願 日 か ら 起 算 す る の で 、 優 先 権 を 利 用 し て 、 医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 保 護 期 間 を 最 大 12 ヶ 月 延 長 できる。 ⑤他の行政手段を利用して医薬品等に係る特許権の保護期間を延長できる。 中 国 で は 、医 薬 品 関 連 の 知 財 権 保 護 に 関 す る 法 律 規 定 な ど が 多 数 あ る の で 、法 律 に 基 づ く 司 法 保 護 と 行 政 規 定 に 基 づ く 行 政 保 護 を 求 め る こ と が で き る 。例 え ば 、漢 方薬の特許権者は、 「 中 薬 品 種 保 護 条 例 」を 利 用 し て 、保 護 期 間 が 満 了 す る 直 前 に 、 そ の 薬 品 の 市 場 独 占 期 限 を 更 に 延 長 す る こ と が で き る 。ま た 、も し 、先 薬 の 研 究 開 発 に か な り 時 間 が か か っ た 場 合 、先 薬 の 5 年 以 下 の 安 全 監 視 測 定 期 限 及 び 6 年 間 の デ ー タ 独 占 性 へ の 保 護 期 間 を 利 用 し て 、市 場 独 占 期 間 を 更 に 延 長 す る こ と も で き る 。 ⑥ノウハウと特許を総合的に利用して医薬品等に係る特許権の保護期間を延長 する。 企 業 は 、医 薬 品 等 に 係 る 技 術 の 研 究 開 発 の 難 易 度 、リ バ ー ス エ ン ジ ニ ア リ ン グ の 可 能 性 、競 業 者 の 技 術 レ ベ ル 等 を 総 合 的 に 考 慮 し た 上 、関 連 技 術 に つ い て 、特 許 出 願 を す る か 、そ れ と も 、ノ ウ ハ ウ と し て 留 保 す る か を 決 め る こ と が で き る 。ノ ウ ハ ウ と し て 留 保 し た 場 合 、秘 密 保 持 に さ え 留 意 す れ ば 、特 許 権 の 保 護 期 間 に 関 わ ら ず 、 関 連 医 薬 品 の 市 場 に お け る 独 占 地 位 を 維 持 す る こ と が で き る 。な お 、競 業 者 が 関 係 技 術 の 開 発 実 力 を 有 す る よ う に な っ た 場 合 、先 に 特 許 出 願 を す る こ と で 、関 連 技 術 の保護期間を延ばすことができる。 ⑦商標と結びつけて医薬品等に係る特許権の保護期間を延長する。 特 許 権 保 護 の 期 限 性 と 商 標 保 護 の 持 続 性 に 基 づ き 、製 薬 メ ー カ ー は 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 保 護 期 間 の 満 了 後 、商 標 権 を 利 用 し て 、当 該 医 薬 品 の 市 場 優 位 を 保 持 す る こ と が で き る 96。 96 鄧声菊 朱俊英 何黎清 「专利药品保护期的延长策略」(和訳-特許権ある医薬品の保護期間への延長戦略) 『中国発明与専利』 2009 年第 6 期 顧潤豊「延长专利药品保护期的策略简析」 (和訳-特許権ある医薬品の保護期間への延長戦略に関する研究) 『中 国発明与専利』 2011 年第 10 期 顧潤豊 孫長龍「企业如何延长专利药品保护期?」 (和訳-企業はどうして特許権ある医薬品の保護期間を延長で きるか?) 『中国知的財産権報』 2012 年 1 月 11 日第 005 版 - 565 - LINDA LIU GROUP Q2.中 国 の ユ ー ザ ー か ら 、 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 要 望 す る 声 が あ る か 教 え て く ださい。 結論 中国のユーザーから、特許権の延長登録制度を要望する声があります。 説明 1. 2006 年 1 0 月 24 日 付 の 『 健 康 報 』 に よ れ ば 、 あ る 国 際 的 な 製 薬 企 業 の 薬 品 登 録 担 当 者 は 、中 国 の 製 薬 メ ー カ ー の 後 発 薬 の 製 造 能 力 が 高 い の で 、先 薬 は 特 許 権 の 保 護 期 間 の 満 了 後 、そ の 競 争 力 が 弱 く な り 、企 業 に 大 き な 損 失 を 与 え る の で 、特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す る こ と を 希 望 し た 。 97 2. 2006 年 1 1 月 1 日 付 の 『 医 薬 経 済 報 』 に よ れ ば 、 北 京 百 奥 薬 業 有 限 責 任 公 司 の 総 経 理 で あ る 候 全 民 は 、「 先 薬 の 場 合 、関 連 許 可 書 の 取 得 に か な り 時 間 が か か る の で 、 特 許 権 保 護 に よ り 利 益 を 得 ら れ る 時 間 が 短 す ぎ る 。 中 国 は 、 WTO に 加 入 し た の で 、他 の 国 と 同 じ ル ー ル を 守 る べ き で あ る 。し か も 、中 国 で は 、ほ と ん ど の 先 薬 に 対 す る 後 発 薬 が 既 に 発 売 さ れ て い る の で 、延 長 制 度 の 導 入 に よ る 業 界 へ の 影 響 は そ れ ほ ど 大 き く な い 。な お 、今 後 の 発 展 を 考 慮 し て も 、医 薬 業 界 の イ ノ ベ ー シ ョ ン を 奨 励 す る べ き で あ る 。」と い う 理 由 で 、特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す る こ と を 提 案 し た 。 98 3. 2010 年 3 月 1 2 日 付 の 『 新 華 日 報 』 に よ れ ば 、 中 国 の バ イ オ 医 薬 業 界 は 成 長 が 加 速 化 し て い る も の の 、イ ノ ベ ー シ ョ ン 力 が 弱 く 、且 つ 、国 際 競 争 力 も 強 く な い 。 江 蘇 恒 瑞 医 薬 股 份 公 司 の 董 事 長 で あ る 孫 飄 揚 は 、医 薬 行 業 の イ ノ ベ ー シ ョ ン を 奨 励 す る た め に 、 先 薬 の 発 売 後 の 特 許 保 護 期 間 を 適 当 に 延 長 す る こ と を 提 案 し た 。 99 4. 2013 年 4 月 3 日 付 の 『 中 国 業 界 研 究 サ イ ト 』 の 報 道 に よ れ ば 、 医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 の 導 入 に つ い て 、北 大 縦 横 管 理 コ ン サ ル テ ィ ン グ 集 団 の 医 薬 業 務 担 当 パ ー ト ナ ー で あ る 史 立 臣 は 、「 中 国 医 薬 市 場 に お い て 、医 薬 品 の 特 許 保 護 は 外 国 企 業 か ら の 投 資 に よ っ て 支 え ら れ 、医 薬 市 場 に お け る 高 い 収 益 を 保 障 し て い る 。医 薬 品 に 対 す る 特 許 保 護 が 不 十 分 だ と 、外 資 企 業 の 中 国 に お け る 生 存 能 力 と 97 薛原 「跨国药企:延长药品专利 知识产权局:尚未列入议程」(和訳―国際医薬品製造メーカー 医薬品に係 る特許権の延長登録制度を導入 知的財産権局 まだ議論されていない) 『健康報』 2006 年 10 月 24 日第 003 版 98 王円、陳恵 「专利延长未到火候」 (和訳―特許権の延長登録制度の導入は未熟だ) 『医薬経済報』 2006 年 11 月 1 日第 001 版 99 http://ip.people.com.cn/GB/11128222.html〔最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日〕 - 566 - LINDA LIU GROUP 競 争 力 に 影 響 を 与 え る 。」と 表 明 し た 。こ れ に 対 し て 、中 国 外 商 投 資 企 業 協 会 薬 品 研 究 開 発 業 界 委 員 会( R D P A C)の メ デ ィ ア デ ィ レ ク タ ー で あ る 左 玉 増 は 、「 確 か に 、 中 国 に お い て 、先 薬 に と っ て 、特 許 権 保 護 に よ り 利 益 を 得 ら れ る 期 間 が 短 す ぎ る 。」 と 述 べ 、医 薬 品 等 に 係 る 特 許 権 の 延 長 登 録 制 度 を 導 入 す べ き で あ る と い う 態 度 を 示 し た 。 100 5. 2014 年 3 月 1 2 日 付 の 『 浙 江 日 報 』 に よ れ ば 、 「 中 国 の 特 許 保 護 期 間 は 20 年 で あ る が 、 一 つ の 先 薬 は 特 許 出 願 か ら 発 売 さ れ る ま で 往 々 し て 10 年 以 上 か か る の で 、 発 売 後 の 特 許 保 護 期 間 は 10 年 に 足 り な い 。 」 と い う の が 現 状 で 、 全 国 人 民 代 表 で 、且 つ 、貝 達 薬 業 有 限 公 司 董 事 長 で あ る 丁 列 明 は 、先 薬 発 売 後 の 特 許 保 護 期 間 を 適 切 に 延 長 し 、 医 薬 企 業 の イ ノ ベ ー シ ョ ン を 奨 励 す る こ と を 提 案 し た 。 101 100 http://www.chinairn.com/news/20130403/154437172.html〔最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日〕 http://www.npc.gov.cn/npc/dbdhhy/12_2/2014-03/12/content_1852561.htm〔最終アクセス日 2015 年 1 月 26 日〕 101 - 567 - LINDA LIU GROUP Q3.中 国 に お い て 、 ジ ェ ネ リ ッ ク メ ー カ ー の 市 場 参 入 に 関 す る 重 要 な 判 例 が あ れ ば 紹介してください。 判例① 事件名称: サ ノ フ ィ・サ ン テ ラ ボ 公 司 と 江 蘇 恒 瑞 医 薬 股 份 有 限 公 司 と の 間 の 発 明 特 許 権 侵 害 及 び不正競争紛争事件 当事者: 再 審 申 請 人 ( 一 審 原 告 、 二 審 被 上 訴 人 ): サ ノ フ ィ ・ ア ベ ン テ ィ ス 公 司 ( 以 下 「 サ ノフィ社」という) 被申請人(一審被告、二審上訴人):江蘇恒瑞医薬股份有限公司(以下「恒瑞社」 という) 一審被告:上海国大東信薬房有限公司 裁判所名称: 最高裁判所 事 件 番 号 : ( 2 0 09 )民 申 字 第 86 1 号 最 終 審 決 日 : 2 0 0 9 年 1 2 月 27 日 判例の出所:北大法宝司法判例データベース 事件の概要: フ ラ ン ス の 製 薬 メ ー カ ー で あ る サ ノ フ ィ 社 は 、 中 国 の 恒 瑞 社 が 2002 年 か ら 製 造 ・ 販 売 し て い た「 艾 素 」と い う 医 薬 品 が 自 社 の 新 薬「 ド セ タ キ セ ル( タ キ ソ テ ー ル ) 」 に 係 る 2 件 の 発 明 特 許 権 ( 出 願 日 は そ れ ぞ れ 1993 年 9 月 28 日 と 1995 年 7 月 7 日 )を 侵 害 し 、か つ 、関 連 宣 伝 行 為 が 不 正 競 争 行 為 に 該 当 し た と い う 理 由 に よ って、訴訟を提起した。 一 審 裁 判 所 は 審 理 を 経 て 、恒 瑞 社 に 対 し て 、不 正 競 争 及 び 特 許 権 侵 害 行 為 を 直 ち に 差 止 め 、サ ノ フ ィ 社 の 経 済 的 な 損 失 等 を 賠 償 す る こ と を 命 じ る 判 決 を 言 い 渡 し た 。 恒 瑞 社 は 一 審 判 決 を 不 服 と し て 、上 訴 を 提 起 し た 。二 審 裁 判 所 は 、恒 瑞 社 の 不 正 競 争 行 為 に 関 す る 一 審 裁 判 所 の 判 決 を 維 持 し た 。し か し 、特 許 権 侵 害 問 題 に つ い て 、 二 審 裁 判 所 は 、サ ノ フ ィ 社 が 一 審 段 階 で 自 ら 鑑 定 を 委 託 し た こ と に 対 し 、当 該 鑑 定 報 告 書 等 は 、一 審 裁 判 所 の 委 託 に よ り 得 ら れ た 鑑 定 報 告 書 の 結 論 を 覆 す こ と が で き な い と 認 定 し 、且 つ 、サ ノ フ ィ 社 の 補 充 鑑 定 請 求 も 許 可 せ ず 、特 許 権 侵 害 行 為 に つ い て は 構 成 し な い と 認 定 し た 。こ れ に 対 し 、サ ノ フ ィ 社 は 再 審 を 申 立 て た が 、最 高 - 568 - LINDA LIU GROUP 裁判所は二審裁判所の意見を認め、サノフィ社の再審請求を却下した。 コメント: 技 術 的 問 題 が 複 雑 な 医 薬 品 に 係 る 特 許 権 侵 害 紛 争 事 件 に お い て 、当 事 者 が 最 初 か ら 如 何 に 巧 み に 鑑 定 と い う 手 段 を 利 用 す る か と い う こ と は 、往 々 と し て 訴 訟 の 勝 敗 を左右することになる。 判例② 事件名称: 杭州賽諾菲安萬特民生製薬有限公司が深セン海王薬業有限責任公司と上海科院薬 房有限公司を訴えた発明特許権侵害紛争事件 当事者: 原告 杭州賽諾菲安萬特民生製薬有限公司(以下「賽諾菲社」という) 被告 1 深セン海王薬業有限責任公司(以下「海王社」という) 被告 2 上海科院薬房有限公司(以下「科院薬房」という) 裁判所名称: 上海市第一中等裁判所 事 件 番 号 : ( 2 0 06) 滬 一 中 民 五 ( 知 ) 初 字 第 379 号 最 終 審 決 日 : 2 0 1 0 年 0 6 月 24 日 判例の出所:北大法宝司法判例データベース 事件の概要: 徳 彪 薬 品 股 份 有 限 公 司 は 9 5 19 4 4 4 3 6 号 発 明 特 許 権( 以 下 、「 係 争 特 許 権 」と い う ) の権利者であり、原告の賽諾菲社に中国での独占実施権を許諾した。賽諾菲社は、 海 王 社 が 製 造 し た「 艾 克 博 康 」と い う 注 射 液 が 係 争 特 許 権 の 権 利 範 囲 に 入 っ て い る と い う 理 由 で 、海 王 社 と 当 該 注 射 液 の 販 売 者 で あ る 科 院 薬 房 に 対 し て 、訴 訟 を 提 起 し た 。海 王 社 は 、係 争 特 許 権 に 対 し て 、無 効 審 判 を 提 起 し 、且 つ 、本 件 訴 訟 に お い て 、「 艾 克 博 康 」注 射 液 に 使 用 さ れ て い る 技 術 は 公 知 技 術 で あ る の で 、係 争 特 許 権 を侵害することにならないと抗弁した。 一審裁判所は審理を経て、海王社によって使用された技術的ソリューションは、 公 知 技 術 に 比 べ て 進 歩 性 が な く 、か つ 無 効 審 判 を 通 じ て 無 効 に な っ た 発 明 の 構 成 及 び 技 術 常 識 と の 簡 単 な 組 合 せ に 該 当 す る と 認 定 し 、賽 諾 菲 社 の 訴 訟 上 の 請 求 を 棄 却 し た 。判 決 後 、当 事 者 の 何 れ も 上 訴 を 提 起 し な か っ た の で 、一 審 判 決 は 既 に 効 力 を - 569 - LINDA LIU GROUP 生じた。 コメント: 本 来 、特 許 権 の 権 利 範 囲 に 入 っ て い る と 訴 え ら れ た 全 部 の 構 成 要 件 が 、1 件 の 公 知技術の相応する構成要件と同一又は実質的相違がない場合、「公知技術の抗弁」 が 成 立 す る 。本 件 に お い て 、被 疑 侵 害 技 術 は 公 知 技 術 に 該 当 し な い が 、進 歩 性 が な く 、か つ 、特 許 権 の 権 利 範 囲 に 入 る こ と が で き な い と い う 面 か ら み れ ば 、公 知 技 術 と 実 質 的 な 相 違 が な い 。 そ の た め 、 裁 判 所 は 、「 公 知 技 術 の 抗 弁 」 の 規 定 を 類 推 的 に適用して、被告が侵害を構成しないという判決を言い渡した。 判例③ 事件名: ( ア メ リ カ )イ ー ラ イ リ リ ー 公 司 と 江 蘇 豪 森 薬 業 股 份 有 限 公 司 と の 間 の 発 明 特 許 権 侵害紛争事件 当事者: 上訴人(一審原告)イーライリリー公司(以下「イーライリリー社」という) 被上訴人(一審被告)江蘇豪森薬業股份有限公司(以下「豪森社」という) 裁判所名称: 最高裁判所 事 件 番 号 : ( 2 0 09) 民 三 終 字 第 6 号 最 終 審 判 決 日 : 2 0 10 年 1 2 月 0 3 日 判例の出所:北大法宝司法判例データベース 事件の概要: イ ー ラ イ リ リ ー 社 は 、中 国 で「 ゲ ム シ タ ビ ン 及 び ゲ ム シ タ ビ ン 塩 酸 塩 」と い う 抗 癌 剤 に 係 る 3 件 の 発 明 特 許 権 ( 以 下 、「 係 争 特 許 権 」 と い う ) を 取 得 し た 。 イ ー ラ イ リ リ ー 社 は 、豪 森 社 が 係 争 特 許 権 の 製 法 を 利 用 し て 、「 ゲ ム シ タ ビ ン 及 び ゲ ム シ タ ビ ン 塩 酸 塩 」を 製 造 ・ 販 売 し 、自 社 の 係 争 特 許 権 を 侵 害 し た と い う 理 由 で 訴 訟 を 提起した。 本 件 に お い て 、イ ー ラ イ リ リ ー 社 は 、最 初 の 一 審 訴 訟 で 敗 訴 し 、最 高 裁 判 所 に 上 訴 を 提 起 し た が 、最 高 裁 判 所 は 、手 続 き 違 反 と い う 理 由 で 、本 件 を 原 審 裁 判 所 に 差 し戻し、再審理するという裁定を下した。 二 回 目 の 一 審 訴 訟 で 、一 審 裁 判 所 は 、鑑 定 機 関 に 技 術 鑑 定 を 依 頼 し 、ま た 、鑑 定 - 570 - LINDA LIU GROUP 意 見 に 基 づ い て 、豪 森 社 が 提 出 し た 薬 品 に 関 す る 研 究・製 造 方 法 と 係 争 特 許 権 の 請 求 項 に 記 載 さ れ た 方 法 が 同 一 で は な い の で 、豪 森 社 の 関 連 行 為 が 係 争 特 許 権 侵 害 行 為 に 該 当 し な い と 認 定 し 、イ ー ラ イ リ リ ー 社 の 訴 訟 上 の 請 求 を 棄 却 す る と い う 判 決 を言い渡した。 イ ー ラ イ リ リ ー 社 は 当 該 一 審 判 決 を 不 服 と し て 、再 度 、最 高 裁 判 所 に 上 訴 を 提 起 し た 。し か し 、二 審 裁 判 所 は 審 理 を 経 て 、二 回 目 の 一 審 段 階 で 行 わ れ た 技 術 鑑 定 に よ る 鑑 定 意 見 を 採 用 し 、一 審 裁 判 所 の 判 決 を 維 持 し 、イ ー ラ イ リ リ ー 社 の 上 訴 を 棄 却した。 コメント: 本 件 に お い て 、豪 森 社 は 二 審 で 勝 訴 し 、よ う や く 自 社 が 製 造 し た 薬 品 を 販 売 で き た が 、イ ー ラ イ リ リ ー 社 の 差 止 請 求 に よ っ て 、裁 判 所 は 訴 訟 前 の 差 止 命 令 を 下 し た の で 、本 件 の 一 審 及 び 二 審 の 裁 判 の 約 8 年 間 で 、豪 森 社 は 薬 品 を 販 売 で き な か っ た の で 、莫 大 な 損 失 を 被 る こ と に な っ た 。ま た 、イ ー ラ イ リ リ ー 社 は 最 終 的 に 敗 訴 し た が 、市 場 独 占 地 位 を 確 保 す る と い う 面 か ら み れ ば 、そ の 目 的 を あ る 程 度 で 達 成 で きたと言える。 - 571 - 禁 無 断 転 載 平成26年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 医薬品等の特許権の存続期間の延長登録制度 及びその運用の在り方に関する調査研究報告書 平成27年2月 請負先 一般財団法人 知的財産研究所 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3丁目11番地 精興竹橋共同ビル5階 電話 03-5281-5671 FAX 03-5281-5676 URL http://www.iip.or.jp E-mail [email protected]