...

1 2006 年度 JBIC 円借款事業 中間レビュー報告書 評価者

by user

on
Category: Documents
25

views

Report

Comments

Transcript

1 2006 年度 JBIC 円借款事業 中間レビュー報告書 評価者
2006 年度
JBIC 円借款事業
中間レビュー報告書
評価者:黒田 泰久(OPMAC 株式会社)
中間レビュー現地調査時期:2007 年 3 月
案件名:ベトナム「バイチャイ橋建設事業」(L/A No.VNIX-1)
[借款概要]
承諾額/契約同意額/実行額:6,804 百万円/6,508 百万円/6,012 百万円(2007 年 3 月末現在)
借款契約調印
:2001 年 7 月締結(L/A 締結後 5 年目)
完成日
:2006 年 12 月
貸付実行期限
:2008 年 5 月
実施機関
:運輸省
維持管理機関
:Bai Chay Bridge and Ferry Management Company, Government of Quang Ninh Province
中間レビュー選定基準:特別円借款
[事業目的]
首都ハノイから東方約160kmに位置するクアンニン省ハロン市のクアラック海峡に全長903m、幅員25.3m(4車線)のPC斜張橋及びアプローチ道路を建設する
ことにより、国道18号線の輸送の効率化及び物流の円滑化促進を図り、もって地域経済社会の発展に寄与することを目的とする。
コントラクター(10 億円以上のみ記載):清水建設(日)・三井住友建設(日)(JV)
コンサルタント(1 億円以上のみ記載):日本構造橋梁研究所(日)
・パシフィックコンサルタンツインターナショナル(日)
・Hyder Consulting-CDC, Ltd.(英)・
Transport Engineering Design Incorporation(べルギー)(JV)(雇用は L/A No. VNV-6:国道 18 号線改良事業(I)に基づく)
[結果概要]
項目
[妥当性]
(1) 国家政策レベル
事前評価結果(2001 年 1 月)
(1) 国家政策レベル
ベトナム国内における貨物・旅客輸送は道路輸送が大部分を占め(1999 年:貨物
65%、旅客 81%)、道路セクターの重要性は高く、「全国交通開発マスタープラ
ン」(JICA が 2000 年 7 月に行った「ベトナム国運輸交通開発戦略調査」にて策
定)の中でも高い優先度が置かれている。また、公共投資計画(1996~2000 年)に
おいて、運輸セクターに対する投資予定額は全体の 4 分の 1 を占め、その内道路
セクターへの投資が最大となっている。
1
中間レビュー結果及び
中間レビュー時に想定される事後評価内容
(1) 国家政策レベル
国家政策レベルにおいては運輸セクターが引続き重要セクターとして位置
づけられている。2000-2005 年の 5 年間に国家予算の 27%が運輸通信セクタ
ーに投入されたことが確認されている。「社会経済開発 5 ヵ年計画(20062010)」では引続き国家政策の重点項目としてインフラ投資を掲げ、輸送イ
ンフラの整備に注力する方針を明示、道路分野においては全国幹線ネットワ
ークの整備拡充、経済開発重点地域における輸送システムの整備を重点項目
として掲げている。長期開発計画では国家の重要事業を「重要プロジェクト
リスト」として付表に掲げているが、本事業は ODA 対象事業の部に掲載さ
れており、引続き国家の重要事業であることが確認される。
(2) 施策レベル
(2) 施策レベル
ベトナムにおける道路網は広範囲に及んでおり、道路密度も東南アジア諸国と比
べて遜色ないが、不十分な維持管理に起因する老朽化が深刻である。他方で交
通量が幹線道路を中心に急増している。橋梁についても劣悪な状況にあり、老朽
化による重量制限を行っている橋梁が多く、また、主要国道にあってもフェリーに
よる渡河を余儀なくされている地点が多数あり、架橋による整備が緊急の課題とな
っている。
(2) 施策レベル
運輸セクターについては、「社会経済開発 5 ヵ年計画(2006-2010)」を受
けて、運輸省が 2005 年 8 月に「運輸セクター開発 5 ヵ年計画(2006-2010)」
を策定、実施している。同計画において国道 18 号線の整備並びにバイチャ
イ橋の完成が重点事業として明示されている。
地域開発の視点からは、「社会経済開発 5 ヵ年計画(2006-2010)」がクア
ンニン省を含む紅河デルタ地域を開発重点対象として指定、産業及び観光開
発への重点的な取り組み方針を示している。産業面では、国道 18 号、5 号、
1 号、10 号線沿線地域及びバンドン島における産業地域の整備振興を掲げ、
観光面ではハロン、カトバを含む観光地の開発推進を詠っている。
本事業はセクター開発及び地域開発の両面において引き続き高い重要性
を維持していることが確認される。
(3) 計画レベル
(3) 計画レベル
ハノイーハイフォンーハロン(クアンニン省)を結ぶ一帯はベトナム政府によって開
発重点地域として位置づけられており、北東部の幹線道路である国道 18 号線は
この三角地帯の重要な交通幹線となっている。国道 18 号線の中間地点に位置す
るクアラック湾の入り口(クアラック海峡)には橋梁がなく、フェリーによる渡河を行
っているが、近年の交通量増加に伴い、輸送能力は限界に近くなっており、円滑
な物流に支障をきたしている。また、クアラック湾内のカイラン港の拡張事業が進
められており、同港の完成に伴い、同海峡における大型船舶の航行量の増大が
予測されることから、航路の交差による危険を排除することが必要となっている。
ベトナム政府は本事業を道路セクターの最優先事業として位置づけている。
(3) 計画レベル
地域の経済発展に伴い、国道 18 号線の輸送量が増加、クアラック海峡を
渡河するフェリーは毎年増発されてきたが、2006 年には 1 日当たり 719 回の
運行となり、これ以上の増発が困難な状況に達していた。フェリーターミナ
ルにおける交通渋滞が激しく、また物流を担うトラック等についてはフェリ
ーの積載台数が制限されているため、特に待船時間が長く、物流円滑化の障
害となっていた。地域経済の発展にとって本事業の必要性が高いことが確認
される。
クアラック海峡は世界遺産に登録されたハロン湾のバッファーゾーンに
位置することから、クアンニン省政府は産業開発と自然資源保護の双方のバ
ランスを保った開発を基本とする方針をもって臨んでいる。
クアラック海峡では、過密なフェリー運行に起因する海上事故が発生して
おり、航行する船舶の安全性が向上することも本事業による重要な意義とし
て確認される。
本事業は、特別円借款が供与された。特別円借款は、98 年 12 月に創設され
た制度であり、経済危機の影響を受けているアジア諸国経済の早期回復に向
けて、景気刺激効果及び雇用促進効果が高い事業を推進すると共に、民間投
資にとって魅力ある事業環境を整備し、生産性の向上を通じて経済構造改革
を実現することを第一義目的とし、通常案件よりもさらに譲許的な借款を供
与し、当該国を支援するものである。本事業は、ベトナム北部幹線道路であ
る国道 18 号線において交通上のボトルネックとなっているクアラック海峡
(バイチャイ湾入口)に橋梁を建設することにより、現状のフェリーによる交
通を代替し、ベトナム北部の物流効率化に貢献するものであり、本事業によ
り北部地域の投資環境整備に大いに資することが期待され、事業の必要性・
2
緊急性及び成熟度は高く、特別円借款の妥当性が認められる。
[有効性]
(1)運用効果指標等
(1) 運用効果指標
① 定量的効果
1)バイチャイ橋交通量
(1) 運用効果指標
① 定量的効果
1) バイチャイ橋交通量
2000 年実績
(事前評価時)
交通量(台/日)
輸送時間短縮(千円/年)*1
AASHO 基準による費用
便益比率(%)*2
2005 年
目標値
11,195
64,422
16.1
2020 年
目標値
77,079
693,067
173.3
(注)*1 事業実施により輸送時間は 25 分短縮すると想定
*2 AASHO: American Association of State Highway Officials
(出所)JBIC 内部資料
3
交通量(台/日)*1
輸送時間短縮(千円/年)
AASHO 基準による費用便
益比率(%)
2007 年見込(中
間レビュー時)
10,373 *2
*5
*5
2010 年
目標値
14,696 *3
2020 年
目標値
36,485 *4
(注)*1 二輪車、自転車を除く
*2 2007 年 1-3 月 3 ヵ月間の交通量を 4 倍し、結果を一日当りに換算
*3 交通量から逆算した 2007-2010 の年平均増加率は 12.3%
*4 交通量から逆算した 2010-2020 の年平均増加率は 9.5%
*5 実績データなし
(出所)Department of Transport, Quang Ninh Province
中間レビューにおいて、バイチャイ橋では開通直後からフェリーによる車
両輸送実績の 2 倍を超える車両の通行が確認されている。クアンニン省では
2007 年の交通量として、1-3 月間実績の平均値を採用しているが、道路・橋
梁は一般的に開通後当分の間においては、交通情報の流布に伴い通行量が急
速に拡大することから、実際の年間交通量はクアンニン省の予測を凌駕する
ものと想定される。実際に開通後の交通量実績を月別にみると、2007 年 2
月には前月に比べて 5%、3 月には前月対比 11%の増が確認されており、急
速な拡大(月平均 8%)が裏づけられている。
クアンニン省の予測における 2007-2010 年及び 2010-2020 年における通行
量の増加率は、それぞれ年平均 12.3%及び 9.5%と地域経済の伸び率を下回る
保守的な水準を想定している。交通量の多寡は徴収する料金収入、国庫納付
金の規模に影響するため、適正な予測が重要である。ベトナムでは、今後所
得水準の向上とともにモータリゼーションの進展が予測されており、経済の
急成長期における交通量総量は、当該地域経済の成長率と同程度を想定する
ことが一般的とされている。上述のクアンニン省による交通量予測は見直し
の必要があると判断される。
中間レビュー評価者が仮に想定するケース(2007 年 4 月以降、開通後 6
ヵ月間にあたる 2007 年 6 月までの間、交通量が毎月対前月比で 8%増加、さ
らに以後の増加率を、3)項に述べる地域 GDP 成長率(2006-2010)を勘案して
毎年 13%の増加と仮定)について、交通量予測の再検討を試みたが、それに
よると交通量は、2007 年は 13,414 台/日、2010 年には 20,829 台/日、2020 年
には 70,708 台/日に達するとの結論となり、2020 年における予測値は当初計
画と近似する水準に到達するであろうことが確認される。
2)クアラック海峡渡河フェリー運行及び交通量
2002
2003
2004
2005
2006
*1
2007
(予
測)
フェリー運行実績
(回/日)
車両輸送総数
(台/日)
フェリー事故件数
(件/年)
フェリー事故犠牲
者数 (人/年)
464
521
592
648
719
0
2,342
3,070
3,968
4,540
4,870
0
0
0
1
1
2
0
0
0
0
0
3
0
(注)*1 1-11 月の実績
(出所)Department of Transport, Quang Ninh Province
フェリーは 2006 年 12 月 2 日にバイチャイ橋が開通する直前においては 24
時間運行、1 時間平均 30 回運行される過密ダイヤとなり、車両輸送総数は
2002 年の 2 倍を超える規模となっていた。2006 年 12 月バイチャイ橋開通後
も小規模な運行を行っていたが、2007 年 3 月 15 日を以って完全に停止した。
これによりフェリー渡航に伴う事故の問題は完全に解消した。
3)クアンニン省が設定している長期社会経済開発計画
2005(実績)
人口成長率(年平均%)
年平均地域 GDP*1 成長率
(1994 年固定価格)
1,070 千人
6,229 Bill.
VND
2006~2010
年平均伸率
1.00%
13%
2010~2020
年平均伸率
0.95%
14.2%
(注)*1 ベトナムにおいては各省が省内の経済成長率に関する計画策定、
統計、発表を行っている。(Decision No. 305/2005/QD-TTg of Prime Minister
dated Nov. 24, 2005)
(出所)Department of Planning & Investment, Quang Ninh Province, “Master
Plan for Socio-Economic Development of Quang Ninh Province up to 2010 and
orientation to 2020”
クアンニン省はハノイーハイフォンークアンニンの三角地帯の一角を形成、
ベトナムの開発重点地域の一つを占めている。クアンニン省の長期社会経済
4
開発計画では地域 GDP の平均成長率を 2006-2010 年 13%及び 2010-2020 年
14.2%と計画している。これらの高い成長率は、バイチャイ橋の交通量を予
測する際に十分に斟酌されることが必要と認められる。
(2) 有効性及びインパクトに影
響を与える要素の分析
②定性的効果
1) ハノイーハイフォンーハロン(クアンニン省)の北東部経済圏における
物流が効率化する。
2) クアラック海峡における大型船舶の航行に関する安全性が向上する。
②定性的効果
1) 物流の効率化
北東部経済圏における 2000-2005 年の製造業生産額年平均伸び率(1994 年固
定価格)は、ハノイ市 18.3%、ハイフォン市 17.2%、クアンニン省 14.9%と
いずれも高い伸びを示している(全国平均 16.0%)。高い成長率を支えるた
めには物流の効率化が不可欠であるが、円借款によって進められた国道 5 号
線、国道 10 号線、国道 18 号線、国道 1 号線(支援対象は橋梁)、ビン橋、
ハイフォン港、カイラン港等のインフラ整備が大きく貢献していることが認
められ ている(World Bank, “Impact Assessment of Large Scale Transport
Infrastructure in North Vietnam”, 2004)。バイチャイ橋はこれらインフラと密接
な連携を有する位置にあり、これらが一体となって物流の効率化に資するこ
とが認められる。
2) クアラック海峡の航行の安全性
上記①―2)項の通り、フェリー運行は 2007 年 3 月 15 日を以って完全に停止
した。大型船舶とフェリーの航路の交差に関連する海上事故の可能性は完全
に遮断された。
(2) 有効性及びインパクトに影響を与える要素の分析
① 環境配慮
本事業はハロン湾世界遺産指定地域のバッファーゾーンに位置することから、ア
プローチ部分の植林による景観対策等を含めた環境対策事業を実施する。
(2) 有効性及びインパクトに影響を与える要素の分析
① 環境配慮
環境については、事業実施前に環境影響評価(EIA)調査を実施、ユネスコ
のコメントを踏まえて、EIA に基づく環境面の対策が講じられた。実施機関
では、環境モニタリングユニットを設置、EIA の結果に基づいた環境保全策
の実施、工事期間中のモニタリングを実施しており、特段の問題は生じてい
ない。事業によって伐採される植生面積を補償するため、クアラック湾にお
いて伐採された植生と同等以上の面積でマングローブ植栽を実施、併せて、
主橋脚部分において植栽を行っている。アプローチ道路部分の植栽に遅延は
あるが、環境対策については十分な配慮がなされていると認められる。なお、
植栽されたマングローブ林の活着率を今後確認することが望まれる。
加えて、本事業は世界遺産のバッファーゾーンに位置し景観への影響が懸
念されていたことから、建設工事開始前に橋梁のモンタージュ写真を作成し
公表し意見を求めた。
② 用地取得・住民移転
用地取得面積: 60,080 ㎡
住民移転:約 170 世帯
② 用地取得・住民移転
事業によって直接影響を受けた世帯数は 478 世帯、内 162 世帯が住民移転の
対象となった(BC-1~3 全体の数―注)
。住民移転及び用地取得は予定通り
5
住民移転は、ベトナム国内法(Decree22/1998/ND-CP)に従って実施される。JBIC
と実施機関の間で用地取得及び住民移転の完了を入札書類同意の条件とするこ
とが合意されている。
入札前に完了し、特段の問題は見受けられなかったものの、住民の移転後の
生計状況につき、今後確認することが望まれる。移転対象の住民には、既存
居住地より約 1.5km にあるハロン市内 Yet Kieu 区にクアンニン省が開発し
た一戸当り平均 67.5 平方メートルの用地が提供された。
(注)「バイチャイ橋建設事業」は BC-1、BC-2、BC-3 の 3 工区に分割して
実施されている。3 工区のうち、BC-2 が円借款「バイチャイ橋建設事業
(VNIX-1)」の対象であり、他の 2 工区は別途の円借款「国道 18 号線改良
事業(I)(VNV-6)」及び「同(II)(VNVII-6)」によって実施されている。
③社会配慮
1) 現在フェリーを利用している地域住民の渡河を確保する手段としてバスの運
行を予定している。
2) 運行を停止するフェリー会社職員の雇用対策として同会社職員を本事業完
成後の維持管理業務に従事させる。
③ 社会配慮
1) バイチャイ橋の開通に伴い、省政府傘下のバス会社により 2 ルート
(BC-1~Cam Pha 間:時間当たり平均 8 本運行、BC-3~Hoang Bo 間:
時間当たり平均 7 本運行)のバス運行が開始されている。近く第 3 ルー
ト(Ha Long~Uong Bi 間)の運行が追加される予定となっている。
2) 2005 年 2 月フェリー運行会社の名称を Quang Ninh Bridge & Ferry
Management Company と改称した。従業員の雇用対策として、バイチャ
イ橋の運営及び維持管理を請け負うことについて政府の承認を取得し、
従業員 373 名のうち 226 名を運営及び維持管理の要員として配属した。
④ アプローチ道路法面の防護
「国道 18 号線改良事業(I)(II)」の下で実施されているバイチャイ橋のアプ
ローチ道路及び関連アクセス道路については、工事量増加等の要因により、
工期に遅延が発生している。実施機関では、2007 年 4 月以降、環境配慮促進
のための道路法面保護工事を実施している。.2007 年 9 月までに、BC1、BC3 共に
おいて同工事を終える予定。
⑤ ローントーン交差点
ホンガイ側アプローチ橋終了部分(BC-1 に設置された料金所通過後ノンス
トップで走行した区間の終わり)に省道 336、337 号線との交差点(ローン
トーン交差点)があり、信号が設置されている。下り坂であり、走行車両が
加速し易く、事故につながるリスクが指摘される。信号の管理、舗装の工夫
等適切な対策が望まれる。
⑥ クアオン以東モンカイ(中国国境)までの道路整備
国道 18 号線改良事業はホンガイから東方 38km のクアオンで止まっている。
地域の経済発展にはクアオン以東モンカイ(中国国境)まで約 130km の道路
整備が重要である。クアオン以東の道路が整備されることによりバイチャイ
橋の有効性が一段と高まるところとなる。また、モンカイにおける事業家の
6
多くがハイフォン出身者であるといわれ、従来移動にはフェリーが多く利用
されている。今後道路へのシフトが想定され、モンカイにおける経済発展に
もバイチャイ橋が有効に機能することが想定される。
⑦ バンドン島地区開発
バンドン島は、豊かな自然環境を残したクアンニン省東部 Van Don 島にあり、
開発指定地域となっている。省政府が産業及び観光両面における開発計画を
進めており、同地区の開発はバイチャイ橋の有効性を高めることにつながる
こととなる。
⑧ 工業団地/地域の振興
クアンニン省内には、Cai Lan、Cam Pha、Viet Hung、Hai Yen、Dong Mai、
Chao Khe、Mong Cai、Kim Sen、Ohuong Nam、Tien Yen、Ninh Duoung、Uong
Bi 等に工業団地/地域があり、省政府が振興に力を入れている。これら工業
団地/地域が振興されるに伴い、バイチャイ橋の有効性がさらに高まることと
なる。
⑨ ハロン湾の観光開発
ハロン湾の観光は現在湾西側のカトバ島方面に向かっている。世界遺産に指
定されている奇岩群は湾西部のみならず、湾東部にも広がっている。湾東部
はこれまでの観光開発対象には含まれていないが、今後、湾東部における観
光開発が実施される場合には、バイチャイ橋は東西を結ぶ連絡路として大き
な役割を担うこととなり、その有効性を高めることが想定される。
(3) 持続性に影響を与える事
項
(3) 持続性に影響を与える事項
① 維持管理体制
完 成 後 の 運 営 、 維 持 、 管 理 に つ い て は 運 輸 省 道 路 管 理 局 (Vietnam Road
Administration)が実施する。同局には対象地域ごとに地方道路管理ユニット
(Regional Road Administration Unit)が設置されており、本事業については北部地
域を管轄する第 2 地方道路管理ユニットが担当する予定である。
7
(3) 持続性に影響を与える事項
① 維持管理体制
維持管理体制は運輸省道路管理局が所管する。運輸省はクアンニン省政府の
要請に基き、従来のフェリー運行会社を改組した Quang Ninh Bridge & Ferry
Management Company に対し維持管理の業務を委任している(運輸省 2006 年
11 月 28 日付 Decision No.2366/QD-SGTVT)。今後 2 年間は契約により、本事
業のコントラクターが運営・管理を指導することとなっている。維持管理に
必要な予算は同会社がクアンニン省政府を通じて中央政府に要求(運輸省道
路管理局、運輸省本省経由)、財務省が政府予算からクアンニン省に対する
配分を行う。維持管理予算は政府の定める基準に従い、道路・橋梁の規格及
び距離に応じて一定の金額が配分されることとなっている。維持管理のため
に十分な予算が確保されることが重要である。橋梁の通行料金は政府が全国
の橋梁について対象となる橋梁の規格を基準する料金体系を定めている(財
政省 2004 年 9 月 7 日付通達 No.90/2004/TT-BTC)。徴収した料金の一部分
(20%)を維持管理事務経費及び維持管理技術革新のための資金として、留保
することが認められているが、資金の大部分は国庫に収納される。
[効率性]
(1) アウトプット
(1) アウトプット
クアラック海峡に主橋梁(アプローチ橋 1 橋を含む)を架橋、国道 18 号線から同橋
へのアプローチ道路(アクセス道路、アプローチ橋 8 橋を含む)を建設する。但し、
本事業「バイチャイ橋建設事業」(VNIX-1)が借款対象とするのは主橋梁部分の
みであり、アプローチ道路部分及びコンサルティング・サービスは本中間レビュー
対象外の円借款「国道 18 号線改良事業(I)(II)」(VNV-6、VNVII-6)によってカバ
ーされる。
主橋梁部分(本事業にて対応)
規格項目
規格
主橋梁
全長
903 m
車線
4 車線(片側 2 車線)
総幅員
25.3 m
航行限界高
50 m
形式
PC 斜張橋
アプローチ橋
全長
99 m
車線
4 車線(片側 2 車線)
総幅員
23 m
形式
PC 箱桁橋
(1) アウトプット
主橋梁部分(アプローチ橋 1 橋を含む)は当初の計画通りの規格、形式によ
って構築された。アプローチ道路部分についてはバイチャイ側の橋梁数が 4
に変更となった以外は全て当初計画通りの規格、形式によって実施された。
アプローチ道路部分(VNV-6、VNVII-6 にて対応)
全長
車線
総幅員
(2) 期間
規格項目
バイチャイ側
ホンガイ側
規格
3,292 m (5 橋含む)
4,594 m (3 橋含む)
4 車線(片側 2 車線)。
但し、アクセス道路は 2 車線(片側 1 車線)
29 m (但し、アクセス道路は 9 m)
(2) 期間
2001 年 7 月―2006 年 10 月 (63 ヵ月)
(2) 期間
2001 年 7 月―2006 年 12 月 (65 ヵ月) (完成済)
遅延は本事業(主橋梁部分)によるものでなく、本中間レビュー対象外のア
プローチ道路部分の遅延による。
8
[特別円借款満足度調査]
(1) 導入の目的
財政省が導入の理由として、低金利、長期の返済期間、高度技術を上げてい
ベトナム経済は、アジア経済危機の影響を受けて、ここ数年 8~9%を維持 るのに対し、実施機関では、品質の高さ、迅速な事業実施、高度技術が目的
してきた高成長にも減速傾向が現れ、99 年の経済成長率は 4.8%となった。 であったとしている。
ベトナム経済の潜在能力は高いと見られているが、経済基盤がその他の (2) 競争と調達
ASEAN 諸国に比べて脆弱であり、早急な整備が必要であること、経済開発 P/Q 参加は 5 社、全て合格、入札参加はそのうち 4 社。下請けの資格要件と
の停滞はドイモイ政策の批判派の発言力を強め、同政策を後退させる懼れが 調達適格国に関するコメントとして、実施機関では「特別円借款の規制によ
ある等の事情を鑑み、わが国として引き続き対越支援を行っていくことが極 り事業の実施上しばしば困難を経験した。具体的には、第一次下請けに関す
る制約のため、能力の高い第 3 国の業者を第一次下請けに起用することがで
めて重要。
きず能力の劣るベトナムの業者を起用することとなった。調達適格国の規制
により、より広い範囲の競争調達を行うことができず、コスト削減の機会が
① 成熟度
得られなかった」としている。コンサルタントからのコメントでは、
「『本邦
F/S、EIA が承認済みであり、D/D が作成されていること。
調達』の定義が明確に規定されておらず、調達する資機材について個別の検
② 景気刺激効果・民間投資にとって魅力ある事業環境の整備
本事業は、国道 18 号線の交通上のボトルネックを解消するとともに、 討判定作業を要求されたが、判断に迷い JBIC に判断を仰ぐケースが多数あ
カイラン港を利用する大型船舶の安全通航をもたらすことで、陸運及 った。制度の運用に関する規則を確立し、周知徹底されることが望ましい。」
び海運双方の改善にとって極めて効果的。特に国道 18 号線の沿線地域 また、コントラクターでは経験した困難について以下のような具体例を挙げ
は、従来から石炭、鉄鋼関連産業が盛んであり、セメント鉄鋼、製粉 て説明している。「現在コントラクターの調達はグローバル化しており、調
等の向上が建設されていること、まだ、同地域はベトナムの主要な米 達される製品についても多国間に広がる分業された工程から生産される製
生産地域であるとともに、ハロン湾を中心とした観光開発計画を有し 品が多数あり、原産国の特定が困難になっている。」
ていることから、本件ベトナム北部全体の産業開発に大いに資する。
(3) 第一次下請けの質
③ わが国のノウハウ・技術力の反映及びわが国よりの調達
本事業は、ベトナム国内では前例のない一面吊 PC 斜張橋を建設するも 特別円借款制度では、第一次下請けは 2 国間タイドとなっている。構造物に
のであり、施工にあたっては高度な技術を要し、既に実績のあるわが 係る第一次下請けは 5 社、橋梁基礎部分を除きベトナム企業。ベトナムの一
国のノウハウ・技術を十分活かせる事業である。また、主橋梁の建設 流企業の中から選抜されているが、実施機関、コントラクター及びコンサル
に必要な資機材・サービスのわが国よりの調達は全体で借款総額の 5 タントの 3 者が異口同音のコメントとして、総じて実施能力が低く、相当な
割を超える予定であり、日本企業が本事業に対して貢献する割合は極 指導、管理が必要とされたことを指摘、このためコントラクターでは現場管
めて高い。
理のために多数の日本人技術者を動員(ピーク時 15 名程度=工事事務所人
員の 1/4 程度)、対応したことを述べている。コントラクター及びコンサルタ
ント双方のコメントとして、ベトナムの第一次下請け企業は一般に資金繰り
がタイトであり、事業への作業員動員に苦労したことが確認されている。
(4) 事業費
・事業費は一面吊りを採用したことにより、基礎工事、資材の投入及び工事
量を少なく抑えることに成功、ビン橋、カントー橋等の二面吊りに比べ低コ
ストで実施している。一面吊りは二面吊りに比べ高い技術を要求されること
から、事業が特別円借款に適した内容であったと理解される。
・実施機関によると、コントラクターの契約額は政府承認予算対比 93%と予
算内であった。実施機関ではこの比率をベトナムで通常見られる程度である
としている。
(5) 技術・品質
本事業供与時の特別円借款の意義は以下の通り。
9
スパン 435mの斜張橋はベトナムでは最長である。一面吊り斜張橋としては
世界で最大の橋が完成した。建設には高度技術が適用された。基礎部分に採
用した深層ニューマティックケーソン工法はベトナムでは最初の事例であ
る。ハロン湾におけるプロジェクトについてはユネスコ等ステークホルダー
が多く、これらへの対処を図った結果、景観に与える影響を軽減するための
工法としての一面吊り、潮流に与える影響を回避する方策としての主橋脚の
陸上設置といった工法が採用され、技術面において難易度の高い工法を選択
することにつながった。
(6) 実施機関によるコントラクターの評価
実施機関では、コントラクターのパフォーマンスに関して、1) 工程に対す
る対応、2) 工事実施の質的水準、3) プロジェクト管理、4) 成果物の品質、
5) 技術移転、の 5 項目全てについて 5 段階評価の最上位である「十分に満
足」できる水準であったとの評価している。特別円借款によって実施された
本事業に対する評価は高いものとなっている。
[教訓及び提言]
【教訓】
・本事業はほぼ予定工期通りに工事を完了したが、大きな要因としてクアンニン省政府による用地取得がスケジュール通り順調に実施されたことが挙げら
れている。事業の実施に先立って工事工程に支障をきたさないよう用地取得の計画と実施をすることの重要性が改めて確認される。
・フェリー運行に従事していた従業員の雇用対策として、フェリー運営会社を橋梁維持管理会社に改組し、従業員の6割を本事業の維持管理のために配置
転換している。雇用対策として有効であり、類似案件にとって有効な先例となる。
・本事業は技術的には高度のレベルが要求される一面吊り工法を採用することにより、基礎工事、資機材投入等を節減し、二面吊り工法に比べて安いコス
トで実施された。適切な工法選択が行われた良い事例として参考に値する。
【提言】
・アプローチ道路及びアクセス道路の法面の防護工事が遅延しており、雨季等における土砂流出が懸念される。工事の完成を急ぎ、土砂流出に対する対策
を講じることを提言する。
・ホンガイ側アプローチ道路終了部分におけるローントーン交差点はアプローチ道路下り坂の終焉部分にあり、交通事故につながるリスクが指摘される。
信号の管理、舗装の工夫等事故を予防するための適切な方策の実施が望まれる。
・現在の国道18号線改良事業はホンガイから東方38kmのクアオンで止まっている。地域の経済発展にはクアオン以東モンカイ(中国国境)までの道路整
備が重要である。クアオン以東の道路が整備されることによりバイチャイ橋の有効性が一段と高められることとなる。本事業の目的を一層高めるための
具体策としてクアオン以東の国道18号線の整備を進めることを提言する。
・事業の効果をモニター、評価する上で、運用効果指標として合意されている内容のうち効果指標について目的と現地の実情を勘案、次項で述べるような
内容で再検討することを提言する。
[事後評価時用設定指標]
事前評価において以下の運用効果指標についてモニターすることが合意さ
れている。
指標
単位
摘要
運用指標
年間平均交通量
台/日
一定地点・一定期間におけ
る車両通行量
10
(1) モニタリングの状況
指標のモニタリングは運輸省道路管理局(Vietnam Road Administration)の指示
に基づいて維持管理を行う Quang Ninh Bridge and Ferry Management Company
が実施することとなっている。同会社では現在道路管理局の指示に従い、毎月交
通量の計測を実施している。運用指標(交通量)の計測結果は毎月単位で道路管
効果指標
走行経費節減
千円/年
走行時間節減
千円/年
交通事故削減
千円/年
AASHO 基準によ
る費用便益比率
通行人の快適性
向上
貨物損傷軽減・梱
包費節減
%
千円/年
千円/年
事業によって実現される車
両走行経費の節減
事業によって実現される車
両走行時間の節減
事業によって実現される交
通事故の節減
費用対便益の比率
事業によって実現される運
転手・旅客の快適性の向上
事業によって実現される貨
物損傷の軽減・梱包費用の
節減
(出所) JBIC 内部資料
11
理局に報告されているが、「効果指標」に掲げられている指標については道路管
理局から明確な指示が行われておらず、そのため、中間レビューにおいて、有効
性に係る指標の中で計測が行われていない、あるいは計測が困難と認められるも
のがあった。
(2) モニタリング実施における課題
「効果指標」に掲げられている指標は継続的な計測を行うには、1)実務的な
困難を伴うもの、2)本事業の効果を評価する上で有効性が定かでないもの、
等が認められる。効果指標について、事業効果を評価するために適切な指標
を整備することを提案する。具体的には、効果指標として掲げられている 6
項目から、AASHO 基準による費用便益比率、通行人の快適性向上、貨物損
傷・梱包費節減を削除し、残る項目の内、走行経費節減、走行時間節減の両
項目について計測単位を、走行経費節減は VND/台及び Billion VND/年(通
行量による加重累計額)、走行時間は分/台及び時間/年(通行量による加重累
計時間)に変更することが適当と判断する。但し、走行経費及び走行時間に
ついてはベースラインのデータが確立していないため、F/S 時のデータを基
礎として、その後の状況の変化を勘案し、事業実施によってもたらされる効
果を評価することが求められる。また、ベトナムにおいては近年交通事故の
増加が大きなイッシューとなっていることから、交通事故の状況をモニター
し、将来にわたる対策の実施に結びつけることが重要である。
Fly UP