...

請求項1 - 秋田県総合食品研究センター

by user

on
Category: Documents
11

views

Report

Comments

Transcript

請求項1 - 秋田県総合食品研究センター
JP 3874178 B2 2007.1.31
(57)【 特 許 請 求 の 範 囲 】
【請求項1】
乾燥マイタケを製造するにあたり、水分含量を50%(w/w)未満に調整したマイタ
ケを、耐熱性の袋あるいは容器に入れ、マイクロ波、蒸気又は高温の熱水により80℃以
上125℃未満の温度で加熱処理し、次いで乾燥することを特徴とする、蛋白質分解酵素
活性が10分の1以下に低減され、水分含量が10%(w/w)以下に乾燥されたマイタ
ケの製造法。
【請求項2】
請求項1記載の製造法で得られた乾燥マイタケ。
【請求項3】
10
請求項1記載の製造法で得られた乾燥マイタケを含有する蛋白質含有食品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛋白質分解酵素活性が低減された乾燥マイタケの製造法並びにその用途に関
する。
【0002】
【従来の技術】
マイタケはサルノコシカケ科に属する茸の1種であり、近年人工栽培法の確立により年間
を通じて広く食材として利用されている。また、マイタケに含有される生理活性物質に注
20
(2)
JP 3874178 B2 2007.1.31
目して、健康食品としての利用も盛んである。
食材としてのマイタケは、通常の料理法、即ち煮る,炊く,炒める及び蒸す等の方法で料
理され、単独あるいは他の食材と混ぜて食される。また、錠剤,茶,水抽出エキスあるい
はドリンク剤等の健康食品としての利用もされている。
しかしながら、マイタケは強力な蛋白質分解酵素を含有するため、蛋白質を含有し、かつ
その高分子構造が関与するレオロジー的性質を利用している食品への利用には障害がある
。例えば、小麦の植物性蛋白質を利用しているパン,ケーキ及び麺類や、大豆の植物性蛋
白質を利用している納豆及び豆腐では、生マイタケあるいは乾燥マイタケを素材として混
ぜると、蛋白質が急速に分解し、低分子化されるため、生地の粘性,粘弾性あるいは破断
特性が著しく変わり、例えばパン生地の場合は成形が、麺類の場合は製麺が、著しく困難
10
になる。
【0003】
また、乳蛋白質,卵蛋白質及びその他の動物性蛋白質を利用しているチーズ,ヨーグルト
,かまぼこ,ちくわ,ハンバーグ,ソーセージ及び茶碗蒸しでも、蛋白質分解酵素活性の
高いマイタケの混合により各蛋白質が分解されるため、生地の硬さ,凝集性(もろさ,そ
しゃく性),粘性,弾力性あるいは付着性等の機械的特性が変化し、例えばプレーンヨー
グルトの場合は流動化し、かまぼこの場合は歯応えが悪くなり、茶碗蒸しの場合は液状に
なってしまう。
【0004】
以上の問題を解決するため、例えばマイタケを水の存在下で90℃以上で加熱処理するこ
20
とでマイタケに含有される蛋白質分解酵素活性を低減し、パンや菓子類に利用する方法(
特許第2986422号)が提案されているが、同法ではマイタケの水分が比較的多い条
件で加熱処理するために組織が変質し、乾燥すると角質化し易くなり、蛋白質分解酵素活
性を低減したマイタケの乾燥品の製造は困難である。また、この方法ではマイタケを利用
するに際し、使用に先立ち、その都度加熱して酵素失活処理を行わなければならず、使用
法として簡便であるとは言い難い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
蛋白質含有食品へのマイタケの利用の障害となる蛋白質分解酵素活性を低減させた乾燥マ
イタケの製法としては、前記特許第2986422号に示されるように、多量の水分存在
30
下でマイタケの蛋白質分解酵素活性を失活させた後、乾燥する方法が考えられる。
しかし、この方法で調製した乾燥マイタケは角質化し、食感を悪化させる。また、熱水可
溶成分や風味が失われる等の問題がある。さらに、マイタケを蛋白質含有食品へ利用する
に際し、利用の都度加熱処理により蛋白質分解酵素活性を低減させる必要があり、煩雑で
ある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケを得る方法について研究し
た結果、マイタケの水分含量を50%(w/w)未満として、耐熱性の袋あるいは容器に
入れて加熱処理し、次いで乾燥することにより、蛋白質分解酵素活性が10分の1以下に
40
なり、乾燥しても角質化しないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、請求項1記載の本発明は、乾燥マイタケを製造するにあたり、水分含量を50%
(w/w)未満に調整したマイタケを、耐熱性の袋あるいは容器に入れ、マイクロ波、蒸
気又は高温の熱水により80℃以上125℃未満の温度で加熱処理し、次いで乾燥するこ
とを特徴とする、蛋白質分解酵素活性が10分の1以下に低減され、水分含量が10%(
w/w)以下に乾燥されたマイタケの製造法である。
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の製造法で得られた乾燥マイタケである。
請求項3記載の本発明は、請求項1記載の製造法で得られた乾燥マイタケを含有する蛋
白質含有食品である。
50
(3)
JP 3874178 B2 2007.1.31
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明においてマイタケとは、天然物,露地栽培物あるいは施設栽培物等を意味するが、
これらの中では品質が安定し、大量に入手可能な施設栽培物が好ましい。これらのマイタ
ケは、生で、あるいは乾燥して用いても良く、形態もそのまま、あるいは割裂,粗砕,粉
砕等の前処理をして用いても差し支えない。
【0009】
請求項1に記載した、蛋白質分解酵素活性が10分の1以下に低減され、水分含量が10
%(w/w)以下に乾燥されたマイタケを得るために、本発明では加熱処理前にマイタケ
の水分調整をするが、これは水分含量を50%(w/w)未満に調整することを意味し、
10
具体的には生マイタケを凍結,減圧あるいは常圧のいずれかの方法で乾燥する。これらの
方法のうち、減圧法は、温度30℃以上100℃未満、好ましくは50℃以上70℃未満
で乾燥するのが好ましい。
乾燥温度が高すぎると、マイタケ組織の角質化が起こり、またそれに含有されているビタ
ミン類の劣化も起こり、食品素材の調製法としては好ましくない。一方、温度が低すぎる
と、乾燥に長時間を要し、自己消化や雑菌が繁殖する場合もあるので好ましくない。
常圧法の場合は、温風循環,対流あるいは輻射式で温度40℃以上130℃未満、好まし
くは50℃以上70℃未満で2∼16時間乾燥するのが好ましい。なお、減圧法同様、温
度が高すぎても、低すぎても食品素材として好ましくないものになる。
【0010】
20
水分調整したマイタケを加熱処理することにより、マイタケに含まれる強力な耐熱性の酸
性及び中性蛋白質分解酵素の活性を10分の1以下、好ましくは100分の1未満に低減
することにより、当該マイタケを蛋白質含有食品に混ぜても同酵素による蛋白質の分解は
極めて僅かで、レオロジー的特性の良好な食品の製造が可能になる。
酵素活性の低減は、マイタケの品温を80℃以上125℃未満に加熱できれば、如何なる
方法も利用できる。例えばマイクロ波,蒸気あるいは高温の熱水で加熱処理する方法が適
用できる。マイクロ波の場合は、1分以上10分以内の加熱で十分であり、高温の熱水あ
るいは蒸気の場合は、マイタケ中のβ―グルカンやビタミン類が流失する恐れがあるので
、マイタケが直接熱源に触れない様に耐熱性の袋あるいは容器に入れるべきである。加熱
処理条件は、高温の熱水の場合は、80℃以上120℃未満で、蒸気の場合は100℃以
30
上125℃未満で、15分以上2時間以内の加熱で十分である。
【0011】
上記加熱により蛋白質分解酵素活性を低減させたマイタケを、温風等の通常の方法で乾
燥することにより、角質化が生じないのはもとより、水溶性成分も失われずマイタケが本
来有する風味を持った乾燥マイタケが得られる。すなわち、水分含量を50%(w/w)
未満に調整した後、耐熱性の袋あるいは容器に入れて加熱処理したマイタケを、水分含量
が10%(w/w)以下となるように乾燥する。
蛋白質含有食品への使用に当たっては、乾燥マイタケは、何ら前処理することなくその
まま、あるいは粗砕もしくは粉砕して使用するのが好ましい。
このようにして調製した蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケは水分含量が低い
40
ために長期間の保存が可能であるので、インスタント食品や保存食品への利用も可能であ
る。この乾燥マイタケを食品等に添加することにより、その食品にマイタケ本来の風味を
付与することができる。
【0012】
以上のようにして調製した蛋白質分解酵素活性を低減したマイタケは、小麦,大豆,米等
の植物性蛋白質を素材としているパン,ケーキ,麺類,納豆及び豆腐並びに獣肉,魚肉,
卵,牛乳等の動物性蛋白質を素材としているチーズ,ヨーグルト,かまぼこ,ちくわ,ハ
ンバーグ,ソーセージ及び茶碗蒸しなどやその他の蛋白質含有食品、さらには飲料等に添
加することにより、これら食品の流動性,粘弾性あるいはテクスチャー等のレオロジー物
性をほとんど変えることなく、マイタケの風味と成分を含有する食品の製造を可能にする
50
(4)
JP 3874178 B2 2007.1.31
。
【0013】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって制限されるものでは
ない。
試験例1
加熱処理前のマイタケの水分含有量が加熱処理後のマイタケの乾燥状態に与える影響につ
いて試験した。始めに、マイタケの水分を50℃の温風循環槽で、表1に示すように、1
0∼90%(w/w)の水分含量に調整した後、ステンレス製の容器に入れ、オートクレ
ーブにより121℃,15分間加熱処理して、さらに50℃の温風循環槽に入れ16時間
10
乾燥し、水分含量を5%(w/w)まで低減した。
そのときの乾燥マイタケの仕上り具合を表1に示した。表から明らかなように、水分含量
が50%(w/w)以上になると、加熱処理時にマイタケからエキスの流出が見られるよ
うになる。また、乾燥により角質化するマイタケが確認された。水分含量が更に増えるに
つれて、エキスの流出及び角質化は著しくなった。
しかし、水分含量50%(w/w)未満では、このような現象は見られなかった。このこ
とから、加熱処理時のマイタケからのエキスの流出や乾燥による角質化を防ぎ、良質な乾
燥マイタケを得るには、水分含量を50%(w/w)未満にすることが必要であること分
かった。
【0014】
20
【表1】
表1 加熱処理前のマイタケの水分含量の影響
30
40
*未処理の生マイタケ
50
(5)
JP 3874178 B2 2007.1.31
【0015】
試験例2
加熱処理後のマイタケの水分含有量がマイタケの保存性に与える影響について試験した。
始めに、マイタケを50℃の温風循環槽に入れて8時間乾燥し、水分含量を30%(w/
w)まで低減した。
次に、これをステンレス製の容器に入れ、オートクレーブにより121℃,15分間加熱
処理し、マイタケの水分を50℃の温風循環槽で表2に示すように、2∼50%(w/w
)の水分含量に調整した。
このようにして得た乾燥マイタケを20℃で30日間放置後に、当該マイタケの保存状態
を観察した。その結果を表2に示した。
10
【0016】
【表2】
表2 加熱処理後のマイタケの水分含量の影響
20
30
【0017】
実施例1
生マイタケ1kgを小片に裂いた後、50℃の温風循環槽に入れて6時間乾燥し、水分含
量を45%(w/w)まで低減した。次いで、同乾燥品をステンレス製の容器に入れ、オ
ートクレーブにより121℃,15分間加熱処理し、さらに50℃の温風循環槽に入れて
16時間乾燥し、水分含量を5%(w/w)まで低減してタンパク質分解酵素活性を低減
した乾燥マイタケを得た。
この乾燥マイタケに角質化は認められず、未処理の乾燥マイタケと遜色無い仕上がりであ
った。乾燥マイタケを室温まで冷却した後に、小型ブレンダーで粉砕し、20mMのリン
酸緩衝液(pH6.5)で抽出し、蛋白質分解酵素活性をカゼイン−フォーリン法で測定
した。その結果、表3に示したように、中性及び酸性蛋白質分解酵素活性がいずれも加熱
処理前の10%未満となった。
【0018】
【表3】
表3 水分調整したマイタケのオートクレーブ処理結果
40
(6)
JP 3874178 B2 2007.1.31
* 1 分 間 に 1 μ g の チ ロ シ ン を 遊 離 さ せ る 酵 素 活 性 を 1 Unitと し 、 試 料 絶 乾 1 g 当 た り の
値を酵素活性値とした。
10
【0019】
実施例2
生マイタケ1kgを小片に裂いた後、50℃の温風循環槽に入れて8時間乾燥し、水分含
量を30%(w/w)まで低減した。次いで、同乾燥品をポリプロピレン製の袋に入れ、
出力500Wのマイクロ波を2分間照射した後、50℃の温風循環槽に入れ16時間乾燥
し、水分含量を5%(w/w)まで低減してタンパク質分解酵素活性を低減した乾燥マイ
タケを得た。
この乾燥マイタケに角質化は認められず、未処理の乾燥マイタケと遜色無い仕上がりであ
った。以下、実施例1と同様にして酸性及び中性蛋白質分解酵素活性を測定した結果、表
4に示したように、いずれの蛋白質分解酵素活性も10%未満であった。
20
【0020】
【表4】
表4 水分調整したマイタケのマイクロ波処理結果
30
* 1 分 間 に 1 μ g の チ ロ シ ン を 遊 離 さ せ る 酵 素 活 性 を 1 Unitと し 、 試 料 絶 乾 1 g 当 た り の
値を酵素活性値とした。
【0021】
実施例3
生マイタケ1kgを小片に裂いた後、50℃の温風循環槽に入れて12時間乾燥し、水分
含量を30%(w/w)まで低減した。次いで、同乾燥品をポリプロピレン製の袋に入れ
、100℃で1時間煮沸した後、50℃の温風循環槽に入れ12時間乾燥し、水分含量を
10%(w/w)まで低減してタンパク質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケを得た。
この乾燥マイタケに角質化は認められず、未処理の乾燥マイタケと遜色無い仕上がりであ
った。以下、実施例1と同様にして酸性及び中性蛋白質分解酵素活性を測定した結果、表
5に示したように、いずれの蛋白質分解酵素活性も10%未満であった。
【0022】
【表5】
表5 水分調整したマイタケの熱水処理結果
40
(7)
JP 3874178 B2 2007.1.31
* 1 分 間 に 1 μ g の チ ロ シ ン を 遊 離 さ せ る 酵 素 活 性 を 1 Unitと し 、 試 料 絶 乾 1 g 当 た り の
値を酵素活性値とした。
10
【0023】
比較例1
生マイタケ1kg(水分含量90%(w/w))を小片に裂いた後、ポリプロピレン製の
袋に入れ、100℃で15分間煮沸した後、50℃の温風循環槽に入れ16時間乾燥し、
水分含量を5%(w/w)まで低減した。以下、実施例1と同様にして酸性及び中性蛋白
質分解酵素活性を測定した。その結果、表6に示したように、いずれの蛋白質分解酵素活
性も10%未満であった。
このマイタケは乾燥すると角質化し、風味が損なわれた。よって、この例のようなマイタ
ケの水分含量が多い条件下での加熱処理では、蛋白質分解酵素活性が低減され、かつ角質
化のない品質的に優れた乾燥マイタケを調製することは不可能である。
20
【0024】
【表6】
表6 生マイタケの熱水加熱処理結果
30
* 1 分 間 に 1 μ g の チ ロ シ ン を 遊 離 さ せ る 酵 素 活 性 を 1 Unitと し 、 試 料 1 g 当 た り の 値 を
酵素活性値とした。
【0025】
実施例4
実施例1と同様に処理して得た蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケ又は蛋白質分
解酵素活性を有する未処理の乾燥マイタケを配合したパンを以下に示す方法で調製し、両
者を比較した。なお、比較のために、比較例1と同様にして調製した乾燥マイタケを配合
したパン及びマイタケを配合しないパンも調製し、比較した。乾燥マイタケは、ミキサー
で40メッシュ以下に粉砕したものを使用した。
40
【0026】
表7に示す原料配合で、酵母,ショ糖及び食塩を予め使用する水の一部に溶解し、ミキサ
ーボールの中の小麦粉,ビタミンC及び乾燥マイタケに加え、さらに残りの水を加えた。
製パン用ミキサーで低速2分間、中速2分間、高速1分間ミキシングを行い、ショートニ
ングを添加してさらに低速2分間、中速2分間、高速2分間ミキシングを行い、パン生地
を得た。なお、生地の捏ね上げ温度は28℃とした。捏ね上げ後、パン生地を適当な容器
に移して30℃で50分間1次発酵を行い、ガス抜き後、さらに30℃で30分間2次発
酵を行った。
発酵終了後、パン生地を450gに分割し、丸めを行ってから30℃で15分間ねかせた
。その後、パン生地をシーターで平たく伸ばし、モルダー仕上げを行いワンローフ型に成
50
(8)
JP 3874178 B2 2007.1.31
形してから、合わせ目を下にしてパンケース内に入れ、38℃、RH85%のホイロ内で
パン生地が型上1.5cmになるまでホイロ発酵を行った。ホイロ発酵終了後、200℃
のオーブンで25分間焼成した。
【0027】
【表7】
表7 製パン生地の原料配合組成
10
20
【0028】
各々のパンについて品質を比較したところ、蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケ
(処理マイタケ)を配合した場合は、マイタケを配合しない(マイタケ未配合)場合と同
30
等な仕上がりで、マイタケの風味と味に深みを有するパンであった。
これに対して、未処理の乾燥マイタケ(未処理マイタケ)を配合した場合は、ミキシング
時に生地が軟化して成形不能になり、以後の操作ができなかった。一方、比較例1と同様
にして調製した乾燥マイタケ(比較例1マイタケ)を配合した場合は、食感としては角質
化に由来するボソボソ感があり、マイタケ由来の風味も認められなかった。
【0029】
実施例5
蛋白質分解酵素活性の低減の効果を調べるために、実施例4と同様にして調製したミキシ
ング直後のパン生地を20mM リン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、2%メルカプト
エタノールを含有した2%SDS,20%ショ糖,2mM EDTA,0.05%BPB
40
及び10mM Tris(pH6.8)溶液を加えて攪拌し、105℃で10分間加熱処
理して蛋白質を抽出した。この蛋白質をポリアクリルアミドゲルにチャージし20mAで
泳動した。得られた結果を図1に示す。
図から明らかなように、蛋白質分解酵素活性を有する未処理のマイタケを配合したパン生
地の場合、蛋白質分解酵素の作用のために高分子側が著しく減少しているのに対し、蛋白
質分解酵素活性を低減したマイタケを配合したパン生地の場合は、マイタケ未配合のもの
と同様に高分子蛋白質が残っており、蛋白質分解酵素活性が低減されていることが確認さ
れた。
【0030】
実施例6
50
(9)
JP 3874178 B2 2007.1.31
実施例2と同様にして処理した蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケ又は蛋白質分
解酵素活性を有する未処理の乾燥マイタケを配合したうどんを以下に示した方法で調製し
、両者を比較した。なお、比較のために、比較例1と同様にして調製した乾燥マイタケを
配合したうどん及びマイタケを配合しないうどんも調製した。なお、ここで用いた乾燥マ
イタケは、ミキサーで40メッシュ以下に粉砕したものである。
【0031】
表8に示す原料配合で、原料を捏ね、団子状にしてから手で紐状に伸ばし、室温で8時間
熟成後、棒に掛け延ばし、室温で12時間熟成させながらさらに延ばした。その後、自然
乾燥してから切断し、うどんを得た。このうどんを大量の沸騰水中で3分間茹で、氷冷し
て試食した。
10
【0032】
【表8】
表8 うどんの原料配合組成
20
30
【0033】
各々のうどんについて品質を比較したところ、蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタ
ケ(処理マイタケ)を配合した場合、マイタケを配合しない(マイタケ未配合)場合と同
等のなめらかな食感で腰があり、かつ味に深みのある麺であった。
これに対して、未処理の乾燥マイタケ(未処理マイタケ)を配合した場合は、8時間の熟
成中に原料が軟化して成形不能になり、以後の操作ができなかった。一方、比較例1と同
様にして調製した乾燥マイタケ(比較例1マイタケ)を配合した場合は、食感としては角
質化に由来するざらつき感があり、マイタケ由来の風味も認められなかった。ただし、酵
素作用による障害はなかった。なお、蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケを配合
したうどんの茹で時間を10分間延長しても、蛋白質分解酵素による麺の崩壊は観察され
40
なかった。
【0034】
実施例7
実施例3と同様に処理して得た蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケ又は蛋白質分
解酵素活性を有する未処理の乾燥マイタケを配合した豆腐を以下に示す方法で調製し、両
者を比較した。なお、比較のために、比較例1と同様にして調製した乾燥マイタケを配合
した豆腐及びマイタケを配合しない豆腐も調製し、比較した。なお、乾燥マイタケは、ミ
キサーで100メッシュ以下に粉砕して用いた。
【0035】
原料配合は表9に示した通りである。丸大豆を水洗後、3倍量の水に浸漬し、16時間後
50
(10)
JP 3874178 B2 2007.1.31
に水切りしたものに水と乾燥マイタケ粉を加え、ミキサーで4分間磨砕した。磨砕したも
のは卓上分離器を用いて生豆乳とおからに分離した。生豆乳のブリックスは4.0∼5.
3であった。
生豆乳を加熱容器に入れて加熱し、沸騰直前の温度で3分間煮沸した。その後、自然冷却
し、品温75℃の時点で、少量の水に分散した天然にがりを加え、ゆっくり攪拌後に放冷
した。
豆乳が緩やかに凝固してから内側にガーゼを敷いた多孔を有する容器に移し、こぼれない
ようにガーゼで包んだ。その上に適当な重石を置き1時間放置し、豆腐を得た。
製造過程において、蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケを配合した豆腐並びに対
照とした比較例1と同様にして調製した乾燥マイタケを配合した豆腐及びマイタケを配合
10
しない豆腐は、同一の操作性であったが、未処理マイタケを配合した豆腐は、にがり添加
後の凝固が短時間で終了した。
【0036】
【表9】
表9 豆腐の原料配合組成
20
【0037】
30
試作品の体積は、マイタケを配合しない(マイタケ未配合)場合を100とした場合、蛋
白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケ(処理マイタケ)を配合した場合は104、比
較例1と同様にして調製した乾燥マイタケ(比較例1マイタケ)を配合した場合は100
であった。しかし、未処理マイタケを配合した場合は35と著しく低下した。これは、蛋
白質が分解されたことに起因するものである。蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタ
ケを配合した場合は、対照としたマイタケを配合しない場合と似たなめらかな食感であり
、マイタケの風味を有するものであった。
一方、比較例1と同様にして調製した乾燥マイタケを配合した場合は、マイタケの風味が
なく、舌触りはざらざらとし食感が悪かった。未処理マイタケを配合した場合は硬く、か
つボソボソ感のある食感であった。
40
【0038】
実施例8
実施例3と同様に処理して得た蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケ又は蛋白質分
解酵素活性を有する未処理の乾燥マイタケ(小片)を配合した茶碗蒸しを以下に示す方法
で調製し、両者を比較した。なお、比較のために、比較例1と同様にして調製した乾燥マ
イタケを配合した茶碗蒸し及びマイタケを配合しない茶碗蒸しも調製した。
【0039】
原料配合は表10の通りである。卵を泡立てないように溶いて、だし,薄口醤油,食塩及
び化学調味料の混合液に加え、十分に混合して卵液を調製した。予め水に浸漬して戻して
おいた乾燥マイタケを蒸し茶碗に入れ、卵液を加えて湯気の立つ蒸し器に入れ、蒸し器の
50
(11)
JP 3874178 B2 2007.1.31
蓋を僅かにずらし、弱火で20分間蒸してマイタケ入りの茶碗蒸しを調製した。
【0040】
【表10】
表10 茶碗蒸しの原料配合組成
10
20
【0041】
各々の茶碗蒸しについて品質を比較したところ、蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイ
タケ(処理マイタケ)を配合した場合、マイタケを配合しない(マイタケ未配合)場合と
同等な滑らかな食感であったのに対して、未処理の乾燥マイタケ(未処理マイタケ)を配
合した場合は、20分間蒸した後でも茶碗蒸しの凝固が起こらなかった。また、比較例1
と同様にして調製した乾燥マイタケ(比較例1マイタケ)を配合した場合は、凝固は普通
であったが、角質化に由来するざらつき感があり、マイタケ特有の風味もなかった。
【0042】
実施例9
30
生マイタケ1kg(水分含量90%(w/w))を小片に裂いた後、50℃の温風循環槽
に入れ12時間乾燥し、水分含量を30%(w/w)まで低減した。次いで、これをポリ
プロピレン製の袋に入れ、100℃で30分間煮沸した後、50℃の温風循環槽に入れ1
2時間乾燥し、水分含量を10%(w/w)まで低減して蛋白質分解酵素活性を低減した
乾燥マイタケを得た。
この乾燥マイタケに角質化は認められず、未処理の乾燥マイタケと遜色無い仕上がりであ
った。これを室温まで冷却したのちに、小型ブレンダーで粉砕し、20mMのリン酸緩衝
液(pH6.5)で抽出し、蛋白質分解酵素活性をカゼイン−フォーリン法で測定した。
その結果、表11に示したように、中性及び酸性蛋白質分解酵素活性がいずれも加熱処理
前の10%未満となった。
40
このマイタケを用いて実施例8と同様の原料配合及び調製方法で茶碗蒸しを調製した。得
られた茶碗蒸しについて品質を調べたところ、蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタ
ケを配合した場合、マイタケを配合しない場合と同等な滑らかな食感であったのに対して
、未処理の乾燥マイタケを配合した場合は、20分間蒸した後でも茶碗蒸しの凝固が起こ
らなかった。また、比較例1と同様にして調製した乾燥マイタケを配合した場合は、凝固
は普通であったが、角質化に由来するざらつき感があり、マイタケ特有の風味もなかった
。
【0043】
【表11】
表11 水分調整したマイタケのオートクレーブ処理結果
50
(12)
JP 3874178 B2 2007.1.31
* 1 分 間 に 1 μ g の チ ロ シ ン を 遊 離 さ せ る 酵 素 活 性 を 1 Unitと し 、 試 料 絶 乾 1 g 当 た り の
値を酵素活性値とした。
10
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、蛋白質分解酵素活性を低減した乾燥マイタケの製造法並びにその用途
が提供される。本発明によって得られる乾燥マイタケは、調理時に前処理無しにそのまま
使用でき、実用的である上に品質的も優れたものである。
この乾燥マイタケは、蛋白質分解酵素活性が低減されているため、蛋白質を含有する食
品へ利用することができ、これらの食品にマイタケに由来する機能を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例5の各パン生地中の小麦蛋白質のSDS−PAGE結果を示す泳動図で
ある。
【符号の説明】
レーン1は、蛋白質分解酵素活性が低減されたマイタケを配合したパン生地を、レーン2
は未処理マイタケを配合したパン生地を、レーン3はマイタケ未配合のパン生地を、それ
ぞれ示す。
【図1】
20
(13)
フロントページの続き
(72)発明者 高橋 砂織
秋田県秋田市新屋町砂奴寄4番26号 秋田県総合食品研究所内
(72)発明者 高橋 慶太郎
秋田県秋田市新屋町砂奴寄4番26号 秋田県総合食品研究所内
(72)発明者 佐藤 君蔵
秋田県雄勝郡稲川町字三嶋34番 株式会社寛文五年堂内
審査官 中島 庸子
(56)参考文献 特開平10−033137(JP,A)
特開平03−277254(JP,A)
特開2001−186866(JP,A)
特開平10−304816(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/212
JP 3874178 B2 2007.1.31
Fly UP