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リサイクル石膏を用いた土木資材の硫化水素発生試験方法の

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リサイクル石膏を用いた土木資材の硫化水素発生試験方法の
Ⅰ-4-35
リサイクル石膏を用いた土木資材の硫化水素発生試験方法の検討と安全性評価
福岡大学 ○武下俊宏,三浦麻,押方利郎,樋口壯太郎
はじめに
廃石膏ボードの埋立処分は硫化水素発生問題が顕著化したため次第に規制強化され,平成18年6月1日以
降は石膏ボードから紙を除去した石膏部分についても管理型産業廃棄物とされ,管理型処分場への埋立処分
が義務化された1).廃石膏ボード排出量の推計2)によると,廃石膏ボードの総排出量は今後増加すると見込まれ
ている.さらにその内訳を見てみると,新築系廃石膏ボードの排出量は微減すると見込まれているものの,今後
多くの建物が建て替え需要の時期を迎えることから,解体系廃石膏ボードの排出量は増加すると見込まれてい
る.廃石膏ボード総排出量の増加は将来的な最終処分場逼迫の要因ともなるため,廃石膏ボードのリサイクル
技術開発および用途開発が必要とされている.様々なリサイクルが検討されているが,このうちリサイクル石膏を
土壌改良材や地盤改良材などの土木資材として使用する場合,廃石膏ボードの埋立処分において問題となっ
た硫化水素の発生が懸念され,施工後の安全性について疑問視されてきた.そこで,本研究は廃石膏ボードか
ら製造されたリサイクル石膏およびリサイクル石膏を混合した土木資材について硫化水素発生試験方法を検討
し,同方法を用いて硫化水素発生の状況を確認することを目的とした.
本研究では,まず容易に入手可能な実験器具を用い,リサイクル石膏およびリサイクル石膏を含む土木資材
を対象とした硫化水素発生試験方法を検討した.さらに本方法を用いて,二水石膏と半水石膏の硫化水素発
生試験,解体系二水石膏と新築系二水石膏の硫化水素発生試験,植菌の有無による硫化水素発生の影響,
半水石膏により改良した無機汚泥の硫化水素発生試験,等について検討を行った.
実験方法
本実験では,共同研究者である「ふくおか石膏ボードリサイクル研究会」より提供の半水石膏,二水石膏およ
び無機汚泥を使用した.このうち二水石膏については本実験のために新築系と解体系に分けて準備した試料
を使用した.無機汚泥については土木工事現場より発生した泥土の一部を回収保管したものを使用した.土壌
改良試料については無機汚泥1kgに対して半水石膏200~400gを加えて混合し,7日間養生した固化物を使用
した.各試料は粉砕の後目開き2mmの篩で篩分し,その篩下を硫化水素発生試験用の試料とした.硫化水素
の発生試験は,洗浄した500ml容の肉厚ガラス容器(デュラン瓶)に前述の試料50gと純水200mlを添加し,ヘッド
スペースガスを窒素置換してシリコン栓で密封し,35℃の恒温庫に静置して行った.用いたガラス容器や試料,
水等については殺菌操作を行わずそのまま使用した.また,植菌についても特に断らない限り行っていない.な
お,比較のため植菌を行った実験については,硫化水素の発生履歴のある当研究所敷地内の大型実験槽の
浸透水を採取し,その1mlを容器に添加した.ガラス容器内に発生した硫化水素の濃度は,ヤナコ製のFPDガス
クロマトグラフィーで分析した.
実験結果
1. 二水石膏および半水石膏の硫化水素発生試験結果
図1,2に二水石膏および半水石膏を用いて硫化水素発生試験を行った結果を示す.図1はA社提供の試料
を用いた場合,図2はB社提供の試料を用いた場合の結果をそれぞれ示している.なお,用いた試料の詳細は
以下の通りである;
① :廃石膏ボードからボード紙を除去した石膏部分を粉砕した焼成前の二水石膏.
② :①の二水石膏を焼成炉で焼成し粉砕した半水石膏.
③ :②に最適含水比(A社;143%,B社116%)となるように加水して固化形成し,材令7日目に粉砕した二
水石膏.
両図に示すように,①の試料からは高濃度の硫化水素が発生する事が確認された.一方,A社②の試料から
も硫化水素の発生が確認されたが,①の試料の発生濃度と比較しても低濃度で推移し,いったん硫化水素濃
第31回全国都市清掃研究・事例発表会講演論文集 2010.1
- 104 -
度が上昇したがその後は減少した.B社②の試料からは硫化水素の発生は確認されなかった.さらに,A社③の
試料についてはA社②の試料よりさらに硫化水素濃度が低濃度で推移する傾向が見られた.B社③の試料につ
いてはB社②の試料同様,硫化水素の発生は確認されなかった.
6000
6000
二水
半水
半水→二水
二水
半水
5000
半水→二水
H2S濃度(ppm
H2S濃度(ppm
5000
4000
3000
2000
1000
4000
3000
2000
1000
0
0
0
5
10
15
20
25
30
0
5
10
経過日数(日)
15
20
25
30
経過日数(日)
図1.A 社の二水石膏(◆),半水石膏(■)および半水石
膏に加水固化した二水石膏(▲)の硫化水素発生結果.
図2.B社の二水石膏(◆),半水石膏(■)および半水石
膏に加水固化した二水石膏(▲)の硫化水素発生結果.
2. 新築系二水石膏と解体系二水石膏の硫化水素発生試験結果
図3,4に新築系二水石膏と解体系二水石膏からの硫化水素の発生結果を示す.図3はA社提供の試料を用
いた場合,図4はB社提供の試料を用いた場合の結果をそれぞれ示している.両図に示すように,解体系の二
水石膏からは高濃度の硫化水素が発生することが確認された.一方,新築系の二水石膏からも硫化水素の発
6000
6000
5000
5000
新築系
解体系
4000
H2S濃度(ppm
H2S濃度(ppm
生が確認されたが,いずれの場合も発生濃度は解体系二水石膏よりも低濃度で推移する事が確認された.
3000
2000
1000
新築系
4000
解体系
3000
2000
1000
0
0
0
10
20
30
40
0
経過日数(日)
図3.A 社の新築系二水石膏(●)および解体系二水石
膏(■)の硫化水素発生結果.
10
20
30
40
経過日数(日)
図4.B 社の新築系二水石膏(●)および解体系二水石
膏(■)の硫化水素発生結果.
3. 植菌の有無による硫化水素発生試験結果
図5,6に植菌の有無による新築系二水石膏からの硫化水素発生試験結果を示す.A社の新築系二水石膏は,
植菌により硫化水素の発生が促進され,約30日経過時点において最大5000ppm近い硫化水素が発生した.植
菌なしの試料についても同時期の30日経過時点において500ppm程度の濃度の硫化水素発生が確認され,そ
の後硫化水素濃度が増加した.一方,B社の新築系二水石膏は植菌の有無にかかわらず硫化水素の発生はほ
とんど確認されなかった.
次に,解体系二水石膏についても植菌の有無の影響を確認した.図7,8に植菌の有無による解体系二水石
膏からの硫化水素発生試験結果を示す.A社の解体系二水石膏については植菌を行わない場合でも6000ppm
近い濃度の硫化水素が発生し,植菌によりさらに高濃度の硫化水素が発生することが確認された.一方,B社の
解体系二水石膏からも2000ppmを超える硫化水素が発生したが,植菌の有無による硫化水素発生への影響は
顕著には現れていない.
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6000
6000
なし
5000
5000
H2S濃度(ppm
H2S濃度(ppm
植菌
4000
3000
2000
1000
なし
4000
植菌
3000
2000
1000
0
0
0
10
20
30
40
0
10
経過日数(日)
図5.植菌の有無による A 社の新築系二水石膏の硫
化水素発生結果.
30
40
図6.植菌の有無によるB社の新築系二水石膏の
硫化水素発生結果.
7000
7000
6000
6000
5000
5000
H2S濃度(ppm
H2S濃度(ppm
20
経過日数(日)
4000
なし
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植菌
2000
なし
植菌
4000
3000
2000
1000
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0
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0
10
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0
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10
20
30
40
経過日数(日)
経過日数(日)
図7.植菌の有無による A 社の解体系二水石膏の硫
化水素発生結果.
図8.植菌の有無によるB社の解体系二水石膏の硫
化水素発生結果.
4. 半水石膏の添加により改良した無機汚泥の硫化水素発生試験結果
無機汚泥(含水率62.8%)1kgにA社およびB社の半水石膏を200g,300g,400g混合した固化試料を作製し,こ
れらの試料について硫化水素の発生試験を行った.本実験では植菌を施した.しかし,14日経過時点では硫
化水素の発生は確認されていない(データは示さない).蛍光X線分析の結果,この無機汚泥には10.6%のFe
が含まれていることが明らかとなり,発生した硫化水素がFeと反応して硫化物として固定されたことも考えられる.
しかし,硫化物の生成による試料の黒色変化は確認できていない.今後,本試験を継続して硫化水素の発生を
追跡調査し,試験終了時には濃塩酸を添加して硫化物として固定された硫化水素を遊離させる方法で,硫化
水素が検出されるかについても確認する予定である.
まとめ
石膏ボードからボード紙を除去した二水石膏からは硫化水素の発生が顕著であったが,二水石膏を新築系と
解体系に分別した場合には解体系二水石膏から高濃度の硫化水素が発生した.二水石膏を焼成して製造した
半水石膏からも硫化水素の発生が確認されたが,二水石膏ほど高濃度に発生することはなかった.また,本実
験の範囲内では半水石膏を無機汚泥と混合した試料からは硫化水素の発生は確認されなかった.
謝辞
本研究は「平成21年度 北九州市環境未来技術開発助成」により行われた.また,本研究は「ふくおか石膏ボ
ードリサイクル研究会」より提供された試料を用いて行われた.ここに記して関係各位に深く感謝の意を表する.
引用
1)環境省HP;廃石膏ボードから付着している紙を除去したものの取扱いについて(通知)
.
2)(社)石膏ボード工業会HP.
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