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平成 26 年度 「証券ゼミナール大会」

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平成 26 年度 「証券ゼミナール大会」
5
10
平 成 26 年 度
「証券ゼミナール大会」
15
第 1 テーマ
A ブロック
「日本において今後必要とされる金融リテラシーについて 」
関西学院大学
20
25
30
1
証券研究会
目次
… p.3
序章
第 1章 金 融 リ テ ラ シ ー に つ い て
5
第 1節
金融リテラシーの定義及び金融教育の意義
第 2節
金融リテラシーの必要性
第 3節
日本で求められる金融リテラシー
第 2章 日 本 に お け る 金 融 教 育 の 現 状 に つ い て
10
第 1節
各段階における金融教育
第 2節
各主体における金融教育
第 3節
海外における金融教育
第 3章 日 本 の 金 融 教 育 普 及 に お け る 問 題 点
15
20
第 1節
学校段階における金融教育の問題点
第 2節
金融に対する関心の問題点
第 3節
高齢者の金融トラブル増加からみる金融教育の問題点
第 4節
確定拠出年金加入者に対する投資教育の問題点
第 4章 日 本 の 金 融 教 育 普 及 に お け る 問 題 へ の 解 決 策
… p.4
… p.12
… p.26
… p.32
第 1節
学校段階における金融教育の問題への解決策
第 2節
金融に対する関心の問題への解決策
第3節
高齢者の金融トラブル増加からみる金融教育の問題への解決策
第 4節
確定拠出年金加入者に対する投資教育の問題への解決策
25
… p.46
終章
30
2
序章
「 憂 う る 者 は 富 貴 に し て 憂 い 、楽 し む 者 は 貧 に し て 楽 し む 」。こ の 言 葉 は 日 本
の 文 学 史 に 名 を 刻 む 井 原 西 鶴 の 代 表 作『 日 本 永 代 蔵 』か ら 抜 粋 し た 言 葉 で あ り 、
楽しめる人は貧しくとも楽しめると訳すことができる。この言葉を目にすると
5
現在の日本において、お金を稼ぐことは悪である、お金について熱心に学ぼう
と す る こ と は 望 ま し く な い 、ま た 、お 金 は 汚 い も の で あ る と い っ た 考 え が 、
『日
本永代蔵』が世に出回った江戸時代からの一種の伝統的なものであることがわ
かる。そして、まさにこの伝統的な考えこそが現在、日本において金融リテラ
シーが浸透していない原因ではないだろうか。これまで、日本人の金融の知識
10
が乏しくてもやってこられたのは、終身雇用で賃金は毎年上がり、年金も約束
通 り 支 給 さ れ る と い う 、社 会 全 体 の 仕 組 み が あ っ た か ら で あ る 1 。し か し 、バ ブ
ル崩壊後の日本では、金融の自由化による金融商品の多様化、確定拠出年金の
普及、
「 貯 蓄 か ら 投 資 へ 」と い う 時 代 の 流 れ の 中 で こ れ ま で の 前 提 条 件 は 大 き く
変化している。
15
ま た 、世 界 で も 、2008 年 の サ ブ プ ラ イ ム ロ ー ン 問 題 に 端 を 発 す る 金 融 危 機 は 、
個々人の金融リテラシーの低さが原因の一つであると考えられている。このよ
うな金融危機によって引き起こされた様々な事態は、金融リテラシーの低さが
社 会 全 体 、金 融 市 場 お よ び 家 計 に 多 大 な 負 の 影 響 を も た ら す こ と を 顕 ら か に し 、
世界規模で金融リテラシーの重要性がより強く認知されるようになった。日本
20
で は 、2013 年 4 月 金 融 庁 が「 金 融 教 育 研 究 会 報 告 」を 公 表 し 、こ れ に 基 づ い て
同年 6 月、文部科学省・消費者庁・金融庁と金融関連団体及び有識者による 金
融 教 育 推 進 会 議 が 発 足 さ れ 、金 融 教 育 に 関 す る 国 民 ス タ ン ダ ー ド の 作 成 等 、様 々
な施策に取り組んでいる。今、日本においても金融リテラシー向上のために国
家レベルでの取り組みが本格化しているのである。そこで、我々は本稿で、日
25
本において今後必要とされる金融リテラシーとは何かを述べ、日本の金融教育
の現状と問題点を検証し、解決策を提案する。今回我々の論文により日本にお
ける金融リテラシーが向上することを願う。
30
3
第 1章
金融リテラシーについて
本章では、今回の議論の目玉である金融リテラシーについて詳しく述べる。
第 1節
金融リテラシーの定義及び金融教育の意義
本節では、本論文を作成する上で我々が考える「金融リテラシー」を定義す
5
る 。我 々 は 、金 融 リ テ ラ シ ー を 、
「 金 融 に 関 す る 健 全 な 意 思 決 定 を 行 い 、究 極 的
に は 金 融 面 で の 個 人 の 良 い 暮 ら し (well-being)を 達 成 す る た め に 必 要 な 金 融 に
関 す る 意 識 、 知 識 、 技 術 、 態 度 及 び 行 動 の 総 体 2 」 (OECD/INFE(2012)
p.2)と
定義する。英米では、ほぼ同じ内容について「金融ケイパビリティ」という語
を用いている。次に、金融リテラシー向上のために必要不可欠である金融教育
10
に つ い て 述 べ る 。 そ も そ も 金 融 教 育 と は 何 か 。 金 融 教 育 と は 、「 お 金 や 金 融 の
様 々 な は た ら き を 理 解 し 、そ れ を 通 じ て 自 分 の 暮 ら し や 社 会 に つ い て 深 く 考 え 、
自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに
向 け て 、主 体 的 に 行 動 で き る 態 度 を 養 う 教 育 3 」(金 融 広 報 中 央 委 員 会 (2013)p.2)
である。そして、金融教育の意義としては、金融リテラシーの向上を通じて、
15
国民一人一人が経済的に自立し、より良い暮らしを送っていくことを可能とす
るとともに、健全で質の高い金融商品の提供の促進や家計金融資産の有効活用
を 通 じ 、公 正 で 持 続 可 能 な 社 会 の 実 現 に も 貢 献 し て い く こ と 4 に あ り 、今 後 、よ
り金融教育を推進することが求められている。
20
第 2節
金融リテラシーの必要性
本 節 で は 、金 融 リ テ ラ シ ー の 必 要 性 が 高 ま っ た 背 景 に つ い て 大 き く 3 つ に 分
けて紹介する。
(1)金 融 商 品 の 多 様 化
2000 年 前 後 に 行 わ れ た 日 本 版 ビ ッ ク バ ン の 進 展 と と も に 、様 々 な 新 し い 商 品
25
やサービスが相次いで提供されるようになった。銀行については、投資信託や
外 国 債 券 や 保 険 商 品 、 証 券 会 社 に つ い て は 、 外 国 為 替 証 拠 金 取 引 や CFD 取 引
等 が 挙 げ ら れ る 。ま た 、保 険 会 社 に つ い て 言 え ば 、新 し い タ イ プ の 保 険 (所 得 保
障 保 険 、新 型 変 額 年 金 、新 型 自 動 車 保 険 等 )が 挙 げ ら れ る 。こ の よ う に 、我 々 が
選 べ る 金 融 商 品 は ま す ま す 多 様 化 し て い る 。ま た 、金 融 商 品 の 多 様 化 と と も に 、
30
収益と損失の組合せ等の複雑化が進んでいることも認識しておかなくてはなら
4
な い 。こ う し た 中 で 、
「 購 入 す る 商 品 を 自 分 で 選 択 す る 自 由 を 持 つ か わ り に 、そ
の結果としてもたらされる利益と損失の両方に責任を持つ」との自己責任原則
がますます重要になってきている。実際に近年では、金融商品の取引に関する
相 談 や 苦 情 、ま た 事 件 が 増 加 し て い る 。こ の よ う な こ と が 起 こ ら な い た め に も 、
5
現在では多様な金融商品を消費者自身で見極める事が出来る金融リテラシーが
必要なのである。また、消費者の金融リテラシーが向上し、選別の目が確かな
ものとなれば、より良い金融商品が普及していくことが期待できる。
(2)年 金 制 度 の 変 化
日本の国民年金制度発足時は年金の財源の集め方として積立方式を採用して
10
い た 。年 金 の 財 源 の 集 め 方 は 積 立 方 式 と 賦 課 方 式 に 分 け ら れ る 。積 立 方 式 と は 、
現役世代の間に自分で年金の掛け金を積み立てておき、高齢になってから自分
で受け取っていく方式である。長所としては少子高齢化が進んでもその影響を
受けにくいことが挙げられる。短所としてはインフレが続くと積み立てたお金
の価値が目減りし、老後の生活に必要な年金を受け取れなくなってしまう恐れ
15
がある。賦課方式とは、その時点の現役世代がその時点の高齢者の年金を負担
する方式である。長所としてはインフレによる悪影響を受けないことがあり、
短所としては人口の高齢化が進むと現役世代の負担が重くなりすぎることがあ
る 。1960~ 70 年 代 に イ ン フ レ が 続 い た こ と と 、制 度 が 生 ま れ た 時 点 で す で に 中
高年となっていた人々が積み立て不足で年金を十分受けられなくなってしまう
20
た め 、 賦 課 方 式 と の 折 衷 的 な 方 式 (修 正 積 立 方 式 )に 変 わ り 、 現 在 で は 賦 課 方 式
が基本となっている。しかし、少子高齢化が進行している日本において、賦課
方式の比重が高い現行方式である確定給付型を採用していると現役世代の負担
が 重 く な る た め 、公 的 年 金 を 補 う 企 業 年 金 等 に お い て 、2001 年 6 月 に 確 定 拠 出
年 金 法 が 成 立 し た 5。
25
30
5
【 図 表 1】 確 定 給 付 年 金 と 確 定 拠 出 年 金 の 比 較
確定給付年金
確定拠出年金
運 用 の主 体
企 業 等 が運 用 方 式 を決 定
個 々の加 入 者 が 運 用 方 式 を 決 定
資 産 の管 理
資 産 を 一 括 して 管 理
個 人 ごとに資 産 を 管 理
企 業 等 が 将 来 の年 金 額 を 約 束
運 用 収 益 によって 額 が決 定
年金額
出 所 )金 融 庁 HP「 わ た し た ち の 生 活 と 金 融 の 働 き 」 を 参 考 に 作 成
【 図 表 1】 は 確 定 給 付 年 金 と 確 定 拠 出 年 金 の 比 較 を 示 し て い る 。 こ の 新 た な
5
選 択 肢 と し て 発 足 し た「 確 定 拠 出 年 金 」は 米 国 の 401(k)を 模 倣 し て い る 。こ れ
は拠出された掛け金が個人ごとに明確に区分され、掛け金とその運用収益との
合計額をもとに給付額が決定される年金である。
「 確 定 拠 出 年 金 」に よ る 掛 け 金
は、預貯金、債券信託、株式等をどのように運用するかを加入者が自己責任で
判断するため、運用結果次第で年金の受取額は変動する。したがって、国民は
10
効果的に運用するためにも運用に関する知識が必要となってきているのである。
【 図 表 2】 確 定 拠 出 年 金 加 入 者 の 推 移 (企 業 型 と 個 人 型 )
(万 人 )
企業型(左軸)
600
個人型(右軸)
20
万人
400
15
10
200
0
0
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 (年 )
出 所 )厚 生 労 働 省 HP を 参 考 に 作 成
20
【 図 表 2】 は 日 本 に お け る 確 定 拠 出 年 金 加 入 者 の 推 移 を 示 し て い る 。 実 際 に
加入者数は増加しており、今後も増加していくと考えられる。
(3)貯 蓄 か ら 投 資 へ
日 本 の 約 1500 兆 円 も の 家 計 金 融 資 産 は 、 現 状 そ の 過 半 が 現 預 金 で 運 用 さ れ
25
て い る 。そ の 背 景 に は 、過 去 デ フ レ が 継 続 し た と い う 経 済 環 境 も 考 え ら れ る が 、
分散投資や長期投資のメリットについての理解が十分でないことも要因として
6
挙 げ ら れ る 。 こ う し た 中 、 2014 年 1 月 か ら NISA(少 額 投 資 非 課 税 制 度 )が 日 本
に お い て 導 入 さ れ た 。 NISA の 導 入 の 背 景 は 大 き く 2 つ 存 在 す る 。 一 つ 目 は 、
将 来 へ の 備 え と な る 資 産 づ く り の 促 進 (家 計 の 安 定 的 な 資 産 形 成 の 支 援 )で あ る 。
将来の生活への備えとなる、預貯金や株・投資信託・保険といった金融資産を
5
全 く 保 有 し て い な い 世 帯 、い わ ゆ る「 金 融 資 産 ゼ ロ 世 帯 (二 人 以 上 世 帯 )」が 日 本
で は 年 々 増 加 し て お り 、 4 世 帯 の う ち 1 世 帯 と い う 割 合 (2012 年 )を 占 め て い る
のが現状である。若い世代をはじめとする人々が少しでも多く、将来に向けた
資産形成に取り組んでもらうことが期待されている。二つ目は、経済成長のた
め に 家 計 の 金 融 資 産 の 有 効 活 用 (家 計 か ら の 成 長 資 金 の 供 給 拡 大 )で あ る 。
「貯蓄
10
か ら 投 資 へ 」の 流 れ が 促 進 さ れ る こ と で 、家 計 か ら 企 業 へ の 資 金 供 給 が 拡 大 し 、
経済が成長するとともに、家計も潤い、さらなる投資につながるという好循環
を 生 み 出 す 、 と い う 意 義 も NISA に は 期 待 さ れ て い る 6 。
以上のような要因から、日本における金融リテラシーの必要性は高まってき
15
た。
第 3節
日本で求められる金融リテラシー
上述したように、一人の社会人として経済的に自立し、より良い暮らしを送
っていくためには金融教育を通した金融リテラシーの向上は必要不可欠である。
20
そこで最も基本となるのが家計管理や将来の資金を確保するために長期的な生
活 設 計 を 行 う 習 慣 で あ る 。ま た 、実 際 に 金 融 商 品 を 利 用 す る 際 、取 引 (契 約 )を 適
切に行うために理解しておくべきこと、金融経済状況を知った上で適切な金融
商品選択のために必要な基礎知識、さらに保険、ローン・クレジット、資産形
成商品についても最低限理解しておくことが重要である。加えて、自らの判断
25
のみに頼るのではなく、第三者にアドバイスを求める必要があることを理解す
べ き で あ る 7。
しかし、金融教育は推進すべきものであるといえども、金融教育に充てるこ
とのできる機会、時間は限られている。より効率的に金融教育を推進していく
た め 、金 融 庁 は 2012 年 11 月 に 有 識 者・関 係 省 庁・関 係 団 体 で 構 成 さ れ る「 金
30
融 教 育 研 究 会 」 を 設 置 し 、 2013 年 4 月 に 「 生 活 ス キ ル と し て 最 低 限 身 に 付 け
7
るべき金融リテラシー」を提示した。最低限身に付けるべき事項として以下の
通 り 、(a)家 計 管 理 、(b)生 活 設 計 、(c)金 融 知 識 及 び 金 融 経 済 事 情 の 理 解 と 適 切 な
金 融 商 品 の 利 用 選 択 、 (d)外 部 の 知 見 の 適 切 な 活 用 、 の 4 分 野 15 項 目 と し て 分
野別の教育内容について体系的にとりまとめた。
5
(a) 家 計 管 理
項 目 1: 適 切 な 収 支 管 理 (赤 字 解 消 ・ 黒 字 確 保 )の 習 慣 化
適切な収支管理の習慣化は、それぞれのライフプランを実現していく上で最
も基本的で重要であるといえる。まずは予算制約や収支をバランスさせること
10
の重要性に関して理解を深めていく必要がある。次にニーズとウォンツを区別
す る こ と に よ り 計 画 的 な 支 出 を 行 う こ と や 的 確 に 収 支 情 報 を 把 握 し 、記 録 す る 、
あ る い は 問 題 が あ れ ば 改 善 し て い く 等 を 習 慣 化 し て い く こ と が 大 切 で あ る 8。
(b) 生 活 設 計
15
項 目 2: ラ イ フ プ ラ ン の 明 確 化 及 び ラ イ フ プ ラ ン を 踏 ま え た 資 金 の 確 保 の 必 要
性の理解
仕事や結婚、家庭、趣味、老後等、どのような人生を送りたいかという将来
のイメージを具体化し、それに必要な資金計画を立てること、言い換えると、
ライフプランを立てることが必要となっている。またライフプランを立てるこ
20
とによって不測の事態が生じた時のリスク対応のために貯蓄をすることや保険
に 加 入 す る こ と も で き 、そ れ と 同 時 に「 人 生 の 三 大 資 金 9 」と い わ れ る 住 宅 資 金 、
教育資金、老後資金をどの程度確保すべきであるかを考え、計画的な貯蓄や資
金 の 借 り 入 れ 等 を 行 う 姿 勢 が 必 要 で あ る 10 。
25
(c) 金 融 知 識 及 び 金 融 経 済 事 情 の 理 解 と 適 切 な 金 融 商 品 の 利 用 選 択
項 目 3: 契 約 に か か る 基 本 的 な 姿 勢 の 習 慣 化
我 が 国 の 金 融 取 引 に お け る ト ラ ブ ル の 原 因 の 一 つ は 、「 商 品 の 仕 組 み を 理 解
できなかった」
「 業 者 に 言 わ れ る が ま ま 」等 、内 容 に 関 し て よ く 吟 味 せ ず 、言 葉
だ け を 鵜 呑 み に し て 契 約 を し て し ま う こ と 、ま た 、取 引 後 も 業 者 に 委 ね た ま ま 、
30
保 有 す る 金 融 商 品 を 巡 る 状 況 の 悪 化 等 に 気 が 付 か な い こ と で あ る 11 。 金 融 取 引
8
を行う場合は契約内容を確認し、理解できない契約は締結しないことを習慣化
し、契約締結後も業者等に委ねたままにせず、保有する金融商品の状況を定期
的に確認する必要がある。
5
項 目 4: 情 報 の 入 手 先 や 契 約 の 相 手 方 で あ る 業 者 が 信 頼 で き る も の で あ る か ど
うかの確認の習慣化
金融取引を行う前に情報の入手先や取引の相手方が信頼できる業者であるか
どうかを確認することが必要であり、悪質な詐欺業者が一定数存在するという
ことを理解しておかねばならない。自主規制機関に加入しているかどうかを確
10
認するためには、金融庁や自主規制機関のウェブサイト等により確認する必要
が あ る 12 。
項 目 5: イ ン タ ー ネ ッ ト 取 引 は 利 便 性 が 高 い 一 方 、 対 面 取 引 の 場 合 と は 異 な る
注意点があることの理解
15
インターネットの普及により、利便性の高い取引ができるようになった一方
で、不正アクセスや誤発注等といったトラブル事例をよく理解しておく必要が
ある。またトラブルが起きないように取引時は細心の注意を払う必要があると
同時にトラブル予防のためにセキュリティ対策を実行する必要がある。
20
項 目 6:金 融 教 育 に お い て 基 礎 と な る 重 要 な 事 項 (金 利 (単 利 、複 利 )、イ ン フ レ 、
デ フ レ 、為 替 、リ ス ク・リ タ ー ン 等 )や 金 融 経 済 情 勢 に 応 じ た 金 融 商 品 の 利 用 選
択についての理解
金 融 商 品 を 利 用 選 択 す る に あ た り 、基 礎 と な る 金 利 (単 利 、複 利 )、イ ン フ レ 、
デフレ、為替、リスク・リターンといった重要な事項を十分に理解することが
25
必 要 で あ る 13 。 ま た 金 融 商 品 の 背 景 に あ る 金 融 の 機 能 に つ い て 理 解 す る こ と は
非常に重要であり、様々な金融商品の性質、リスクとリターンを理解し、金融
経済情勢を踏まえて自己責任の下で運用することが大切である。
項 目 7: 取 引 の 実 質 的 な コ ス ト (価 格 )に つ い て 把 握 す る こ と の 重 要 性 の 理 解
30
金 融 商 品 を 利 用 選 択 す る に あ た り 、 取 引 の 実 質 的 な コ ス ト (価 格 )を 十 分 に 理
9
解しておくことは重要である。例えば住宅ローンの場合、金利だけではなく契
約 に 付 随 す る 団 体 信 用 保 険 の 保 険 料 等 も 含 め て 全 体 の コ ス ト (価 格 )と し て 理 解
す る 必 要 が あ る 14 。
5
項 目 8:自 分 に と っ て 保 険 で カ バ ー す べ き 事 業 (死 亡・疾 病・火 災 等 )が 何 か の 理
解
保 険 商 品 を 利 用 選 択 す る 前 に 、 自 分 が 何 の リ ス ク (死 亡 、 疾 病 、 火 災 、 地 震 、
介 護 等 の 損 失 や 危 険 の 発 生 の 可 能 性 )に 備 え る べ き か よ く 整 理 し た 上 で 判 断 で
きる。
10
項 目 9: カ バ ー す べ き 事 象 発 現 時 の 経 済 的 保 障 の 必 要 額 の 理 解
カ バ ー す べ き 事 象 に 備 え て 保 険 以 外 で 賄 え る 金 額 (社 会 保 障 、企 業 福 祉 、本 人
の 貯 蓄 等 )も 勘 案 し 、保 険 商 品 で ど の 程 度 の 金 額 の 備 え が 必 要 か を 把 握 し た 上 で 、
保険商品を適切に利用選択することができる必要がある。
15
項 目 10: 住 宅 ロ ー ン を 組 む 際 の 留 意 点 の 理 解
① 無理のない借入限度額の設定、返済計画を立てることの重要性
② 返済を困難とする諸事情の発生への備えの重要性
ライフプランの中に住宅ニーズを位置付けており、住宅ローンに関して様々
20
な金利タイプがあることや金利・諸費用、借入限度等が様々であることを理解
しておかねばならない。住宅ローンを組むにあたっては、金融経済状況の変化
や失業、その他による収入減によって返済できなくなる事態があることを理解
した上で自己の返済能力に応じた適切な住宅ローンを組まなければならず、必
要に応じて返済計画を見直すことが重要である。
25
項 目 11:無 計 画・無 謀 な カ ー ド ロ ー ン 等 や ク レ ジ ッ ト カ ー ド の 利 用 を 行 わ な い
ことの習慣化
ローン等をライフプランの中に位置付けていることを前提に無計画・無謀な
利用を避けるべきであると理解している必要がある。またカードローン等やク
30
レジットカードの特徴とメリット・デメリットを理解し、返済を適切に履行し
10
ない場合、信用情報の記録が残り、将来的に返済が滞った直接の相手方以外の
金融機関・業者からも借入が難しくなる等の重大な影響が生じることを理解し
て お か な け れ ば な ら な い 15 。
5
項 目 12:人 に よ っ て リ ス ク 許 容 度 は 異 な る が 、仮 に よ り 高 い リ タ ー ン を 得 よ う
とする場合には、より高いリスクを伴うことの理解
金融商品は、リスクとリターンの関係により様々なタイプがある。リスクと
は「 将 来 の 損 益 が ど う な る か わ か ら な い 不 確 実 性 (= 価 格 変 動 の ブ レ の 度 合 い )」
のこと、リターンとは「収益」のことをいう。一般に、リスクが大きい投資信
10
託ほどリターンが大きく、リスクが小さい投資信託ほどリターンが小さいとい
う 傾 向 が あ り 、 つ ま り 、 値 動 き (価 格 変 動 )の 大 き い 銘 柄 を よ り 多 く 組 み 入 れ て
いる金融商品ほど、高いリターンを期待することができるが、投資金額を下回
る 可 能 性 も 大 き く な る 16 。こ れ を 理 解 し て お く こ と で「 損 失 が 発 生 し な い 」
「リ
スクよりも大きなリターンを得ることができる」等、おいしい話に疑いを持つ
15
ことができ、より合理的な商品選択を行うことができる。
項 目 13: 資 産 形 成 に お け る 分 散 (資 産 運 用 の 分 散 、 投 資 時 期 の 分 散 )の 効 果 の 理
解
一般に、大切な資金を安全かつ効率的に運用するためには、特性の異なる複
20
数の資産に分散して投資を行うことが適切であり、効果的であることが国内外
の経験則や投資理論から明らかにされている。つまり、収益率の動きが異なる
複数の資産に適切に分散して投資を行うことにより、長期的には、リスクを抑
え る (収 益 率 の 変 動 幅 を 小 さ く す る )こ と が で き 、同 程 度 の リ ス ク 水 準 で あ れ ば 、
相対的に高い収益率の確保が見込める。これは資産形成を考える上で最初に理
25
解すべき事項である。
項 目 14: 資 産 形 成 に お け る 長 期 運 用 の 効 果 の 理 解
資産形成を行うに当たって長期投資になればなるほど「複利」の効果を期待
できることを理解しなければならない。また長期運用には金融危機のようなパ
30
ニック時に底値売りをしてしまい、損失を大きくしてしまう事態を防ぐ効果も
11
あることを理解しなければならない。
(d)外 部 の 知 見 の 適 切 な 活 用
項 目 15:金 融 商 品 を 利 用 す る に あ た り 、外 部 の 知 見 を 適 切 に 活 用 す る 必 要 性 の
5
理解
金融分野は専門性・複雑性が非常に高い為、一定の金融リテラシーを有して
いても自らの知識だけで身を守ることは非常に難しいといえる。そのため、金
融商品を利用する際には中立的な立場または信頼性の高い情報提供を行ってい
る機関やアドバイス業者に相談やアドバイスを求めることの必要性を理解して
10
おくことは金融リテラシーの重要な要素である。
第 2章
日本における金融教育の現状について
第 1節
各段階における金融教育
前 章 3 節 で は 日 本 で 求 め ら れ る 金 融 リ テ ラ シ ー を 4 分 野 15 項 目 と い う 形 で
15
紹介した。次に、金融教育研究会が作成した各段階において必要とされる金融
リテラシーについて見ていきたい。
【 図 表 3】 金 融 リ テ ラ シ ー ・ マ ッ プ
金 融 知 識 及 び金 融 経 済 事 情 の
理 解 と適 切 な 金 融 商 品 の 利 用
分野
家計管理
生活設計
分類
適切な
収支管理
ライ フプラン の 明 確 化 及
びラ イフ プラ ンを 踏 ま えた
資 金 の確 保 の必 要 性 の
理解
金融取引の
基 本 とし ての
要素
金融分野
共通
小学生
社 会 の中
で生 きて
いく 力 の
素 地 を形
成 する 時
期
必 要 な もの (ニ
ーズ )と欲 し いも
の (ウ ォンツ )を
区 別 し 、計 画 を
立 てて 買 い 物
ができる
勤 労 等 を通 じお金 を得
るこ と及 び 将 来 を 考 え金
銭 を 計 画 的 に 使 う こ との
大 切 さを 理 解 し 、貯 蓄 す
る 態 度 を 身 に 付 ける
小 学 生 が巻 き
込 まれ る 金 融
トラ ブ ルの 実 態
について 知 り 、
情 報 を活 用 し
選 択 で きる 力
を 身 に 付 ける
暮 らし を 通 じ
てお 金 の 様 々
な役 割 を 理 解
する 。金 利 計
算 (単 利 計 算 )
ができる
中学生
将 来 の自
立 に向 け
た基 本 的
な力 を 養
う時 期
家 計 の収 入 ・
支 出 につ いて
理 解 を深 め、
学校活動等を
通 じて 収 支 管
理 を 実 践 する
勤 労 に 関 する 理 解 を 深
める とともに 、生 活 設 計
の 必 要 性 を 理 解 し 、自
分 の 価 値 観 に 基 づ いて
生 活 設 計 を 立 てて みる
契 約 の基 本 を
理 解 し 、悪 質
商 法 等 を見 分
け、被 害 に 遭
わない ように す
るこ とを 学 ぶ
お金 や金 融 ・
経 済 の基 本
的 な役 割 を理
解 する 。期 間
と金 利 の 関 係
(複 利 計 算 )を
知る
12
高校生
大学生
若年社会人
社会人と
して 自 立
する た め
の基 礎 的
な能 力 を
養 う時 期
社会人と
して 自 立
する た め
の能 力 を
確 立 する
時期
生活面・
経済面で
自 立 する
時期
一般社会人
社会人と
して 自 立
し 、本 格
的 な責 任
を担 う時
期
高齢者
年金収入
や金 融 資
産 取 り崩
しが 生 活
の主 な源
となる 時
期
家 族 の一 員 と
して 家 計 全 体
を 意 識 しながら
主 体 的 ・計 画
的 に支 出 管 理
等 ができ る
収 支 管 理 の必
要 性 を理 解 し、
必 要 に応 じて
アル バイ ト 等 で
収 支 改 善 をし
つつ、自 分 の
能 力 向 上 のた
めの 支 出 を 計
画 的 に 行 える
家 計 の担 い手
として 適 切 に 収
支 管 理 を しつ
つ、趣 味 や 自
己 の能 力 向 上
のた めの 支 出
を計 画 的 に行
える
家 計 を 主 とし て
支 える 立 場 から
家 計 簿 等 で収
入 支 出 や資 産
負 債 を把 握 管
理 し 、必 要 に 応
じ収 支 の改 善 、
資 産 負 債 のバ
ラン ス改 善 を 行
える
リタイア 後 の 収
支 計 画 に沿 っ
て 、収 支 を 管
理 し 、改 善 の た
めに 必 要 な 行
動 が 取 れる
進 路 選 択 を通 じ将 来 の
自 分 の姿 を現 実 的 に描
くとともに 、大 ま かな 生 活
設 計 を 立 てて 生 涯 収 入
支 出 の 概 要 を 把 握 する
卒 業 後 の 職 業 との 両 立
を前 提 に夢 や希 望 をライ
フプラン として 具 体 的 に
描 き 、その 実 現 に 向 けて
勉 学 、訓 練 等 に 励 んで
いる 。人 生 の 三 大 資 金
等 を 念 頭 に 置 きなが ら 、
生 活 設 計 の イメ ージ を 持
つ
選 択 し た職 業 との 両 立
を 図 る 形 でラ イフ プラン
の 実 現 に 取 り 組 んで い
る。ラ イフ プラ ンの ために
お金 がどの程 度 が必 要
かを 考 え、計 画 的 に 貯
蓄 ・ 資 産 運 用 を 行 える
環 境 変 化 等 を 踏 ま え、
必 要 に 応 じ てラ イフ プラ
ンや 資 金 計 画 、保 有 資
産 の 見 直 し を 検 討 しつ
つ、自 分 の 老 後 を 展 望
したライ フ プラ ンの 実 現
に 向 け着 実 に 取 り 組 んで
いる 。学 校 と連 携 しつ
つ、家 庭 内 で 子 の 金 融
教 育 に取 り組 む
リタイア 後 の ラ イフ プラ ン
について 、余 暇 の 活 用 、
家 族 や社 会 への貢 献 に
も 配 慮 し た見 直 し を 行 っ
ている 。年 金 受 取 額 等
をベ ースとし た生 活 スタイ
ルに 切 り 替 え、心 豊 か に
安 定 的 な生 活 を過 ごせ
るよう 堅 実 に 取 り 組 んで
いる
13
契 約 及 び自 己
責 任 に 関 する
理 解 を 深 める
とともに 、自 ら
情 報 を収 集 し
消 費 生 活 に活
用 でき る 技 能
を 身 に 付 ける
お金 や金 融 ・
経 済 の機 能 ・
役 割 を把 握
する ととも に 、
預 貯 金 、株
式 、保 険 等 、
様 々な 金 融
商 品 の内 容 を
理 解 する
収 集 し た情 報
を比 較 検 討
し 、適 切 な 消
費 行 動 を する
事 が出 来 る金
融 商 品 を含 む
様 々な 販 売 ・
勧 誘 行 為 に適
用 される 法 令
や制 度 を理 解
し 、慎 重 な 契
約 締 結 等 、適
切 な対 応 を行
うこ とができ
る。詐 欺 等 、
悪 質 な者 に狙
われない よう 慎
重 な契 約 を心
がける こ とがで
きる (成 年 後 見
制 度 の知 識 が
あり 、必 要 に
応 じて 専 門 家
に 相 談 する )
金融商品の 3
つの 特 性 (流
動 性 ・安 全
性 ・ 収 益 性 )を
理 解 する 。お
金 の 価 値 と時
間 との 関 係 に
ついて 理 解 す
る(複 利 、 割
引現在価値
等 )。景 気 の
動 向 、金 利 の
動 き 、イン フ
レ・ デフ レ 、為
替 の 動 きが 、
金融商品の
価 格 、実 質 価
値 、金 利 等 に
及 ぼ す影 響 に
ついて 理 解 し
ている
分野
金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択
分類
保険商品
ローン・クレジット
小学生
事故や疾病等が生活に大きな影響を与え
る事や備えの必要性を認識している。危
険から身の安全を確保する方法を身につ
ける
子ども同士でお金の貸し借りはしない
中学生
高校生
奨学金を借りてい
る場合、自力で返
済する意思を持
ち、返済計画を立
てる事が出来る
若年社会人
高齢者
資産形成商品
外部の知見を適切に活用
する必要性の理解
困った時の対処方法や相
談の仕方を身につける
リスクとリターンの基本的な関係について理解
トラブルに遭ったときの相談
社会生活には様々なリスクがあり、誰にで ローン等の仕組みや留意点について学ぶ する。期間to金利の関係を知り、継続して貯蓄
窓口を知る
に取り組む態度を身につける
も起こりうることを理解している。リスクを回
避したり、損失を防止・軽減しりするための
方法を学び、実践する。保険はリスクを移 ローンやクレジットカードの仕組みを理解
トラブルに対処する具体的
金融商品のリスクとリターンについて理解し、
し、金利の高さと返済額の関係を実感を
転する手段である事を理解する
方法を学び、実際に行使で
事故責任で金融商品を選択する意識を持つ
もって知り、金利の重さを理解する
きる技能を養う
大学生
一般社会人
外部の知見の適切な活用
自分自身が備えるべ
きリスクの種類や内容
を理解し、それに応じ
た対応(リスク削減、
保険加入等)を行う
事が出来る。自動車
事故を起こした場合、
自賠責保険では賄え
ない事がある事を理
解している
備えるべきリスクと
必要な金額をカ
バーするために適
切な保険商品を検
討、選択肢、家族
構成や収入等の変
化に応じた見直し
たを行うことができ
る
ローンやクレジットは
資金を消費してしま
いやすい事に留意す
る。ローンやクレジット
の返済を適切に履行
しない場合には、信
用情報機関に記録が
残り、他の金融機関
等からも借入等が難
しくなる事を理解する
高齢期における保
険加入の必要性・
有効性や保険の種
類を理解している
様々な金融商品のリスクとリ
ターンを理解し、自己責任の下
で運用する事ができる
リスクとリター
金融商品を利用する際に
住宅ニーズを考慮
ンの関係を踏
相談等が出来る適切な機
したライフプランを
まえ、求めるリ
関等を把握する必要があ
描いている。住宅
ターンと許容
る事を認識している。金融
自らの生活設
ローンの基本的な
できるリスクを
商品を利用するに当たり、
計の中で、ど
特徴を理解し、必
把握してい
外部の知見を適切に活用
のように資産
要に応じ具体的な
る。分散投
する必要があることを理解
形成をしてい
分散投資を
知識を習得し返済
資・長期投資
している。金融商品の利用
くかを考えて
行っていても、
能力に応じた借入
のメリットを理
の是非を自ら判断するうえ
いる
提起的に投資
を組む事ができる
解し、活用し
で必要となる情報の内容
対象、(投資す
ている
と、相談しアドバイスを求め
る国や商品)の
られる適切な機関等を把
見直しが必要
握し、的確に行動できる
であることを理
解している
リタイア後の生活
の安定のために、
必要に応じて負債
と資産のバランス
を見直せる
自ら理解できない商品への投
資はしないノーリスク・ハイリ
ターンをうたう金融商品に疑い
をもつことができる。年齢やライ
フスタイル等を踏まえ、投資対
象の配分比率を見直す必要が
ある事を理解している
出 所 )金 融 教 育 推 進 会 議 (2014)p.4 を 参 考 に 作 成
【 図 表 3】 は 、 我 々 が 各 段 階 に お い て 今 後 必 要 と さ れ る 金 融 リ テ ラ シ ー と 考
5
え る 2014 年 6 月 に 発 表 さ れ た 「 金 融 リ テ ラ シ ー ・ マ ッ プ 」 で あ る 。 こ の よ う
に、分野・年齢層別の身に付けるべき金融リテラシーは国民に向けて示されて
いるが、現在の日本の金融教育は必要とされている金融リテラシーを養うこと
が出来るほど充実したものだろうか。本節では、小・中・高・大学・社会人・
高齢者等、各段階における金融教育の現状について詳しく述べる。
10
(1)学 校 段 階 に お け る 金 融 教 育 の 現 状
学校段階では、社会人になるまでに家計管理、生活設計の重要性を理解させ
る と と も に 、金 融 教 育 に お い て 基 礎 と な る 重 要 な 事 項 (金 利 、イ ン フ レ 、デ フ レ 、
14
為 替 、リ ス ク・リ タ ー ン 等 )に つ い て 理 解 さ せ る こ と が 必 要 で あ る 。と り わ け 高
校生、大学生については、社会人に向けた準備段階として、これらの重要事項
の 理 解 を よ り 徹 底 さ せ る こ と が 必 要 だ と 考 え ら れ て い る 17 。 そ れ に 関 連 し て 、
学 校 段 階 に お け る 金 融 教 育 に 関 す る 法 律 は 、1947 年 に 制 定 さ れ た 教 育 基 本 法 が
5
2006 年 に 全 面 的 に 改 正 さ れ 、教 育 の 目 標 と し て 、自 主 及 び 自 律 の 精 神 を 養 う と
ともに、職業及び生活との関連を重視することや、主体的に社会に参画し、そ
の 発 展 に 寄 与 す る 態 度 を 養 う こ と 等 が 規 定 さ れ た 。 こ れ を 受 け 、 2008 年 に は
小・中 学 校 、2009 年 に は 高 等 学 校 の 学 習 指 導 要 領 が 改 訂 さ れ 、授 業 時 間 に 制 約
が あ る 中 、 金 融 教 育 に 関 す る 内 容 の 充 実 が 図 ら れ た 。 小 学 校 は 2011 年 度 、 中
10
学 校 は 2012 年 度 か ら 全 面 実 施 さ れ 、高 等 学 校 は 2013 年 度 か ら 年 次 進 行 で 実 施
さ れ て い る 18 。 し か し 、「 金 融 教 育 」 と い う 教 科 は 学 校 に は 存 在 し な い 。 で は 、
実 際 に ど の 教 科 で 金 融 教 育 は 行 わ れ て い る の だ ろ う か 。道 徳 (小 学 校 、中 学 校 )、
生 活 (小 学 校 1~ 2 年 )・ 社 会 科 (小 学 校 3~ 6 年 )、 社 会 科 の 公 民 的 分 野 、 公 民 の
現代社会や政治・経済、家庭科には、金融教育の内容が多く含まれている。ま
15
た、国語、算数・数学にも、金融教育と関連付けるべき内容や要素が多く含ま
れ て い る 。 総 合 的 な 学 習 の 時 間 (小 学 校 、 中 学 校 、 高 等 学 校 )、 特 別 活 動 (学 級 活
動 や 学 校 行 事 )で は 、総 合 的・実 践 的 な 学 習 を 実 施 し 、お 金 に 関 す る 教 育 に あ て
ることを検討する学校も増えている。高等学校の専門教育の教科でも、とくに
農業、工業、商業、水産、家庭科等において、金融教育と関連付けた授業の展
20
開 が 可 能 で あ る 19 。
ここで、学習指導要領改訂後の教育内容を教科ごとに焦点を当て説明する。
社会科・公民科では、現在の経済社会と経済活動のあり方の中で、株式会社の
仕組み、直接金融や間接金融等の金融の仕組みや働き、金融の自由化・国際化
等、金融に関する環境の変化について教育が行われることとされている。家庭
25
科では、新学習指導要領に「生涯の生活設計」が新たに盛り込まれ、新しい教
科書には、単に預貯金をするだけではなく、運用をするという視点で金融商品
を選択することの重要性や、運用にはリスクが伴うため、金融商品の特徴をよ
く理解した上で、目的や期間によって投資先を分けること等に関する記述がみ
られる。このように、金融教育は、各教科等でそれぞれに実施されている。こ
30
のほか、小・中・高等学校の総合学習等の時間において、業界団体の活動や各
15
金 融 機 関 の CSR(企 業 の 社 会 的 責 任 )活 動 と 連 携 し た 、 金 融 教 育 の 取 り 組 み が 行
わ れ て い る 20 。 こ の 点 に 関 し て は 、 次 節 で 詳 し く 述 べ る 。
最後に、
【 図 表 4】に お い て 実 際 に 学 校 で ど の よ う に 金 融 教 育 が 実 施 さ れ て い
るかを紹介したい。
5
【 図 表 4】 学 校 に お け る 金 融 教 育 の 実 践 事 例
幼稚園
取り組みのテーマ
大根づくりと子どもバザー 栽培
活動から販売活動へ
お金は大切に使おう
小学校
内容
大根を栽培し、保護者向けバザーで販売する
教材(3匹の子ぶたが文房具を買いに行ったときの
話)を読み、話し合う
目的
お金は労働の報酬として得られるということに気づき、労働の
大切さを知り、身の回りの働く人に感謝の気持ちをもつこと
ものや金銭を大切にし、正しい使い方を身につけること
一定期間おこづかいを定額で児童に与え、お金の お金を使うには責任が伴うことを理解すること、貯蓄すること
やりくりを体験させ、おこづかい帳を記録させる
の大切さに気づくこと
限られた予算の中でカレーの材料を買う方法を考 金銭感覚を養うこと、「希少性」という経済の基礎を理解する
カレー作りゲームに挑戦しよう!
える「カレー作りゲーム」を行う
こと、多角的に考え価値観に基づいて意思決定すること
生産・販売などの体験を通じて、経済のしくみを学ぶこと、お
修学旅行のおこづかいを自分 農作物を育て、販売し、利益を修学旅行のおこづ
金を得ることの難しさやおもしろさを感じること、お金の意味
たちの手でつくろう
かいにする
や価値について気づくこと
「お金」に関する疑問点について、自ら問題意識をもち、課
「お金」をテーマとし、自分が課題とする小テーマ
お金について調べよう
題を解決しようとする態度を育てること、金融に関する様々
を設定し、グループで調べ、発表する
な知識を得られるようにすること
単利と複利の計算方法を知り、グラフを描き、違い 金利に関する正しい知識を身につけ、今後の人生(貯蓄をし
単利と複利の違いを調べよう
の大きさを理解する
たり、お金を借りたりする場合等)に生かすこと
地域のさまざまな仕事の「達人」をゲストとして迎
自分の将来を考えるきっかけをつかませ、望ましい職業観・
達人集合-この人に学ぶ─
え、話を聞く
勤労観をはぐくむこと
企業づくり計画書を作成し、会社説明会を行い、 企業や金融について関心を高め、その役割について考え、
企業(会社)をつくってみよう
求人や資金調達について検討する
学ぶこと
主体的に判断し行動できる消 「これであなたもひとり立ち」などの副教材を利用し 消費者として主体的に判断・行動することができる力を養う
費者をめざして
て実践的・体験的に学ぶ
こと
将来の自分の生き方を想定した生涯収入・支出の 将来の生活設計や経済設計を立てることの重要性を理解
ライフコースを設計しよう
予測を立て、収支バランスを診断し、検討しながら し、自分の生き方や目標達成のための課題について考えさ
将来設計を考える
せること
おこづかい帳を記録してみよう!!
中学校
高等学校
出 所 )金 融 広 報 中 央 委 員 会 (2013a)pp.7-8 を 参 考 に 作 成
10
(1)社 会 人 ・ 高 齢 者 段 階 に お け る 金 融 教 育 の 現 状
社 会 人・高 齢 者 段 階 で は 、自 ら 金 融 商 品 の リ ス ク を 十 分 に 理 解 す る と と も に 、
上述した最低限習得すべき金融リテラシーを身に付け、自らの判断で選択でき
る能力を養うことが重要である。例えば、運用について、将来に向けて金融資
産を増やす必要性の高い若年社会人は、ある程度のリスクを有する金融商品を
15
組み合わせることが適当と考えられる一方、個々人によって異なるものの、高
齢者はより安全性の高い資産を中心とした資産構成とする等、年齢階層で適切
な金融行動が異なることを理解させることが重要である。また、高齢者につい
ては、様々なトラブルや詐欺的被害に遭うことが多いことから、あまりにもリ
ターンが大きい等、うまい話には疑いを持ち、より慎重な判断を行うことが重
16
要 と 考 え ら れ て い る 21 。
では、社会人・高齢者段階にはどのような金融教育が実施されているのだろ
うか。
業界団体や各金融機関においては、自らが取り扱っている預金、株式、投資
5
信託、保険といった個別の金融商品やその社会的意義についての説明、資産運
用や投資知識の向上のためのセミナー・出張講座、投資や資産運用について意
識の啓発を図るイベント等様々な取り組みが行われている。各都道府県や市町
村の消費生活センターや公民館においても消費生活相談、消費者啓発活動、生
活に関する情報提供を行うため、多重債務問題への注意喚起、詐欺的商法・犯
10
罪の被害に遭わないための啓発活動を中心とした取り組みが行われている。ま
た 、生 活 に 則 し た 教 育 ・学 術・文 化 に 関 す る 事 業 を 実 施 す る た め 、金 融・保 険 ・
税金、消費者問題といった金融教育に関する講座が開催されている。
そして、社会人段階における最も特徴的な金融教育としては確定拠出年金に
関する理解の充実であろう。確定拠出年金の企業型は、事業主が実施するもの
15
で あ る が 、 加 入 者 (従 業 者 )の 管 理 資 産 に つ い て の 運 用 の 指 図 は 加 入 者 自 身 が 行
い、運用リスクについても加入者が負うこととなる制度であることから、事業
主の責務として、加入者に対して、いわゆる投資教育を行う努力義務が規定さ
れている。実際には、投資教育は事業主から委託を受けた運営管理機関が実施
している場合が多く、企業が確定拠出年金制度を導入する際の研修のほか、再
20
教育や確定拠出年金制度への関心を促す機会として継続研修を実施することが
求められている。また、確定拠出年金の個人型は、国民年金基金連合会の責務
と し て 、投 資 教 育 の 努 力 義 務 が 規 定 さ れ て い る 22 。こ の よ う に 、社 会 人・高 齢 者
段階の金融教育は教育機関以外の主体の取り組みが中心になっている。では、
具体的にどのような主体が金融教育の普及に努めているのだろうか。次節で詳
25
しく紹介していきたい。
第 2節
各主体における金融教育
本 節 で は 、政 府 や 学 校 、NPO 団 体 、金 融 機 関 等 が 金 融 リ テ ラ シ ー 向 上 に お い
て果たすべき役割とその現状について述べる。
30
前章で述べたとおり、近年、金融・経済をめぐる環境が大きく変化し、様々
17
な金融商品や金融サービスが生まれている。消費者はそうした変化に取り残さ
れないよう、金融機関や業界団体等が行っている金融セミナーや公開講座等を
活用し、適宜新しい情報を得ることで金融リテラシーを高める必要がある。そ
のための支援を、各主体が連携をとって積極的に行うべきであるが、現時点で
5
は 具 体 的 に ど の よ う な 取 り 組 み が 行 わ れ て い る の だ ろ う か 23 。
<政府機関>
2012 年 11 月 、 政 府 は 金 融 庁 金 融 研 究 セ ン タ ー に 「 金 融 教 育 研 究 会 24 」 を 設
置 し た 。 こ れ は サ ブ プ ラ イ ム ロ ー ン 問 題 の 発 生 を 契 機 に 、 G20 等 の 国 際 的 な 議
10
論において「健全な金融システムの維持には、規制のみならず利用者側の金融
リテラシーの向上と金融行動の改善が重要である」と再認識され、金融教育の
一 層 の 推 進 を 図 る た め の 幅 広 い 検 討 を 行 う こ と が 目 的 で あ る 。そ こ で 、2013 年
4 月には「国民が最低限身に付けるべき金融リテラシー」の明確化、及び具体
化 の 検 討 は 金 融 広 報 中 央 委 員 会 を 活 用 す る こ と を 付 言 し た 25 。
15
また消費者庁では、担当省庁、国民生活センター、金融広報中央委員会が有
す る 情 報 や 知 識 を 活 用 し た 消 費 者 教 育 用 教 材 等 の 作 成・配 布 、出 前 講 座 の 実 施 、
地域で開催される講座への講師派遣等を行い、社会教育施設等の地域における
消費者教育の推進を行っている。特に金融教育は消費者教育の重要な要素であ
るため、金融教育の内容を消費者教育の内容に盛り込むとともに、金融教育と
20
連 携 し た 消 費 者 教 育 を 推 進 す る こ と が 重 要 と な る 26 。
具体的な金融教育のモデル事業としては、東京都の協議会が学校現場の協力
を 得 て 開 発 し た 教 材 (小 学 3 年 生 向 け「 お 金 っ て な あ に ? 」、中 学 2 年 生 向 け「 契
約 っ て 何 だ ろ う ? 」)を 活 用 し た 授 業 や 、様 々 な 工 夫 を 凝 ら し た 講 座 の 実 施 等 が
挙げられる。モデル事業実施後は、教員や児童・生徒へのアンケート等により
25
実施結果を検証し、必要に応じて改定を行っている。今後は検証の効果を高め
るため、モデル区市町村及び学校を拡充する必要があり、また金融教育の必要
性についての理解を深めてもらうため、より多くの教員に消費者被害や多重債
務の実態を知ってもらうこと、より多くの学校で実施してもらうため、具体的
にどのような授業でどのように教材を活用したか等の事例を広く紹介していく
30
必 要 が あ る 27 。
18
<金融広報中央委員会>
日本銀行の中に事務局を置き、中立・公正的な団体である金融広報中央委員
会は、都道府県の金融広報委員会を統括する、日本における金融教育の司令塔
的存在である。
5
具体的な活動内容は、金融教育の教師向けバイブルといってもよい内容であ
り、小学校から高等学校までの授業の進め方や指導の工夫、指導計画例等を提
示 し た「 金 融 教 育 プ ロ グ ラ ム 」(副 題:社 会 の 中 で 生 き る 力 を 育 む 授 業 と は 。2007
年 公 表 )を 提 供 し て い る 。ま た 、「 金 融 教 育 ガ イ ド ブ ッ ク 」 (副 題 : 学 校 に お け る
実 践 事 例 集 。 2005 年 公 表 )に お い て 4 つ の 分 野 (生 活 設 計 ・ 家 計 管 理 、 経 済 ・ 金
10
融 の 仕 組 み 、消 費 生 活・金 融 ト ラ ブ ル 防 止 、キ ャ リ ア 教 育 )に つ い て 小 学 校 か ら
高等学校まで各段階での実践的指導方法等を記載している。
他にも、金融リテラシーの向上に役立つ様々な情報を掲載するウェブサイト
「 知 る ぽ る と 」を 公 開 し て い る 。
「金融と経済のしくみ」
「暮らしのマネー情報」
等の情報、クイズやビデオで学ぶコーナー等、子どもから大人まで分かりやす
15
くお金や金融について知ることができるだけでなく、現在の家計収支や貯蓄、
借り入れ等をもとに将来の暮らし向きを判断できる「生活設計診断」や住宅ロ
ーンの返済計画や預貯金の積み立て予測等ができる「資金プランシミュレーシ
ョン」等、家計管理や生活設計に役立つコンテンツも用意されている。
さらに金融広報中央委員会は、教員や教職課程の学生がより良い金融教育を行
20
え る よ う な 支 援 も 行 っ て い る 。2005 年 か ら 毎 年 開 催 さ れ て い る「 金 融 教 育 フ ェ
スティバル」では、教員や学生を対象に学校段階別の 4 つの分科会において、
金融教育に熱心に取り組んでいる教員が講話や実践報告・事例を紹介し、ワー
クショップを通して金融教育の進め方を実践的に習得することができるセミナ
ーを実施している。各都道府県の金融広報委員会と主催する「金融教育公開授
25
業 28 」 で は 、 全 国 各 地 20 の 小 ・ 中 ・ 高 等 学 校 で 金 融 を 学 ぶ 公 開 授 業 を 開 催 し 、
実際に紹介している。生活設計・家計管理、経済や金融、金融トラブル防止、
キャリア教育等、幅広い教育分野に関する授業を参観し、金融教育専門家の講
演 を 聞 く こ と が で き る 29 。
さらに金融広報中央委員会では、金融教育を体系的・効果的に推進していく
30
ため、各種金融団体・関係省庁・学識経験者・メディア・各種団体といった金
19
融 に 関 わ る ほ ぼ す べ て の 主 要 関 係 者 と 連 携 を 強 化 し て い る 。2002 年 か ら 開 催 さ
れ て い る NPO 等 に 連 携 を 広 げ た「 金 融 に 関 す る 消 費 者 教 育 フ ォ ー ラ ム 」で は 、
金融に関する消費者教育や学校における金融教育に関する活動状況を紹介し、
自由な意見交換を通じて関係機関・団体の活動の充実を図る。また、これらの
5
関係者とともに「金融教育研究会報告」で示された諸課題への取り組みを審議
す る た め 、2013 年 6 月 に「 金 融 教 育 推 進 会 議 」を 設 置 し た 。こ れ に よ り 各 課 題
の実施主体が具体的な検討を行い、半年を目処 に中間報告、また 1 年後には最
終報告および作業の進歩状況報告を行うことで「金融リテラシー・マップ」に
基づいた教育・知識の普及活動の充実を図っている。このように、金融広報中
10
央委員会は中立・公正的立場からの金融経済情報・資料の提供、及び金融経済
学習支援という役割を果たすべく活動している。
<家庭・学校>
日常の生活におけるお金や金融経済について、子どもに生活者としての力を
15
育 て る に は 、実 際 の 生 活 の 場 で あ る 家 庭 や 地 域 の 果 た す 役 割 が 大 き い 30 。特 に 、
社会に出る前のすべての児童・生徒が教育を受ける場である学校は、金融教育
に取り組む場として核となる。それは教育の専門家により体系的に教育が行わ
れるため、児童・生徒・保護者の信頼関係の下で最も効果的・総合的に教育が
できるからである。つまり、学校の役割は、社会に出る前にお金を適切に扱う
20
知識や技能を教え、トラブルを未然に防ぐことで、合理的で豊かな選択と生き
る 力 を 身 に 付 け さ せ る こ と で あ る 31 。 具 体 的 な 取 り 組 み 内 容 は 、 前 節 で 述 べ た
通りである。
<金融・証券団体>
25
全 国 銀 行 協 会 は 、 従 来 か ら CSR 活 動 の 推 進 と い う 観 点 か ら も 金 融 経 済 知 識
の 普 及・啓 発 活 動 に 取 り 組 ん で き て い る 。具 体 的 に は 、教 材 の 提 供 や 講 師 派 遣 、
指定校への支援等を実施している。傘下の個別行の金融教育の取り組みもウェ
ブサイトを利用して紹介している。
ま た 日 本 証 券 業 協 会 は 、少 子 高 齢 化 社 会 へ の 進 展 、財 政 状 況 等 を 踏 ま え る と 、
30
国 民 の 自 助 努 力 に よ る 資 産 形 成 は 極 め て 重 要 な 課 題 で あ る と し 、 NISA や 確 定
20
拠 出 年 金 制 度 等 の さ ら な る 普 及 に 向 け た 広 報 活 動 の 推 進 、 NISA 拡 充 ・ 恒 久 化
の実現に向けた働きかけ等を行っている。このように個人投資家を支援する取
り組みを進めるとともに、国民各層の金融リテラシー向上に向けた金融教育を
拡充・推進する必要がある。
5
具体的には、中学校・高等学校における新たな金融教育のあり方について検
討を進め、大学では「金融リテラシー出前講座」の拡充を図る。さらに、文部
科学省と連携し、小学校・中学校に講師を派遣する「土曜学習」を実施する等
の取り組みを進めている。社会人に対しては、特に投資未経験者・若年層に対
し て 、10 月 4 日 の「 投 資 の 日 」の イ ベ ン ト や NISA に 関 す る 特 別 講 座 、市 民 セ
10
ミ ナ ー 、職 場 等 に 講 師 を 派 遣 す る「 NISA 応 援 ! 出 張 講 座 」等 を 実 施 し て い る 。
また、金融教育推進会議の下、関係機関と連携し年齢別に最低限習得すべき金
融リテラシーを具体化した「金融リテラシー・マップ」の活用に取り組んでい
る 。 さ ら に 「 JSDA キ ャ ピ タ ル マ ー ケ ッ ト フ ォ ー ラ ム 」 の 開 催 や 客 員 研 究 員 制
度を通じて、国内外の若手研究者・証券市場関係実務者の人材交流を促し、積
15
極 的 に 学 術 研 究 の 支 援 を 行 っ て い る 32 。 こ の よ う に 、 証 券 団 体 等 は 一 般 消 費 者
と学校教育に分け、それぞれの発達・習熟レベルに応じた活動を展開すること
が役割である。
<個別金融機関>
20
個別金融機関は、体系的に広範なプログラムを提供している会社や個別的な
対応、受動的な会社等様々な役割を果たす事ができる。ここでは事例として、
野村ホールディングスの「金融教育講座」を挙げる。野村ホールディングスで
は、将来の日本経済を担う学生に生きた経済より実践的な知識を提供すること
を 目 的 と し て 、2001 年 よ り 全 国 各 地 の 大 学 に「 金 融 教 育 講 座 」を 提 供 し て い る 。
25
この講座では、アナリスト等経済の現場で働く専門家が講師を勤め、実際の経
済の動きを具体的に解説する。こうした取り組みによって、投資家や国民全体
の金融リテラシーの向上が図られれば、金融商品に対する理解が深まり、金融
商品の明瞭な区別をつけることができる。結果として、流動性危機抑制につな
がるのだ。すなわち、金融商品の供給側である金融機関は、こうした金融リテ
30
ラシー向上の意義を認識し、金融教育講座の提供を行うべきである。
21
ま た 東 京 証 券 取 引 所 (以 下 、東 証 )は 、授 業 で 生 き た 金 融・経 済 を 生 徒 に 教 え る
ことを目的とし、中学校・高等学校の社会科・公民科の教員を対象に長期休暇
を利用したセミナーを行っている。また研修や教材研究の一環として、教員の
研修会や勉強会に東証の社員を講師として無償で派遣。講演だけでなく、株式
5
学習ゲームを使った教材の紹介等を行う。また、各種副教材の提供や、教員向
けメールマガジンの提供によって、教員向けのセミナーやイベントの開催およ
び新しい教材の紹介、さらに東証の薦める株式学習ゲームを実施している教員
には、株価に影響を与えるニュース等についてわかりやすい解説をタイムリー
に 配 信 し て い る 33 。
10
【 図 表 5】 東 京 証 券 取 引 所 が 提 供 し て い る 副 教 材
出 所 )東 京 証 券 取 引 所 HP を 参 考 に 作 成 。
15
ま た 、個 人 投 資 家 の 拡 大 を 図 る 取 り 組 み を 行 う 企 業 も あ る 。大 阪 取 引 所 で は 、
デ リ バ テ ィ ブ (金 融 派 生 商 品 )の 代 表 で あ る「 日 経 平 均 先 物 」と「 同 オ プ シ ョ ン 」
の 取 引 を ゲ ー ム 感 覚 で 体 験 で き る シ ミ ュ レ ー タ ー を 2014 年 10 月 27 日 か ら イ
ンターネット上で無料公開を行う。仮想市場での取引を通じてデリバティブの
仕組みを学び、投資成績を競うことで楽しみながらデリバティブを理解しても
22
ら う こ と が 狙 い で あ る 。 初 心 者 向 け に も 、「 ミ ニ 日 経 平 均 と は 」「 先 物 の 証 拠 金
の仕組み」等、5 分前後で学習できるシナリオと、同じ市場環境で自由に取引
を行えるコンテンツ、さらに株価急落による巨額の損失につながる危険な取引
を 学 ぶ シ ナ リ オ も 盛 り 込 ま れ て い る 34 。
5
< NPO 団 体 >
「 金 融 証 券 知 識 の 普 及 に 関 す る NPO 連 絡 協 議 会 」は 、金 融 知 識 普 及 協 会 、証
券 学 習 協 会 、エ イ プ ロ シ ス (投 資 と 学 習 を 普 及・推 進 す る 会 )、日 本 FP 協 会 に よ
っ て 構 成 さ れ る 中 立・公 正 的 な 団 体 で あ る 。こ の ほ か 、日 本 経 済 教 育 セ ン タ ー 、
10
消費者教育支援センター等があり、実に様々な教材の提供や講師派遣等を実施
し て い る 。こ う し た 教 材 の 中 で 特 筆 す べ き は 、日 本 FP 協 会 が 作 成 し て い る「 10
代から学ぶ
パーソナル・ファイナンス」で、対象として高校生を想定してい
る が 、 大 学 生 で も 新 社 会 人 に も 十 分 使 え る 内 容 と な っ て い る 35 。
15
第3節
海外における金融教育
本節では、世界的な金融教育強化の背景及び英米を中心に各国の取り組みを
概観し、日本がこれから金融教育を促進していくにあたってのヒントを見つけ
た い 。2008 年 の 金 融 危 機 は 、震 源 地 で あ る 米 国 の み な ら ず 、世 界 各 国 の 家 計 の
金融行動に深刻な影響を及ぼした。自国通貨価値や住宅価格の大幅な下落によ
20
り、欧米諸国では、ローンの返済負担が急速に高まり、支払い遅延や住宅差し
押さえの増加等、債務負担問題が深刻化している。こうした家計の債務問題は
当該国の経済全体にも大きな影響を及ぼしている。
このような状況下、金融危機の被害を受けた国々等では、金融規制・監督態
勢の見直しを行うと同時に、消費者の金融リテラシー改善のために金融教育を
25
強化する動きが広がりつつある。中央銀行を含む公的当局が主体となり、金融
教育に関する国家戦略を策定・強化する国が急速に増えている。こうした動き
の背景には、金融教育の推進は低所得者層を含む幅広い層に対して、官民が連
携して情報提供や各種教育活動を行っていく必要があるとの共通認識が存在す
る よ う に 窺 わ れ る 。ま た 、近 年 の 傾 向 と し て 国 家 戦 略 の 採 用 国 の 増 加 と と も に 、
30
戦略の内容面においても、教育活動の量的拡大に加え、教育の質的改善や教育
23
効 果 の 向 上 に 配 慮 す る 傾 向 が 強 ま っ て い る 36 。
以 下 で は 、先 進 的 な 取 り 組 み を 行 っ て い る 英 米 の 金 融 教 育 に つ い て 紹 介 す る 。
<英国>
英国は、政府の指導の下、体系的に金融教育を推進している。英国政府は、
5
1990 年 代 初 頭 に 社 会 問 題 化 し た 個 人 年 金 商 品 の 不 正 販 売 問 題 の 事 後 処 理 に 多
額のコストを要したことを教訓に、以降金融トラブル予防を目的とした金融教
育の普及に一貫して努めている。こうした政府の意図を基に、金融教育の促進
を 一 つ の 法 的 責 務 と す る 英 国 金 融 サ ー ビ ス 機 構 (以 下 FSA)が 設 立 さ れ た 37 。 以
後の英国における政府を中心とした体系的な金融教育推進のバックボーンとし
10
て 機 能 す る こ と と な る 。FSA は 設 立 後 、
「 金 融 能 力 国 家 戦 略 」の 策 定 (2003 年 )、
国 民 の 金 融 リ テ ラ シ ー に 関 す る 全 国 調 査 (2005 年 )等 を 他 国 に 先 駆 け て 実 施 し
て い る 。ま た 、2007 年 以 降 、政 府 は 財 務 省 を 中 心 に 、政 府 予 算 の 投 入 に よ る 金
融 教 育 普 及 の 加 速 に 努 め て い る 38 。
また、英国は他国に先駆けた革新的な教育手法を積極的に導入している。特
15
に金融危機以降、金融システムに対する消費者の信頼感が喪失したことに対応
するため、最近の行動経済学の研究成果を取り入れた「政府の中立・公正なア
ドバイス提供プロジェクト」を全国展開している。このサービスは、利用対象
者に制限なく、特定の金融商品を推奨したり、購入を強要しない、あくまでも
第三者の立場で相談者の所得・生活環境等を勘案しつつ、金融商品の適切な選
20
択 や 円 滑 な 取 引 を 支 援 す る ア ド バ イ ス・サ ー ビ ス で あ る 。ア ド バ イ ス の 内 容 は 、
家計の予算管理、貯蓄計画、消費者信用の利用、老後生活設計、税金・年金対
策、等多岐にわたっている。さらに、同プロジェクトが英国経済全体にもたら
す経済的便益は、計画遂行に必要な投入コストの10倍以上に達すると推計さ
れ て い る 39 。 こ の よ う な 相 当 規 模 の 外 部 経 済 効 果 が 見 込 ま れ る 背 景 と し て は 、
25
消費者の金融行動の効率化を通じ、政府部門における金融危機や金融トラブル
への対策費の減少が見込まれる事や、金融セクターでも家計との金融取引の増
加や各種ローンの債務不履行の減少等により増収が期待できるためである。
ま た 、英 国 で は 学 校 教 育 に お け る 金 融 教 育 も 非 常 に 重 視 し て い る 。1998 年 か
ら 2008 年 に か け て 、 大 幅 な 教 育 改 革 が 行 わ れ 、 金 融 教 育 の コ ン テ ン ツ を ナ シ
30
ョ ナ ル ・ カ リ キ ュ ラ ム (日 本 の 学 習 指 導 要 領 に 相 当 )に 盛 り 込 み 、 科 目 編 成 に お
24
け る 金 融 教 育 の 位 置 づ け の 向 上 に 努 め た 。し か し 、当 時 の 英 国 も 日 本 と 同 様 に 、
任意科目である総合学習科目には十分な授業時間が割り当てられておらず、そ
れ に 対 処 す る 形 で 、 2009 年 11 月 、 金 融 教 育 を 含 む 総 合 学 習 科 目 は 必 須 化 さ れ
た 。 さ ら に 、 政 府 ・ FSA は 、 金 融 教 育 を 担 当 す る 学 校 ・ 教 師 に 対 す る サ ポ ー ト
5
体 制 の 充 実 化 を 図 る た め 、 全 国 ネ ッ ト ワ ー ク を 有 す る 金 融 教 育 専 門 の pfeg を
は じ め と す る NPO と の 間 で 資 金 提 供 を 含 め た 広 範 な 連 携 活 動 を 行 っ て い る 。
pfeg は 、英 国 が 学 校 に お け る 金 融 教 育 を 推 進 す る 上 で 重 要 な 役 割 を 果 た し て
おり、具体的には、学校用の金融教育カリキュラム作成、金融教育のための教
師教育、学校教育で利用できる教材パッケージの無償提供のほか、民間企業に
10
よ る 学 校 教 育 へ の 協 力 に つ い て の ガ イ ド ラ イ ン の 策 定 等 を 行 っ て い る 。さ ら に 、
2014 年 か ら 適 用 さ れ る ナ シ ョ ナ ル・カ リ キ ュ ラ ム に お い て 、正 式 に 金 融 の 内 容
が 位 置 づ け ら れ 、 pfeg を 始 め と す る 支 援 機 関 も 充 実 し て き て い る 40 。
<米国>
一 方 、米 国 の 金 融 に 関 す る 教 育 は 、1960 年 代 以 来 の 学 校 に お け る 消 費 者 教 育
15
の 経 験 や 、1970 年 代 か ら の 全 国 規 模 で の 経 済 教 育 の 展 開 に 見 ら れ る よ う に 、早
くから自立を促す実践的な教育としてカリキュラムに組み込まれ、今日まで行
われてきた。しかし、日本とは異なって、学習内容は地域や学校の裁量に任さ
れ、統一的なカリキュラムとして実行されることはなかったが、一方で、学校
での経済教育や金融教育を地域の企業が支援するシステムも以前から存在して
20
いた。また、クレジットシステムの先進国としての金銭管理教育も、小学校に
おける小切手についての学習や、高校でのクレジット教育、投資教育等、現在
でも一層盛んに行われている。さらに、近年では退職企業年金制度である
401(k)の 施 行 に 伴 っ て 、 一 般 従 業 員 に 対 す る 投 資 に 関 す る 教 育 も 一 般 的 に な っ
てきた。市場経済の一方の担い手としての消費者を育てることが、健全な市場
25
を生み出し、その結果として自社の利益を含めて、経済全体を豊かにするとい
う認識があるため、企業への金融教育の支援が活発に行われているのである。
ジ ャ ン プ ス タ ー ト 同 盟 や 金 融 教 育 全 国 基 金 (National Endowment for
Financial Education 、 略 称 NEFE)等 の 非 営 利 団 体 は こ の 分 野 の 代 表 的 な 機 関
であり、その他多くの非営利組織が米国の金融教育を支えている。
30
以上のように、金融市場が発達している英米は、それぞれの特色があり、特
25
定の機関が中心となって消費者教育を推進している英国のようなケースもあれ
ば、様々な機関が独自に金融教育を進めている米国のようなケースもある。今
後日本で金融に関する金融教育を効率的に進めていくための大きなヒントにな
るだろう。
5
第3章
日本の金融教育普及における問題点
本章では、日本の金融教育普及における問題点を上述した現状を踏まえ述べ
る。
第1節
10
学校段階における金融教育の問題点
前章で述べたように、近年、学習指導要領が改訂され金融教育の内容の充実
が 図 ら れ た 。し か し 、改 訂 後 の 現 在 に お い て も 未 だ に 問 題 点 は 残 っ て い る 。2014
年 4 月に日本証券業協会が行った「中学校・高等学校における 金融教育の実態
調 査 報 告 書 で は 、全 国 の 中 学 校・高 等 学 校 等 を 対 象 に ア ン ケ ー ト を 実 施 し 、4462
校からの回答を得られた。本節では、そのアンケートの回答を基に、学校にお
15
ける金融教育の問題点を述べる。
(1)授 業 時 間 の 不 足
問 題 点 の 一 つ 目 と し て 、授 業 時 間 の 不 足 が 挙 げ ら れ る 。
【 図 表 6】は 、全 国 の
中学校・高等学校を対象に行った「授業時間に関するアンケート」の結果を示
し て い る (回 答 数
20
全 体 =3128 校 )。 授 業 時 間 が 十 分 に 確 保 さ れ て い る と 思 う か
と い う 問 い に 対 し 、 全 体 の 約 60%が 不 十 分 ・ や や 不 十 分 で あ る と 感 じ て い る 。
ま た 、 高 等 学 校 に 関 し て は 、 約 70%が 不 十 分 ・ や や 不 十 分 と 感 じ て い る 。 こ の
ような現状を見ると、学校段階における金融教育の授業時間が確保できていな
いという状況が窺える。さらに、授業時間が十分に確保できない要因について
の ア ン ケ ー ト 調 査 に お い て は 、 回 答 の あ っ た 1845 校 の う ち の 94.7%が 「 現 行
25
の 教 育 計 画 に そ の 余 裕 が な い た め 」 と 回 答 し て い る 41 。
30
26
【 図 表 6】 金 融 教 育 に 関 し て の 授 業 時 間 ア ン ケ ー ト
高等学校(n=1110)
17.7
中学校(n=2097)
50.8
9.1
全体(n=3128)
45.1
12.1
0
10
46.9
20
無回答
30
不十分
40
50
60
やや不十分
やや十分
70
十分
80
90
100 (% )
出 所 )金 融 教 育 を 推 進 す る 研 究 会 (2014) p.21 図 表 15 を 参 考 に 作 成
5
以上のような点から、現状の教育計画から金融教育の時間を確保することが
難しいことが読み取れる。
(2)教 員 の 金 融 に 関 す る 知 識 不 足
問題点の二つ目として、教える側の教員の金融に関する専門知識が不足して
い る と い う こ と が 考 え ら れ る 。【 図 表 7】 は 、「 金 融 教 育 を 取 り 上 げ る 際 に 難 し
10
いと感じていることは何か」と教員に調査したアンケートの回答である。これ
に よ る と 、約 50%の 教 員 は 教 え る 側 の 専 門 知 識 不 足 、 つ ま り 、教 員 の 金 融 に 関
する専門知識が不足していると感じているのである。学生に教える上で指導す
る側の知識が十分でなければ、教えられる側の金融リテラシーが向上しないの
は当然のことであり、今後改善していくべき問題点である。
15
【 図 表 7】 教 員 が 金 融 教 育 を 取 り 上 げ る 際 に 難 し い と 感 じ て い る 点
20
生 徒 に とっ て 理 解 が 困 難
教 える 側 の 専 門 知 識 不 足
授 業 時 間 が 足 りない
全 体 (n = 44 62 )
48.9%
48.4%
44.9%
中 学 校 (n = 3 08 5 )
49.9%
49.4%
44.4%
高 等 学 校 (n = 14 87 )
46.3%
45.9%
46.2%
出 所 )金 融 教 育 を 推 進 す る 研 究 会 (2014) p.32 図 表 29 を 参 考 に 作 成
(3)教 材 の 問 題
25
問 題 点 の 三 つ 目 と し て 、教 材 の 問 題 が 挙 げ ら れ る 。
【 図 表 7】が 示 す よ う に「 生
徒にとって理解が難しい」と感じていることから、授業の内容を理解しやすく
27
する必要があると考えられる。もちろん、教える側の教員も知識をつけること
は 必 要 不 可 欠 で あ る 。こ こ で 、
【 図 表 8】を 見 て も ら い た い 。こ れ は 教 員 が 金 融
教育を授業で実施する際、どのような支援があればよいと感じているか調査し
たものである。7 割以上もの教員が「生徒が利用しやすい副教材」を求めてい
5
る。
「 生 徒 が 利 用 し や す い 副 教 材 」が 求 め ら れ て い る と い う 事 は 、優 れ た 教 材 が
普及していないことを示している。このような現状を見ると、教員の授業の手
助けとなるような教材は必要不可欠であることがわかる。
【 図 表 8】 教 員 が 金 融 教 育 を 授 業 で 実 施 す る 際 、 希 望 し て い る 支 援
10
15
生 徒 が 利 用 し や すい 副 教 材
教 員 向 けの 研 修 会
外 部 講 師 の派 遣
全 体 (n = 44 62 )
74.3%
31%
25.7%
中 学 校 (n = 3 08 5 )
75.6%
28.8%
27.3%
高 等 学 校 (n = 14 87 )
70.9%
36.1%
22.3%
出 所 )金 融 教 育 を 推 進 す る 研 究 会 (2014) p.33 図 表 31 を 参 考 に 作 成
第2節
金融に対する関心の問題点
本節では、日本人の金融に対する意識の問題について取り上げる。近年の金
融商品の多様化等の環境の変化に日本人は対応できているのだろうか。
【 図 表 9】
20
は、金融全般の知識水準についてのアンケートを示している。これを見ると分
かるように、保険・年金、預貯金以外のほとんどの金融知識について「充分知
識 が 有 る と 思 う 」と 答 え た 人 は 10% 未 満 と か な り 低 い 水 準 に あ る こ と が わ か る 。
さ ら に 、6 割 以 上 の 人 が 大 半 の 金 融 知 識 に つ い て「 ほ と ん ど 知 識 が な い と 思 う 」
と答えていることから、日本人の金融知識は環境の変化に対応できていないこ
25
とがわかる。
30
28
【 図 表 9】 金 融 全 般 の 知 識 水 準 に つ い て の ア ン ケ ー ト (n=2256)
利用者や消費者を保護する仕組み
投資に伴う各種リスク
保険・年金
預貯金
金融商品
金融・経済の仕組み
71.1
71.9
33.2
27.3
63.7
54.6
0%
10%
20%
充分知識が有ると思う
30%
40%
どちらともいえない
50%
60%
70%
80%
90%
100%
ほとんど知識がないと思う
出 所 )金 融 広 報 中 央 委 員 会 (2010)p.2 を 参 考 に 作 成
5
次 に【 図 表 10】を 見 て も ら い た い 。こ れ を 見 る と 分 か る よ う に「 金 融 の こ と
を知らなくても生活していける」と答えた割合は年々増加している。このこと
か ら 、金 融 に 関 す る 知 識 へ の 関 心 が 薄 ま っ て い る こ と が 窺 え る 。ま た 、
「金融と
い う と 、難 し い イ メ ー ジ が 先 行 し て 積 極 的 に 情 報 を 集 め よ う と 思 わ な い 」
「金融
に関する正確な情報をどのように入手していいかわからない」と答えた人も増
10
加している。このことから、金融に関心を持っていたとしても、情報を入手す
る方法等が十分に広まっていないことがわかる。
【 図 表 10】 金 融 知 識 が 十 分 で な い と 考 え る 理 由
金融に関する正確な情報を
どのように入手していいかわからない
金融というと、難しいイメージが先行して
積極的に情報を集めようと思わない
金融のことを知らなくても生活していける
0
10
平成13年
15
20
平成15年
30
40
50
平成20年
60
(% )
出 所 )金 融 広 報 中 央 委 員 会 (2010)p.2 を 参 考 に 作 成
第 3節
高齢者の金融トラブル増加からみる金融教育の問題点
近年、高齢者を狙った金融商品の押し売りや詐欺等が多発していると新聞や
ニュースでよく目にする。そこで、本節では高齢者の金融トラブルについて詳
20
しく述べ、日本の現状の金融教育の問題点を明らかにしていきたい。
29
【 図 表 11】 高 齢 者 消 費 生 活 相 談 件 数 の 推 移
(件 )
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012 (年 度 )
出 所 )消 費 者 庁 『 平 成 25 年 版 消 費 者 白 書 』 p.33 図 表 2-2-1 を 参 考 に 作 成
5
【 図 表 11】は 全 国 の 消 費 生 活 セ ン タ ー 等 に 寄 せ ら れ た 高 齢 者 消 費 生 活 相 談 件
数 の 推 移 を 示 し て い る 。こ れ を 見 る と わ か る よ う に 、2008 年 度 以 降 は 金 融 商 品
に 関 す る 相 談 が 増 加 し た こ と 等 の 要 因 に よ り 、 相 談 件 数 は 増 加 傾 向 に あ る 42 。
【 図 表 12】 消 費 者 生 活 相 談 件 数 推 移 (年 齢 別 )
2007 年 =100
140
120
100
80
60
2007
10
消費者生活相談件数(総数)
2008
2009
65歳以上相談件数
65歳以上人口
2010
65歳未満相談件数
2011
(年 度 )
65歳未満人口
出 所 )消 費 者 庁 (2013)p.34 図 表 2-2-2 を 参 考 に 作 成
一 方 、 消 費 者 か ら の 相 談 の 総 件 数 は 2007 年 度 以 降 減 少 傾 向 に あ り 、 5 年 間
で 約 2 割 減 少 し て い る 。 ま た 、 年 代 別 に 見 る と 65 歳 未 満 の 相 談 件 数 も 総 件 数
15
と 同 様 に 推 移 し て お り 、2007 年 度 以 降 大 き く 減 少 し て い る 。そ れ に 対 し 、高 齢
者 の 相 談 件 数 は こ れ ら の 傾 向 と は 逆 に 、2007 年 度 以 降 は 3 割 以 上 増 加 と 、年 々
増加傾向にある。高齢者人口のここ 5 年間の増加率は約1割であるため、高齢
者 の 消 費 生 活 相 談 件 数 は こ れ を 大 き く 上 回 っ て 増 加 し て い る こ と が 分 か る 43 。
さ ら に 、2012 年 度 の 高 齢 者 の 相 談 を 商 品・サ ー ビ ス ご と に 、件 数 と 1 件 当 た
20
りの平均既支払額で表すと、
「 金 融・保 険 サ ー ビ ス 」が 相 談 件 数 、平 均 金 額 と も
に「 食 料 品 」や「 運 輸・サ ー ビ ス 」等 の 他 の 商 品 別 分 類 を 大 き く 上 回 っ て お り 、
相 談 件 数 が 4 万 件 を 超 え 、平 均 既 支 払 額 も 約 159 万 円 と 高 額 で 高 齢 者 の 消 費 者
30
ト ラ ブ ル に お け る 大 き な 課 題 で あ る (「 金 融・保 険 サ ー ビ ス の 次 に 相 談 件 数 の 多
い 「 食 料 品 」 は 相 談 件 数 約 2 万 5000 件 、 平 均 支 払 既 支 払 額 約 4 万 円 )。 ま た 、
年 代 別 に 比 べ た 場 合 、「 金 融 ・ 保 険 サ ー ビ ス 」 の 平 均 既 支 払 額 は 65 歳 未 満 で は
約 44 万 9,000 円 で 、 高 齢 者 と は 100 万 円 以 上 の 差 が 見 ら れ 、 高 齢 者 は 深 刻 な
5
状況となっている。
そ こ で 、「 金 融 ・ 保 険 サ ー ビ ス 」 の 各 商 品 別 相 談 件 数 に 注 目 す る と 、「 デ リ バ
テ ィ ブ 取 引 」、
「 未 公 開 株 」、
「 社 債 (契 約 先 が 金 融 機 関 等 で な い も の )」、
「ファンド
型投資商品」等の内容が複雑な金融商品が多い。このような商品に対し、行政
機関による規制や注意喚起の効果は一定程度あると考えられるものの、新たな
10
商品は次々と生まれるため、高齢者の新たな金融商品への内容理解が追い付い
て い な い こ と 等 が 高 齢 者 の 金 融 ト ラ ブ ル の 増 加 の 原 因 の 1 つ に 挙 げ ら れ る 44 。
第 4節
確定拠出年金加入者に対する投資教育の問題点
前 述 し た と お り 、2011 年 8 月 確 定 拠 出 年 金 法 が 一 部 改 正 さ れ 、事 業 主 に よ る
15
継続教育の実施義務が明文化されたことにより確定拠出年金制度導入後の継続
教 育 の 重 要 性 や 注 目 度 が 一 層 高 ま る こ と と な っ た 45 。 し か し な が ら 、 継 続 教 育
の実施にあたり、実務ではいくつかの問題点が散見された。そこで本節では確
定拠出年金導入後の継続教育における問題点を指摘していきたい。
企業年金連合や特定非営利活動法人確定拠出年金教育協会が行ったアンケー
20
ト 調 査 (【 図 表 13,14】)に よ る と 、現 状 で は 導 入 時 教 育 を 受 け た 人 の 割 合 は 約 9
割を占めている一方で、継続教育を受けている人の割合は年々高まりつつある
ものの約 6 割に留まった。
【 図 表 13】 確 定 拠 出 年 金 導 入 時 教 育 の 現 状
25
導 入 時 教 育 の形 態 (対 象 者 )
度数
率
希 望 者 のみ実 施
53
5.4%
全 員 対 象 で実 施
920
94.6%
有効回答者数
973
100%
出 所 ) 運 営 管 理 連 絡 協 議 会 (2013)p.12 を 参 考 に 作 成
31
【 図 表 14】 確 定 拠 出 年 金 導 入 後 の 継 続 教 育 の 現 状
65%
60.4%
60%
53.9%
55%
50%
5
51.2%
48.2%
51.7%
45%
40%
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
出 所 ) 運 営 管 理 連 絡 協 議 会 (2013)p.12 を 参 考 に 作 成
10
つ ま り 、継 続 教 育 を 実 施 し て い な い 企 業 が 約 4 割 も 存 在 し て い る と い う こ と
が 分 か っ た 。そ の 原 因 と し て は 、確 定 拠 出 年 金 協 会 の 調 査【 図 表 15】よ り わ か
るとおり、
「 担 当 者 の 時 間 が な い 」、
「 集 合 が 難 し い 」、
「 費 用 の 確 保 が 困 難 」と い
った物理的な問題が多く見受けられた。
また、この一連の調査の中で「継続教育=セミナー」と捉える等、継続教育
15
をどのように進めてよいかということを明確に理解していないことにより実施
で き て い な い と い う 原 因 が あ る こ と も 明 ら か と な っ た 46 。
【 図 表 15】 継 続 教 育 を 実 施 す る 予 定 が な い 理 由 (複 数 回 答 )
0%
n=366
5%
10%
15%
25%
30%
35%
35.8%
継続教育に時間(人員)を割く余裕がないから
30.6%
営業拠点が散らばっていて加入者を集められないから
加入者の知識レベルにばらつきがあり、どのレベルにあわせ
たらようかわからないから
20.2%
18.0%
教育効果があるかどうかわからないから
9.3%
経営層がその必要性を理解していないから
25
出 所 )NPO 法 人
第 4章
確 定 拠 出 年 金 教 育 協 会 (2013)p.20 を 参 考 に 作 成
日本の金融教育普及における問題への解決策
本章では、第 3 章で挙げた問題点への具体的な解決策を提案する。
第 1節
30
40%
18.6%
継続教育の費用を確保できないから
20
20%
学校段階における金融教育の問題への解決策
(1)土 曜 授 業 に よ る 金 融 教 育 の 実 施 の 普 及
32
第 3 章 第 1 節 (1)の 問 題 点 で は 、学 校 教 育 に お い て 授 業 時 間 の 確 保 が 難 し い こ
とを挙げた。この問題点に対して、我々は「土曜授業による金融教育の実施の
普及」を提案したい。ここで、土曜授業とは、あくまでも全国一律の学校週六
日制に戻すという趣旨ではなく、それぞれの学校や地域、子どもの実情に応じ
5
て学校、家庭、地域が連携し、学校における授業や地域における多様な学習機
会を一層促進させながら子どもたちの土曜日の教育活動全体の充実を図ること
を目的としている。
現行の学習指導要領における金融教育関連箇所を参照すると、小学校におい
ては、生活、社会、家庭、道徳、総合的な学習の時間、特別活動等の各教科等
10
に分散して織り込まれている。中学校においても、教科名は変わるものの、ほ
ぼ同様の教科等に織り込まれている。しかし、各教科に分散した学習では、金
融リテラシー向上に不十分であるため、金融に関する教育を様々な教科に盛り
込むだけでなく、土曜日にまとまった金融教育に関する授業時間を確保するこ
とで、
“ お カ ネ の 知 識 ”を 一 元 化 し 、非 常 に 効 率 的 で 効 果 的 な 学 習 が で き る と 考
15
える。
日 本 証 券 業 協 会 で は 2014 年 10 月 に 小 学 生 や 中 学 生 を 対 象 に 経 済 の 仕 組 み
を楽しく学ぶことができる土曜学習や土曜授業が考案されている。小学生向け
の 授 業 で は 、「 み ん な で 体 験 ! 株 式 会 社 と お 金 の し く み 〜 入 門 編 〜 」 と 題 し た 、
株式会社の経営の疑似体験を通して、株式会社の仕組みやお金の流れ等を体系
20
的 に 学 ぶ 内 容 と な っ て い る 。ま た 、中 学 生 向 け で は 、
「株式会社をつくろう!〜
ミ ス タ ー X か ら の 挑 戦 状 〜 」 と 題 し た 、 会 社 (企 業 )に 視 点 を あ て た 体 験 学 習 を
通じて、会社の社会的な役割と株式会社の仕組み、金融の仕組み等を学ぶ内容
になっている。これらの学習の実施により、実際に経営者や投資家の立場にな
って体験学習をすることで、楽しみながら学ぶことができ、会社を身近に感じ
25
ることで、金融や経済に対する興味・関心が高まり、学習に意欲的に取り組め
るようになる。また、会社の役割と社会的責任、金融の役割、投資の意義につ
い て 多 面 的 に 考 え 、 表 現 す る 経 験 が で き る と い う 効 果 も 期 待 さ れ る 47 。
さらに、我々は、土曜の教育活動において親子参加型にすることを推奨する。
日 常 の 生 活 に お け る お 金 や 金 融 経 済 に つ い て 、生 活 者 と し て の 力 を 育 て る に は 、
30
児童生徒の実際の生活の場である家庭や地域の果たす役割が大きい。親が子ど
33
もの金融教育に積極的に関与することで、学校で行われた金融教育の話を子ど
もと一緒に考える振り返り学習を行うこともできる等、子どもの金融への理解
をより高めることができると言える。
現在、文部科学省が実施した「公立小・中・高等学校における土曜日の教育
5
活 動 実 施 予 定 状 況 調 査 」に よ る と 、2014 年 度 に 金 融 教 育 に 関 わ ら ず「 土 曜 授 業 」、
「 土 曜 の 課 外 授 業 」、「 土 曜 学 習 」 の い ず れ か 1 つ で も 行 う 予 定 に な っ て い る の
は 、全 国 の 公 立 小 ・ 中 ・ 高 等 学 校 で わ ず か 37% ほ ど で あ る 。尚 、こ こ で「 土 曜
授 業 」と は 、児 童 生 徒 の 代 休 を 設 け ず に 、土 曜 日 ・ 日 曜 日 ・ 祝 日 (以 下「 土 曜 日
等 」 と い う )を 活 用 し て 教 育 課 程 内 の 学 校 教 育 活 動 を 行 う も の と し 、「 土 曜 日 の
10
課外授業」とは、学校が主体となった教育活動で、土曜日等を活用して希望者
を対象として学習の機会の提供を行う等、教育課程外の学校教育活動を行うも
の (部 活 動 は 除 く )と し 、「 土 曜 学 習 」 と は 、 教 育 委 員 会 、 社 会 教 育 施 設 等 、 学 校
以外の者が主体となって、土曜日等を活用して希望者に対して学習等の提供を
行 う も の と す る 48 。
15
【 図 表 16】 公 立 小 ・ 中 ・ 高 等 学 校 に お け る 「 土 曜 授 業 」、「 土 曜 の 課 外 授 業 」、
「土曜学習」の実施状況
出 所 )文 部 科 学 省 (2014a)p.5 を 参 考 に 作 成
20
現在の日本では、子どもたちに、土曜日における充実した学習機会を提供す
る 方 策 の 一 つ と し て 土 曜 授 業 が 捉 え ら れ て い る 49 。し か し 、
【 図 表 16】を 見 て も
わかるように我が国においては、土曜日に教育活動の実施を予定している学校
は少ない。そこで、土曜日を活用し、金融教育の推進を行い、金融や経済に関
25
する知識を身に付けることで、我が国の金融リテラシーの向上を目指せると
34
我々は考える。
(2)教 員 の 知 識 不 足 に 対 す る 解 決 策
本 節 で は 、第 3 章 第 1 節 (2)で 学 校 教 育 に お け る 問 題 点 と し て 挙 げ ら れ た 、教
員の金融に関する知識不足に対する解決策を提案したい。この問題点において
5
は、現教員に対する金融知識の定着だけでなく、将来、現場に出て金融教育が
できる学生を育てる必要があると我々は考える。
まず、現教員が金融知識を身に付けるには、教員向けの金融セミナーを充実
させる必要がある。しかし、第2章でも具体例を挙げた通り、様々な主体が教
員や教職課程の学生に対する金融教育セミナーをすでに実施している。それに
10
も か か わ ら ず 、第 3 章 第 1 節 (2)で 明 ら か に な っ た よ う に 、教 員 は 専 門 知 識 が 不
足 し て い る と 感 じ て お り 、 ま た 【 図 表 8】 か ら 教 員 向 け の 研 修 会 等 を 必 要 と し
ていることが分かる。これらを踏まえ、我々は、教員向けのセミナーを充実さ
せ る だ け で な く 、教 員 に 対 し て「 金 融 教 育 セ ミ ナ ー へ の 参 加 を 義 務 付 け る こ と 」
を提案する。各主体がどれほどセミナーを充実させても、教員が積極的に参加
15
しなければ金融知識は身に付かず、教えることはできない。従って、小学校か
ら高等学校までの全教員に対して年2回、金融教育セミナーに参加することを
義務付けることで、教員の知識不足解消と同時に教育方法を学ぶことで金融リ
テラシー向上にむけてより効果的な授業が行えると考える。また、時間的制約
がある教員であっても、東京証券取引所や日本証券業協会等が実施している夏
20
季休暇や冬季休暇を利用したセミナーもあるため、全教員に義務付けることは
可能であろう。
次 に 、将 来 の 指 導 者 を 育 成 す る た め 、全 大 学・全 学 部 の 教 職 課 程 に お け る「 金
融」の授業必修化を提案する。なぜ全学部で必修化をするか。それは、金融に
関する専門知識不足には大学での専攻が大きく関わっているからである。次の
25
【 図 表 17】 を 見 て ほ し い 。
30
35
【 図 表 17】 大 学 で の 専 攻 に よ る 専 門 知 識 不 足 の 認 識 度
20
経済・経営・商学部系
30
40
50
60
70
(% )
32.3
社会学部系
法学部系
文・外国語学部系
教育学部系
51.5
家政・生活科学部系
理・工学部系・その他
61.5
出 所 )金 融 教 育 を 推 進 す る 研 究 会 (2014)p.32 図 表 30 を 参 考 に 作 成
5
金 融 教 育 の 実 施 が 難 し い 理 由 に 、専 門 知 識 不 足 を 挙 げ た 教 員 の 割 合 は 、経 済・
経営・商学部系および法学部系が 3 割程度であるのに対し、それ以外の学部で
は 約 5~ 6 割 と 半 数 以 上 を 占 め て お り 、顕 著 な 差 が 生 じ て い る 50 。つ ま り 、将 来 、
学校で金融教育を指導するためには、どの学部であれ教職課程において金融の
知識を身に付けておかなければならないのである。
10
で は 、ど の よ う な 授 業 を 教 職 課 程 に お い て 実 践 す べ き か 。我 々 は 、
「 金 融 」の
授業によって教員を目指す学生が金融知識を身に付けるだけでなく、将来より
効果的な授業を行えることを目的とし、帝京大学で小学校教諭を目指す学生に
対して実践している「小学校家庭科の指導法」を授業カリキュラムに取り入れ
ることも提案する。
15
こ れ は 、「 小 学 生 に 金 融 教 育 を 行 う と し た ら 、 ど の よ う な 授 業 を 展 開 す る か 」
をテーマに実践的な「教材作りと指導法」を考えさせる内容である。将来教え
る子どもたちに金融教育を行うことの必要性と指導のポイントを学び、授業を
組み立てられるようになることが狙いである。つまり、指導者として子どもた
ちが思考力や判断力、表現力を養い、主体的に判断し行動する消費者を育てる
20
ことが目標となる。
授 業 で は ま ず 、身 近 な 小 学 生 を 対 象 に 、
「 小 学 生 の 消 費 生 活 の 実 態 把 握・分 析 」
を行う。すると、下記のように小学生に対して、金銭感覚や浪費を指摘する厳
しい意見があがる。
36
【 図 表 18】 帝 京 大 学 で の 授 業 例
◎学生から見た「子供たちの消費生活の問題点」
(対象:家族、ボランティア先・バイト先・近所で見た子ども)
小遣いのもらいすぎでは?
・言えば貰えると思っている
→ネットショッピングにもつながっている
・ゲームセンター
・カードゲーム(子ども同士の売買目撃)
・コンビニでの買い食い(あそび)
・子どもだけで外食
・考えながらお金を使う事が少ない
・何が無駄遣いかわかっていない
・物の所有の有無による仲間外れ
・友だちが持っているとすぐに欲しがる
・子どもが欲しがるようにできている
・物を買っても簡単に飽きる
・簡単に捨てる
出 所 )知 る ぽ る と HP「 く ら し 塾
5
モッタイナイという感覚がないのでは?
・品質よりも見た目の良さで買う
・おしゃれなものや新しく出たものがいと
思っている
・ブランド志向
金銭感覚がずれているのでは?
・高額な買い物や遊び
・根源はお金の大切さがわかっていない
・親の子どもへのしつけができていない
・お金を渡しておけばいいと思っている
・親の問題
・携帯やネット依存
・オンラインゲームの遊び
・ネットショッピング
きんゆう塾」を参考に作成
しかし、次に大学生である自分自身の日常を省みると、その無計画さや無駄
の多さ等から、自分も小学生と大して変わらず、無知で頼りない消費者である
ことに気がつくと同時に、金融教育は子どもの頃から行わなければいけないと
認識させることができる。
10
【 図 表 19】 学 生 自 身 の 自 分 の 消 費 生 活 に 関 す る 問 題 点
◎学生自身の自分の消費生活に関する問題点
・自分も情報教育や資源やお金に関する教育を受けてこなかった。
・ケチケチ苦しく生活して、節約するかと思うとドカっと浪費してしまい、後悔ばかりしている。
・外食が多い、勉強も喫茶店でする事が多い。
・欲しい洋服をガマンできない。
・衝動買いが多い。
・店先で見てほしくなると、後先考えずに買ってしまう。
・通学の電車のなかは、長時間携帯電話を見続けている。(ネットを繋ぐのにお金がかかる)
・20歳を過ぎ、ローンを組んで買い物できるようになったが、あまり考えずに買い物しそう。
・ネットオークション、ネットショッピングの買い物が多い。
・深く考えずに買っている。
・友だちのなかに、クレジットで支払える以上に買いすぎて困っている人がいる。
出 所 )知 る ぽ る と HP「 く ら し 塾
きんゆう塾」を参考に作成
その後、学生は課題の深化と問題点の考察を行い、テーマを決めて紙芝居や
15
ロールプレイング等の具体的な教材を使った指導案を考え、最後に模擬授業に
37
よるプレゼンテーションを行う。実際に帝京大学では、携帯電話の普及に伴い
頻発するソーシャルゲームの課金問題について、多額の請求が届く劇や、衝動
買 い に つ い て 考 え さ せ る ロ ー ル プ レ イ ン グ 等 の 授 業 案 が 発 表 さ れ た 51 。
5
【 図 表 20】 学 生 が 考 え た 授 業 例
◎学生が考えた授業例
・「見えないお金の問題(課金問題)」(劇)
・「あなたならどうする?」(ロールプレイ)
オンラインゲームで次々に有料のものにお金
をつぎ込み、
親から高額な請求書が届いた事を知らされ、
ひどく叱られる子ども
⇒どうすればこのようなことにならずに済むか
考えよう。
セット売りや限定などの安売りにつられて買い
物しそうな兄と妹の問題。ある文房具の店主
は、在庫セールでセットにして売ろうとする
が・・・こんな経験はありませんか?
出 所 )知 る ぽ る と HP「 く ら し 塾
きんゆう塾」を参考に作成
このような内容を含む、
「 金 融 」の 授 業 を 大 学 の 教 職 課 程 に お い て 必 修 化 す る
10
ことで、将来の教育カリキュラムを考えるだけでなく、本人の意識改革を図る
効果ももたらすのである。また、現在は教員採用試験においても金融は「一般
教養」の一部であり、かつ試験内容は景気循環や経済指標、金融政策といった
も の で あ る 52 。 今 後 こ れ ら に 加 え て 、 金 融 教 育 を 行 う 立 場 と し て 必 要 と な る 知
識を問う内容に移行することが出来ればよいのではないだろうか。
15
(3)金 融 教 育 と ゲ ー ム を 結 び つ け た 教 材 の 充 実
第 3 章 第 1 節 (3)に お い て 学 校 段 階 に お け る 金 融 教 育 の 問 題 点 の 一 つ と し て 、
教材の問題を挙げた。我々は学校段階における良い教材を、まず「理解が難し
い」とされている金融の知識に関して、より児童や生徒に興味・関心を持たせ
20
ることができるかという点が重要であると考える。そこで我々は、教材の問題
の具体的な解決策として、
「 金 融 教 育 と ゲ ー ム を 結 び つ け た 教 材 の 充 実 」を 提 案
する。ここでは、米国で実際に使われている 4 つの教材を紹介する。
そ の 中 で も ま ず 、実 生 活 に 直 接 役 立 て る こ と が で き る よ う な ゲ ー ム を 2 つ 紹
介する。
25
・ Stock Trak(株 式 ゲ ー ム )
38
無 料 の オ ン ラ イ ン 株 式 投 資 ゲ ー ム で あ り 、 2013 年 か ら ス タ ー ト し て い る 。
中 学 生 と 高 校 生 等 を 対 象 と し て い る 。参 加 者 は 、仮 想 の 2 万 5,000 ド ル を 元 手
に、株式と投資信託に投資する。
・ Moneytopia(生 活 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ゲ ー ム )
5
こ の ゲ ー ム は 、 無 料 の オ ン ラ イ ン シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ゲ ー ム で あ る 。 FINRA
Investor Education Foundation が 2010 年 に 製 作 し た も の で 、 お 金 の 管 理 の
詳細を学ぶように設計された生活シミュレーションゲームである。個人の様々
な財政上の課題を解決しながら,自分の夢を達成するように行うシミュレーシ
ョ ン ゲ ー ム で あ る 53 。
10
一 つ 目 の Stock Trak(株 式 ゲ ー ム )で は 、 現 実 世 界 の 株 価 を 連 動 さ せ 運 用 す る
ため、将来投資をする際の練習をすることもでき、そこで株式投資の難しさや
運用に成功したときの利益についても学ぶこともできる。このようなことを学
校 段 階 の う ち に 経 験 さ せ る こ と で 、投 資 に 興 味 を 持 つ き っ か け と も な る だ ろ う 。
15
さ ら に 、我 々 が こ こ で 強 調 し た い こ と は 、活 動 型・体 験 型 の 教 材 や 実 践 を 、
「面
白かった」というだけで終らせてはならないということである。つまり、シミ
ュ レ ー シ ョ ン の 手 続 き・手 順 を 習 得 す る の み な ら ず 、学 習 を 実 質 化 す る た め に 、
まとめ、振り返り、分かち合いを行うことが重要なのである。二つ目の
Moneytopia は 、 実 生 活 に お い て 限 ら れ た 資 金 の 中 で ど の よ う に 楽 し む か を ゲ
20
ームを通して学ぶことができ、今後のライフプランを子どもたちが設計しよう
というきっかけになる。このように、実際人生において今後直面する投資やラ
イフプランの設計をバーチャルで一度体験しておくことで、それらに関する知
識の必要性を植え付けることができるのである。それだけでなく、机の上で投
資理論やライフプランの設計について学ぶより、理解しやすいのは言うまでも
25
ない。
次に金融の知識に関する問題を解かせる中で、問題の答えを知りたいと思わ
せるような副教材を 2 つ紹介する。
・ Financial Football
VISA 社 の 提 供 す る 、 無 料 の オ ン ラ イ ン シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ゲ ー ム 形 式 の 教 材 で
30
あ る 。iPhone、iPad で も ゲ ー ム が 可 能 で あ る と さ れ て い る 。Financial Football
39
は、金融に関するクイズとアメリカンフットボールのゲームを組み合わせて、
金 融 の 学 習 を 進 め る た め 、 ア メ リ カ ン フ ッ ト ボ ー ル に 興 味 を も つ 児 童 ・生 徒 の
関心を引くように設計されている。
・ Financial Soccer
5
こ れ は VISA 社 の 提 供 す る 、 無 料 の オ ン ラ イ ン シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ゲ ー ム 形 式
の教材である。これはサッカーを題材にしたもので、これもゲームを進行して
いく上で、金融知識に関する 4 択問題がこまめに出題され、正解するごとに試
合 を 進 行 す る こ と が で き る 。 Financial Soccer で は 試 合 終 了 時 に は 「 試 合 結 果
の 統 計 」が 出 さ れ 、難 易 度 (低・中・高 )ご と の 出 題 数 と 正 答 数 (○ /×の 数 )が 表 示
10
される。もちろん正解しなければ試合に勝つことはできないため、ゲームを優
位に進めるには金融知識が必要になる。さらに、試合後には正解数も表示され
る た め 、 自 分 の 知 識 レ ベ ル を 測 る に も 効 果 的 で あ る 54 。
こ の Financial Football と Financial Soccer は 、 事 前 に 指 導 書 を ダ ウ ン ロ
15
ードして、その内容に沿って生徒にゲームをさせると、教育効果が上がるよう
に設計されている。2 つのゲームの指導書の内容は非常に充実しており、金融
や経済に関するシミュレーションゲーム教材は、ともすればプレイしただけに
なりがちであるが、この 2 つのゲーム教材は、生徒の取り組むゲームというイ
ンターフェイスにおいては、生徒が興味を引く形になるように工夫されている
20
55 。
以 上 の 4 つ の よ う に 、日 本 に お い て も 教 員 の 金 融 教 育 を 手 助 け す る ツ ー ル と
して金融教育とゲームを結びつけた教材を充実させることを提案する。これら
のような教材の充実は、金融知識に対する興味・関心を抱かせ、勉強しようと
いうモチベーションを向上させることが、結果的に、金融リテラシー向上の一
25
助になるであろう。
第 2節
金融に対する関心の問題への解決策
第 3 章 第 2 節 で は 、① 日 本 国 民 の 金 融 リ テ ラ シ ー の 低 さ 、② 金 融 知 識 に 対 し
無関心であること、③情報の入手方法を知らないという三点が問題点として挙
30
げ ら れ た 。日 本 に 限 ら ず 金 融 教 育 の 推 進 国 で は 、
「水を飲みたくない馬に水を飲
40
ませることが困難である」といったように、一般的に金融経済に関する知識の
習得に無関心な消費者に対し、必要な情報を提供する事は容易ではない。米国
のサブプライムローン問題のように、このような無関心層が消費者信用や住宅
ローン等の金融商品を利用した場合、詐欺的行為に巻き込まれたり、金融トラ
5
ブ ル に 遭 遇 す る 危 険 性 が 高 い 。そ こ で 、本 節 で は 、米 国 の 取 り 組 み 事 例 を 基 に 、
無関心層に対する解決策を提案したい。
無関心層に対して、金融教育の教材や資料をウェブ上に提供するといった方
法では、決して有効であるとは言えない。米国における連邦準備制度や米国財
務省による全国キャンペーン展開のように、様々な情報伝達媒体を用いて金融
10
教 育 や 公 正 な 情 報 提 供 者 の 存 在 を 認 知 さ せ る 努 力 が 必 要 で あ る 。一 例 と し て は 、
支 払 い の 延 滞 や 未 払 い 等 の 消 費 者 の 信 用 履 歴 の 重 要 性 を 若 年 層 に 対 し PR す る
た め 、60 秒 以 内 に ク レ ジ ッ ト に 関 す る メ ッ セ ー ジ を 伝 え る CM を 作 成 し 、テ レ
ビだけでなく、マルチメディア、特にインターネットに掲載し、インターネッ
ト 上 に は 、HP を 作 り 、こ の メ ッ セ ー ジ を 流 し て い る 。さ ら に 、イ ン タ ー ネ ッ ト
15
に 接 続 で き な い 層 (高 齢 者 )の た め に 、 フ リ ー ダ イ ヤ ル が 設 置 さ れ た 。 そ こ に ア
クセスすれば、資金運用の手法等連邦政府のまとめたツールキットを取得する
ことができる。
と こ ろ で 、日 本 に お い て も 、我 々 が 第 2 章 第 2 節 で 述 べ た よ う に 、金 融 広 報
中央委員会では、
「 知 る ぽ る と 」を 通 じ ウ ェ ブ 上 で の 情 報 提 供 に 留 ま ら ず 、成 人
20
初心者向け通信講座の開講や全国各地で「金融経済講演会」を開催しているほ
か 、各 地 で 開 催 さ れ る 各 種 イ ベ ン ト で は 、
「 多 重 債 務 に 陥 ら な い た め に 」等 各 種
パ ン フ レ ッ ト 類 を 積 極 的 に 配 布 し て い る 。ま た 、当 委 員 会 の 知 名 度 向 上 を 図 り 、
無関心層の興味を引くことを目的として、広報誌「くらし塾
きんゆう塾」を
全国の図書館にも配布しているほか、新聞・電車広告等も行っている。このよ
25
うに、日本では、金融教育に関連する広報活動は確かに行われているが、アク
セスできる層が限られており、効果は微々たるものである。
そこで、我々は、米国のように、マルチメディアによるキャペーンの実施を
提案する。具体的には、金融広報中央委員会が金融リテラシーの重要性や「知
るぽると」の存在を認知させることを目的に、①金融トラブルに巻き込まれや
30
すい高齢者
②金融リテラシーの重要性を十分に認識していない現役世代をメ
41
イ ン タ ー ゲ ッ ト と し 、 タ ー ゲ ッ ト 別 に CM を 作 成 し 、 あ ら ゆ る 層 が ア ク セ ス で
きるテレビや現役世代に有効的なインターネットを中心に集中的に流すことを
提案する。
我 々 は 、 CM の シ ナ リ オ を 構 築 す る に あ た っ て い く つ か 重 要 な ポ イ ン ト が あ
5
る と 考 え る 。【 図 表 21】 を 見 て も ら い た い 。 ま ず 、 金 融 ト ラ ブ ル に 巻 き 込 ま れ
る危険性や自助努力による老後の資産形成の必要性が高まってきている現状を
提起することで、消費者の危機感を喚起する。そして、金融リテラシーを身に
つ け 、投 資 す る こ と に よ る メ リ ッ ト を 提 示 す る 。現 に 民 間 金 融 機 関 に よ る NISA
の 普 及 を 目 的 と す る CM は 多 数 放 送 さ れ て い る が 、金 融 広 報 中 央 委 員 会 等 の 公
10
的 機 関 に よ る CM は よ り 信 頼 性 の 高 い も の と し て 認 識 さ れ る だ ろ う 。 さ ら に 、
アクセス方法を提示することで、次の行動に結びつけることが期待できるだろ
う。
【 図 表 21】 提 案 す る 具 体 的 な CM の 内 容
使 う媒 体
CM の内 容
1.金 融 トラブルが多 発 している現 状 を提 起
高齢者
テレビ
2. 金 融 商 品 を 利 用 す る に 当 た り 、 家 族 等 の 第 三 者 に
アドバイスを求 めることの重 要 性
3.国 民 生 活 センターへのアクセス方 法
現役世代
テレビや
インターネット
1.年 金 制 度 の 改 正 に伴 い 、自 助 努 力 による老 後 資 産
の形 成 の必 要 性 を提 起
2.投 資 のメリットをアピール
3.「知 るぽると」へのアクセス方 法
出 所 )筆 者 作 成
15
多くの人が目にするテレビやインターネットを通して金融リテラシーを身近
に感じることで、金融に関心のない日本人が金融に関心を抱くひとつの入り口
となるのではないかと考える。
20
第 3節
高齢者の金融トラブル増加からみる金融教育の問題への解決策
本節では第 3 章第 3 節で検証した高齢者の金融商品多様化に適応できていな
い現状を改善すべく、解決策を提案する。まず、第一に我々は、第 2 章で紹介
42
したような金融機関や地方自治体等の様々な団体によって行われている出張講
座や講演会等の高齢者向けの金融教育をより一層充実させるように各団体が努
力すべきだと考える。また、そのようなイベントに主体的に参加しようとする
姿勢を高齢者が持ち続けなければならないと考える。しかし、それだけでは高
5
齢者の金融商品の理解不足を解消するには不十分であろう。
そこで、我々は愛媛県の消費者教育の事例を紹介し、それを基に解決策を提
案 し た い 。 愛 媛 県 は 消 費 者 ト ラ ブ ル の 減 少 に つ な げ る こ と が 狙 い で 、 2014 ~
2017 年 の 消 費 者 教 育 推 進 計 画 を 作 成 し た 。国 が 定 め た 消 費 者 教 育 推 進 法 に 基 づ
き 2013 年 に 作 成 し た 基 本 的 な 方 針 を 踏 ま え 、 県 独 自 の 計 画 を ま と め て お り 県
10
消費生活センターを推進拠点としている。具体的には、消費者トラブルに陥り
やすい高齢者宅への訪問や講座等をサポートするコーディネーターを養成して
いく方針である。さらに、愛媛県は高齢者の被害を防ぐため社会福祉協議会等
が参加する「悪質商法被害防止見守りネットワーク」を展開している。今後は
金融機関の従業員や訪問介護事業所のホームヘルパー等の協力を得て、高齢者
15
宅への訪問活動を一層強化する方針である。
愛媛県での取り組みは食品の安全性等への教育が主流となっているが、我々
は今後、金融分野に特化した消費者コーディネーターを養成し、金融リテラシ
ー 向 上 に 向 け た 活 動 を 全 国 各 地 に 展 開 し て い く こ と を 提 案 し た い 56 。 消 費 者 コ
ーディネーターが中立・公正的な立場を保つことで、金融知識に不安を抱える
20
高齢者と金融機関の従業員とをつなぐ橋渡し役になることが可能になるであろ
う 。ま た 、金 融 分 野 に 特 化 し た 消 費 者 コ ー デ ィ ネ ー タ ー の 育 成 が 実 現 し た 場 合 、
消費者コーディネーターが個別に高齢者宅を訪問することで、金融機関や自治
体等が行う金融教育のイベントよりもより密接に高齢者と関わることができ、
充実した金融教育を行うことも可能であろう。我々は消費者コーディネーター
25
には、高齢者に対して中立・公正的な立場から適切なアドバイスを行うことこ
そが重要であると考え、県とFP協会等のNPO団体等が積極的に連携し、金
融トラブルに巻き込まれることを未然に防ぐことを期待したい。さらに、若者
や社会人と比べ、高齢者がインターネット等による最新の金融商品に関する情
報をキャッチすることが劣る点をカバーする必要がある。
30
このように、我々の提案する消費者コーディネーターによるサポートが全国
43
各地で行われれば、高齢者の金融商品への理解不足も解消できると考える。
第 4節
確定拠出年金加入者に対する投資教育の問題への解決策
本 節 で は 、第 3 章 第 4 節 で 指 摘 し た 問 題 点 に 対 す る 解 決 策 を 提 案 し て い き た
5
い。前章では確定拠出年金加入者への継続教育が不足しているという問題点を
指摘した。そこで我々は「社内の教育体制の強化」を解決策として提案する。
継続教育の実施方法としては様々あり、例えば集合形式セミナー、e ラーニン
グ 、社 内 報 ・ イ ン ト ラ ネ ッ ト 等 の 紙 ・ PDF に よ る 情 報 提 供 、個 人 相 談 会 等 が 挙
げられる。問題点で指摘したように継続教育を実施できない理由として「担当
10
者 の 時 間 が な い 」、「 集 合 が 難 し い 」、「 費 用 の 確 保 が 困 難 」 等 の 物 理 的 な 問 題 に
よるものが多かった。このような問題を抱える企業に対しては e ラーニングを
中心とした教育を行うことで時間や場所の制約を受けずに受講できるため、担
当者の負担や研修のコストを削減することができる。e ラーニングにはこのよ
うな効果があるものの、社内の教育体制が整っていない状態では効果を最大限
15
発揮することができず、むしろ自分のペースで進められるがゆえに強制力を持
たせることが難しい、非対話型の学習であるので臨場感がないといったデメリ
ットが顕在化してしまう。これらの問題を解消するためには、e ラーニングへ
の強制力を強めるような社内での体制を作ること、具体的には各部署との協力
関係を構築し、受講者の学習の進捗状況に応じて上司が受講を促すようなフォ
20
ローを行う等のサポート体制を作ることが重要である。それに加えて、集合研
修と e ラーニングを上手く組み合わせた教育体制を構築することで e ラーニン
グだけでは得られない効果を集合研修で補完することも非常に効果的であると
考 え ら れ る 57 。 こ の よ う に 各 企 業 に 存 在 す る そ れ ぞ れ の 違 っ た 問 題 に 対 し て 、
社内全体でサポートすることが大切であるといえる。
25
ま た 、 こ れ ら の サ ポ ー ト 体 制 を 構 築 し て い く 上 で 「 PDCA+R」 を 意 識 す る こ
と は 有 効 性 、 持 続 性 を 高 め る 上 で 望 ま し い 。 こ の 「 PDCA+R」 と い う の は 字 の
如 く 、PDCA に「 Record( 記 録 )」を 加 え た も の で あ る 。こ の 方 法 を 取 る こ と に
よってどのように継続教育を進めていくかという道筋が明確になるだろう。
【図
表 22】よ り 表 さ れ る サ イ ク ル で 留 意 す べ き こ と は「 Check( 検 証 )」の 部 分 で 加
30
入 者 の 理 解 度 や 教 育 効 果 を 正 し く 検 証 す る こ と 、さ ら に「 Record( 記 録 )」の 部
44
分で実施した教育を記録することによって取り組みの証となり、次回からの教
育に活かしていくことである。このサイクルを活用することによって教育メニ
ュ ー を よ り 工 夫 し た も の 、 会 社 に 合 っ た も の へ と 改 良 で き る と い え る 58 。
5
10
【 図 表 22】 PDCA+R の 概 念 図
P : 自 社 の業 態 や実 情 に合 った教 育 メニュー、教 育
方 法 を 検 討 すること。
D : 検 討 結 果 に沿 った教 育 を実 施 するこ と。
C : 実 施 した結 果 を分 析 し加 入 者 の理 解 度 合 いや教 育
効 果 を 検 証 すること。
A : 検 証 結 果 を次 の教 育 メニュー、教 育 方 法 に活 かし て
いくこと。
+
R : 上 記 の プ ロ セ ス を ド キュ メ ント と し て 記 録 し 残 し て い く こ
P :
計 画 ・目 標
D :
実行
C :
検証
A :
次 の行 動 へ
+
R :
と。取 り 組 みの証 であり引 継 ぎ資 料 としても有 効 。
出 所 )NPO 法 人 確 定 拠 出 年 金 教 育 協 会 (2011)p.8 を 参 考 に 作 成
15
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25
30
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記録
終章
我々は、今後必要とされる日本の金融リテラシーとして、体系的にとりまと
め ら れ た 4 分 野 15 項 目 を 紹 介 し 、 ま た 、 各 段 階 に お い て 最 低 限 身 に 付 け る べ
き金融リテラシーを「金融リテラシー・マップ」を用いて述べた。それを踏ま
5
え 、日 本 の 金 融 教 育 の 現 状 に ふ れ 、ア ン ケ ー ト 調 査 等 を 基 に 問 題 点 を 洗 い 出 し 、
解決策を提案した。
第 1 に、学校段階における金融教育の問題点として、授業時間の不足、教員
の金融に関する知識不足、教材が充実していないことの 3 点を挙げた。これら
の 問 題 点 に 対 し 、土 曜 授 業 の 推 進 、現 教 員 に 対 す る 金 融 教 育 セ ミ ナ ー 参 加 及 び 、
10
大学の教職課程における「金融」の授業の必修化、米国における例を基に金融
教育とゲームを結びつけた教材の充実を提案した。
第 2 に 、日 本 国 民 に 共 通 し て 当 て は ま る 金 融 に 対 す る 関 心 の 低 下 と い う 問 題
に対してはマルチメディアによるキャンペーンを提案した。
第 3 に 、近 年 の 高 齢 者 の 金 融 ト ラ ブ ル 増 加 の 原 因 の 1 つ と 考 え ら れ て い る 高
15
齢者の金融商品多様化への適応の遅れに対しては、愛媛県の例を基に金融分野
に特化した消費者コーディネーターの育成を提案した。
第 4 に、確定拠出年金加入者への投資教育が不十分という問題には、各企業
が 社 内 の 教 育 体 制 を 強 化 す る こ と 、「 PDCA+ R」 を 徹 底 す る こ と で 継 続 教 育 を
目指すよう提案した。
20
最 後 に 、序 章 で 紹 介 し た『 日 本 永 代 蔵 』か ら も う 1 つ だ け 言 葉 を 紹 介 し た い 。
井原西鶴は物語の中で、
「 世 に 銭 ほ ど 、面 白 き も の は な し 」と 、こ の 世 の 中 に お
金に関することほど面白いものはないと言っている。もしかすると、井原西鶴
は江戸時代中頃の時点で既に金融リテラシーの必要性を実感していたのかもし
れ な い 。 い ず れ に せ よ 、 金 融 商 品 の 多 様 化 、 年 金 制 度 の 変 化 、 NISA 導 入 に よ
25
り加速する「貯蓄から投資へ」の流れ等、日本の経済・金融環境が急速に変化
す る 現 在 、個 々 人 が「 生 き る 力 」、金 融 リ テ ラ シ ー を 身 に 付 け る こ と が 急 務 で あ
ろう。我々が提案した種々の解決策が日本の金融リテラシー向上に貢献するこ
とを期待し、本稿を締めくくる。
46
1
2
〈注釈〉
『 日 本 経 済 新 聞 』 (2013/02/08)朝 刊 、 1 面 を 参 照 。
OECD/INFE(2012) p.2 注 釈 5 よ り 引 用 。
金 融 広 報 中 央 委 員 会 (2013)p.2 よ り 引 用 。
金 融 庁 金 融 研 究 セ ン タ ー 金 融 経 済 教 育 研 究 会 (2013) p.3 を 参 照 。
5
金 融 庁 HP「 わ た し た ち の 生 活 と 金 融 の 働 き 」 を 参 照 。
6
政 府 広 報 オ ン ラ イ ン HP「 新 し い 投 資 優 遇 制 度 「 NISA(ニ ー サ )」 が ス タ ー
ト!将来に向けた資産形成を考えるきっかけに」を参照。
7
金 融 経 済 教 育 研 究 会 (2013)pp.8-9 を 参 照 。
8
金 融 経 済 教 育 推 進 会 議 (2014)p.5 を 参 照 。
9
全 国 銀 行 協 会 「 ラ イ フ プ ラ ン (長 期 的 な 経 済 計 画 )人 生 の 設 計 図 を 描 こ う ! 」
を参照。
10
金 融 経 済 教 育 研 究 会 (2013)p.9 を 参 照 。
11
金 融 庁 HP「 増 え 続 け て い る 金 融 商 品 の ト ラ ブ ル 」 を 参 照 。
12
金 融 経 済 教 育 推 進 会 議 (2014)p.13 を 参 照 。
13
金 融 経 済 教 育 研 究 会 (2013)p.11 を 参 照 。
14
金 融 経 済 教 育 研 究 会 (2013)p.11 を 参 照 。
15
金 融 経 済 教 育 研 究 会 (2013)pp.12-13 を 参 照 。
16
静 岡 銀 行 HP「 リ ス ク と リ タ ー ン の 関 係 」 を 参 照 。
17 金 融 経 済 教 育 研 究 会 (2013)p.15 を 参 照 。
18 金 融 経 済 教 育 研 究 会 (2013)p.4 を 参 照 。
19 金 融 広 報 中 央 委 員 会 (2013a)pp2-3 を 参 照 。
20 金 融 経 済 教 育 研 究 会 (2013)pp.4-5 を 参 照 。
21 金 融 経 済 教 育 研 究 会 (2013)p.16 を 参 照 。
22 金 融 経 済 教 育 研 究 会 (2013)pp.5-6 を 参 照 。
3
4
23
政 府 広 報 オ ン ラ イ ン HP「 お 金 に つ い て 学 び た い と き は ? 」 を 参 照 。
24
金 融 庁 HP「 金 融 経 済 教 育 研 究 会 」 の 開 催 に つ い て を 参 照 。
25
野村資本市場研究所
26
内 閣 府 消 費 者 委 員 会 (2013)の 項 目 96 を 参 照 。
27
消 費 者 庁 HP「 各 地 域 に お け る 消 費 者 行 政 活 性 化 の 取 組 」 を 参 照 。
28
知 る ぽ る と HP「 2014 年 度 金 融 経 済 公 開 授 業 」 を 参 照 。
29
政 府 広 報 オ ン ラ イ ン HP「 お 金 や 金 融 に つ い て 学 び た い と き は ? 」 を 参 照 。
30
知 る ぽ る と HP「 金 融 教 育 を 支 援 す る 関 係 機 関 等 の 活 動 」 を 参 照 。
知 る ぽ る と HP「 多 面 的 な 取 り 組 み の 必 要 性 」 を 参 照 。
日 本 証 券 業 協 会 (2014)pp.7-10 を 参 照 。
東 京 証 券 取 引 所 HP を 参 照 。
『 日 本 経 済 新 聞 』 (2014/10/22)夕 刊 、 10 面 を 参 照 。
31
32
33
34
宮 本 佐 和 子 (2013)p.24 を 参 照 。
35
新 保 恵 志 (2012)pp.11-12 を 参 照 。
36
金 融 広 報 中 央 委 員 会 (2013b)p.4 を 参 照 。
日 本 証 券 経 済 研 究 所 大 橋 善 晃 (2011)pp.3-4 を 参 照 。
日 本 証 券 経 済 研 究 所 大 橋 善 晃 (2009)を 参 照 。
金 融 広 報 中 央 委 員 会 (2009)p.11 を 参 照
栗 原 久 (2014)p.5 を 参 照 。
37
38
39
40
47
57
日 本 証 券 業 協 会 金 融 経 済 教 育 を 推 進 す る 研 究 会 (2014) pp.21-22 を 参 照 。
消 費 者 庁 (2013)p.33 を 参 照 。
消 費 者 庁 (2013)pp.33-34 を 参 照 。
消 費 者 庁 (2013)p.44 を 参 照 。
NPO 法 人 確 定 拠 出 年 金 教 育 協 会 (2013) pp.1-2 参 照
運 営 管 理 機 関 連 絡 協 議 会 (2013)pp.17-.18 参 照
日 本 証 券 業 協 会 (2014b)pp.3-10 を 参 照 。
文 部 科 学 省 (2014a)p.1 を 参 照 。
文 部 科 学 省 (2014b)p.1 を 参 照 。
金 融 経 済 教 育 を 推 進 す る 研 究 会 (2014)p.24 を 参 照 。
知 る ぽ る と HP「 大 学 の 教 職 課 程 に お け る 「 金 融 教 育 」 の 指 導 法 」 を 参 照 。
大 木 光 夫 (2013)p.93 を 参 照 。
栗 原 久 (2014)p.14 を 参 照 。
栗 原 久 (2014)pp.10-11 を 参 照 。
栗 原 久 (2014)p.9 を 参 照 。
『 日 本 経 済 新 聞 』 (2014/10/04)地 方 経 済 面 、 12 面 を 参 照 。
ト ー マ ツ HP「 初 め て の e ラ ー ニ ン グ 」 を 参 照
58
NPO 法 人 確 定 拠 出 年 金 教 育 協 会 (2011)p.8 参 照 。
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54
55
56
〈参考文献〉
大 木 光 夫 (2013)『 教 員 採 用 試 験 一 般 教 養 36 日 間 (2015)』、 株 式 会 社 学 研 教 育 出 版 。
新 保 恵 志 (2012)『 金 融・投 資 教 育 の ス ス メ —投 資 教 育 の 学 び 方 と 投 資 教 育 の あ る べ
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http://www.tse.or.jp/
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http://www.ti.tohmatsu.co.jp/
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http://www.cao.go.jp/
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http://www.nikkei.com/
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野 村 資 本 市 場 研 究 所 HP
http://www.nicmr.com/nicmr/index.html
文 部 科 学 省 HP
http://www.mext.go.jp/
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________(2012)「 確 定 拠 出 年 金 の 継 続 教 育 の 課 題 と そ の 解 決 策 企 業 の 担 当 者 が 徹 底
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http://www.jsri.or.jp/publish/topics/pdf/0902_01.pdf
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宮 本 佐 和 子 (2013)「 我 が 国 で の 金 融 経 済 教 育 推 進 へ 向 け た 議
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文 部 科 学 省 (2014a)「 公 立 小 ・ 中 ・ 高 等 学 校 に お け る 土 曜 日 の 教 育 活 動 実 施 予 定 状
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http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/07/__icsFil es/afieldfile/2014/07/31/1
350456_1.pdf
________ (2014b)「 土 曜 日 の 教 育 活 動 推 進 プ ロ ジ ェ ク ト ① 」
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile
/2014/03/24/1344411_1.pdf
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