...

連 載 - トランジスタ技術

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

連 載 - トランジスタ技術
連 載
第7回 反転入力端子部の容量による不安定動作対策
遠坂 俊昭
Toshiaki Enzaka
実際の OP アンプ IC を使って増幅回路を作ると,
OP アンプ自体の特性や実装状態など,たくさんの要
Band Width)は 10 MHz なので,非反転増幅回路の高
域しゃ断周波数は 5 MHz になります.図 7 − 1
( b)に,
因が安定な動作の障害になります.
ゲインの周波数特性を解析した結果を示します.確か
今回は,それらの要因の一つである OP アンプの反
転入力端子部の容量ぶんが安定動作に与える悪影響を
に非反転増幅回路の入出力ゲインは 2 倍で,しゃ断周
波数は 5 MHz です.
シミュレーションで調べ,その対策の方法を検討しま
す.
図7−1
(a)には反転増幅回路も示されています.こ
れら二つの増幅回路は,信号源のインピーダンスが 0
反転増幅回路とノイズ・ゲイン
Ωで,出力電圧が 0 V と考えるとまったく同じ回路で
す.違うのは信号を加えている箇所だけですから,高
域しゃ断周波数は,どちらの増幅回路も同じはずです.
非反転増幅回路の場合,入出力ゲインは帰還回路の
分圧比βの逆数(1/β)でほぼ決まります.しかし反転
ただし入出力ゲインは異なり,反転増幅回路は− 1 倍,
(b)からも,確か
非反転増幅回路は 2 倍です.図 7 − 1
増幅回路の場合は,β回路を構成している抵抗の一部
に信号を加えるため,非反転増幅回路と同じように扱
に両者のしゃ断周波数はほぼ同じであることがわかり
ます.
うことができず,その入出力ゲインは 1/ β とは少し
インからは求まらない
図 7 − 1 に示すのは,非反転増幅回路と反転増幅回
このことから,反転増幅回路の高域しゃ断周波数は,
GBW を入出力ゲイン(− 1 倍)で割っても求まらない
ことがわかります.いったん非反転増幅回路のゲイン
に換算しなければならないのです.
具体的に計算すればすぐわかりますが,通常の反転
増幅器ではゲインが 10 倍程度以上に大きくなれば,
高域しゃ断周波数は GBW をゲインで割った値にほぼ
等しくなります.
路の入出力ゲインの周波数特性を調べるシミュレーシ
ョンです.
● 入出力ゲインそのままでしゃ断周波数が低下す
異なった値になります.
反転増幅回路では,入出力ゲインとこれから説明す
るノイズ・ゲインの二つを検討することになります.
● 反転増幅回路のしゃ断周波数は GBW と入出力ゲ
非反転増幅回路の場合は,入出力ゲインは 1/βで
る!
?
す.図 7 − 1 の場合は 2 倍です.ところが反転増幅回
路の場合は,ゲイン特性が 1/βにならず,− 1 倍にな
(a)に示すのは,IN −端子とグラウンド間に
図7−2
抵抗 R 3 を挿入したゲイン− 10 倍の反転増幅回路と,
ります.
連載第 2 回(2005 年 4 月号)で説明したように,非反
抵抗 R3 のない通常の反転増幅回路です.
図 7 − 2 では,R1a と R1b を 10 kΩと 1 fΩに切り替え
転増幅回路の高域しゃ断周波数を fC[Hz], GBW を
fGBW[Hz],入出力ゲインを G[倍]とすると,次式
ながら解析(パラメトリック解析)することにより,負
帰還後の特性と裸特性を同時に求めています.
が成り立ちます.
fGBW
fC =
G
つまり 0 V ですから,抵抗を追加しても入出力ゲイン
は− 10 倍で変わりません.抵抗を追加した回路は,
ただし,OP アンプの裸ゲインの減衰傾度が− 6
dB/oct.に保たれている範囲において
図 7−1
(a)に示す OP アンプ・モデルの GBW(Gain
2005 年 9 月号
OP アンプの IN − 端子は,IN + 端子とほぼ同電位,
信号源を 0 V に固定すると,ゲイン 100 倍の非反転増
幅回路(図 7 − 3)と同じになります.
図 7−(
2 a)
の上側のしゃ断周波数 fC は次のとおりです.
213
10
fC =
(100 k + R1a//R3a)/(R1a//R3a)
た結果です.
以上から反転増幅回路の場合,ゲイン Ginv の周波数
= 100 kHz
図7−2
(b)の下側のしゃ断周波数は次のとおりです.
10
fC =
(100 k+R1b)/R1b
特性は次式で求まることがわかります.
R
1
Ginv = 2
………………………
(7 − 1)
1
R1
1+
AOβ
● 入出力ゲインの周波数特性を知りたいときはノイ
≒ 909 kHz
しゃ断周波数は,抵抗 R 3 がない場合が 909 kHz な
のに対して,抵抗がある場合は 100 kHz になります.
図7−2
(b)に示すのは,これらのゲイン関係を解析し
ズ・ゲインを考える
図 7 − 3 に示すように,
R1//R3 + R2
R1//R3
で決まる値を「ノイズ・ゲイン」といいます.これは,
反転増幅回路(ゲイン−1倍)
OP アンプの出力から,OP アンプの入力端子に接続
される負帰還ネットワークで分割された値の逆数です.
つまりβの逆数です.
R 1 //R 3
R2
100k
1k
ノイズ・ゲインGnoise は次式のとおり.
R 1 //R 3 +R 2
Gnoise =
R 1 //R 3
図 7 − 3 図 7 − 2 の抵抗を追加した反転増幅回路のノイズ・ゲイン
非反転増幅回路(ゲイン2倍)
(a)回路( RV は10kΩ)
ゲイン[dB]
OPアンプ(U1aとU1b)のオープン・
ループ・ゲイン: R 1a と R 1b を1fΩ
(ショート)にして解析
非反転増幅回路
両者の高域しゃ断
周波数は同じ
反転増幅回路
周波数
(b)非反転型の入出力ゲインは反転型の2倍だがしゃ断周波数は等しい
図 7 − 1 しゃ断周波数は同じだが入出力ゲインが異なる二つの増幅回路
214
「CD − ROM 版トランジスタ技術 2004」「CD − ROM 版トランジスタ技術 2003」
13,650 円(税込み)で好評発売中です.詳細は小社ホーム・ページで.ご購入は
(03)5395 − 2141
お近くの書店か小社販売部へどうぞ! Tel.:
2005 年 9 月号
Fly UP