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優秀賞 「福島産のもも」 岸和田市立山直中学校1年 大嶌 鈴華 夏休みに
優秀賞 「福島産のもも」 岸和田市立山直中学校1年 大嶌 鈴華 夏休みに入ってすぐ、大好きなおじいちゃんが肺炎で入院しました。 点滴や酸素吸入の治療で病状は、みるみる良くなっていきました。はじめは 食欲もなく青白かった顔が少しずつ食べられるようになると顔色も良くなって いきました。 お盆も過ぎた頃、お母さんとスーパーに買い物に行った時、食べられるよう になったおじいちゃんに大好物の桃を買って持っていこうと話になりました。 たくさん並んだ桃を見ながら、おじいちゃんの喜んで美味しそうに食べる顔を 想像しながらお母さんと選んでいました。隣で同じように桃を選んでいる二人 連れのおばさんがいました。その一人のおばさんが桃のパックに書いてあるラ ベルを指差して「これは福島産やからあかん、こっちにしよか」と和歌山産と 書いてある桃をカゴに入れていきました。私は、お母さんに「なんで福島産や ったらあかんの?美味しくないの?」と聞きました。お母さんは「福島原発事 故のせいで、食べ物が放射能で汚染されてるかもって心配してるのかもね」と 言いました。 私は、そのおばさんの言葉を聞くまでは、福島産の桃を見て、色や大きさを 比べてもおじいちゃんにはこれ!って思ったはずなのに放射能と言う言葉を聞 いて横に並んだ和歌山産や岡山産の桃がすごく安全に思えてきたのです。お母 さんに言うと「それなら、なおさらこの桃を買ってあげないとね」と福島産の 桃をカゴに入れました。帰り道、大震災のあと被災地周辺でとれた、さんまが スーパーで売られていても大量に売れ残っていたり、福島産の野菜がいつもの 半額で売られていたりといった話をお母さんから聞きました。地震で辛い思い をしている人たちに対して同じ日本人なのにとても恥ずかしいことだと思いま した。もし自分が被災地の立場だったら一日でも早く前を向いて生きたいと思 ってもそんなことを聞いたら心が折れてしまいそうになります。 病院でおじいちゃんにその話をしたら「おじいちゃんは福島産の桃でも喜ん でいただくよ!おじいちゃんのために買って、持ってきてくれた気持ちがうれ しいから……」と笑顔で言ってくれました。私は、とてもうれしい気持ちにな りました。そして、病院の帰りお母さんは、 「安全を守ることはとても大事でも 自分とそのまわりだけ良かったらいいと思う考えはとっても危険」と教えてく れました。 何気ない一言、ちょっとした一言が目に見えない差別となって人を傷つけて いくのだと知りました。 私は、悲しいことがあった時応援してくれる人が必ず必要だと思います。一 人では出来ないこともみんなの力で乗りこえられる気がします。おじいちゃん も家族の応援があったから早くに病気から回復することができたと思います。 お見舞いの夜、家族用にと買ってくれた福島産の桃を家族みんなで食べまし た。甘くて、ジューシーで最高の桃でした。