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肝斑患者における月経周期別ホルモソ値の検討 ただいま、ページを

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日皮会誌:97
(8),
937-943,
1987 (昭62)
肝斑患者における月経周期別ホルモソ値の検討
なお、Adobe® Reader®以外でのPDFビューアで閲覧されている場合もこのメッセージが表示
佐 藤
則 子
されます。Adobe®
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要 旨
表1 測定ホルモソ及び定量に使用した抗体名
平均年齢43歳の肝斑患者18名及び対照健康人(mat・
ched
control)
モソすなわち,
12名について月経周期別各種血中ホル
FSH,
LH,
PRL,
progesterone(P4),
17αOH-P4,cortisol(F),androstendione(j4A),
testosterone
(T),
estradiol
CE2)を測定比較し,本
では,F値及び17αOH・P4値が正常に比し有意な高値
p<0.01,
(F)
Testosterone
(T)
Androstenedione
Progesterone
p<0.5),黄体期ではP4が正
T-11α・Succ-BSA
(J'A)
(P.)
∠J'A-3-CMO・BSA
P4-3-CMO-BSA
17aoH-P,-3・CMO-BSA
LH
FSH
第lRI kit
PRL
常に比し有意な高値(p<0.01)を示した.又個々の症
Anti
s erum
F-21・hemisucc.・BSA
17i≫OH-Progesterone
(17α0H-P4)
症と血中ホルモンとの関係を検討した.本症の卵胞期
を示し(各々,
Steroids
Cortisol
Estradiol(E2)
例にっいてのP4/E2比も黄体期での本症の著明な高値
P4
を示した.さらに有意差は存在しなかったが本症では,
考えられている1).従来本症は,内的因子由来の特発性
黄体期のPRL及びE2を除く全てのホルモソ値が平均
値において高値傾向を示した.本症での黄体期におけ
と,外因の関与する症候性とに分けられていたが,現
るP4の著明な高値と,E2に比しての相対的な高値は,
今では本症は特発性肝斑を指すのが普通である2).し
本症が経口避妊薬投与後の発症頻度が多いことや,時
かし本症の発症機序に関しては尚充分に解明されてい
に黄体期に増悪が認められることと考えあわせると,
ない.現在の所考えられている因子としては,日光照
本症が黄体期の卵巣機能のアンバランスと密接な関連
射の補助的役割3)4)や,遺伝的素因3),人種的特異性3)4)
を有していることを示唆する.
未知の色素増強作用物質が化粧品中に存在する可能
性3),妊娠性肝斑の存在5)や,経口避妊薬投与後の発症
緒 言
頻度が多い3)4)61
8)事よりの女性ホルモンの関与等が挙
肝斑は主として思春期以降の女子顔面に生ずるほぼ
げられる.しかし本症と内分泌機能との関係について
左右対称性,境界鮮明,一部境界不鮮明で淡褐色ない
の知見は乏しく,数篇の報告が散見されるものの,そ
し濃褐色,かつびまん性の斑状の非炎症性色素沈着症
の成績は必ずしも一致をみていない7)9)-Il)そこで今
でその本態は,メラノサイトの機能充進によりひきお
回,肝斑患者の内分泌環境を検討するため,各種血中
こされた表皮細胞核上部のメラノソームの量の増大と
ホルモン値を月経周期別にradioimmunoassay
法により測定し,本症発生との関連を検討したので報
慶応義塾大学医学部皮膚科学教室(主任 西川武二教
告する.
授)
方 法
済生会中央病院皮膚科(主任 中山秀夫博士)
Noriko
Sato: Endocrine
environment
(1)対象
in adult
females with chloasma
Department
Keio
Tokyo
Key
of Dermatology,
School 0fMedicine,
University, Shinano・machi,
Shinjuku・ku,
160, Japan
words : chloasma,
平均年齢43歳の肝斑患者18名(うち卵胞期17名,黄
体期15名)を対象とし,同年齢の平均40歳の肝斑のな
いことを確認した健康婦人12名(うち卵胞期12名,黄
体期n名)を対照とした.
steroidhormone, radioim・
munoassay
昭和61年12月1日受付,昭和62年4月20日掲載決定
特掲
(2)採血時期
患者,健康婦人とも基礎体温表により,月経周期を
判定し,卵胞期は第6∼8周日の間に,黄体期は基礎
別刷請求先:(〒160)東京都新宿区信濃町35 慶応義
体温上昇後6∼8日目の間に,午前9時より12時の間
塾大学医学部皮膚科学教室 佐藤則子
に採血を行ない以下の方法でホルモンを定量し測定値
(RIA)
佐藤 則子
938
被検血漿(0.1∼0.5ml)
↓3H・Steroid(recovery用)加
エーテル抽出(十 ゛チJykWミ;ル3ml X 2)
エーテル層(上層):遊離型
水層(下層):抱合型
1
乾
固
'H-Steroid (recovery用):加
メタノール抽出(十 メタノール 1∼2ml)
↓3.000rpm 10分遠沈
Sephadex LH-20カラム
クμマトグラフィー
ト
メタノール乾固
↓
加水分解
recovery(1/5)
艶猫額皆皆(!ニ。
radioimmunoassay
チル(水飽和)抽出×2
図1 ホルモソ測定法
・Helix
pomatia
: β-glucronidase/Arylsulfatase
表2 使用抗体の特異性
Ami・serum( %)
Steroids
T
Androstenedione
CJ'A)
Progesterone
100
(T)
<0,10
(P,)
17αOH・Progesterone
(17αOH-P4)
Cortisol (F)
0.15
0.08
Recovery(%)
Mean±S.D.
IWVr
99.80士4.97
5.49
2.84
13.7
3.72
4.16
17aOH・P4
F
1.15
1、38
0.12
0.08
Androstenedione
Testosterone
1.00
<0.10
<0.10
0.89
1.00
Cortisol
2.42
17αOH・Progesterone
88.74士3.30
Progesterone
98.20士4.09
0.17
0.25
Steroids
P4
J'A
Testosterone
表3 測定法の精度検討結果
100
く0.10
1.00
゛交差反応の値が高いが,LH・20
7.85
100
column
65.8土6.11
92.3
92.3*
2.42
93.66土2.70
I冑V『
9.32
3.30
17.8
6.10
5.16
CV:co・e伍cientof variationC変動係数)
100
chromatography
により除外し得た.
αOH-P4,
P4分画を得た.各分画は表1に示す如く,各
分画に特異的抗体を用いたRIA法により測定した.各
とした. I・
ステロイド測定に使用した抗体の他のステロイドとの
(3)ホルモン測定(図1)
交叉反応を表2に示したがいずれも特異性は充分に高
(i)標準物質
〔1,2,3H(N)〕・17αOH・PiCS.A.
40.4Ci/mmol),〔1,2,
く,かつ交叉反応の認められるステロイドは,
LH-20
column
FSH,
chromatographyにより除外し得た.
6,7-3H(N)〕・P4(S.A.90.0Ci/mmol),〔1,2,6,7,16,17-^H
LH,
(N)〕・T(S.A.
たRIA法で測定した.
135Ci/mmol),〔1,2-3H(N)〕・j4A(S,A.
60.0Ci/mmol),〔1,2-3H(N)〕・F(S.A.
あらかじめSephadex
LH-20
45Ci/mmol)は,
PRL,
E2,黄体期のP4は第1
RIのキットを用い
(iii)測定法
columnによって純化し
チャコール処理した血清に既知量の各標準ステロイ
て使用した.
ドを加えて回収率並びにintra
(ii)抽出,分離,測定
のco・efficient
of variation (CV)を検した成績は表3
採血した血液は遠心分離により血清成分を分離し,
エチルエーテルにて抽出後2分し,
hexane
に示す如くで,いずれも満足すべきものであった.
: benzene
methanol=80:15:5を液相としたLH・20column
:
結 果
健康人及び肝斑患者の月経周期別に測定した各ホル
chromatographyにより,Tと∠14A分画を分離,同様
モソ値を表4に示す.
にbenzene
LH,
: methanol
assay及びinter
= 90 : 10の液相でFと17
FSH,
PRLは本症と健康人の間には,卵胞期,
assay
939
肝斑患者における月経周期別ホルモン値の検討
表4 月経周期別の健常人と肝斑患者の血中ホルモソ値
lutealphase
follicular
phase
Chloasma
Choloasma
Control
LH(mIU/ml)
24.6士14.8(17)
21.0士11.4(12) 15.9士18.0(15)
FSH(mIU/ml)
17.3士17.2(17)
9.9士5.2(17)
13.8±9.5(12) 9.4土16.9(15)
9.5士3.1(12) n.4士6.5(15)
PRL(ng/m1)
Progesterone (ng/ml)
17αOH-Progesterone (ng/ml)
0.7±0.3(17)
・0.4±0.1(17)
0.7土0.2(12) **23.3士8.9(14)
0.3土0.1(12) 2.6士1.7(15)
Estradiol (pg/ml)
66.9士49.3(17)
51.4±21.6(12) 118.0土53.2(15)
Androstenedione (ng/ml)
Cortisol (ng/ml)
1.1士0.3(17)
0.5±
0.1(16)
・・51.6士14.5(17)
Progesterone/Estradiol
26.7士53.8(17)
Testosterone (ng/m1)
Control
12.1土5.6(11)
5.6士2.6(11)
11.9士5.6(11)
13.1士5.2(11)
2.4土1.2(11)
136.5士70.9(11)
0.9士0.3(12) 1.3士0.3(15)
0.4士0.2(12) 0.5土0.2(15)
1.1±0.2(11)
0.4士0.1(11)
44.8±31.7(11)
33.5士17.3(12) 55.9士31.5(15)
16.0±10.6(12) **・217.1土63.1(14)
119.4士60.2(11)
゛p<0.05
“pく0.01
”゛pく0.001
mean士S.D.
( )=n
PRL
mlU/ml
-
ng/ml
mlU/ml
30
30
○○
20
20
20
○○
て呪烏t’︶
‘`..一......
o心一rfyooo
1・ 一一一一一一%
1
4
10
10
Ch(F)
図2 女子肝斑患者の血中LH,
FSH,
PRL値
C(F):コントロール(卵胞期),Ch(F):肝斑(卵胞期),C(L):コントロール(黄
体期),Ch(L):肝斑(黄体期),一:平均値
黄体期とも有意差はみられなかったが,黄体期のPRL
3)。
を除いて,卵胞期,黄体期とも本症で高値傾向を認め
E2は本症の卵胞期(66.9±49.3pg/ml)は,対照の卵
た(図2).
胞期(51.4±21.6pg/ml)に比し高値を示し,本症の黄
P4は本症患者が黄体期において,
23.3±8.9ng/ml
体期(118.6±53.2pg/ml)は,対照の黄体期(136.5±
と健康人の13.1±5.2ng/mlに比し,有意の高値(p<
70.9pg/ml)に比し低値を示したが両者間に有意差は
0.01)を示したが,卵胞期では本症0.7±0.3ng/ml,対
なかった.j4Aは本症で卵胞期(1.1±0.3ng/ml),黄
照0.7±0.2ng/mlで両者間に有意差はなかった.
体期(1.3±0.3ng/ml)とも,対照の卵胞期(0.9±0.3
17αOH・P4は,本症患者が卵胞期において,
0.4±0.1
ng/ml),黄体期(1.1±0.2ng/ml)に比し,高値を示
ng/mlと健康人の0.3±O.lng/mlに比し,有意の高値
したが有意差はなかった(図4)。
(p<0.05)を示したが黄体期では,本症2.6±1.7ng/ml
Tについても本症で卵胞期(0.5±O.lng/ml),黄体
対照2.4±1.2ng/mlで両者間に有意差はなかった(図
期(0.5±0.2ng/ml)とも,対照の卵胞期(0.4±0.2ng/
佐藤 則子
940
加 3 2
︲ 0 0
9
n
ng/ml
P4゛゛
-
17αOH・P4*
81
4 m
10
2
図3 女子肝斑患者り血中P4,17αOH・P4値
C(F):コントロール(卵胞期),
Ch(F):肝斑(卵胞期),C(L):コントロール(黄
体期),Ch(L):肝斑(黄体期),*:p<0.05,
・・:p<0.01,
ng/ml
―:平均値
∠14A
1.8
pg/ml
300
200
100
0
図4 女子肝斑患者の血中E,,
A'A値
C(F):コントロール(卵胞期),Ch(F):肝斑(卵胞期),C(L):コントロール(黄
体期),Ch(L):肝斑(黄体期),−:平均値
ml),黄体期(0.4±O.lng/ml)に比し,高値を示した
したが有意差とはならなかった(図5).
が有意差はみられなかった。
Fは,本症患者で卵胞期において51.6±14.
又個々の症例につきそのP4/E2比を計算すると,本
5ng/ml
症患者で黄体期217.1±63.1は,対照119.4±60.2に比
と対照の33.5±17.3ng/mlに比し,有意の高値(pく
し,有意の高値(p<0.001)が認められたが,卵胞期
0.01)を示したが,黄体期においては本症55.9±31.5
では本症26.7±53.8で対照16.0±10.6に比し高値を示
ng/mlで対照44.8±31.7ng/mlに比し高値傾向を示
したが有意差は認められなかった.
941
肝斑患者における月経周期別ホルモソ値の検討
T
ng/ml
ng/ml
160
ぶ
−
叶
● ・
毛穴
・
g o 00
16
・
1
●・
100
ふ
o。︵y
亜智叩OO O
Q●
●●・・
‘″・一 ・ ″ ・
0
0.2
C(F)
Ch(F)
C(L) Ch(L) C(F)
Ch(F)
C(L) Ch(L)
図5 女子肝斑患者の血中T,F値
C(F):コントロール(卵胞期),Ch(F):肝斑(卵胞期),C(L):コントロール(黄
体期),Ch(L):肝斑(黄体期).
":p<0.01,一:平均値
考 按
contraceptivumの総括的な事柄としては,エストロ
女子肝斑患者の各種血中ホルモソ値を月経周期別に
測定し健康人と比較した結果,
FSH,
LH,
PRL,
ジェソの成分を減らしても出現率に差がなく6),銘柄
E2,
には無関係な副作用であり,内服期間が長びくにつれ
∠14A,Tは両群の間に差が認められなかったが,卵胞期
て増加する4)とされる.しかしその実際のホルモン値
におけるF値及び17αOH-P4値が正常に比し有意に高
測定の報告は殆んどみられない.
値を示した.又黄体期では特にP4の高値が著明であ
妊薬投与後に発症した本症患者のβ・MSHを測定し,
り,個々の症例についてのP4/E2比を検討すると,本症
その増量のないことを示し,本症はβ-MSHの上昇に
の黄体期では著明に高いことが認められ,E2に比して
よるものではないと結論したが,カエルのメラノフォ
P4の相対的な高値が示された.このことより,本症が
アにおいてMSHは,P4との協調作用により色素増強
黄体機能のアンバランスに密接な関連を有する事が示
作用が認められる事実12)より,正常量のMSHがP4と
唆された.又臨床的な面より自験例を検討すると,黄
の協調作用により肝斑発生を起こす可能性も否定でき
体期に色素増強の認められた例が,軽度のものまで入
ないとしている.自験例ではβ-MSHを測定していな
れると6/15例(40%)あり,これらのホルモソ値の検
いがMSHとP4の協調作用がP4の高値によりさらに
Smithら7)は経口避
討では,4例が黄体期P,の高値を示し,2例は正常範
強まっている可能性が推察される.又Snellら13)も天
囲内であった.又月経前緊張症,月経困難症のいずれ
じくネヅミにおいて大量のエストロジェソには全身皮
かの存在が10/15例(67%)に認められたが,これら10
膚の色素増強作用があり,P4との併用投与で各々の単
例と残りの5例の間には,ホルモソ値に有意な差は認
独時より,色素増強作用が強まる事実18)より,P4の他
められなかった.
のホルモンとの協調作用を指摘している.自験例では
本症の発症が経口避妊薬投与後に多い事は従来より
E2の上昇は認められていないが,P4高値によりP4との
報告がある3)4)6)
協調作用が同様に強められている可能性がある.
8).その頻度はSanchezら3)の9%,
Carruthers''*の11.5%,
Resnik≪の29%となっている.
経口避妊薬に含有されているホルモンは,
progestogen
regimen
estrogen・
が主であるが,唯一ReSnik6)が
Carrnthers'"は,経口避妊薬中の2種のホルモンによ
りメラニソ形成作用を促進されたメラノサイトが日光
照射により,さらにその作用を増強されたために発症
具体的に薬品名を挙げ,各々のestrogen-progestogen
するのではないかとその機序を推測している.
の種類と量,その肝斑出現率を示している.
Perezらlo)は特発性肝斑9人のホルモソ値を卵胞期
Chloasma
佐藤 則子
942
5日目に採取して調べmatched
control との比較にお
胞期卵巣では17αOH,P5より17αOH-P4への転換経路
いて,LHの有意な高値とE2の有意な低下を認め,こ
の存在か指摘されている16)又黄体期でのP,の前駆物
れらのホルモンの変調は,軽度の卵巣機能障害の潜在
質はPs
を示すとし,これを特発性肝斑の病因として挙げてい
の17αOH,P4及び黄体期のP4が高値を示しその代謝
る.今回の自験例の検討では,E2の低下は認められず,
産物のE2が増加を示さないことは,卵巣におけるステ
又LHの増加もなく,代わって黄体期でのP4の有意な
ロイド代謝異常が推察されるが,その詳細は明らかで
高値が認められた事より,黄体期卵巣機能のアンバラ
なく,本症発生との関係については未知といわざるを
ンスを肝斑の病因として挙げる事ができると思われ,
得ない.
これにより時に認められる黄体期の増悪も説明できる
尚肝斑患者の肝機能検査結果は18名全例で正常であ
(pregnenolone)と考えられる16)今回卵胞期
り,土肥14)も肝機能良好としており,P4,17αOH-P.,
であろう.又河野11)は,女子顔面黒皮症との比較におい
Fの有意の変化は肝機能とは無関係と思われた.
て肝斑患者8例について血中と尿中のホルモソ値を測
定し,ACTHの有意な高値と,卵胞期で,P4と尿中プ
本症の病因は,内分泌的なものだけでは説明し得な
レグナンディオールの有意な高値,黄体期で尿中プレ
い面をもっており,他に日光照射の役割,光線過敏性
グナントリオールの有意の低値を認めているものの,
の素因,遺伝的素因,人種的特異性などがある.特に
病因との関係については全く触れていない.
戸田ら17)は,UV照射で肝斑患者は色素沈着をおこし
特発性肝斑としては他に,妊娠性肝斑,子宮性肝斑
やすいという素因を明らかにしている.今回の本実験
が従来より知られている2).妊娠性肝斑は,妊娠3ヵ月
対象患者は主婦が主であり,
に始まり,漸次高度となり,分娩後月経再開と共に消
であり,いずれにも戸外労働者は含まれていず,詳細
槌するもので,自験例のうちの1例に妊娠性肝斑の既
は不明であるが,同年代故,日光照射の機会に差はな
往を認めた.子宮性肝斑については,土肥14),New・
いと思われる.
comerら9)は婦人科疾患は認められないとし,子宮性
以上本研究結果より,女子肝斑患者ではその血中ホ
肝斑そのものへの疑問が提示されている.自験例では
ルモソ値は同年齢及び同月経周日の正常婦人と異なる
5/18例(28%)に婦人科疾患の既往か認められ,その
事が初めて示され,本症と内分泌環境の関係が窺われ,
内訳は子宮筋腫2例,子宮内膜症1例,絨毛上皮腫1
ステロイドホルモン,特に卵巣機能と本症発生の関連
例,卵巣嚢腫1例である.これら5例のホルモン値を検
が考えられた.今後さらに卵巣ステロイド産生の異常
討すると,正常例に比し黄体期P4の高値を示したもの
がどの様な機序によりおこるのか,又,相対的高値の
は1例であり,むしろ卵胞期P4の高値を示したものが
P4が本症発生にどのように関与しているのかなどが
4例と多かった.また17αOH-P4とFは卵胞期におい
今後の研究課題として残されている.
て高値傾向が認められたが,残り13例との間に有意の
本論文の要旨は第619回研究東京地方会(1985年3月)及
差は認められなかった.この婦人科疾患の頻度は平均
び第58回日本内分泌学会総会(1985年5月,於名古屋)にお
年齢43歳という年齢を考えると,特に多いものとは思
いて報告した.
稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を頂いた慶応大学皮
えず,自験例の検討からも,子宮性肝斑の存在そのも
膚科学教室西川武二教授,終始直接懇篤に御指導頂いた済
のへの疑問がもたれた.
生会中央病院皮膚科医長中山秀夫博士ならびに昭和大学産
卵胞期のFと17≪0H・P4が有意の高値を示したこと
については,
controlは全例病院職員
Moltzら15)は,卵胞期早期ではF,
17
科婦人科学教室矢内原巧教授に深甚の謝意を表します.又
種々の測定に関して御教示,御尽力頂いた昭和大学産科婦
αOH-P4は副腎より主に産生されるとしており,本症
人科学教室鈴木真由美先生に深謝致します.
での卵胞期における副腎の刺激状態が推察される.卵
文
献
1)三島 豊,浜田稔夫:肝斑.基礎皮膚科学第三巻,
immunofluorescence
study,
朝倉書店,東京,
脚α
1981.
1973, pp443-445.
「,4
: 698―710,
4)
tives,Med } of Attsiral,
2(1):17―20,
Sanchez NF, Pathak
TB,
Sanchez
MA,
JL, Mihm
Sato S, Fitzpatrick
MC: Melasma:
A
clinical,light microscopic, ultrastructural,and
5)
Spicher
ship
women,
to
E : Some
chloasma
and
AcadDer-
15巻,中山書店,東京,
3)
R : Chloasma
Am
2)森岡貞雄,山口全一:肝斑.現代皮膚科学大系,第
1973, ppl02-107.
Carruthers
/
variables
gravidarum
and
oral contracep1966.
their relationin postpartum
Nwrstwg
Res,22(2):117―122,
1973.
943
肝斑患者における月経周期別ホルモソ値の検討
6) Resnik
cs :
ceptive
Melasma
drugs,
induced
J.A.訂.A..
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35
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