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自然エネルギー活用による自治体間ネットワーク会議 議事概要

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自然エネルギー活用による自治体間ネットワーク会議 議事概要
平成 28 年度
自然エネルギー活用による自治体間ネットワーク会議
議事概要
日時:平成 28 年 7 月 1 日(金)14 時 30 分から 17 時
場所:北沢タウンホール 集会室
P. 0
環境省からの報告
「地方公共団体の地球温暖化対策に係る 国の制度・方針の最新状況」
政府は、本年5月 13 日に、地球温暖化対策推進法に基づく「地球温暖化対
策計画」を閣議決定しました。この計画においては、地方公共団体が講ずべき
措置の一つとして、複数の地方公共団体による協調・連携した地球温暖化対策
が期待されています。
また、地球温暖化対策推進法では、従来から、都道府県、指定都市及び施行
時特例市を含む中核市に対し、自然エネルギー利用促進や省エネルギーの推進、
公共交通機関の利便増進など、区域の自然的・社会的条件に応じた施策を位置
づけた「地方公共団体実行計画」の策定を義務づけています。施行時特例市未
満の市町村にも、計画の策定に努めるよう求めてきました。
この地球温暖化対策推進法が、本年5月に改正され、地方公共団体実行計画
を複数の地方公共団体が共同で策定できる旨が規定されました。
今やこのように、国の計画においても、法律においても、自治体間連携に対
する期待が明示されているところであり、世田谷区さん及び川場村さんを始め
とする様々な連携の動向につきましても、大変興味深く拝見させていただいて
いるところです。
講演「自然エネルギーを通じた自治体間のつながりと日本創生」
九州大学
教授 原田達朗 氏
2030 年度の電源構成目標については、再生可能エネルギーを 22∼24%に
増やすことが閣議決定されています。再生可能エネルギーの固定価格買取実績
によると、平成 27 年度までに 356 億 kwh を買い取るときに必要なお金が 1
兆 2,811 億円(市民の電気代から払われている)となっています。
一般家庭でも再生可能エネルギーを自家消費できるようになれば、太陽光パ
ネルを置いた金額を上回る便益が、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)
を使わずに得られるような時代になると考えています。
再生可能エネルギーのなかでも、市民の負担が多いもの(太陽光・地熱)と
低いもの(風力・水力・バイオマス)があります。将来的に、太陽光は、再生
可能エネルギー設備の投資回収が終わっているため、価格競争力のあるエネル
ギーとしてマーケットに持ち込まれると予測しています。
再生可能エネルギーのメリットとしては、①CO2 排出ゼロ(高い環境価値)、
②燃料国際相場の影響を受けない、③為替リスクなし、等があり、また、デメ
リットとしては、①出力が不安定、②系統連系コスト負担大きい、③初期設備
投資が大きい、等が挙げられます。
電気市場価格は、再エネと原子力復帰によって大幅下落の可能性があります。
また、ガスによる熱電併給など自家消費電源の普及によって、CO2 削減、省エ
ネの進展が予想されます。償却し終わった再エネ、原子力、自家消費再エネ拡
大、コージェネ拡大はメリットオーダー(様々な種類の発電所を発電コストの
安い順に並べたもの)で考えると市場価格は低下につながるはずなので、全需
要家の便益拡大につながります。
我々は九州地方で自治体の再エネ電力利用の支援をやっております。福岡県
P. 1
みやま市の「みやまスマートエネルギー」という第三セクターの電力会社が、
2000 軒の各家庭の電力使用を 2 年分収集したので、九州大学でそのデータ解
析をして「電力需給オペレーションシステム」を開発しています。
「インバラン
スリスクゼロ」
(再生可能エネルギーの発電量が不足し、電力会社が補給する際
に、不足量が多いと高額になる仕組みがあり、それを回避すること)を目指し
て開発しておりますが、実はそれほど難しくありませんでした。電力使用の変
動要因は、曜日、時間帯に紐付く生活パターンによる確定変動、天気と気温に
よる変動くらいで、コンピュータが過去のデータをもとに計算します。電力予
測は数が多ければ多いほど誤差が少ないという特徴があります。個別の電力需
要は安定していないように思えますが、データが集まってくると、簡単に予測
できるようになります。現在、みやま市では次の日の電力予測は 3%以内の誤
差です。
今年 3 月に、みやま市と鹿児島県肝付町は、再生可能エネルギーの融通に係
る連携協定を締結し、地域の離れた自治体同士の連携を模索しています。みや
ま市と肝付町の電力需給や再エネ電力の動きは若干違うので、それらを読み込
んだうえでトレードオフする仕組みづくりに、九州大学はソフトウェア技術を
提供し協力させていただいています。
FIT と非 FIT 電源の違いは、それぞれ電力会社の系統につながっているものと
そうでないもとと説明しています。系統につながっているものは例えば、共通
のキャッシュカードで現金を引き出すように、九州地方の再生可能エネルギー
を世田谷区で受け取り、使う、というような使い方ができるのが特長です。
これに対し非 FIT 電源では、自家消費をベースに、エリアの中で需給調整し
ながら、エネルギーを地産地消していけば、再生可能エネルギーでなくても全
く問題はありません。EMS(情報通信技術を用いてエネルギーシステムを最適
化するコンピュータシステム)というエネルギーのマネジメントシステムがあ
れば、別段 FIT に頼らなくても、経済性を担保しながら消化するのは難しいこ
とではなく、全部の情報がサーバー上にあれば、エリアが離れていても一体の
オペレーションをする技術は確立されています。
環境省、経済産業省含めて、再エネを面的な利用をすすめましょうという取
り組みが始まっています。エリア EMS で、電気・熱含めて近隣の設備が協力し
ながら最適化をはかっていくことが再生可能エネルギーにとって有効な手段で
す。
この面的取り組みは都会のように需要が集まっているときは、特に問題はな
いが、地方では大きな需要がない、または住宅が分散しているという欠点あり
工夫が必要です。融通をし合うには固まったエリアで計画する方が有利です。
例えば地方では自治体の設備や大学、総合病院など、大きめの電気と熱の需要
を抱えるところを中心として、面的利用を計画していくのが最も賢い方法です。
今、注目はされていませんが、電化農業で需要を起こし、エリアの自然エネル
ギーの余剰の電気を使って生産を強化する取り組みも考えられます。電気の需要
がない地方では、電気をものに変えて都市に送るというのもエネルギー輸送の一
つの手で、将来的には可能性があると思います。
九州大学ではキャンパスのビル上に太陽光(パネル)を置いてその受給シミュ
レーションを行いました。大学は土曜と日曜は学生が来ないので、太陽光の発電
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が需要を上回ります。余った電気がもったいないので、バッテリーを置いたり、
水素を作ったりという検討もしましたが、近隣の公園や総合施設など休日の電
力利用が多い施設とうまく連携して融通し合えば、経済的で有効な利用ができ
ると考えました。
具体的には春日公園を中心に公共設備と九州大学が一体となって近隣コミュ
ニティの中で防災時の避難拠点を意識したエネルギーマネージメントを行う仕
組みづくりに取り組んでいます。九州大学医学部地区には、大学病院、県庁が
ありまして、そこでは非常事態でも絶対に停電しないエネルギー供給を前提と
したマネージメントを考えており、さらに九州大学の本体は水素製造や燃料電
池などの先端の発電設備を持っていて、これらの最新技術を駆使した近未来エ
ネルギーマネージメントの確立、最終的には九州大学全キャンパス統括マネジ
メントシステムを開発します。
この九州大学統括マネージメントが何を目指すかというと、九州大学として
需要を統合し外部からの電気の計画調達を考えているところです。熊本地震も
ありましたが、このようにエリア内で電力需給をグリップするしくみを持って
いると、災害拠点としての機能を強化できると注目されています。
再生可能エネルギーや不安定電源が増えていくと、今後の日本としてエリア
で不安定電源を上手につかうしくみが是非とも必要です。これにより安定した
電源を必要とする産業とネットワーク上で共存できるグリッドシステムを目指
し、日本の産業生産力を守りつつ、国産の再エネを大量に利用することになり
ます。電気の 3 原則として「公益」「公平」「透明」があります。電力会社は自
由化され競争にさらされており、もはや一般の企業です。これに変わってこの 3
原則をこれから担保できるのは、自治体さんしかないのではないかというのが
私の結論です。
今までお話ししましたのは、もともとパリ協定(国連気候変動枠組条約第2
1回締約国会議)がございまして、それがバックグラウンドになっています。
パリ協定は、2030 年までに 26%減らしますということが皆さんに印象づい
ていると思いますが、実は先があって 2050 年に先進国は 80%減らしましょ
うとなっています。どういう社会になっているだろうと思いますが、逃げるわ
けにもいきません。これをまじめに目指していくと、やっぱり再生可能エネル
ギーが 24%くらいではとても足りないのが実態です。さきほどローカルの電気
のやりとりがありましたが、これの実現には色々制約があったりお金がかかっ
たりします。だけどこれで発生する環境的な価値のやりとりというのはソフト
ウェアの中でできるのではないかと考えています。国産の自然エネルギーで作
られる、温室効果ガスを発生しない電力は、電気エネルギーのほか、環境的な
価値、エネルギーセキュリティといった価値も創出していると考えています。
この環境、セキュリティという価値を地方と都会で共有することが重要です。
そもそも 26%もきついんですけど、80%減らすというのは化石資源で電気
を作っている時代じゃありません。2030 年で CO2 の排出量はざっくりという
と 14 億トンです。それで 80%減らしましょうということは、大体年間 3 億
から 4 億トン位の CO2 の中で、日本は生きていきなさいというのが示すとこ
ろです。
九州に八幡製鉄所がございます。そこで排出される CO2 が大体 1 億トン、
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ということは製鉄所 4 つ分で何とか生きていかなくてはいけないというのが、
80%削減の世界です。消費者が今後意識し、責任を持っていくということが大
事かと思います。
もう一つ触れたかったのは、日本は今後人口が減っていきまして、2030 年
で 10%、2050 で 25%くらい人口が減ると予想されていて、特にローカルな
ところでは顕著で、近い将来人口減少で公共サービスの高騰が予想されます。
何か工夫していかないと、どうせ住むのならと、みんなサービスコストが安い
ところに動いてしまう可能性もありますので、2030 年度で地方都市は半分ぐ
らいに減ってしまう可能性すらあります。電気も含めてガス、通信、水道など
社会インフラの最適化というのは、人口減少局面の日本が考えていかなければ
ならない大きなテーマであると思います。おそらく、今まで経験のない領域に
なってくると考えています。かかった費用をすべて転嫁できる総括原価は、人
口増加局面ではよくできたモデルですが、減少ではとても危険なモデルです。
今後エネルギー消費社会の構造改革が起こる、あるいは起こらざるを得ない
という状況でございます。今回私が触れたかったのは、そのときにポイントと
なるのはエリアの自治体さんで、重要な役割があるということです。これを私
の結論としたいと思います。ありがとうございました。
事例紹介(世田谷区、川場村)
世田谷区
「世田谷区における自然エネルギー活用の取り組みと自治体間連携」
<環境基本計画について>
27 年度に世田谷区総合戦略を策定、交流自治体との連携による自然エネルギ
ー利用の促進を重点取組に設定しました。
世田谷区は住宅街のため、現在は太陽光発電が中心、今後は水素活用につい
て検討中、区民の約 60%がこれまでの電気代と同等程度又は多少高い程度なら
自然エネルギーを活用したいと答えています。
<群馬県の川場村との連携>
川場村で検討中の木質バイオマス発電による電気を、世田谷区民に提供した
いという提案が昨年川場村長よりあり、本年2月に協議会を設置する等の連携
協力協定を締結しました。
間伐材等によるバイオマス発電の電気を、小売電気事業者を通じて区民が購
入する仕組みを検討しています。また、現在のバイオマス発電は小規模ですが、
寄付や投資等の資金でバイオマス発電の推進を応援することを検討します。
<課題>
小売電気事業者の間で差が見えにくいことです。電気の由来が明確になれば
多くの区民が自然エネルギーを利用するだろうと予測しています。
群馬・川場村
「川場村のむらづくり 地域資源を活用した再生可能エネルギーへの取り組み」
<取組みの概要>
「川場村グリーンバリュープログラム(GVP)」を行っています。川場村の重
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要な地域資源である森林資源を最大限に活用するもので、川場村と大手ゼネコ
ン清水建設・東京農大の3者で元気なふるさとづくり協定を平成 24 年に締結
して進めています。今までの農業プラス観光を中心とした村づくりに林業をプ
ラスし、地元森林組合の間伐材・低品位材を活用、①木材製品の製造・販売、
②木質チップを使ったバイオマス発電により世田谷区への売電、③発電際の排
熱を利用した温室農業、等を目指します。
今年度は、学校林の間伐材を使い、学校机の天板を製作して小中学生全員に
しました。森林を整備し、活用することで、CO2 の削減にも取り組んでいきま
す。
各自治体の取組み
岩手・八幡平市 「八幡平市における再生可能エネルギーの取り組み」
<取組みの概要>
長年調査してきた地熱発電の事業化や、大型風力発電や小水力発電の事業が
進んでいます。新たな取り組みとして、市内に移住した若者が中心となって「企
業組合 八幡平地熱活用プロジェクト」を立ち上げ、地熱水を活用したマッシ
ュルーム栽培ハウスと馬糞堆肥生産ハウスを整備しました。
国内初の商業用地熱発電所である「松川地熱発電所」は、平成 28 年 10 月
に 50 周年を迎えます。9 月に地熱シンポジウムの開催を予定しています。
<課題>
発電しても、電力の小売が進んでいないので、市民にどのような恩恵がある
か見えにくいのが現状です。
福島・郡山市 「自然エネルギー活用による自治体間ネットワーク会議」
<取組みの概要>
郡山市は、明治維新後、全国からの旧士族の入植者を中心として行われた「安
積開拓・安積疏水開さく事業」により、猪苗代湖から本市への疏水通水が行わ
れたことなどによって、米等の農業生産量が飛躍的に伸びたことに加え、標高
差を活用した水力発電所が建設され、その電力により紡績などの産業の成長に
つながり、その後の本市発展の礎が築かれました。
本市は、平成 27 年度にエネルギービジョンを策定し、その中で、2020 年
までに、再生可能エネルギーの導入割合を 30%とすることを目標としており、
具体的には、①各地域の公共施設に太陽光発電設備及び蓄電池を設置するとと
もに、市庁舎敷地内に②電気自動車用急速充電器(EV ステーション)を設置し
たほか、今後、③今年度中に再エネを活用した水素ステーションも整備する予
定です。
また、浄水場における水の落差を活用した小水力発電、生ごみを発酵させる
ことによって発生するバイオガス発電等の再エネを導入していく予定です。
<課題>
①事業者、大学との技術提携、事業連携、②送電網の制約による発電量の抑制、
③エネルギーの地産地消と地域間連携のバランス等です。
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神奈川・川崎市「川崎市における環境エネルギーの取組について」
<取組みの概要>
川崎臨海部には、多数の発電施設があり、さまざまな事業主によって運営さ
れていることが特徴です。東日本大震災以降のエネルギーに関する社会状況の
変化を踏まえ、川崎市エネルギー取組方針を策定しました。これは、川崎市の
特徴や強みを活かした「川崎らしいエネルギーの取組」を推進していくもので
す。具体的には、①多様な主体との連携イベント・セミナーの開催、②災害時
のエネルギー確保、創エネ・省エネ・蓄エネの総合的な取り組みを推進、③優
れた環境技術や製品の認定(CO2川崎ブランド等)、④メガソーラー活用の環
境学習施設や次世代エネルギーパーク等による情報発信等です。
新潟・十日町市「環境・エネルギー政策」
<取組みの概要>
市内電力消費量のうち 30%を、太陽光、水力、地中熱、バイオマス等の再生
可能エネルギーで創出することを目指しています。
例として、JR 宮中取水ダムから放流される維持流量を活用して、小水力発電
を行い、得られた電力を売却してその利益を地域住民へ還元したいと思います。
昨年から継続中の小水力発電に関しては、今年は詳細設定に取り組む予定です。
バイオマス産業都市構想(昨年構想を策定、今年6月に申請)に基づき、①
木質燃料の利用拡大、②使用済み紙おむつの燃料化、③きのこ廃菌床の燃料化
と肥料化、④廃棄物系バイオガス発電、⑤もみ殻の燃料化と肥料化、⑥廃食用
油の BDF 燃料の利用拡大等を図っていきます。
<課題>
現在計画している水力発電に関しては、JR 宮中ダムの周辺には JR 東日本、
東京電力、東北電力 3 社の送電線があり、どの送電線に乗せるかが今後の検討
課題です。
小型バイナリー発電で地産地消しているが、投資額、メンテナンス費用が高
額になります。この課題がクリアーできれば非常に有効です。
静岡・富士宮市「富士宮市の取組状況等」
<取組みの概要>
富士山の西南麓に位置することから、水力発電所 25 カ所、太陽光発電は公
共施設に 10 か所を保有、平成 27 年には富士山の景観と再生可能エネルギー
発電施設の調和を目指す条例も制定しています。
木質バイオマスの熱利用、畜産系バイオマスについては、国の「循環調和型
バイオマス資源活用モデル事業」を検討中です。また、市街地地区で「スマー
トコミュニティ可能性調査」を計画中です。
小水力については、普通河川3地点(2企業)で可能性調査実施中です。環
境調和型バイオマス資源活用モデル事業では、省 CO2 かつ低環境負荷なバイオ
マス利活用モデルを確立し、低炭素社会と循環型社会の同時達成に貢献します。
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事業者プレゼンテーション
国際航業株式会社「弊社事業のご紹介」
<取組みの概要>
弊社は空間情報技術の会社ですが、自治体から相談を受け、リニアモーター
カーの実験施設の跡地を活用した太陽光発電所を作りました(宮崎ソーラーウ
ェイプロジェクト)。これは、全国初の自治体との協力によるメガソーラー開発
で、当社にとっても発電事業第1号となりました。
以降、さまざまな太陽光発電のお手伝いをしていますが、処分場跡地等にお
ける太陽光発電事業として、和歌山・橋本ソーラーウェイや、世田谷区みうら
太陽光発電所の事業を手掛けています。
<課題>
他社の同内容のものに比べ、弊社は採算性がよくないと思いますが、これは、
地域貢献を重視しているためです。
意見交換・質疑応答
(司会)事前に各自治体様から原田先生に質問をいただいています。先ず八幡
平市から「再エネの導入に系統連系の課題が立ちはだかっており、解決のため
に都市部と地方ができることは何ですか。また、水素の運搬や活用などは、今
後どの程度普及すると思われますか。」という質問です。
(原田教授)
今 2 つの方法が考えられます。1 つはオーストラリアなどの資源国から、カ
ーボンを落として液化水素だけを日本に持ってくる方法で、大量の水素をデリ
バリーするものです。
もう 1 つの方法は、あるエリアの A と B の地点があって、A 地点は再生可能
エネルギー適地で電気がたくさん作られているとします。B の方で電気が足り
ない場合、今は電線を使って A と B を結ぼうとしていますが、九州大学ではエ
リア地産地消という言葉を使い、エリアの中で作っている電気と使っている電
気をエリアで完全消費していくことを提案しています。この場合に A エリアに
電気が潤沢にあったら A エリアの需要を増やせばいい、という考え方です。
一つ目の方法について、手段として水素はありうるだろうと思っています。
エネルギーをいったん貯留する、あるいは移動させるということに関して、水
素は向いているのかもしれません。水の電気分解をすれば、水素はいくらでも
できます。しかも難しい方法ではありません。使い道としてはコミュニティバ
スを水素にするとか、A 地点で水素をチャージして B 地点に移動して電気ある
いは水素そのものを供給するとか、水素は需給バランスを取るためのメディエ
ーターとしての役割も可能だろうと思います。
送電費用をエネルギー輸送費と考えた場合、電気だと 1000kcal あたり 10.5
円かかります。自動車につかう 700 気圧水素は 2400kWh/m3 と、非常に濃
縮して運べるので、水素の方が電気を電線で運ぶより、距離によっては安いか
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もしれません。最適化を考えながらエリア内でエネルギーの融通をし合うこと
が今後の課題ではないでしょうか。おそらく、こういうことをしなければなら
ない時代が今後必ずやってきます。再生可能エネルギー電力を大量に地方で作
り、地域で消費したうえで、水素なり電気なりでどうやってうまく配れるかが、
これからのテーマです。
(司会)次は郡山市さんからの質問です。
「現在、国をあげて再エネ導入推進を
図っていますが、長期エネルギー需要見通しにおいて、2030 年度における電
源構成で、石炭火力が 26%程度とされており、今後も CO2 排出量の多い石炭
に頼らざるをえない状況になっております。次世代の火力発電システムである
石炭ガス化複合発電(IGCC)が注目を浴びており、現在は福島復興電源として
高効率の実証プラントの建設計画が進められていると伺っていますが、この技
術の特長や将来性などを教えてください。」というものです。
(原田教授)
石炭を使うのなら、最新の技術を駆使してより効率的に使うことです。2 つ
重要なことがありまして、1つは、効率良く使うと二酸化炭素の排出量が減っ
てきます。もう一つは、より少ない燃料でたくさんの電気を出すことで、公害
負荷(大気汚染物質排出、水質汚濁物質排出)をかなり軽くできることです。
これが日本の公害問題を解決した一つのポイントです。
ど れ く ら い CO2 を 排 出 す る か と い う と 、 現 時 点 の 最 新 技 術 で 、
0.83kgCO2/kWh で す が 、 石 炭 ガ ス 化 を 使 う と 0.73kgCO2/kWh 、
0.63kgCO2/kWh と下がってきます。
もう一つ選択肢として、ガスコンバインドサイクル発電(内燃力発電の排熱
で汽力発電を行う複合発電)があります。これは現在 0.36kgCO2/kWh で、
比較すると石炭だと 2.5 倍くらい CO2 が出ます。
日本がこれからどちらを選択するでしょうか。エネルギーセキュリティ面を
考えて、答えを出してゆくのだろうと考えています。石炭を燃料の一つの柱と
するなら、石炭ガス化で CO2 削減をする選択肢、燃料のバラエティにこだわら
なければ、そもそも CO2 排出量が少ないガスを選ぶ選択肢、になると思います。
さまざまな課題がありますが、
“2050 年に 80%CO2 を削減しなさい”と言わ
れると、ガスすらも多分だめだろうと思っています。
(郡山市)
安倍総理が 3 月 5 日に福島に訪問し「福島を水素の一大生産地に」といって
いました。その後、福島県と東京都で協定を結んで、水素を活用していくとい
う話もあり、郡山市としては期待をしていますが、それについてはいかがです
か?
(原田教授)
水素は、再生可能エネルギーでできた電気で水素をつくって車を動かしたり、
また燃料電池などその水素を燃料として電気にしたり、どう考えてもエネルギ
ー転換効率的には合理的ではありません。ただし環境ペナルティを考えれば合
理的ではなくても可能性はなくはないと思います。また、水素自動車や自動運
転が一般的となり関連機器の量産化できコストは下がるので、風景も変わって
くるかもしれないと考えています。
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(司会)本日の会議の全体の感想を環境省さんお願いします。
(環境省)
政府としても、自治体間連携を通じた再生可能エネルギー事業を巡る論点は
大変重要だと思っています。本日も話題に上がった系統連系や水素技術の課題
などに関しては、政府としても「エネルギー基本計画」などで対応の方向性を
打ち出ているところでもあります。また、将来にわたって自治体連携を促進し
ていくためには、今後の長期的な方向性を国が示していくことも重要だと考え
ております。環境省では、2050 年の長期目標もにらんで、
「丸川ビジョン」と
いう構想を大臣が提唱しました。今後、さらに議論を重ねて発展させたものを
皆様にお示しして、広く議論を喚起していきたいと思います。
(世田谷区)
本日は長時間ありがとうございました。
世田谷区としては地産地消がかなわないので、ぜひ地方の自治体の方には余っ
たエネルギーをまわしていただきたいと思います。私たちもできるところから
取り組んでいきたいと考えています。
以上
P. 9
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