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ひび割れを有する鉄筋コンクリート部材の高経年化評価に関する研究
研究概要紹介 ひび割れを有する鉄筋コンクリート部材の高経年化評価に関する研究 大阪大学 松本 行平 研究目的・概要 鉄筋コンクリート部材の構造耐久性は、コンクリート中の鉄筋腐食の程度に大きく依存する。コンクリート 部材にひび割れが存在する状況では、通常に比べ鉄筋腐食が早期に進行する。しかしながら、ひび割れのある 場合の鉄筋腐食の進行を予測する手法は確立されていない。 本研究では、ひび割れを有するコンクリートの鉄筋腐食進行を検討し、適切な高経年化評価手法を確立する ことを目的として、鉄筋腐食の主要因であるコンクリートの中性化進行と塩化物イオンの浸入について検討を 行った。 コンクリートの中性化 既往の研究よりひび割れ部での中性化進行は健全部(ひび割れの無い部分)と形状が異なることがわかって いる。この形状の違いを引き起こす原因を考察し、ひび割れ内部での濃度拡散による CO2 流入・反応メカニズム を考え(図 1)、流体解析を行った。従来はひび割れ内部に CO2 が均等に流入・分布すると考えられていたのに対 し、本解析ではひび割れ内の CO2 濃度が均一ではないと仮定している点が特徴である。また、解析と同条件のひ び割れを持つ試験体(図 2)を作成し、実験結果と解析結果の比較を行った。 解析結果は実験結果の傾向をよく捉えており、提案した CO2 流入メカニズムが一定の精度を持っていることを 示した(図 3)。また、水セメント比が低い高強度コンクリートの方がひび割れ部での中性化進行が早期に進行 することがわかった。ひび割れ幅が大きくなるにつれ実験結果と解析結果の差が開くことから CO2 流入に対流の 影響を検討する必要があると判断した。 現在、熱流体解析ソフトを用いて、ひび割れ幅や剥離流による影響を検討している(図 4)。 ① ③ ② CO 2 ④' ③ CO 2 CO 2 CO 2 次のセルに CO 2 が流入 75 アルミシート 30 CO 2 60 セル内のCO 2 が 吸収さ れき ら ず残っ た場合 外気側 60 引き抜く 30 アルミシート セル内のCO 2 が 全て吸収さ れた場合 アルミシート ④ CO 2 97 鉄筋側 ステンレス鋼板 0.1mm,0.2mm,0.5mm 102 CO 2 エポキシ樹脂 再び外気側から 二酸化炭素が流入 図 1 解析メカニズム 図 3 実験結果・解析結果比較 300 エアコン配管用パテ 試験体A 図 2 試験体概要 図 4 流体解析図(スカラー風速) 研究概要紹介 塩化物イオンの浸入と腐食進行 ひび割れを有する鉄筋コンクリート構造の高経年化評価に関する研究 ひび割れ近傍での塩化物の浸入量と鉄筋腐食の関係を調べる。鉄筋を埋設したコンクリートプリズムにひび 割れを導入し、塩水噴霧装置・浸漬装置により腐食促進実験を行った。パラメータにはひび割れ幅・水セメン ト比・中性化の有無・促進試験方法(図 5) ・促進時間などを選択し、図 6 に示すように単位長さあたりの鉄筋 の腐食面積率・コンクリート表面と鉄筋位置付近の塩化物量を測定した。 その結果、試験方法によって塩化物イオンの浸入量が著しく異なること、塩化物イオンの浸入量がひび割れ 幅に対し線形の関係に見られること(図 7)、最大腐食面積率と塩化物量に相関関係が見られる傾向が得られた。 現在は、試験体からのデータ収集を続けると共に、実験結果に基づいた近似式について検討している。また、 適切な腐食量の測定手法(腐食面積・腐食体積・腐食形状など)を検討している。 図 5 腐食促進試験方法 図 6 腐食面積率・塩化物量測定方法 1. 2 1. 1 1. 0 0. 9 0. 8 0. 7 0. 6 0. 5 促進試験期間 赤:3 週間 緑:6 週間 黄:9 週間 0. 4 0. 3 0. 2 0. 1 内部濃度/外部濃度 0. 0 0 .0 0 0 .0 5 0 .10 0 .15 0 .2 0 0 .2 5 ひび割れ幅(mm) 0 .30 0 .35 0 .4 0 0 .4 5 0 .5 0 図 7 ひび割れ内部の塩化物濃度/外部塩化物濃度とひび割れ幅の関係(塩水噴霧試験結果) 今後の展開 流体解析・腐食量測定手法など、引き続き検討を続ける必要がある。 さらに中性化・塩化物量・鉄筋腐食量のそれぞれの関係が導出された時点で、それらの予測式を連立し、鉄 筋コンクリート構造の高経年化評価式を提案する。また、実構造物からのデータ収集を行い提案式の精度を検 討する。