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研究報告第23号 [1299KB pdfファイル]
研究報告
第 23 号
「Differentiated Instruction(生徒の多様性に応じた指導)」を
取り入れた中学校英語科の授業実践
2013.3
大阪市教育センター
-0-
研究報告
第 23 号
「Differentiated Instruction(生徒の多様性に応じた指導)」を
取り入れた中学校英語科の授業実践
本研究は,生徒の学習の個人差や特性に忚じた指導をめざす,
「Differentiated Instruction:DI(生徒の多様性に忚じた指導)」(以下
「DI」)の指導内容・方法を,資料に基づいて整理したものである。
まず,
「DI」の基本的な考え方の整理をもとに,
「DI」を取り入れた効
果的な学習の指導と評価のあり方を明らかにした。次いで,その結果
をもとに,パフォーマンス課題を位置づけた「DI」の授業を構想し,
授業実践を通してその有用性を検討した。授業実践の結果,英語の授
業に対する意識と,「書く」ことに対する意識の向上が認められた。
【キーワード】「Differentiated Instruction:DI(生徒の多様性に忚じた指導)」
レディネス
興味・関心
学習プロフィール
伊藤
教育振興担当
-1-
由紀子
目
次
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
Ⅰ「Differentiated Instruction: DI(生徒の多様性に応じた指導)」の考え
・・・・・・・・・・・・・・・・
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
1
「DI」の誕生
2
「DI」とは
3
「逆向き設計」に「DI」を取り入れる方法
4
「DI」を効果的に進めるための視点
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
Ⅱ「Differentiated Instruction: DI」を取り入れた授業の指導と評価
1
パフォーマンス課題を位置づけた授業設計にあたっての視点
2
「DI」を取り入れた授業の評価の内容・方法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中学校英語科における「Differentiated Instruction: DI」を取り入れた授業の実際
8
・・・・
9
1
授業の計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
2
授業の実際 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
13
3
実践の結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
17
研究のまとめと今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
20
おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
20
興味・関心,学習スタイルを知るための事前調査「Know myself」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
23
Ⅲ
Ⅳ
資料
-2-
はじめに
めの有効な手段で,一般的には一つの単元の最
後に設定したパフォーマンス課題に向けて,指
中学校学習指導要領(平成20年版)の改訂に
導内容を組み立てていく。
より,英語科では,これまで以上に生徒のコミ
そこで本研究では,生徒の学習意欲や学習の
ュニケーション能力を育成するために,「指導
理 解 度 の 向 上 を 目 指 し ,「 Differentiated
方法や指導体制を工夫改善し,個に忚じた指導
Instruction:DI」を取り入れた指導のあり方を
1)
の充実を図ること」 が求められている。しか
探ることを目的とする。まず,「DI」が誕生し
し,学習指導基本調査(2010年) 2)では中学校
た経緯や,従来実施されてきた個人差に忚じた
教員の多くが「生徒の学習意欲が低い(73.2%)」
指導との差異など,「DI」の基本的な考え方を
「生徒間の学力差が大きくて授業がしにくい
整理する。次に,概念整理をふまえて,「DI」
(71.0%)」という悩みを抱えながら,「教科
を取り入れた学習の指導と評価のあり方を検討
の具体的な指導法や,教材研究の方法を学びた
する。その結果をもとに,中学校英語科におい
い(76.4%)」と考えている実態が,明らかにな
て「DI」を取り入れた授業を実施し,その効果
っている。学習における個人差や特性が多様な
と改善点を見出す。本研究は,日々の指導に悩
生徒一人一人に,どのようにして学ぶ楽しさと
む中学校英語教員に,生徒の多様性に忚じた複
わかる喜びを味わわせて指導をしていくかが課
数の指導の手立てを提案することにより,生徒
題である。
の学習意欲と学習の理解度を高め,各学校にお
その解決策の一つとして,アメリカのキャロ
ける授業改善に役立てようとするものである。
ル・トムリンソン博士(Carol Tomlinson)が提唱
Ⅰ 「Differentiated Instruction:DI(生
徒の多様性に応じた指導)」の考え方
する「Differentiated Instruction:DI(生徒の
多様性に忚じた指導)」(以下「DI」)を取り入
れた指導法がある。
「DI」とは, 「生徒それぞれ
1
の多様性に目を向けた,クラスでの指導法」で
「DI」の誕生
3)。クラスの
米国においては,1970 年代から,子どもの認
生徒全員が,最終到達目標を共有しながら,教
知発達の多様さが学習の際に個人差として現れ
師は生徒のレディネス,興味・関心,学習プロ
るという点が注目されるようになり,それまで
フィールに忚じた複数の手立てを提供し,概念
の一斉指導から個別指導への道が開かれるよう
やスキルを学習させていく。「DI」には,学年
になった 6)。 2002 年 1 月には NCLB 法(どの
相当の教育水準の達成と,生徒一人一人の違い
子も置き去りにしない法)という,人種や社会
に忚じて複数の学習内容や方法を提供すること
的階層等の子どもの背景に関わらず,全ての子
あるとトムリンソンは述べている
4)
が求められている 。
どもに学力を保障し,学力の底上げを図る包括
また,「DI」では生徒が実際に知識やスキル
的な教育法が成立した。
を使いこなす力をつけるためのパフォーマンス
学習の個性化をめざし,生徒一人一人の違い
に 忚 じ て 指 導 を 工 夫 す る 「 Differentiated
課題の設定が有効であるとされている。
Instruction:DI」を提唱していたトムリンソン 7)
パフォーマンス課題とは,
「知識・技能が実生
活で生かされている場面や,その領域の専門家
は,アメリカの真正の評価論者マクタイ
が知を探究する過程を追体験させるもの」であ
(J.McTighe)と提携し,「DI」を「逆向き設計」
る 5)。パフォーマンス課題は,コミュニケーシ
論に位置づけることを 2006 年に提案している 8)。
ョン能力を高める生徒同士の学び合いを図るた
「逆向き設計」論とは,ウィギンズ(G.Wiggins)
-1-
とマクタイが提唱したカリキュラム論であり,
単元の始まりから終わりまで全ての場面で
教科を超えて適用でき,将来にわたって活用で
「DI」を取り入れて指導する必要はない。教師
きる重要な概念(永続的理解)を明確にして,
は,黒板の前に立って説明する時間を短縮し,
それに到達するまでに習得するべき知識と技能
生徒自身が自ら活動するよう促し,支援するこ
を,段階的に位置づけるものである
9)
。
とによって授業を成立させていく。
この「逆向き設計」論の中に「DI」をどのよ
また,トムリンソンは「DI」について,以下の
うに位置づけ具体化するかを,トムリンソンは
ように説明している
次のように提案している。まず,生徒の個人差
◎
や特性に忚じた教えるべき基礎・基本(学習到
12) 。
「DI」は新しいものではない(「DI」は
一教室内での通常の指導法の一つである)。
達目標「永続的理解」)を,本質的な理解や問い
◎
特定の生徒のためのものではない(全て
などを用いて明確化し,実際の授業では,
「学習
の生徒は,興味,必要性,学習ペース,文
内容(contents)」,「学習プロセス(process)」を
化,性別等が違うので,教師の注意をそこ
多様化して,永続的理解を得ているかどうかを
へ向ける)。
「成果物(products)」で評価する
10) 。また,コ
◎
通常の授業計画に加えて何かをしなけ
ミュニケーションのツールとして知識やスキル
ればならないものではない(教師が通常の
を使いこなして忚用力を身につけるためには,
授業に加えて行うものではなく,むしろ生
生徒自らが「何のために」学習するのかを考え,
徒が最初から何を必要としているかを考
自立的な学習ができるようにすることが重要で
える,革新的なアプローチである。計画に
加えるのではなく,計画自体を変える)。
あるという。
◎
現在,彼女の提唱する「DI」は学習環境の違
一般的な指導内容と反対のものではな
い(「DI」は指導法である。生徒はレディ
いや英語以外の母語を持つ生徒など,様々な背
ネス,興味,学習プロフィールに基づいて
景を抱える米国の学校現場に受け入れられ,小
学習した方がより効果的である。多様な生
学校から大学まで,様々な授業実践,研究発表
徒に違った内容を教えるのではなく,目標
がなされている。
に到達するために,違った学習のルートを
提案する)。
2
「DI」とは
◎
「DI」とは,「生徒それぞれの多様性に目を
生徒を甘やかすのではない(常にそれぞ
れの生徒の現在の力よりも,尐し難しいこ
向けた,クラスでの指導法」である。クラスを
とに挑戦できる課題を設定する)。
複数に分割したり,一人一人に全く違う教材を
◎
特定の学習方法ではない(「DI」は教え
与えたりするのではなく,様々な生徒から成り
るための道具ではなく,教室での指導法で
立っているクラスというまとまりのなかで,ど
ある。生徒の年齢や必要とされる学習内
のように個々の学習者を伸ばしていくかが問わ
容,教師の性格等によってあらゆる指導方
れるものである。生徒はそれぞれ違った個人で
法がある)。
あり,その学び方も学習するペースも同一では
Tomlinson.,Imbeau.2011.より要約
ない。そのため,クラスにおける最終的なゴー
ルは同じであっても,学習者全員が同じ授業を
次に,同著に示されている「DI」において,
同じ方法で受け,同じアセスメント(評価の対
生徒を把握するために必要なポイントについて
象)で評価されるのではなく,学習者によって
工夫されるべきである
説明する。
11)。
-2-
(1)
り入れたものもある。しかし,「DI」ではより
生徒の多様性に応じた指導をするために
必要な3つのポイント
①
指導者の側の指導の工夫そのものに焦点が当て
られていることが特徴である。本研究では,米
レディネス(readiness )
国で誕生した「DI」の内容に焦点を絞って研究
レディネスとは,生徒が特定の知識・理
解・スキルにどの程度習熟しているかの程度
を進めたい。
をいう。教師は,生徒が今日の授業の終わり
に何を知り理解し,どんなことができるよう
3 「逆向き設計」に「DI」を取り入れる
方法
になるべきなのかを考え,彼らを目標に到達
させるための課題を与えるようにする。
②
本章では,生徒に何をどのように教え,評価
興味・関心(interest)
するかを考える上で,カリキュラムデザインの
生徒の興味・関心は,とりわけ外国語教育
モデルとなる「逆向き設計」論をもとに,どの
において,動機付けの要素として重要視され
段階でどのように「DI」を取り入れるかについ
ている。そのため授業を興味深いものにする
て探っていく。
ことはもちろん,内容が生徒の生活や関心に
ウィギンズとマクタイによって提唱された
直結していることも大切である。携帯電話の
「逆向き設計」論では,生徒が将来,生活に役
料金の計算方法を学ぶ,詩を流行歌の歌詞と
立てることができるような概念を「永続的理解」
つなげる等,生徒の興味に合わせた題材は多
数存在し,授業で触れた内容が生徒の関心の
とし,それを明確にして,習得すべき知識やス
扉を開き,さらに詳しく学習するきっかけに
キルを段階的に位置づけている。
なることも多い。
「逆向き設計」の研究者である西岡は,
「逆向き
③
設計」論は,
「教育によって最終的にもたらされ
学習プロフィール(learning profile)
学習プロフィールとは,個々の生徒の学び
る結果から遡って教育を設計」し,
「指導が行わ
方に影響する様々な要因を指す。具体的に
れた後で考えられがちな評価方法を先に構想す
は,生徒が最も好む学習のスタイル,性別,
る(指導案と同時にテストを作成する等)」とい
文化的背景,学習歴,学習のペース(スピー
う発想であると説明している
ド,認識力の違い)等がある。
13)。
また西岡は,ウィギンズらの「知の構造」図
を次ページのように整理し(図Ⅰ-1,p.4),
Tomlinson.,Imbeau.2011.より要約
生徒が知識やスキルを統合的に使用できる「永
(2) 「DI」と日本における「個に応じた指導」
「DI」と日本における「尐人数指導」や,
「習
熟度別指導」「協同学習」等との共通点も多い。
わが国でも,1989 年には「個に忚じた指導」と
続的理解」を得るためにはそこから遡って,知
っておく価値がある「事実的知識」や「個別的
スキル」,「転移可能な概念」や「複雑なプロセ
ス」を使いこなすための指導を,設計する必要
があるとしている。さらに評価の場面では,
「事
いう表現が初めて学習指導要領に登場し,
「 自ら
実的知識・個別的スキル」
「複雑なプロセス・転
学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対忚できる能
移可能な概念」は従来型の筆記テストや実技テ
力の育成を図るとともに,基礎的・基本的な内
スト等で評価することができるが,最も重要な
容の指導を徹底し,個性を生かす教育の充実に
概念である「原理と一般化」には,生徒が学習
努めなければならない」と示され,実践が積み
の結果として身につけた知識やスキルを,自分
重ねられてきた。
「DI」の指導法の中には,
「尐
のものにして活用できているかを評価するパフ
人数指導」「習熟度別指導」「協同学習」等を取
ォーマンス評価が必要だとしている
-3-
14) 。
4「DI」を効果的に進めるための
視点
知の構造―要素の定義―
重大な
観念
事実的知識
個別的スキル
事実:
・事実上,宣言的
・「理論」が基づいている,
明白で受容された「真実」
スキル:
・事実上,手続き的
・単純で個別的な手続き
・より大きな目標にむけた
・転移しない
手段(例 試合の準備のため
の副次的な反復練習)
・限られた転移
転移可能な概念
複雑なプロセス
概念:
・事実上,宣言的
・単語や短い語句で述べら
れた抽象的な知的構成
概念
・トピックや文脈を超えて
転移可能
プロセス:
・事実上,手続き的
・意図された結果を達成
するためのスキルの複雑な
組み合わせ
・学問の中で(時には学
問を越えて)転移可能
本章では,わが国の中学校の指導に
知っておく
「DI」を具体的に取り入れるにあたり,
価値がある
トムリンソンの提案内容を整理する。
(図Ⅰ-2,p.5)
(1)
容・方法
「DI」の学習の内容や方法は,4つ
知ること,
すること
のカテゴリー(学習内容,学習プロセス,
が重要
学習の成果物,学習の雰囲気・環境)に
分類されている。トムリンソンの著書 17)
より,それぞれについて具体的な内容
原理 (principles)と 一般化 (generalizations)
原理と一般化:
・二つ以上の概念をつなぐ抽象概念
をみていく。
永続的
・転移可能―事実,スキル,概念,プロセス
の意味を了解するのを助ける
理解:
・我々が学習者に理解するようになって欲し
い原理や一般化を表現する,完全な文の形
理解
①
学習内容(contents)
学習内容とは,カリキュラムに従っ
て学習した結果,生徒が得るべき知識や
スキル,運用能力のことであり,「事実」
で变述されたもの
・「看破」が必要となる,明白ではなく重要
な推論
図Ⅰ-1
生徒の多様性に応じた指導の内
(facts),「概念」(concepts),「一般論」
(generalizations),
「スキル」(skills)等
ウィギンズとマクタイによる「知の構造」図
15)
西岡加名恵.2012 より引用
から成り立っている。単元や学年が終わ
った時に,生徒がどんなことができるよ
うになっているかという最終到達目標
トムリンソンは,ウィギンズらの提唱する「逆
を学習に取り組む前に立て,その最終到達目標
向き設計」と「DI」が必要な連携であると考え,
に達するまでの日々の目標や手段を,生徒に忚
お互いの理論を統合した共同著書を執筆し,
「逆
じて変える。
向き設計」において「DI」が有効である段階を,
②
次のように示した
16) 。
学習プロセス(process)
学習プロセスとは,生徒が単元の学習内容を
「DI」が有効な段階として,まず第1段階
理解し,最終到達目標に至るまでの活動や教材
(stage1)の指導目標を立てる場面では,
「DI」は
のことである。小グループでの学習,選択でき
必要とせず,クラスで同じ到達目標を設定する。
る課題や宿題を工夫する等の言語活動アクティ
次に第2段階(stage2)の評価規準を作成する段
ビティ,つまり“語学センスを培う活動”とも
階においては,「DI」を取り入れることが可能
示されている。
である。また第3段階(stage3)の,実際の授業
③
学習の成果物(products)
計画の場面においては,生徒の多様性やニーズ
成果物とは,生徒が学習したことを忚用・発
に忚じて,「DI」を取り入れる。第1段階,第
展させるための最終段階のプロジェクトである。
2段階においては,「DI」は必ずしも必要とし
パフォーマンス課題として,生徒が学んだ知識
ないが,第3段階では必ず必要であるとされて
やスキルを統合し,それらを使って作品製作や
いる。
発表につなげる活動を取り入れる。作品には,
-4-
レポート,スキット(寸劇),ポスター,作文等
生徒の持つ個人差や特性を知る
があり,それらを発表したり,人に伝えたりす
るような機会も設けると良い。
レディネス
④
学習
興味・関心
教室の雰囲気(affect)・学習環境(learning
environment)
プロフィール
教室の雰囲気や環境も非常に大切である。
生徒が,特定の
学習内容に関して, 個 々 の 生 徒 の 学 び
知識・理解・ス
生徒がどのような
方に影響する様々
「DI」を取り入れた授業では生徒が 1 人で静か
キルに成熟して
ことに興味・関心が
な要因
に学ぶこともできるし,他の生徒と協力して学
いるかどうか。
あるのか。
ぶこともできる。生徒が「自分は学級の一員で
ある。」と感じると,教室内での雰囲気が良くな
り,学習が進みやすくなる。それとともに学習
におけるルールの共有も重要である。お互いが
個々の違いに応じて指導の手立てを複数提供
助け合えるクラスでは仲間意識が芽生え,生徒
学習内容
学習プロセス
学習の成果物
の学習への意欲も高まる。教室内で自分自身の
(contents)
(process)
(products)
取る行動を生徒自身が考えることは,自律的な
生徒が得るべき
生徒が学習内容
学習したことを応
知識,スキル,運
を理解・習得す
用・発展させるため
用能力。
るための活動。
のプロジェクト。
教
室
の
雰
囲
気
・
学
習
環
学習者としての生徒の成長に欠かせない。
(2)
個々の違いを生かして授業を工夫する
授業設計にあたっては,「DI」を効果的に進
境
めるための7つの重要な原理・原則(seven
pivotal principles)に基づいて工夫する
れぞれの項目についてみていく。
重要な原理・原則に基づいて授業を工夫する
ク ラ ス の 強 質 の高い カリ 工夫した
課題
い結びつき キュラム
①
ティーチング
グ ル ー プ で 柔軟な授業
評価
の学び合い 経営
クラスの強い結びつき (a strong classroom
community)
アップ
継続した
19) 。そ
教室に,楽しく支持的な空間を作り上げるた
めには教師と生徒の信頼関係が必要である。ま
た生徒同士はお互いに助け合い,影響し合いな
がら学習する雰囲気を作り上げていく。
②
質の高いカリキュラム (quality curriculum)
教師と生徒の目的が共通しており,最低限の
授業における具体的な学習法
積み上げ式課題
時間で最大限の効果が得られる質の高いカリキ
学習/関心センター
ュラムが必要である。実生活に即した,生徒の
グループ学習
興味を引き付けて,学習の目標に達することを
ウェブ学習
生徒に約束できる内容とする。
など
③
※それぞれの内容については第Ⅱ章で詳しく述べる。
全 て の 生 徒 を 対 象 と し た ,工 夫 し た 課 題
(respectful tasks for all students)
全ての生徒が効果的に学べる課題を準備する。
図Ⅰ-2「DI」を取り入れた授業の組み立て
課題を早く終えた生徒が空白の時間を作らない
18)
ように,次にすべきことの指示を行う。
Tomlinson.2005.を参考に筆者が作成
-5-
「ティーチングアップ」 (“Teaching up”)
語の知識やスキルを使って活動する様子や,生
課題を早く終えた生徒には他の生徒のサポー
徒の作品や発表を評価するパフォーマンス課題
トをしてもらうようにして,クラスの生徒全員
では,生徒に身につけさせたい目標(永続的理
が現状よりもさらに高い目標に向かって学習し
解)を明らかにし,スピーチ,自由英作文,絵
ていくことをめざす。
や図を取り入れた作品等,どのようなパフォー
④
継続した評価 (ongoing assessment)
⑤
マンス課題を設定するかを検討する。
生徒がどの程度理解しているのか,学習を通
「DI」は学んだ知識やスキルを実生活に活か
してどんな知識や技術を得られたかは,教師が
すことを目標としているので,設定したパフォ
常に知り記録しておかなければならない。
ーマンス課題の材料を「知の構造」の枠組みを
グループでの学び合い (flexible grouping)
用いて分類し,
「原理と一般化」に位置づけられ
個人,ペアでの活動だけでなく,レディネス
る中核目標を絞り込んでいく。パフォーマンス
レベル,興味・関心,学習プロフィールがそれ
課題を設定したら,その達成に向けて必要な指
ぞれ違う生徒を集めたグループ活動での学びあ
導の手立てを検討していく。
いも大切である。グループは固定せず,毎日ま
(2)
⑥
たは単元ごとで変える方が良い。
「DI」では,生徒それぞれのレディネス,興
柔軟な授業経営 (flexible classroom man-
⑦
生徒の多様性に応じた指導の手立て
味・関心,学習プロフィールに忚じて,複数の
agement)
手立てを用意する。多様化できる学習法の具体
教師は「DI」を取り入れた授業が,どのよう
例を示したものが表Ⅱ-1である。学習プロフ
に生徒のためになるのかを,生徒にきちんと伝
ィールは性別,文化,背景,学習ペース,学習
えるようにする。また授業の中では,様々な場
スタイル等による違いであるが,その中から生
面で個々の生徒に忚じて柔軟に対忚する。
徒がどのような学び方が得意なのかを分類した
「学習スタイル」に焦点を当てて,学習法を整
Ⅱ
「Differentiated Instruction:DI」を
取り入れた授業の指導と評価
理した。
「学習スタイル」とは「人が情報を処理
する際や社会的相互作用を行う際,場面や課題
によって無意識に好んで使うやり方」であり
第Ⅰ章で整理した「DI」の資料をもとに,「逆
20),
その分類の仕方は多様である。本研究では特に
向き設計」に基づいてわが国の中学校英語科に
「DI」で活用しやすいものについて取り上げた。
「DI」を取り入れた授業を行う際のポイントを
(3) 生徒の多様性に対応するためのチームアプ
述べる。1では指導計画の段階,指導の具体的な
ローチ
手立て,指導者のチームアプローチについて,
「DI」の研究者である古田らは,「DI」を取
2では評価についてみていく。
り入れた授業においてはコーティーチング
(Co-Teaching)が望ましいと指摘している
1
21)。
パフォーマンス課題を位置づけた授
業設計にあたっての視点
コーティーチングとは「2人以上の専門家が同
(1)「逆向き設計」に「DI」を取り入れた授業
指導をともに行うことである」22)。一教室内に
一のスペースで,多様なグループの生徒に対し
設計
おけるモデルを,表Ⅱ-2(p.8)に示す
「DI」を効果的に進めるために,
「逆向き設計」
23)。
生徒の多様性に忚じる効果的な「DI」の授業を
に位置づけて指導計画を立て,単元の最終にパ
行うためには,コーティーチングを取り入れた
フォーマンス課題を設定する。生徒が実際に英
指導・支援体制が有効であると考えられる。
-6-
表Ⅱ-1
レディネス、興味・関心、学習プロフィールに応じて多様化できる学習法の例
学習法
内容
空いた時間に 1 人で取り組める課題。毎日 短い日記,読書,クロスワードパズル,テスト対策プ
尐しずつできるものが向いている。チェッ リント等。毎日のルーティン(決まった手順の)活動。
クプリントを作ると良い(図Ⅱ-1)。
アンカー活動
レ
デ
ィ
ス
記述テストによって得られたレディネスレ
ベルにより,プリントや課題を3種類準備
する。完成したら難易度の高い課題やプリ
ントに挑戦できるようにしておく。
3段階の
積み上げ式課題
ネ
具体例
選択できる課題・宿題
文法のドリルや本文の内容理解プリント等を ,注釈や
日本語訳の量 を変えたり して難易 度の違うも のを作
成する。積み上げ式の場合は,順に難易度の高いもの
に挑戦していけるような活動にする。
レディネスに忚じて難易度の違う課題や宿 ドリルや宿題プリント,単語練習プリント等を複数提
題から選択できるようにする。
供する。積み上げ式とも関連する。
教室内を複数のスペースに区切り,生徒に 過去分詞を覚 える→ペア やグルー プで過去形 と過去
合わせて個別の課題を提示 したり, 一つが 分詞形のカー ドを使った アクティ ビティをす る→ ド
学習/関心センター
終わったら次へ移動 して次の課題に取り組 リルをする(終われば次へ移動して活動する )。
むようにする。
興
興味のある課題に分かれて活動する。
レディネスや興味・関心が違う混成グルー グループで一つの物語を読む。
柔軟なグループ活動 プにする。グループは固定せず日ごとや数 グループで英字新聞を作る。
週間ごとに柔軟に変える。
味
・
選択できる課題,
宿題
関
心
RAFT 作文課題
学
習
プ
ロ
フ
ィ
|
ル
ICT 機器を使って,ウェブ上で調べたり, 教室に ICT 機器を持ち込み,与えられた課題について
探検したりする。
調べる。
知覚上の違い
① 視覚型
文字や図などの視覚的な情報を好む。
視覚的情報を活用すると効果的である。
DVD やタブレット PC,フラッシュカードメモ,友達に
クイズを出す等。
②
聴覚型
口頭など耳からの情報を好む。
BGM を聞きながらの学習を好む。
リスニングや CD を聞く活動,ペアやグループ活動,
ディスカッション等。
③
体験型
座学のみよりも,直接体験や物に触れて学 情報を理解す るためのア クティビ ティ,ロー ルプレ
習することを好む。
イ,スキット等。
②
ス
タ
イ
ル
左脳型
思考による違い
① 帰納型
|
役 割 (Role) , 観 客 ( Audience ), 構 成 下の例を参照(図Ⅱ-1)。
(Format),主題(Topic)の情報から興味の
あるものを選び文章を書く。
ウェブ学習
気質による違い
① 右脳型
|
課題や宿題を,興味・関心に忚じて 選択で 好きな有名人について英語でまとめる。好きな洋楽曲
きるものにする。
を選んで日本語にする。
②
演繹型
理性的,言語能力が高い,数字に強い。
大まかなアウトラインを知る。
学習計画に沿って取り組む。
創造的,芸術的才能,感性が豊か。
情報を絵やグラフで表す。
思考の時間を与える。
具体的な例を通して,法則や原理を理解す 具体的な例文や演習で意味を知り,その後で文法を理
る。
解する。
全体像を理解し,法則や原理から具体的な 先に文法の法則を学び,具体的な英文に当てはめて理
例を理解する。
解し,演習をする。
Sheryn,Spancer,Northey. 2005.,Tomlinson.2011.を参考に筆者が作成 24)
今週のアンカー活動表
Class
次から興味のあるテーマを選んで英語で作文を書こう
No. Name
役割
月
火
水
木
金
作文
作文
読書
作文
作文
Teacher’s comments:
25)
構成
主題
① プランクトン
大きな魚
絵と説明
私がいなければ
大変よ
②庭師
裏庭に 置い
てある物
会話型の
文章
どんなにお互いが
助けあっているか
③ ライオン
ジャングルの
感謝状
私にとってあなた
動物たち
自己チェック欄
図Ⅱ-1 アンカー活動表と RAFT 作文課題の例
観客
方はとても大切よ
※生徒は,
「役割」の立場になり,
「観客」に向けて,
「構成」
Tomlinson.,Imbeau.2011.pp.90-92 より抜粋
-7-
の形式で「主題」について伝える作文を書く。
表Ⅱ-2
Co-Teaching のモデル
モデル
1人が教授,1人が観察
(One Teach, One Observe)
1 人が教授,1 人が巡回
(One Teach, One Drift)
「駅」での教授
(Station Teaching)
内
容
・1 人の教員が全体への教授を担当,1 人は 1 人または小集団ま
たは全体を担当。
・1 人の教員が全体への教授を担当,もう 1 人は巡回しながら,
支援を要する生徒や質問のある生徒に対忚。
・クラスを授業内容により2つに分け,それぞれの教員が一方を
担当。
・生徒は決められたスケジュールで,一方から他方へと移動。
同時並行教授
(Parallel Teaching)
型にはまらないオルタナティブな
教授(Alternative Teaching)
ティームティーチング
・2人の教員が共同して教授するが,それぞれ質の異なる集団に
対忚。
・多数の生徒とは異なる教授法が適切である生徒がいる場合に,
1 人の教員がその生徒(たち)に教授。
・多様な場面で,2人の教員が授業を共に担当。
(Team Teaching)
古田.野口.米田.2010 より引用
2
「DI」を取り入れた授業の評価の
内容・方法
法を変更したりグループを変えるような柔軟な
対忚もできるようにしておきたい。事前のテス
トや調査はあくまでも複数の課題や教材から自
(1)
パフォーマンス課題とルーブリック
分に合ったものを選ぶための補助的なものであ
パフォーマンス課題を評価する際には,ルー
って,これにより課題を指導者が選んで与える
ブリック(rubric)を採点指針として用いる。
ものではない。診断的評価の場面で活用できる
ルーブリックとは,学習者の「パフォーマン
内容をまとめたものが表Ⅱ-3(p.9)である。
スの成功の度合いを示す尺度と,それぞれの尺
【形成的評価】
度に見られるパフォーマンスの特徴を説明する
次に,形成的評価の例を挙げる。「DI」の理
記述語で構成される,評価基準の記述形式」で
論の中で「継続した評価」は重要で,評価は生
26)。ルーブリックの具体例については,表
徒がどの分野で伸びるためのサポートを必要と
ある
Ⅲ-1(p.13)を参照されたい。
しているか,指導者に方向性を示してくれると
(2)
トムリンソンは指摘している
生徒の多様性を的確にとらえ指導に生か
27)。
す評価の場面
形成的評価の方法として中学校英語科では,
【診断的評価】
単語テスト,小グループチェック,相互評価,
「DI」を取り入れるにあたり,診断的評価と
自己評価,ポートフォリオ,作文,日記等を組
して教師は生徒のレディネス,興味・関心・学
み合わせて活用する他,机間指導で生徒の理解
習プロフィールを把握する。それらを生かして
度や考え方を把握し,それに基づいて指導の軌
指導するのは当然であるが,途中で課題や学習
道修正を図る。最終到達目標を常に意識しなが
-8-
表Ⅱ-3
Ⅲ 中 学 校 英 語 科 に お け る
「Differentiated Instruction:DI」を取り
入れた授業の実際
生徒の多様性を把握するための
診断的評価の例
28)
把握するための方法
具体的な例
レ
語い力や表現力などを問
記述テスト(リーデ
デ
うテスト等ではかり,個に
ィング・ライティン
ィ
忚じて違ったサポートが
グ・リスニング),会
ネ
できるプリントや課題を
話テスト等。
ス
準備する。
本章では,
「 Differentiated Instruction:DI( 生
徒の多様性に忚じた指導)」を取り入れ,目標へ
の生徒の到達度や,生徒の学習意欲,学習の理
解度の向上等をめざした中学校英語科の授業に
ついて検証する。
生徒がどんなことに興味
興味のあるものに関
興
があるのかをあらかじめ
してのアンケート,重
味
アンケートなどで確認し, 要度グラフ,好きなも
・
指導者は生徒らの好みを
の・嫌いなものクイズ
関
知り,関心の高いテーマや
で教室の数箇所に分
心
分野を扱った課題や教材
かれるゲーム性のあ
を準備するようにする。
る活動等。
学
生徒がどんな学習スタイ
学習に関してのアン
習
ルで学ぶと一番効果的で
ケート,フローチャー
プ
あるかを知り,学習に役立
ト等。
ロ
てる。
1
授業の計画
研究対象生徒は,大阪市立東淀中学校の第3
学年の生徒 33 名である。実践は,研究協力委
員の小野原真理教諭の協力を得て,2012 年 12
月から 2013 年1月に実施した。単元名は,ニ
ュークラウン3
Lesson6「I have a Dream」
(後置修飾)である。
(1)
単元の指導目標
本単元では,アメリカの公民権運動を題材と
して,生徒がまとまった文章で表現する力の向
フ
タイプや傾向は固定せ
ィ
ず,多様なスタイルで学べ
|
るようにする。
上を図る。指導目標は次のとおりである。
◎
ル
後置修飾を理解し,活用することがで
きる。
(言語や文化についての知識・理解)
Tomlinson.2005 を参考に筆者が作成
◎
公民権運動に関する人物について,ま
とまった文章で紹介できる。
ら,活動のフィードバックを忘れないことが大
(外国語表現の能力,コミュニケーション
切である。
への関心・意欲・態度)
【総括的評価】
総括的評価として,習得した知識やスキルの
(2)
活用を図る場面では,パフォーマンス課題を用
学習の流れ
本実践では,
「逆向き設計」論に基づいて,基
いる。
「努力を要すると判断」される生徒に対し
本的な知識やスキルを理解する段階(インプッ
ては,目標を達成できるよう引き続き指導・支
ト学習),学んだスキルを習熟させる段階(イン
援をする。
テイク学習),学んだことを忚用する段階(アウ
以上,3つの場面ごとに「DI」の具体的な評
トプット学習)という指導の流れとした。
価の方法についてみてきた。図Ⅱ-4(p.10)
は,前述した内容をもとに,一般的な授業設計
本単元では,「後置修飾」の学習をした後に,
パフォーマンス課題「公民権運動に関わる人物
の中のどの場面で,「DI」を位置づけることが
を紹介する」(「書く」学習から「話す」学習)
できるかを,まとめたものである。
を設定し,最終段階においてグループでプレゼ
-9-
生徒の多様性に応じて
目標の確認
「DI」できる場面
①診断的評価
評価規準の作成
記述テストやアンケートなど
で,個々の多様性を把握する。
診断的評価
①レディネス
授業で工夫できる
「DI」の指導法の例
②興味・関心
③学習プロフィール
指導計画の作成
教材の開発・工夫
②指導計画作成
◎三段階の積み上げ式誯題
◎グループでの学び合い
生徒の多様性に応じて「DI」
◎学習/関心センター
する内容・方法を,複数準備す
◎選択できる誯題,宿題
る。
パフォーマンス誯題を設定
◎選択できる
する。
パフォーマンス誯題
◎アンカー活動
③授業実践
◎RAFT 作文誯題
◎ウェブ学習
授業実践
形成的評価
指導者が提供した複数の教材
◎学習スタイルの違いによる
や,
指導法の中から生徒が選択
様々な学習法
して学習し,
教師はサポート役
・ ICT 機器を使った指導
になって,
生徒の主体的な活動
・ アクティビティ
を促す。
・ 先に大まかなアウトライン
を伝える
総括的評価
・ 絵やグラフを使った教材
④総括的評価
等
評価は継続して行い,常
授業評価
に記録しておく。記述テ
スト,実技テストとパフォー
マンス評価等を組み合わせて
評価する。
授業改善
へ
図Ⅱ-4
「DI」を取り入れた授業設計の手順
- 10 -
ンテーションできるよう,図Ⅲ-1の右欄のよ
到達目標から遡って授業計画を立てる。単元終
うな学習の流れとする。
了後に生徒の身につけさせたいスキルとして,
生徒のレディネス,興味・関心,学習スタイ
「文章構造をふまえて,まとまりのある文章を
ルに忚じる指導法としては,それぞれ,次のよ
書く」「人の心に訴える発表ができる」「聞く態
うに工夫することとする。
度が身についている」の3つを設定する(図Ⅲ
◎
新出文法の導入場面では,「視聴覚型」「体
-1の左欄)。「逆向き設計」論において,生徒
験型」の学習スタイルに忚じるようにする。
がこの「永続的理解」の段階に達した時には,
レディネスに忚じて,3種類のリーディン
その学習において身につけた知識やスキルを組
グ補助プリントから選択できるようにする。
み合わせて実際に英語が使える状態にあると考
◎
◎
パフォーマンス課題に取り組むにあたって
える。
は,紹介する人物や,表現方法を興味・関心
に忚じて選択できるようにする。
◎
現を選択して文を組み立てる」
「 読み手に分かり
レディネス,興味・関心,学習スタイルの
異なる生徒を集めたグループで活動する。
「永続的理解」の段階から遡って,
「適切な表
やすいよう工夫する」ことができるようになる
ためにテーマごとに段落を分割し,それらの段
落を組み合わせて文書を書いていく「パラグラ
(3)
具体的な指導の手立て
「逆向き設計」の中に「DI」を取り入れ,
フライティング」の活動を行う。また,「文の
背景にある公民権運動など当時の時代背景を知
学習の流れ (全12時間)
事実的知識・個別的スキル
・新出語句や表現を覚える
・正しい語句や語順を用いて
文をつなげる
・後置修飾の習得
転移可能な概念・複雑なプロセス
・適切な表現を選択して文を組み立てる
・読み手にわかりやすいよう工夫する
・文の背景にある公民権運動など
当時の時代背景を知る
基本的な知識やスキルを理解する段階
(インプット学習)
◎ 文法の導入(「視聴覚型」,「体験型」に分ける)
◎
音読
◎
3種類のリーディング補助プリント
◎
リスニング活動
○ ペアワーク(言い換えや会話)
学んだ知識やスキルを習熟させる段階
8
時
間
〇
後置修飾を使った短い文を書く活動
(インテイク学習)
◎ 音読
◎ドリル
◎ ライティング指導
など
原理と一般化(永続的理解)
学んだことを応用する段階(アウトプット学習)
・文章構造をふまえてまとまり
のある文章を書く
・人の心に訴える発表ができる
・聞く態度が身についている
◎ 成果物作成
◎ 発表(グループでのプレゼンテーション)
◎ フィードバック
※
は「DI」を取り入れた場面
図Ⅲ-1「知の構造」における目標と授業での「DI」の場面
- 11 -
4
時
間
る」ためにピクチャーカード等を使って当時の
③
パフォーマンス課題において,興味・関心
様子を説明する。それらの活動につなげるため,
に応じて紹介する人物や表現方法を選択する
この単元の新出文法事項である後置修飾や本文
本単元のパフォーマンス活動として,「書く」
を読解するための新出語句,表現を指導する。
活動を取り入れる。内容は,公民権運動に関わ
①
る 人 物 ( a. キ ン グ 牧 師 b. ロ ー ザ ・ パ ー ク ス
学習スタイルに基づいて,学習方法を多様
化する
c.リンカーン大統領
d.オバマ大統領 e.マハト
新しい文法事項を導入する際に,事前調査(資
マ・ガンジー f.その他,自分で選んだ人物)か
料1)の結果をもとに,
「視聴覚型」と「体験型」
ら選び,クラスに紹介するというものである。
の2つのグループに分けて指導する。調査結果
「DI」では学習意欲や理解度が多様である生
をもとに,どちらの型がより自己のタイプに近
徒が,学び合いのなかで協力して作品を仕上げ
いかを考えて生徒自身で選択する。
ていくことを重視している。そのため指導者が,
生徒の普段の小テストや定期テスト等によって
視聴覚型
・
レディネスを,事前調査によって興味・関心及
タブレット PC や,ノートパソコン等の
び学習スタイルを把握し,様々なタイプを混合
視聴覚機器を使って後置修飾を導入する。
したメンバーでグループを編成する。生徒は選
繰り返して視聴しやすいように2 ~3人
択した人物について生い立ちやエピソード,生
に一台で機器を使用する。
き方などをまとめ,学習した後置修飾の表現を
体験型
・
取り入れて,まとまった英文を書く。課題はこ
会話・ゲーム型のアクティビティを行っ
ちらから英語紙芝居,英語絵本,英字新聞の3
て後置修飾を導入する。プリントを使って
種類のモデル作品を提示し,生徒は好きな表現
ペアで会話をする。
方法を選択して取り組む。オリジナル作品にし
たい場合は自由課題でも良く,その内容は指導
②
レディネスに応じて選択可能な低・中・高
者と相談して決める。
の3つの段階の選択肢を用意する
A:自由課題(ニュース風,劇風など)
リーディングの補助プリントは,新出語句や
基本表現を示す注釈の数や書き込む部分の数な
B:英語紙芝居を作成(1人 1~2枚程度)
ど,サポートを変えた3種類を準備し,選択で
C:英語絵本を作成(1 人 1~2枚程度)
きるようにする。生徒は習熟の程度に合わせて
D:英字新聞(1 人1記事以上,グループで
1 枚程度)
選択するが,途中で難易度の高い内容に挑戦で
きると判断した場合は,いつでもステップアッ
プできるようにする。サポートを変えることで,
生徒全員が自力で文章を読めることをめざす。
A: 注釈を最小限にし,空欄を増やし自力で
日本語訳を完成させる。
B: 注釈を減らし,本文の半分程度,日本語
訳をする。
C: 分かりやすく示した注釈を参考にしなが
ら空欄をうめて日本語訳を完成させる。
活動は,まずまとまった英文を書く時の参考
となる「パラグラフライティング」の指導を行
い,その後,作品製作に取り組む。指導者は生
徒の活動のサポートを中心としながら授業を進
めていく。
④
グループで発表する
各グループで成果物を作成後,それを発表す
る場を設定する。クラス全体で見やすくするた
め,作品をタブレット PC で撮影して,それを
- 12 -
表Ⅲ-1
項目
本単元におけるパフォーマンス課題のルーブリック
内容・構成
(外国語表現の能力)
パフォーマンス
(言語や文化につい (コミュニケーションへの
関心・意欲・態度)
ての知識・理解)
基準
A
B
C
内容
分量
詳 し く 調 べ て き 50 語
た こ と を 取 り 入 以上
れ,正確でかつオ
リジナリティの
ある製作物であ
る。
(外国語表現の能
文章構成・表現
力)
聞く態度
発表態度
友 達 の 発 表 を し っ 積極的に活動に参加する意 友達の発表をしっ
か り 聞 い て 質 問 な 欲がみられ,仲間と進んで かり聞いて質問な
ど を す る こ と が で 協力している。教室の後ろ どをすることがで
きる。
まで届く大きな声で発音・ きる。
イントネーションに気をつけてわか
りやすく発表できる。
ス ト ー リ ー を 忠 30 語
実 に 伝 え よ う と 以上
する内容である。
友 達 の 発 表 を 静 か 仲間と協力して活動できて 友達の発表を静か
に 聞 い て 大 ま か に いる。大きな声で発音に気 に聞いて大まかに
理 解 す る こ と が 出 をつけて発表できる。
理解することが出
来る。
来る。
内 容 が 乏 し く あ 20 語
ま り 工 夫 が 見 ら 以上
れない。
発表を静かに聞き,積極的に活動しようとして 発 表 を 静 か に 聞
内 容 を 理 解 で き な いない。大きな声で発音に き,内容を理解で
い。
気をつけて発表できない。 きない。
A:十分満足できる
B:ほぼ満足できる
C:努力を要する
プロジェクターで映し出しながら,グループご
取り入れた。インプット学習の際の「文法の導
とにプレゼンテーションする。また,発表は代
入」と「リーディング」,アウトプット学習の際
表者のみではなく,自分の作品を自分で発表す
の「成果物作成と発表」の場面である。
るようにする。その後に他のグループと作品を
(1)
文法導入:タブレット PC とノートパソコ
交換して鑑賞し,相互に感想やアドバイスなど,
ンを使った導入と,アクティビティを取り入
フィードバックする。
れた導入
(4)
事前調査(資料1)により,生徒は自己の学
評価ルーブリック
パフォーマンス課題の評価については,ルー
習スタイルを診断し,「視聴覚型」と「体験型」
ブリックで明らかにし,活動前に生徒と共有す
に分かれて後置修飾を学習した。授業者が簡単
る(表Ⅲ-1)。
に後置修飾の説明を行った後,視聴覚型は 2~3
まとまった文章の「内容・構成」と,生徒の
人で一台のタブレット PC,またはノートパソ
発表時の「パフォーマンス」にわけて,4観点
コンを使用し,後置修飾の表現を実際に使用し
に忚じて評価する。
ている場面のビデオを視聴した。
タブレット PC やノートパソコンでは,何度
2
授業の実際
でも繰り返して視聴できることを活用し,生徒
授業者とともに作成した「『知の構造』におけ
る目標と授業での『DI』の場面」(図Ⅲ-1,
自身が操作しながら自分たちのペースで何度も
再生して見ていた(写真1)。
p.11)にしたがって,3つの場面で「DI」を
- 13 -
「動詞の~ing 形の後置修飾」
写真 1
タブレット PC を視聴する「視聴覚型」を
選んだ生徒
「過去分詞の後置修飾」
「視聴覚型」の生徒が視聴したのは,
「動詞の
~ing 形の後置修飾」
「過去分詞の後置修飾」
「名
詞を説明する文の後置修飾」の表現を使ったビ
デオで,それぞれは,1~2分ずつの短いもの
である。ビデオは筆者がタブレット PC を使っ
て授業者を撮影して作成した。
「名詞を説明する文の後置修飾」
ビデオの具体的な内容は,まず「動詞の~ing
形の後置修飾」では,本を読んでいる一人の女
図Ⅲ-2
ビデオスクリプト「視聴覚型」
の子がいるという設定で, “There is a girl.”と
“She is reading a book.”という文を示し,それ
体験型は,後置修飾を使ったアクティビティ
らを合わせて “There is a girl reading a book.”
を行った。
「過去分詞の後置修飾」を使ったアク
という文をフラッシュカードで提示した。
ティビティでは,
「△△△製の○○○」という表
「過去分詞の後置修飾」では,女性が手にし
現を取り入れながら,ペアで会話をした。最初
たカバンを映しながら “There is a bag.” “It is
に簡単な説明と重要文のリピートをして,すぐ
made in Italy.”という2文を示し, “There is a
に活動に入った。繰り返し会話をすることで自
bag made in Italy.”というカードを提示した。
然に表現に慣れることをめざした。アクティビ
この2文は教科書本文中の同じページに出てく
ティを通しての導入は普段の授業でも取り入れ
るため,一度に2本のビデオを続けて視聴した
られているが,自分が「体験型」であると意識
が,一本ずつ撮影しているためもう一度見たい
しての活動は初めてであった(写真2)。
と思った方のみ視聴できるようにした。
「名詞を説明する文の後置修飾」を使ったア
「名詞を説明する文の後置修飾」は,授業者
クティビティはまず, “The country I want to
が一人の男の子に世界地図を示しながら,
「 どの
visit is Canada.”という文を簡単に説明し,そ
国に行ってみたい?」と尋ね,男の子が「僕は,
の後ペアになって, “What is the thing we use
韓 国 に 行 っ て み た い 。」 と 答 え た 後 に , “The
on a rainy day?”や, “Where is the place we go
country he wants to visit is Korea.”というフ
when we are sick?”等,それぞれ5問のクイズ
ラッシュカードを提示した。(図Ⅲ-2)
に英語で答えるものであった(図Ⅲ-3)。
- 14 -
(2)
選択できるリーディング補助プリント
今回の「DI」では,補助プリントを3種類用
意し,生徒が自分で選択できるようにした。授
業者は生徒一人一人丁寧にアドバイスし,生徒
は自分の習熟の程度に合わせた適切なプリント
を選択し,学習することができた。
プリントの作成にあたっては,現場の教員の
負担を減らすための作成方法を工夫した。
写真2
①プリント C:分かりやすく示した注釈を参考
会話をする「体験型」の生徒
にしながら空欄をうめて日本語訳を完成させ
る(図Ⅲ-4)
What is this?
Class
No.
まず,英文読解の助けになるような重要表現
Name
や難しい単語などの注釈を詳しく示し,それぞ
The country I want to visit is Canada.
れの文に番号を振り,日本語の意味を書き込み
(私が訪れたい 国はカナダです。)
やすくした「プリント C」を作成する。
◎ペアになって相手に聞いてみよう。
①
(
②
Where is the place we go when
)
次に注釈の数を減らして,日本語の書き込み
実際は 10 問
を増やした「プリント B」を作る。パソコンに
What is the thing we use for cutting?
(
④
日本語訳をする
)
we are sick?(
③
②プリント B:注釈を減らし,本文の半分程度,
What is the thing we use on a rainy day?
Where is the place we go to study?(
保存した「プリント C」を使って消していくと,
)
一から作り直す必要がない。
)
③プリント A:注釈を最小限にし,空欄を増や
し自力で日本語訳を完成させる(図Ⅲ-5)
何問正解したかな?
☆My Points (
)
☆Partner’s Points (
最後に,注釈が尐なく,日本語訳の量が多い
下の方に答え
)
「プリント A」を作るという順番にすれば,そ
がある
うまく会話できましたか?
れほど時間をかけずに,3種類を作成すること
A.①umbrella
図Ⅲ-3
ができる。
“I Have a Dream”
ペアワークの会話ワークシートの一部
Class
No.
Name
③Midway through the trip, the driver said,
同じ教室内で「視聴覚型」と「体験型」と2
グループに分かれての活動であったので,騒が
しくなるのではと心配されたが,それぞれのグ
ループは自分たちの活動に集中しており,特に
~の途中で
移動
“Give up your seat to this white man.”
~に・・・を譲る
この白人男性
④When she refused, the driver called the police.
~の時
断った
警察を呼んだ
⑤“Arrest the woman sitting there.
逮捕する
そこに座っている 女性
She is breaking the law.”
法律を破っている
問題は見られなかった。
別々に導入した後は,再び自席について,本
時の後置修飾の表現を確認するため,ドリル型
の問題に取り組んだ。
- 15 -
③(
(
④彼女が(
⑤「(
)の途中で,運転手は「この白人男性に,
)。」と言った。
)時,運転手は警察を(
)。
)を(
)。彼女は法律を(
)。」
図Ⅲ-4
選択できるプリント C(一部抜粋)
で使い,また,既習の「関係代名詞」について
“I Have a Dream”
Class
No.
Name
も積極的に取り入れていた。当時の様子を伝え
る資料や辞書を使い,グループで協力して紙芝
③Midway through the trip, the driver said,
~の途中で
居や英字新聞を作成した(写真3)。
“Give up your seat to this white man.”
④When she refused, the driver called the police.
⑤ “Arrest the woman sitting there.
そこに座っている女性
She is breaking the law.”
③(
)の途中で,
(
)は「
④ 彼 女 が (
),(
(
)。
⑤「(
)。彼女は(
図Ⅲ-5
(3)
。」と言った。
) は
)。」
選択できるプリント A(一部抜粋)
パフォーマンス課題
写真3
(4)
本単元のパフォーマンス課題について,授業
作品を製作している様子
作品の発表(グループでのプレゼンテーシ
ョン)
者はまず,英語でまとまった文を書く力の育成
でき上がった作品(図Ⅲ-7)は,クラス全
のため,主になる文(topic sentence)をサポート
員に紹介できるよう,タブレット PC に取り込
するいくつかの文(support sentence)を組み合
み,プロジェクターに映し出しながら英文を読
わせていく「パラグラフライティング」に取り
むという形でのプレゼンテーションを行った。
組ませた。その後,授業者は,モデルとなる英
その後,フィードバックを行い,お互いの作
語絵本,英語紙芝居,英字新聞を生徒に提示し
品について感想を述べ合い,意見交換をした。
(図Ⅲ-6),生徒は目標となる作品をイメージ
しながら4~6人のグループで,公民権運動に
関わる人物の中から 誰について何を製作し,ど
んな形で発表するかを話し合った。生徒は,本
単元で学習した「後置修飾」の表現を文章の中
図Ⅲ-6
図Ⅲ-7
生徒に提示したモデル作品の一部
- 16 -
生徒作品の例
(5)
振り返りチェックシート
と同じような悩みを抱えていた。
毎時間の終わりには,
「 振り返りチェックシー
事前調査では,
「英語の授業が楽しい」と回答
ト」を配布し,本時の授業を振り返った。指導
する生徒が多く見られたが,同時に「授業内容
者は,回収したシートにコメントを記入して,
が簡単だ」「授業の進むスピードがはやすぎる」
また次の授業で返す,というフィードバックを
と感じている生徒も一部おり,クラスでの指導
取り入れた(図Ⅲ-8)。
の課題が浮かび上がった。
(1)
生徒の学習に対する意識の向上
「英語の授業に積極的に参加しているか」と
★★振り返りチェックシート★★
いう設問に対して,事前に肯定的な回答をした
Grade3.Class No. Name
生徒は 13 名(「とてもそう思う」「まあそう思
☆英語の授業の終わりに毎回チェックして提出しよう!
・今日の授業は理解できましたか。
う」)であったが,事後には 27 名に増加した。
/
・授業での活動はしっかりできましたか。
また,
「英語の授業がわかるか」という設問に対
()
・反省点はどんなところですか。
(
)
・頑張っていた友達( 上手に英会話したり文章
を作っていた )は誮でしたか。
(
)
1
・ひとことつぶやき欄
(
Teacher’s Comment
(
しても,事前に肯定的な回答をした生徒は 19
名であったのが,事後には 28 名となり,英語
の学習に対する意識が向上したことが認められ
た(図Ⅲ-9)。
)
)
シール
英語の授業に積極的に参加している
事前
4
9
13
8
図Ⅲ-8 「振り返りチェックシート」の一部
12
事後
3
15
5
2
実践の結果と考察
本実践では,英語科において「DI」を取り入
0%
20%
40%
60%
80%
100%
(n=33)
れ,生徒のレディネス,興味・関心,学習プロ
英語の授業がわかる
フィールの違いに忚じて学習法を複数提示し,
その中から自分に忚じた方法を生徒自身が選び,
事前
学習することで,彼らの学習意欲や学習の理解
5
14
11
4
度を向上させることをねらいとしてきた。事前
と事後に実施した生徒の意識調査の結果をもと
事後
10
18
4
2
に,実践の成果と課題について検討する。
0%
実践前には,授業者は,生徒がまとまった英
文を書くことについて課題があると感じていた。
20%
40%
とてもそう思う
あまりそう思わない
また,英語に対する学習意欲や理解度に差があ
図Ⅲ-9
り,授業が簡単すぎると感じている生徒や,反
60%
80%
まあそう思う
まったくそう思わない
100%
(n=33)
英語の授業に対する意識の変容
対に難しすぎると感じている生徒が存在し,
「学
習指導基本調査(Bennesse,2010 年)」に示さ
授業者が単元の学習に入る前に,生徒に「DI」
れた「生徒の学習意欲が低い(73.2%)」
「生徒間
の目的と学習方法,学習規律について共通理解
の学力差が大きくて授業がしにくい(71.0%)」
を図ったことも,生徒がより意欲的に学習に取
- 17 -
り組んだ原因の一つではないかと授業者は述べ
た生徒もしだいに,授業で難しかったところや
ている。
感想などを書き込むようになった。
(2)
「DI」を取り入れた活動の効果
このような様子から,本実践の「DI」を取り
「DI」のどのような取り組みが,生徒の学習
入れた授業は,生徒主体の学習という目的に沿
に対する意識の向上に有効であったのか,事後
って活動することができ,生徒の授業に対する
調査における生徒の自由記述の内容と授業の様
意識を高めるのに効果的であったと考えられる。
子を振り返って検討する。(表Ⅲ-2)
表Ⅲ-2
「視聴覚型」と「体験型」に分かれての導入
事後調査における生徒の感想の例
①学習スタイルに応じて分けることについて
という初めての活動に,生徒は非常に興味を示
・タブレット PC を使った授業に驚いたけど,
していた。授業後には,何人もが「良かった。」
面白かった。ビデオの説明がわかりやすかっ
と告げに来るほどであった。
「視聴覚型」は静か
た。
に落ち着いて何度も視聴でき,
「体験型」は新し
・パソコンの音が小さめなので2人で使えてよ
い表現を使って繰り返し会話できたことが,文
かった。もっと数があっても良かった。
・「体験型」のアクティビティで,文法を使っ
法習得につながったのではないかと思われる。
てたくさん会話できた。
3種類のプリントについて生徒は,「私は A
・分かれて文法を習った後の問題が結構解けて
にします。」
「 B にしようかな。どう思いますか。」
嬉しかった。
等,授業者と相談しながら選んだ。振り返りシ
ートのコメント欄には「いつもよりたくさん書
②
プリントを3種類準備することについて
けて良かった。」「プリントが分かりやすかっ
・プリントがわかりやすかった。
た。」
「よく理解できた。」と肯定的な意見が多か
・プリントが選べてよかった。
った。授業者は,注釈を習熟の程度によって変
・難しいプリントだったが,1 人で全部書くこ
とができて嬉しかった。
えた点が特に効果的であったと語った。単元終
了後に実施した定期テストにおける,レッスン
③グループで人物や表現方法を選択して作品
6に関する長文問題の正答率も高かった。
を製作し,発表することについて
グループ活動は助け合えるという安心感があ
・グループで紙芝居を作るのが楽しかった。
り,仲間と協力して活動できた生徒が多く,資
・英語が苦手だけど,メンバーに教えてもらい
料や辞書を繰り返し使って熱心に取り組む姿が
ながら書けたので良かった。
見られた。公民権運動について詳しく知った後
・発表は恥ずかしかったけど楽しかった。
での作品製作であったので,興味をもって取り
組むことができたと考えられる。プレゼンテー
④
その他の活動について
ションでは,自分の書いたページは自分で読ん
・先生にこの単元の勉強の仕方の説明をしても
らって楽しみにしていた。授業中はしっかり
だので,完成して発表できる喜びを感じている
できたと思う。
生徒も多かった。また,友達の発表を聞くこと
・振り返りチェックシートの先生コメントが楽
で,自分のグループが選ばなかった他の人物に
しみだった。
ついても詳しく知ることができた。
「振り返りチェックシート」では,毎時間先
(3)
英語でまとまった文章を「書く」力の向上
生からのコメントを嬉しそうに読んでいる様子
事前調査では,
「 書くことに対して自信がある
が見られた。最初の時間に,「“ひとことつぶや
か」という設問に「とてもそう思う」と回答し
き欄”の書き方が分からない。」と質問をしてい
た生徒は一人もいなかった。
「まあそう思う」と
- 18 -
回答した生徒も 1 人で, 32 名が否定的な回答
ゼンテーションにおいて,パフォーマンスルー
(「あまりそう思わない」「まったくそう思わな
ブリックを生徒に提示して活動した。実践後に,
い」)であった。事後調査では「とてもそう思う」
作品やプレゼンテーションについて評価を行っ
と回答した生徒は5名に,
「まあそう思う」と回
た結果,全員が A または B の評価を得る事がで
答した生徒は 13 名になり,生徒の「書く」こ
きた(表Ⅲ-3)。その要因として,文法事項の
とに対する意識の高まりが認められた(図Ⅲ-
導入や,プリントを工夫し,生徒が自主的に学
10)。 しかし,まだ自信を持って書くことに取
習に取り組んだことにより,授業者とティーム
り組むのが難しいという否定的な回答をした生
ティーチングの指導者が二人で生徒一人一人の
徒も 15 名おり,授業者は,今後も継続して「書
ドリルをチェックすることができ,丁寧に指導
く」指導に取り組んでいきたいとしている。
する時間的な余裕が持てたこと,また,グルー
プで協力して作品の製作に取り組めたこと等が
英文を「書く」ことに対して
自信がある
1
0
挙げられる。
(5)
事前
10
22
授業者の振り返り
実践後の授業者への聞き取りによると,授業
者は最初,タブレット PC やノートパソコンを
事後
5
13
10
複数使って生徒に活動させること等,ICT 機器
5
に対する不安があった。しかし,実際に授業で
0%
20%
40%
とてもそう思う
あまりそう思わない
図Ⅲ-10
(4)
60%
80%
繰り返し使用するうちに,ICT 機器を使うこと
100%
に対しての抵抗感は,ほとんどなくなったとい
まあそう思う
まったくそう思わない
(n=33)
う。また,生徒は静かに授業を受けているもの
の,人前で英語を話す活動に対しては消極的な
「書く」ことに関する生徒の意識の変容
一面もあったため,生徒全員に発表させて,活
最終到達目標の到達度
発に質問や意見交換をする場面を与えたいと考
本実践では,作品の製作とグループでのプレ
表Ⅲ-3
項目
え,実践にのぞんだという。
最終到達目標の到達度
内容・構成
(外国語表現の
能力)
内容
分量
A
24
18
B
9
C
0
パフォーマンス
( 言 語 や 文 化 に つ い て (コミュニケーションへの
(外国語表現の能力)
の知識・理解)
関心・意欲・態度)
文章構成・
聞く態度
発表態度
23
20
22
15
10
13
11
0
0
0
0
規準
表現
A:十分満足できる
- 19 -
B:ほぼ満足できる
C:努力を要する (n=33)
その結果,挙手をして積極的に発言するよう
指導においてのみならず,指導者と生徒との距
になった生徒や,授業後に追いかけて来て質問
離が近くなることによって,学級指導や生徒指
をする生徒,
「 今日の授業はすごく楽しかったで
導にも良い影響を与えることが推測される。
す。」とわざわざ伝えに来る生徒の姿が見られた。
また,指導計画の様々な場面でそれぞれ違っ
授業者は,本実践が近年の入試問題には欠か
た学習法やプリント等を取り入れたが,生徒は
せない英作文の指導としても効果的であったと
他者と比較することなく,目標に向かって自分
感じており,今後も引き続き「DI」を取り入れ
の意志で学習を進めていくことができた。生徒
た指導に取り組んでいきたいと語った。
は自立した学習者への第一歩となって授業に意
欲的に取り組むことができ,現状よりもさらに
Ⅳ
研究のまとめと今後の課題
高い目標に向かって向上していくことをめざす
「ティーチングアップ」の効果も見られた。
本研究は,学習の個人差や特性の多様な生徒
一方,実践を進めていく中で,「DI」を取り
に対して,学級を解体せずに行える効果的な指
入れるためには指導法の精選や,授業の準備に
導として「Differentiated Instruction:DI(生
十分な時間が必要となることがわかった。今後
徒の多様性に忚じた指導)」の指導内容・方法
は,コンテンツの共有化等を通して,準備にか
を,資料に基づいて整理したものである。
かる負担を軽減していくことが課題である。本
まず,「DI」の概念整理を行い,それを取り
実践には,できるだけ多くの場面で「DI」を取
入れる意義を明らかにし,次いで「DI」を取り
り入れようと試みたが,実践の結果,あれもこ
入れた実践事例を示し,実践の結果と課題につ
れもと欲張らず,学校やクラスの実態に忚じて
いて検討した。その結果「DI」を取り入れた授
精選して取り入れるのが望ましいと考える。
業に対する生徒の満足度が高いことがわかっ
本研究では「DI」を取り入れた授業を提案し,
た。クラスで授業を受ける中で,それぞれ自分
生徒の授業に対する意識の向上が認められた。
に合った学習法を選べるといった自由度の高
「DI」についての包括的な研究はわが国におい
い学習は,生徒の学習意欲を高め,授業への積
てまだあまり進んでいないが,今後は「DI」の
極的な参加を促す結果となった。授業者は,英
多様な指導法を組み合わせながら積極的な授業
語が苦手で授業に消極的であった生徒が,やる
改善を試み,本研究で得られた知見を広く検証
気を見せて何度も質問に訪れたり,一生懸命辞
し,さらにその有効性を探っていくことが課題
書を引いたり,グループのメンバーに英文の組
である。
み立てについてアドバイスをもらったりしな
がら一人で作品を完成させていたことに喜び
おわりに
を感じていた。また,到達目標に向かって,生
徒が熱心に取り組む姿に,新しいアプローチの
意義を見出していた。
本研究では,生徒の学習意欲の向上やクラス
の生徒の学力差に悩む教員に役立つ,実践的な
さらに,事前に生徒と「DI」を取り入れた授
提案をめざした。
業の意義や目的,学習規律等について共通理解
「Differentiated Instruction:DI(生徒の多
をしたことによって,生徒は今まで以上に授業
様性に忚じた指導)」を取り入れた授業が,生徒
規律に注意を払い,授業者から注意を促すこと
一人一人に忚じたこれからの英語教育の有効な
も減った点が「DI」を取り入れた効果だという。
指導法を考える一助となれば幸いである。多く
本実践から,「DI」を取り入れた授業は教科
の方々からのご指導,ご批正をお願いする次第
- 20 -
C.A.Tomlinson.
7)
である。
Instruction
なお,本研究における授業実施にあたり,忙
to
Differentiated
Mixed-Ability
classrooms”,
ASCD,1995.
しい時間を割いてご協力くださった関係の方々
に対して心から感謝申しあげる。とりわけ,研
in
“How
C.A.Tomlinson,J.Mctighe.“Integrating +
8)
究協力員の方々には授業実践や資料の提供をい
Differentiated Instruction, Understanding by
ただいた。大阪教育大学の吉田晴世教授には,
Design”,ASCD, 2006.
研究の進捗状況に忚じて多くのご指導・ご助言
9)
Wiggins and McTighe. “Understanding by
Design”, ASCD,1998.
を賜った。心よりお礼申しあげる次第である。
10)
C.A.Tomlinson,J.McTighe.“Integrating +
【研究協力委員】(敬称略)
Differentiated Instruction, Understanding by
小野原真理(大阪市立東淀中学校)
Design”, ASCD,2006.
石田
京子(大阪市立大正東中学校)
新川
美幸(大阪市立大正東中学校)
森本
善子(大阪市立大正東中学校)
李
静
11 )
片岡裕子.『CAJLE カナダ日本語教育振興会
ニュースレター44 号』, 2012,p.4.
12 )
C.A.Tomlinson.,M.B.Imbeau.”Managing a
Differentiated Classroom-A Practical Guide-”,
香(大阪市立大正東中学校)
Scholastic,2011, pp.10-11.
13)
【注および引用文献】
文部科学省.『中学校学習指導要領』, 2008,
1)
障する』,明治図書,2008,p.14.
pp.105-111
14)
文部科学省.『中学校学習指導要領解説,外国語
Benesse 教育研究開発センター.『第5回学習
3)
C.A.Tomlinson.
評価学会紀要,明治図書,2012.
“How
to
Differentiated Instruction, Understanding by
Differentiated
edition,”ASCD, 2001.
Design”, ASCD,2006,p.36.
17 )
ンタナ州の高校における区別化(Differentiated
Scholastic,2011,pp.17-19.
18)
C.A.Tomlinson. “Invitations to Learn: What
Instruction)とコーティーチングの実際~』. 熊
Does it Mean? How Do We Do It?”. supremacy
本 大 学 教 育 学 部 紀 要 , 人 文 科 学 第 59 号 ,
Point 資料,2005.http://caroltomlinson.com/
2010,p.27.
Presentations/2011ASCD_PDI_Memphis.pdf
田中耕治.『パフォーマンス評価~思考力・判
断力・表現力を育む授業づくり~』,ぎょうせい
で参照可能
19)
2011, p.22.
6)
C.A.Tomlinson.,M.B.Imbeau. “Managing a
Differentiated Classroom-A Practical Guide-”,
古田弘子・野口晃菜・米田宏樹.『アメリカ合
衆国における通常教育のカリキュラム修正~モ
5)
C.A.TomlinsonJ.Mctighe.“Integrating +
16)
Instruction in Mixed-Ability classrooms.2nd
4)
西岡加名恵.『パフォーマンス課題における共
通性の保障と「個に忚じた指導」』, 教育目標・
指導基本調査(小学校・中学校版,第8章)』,
2010.
西岡加名恵.『「逆向き設計」で確かな学力を保
障する』,明治図書,2008,pp.14-17.
15)
編』,2008.
2)
西岡加名恵.『「逆向き設計」で確かな学力を保
C.A.Tomlinson.,M.B.Imbeau.”Managing a
Differentiated Classroom-A Practical Guide-”,
Scholastic,2011,pp.14-17.
野添絹子.『「得意なもの」チェックリストを用
いた事例研究』,2011,早稲田大学院研究科紀要
20)
別冊 18 号-2,p.216.
真嶋潤子.『学習者の個人差と第二言語習得-
学習スタイルを中心に-』,第二言語としての日
- 21 -
本語の習得研究第 8 号,2005.
Differentiated Instruction For Middle and
古田弘子・野口晃菜・米田宏樹.『アメリカ合
High Schools”, Eye On Education, 2005.,
衆国における通常教育のカリキュラム修正~モ
C.A.Tomlinson. “Invitations to Learn: What
ンタナ州の高校における区別化(Differentiated
Does it Mean? How Do We Do It?”, Power
Instruction)とコーティーチングの実際~』,熊
Point 資料,2005,http://caroltomlinson.com/
本大学教育学部紀要,人文科学第 59 号,2010.
Presentations/2011ASCD_PDI_Memphis.pdf
21)
M.Friend & L.Cook. “Interactions.Collabo-
22)
ration Skills for Professionals.4 th edition”,
Allyn&Bacon,2003.
23)
古田弘子・野口晃菜・米田宏樹.『アメリカ合
衆国における通常教育のカリキュラム修正~モ
ンタナ州の高校における区別化(Differentiated
Instruction)とコーティーチングの実際~』,熊
本大学教育学部紀要,人文科学第 59 号,2010.
より抜粋.
Sheryn,Spancer,Northey.“Handbook on
24)
Differentiated Instruction For Middle and
High Schools”, Eye On Education,2005.
C.A.Tomlinson.,M.B.Imbeau.”Managing a
Differentiated Classroom-A Practical Guide-”,
Scholastic,2011.を参考に筆者が作成
C.A.Tomlinson.,M.B.Imbeau.”Managing a
25)
Differentiated Classroom-A Practical Guide-”,
Scholastic,2011,pp.90-92.より抜粋
26)
吉田武大「アメリカにおけるバリュールー
ブリックの動向」関西国際大学教育総合研究所
研究叢書 4 号,2011.
C.A.Tomlinson.,M.B.Imbeau. “Managing a
27)
Differentiated Classroom-A Practical Guide-”.
Scholastic,2011,pp,15-16.
28)
C.A.Tomlinson. “Invitations to Learn:
What
Does it Mean? How Do We Do It?”,
Power Point 資料,2005.http://caroltomlinson.
com/Presentations/2011ASCD_PDI_Memphi
s.pdf を参考に筆者が作成
29)
北條礼子.『日本人学習者の言語学習に於け
る学習方略のモデル構築に関する研究』, 平成
9 ・ 10 年 科 学 研 究 費 研 究 成 果 報 告 書 ,1999.
Sheryn,Spancer,Northey.“Handbook on
- 22 -
を参考に筆者が作成
資料
興味・関心,学習スタイルを知るための事前調査
(北條礼子,1999.,Sheryn,Spancer,Northey, 2005.,Tomlinson,2005.を参考に筆者が作成 29))
Know myself
Class
1
No.
Name
次の中から興味のある分野に○をつけてみよう。○はいくつでもかまいせん。
スポーツ 音楽 絵画 テレビ ファッション 旅行 パソコン ゲーム ダンス
その他
好き(
おしゃべり
2
好きな教科・苦手な教科は何ですか。
)苦手(
3
この授業で学習のルールを決めるとしたら,どういったことが必要だと思いますか。
4
将来どういった関係の仕事をしてみたいですか。または夢は何ですか。
5
自分に自信があることは何ですか。
6
次の中で,自分にあてはまるものに○をつけて,グループ ABC のそれぞれの○を数えましょう。
(1)あなたはどんな方法で学習すると一番よく理解できますか。
A テレビ番組やビデオの教材を用いて学習するとよく理解できる。
B 教科書を読むより,先生の説明や CD で外国人の自然な英語を聞きながら
学習する方がよく理解できる。
C グループで対話練習や短い劇の練習をしたりするとよく理解できる。
(2)あなたは何かをするとき,どんな方法で取り組むタイプですか。
A 説明書や指示を自分で読んでから取り組む。
B 誮かに説明してもらってから取り組む。
C 事前に説明を読んだり聞いたりするよりも,まずやってみる方が良い。
(3)あなたがよくすることは何ですか。
A 話を聞きながらメモ書きをする。
B BGM を聞きながら学習をする。
C 身振り手振りで質問に答えることがある。
- 23 -
)
(4)あなたが好きな学習(学習の方法)は何ですか。
A フラッシュカードを使って学習する。
B 自分の胸に繰り返しつぶやきながら学習する。
C 内容を実際に体験しながら学習をする。
(5)何かを覚えるときは・・・。
A メモをしたり,画像を思い浮かべたりするとよく覚えられる。
B 替え歌,また声に出して何回も言うとよく覚えられる。
C 座って覚えるより動き回っているとよく覚えられる。
(6)苦手なことは何ですか。
A 周りがうるさい場所で勉強するのは苦手。
B 頭に教科書やノートのページなどを思い浮かべるのは苦手。
C 授業中じっと座っているのが苦手。
(7)どんな学習環境がいいですか。
A 1 人で静かに学習する。
B 友達と声を出して確認しながら学習する。
C 活動中心で学習する。
○が一番多かったのはどのグループ?
A
B
個
C
個
A 視覚型学習タイプ(見て学習する。)
B 聴覚型学習タイプ(聞いて学習する。)
C 体験型学習タイプ(体を動かして学習する。)
どのグループの○が
一番多かったかな?
- 24 -
個
研究報告
第 23 号
平成 25(2013)年 3 月 29 日
発行所
発行
大 阪 市 教 育 セ ン タ ー
552-0007 大阪市港区弁天 1-1-6
電話
発行者
沢
06( 6572) 0667
田
- 25 -
和
夫
Fly UP