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診療部の 業務概況 - 大阪医療センター
診療部の 業務概況 基本理念 現状と将来 −10− 診 療 業 務 総合診療部 て、関連疾患を有する他科疾患の患者に対し 病院医として診療に携わる診療医が必要であ る。総合診療部はこのようなニーズにこたえ るべくH22年4月から診療科として本格的に 稼働している。 具体的には、初診外来を中心とした一般外 来診療、3次救急を除く時間外救急患者の初 療、救急患者の一部(総合診療を要する症例) 総合診療部長 橋川 一雄 の入院後の受け持ちを行っている。また時間 1.診療スタッフ 外救急の初療は、当院研修医が指導医のもと 橋川一雄 部長(脳卒中内科科長兼務) で行うため、診療の指導や定期的な症例検討 (日本内科学会(認定医、指導医、近畿地方 を行うことにより、診療の質の維持・向上を 会評議員、脳卒中学会(専門医、評議員、代 常に図っている。 議員)、日本神経学会(代議員)、日本核医学 3.診療実績 会(専門医)) 和田晃 科長(統括診療部長兼務)(日本 肺炎(誤嚥性肺炎を含む) 9 6 内科学会(専門医、指導医、近畿地方会評議 尿路感染症(精巣上体炎を含む) 3 0 員)、日本腎臓学会(専門医、指導医、学術 胃腸炎 7 評議員)、日本透析医学会(専門医、指導医)、 蜂窩織炎 6 日本高血圧学会(指導医)、日本プライマリ 扁桃炎、頚部リンパ節炎 4 ケア連合学会(認定医、指導医) ) ウィルス感染症 1 6 中島伸 副部長(脳神経外科科長兼務) (日本脳神経外科学会(専門医、近畿地方会 学術評議員)、日本プライマリケア連合学会) 小笠原充幸 医員(日本内科学会(認定医) 、 日本プライマリケア連合学会(認定医) ) (HIV、インフルエンザを含む) 化膿性脊椎炎 1 その他の感染症 2 (ノカルディア、丹毒) 敗血症 7 膿胸 2 髄膜炎 5 松本謙太郎 招聘医師 感染性動脈瘤 1 山口壽美枝、森寛泰、杉田礼子、深井照美 急性胆嚢炎、胆管炎 3 膿瘍(肝、脾、肝嚢胞内) 4 脱水・電解質異常 2 5 横紋筋融解症 3 救急患者の初療や、複数疾患を有する患者 気胸 1 の診療には、幅広い臨床知識と、各専門医へ 胸水 3 の円滑な連携が行えるマネジメント力が必要 気管支喘息 2 である。また近年複雑多様化する医療におい 間質性肺炎 2 河野匡子 非常勤医師(日本麻酔科学会 (標榜医) ) 診療看護師(チーム医療推進室) 2.診療方針と特色 −11− 5.教育方針 慢性閉塞性肺疾患急性増悪 3 甲状腺疾患 3 救急患者や他科患者の合併症などの広い範 リンパ節炎(壊死性リンパ節炎) 3 囲の疾病・病態を経験することにより、総合 腸閉塞 2 診療医としての問題解決能力を身につけるこ 癌 1 1 とを目標とする。また各診療科を広く研修す (肺癌、リンパ腫、膵癌、多発性骨髄腫、 ることにより、より多くの疾病・症例に接す 胃癌、大腸癌、急性骨髄性白血病、口腔癌) ることで、総合診療医、病院医としての知識、 自己免疫疾患・血管炎など 診断・治療能力を深めるとともに、ベースと 5 (側頭動脈炎、成人スチル病、IgG4関連疾患) なる内科、救命救急、総合診療の資格取得 リウマチ性多発筋痛症 5 骨折・その他の整形外科疾患 1 3 てんかん 6 めまい症 1 0 職員全体を対象とした研修医症例検討会を行 頭痛 1 っている。 薬物(アルコールを含む)中毒 1 1 アナフィラキシー 2 養成のための研修を、国立病院機構他病院と 心不全 3 ともに開始しており、H26年度は3名の診療 急性大動脈解離 1 看護師が総合診療部で3か月(1年目1名) 脳梗塞・脊髄梗塞 3 または6カ月(2年目)の研修を行ない、研 辺縁系脳炎 1 修終了後の3年目の診療看護師は1年間の実 精神科疾患 7 務を行っている。 (内科学会認定医・専門医、プライマリケア 認定医など)も目指す。 また、毎週2回、職員研修部と共催で院内 さらに当院ではH24年度より、診療看護師 (アルコール性せん妄、認知症などを含む) 6.目標及び将来計画 痛風・偽痛風 1 7 失神 1 ①長期入院患者の減少の努力 その他 8 ②地域医療機関との連携強化による外来新 (血栓性血小板減少性紫斑病、血球貪食症 患数の確保と逆紹介の推進 候群、尿路結石、水腎症、肝障害、喀血、 地域医療機関の医師をまじえての症例 線維筋痛症、不明熱) 検討会の開催 計(のべ退院患者数) 3 3 2 ③他科との連携による診療体制の充実 病院総合医の育成 手術のため転科症例 2例 死亡症例 1 6例 ④初期臨床研修の充実 研修医のローテーション必修化 外来症例検討会の充実 4.臨床研究のテーマ 外部の講師を迎えた症例検討会の実施 卒前卒後の医学教育について、他施設(大 学、教育病院)の教育担当者とともに実践的 ⑤人材育成、特に専修医の教育やスタッフ 人員確保 な教材の開発を行っているほか、診療看護師 専修医・スタッフの認定医、専門医取得 の養成のための研修プログラムの開発にも取 研修会や学会への積極参加 り組んでいる。 診療看護師の研修をとおしての新たな 中島伸(分担研究者):平成23年度∼25年 度科研基盤研究(B)「シリアスゲームを取 り入れた卒前医療安全教育の教材開発」 −12− 職種の育成 診 療 業 務 腎臓内科 点が移行しつつある。当院は地域連携を通じ て積極的に腎機能低下の抑制とCKD合併症の 予防・治療に尽力したいと考えている。 一般的なCKDのみならず、高齢初発のネフ ローゼ症候群や癌治療に伴う腎合併症など、 当院および当科が積極的に貢献する必要があ る領域は幅広い。当院はHIV診療の地域拠 点・ブロック拠点病院であり、広域からHIV 腎臓内科科長 伊藤 孝仁 感染患者が来診している。HIV感染症による 1.スタッフ紹介 腎障害、HIV治療薬による腎障害、併存感染 伊藤孝仁 科長(日本内科学会(専門医、 症またはHIV治療薬による脂質異常や糖尿病 指導医、近畿地方会評議員)、日本腎臓学会 がもたらす腎障害、など多くの腎合併症患者 (専門医、指導医、学術評議員)、日本透析医 ないしは予備軍を抱えている。当科は、当院 学会(専門医、指導医)、米国腎臓学会フェ 感染症内科と協力し、このような症例の診断 ロー、日本抗加齢医学会(評議員) ) と治療にも積極的に関わっている。 倭成史 医師(日本内科学会(専門医、指 基幹病院として、独創的な知見を情報発信 導医)、日本腎臓学会(専門医)、日本透析医 していくことは重要な使命であり、このよう 学会(専門医) ) な姿勢は、スタッフの診療能力や科学的思考 横畠知沙子 医師(日本内科学会(認定医) ) 能力を育てる上でも重要である。当院自身の 藤村龍太 専修医(日本内科学会(認定医) ) データを用いた後方視解析を積極的に行うと 冨山陽子 専修医 ともに、後追いではない先駆的データの学会 高折佳央梨 専修医 発表をめざした前向き研究を立案・実行中で 和田晃 統括診療部長(日本内科学会(専 ある。また、基幹病院として、新薬治験に積 門医、指導医、近畿地方会評議員)、日本腎 極的参加することも重要と考えている。 臓学会(専門医、指導医、学術評議員)、日 3.診療実績 本透析医学会(専門医、指導医) ) 1.平成26年退院患者内訳(最も医療資源 2.診療方針と特色 を投入したDPC病名による整理) 慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease, CKD)は、腎機能障害の進行による透析導入 という医学的社会的問題のみならず、それ自 体が脳血管・心血管病発生のリスク要因にな る点から、治療目標を明確に定めた積極的介 入が必要な疾患である。古典的には、学校検 尿の普及と対応による若年者の慢性糸球体腎 炎対策が中心であったが、近年は、定期健康 診断からはずれた高齢者の腎疾患対策へと視 −13− 2.血液浄化治療 ② HIV感染患者における腎合併症の早期 血液透析治療および特殊体外循環治療 については透析室の項に記載 地域連携、を遂行すること 3.平成2 6年特殊検査件数 腎生検 腎エコードップラー 発見、診断、治療方針の決定、円滑な ③ 外科処置を要する維持透析患者に対す 1 5件 1 9 1件 る内科的サポート能力の拡大 ④ 地域透析患者あるいは保存期腎不全患 者の急性期病変に対する対応能力の拡 4.臨床研究のテーマ 大 ① 妊娠母体のカルシウム・リン代謝状況 が母体および胎児成長に及ぼす影響の 検討 ② CKD患者における血管石灰化の検討 ③ CKD患者における腎エコ―ドプラー所 見と臨床病態との関連の検討 ④ CKD患者における腎性貧血の検討 ⑤ 大阪大学関連施設における腹膜透析患 者の治療状況に関する多施設前向き観 察調査:OCPDレジストリ研究 5.教育方針 日常診療に加え、症例検討会・病理組織検 討会・抄読会・学会発表・学会聴講参加など を通じて、すぐれた医師およびスタッフの育 成をめざしている。 定例カンファレンス ① 新入院患者症例検討および退院報告 毎週月曜日午後4時3 0分から ② 腎生検病理評価 毎週火曜日午後5時から ③ 抄読会 毎週火曜日午後6時から ④ 入院患者検討会および回診 毎週木曜日午前8時3 0分から ⑤ 透析症例検討会 毎週金曜日午後4時3 0分から 6.目標および将来計画 ① 高齢者における慢性腎疾患の早期発 見、診断、治療方針の決定、円滑な地 域連携、を遂行すること −14− ⑤ スタッフに対する研究推奨とキャリア 発達支援 診 療 業 務 糖尿病内科 っている。腎症合併例には低蛋白糖尿病食 の指導と血圧の管理を行っている。看護部、 栄養管理室と共同で透析予防外来(週1日) を開設し、増加する糖尿病を起因とする透 析患者の抑制にチームで取り組んでいる。 壊疽や閉塞性動脈硬化症の合併例には、皮 膚科・形成外科、循環器科、心血管外科と 連携して治療に当たっている。また看護部 糖尿病内科科長 瀧 秀樹 との共同でフットケア外来(毎週水曜日) 1.診療スタッフ を運営し、糖尿病足病変の予防にも取り組 瀧 秀樹 科長(日本内科学会認定医、指 んでいる。1型糖尿病専門外来(火曜日) 導医、近畿地方会評議員)、(日本糖尿病学会 を開設し、1型糖尿病治療にも積極的に取 専門医、指導医、学術評議員)、加藤研 医 り組んでいる。栄養管理室と看護部と共同 師(日本内科学会認定医、指導医)、(日本糖 でカーボカウント療法の実践、CSII(持続 尿病学会専門医、指導医)、光井絵理 医師 皮下インスリン注入療法)の導入管理を行 (日本内科学会認定医)、(日本糖尿病学会専 っている。また産科との連携で1型糖尿病 門医)、森田灯子 専修医(日本内科学会認 妊婦の管理も行っている。糖尿病教育では、 定医) 、田矢直大 専修医 外来糖尿病教室(毎月1回、外来およびホ ームページ上に年間の日程を掲示)と教育 2.診療方針と特色 入院(基本は2週間、都合により日程短縮 政策医療の内分泌・代謝性疾患に含まれる は可能)を実施している。入院はクリティ 糖尿病やメタボリック症候群、脂質異常症な カル・パスで行っている。一般の方に向け らびに内分泌疾患を対象に、それぞれの病態 ての取り組みとして、毎年11月に糖尿病デ 把握と診断・治療にあたっている。 ーの催しを各関連部署と共同で開催し(栄 1.特に大多数を占める糖尿病に関して、検 養管理室、看護部、薬剤部、臨床検査室、 査・治療・教育の3本立てのプログラムで 理学療法室、口腔外科)、糖尿病への関心 対応している。糖尿病関連の検査では、イ を持っていただくようにしている。 ンスリン抵抗性の評価、頚動脈エコーによ 2.脂質異常症、メタボリック症候群などの る動脈硬化の評価、血圧脈波による下肢血 糖尿病以外の代謝関連疾患に関して、それ 行動態の評価などを併用して、糖尿病の代 ぞれの病態把握と診断・治療にあたってい 謝動態および合併症進展の総合的把握にあ る。 たっている。また持続血糖測定器(CGM) 3.日本栄養療法推進協議会(JCNT)認定 を使用し、24時間血糖変動を観察し治療方 NST施設および日本静脈栄養学会認定NST 法の検討を行い、最適な治療の選択に活用 稼働施設、日本病態栄養学会認定栄養管 している。糖尿病の治療では、新しい治療 理・NST実施施設であり、全科・全病棟に 薬であるインクレチン製剤を積極的に導入 おけるNST活動を積極的に支援している。 し、病態を考慮した最新の糖尿病治療を行 4.内分泌関連疾患:下垂体疾患、甲状腺・ −15− 副甲状腺疾患、副腎疾患などは、脳外科や 1)糖尿病性腎症発症進展阻止のための家 泌尿器科、耳鼻科などと連携しながら、そ 庭血圧管理指針の確立(HBP-DN) れぞれの疾患の病態生理の把握や検査・診 2)2型糖尿病を併せ持つ高血圧患者にお 断・治療を行っている。 けるメトホルミンの心肥大・心機能に対 5.臨床研究や臨床治験には多数の参加を行 っている。詳細は4臨床研究のテーマに記 する効果の検討 4.国立病院機構主導の臨床研究 す。 1)糖尿病網膜症合併−コレステロール血 6.地域医療連携を積極的に推進している。 症患者を対象としたLDL-C低下療法(通 大阪市中央区の東・南医師会および大手前 病院と連携して中央区糖尿病対策推進会議 常治療/強化療法)の比較研究 5.大阪大学医学部内分泌・代謝内科の多施 を構成し、活動している。 設共同臨床研究調査 1)副腎腫瘍の頻度、病因、臨床経過に関 3.診療実績 する研究調査 1.平成2 6年度1年間の退院患者数 退院患者合計* 3 0 6名 5.教育方針 (*他科入院患者の共観は除く) 頻度の高い糖尿病に関しては、日本糖尿病 2.平成26年度1年間の患者教育・栄養食事 学会認定教育施設として、2型糖尿病、1型 指導の件数 糖尿病、妊娠糖尿病、内分泌疾患合併例、イ 1)患者教育 ンスリン受容体異常症、ミトコンドリア遺伝 外来糖尿病教室 1 3 6件 教育入院(他科入院中の参加を含む) 子異常症などの多岐にわたる糖尿病患者なら びにIGT患者を受け持つことで、各々の診断、 1 5 1件 2)栄養食事指導 治療、患者教育を研修し、日本糖尿病学会認 定専門医の資格の基本的要件を修得する。 糖尿病食 入院 6 4 4件 外来 8 9 5件 6.目標および長期展望 大多数を占める糖尿病症例に対し、国立病 院機構や厚生労働省科学研究の関連施設、大 糖腎食(低蛋白糖尿病食) 入院 8 5件 阪大学内分泌代謝内科と連携して大規模な調 外来 6 7件 査・介入試験を行い、得られた詳細な個人情 1 3 7件 報をもとに糖尿病の多様性の解明、治療への 透析予防外来 応用を目指している。また、個人の体質に合 4.臨床研究のテーマ わせたオーダーメイド医療(個人情報に基づ 1.厚生労働省科学研究 いたきめ細やかな医療)が要求されている。 1)糖尿病における血管合併症の発症予防 と進展抑制に関する研究(JDCS) そのために、個人レベルの疾病の予防、治療 に還元することを目指している。 2.国立病院機構政策医療ネットワーク共同 研究(内分泌・代謝性疾患) 1)1型糖尿病治療の標準化と効果的な治 療法の確立に関する研究 3.国立病院機構EBM推進のための大規模臨 床研究 −16− 診 療 業 務 血液内科 されている。我々の治療方針は造血器悪性疾 患では同種末梢血幹細胞移植等、治癒を目指 す最新の治療法を積極的に行うと共に、後者 のような症例についてはQOLを重視した治療 法の選択も考慮している。 3.診療実績 1.急性白血病 血液内科科長 池田 弘和 日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドラ 1.診療スタッフ インに準じる。高齢者や合併症を有する急 井上信正 輸血療法部長 性白血病は個々の患者の状態を考慮し、治 日本内科学会(認定内科医) 療方針を決定している。 日本血液学会(専門医、指導医、代議員) 2.慢性白血病 日本感染症学会(専門医) 慢性骨髄性白血病は初診時よりチロシン 日本輸血・細胞治療学会(認定医) キナーゼ阻害剤(グリベック等)を用い分 近畿血液学地方会(評議員) 子生物学的寛解を目指す。 池田弘和 科長 3.悪性リンパ腫 日本内科学会(総合内科専門医、近畿地 化学療法はCHOP療法を中心に行ってい 方会評議員) る。適応のある症例(CD20陽性)は単ク 日本血液学会(専門医、指導医) ローン抗体(抗CD20モノクローナル抗体、 野村香織 医師 リツキサン)を併用している。 日本内科学会(総合内科専門医) 4.多発性骨髄腫 日本血液学会(専門医) 従来からのアルキル化剤を中心としたマ 専修医 欠員 イルドな化学療法に加え、サリドマイド、 ベルケイド、レナリドマイド等の新薬を用 2.診療方針と特徴 いた治療を行っている。 血液疾患(造血器悪性腫瘍、貧血および出 5.造血幹細胞移植 血性疾患等)の治療をエビデンスに基づいて 適応のある患者には自家移植、同種移植 行っている。 ともに行っている。 血液疾患、特に造血器悪性腫瘍の治療は造 血幹細胞移植の出現以後、単クローン抗体に 4.臨床研究のテーマ よる治療、分子標的治療と進歩が著しい。ま た、従来より行われている化学療法の成績も 臨床血液学(化学療法の改善、不治患者の ケア) 良好で一部の疾患では化学療法単独での治癒 も稀ではない。しかし、高齢者や合併症を有 する症例および化学療法に対する感受性が良 好でない症例の治療法が今後の問題として残 −17− 5.教育方針 1.臨床血液学を志す若手医師を独自に掘り 起こし、臨床に対する広い知識と優しい心 を持つ医師に育てる。 2.研究を希望する者は大学等の研究施設に 紹介する。 6.目標と長期展望 今後とも、赤血球、白血球および血小板の 3系統の疾患を広く受け入れたい。 長期的には当科で育てた医師が研鑽後、血 液専門医として当科に復帰、本院の中心的な 存在になる事を希望する。 −18− 診 療 業 務 呼吸器内科 期、PS、年齢、合併症、EGFR/ALK遺伝 子等の結果に基づき、日本肺癌学会、 ASCO、NCCN等のガイドラインを参考と してカンファレンスで検討を行い治療方針 を決定している。 2.気管支鏡はCアーム透視台室で実施して いる。特殊光(NBI)、蛍光内視鏡(AFI)、 異物除去、TBNA(経気管支針生検)、極 呼吸器内科科長 小河原 光正 細径ファイバースコープによる末梢気道の 1.診療スタッフ 観察と生検、超音波気管支鏡(EBUS- スタッフ TBNAおよびEBUS-GS)なども可能。 小河原光正 科長(日本内科学会(認定医、 3.化学療法のプロトコールは35レジメンを 指導医、近畿地方会評議員)、日本呼吸器学 がん薬物療法委員会に登録し使用してい 会(専門医、指導医)、日本呼吸器内視鏡学 る。 会(専門医、指導医、評議員)、日本臨床腫 4.EGFR-TKI阻害薬(ゲフィチニブ、エル 瘍学会(暫定指導医)、日本がん治療認定医 ロチニブ、アファチニブ)については生検 機構(がん治療認定医、暫定教育医)、ICD制 材料のEGFR遺伝子変異の測定を実施した 度協議会(インフェクションコントロールド うえで投与の検討を行っている。 クター(ICD))、米国臨床腫瘍学会(ASCO) 5.ALK遺伝子陽性肺癌に対するクリゾチニ 会員、世界肺癌学会(IASLC)会員) ブ、アレクチニブの適応症例のスクリーニ 宮本 智 医師(日本内科学会(認定医)、 ングを生検材料を用いてIHC法およびFISH 日本消化器病学会(専門医)、日本肝臓学会 (専門医) 、日本医師会(産業医) ) 法(必要時PCR法)で実施している。 6.がんサポートチーム、緩和ケア科の協力 木村 剛 医師(日本内科学会(認定医、 のもとで肺癌診断後の早い時期から緩和ケ 専門医)、日本呼吸器学会(専門医)、日本呼 吸器内視鏡学会(専門医)、ICD制度協議会 アの導入を開始している。 7.日本呼吸器内視鏡学会認定施設、日本呼 (インフェクションコントロールドクター 吸器学会認定施設である。 (ICD) ) 安藤性實 医師(日本内科学会(認定医、 3.診療実績 専門医)、日本呼吸器学会(専門医)、日本呼 1.延べ退院患者総数(症例数はすべて延べ 吸器内視鏡学会(専門医)日本臨床腫瘍学会 例数)334例の967 . %が肺癌を中心とした胸 (がん薬物療法専門医)日本医師会(産業医) ) 部の悪性腫瘍であった。肺癌281例、胸膜 専修医 欠員 中皮腫16例、胸腺癌3例、胸腺腫10例、原 発不明癌13例。延べ退院数の54 . %(18例) 2.診療方針と特色 が死亡退院で、全て肺癌等の悪性腫瘍の進 1.肺癌を専門とし、肺癌の診断および治療 行によるものであった。1例に剖検が実施 に特化して診療を行っている。組織型、病 −19− された。 2.EGFR遺伝子変異の測定結果によりゲフ 薬剤科など参加。 ィチニブ、エルロチニブ、ジオトリフの投 6.平成25年度目標の達成状況 与症例が増加した。 少人数のスタッフで多数の肺癌患者の入院 3.ALK遺伝子検査を積極的に実施し、ALK 治療を行った。肺小細胞癌については特に迅 陽性肺癌症例を1例経験した。 4.肺癌では、高齢者が多いこと、副作用が 速に入院・診断・治療開始を行った。平成25 強いことなどのために化学療法は入院して 年度に引き続き平成26年度も新入院数が目標 実施することが多い。副作用が軽度の症例 を大きく上回った。 について毎週数例程度の外来化学療法を実 7.平成26年度目標および長期展望 施した。 化学療法、分子標的治療についてエビデン 5.気管支鏡検査数(内視鏡透視室使用分) スとなるような臨床試験を呼吸器外科との共 は1 0 3件であった。 同、国立病院機構EBM推進のための大規模臨 4.臨床研究のテーマ 床研究、多施設共同臨床試験グループ 気管支鏡診断。肺癌化学療法および分子標 (JMTO)、大学の研究グループなどへの参加 により実施予定している。 的薬治療。化学療法時の支持療法。 5.教育方針 1.肺癌を中心に胸部レントゲン・CT等の 画像の読影、気管支鏡検査、呼吸器疾患の 診断、治療、がん化学療法とその支持療法、 緩和治療などについて研修を行う。呼吸器 専門医(日本呼吸器学会)、気管支鏡専門 医(日本呼吸器内視鏡学会)、がん治療認 定医(日本がん治療認定医機構)、がん薬 物療法専門医(日本臨床腫瘍学会)等の資 格の基本的要件を習得する。 2.日本肺癌学会肺癌取扱い規約、日本呼吸 器学会、日本呼吸器内視鏡学会、ASCO、 NCCN、日本緩和ケア学会、GINA(気管 支喘息)、GOLD(慢性閉塞性肺疾患)等の ガイドライン・マニュアルを教育用に病棟 に設置してある。また、当院院内用に作成 した「肺癌診療マニュアル」および院内登 録化学療法プロトコールに基づいて実地診 療を行えるようにしてある。 3.カンファレンス:(1)肺癌カンファレ ンス。毎週金曜日。呼吸器内科、呼吸器外 科、放射線診断科、放射線治療科、臨床検 査科(病理)の合同。(2)呼吸器内科カ ンファレンス。毎週木曜日。病棟看護師、 −20− 診 療 業 務 脳卒中内科 学会、日本神経学会、日本脳神経血管 内治療学会、日本脳神経超音波学会 2.診療方針 当科は脳外科とともにStroke Care Unit (脳卒中ケアユニット)を運営し24時間体制 で急性期脳卒中の受け入れを行っている。脳 卒中の中で当科は主に虚血性脳卒中である脳 脳卒中内科科長 橋川 一雄 梗塞やTIAを担当している。脳梗塞において 1.診療スタッフ は適応があれば45 . 時間以内のrt-PA静注療法 スタッフ や8時間以内の血管内治療を施行している。 1)橋川一雄:日本内科学会(認定医、近 また、急性期治療とともに再発予防とリハビ 畿 地 方 会 評 議 員 )、 日 本 脳 卒 中 学 会 リテーション導入を行った後、脳卒中地域連 (専門医、代議員)、日本核医学会(専 携ネットワークを利用し在宅あるいは回復期 門医、近畿地方会評議員)日本神経学 リハビリテーション病院への転院など一貫し 会(代議員) た連携システムで診療を行っている。 2)永野恵子:日本内科学会(認定医、指 脳梗塞には種々の病型があり、病型に応じ 導医)、日本脳卒中学会(専門医)、日 た治療が必要であるため、頚動脈エコー検査、 本脳神経超音波学会(評議員、認定脳 経頭蓋超音波検査、経食道心エコー検査、脳 神経超音波検査士) 血流SPECT検査、X線CT、MRI/MRAや脳 3)山本司郎:日本内科学会(認定医)、 日本脳卒中学会(専門医)、日本神経 血管撮影検査などの方法を用いて、その病態 や病型を把握し治療を行っている。 学会(専門医)、日本脳神経血管内治 療学会(専門医) また、慢性期頸動脈狭窄症については、当 院脳外科と合同で頸動脈ステント留置術 4)玄 富翰:日本内科学会(認定医、指 導医)、日本神経学会(専門医)日本 (CAS : carotid artery stenting)を実施して いる。 核医学会(専門医)、日本脳神経超音 波学会(認定脳神経超音波検査士) 検査法については超音波診断、放射線診断 や核医学診断などの画像診断法などの身体的 非常勤スタッフ 負担のかからない非侵襲的検査を中心に行 1)小村江美:日本内科学会(専門医)、 日本神経学会(専門医)、日本脳卒中 い、そのうえで必要に応じて侵襲的検査を施 行している。 学会(専門医) 3.診療実績 専修医 1)大原寛明:日本内科学会、日本脳卒中 1)退院患者総数 2 3 8例 学会、日本神経学会、日本脳神経超音 急性期脳梗塞 1 6 0例 波学会、日本脳神経血管内治療学会 2)村上泰隆:日本内科学会、日本脳卒中 −21− アテローム血栓性梗塞 4 1例 (内 BAD 1 7例) 心原性梗塞 4 1例 意義に関する研究(PRAISE) ラクナ梗塞 1 9例 4.急性期脳梗塞患者におけるインジケータ その他 3 0例 ー上昇への取組。心原性脳塞栓症における (解離9例、奇異性脳塞栓1例、NBTE ヘパリン投与のタイミングと至適投与量に 2例、血管炎1例など)rt-PA施行症例 関する研究(NHOネットワーク共同研究) 血管内治療施行症例 一過性脳虚血発作(TIA) 6例 5.脳梗塞再発高リスク患者を対象とした抗 8例 血小板剤併用療法の有効性及び安全性の検 2 9例 討(CSPS.com) 頸動脈ステント留置術(脳外科と共同で実 施) 5.教育方針 6例 研修医・専修医には脳卒中治療ガイドライ 脳梗塞急性期入院症例数 ンをはじめとしたEBMに基づく診療を行うこ (平成2 1年度よりの推移) とができるように指導する。 脳卒中は救急疾患の一つであり、チーム医 療がきわめて重要であるため、専修医はスタ ッフなどメンバー間の連絡を密に行い患者さ んの診療を担当する。また、脳卒中地域連携 パスを活用し、脳梗塞急性期診療から自宅退 院あるいは回復期リハビリテーション病院や 平成26年度 脳卒中入院での死亡症例数:6例 療養型病院への転院の調整を、脳卒中診療チ ームの一員としてスムースに行えるように指 2)外来患者数 導する。 外来患者数 全体 一日平均 新患率(院内紹介を除く) 4 5 0 6名 6.目標と展望 1 82 . 名 急性期脳梗塞の治療に関しては、45 . 時間以 58 . % 内のrt-PAや8時間以内の血管内治療をより 多くの症例に適応できる体制作りを目指す。 3)検査件数 具体的には、STROKE CARE UNITをさらに 超音波検査(頚動脈エコー、経頭蓋超音 整備し、脳卒中診療に関与する内科医、脳外 波ドプラなど) 9 0 3件 科医、リハビリテーションスタッフ、看護婦、 経食道心エコー 3 2件 薬剤師、放射線部スタッフなどによるチーム 1 3 1件 医療を確立する。このため平成26年11月から 脳DaT Scan 2件 脳卒中初期診療の研修プログラムであるISLS 脳血管撮影 2 2件 (Immdiate Stroke Life Support)を開始した。 脳血流SPECT また、慢性期再発予防とリハビリテーショ 4.臨床研究のテーマ ン、そして在宅あるいは回復期リハビリテー 1.脳梗塞急性期におけるNOACの出血合併 ション病院・療養型病院への転院へと繋がる 症についての研究 一貫した連携システムを充実させる。 2.Penumbra system直接吸引法による手技 時間の短縮の試み 3.遺伝学的クロピドグレル抵抗性の臨床的 −22− 診 療 業 務 感染症内科 スタッフ 白阪琢磨 臨床研究センターエイズ先端医 療研究部長 HIV/AIDS先端医療開発センタ ー長(日本内科学会(認定医)、日本エイズ 学会認定医、厚生労働省厚生科学審議会臨時 委員(感染症部会)、エイズ動向委員会委員、 日本エイズ学会理事、公益法人エイズ予防財 団理事、財団法人友愛福祉財団理事、大阪府 エイズ対策審議会委員、奈良県立医科大学臨 感染症内科科長 上平 朝子 床教授、日本内科学会近畿支部評議員、大阪 府医師会感染症対策委員会委員 【診療方針】 当科は、当院が平成9年4月にエイズ治療 上平朝子 科長(日本内科学会(認定医・ における近畿ブロック拠点病院に選定された 専 門 医 ・ 指 導 医 )、 日 本 感 染 症 学 会 ( 専 門 のを受け、総合内科内に診療グループとして 医・指導医)、奈良県立医科大学臨床教授、 新設されたのに始まる。平成1 6年1 2月からは、 日本内科学会近畿支部評議員) 西田恭治 医長(日本内科学会(認定医)、 免疫感染症科として独立した専門外来で診療 を行っており、平成21年7月には、感染症内 日本血液学会(血液専門医・血液指導医) ) 科となった。当院は、エイズ治療の近畿地方 渡邊 大 臨床研究センターエイズ先端医 ブロック拠点病院であり、診療、研究、情報 療研究部 HIV感染制御研究室長(日本内科 発信、教育研修の4つの機能を求められてい 学会(認定医・専門医・指導医)、日本リウ る。現在の診療内容は、HIV感染症が全体の マ チ 学 会 ( 専 門 医 )、 日 本 ア レ ル ギ ー 学 会 9割近くを占めており、その他は免疫疾患、 (専門医) ) 笠井大介 医師(日本内科学会(認定医)、 一般感染症(一類、二類を除く)などである。 当院のHIV患者数は、毎年1年間で2 0 0名前後 日本呼吸器学会(専門医)、国際旅行医学会 の新規患者が受診し、平成27年3月末現在、 旅行医学認定TM) 矢嶋敬史郎 医師(日本内科学会(認定医) 、 当院のHIV感染症累計患者数は2905名、入院 日本感染症学会(専門医) ) 累積患者数は3 6 9 7名である。 小川吉彦 医師(日本内科学会(認定医)、 HIV感染症は全身疾患であり当院では全科 対応を原則とする。多剤を組み合わせた抗 日本感染症学会(専門医) ) HIV療法や日和見疾患(日和見感染症と日和 伊熊素子 医師(日本救急医学会(専門医) ) 見悪性腫瘍)に対する診断・治療を行ってい 廣田和之 医師(日本内科学会(認定医) ) る。医師に加えHIV看護コーディネーター、薬 専修医 湯川理己 医師(日本小児科学会(専門医) 、 剤師、臨床心理士、MSW、情報担当職等と 連携をとり、チーム医療の実践を行っている。 【科案内】 1.診療スタッフ PALSプロバイダー) 【診療実績】 1.外来(HIV感染症患者のみ) 平成2 7年3月末日時点 −23− れている。 HIV患者の悪性腫瘍は、本年度(平成27年 3月末現在)までにAIDS指標疾患の悪性腫 瘍が105例(悪性リンパ腫42例、カポジ肉腫46 例、原発性脳リンパ腫13例、浸潤性子宮頸が ん4例)と増加した。近年悪性リンパ腫を中 心に増加してきたが、直近3年間はカポジ肉 腫の増加が目立つ(15例)。また、胃癌、肺 癌、ホジキン病、肝細胞癌、泌尿器科系腫瘍、 消化器系腫瘍など非AIDS指標疾患の悪性腫 瘍は、昨年の56例から69例と著明に増加して 2.入院(HIV感染症患者のみ:目的別) いる。HIVに関連する悪性腫瘍や難治性疾患 に関しては、多施設共同研究や自主研究を実 施し、診断や治療法の確立を目指している。 他科での入院は、115件で引き続き全科体 制による診療を実践している。一般感染症診 療については、他科からのコンサルテーション を中心に、本年度は1 3 2件の依頼に対応した。 また、当科の医師は積極的にICT活動に参 加し、広域抗菌薬のサーベイランス、抗菌薬 の適正使用、耐性菌感染症のコンサルテーシ 【成果】 ョンなど院内感染管理業務にも携わっている。 当院におけるHIV感染症の新規外来累積患 者数は29 ,0 6名(H2 7年3月末現在)となった。 【教育方針】 昨年度の新規受診患者は、203名の内訳では 当院はエイズ治療における近畿ブロック拠 男性が98%、年齢別では30歳台、40歳台、20 点でありエイズ診療に加え教育の役割も担っ 歳台の順に多く、これらで86%を占めた。感 ている。当院の研修医やレジデントの卒後教 染経路では性的接触が大半であった。今年度 育、附属看護学校、関連大学の医学部、看護 の1日平均外来患者数(HIVのみ)は445 . 名 学部の学生教育の一端も担っている。また、 となっており、質の高い医療の提供が患者数 専門医師養成実地研修、各種専門職研修、一 の増加に繋がっていると考える。また、平成 般研修など多数の研修を実施する。 25年5月より、身体症状の緩和と精神的なケ アを目的に、多職種による専従のチームを設 【将来計画】 HIV感染症/エイズについては政策医療の 置し、エイズ患者にも緩和ケアを行っている。 AIDS発症で入院した患者での死亡率は2/ 一環として最先端の診療を行っていく。他の 45(44 . %)であり、昨年度の3/55(54 . %) 診療科や看護部、薬剤科、臨床検査科、企画 とほぼ同様の水準であった。 課経営企画室、臨床心理士、臨床研究センタ 当院に通院中のHIV/HCV重複感染例の ー免疫感染研究室等と密な連携をとりなが HCV治療は、消化器内科と連携し、肝臓専門 ら、HIV感染症の総合的診療体制の構築を目 医によるコンバイン外来を中心に行ってい 指す。多岐にわたるHIV関連疾患の診療、非 る。臨床研究含めて、積極的に治療を実施し エイズ関連疾患など一般診療の需要も増えて ている。治療効果の高い新規の抗ウイルス薬 いる。今後、一般医療機関にもHIV診療の裾 を使用した最新治療の成績は、13例中11例 野を広げる診療体制の整備を目指している。 (846 . %)でウイルス学的著効(SVR)が得ら −24− (文責 上平朝子) 診 療 業 務 消化器内科 2.診療方針と特色 エビデンスに基づいた治療を基本としてい る。原則、ガイドラインに沿った診療を行うが、 さらに先進医療を模索し、個々の症例に最も 適切な治療法をカンファレンスで検討する。 1.C型肝炎に対するインターフェロン治療 ではガイドラインにのっとった抗ウイルス 療法を行うが、血小板低値例など難治症例 消化器内科科長 三田 英治 に対しては摘脾術や部分的脾動脈塞栓術を 消化器内科は、 (1)肝炎・肝癌診療、 (2) 併用し治療を導入している。また新たに始 内視鏡治療、(3)消化管癌・胆膵系癌の化 まったインターフェロンフリー治療にも積 学療法、を診療の3つの柱にしている。難治 極的に取り組んでいる。 性のC型肝炎・B型肝炎の治療、その先の肝 2.B型肝炎に対してはインターフェロンや 細胞癌への対処、消化管癌の早期診断と早期 核酸アナログを用いた抗ウイルス療法を積 治療、消化器癌の集学的治療に重点を置いて 極的に行っている。特に核酸アナログ製剤 いる。加えて、入院患者には緊急症例、重症 が耐性化した症例の対策も講じている。 例が多く、急性期治療から緩和医療まで幅広 3.肝細胞癌の治療は胆膵領域の疾患ととも い診療を行っている。 に、外科・放射線科との合同カンファレン スで治療方針を決定している。 【科案内】 4.NBIシステムを用いた詳細な観察を基本 1.診療スタッフ とし、早期消化管癌の発見に努めている。 スタッフは日本消化器病学会、日本肝臓学 そしてESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)に 会、日本消化器内視鏡学会などの専門医ある よる早期癌の内視鏡治療を実施している。 いは認定医の資格を有し、これらの学会の指 5.消化管癌・胆膵領域の癌に対する化学療 導施設に認定されている。 法にも重点をおいている。特に日本臨床腫 ・スタッフ 9名 瘍グループ(JCOG)、大阪消化管がん化学 三田英治 科長(兼 地域医療連携推進部長、 療法研究会(OGSG)にも参加し、先進医 内視鏡室長)、石田 永 医長、中水流 療の実践につとめている。 正一 医員、山田拓哉 医員、榊原祐子 6.地域医療連携も当科の診療実績を紹介す 医員、長谷川裕子 医員、西尾公美子 医 る機会を数多く設けたため、順調に紹介・ 員、岩 逆紹介がすすんでいる。 哲也 医員、岩 竜一朗 医員 ・専修医 木村圭一(3年目)、杉本 彩(3年目)、 日比野賢嗣(3年目)、福富啓祐(2年 3.診療実績 1.C型肝炎に対するペグインターフェロ 目)、中川健太郎(1年目)、松村雄一朗 (1年目) ン・リバビリン(±プロテアーゼ阻害剤) 併用療法の症例数は、国内トップレベルで ある。治療成績、治療効果を予測できる因 −25− 子の検討で、数多くの学会発表を行い、国 5.教育方針 内外に情報発信している。 後期研修の1年目は実地臨床、内視鏡診断 2.B型肝炎に対する核酸アナログ治療の症 に重きをおいた教育をこころがけている。患 例数も国内トップレベルで、特に耐性化症 者との接し方、内視鏡システムに対する習熟 例に対する対応などではオピニオンリーダ ができあがった時点で、次のステップにすす ーとして中心的な役割をになっている。 み、実際に内視鏡操作の教育をうけることに 3.肝細胞癌に対する局所治療であるラジオ なる。肝胆膵領域はまず疾患の概念と腹部超 波焼灼術の件数も年間100件を超え、また 音波診断の基本を教育する。 従来局所治療困難とされた病変に対しても 2年目にはいると、内視鏡診断から内視鏡 人工胸水や人工腹水下に処置を行っている。 治療へと教育はさらにステップアップする。 4.NBIシステムの導入以降、早期消化管癌 側視鏡を駆使した胆膵内視鏡診療もつみかさ が発見される機会が増えた。それに伴い早 ねてもらう。また肝胆膵疾患ではエコーガイ 期癌に対するESDの件数も年間100例前後 ド肝生検や局所治療の指導をうける。 がコンスタントに行われており、今後さら 3年目は1∼2年目に学んだことの集大成 なるデバイスの進歩とともに発展していく であり、1年目の専修医を教育できるまで成 診療と考える。 長してもらう。 5.消化管および胆膵系の悪性腫瘍に対する 全体を通して、学会発表も積極的に行い、 化学療法は抗癌剤の進歩とともに治療効果 毎年全国レベルの学会発表を2回、その他の の向上が認められている。患者数も増加し、 地方会・研究会発表も中心は専修医となる。 当科の診療の重要な部門となった。 6.当科が主体となっている検査は、主に上 6.平成26年度目標の達成状況 部・下部消化管内視鏡(含、内視鏡治療、 入院患者数、外来患者数ともにほぼ目標を 胆膵系内視鏡)と腹部超音波検査である。 達成することができた。また消化器内科が担 また腹部超音波検査をガイドとした肝生検 当する内視鏡部門、腹部超音波検査部門の症 や腫瘍生検も行っている。 例数も安定した。処置の件数はやや増加し、 これは消化器内科に求められるニーズが年々 4.臨床研究のテーマ 増加しているためと考える。 1.国立病院機構ネットワーク共同研究「B 型肝炎ウイルスにおける核酸アナログ耐性 7.平成27年度目標および長期展望 肝炎治療では治験・自主研究をもりこんだ 遺伝子の解析および耐性例に対するrescue 先進医療の実践に今後も努めたい。前年度以 therapyの介入」 2.国立病院機構ネットワーク共同研究:急 上に臨床研究を発展させたいと考える。内視 鏡治療では、若手スタッフの成長とともに症 性肝炎に対する疫学調査 3.厚労科研「肝疾患患者を対象とした相談 例数の増加が見込まれ、臨床研究を始める素 支援システムの構築、運用、評価に関する 地は整った。化学療法は他部門との共同研究 研究」 を通して、先進医療の実践に貢献できていく 4.自主研究:ペグインターフェロン・リバ であろう。 ビリン・テラプレビル併用療法時における また教育には特に力を注ぎ、若手消化器内 エリスロポエチンの貧血改善効果に関する 科医の育成につとめ、将来関西地区の消化器 検討をはじめ、自己免疫性肝炎、PBC、非 内科を担う人材を輩出したいと考える。 B非C型肝細胞癌など多数の臨床研究をお こなっている。 −26− 診 療 業 務 循環器内科 循環器内科科長 安村 良男 【診療方針】 エビデンスに基づいた治療を行うことを基 本とするが、同時に個々の症例の病態を十分 に解析し、病態に則した治療を選択する。 1.虚血性心疾患は循環器領域では最も多い 疾患であり、過去および将来的にも、この 診療は循環器内科の基本である。虚血性心 疾患の治療においては、最適の治療法を選 択するのみならず、冠動脈形成の高い技術 が要求される。これらの要求に沿った高度 の医療を提供する。重症例においては心臓 血管外科の協力のもと最適な治療を提供す る。また、虚血性心疾患の一次予防、二次 予防を重視し、特に、高血圧、糖尿病、高 脂血症やメタボリック・シンドロームなど 冠危険因子に対する適切な治療を提供する。 2.慢性心不全治療においては我が国におけ る最高水準の心不全治療を提供する。急性 心不全治療においては予後の改善を目標と した治療をめざす。特に高齢者心不全にお いては再入院が多く、予後の改善のみなら ず、ADLの維持を目指した治療を行う。こ のためには急性心不全の最適な治療法の開 発のみならず、退院後においては地域医療 連携を含め、包括的な患者管理の確立が不 可欠と考える。 3.循環器疾患は治療法の進歩や高齢化社会 を反映して、疾病の重症化や複合化が認め られ、包括的な診療が要求される。この目 的のために心臓リハビリテーションを充実 させ、再発予防、QOLの改善を目指す。 4.不整脈診療においては、頻脈性不整脈に 対する基本的なカテーテルアブレーション 治療を提供する。 また、高齢者心房細動に対して積極的に 抗凝固薬を導入し、心原性脳梗塞の予防を はかっている。 5.3次救急患者の受け入れ病院であるため、 心原性の突然死の病態解明・治療に力をい れている。致死的重症不整脈に対しては ICDの植え込みを施行する。 6.臨床治験に積極的に参加する姿勢をとっ ている。 7.地域医療連携を積極的に進めている。特 に急性期医療提供を中心とし、地域医療機 関との連携を密としている。現在は症例検 討を中心とした病診連携の会を年4回開催 している。 【循環器科】 1.循環器科スタッフ紹介H27年3月1日時点 循環器内科科長:安村良男 院長:楠岡英雄 臨床研究センター長:是恒之宏 医師:伊達基郎、安部晴彦、小出雅雄、宮 崎宏一 レジデント(後期研修):三浦弘之、坂口 大起、篠内和也、古川哲生、井上裕之、西 田博毅、安村かおり 2.外来紹介H27年3月1日時点 月曜日:楠岡英雄、伊達基郎、小出雅雄、 坂口大起、井上裕之、安村良男 火曜日:安村良男、安部晴彦、篠内和也 水曜日:伊達基郎、安部晴彦、宮崎宏一、 西田博之 木曜日:是恒之宏、小出雅雄、宮崎宏一、 安村かおり、安村良男 金曜日:安村良男、三浦弘之、古川哲生、 濱野 剛、佐々木典子 【主な診療実績】 1.入院患者数 1078名 退院患者数 1 0 6 2名 CCU入院患者数 2 1 9名 循環器専門医師数 6名 医師数 1 4名 平均入院日数 1 39 . 日 2.疾患分類 (1)急性心筋梗塞 4 6例 (2)心不全 3 6 6例 −27− 急性心不全 1 3 3例 慢性心不全 2 3 3例 3.死亡数 40例 剖検数 1例 4.治療 (1)緊急PCI 3 6例 (2)待機的PCI 1 8 5例 (3)POBA 1 1例 (4)BMSステント 2例 (5)DESステント 2 0 5例 (6)ロータブレーター 2例 (7)PTA 3 7例 (8)PTSMA 1例 (9)下大静脈フィルター 7例 (10)IABP 1 8例 (11)PCPS 1 0例 (12)PM植え込み 新規4 6例 交換3 6例 (13)ICD植え込み 新規1 6例 交換1 0例 (14)カテーテルアブレーション 1 0例 (15)CRT-P植え込み 1例 (16)CRT-D植え込み 2例 5.検査 (1)トレッドミルまたはエルゴメーター 負荷試験 7 2 0例 (2)マスター負荷試験 3 1 4例 (3)加算平均心電図 2 3例 (4)ホルタ―心電図 5 5 3例 (5)経胸壁心エコー 4 1 1 7例 (6)経食道心エコー 7 6例 (7)運動負荷エコー 2例 (8)ドブタミン負荷エコー 1例 (9)冠動脈造影検査 2 7 9例 (10)左室造影検査 3 0 5例 (11)右心系造影検査 1例 (12)大動脈造影検査 6 1例 (13)血管内超音波検査 1 6 8例 (14)心筋生検 2 0例 (15)EPS 6例 (16)先天性心疾患の診断カテーテル検査 1例 (17)安静時心筋血流シンチ 8例 (18)運動負荷心筋血流シンチ 9 7例 (19)薬物負荷心筋血流シンチ 3 9例 (20)肺血流シンチ 2 3例 (21)冠動脈CT 2 5 3例 (22)大血管CT 5 4 2例 (23)心臓MRI 2 2例 (24)血管MRI 4 3例 (25)血圧脈波検査(ABI検査)8 1 7例 6.心臓リハビリテーション (1)新規患者数 3 1 3例 (2)年間延べ件数 8 4 1 4例 【臨床研究テーマ】 急性心不全の病態解析と最適治療法の選択 重症慢性心不全患者の病態の解析と治療法 の選択 心不全治療としての陽圧呼吸療法の有効性 の機序とその効果の検討 高齢者心不全の治療戦略 高齢者心房細動患者における安全な抗凝固 法の確立 全国国立病院における急性心筋梗塞の疫学 調査 癌患者における循環器疾患の病態と治療 【教育方針】 患者・家族へのインフォームドコンセント を徹底し、患者に対して常に真摯な態度で接 し、医師としての人間性、知識が信頼される よう心がけている。 病態の解析能力を備えた臨床医になること 基本とする。PCIの技術の習得のみならず虚 血性心疾患の知識の上になりたつ技術をめざ す。心エコーは治療につながる心エコーがと れるようになることを目標とする。心不全診 療はエビデンスとエクスペリエンスの両立を めざす。臨床研究の計画、実行、まとめの過 程を体験する。 【将来計画】 循環器領域の基本的疾患である虚血性心疾 患に対する治療(冠動脈形成術および二次予 防)の充実をはかるとともに、高齢化社会に 向けて増加するであろう血管疾患に対応すべ く診断及び治療技術の向上をはかる。 急性および慢性心不全の治療の標準化と 個々の症例の病態ごとの治療との融合を図り 最適治療をめざす。心不全治療は心機能に対 する治療のみならず、特に腎不全、貧血、感 染症、糖尿病、高血圧などの疾患やライフス タイルへの介入が必要とされる。近年、増加 傾向にある超高齢者や腎不全合併例への対応 は病院運営上困難を極めるが、一般的な心不 全治療におけるパスやリハビリテーションの 確立、地域医療との連携を含めた包括的心不 全治療センターの設立を目標としている。 (文責 上田恭敬) −28− 診 療 業 務 小 児 科 行っている。 当科では多和副院長、大杉医長、松村医員 が血液腫瘍・免疫アレルギー、寺田科長が神 経・発達を専門的に診療している。以下に重 点的に取り組んでいる疾患をあげる。 1.新生児医療:late pretermの新生児、血 液、内分泌・代謝疾患など合併症のある母 親から出生した新生児、ならびに病的新生 小児科科長 寺田 志津子 児。 1.診療スタッフ 2.高度小児専門医療:先天異常、奇形、発 スタッフ 育・発達障害、血液、がん、膠原病、アレ 多和昭雄 副院長 ルギー、神経、感染症(HIV感染症を含む) 。 (日本小児科学会(専門医)、日本血液 学会(専門医、指導医、評議員)、日本 3.診療実績 小児血液・がん学会(評議員)、日本小 1.過去5年間の退院患者の推移 児血液・がん学会(暫定指導医)日本が ん治療認定医機構暫定教育医) 寺田志津子 科長 (日本小児科学会(専門医) ) 大杉夕子 医長 (日本小児科学会(専門医)、日本血液 4.臨床研究のテーマ 学会(専門医、指導医、代議員)、日本 以下の研究を行っている。 がん治療認定医、日本サイコオンコロジ 1.厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策 ー学会認定コミュニケーション技術研修 研究事業)「HIV感染妊婦から出生した児の 会ファシリテーター、日本小児血液・が 実態調査と健康発達支援に関する研究」 ん学会(暫定指導医)、日本造血細胞移 2.成育医療研究開発費24-4小児がんの新規 植学会造血細胞移植認定医、日本小児血 治療法開発や臨床試験推進を目的とする基 液・がん学会(評議員) ) 盤整備、データベース構築に関する研究 松村梨紗 医員 「低悪性度グリオーマの予後に関する臨床 (日本小児科学会(専門医)、日本血液 学会(専門医) ) 的要因を検討する後方視的調査研究」 3.ALCL-99(未分化大細胞性リンパ腫)治 療研究(国際的多施設共同研究) 2.診療方針と特色 4.ALL-02(急性リンパ性白血病)治療研究 地域における病院小児科の役割である、無 床診療所との連携を中心とする地域医療の核 (JACLS) 5.LLB/ALB-NHL03(リンパ芽球型リンパ となること、特殊な疾患に対する高度専門医 療を推進することの2点に重点をおき診療を 腫)治療研究(JPLSG) 6.ALL-Ph1 3(フィラデルフィア染色体陽性 −29− 急性リンパ性白血病)治療研究(JPLSG) となること、特殊な疾患に対する高度専門医 7.ALL-R0 8(第一再発急性リンパ性白血病) 療を推進することの2点に重点をおき診療を 臨床研究(JPLSG) 行っていく。 8.CML-08(慢性骨髄性白血病)観察研究 (JPLSG) 9.MLL-10(乳児急性リンパ性白血病)治 療研究(JPLSG) 10. TAM-10(一過性骨髄異常増殖症)観察 研究(JPLSG) 11.ALL-T1 1(T細胞性急性リンパ性白血病) 治療研究(JPLSG) 12.AML-D1 1(ダウン症に発症した急性骨髄 性白血病)パイロット研究(JPLSG) 13.LCH-12(ランゲルハンス細胞組織球症) 治療研究(JPLSG) 14.ALL-B12(B前駆細胞性急性リンパ性白 血病)臨床研究(JPLSG) 15.頭蓋内ジャーミノーマ胚細胞腫瘍)高リ スク胚細胞腫)に対する強化化学療法 5.教育方針 医師としての社会的、職業的責任と医の倫 理に立脚してその職務を遂行し、幼い患児の 人格と人権を尊重するとともに、家族とも好 ましい信頼関係を作り、説明と同意を基本的 態度として接するよう指導している。 6.平成26年度目標の達成状況 紹介率、逆紹介率の維持、退院サマリ作成 強化、指導料の確実な算定、病児保育支援な どの職場環境への貢献ができた。また人材育 成については、初期研修、専修医の指導、大 阪大学6年次ポリクリ臨床実習を行った。 7.目標および長期展望 これまでの診療、教育、研究を継続して、 年度計画の達成、職場環境の改善、円滑なチ ーム医療に取り組む。 上記目標をかかげるとともに、今後とも無 床診療所との連携を中心とする地域医療の核 −30− 診 療 業 務 上部消化管外科 データマネージャー・CRC制度委員会専門委 員)、日本臨床腫瘍学会、日本静脈経腸栄養 学会、外科代謝栄養学会、外科系連合学会、 日本消化器病学会、大阪大学消化器外科共同 研究会(上部疾患分科会ワーキングメンバ ー)、JCOG(胃癌・食道癌グループ)、がん 集学的治療研究財団JFMC(臨床研究開発・ 推進委員)、JACCRO、西日本がん研究機構 WJOG、ECRIN、OGSG、SILGS研究会(世 上部消化管外科科長 平尾 素宏 話人)、LAG若手の会(代表世話人)、食道癌 担当スタッフ 栄養療法懇話会(コメンテーター) 上部消化管外科科長・外科医長・栄養管理 部部長 上部消化管外科医師 平尾素宏(H1卒)医学博士 山本和義(H1 3卒)医学博士 日本外科学会(専門医・指導医)、日本消 日本外科学会(専門医)、日本消化器外科 化器外科学会(専門医・指導医・評議員・消 学会(専門医・指導医)、日本消化器病学会 化 器 が ん 外 科 治 療 認 定 医 )、 日 本 食 道 学 会 (専門医)、日本癌治療学会、日本がん治療認 (食道外科専門医・食道科認定医・評議員)、 定医機構(がん治療認定医)、日本胃癌学会、 日本胃癌学会(評議員)、日本がん治療認定 日本食道学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床 医機構(がん治療認定医・暫定教育医)、臨 外科学会、日本大腸肛門病学会、日本外科代 床研修指導医、NHOネットワークグループ外 謝栄養学会、日本内視鏡外科学会、日本静脈 科麻酔科リーダー、日本胸部外科学会、日本 経腸栄養学会 日本乳癌学会、大阪大学消化 外科系連合学会、日本癌学会、日本癌治療学 器外科共同研究会(上部疾患分科会ワーキン 会、日本臨床外科学会、日本麻酔科学会、日 グメンバー)、JCOG(胃癌・食道癌グループ) 、 本消化管学会、大阪大学消化器外科共同研究 食道癌栄養療法懇話会(コメンテーター) 会(上部疾患分科会ワーキングメンバー)、 JCOG(胃癌・食道癌グループ)、近畿過大侵 上部消化管外科診療方針と活動報告 襲研究会(世話人)、食道癌栄養療法懇話会 食道疾患では食道癌・アカラシア・食道裂 (コメンテーター)、大阪胃研究会、阪神食道 孔ヘルニア・食道破裂などが、胃疾患では胃 疾患研究会(世話人) 癌・胃GISTが主な対象疾患ですが、あらゆる 上部消化管の外科疾患に対応しています。ま 上部消化管外科副科長・外科医長 た、紹介患者は、毎週水曜日早朝に行う消化 西川和宏(H5卒)医学博士 器内科との合同カンファレンスで、診断や治 日本外科学会(専門医・指導医)、日本消 療方針について詳細に検討しています。食道 化器外科学会(専門医・指導医)、日本食道 癌stageⅠの症例には患者さんの希望に基づき 学会(食道科認定医)、日本がん治療認定医 外科切除か化学放射線療法を選択し、Stage 機構(がん治療認定医・暫定教育医)、日本 Ⅱ、Ⅲ、一部のⅣ症例には最適な術前療法の 臨床外科学会(評議員)、日本内視鏡外科学 評価を行いながらの根治切除術を行っていま 会(評議員)、近畿外科学会(評議員)、日本 す。他臓器浸潤を伴った症例には化学(放射 胃癌学会(評議員)、日本癌治療学会(認定 線)療法後の根治術を目指し、JCOGなどの −31− 全国的臨床試験グループにも参加し、科学的 followed by conversion surgery]. Gan To 根拠のある最新治療を行っています。胃癌で Kagakuryoho. 2014. 41 は、早期症例では患者さんの早期回復と機能 3.[A case of metachronous triple cancer 温存を目指した鏡視下手術や機能温存手術 treated with a multimodal approach を、高度に進行した癌に対しては、最新の知 including surgical resection]. Gan to 見に基づき、化学療法(分子標的治療薬を含 Kagakuryoho. 2014. 41 む)を併用した集学的治療を行い、患者の治 4.Long-term outcomes after prophylactic 癒を目指します。また、治験や臨床試験 bursectomy in patients with resectable (JCOG、WJOG、JACCROなどの全国的な臨 gastric cancer: Final analysis of a multi- 床試験グループ)にも、これまで以上に積極 center randomized controlled trial. 的に取り組んでいます。今年度も進行胃癌対 Surgery. 2015. 20 象に新規治験(TAS-118やABI007)などに参 5.Impact of the Japanese gastric cancer 加予定です。上部消化管手術の前後にみられ screening system on treatment out- る栄養障害や嚥下障害に対しては、栄養士や comes in gastric gastrointestinal stromal 理学療法士の積極的なチーム介入を早期から tumor(GIST): an analysis based on 行い、患者の1日も早い生活復帰に努めてい the GIST registry. Ann Surg Oncol. ます。いずれの癌腫においても、高齢化の中 2015. 22 で何らかの全身疾患を抱えた癌患者が増えて きていますが、脳内科・循環器内科・腎臓内 臨床研究・教育 科・精神神経科・麻酔科などとの早急かつ円 NHOネットワークグループ(外科麻酔科)、 滑な連携により、他院で治療が難しいと考え JCOG WJOG、JACCROなどの全国的な臨床 られた患者に対しても、できるだけの対応を 試験グループ、大阪大学消化器外科上部疾患 しています。なお、当院は日本食道学会・食 分科会、OGSG臨床試験グループ、新規薬剤 道外科専門医認定施設にも認定されています。 治験などに参加し、多くの臨床試験を積極的 に主導しています。 診療実績 専修医には、術前の治療方針、その科学的 平成2 4年1-1 2月の上消化管外科手術実績: 根拠、術前内視鏡などの画像診断、手術技術、 全身麻酔手術全数 1 8 2例 術後管理の流れを学んでもらうよう心掛けて 2 2例 います。その前提として、担当医としてのマ 食道癌手術 (そのうち胸部食道切除1 6例) 胃癌手術 1 2 8例 (そのうち切除8 4例、腹腔鏡下手術 2 4例) ナー、自覚、情熱、チーム意識をもって診療 にあたってもらうことは当然のことです。ま た、自分たちが担当した症例から学んだ経 験・知見などをまとめ、学会や専門誌への発 研究成果(2014-2015英文論文筆頭著者分のみ) 表の指導も行っています。 1.Randomized phase Ⅲ trial of second-line irinotecan plus cisplatin versus irinote- 今年度の目標 can alone in patients with advanced gas- 地域医療施設との連携を深め、外来入院患 tric cancer refractory to S-1 monothera- 者数と手術数の増加を目指したいと思います。 py : TRICS trial. European J Cancer. 当科の外科診療の特徴として、合併症を持つ 2015. 51 患者さんも積極的に受け入れていることがあ 2.[A case of HER2-positive advanced gas- ります。院内各科の協力を得て診療成績を向 tric cancer with extensive lymph node 上させ、全国で患者信頼度・満足度トップの metastasis treated via chemotherapy 病院に築き上げていきたいと考えています。 with a trastuzumab-containing regimen −32− (文責 平尾素宏) 診 療 業 務 下部消化管外科 99例中94例に切除を行いました。初発直腸癌 における肛門温存率は92%で、再発直腸癌は 20例に対して積極的な治療を行いました。術 前化学放射線療法後に骨盤内臓全摘術、仙骨 合併切除などを行っています。本年度より再 手術症例に対しても積極的に腹腔鏡手術に取 り組んでおり、昨年度は再発直腸癌症例に対 して3例行いましたが、本年度は14例(70%) 下部消化管外科科長 池田 正孝 に行いました。腹腔鏡手術を導入することに 大阪医療センター下部消化管グループは大 よって明らかに出血量が減少し(中央値2200 腸癌治療を中心に、下部消化管の関連疾患 ml→220ml)より低侵襲化が図れていると考 (炎症性腸疾患・憩室炎・急性虫垂炎・肛門 えています。 疾患等)の外科的治療を行っています。大腸 下部グループは、エビデンス確立のための 癌治療に関しては外科治療が主流ですが、化 臨床試験も積極的に行っています。日本臨床 学療法・放射線療法も取り入れた集学的治療 腫瘍グループ(JCOG)の一員としてJCOG も積極的に行っています。 0 6 0 3、JCOG1 0 0 6、JCOG1 0 0 7等の臨床試験に スタッフは常勤4名、非常勤1名です。常 登録しております。また、大阪大学消化器外 勤は関本貢嗣(副院長)、池田正孝(下部消 科の臨床試験グループである、消化器外科共 化 管 外 科 科 長 )、 三 宅 正 和 ( 下 部 消 化 管 同研究会、大腸疾患分科会の一員としても臨 医員)、植村守(同 医員)の4名で、非常 床試験にこれまでに130例を超える症例を登 勤は宮崎道彦(肛門外科 医師)です。 録しています。その他、がん集学的治療研究 毎週月曜日8:00∼9:00はその週の症例 の術前臨床カンファレンスを行います。その 財団の臨床試験、JFMC41、46、47試験へも 登録を行っております。 後9:00∼10:00まで、消化器内科と合同の 大腸内視鏡カンファレンスを行っています。 19:00∼下部消化管外科カンファレンスを行 い、下部消化管外科の症例検討会を行ってい ます。火曜日8:00∼病棟回診、水曜日16: 00∼外科総回診、金曜日8:30∼外科重症回 診を行っています。 平成26年度の下部消化管グループが担当し た全身麻酔症例は352例で、昨年より17例増 えました。肛門外科症例が30例でした。手術 の主体は大腸癌で、198例の大腸癌手術を行 いました。結腸癌は3例に切除不能で人工肛 門造設術を行いましたが、96例は切除、うち 腹腔鏡症例は91例(95%)でした。直腸癌は −33− 診 療 業 務 肛門外科 セミナー講師、講演 「当院における肛門疾患に対する治療」. 第15回消化器外科を考える若手懇談会(平成 2 6年3月1 5日大阪) 「直腸肛門の解剖、生理、機能検査、画像 診断」.平成26年肛門疾患step upセミナー (平成2 6年3月2 9日大阪) 「肛門疾患1」.平成26年肛門疾患step up 肛門外科 宮崎 道彦 セミナー(平成2 6年3月2 9日大阪) 当院では肛門を下部消化管(大腸)の一部 と位置づけ、診療を行っています。代表的な 「肛門疾患2」.平成26年肛門疾患step up セミナー(平成2 6年3月2 9日大阪) 痔核、裂肛、痔瘻の肛門疾患を初め、腫瘍性 若手に伝えたいヘモ、ヘルニア∼肛門周囲 疾患、膿皮症、直腸脱、排便障害(便秘、便 膿瘍.第22回日本外科学会生涯教育セミナー 失禁)などを治療対象としています。 さらに (平成2 6年5月2 4日大阪) 総合病院という強みを生かしHIV感染者やそ の他の全身疾患を併せ持つ症例に対しても積 学会司会、座長 極的に 手術を行っています。 痔瘻Ⅰ.第5回臨床肛門病研究会学術集会 診療日:第一を除く毎木曜日 (平成2 6年2月9日東京) 担 当:宮崎道彦(非常勤) 痔核治療1 手術手技.第69回日本大腸肛 門病学会学術集会(平成2 6年1 1月7日横浜) 【平成26年学術活動】 裂肛.第101回近畿肛門疾患懇談会(平成 2 6年1 1月1 5日大阪) 執筆 隅越分類ⅡH型痔瘻(肛門周囲膿瘍)の治 療.臨床肛門病学6:1 0 4-1 0 8、2 0 1 4 肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイド ライン、南江堂、東京、2 0 1 4、p5 3-5 5 学会発表 HIV陽性者肛門疾患に対する外科治療∼未 踏の第一歩から7年経って.第114回日本外 科学会定期学術集会(平成2 6年4月5日京都) 肛門手術後の周術期管理の一工夫∼結紮切 除術・術後疼痛の対策.第69回日本大腸肛門 病学会学術集会(平成2 6年1 1月8日横浜) 肛門疾患診療ガイドライン2014.第101回 近畿肛門疾患懇談会(平成2 6年1 1月1 5日大阪) −34− 診 療 業 務 肝胆膵外科 (専門医) 、日本移植学会(移植認定医) 前田 栄 医師 日本外科学会(専門医)、日本消化器外科 学会(専門医) 肝胆膵外科科長(副院長)中森 正二 1.診療スタッフ 中森 正二 副院長、医療安全部長、肝胆膵外 科科長 がん療法研究開発室長 日本外科学会(専門医、指導医)、日本消 化器外科学会(専門医、指導医、評議員)、 日本肝胆膵外科学会(高度技能指導医、評 議員)、日本膵臓学会(評議員)、日本消化 器病学会(専門医、指導医、評議員)、日 本胆道学会(評議員)、日本大腸肛門病学会 (専門医、指導医、評議員)、日本消化管学 会(評議員)、日本内視鏡外科学会(評議 員)、日本癌学会(評議員)、日本癌治療学 会(臨床試験登録医)、日本がん分子標的 治療学会(評議員)、日本消化器癌発生学 会 ( 評 議 員 )、 日 本 が ん 治 療 認 定 医 機 構 (がん治療認定医/がん治療暫定教育医)、 日本臨床腫瘍学会 (暫定指導医)、日本が ん転移学会(評議員) 、臨床研修指導医 宮本 敦史 医長、近畿グループ診療専門職 日本外科学会(専門医・指導医)、日本消 化器外科学会(専門医・指導医・評議員)、 日本肝胆膵外科学会(高度技能指導医・評 議員)、日本外科感染症学会(外科周術期 感染管理認定医・教育医・評議員)、日本 消 化 器 病 学 会 ( 専 門 医 )、 日 本 肝 臓 学 会 (専門医)、日本がん治療認定医機構(がん 治療認定医、がん治療暫定教育医)、臨床 研修指導医 濱 直樹 医師 日本外科学会(専門医)、日本消化器外科 学会(専門医)、日本肝胆膵外科学会(評 議員)、日本移植学会(移植認定医)、日本 消 化 器 病 学 会 ( 専 門 医 )、 日 本 肝 臓 学 会 診療方針と特色 当科は、エビデンスに基づいた質の高い医 療の提供を診療方針としています。代表的な 難治癌である肝胆膵領域の癌治療を中心に外 科治療一般における標準的治療だけでなく、 さらにその領域における先進医療を開発、提 供することを目標としています。 恵まれた医療環境と充実したスタッフの力 を元に、肝胆膵領域癌の治療を診療の中心と していますが、がん専門病院で良く見られる 悪性腫瘍の手術だけを行うのではなく、この 領域では一般的な胆石症、総胆管結石からソ ケイヘルニア、虫垂炎などの一般的な外科疾 患も扱っており、急性腹症にも対応していま す。また、癌治療に関しては、手術するだけ でなく、診断から手術、化学療法、緩和治療 に至るまでトータルに診療を行う事をモット ーとしています。 当科では、肝葉切除や膵頭十二指腸切除な ど日本肝胆膵外科学会が高難度手術に指定す る手術を年間50件以上実施しており、大阪府 内の5大学病院を含めて8つしかない高度技 能医修練施設Aの1つに認定されています。 一方、このような高難度手術を行っているだ けでなく、患者に優しい低侵襲手術である腹 腔鏡手術も積極的に取り入れており、標準的 治療となった胆嚢摘出術だけでなく、肝臓癌 や転移性肝癌の肝切除や膵 胞性腫瘍や内分 泌性腫瘍などの良性や比較的低悪性度の膵腫 瘍に対する膵切除を腹腔鏡下手術で行ってい ます。なお、肝臓癌、胆道癌、膵臓癌などの 悪性腫瘍に対してガイドラインに従った標準 的治療を行うだけではなく、日本臨床腫瘍研 究グループ(JCOG)をはじめとする全国的 な多施設共同臨床試験に参加することによ り、外科的治療のみならず化学療法や放射線 療法を組み合わせた最先端の集学的治療法を 確立するべく取り組んでいます。 −35− 3.診療実績(平成26年1月1日∼12月31日まで) 4.臨床研究のテーマ 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)また、 国内および関西地区あるいは大阪大学関連施 設の臨床試験グループに参加し、多くの臨床 研究を主導したり参加したりしています。 5.教育方針 当科に参加する専修医には、何より先ず社 会人としてのマナーと医師としての規律を指 導しています。そして、受動的に学ぶのでは なく、自ら考え学ぶ習慣を持つ事ができる肝 胆膵外科医となることを教育方針としていま す。感染対策、NSTおよびクリティカルパス などのチームにも参加して、チーム医療を経 験し理解し、臨床のトレーニングに加え、学 会や専門誌への臨床データの発表も指導しま す。最終的には、日本肝胆膵外科学会高度技 能専門医制度における胆膵外科高度技能専門 医応募資格の取得を目指すことを最終目標と しています。 6.平成27年度の目標 がん拠点病院の特色を生かし、肝胆膵高難 度手術数のさらなる増加を目指すとともに、 臨床試験にこれまで以上に積極的に参加して いくことを目標としています。さらに、地域 医療支援病院として、ヘルニア、胆石症、胆 嚢炎、急性虫垂炎等の急性腹症も含む一般的 外科疾患も積極的に受け入れていく事も目標 としています。 (文責 中森正二) −36− 診 療 業 務 呼吸器外科 しています。さらに呼吸器外科領域の新たな エビデンスの創造も目標としています。 当科は原発性肺癌、縦隔腫瘍、胸膜疾患、 転移性肺腫瘍等の胸部悪性疾患の外科的治療 を中心に診療を行っています。気管支鏡によ る肺内結節の診断も積極的に行い、平成25年 度からは超音波気管支鏡も導入し診断率の向 上に努めています。他、術後補助化学療法、 呼吸器外科科長 高見 康二 再発治療も当科で積極的に行っています。ま 1.診療スタッフ た、膿胸、自然気胸などの非悪性疾患に対し 高見康二 呼吸器外科科長、がん相談支援 ても積極的に受け入れています。 室長 肺癌に対してはOncologyに基づき根治性を 呼吸器外科専門医(呼吸器外科専門医合同 第一に考慮しつつ、比較的早期の肺癌に対し 委員会)、日本呼吸器外科学会(評議員)、日 ては術後の生活の質に配慮した肺機能温存手 本肺癌学会、日本呼吸器学会(呼吸器専門医) 、 術や、患者様に優しい低侵襲手術としての胸 日本外科学会(指導医、専門医)、日本胸部 腔鏡下手術、特に完全鏡視下肺葉切除/区域 外科学会(認定医、正会員)、日本癌治療学 切除にも積極的に取り組んでおり、胸腔鏡下 会、がん治療認定医/がん治療暫定指導医 手術の比率は年々増加しています。一方、進 (日本がん治療認定医機構)、日本臨床腫瘍学 行した腫瘍に対しては心臓血管外科をはじめ 会(暫定指導医)、日本癌学会、日本胸腺研 院内他科と協力し周辺臓器の合併切除再建等 究会、石綿・中皮腫研究会、近畿外科学会 の手技を駆使して根治を目指した拡大手術も (評議員)、財団法人大阪から肺がんをなくす 行っています。 会(評議員)、肺がんCT検診認定医師(肺が 近年、呼吸器外科領域でも高齢者や心血管 んCT検診認定機構)、日本消化器外科学会 障害、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎、慢性 (認定医) 、日本乳癌学会(認定医) 透析などの併存症を有するハイリスクな手術 大宮英泰 医長 対象患者が増加してきています。当科では院 呼吸器外科専門医(呼吸器外科専門医合同 内他科との協力により適切な術前評価、周術 委員会)、日本外科学会(専門医・指導医)、 期管理を行い、また手術の低侵襲化の工夫な 日本呼吸器学会(呼吸器専門医)、日本呼吸 どにより平成26年度の手術関連死亡は0%と 器内視鏡学会(気管支鏡専門医・指導医)、 良好な成績を維持しています。 日本胸部外科学会、日本肺癌学会、がん治療 認定医、肺癌CT検診認定医師等 呼吸器外科診療体制の充実、患者様の増加 が評価され、当施設は2012年に呼吸器外科基 幹施設(呼吸器外科専門医合同委員会)への 2.診療方針と特色 昇格が認定されその資格を維持しています。 エビデンスに基づいた質の高い医療を提供 すると同時に、個々の患者さんの病態や生活 3.診療実績(平成26年1月1日∼12月31日) 背景に即した最善の治療を提供すること目指 肺癌35例(肺全摘1例、葉切24例、区域切 −37− 除3例、部分切除等6例、その他1例) としてだけではなく、社会人として優れた人 転移性肺腫瘍30例(大腸直腸癌23例、子宮 間を育成することを目標としています。また、 癌1例、腎癌1例、胃癌1例、食道癌1例、 外科知識や技術を受動的に学ぶのではなく、 骨肉腫1例、軟部肉腫1例、口腔底癌1例) 自ら考え学ぶ習慣を持つ医師となるよう教育 縦隔腫瘍6例(胸腺腫3例、縦隔嚢腫1例、 縦隔内甲状腺腫1例、その他1例) し、チーム医療を経験し理解することにも力 を入れています。実地医療面では外科学会専 胸膜胸壁腫瘍 5例 門医制度及び呼吸器外科専門医合同委員会が 炎症性肺疾患/膿胸 3例 定めた臨床到達目標を満たすとともに、症例 自然気胸 8例 検討会、外科抄読会、学会発表や専門誌への その他(生検含む)2例 論文発表などの指導も通じてすぐれた医師の 育成を目指しています。当施設は呼吸器外科 4.カンファレンス 専門医合同委員会の呼吸器外科基幹施設に認 月曜朝:外科術前症例検討 定され呼吸器外科専門医を取得する環境は整 水曜夕:外科抄読会、学会予行 っています。 金曜朝:外科術後症例検討、入院患者症例 7.平成26年度目標の達成状況 検討、回診 金曜夕:呼吸器合同カンファレンス(呼吸 少人数のスタッフであるが、入院患者数、 器内科、呼吸器外科、放射線診断 手術件数、気管支鏡件数などの目標をおおむ 科、放射線治療科、臨床検査科 ね達成することができた。 (病理) ) 8.平成27年の目標 毎日夕:呼吸器外科カンファレンス、回診 がん拠点病院として肺癌をはじめ縦隔腫 5.臨床研究のテーマ 瘍、胸膜腫瘍の手術件数のさらなる増加を目 (1)国立病院機構EBM推進のための大規模 臨床研究 指すとともに、臨床試験へのこれまで以上の 積極的参加を目標としています。 「喫煙者、非喫煙者の肺癌病因に関す る分子疫学的研究」 (JME試験) (2)胸部薄切CT所見に基づく肺野型早期肺 癌に対する縮小手術の第Ⅱ相試験 (WJOG4507L) (3)化学療法未施行ⅢB/Ⅳ期・術後再発肺 扁平上皮癌に対するネダプラチン+ドセ タキセル併用療法とシスプラチン+ドセ タキセル併用療法の無作為化比較第Ⅲ相 臨床試験(WJOG5208L) (4)Ⅱ-ⅢA期非小細胞肺癌完全切除患者を 対象としたαGalCel-pulsed樹状細胞療法 のランダム化第Ⅱ相試験(NHO指定研究) 6.教育方針 研修医、専修医の教育に当たっては、医師 −38− 診 療 業 務 乳腺外科 で広くそのコーディネートを担当 *カンファレンスで、合議 *初期薬物療法前のセンチネルリンパ節生検 による腋窩診断 *乳房人工物(Bag)再建認定施設 *医師主導臨床試験や開発治験、高度先進医 療、国際共同試験への参加、Translational research 乳腺外科科長 増田 慎三 1.診療スタッフ 4.診療実績 *増田慎三(平成5年卒)【乳腺外科科長・ (1)手術 がん療法研究開発室室員・外来化学療法室 乳腺悪性腫瘍190(乳房温存手術102、乳 副室長・大阪大学大学院乳腺内分泌外科 臨 房切除術/皮下乳腺全摘術88)、乳腺良性腫 床教授】日本乳癌学会(認定医、専門医、指 瘍2 4、その他7 4 導医、評議員) 、日本乳癌検診学会(評議員)、 (2)外来診療 ASCO、ESMO、JBCRG理事、マンモグラフ ① ィ併用検診精度管理中央委員会教育研修委員 診断:超音波検査、穿刺吸引細胞診、 針生検、吸引型組織生検 会 (読影委員)、日本乳腺甲状腺超音波診断 ② 薬物療法 会議(幹事) ③ *水谷麻紀子(平成15年卒)【乳腺外科医師】 後2 0年に延長) 日本乳癌学会(認定医、専門医)、日本がん 治療認定医機構(がん治療認定医) 長期follow-up(ホルモン陽性乳癌は術 ④ セカンドオピニオン (3)カンファレンス *八十島宏行(平成15年卒)【乳腺外科医師】 ① 日本乳癌学会(認定医、専門医) 総合カンファレンス(月曜日):初期 治療方針・術前術後治療方針・進行再発 *増田紘子(平成15年卒)【乳腺外科医師】 例の治療方針(第4 5 7回∼第5 0 0回) 日本乳癌学会(認定医、専門医) 、ASCO ② *苅田真子【乳腺外科非常勤医師】 病棟カンファレンス(毎週木曜日): 主に進行再発患者の治療・療養方針 乳腺診断、循環器超音波検査 ③ 病棟回診(毎週火・木曜日) 2.乳腺外科専修医 5.臨床研究のテーマ 田口裕紀子(平成2 2年卒) 1)乳癌疫学:NCD登録・乳癌登録・コホー 田中希世(平成2 3年卒) ト研究(KBCSG-TR1316) 2)新たな診断法の開発:機構遠藤班(検診 3.診療方針と特色 システム)、機構市原班(細胞診洗浄液中 *チーム医療体制 腫瘍マーカー測定) *診断から初期治療の決定、手術、薬物療法 3)高度先進医療:中間リスク以上のER陽性 や放射線療法、経過観察、再発乳癌の治療ま −39− 乳癌に対する術後TS-1療法(POTENT)、 閉経後ER陽性乳癌に対する術前ホルモン療 法へのゾレドロン酸療法 4)医師主導治験:トリプルネガティブ乳癌に 対するOlaparib併用療法 (Phase1/2)、 HER2陽性乳癌における術前Lapatinib併用 療法(JBCRG-16、Neo-LaTH)、HER2陽 性乳癌におけるペルツズマブとトラスツズ マブ エムタンシンを用いた術前療法の検討 (ランダム化 第Ⅱ相試験)(JBCRG-20、 Neo-Peaks) 5)開発治験:新規薬剤(CDK4/6阻害剤、 PARP阻害剤など) 6)臨床試験・臨床研究:JCOG1204、JCOG 1 0 1 7、JBCRG/KBCSG-TR各種試験 7)乳癌学会学術班研究:山下班(晩期再発) 8)学術活動(国内・Global多数) 6.教育方針 日本乳癌学会専門医修練プログラムに則 り、その基礎知識と技術の修練、EBM/NBM の適応を、常に熟考し、正しく伝える能力を 鍛えています。標準治療に満足することなく、 常に、思考・技術の上達のために、国内外の key opinion leaderとの討議の経験から、新た な臨床試験・臨床研究創造の機会を整えてい ます。 7.2015年の目標 乳がん検診推進と同時に、検診施設や地域 医療施設との連携を深め、乳癌死ゼロをめざ す努力を継続します。標準治療の均霑化と同 時に地域関連施設との連携で当院の治験・臨 床試験推進施設としての役割をさらに強化し ていきたい。これまでの成果を論文という形 にして発信したい。 (文責 増田慎三) −40−