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「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)
ファンドニュース 「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表を受けた、 ジュニアNISA等を利用する取引の勧誘に係る留意事項について 2015 年 11 月 はじめに 金融庁は、2015 年 10 月 30 日に「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)(以下、「監督指 針改正案」といいます。)を公表しました。 「監督指針改正案」が公表された背景として、2016 年 4 月より導入される未成年者向けの少額投資非課税枠制度(以 下、「ジュニア NISA」といいます。)に関する 2015 年度税制改正があります。この「監督指針改正案」では、投資の裾野 拡大・経済成長の資金の確保を図るためというジュニア NISA の制度設計・趣旨に則り、ジュニア NISA が適切に利用さ れるために、ジュニア NISA を利用する取引の勧誘に関し、監督上の留意事項を明らかにしています。また、2016 年 1 月より少額投資非課税制度(以下、「NISA」といいます。)の年間投資上限額が従来の 100 万円から 120 万円に引き上 げられるため、所要の改正が行われています。 今回のファンドニュースでは、金融庁から公表された「監督指針改正案」のうち、「ジュニア NISA」および「NISA」を利 用する取引の勧誘に係る留意事項について解説します。 「監督指針改正案」の概要 (1) ジュニア NISA を利用する取引の勧誘に係る留意事項 ジュニア NISA に先立ち、日本の家計金融資産について自助努力に基づく資産形成を支援・促進することを目的と して 2014 年 1 月から NISA が導入されていますが、ジュニア NISA では未成年者の将来に向けた資産形成を目的と していることから、「監督指針改正案」に以下の制度設計・趣旨が盛り込まれています。 項目 制度設計・趣旨 ① 未成年者の投資の 裾野の拡大 ジュニア NISA の導入により、早期に証券投資に関心を持つきっかけを与えること、また、NISA が普及し、正しく利用されること、金融リテラシーの向上にも結びつくことによって、証券投資を通 じた資産形成に関する裾野が広がり、ひいては証券市場の活性化に繋がることが期待される。 ② 未成年者の適切な 口座管理 未成年者に代わりその親権者等が、ジュニア NISA 口座を利用し、非課税メリットを享受するとい ったことのないよう、口座開設者が3月末時点で 18 歳に到達する年までは、払出しを行わないこ とを前提として非課税を認めており、金融機関の実務においても、適切な管理が求められる。 ③ 未成年者の中長期 的な資産形成に資 する金融商品等の 提供 ジュニア NISA は、その制度趣旨や、年間 80 万円を上限とする投資について、投資した有 価証券を保有し続ける限り、その収益については最大5年間は非課税となること、基準年ま では払出しを行わないことを前提としていること等から、顧客の中長期的な資産形成を支援 するというジュニア NISA の制度趣旨に沿った、顧客が税制上のメリットを享受しやすい金融 商品等の提供が望まれる。 こうした点を踏まえて、「監督指針改正案」では、ジュニア NISA の制度設計・趣旨に則り適切に利用されるよう、ジュ ニア NISA の口座を利用する取引の勧誘に関し、「NISA 及びジュニア NISA の口座開設及び勧誘並びに販売時等に おける留意事項について(ガイドライン)」(NISA 推進・連絡協議会)を踏まえつつ、以下のような点に留意して監督す るものとしています。 ① 顧客に対する説明態勢の整備 i) 顧客の金融リテラシー向上への取り組み 投資指図を行う親権者等に加え、未成年者である口座開設者本人についても、成人時には NISA 口座を保 有し、金融商品の運用指図を行うこととなることや、若年層に投資の裾野を拡大するといった制度趣旨を踏まえ、 単に法令上の適合性原則を遵守することだけではなく、顧客の金融(投資)リテラシー向上を図り、資産形成に 取り組んでもらうことが顧客・金融機関相互の利益につながるとの観点に立って、金融・経済の仕組み、マネー プランの重要性、中長期投資や分散投資の効果等の説明といった金融に関する基礎的な情報を、口座開設者 本人の年齢等に応じて段階的に提供するよう努めているか。 (NISA を利用する取引の勧誘に係る留意事項との相違点) NISA を利用する取引の勧誘に係る留意事項においても同様に顧客の金融リテラシー向上への取り組み の項目が設けられています。ただし、今回公表された「監督指針改正案」では、ジュニア NISA の対象が未成 年者であるため、未成年者の金融リテラシーの向上を主目的としている点で NISA と異なります。 ii) ジュニア NISA 口座の利用に関する説明 ジュニア NISA 口座開設の勧誘・申込みの受付時や口座開設後に、以下の内容等について、必要に応じて、 顧客に誤解を与えることのないよう正確に、分かりやすく説明しているか。 a ジュニア NISA 口座については、基準年まで払出しを行わないことを前提に非課税が認められており、基 準年までの間に、災害等やむを得ない事情について税務署による確認を受けた場合を除き、払出しを行 った場合、当該口座において過去に生じた利益に対して課税されること。 b ジュニア NISA 口座については、通常の証券口座(特定口座等)と異なり、金融機関を跨った複数開設が認 められず、一人一口座(一金融機関)のみ開設が認められること、及び口座廃止した後でなければ口座開 設金融機関を変更することができないこと(基準年前に口座廃止をした場合は、やむを得ない場合を除き過 去に生じた利益について課税されることを含む。)。なお、顧客が予め希望している金融商品を購入できな いことのないよう、この説明と併せて、自社がジュニア NISA 口座において取り扱っている金融商品の種類 (上場株式、上場投資信託、不動産投資信託、公募株式投資信託など)についても説明しておく必要があ る。 c 未成年者の口座であることから、親権者等が代理で投資判断を行うことが一般的であると考えられるが、ジ ュニア NISA 口座において運用できる資金は厳に口座開設者自身の資金に限られ、親権者等の資金を運 用することは認められないこと(親権者等の資金を運用していた場合には、課税上の問題が生じること。)。 d ジュニア NISA 口座では、年間 80 万円まで、非課税で有価証券の買付けを行うことができ、ジュニア NISA 口座で保有している有価証券を一度売却するとその非課税枠の再利用ができないこと、及び払出し制限 が課されるなど基準年以降に向けての中長期投資のための制度であること(そのため、短期間での売買 (乗換え)を前提とした商品には適さないこと。)。 e 非課税となる投資枠の残額を翌年以降に繰り越すことはできないこと。 f ジュニア NISA 口座の損失について、特定口座や一般口座で保有する他の有価証券の売買益や配当金 との損益通算ができず、当該損失の繰越控除もできないこと(なお、課税未成年者口座については、この 限りではない。)。 g 投資信託における分配金のうち元本払戻金(特別分配金)はそもそも非課税であり、ジュニア NISA におい ては制度上のメリットを享受できないこと。また、ジュニア NISA においては、元本払戻金(特別分配金)を受 けること、さらに、その再投資を行うことに合理的な意味がないこと(ジュニア NISA には払出し制限が課さ れているため、分配金をジュニア NISA の枠外で受け取ることができない。また、分配金再投資を行う場合 には、年間投資枠が費消される。)。 (NISA を利用する取引の勧誘に係る留意事項との相違点) ジュニア NISA と NISA では制度設計上、①年間投資可能額、②口座からの払出の可否、③金融機関等 の変更の可否、④親権者等による口座の運用・管理という点で異なります。そのため、NISA 口座の利用に関 する説明と共通する部分に加えて、これらの点がジュニア NISA 口座の利用に関する説明における留意事 項として言及されています。 ② 制度設計・趣旨を踏まえた金融商品等の提供 ジュニア NISA を利用する顧客に対して、たとえば、一定期間に分割して投資することにより時間的な分散投資 効果が得られる定額積立サービスの提供や、中長期にわたる安定的な資産形成に資するような金融商品を中心と した商品提供を行うなど、ジュニアNISAの制度設計・趣旨を踏まえた金融商品等の提供を行っているか。 (NISA を利用する取引の勧誘に係る留意事項との相違点) NISA を導入した趣旨として家計の中長期的な資産形成を後押しすることがあり、ジュニア NISA においても同 様に若年層の将来に向けた資産形成を後押しすることが導入趣旨としてあります。したがって、制度設計・趣旨 を踏まえた金融商品等の提供における留意事項においてジュニア NISA および NISA の間でほとんど相違点は ありません。 ③ 適切な口座管理 未成年者向けの非課税口座が、親権者等によって仮名口座として利用されるといったことのないよう、特に留意 する必要がある。こうした観点から、口座開設者の年齢等に応じて取引残高報告書等を口座開設者本人宛に送 付することや、口座開設時や払出し時に、厳にジュニア NISA 口座の資金が口座開設者本人の資金であり、本人 のために利用される旨の確認を行うことといった、適切な口座管理がなされているか。 (NISA を利用する取引の勧誘に係る留意事項との相違点) ジュニア NISA は NISA と異なり、口座開設者は未成年者であるため、原則として口座開設の手続き等は口座 開設者本人の法定代理人が代理して行うことが想定されています。当該法定代理人がジュニア NISA 口座を仮 名口座として利用することを防ぐような適切な口座管理が金融機関等に求められるため、ジュニア NISA のみ適 切な口座管理に関する留意事項が言及されています。 なお、上記の留意事項のうち、第一種金融商品取引業の留意事項として①から③までが、第二種金融商品取 引業の留意事項として①および③が「監督指針改正案」に追加されています。 (2) NISA を利用する取引の勧誘に係る留意事項 ① 2015 年度税制改正に伴い、2016 年 1 月より NISA の年間投資上限額が従来の 100 万円から 120 万円に引き 上げられるため、「監督指針改正案」では当該税制改正の内容が反映されています。 ② ジュニア NISA と同様に、2015 年 10 月に NISA 推進・連絡協議会より、「NISA 及びジュニア NISA の口座開設 及び勧誘並びに販売時等における留意事項について(ガイドライン)」が公表されたことに伴い、「監督指針改 正案」では金融商品取引業者等については当該ガイドラインを踏まえつつ、監督する点が追加されています。 ③ NISA では、非課税投資枠である 120 万円(2015 年は 100 万円)の範囲で購入した上場株式等から生じる配当 所得および譲渡所得等が非課税とされています。しかし、株式累積投資の配当金や分配金再投資型の公募株 式投資信託の収益分配金の支払を受けた部分については上記の非課税投資枠を利用することため、当該内 容が、「監督指針改正案」では「顧客に対する説明態勢の整備」の「NISA に基づく非課税口座の利用に関する 説明」に追加されています。 おわりに 今回の「監督指針改正案」については、2015年11月30日まで意見の募集を行っています。また、NISA推進・連絡協議 会が2015年10月に公表した「NISA 及びジュニアNISA の口座開設及び勧誘並びに販売時等における留意事項につい て(ガイドライン)」にNISAおよびジュニアNISAの主な制度上の留意事項が取りまとめられています。 なお、内容にご質問等ございましたら、以下のお問い合わせフォームからご連絡いただければと思います。 文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添えます。 PwCあらた監査法人 第3金融部(資産運用) マネージャー 溝 口 健 太 PwCあらた監査法人 第3金融部(資産運用) お問い合わせフォーム 本冊子は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナル からのアドバイスを受けることなく、本冊子の情報を基に判断し行動されないようお願いします。本冊子に含まれる情報は正確性または完全性を、 (明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するものではありません。また、本冊子に含まれる情報に基づき、意思決定し何らかの行動を起こされ たり、起こされなかったことによって発生した結果について、PwCあらた監査法人、およびメンバーファーム、職員、代理人は、法律によって認められ る範囲においていかなる賠償責任、責任、義務も負いません。 © 2015 PricewaterhouseCoopers Aarata. 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