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量子力学・固体の性質の復習 (4/13)
物性物理のすすめ • 川口由紀 • 伊東裕 講義内容 物性物理の概論 1 固体の物性物理の話 (前半の話題) 結晶中の電子・輸送現象・磁性 など 2 有機物質など 成績評価: レポート(100%) レポート課題は講義中に提示 下記からもダウンロード可 http://www.rover.nuap.nagoyau.ac.jp/kawaguchi/lecture.html 参考書: 物性物理 家泰弘 産業図書 固体物理学 キッテル 丸善 物性物理とは? • 古くは固体電子物性 -金属・半導体・絶縁体・超伝導- • 液体やソフトマターまで含めて condensed matter physics (凝縮系の物理) • 1023個の粒子の集団運動 • 量子統計力学により記述 予定 (川口担当分) (1)4月13日 (2)4月20日 (3)4月27日 (4)5月11日 (5)5月18日 (6)5月25日 (7)6月1日 量子力学・固体の性質の復習 自由電子モデル 結晶中の電子 半導体・輸送現象 金属絶縁体転移 磁性の基礎 物性におけるトポロジー 今日(4/13)の内容 • • • • • 原子の電子状態 化学結合 固体の凝縮機構 結晶格子の周期構造 逆格子とブルリアンゾーン 原子の電子状態 • クーロンポテンシャル シュレディンガー方程式 球対称ポテンシャル: 3つの量子数で特徴付けられる n 主量子数 (n=1,2,…) l 方位量子数 (l=0,1,2,…,n-1, s-p-d-f-軌道) m 磁気量子数 (m=-l,-l+1,…..,l) 固有エネルギー 軌道の分布 :確率振幅 https://en.wikipedia.org/wiki/Atomic_orbital 水素原子の最低エネルギー状態の束縛エネルギー ボーア半径 ゼロ点エネルギー クーロンエネルギー • 電子の数が増えると、 エネルギーの低い準位から順番に収容される。 それぞれの状態(軌道)に収容される電子の数 はスピンの自由度も考えると s軌道に2個、p軌道に6個、d軌道に10個 電子の準位 4s 4p 4d 3s 3p 3d 2s 2p 1s 4f 実際は、 4f 4d 4p 3d 4s 3p 3s 電子間相互作用により s, p, dの縮退が解ける 2p 2s 1s 周期表 1s 1s 2s 2p 3d 3s 4s 3p 4p 4f https://ja.wikipedia.org/wiki/周期表 原子に属する電子の固有エネルギー状態 3s, 3p 閉殻構造 2s, 2p 1s F (Z=9) (1s)2(2s)2(2p)5 Ne (Z=10) (1s)2(2s)2(2p)6 希ガス Na (Z=11) (1s)2(2s)2(2p)6(3s)1 • 物性物理で大事になる性質の多くは、電 子によって占有されている軌道のうち最外 殻の軌道によって決まっている。 • この最外殻の電子は価電子と呼ばれてい る。 • 価電子のエネルギー準位は大体真空の準 位から数eVの範囲にある。 • 原子核が作るクーロンポテンシャルは内殻 を占有する電子によってかなりの程度まで 遮蔽されるため、最外殻の電子が感じるポ テンシャルはかなり弱くなる。 化学結合 化学結合 A B 結合軌道 反結合軌道 結合状態にはスピン↑↓の2個の電子が収容される。 水素原子2個が結合して水素分子が形成されるのは、 このエネルギー利得による。このような結合は2つの電子が 共有することによっているので共有結合と呼ばれる。 固体の凝集機構 固体の結晶構造 構成原子間の 相互作用で決まる 単純立方格子(sc) 最隣接原子数 6 体心立方格子(bcc) 面心立方格子(fcc) 最接原子数 8 最隣接原子数 12 六方最密格子(hcp) 最隣接原子数 12 https://ja.wikipedia.org/wiki/結晶構造 https://ja.wikipedia.org/wiki/六方最密充填構造 最密充填構造(剛体球) https://ja.wikipedia.org/wiki/六方最密充填構造 ファンデアワールス結晶 剛体芯斥力とファンデアワールス引力を合わせたポテンシャル 剛体球 ポテンシャル レナード・ジョーンズ型 ポテンシャル Ne Ar Kr Xe(希ガス)の固体はfcc構造をとる ファンデアワールス結合: 凝集力が弱い 沸点・融点が低い 分子性気体 家泰弘『物性物理』(産業図書) イオン結晶 NaClのようにI族のアルカリ金属とVII族のハロゲンと からなるアルカリハライド(代表例) Na (1s)2(2s)2(2p)6(3s)1 Cl (1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)5 Na+ (1s)2(2s)2(2p)6 Cl- (1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6 NaCl型 クーロン相互作用 CsCl型 https://ja.wikipedia.org/wiki/塩化ナトリウム https://ja.wikipedia.org/wiki/塩化セシウム 陽イオン 陰イオン https://ja.wikipedia.org/wiki/周期表 IV属 https://ja.wikipedia.org/wiki/周期表 共有結合結晶 • • • • IV族元素(C,Si,Ge)の固体 ダイヤモンドの例 孤立した炭素原子の電子配置 (2s)2(2p)2 分子や固体中では(2s)1(2p)3という電子配置をとっ て共有結合を作るほうがエネルギー的に安定。 • sp3混成軌道(4種の軌道) CH4 共有結合結晶の例 ダイヤモンド 赤だけみると面心立方 青は赤の格子を平行移動させた 位置で面心立方を組む https://ja.wikipedia.org/wiki/ダイヤモンド IV属 https://ja.wikipedia.org/wiki/周期表 金属結晶 • Naなどのアルカリ金属の凝集機構 • 最外殻に1個の電子 → Na+イオン+伝導電子 • 一様に広がった負電荷の系(負電荷の海)にNa+ イオンが埋め込まれたときの系のエネルギーを 計算する必要がある。 • 陽イオンを単なる点電荷と見なすと格子定数が 正しく評価できない。 結晶格子の周期構造 結晶:周期的に原子が並んだ固体 格子点: n, m: 整数 基本胞:a, bで張られる平行四辺形 単位胞(unit cell) : 格子の繰り返し周期の単位 ウィグナーザイツセル 格子点と格子点を結ぶ線分の垂直2等分面で囲まれる区域 家泰弘『物性物理』(産業図書) ブラベー格子 格子構造の点群による分類 2次元のブラベー格子は5種類 家泰弘『物性物理』(産業図書) 結晶の方位と面 方向 [h,k,l] 面 (h,k,l) 家泰弘『物性物理』(産業図書) 逆格子とブルリアンゾーン 逆格子 • 波数kの波 • 格子点 • 波数を では と平行移動 →波数空間では の周期性 逆格子 • 逆格子の単位胞:ブルリアンゾーン 逆格子ベクトルの公式 biの計算 - 単純立方格子 基本格子ベクトル 逆格子ベクトル に垂直 同様に、 単純立方格子の逆格子も単純立方格子 直交しない格子のai, bi - 六方格子 基本格子ベクトル 逆格子ベクトル 同様に、 に垂直 ブリルアンゾーンの例 実空間のウィグナーザイツセルを構成するのと同様の方 法(格子点と格子点を結ぶ線分の垂直2等分面)によって 逆格子の基本胞を構成したもの (第一ブリルアンゾーン) 家泰弘『物性物理』(産業図書)