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(7)黄色ブドウ球菌による食中毒
(7)黄色ブドウ球菌による食中毒 黄色ブドウ球菌は切り傷、にきび、喉や鼻の中、皮膚、毛髪、水虫等に常在しており、 健康な人でも保菌しています。 この菌は食品中で増える時に毒素(※エンテロトキシンといいます)をつくり、これが 人に危害を及ぼします。菌自体は熱に弱いのですが、毒素は、100℃、30 分の加熱でも分 解されません。菌は 28~30℃で大量に増え、数時間で毒素を産生します。 この菌は 7~46℃でも増殖は可能です。また、酸素の有無に関わらず増殖可能で、さら に、多少の塩分があっても毒素をつくります。 《重要》加熱すれば菌は死滅しますが「毒素が産生されてから加熱しても、毒素は分解 されず残り、中毒を起こします。 」 「原因食品」 手指で食品を汚染することが多いため、あらゆる食品が原因食品となる可能性があります。 特に、おにぎりが多く、弁当、和菓子、シュークリームなども原因食品になってます。 「防止方法」 ① 手指・器具の洗浄・消毒を十分に行う。(細菌を付けない。やっつける) ② 衛生的な帽子・マスク・手袋を着用し、調理する。(細菌を付けない) ③ 手指などに切り傷や化膿巣のある人は、食品に直接触れたりしない。(細菌を付けない) ④ 食品は 10℃以下で保存する。 (細菌を増やさない) こんな失敗 【給食の煎り卵で黄色ブドウ球菌食中毒に】 ○2月中旬、小学校で給食を食べた児童、教職員 318 名のうち 181 名が、食後 1 時間半から 翌朝にかけて嘔気、嘔吐、腹痛等の症状を呈する食中毒が発生しました。 ○調査の結果、患者便や給食の三色弁当の煎り卵から※エンテロトキシンA型を検出し、黄 色ブドウ球菌による食中毒とわかりました。 ○煎り卵は前日午後に調理され、室温で放冷後冷蔵庫に保管。次に、当日の朝、早い段階で 室温に放置し、盛付けたものでした。 ○調理従事者の中には、手指に手荒れのある人、手洗いが不十分な人がいました。 ○原因として、次のことが考えられました。 ①前日の調理時に食品を汚染し室温で放置したため、煎り卵に付いた黄色ブドウ球菌が 増殖した。 ②当日の盛付け時に食品を汚染し、調理室内に比較的長く放置したため、黄色ブドウ球 菌が大量に増殖し、毒素を産生した。 39 黄色ブドウ球菌の事例 炊飯器 炊飯器でご飯を炊くと 加熱によって細菌は死滅します。 もちろん、黄色ブドウ球菌はいません。 加熱後の取扱いには、細心の注 意を払うことが重要です。 手や器具が汚染されていると 加熱後のご飯を、 黄色ブドウ球菌で汚 ① 染してしまいます。 問題はここ 手に切り傷、化膿巣のある場合は、最も 危険です。 ② 問題はここ そのまま 室温に 長時間保存すると 黄色ブドウ球菌が大量に増え ると、毒素 をつくります。 喫食 食中毒発生 ③ 問題はここ 再加熱・殺菌しても 加熱すると、黄色ブドウ球菌は死滅 しますが、毒素 喫食 は壊れません。 食中毒発生 こうすれば防げた ① 手指・器具の洗浄・消毒を十分に行う。(細菌をつけない。やっつける) ② 衛生的な帽子・マスク・手袋を着用し、調理する。(細菌をつけない) ③ 手指などに切り傷や化膿巣のある人は、食品に直接触れない。(細菌をつけない) ④ 室温に長く保管しない。食品は 10℃以下で保存する。(細菌を増やさない) 40 (8)ウェルシュ菌による食中毒 ウェルシュ菌は、人や動物の腸管、土壌、水中など自然界に広く分布し、ボツリヌス菌 と同じ嫌気性菌(酸素を嫌う菌)です。食品では、食肉の汚染が高いようです。 43~47℃でよく発育します。50℃の高温でも発育するものがいます。 また、この菌は芽胞をつくり、芽胞は 100℃で4時間の加熱でも死滅しません。 (芽胞: 細菌がつくる球状の胞子のようなもの。 ) 食品を大釜で大量に加熱調理する場合は、 ①加熱すると細菌は死滅します。しかし、ウェルシュ菌の芽胞は生き残ります。 ②大釜の中心部は酸素のない状態で、ウェルシュ菌には好条件となります。大釜の食 品が発育温度まで下がると、芽胞が発芽してウェルシュ菌が急激に増えます。 ③ウェルシュ菌の増えた食品を食べると、小腸内で更に増え菌が芽胞をつくります。 この時に毒素をつくり、毒素が下痢などの症状を起こします。 《重要》ウェルシュ菌の場合、 「加熱しても安心はできません。 」 「原因食品」 「給食病」の異名のとおり、大量に調理したカレー、シチュー、麺つゆなどで、長時間室温 に保管されたものが原因食品になります。 「防止方法」 ① 長時間室温に保管しない。前日調理はしない。早く食べる。 ② 一度に大量に加熱調理した場合は小分けして、急速冷却する。 予防策はこの2つです。いずれも、ウェルシュ菌が増えるのを防ぐための対策です。 こんな失敗 【仕出し弁当でウェルシュ菌食中毒に】 ○A店の昼食弁当を食べた 5 事業所 86 人が、夕方から翌日にかけて下痢、腹痛などの症 状を呈する食中毒が発生しました。 ○調査の結果、患者便や弁当の煮物からウェルシュ菌が高率に検出され、煮物が原因の 食中毒であることがわかりました。 ○煮物は、前日に大釜で調理し、釜でそのまま一晩放置されていました。この間にウェ ルシュ菌が増えたものでした。 ① 前日、大釜の調理済み煮物の中心部は、酸素がない状態。 ② 冬場でも、調理場内は比較的長時間温かい状態。 大釜の煮物は、ウェルシュ菌が増えるのに適した状態でした。 41 ウェルシュ菌の事例 大 釜 材料を仕込んだ大釜の中の状態です。 加熱していなので、様々な種類の細菌が います。ごく自然な状態です。 このように、人に有益なも の、有害なもの、普段は何も影響しないもの など、様々な細菌がいます。 ウェルシュ菌の芽胞 ウェルシュ菌 加熱調理すると 加熱によって細菌は死滅します。しかし、 ウェルシュ菌の芽胞は生き残ります。 加熱により、大釜の食品中心部は酸素の ない状態です。ウェルシュ菌には好条件。 ウェルシュ菌の芽胞 問題はここ そのまま 室温に 長時間保存すると 2 時間以上(セレウス菌と同様) 芽胞が発芽して ⇒ ウェル シュ菌になります。 さらに、ウェルシュ菌が食中毒を 起こす菌量まで増えます。 喫食 食中毒発生 こうすれば防げた ① 加熱調理後、なるべく早く食べる。(細菌を増やさない) ② 室温に長く保管しない。2 時間以上放置しない。(細菌を増やさない) ③ やむを得ず保管する時は、小分けして急冷する。(酸素を通りやすくする) 42