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「キッズキャンパス2009」−出会いと展開−

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「キッズキャンパス2009」−出会いと展開−
「キッズキャンパス2009」−出会いと展開−
報告:松尾真由美
"The meet ing of t wo persona lit ies is like t he contact of
two chemical substances: if there is any reaction, both are
transformed." Carl Jung
[制作プログラム] 会期:2009年 8 月 16 日(日)
会場:広島市立大学芸術学部
[鑑賞プログラム] 会期:2009年 8 月 1 日(土)
会場:広島市現代美術館
1.「キッズキャンパス」
対象:3歳〜小学校2年生
キッズキャンパスは、広島日野自動車株式会社の助成を受け、
広島市立大学芸術学部の「全ての世代に亘る生涯学習への取り組
「キッズキャンパス2009」プログラム
み」の一環として、2005年にスタートした幼児・児童向け美術
《うごきをかこう・うごいてかこう》
講座である。
キッズキャンパス2008プログラム1
以後、毎年開催しているが、主な活動は、夏休みの幼児・児童
日時:2009年 8 月 16 日(日)10:00〜12:30
向け講座と、冬の展覧会とアートワークショプの開催である。
担当:油絵専攻助教・松尾真由美
夏の講座では、広島市立大学や周辺施設を会場に、広島市立大
参加者数:33名
学教員と学生が市内の3歳〜小学2年生の幼児・児童を対象に絵画
材料・準備物:パネル:1.8m×8.1m× 2枚(合板18枚)
や造形プログラムを開催し、冬の展覧会では、こども達の作品展と
画材:アクリル絵具、スクールガッシュ、色、鉛筆、
学生主体のアートワークショップを広島市内会場で開催している。
クレパス、クレヨン、ローラー、筆、他
2.「キッズキャンパス2009」
こども達がおもしろさを見つけ、楽しみ、創造できる環境、そ
「はしって、とんで。たのしくてじっとしていられない。体の中から
あふれる力をかいてみよう。」
れはどんな環境だろう。
「キッズキャンパス2009」の企画を始め
る時、きっかけさえ用意すれば、後は自ら発見し、進んで取り組
導入として、アメリカ人作家、ジャクソン・ポロックの作品と制
み創造する、そんな環境作りを念頭に置いた。作品制作の手順を
作風景のスライド、
「ポロックさんものがたり」を見せ、アクション
マニュアル化し、型通りのことを要求することは、創造的環境では
ペインティングについて話をした。
ない。彼らの好奇心を刺激し、大人も子供も面白いと感じること
次に、二つのグループに分かれて油絵専攻アトリエに入り、会場
を同一空間で展開するには、1)プロジェクトのテーマを設ける、
の床に敷いた模造紙(約 3m×5.5m)の上を素足でゆっくり歩くよ
2)テーマに即した造形作品や実験作品を展示する、3)安全で
うにこども達に指示した。
「とまれ」の号令と共に、こども達は歩
伸び伸びと制作できる環境を作る、ことが3本の柱になると考え
いているポーズのまま紙の上にころりと寝転ぶ、そして、保護者に
た。作品に接し、鑑賞することで得る情報のインプットが、こども
こどもの体の輪郭をパステルで紙に写してもらった。
「歩いて」「止
にとって制作する大きな動機付けになると考えた。もちろんプロジ
まって」「ころり」この動作を3回ほど繰り返し、体の輪郭を紙に
ェクトを運営する学生スタッフにとっても、動機付けは最も重要な
写した。すると、ずれた輪郭が歩いているように見える。自分の体
事で、与えられただけの仕事より、まかされた仕事の方が数倍面白
の輪郭、ずれて重なる線、重なった所に塗った色を見ながら、動
く、やる気も高まり、責任感も強まるのである。前年度の「キッズ
きを絵で残せることをこども達は体験した。
キャンパス2008」では基本に立ち返り、プロジェクトの骨組み
その後、絵具でパネルに描く本番に挑んだ。パネルは予め白色
を検証したが、今年度は、学部外や学外に協力を求め、プロジェ
ジェッソを塗った合板で、9枚をアトリエの床に並べると、幅8.1m
クトの展開を試みた。結果、広島市現代美術館の学芸員と広島市
の大画面になる。パネルの上でこども達に一番好きな動きのポーズ
立大学情報学部の教員の協力を得、鑑賞や映像という新しいプロ
を取ってもらい、保護者がパネルに輪郭を写す。形を白く残すため、
グラムが加わり、参考作品の展示が実現した。質、幅共に拡充し
輪郭内をマスキングシートでカバーした上で、こども達はアクリル
た2009年は、
「キッズキャンパス」にとって重要な転換の年にな
絵具で画面に彩色していった。
ったと思う。以下、
「キッズキャンパス2009」の内容を報告する。
最初、絵の具をはじかせたり、スプレーを使ったりしながら、薄
い色から慎重に作画していたが、次第に濃い絵具を大胆に使用し
ていった。画筆も、筆からローラー、刷毛へと大きくなり、それ
「キッズキャンパス2009」
に伴い裸足でパネルに乗り、手や足も駆使して、あっという間に大
テーマ「うごく」
作二枚を完成させた。
主催:広島市立大学芸術学部
絵具の乾燥後、親子一緒にマスキングシートを剥がすと、その下
協賛:広島日野自動車株式会社
から白い「うごき」のポーズが現れた。一枚一枚、シートが剥がさ
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れるごとに歓声が起き、こども達の体が次々に現れた。完成した
講座開催当日までに、担当教員と学生スタッフが、鉄板と鉄棒
作品は、多くの色で弾けるような背景に、こども達の体の動きがリ
で高さ約 2.5m のモビールを制作し、芸術学部エントランスに設置
ズミカルに配置された力強い絵画になった。 した。このモビールは鉄製の木が支柱になっている。アーム部分
大画面に挑むことはこどもにとって、とても面白いことだ。1.8m
は鉄棒で、枝のように大きく広がり、その枝先には学生スタッフが
×8.1m の巨大パネル二枚一杯に「うごき」の絵を描いたこのプロ
制作した段ボール製の動物が吊り下げられた。ゆったりと動く、大
グラムを通して、こども達は様々な描画方法で描くことや、グルー
きくて魅力的なこのモビールは、大学を訪れる親子を暖かく迎え、
プで制作する楽しさを体験できたと思う。
プログラムの説明や導入時も、視覚教材として大変効果的だった。
彫刻専攻アトリエ二室に25名の参加者とその保護者が分かれ
て入り、担当教員からプログラムの説明を受けた。モビールに必
要な鉄製の支柱とアームは事前に用意され、アームに吊るすモチー
フ作りがこのプログラムの目的だ。図鑑などを参考にしながら、親
子でそれぞれ好きな動物や昆虫など、モチーフ制作に取りかかっ
た。モチーフは段ボールに下絵を描き、段ボールカッターで切ると
ころから始まる。そして、アクリル絵具やクレヨンで彩色し、毛糸
でデコレーションして完成する。小学生は、段ボールカッターに挑
戦し、自ら段ボールを切っていたが、幼児の場合は、学生スタッフ
や保護者が協力していた。各自、色とりどりのモチーフが完成する
と、鉄の支柱にアームを乗せ、モチーフを取り付けていった。
図 1「うごきをかこう・うごいてかこう」制作風景
モビールは、親子で協力しないとすぐバランスが崩れてしまう。
動物、昆虫、家族の顔、幾何学形態など、思い思いのモチーフは、
個性豊かな造形物になり、大きいものから小さいものまで千差万
別だった。一つのモビールは、平均4、5個のモチーフで完成する。
こども達は、普段なら一人で何個も制作できないかもしれない、し
かし、保護者や学生スタッフに励まされ、多くの力作が完成した。
中には、へびの長い造形物を作り、会場の天井からつるしたこど
ももいた。自作のモチーフだけではモビールの絶妙なバランスを取
りにくい場合もあるので、大小様々のスチレンフォーム製の幾何学
形態が用意され、こども達は重量調整をする最後の仕上げにそれ
らを活用した。
完成したモビール作
図 2「うごきをかこう・うごいてかこう」制作風景
品は、個別に写真撮影
した後、大学中庭に展
示して全員で鑑賞した。
こども達はプログラム
《ゆらゆらモビール》
を通じて、固い段ボー
キッズキャンパス2008プログラム2
ルや柔らかい毛糸とい
日時:2009年 8 月 16 日(日)10:00〜12:30
う素材の違い、そして、
担当:彫刻専攻教授・伊東敏光
動く彫刻の面白さを体
受講者数:25名
験した。
材料・準備物:段ボール、アクリル絵の具、クレヨン、毛糸、
鉄製の支柱とバランス棒 他
「ゆらゆら。ふわふわ。くるり、くるり。くうきの中でおどっている
みたい。」
図 3 「ゆらゆらモビール」制作風景
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気強くコマ撮りした写真をつないでいった。
全員で力を合わせてダイナミックな一つの動きをしたり、一人一
人違う細かい動きをしたり、制作に慣れてくると、動きにもいろい
ろな工夫がでてきた。
最後に、こども達全員でコールしたタイトル「キッズキャンパス
2009」と、音楽:ネバーエンディングストーリーを映像に加え
て、2 分 22 秒の映像作品が完成した。浮遊感溢れる音楽に乗って、
こども達や学生、箱で造った造形物の動きが一体化した、楽しさ
溢れるファンタジックな映像になった。まるで、こども達が生きて
いる箱と遊んでいるようだ。完成した映像作品を閉会式で試写す
ると、他のプログラム参加者からも歓声と拍手が起こり大きな反響
があった。制作したこども達の達成感は大きかった事だろう。
図 4「ゆらゆらモビール」参考作品
《うごかないものがうごきだす・からだをつかってアニメーション》
キッズキャンパス2008プログラム 3
日時:2009年 8 月 16 日(日)10:00〜12:30
担当:メディア造形分野准教授・笠原浩
材料・準備物:彩色した段ボール箱200個(大、小)、アニメーシ
ョン制作ソフトウェア:クレイタウン、ビデオカメ
ラ 他
受講者数:22名
図 5「からだをつかってアニメーション」制作風景
「うごく。うごく!とんだり、およいだりもできるのかな!?アニメー
ションだとじゆうじざい。ふしぎ、たのしい。」
5色のネオカラーで彩色された大小200個の段ボール箱が事前
に用意され、会場となった立体工房では、それら200個の箱、ビ
デオカメラ、2台のプラズマテレビがこども達を迎えた。
好奇心で一杯のこども達とその保護者に、担当教員からアニメー
ションとは何か、なぜ二次元の絵が動くのか、アニメーションの仕
組みと論理が丁寧にわかりやすく説明された。
続いて、教員自ら箱を持ってコマ取り撮影を実演した。撮影し
た静止画像を、クレイタウンというアニメーション制作ソフトでつな
ぐとどう見えるのか試写された。こども達はどんどん動きの世界に
夢中になっていく。皆でどんなアニメーションを創ろうか、動きは
どうするか、学生とこども達が話し合い、試作していった。保護者
にも協力を得て箱を積み重ね、キリンや馬のような動物に見立てた
り、建物にしたり、街や風景のようにしたりした。また、箱の間を
魚のように泳いだり、床の上に座ったまま、箱に入ったまま、また
は寝たまま、すいすいと移動する。実際には起こりえない動きばか
りだ。箱製のキリンの首を動かし、撮影し、動かし、撮影し、根
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図 6「からだをつかってアニメーション」制作風景
《みて・はなして・みよう!》
キッズキャンパス2008プログラム 4
日時:2009年 8 月 1 日(土)14:00〜15:00
担当:広島市現代美術館学芸員・教育普及担当・山下樹里
広島市立大学芸術学部助教・松尾真由美
受講者数:23名
「なに?なぜ?知りたいことがいっぱい。さくひんとおもちゃとゲー
ム、どうちがうの?」
広島市現代美術館収蔵の岡本太郎氏の絵画や、特別展「ランナ
ーは走りつづける」で小沢剛氏の作品を鑑賞しながら、美術作品
についての理解を深め、同時に、洞察力や観察力を伸ばす試みを
図 7「みて・はなして・みよう」会場風景
行った。
美術館ホールに展示されていた岡本太郎氏の絵画「明日への神
話」は、原爆を主題とし、抽象的、かつ象徴的なモチーフが多く
描かれている。そのモチーフの一つ、魚のような形を取り上げ、こ
ども達に「何に見える?」と聞いた。続いて「この絵には何色があ
りますか?」「絵に描かれている人はどんな気持ちかな?」など質
問をしていくと、こども達は「さかな!」「あか、あお、しろ!」「か
なしいきもち」などと答えてくれた。始めは恥ずかしそうにしてい
たが、徐々に発言が増え、発話の声も大きくなった。
続く小沢剛氏の写真作品には、必ず同じ形象が写されていた。
その形は何なのか、作品の中に何個見つけられるかなど、こども
達に呼びかけた。声をかけると同時に、作品を目指して駆け出して
図 8「みて・はなして・みよう」会場風景
行く。
「一つ、二つ、三つ」、投げかけられた問いに答えるべくこど
も達は一生懸命だ。保護者がこどもを抱えて一緒に作品を観てい
る。話もしている。別の部屋では、作家の代表作の一つ、
「ベジタ
ブルウェポン」が展示されていた。作家は世界各地を訪問し、郷
キッズキャンパスお楽しみプログラム
《マジックロール》《ぶんぶんコマ》《きんぴら・きゃんぺら》
土料理の食材で兵器を象り、それら野菜兵器を抱える人物を撮影
日時:2009年8月16日(日)13:30〜14:30
した写真作品を制作している。担当学芸員が作家や作品について
担当:芸術学部学生
話してくれ、皆で作品の中にある野菜の名前を当てたり、家庭でよ
材料:上質紙、厚紙、凧糸、クレヨン、色鉛筆、パステル、はさみ 他
く食べる野菜やメニューなどについて話したりした。丁寧な解説を
聞き、質問に答えながら、こども達の頭はフル回転しているようで、
制作プログラムの午後は、プログラムごとの区別をなくし、誰も
その表情には、
「なぜ?」と「わかった!」が繰り返し現れ、とても
が気軽に、また自由に楽しめるプログラムを取り入れた。
「ぶんぶ
忙しそうだった。
んコマ」は、円形の厚紙に穴をあけ、たこ糸を通し、糸を引っ張
展示会場の最後には、小沢氏のワークショップ会場があり、ふ
ったり、緩めたりして厚紙を回転させるあそびである。保護者にも
とんが高く積み重ねられた頂上に、こどもの顔が描かれたポスト
なじみがあることだろう。
「きんぴら・きゃんぺら」は細く切った上
があった。このふとん山を見るなり、思考や疑問で一杯だったこど
質紙に切り込みを入れ、輪にして高くあげて手を離す。すると、空
も達は一気に解放されたようで、合図と同時にふとん山に駆け出し
中でくるくる回転しながら落下するシンプルながら楽しい遊具であ
た。こどもには面白いものが直感でわかるのだろう。作品を鑑賞
る。
「マジックロール」は、アニメーションプログラムに連携したも
しながら、こども達は一生懸命考え、感じていた。
「考える」と「感
ので、二つ折りの長い紙の、一枚目と二枚目に少しだけ異なる絵
じる」を交互にしていけば、もっといろいろな発見があるかもしれ
を描く。一枚目の紙を鉛筆などで巻いたり、伸ばしたりして、二枚
ない。
の異なる絵を繰り返し交互に見ることで、絵が動いているように見
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える造形あそびである。
今回、お楽しみプログラムの会場デザインは思い切って学生に一
体験コーナー
《おどる輪》
任した。学生達は、会場内の導線を考え、こども達のために低い
日時:2009年 8 月 16 日(日)13:30〜14:30
テーブルを探し、参加者数を想定し、必要な材料を準備した。任
担当:立体造形分野非常勤助教・和気琢哉
せると期待以上の仕事をしてくれる。野外に続く開放的な会場を
材料:竹ひご、アルミパイプ、てぐす、ブラックライト
選んだこともあり、たくさんの親子が伸び伸びと遊んでいた。指導
する学生達も自信に溢れ、会場は暖かく安心できる雰囲気があっ
学生 達と、
「うごくんギャラリー」について協議をしている時、
た。
一つのアイディアが浮かび、それが体験型作品へと発展した。空中
にゆらゆら浮かぶ輪がほしいと、竹ひごで試作品を制作し、輪を
支える天蚕糸をまとめて引っ張ると、竹ひごの輪が様々な形に変形
展示コーナー
《うごくんギャラリー》
することを担当教員が発見した。そこから数人のアイディアによる
改良を重ね、輪に蛍光塗料を塗り、ブラックライトの部屋でこの
日時:2009年 8 月 16 日(日)10:00〜15:00
輪を動かすと、残像が非常に美しいという結果に行き着いた。こう
担当:油絵専攻助教・松尾真由美
して、テーマにぴったりで美しい造形の体験コーナーが生まれた。
展示作品:
「ぱくぱくマウス」「Mechanical– 鯉」「ぽんぽん船」
「LED アート」「フォノグラムカード」「ころころつみき」
「ゆれる輪」「ちらちら」「からくりメリーゴーラウンド」
前述のとおり、鑑賞する、触れるなど、情報を取り込むインプッ
トの行為があってこそ、創造するというアウトプットの行為が起こる
と考えている。適切な質と量の情報が、好奇心を刺激し、創造性
を育成させることだろう。
そこで、
「うごく」をテーマにした造形作品を展示する「うごく
んギャラリー」を考案した。ギャラリーには、情報学部教員の協
力を得た展示物:手を叩くと動き出す、音に反応する電機作品や、
白や黒という色に反応して動く回路内蔵作品「ぱくぱくマウス」を
始め、時計の歯車を使用した魚のオブジェ作品「Mechanical– 鯉」、
図 10「おどる輪」
後に述べる、おどる輪の原型作品「うごく輪」、回転する遊具、積
み木、フォノグラムカードなどを展示した。メインプログラムの合
間や昼食休憩時間には、多くの親子がギャラリーを訪問し、これ
ら動く造形物を覗き込み、触り、試して楽しんでいた。
3.
《キッズキャンパス2009 展・わくわくアートワークショップ》
キッズキャンパス2009 プログラム 5
「メタモルフォシス−へんか」
会期:2010年1月23日(土)・24日(日)
会場:広島市まちづくり市民交流プラザ
開場時間:10:00〜18:00 入場無料
ワークショッププログラム:
プログラム A:
「ひもひもあそび」「カラフルつみき劇場」
定員:各10名
開催時間:10:00〜11:00、15:00〜16:00
プログラム B:
「スタンプでへ〜んしん」「その絵なんの絵?」「し
みこむ・ひろがるハンカチーフ」「ひみつおちばこうじょう」随時参
加可能
図 9「うごくんギャラリー」
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会場入場者数:195名(2日間)
夏のプログラムテーマに連動し、冬のテーマは「メタモルフォシ
4. まとめと今後の展開
ス−へんか」に決めた。学生スタッフとミーティングを重ね、ワー
2009年は、始めてプログラムにテーマを設け、広島市現代美
クショッププログラムを作成した。プログラムは大きく分けて二種
術館、本学情報学部との連携を持った年だった。テーマを設ける
類(A,B)、合計六種類用意した。プログラム A は当日予約して参
ことで活動の主旨や目標が明確になり、同じ目標に向かう楽しさと
加する一時間のもの、プログラム B は予約なし、随時参加可能な
一体感が学生スタッフや参加者の間に生まれた。
ものとした。対象も年齢幅を設けず、誰でも参加可能とした。こ
広島市現代美術館や情報学部との連携は、学部間や学外との壁
れにより、来場者にとってより多くの選択肢が生まれた。夏のキッ
を超え、プロジェクトの裾野を広げた。これは、今後のプロジェク
ズキャンパスでは、教員主体でプログラム運営したことに対し、冬
トの発展と安定において大きな意義を持つことだろう。
の活動では、発案から準備、指導まで学生主体で行った。
「キッズキャンパス」は、広島日野自動車株式会社の寛容な協力
プログラムは、木の枝や葉、木の実などの自然物を使用した造
と、参加教員や学生スタッフのこどもへの愛情と粘り強い努力によ
形「ひみつおちばこうじょう」、晒(綿布)に絵の具で染色をする造
って支えられている。プロジェクトの対象者は未来の日本を創るこ
形「しみこむ・ひろがるハンカチーフ」、スタンプや紙版画「スタン
ども達である。彼らには、小手先の面白さも専門用語も通用しない。
プでへ〜んしん」など、どれも工夫が凝らされていた。特に、一
そんなこどもに対して大人は一生懸命になれる。
時間かけて行うプログラム A の、
「カラフル積み木劇場」と「ひも
しかし、我々は、
「こどものために」ではなく、
「大人とこどもの
ひもあそび」は導入、展開、まとめと、何度も考察、試作し、当
ために」行動すれば良いと思う。遊びや実験に関して言えば、大
日まで改良を加えた優れたプログラムであり、学生スタッフの苦労
人が面白いと感じるものは、こどもにとっても面白いようだ。普段、
が伺えた。
不思議に感じ興味を抱くものを、創造という方法を通じて一緒に体
験していけば良いのではないか。1と1を足せば2になるという結
果のわかっていることを行うよりも、異質な物を足してどんな化学
反応が起きるか、皆で試して感じたこと、そして、共有する時間を
プロジェクトの成果とすれば良いと思う。
今後は、
「キッズキャンパス」に参加した学生とこども達の成長
をサポートできる環境作りができないかと考える。どんなに健康な
芽も、条件が揃わないと成長しない。どんな可能性も機会がない
と開花しない。アートが社会にできる事はたくさんあるはずだ。こ
ども達に残せること、それは、彼らの可能性を活かせる社会であ
る。今のこども達が大人になる時、次のこども達に何が残せるだろ
う。より良いものを未来につなげたいと考える大人とこどもを育成
図 11「キッズキャンパス 2009 展」会場風景
する。そんな環境作りが必要だと思う。
図 12「ひもひもあそび」
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