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地点別電源接続評価指標に関する検討 - 電気・情報系
6-110 平成 22 年電気学会全国大会 地点別電源接続評価指標に関する検討 鈴木 玄軌* (東北大学),岡田 健司 (東北大学・電力中央研究所) Study of locational generation connection evaluation index Genki Suzuki (Tohoku University), Kenji Okada (Tohoku University・CRIEPI) i 発電機の CO2 排出係数(kg・CO2/MWh)。 1.はじめに 競争環境下では,発電設備と流通設備の整合性のとれた なお、(4)式の想定故障 S におけるk送電線を流れる有効電 設備形成が難しくなることや想定外の電力託送の急増など, 複数の要因が複雑に関係し合い,送電系統における混雑が 力潮流は DC 法を用いて(6)式のように、(2)式の送電損失は (7)式のように求める。ただし、送電損失は、(7)式に示すよ 発生する危険が高まる。さらに、近年では地球温暖化防止 うに、 送電線の N-1 基準を満足した全送電線健全時(S=0) 送 の観点から、CO2 排出抑制も求められている。著者らは、 電線潮流(Fk(0)2)を用いて算出する。 これまでに発電機コスト最小とする需給バランスを求める 際に CO2 排出量制約を考慮し,シミュレーション分析を行 った結果、CO2 排出量制約により新たに送電混雑が発生す る危険性があることを示した。経済性・信頼性・環境性を 考慮した候補接続先を提示することは、今後、発電設備と 流通設備計画の不整合を是正し、実運用時での経済的損失 を抑制する点においても有益な情報となる。そこで、本研 究では、さらに送電損失を考慮した地点別供給コストを用 (6) 2 Lk rk Fk(0) (7) Ct(s)ki:想定故障 S 時のノードとブランチの接続状態を表す 転置行列、Y(s)B:想定故障 s 時のヤコビ行列、Z(s):想定故 障 S 時のインピーダンス行列を表す。a(s)ki:想定故障 S 時の 潮流分流係数、rk:k 送電線の抵抗分[p.u.]。 (2)~(5)式の制約条件を満足し(1)式の目的関数を最小と する系統並列電源の発電出力を求めるために、本研究では、 (8)式のラグランジェ関数を用いた。 いた新規電源接続評価の検討結果を報告する。 2.地点別電源接続評価指標の算出 <2・1>経済・信頼性・環境性を考慮した地点別供給コス トの算出 (s) Fk( s) YB( s)Ckit ( s) Z ( s) Pi aki Pi A( s ) Pi 本研究では、(1)式の目的関数(CT)を最小化 し、(2)~(5)式の制約条件を満足する系統並列電源の発電出 M i 1 j 1 N GUi ( gi g m 力(有効電力)を求めた。 N N Ci ( gi ) ( d j N CT Ci ( gi ) (ai gi2 bi gi ci ) K N j 1 i 1 Lk gi ) ai )x i 1 K 1 K N GLi ( g m i 1 (8) (1) d j Lk gi (2) CO2 (TCO2 {CO2 ( gi ) gi } gmin i gi gmax i (3) (s) Fk( s ) Fmax k (4) i 1 i 1 M K N j 1 k 1 i 1 i 1 (s) Tk ( Fm( s )a k x Fk( s ) ) s 1 k 1 N i 1 上式を用いて、以下のように発電機が接続する各ノードの 地点別供給コスト(LMCi)を求めることができる(1)。 N TCO2 CO2 gi gi ii n g i ) (5) LMCi N:系統に並列する発電機数,gi:i 発電機の発電出力(有効 電力)[MW],Ci(gi):i 発電機の出力 gi 時の燃料費[千円] , gmini・gmaxi:i 発電機の発電出力の上下限制約(MW),M:系 K L Ci ( gi ) ( k 1) GUi GLi gi gi j 1 gi K 1 K (s) Tk s 1 k 1 Fk( s ) gi (9) CO2 CO2 (Gi ) d: 統内の負荷需要数, j j 需要の負荷量(有効電力負荷)[MW], この地点別供給コストは、米国の一部の ISO (Independent Lk:k 送電線の送電損失(有効電力損失)[MW]、F(s)k:想定故 System Operator) の 卸 電 力 市 場 で 採 用 さ れ て い る LMP 障 S におけるk送電線を流れる有効電力潮流[MW],想定故 (Locational Marginal Price)を拡張したもので、従来の経済 障 S における k 送電線の運用容量制約値[MW],S:想定事 性・信頼性に加え、CO2 排出抑制等の環境性も考慮した短 故状態で,S=0 は全送電線が健全,S=1~NB は K 本ある送 期限界費用原理に基づく発電機の限界費用に相当する。 電線の内の 1 本で故障(1回線故障)が発生していることを <2・2>地点別電源接続評価指標 意味する。TCO2:系統全体の CO2 排出量(kg・CO2) ,CO2(gi): 電機接続ノードの地点別供給コストは、系統内に送電混雑 2010/3/17~19 東京 -191(第 6 分冊) (9)式で求めた、各発 ©2010 IEE Japan 6-110 平成 22 年電気学会全国大会 が無ければ、限界送電損失分( Lk gi )のみに依存し格差が 生じる。一方、系統内の需要分布と大きさにも関係するが、 CO2 排出制約の水準によっては、系統並列発電機の運転パ 10 27 (28) 26 (27) G10 ターンの変化(例えば、定格運転から部分負荷運転への変 9 28 化など)により、想定外の送電線で混雑が発生することも 予想される。このように環境制約下で、これまで想定して (30) L12 G1 G9 L11 G2 1 格差が生じる可能性がある。本研究では、地点別供給コス トの各構成要素の大きさ(特に送電混雑に関する項目)を、 11 13 15 16 比較することで、地点別電源接続評価指標として利用する。 (3) (6) (9) (12) L3 (5) 12 (4) L10 G6 (10) (11) 6 (25) (15) L5 (31) 19 21 22 (18) (20) (22) (16) 17 L2 G7 7 (13) 5 (14) 18 G5 14 L1 系統標準モデルの拡充系統モデルの内、EAST10 機-O/V 系 3 (8) (2) 本研究では、モデル系統として、図1に示す電気学会電力 (7) G3 (26) 4 (1) <3・ 1>モデル系統とシ ミュレーションケースの概 要 G8 G4 2 いなかった送電混雑の発生により、地点別供給コスト間に 3.シミュレーション結果の概要 8 (29) L7 (17) (23) (21) 20 23 (19) L4 25 24 (24) L6 L8 L9 (2) 図 1 モデル系統の構成 Fig.1. Configuration of a model system 統モデルを利用した(2)。なお、系統需要は、68,600MW とし て、EAST10 機-O/V 系統モデルの各負荷の比率を参考に、 Locational Supply Cost(Yen/kWh) 献(1)で用いた値を利用した。 <3・2>地点別電源接続評価指標に基づく電源接続 Locational Supply Cost(LMP) Locational Congestion cost 25 特性を利用した。さらに、各発電機の CO2 排出係数は、文 CO2 制約を、送電容量制約などを考慮しない無制約時の CO2 排 出量の 1%削減(1.67×107kg・CO2)として、N-1 送電故障を 考慮し需給バランスを求めた結果、送電線 9 の送電線故障 によって発生した送電線 9 の送電混雑を解消しするために、 各電源の出力調整が行われる。この時、地点別供給コスト の送電混雑に関する項目(ここでは地点別送電混雑コスト と称す)が大きな主要ノードの地点別供給コストの地点別 20 2 15 1.5 10 1 5 0.5 0 0 16 19 25 -5 送電混雑コストを図 2 に示す。 2.5 Locational Congestion Cost (Yen/kWh) 割り当てた。図1に示す発電機の諸特性は、文献(2)の諸 -0.5 Node 仮に、7000MW の LNG 火力を新たに系統に接続しようと 図 2 主要ノードの地点別供給コストの内訳 Fig.2. Details of locational supply cost of main nodes 考えた場合、図 2 に示すノード 16 に接続する。このノード 16 を接続先と判断した理由は、系統内のノード内で最も送 電混雑を解消する貢献度が高いからである。ノード 16 に接 選択することが可能である。しかし、接続先を選定する際 続した結果、CO2 排出量は、無制約時 CO2 排出量の 12.5% に予測出来なかった新たな送電混雑が発生する可能性があ まで削減することができるが、総発電コストは 2.08×107 円 ることが示された。今回提案した接続評価指標は、系統側 増加した。 から見た送電混雑解消のノード別貢献度である。よって、 一方、と新たに接続した新規電源(LNG、7000MW)の 選択した接続ノードの選択は送電混雑解消の貢献度からみ 出力の増加と他の電源(主に石油火力)の出力低下により、 て決して間違いではない。しかし、これらの予測不能な送 新たに送電線 15 と 26 の故障時にそれぞれ送電線の混雑が 電混雑の発生は、CO2 排出量制約の想定にも関わるが、接 発生してしまう。接続した新規電源により、想定した送電 続する発電機と既存電源との燃料費特性によって決まる発 線故障を起因とする送電混雑を解消することは可能である 電出力に大きく依存するものと思われる。 ものの、接続先を選定する際に予測出来なかった新たな送 文 電混雑を発生させる可能性があることが示された。 4.まとめ 本稿では、経済性・信頼性・環境性を考慮した需給バラ 献 (1)鈴木玄軌・岡田健司:電気学会電力技術・電力系統技術合 同研究会、 PE-09-137(PSE-09-145)(2009) (2)電気学会、電力系統標準モデルの拡充系統モデル http://www2.iee.or.jp/ver2/pes/23-st_model/index030.html ンスを求める際に導出する地点別供給コストの内訳を、電 源の系統接続のための評価指標とする方法を検討した。接 続評価時に想定した送電混雑を有効に抑制できる接続先が 2010/3/17~19 東京 -192(第 6 分冊) ©2010 IEE Japan