Comments
Description
Transcript
社会科学
公務員 試験 大 卒 程 度 対 応 過去問 Q M ク問 ー ウォ 地上・国Ⅱ・国税・裁事・家裁・労基・国Ⅰ uick 14 aster 社会科学 第3版 平成22年度本試験問題を追加 過去問題集 + テキスト =オールインワン過去問集 短期合格Web講義指定テキスト www.lec-jp.com/koumuin/ 過去問集だけで公務員試験に合格する 優れた過去問集でありながら同時に優れた参考書たりうること。それが本シ リーズ「ウォーク問 過去問Quick Master」の基本コンセプトです。合格に必 要な良問を選び抜いていることはもちろん,実際に過去問を解くための知識・ 理解の習得についても超合理的な学習法を実現しました。本シリーズは,過去 問集だけで合格を勝ち取るための,まさに「贅沢なオールインワン過去問集」 ということができるでしょう。 親しみやすい工夫と構成 公務員試験における過去問の重要性については,あらためていうまでもあり ません。しかし,実際に過去問に取り組んでみるとなかなか思うようにはかど らないものです。そこで本シリーズでは,自然に過去問学習に親しめるようさ まざまな工夫を取り入れています。①最重要の知識・理解に絞り込んで学べる 講義ページ,②基本事項を手軽に確認できる基礎力チェック,③効率的な学習 の指針となる出題傾向分析,④受験のツボをマスターする10の秘訣など,実 際にページを開きながら,これまでの問題集とは一線を画す構成を確かめてく ださい。 まったくあたらしい過去問題集 そしてもう 1 つ。わたしたちがこだわったのは,さまざまな角度から過去問 へアプローチすることでした。受験のプロであるLEC講師陣・制作スタッフ は,過去問学習についての分析・研究を日々重ねており,そのすべての成果が 本シリーズに凝縮されているのです。「ウォーク問 過去問Quick Master」は, これまでの過去問集の常識を超えるまったくあたらしい過去問集です。 平成22年実施の良問を追加 平成22年に実施された各種公務員試験の問題の中から,必ずチェックして おくべき問題,似たような内容での出題が予想される問題を多数収録するとと もに,内容の見直しを行いました。最新の試験動向を反映することで,今後の 公務員試験に向け,ますますパワーアップし,より適した内容に生まれ変わり ました。 みなさんが本書を徹底的に活用し,合格を勝ち取っていただけたら,わたし たちにとってもそれに勝る喜びはありません。 2010年10月吉日 株式会社 東京リーガルマインド LEC総合研究所 公務員試験部 現代デモクラシーと政治 1 政党の組織と類型 本 文 (1)政党の定義 政党とは,選挙による国民の意思に基づいて政 治権力を獲得・維持することを目的に活動する, 共通の政治的志向をもつメンバーによって構成さ れた政治集団のことです。 シンプルでわか りやすい解説に仕 上げました。じっ (2)政党の組織と類型 ① M.ウェーバーは歴史的変化に着目して政党 を分類しました。 名望家政党 教養と財産を有する人々(名望家) による19世紀までの政党です。 近代政党 普通選挙制度の確立とともに大衆の 支持を基盤とする20世紀以降の政 党です。 ② M.デュヴェルジェは政党の基本的構成単位 に着目して対置しました。 幹部政党 少数の積極的活動家を中心に構成 され,閉鎖的で分権的な性格を持 つ政党です。 大衆組織政党 厳格な党規律を有しており多くの 党員を抱え開放的で集権的な性格 を持ちます。 くり読んで必要な 基本的知識・理解 を身につけたら, さっそく過去問に チャレンジ! 政党の機能は以下の つ にまとめられます。 ① 利益集約機能(社会 の利益・要望を調整し て,一定の政策にまと め上げる機能) 。 ② 政治家の人材発掘と 登用(政治的リクルー ト機能) 。 ③ 決定作成マシーンの 組織化機能 ④ 国民の政治教育(政 治的社会化機能) 名望家政党 近代政党 構成者 少数の積極的活動家中心 多数の有権者 組 織 閉鎖的,分権的 開放的,集権的 活 動 不定期的 定期的 結束状況 非常にルーズ 厳格な党規律 (3)政党助成 政党の公的性格に鑑み,国家が政党に対してそ の活動資金の一部を助成するという制度が各国で 導入されました(1959年にドイツで導入された 38 図 表 側 注 ビジュアルイメージが記 本文で伝えきれないポイ 憶喚起を強力にサポート! ントやちょっとしたヒント ふんだんに盛り込まれた が盛りだくさん! 過去問 図表があなたの理解をより を解くときの勘どころも押 一層豊かで確かなものにし さえてあります。詳しくは ていきます。 次のページへ。 基礎力CHECK いきなり過去問に立 ち向かうのはちょっと …。ならば予選で肩慣 Q 1 政党とは,政権獲得を目的とした集団である。 らし。自分の基礎力を Q2 ウェーバーによると名望家政党とは教養と財産を有する人々(名望家) による政党のことである。 確かめるだけでなく, Q3 名望家政党と近代政党のうち,厳格な党規律を持つのは名望家政党であ る。 スピーディーな復習に Q4 一党優位政党制とは,名目的に複数の政党の存在が認められているが政 権政党が定められており政権交代が起こりえない政党制を指す。 Q5 ヘゲモニー政党制の典型として,55年体制とよばれた1955年から1993 年にかけての日本における自由民主党単独政権期がしばしば挙げられる。 も活用してください。 第 2 章 現 代 デ モ ク ラ シ ー と 政 治 過去問ページチェック欄 前回解いた日を確認したり 重要度 苦手な問題をマークしたり,い ろいろな使い方を考え工夫して A B C の三段階です。 みてください。過去問は解けば A:必ず解いてほしい 解くほど味わい深いものです。 過去問・問題 5 問題 B:合格の可能性をよ チェック欄 重要度 A 第 1 章 政治思想に関する記述として最も妥当なのはどれか。 (国税・労基2007) 1 アダム=スミスは,神の「見えざる手」によって統治権が国王に委任され ているとする, 王権神授説を唱えた。 この理論に目をとめたヘンリ 8 世によっ て英国に招かれると,英国の経済制度をモデルとして『国富論(諸国民の富)』 を著した。 2 ホッブズは『リヴァイアサン』の中で,自然状態では「万人の,万人に対 する闘争」が生じるので,生存のために人は自然権を国家に委譲していると する,社会契約説を唱えた。この理論は社会契約説の先駆となったが,結果 的に君主による絶対的な支配を容認した。 3 ロックは『市民政府二論(統治二論) 』の中で,国家権力による権利の侵 害を防止するために 国家権力のうち立法権 行政権及び司法権の三権は分 政 治 原 理 と 政 治 制 度 り高めるために解 くべき問題 C:トップ合格を狙う なら解きたい問題 試験種の名称表記について 本書では,問題文の末尾に試験種の略称と出題年度を記載しています。 試験種 地方公務員上級採用試験(※) 国税専門官採用試験 労働基準監督官採用試験 裁判所事務官採用試験 家庭裁判所調査官補採用試験 国家公務員Ⅰ種採用試験 国家公務員Ⅱ種採用試験 国立大学法人等職員採用試験 表 記 「地上」, 「東京都」, 「特別区」, 「大阪府」 「国税」 「労基」 「裁事」 「家裁」 「国Ⅰ」 「国Ⅱ」 「国立大学法人」 ※各都道府県,政令指定都市,政令指定都市以外の市役所,東京都特別区などの職員採用試験 気軽に読んでくださ 理解した内容をもう 大切だけどわかりに いね。でもけっこう 一押し。ヒントにな くい用語などをピッ 重要なツボを押さえ るアドバイスをここ クアップしました。 てあります。 ろがけました。 学習にあたって行き うっかりしやすい, 詰まったりしたとき, つまずきやすい,誤 ぜひ読んでみてくだ 解しやすい…そんな さい。 事項を確認します。 社会科学をマスターする の秘訣 問題集は最低 3 回繰り返せ! 苦手分野をそのままにするな! 誤りの肢にも目を向けよ! 解く速さもまた力である 正解肢の 9 割は基本事項 手を広げ過ぎるな! 社会科学を得点源にすれば勢いが違う! 復習は日をあけ過ぎるな! まずはキーワードを覚えよ! 最後まで粘った者が勝つ! はしがき 本書の効果的活用法 10の秘訣 第1編 第1章 政 治 政治原理と政治制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 権力論 問題 国家観 問題 行政国家化の問題点 問題 ホッブズの思想 問題 政治思想 問題 政治共同体 問題 主要国の大統領制度 問題 アメリカ合衆国の政治制度 問題 世界の政治体制 問題 各国の政治制度 問題10 わが国とアメリカの選挙制度 問題11 選挙制度 問題12 主要国の選挙制度 問題13 第2章 現代デモクラシーと政治 ・・・・・・・・・ 37 圧力団体 問題14 政党 問題15, 16 わが国の選挙制度 問題17 第3章 行政と地方自治 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 わが国の地方自治 問題18 行政の民主化 問題19 行政や政治への参加 問題20 地方自治 問題21 第4章 国際関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69 23 国際連合 問題22, 国際機関や国際会議 問題24 人権の国際的保障 問題25 国際紛争対処と軍縮 問題26 国家領域と海洋 問題27 第 次世界大戦後のわが国の対外関係 問題28 条約 問題29 第2編 第1章 法 学 法学概論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95 わが国の裁判制度 問題30 慣習法と判例法 問題31 社会の諸規範 問題32 法の支配 問題33 法の分類 問題34 法の解釈方法 問題35 第2章 基本的人権の歴史 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 西洋憲法史 問題36 フランス人権宣言 問題37 基本的人権の歴史 問題38 大日本帝国憲法と日本国憲法 問題39 第3章 日本国憲法の基本原理と基本的人権 ・ 憲法条文が表現する原理 問題40 憲法第 条 問題41 わが国における基本的人権 問題42 自由権 問題43, 44 表現の自由 問題45 経済の自由 問題46 人身の自由 問題47 社会権 問題48 129 生存権 問題49 わが国の参政権 問題50 人権の享有主体性 問題51 第4章 統治機構 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 163 わが国の統治機構 問題52 国会中心立法と国会単独立法 問題53 国会 問題54, 55 国会の議決 問題56 国会の権能 問題57 わが国の国会議員 問題58 衆議院の優越 問題59 衆議院と参議院の関係 問題60 国政調査権 問題61 内閣 問題62 わが国の内閣 問題63 内閣と内閣総理大臣 問題64 内閣の責任 問題65 司法権の範囲とその限界 問題66 裁判所 問題67 わが国の司法 問題68 最高裁判所の国民審査 問題69 日本国憲法の財政条項 問題70 第5章 民法と刑法の基礎,その他 ・・・・ 民法の基本原則 問題71 未成年者の法律上の取扱い 問題72 成年後見制度 問題73 刑法の基本原則 問題74 法律における年齢要件 問題75 裁判員制度 問題76 検察審査会制度 問題77 213 第3編 第1章 経 済 経済理論の変遷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 241 経済理論 問題78 現代経済学 問題79 資本主義経済 問題80 第2章 消費者行動と生産者行動 ・・・・・・・ 253 合理的な交換 問題81 利潤最大化条件 問題82 需要と供給 問題83, 84 特殊な需要曲線と供給曲線 問題85 余剰 問題86 第3章 国民所得・景気 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 279 国富と国民所得の概念 問題87 国民所得とデフレ・ギャップ 問題88 乗数理論 問題89 均衡予算定理 問題90 景気循環 問題91 インフレーション 問題92 第4章 財政と金融 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 299 財政赤字の問題点 問題93 わが国の財政 問題94 わが国の税制 問題95 金融政策 問題96 貨幣需要 問題97 信用創造 問題98 ポリシー・ミックス 問題99 IS−LM分析 問題100 第5章 国際経済 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 国際経済 問題101 323 国際通貨をめぐる動き 問題102 変動為替相場制と財政・金融政策 問題103 外国為替市場 問題104 経常収支 問題105 Jカーブ効果と経常収支 問題106 比較生産費説 問題107 第6章 日本経済の歴史的変遷と経済指標 ・・・・ 345 わが国の戦後経済 問題108 高度経済成長の要因 問題109 景気判断指標 問題110 経済用語と経済指標 問題111 わが国の企業 問題112 第4編 第1章 社 会 社会学の基礎 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 365 主要な社会学者 問題113 代表的な社会学者 問題114 デュルケムのアノミー概念 問題115 社会的性格 問題116 階級と階層 問題117 大衆社会論 問題118 文化論 問題119 マス・コミュニケーション論 問題120 都市社会学 問題121 エリクソンによる青年期の概念 問題122 第2章 国民生活の現状,環境問題 ・・・・ 393 労働に関する問題 問題123 社会保障制度 問題124 少子高齢化社会 問題125 健康に関する問題 問題126 INDEX ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 409 政 治 過去5年間の出題傾向 政治思想 各国の 政治制度 政党・ 圧力団体 選挙制度 行政 地方自治 政治史 国際関係理論 国際連合 国際機関・ 国際機構 軍縮 条約 2006 2007 2008 2009 2010 国家Ⅰ種 国家Ⅱ種 地方上級 国税・労基 裁事・家裁 東京都Ⅰ類 特別区Ⅰ類 近年の本試験出題動向をみると,政治思想に関する問題が,複数の試 験種で出題されています。また,各国の政治制度や選挙制度に関する問 題は,毎年のように出題されていますので,しっかりと学習する必要が あるでしょう。ただし,わが国の選挙制度に関しては,公職選挙法の改 正などに伴う時事的な事項も問われることも多いので,その点について も注意が必要です。 行政や地方自治に関しては,その時々の政策などに関する時事的な問 題が出題される一方,理論や制度などの知識を問う問題は,頻出論点が 限られていますので, 過去問を利用して知識を固めるのが良いでしょう。 国際関係については,国際連合をはじめとする国際機関や国際会議な どの問題が出題されやすいので,基本事項から押さえていきましょう。 2 政治原理と政治制度 権力論 国家観 行政国家化の問題点 ホッブズの思想 政治思想 政治共同体 主要国の大統領制度 アメリカ合衆国の政治制度 世界の政治体制 各国の政治制度 わが国とアメリカの選挙制度 選挙制度 主要国の選挙制度 出題される ポイントを 押さえましょう。 第1章 政治原理と政治制度 政治原理と政治制度 1 絶対主義時代の政治思想 (1)N.マキャヴェリ 主著『君主論』 マキャヴェリは,支配者には,ヴィルトゥ=「ラ イオンの力とキツネの狡さ」が必要と説くなど, 徹底したリアリズムと目的合理主義の立場に立 ち,政治を神学や倫理学から解放しました。 (2)J.ボーダン 主著『国家論』 ボーダンは,絶対的かつ恒久的なものとして主 権概念を提示し,絶対王政の確立に寄与した人物 です。彼のいう主権の絶対性は,国内的最高性と 対外的自立を,主権の恒久性は,主権が直接国家 に帰属することをそれぞれ含意しています。 【絶対主義時代】 中世と近代の狭間にあ り,ルネサンスと宗教改 革を経て,ローマ・カト リック教会と封建貴族の 勢力が衰退していき,国 王に権力が集中して中央 集権国家が形成されてい く時代のことを指しま す。 2 社会契約説 (1)T.ホッブズ 主著『リヴァイアサン』 ホッブズは,自然状態において,人間は,万人 の万人に対する闘争状態にあると主張しました。 そこで,自己の生命身体を保全するために必要な 一切のことをなす権利としての自然権をもつ各人 民は,自然状態を終わらせ,平和を実現するため に,自己の自然権を唯一の人間または唯一の合議 体に委譲する契約を相互に結び,これによって主 権をもった国家が設立されると述べました。 (2)J.ロック 主著『統治二論』 ( 『市 民政府二論』 ) ロックによれば,自然状態は平和な状態ですが, 潜在的には常に闘争状態へと転落する不安定な状 態とされます。この不安定状態を脱却して生命・ 自由・財産に対する権利である自然権の享受を確 実なものとするため,人民は,契約によって共同 社会を形成し,そこに統治機関を設立してその権 力を信託すると考えました。 【社会契約説】 17∼18世 紀 の 市 民 革 命 期の代表的な思想です。 代表的な思想家として, ホッブズ, ロック,ルソー が挙げられます。自然状 態を想定し,そこから個 人がその自然権を確保す るために相互に社会契約 を結び,その結果として 国家が設立されるという 理論構成によって,国家 の成り立ちを説明するも のです。 5 (3)J.J.ルソー 主著『社会契約論』 ルソーによれば,現実の文明社会は,自然状態 で人間が有していた善性や自由,平等が失われ, 私有財産制に基づく不平等と支配と悪徳のはびこ る社会とされます。このような社会を改めて人間 性を回復するため,各人は自身のもつすべての権 利とともに自分自身をも共同体に完全に委譲しま す(ここで成立する共同体の意思が一般意思で す) 。それによって人民は,一般意思の表現形態 である法に従うことによって完全な自由を獲得す ることができるとルソーは主張しました。 ホッブズ ホッブズが人民の抵抗を 認めないのに対し,ロッ クは,統治機関が設立目 的に反する活動をした場 合,人民には一方的に信 託を取り消し政府を交代 させる権利が留保されて いるとしました(抵抗権・ 。 革命権) ロック ルソー 主 著 『リヴァイアサン』 『統治二論』 『社会契約論』 自然状態 万人の万人に対する闘争 →無秩序状態 自然法に基づく平和 →不安定 他者のいない平和 →現実は堕落 契約目的 自己保存のまっとう 財産権の確保 人間性の回復 3 国家観の変遷 近代国家は,その役割が対外的防衛や国内の秩 序維持といった消極的役割に限定されるべきもの と考えられていました(「消極国家」, 「夜警国家」) 。 しかし,資本主義経済の発展により貧困や失業が 社会問題となる中で,国家は,社会・経済政策の 実施を求められるようになり,「積極国家」 (福祉 国家)へと変貌しました。そして,国家の積極国 家化は,政治的問題の量的増大と質的高度化をも たらし,その結果,政治の中心を立法府から行政 府へと移行させました。このように,行政府が政 治において決定的に重要な機能を果たす国家を, 近代の立法国家に対して, 「行政国家」とよびます。 4 統治形態の分類 (1)議院内閣制 行政府(内閣)が立法府(議会)の信任の上に 成立する政治制度です。議会の第一院における多 数派から首相が選出され,選出された首相が内閣 を組織し,内閣は議会に対して連帯して責任を負 うのが一般的です。立法府と行政府が協力関係に 6 【近代国家】 →夜警国家,消極国家, 立法国家 【現代国家】 →福祉国家,積極国家, 行政国家 第1章 政治原理と政治制度 あり,この協力関係が維持されなくなった場合に 国民の審判を仰ぐことになります(内閣には議会 の解散権が,議会には内閣に対する不信任決議権 がそれぞれ付与されていることが多いです)。 議院内閣制を採る国…イギ リス,ドイツ,日本など 大統領制を採る国…アメリ (2)大統領制 カ,韓国など 行政府の長である大統領にきわめて強い権限が 与えられている制度で,アメリカなどが採用して います。行政を担当する大統領は,立法を担当す る議会とは無関係に選出されることが多く,原則 として議会に対して責任を負いません。また,立 法府と行政府の役割が厳格に分離されているた め,議会による大統領の不信任決議権や大統領に よる議会の解散権などは存在しないのが一般的で す。 両制度の中間…フランス (半大統領制)など 大統領が存在するというだ けでは大統領制とはいえず, 大統領が行政府の長を兼任 し,強力な権限を持つのが 大統領制です。ドイツは大 統領が存在しますが,議院 内閣制に分類されます。 5 主要国の政治制度 (1)イギリス 立憲君主制国家で, 成文の憲法典をもたない (憲 法習律に依拠)国です。議院内閣制を採る国の典 型で,諸権力の分立は必ずしも明確ではありませ ん。内閣は議会(下院)に対して連帯して責任を 負い,(実質的な)下院解散権を持っています。 議会は二院制で,上院(貴族院)は実質的権限を ほとんど持たず,選挙に基づき構成される下院(庶 民院)が上院に優越します。また,下院は内閣不 信任決議権を持っています。 イギリスの議院内閣制は, 下院総選挙の直後に,下院 第一党の党首が国王から首 (首相の指 相に任命される 名選挙は行わない)という 点や,大臣は全員議員でな ければならないという点で 日本のものとは異なります。 国 王 下院第一党 党首を任命 首相の推挙 により任命 【議会】 一代貴族 宗教貴族 下院(庶民院) 定数650名 小選挙区・任期5年 最高 裁判所 首相 ︻内閣︼ 上院(貴族院) 世襲貴族 【政府】 閣内相 解散 閣外相 信任 選出 国 民 7 (2)アメリカ アメリカは,連邦共和制の国で,きわめて厳格 な権力分立制をとっています。合衆国大統領は国 家元首であり,行政権の長として行政各部の長官 (閣僚)を任命し,統率します。大統領は,大統 領選挙人団による間接選挙によって任期 4 年で 選出され, 3 選は禁止されています。また,議会 は大統領(や閣僚)を不信任することができず, 大統領も議会を解散することができません。一方, 連邦議会は州を基礎とする上院(元老院)と人口 を基礎とする下院(代議院)からなる二院制です。 大統領の法案拒否権に対して,両院が 3 分の 2 以 上の特別多数で同一の法案を再可決した場合に は,当該法案は大統領の署名なしで法律として成 立します(オーバーライド) 。 違憲立法 審査 大統領 人事 任期4年 3選禁止 裁判官9名 任期終身 副大統領 【大統領府】 行政管理 予算局 ほか 大統領顧問 大統領補佐官 選出 で,議会に対して自己の 意見や希望を述べる権限 を持ってるぞ。また,議 会で可決された法案に対 し,法案を受け取ってか ら10日以内であれば拒 否権を行使できるぜ。た だし,オーバーライドに も注意だぞ。 教書で 立法 勧告 弾劾 連邦議会 上院 下院 100名 435名 任期6年 任期2年 副大統領が 上院議長 人事承認 選出 大統領選挙人団 538名 人事 8 を提出することができな い が, 教 書 と い う 形 式 拒否権 弾劾 連邦最高裁判所 連邦控訴裁 連邦地裁 大統領は議会 に対して法案 選出 【省庁】 【国民】 国務省,司法省,財務省,国防総省など 有権者登録が必要 第1章 マキャヴェリは,国家と主権という概念を用いて,絶対主義国家を正当 化した。 Q2 ホッブズは,契約によって統治機関(政府)が設立され,契約目的が果 たされない場合は人民が政府に抵抗することも許されるとした。 Q3 ロックは『リヴァイアサン』において契約に基づいて絶対的な主権を持っ た国家の設立を説いた。 政治原理と政治制度 Q1 Q 4 ロックは立法権と行政権と裁判権の三権の分立を主張した。 Q5 ルソーによれば,文明化によって失われた人間性を回復するために社会 契約が必要とされる。 A.トクヴィルはアメリカ社会を分析し,民主主義社会でも自由が維持さ Q 6 れうるとした。また,民主主義と自由主義との矛盾にも注目し,少数派 の自由が多数派によって侵害される可能性を指摘した。 Q7 近代国家は,その役割が対外的防衛や国内の秩序維持といった消極的役 割に限定されるべきものと考えられた。 Q 8 近代国家は行政国家という性質を持つ。 Q9 議院内閣制とは行政府(内閣)が立法府(議会)の信任の上に成立する 政治制度である。 Q 10 ドイツの政治制度は議院内閣制に分類される。 Q 11 イギリスでは大臣は全員議員でなければならない。 Q 12 イギリスの議会は二院制で,内閣不信任決議権を持つ上院(貴族院)が 下院(庶民院)に優越する。 Q 13 イギリスは連邦共和制国家で,成文の憲法典をもたない。 Q 14 アメリカの大統領は任期が 4 年で再選は一度だけ認められている。 Q 15 アメリカの連邦議会は大統領を不信任することができず,大統領も議会 を解散することができない。 Q 16 アメリカの大統領は議会に対して法案を提出することができる。 Q 17 権力の実体概念とは,権力者の保有する資源に注目して権力を捉える考 え方である。 Q 18 権力の実体概念を唱える代表的論者として,R.ダールが挙げられる。 Q 19 暴力の集中が権力の資源であると捉えたのはK.マルクスである。 Q 20 権力の関係概念とは, 「AがBに普通ならBがやらないことをやらせた 場合,AはBに対し権力を持つ」と表現することができる。 9 A 1 × 国家と主権という概念を用いて, 絶対主義国家を正当化したのはボー ダンである。 契約によって統治機関(政府)が設立され,契約目的が果たされな A 2 × い場合は人民が政府に抵抗することも許されるとしたのはロックで ある。 A 3 × 『リヴァイアサン』において契約に基づいて絶対的な主権を持った 国家の設立を説いたのはホッブズである。 A 4 × 立法権と行政権と裁判権の三権の分立を主張したのはモンテス キューである。 ロックは立法機関と執行機関の二権の分立を主張した。 A 5 〇 ルソーは社会契約によって,文明化によって失われた人間性を回復 することができると考えた。 Q6 〇 少数派の自由が多数派によって侵害されることをトクヴィルは「多 数者の専制」とよび,危険視した。 Q 7 〇 それゆえ近代国家は「消極国家」とよばれることがある。 Q8 × 近代国家は立法府が政治の中心であったため「立法国家」という性 質を持つ。行政国家という性質を持つのは現代国家である。 Q 9 〇 行政府が立法府の信任の上に成立する政治制度を議院内閣制とよぶ。 Q 10 〇 ドイツは大統領が存在するが,大統領は強力な権限を持っておらず 議院内閣制に分類される。 Q 11 〇 日本の議院内閣制では大臣は過半数が議員でなければならない。 Q 12 × 内閣不信任決議権を持つのは下院(庶民院)であり,上院(貴族院) に対して下院が優越する。 Q 13 × イギリスは確かに成文の憲法典をもたないが連邦共和制国家ではな い。立憲君主制国家である。 Q 14 〇 アメリカの大統領は三選が禁止されている(すなわち再選は一度だ け認められている) 。 Q 15 〇 連邦議会と大統領は厳格に分立している。 Q 16 × アメリカの大統領は議会に対して法案を提出することができない。 Q 17 〇 権力者の保有する資源に注目するのが権力の実体概念である。 Q 18 × R.ダールは権力の関係概念の主唱者である。 Q 19 × 暴力の集中が権力の資源であると捉えたのはマキャヴェリである。 Q 20 〇 ダールによる関係概念的な権力の定義である。 10 1 チェック欄 重要度 第1章 過去問・問題 A 政治原理と政治制度 下文は権力に関する記述である。下線部ア∼オのうち,誤っているのはどれ か。 (地上1997) 政治権力を考える場合に,権力を実体概念としてとらえる立場と,関係概念 としてとらえる立場がある。前者の立場に立つ代表的な人物には,暴力(軍隊) の集中を権力の基盤とみなしたマキャヴェリやア富(生産手段)の所有が権力 の基礎であるとしたマルクスらがいる。 これに対し, 権力を関係概念としてとらえる見方には次のようなものがある。 Aが権力を持ちBがそれを認知してAの命令に従うと仮定した場合,Aの権力 をいかにとらえるかはBの側の問題であって,第三者はBがAの命令に服従す るという現象を観察することによってAの権力を認識する。このときイBが抱 くAの権力についてのイメージは,権力現象において決定的な重要性を持つ。 R.ダールの権力概念は権力を関係概念としてとらえる立場に立つものの代 表的なものであるが,ダールはさらに実証研究を通じてウ権力構造が一時的で 流動的かつ多元的であることを発見し,政治への参加が容易で,権力が批判さ れやすい政治体系をポリアーキーとよんだ。 ところで,国際社会は,権力の正当性の根拠となる秩序の法が存在するわけ ではないため,いわゆる自然状態に近いものとされ,力学的説明や予測のため にパワー・ポリティックスという理論モデルが考えられるようになった。その 特色の主なものはエどの国も国益のためにパワーを極大化する傾向を持つこと, パワーの手段としては軍事力が最も有効な強制力として機能することなどであ る。 しかし1970年代後半以降このような認識は現実と乖離してきている。特に 経済成長と政治の民主化を遂げてきた国々の国際関係においては,そこに占め る軍事力の役割と機能が戦争を合理化し難い方向に変化してきた。これをゲー ム理論で見れば,ゲームの行為主体が,共通の利益ないしは協調・協力という 契機を相互に大切にしなければならない形のゲームに変化し始めているといえ, いわばオ冷戦時の非ゼロ・サム型のパワー・ゲームが,ゼロ・サム(総和がゼロ) 型のゲームの性格を持つようになってきているのである。 1 ア 2 イ 3 ウ 4 エ 5 オ 11 正解 5 〈権力論〉 ア○ 権力を実体概念で捉える立場は,何らかの社会的資源・価値の所有によっ て権力がもたらされると考える。その資源・価値として,N.マキャヴェ リ(伊,1469-1527)は暴力の集中を,K.マルクス(独,1818-83)は生 産手段と富の集中を挙げている。 イ○ 関係概念としての権力は,支配者と被支配者の影響力関係に着目し,被 支配者がそのような権力関係を認めるところに成立するものであるとされ る。R.A.ダール(米,1915-)はこのことを「AがBに普通ならBがや らないことをやらせた場合,AはBに対し権力を持つ」と表現した。 ウ○ ダールの権力論は,観察可能な「行動」に焦点を当てて権力を捉えよう とするところに特徴があり,このような立場に立つことにより,権力概念 から神秘性を取り去り,権力を科学的に観察可能な経験的事象として捉え ようとした。そして,下線部ウにあるように,実証研究を通じて,権力関 係は固定的なものではなく,問題によってあり方が異なるとする多元的な 視点を主張した。 エ○ パワー・ポリティックスとは,国家間の権力闘争を国際政治の本質とみ なす考え方であり,また,そのような観点から国家の利益や権力の維持お よび増大を追求しようという国家政策のことである。パワー・ポリティッ クスの最も典型的なかたちは,たとえば軍事力を国家の有するパワーの中 心に据えて,他国に対する強制力・抑止力として機能させようとするもの である。 オ× かつては解説記述エのような考えから,国際社会における 2 つの主体間 の関係は,一方が他方の犠牲によって価値を獲得・増大するのみであり, 価値の総計は変化しないとするゼロ・サム型のモデルでとらえられるのが 一般的であった。しかし,特に1970年代以降,経済その他の分野におけ る国際相互依存関係が強まり,国際社会における主体にとって,軍事力に より自勢力の拡大を目指すことよりも,相互協力によって互いの価値を増 大することのほうが合理的であると考えられるようになってきた。このよ うな,各主体の行動によって価値の総計そのものが変化すると考える非ゼ ロ・サム的な概念を,プラス・サム的と表現することがある。 よって,正解は肢 5 である。 12 アルファベット索引 PKO (国連平和維持活動) AC (平均総費用) 258 AFC (平均固定費用) 257 AGIL図式 368 APEC (アジア太平洋経済協力) 78,80,86 PTBT (部分的核実験禁止条約) 73 SDR (特別引出権) 328,334 82 TC (総費用) 258 AVC (平均可変費用) 257 TR (総収入) 258 CSR (企業の社会的責任) 362 UNESCO(国連教育科学文化 CTBT (包括的核実験禁止条約) 73,92 EEZ (排他的経済水域) 88 FC (固定費用) 機関) 82 VC (可変費用) 257 WTO (世界貿易機関) 328 257 人名索引 GATT (関税及び貿易に関する 一般協定) 328 ア行 GDP (国内総生産) 288 アダム=スミス(スミス,A.) GNP (国民総生産) 288 IAEA (国際原子力機関) 73 20,243,248,252 アドルノ,T. ウェーバー,M. IBRD (国際復興開発銀行) 380 38,50,54,366, 374,382,384 327,334 71,86 エリクソン,E. ICJ (国際司法裁判所) 71,80,86 エンゲルス,F. IMF (国際通貨基金) オグバーン,W.F. ICC (国際刑事裁判所) 327,332,334 INF (中距離核戦力全廃条約) 86 Jカーブ効果 325,342 カ行 LM曲線 303,322 ガルブレイス,J.K. NPO (非営利組織) 66 369 250 キッシンジャー,H.A. 26 キルヒハイマー,O. 50 NPT (核兵器不拡散条約) 72,92 クーリー,C.H. OECD (経済協力開発機構) グロティウス 82 26 オルテガ・イ・ガセット,J. 303,322 258 20 386 オドネル,K. IS曲線 MC (限界費用) 392 ケインズ,J.M. 376 88 243,244,248 409 公務員試験 ウォーク問 過去問Quick Master 社会科学 第3版 2007年10月30日 第1版 第1刷発行 2010年10月15日 第3版 第1刷発行 編著者●株式会社 東京リーガルマインド LEC総合研究所 公務員試験部 発行所●株式会社 東京リーガルマインド 〒164−0001 東京都中野区中野4−11−10 アーバンネット中野ビル ☎03 (5913)5011(代 表) ☎03 (5913)6336(出版部) ☎048 (999)7581(書店様用受注センター) 振 替 00160−8−86652 www.lec.co.jp/ 本文フォーマット&イラスト●デザインスタジオ ケイム 印刷・製本●秀英堂紙工印刷株式会社 ©2010 TOKYO LEGAL MIND K.K., Printed in Japan ISBN978−4−8449−0454−0 複製・頒布を禁じます。 本書の全部または一部を無断で複製・転載等することは,法律で認められた場合を除き, 著作者及び出版者の権利侵害になりますので,その場合はあらかじめ弊社あてに許諾 をお求めください。 なお,本書は個人の方々の学習目的で使用していただくために販売するものです。弊 社と競合する営利目的での使用等は固くお断りいたしております。 落丁・乱丁本は,送料弊社負担にてお取替えいたします。出版部までご連絡ください。 定価1,470円 KD00454 本体1,400円 +税5% ●講義ページで最重要項目の知識が身につく! ●「基礎力チェック」で基本事項を手軽に確認! ●合格に必要な過去問をセレクトして体系的に収録! ●出題傾向分析、問題の重要度表示で学習効率UP!