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マルチスライスDOI-MRコンパチブルPET用検出器の検討

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マルチスライスDOI-MRコンパチブルPET用検出器の検討
(5) マルチスライス DOI-MR コンパチブル PET 用検出器の検討
山本誠一
神戸高専電気工学科
1.はじめに
最近 PET 装置と X 線 CT 装置を連結し1つのベッドに被検者をのせたまま撮像可能な PET/CT 装置が
開発され注目されている。X 線 CT で得られる高分解能の解剖学的画像に PET の主に FDG 投与により得
られる機能画像を重ね合わせて診断することを可能にし、腫瘍の診断能を向上できることに加えて、
X 線 CT 画像を PET の吸収補正に使用することにより撮像時間の短縮をはかることができることから各
社製品化が進み広く診断に用いられるようになりつつある。
一方、MRI 装置でも解剖学的な情報を高い空間分解能であることが可能である。MRI の解剖画像は
X線 CT 装置に比べて軟部組織において高いコントラストで描出されるという特長がある。さらに最
近では機能的磁気共鳴イメージング法などのように機能画像を得ることも可能になっている。しか
し MRI による機能画像の解釈は核医学的な手法に比べて困難な場合が多く MRI の画像と PET 等の核医
学的な機能画像を比較することはそれぞれ分野の研究を進めるうえで有用であると考えられる。
そこで MRI 中で使用可能な PET 装置の開発の可能性を検討した。MRI 中で測定可能な PET 装置は
UCLA が数年前に開発しているが[1]、検出器リングが1層に限られ、また深さ方向の情報(DOI)を得
ることが出来ないため感度が低いものであった。検出器リングを複数層に拡張でき、また DOI の検出
も可能な MR コンパチブルな PET 装置が実現できれば分子イメージングの研究に大きく貢献できる可
能性がある。そこでまず MRI 中で使用可能な PET 装置に関する基礎的検討としてシンチレータ材料の
選択を行った。またマルチスライスで深さ方向の情報が得られる(Depth Of Interraction: DOI) PET
用検出器を考案し、さらに試作を行ったので報告する。
2.MR 中で測定可能な PET 装置のためのシンチレータ材料の選択
MRI 中では磁性体の使用が制限されるとともに MRI の近くに新たに配置する機器が MRI の画像を乱
す現象や MRI の発生する高磁場や高周波変動磁場が機器に与える影響を考慮に入れる必要がある。そ
こで MR コンパチブル PET に最適なシンチレータを選択するために種々のシンチレータが MRI 画像に
及ぼす影響を評価した。まず放射線検出器に用いられる種々のシンチレータに対する帯磁率の測定
を行った。帯磁率の生体との差は MRI 中でのアーチファクトの指標として有用である[2]。また MRI
中でのアーチファクトの程度を実際にシンチレータを MRI で撮像することにより確認した。帯磁率の
測定は VMS(理研電子製)を用い、MRI 中のアーチファクトの評価は GE 製 Signa SP/i を用いて行っ
た。Table.1 に測定に用いたシンチレータの種類と大きさを示す。
Table.1 MRI 中でのアーチファクト評価のために用いたシンチレータの種類とサイズ
NaI(Tl)-Al
NaI(Tl)-Cu
CsI(Tl)
BGO
GSO
LGSO
LSO
7φx 6
7φx 6
6φx 6
4x6x7
4x6 x9
3x3x6
4x4x6
Dimension
(mm)
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Table2 に種々のシンチレータに対する帯磁率の測定結果を示す。生体の帯磁率が
‐ 7 x 10-6 から
‐ 11 x 10-6 であることから NaI(Tl)、CsI(Tl)、BGO、LSO は比較的 MRI 適合性に優れたシンチレータ
であることが明らかになった。一方、GSO と LGSO は生体との帯磁率の差が大きく、MRI 中で使用する
場合に注意が必要であることが示唆された。
Table2
NaI(Tl)-Al
NaI(Tl)-C
帯磁率の測定結果
CsI(Tl)
BGO
GSO
LGSO
LSO
-19.8
-21.6
9900
790
-22.4
u
Susceptibility
(x10-6)
4.0
-13.7
Fig.1 に水ファントム中における種々のシンチレータの画像を示す。Fig.1(A)においては左から
NaI(Tl)-Al, NaI(Tl)- Cu, CsI(Tl), LSO, BGO の順に並べてある。各シンチレータともそれほど大き
なアーチファクトは生じていない。Fig.1(B)においては左から LGSO、LSO の順に並べてある。これら
のシンチレータ自身の大きさは他のシンチレータとそれほど変わらないのもかかわらず、MRI 画像は
大きく拡大されて撮像されており顕著なアーチファクトが認められる。さらに水の容器の形状にも
変化が生じ画像の歪みも無視できないことが明らかになった。
(A)
(B)
Fig.1 シンチレータの MRI 画像:左から(A) NaI(Tl)-Al, NaI(Tl)- Cu, CsI(Tl), LSO, BGO,(B) LGSO,GSO
3.マルチスライス DOI-MR コンパチブル PET 装置用検出器の基礎的検討
Fig.2 に考案したマルチスライス DOI-MR コンパチブル PET 装置用検出器の概念図を示す。シンチレ
ータブロックは村山らが考案した DOI 検出器[3]と同じで、そのブロックに光ファイバーを接続した
構造をしている。シンチレータブロックは2x2x2の 8 個のシンチレータを光学結合した構造をし
ており、その 1 面から 4 つの光ファイバーにより光信号として取り出される。光ファイバーはシンチ
レータブロック内のガンマ線による発光を MRI 中の高次場の場所から、MRI のシールドルーム外に光
信号として伝達する働きをする。
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Fig.2
MRI 中で測定可能な PET 装置用検出器の概念図
Fig.3 にシンチレータブロックからの4つの信号(A,B,C,D)よりシンチレータブロック内の 8 個の
シンチレータ位置を弁別する方法を示す。4 つの光信号を位置演算回路により位置演算することによ
り 8 個のシンチレータの位置を 2 次元分布において 8 個の分布として得ることが可能となる。
Fig.3
MRI 中で測定可能な PET 装置用検出器の位置演算方法
実際に本発明の構成により得られた 2 次元分布の例を Fig.4 に示す。シンチレータには 2mx2mmx2mm
の LSO を 8 個用い、その信号を 2.5m の光ファイバーで4回路の光電子増倍管(PMT)に導き、511keV
のガンマ線に対する位置演算計算を行った。光ファイバーはクラレ製 2mm 直径のダブルクラッドタイ
プを用いた。8 個の LSO の結晶位置に対応する分布が得られ、本発明は実現可能であることが明らか
になった。
Fig.4
MRI 中で測定可能な PET 装置用検出器の2次元分布実測データ
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Fig.5 に本発明を用いて構成する PET 装置の概念図を示す。今回考案した検出器をリング状に配列
し、その信号を MRI の高次場の外に配置した PMT に導く。PMT の信号は位置演算されたのち同時計数
回路で同時の起こった事象かどうかを判定し同時の場合はメモリにシンチレータ位置のアドレスを
書き込む。一定時間積算されたデータはコンピュータにより再構成され断層画像となる。MRI も同時
あるいは前後に撮像され、画像の重ねあわせが可能となる。
Fig.5
MRI 中で測定可能な PET 装置全体の概念図
撮像できるスライス数はブロック検出器が 2x2x2 の構成であるので検出器リング数は2リングとな
り同時に 3 スライスが撮像可能となる。また深さ方向にも 2 層構造になり、ガンマ線の深さ方向に対
する入射位置を検出することで視野周辺部における空間分解能の劣化を少なくすることが可能にな
るとともに感度を向上できる。さらに検出器がブロックの構造であるので PMT や光ファイバーの数を
従来の装置に比べ大幅に減少させることが可能となる。この構成により3スライスを同時に撮像可
能で深さ方向に 2 層を有する、実用的な MRI コンパチブル PET 装置を実現できるものと考えられる。
4.まとめ
MRI 中で使用可能な PET 装置に関する基礎的検討のために種々のシンチレータに対する帯磁率の測
定と実際の MRI 中でのアーチファクトの測定を行った。その結果、NaI(Tl), CsI(Tl), BGO, LSO は
MRI 中で問題無く使えるが GSO と LGSO は帯磁率が生体と大きく異なり、MRI 画像に顕著なアーチファ
クトを生じることが分かった。またマルチスライス DOI-PET 用検出器を考案、試作を行い良好な結
果が得られた。今回試作した検出器を用いることにより2リング3スライス、深さ方向に2層の
DOI-MR コンパチブル PET 装置を実現することが可能となり、分子イメージングの発展に貢献できる
ものと期待される。
参考文献
[1] Y. Shao, et al. IEEE Trans. Nucl. Sci., vol. 44, no.3, pp. 1167-1171, 1997
[2] J. F. Schneck, Med. Phys. vol. 23, no.6 pp. 815-850, 1996
[3] H. Murayama, et al. IEEE Trans. Nucl. Sci., vol. 45, pp.1152-1157, 1998.
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