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膵臓がん
膵臓がん がんの知識 医療法人 嬉泉会 嬉泉病院 がん薬物療法専門医、指導医、がん治療認定医、教育医:大澤 浩 膵臓がんは、超音波、CT や MRI などの画像診断の進歩が著しい今日でも、多くの方が外科的治療もできない状態で 診断されたり、切除しても早期に再発することが多い癌です。理由は、膵臓が身体のまん中にあり、胃・十二指腸・小腸・ 大腸・肝臓・胆嚢・脾臓などに囲まれているため、がんが発生しても見つけるのが非常に難しいからです。また早い段階で は特徴的な症状もありませんので、胃がんや大腸がんのように早期のうちに見つかるということはほとんどありません。 【疫学】 ① 膵臓の部位:十二指腸に近い部位:膵頭部、中央:膵体部、脾臓に近い部位:膵尾部 ② 死亡数(2010 年)/罹患数(2005 年):28,017 人/24,799 人 (注:罹患数は死亡数とほぼ等しく、膵がん罹患者の生存率が低いことと関連しています。) ③ 年齢別にみた膵がんの罹患(りかん)率は 60 歳ごろから増加して、高齢になるほど高くなります。 死亡数は、男性では 5 位、女性では 4 位と報告されています。好発の平均年齢は 65 歳です。 ④ 危険因子:1)家族歴(膵癌、遺伝性膵癌症候群など)、2)合併症(糖尿病の罹患、大量飲酒に伴う慢性膵炎、肥満、 膵管内乳頭粘液性腫瘍)、3)嗜好品(喫煙)、4)食事要因(高脂肪食や肉摂取がリスクを増加)など報告があります。 ⑤ 症状:1)腹痛;約 35%、2)黄疸(白目、皮膚が黄色くなる);約 15%、3)腰痛や背部痛;約 8%、4)体重減少や食欲 不振;約 5%程度と報告されています。 【検診は有効なの?】:確定した検診法はありません。 【検査と診断】 ① 腹部超音波 : 膵臓はおなかの奥にあるので、膵尾部の検出は困難なことがある。深達度(しみ込み具合)、食 道周囲のリンパ節転移を診断します。 左:超音波の写真 右:内視鏡の写真 ② 内視鏡検査:カメラで肉眼的診断と、組織を採取し組織学(病理学)的診断をします。病変の位置や大きさだけで なく、病巣の広がりや表面の形状(隆起(りゅうき)や陥凹(かんおう))、色調などを判断することができます。可能 であれば生検で病理組織を確認します。生検ができないときは吸引細胞診を行います。 ③ CT 検査、MRI 検査: 肺、肝臓など遠隔転移、周囲組織(気管支、大動脈、肺など)への浸潤やリンパ節転移など の確認をします。 膵臓癌 CT の 実例です。 膵臓癌、多発 肝転移の実例 です。 ④ 骨シンチグラフィー : 全身骨への遠隔転移の確認をします。 ⑤ PET 検査(陽電子放射断層撮影検査):PET 検査は、全身の悪性腫瘍細胞を検出する検査です。悪性腫瘍細 胞は正常細胞よりも活発に増殖するため、そのエネルギーとしてブドウ等を多く取り込みます。PET 検査では、放 射性ブドウ糖を注射しその取り込みの分布を撮影することで悪性腫瘍細胞を検出します。食道がんでも進行度 診断での有効性が報告されています。 以上のような検査で進行度(Stage)を決めます。 ⑥ 採血検査 :膵臓の腫瘍マーカーは、CA19-9、CA125、CEA、DUPAN-Ⅱ、エラスターゼ 1 などがありますが、 早期がんの検出には有効ではありません。 【病理組織診断】 以上のような全身検索を行い、最終的には内視鏡で 採取した組織をこのように顕微鏡で診断します。 膵臓がんは早期発見、早期治療が肝心です!!