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死してもまだ求める恋心、その伝説世界を追う
BN002R0 死してもまだ求める恋心、その伝説世界を追う 研究のタイトル: 『万葉集』を中心とした日本上代文学の研究 氏名:廣川晶輝 教授 所属:文学部 日本語日本文学科 1.適用分野: 神戸市に現存する文化遺産の紹介、身近な文化遺産の社会への紹介、地域住民の文化遺産 に対する認識の向上、歴史に目を向けるきっかけ、史跡を通じた地域住民との交流 2.内容: ・特徴: 甲南大学のある東灘から灘地域には、悲恋の「菟原娘子(うなひをとめ)伝説」が今なお 生き生きと語り継がれている。それは、伝説の中で悲劇の娘子の墓とされている古墳 が「処女塚」(東灘区)として現存し、娘子の後を追って死んでいった二人の壮士の墓 とされている古墳が「東求女塚」(東灘区)「西求女塚」(灘区)として現存しているか らだ。並んで現存する三つの古墳は、あたかも、死してもまだ娘子に思いを寄せるよ うに、娘子の墓を真ん中にし、左右の壮士の墓が娘子の墓へと前方部を向けている。 古代から現代まで、人々は、この悲恋の伝説にさまざまな「偲び」の思いを向けて 来た。本研究は、その「偲び」の回路を開き得る〈場所〉としての〈墓〉という様相 を解き明かす。他の研究には見られない独自の視点を備えている。 ・概要: この悲恋の伝説は、『万葉集』を初めとして、『大和物語』、謡曲「求塚」、森鷗 外の戯曲「生田川」というように、上代から中古、中世、そして近代にかけて息の長 い利用のされ方をしている。そして、これらの作品の中では、「墓」が、作品の展開 にかかわる重要な〈場所〉としての役割を担っている。 「菟原娘子伝説」が、時代を超えて数々の作品として生まれ出ることができたこと いわば「菟原娘子伝説の多産性」の〈鍵〉を、この「墓」という場所が持つ表現性が 握っているのではないか。本研究は、このような視点に立ち、「墓」が作品の中の重 要な〈場所〉として選ばれることによって、どのような表現のあり方が開かれている のか、どのような「偲び」の表現が開かれているのかを追求している。 墓の機能 墓の機能 1.肉親(やそれ に準じる親しい 人物)を偲ぶ「よ すが」 2.第三者(他 者)に対しての 顕示・アッピー ル・デモンストレー ション 図1 墓の機能 3.「第三者」に よって現在まで語 り継ぎ・言い継が れて来た「偲び」 図2 処女塚(東灘区) 3.キーワード: 日本文学、日本上代文学、万葉集、大和物語、処女塚、求女塚、菟原娘子伝説、墓 4.連絡先:甲南大学フロンティア研究推進機構(甲南フロント) TEL:078-435-2754 [email protected] http://www.konan-u.ac.jp/front/