...

平成26年度業務成果報告書 「科学体系と創造性がクロスする知的卓越

by user

on
Category: Documents
1

views

Report

Comments

Transcript

平成26年度業務成果報告書 「科学体系と創造性がクロスする知的卓越
平成26年度業務成果報告書
「科学体系と創造性がクロスする知的卓越人材育成プログラム
略称 ELCAS(エルキャス)」
京都大学
本報告書は、独立行政法人科学技術振興機構との実施協
定に基づき、国立大学法人京都大学が実施した平成26年
度グローバルサイエンスキャンパス「科学体系と創造性が
クロスする知的卓越人材育成プログラム 略称 ELCA
S(エルキャス)」の成果を取りまとめたものです。
業務成果報告書
1.実施機関 :
国立大学法人 京都大学
2.業務の題目: 科学体系と創造性がクロスする知的卓越人材育成プログラム
3.共同機関 :
なし
4.連携機関(共同機関以外)
東京都教育委員会、石川県教育委員会、福井県教育委員会、三重県教育委員会、滋賀県教育委員会、
京都府教育委員会、京都市教育委員会、大阪府教育委員会、兵庫県教育委員会、奈良県教育委員会、
和歌山県教育委員会、徳島県教育委員会
5.業務の実績
(1)業務の実施日程(実施
業 務 項 目
)
実 施 日 程
4月
5月
6月
7月
23
16
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
実施 機関( 京 都大 学)
第1次選抜日程AB募集
(自己財源)
第1次選抜日程A
(自己財源)
第1次選抜日程B
(自己財源)
第1次選抜日程C募集
(自己財源)
第1次選抜日程C
(自己財源)
教育委員会による推薦受付
20
23
8–22
24
20
第1回ELCAS運営協議会
24
17
第2回ELCAS運営協議会
24
開校式
4
基盤コース前期
18
15
基盤コース後期
6
21
閉校式
22
開始時合宿
16–17
修了時合宿
21–22
フィールドワーク実習
25–28
第2次選抜(専修コース)募集
薬学専修、薬科学専修
22–28
第2次選抜(専修コース)
薬学専修、薬科学専修
29
10
第2次選抜(専修コース)募集
第2次選抜(専修コース)
3
7,11,15
国際クラス海外研修募集
10–24
国際クラス海外研修選抜
7,11,15
国際クラス事前研修
14
全国受講生研究発表会
8–9
4
受講生によ る ポートフォ リオ記載
受講生評価
21
23
1
31
(2)業務の実績の説明
【募集・選抜の状況】
基盤コース
本年度の募集は一般公募枠と、本学と連携協定を締結したコンソーシアムメンバーの教育委員
会推薦枠の 2 形態で実施した。また、一般公募枠は面接を含む 2 回の選抜試験を行う日程 AB と、
エッセイの提出と面接からなる日程 C の 2 形態で実施した。
一般公募選抜日程 AB は平成 26 年 6 月 23 日から 7 月 16 日にかけて自己財源により作成したパ
ンフレットを近畿地方および東海・四国・北陸地方の高校に送付するとともに、ホームページ上
に情報を公開して参加者の募集を広く周知し、近畿圏以外からの応募者を含む 179 名の応募者を
集めた。第 1 次選抜に相当する選抜日程 A を 7 月 20 日に京都大学吉田キャンパス北部構内で実施
した。数学、物理学、化学、生物学、宇宙地球の 5 分野の講義を受け、それぞれの講義に対する
質疑応答、内容をまとめたレジュメ、感想文の作成を課題として応募者に課し、それらの内容を
大学教員が評価し、1 次試験合格者 74 名を選抜した。これら 74 名の 1 次試験合格者を対象に 8
月 10 日に第 2 次選抜に相当する選抜日程 B を実施予定であったが、台風の接近による荒天が予想
されたため、応募者の安全を確保する観点から試験日程を 8 月 23 日へ延期し、応募者への通知を
行った。8 月 23 日には京都大学吉田キャンパス北部構内において、数学の筆記試験と一人 10 分
程度の面接を行い、これらの結果を大学教員が評価し、本事業の受講生となる合格者 34 名を選抜
した。事業実施初年度にあたる今年度のみの措置として、一般公募選抜日程 C を平成 26 年 8 月 8
日から 8 月 22 日にかけて応募者を募り、8 月 24 日に京都大学吉田キャンパス北部構内で実施し
た。応募者には「科学を主体的に究めようとする意欲」をテーマとした必須課題と、自由なテー
マに基づいた任意課題の 2 種類のエッセイ提出を応募条件として求め、8 月 24 日の選抜実施日に
これらのエッセイの提出と数学の筆記試験、一人 15 分程度の面接を行い大学教員が評価を行った。
選抜日程 C には 19 名の応募者があり、上述した方法により 16 名を選抜し、本事業の受講生とし
て決定した。一般公募枠日程 AB と日程 C の合計で 50 名の合格者を選抜し、事業目標値としてい
た一般公募ルート枠 50 人を達成することができた。
教育委員会からの推薦枠は、本学と連携協定を締結した各教育委員会(京都府、京都市、大阪
府、東京都、石川県、福井県、三重県、滋賀県、兵庫県、奈良県、和歌山県、徳島県)に受講生
の推薦依頼および受付を 8 月 20 日から開始し、9 月 24 日までにすべての教育委員会から合計 102
名の推薦を受けた。教育委員会からは 100 名程度の推薦を事業目標として掲げており、102 名の
推薦を受けたことで、この事業目標を達成することができた。
専修コース
平成 26 年 11 月、本学理学研究科がこれまで独自に実施してきた高大接続科学事業の受講生の
中から、特に優れた研究を行っている高校生 2 名を物理学、生物学の専修コース受講生として選
抜した。また、11 月 22~28 日にかけて薬学専修コース、薬科学専修コースの募集を、基盤コー
ス前期の受講生を対象に行った。11 月 29 日に 5 名の薬学研究科の教員が面接を行い、7 名の応募
者の中から 3 名の合格者を選抜した。これら平成 26 年度の専修コース受講生 5 名の内 4 名が平成
27 年度も本コースを継続することが決定している。
平成 27 年 1 月 10 日~2 月 3 日にかけて基盤コース受講生を対象に平成 27 年度専修コースの募
集を行った。2 月 7 日、11 日、15 日に専修コース担当教員による 30 分の面接を行い質疑応答と
ポートフォリオをもとに、34 人の応募者の中から 31 人の合格者を選抜した。
国際クラス
平成 27 年 1 月 10 日~24 日にかけて基盤コース受講生を対象に平成 27 年度国際クラス(国際
クラス海外研修)の募集を行った。2 月 7 日、11 日、15 日に担当教員 3 名による 10 分の面接を
行い、英語による自己紹介と日本語による質疑応答で、18 人の応募者の中から 13 人の合格者を
選抜した。3 月 14 日に合格者を対象にした国際クラス事前研修を行った。
【教育プログラムの状況】
平成 26 年 10 月 4 日(土)14:00~18:00 に、京都大学吉田キャンパス北部構内において受講生
2
152 名、森脇淳京都大学副学長ならびに教育プログラムを提供する理学部、薬学部、工学部、農
学部、地球環境学堂の学部長および学堂長、コンソーシアム加盟教育委員会のうち京都府教育委
員会、京都市教育委員会の各担当者が列席し、開校式を実施した。開校式に引き続いて梶井克純
京都大学教授による地球の大気環境をテーマとした講演を行い、講演後には受講生との活発な質
疑応答が行われた。引き続き James de Witt 講師による英語での講演を行い、講演者と受講生だ
けでなく、受講生同士の対話を含めたインタラクティブなプログラムを実施した。すべて英語に
よる講演という、受講生にとってはこれまでにない経験だったと思われるが、英語での積極的な
議論が行われた。また、山極壽一京都大学総長から、自身の研究内容やこれまでの研究歴の紹介
があった。予定時間を大幅に超えた活発な質疑応答がなされ、受講生にとって大きな刺激となっ
た。
平成 26 年 10 月 18 日(土)、11 月 15 日(土)14:10~18:00 に、京都大学吉田キャンパス北部
構内、11 月 1 日(土)14:00~18:00 に京都大学桂キャンパス A クラスターにおいて GSC-ELCAS
基盤コース前期の講義を開講した。当日は 3 会場において「数学・物理」、
「化学・物質」、
「生物・
生命」、
「情報」、
「環境」の 5 分野を、20 名の教授と 3 名の准教授が担当した。同じ日に時間をず
らして複数の講義を行い、受講生はこれら 5 分野の講義から 3 分野を選択して受講した。受講生
は集中して講演を聞き、講義後半に設けた質疑応答の時間では、講演者との双方向的な質疑応答
が活発に展開された。講義終了後の教室外でも講演者に質問を続ける受講生も見られ、意欲の高
さが垣間見られた。
平成 26 年 12 月から平成 27 年 2 月の第 1、3 土曜日 14:00~18:00(1 月のみ第 2、第 4 土曜日)
に、京都大学の吉田、宇治、桂の各キャンパスにおいて基盤コース後期の実習を開講した。理学
研究科、工学研究科、情報学研究科、農学研究科、地球環境学堂から内容の異なる 16 分野で各々
6 回の実習を開講した。受講生は 7-10 人程度に分かれて実際に自ら取り組んだことにより、い
かに課題を見つけるか、どのように解決していくのかを体感し学んだ。実習は、のべ人数で教員
197 人、アシスタント 312 人、ボランティア 38 人が担当した。10 人以下の少人数のチームに分か
れて実習を行うことによって、受講生は理解しづらい内容をアシスタントやボランティアの大学
院生に1対1で直接指導してもらうことが可能になり、受講生の理解が促進された。また受講生
同士がチーム内で議論を交わしたり意見を出し合ったりして問題を解決する姿が見られ、コミュ
ニケーション能力の向上や横のつながりが構築された。
平成 27 年 2 月 21 日(土)19:00~21:00、修了時合宿の宿泊場所であるホテルにおいて京都大
学に短期滞在しているベトナム人留学生 10 名、引率のベトナム人教員 3 名、京都大学大学院在籍
中の留学生 3 名と国際交流会を行った。この会には京都大学の国際クラス担当教員 1 名、国際交
流の経験が豊富な京大生 5 名、京大生アシスタント 10 名も参加した。ベトナム人留学生が英語で
ベトナムの紹介をする一方、ELCAS 受講生の中から 5 名が自己紹介や出身県の紹介を英語で行っ
た。英語でのプレゼンテーションの後は、立食形式で夕食をとりながら交流をおこなった。受講
生は緊張しながらも、身振り手振りを交えてコミュニケーションをとる努力をしているのが見受
けられた。終了後に受講生に実施したアンケートでは、英語力だけではない“コミュニケーショ
ン能力”の必要性や、きれいな発音で話すことよりも自信をもって積極的に話すことの重要性を
感じたとの意見が多く聞かれ、7 割以上の受講生が、海外について興味が深まったと回答してい
た。
平成 27 年 2 月 22 日(日)午前・午後を通して、吉田キャンパスで修了時合宿プレゼンテーシ
ョンを行った。パワーポイントを用いて受講生が各々受講した実習に関する研究発表を分野ごと
に 3 会場に分かれて行った。発表では緊張している様子も見られたが、質疑応答では、大学教員
によるやや難しい質問にも、よく考えて答えようと努力する姿が見られた。
平成 27 年 3 月 25 日~28 日に生物学・地球科学関連の専修コース受講予定者と基盤コースで関
連する分野を受けた受講生を対象に屋久島でフィールドワーク実習を行った。20 名の受講生を 9
名の研究者および学生アシスタント(人類学、植物学、地球科学)が引率した。実習担当者以外
に、安全確保要員・連絡要員として 2 名の ELCAS スタッフが同行し、京都大学の山極総長も人類
学の専門家として実習指導にあたった。受講生は 2 グループ(5 人の 4 サブグループ)に分かれ
て 2 日かけて山や海岸線を歩き、ヤクシマザル、植物、岩石鉱物の観察を行った。受講生は大学
で実際に行われている野外での観察法、データ取得法を体験し、わからないことは積極的に質問
3
していた。また、野外に出ることによって、自然界で起きている現象のスケールをじかに体験し
感動しているように見受けられた。夕食後は、宿泊場所である宮之浦・田代別館の会議室で昼間
に野外で観察したことのまとめを行った。まとめの時間では、参加者全員が積極的に発言し、観
察結果に関する活発な議論が行われた。本実習と直接関連する分野の専修コースに進む受講生に
対しては研究の動機づけをすることが出来た。受講生全員にレポートを課し成果を確認した。
全講義・実習終了後のアンケートでは、講義・実習内容に対して「大変良かった」または「良
かった」と答えた受講生は全体の 9 割以上であり、講義・実習内容の理解度について7割の受講
生が「よく理解できた」または「理解できた」と回答した。これらのアンケート結果から、本事
業が高校生の科学的興味を大いに喚起しただけでなく、知識の定着も行われたと思われる。
(3)募集・選抜者の実績内訳(学年・性別・出身校・受講前受賞歴などの属性)
【募集者の実績内訳】
[一般公募選抜日程 AB]
(学年)高校 1 年生 86 名、 高校 2 年生 93 名
[一般公募選抜日程 C]
(学年)高校 1 年生 5 名、
[教育委員会推薦]
(学年)高校 1 年生
高校 2 年生
14 名
54 名、
高校 2 年生
48 名
【基盤コース選抜者の実績内訳】
(学年)高校 1 年生 73 名、
高校 2 年生
79 名
【専修コース選抜者の実績内訳】
(学年)高校 2 年生 16 名、 高校1年生
20 名
(4)受講者の意欲・能力の伸張状況
ELCAS 事務局が講義・実習修了後に独自に行ったアンケートにおいて、
「ELCAS の講義・実習が将
来進路選択に影響をあたえた」と答えた受講生は 53%、その多くが履修した分野への興味が高ま
ったと回答している。また将来の進路選択への影響はまだわからないと答えた 49%の受講生の多
くが自由回答で進路に関する視野が広がったとしており、学習意欲や関連分野への進学意欲が高ま
ったことが示されている。
能力の伸張状況に関しては、受講生が作成したポートフォリオをもとに問題設定力、論理・数
学能力、科学的知識、知的好奇心・創造先進的イノベーション力に関する評価をしている。受講
生が提出したポートフォリオから、本企画が目的の効果をあげていることが読み取れるが、より
客観的な評価方法を目指すという点ではまだ改善の余地があり、次年度に向けてよりよいルーブ
リックの作成を目指したい。
(5)学会発表、論文発表、受賞、マスコミ取材等の実績
なし
4
6.業務の実施体制
6-1 業務担当者
【実施機関】
所
属
職 名
京都大学
総長
副学長
理事
理事補
理事補
工学研究科長補佐・教授
氏 名
山極 壽一
森脇 淳
北野 正雄
木南 敦
飯吉 透
大嶋 正裕
農学研究科長
宮川 恒
農学副研究科長・教授
天野 洋
地球環境学堂長
藤井 滋穂
総合博物館館長
大野 照文
教授
加藤 博章
副研究科長・教授
長田 哲也
講師
常見 俊直
研究員
研究員
研究員
研究員
教務補佐員
派遣職員
派遣職員
川添
門川
飯田
松影
橋爪
桝谷
関口
達朗
朋樹
英明
香子
圭
洋平
陽子
本事業に於ける役割
実施責任者
ELCAS 運営協議会議長
高大接続科学教育ユニット構成員
ELCAS 運営協議会協議員
ELCAS 運営協議会協議員
ELCAS 運営協議会協議員、
工学部担当
ELCAS 運営協議会協議員、
農学研究科担当
ELCAS 運営協議会協議員、
農学研究科担当
ELCAS 運営協議会協議員、
地球環境学堂担当
ELCAS 運営協議会協議員、
総合博物館担当
ELCAS 運営協議会協議員、
薬学研究科担当
ELCAS 運営協議会協議員、
理学研究科担当
ELCAS運営協議会協議員、
主担当者
コーディネーター
サブコーディネーター
サブコーディネーター
サブコーディネーター
サブコーディネーター
事務補助
事務補助
6-2 実施体制及び連携機関等との連携等に係る効果や課題、その他について
これまでに実施した事業はおおむね計画通りに遂行できており、連携機関とも良好な協力関係を構
築できている。あえて問題点をあげるとすると、実施に関連する事務的な作業において受講生との情
報共有および受講生への連絡体制の改善が今後の課題である。今年度、152 名もの多くの受講生を初
めて受け入れた。大学生や教員であれば、全員パソコン上での電子メールアドレスを有しており、様々
な連絡事項を瞬時に同時に発信することが出来る。また多くの情報を添付ファイルで送ることも可能
である。一方、受講生は高校生ということもあり電子メールアドレスを有していない生徒も多いため、
電子メールでの一斉配信が難しく、連絡は郵送に頼らざるを得なかった。そのため、急な予定変更の
連絡やレポートなどの書類のやり取りには煩雑さや困難がともなった。今後、受講生との効率的な連
絡体制をいかにして構築するかを考える必要がある。
5
7.企画の成果とその分析、自己評価
7-1 達成目標に対する自己評価
<達成目標の達成度>
1.達成できた、2.どちらかというと達成できた、3.どちらかというと達成できなかった、
4.達成できなかった
領域
1.募集・選抜
2 .教 育 プログラムの
開発または改善 と実
施
3.受講者の評価方
法 の開 発 または 改 善
と実施
4.人材育成の達成
水準
5.連携機関等との連
携・協力関係の構築
など、運営体制につい
て
6.総合評価
自己評価とその理由
自己評価:< 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 >
理由)受講者の目標人数は 150 名であったが、応募者 300 名(一般公募 AB 179
名、一般公募 C 19 名、教育委員会推薦 102 名)から 152 名を選抜し、目標を
達成することができた。
自己評価:< 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 >
理由)内容の異なる 16 分野で実習を開講することができ、目標をほぼ達成す
ることができた。今年度は本プログラムの初年度であり専修コースや国際クラ
スがまだ本格的に開始されていないため、英文によるレポート作成指導やグロ
ーバル社会に向けた人材育成という点においては次年度の課題として残った。
自己評価:< 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 >
理由)実習ごとにポートフォリオの作成を受講生全員に義務付け、実習の目的、
結果、考察(議論)、結論を論理的にまとめるように指導した。提出されたポ
ートフォリオから、本企画が目的の効果をあげていることが読み取れるが、よ
り客観的な評価方法を目指すという点ではまだ改善の余地がある。
自己評価:< 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 >
理由)2で述べたように、専修コースがまだ本格的に開始されていないことも
あり、受講生の人数に対する、学外での研究発表件数という点で、やや課題が
残った。今後専修コースが開始され、受講生の研究発表機会が増えることで、
目標を達成できると考えられる。
自己評価:< 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 >
理由)連携する教育委員会から 100 名程度の推薦を受けることを事業目標とし
て掲げ、102 名の推薦を受けた。また学内では各部局の協力を得てバランスよ
く開講分野を立ち上げることができ、当初の目的を達成できた。
自己評価:< 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 >
理由)平成 26 年度であがった課題は、平成 27 年度から全プログラムが稼働す
ることによって、当初の目的が達成されることが見込まれる。従って半年間あ
まりの平成 26 年度の自己評価としては「達成できた」とした。
6
7-2 目標達成状況の分析と次年度以降への課題
全学的な取り組み、各部局の教員の協力によって、理学研究科、工学研究科、情報学研究科、農学
研究科、薬学研究科、地球環境学堂から内容の異なる 16 分野で各々体系的、創造先進的な講義・実習
を開講することができ、高校生を対象とした基盤コースの実習としては目標以上の充実した内容を提
供することができた。基盤コース終了後に京大 ELCAS 事務局で独自に行った全受講生へのアンケート
でも 95%が講義・実習内容を評価しており(大変良かった:77%、良かった:18%、普通:4%、よ
くなかった:1%)、内容の難易度に関しても 71%が理解できた(よく理解できた:19%、理解できた:
52%、難しかった:28%、大変難しかった:1%)、と回答した。また、難しかったと答えた受講生の
多くが、アシスタントとして本事業のサポートをしてくれた大学院生による個別対応型の補助的指導
で「難しかったけれど最終的には理解できた」と回答していた。
受講生の募集・選抜に関してはコンソーシアムを形成している教育委員会の協力および選抜試験を
通して、152 名の高校生を受け入れることができた。実習を担当した教員からは受講生の理解力の良
さ、やる気の高さ、勤勉さを評価する意見が多く聞かれた。将来優れた研究者になる可能性を感じさ
せる受講生も見受けられるとの評価をする教員もあった。
山極総長による開校式での「京都大学の創造の精神フィールドワークの世界」と題した講演が受講
生に大変好評で多くの受講生を触発してフィールドワーク実習への要望が高まったにもかかわらず、
当初の計画ではフィールドワーク実習が本企画に組み込まれていなかった。その不一致を改善して本
企画をよりよいものにするため、3 月 25-28 日に屋久島において、生物学・地球科学合同のフィール
ドワーク実習を行った。この実習は、関連する分野の専修コース受講予定者と、基盤コースで関連す
る分野を受講した高校生を対象に行い、各分野を専門とする ELCAS スタッフだけでなく山極総長も人
類学の専門家として現地で指導にあたった。実習直後に実施したアンケートでは受講生全員が大変良
かったと答えている。この実習の教育的効果は今後専修コースの課題を進めていく段階で顕在化して
くると期待される。
今年度は本プログラムの初年度であり専修コースや国際クラスがまだ本格的に開始されていないこ
とから、英文によるレポート作成指導やグローバル社会に向けた人材育成、学外への研究成果の発信
という点ではまだ道半ばで次年度の課題として残ったが、初年度として順調な滑り出しができた。
7-3 その他特記事項(特筆すべき成果や、他の実施機関と共有したいノウハウやメッセージなど)
本企画で特筆すべき成果のひとつとして、危険が伴う野外実習を綿密なコーディネーションによっ
て無事に成功させたことがあげられる。参加するのが高校生ということもあり、特に危機管理には細
心の注意を払った。事前にガイダンスを行い、野外に出るにあたっての心得や持ち物、服装に関する
指導を行った。野外調査を伴う研究を行っている学部生および大学院生がアシスタントとして同行し
て、高校生 2-3 人に対して指導者が1人付くようにした。現地では GPS を持たせ、地形図や方位磁石
の使い方を指導し、各々が自分の位置を自ら把握できるようにした。全員保険に加入させるとともに、
万が一の事故の時に迅速に対応できるよう搬送用および荷物運搬用のレンタカーを用意し、連絡要員
も配置した。実習場所は、生物学および地球科学の両方の実習を効率よく効果的に行えて自然を総合
的に理解できるところ、かつ京都大学の研究者が研究対象としてきた地域を選んだ。宿泊を伴う野外
実習は実地で自然そのものを集中的に観察するため教育効果が高いことはよく知られているが、高校
生を対象にした企画では危険が伴うために実施に躊躇することが多い。しかし危機管理や事前準備を
綿密に行い、適切な人員配置を行うことで、実施が可能であることが本学の取り組みで示された。
野外実習だけでなく室内実験においても理学研究では多少の危険が伴う。また高校生が高価な装置
を過失で壊すことも考えられる。各実施機関で危機管理や保険制度利用方法のノウハウが共有できる
とよい。
7
8.次年度以降への課題への取組と展望
今年度は本プログラムの初年度であり専修コースや国際クラスがまだ本格的に開始されていないこ
とから、英文によるレポート作成指導やグローバル社会に向けた人材育成、学外への研究成果の発信
という点で課題が残った。平成27年度に本格的に始動予定の専修コース、国際クラスが順調に開始
され、よりよいプログラムを受講生に提供できるよう更なる努力をしていく。さらに残された課題に
取り組んでいく。
一方で、従来の分野にとらわれない分野横断型のプログラムの充実、個に対応したきめ細やかなプ
ログラムの開発を、より一層進めていく。
人材育成の達成水準の評価に向けた取り組みとして、受講者の評価方法の開発、特にルーブリック
を用いた独自の評価手法の開発を引き続き進める。
9.JSTへの意見・要望
教育に関連する予算の使い方に関して、やや柔軟性に欠け教育現場の実際に即してないと思われる
点がある。教育に当てる予算の増加および、教育現場で使いやすい予算枠の拡充をお願いしたい。
京都大学は多くの教育委員会と連携してコンソーシアムを形成することで広い地域から優秀な受講
生を受け入れて効果的な事業運営を行うことができ、遠方の受講生にも交通費の援助を行うことが可
能になっている。このシステムは本学にとっては大変ありがたいが、このような本学の活動が、後発
の近隣の他大学の活動への大きな支障にならないような予算の使い方に関するルール作成を意識し、
適切で効果的なコーディネーションおよび広報活動をされるようにお願いしたい。
8
Fly UP