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実感を伴った理解を図る理科授業
帝京大学教職大学院年報 3 :133-134 平成24年(2012年)8月 実感を伴った理解を図る理科授業 ∼ 1 枚ポートフォリオの活用∼ 土 屋 恵 一 帝京大学教職大学院ストレート・マスターコース キーワード:実感を伴った理解、OPPシート、自己評価 Ⅰ 研究の背景と目的 学習前後に同じ問いに答える。学習前には診断的評価 となり、学習後には統括的評価となる 今回の改訂された学習指導要領では、小学校理科にお ②学習履歴 いて、教科目標に「実感を伴った理解」という文言が付 各授業の題名と、その授業で 1 番大切だとおもうこと け加えられた。このことは、理科の学習に対する意欲は を記入していく。授業者にとっては学習者がこの時間に 他教科と比較して高いといえるが、それが大切だという 何をしたのか形成的評価となる 認識が低いことが国内外の調査で指摘されており、その ③自己評価 反映から学んだことが実生活へ生かされていないことに 課題があることが考えられる。 学習履歴を振り返りこの学習で何を学習したのか、ど う変容したかを評価する。 本研究では、実感を伴った理解を図る理科授業を考察 していくための方法として、OPPシートを用いる。OPP 3.授業実践 第 4 学年「人の体のつくりと運動」 シートの記述から、児童の見方や考え方が 1 つの単元を 学習していく中で、どのような思考を辿って科学的な見 時 学 方や考え方へと変容していくのかを見取り、実感を伴っ 1 ロボット体験をしてみよう た理解を図る手立てを考えていきたい 習 活 動 ・関節を固定するロボット体験をする 2 Ⅱ 研究の方法 体の曲がるところを調べてみよう ・体の曲げられるところをシートに書く 3 1.「実感を伴った理解」について 新学習指導要領解説理科編によると「実感を伴った理 解」とは、具体的な体験を通して形づくられる理解、主 ・腕の骨のつくりや役割を話し合う 4 人の体にはどのようなほねがあるか ・骨のつくりと役割を話し合う 体的な問題解決を通して得られる理解、実際の自然や生 活との関係への認識を含む理解の 3 つの側面で定義して うでにはどのようなほねがあるか 5 きん肉の動きを調べよう ・牛乳パック模型を作る いる。 さらに私は、「自分自身の学びの変容を感じられる理 解」を付け加えることが必要だと考える。 6 他の動物のほねやきん肉を調べよう ・ ・調べてみたい動物についてどんなこと 7 を調べるかを決める 人と他の動物の体のつくりを比べよう 2.OPPシート OPPシートは、A 3 用紙 1 枚に単元を貫く「本質的な 8 ・調べてわかったことを話し合いまとめ る 問い」、「学習履歴」、「自己評価」から構成される。 ①本質的な問い − 133 − 土屋:実感を伴った理解を図る理科授業 Ⅲ 研究の結果 教師は児童の記述からその後の授業計画を見直してい くことができ、指導と評価の一体化を図ることができた。 1.学習前の記述 (3)思考力・判断力・表現力の育成につながる 「骨があるから」、「筋肉があるから」といった骨、筋 肉といった言葉を使って説明する児童が18人(81%)、 「力があるから」、と答える児童は 2 人(9%)、「関節が あるから」と答えた児童は 3 人(13%)「骨、筋肉、関 今日の学びを「 1 番大切なこと」文字言語で整理する ことを通じて思考力・判断力・表現力の変容を捉えるこ とができた。 (4)児童が自己の学びを一覧でき自己評価ができた 節があるから」と 3 つの言葉を使って答えた児童は 2 人 ( 9 %)だった。 自己評価(教師→授業評価・児童→学習評価)に必要 な最小限の情報を最大限に活用し評価を行うことができ る。 2.学習後の記述 学習後に「関節があるから」と答えた児童は19人 (86%)となった。学習前の 3 人からは飛躍的に上がっ 2.今後の課題 (1)OPPシートの本質的な問いについて ているものの100%には達していない。また、 「骨、筋肉、 実際に児童の記述では「関節があるから」という記述 関節があるから」と 3 つの言葉を使って答えた児童は14 が19人(86%)も見られた。そう考えるとこの問いは単 人(63%)だった。 元を貫く「本質的な問い」としては、指導内容から考え てもう少し吟味する必要があった。今後も問いの設定に 3.学習前・後を比較したときの自己評価 は吟味していきたい 学習前と学習後を比較し、単元の学習を通して自分の (2)OPPシートのコメントについて 記述が変わっていることに気が付き、全員の児童が学び による自身の変容を実感している記述が見て取れた。 学習前 学習後 振り返り 人数(人) ○ ○ ○ 2 × × ○ 14 × × ○ 6 合計 学習履歴に対する教師のコメントが児童の内省や内化 を促すきっかけとなる。どのようなコメントをすれば児 童の理解を深めることができるのかという点は今後考え ていきたい。 (3)主体的な問題解決の活動について 児童の体験から得た疑問を学習問題に集約できるよう 22人 にし、児童が必然性を持った学びにするための手立てを ※「○」は十分な回答 構築し実感を伴った理解を図るため主体的な問題解決が (骨、筋肉、関節の3つを記述) 行えるようにしていきたい。 「×」は不十分な回答 (骨、筋肉、関節の3つのいずれかが欠 けている) Ⅳ 考察 1.研究の成果 (1)学習前の児童の実態把握ができた OPPシートの活用により、児童の実態を把握すること によってより綿密な授業計画を作成することができた。 (2)学習中の児童の「思考」を把握し、次時の指導に生 かすことができた。 − 134 −