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第2章 - 農林水産省

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第2章 - 農林水産省
第2章
∼健全な食生活と食の安全・消費者の
信頼の確保に向けて∼
(田植後の水田)
(日本型食生活の例)
本章では、農業のあり方等にも大きな影響を及ぼす「食料消費」
、「食品産業」
、
「食生活」
、「食の安全と消費者の信頼の確保」に焦点を当て、その動向や課題等
について、主として次の点を記述しています。
○ 食料消費については、人口減少や少子・高齢化等に加え、価格低下により近
年消費全体(国民の胃袋)が縮小傾向にあること、「食の外部化や簡便化」が
進展していること、健康志向が続く一方で低価格志向が高まっていること
○ 食品産業は食料の安定供給等の重要な役割を果たしており、食料消費の動向
等の情勢変化のなかで、新たな展開が必要であること
○ 食生活については、栄養面、朝食の欠食等で依然として課題があるなかで、
食育が一層必要であり、各地でもそれぞれの工夫による取組が進んでいるこ
と
○ 食品の安全性向上のためには、農場から食卓にわたって、科学的な根拠に基
づいた施策を推進することが必要であること
○ フードチェーンにおいては、農業生産工程管理(GAP)
、危害分析・重要管
理点(HACCP)等の取組が必要であること。また、トレーサビリティ等の取
組や、表示による一層の情報提供に向けた取組等も必要であること
23
(1)
食料消費と食品産業の動向
○ 食料消費の動向をみると、国民1人当たりの摂取熱量は、昭和45年(1970年)から一貫
して減少。また、供給熱量は平成8年度(1996年度)をピークに近年減少。世帯員1人
当たり食料消費支出をみても、近年、名目・実質とも減少。今後、人口減少や高齢化が一
層進行していくことにより、我が国全体の食料消費量や支出額(国民の胃袋)は縮小。
○ また、食料消費支出の構成をみると、生鮮食品の占める割合が大きく減少する一方、外
食、そう菜・弁当・レトルト食品等の調理食品の割合が増え、
「食の外部化や簡便化」が
進展。
2−2 世帯員1人当たり食料消費支出の推移
2−1 国民1人当たり摂取熱量・
供給熱量の推移
千円/月
実質食料消費支出 23.3
25
20.4
kcal/日
2,800
2,670
2,600
2,400
2,530
20
2,473
供給熱量
2,210
2,000
1,867
摂取熱量
0
1970年75
80
85
90
95 2000 05 08
資料:農林水産省「食料需給表」
、厚生労働省「国民健康・
栄養調査」
注:供給熱量は年度ベースの数値
22.1
21.3
名目食料消費支出
15
10
2,200
23.6
6.8
5
0
1970年 75
80
85
90
95 2000 05 09
資料:総務省「家計調査」
、
「消費者物価指数」を基に農林水
産省で作成
注:1)
食料消費支出は二人以上の世帯(農林漁家世帯を除
く)
2)
食料消費支出の実質化には2005年を100とした消費
者物価指数(食料)を使用
2−3 消費者世帯の種類別食料消費支出割合の推移
100
80
60
%
9
9
4
31
8
9
10
10
10
飲料・酒類
13
16
17
17
17
外食
11
12
12
調理食品
31
31
32
加工食品
生鮮食品
6
31
8
31
40
20
47
42
37
31
30
29
80
90
2000
05
09
0
1970年
資料:総務省「家計調査」
、
「消費者物価指数」を基に農林水産省で作成
注:1)
二人以上の世帯(農林漁家世帯を除く)
、名目値
2)
生鮮食品は米、生鮮魚介、生鮮肉、卵、生鮮野菜、生鮮果物。加工食品は生鮮食品、調理食品、外
食、飲料・酒類を除く食料すべて
24
第2章
健全な食生活と食の安全・消費者の信頼の確保に向けて
○ 近年の経済動向をみると、景気は着実に持ち直してきているものの、なお自律性は弱
く、失業率が高水準にあるなど厳しい状況。
○ 消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)が下落傾向にあるなか、食料品の消費者物価指
数も緩やかに下落。
○ 食に対する消費者の意識をみると、経済性志向が平成20年(2008年)の27%から平成
22年(2010年)には43%まで上昇するとともに、手作り志向は35%から40%まで高まり。
すなわち、近年の景気悪化を背景に節約意識や内食傾向。
○ 食料品価格が下落するなか、食品関連企業の収益の落ち込みがみられ、食料分野でもデ
フレスパイラルが懸念。今後の状況によっては、農産物販売価格の低下等を通じて農家所
得にも大きな影響を及ぼし得るものであり、動向を十分注視していく必要。
2−4 食に対する消費者の志向の変化(複数回答)
%
50
41
40
40
35 34
2008年5月
2009年7月
2010年1月
35 35 34
43
35
30
27
26
20
20
18
16
15
24
16
12
9
10
12
5
0
安全志向
手作り志向
健康志向
経済性志向
国産志向
簡便化志向 ダイエット志向
資料:
(株)
日本政策金融公庫「消費者動向調査」
注:全国の20∼60歳代の男女を対象としたインターネット調査(回答総数2千人)
2−5 食料品の物価指数の推移
(2005年=100)
指数
110
国内企業物価指数
(調製食品)
108
2−6 食料分野のデフレスパイラルの
イメージ
物価下落
企業売上減少
106
104
消費者物価指数
(調理食品等)
農家所得
の減少
102
100
98
2007年
1月 4
個人消費
減少
08
09
10
7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 3
資料:総務省「消費者物価指数」
、日本銀行「企業物価指数」
を基に農林水産省で作成
注:国内企業物価指数における調製食品の品目に対応する
消費者物価指数の品目を抽出し、新たに指数(調理食
品等)を算出
企業収益低下
仕入価格値下げ
企業行動
慎重化
(設備投資抑制、雇用調整等)
資料:農林水産省作成
25
○ 食品産業は、国民生活に不可欠な食料の安定供給を担うとともに、経済面、雇用面でも
大きな役割。全経済活動の総生産に占める農漁業の割合が高い地域では食品産業の割合も
高く、地域経済においても重要な地位。また、国産農林水産物の3分の2以上が食品製造
業及び外食産業仕向けとなっているなど、食品産業は国産農林水産物の最大の需要先。
○ 今後、国内市場規模拡大が厳しい一方、消費者の安全・健康、簡便化、低価格志向、原
料農産物の調達リスクの高まり、アジア諸国等新興国の市場の拡大、環境問題等への対応
のための事業基盤の強化等の必要性も増大。
○ また、食品流通については、さらなる合理化、効率化が求められているとともに、コー
ルドチェーン体制の整備等による品質管理の高度化や、取引の透明性の確保や合理化等に
よる卸売市場の機能強化等が必要。
○ 平成22年度(2010年度)中にこれら課題への対応方向等を明らかにする「食品産業の将
来方向(仮称)
」を策定。
2−7 全経済活動の総生産に占める食品産業等の割合(2005年)
300
200
100
0
兆円
207
18
15%
10
5
0
14.8
2.0
9.6
1.9
3.7
2.7
1.3
全国
5.1
3.2
13.0
1.6
4.4
3.9
4.5
北海道
3.1
東北
78
55
30
8.7
2.0
3.4
2.5
0.8
関東
全経済活動の総生産
41
28
13
農漁業・食品産業の割合
8.9
8.6
8.2
1.9
1.5
1.8
3.7
3.7
3.1
2.3
2.4
2.8
0.9
1.1
0.5
中部
近畿
中国
12.4
1.9
10.8
1.6
4.0
4.5
3.5
2.6
2.6
四国
2.5
九州
3
11.0
3.0
飲食店
4.1
関連流通業
2.2
1.7
沖縄
食品工業
農漁業
資料:総務省他9府省庁「平成17年産業連関表」
、経済産業省他「平成17年地域産業連関表」
、経済産業省「平成14年商業統計
調査」
、
「平成19年商業統計調査」を基に農林水産省で作成
注:1)関東は山梨、長野、新潟及び静岡県を、近畿は福井県を含む。中部は富山、石川、岐阜、愛知及び三重県
2)
農漁業は特用林産物を含む数値
3)
食品工業は飲料及びたばこを含む数値
4)
飲食店は一般飲食店、喫茶店及び遊興飲食店の計
5)
関連流通業は、農林水産物及び飲食料品の出荷・販売にかかる商業(卸売、小売)マージン及び運賃であり、商業統
計調査を用いて推計
2−8 小売業の食料品販売額の対前年(同月)増減率の推移
%
10
5
スーパーマーケット
百貨店
コンビニエンスストア
0
-5
-10
2004年 05 06 07 08 09
09年
1月 2
3
4
5
6
7
8
9
10年
10 11 12 1月 2
資料:日本百貨店協会、日本チェーンストア協会、(社)日本フランチャイズチェーン協会の資料を基に農林水産省で作成
注:1)
いずれも店舗数調整後(既存店ベース)の数値
2)
百貨店・スーパーマーケットは食料品に限り、コンビニエンスストアは非食品、サービスを含む。
26
3
第2章
(2)
健全な食生活と食の安全・消費者の信頼の確保に向けて
食生活上の課題と食育の推進
○ 昭和55年(1980年)ごろには、米を中心として水産物、畜産物、野菜等多様な副食から
構成され、栄養バランスに優れた「日本型食生活」が実現。しかし、近年は、PFC(た
んぱく質、脂質、炭水化物)の栄養バランスの崩れが継続。また、朝食の欠食率は、男女
20歳代・30歳代で20∼30%となっていることをはじめとして、依然として高水準であり、
こうした食生活の状況のなかで、生活習慣病も増加。
○ 食に関する知識等を身に付け、健全な食生活を実践できる人間を育てるため、食育の一
層の推進が重要。望ましい栄養バランスを実践するための「食事バランスガイド」につい
ては、これを参考にして食生活を送っている人の割合は平成20年(2008年)で18%にと
どまっており、一層の活用促進が必要。
○ 各地域で生産された農産物を地域で消費する地産地消の取組のうち、学校給食における
地場産物の活用率は23%にとどまっており、関係機関の連携等一層の取組が必要。
2−9 年齢別脂質エネルギー比率(2008年)
(女性)
(男性)
%
40
20%未満 20∼25 25∼30 30%以上
27
25
20歳代
16
30 20
30
32
25
26
40 28
30
24
19
50 32
26
22
21
38
60 45
70歳以上
0
25
33
28
50
11 21
29
15
21
16
23
22
18 11
31
16 10
%
75 100 0
27
40
25
28
26
27
50
39
30
35
25
26
15
20 13
10
%
75 100
資料:厚生労働省「国民健康・栄養調査」
注:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2010年版)
」による
脂質の食事摂取基準は、男女とも20歳代が20%以上30%未
満、30∼70歳代は20%以上25%未満
2−11 糖尿病が強く疑われる、または可能
性が否定できない人の推定数の推移
万人
2,500
2,210
1,500
1,370
1,000
680
1,320
糖尿病の可能
性が否定でき
ない人
890
糖尿病が強く
疑われる人
880
500
0
690
740
1997年
2002
07
資料:厚生労働省「国民健康・栄養調査」
5
0
1987年97 03 04 05 06 07 08
資料:厚生労働省「国民健康・栄養調査」
2−12 学校給食における地場産物活用率
(2008年度、都道府県別)
地場産物の活用率
全国平均 23.4%
2,000
1,620
20
17
26
男性
20歳代
男性
30歳代
女性
20歳代
女性
30歳代
男性
全体
女性
全体
35
40
26
25
2−10 朝食欠食率の推移
30%超
20∼30%
20%未満
資料:文部科学省「学校給食における地場産物の活用状況調
査」
(2010年1月公表)
注:1)完全給食を実施する公立小・中学校のうち、約500
校を対象に実施
2)学校給食に使用した食品数のうち地場産食品数の割
合(食材数ベース)
3)地場産の範囲は、当該都道府県産を指す。
27
(3)
食の安全と消費者の信頼の確保
○ 食品の安全性向上のためには、
「後始末より未然防止」の考え方を基本とすることが重
要。このため、食品中の危害要因の含有実態調査の実施とともに、科学的根拠に基づく取
組を指針として提示するなどの取組。
○ 農場から食卓にわたって安全性を向上させるためには、①農業生産段階においては、農
業生産活動を行ううえで必要な点検項目を、関係法令等に則して定め、これに沿って各工
程を正確に実施、記録、点検・評価し、持続的に改善を行う農業生産工程管理(GAP)
、
②食品加工・流通段階においては、原料受入れから製造・出荷までの過程で危害防止につ
ながる特に重要な工程を常時監視・記録することによって製品の安全性を確保する危害分
析・重要管理点(HACCP)手法等の取組の推進が必要。
○ また、食品について、事故発生時の迅速な回収、安全な流通ルートの確保等のために、
個々の事業者がそれぞれ、食品の入荷や出荷の記録を作成・保存するトレーサビリティ等
の取組の推進が必要。なお、米については「米トレーサビリティ法」を制定し、平成22年
(2010年)10月から施行。
2−13 フードチェーンにおける取組の概要
加工・流通段階
生産段階
取組
主体
生産者
生産物
食品製造業者
農畜水産物
消費段階
食品流通業者
消費者
食品
HACCP
GAP
取組
トレーサビリティ
②実践(Do)
①計画(Plan)
GAP
品目や地域の条件等に応じて、農業
生産活動を行ううえで必要な関係法
令や指針等の内容に則して各点検項
目を設定
点検項目に沿っ
て農作業を行
い、記録
③点検・評価
(Check)
④見直し・改善
(Action)
記録を点検し、改
善できる部分を見
直す
点検項目を見直
し、次作付けで
活用
導入によるメリット:食品安全・環境保全・労働安全・経営改善
HACCP
原料
調合
充てん
密封
加熱
冷却
包装
出荷
重要管理点(CCP)
加熱温度・時間を常時監視、より高い安全性を確保
原料受入れから最終製品までの各工程ごとに、あらかじめ危害を予測し、危害防止につながる特に重要な
工程を常時監視・記録することにより、問題のある製品の出荷を未然に防止する管理手法
トレーサビリティ
生産段階
品目
出荷日
出荷先
出荷量
資料:農林水産省作成
28
流通段階
品目
仕入日
仕入先
仕入量
品目
出荷日
出荷先
出荷量
小売段階
消費者
品目
仕入日
仕入先
仕入量
※矢印の向きは、
商品と問合せの
流れを示す
第2章
健全な食生活と食の安全・消費者の信頼の確保に向けて
○ 食品表示は、消費者が商品を選択するに当たって極めて重要な情報源。不正表示事件が
相次ぐなか、消費者は、取締りの強化等とともに、原料原産地表示の範囲の拡大が必要と
の指摘。今後、より一層の情報提供のあり方、食品事業者の加工食品の原料原産地表示拡
大等について検討していく必要。
○ 我が国では食料供給の多くを輸入に依存しており、厚生労働省の検疫所に対する食品等
の輸入届出件数は近年180万件前後で推移。輸入時の安全確保対策の重要性が増すなか、
輸入時の監視体制の強化とともに、輸出国との二国間協議等による事後的な対応に加え、
未然防止の観点から、計画的な対日輸出食品の情報収集や現地調査を推進する必要。
2−14 食に対する信頼の確保のために今後必要な対策(複数回答)
取締りの強化
85
65
罰金の引上げ
63
原料原産地表示の範囲の拡大
55
トレーサビリティの導入
その他
11
%
10 20 30 40 50 60 70 80 90
0
資料:内閣府「消費行動に関する意識・行動調査」
(2009年2月公表)
注:全国の国民生活モニター2千人(郵送1,012、電子988)を対象として実施したアンケート調査(回収率90.5%)
2−15 加工食品の原料原産地表示義務化対象品目の拡大
加工度(低)
加工度(高)
原料原産地(国名)の詳細
表示義務
原則国名の表示
難しい場合、大括り表示も認める
(「国産」「外国産」「中間加工地」表示をする方法)
多様な情報媒体(ウェブサイト、二次元コード)を用
いた情報提供
品目の
拡大
[品目の拡大に当たっての課題]
1.頻繁な原材料産地の切り替えへの対応
2.物理的スペースの制約
3.原料原産地情報のわからない輸入中間加工品への対応
資料:食品の表示に関する共同会議「消費者と食品事業者との情報共有による信頼関係の構築を目指して」報告書(2009年8
月)を基に農林水産省で作成
注:ウェブサイトを用いた情報提供は、インターネット上に企業が商品の詳細な情報を掲載する方法。また、二次元コード
を用いた情報提供は、商品包装上のコードを携帯電話を通じて消費者に読み取ってもらい、詳細な情報を掲載する方法。
いずれも食品事業者の自主的な取組
2−16 輸入届出件数と輸入食品等検査率等の推移
万件
150
検査率
(右目盛)
179
162 168
届出件数
200
155
161
00
01
186
186
180
05
06
07
違反率 105
(右目盛)
38
50
100
0 1985年度 95
02
03
04
%
14
176
12
10
8
6
4
2
0
08
資料:厚生労働省「輸入監視統計」
注:検査率は輸入届出件数に対する検査実施件数。違反率は検査実施件数に対する違反件数
29
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