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平成27年3月23日付け 消雪の遅れに伴う農業用施設及び
消雪の遅れに伴う農業用施設及び農作物等の管理対策 平成27年3月23日 新潟県農林水産部 新潟地方気象台が3月10日に発表した「今春の雪消えの見通しについて(第2回)」 によると、上中越の山沿い地域では、消雪が平年より5~20日遅れると予想されていま す。 育苗等農作業や農業用施設への影響が懸念されることから、融雪期の管理に十分注意 して消雪を促進するなど的確な対応に努めてください。 また、除雪時等の事故防止に十分留意し、作業を行ってください。 Ⅰ 1 消雪促進対策 地域対策 消雪が遅いと見込まれる地域では、育苗用地等の機械除雪や農用地に融雪促進資材を 散布する。関係機関・団体等においては集落等と連携し、農道等の機械除雪作業を計画 的に実施する。 表1 消雪の見通し (新潟地方気象台 3月10日発表) 地 域 予 想 平年の消雪日 下越山沿い 平年日前後の見込み 下関 3/15、津川 3/25 中越山沿い 平年日より10~20日程度遅い 小出 4/5、十 日 町 4/11、守門 4/22、 津南 4/22、湯沢 4/3 上越山沿い 平年日より5~15日程度遅い 安塚 4/2、関山 4/2 新潟地方気象台のホームページアドレス http://www.jma-net.go.jp/niigata/ 2 融雪促進資材 (1)資材の種類 融雪専用資材又は融雪効果の高い土壌改良資材などを散布する。 散布量は、資材の種類により異なるので必ず確認するとともに、野菜等を作付けし ている畑地や転換畑が混在している場合は、作物への影響を考慮して散布する。 (2)育苗予定地(露地、水田)における資材の選択 融雪促進資材はpHの高いものがあることから、育苗障害を防ぐため、床土のpH に影響を与えない資材を用いる。 (3)融雪促進効果 散布後に降雪があると融雪効果が低下するので、週間予報などの気象情報を把握し て散布予定日を決定する。 なお、融雪促進資材を3月下旬に散布した場合の消雪が早まる日数は、積雪深が 150cm程度の場合7日前後、同200cm程度の場合9日前後である(村松(1982)から引 用)。 Ⅱ 作 物 1 水 稲 (1)育苗用地の確保 ア 育苗予定地の消雪が遅れる場合は、機械除雪や融雪促進資材の散布等を行う。 イ 融雪対策が困難な場合は、共同育苗や少雪地域への委託育苗により苗を確保する。 ウ 融雪水が育苗ハウス内に侵入すると、育苗管理の妨げになるため、ハウス周囲に 明きょを設置する。また、ハウス内の床面は水が溜まらないように均平にする。 (2)育苗時期が遅れる場合の技術対策 ア 4月播種の育苗期間は、稚苗で18~20日、中苗で30~35日となるが、5月播種に なると、気温の上昇により、稚苗で15日前後、中苗で20~25日程度に短縮されるの で、田植えに合わせて播種時期を決定する。 イ 播種時期が遅くなると気温の上昇により浸種水温も上昇することから、浸種から 催芽までの期間が大幅に短縮される。浸種温度が高くなり過ぎると、酸欠や催芽ム ラになるので、水の更新を適切に行い、適正な水温を維持する。 ウ 5月の育苗では4月の育苗と比較して高温になることから、苗ヤケや徒長を防止 するため、遮光率の高い被覆資材を用いるとともに、水管理や温度管理を徹底する。 (3)田植時期が遅れる場合の技術対策 ア コシヒカリの場合、安定した収量・品質を確保するためには、8月20日頃までに 出穂させる必要があり、5月末までに移植することが望ましい(表2)。 イ 6月以降の田植えでは中苗を用い、早生品種を作付けして、収量や品質・食味の 低下を最小限に抑える。 ウ 田植時期が遅れるほど穂数の確保が難しくなるので、栽植密度を高めるとともに、 基肥量を減肥して節間伸長による倒伏を防止する。 エ 田植時期が遅れるほど生育が後ずれし、稲体が軟弱気味になり、いもち病や害虫 が発生し易くなるので、早期発見・早期防除に努める。 表2 コシヒカリの積算温度から見た安全出穂期晩限と移植晩限 地 点 標 高 安全出穂期 晩 限 安定収量品質 確保のための 移植晩限 移 植 晩 限 稚苗移植 中苗移植 小 出 98m 8月26日 稚苗5月25日 6月1~5日 6月10~15日 十日町 170m 8月24日 中苗5月30日 6月1日頃 6月10日頃 入広瀬 230m 8月21日 中苗5月25日 5月25~30日 6月5~10日 津 南 452m 8月19日 中苗5月20日 関 山 350m 8月25日 中苗5月30日 ― 6月1日頃 5月30日頃 6月10日頃 Ⅲ 園芸作物 1 共通事項 (1)消雪の促進 ア パイプハウスで肩部以上の積雪がある場合は、消雪に伴いパイプの破損が懸念さ れることから、除雪機等によりハウス周りの除雪を行う。 イ 消雪が遅延するほ場は、機械除雪や融雪促進資材を散布する。 ウ パイプが設置してあるほ場では雪洞などができているため、滑落等に十分注意し て作業を行う。 (2)融雪水の迅速な排除 ア ほ場内の融雪水が速やかに排出されるよう、可能な限り早めに排水溝を確認し整 備する。また、ハウス内への浸透がある場合は畦シート等で防ぐ。 イ 現在栽培中の作物は、融雪水が畦間に滞水することによる湿害発生が懸念される ため、必ず排水対策を実施する。 ウ 気温が高くなってからの融雪水は、根の腐敗や病害発生を助長するので、できる だけ早く排水対策を実施する。 2 野 菜 (1)育苗に関する技術対策 ア 今後育苗を開始する作目は、消雪予想日から想定される定植日を勘案して、播種 期を決める。 イ 育苗中の苗は、定植遅れによる老化・徒長を軽減させるため、苗床でずらしをか け徒長を防ぎ、育苗後半は液肥の施用により老化を防ぐ。 (2)春作業に関する技術対策 ア 春に定植する野菜は、地温不足による初期生育の遅れや生育不足の原因となるた め、透明マルチなどであらかじめ地温を上げておき定植後はべたがけ資材で保温に 努める。 イ すいか、メロン等の秋施肥マルチほ場は、消雪後のトンネル設置を早めに行い、 地温の上昇を促進させる。定植は地温が十分確保されたことを確認してから行い、 活着を促す。 ウ 消雪後に定植されるトマト、アスパラガス等は、定植時の地温を確保するためマ ルチ被覆を行う。加工用トマトでは配色マルチ等を利用する。 エ アスパラガスで消雪が遅れた場合、収穫開始までの期間が短くなるため、萌芽開 始までに実施する作業が遅れないよう作業準備、作業計画をしっかりと立てておく。 オ 水田転作地のたまねぎ、にんにくは、うね間の融雪水の排水を促し、追肥の施用 を速やかに行う。 3 果 樹 (1)消雪沈降による被害対策 雪が沈降する過程で大きな荷重が発生し、樹体の折損被害を引き起こすことから、 積雪を早急に踏み込みあるいは除去し、樹体や棚の埋没を極力少なくする。 (2)消雪に伴う凍霜害対策 消雪が進み、樹体が露出するようになると、晴天時の夜半から早朝にかけての放射 冷却による低温により凍霜害が発生しやすい。特に、いちじくの一文字仕立て栽培で は被害を受けやすいので、消雪後速やかに保温資材(不織布、アルミ蒸着シート等) で覆う。 (3)消雪後の栽培管理対策 ア 主幹や主枝が裂開した場合は、程度に応じてボルトで締めて傷口を固定し、傷害 部を乾かさないよう速やかにビニール資材を巻いたり、保護剤を塗布するなどの処 置を講ずる。生育の回復が数年にわたると見込まれる大きな損傷の場合は、片方を 切断し保護剤を塗布するとともに改植を準備する。 イ 主幹部が傾いた樹では根部が切断している場合があるので、被害程度に応じ地上 部を切りつめる。 ウ 消雪が遅れた場合は野そ、野兎等による食害も多くなることから、消雪時に主幹 地際部などを点検し、被害部は保護剤を塗布する。 エ 休眠期防除やぶどうの半加温作型等における被覆等、遅れが想定される作業につ いて、消雪後すぐに対応できるよう準備を整えておく。 4 花 き (1)消雪の促進 ユリの秋植え栽培や2度切り栽培の萌芽が遅れ、また春作業が遅れることから季咲 き作型の出荷期集中が予想されるので、出荷期が集中しないようほ場毎の除雪や融雪 促進資材散布等の計画を立てる。 (2)消雪後の栽培管理対策 ア 積雪の荷重による固化など土壌物理性の悪化が懸念されるため、作付け前の土壌 調査などにより確認し、深耕や有機物の投入など土づくり対策を講じる。 イ 作付けが大幅に遅れて強光・高温期の定植となる場合は、遮光などにより高温障 害の発生を防止する。