Manufacture of an Advanced Plastic Injection Mold by Laser Sintering
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Manufacture of an Advanced Plastic Injection Mold by Laser Sintering
金属光造形複合加工法による 高機能射出成形金型製作 漆 崎 幸 憲 上 出 義 和 ㈱ 松浦機械製作所 金属光造形複合加工機 LUMEX Avance-25 は積層造形と切削加工を備 えたハイブリッド加工装置である。本加工法は金型技術の海外流出に歯 止めをかけるべく、プラスチック射出成形用金型製作を目的として開発 され、金型製作期間・コストの低減を実現している。 1.緒言 近年、モバイル機器に代表されるような製品ライフ て、ワンマシン・ワンプロセスで試作量産に対応可 サイクルが短く生産ロット数が少ない多品種少量生産 能なプラ金型を製作できる「金属光造形複合加工法」 の製品が続々と開発されており、開発段階からリード が開発された。マツウラでは金属光造形複合加工機 タイム短縮、品質確保、コスト削減がますます要求さ 『LUMEX Avance-25』 (写真 1)を製品化し製造販売 れている。これに対応するため、短納期・低コストの を行っている。本稿では金属光造形複合加工法及び プラスチック射出成形用金型(以降、プラ金型と記す) 加工機と、本加工機にて製作した金型の事例につい 作りを目的として、積層造形技術のひとつである「金 て紹介する。 属光造形法」が使用されるようになったが、造形品の 寸法精度と表面粗さがプラ金型として使用できるレベ ルではなく、後工程として切削加工や放電加工などが 不可欠となることにより製作期間やコスト等の面でメ リットが少ないため、普及は進んでいない。 このような背景から、プラ金型の製作において短納 期・低コストとスキルレス化・長時間無人運転の実現 を目的として、レーザで金属粉末を直接溶融・焼結し てニアネットシェイプに積層造形する「金属光造形法」 と、株式会社松浦機械製作所(以降、マツウラと記す) のコア技術である「高速・高精度切削加工」を融合し 写真 1 金属光造形複合加工機『LUMEX Avance-25』 2.金属光造形複合加工法とは 48 2.1 金属光造形法 に、造形テーブル上に材料となる金属粉末を供給し 金属光造形法は薄い層を重ねて 3 次元形状を造形 て薄い層を作り、レーザビームの照射により所望の する積層造形技術のひとつである。図 1 に示すよう 断面形状を瞬間的に溶融、凝固させる。さらに造形 SOKEIZAI Vol.53(2012)No.9 特集 多様なニーズに対応する金型材料と積層金型技術 テーブルを 1 層の厚さ分下げて同様に粉末を供給し を 行 う。LUMEX Avance-25 で は 通 常 1 層 の 積 層 てレーザビームを照射する。この工程を繰り返して 厚さ:50 m にて造形を行い、10 層分造形した段階 積層することによりレーザビームによる溶融部分が (0.5 mm)で切削加工を行う。この造形と切削の工程 立体形状となる。レーザビームが照射されていない を繰り返すことにより、表面が仕上げ加工された 3 部分は粉末のままの状態であり、再利用が可能であ 次元形状の造形物をワンマシン・ワンプロセスで作 る。なお、レーザビームの照射プログラムは 3 次元 製する。その加工精度は±25 m 以内、面粗度は最 モデルから作成される。 大高さ(Rz)で 10 m 以内である。写真 2 に金属光 金属光造形による造形物の特徴としては、アン 造形法の造形物と、本複合加工による造形物の写真 ダーカット形状や中空構造など通常の機械加工では を示す。 加工できないような形状も含め、比較的自由な形状 この加工法の特徴として、造形の途中で切削加工 の造形が可能であることが挙げられる。しかしなが することにより従来マシニングセンタでは加工でき ら、粉末材料を使うという特性上、寸法精度や面粗 なかった深いリブや深穴の加工が、一般的に市販さ 度が数百 m となり(使用する粉末材料による)、プ れている通常の切削工具を用いて加工することが可 ラ金型として使うためには後加工として機械加工や 能ということが挙げられる。この特徴により、プラ 放電加工がどうしても必要となる。 金型の製作において従来必要としていた放電加工、 放電加工用電極の作製といった工程を削減し、且つ 2.2 金属光造形複合加工 多数個に分割して作製する必要のあった金型を一体 図 2 に金属光造形複合加工法を示す。この複合加 型、または最小の分割数で作製することが可能と 工法では、金属光造形にてある高さまで造形した なった。 段階で造形物の表面となる部分の切削仕上げ加工 スキージングブレード レーザ 金属粉末 材料テーブル 造形テーブル 粉末供給 レーザ焼結 図 1 金属光造形方法 写真 2 金属光造形(上)と複合加工(下) の造形物比較 図 2 金属光造形複合加工法 Vol.53(2012)No.9 SOKEIZAI 49 3.金属光造形複合加工機の紹介 3.1 機械の構成 れた酸素は機械後部より機外に排出されるので、 LUMEX Avance-25 の主な構成と特徴を以下に 密閉された部屋で本加工機を稼働しても、オペ 示す。 レータが酸欠になることはなく安全である。 (1)金属光造形機構と高速・高精度切削加工機構を (6)造形テーブルには予熱ヒーターを装備し、加工 コンパクトにハイブリッド、ワンマシンにまと 開始から終了までの造形部温度を極力一定化す めた。 ると同時に、その周囲を冷却プレートで冷却し、 (2)切削加工のためにマツウラの持つキーテクノロ ジーの一つである高速・高剛性主軸を搭載。標 造形・切削加工における機械の熱変位量を最小 とした。 準仕様として主軸テーパ特殊 # 20 仕様(最大回 (7)長時間にわたってレーザ金属光造形と切削加工 転数:45,000 min )、オプションではφ6 mm の を繰り返すので、切削工具を 20 本収納できる工 主軸コレット仕様(最大回転数:60,000 min-1)の 具交換装置を標準で装備。切削工具は自動運転 主軸を搭載し、小径工具を用いるに際し、十分 中でも機外の段取ドアから交換が可能となって な回転数を実現している(写真 3)。また、加工 いる。また工具の破損・摩耗を検出するために ヘッドの送り駆動軸(X/Y/Z)にはリニアモータ 自動工具長測定装置や工具寿命管理機能も標準 を搭載して軸送り加減速度を高め、微細・複雑 で装備した。 -1 形状の切削における加工時間短縮を実現した。 (3)上下に昇降可能な造形・切削加工テーブルを機 械中央前面に配置し、オペレータからの接近性 (8)造形位置と切削加工位置を自動一致させるため、 CCD カメラと自動補正ソフトを標準で装備して いる。 と作業性を良くした。また材料粉末供給はその タンクを操作盤の裏側に、造形部への供給機構 3.2 機械仕様 は造形・切削加工テーブル右横にコンパクトに LUMEX Avance-25 の主な仕様を表 1 に示す。 配置した。なお材料タンクへの材料粉末補給は、 造形・切削加工中でも機外から可能とした。ま た切削工具についても造形・切削中の補給・交 換を可能とし、補給・交換による造形・加工室 内への窒素再充填を不要とした。 (4)レーザビームの走査は弊社製のガルバノメータ を採用したミラー走査である。コントローラは 弊社製のデジタル制御とし、絶対値エンコーダ を採用し高精度位置決めを実現している。また、 レーザ発振器は最大出力 400W の Yb ファイバー レーザを採用、本レーザ発振器の冷却用チラー を標準で装備している。 (5)造形室内を窒素(無酸化)雰囲気にする方式とし て、付属の窒素分離装置により本機に供給され る圧縮空気を窒素と酸素に分離して、造形室内 に窒素のみを送り込む方式を採用した。分離さ 表 1 機械仕様 最大造形サイズ 250 × 250 × 185(mm) 最大許容重量 90(kg) レーザ発振器 Yb ファイバーレーザ レーザ最大出力 400(W) 加工点ビームスポット径 φ 0.1 ∼ 0.6(mm) レーザ走査方式 ガルバノメーターミラー 最大レーザ走査速度 5.0(m/s) 主軸回転速度 45,000(min-1)/Op. 60,000(mm-1) 最大軸送り速度 X / Y / Z 60 / 60 / 30(m/min) 最大加速度 X / Y / Z 1.0 / 1.0 / 0.5(G) 工具収納本数 20(本) 最大工具径 φ 10(mm) 3.3 造形テクノロジー (1)レーザ発振器 金属光造形複合加工機の開発当時は炭酸ガス レーザを搭載していたが、加工精度の追求と加工 時 間 の 短 縮 と を 実 現 す る た め に、 現 状、LUMEX Avance-25 には最大出力 400 W の Yb ファイバーレー ザを搭載している。ファイバーレーザはビーム品質 が高いことにより、ビームスポット径の微細化が可 能 で あ る。LUMEX Avance-25 で は 加 工 点 に お い -1 -1 写真 3 45,000 min 主軸(左)と 60,000 min 主軸(右) 50 SOKEIZAI Vol.53(2012)No.9 て 0.1 mm の最小ビームスポット径を実現している。 特集 多様なニーズに対応する金型材料と積層金型技術 Ag XYミラー Cu Zフォーカスレンズ オブジェクトレンズ Al 吸収率 焦点距離(Z+ΔZ) Carbon steel Ni ΔZ補正 造形テーブル Excimer Laser Fiber Laser/YAG Laser CO2 Laser 図 4 ビームスポット径の制御 波 長 図 3 各種金属材料におけるビーム波長と吸収率の関係 において指令値通りのビームスポット径を得ること また、ビームの安定性の高く、メンテナンスフリー が可能となっている。 であるため、安定した造形状態を保つことが可能と なっている。さらに図 3 に示すように、炭酸ガスレー (3)照射エネルギーの制御 ザと比較して各種材料に対する吸収率が高いことが 図 5 に示すように、レーザパワーやレーザ走査速 ファイバーレーザの特長として挙げられる。このよ 度といった各種造形パラメータを変化させること うに、ファイバーレーザの採用により、高ビーム品 により粉末材料に照射するエネルギー密度を変化さ 質による集光サイズの小径化、材料に対する吸収率 せ、粗密造形を実現している。この技術を利用して の向上が可能となり、加工精度の向上と加工時間の 造形する部品の外周部部分は十分に材料を溶かし込 短縮を実現している。 み(相対密度:99.5 % 以上)、内部はポーラス状に造 形することにより、内部応力の緩和と加工時間短縮 (2)ビームスポット径の制御 を実現している。また、後述するが、プラ金型にお レーザビームの走査は XY ミラーによる走査に Z いてはポーラス状の構造をガス吸引、ガスアシスト フォーカスレンズの位置制御を加えた 3 軸制御の構 用としても利用している。 成で行われる。Z フォーカス レンズの位置により加工点に おけるビームスポット径を可 中密度 変とし、各種粉末材料に対し 最適なビームスポット径の選 択が可能となっている。また、 図 4 に示すように、XY 方向 の走査と同時に Z フォーカス レンズの位置を制御すること により造形テーブル全域にお いてレーザビームの焦点距離 の補正を行っている。このこ とにより、造形テーブル全域 図 5 照射エネルギーの制御による粗密造形 4.LUMEX Avance-25 によるプラ金型製作 4.1 プラ金型の設計 きない。このため、型を分割・製作して組み立てるこ 通常の機械加工では複雑な形状を有する金型、例 とや放電加工による後加工を施すことを前提とした えば深いリブ溝構造をもつ金型は一体として加工で 金型設計を行うことが通常であった。対して金属光 Vol.53(2012)No.9 SOKEIZAI 51 造形複合加工法では全ての造形が完了した後に切削 る。対して金属光造形法では中空構造の造形が可能 仕上げを行うのではなく、使用する最小径の切削工具 であるため、所望の位置に冷却水管となる空洞部分 刃長(首下長さ)近くの高さまで積層造形後に切削仕 を設けた造形が可能である。図 6 に今回の事例の 3 上げを行う。この加工法により従来の機械加工では刃 次元冷却水管の形状を示す。水管の設計においては 長が不足して加工できなかった深い溝も、刃長の短い 熱解析等を利用して成形品の温度分布のシミュレー 小径エンドミルで加工することができる。そのため、 ションを実施することにより、最適な冷却水管の配 別途放電加工のための電極設計・製作を必要とせず、 置が可能となる。 金型の分割も最小限にすることが可能となる。 写真 4 に示す電気ドライバーのボディ部品の金型 3次元冷却水管 3次元冷却水管 (コア側)は、金属光造形複合加工法を利用して作製 した事例である。通常 20 以上の分割が必要であった 同コア型も金属光造形複合加工法によりワンプロセ ↑IN(1) スで造形することが可能であった。 また、本事例にて使用した粉末材料はマルエージ ング鋼材粉末(マツウラマルエージングⅠ)である。 造形物の硬度は HRC 34、時効処理により HRC 50± ↑IN(1) IN(2)↑ IN(2)↑ OUT(2)↓ OUT(2)↓ ↓OUT(1) ↓OUT(1) 熱解析を利用した3次元冷却水管の設計 熱解析を利用した3次元冷却水管の設計 (一般水管) (一般水管) 2 まで硬化可能で、プラ金型としては十分な硬度を (3次元冷却水管) (3次元冷却水管) 達成しており、射出成形 100 万ショット以上の金型 寿命を見込んでいる。 図 6 3 次元冷却水管の配置 (2)ガス抜き構造 プラスチック射出成形は、金型内の空気を溶融し 写真 4 金属光造形複合加工によるコア型と成形品 た樹脂材料に置換することで樹脂製品を成形してい ると言える。また、溶融した樹脂から発生するガス 4.2 プラ金型の高機能化 による成形品の焼けや金型の腐食が射出成形のひと プラ金型の製造において金属光造形複合加工法を つの課題となっている。従って金型内の空気・ガス 利用することにより従来の製作法では実現が困難で をスムーズに排出することができれば成形における あった機能を金型に持たせることが可能である。電 樹脂充填時間の短縮や充填ムラ、ガス焼けの解消が 気ドライバーのボディ部品の金型(コア側)の事例 期待できる。 における 3 次元冷却水管とガス抜き構造について以 図 7 ポーラス構造を利用したガス抜きの例を示す。 下に説明する。 本事例ではウエルド発生位置に金属光造形複合加工 で作製したポーラス構造のピンを配置しているが、 (1)3 次元冷却水管 このポーラス構造は前述のようにレーザによる照射 プラスチック射出成形において、金型の冷却 は重要な要素である。成形品全体を効率良く冷却 ガス抜きピンの配置 2点ゲート することによって成形品の反りの抑止や冷却時 間の短縮につながる。特に冷却時間の短縮は射出 成形のサイクルタイムの短縮に直結し、射出成形 におけるコストダウンの大きな要素となり得る。 通常、金型に冷却用の水管を設ける場合、ド リル等の機械加工により穴を空けて水管として 利用するため直線的な穴の組合せとなり、任意 の位置に冷却水管を配置することは不可能であ 52 SOKEIZAI Vol.53(2012)No.9 ウエルド 発生位置 図 7 ポーラス構造を利用したガス抜きピンの配置 特集 多様なニーズに対応する金型材料と積層金型技術 エネルギーを制御することによって造形することが 可能であり、別部品とせず任意の位置に配置するこ 70 とも可能である。 60 従来工法 (ストレート水管) 冷却時間 型開閉・射出 3次元冷却水管 ガス抜き構造 (1)射出成形サイクルの比較 金属光造形複合加工により 3 次元冷却水管及びガ 時間(秒) 50 4.3 従来工法との比較 40 30 ス抜き構造を配置した金型による射出成形結果につ 20 いて、従来の工法によるストレート冷却水管の金型 10 との比較を行った。良品成形時の成形時間に関して、 0 3 次元冷却水管の最適配置による冷却効率アップとガ ス抜き構造による効果により、図 8 に示すように冷 30 23 冷却時間 50%短縮 サイクル全体 30%短縮 15 23 図 8 従来工法金型との射出成形サイクル比較 却時間を 30 秒から 15 秒へ 50 % 短縮することができ、 全工程を 13 日で完了している。図 9 に示すように、 サイクル全体としては約 30 % の短縮効果が得られた。 設計時間では約 23 %、加工プログラム等のデータ製 また、ガス抜きの効果により低圧での成形が可能 作時間で約 90 %、放電加工を含む機械加工時間で約 となり、保圧圧力を 20 MPa 下げることができた。 80 % の工数を削減しており、設計から製作までトー その結果金型への負担が約 16 % 軽減するという効果 タル 61.5 % の工程短縮の効果が得られた。製作にあ が得られた。 たり、通常の場合は必要な素材の手配や外注作業が 発生するが、本工法の場合、素材は金属粉末のみが あれば良く、ワンマシン・ワンプロセスのメリット (2)プラ金型製作工程の比較 従来の製造方法の場合、今回の事例のプラ金型の から外注作業は、エジェクトピン加工等 2 日となった。 設計から製作まで、30 日以上の工数が見込まれる。 また、金型製作のコストを試算すると、従来工法 金属光造形複合加工を利用した今回の事例の場合、 から約 50 % のコスト削減効果が得られている。 図 9 従来工法との工程比較 5.結言 金属光造形複合加工方法は、積層造形と切削加工 短縮を目的とした機能部品の製作や、整形外科、歯 との複合加工方法であり、粗密構造造形、深リブ・ 科用医療機器、眼鏡、装飾類に代表されるカスタム 深穴加工、中空構造の造形、3 次元自由曲面加工を メイド品の製作など、様々なアプリケーションに対 利用したワンマシン・ワンプロセスでの部品製造が する製造技術の開発と材料開発、そして、金属光造 可能となる特徴的な方法である。マツウラでは平成 形複合加工方法の認知向上に努めていきたい。 15 年から金型作製用加工装置として製造・販売を 行っており、本稿で示した電気ドライバーの金型の ように、プロセスイノベーションを可能とする工法 であると考えている。 今後もプラ金型に限らず、試作、機能評価時間の 株式会社 松浦機械製作所 技術本部営業技術 〒 910-8530 福井県福井市漆原町 1-1 TEL. 0776-56-8117 FAX. 0776-56-8154 http://www.matsuura.co.jp/ Vol.53(2012)No.9 SOKEIZAI 53