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農事組合法人 きらり農場高木
宮崎県都城市 農事組合法人きらり農場高木 長期の利用権設定で農地集積 「地域の農業・農地は 地域全体で守る」 を体現 「地域第一」 を浸透させ、 作業受託を 宮崎県都城市の農事組合法人 きらり農場高木は組織の理念である 含めた経営面積が634㌶に上る県内随一の集落営農組織だ。 農地を集積しながら水稲や大豆、 露地野菜 のうじょうたかぎ 賞 は長期 ( ※2 年) が8割を占め、 担い手ら個別農家との農地の利用調整が進む。 安定的な雇用創出 深刻な高齢化、後継者不足 で、 雇 用 者に対 する労 務 条 件 も まつばら て る み 組合長 松原 照美さん な か の ま る しんろう 前組合長 中之丸 新郎さん なしの状況だった。 農 事 組 合 法 人の設 立にこぎ 着 法 人 設 立のきっかけは農 家の 一歩 を 踏 み 出 すことになった 。 産 主 体 をつくる必 要に迫られ、 地 域 農 業の受 け 皿 となる 生 する農 家の不 安 を 払 拭 するた 一法 人に農 地を預けることに対 率 化させることが不可欠だった。 るには、 農 地 を 集 積し作 業 を 効 があったこともプラスに働いた。 団 転 作・防 除に取 り 組んだ経 緯 協 同して開田し、 昭和 けた。 同 地 区 周 辺では古 くから 同 農 場の構 成 員は農 地 提 供 高齢化と後継者不足だ。 主な舞 ま ず、 全 集 落の代 表 者らで法 人 め、 同 協 議 会は住 民 説 明 会を開 新 たな 法 人 を 健 全に経 営 す 者や 作 業 従 事 者 、 作業委託者 台となる高木地区ではそれまで 設 立 協 議 会 を 発 足 。市 、 県 、J 農家を支援してきた。 しかし、 任 当 時で経 営 主の年 齢は 保 状 況を調べた結 果、 平成 がある――ことなどを繰り返し 年に集 ら343 戸 。水 稲 と 転 作 作 物 も、 高 齢などで農 作 業ができな その中で▽まずは短 期で利 用 を 中 心 とした土 地 利 用 型 経 営 権設定するなど徐々に取り組む き、 話し合いを重ねた。 (高木営農改善組合) によって、 に経 営 主の年 齢や 後 継 者の確 A都 城の担 当 者 も 協 議に加わっ 416・8㌶。 農機はコンバインやト こと▽農 地の集 約 化や連 坦化が 意 組 合だったため農 地の賃 貸 借 上 が6割 以 上 、 後 継 者 がいない 説明。 地域からの理解を得て、 協 図れれば個 別 農 家にもメリット や農 産 物の生 産・販 売 ができ な との回 答は8割に上っていた。地 地であっても 希 望があれば引 き 歳以 組 合 長 を 含 む理 事6人 と正 かった。 作 業 受 託 面 積が増 加、 オ 乾燥調製施設を所有する。 人で運 営 する。 理 事4人 社員 診 断 を 定 期 的に行い、 堆 肥によ 受け、 面積単位で同じ地代を支 農業経営 ㌃に拡 大 し 作 業 効 率は格 る 土づく りや 施 肥で 圃 場 間の 払っている。「 利 益 を 地 域に還 元 段に上がった。 ~ 議 会 発 足 からおよそ1 年 後に %を 占めるよ 域 農 業の受 け皿づく りは待った 年) が ペレーターの作 業 負 担が増 す 中 と正社 員 を合わせた 長 期( うになった。 土 壌 格 差 を な く す よ うに 努 め 担い手ら個 別 農 家と連 携し、 在の耕 作 面 積 は 当 初の倍 近い の結 成 以 来 増 え 続 けている。現 が 進んだことで 大 区 画 化 が 可 の利 用 権 設 定が増 え 農 地 集 積 作 業 性が悪かった。しかし、 長期 水田は一区 画が約6㌃ と狭 く、 差が 生 じないよう 、 圃 場の土 壌 換 耕 作で 作 物の収 量や 品 質に 農 地の均 質 化などを進めた。交 を 重 ねた 結 果 、 農 地の団 地 化 、 そ う して 地 域の農 家に配 慮 取 り 組 み以 前の高 木 地 区の 200㌶ 規 模に拡 大した。法 人 能になった 。県の補 助 事 業 な ど ている。 あぜ 病 害 虫 防 除や、 環 境 保 全のた トウモロコシやイタリアンライグ られている。安 心 して農 地 を 預 も 徹 底 した。「 自 分の農 地が守 めの畦の草 払いなどの基 本 管 理 ラスな どを 、 元の自 分の圃 場 と けられると、 地 域の農 家から声 戸が飼 料 用 ㌶作付けした。 年 度は畜 産 農 家 労 賃はできる限 り 高 く 設 定 し する」との考 え方のもと、 地代や への理 解 も 広がり、 利用権設定 を 活 用 して畦 畔の除 去 を 毎 年 連 坦 化はさらに進んだ。平 成 の期 間 は、当 初 、短 期(1 年 ) が 行っている。現 在では1区 画が は違う圃場で バレイショで も6戸の農 家 がブ 話す前組合長の中之丸新郎さん を か け られるよ うになった 」と ) 。地 域 農 業 を 守 りたいとい ロックローテーションの中で、 ㌶ ( う 思いが伝わり、 信 頼 を 得られ たと実感する。 賃金等 労務提供 配 当 地 代 農地の提供 出 資 構成員農家 (343戸) 大区画化で効率作業 条件不利地でも引き 受 け 55 てきた。 「きらり農場高木」の経営面積と作物 機械・施設 の使用料 農用地利用 改善団体 JA都城 登録 構成 農 地の利 用 権 設 定 は 、法 人 (ha) 品目 平成18年 平成23年 平成24年 平成25年 50 66.5 65.7 水稲 10.7 バレイショ 15.3 25.3 25.9 23.2 大豆 25.2 54.3 47.4 56.7 カンショ 8.8 10.3 11 11.2 5.5 サトイモ 5.9 7.3 ホウレンソウ 6.1 5.7 6.2 ニンジン 0.5 飼料作物 54.0 44.6 43.8 47.2 合計 114 196.1 206.7 217.5 受託作業面積 335.9 308.8 358.5 416.8 オペレーター(正社員11人) パートアルバイ ト 約30人 短期雇用 約70人 分を作付けした。 高木農事振興会 79 利用調整 14 農 地の一層の集 約に向 けて、 都城市農業再生 協議会 交付金 けいはん 全 体の %を 占めたが、 現 在は 35 きらり農場高木と構成員農家との関係 22 21 20 平成19 47 湿田や変 形 農 地など条 件 不 利 農作業委託 農作業委託者 (全構成員の3分の1以下) (3年以上) 30 大規模に集積した農地で所得向上を実現させた、 きらり農場高木のメンバー 25 出資 きらり農場高木 常時従事者 (農地の利用 調整を行う組織) 75 人がオペ 17 0 常時農作業 従事 法人の農作業を行う オペレーター 高木営農改 善組合 〈農業経営・受託作業・その他活動〉 ラクターなど 台。 ㌶分の共同 年 い農 家に代わって農 作 物の栽 培 十分に整備されていなかった。 熊本県 で面 積の内 訳は、 農 場の耕 作 面 人が労 働 力と 宮崎県都城市 た。水田所 有 者354戸 を対 象 人、 短 期雇用約 レーターで、 パートアルバイト約 のため新規作物や農産物加工にも積極的で、 地域経済に活力を与えている。 用権設定 などを作物別に団地化してブロックローテーションする輪作体系を確立した。 受託とともに増える農地の利 ※1 農業 大賞 25 (年) 10 60 30 高木営農改善組合 自己完結的個別経営者 60 短期賃貸借 (1年) 農地の短期利用権設定 (転作田の貸付を行う) 機械・施設 の賃貸 販売 代金 なる。 宮崎県 鹿児島県 組織 集団 第4 4 回日本 n 管 理を請け 負 う 作 業 受 託 組 織 地域農業の受け皿に期待 30 積 217・5 ㌶ 、 作業受託面積 70 都城市は宮崎市から南西へ約50㌔に位 置し、鹿児島県と隣接している。人口約16万 6000人。農業産出額(県試算平成24年) は668億円。耕種部門は全体の2割で、この うち米と野菜が8割を占める。県内有数の水 稲、露地野菜の産地。高木地区は都城盆地 の中央部に位置する水田地帯で、昼夜・夏 冬の気温差が大きい。同地区の農家戸数は 約400戸、 うち認定農業者数は26経営体。 e s e A ners of g r ic u lture Top R u Jap a n 水稲経営 転作作物の経営 ・大豆 ・バレイショ ・カンショ ・サトイモ ・飼料作物 など 農作業受託 加工・販売 など 農地提供者 120 農地の長期利用権設定 長期賃貸借 (10年) 農地提供者 90 事業 長期 (10年) 短期 (1年) 150 24 出荷 80 農地の利用権設定状況 (ha) きらり農場高木の構成員になれる組合員とその事業 23 農事組合法人 きらり農場高木 30 22 23 10 65 15 11 74 集団組織 第 回日本農業賞 大賞 Top Runners of Japanese Agriculture ヒカリ」「 まいひかり 」「おてんと そだち」 の種 子 をほぼ全 量 供 給 輪 作 は 水 稲 と 露 地 野 菜 、飼 術 面では水 稲で近 年、 作 付け増 かさを裏 付けている。その他、 技 しており、 技 術や栽 培 管 理の確 料 作 物 を 組 み 合 わせた3年3 加に伴い疎 植に取 り 組む。作 業 輪作で連作障害を回 避 加工・業務用にも栽培 ~5 作の4パターンが あ る 。連 を省力化し、 苗代は ㌃当たり 作 障 害 を 避 けるため、 輪 作が一 う 調 整 している。土 壌の条 件 な 転 作 品 目は4年 以 上 空 けるよ 水 稲は2年に1度の栽 培 とし、 け す る 。そのため同一の農 地に での播 種 を 可 能にし 、収 量 、品 種 技 術 」を 導 入 。湿田圃 場など ている。大豆では 「 耕 うん同 時 播 植 えも 行い、 1等 米 比 率 を 高め 高 温 障 害 を 回 避 するため遅 4000円の削減につなげた。 ど適 地での栽 培 となるようロー 質ともに改善させた。 回 り すると別のパターンで作 付 テーションしており、 基 幹 となる 月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 月 月 月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 月 月 月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 サトイモ 飼料作物 イタリアン ここ5年ほどで同じく 冷 凍 加工 まな 情 報 技 術 (IT) ソフトも 活 にも 活 用できる。 利 用 権 設 定に 工用 米で地 元の焼 酎メーカーで 確 保 している 。水 稲の一部 は 加 人 が 購 入 して 堆 肥 化 し 土づく を 含め ㌶ 分 を 利 用 。糞 は 法 農家などと連携し、 個別農家分 その他 、 稲わらは地 域の畜 産 るために 「 農 地 地 図 情 報システ 雑になる。 そこで正 確に調 整 す ローテーションの組み合わせは複 10 域貢献」 である。オペレーター、 パート アルバイト、 バレイショ収穫時の短期 雇用などで構成農家などの地域住 民の就農機会を確保している。オペ レーター (正社員11人) は平均年齢 けできるなど、 見て正 確に栽 培 状 況 を 把 握できることで、 作付 ) は、「 日 ㌧ 。栽 培 を 担 当 上旬まで収穫する。目標収量は ㌃ 当 たり とくしげ やすのり す る 徳 重 康 憲 さん ( こ ) は 「法人 合っていきたい」 と話している。 進め、 これからも地域全体で助け が継続できるように人材育成を 合長の松原照美さん ( 体制が実現した」 と振り返る。 組 からこそ、 地域の農地・農業を守る してきた。 みんなで力を合わせた 場の栽 培 条 件が悪 くても、 改良 放 棄 地はない。 中 之 丸さんは 「圃 透。 その結 果 、 同 地 区に今 、 耕作 実に実 践 して理 念 は 地 域に浸 てきた。 丁寧な説明に始まり、 着 理事会などで検討している。 況を分 析し、 関 係 機関を交 えた 記 帳に基づいて経 営や財 務の状 ソフトを活用し、 生産品目ごとの ている。経 営 管 理では農 業 簿 記 など、 事 務の効 率 化にも 役 立て 用 す る 。現 在 利 用 権 を 設 定 し 体 系の見 直しや構 成 員への説 明 トウモ ロコシ 用ホウレンソウとジュース用ニンジ 抱 えているにもかかわらず、 いず 扱われる。 バレイショは、 大手菓子 りに活用している。 ンの作付けも始めた。 れも 県 平 均 と同 等 以 上 を 確 保 メーカーのポテトチップ用だ。 カン 効 率 的 な 運 営のため、 さま ざ ム」を 活 用 す る。地 図 上で 色 分 水 稲では 採 種 事 業 も 行 う 。 ショは焼酎などの原 料用になる。 第2点は、 「 雇用の創出による地 している。 県 内で使 用 する奨 励 品 種「ヒノ 域 を 支 える法 人の一員であ り、 自 分の体 力に合 わせた 作 業 量 新規作物、加工事業で 通年雇用も生まれる 照 不 足などがあって初 年は目 標 よ 部員による郷土料理「がね」、 さとい で一定の 収 入 を 得 ること も で 一年 を 通 じて 安 定 的 な 雇 用 を 下 回 り そ う 」と話 すが、 品質 200ha規模になった。 パート・短期雇用が 高齢者の生きがいに 年 は良好で単 価も良く、 まずまず の場 を 提 供したいと、 平成 からは 冬 春 作でミニトマトの栽 26 の手 応 えのよう だ。新たに専 属 いる。 また、加工施設も整備し、女性 き、 高 齢 者の生 き がいづく りに 80 ㌃ い取り組みであり、現在耕作面積は の従 事 者2人、 出 荷 調 製で複 数 の雇用を生んだ。 加工事 業にも着 手し、 女性 人でつくる加工班が昨 年 新設さ れた加工場 (150平 方 ㍍) で、 み そや 「がね (かき揚げ) 」 、 コロッケな ど現 在8品 を 作 り 毎日、 JAの やまなか み 直売所や道の駅に出している。 加 ) は 「女性の仲間で楽しみ 工事 業 担 当の理 事、 山中 美代子 さん ( ながら 食 文 化 を 伝 承 しよう と 入は冬場の作業確保にも役立って 雇 用 者 は、 パートアルバイト・ 大豆 関する申請の仕組みに連動する 主な輪作体系 ている農 地は1841区 画 ある。 水稲 始めた。 メンバーの加工意 欲は盛 り上がっている」 と話す。 ホウレンソウ、加工用ニンジンの導 67 高く評価できる。 販 売 面 は JAが 主 な 窓 口と カンショ 59 地 域のビジョンとして 「 地 域の 次産業化の取り組みである。加工用 もなっている。作 業のピーク時に ホウレンソウ を守る集落営農組織のモデルとして 水 稲、 バレイショ、 大豆、 カンショの バレイショ 10 第3点は、加工品の開発による6 ※1 農協法に基づく組織で、 農業関係 の施 設の設 置や農 作 業 を共同で行い、 農家である構成員 (組合員) の利益を図 る。 農畜産物の貯蔵、 運搬または販売、 農業生産に必要な資材の製造、 農作業 の受託なども行う。 ※2 農地を貸し借りする場合は、 農地 法 規 定により農 業 委 員 会の許 可を受 ける必要がある。 農業経営基盤強化促 進 法に基づく 利 用 権 設 定は、 この許可 を受け ずに農 地の貸 借 契 約が可 能と なる制度。 農地は契約期間が過ぎれば 返還されるため、 地権 者は安 心して農 地を貸せる他、 借り手も効率的に農地 を集められるので規模拡大がしやすい。 地の解消につなげており、地域農業 なり、 市 場 流通以外にも販 路を (平成25年12月) 60 策にもなっている。 人が従 事 す している。このため地域内に耕作放 10 歳以上の高齢者であり、生きがい対 は1日 当 たり 約 農地の利用権設定に対する粘り強 培 を 始めた 。現 在はハウス 棄地はない。それを可能としたのは、 る。そのため毎日朝 礼では、 作業 いう、極めて高度な輪作体系を確立 ニンジン を確立し、雇用の創出や耕作放棄 ㌃ 収 量は、 条 件の悪い農 地 を 作業体系図 ルバイト・短期雇用のほとんどは65 農業・農 地は地域で守る」 を掲 げ 全体を取り込んで高度な輪作体系 加工向けに栽培するサトイモの圃場 歳 所得向上を図っている。 で栽 培し、 月 末から翌 年6月 ブロックローテーションで栽培すると 短 期 雇 用のほぼ100%が 系により生産の効率化を図り、同時 内 容や役 割 分 担を確 認、 作 業の レイショ、 ホウレンソウなど多品目の 以上だ。雇用者の平 均 年 齢は女 に、地代、農作業などで構成農家の 26 ミニトマトのパック詰め。品種は 「キャロルパッション」 と 「CF千果」 して期待されている。一方、パートア 10 構成農家は343戸。大規模輪作体 80 注意点を指導している。 大規模に集積した農地で、水稲、バ 性 ・9歳、 男 性 ・2歳 。稼 働日 県内トップの集落営農組織で、 富士芋 このように、 きらり農場高木は地域 広いバレイショの圃場も効率的に防除 65 日ほど。地 つ高度な輪作体系の確立」 である。 66 数はパートが 年110~190 大杉 立 委員長 石川 里芋 クな加工品にも取り組んでいる。 44 日 。短 期 雇 用が年 評価された第1点は、 「 大規模か 69 中央審査会 24 25 12月 11月 10 月 9月 8月 7月 6月 5月 収穫 管理 水稲 飼料(トウモロコシ、イタリアン) 水稲 4月 水稲 D 3月 2月 1月 作物名 ホウレンソウ (ニンジン) 水稲 準備 C 植え付け 準備 (施肥・耕うん・マルチ張りなど) 水稲 カンショ ホウレンソウ (ニンジン) サトイモ 水稲 準備 水稲 B 1 0 1 01112 1 011 12 飼料 (イタリアン) 大豆 水稲 3年目 2年目 1年目 輪作 パターン 10 バレイショ A 47歳と若く、今後の中心的担い手と 朝礼で当日の役割分担や作業の注意を呼びかける 作物を作物ごとに団地化し、 それらを 14 もコロッケの製造・販売など、ユニー 10 審査講評