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藤井紫麻見
O-12 全天 X 線監視装置 MAXI による X 線天体の変動研究 Observational study of X-ray emission variability from celestial objects ○山本 堂之 1 , 藤井 紫麻見 2 , 三原 建弘 3 , 杉崎 睦 3 H 方向、Z 方向にそれぞれ 1.5◦ × 160◦ のスリット状の視野を 全天 X 線監視装置 MAXI 1 全天 X 線監視装置 (Monitor of All-sky X-ray Image : MAXI) とは何か? 持ち、84◦ 離れた 2 視野で全天をスキャン観測する。1 方向の 視野につき最低2台の GSCU(右、左) で上記の 160◦ の視野を MAXI とは 2009 年 7 月 16 日にスペースシャトル・エンデ 補うことができるが、中心部は X 線源が視野内に入っている バーにて打ち上げられ、同 24 日に国際宇宙ステーションの日 時間が短い。それを補う為に 3 台目の GSCU を中心部に設置 本実験モジュール「きぼう」の船外実験プラットフォームに搭 することで、全天で一様な感度を確保している。 ISS が地球を一周する 90 分間で視野は縄跳びの要領で全天 載された X 線全天モニタである。 の 98% を掃く。1 軌道周回では進行方向に垂直な左右 10% の 領域はカバー出来ないが、ISS 軌道面(軌道傾斜角 51.6%)は 1.1 X 線検出器機 全天 X 線監視装置 MAXI は、ガス比例計数管を用いた Gas 周期 60 日で歳差運動を行う為、1 週間程度でこの部分も完全 Slit Camera(GSC) と CCD を用いた Solid-state Slit Cam- にカバーされる。 X 線天体の位置決定はスリットに垂直の方向に位置検出感 era(SSC) の 2 種類の X 線検出器機が搭載されている。 度を持つ比例計数管と、スリットに平行に並べたコリメータ 1.1.1 Gas Slit Camera (GSC) シートによる視野の制限によって成される。 ここでは主検出器のひとつである Gas Slit Camera (GSC) について述べる。GSC は比例計数管とスラットコリメータを 用い、合計 5350cm2 の大面積を獲得している。比例計数管は 6 本のカーボン繊維芯線を用いた 1 次元位置検出型であり、比 例計数管内のガスには Xe 99%+CO2 1%、0 ◦ C で 1.4 atm の 混合気体を用いている。観測エネルギー帯域は 2 − 30keV で ある。 図 2: 左:スラットコリメータと位置検出型比例計数管を用い た GSC の観測原理、右:ISS の周回による H 方向、Z 方向の 視野の変化 図 1: Gas Slit Camera Unit 1.2 観測原理 2 MAXI で狙うサイエンス MAXI は全天モニタとして過去最高の感度を持つ。図*は地 球から X 線源までの距離と X 線強度を示したものである。横 軸は地球からの距離(単位:光年)、縦軸は X 線強度である。X 線強度は、かに星雲の強度の 1000 分の 1(mCrab)で単位付 MAXI では 2 台の比例計数管、128 枚のコリメータとスリッ けしている。これまでの全天モニタでは検出限界が 20mCrab トを一組として GSC Unit (GSCU)を構成し(図 1)、ISS 程度であるのに対し、MAXI では一日で 2mCrab、一週間で の進行方向 (H 方向) と垂直方向 (Z 方向) にそれぞれ 3 台ずつ 1mCrab、最大で 0.2mCrab の検出感度を持つ。MAXI では高 (左、中、右)合計 6 台の GSCU が搭載されている。MAXI は 1:日大理工・院・物理 2:日大理工・教員・物理 3:理化学研究所 1210 い感度により、これまでの全天モニタではほとんど観測するこ と同じ天体)の MBH を推定した。これは望遠鏡衛星を 3 年以 との出来なかった我々の銀河系外に存在する X 線天体の、長 上動員した大観測であった。これ以上観測を進めるには、他 期に渡る時間変動の観測が出来る。それを用い、活動銀河核 天体での感度の良い長時間連続観測が必要であり、MAXI は 中心のブラックホール質量を推定する。 この観測に非常に適している。 図 3: MAXI の感度。横軸:地球からの距離 (光年) 縦軸:X 線強度 図 4: Hayashida et al. 1998 における X 線変動質量推定法を 用いた AGN 中心 BH 推定 横軸:振動数 (Hz)、縦軸:PSD × 振動数 2.1 X 線変動質量推定法による活動銀河核中心 ブラックホールの質量測定 本公演では、MAXI の初期データ解析として X 線変動質量 活動銀河核(AGN)は、その光度から推定して 105 ∼109 倍 推定法の比較対象となる銀河系内 BH の精度の良い光度曲線 の太陽質量(Mo)を持つ超巨大ブラックホール(BH)に質量 降着が起こり、高効率(ε∼0.1)で電波・可視光から X 線ま での広帯域で輝いている。AGN は降着円盤から放射している を示す。 参考文献 と考えられており、その種類には低光度のセイファート(Sy) [1] Hayashida, Kiyoshi Astrophysical Journal v.500, p.642 銀河、高光度の電波銀河やクエーサー(QSO)などがある。そ (1998) の AGN の BH 質量(MBH )は可視光で数十個求められてい [2] Markowitz, Alex The Astrophysical Journal, Volume 593, るだけで多くは推定の域を出ない。X 線では鉄ラインのエネ Issue 1, pp. 96-114. (2003) [3] 理研 MAXI ウェブサイト http://www.maxi.riken.jp/ ルギー変化(Iwasawa et al. 2004)で NGC3516 のみで MBH が求められている。 X 線においてはもう一方法、X 線の変動を用いて BH の質量 [4] 中条宏隆修士論文 (2008) を推定する「X 線変動質量推定法」という方法がある。X 線強 度変動の時間尺度は、中心の BH の質量と比例するとされてい るので、X 線データのフーリエスペクトル(Power Spectrum Density : PSD)における折れ曲がり周波数を質量が既知であ る白鳥座 X-1(∼10Mo、10Hz)と比較し、BH のスケーリン グ即(t ∝ MBH )を仮定することで、MBH を推定する方法 である。 Hayashida et al. 1998 では「ぎんが」衛星の観測に応用 し、6 個の Sy 銀河の MBH を 105 ∼107 Mo と求めている。 Markowitz et al. 2003 では RXTE/PCA を用いて、折れ曲が り周波数の方法により 7 個(内 3 個は Hayashida et al. 1998 1211