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SSH通信 2011年12月21日発行 vol2 pdfファイル
平成 23 年 12 月 21 日 今年もCC講演会を実施しました 「雪と氷の不思議」 講師:福山市立大学 准教授 平松 和彦 様 長い間、北海道に住んでおられた経験から、雪や氷の実験を交えて結晶の不思議について科学的にお教えいただいた。雪の結晶 を人工的に作成する実験は 1936 年、中谷宇吉郎博士によって初めて行われた。中谷博士は人工雪作成装置の内部を過飽和の状態 に保ち雪結晶を作成していた。得られる結晶の形は空間の温度と湿度により変化し、上空の気象条件を地表に降った雪から推定可 能である。横軸に温度,縦軸に水蒸気過飽和度をとって、雪の結晶の形との関連をグラフに描いたものを中谷ダイアグラムと呼ば れる。更には、海洋大循環の際に海氷ができる仕組みやダイヤモンドダストなどの実験を交えて、水は相変化について特異な物質 であるということもお教えいただいた。 雪の結晶実験 「広告のグローバル×クリエイティ」 講師:電通 加藤木 講演の様子 淳 様、 小室 猛士 様 日本の広告の黒子的な存在である電通で、世界的に活躍されているお二人の講師から、第 1 部「企業のグローバル化について」 と、第2部「世界のCMについて」のお話を伺った。第 1 部では、日本の人口の減少(特に若年層)や、長引くデフレ・経済停滞 などによる国内市場の縮小化が海外への市場に、グローバル化につながったことを教えていただいた。第1部の例として、「AKB48 ×グローバル」、「KARA×グローバル」、「スポーツビジネス×グローバル」など、現在、電通が世界に向けて手がけておられるお 仕事について詳しく伺った。第2部では、世界の舞台である「カンヌ広告祭」で入賞された素晴らしいCM作品のいくつかを見せ ていただき、国による CM 制作の違いについて、広告が時代背景を反映していることなどについてもお聞かせいただいた。国内・ 海外の壁を取り払ったボーダレスな時代に、グローバルな未来に向けて世界・地球を舞台に夢をもって誰かを感動させることの大 切さ、そして、最後まで自分の意志を曲げずに、興味をもつこと、やりたいことを一生懸命やることの大切さを教えていただいた。 講演の様子 「AKB48×グローバル」について 「私が医師への道を選んだ訳-熱帯医学に憧れた若き日の思い出-」講師:奈良県立医科大学 副学長 教授 喜多 英二 様 冒頭にいつどうして医師になることを決断したのか。そのためにはどのような学習をしてきたのか。現在の専門(感染症学、感 染免疫学)に至るまでの人との出会いなどを紹介していただいた。将来の夢は必ずしも将来の職業とは同じではなく、職業とは「夢」 を実現させる手段の一つに過ぎないこと、若いときに抱く将来の夢は生きる原動力となることや、人・書物・体験などの出会いの 大切さを述べられ、恩師との出会いが人生の宝であり、活力の源であることも熱くお話しいただいた。また留学時代のお話もされ、 熱帯地方での医療で必要なのは、知識・経験・技術以上に「人間愛」そのものであることを貧しい国の人々から学ばれたこと、熱帯 病の医療活動を夢み、熱帯の国々で医療活動を重ねた後、これらの感染症の発症機序・病原体の因子・生体の免疫応答を解明する ことにより重要性を見いだし、基礎研究への道へと進まれた経験などをお話いただいた。専門の研究については、感染と免疫応答 の流れ、免疫系・神経系・内分泌系のクロストーク、腸内細菌、細菌のコミュニケーション法、などもお話していただいた。 講演の様子 「科学と倫理」 生体の免疫応答についての話 講師:元朝日新聞科学部記者、論説委員 科学ジャーナリスト 柴田 鉄治 様 柴田さんは元朝日新聞科学部の記者。子どもの頃は、ノーベル物理学賞の湯川秀樹にあこがれ科学者を目指したが、戦争を経験 され、ジャーナリストとして戦争を止める働きに貢献したいと新聞社に入社されたそうである。 講演は、私たちにも関心が強い「3.11東日本大震災」における福島原発事故の話から始まった。現在でこそ「脱原発」の 気運が高まっているが、原発導入当時は「夢のエネルギー」とされていたそうである。「核兵器」という人類にとってもっとも恐 ろしい姿で登場した原子力は、戦争にさえ使わなければ大丈夫とされていたのである。このことからもわかるように、戦後の日本 は、科学技術こそ人類を豊かにすると信じられていた。しかし、その科学技術のマイナス面も徐々に「公害」という形で表れる。 特に水俣病については熱く語られた。当時の会社役員や政府の人に「倫理」という意識があったかどうか。人類が科学技術に対し て疑問を持つようになったきっかけは、アポロの宇宙飛行士が月面から撮影した地球の写真を見たことだそうだ。「この写真から 『宇宙船地球号』の言葉が生まれ、地球は小さく壊れそうだという思いが人々に根づいた」そして「科学技術はそれまでの経済発 展の源泉から、環境破壊・資源浪費の元凶と、とらえ方が変わった」との語りに、一同は柴田さんのお話に引き込まれた。これか らの時代、人にとって避けて通れない問題は、生命倫理である。日本最初の札幌医大病院での心臓移植では、当初移植の成功を礼 賛していたが、医療の進歩のためという名目のもと患者個人のことが疎かにされていたのではないか。日本最初の体外受精児は、 最初に準備した徳島大学が倫理委員会を立ち上げ議論している間に、東北大学で誕生し 問題が惹起したこと。このことにより、日本産婦人科学会によってガイドラインが示さ れたが、代理母による出産も行われていること。クローン技術や遺伝子操作は、果たし てどこまで許されるものなのか。これからも、科学技術を抜きにしての生活は不可能で ある。科学技術とどうつきあうのか。文系の人も「科学は関係ない」というのではなく、 文系の人だからこそ科学も学び、議論に加わってほしいとお話を締めくくられたことが、 大変印象的であった。 講演の様子