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経営(マネジメント)入門 戦略思考
経営(マネジメント)入門 戦略思考 ~ビジネスで使える論理思考法と ビジネスフレームワーク~ グロービス経営大学院 荒木 博行 1 © GLOBIS University All rights reserved 自己紹介:荒木博行 グロービス経営大学院 副研究科長 慶応義塾大学法学部卒業、スイスIMD BOTコース修了。 住友商事→グロービス 法人向けコンサルティング部隊 →大学院事業 担当科目:「クリティカル・シンキング」、「経営戦略」など 著書に『ストーリーで学ぶ戦略思考入門 ――仕事にすぐ活かせる10のフレームワーク』 オンライン媒体GLOBIS.JP、ダイヤモンドオンラインにて、 「バリュークリエイターたちの戦略論」連載中。 2 © GLOBIS University All rights reserved 全体構成 第1回 (イントロ)戦略思考とは何か? 第2回 (思考編)本質を漏らさない考えを意識する 第3回 (思考編)スタンスを明確にする 第4回 (思考編)直感を疑う 第5回 (戦略編)3Cを理解する 第6回 (戦略編)5Fを理解する 第7回 (戦略編)VCを理解する 第8回 (総合編)フレームワークを実践的に使う 第9回 (総合編)戦略思考を鍛え続ける © GLOBIS University All rights reserved 3 第1回 戦略思考とは何か? 4 © GLOBIS University All rights reserved ビジネスにおける意思決定場面 日常的に存在する数多くの意思決定 どちらのベンダーを使うべきか? 値下げをすべきかどうか? AさんとBさん、どちらを採用すべきか? 果たして、我々は正しく意思決定ができているだろうか? 5 © GLOBIS University All rights reserved ビジネススクールとは? ビジネススクールとは、「意思決定力」を高める場 • 絶えず、「あなただったらどうする?」と投げかけ、意思決定を 迫る • 不確実な状況、不完全な情報の中で、自らのスタンスを決め る、ということを繰り返していく では、意思決定力が弱い人の典型的な症状とは何か? 6 © GLOBIS University All rights reserved 典型的に見られる3つの症状 1. “本質抜け漏れ型” 「結局何やるの?どうやるの?なぜやるの?」というような 根本的な部分が漏れている 2. “結論回避型” 意図的に答えを出さずに逃げる 3. “直感一本道型” 直感で出した結論に固執して、それ以外のことを深く考えていない 7 © GLOBIS University All rights reserved 戦略思考とは? 戦略思考とは、この3つの症状に陥らないように、自分自身の考え方 をコントロールするための思考力 つまり、 • 「直感だけ」に頼らず多くのオプションを広い視点で考え • その上で意思決定を「回避せず」に自分のスタンスを明確に定 め • そして、そのスタンスの結果と背景を「漏れなく」分かりやすく相 手に伝えられる 8 © GLOBIS University All rights reserved 第2回 本質を漏らさない考え方を意識する 9 © GLOBIS University All rights reserved パターン1“本質抜け漏れ型”に陥らないために・・・ 必要な2つの思考原則 イシュー(=本質的な問い)を絶えず押さえること Big Wordを使わないこと 10 © GLOBIS University All rights reserved 徐々にずれていく「問い」 わが社は営業力が 課題だ! 営業力の強化策を 検討してくれ! 営業力強化といえば、 研修だな。 どういうプログラムを作 ればいいだろうか? 今度の営業力強化 「研修」は、~という プログラムを行いま す! 11 © GLOBIS University All rights reserved イシューはずれるもの 微妙なずれ 本来考えるべき問い =イシュー 私が考えたい 問い 私が思いついた 問い 私が認識した 問い 12 © GLOBIS University All rights reserved 悲劇を生む伝言ゲーム 顧客 営業力強化 を・・・ 営業担当 営業担当 研修を・・・ 開発担当 プレゼン研修 を・・・ 13 © GLOBIS University All rights reserved イシューはその場で具体化して握る 大きな問い グローバル人材 の育成をどうす るか? 検討すべき問い 答えのイメージ どのような人材を? 語学力×ビジネス 構築力×異文化 理解力 いつまでに? 20XX年X月までに どの程度? まず管理職中心に X名、その後順次 拡大 いくらかけて? 初年度の予算は XXX円程度 14 © GLOBIS University All rights reserved 「言葉」への感度を高くする もう少し効率的 に・・・ 効率的ですね 抽象度の高い言葉(=Big Word)でイシューを握っても、 握ったうちに入らない © GLOBIS University All rights reserved © GLOBIS University All rights reserved 15 Big Wordをチェックしてみよう 1.形容詞・副詞 • かなり・大変・もう少し・真剣に・ 前向きに・早めに・できるだ け・・・ 2.動詞 • 検討する・頑張る・対処する・ 意識する・・・ 3.名詞 • シナジー・バリュー・インパクト・パ ラダイム・ビッグデータ・・・ 4.代名詞 • その手のこと・あのようなこと・そう いったことを含めて・・・ 5.主語 • 「会議で意思決定がなされまし た」・・・ • 「これは危険だと思われま す」・・・ 6.接尾語 • M&A「など」を検討します・・・ • 僕「的」には・・・ 16 © GLOBIS University All rights reserved パターン1“本質抜け漏れ型”に陥らないために・・・ 必要な2つの思考原則 イシュー(=本質的な問い)を絶えず押さえること Big Wordを使わないこと 17 © GLOBIS University All rights reserved 第3回 スタンスを明確にする 18 © GLOBIS University All rights reserved パターン2 “スタンス回避型”に陥らないために・・・ 必要な2つの思考原則 Answer Firstのクセをつける 7割で意思決定する意識を持つ 19 © GLOBIS University All rights reserved 結論はどこ? ① まず私はそこに顧客のニーズがあることに 気付きました。 ② そこから、ひょっとしたらその市場でうちもビ ジネスができるんじゃないかとひらめきまし た。 ③ でも、よく見てみると、大手競合も参入 準備をしている、ということを発見しました。 ④ したがって、まずは大手が入る前に一早く 参入して、評判を獲得してしまうことが何 よりも大事だと考えました。 20 © GLOBIS University All rights reserved 分析と結論 分析パート 結論パート ① まず私はそこに顧客のニーズがあることに 気付きました。 ② そこから、ひょっとしたらその市場でうちもビ ジネスができるんじゃないかとひらめきまし た。 ③ でも、よく見てみると、大手競合も参入 準備をしている、ということを発見しました。 ④ したがって、まずは大手が入る前に一早 く参入して、評判を獲得してしまうことが 何よりも大事だと考えました。 多くの場合、分析パートを語ることに満足してしまい、重要な結論 パートがおろそかになってしまう。 21 © GLOBIS University All rights reserved 聞かれたことにまず答える 参入すべき? 参入すべきです! なぜならば・・・ 顧客のニー ズは・・・ 競合は・・・ うちの強み は・・・ 聞かれたことにまず答える(Answer First) そこに至った分析は後回し。 22 © GLOBIS University All rights reserved どこまで分かって意思決定に踏み切るか? 分かっていること:9割 完璧主義者 分かっている こと:5割 ギャンブラー 分かっていること:7割 理想的 一番多い パターン 完璧主義者は、往々にして意思決定のタイミングが遅れて 競合に劣後することになる。分からない中でも決める覚悟が大事 23 © GLOBIS University All rights reserved 意思決定の際の典型的な考え方 完璧主義者 現時点では右とも真ん中とも 左とも言えますね ギャンブラー よく分かりませんが、 右です 理想的 ××と××は分かっていません が、~という前提を置けばこう なるはず。左にしましょう。 分からない中でも、「妥当な前提」を置いて考える 24 © GLOBIS University All rights reserved パターン2 “スタンス回避型”に陥らないために・・・ 必要な2つの思考原則 Answer Firstのクセをつける 7割で意思決定する意識を持つ 25 © GLOBIS University All rights reserved 第4回 直感を疑う 26 © GLOBIS University All rights reserved パターン3 “直感一本道型”に陥らないために・・・ 必要な2つの思考原則 「上から下に」考えるクセをつける 考えを「視覚化」する 27 © GLOBIS University All rights reserved 直感が閃いたとき・・・ おお! 直感が閃いたとき、我々はまず そのアイディアを「正当化」しよう と走る つまり、 • ポジティブな側面ばかりピック アップし • ネガティブなところには目をつ ぶろうとする ・・・しかし、そのまま突っ走ると、 大抵は失敗する 28 © GLOBIS University All rights reserved 直感的な考え方の頭の動き方 下から上へ (根拠から結論へ) 結論 市場に参入すべき 根拠 市場が魅力的 大抵の場合は、特定の(大きめな)根 拠があって、それをもとに結論を決める、 というパターン。 しかし、それは意思決定のトリガーには なるものの、この段階ではまだ「直感」に すぎない。 29 © GLOBIS University All rights reserved 「上から下に」考える 上から下へ (メッセージから結論へ) 結論 市場に参入すべき 何が言えれ ばいい? 根拠 市場が魅 力的 ここでの大事な頭の使い 方は、 「仮にこの結論にする場 合、何が言えれば十分 なのか?」 ということを考えること 競合には 入りにくい 自社のリ ソースを活 かせる この辺は本当か? 30 © GLOBIS University All rights reserved 考えを「視覚化」する 今こそ価格を下げ るべきです! 価格競争が今後の勝 負の本質です ・・・ ・・・ 価格を下げるならば、 今しかありません ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 自分の結論、そしてその背景を「視覚化」しておく。それによって、 客観的に「何が欠けているのか」ということが理解しやすくなる © GLOBIS University All rights reserved © GLOBIS University All rights reserved 31 パターン3 “直感一本道型”に陥らないために・・・ 必要な2つの思考原則 「上から下に」考えるクセをつける 考えを「視覚化」する 32 © GLOBIS University All rights reserved 第5回 3Cを理解する 33 © GLOBIS University All rights reserved 3C分析 Customer 市場・顧客 Competitor 競合 Company 自社 3つのCを押さえることによって、取り巻く環境の全体像を押さえること ができる、という分かりやすいフレームワーク・・・だが・・・ 34 © GLOBIS University All rights reserved © GLOBIS University All rights reserved 3C分析で陥りがちなポイント 「市場」と「顧客」という性質の違うものを一緒くたに考えてしまうこと • マクロな視点で捉えるべき「市場」と、ミクロな視点で捉えるべき 「顧客」は、まったく異なる 「業界分析」という視点が欠けてしまうこと • たとえば、規模が利きやすい業界? 「静止画」の分析で止まりがち • 3Cは進化させるもの 35 © GLOBIS University All rights reserved マトリクス型3C マクロとミクロの視点双方から、買い手と売り手のことを考えるのが マトリクス型3C Customer マクロ (高度2万m からの視点) ミクロ (高度2mから の視点) Competitor 市場 業界 顧客(個人) 競合企業 自社 お客様 買い手 提供者 売り手 Company 36 © GLOBIS University All rights reserved 進化させる3C 追加 3C分析 追加 3C分析 3C分析 3次仮説 2次仮説 初期仮 説 環境は絶えず変わる。そして、不明な点も見えるようになってくる。 進化させてこそ、3Cは意味が出てくる。 37 © GLOBIS University All rights reserved © GLOBIS University All rights reserved 第6回 5Forceを理解する 38 © GLOBIS University All rights reserved 「5つの力」分析 小 ~業界 大 新規参入の脅威 • ・・・ • ・・・ 大 売り手の交渉力 • ・・・ • ・・・ 大 業界間の敵対関係 • ・・・ • ・・・ 買い手の交渉力 • ・・・ • ・・・ 小 代替品の脅威 • ・・・ • ・・・ 39 © GLOBIS University All rights reserved 5Forceとマトリクス型3C 5Forceは「業界」を分析するために有効なツール Customer マクロ (高度2万m からの視点) ミクロ (高度2mから の視点) 5Force分析 Competitor 市場 業界 顧客(個人) 競合企業 自社 お客様 買い手 提供者 売り手 Company 40 © GLOBIS University All rights reserved 5Force 縦・横のラインの意味合い 溜まった業界の利益 をどう分配するか 縦のライン 新規参入 業界としての「売上」 の立ちやすさ 横のライン 売り手 業界としての「コスト」 の抑え易さ 業界間 代替品 買い手 溜まった業界の利益 が別のところに持って いかれるか 41 © GLOBIS University All rights reserved 5Force分析の陥りがちなポイント 業界定義がぼんやりしている • どの業界を分析するのか、ということがかなり漠然として進めて いる • たとえば、「食品業界」といっても、具体的な商品、地域によっ て全くパフォーマンスは異なる 分析に数字がない • 「大きい」「減少傾向」などBig Wordばかり 解釈にメリハリがない • 「すべての力が強いですね」というのが大半の結果。ほとんど分 析の意味をなしていない 42 © GLOBIS University All rights reserved 第7回 バリューチェーンを理解する 43 © GLOBIS University All rights reserved バリューチェーン分析 ポーターの定義したVC分析は、5つの主活動と4つの支援活動で分析 全般管理(インフラストラクチャ) 人事・労務管理 支 援 活 動 技術開発 調達活動 購 買 物 流 製 造 出 荷 物 流 主活動 販 売 ・ マ ー ケ テ ィ ン グ © GLOBIS University All rights reserved サ ー ビ ス マ ー ジ ン 44 変形版バリューチェーン分析 一般的には、自分のビジネスに合わせてカスタマイズした形で使われる 支援活動 研究開発 原材料の 調達 部品加工 組立 検査 流通 サービス 45 © GLOBIS University All rights reserved マクロレベルからミクロレベルのバリューチェーン マクロ 産業レベルでの企業間価値連鎖 部品 組立 卸 小売 企業・事業レベルでの機能間価値連鎖 研究 開発 調達 製造 販売 個人・組織レベルでの業務間価値連鎖 ミクロ 企業 選定 ニーズ 聴取 提案 作成 プレゼ ン 46 © GLOBIS University All rights reserved バリューチェーンとマトリクス型3C バリューチェーン分析は「競合」や「自社」を分析するために有効な ツール Customer マクロ (高度2万m からの視点) ミクロ (高度2mから の視点) Competitor VC分析 市場 業界 顧客(個人) 競合企業 自社 お客様 買い手 提供者 売り手 Company 47 © GLOBIS University All rights reserved バリューチェーン分析の陥りがちなポイント 数字のないざっくりとした分析に終始する • コストや時間など、具体的な数字をもとに考える 比較対象なく感覚的に判断する • 競合?過去の自社?あるべき姿? • 比較対象がなければ、感覚的な判断になってしまう バリューチェーン分析「だけ」で何かを判断しようとする • 「どの方向でどう戦うのか」ということと、バリューチェーンが整合 して、初めて強い企業になる。 48 © GLOBIS University All rights reserved 戦い方からバリューチェーンへ 戦い方 ??? 戦い方を実現するため に必要な組織能力 バリューチェーン 49 © GLOBIS University All rights reserved 第8回 フレームワークを実践的に使う 50 © GLOBIS University All rights reserved フレームワーク使用時に陥りがちなポイント 2つの典型的な思考パターン 穴埋めテスト型 芸術品制作型 51 © GLOBIS University All rights reserved “穴埋めテスト型”思考法 フレームワークにおけるそれぞれのハコの「穴埋め」に力を注ぐ思 考スタイル 一見すると、分析量も豊富で、しっかり考えられているように見 えるが・・・ 何を考えるためのフレームワークなのか、ということの意識 がない 全体の接続感もない 分析した結果の結論がない もしくは結論と分析結果に 大きな飛躍がある この手の「分析もどき」を量産しても意味が無い © GLOBIS University All rights reserved © GLOBIS University All rights reserved 52 “芸術品制作型”思考法 まるで芸術品を作るかのように、フレームワークの中身や見栄えの完 成度を仕上げていく。 一見すると、きれいで完成度が高いように見えるが・・・ 実践していく課程で完成度を高めていく、という概念が無い 実行する前から細部の詰めに走ろうとする 完成するまでにかなりの時間をかける 雑でもいいから作ってみて一旦やってみる © GLOBIS University University All All rights rights reserved reserved © GLOBIS 53 第9回 戦略思考を鍛え続ける 54 © GLOBIS University All rights reserved フレームワークの習熟レベル Lev4 自社の意思 決定に使える Lev3 自社の現場の活 動と紐づけられる Lev2 概念を理解している Lev1 言葉を知っている 55 © GLOBIS University All rights reserved 理想と現実 自社の意思 決定に使える 自社の現場の 活動と紐づけら れる 概念を理 解している 言葉を知っ ている ビジネスでの勝負はここ Lev4 (Level4)の量で決まる Lev3 Lev3 Lev2 Lev2 Lev1 Lev1 理想的な状態: 知っていることと使えることの ギャップがそれほど大きくない 現実的な状態: 知っていることに比べて、現場で 使えることが圧倒的に小さい © GLOBIS University All rights reserved 56 自分なりの考える軸を作る フレームワークを覚えるのもいいが、 いざという時に使えなくては意味 がない 現場の風圧に耐えられる思考 力。バッターボックスでは考える暇 がない。 最後に残るのは、自分が苦労し て作ったもの。そして、使い込ん だもの。 57 © GLOBIS University All rights reserved 意思決定の現場 現場では、身についていないセオリーやロジックなんて 一瞬たりともよぎらない! 今期の評価をあ げないと・・・ あいつには意地で も負けない・・・ 上司はどんな意 見を期待してい るか・・・ 今更ここで無理と は言えない・・・ ~部は反対して いるらしいから敢 えて・・・ これでは部下に顔 向けができな い・・・ ビジネスのセオリー 58 © GLOBIS University All rights reserved フレームワークのVersion1 いざというときに使える、自分なりの戦略のフレームワークを作ってみよう。 59 © GLOBIS University All rights reserved 全体構成 第1回 (イントロ)戦略思考とは何か? 第2回 (思考編)本質を漏らさない考えを意識する 第3回 (思考編)スタンスを明確にする 第4回 (思考編)直感を疑う 第5回 (戦略編)3Cを理解する 第6回 (戦略編)5Fを理解する 第7回 (戦略編)VCを理解する 第8回 (総合編)フレームワークを実践的に使う 第9回 (総合編)戦略思考を鍛え続ける © GLOBIS University All rights reserved 60