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更新日:2016/7/19 調査部:野神 隆之 原油市場他:英国の EU 離脱を

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更新日:2016/7/19 調査部:野神 隆之 原油市場他:英国の EU 離脱を
更新日:2016/7/19
調査部:野神 隆之
原油市場他:英国の EU 離脱を巡る不透明性及びガソリン先物相場下落等で下落する原油価格
(IEA、OPEC、米国 DOE/EIA 他)
① 米国では、夏場のガソリン需要期に突入したことで製油所の原油精製処理量が増加したことにより原
油在庫は減少傾向となった。他方、ガソリン需要は堅調であったものの、製油所での生産活動が活
発化するとともに輸入もそれなりに行われた結果、ガソリン在庫は若干ながら増加している。留出油
についても生産が増加した一方で、輸出も行われたことから在庫は若干の増加となった。そして原
油、ガソリン及び留出油のいずれの在庫水準も平年幅を超過している。
② 2016 年 6 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、日本で
は、夏場のガソリン需要期の到来に向けた製油所での原油精製処理量の増加を控え、原油在庫を
積み増していると思われる動きが見られたことから、同国の原油在庫は増加した。他方、欧州におい
ては、フランスの原油受入ターミナルにおけるストライキにより、原油の輸入に支障が発生したと見ら
れることもあり、原油在庫は若干ながらも減少となった。また、米国でも原油在庫が減少しており、日
本での在庫増加を欧州及び米国での減少で相殺して余りある状態となったことから、OECD 諸国全
体の原油在庫は減少となったが、平年幅を大きく超過した状態は続いている。製品在庫について
は、欧州では前月末比で微減となったが、それでもガソリンや中間留分を中心として前年同月を超
過する状態となっている。また、日本では、製油所の稼働が6月は月末にかけ増加傾向を示したもの
の、なおメンテナンス作業の影響もあり低水準にとどまったことから、ガソリン等を中心として石油製
品在庫は減少した。しかしながら、米国での暖房需要期が終了したことに伴うものと考えられる LPG
を中心とする製品在庫の増加幅が欧州及び日本での減少幅を上回ったことから、OECD 諸国全体
の製品在庫水準は上昇、この時期としては平年幅を超過している。
③ 2016 年 6 月下旬から 7 月中旬にかけての原油市場においては、6 月下旬においては、6 月 23 日に
実施された英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱が支持される結果となった旨6 月24 日に判明した
ことで、英国及び欧州等の経済に対する不透明感が市場で増大した結果、安全資産と目される米ド
ルの購入が進んだ影響もあり、原油相場は下落に向かったものの、その後ノルウェーでの石油・天
然ガス産業労働者によるストライキ実施の可能性に伴う同国からの石油供給低下懸念や米国での原
油在庫減少により、原油価格は英国国民投票実施前の水準にまで回復した。それでも、英国や欧州
諸国経済に対する不透明感は根強く、英ポンドやユーロが下落する反面米ドルが上昇したり、米国
ガソリン先物相場が下落したりしたことから、原油価格は 7 月上旬以降再び下落傾向となっている。
④ 米国での夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が峠を越え始めることに伴い、製油所の原油
精製処理量低下と原油購入の不活発化と併せ、市場関係者が季節的な需給の緩和感を意識するこ
とから、この面では今後原油相場に下方圧力が加わってくるものと考えられる。このようなことから、
ナイジェリアをはじめとする地政学的リスク要因面での石油供給途絶懸念の増減、市場関係者による
利益確定の動き、そして米国等での経済指標類の内容などにより、原油相場が上下に変動する場面
が見られる可能性はあるが、余程相場に影響力のある要因が出現しないようだと、原油相場は少なく
ともこの先 1 ヶ月間は下落傾向になりやすいものと思われる。
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Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
1.原油市場を巡るファンダメンタルズ等
2016 年 4 月の米国ガソリン需要(確定値)は前年同月比で 0.8%程度増加の日量 921 万バレルとなり
(図1 参照)、速報値(前年同月比で3.8%増加の日量949万バレル)から相当程度下方修正されている。
4 月の同国からのガソリン(最終製品)輸出量が速報値の段階では暫定的に日量 39~41 万バレル程度
(平均推定同 40 万バレル)と推定されていた一方で、4 月の輸出量確定値は日量 52 万バレルと速報値
を日量 12 万バレル程度上回っており、この分が速報値から確定値に移行する段階で輸出に算入された
ことが下方修正の一因と考えられる。また、4 月のガソリン小売価格は 1 ガロン当たり 2.216 ドルと 3 月(同
2.071 ドル)に比べ上昇している他、前年同月と比べて 0.34 ドル程度下落しているものの、3 月(同0.48 ド
ル程度下落)に比べると割安感も低下していることに加え、2015 年 4 月のガソリン小売価格は 1 ガロン当
たり 2.555 ドルと前年同月比で 1.18 ドル程度下落していたこともあり、同月のガソリン需要が日量 914 万
バレル(前年同月比2.1%程度の増加)と比較的堅調であったことから、2016年4月のガソリン需要は量と
しては低水準ではない(この月としては 2007 年以来の高水準である)ものの、前年同月比の伸び率は圧
縮された格好となっている。
2016 年 6 月の同国ガソリン需要(速報値)は日量 974 万バレル、前年同月比で 3.8%程度の増加とな
っており、伸び率としては 5 月の同4.3%程度の増加から減速している。6 月のガソリン小売価格は 1 ガロ
ン当たり 2.467 ドルと 5 月のそれ(同 2.371 ドル)からさらに上昇していることが需要の伸び率を抑制する
一因となった可能性はあるものの、それでも量としては 1945 年1 月の月間統計(確定値ベース)との比較
にはなるが史上最高水準に到達している。ただ、6 月のガソリン需要計算の際に用いられている同国か
らのガソリン輸出量は暫定値で日量37~40 万バレル程度(平均同38 万バレル)と推定されているものの、
当該ガソリン輸出量は確定値では 2015 年 11 月以降日量 57~72 万バレルで推移していることからする
と、6 月についても、暫定値を上回る輸出量が確定値ベースで判明するとともに、確定値が暫定値を上
回った部分が速報値から確定値に移行する段階で需要から輸出に算入されることにより、当該需要が下
方修正されることはありうる。他方、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入したことにより、
製油所が稼働を上昇、原油精製処理量を増加させた(図 2 参照)。これに伴いガソリン生産も堅調となっ
たことに加え、米国での堅調なガソリン需要により、ガソリン生産に伴う利幅が拡大していたこともあり、米
国のみならず欧州等でも精製稼働が活発化、生産されたガソリンが米国に輸出された。このように、米国
では需要は堅調であったものの、国内でガソリン生産が活発に行われる(ガソリン最終製品生産は図 3
参照)とともに国外からもガソリンの輸入が行われたこともあり、6 月中旬から 7 月上旬にかけては同国の
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ガソリン在庫は若干ではあるが増加傾向を示した結果、在庫は平年幅を超過する量となっている(図4 参
照)。また、この時期(7 月 8 日時点で 2.40 億バレル)としては、1990 年の週間統計史上で最高水準に到
達している(それ以前の月末値(各年 6 月末)との比較では 1984 年 6 月末(この時 2.46 億バレル)以来
の高水準となっている)。
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2016 年 4 月の同国留出油需要(確定値)は前年同月比で 4.4%程度減少の日量 382 万バレルと速報
値の日量405 万バレル(前年同月比1.2%程度の増加)から下方修正されており(図5 参照)、3 月の前年
同期比 2.8%程度の減少から減少幅が拡大する格好となっている。4 月の同国からの留出油輸出量が速
報値の段階では日量95~103 万バレル程度(平均推定同99 万バレル)と推定されていた一方で、4 月の
輸出量確定値は日量 130 万バレルと速報値を日量 31 万バレル程度上回っており、この分が速報値から
確定値に移行する段階で需要から輸出に算入されたことが下方修正の一因と考えられる。また、3 月の
物流活動が前年同月比で 2.2%減少したことに加え、4 月の物流活動も同 0.2%の増加にとどまっていた
ことも、留出油需要を抑制する要因となっていると考えられる。他方、6 月の留出油需要(速報値)は日量
389 万バレルと、前年同月比で 0.9%程度の増加となっている。7 月 15 日に発表された 6 月の米国の鉱
工業生産指数は前年同月比で 0.7%の減少となる(因みに 5 月の当該指数は同 1.5%の低下であった)
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など、同国の鉱工業生産活動の前年同月比での減少幅が縮小していることが作用していると見られるが、
輸出量が暫定値から確定値に移行する際に変動することにより、留出油需要も速報値から確定値に移行
する際に修正される可能性があるので注意が必要であろう。他方、製油所での原油精製処理量とともに
留出油の生産も増加したものの(図 6 参照)、輸出(但し速報値ベースであるので、確定値に移行する際
には需要に算入しなおされる可能性はある)が堅調であったとことから、留出油在庫は 6 月中旬から 7 月
上旬にかけ上下に変動しつつも、若干の増加傾向となり、7 月 8 日時点では平年幅を超過する状態とな
っている(図 7 参照)。
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2016 年4 月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比で 1.2%増加の日量1,926 万バレルとなった(図
8 参照)。ガソリン及び重油の需要が前年同月比で増加したこと(重油については、価格の下落により、発
電部門等において需要が刺激されている可能性が考えられる)が、4 月の同国石油需要増加に寄与して
いる。ただ、ガソリン、留出油及びその他の石油製品の需要が速報値から確定値に移行する段階で下方
修正されたこともあり、速報値の日量2,006万バレル(同5.4%の増加)からは下方修正されている。また、
2016 年 6 月の米国石油需要(速報値)は、ガソリン及びその他の石油製品の需要が前年同月比で伸び
たこともあり、日量 2,046 万バレルと前年同月比で 4.5%程度の増加となった。但し、6 月のその他の石油
製品の需要は日量396 万バレルと 2015 年5 月~2016 年4 月の当該需要(確定値)である日量318~372
万バレルと比べても高水準であることから、当該需要は速報値から確定値に移行する段階で下方修正さ
れるとともに、同月の石油需要(確定値)もその影響を受けうることが予想される。他方、米国では、製油
所での原油精製処理量が増加傾向を示したことから、原油在庫は 6 月中旬から 7 月中旬にかけ減少傾
向となったが、それでも依然平年幅を大きく超過している状態は維持されている(図 9 参照)。なお、原油、
ガソリン、及び留出油在庫がそれぞれ平年幅を超過していることから、原油とガソリンを合計した在庫、そ
して原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅を超過する状態となっている(図 10
及び 11 参照)。
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2016 年 6 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国で減
少となった他、欧州においては、フランスで概ね 5 月下旬から 6 月中旬にかけ労働法の改正に抗議した
労働者のストライキが原油受入ターミナルで発生したことにより、原油輸入に支障が発生したと見られるこ
ともあり、欧州全体としても原油在庫は若干ながら減少となった。他方、日本では、夏場のドライブシーズ
ン突入によるガソリン需要期の到来に向けた製油所の稼働上昇と原油精製処理量の増加を控え、原油
在庫を積み増していると思われる動きが見られたことから、6 月末の同国の原油在庫は前月末比で増加
している。しかしながら、米国での原油在庫減少の影響が大きく、OECD 諸国全体として原油在庫は減
少となったが、平年幅を大きく超過した状態は継続している(図 12 参照)。他方、製品在庫については、
米国では、製油所の稼働上昇とともに石油製品生産活動が活発化した他、ガソリンの輸入も行われたこ
ともあり、在庫は増加となった。また、欧州では前月末比で微減となったが、それでもガソリンや中間留分
を中心として前年同月を超過する状態となっている。日本においては、製油所の原油精製処理量が 6 月
は月末にかけ増加傾向を示したものの、なおメンテナンス作業の影響もあり低水準にとどまったことが石
油製品の生産に影響した結果、ガソリン等を中心として石油製品在庫は減少した。それでも米国での暖
房需要期が終了したことに伴うものと考えられる LPG を中心とする製品在庫の増加幅が欧州及び日本で
の減少幅を上回ったことから、OECD 諸国全体の製品在庫水準は上昇、この時期としては平年幅上限を
超過する量となっている(図 13 参照)。そして、原油及び石油製品の在庫がどちらも平年幅を超過してい
ることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅を超過する状態となっている(図 14 参照)。なお、
2016 年 6 月末時点での OECD 諸国推定石油在庫日数は 65.7 日と 5 月末の推定在庫日数(66.0 日)か
ら減少している。
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
6 月 15 日には 1,300 万バレル台後半程度の水準であったシンガポールでのガソリン等の軽質留分在
庫量は、6 月 22 日には 1,300 万バレル弱、29 日の週には 1,300 万バレル台前半の水準と、上下に変動
しつつも減少傾向となり、7 月 6 日には 1,400 万バレル台半ばの量へと増加したものの、13 日には 1,300
万バレル半ばに戻るなど、概ね 1,300 万バレル台の水準で推移した。それでも 7 月 13 日時点では当該
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
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在庫は前年同期を 12%程度上回っており、供給過剰を市場が感じる状態となっている。このようなことか
ら、北半球の各地域で夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に差し掛かりつつあるにも拘わらず、
ガソリンと原油との価格差(この場合ガソリンの価格が原油のそれを上回っている)は低下傾向を示して
いる。他方、ナフサについては、石油化学部門向け原料で競合するLPGの価格が手頃になってきたこと
もあり、より多くの LPG が石油化学部門で利用されるようになってきていることに加え、5 月に続き 6 月に
おいても日本等アジア地域の一部石油化学工場においてナフサ分解装置のメンテナンス作業が実施さ
れたことにより、当該分解装置の稼働が低下していた他、7 月半ばにはシンガポールにおいて、そして 8
月初めには台湾において、それぞれ 1 ヶ月程度ナフサ分解装置を停止する予定であるとの情報が流れ
たこともあり、これらの要因がナフサの需要を抑制する格好となっている。このようなことから、アジア市場
でのナフサと原油の価格差は、2016 年初め以降ナフサが原油価格をそれなりに上回る状態が続いてき
たものの、6 月下旬から 7 月中旬にかけては両者の価格差は縮小した状態で推移している。
6 月15 日には 1,200 万バレル台後半の量であったシンガポールの中間留分在庫は、その後減少傾向
となり 6 月 29 日には 1,100 万バレル半ば、7 月6 日及び 13 日は 1,100 万バレル台前半の水準となった。
7 月 13 日の在庫量は前年同期を 9%程度下回っている。背景には、アジア地域の一部諸国で製油所の
メンテナンス作業が進みつつあったことにより供給が減少したと見られるうえ、インド等では、気温が上昇
した一方で降水量が低かったことから水力発電所の稼働が低下したことに伴い空調用途を含め発電部
門向けの軽油需要が増加したこと、中東でも気温上昇に伴う空調向け発電のための軽油需要が発生し
ていることなどが挙げられよう。そしてこのような在庫の減少がアジア地域での軽油価格に上方圧力を加
える格好となっている。しかしながら、製油所のメンテナンスも間もなく峠を越え始めるとの認識が市場で
広がりつつあることに加え、インドでは 6 月以降モンスーン(雨季)に入りつつあったことから、降雨ととも
に水力発電向けの貯水量の増加が期待されるとともに、発電部門向け軽油需要が抑制されるうえ、道路
工事や建設作業等が降雨により鈍化することを通じ物流活動が相対的に不活発になることが軽油需要
に影響するとの観測が市場で発生してきている。これが軽油価格の上昇を阻む格好となっていることか
ら、軽油と原油の価格差(この場合軽油価格が原油のそれを上回っている)は、6 月下旬から 7 月中旬に
かけては概ね限られた範囲内で推移している。
シンガポールの重質留分在庫は、6 月 15 日には 2,900 万バレル台半ば程度の量となっていたが、6
月 29 日には 2,500 万バレル台半ばの量へと減少した。ただ、7 月 6 日には 2,700 万バレル弱、7 月 13
日も 2,700 万バレル台半ばの水準へと回復している。これまでシンガポールでは重質留分在庫が高水
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準であったこともあり、それがアジア地域での重油価格を圧迫した結果、欧州とアジアとの地域間重油価
格差が縮小したことにより、今後欧州方面からアジア地域への重油の流入が低下するとの観測が市場で
発生したことが重油価格に上方圧力を加えていることから、原油と重油の価格差(この場合重油価格が
原油のそれを下回っている)は概ね縮小傾向を示している。
2. 2016 年 6 月下旬から 7 月中旬にかけての原油市場等の状況
2016 年 6 月下旬から 7 月中旬にかけての原油市場においては、6 月下旬には、6 月 23 日に実施され
た英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱が支持される結果となった旨 6 月 24 日に判明したことで、英国
及び欧州等の経済に対する不透明感が市場で増大した結果、安全資産と目される米ドルの購入が進ん
だことにより、原油相場は下落したものの、その後ノルウェーでの石油・天然ガス産業労働者によるストラ
イキ実施の可能性に伴う同国からの石油供給低下懸念や米国での原油在庫減少により、原油価格は英
国の国民投票実施前の水準にまで回復した。それでも、英国や欧州諸国経済に対する不透明感は根強
く、英ポンドやユーロが下落する反面米ドルが上昇したり、米国でのガソリン先物相場が下落したりしたこ
とから、7 月上旬以降は再び下落傾向となっている(図 15 参照)。
6 月18~20 日に明らかになった世論調査結果で、英国の EU 残留支持割合が離脱支持割合を上回っ
たことにより、英国の EU 離脱に伴う英国及び欧州経済への影響に対する懸念が市場で後退するととも
に、6 月 20 日には英ポンド及びユーロが上昇する反面米ドルが下落、また、米国株式相場が上昇したこ
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とから、6 月 20 日の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当たり 1.39 ドル上昇し、終値は 49.37 ドルとな
った。 ただ、6 月 21 日には、6 月 17~20 日にかけての原油価格上昇に対して利益確定の動きが市場
で発生したことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 48.85 ドルと前日終値比で 0.52 ドル下
落した(なお NYMEX の 7 月渡し WTI 原油先物契約取引はこの日を以て終了したが、8 月渡し契約のこ
の日の終値は 1 バレル当り 49.85 ドル(前日終値比 0.11 ドル下落)であった)。6 月 22 日の原油価格は、
前日終値比で 1 バレル当たり 0.28 ドル上昇し、終値は 49.13 ドルとなったが、NYMEX の 8 月渡し原油先
物契約間では前日終値比で 0.72 ドルの下落であった。これは、6 月 22 日に米国エネルギー省(EIA)か
ら発表された同国石油統計(6 月 17 日の週分)で、原油在庫が前週比で 92 万バレルの減少と市場の事
前予想(同 140~170 万バレル程度の減少)ほど減少していなかった旨判明したことによる。6 月 23 日に
は、英国調査会社イプソスモリが実施した世論調査で英国の EU 残留支持割合が離脱支持割合を上回
っている旨判明したと 6 月23 日に報じられたことで、英ポンド及びユーロが上昇した反面米ドルが下落し
たこと、6 月21 日までの 1 週間で米国オクラホマ州クッシングの原油在庫が 100 万バレル近く減少してい
ると米国石油関連情報サービス会社 Genscape が報告した旨 6 月 23 日に報じられたことから、この日(6
月 23 日)の原油価格の終値は 1 バレル当たり 50.11 ドルと前日終値比で 0.98 ドル上昇した。それでも、
6 月 24 日には、6 月 23 日に実施された英国の EU 残留か離脱かを問う国民投票で同国の EU 離脱が支
持される結果となった旨 6 月 24 日に判明したことで、英国及び欧州等の経済に対する不透明感が市場
で増大した結果、英ポンド及びユーロが下落、安全資産と目される米ドルの購入が進んだことにより、米
ドルが上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 2.47 ドル下落し、終値は
47.64 ドルとなった。
6 月 27 日も 6 月 23 日に実施された英国の国民投票で同国の EU 離脱が支持される結果となった旨 6
月 24 日に判明したことで、英国及び欧州等の経済に対する不透明感が市場で増大した流れを引き継ぎ、
引き続き英ポンド及びユーロが引き続き下落するとともに安全資産と目される米ドルの購入が進んだこと
から、米ドルが上昇したことにより、この日の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当たり 1.31 ドル下落し、
終値は 46.33 ドルとなった。ただ、6 月 28 日には、これまでの原油価格下落に対して利益確定の動きが
市場で発生したことに加え、賃金交渉が妥結しない場合、最大 7,500 人のノルウェーの石油・ガス産業労
働者が 7 月 2 日午前 0 時よりストライキを開始する旨 6 月 28 日に報じられたことから、同国からの石油供
給低下に対する懸念が市場で発生したこと、6 月29 日に EIAから発表される予定である同国石油統計(6
月 24 日の週分)で原油在庫が減少しているとの観測が市場で発生したこと、これまでの米ドル上昇及び
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
株式相場下落に対して利益確定の動きが市場で発生したことにより米ドルが下落したこと及び米国株式
相場が上昇したことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 47.85 ドルと前日終値比で 1.52 ド
ル上昇した。また、6 月 29 日には、ノルウェーでの石油・ガス産業労働者によるストライキに伴う同国から
の石油供給低下に対する市場の懸念の流れを引き継いだことに加え、6 月 29 日に EIA から発表された
同国石油統計で原油在庫が前週比で 405 万バレルの減少と市場の事前予想(同 240~250 万バレル程
度の減少)を上回って減少している旨判明したこと、これまでの米ドルが上昇したことに対する利益確定
の動きが継続し米ドルが下落したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 2.03 ドル
上昇し、終値は 49.88 ドルとなった。この結果原油価格は 6 月 28~29 日の 2 日間で併せて 1 バレル当
たり 3.55 ドル上昇した。ただ、6 月 30 日には、これまでの原油価格上昇に対して利益確定の動きが市場
で発生したうえ、第二四半期最終日に伴う持ち高調整が市場で発生したこと、6 月30日に英国イングラン
ド銀行のカーニー総裁が、同国の EU 離脱決定により、経済見通しが悪化していることから、夏にかけ追
加金融緩和策を実施する必要があるとの見解を明らかにしたことで、英ポンドが下落するとともに近隣地
域である欧州大陸諸国の通貨ユーロも下落した反面米ドルが上昇したことから、この日の原油価格の終
値は 1 バレル当たり 48.33 ドルと前日終値比で 1.55 ドル下落した。7 月 1 日には、第三四半期初日にお
いて、及び米国での独立記念日(インディペンデンスデー、7 月 4 日)に伴う連休を前にして持ち高調整
が市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.66 ドル上昇し、終値は
48.99 ドルとなった。
7 月 4 日は、米国での独立記念日(インディペンデンスデー)の休日に伴い NYMEX での通常取引は
実施されなかった。ただ、7 月 5 日には、6 月 29 日に EIA による米国石油統計で発表された通り、米国
東海岸でのガソリン在庫が週間統計史上最高水準に到達したことで、ニューヨーク港ではガソリンを積載
したタンカーがガソリンを陸揚げできず沖合に停泊するなどしている旨 7 月 5 日に報じられた(後述)こと
から、ガソリン需給の緩和感を市場が意識したことにより、米国ガソリン先物相場が下落したことに加え、
英国の EU 離脱決定に伴う欧州地域経済の先行き不透明感からユーロ及びポンドが下落した反面米ド
ルが上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 2.39 ドル下落し、終値は 46.60
ドルとなった。7 月 6 日には、この日米国供給管理協会(ISM)から発表された 6 月の同国非製造業景況
感指数(50 が当該部門拡大と縮小の分岐点)が 56.5 と 5 月の 52.9 から上昇、2015 年 11 月(この時は
56.6)以来の高水準となった他市場の事前予想(53.3)を上回ったうえ、7 月 7 日に EIA から発表される予
定である同国石油統計(7 月 1 日の週分)で原油在庫が減少している旨判明するとの観測が市場で発生
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
したことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 47.43 ドルと前日終値比で 0.83 ドル上昇した。
7 月 7 日には、この日 EIA から発表された同国石油統計で原油在庫が前週比で 222 万バレルの減少と
市場の事前予想(同 230~260 万バレル程度の減少)程減少していない旨判明したこと、7 月 8 日の米国
労働省による 6 月の同国非農業部門雇用統計の発表を控え持ち高調整が市場で発生したことにより、米
ドルが上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 2.29 ドル下落し、終値は
45.14 ドルとなった。ただ、7 月 8 日には、前日の原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが
市場で発生したうえ、7 月 8 日に米国労働省から発表された 6 月の同国非農業部門雇用者数が前月比
で 28.7 万人の増加と、2015 年 10 月(この時は同 29.5 万人の増加)以来の大幅な増加となった他市場の
事前予想(同 17.5~18.0 万人の増加)を上回ったこと、7 月 8 日にナイジェリアの武装勢力であるニジェ
ールデルタ・アベンジャーズ(NDA)が同国で ENI が操業する原油輸送パイプラインを爆破したことで、同
国からの石油供給減少に対する市場の懸念が増大したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1
バレル当たり 0.27 ドル上昇し、終値は 45.41 ドルとなった。
ただ、7 月 8 日に米国石油サービス企業 Baker Hughes から発表された同国石油坑井掘削装置稼働数
が同日時点で 351 基と前週比で 10 基増加(同国石油水平坑井掘削装置稼働数は 300 基と前週比で 10
基増加)している旨判明したことで、この先同国の原油生産量の減少ペースが鈍化するとの観測が市場
で増大した流れが 7 月 11 日の市場に引き継がれたことから、7 月 11 日の原油価格は前週末終値比で 1
バレル当たり 0.65 ドル下落し、終値は 44.76 ドルとなった。しかしながら、7 月 11 日夕方に発表された米
アルミ製造大手アルコアの 2016 年 4~6 月期業績が市場の事前予想を上回ったことから、7 月 12 日の
米国株式相場が上昇したこと、7 月 12 日に OPEC から発表された「月刊オイル・マーケット・レポート」に
おいて、2017 年には世界の過剰な石油在庫が削減されると予想される旨示唆されたこと、7 月 12 日に
EIA から発表された短期エネルギー見通し(STEO)で EIA が 2016 年及び 2017 年の世界石油需要を上
方修正したことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 46.80 ドルと前日終値比で 2.04 ドル上
昇した。7 月13 日には、EIA から発表された同国石油統計(7 月8 日の週分)で原油在庫が前週比で 255
万バレルの減少と市場の事前予想(同260~325 万バレル程度の減少)ほど減少していなかった他、ガソ
リン在庫が前週比で 121 万バレルの増加と市場の事前予想(同 13~100 万バレル程度の減少)に反して
増加していたこと、留出油在庫が前週比で 406 万ンバレルの増加と事前予想(同 0~38 万バレル程度の
増加)を上回って増加していた旨判明したことで、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり
2.05 ドル下落し、終値は 44.75 ドルとなった。7 月 14 日には、前日の原油価格下落に対して利益確定の
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動きが市場で発生したことに加え、7 月 14 日に発表された米大手金融機関 JP モルガンの 2016 年 4~6
月期業績が市場の事前予想を上回ったことから米国株式相場が上昇したこと、7 月 14 日にイングランド
銀行が政策金利を 0.5%で据え置く旨決定(事前予想は 0.25%への引き下げ)したことにより、英ポンド
及びユーロが上昇した反面米ドルが下落したことにより、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり
45.68 ドルとで前日終値比で 0.93 ドル上昇した。また、7 月 15 日も、この日 ExxonMobil がナイジェリアの
Qua Iboe 原油出荷に関して不可抗力条項の適用を宣言したことで、同国からの原油供給低下懸念が市
場で増大したことに加え、7 月 15 日に中国国家統計局から発表された 2016 年 4~6 月期の同国国内総
生産(GDP)が前年同期比で 6.7%の増加と市場の事前予想(同 6.6%の増加)を上回ったこと、7 月 15 日
に米国商務省から発表された 6 月の同国小売売上高が前月比で 0.6%の増加と市場の事前予想(同
0.1%の増加)を上回ったことにより、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.27 ドル上昇し、
終値は 45.95 ドルとなった。この結果原油価格は 7 月 14~15 日の 2 日間で併せて 1 バレル当たり 1.20
ドル上昇している
3.今後の見通し等
イエメンでは、4 月21 日よりハディ大統領派とイスラム教フーシ派勢力との間で和平協議が続いている
が、進展速度は遅いとされている一方で、6 月下旬から 7 月上旬にかけてもサウジアラビアを主導とする
連合軍がフーシ派勢力に対して空爆を実施したり、武装勢力が軍の拠点を攻撃したりするなど、政情は
安定していない。ウクライナでは引き続き政府と親ロシア派勢力との間で戦闘が発生しており、EU が 7 月
1 日に、ウクライナの政情不安に伴う対ロシア経済制裁を 2017 年 1 月末まで 6 ヶ月間延長した。イラクで
は 6 月 26 日にイスラム国(IS)からのファルージャ奪還を完了した旨伝えられたが、7 月 3 日には首都バ
グダッドでの爆弾テロにより、7 月 7 日時点で死亡者が 292 人と、2003 年のイラク戦争以来最多の犠牲者
が発生している。また、7 月7 日夜にバクダッドの北90 ㎞に位置する都市バラドで IS がイスラム教シーア
派の廟付近の場所を襲撃した結果、少なくとも 40 人が死亡するなど、不安定な状況が続いている。
リビアでも、6 月 21 日に統一政府を支援する民兵等の軍部隊が IS と交戦し部隊側に少なくとも 34 名
の死者が出たと伝えられる。ただ、同国では、これまでトブルクを拠点とする東部の暫定議会とトリポリを
拠点とする西部の制憲議会の両政府に分裂していたが、国連の支援を背景に統合の動きが出てきてい
る他、これも東西に分裂していた国営石油会社(NOC)が 7 月 2 日に統合することで合意した旨明らかに
なっている(但し、東西両政府からの承認はまだ得られていないとも伝えられる)。また、石油関連施設警
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備隊が、統一政府を支援し同国からの原油生産の再開に向け努力している旨表明するなど、同国情勢
の安定化に向けた動きも見られる。
シリアでは、ラマダン明けの祝日に伴い 7 月 6 日午前 1 時(現地時間)から 72 時間の停戦に入ってお
り、これは政府及び反体制派の一部も合意しているとされる。シリア政府は 7 月 9 日に、さらに 3 日間の
停戦延長を発表している。しかしながら、停戦前、そして停戦時においても、政権軍、反体制派、そして
IS 等により攻撃が発生しているとされている。
このようにイエメン、ウクライナ、イラク、イラン、及びリビアに関しては、一部を除き政情不安は継続して
いる。今後状況がさらに悪化するようであれば、原油相場に影響を及ぼすことも考えられる。
ナイジェリアでは、6 月 16 日以降暫くの間は NDA による同国での石油関連施設への攻撃に関する犯
行声明は行われなかった(実際大規模な攻撃も行われなかったようである)。そして、6 月 27 日にはナイ
ジェリア国営石油会社 NNPC の報道官が、同国での大規模なパイプライン攻撃が発生していない中で
石油生産関連施設の修理が進んだことから、原油生産は以前の日量160 万バレルから 6 月20 日の週以
降には 190 万バレルへと増加した旨発言していた。しかしながら、6 月 21 日には、NDA との間で 1 ヶ月
間の停戦で合意した旨同国石油省幹部が明らかにしたと報じられたが、同日 NDA は停戦合意を否定し
ており、実際に 7 月 3 日には、NDA が 5 件の石油・天然ガス関連施設攻撃に関して犯行声明を発表した。
この中で、Warri 製油所に繋がるパイプライン、ニジェールデルタ州の Batan ポンプ基地に近い 2 本の基
幹パイプライン、そして Abiteye ポンプ基地近くで Chevron が操業する 2 ヶ所の施設を攻撃したと主張し
ている。NDA はさらに、7 月 5 日に Chevron の操業する坑井と Warri 近くの石油パイプラインを爆破した
旨明らかにした。また、7 月 6 日にも NDA は Chevron の石油パイプラインを爆破した旨表明、7 月 8 日に
も NDA はナイジェリア企業 Aiteo の操業するパイプラインに攻撃を加えた旨表明している。このようにナ
イジェリアでは一時石油関連施設への攻撃が下火になったように見えたが、最近になって再び攻撃が活
発化しつつあり、一時は回復したように見えるナイジェリアでの原油生産量も再び減少する可能性もある。
このようなことから、今後も特にナイジェリアでの情勢に対して石油市場関係者の注目が集まると考えら
れる他、同国からの原油生産減少懸念が原油相場を下支えするといった場面が見られることも考えられ
る。
7 月 8 日に発表された 6 月の米国の非農業部門雇用者数は前月比で 28.7 万人の増加と市場の事前
予想を超過して増加するなど、必ずしも指標類は米国経済が減速することを示唆していない。一方で、6
月 23 日の英国の国民投票で EU 離脱が決定したことに伴い、英国では大手不動産投資ファンドに対し
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解約請求が増大したことによりファンド資産の凍結等の措置が施されている旨伝えられる他、他の EU 諸
国に比べて不良債権比率が高いイタリアの銀行が英国の EU 離脱に伴う英国及び欧州経済の混乱で影
響を受けるのではないかとの懸念が市場で増大するなど、当該地域経済に対する懸念が高まっている。
このため、英ポンド及びユーロが下落しやすく、また相対的に良好な米国経済状態や市場関係者のリス
ク回避への行動から米ドルの購入が進むことと併せ、米ドルが上昇しやすい状態が今暫く続くものと考え
られる。このようなことから、原油相場はこの面で下方圧力が加わりやすいものと思われる。そのような中、
今後発表される予定の米国等での経済指標類、米国等金融当局関係者による発言、米国等企業による
2016 年 4~6 月期業績等により、原油相場が変動するものと考えられる。また 7 月 19 日には国際通貨基
金(IMF)より世界経済見通しの改訂版が発表される予定であるが、ここで世界経済成長見通しが英国の
EU 離脱等の影響で下方修正されるようだと、8 月に発表される予定の IEA、EIA、及び OPEC のオイル・
マーケット・レポートの類で世界石油需要見通しが下方修正される可能性も高まり、その結果、それを織
り込む形で原油相場に下方圧力を加えてくることも想定されよう。
米国では最終消費者の段階では 9 月 3~5 日の連休(9 月 5 日が労働祭(レイバーデー)の休日)まで
なお夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が継続する。しかしながら、製油所の段階では、7 月
後半以降になると、9 月初旬以降の秋場の不需要期が意識され始め、製油所がメンテナンス作業実施を
視野に入れつつ原油精製処理量を引き下げ始め、それに伴い原油購入も不活発になってくる。このよう
なことから、市場では季節的な需給の緩和感が醸成されるとともに、原油相場に下方圧力を加えてくるも
のと考えられる。既に米国ではガソリン需要期にもかかわらず、ガソリン在庫が豊富に存在している。特
に NYMEX ガソリン先物市場の受け渡し地点であるニューヨーク港の位置する米国東海岸では 6 月 24
日にはガソリン在庫が 7,247 万バレルと 1990 年 1 月の週間統計開始後最高水準となった(月間統計値
(つまり月末時点の在庫量)との比較では1987年1月末(この時は7,428万バレル)以来の高水準である)
他、その後も当該水準近辺で在庫量は推移している。このようなこともあり、国外からやって来たガソリン
積載のタンカーがニューヨーク港で陸揚げできず、沖合に停泊したり、同国メキシコ湾岸地域へと仕向
地を変更したりしている。そしてこのようなガソリン在庫状況がガソリン先物相場の下落を通じて原油相場
に影響を与えている側面があるが、これからガソリンは不需要期に向かうことになるので、この面でも原
油相場は下落圧力に晒されやすい状況は継続すると考えられる。
大西洋圏ではハリケーン等の暴風雨シーズンに突入した(暴風雨シーズンは例年 6 月 1 日~11 月 30
日である)。ハリケーン等の暴風雨は、進路や勢力によっては、米国メキシコ湾沖合の油田関連施設に
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影響を与えたり、また、湾岸地域の石油受入施設や製油所の活動に支障を与えたり(実際に製油所が冠
水し操業が停止することもあるが、そうでなくても周辺の送電網を破壊することにより、製油所への電力供
給が停止することを通じて操業が停止するといった事態が想定される)、さらには、メキシコの沖合油田
や原油輸出港の操業等が停止することにより米国の原油輸入に影響を与えたりする。特に暴風雨の発
生が活発化するのは 8 月半ばから 10 月半ばとされるので、引き続き今後のハリケーン等の実際の発生
状況やその進路、そしてその予報等に留意すべきであろう。
全体としては、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が峠を越え始めることに伴い、製油所の
原油精製処理量低下と原油購入の不活発化と併せ、市場関係者が季節的な需給の緩和感を意識するこ
とから、この面で原油相場に下方圧力が加わってくるものと考えられる。このようなことから、ナイジェリア
をはじめとする地政学的リスク要因面での石油供給途絶懸念の増大、市場関係者による利益確定の動き、
そして米国等の経済指標類の内容などにより、原油相場が上下に変動する場面が見られる可能性はあ
るが、余程相場に影響力のある要因が出現しないようだと、原油相場はこの先少なくとも 1 ヶ月間は下落
傾向になりやすいものと思われる。
4.世界天然ガス市場動向
米国では、2015~16 年の冬場の気温が平年を超過することが多かったことにより、暖房用の天然ガス
需要が大幅に不振であった(図 16 参照)ことが、同国の天然ガス需要全体に影響を与えた結果、生産量
自体は価格低下に伴い伸び悩み気味であった(図17 参照)ものの、総じて需給は緩和、地下貯蔵量は 4
月 1 日時点で 2.48 兆立方フィートと過去 5 年平均を 54.4%超過するなど、2012 年 4 月 20 日(この時は
同 55.4%超過)以来の大幅な供給過剰率となった。天然ガス価格はこの供給過剰感の強まりにより、2 月
以降100 万Btu 当たり 2 ドル前後(3 月には同1.6 ドル台にまで下落する場面も見られた)で推移したが、
暖房需要期が終了した 4 月以降も 2 ドル程度の価格が続いた(図 18 参照)。しかし、このような価格水準
で米国のシェールガスを含めた天然ガスの生産量は伸び悩み気味となり、他方発電部門における燃料
としては石炭と比べ天然ガスが相対的に安価となったことから、発電所はより天然ガスを燃料として利用
するようになった(図 19 参照)。この状況自体はこの時期新たに発生したというわけではなく、2015 年に
おいても発電部門での天然ガス需要は堅調に伸びていた。それでも、2015~16 年の冬場は暖房用の
需要の不振が発電部門での好調な需要を相殺して余りあった結果、総需要は低迷した。しかしながら、4
月に入り、そのような暖房用の天然ガス需要は大幅に低下した。このため再び発電部門が天然ガス需要
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全体を牽引するようになった。また、米国では特に南部において 4 月以降気温がしばしば平年を超過す
るようになるなどした(図 20 参照)ことから、空調稼働のための電力需要を賄うための天然ガス需要が一
層刺激された。このような要因により、米国での天然ガス地下貯蔵量の過去 5 年平均比での超過率は下
し始め、7 月 8 日には 22.0%へとほぼ半減、つまり天然ガス需給が相対的に引き締まる方向に向かった
(図 21 参照)。このようなことから、米国の天然ガス価格は 5 月下旬頃から上昇傾向となり、7 月 1 日には
一時 100 万 Btu 当たり 2.998 ドルと 3 ドルに迫る水準に到達した。ただ、天然ガス価格が上昇することに
より、発電部門での石炭コストに接近してきた(図22 参照)こともあり、天然ガス価格は 3 ドルを超過するこ
となく、折り返す格好となっている。
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英国では、4 月に気温が平年を割り込むなど冷え込んだ(図 23 参照)ことにより、暖房向け天然ガス需
要が発生した。また英国は EU とは異なり、2013 年 4 月 1 日に炭素排出権に最低価格(Floor Price)を導
入、2015 年 4 月 1 日には当該価格をそれまでの二酸化炭素 1 トン当たり 9.55 ポンドから 18.08 ポンド
(2020 年まで適用の予定)にまで引き上げた。このため、英国においては、特に天然ガス価格が下落し
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て来た2016年においては、天然ガスが相対的に石炭に対して価格競争力を持つようになってきている。
加えて、英国では特に 2013 年以降老朽化した石炭火力発電所を閉鎖したり、より幅広い燃料(その主流
はバイオ燃料である)を受け入れられるように転換したりした。このようなこともあり、同国では石炭火力発
電所における発電量が減少傾向になるとともに、天然ガスや再生可能エネルギー(風力等)による発電
量が増加傾向を示している(図 24 参照)。また、欧州全体としても天然ガス需要は前年同月比で若干な
がら増加傾向を示していると見られる(図 25 参照)が、これは価格下落により需要が刺激されている側面
があるものと考えられる(図 26 参照)。他方、英国では天然ガス生産量が概ね前年同月並みとなったと推
定されるが、ノルウェーでは 2015 年 10 月に Troll ガス田において 2 基のガス圧縮装置を設置したことに
より日量 8 億立方フィートの天然ガス生産増加を実現したことや新規天然ガス田の生産開始などにより前
年同月比で日量 10 億立方フィート程度増産する傾向を示している。ロシアについても原油価格の下落
に伴う天然ガス価格の下落もあり、欧州向けの輸出水準もそれなりに堅調に行われていると推測される。
加えて、世界的な LNG 供給過剰状態の中、英国をはじめとする欧州に向け LNG が流入している。この
ように需要もそれなりに増加しているものの、供給も堅調であったと見られることから、英国を初めとする
欧州では在庫水準は概ね昨年並みで推移している(図 27 参照)。そのような中、英国及びノルウェーに
おけるガス田等天然ガス供給関連施設の稼働状況により天然ガス価格が変動したが、特に英国では、6
月初めに気温が平年を下回った他、ノルウェーや英国においてメンテナンス等によるガス田での生産停
止と英国への天然ガス流入量の低下に加え、6 月 24 日には、オランダ政府が 10 月 1 日から 5 年間
Groningenガス田の生産量を日量26億立方フィートから同24億立方フィートへと抑制する旨提案した(当
該ガス田周辺で微小地震が発生していることによるものと伝えられる)ことから、欧州地域での天然ガス
需給が引き締まるとの観測が市場で発生したこと、欧州域内で天然ガス価格に影響を与える原油価格が
上昇したことなどの要因により、英国の天然ガス価格は 5 月下旬に上昇、以降もその水準を維持した。し
かしながら、6 月 23 日に実施された英国での国民投票で EU 離脱が決定したことにより、同国経済に対
する先行き不安から英ポンドが下落したことにより、英国天然ガス価格は米ドルベースでは6月下旬以降
下落している。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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北東アジア地域においては、日本において 2015~16 年の冬の気温が概ね平年を超過していたことも
あり、発電向け及び暖房向け天然ガス需要が抑制されたと考えられることから、同国では 3 月末時点で
は LNG 在庫が高水準となった。加えて、韓国においても、原子力発電、石炭火力発電、そして再生可能
エネルギーによる発電の稼働が概して堅調であった反面、ガス火力発電の稼働が低下したこともあり、
同国での LNG 輸入も抑制されたと見られる(図 28 参照)。他方、原油価格が 2015 年以降下落し、2016
年2 月には WTI で 1 バレル当たり 20 ドル台後半になるなど低迷したことから、時間差をおいて原油価格
連動型の LNG 輸入価格も下落した他、供給もこの先豪州を中心として増加していくとの観測が市場で発
生したこともあり、アジア地域でのスポット LNG 価格も 4 月中旬には 100 万 Btu 当たり 4 ドル前半にまで
下落した。しかしながら、その後は原油価格の上昇とともに、この先の原油価格連動型 LNG 価格の上昇
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を見込んだ LNG 調達が発生したこともあり、スポット LNG 価格は回復、7 月中旬時点では 100 万 Btu 当
たり 5 ドル台前半程度の水準となっている。ただ、アジアと欧州での天然ガス価格差が開いていたときに
は、欧州で受け入れた LNG をアジアに向け再出荷する場面が見られたが、現在はアジアでのスポット
LNG 価格の下落により、欧州でのスポット天然ガス価格との差が縮小したことから、欧州からアジアに向
けた LNG の流れは抑制される格好となっている。
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