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仕訳と転記の関係
2 2 仕訳と転記の関係 a 仕訳は何のために行うか 取引を勘定に記入するにあたって、次のようないくつかの決 定が行われます。 ① ある企業活動が取引であるかどうかを判定する。 ② 取引であると判定された場合には、 * 5 取引要素 複式簿記において、資産の 増加や資産の減少などのよう な、1つの取引を構成する要 素のことをいう。取引を構成 する取引要素は、上の2つの ほか、負債の減少、負債の増 加、純資産の減少、純資産の 増加、収益の発生(取消)、 費用の発生(取消)がある。 *5 取引要素に分解する。 それぞれの取引要素について、記入すべき勘定科目を 決定する。 それぞれの勘定科目について、借方または貸方を決定 する。 勘定科目に記入すべき金額を決定する。 このような から までの一連の行為を、仕訳と呼びます。 取引は、直接勘定に記入しないで、まず仕訳をしてから勘定 に移しかえるのが通常の記帳手続です。 それでは、なぜ最初に仕訳をするのでしょうか。勘定は簿記・ 会計の記録・計算の単位ですから、勘定記入が正確に行われて いるなら、それで正確な財務諸表が作成できるはずです。とこ ろが、1つ1つの取引を元帳に記入していくと、間違った場合 にその発見に非常な手数がかかってしまいます。また、元帳へ の記入だけでは取引の発生順の記録も存在していません。そこ で、元帳に記入する前に、歴史的な記録(発生順の記録)を残 し、さらに元帳への記録を、正確で間違いないものにするため に仕訳を行います。 したがって、手続的には個々の取引の仕訳が行われ(仕訳帳 を作成し) 、それが総勘定元帳に転記されるわけです。図示する と、次のとおりです。 36 ©2007 JMAM 2・2 仕訳 取 引 仕訳と転記の関係 転記 仕 訳 帳 総 勘 定 元 帳 s 仕訳のルールを知る 第1章でも説明したように、簿記・会計では、取引の記録に あたっては、それを資産、負債、純資産それぞれの増減、収益、 費用の発生(取消)のうち、いずれか関係するものに分けてい きます。すべての取引はこれら8つの取引要素に分解すること ができるので、取引と各要素との関係を的確に理解することが、 仕訳の第一歩になります。 そして、簿記では、取引によって生じた各要素の増減変化を 複式記入で2つの側面から記録していきます。 第1章で例に出した「100万円の建物を現金で購入した」とい う取引の場合、建物という資産が100万円増加した側面と、現金 という資産が100万円減少した側面に分けるわけですが、これを 仕訳では次のように表わします。 (借)建物 1,000,000 (貸)現金 1,000,000 この仕訳の借方側は「建物という資産が100万円増加した」こ とを表わし、貸方側は「現金という資産が100万円減少した」こ とを表わします。 仕訳は、このように一定の約束事によって取引の内容を表わ しています。仕訳を理解するためには、借方に記入するものと 貸方に記入するものにはどういうものがあるか、またその組み 合わせはどのようになっているかを理解することが重要です。 仕訳で発生する取引要素(勘定科目)の組み合わせは、次の とおりです。 37 ©2007 JMAM 仕訳の組み合わせ (借方) 資産の増加 (貸方) 資産の減少 負債の減少 負債の増加 純資産の減少 純資産の増加 費用の発生 (収益の取消) 収益の発生 (費用の取消) 仕訳は、上の図のような、8つの取引要素の組み合わせから 成り立っているのです。この組み合わせを理解することが仕訳 の第一歩です。 仕訳の組み合わせの覚え方 貸借対照表 負債 資産 純資産 損益計算書 費用 収益 ● 資産の増加 ● 資産の減少 ● 負債の減少 ● 負債の増加 ● 純資産の減少 ● 純資産の増加 ● 費用の発生 ● 収益の発生 仕訳の組み合わせのルールも、貸借対照表、損益計算書 の形式と合わせて理解すると覚えやすいでしょう。貸借対 照表、損益計算書で借方に計上される項目(資産と費用) は増加(発生)の場合に借方に仕訳し、貸借対照表、損益 計算書で貸方に計上される項目(負債、純資産と収益)は 増加(発生)の場合に貸方に仕訳します。 仕訳とは、企業のある経済活動が取引と識別された場合に、 それを①どの勘定科目の、②借方、貸方のどちらの金額欄に、 38 ©2007 JMAM 2・2 仕訳と転記の関係 ③どのような金額を記入するのか、を決定することなので、勘 定記入のルールと仕訳の組み合わせのルールは、同一のものと いうこともできます。すなわち、先ほどの、 (借)建物 1,000,000 (貸)現金 1,000,000 という仕訳は、 「建物勘定の借方に 100 万円記入し、現金勘定の 貸方に 100 万円記入する」と読むことができます。 なお、29 ページの〈鈴木運送店の取引〉を仕訳すると、次の ようになります。 (単位:千円) ① (借)現金 1,000 (貸)資本金 1,000 ② (借)現金 400 (貸)借入金 400 ③ (借)備品 200 (貸)現金 1,200 車両 1,000 4 (貸)現金 4 ⑤ (借)広告宣伝費 10 (貸)現金 10 ⑥ (借)現金 6 (貸)受取運賃 6 10 (貸)受取運賃 10 4 (貸)受取運賃 14 ④ (借)燃料費 ⑦ (借)売掛金 ⑧ (借)現金 売掛金 10 ⑨ (借)現金 5 ⑩ (借)給料 10 (貸)売掛金 (貸)現金 5 10 d 仕訳帳はどう記入するか 取引の仕訳を記入する帳簿を仕訳帳といい、勘定記入を行う ために、勘定を集めた帳簿を総勘定元帳(元帳)といいます。 仕訳帳と総勘定元帳は、複式簿記における基本的帳簿であるの で主要簿と呼ばれます。 1・4 で説明したように、あらゆる取引は仕訳帳に仕訳が行わ れ、そして、総勘定元帳に転記が行われます。簿記の目的であ る資産、負債、純資産の増減変動を記録、整理、報告するため 39 ©2007 JMAM