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石炭利用次世代技術開発調査 <石炭熱分解技術分野

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石炭利用次世代技術開発調査 <石炭熱分解技術分野
「石炭利用次世代技術開発調査
石炭熱分解技術分野」
事後評価報告書
事後評価報告書
平成15年2月
新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術評価委員会
目
はじめに
分科会委員名簿
審議経過
評価概要
技術評価委員会におけるコメント
技術評価委員会委員名簿
次
1
2
3
4
6
7
第1章 評価の実施方法
1-1
第2章 プロジェクトの概要
2-1
第3章 評価
1.総論
2.各論
3-1
第4章 評点法による評点結果
4-1
参考資料1 プロジェクトの概要説明資料
参考資料2 周辺動向調査
参考資料 1-1
参考資料 2-1
はじめに
石炭利用に当たっては単にエネルギー源あるいは化学原料などの視点に固守する
ことなく、情勢に応じた総合的な石炭利用システムを構築することは石炭利用技術の
範囲拡大の点で意義が大きい。また、将来は良質瀝青炭や石油の不足が予想される中、
褐炭等の低品位炭への適用を考慮した新規技術開発が必要である。本プロジェクトで
はこの観点に立ち、付加価値の高い化学原料としての軽質成分などの液収率を増大さ
せるための新たなプロセスの構築を目指し、超臨界流体による抽出技術の適用、マイ
クロ波の利用、新たな水素化熱分解技術の適用などに関する技術動向調査、基礎研究、
システム化調査を平成8年度から6年間の計画で実施したものである。
今回の評価は事後評価として、平成14年度に新エネルギー・産業技術総合開発機
構 技術評価委員会「石炭利用次世代技術開発調査 石炭熱分解技術分野」事後評価
分科会(分科会長:吉川 邦夫、東京工業大学大学院 総合理工学研究科 教授)にお
いて行われたものである。
本分科会では、当該分野に係わる国内外の研究開発動向や社会情勢の変化も踏まえ
つつ、プロジェクトの目的・政策的位置付け、目標・計画内容、研究開発体制や運営
状況、成果の意義、実用化可能性や波及効果、今後の展開等について評価を実施した。
本書は、これらの評価結果をとりまとめたものである。
平成14年12月
新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価委員会
1
「石炭利用次世代技術開発調査
石炭熱分解技術分野」
事後評価分科会委員名簿
(平成14年12月現在)
氏名
分
会
委
科
長
所属
よしかわ
くにお
吉川
邦夫
まえ
かずひろ
前
一廣
たにぐち
まさゆき
谷口
正行
東京工業大学大学院
総合理工学研究科
京都大学大学院
工学研究科
(株)日立製作所
電力・電機開発研究所
教授
教授
主任研究員
員
つつみ
あつし
堤
敦司
まつかた
まさひこ
松方
正彦
東京大学大学院
早稲田大学
工学系研究科
理工学部
応用化学科
助教授
教授
(敬称略、五十音順)
事務局:新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価部
2
審議経過
●第1回分科会(平成14年10月11日)10:00∼17:00
公開セッション
1. 分科会の公開について
2. 評価のあり方及び評価の手順について
3. 評価の分担及び評価の論点について
4. 評価報告書の構成について
5. 周辺動向調査について
6. プロジェクトの詳細説明
7. コメント及び質疑応答(全体について)
●第 2 回分科会(平成14年12月10日)13:30∼17:00
公開セッション
1. 評価の進め方について
2. 評価報告書(案)の審議・確定について
3. その他
●第7回技術評価委員会(平成15年2月10日)14:00∼16:30
1.評価報告書の審議/報告
3
評価概要
1
総論
1)総合評価
今後益々重要となる低品位炭をベースとした石炭利用技術の開発は国にとっ
て実施すべき公共性のある事業であり、事業の目的及び政策的位置付けは妥当で
ある。超臨界水分解技術を用いて、低品位炭から付加価値の高いカテコールを選
択的に得ると同時に、発熱量の大きい改質炭を得る技術は独創性に富みかつ新規
な技術であるといえる。
しかし、本技術は化学原料と改質炭の併産型であり、このどちらにウェイトを
置くかによって、石炭利用技術開発事業としての政策的あるいは技術的位置付け
が変わってくる。この点を、少なくとも中間評価時点でもっと明確にすべきであ
った。今後本技術の展開を図る際には、化学原料と改質炭のどちらにウェイトを
置いて進めるべきかを明確にした上で、国の関与の必要性を含め、十分に検討す
る必要がある。
2)今後に対する提言
実用化に当たっては多炭種適用性検討や製品カテコールの用途開発、及び技術
的にブレークスルーすべき課題の解決などが残されており、次の実証ステップへ
進むか否かの判断は周辺の諸事情を勘案して慎重に行うべきである。また他の低
品位炭前処理技術との融合の可能性や、低品位炭とバイオマスとの共処理技術の
可能性などの調査研究を進め、今後、どのような形で実用化を図るべきか十分な
検討が必要である。
2
各論
1)事業の目的・政策的位置付けについて
本技術は低品位炭前処理技術として発展する可能性もあり、他の石炭利用技術
との融合を図れる点でも発展性に富んでおり、事業目的、政策的位置付けは妥当
である。
本事業は、化学原料併産型技術であるが、化学原料にウェイトをおくべきか改
質炭にウェイトを置くべきかによって、石炭利用技術開発事業としての政策的位
置付けが変わってくる。この点を、少なくとも中間評価時点でもっと明確にすべ
きであったと考えられる。またプロジェクト開始時に実施した技術動向調査の結
果、石炭を超臨界水処理する基礎研究の実績が乏しかったことから、大学等にお
けるさらなる基礎研究の積み上げが必要であった。なお、化学品製造技術として
本プロジェクトを続ける場合は、国の関与の必要性を含め、今後十分に検討する
必要がある。
4
2)研究開発マネージメントについて
開始当初3つの調査項目を並列で実施し、中間評価時点で開発目標の適切な見
直しを行い、テーマの絞り込み、目標の実用化に向けての修正など、マネージメ
ントとしては概ね妥当であった。
本プロジェクトは、低品位炭の有効利用という観点からは NEDO 事業として問
題ないが、中間評価時における超臨界水処理技術の開発目標の見直しはプロジェ
クト開始当初の課題解析の甘さを示している。
今後計画立案の際には技術、製品の多様性まで含めて多面的に事前評価する必
要があると思われる。
3)研究開発成果について
低品位炭の含酸素官能基が多いという欠点を超臨界水分解技術を用いること
で付加価値の高いカテコールを選択的に得ることができるという長所に転じさ
せたことと、固体残渣の発熱量を増加させ得たことは、独創性に富んだ新規な技
術であるといえる。
ただし、カテコールの回収は石炭構造に大きく依存するので、操作条件よりも
むしろ炭種の影響が大きい。実用化のための調査研究という本事業の性格から考
えて、超臨界水分解技術の適用範囲を明確にするために、幅広い炭種での実験を
行い多炭種対応の可能性を検討すべきであった。また、他の低品位炭利用技術と
比較した本技術の優位性を明確にすべきであった。
4)実用化、事業化の見通しについて
豪州ヤルーン炭に限定すれば、将来条件が整えば実用化への可能性はあると考
えられる。また、低品位炭の構造特性を生かして高付加価値製品を取り出し、残
りをエネルギー源に利用するというスキームを提示しており、本技術にとどまら
ず、これからの低品位炭や有機系廃棄物の高効率利用のコンセプトを公共に提示
している点で波及効果は認められる。
事業化に関しては、低品位炭改質事業単独では難しく、化学品事業を立ち上げ
ることができるかどうかが鍵になる。このためには、化学品製造技術として見た
場合の既存技術と比べた競争力の評価と副生品としての改質炭受け入れ先確保
の検討が重要になると考えられる。特に、カテコールの市場性を今後十分に検討
する必要がある。また、事業化にあたっては、技術的にブレークスルーすべき課
題もまだあり、次段階のステップに進むか否かの判断は周辺の諸事情を勘案して
慎重に行うべきである。
5
技術評価委員会におけるコメント
第7回技術評価委員会(平成15年2月10日開催)に諮り、了承された。技術評価
委員からのコメントは特になし。
6
技術評価委員会委員名簿
委 員 長 岸 輝雄
稲田 絋
大滝 義博
大西 匡
垣田 行雄
小柳 光正
瀬田 重敏
曽我 直弘
高村 淑彦
谷 辰夫
冨田 房男
西村 吉雄
丹羽 清
畑村 洋太郎
平澤 泠
三浦 孝一
村上 路一
独立行政法人 物質・材料研究機構理事長
東京大学大学院工学系研究科教授
株式会社バイオフロンティアパートナーズ代表
取締役社長
豊田工機株式会社取締役会長
財団法人日本システム開発研究所専務理事
東北大学大学院工学研究科教授
旭化成株式会社特別顧問
独立行政法人産業技術総合研究所理事
東京電機大学工学部教授
諏訪東京理科大学工学部システム工学部長
北海道大学大学院農学研究科教授
東京大学大学院工学研究科教授
東京大学大学院総合文化研究科教授
工学院大学国際基礎工学科教授
政策研究大学院大学教授
京都大学大学院工学研究科教授
株式会社宇宙情報技術研究所代表取締役副社長
(合計 17名)
(敬称略、五十音順)
7
第1章
評価の実施方法
第1章 評価の実施方法
本評価は、
「技術評価実施要領」
(平成 13 年 5 月制定、同年 10 月改定、以下「実施
要領」という。)に基づいて以下のとおり行われた。なお、「技術評価実施要領」は、
以下の 2 つのガイドラインに定めるところによって評価を実施することになってい
る。
科学技術会議にて取りまとめられた「国の研究開発評価に関する大綱的指
針」(平成 13 年 11 月内閣総理大臣決定)
経済産業省にて取りまとめられた「経済産業省技術評価指針」
(平成 14 年
4 月経済産業省告示)
NEDO における技術評価の手順は、以下のように被評価プロジェクト毎に分科
会を設置し、同分科会にて技術評価を行い、評価報告書(案)を策定の上、技術評
価委員会において確定している。
「技術評価委員会設置・運営要領」に基づき技術評価委員会を設置
技術評価委員会はその下に分科会を設置
NEDO
理事長
評価報告書
事務局
技術評価委員会
NEDO
技術評価部
評価報告書(案)
分科会 A
分科会 D
分科会 B 分科会 C
図 1 評価手順
1-1
1. 評価目的
実施要領において、評価の目的は、
評価をする者(評価者)と評価を受ける者(被評価者)が意見交換を通
じ研究開発の意義、内容、達成状況、今後の方向性等について検討し、
より効率的・効果的な研究開発を実施していくこと、
高度かつ専門的な内容を含む研究開発の意義や内容について、一般国民
にわかりやすく開示していくこと、
限られた研究開発リソースの中で、国の政策や戦略に対応した重点分
野・課題へのリソース配分をより効率的に実施していくこと、とされて
いる。
本評価においては、この趣旨を踏まえ、本事業の意義、研究開発目標・計画の妥当
性、計画と比較した達成度、成果の意義、成果の実用化の可能性等について検討・評
価した。
2. 評価者
実施要領においては、事業の目的や態様に即した外部の専門家、有識者からなる委
員会方式により評価を行うこととされているとともに、技術評価委員選定に当たって
は、以下の事項に配慮した選定を行うこととされている。
科学技術全般に知見のある専門家、有識者
当該研究開発の分野の知見を有する専門家
研究開発マネージメントの専門家、経済学、環境問題その他社会的ニー
ズ関連の専門家、有識者
産業界の専門家、有識者
また、評価に対する中立性確保の観点から事業の推進側関係者を選任対象から除外
し、また、事前評価の妥当性を判断するとの側面に鑑み、事前評価に関与していない
者を主体とすることとしている。
これらに基づき、技術評価委員会分科会(以下、「本分科会」という)委員名簿に
ある5名が選任された。
なお、本分科会の事務局については、新エネルギー・産業技術総合開発機構技術評
価部評価業務課が担当した。
3. 評価対象
平成8年度から平成13年度まで実施された「石炭利用次世代技術開発調査 石炭
熱分解技術分野」プロジェクトを評価対象とした。
なお、本分科会においては、当該事業の推進部室(新エネルギー・産業技術総合開
1-2
発機構 エネルギー・環境技術開発室)及び以下の研究実施者等から提出された事業
原簿、プロジェクトの内容、成果に関する資料をもって評価した。
研究実施者等:財団法人 石炭利用総合センター
アドケムコ株式会社
宇部興産株式会社
新日本製鐵株式会社
新日鐵化学株式会社
三菱化学株式会社
三菱マテリアル株式会社
住友金属工業株式会社
4. 評価方法
本分科会においては、当該事業の推進部室及び研究実施者からのヒアリングと、そ
れを踏まえた本分科会委員による評価コメント作成、評点法による評価及び実施者側
等との議論等により評価作業を進めた。
なお、評価の透明性確保の観点から、知的財産保護の上で支障が生じると認められ
る場合等を除き、原則として、本分科会は公開とし、研究実施者と意見を交換する形
で審議を行うこととした。
5. 評価項目、評価基準
本分科会においては、次に掲げる「標準的評価項目・評価基準」(平成 14 年 4 月 9
日、第3回NEDO技術評価委員会)に準じ、大きく事業全体及び研究開発項目別に
分けて評価を行った。事業全体に係わる評価においては、主に事業の目的、計画、運
営、達成度、成果の意義や実用化への見通し等について、評価をおこなった。各研究
開発項目に係る評価については、主にその技術的達成度等について評価した。
1-3
標準的評価項目・評価基準
【本標準的項目・基準の位置付け(基本的考え方)】
本項目・基準は、あくまでも標準的な評価の視点の例であり、各分科会にお
ける評価項目・評価基準は、被評価プロジェクトの性格、中間・事後評価の別
等に応じて、各分科会において判断すべきものである。
なお、短期間(3年以下)又は少額(予算総額5億円以下)のプロジェクト
に係る事後評価については、以下の「3.」及び「4.」を主たる視点として、
より簡素な評価項目・評価基準を別途設定して評価をすることができるものと
する。
1.事業の目的・政策的位置付けについて
(1)NEDO(国)の事業としての妥当性
単独で立ち上げる事業については、以下の項目により評価することとする。なお、特定の
プログラム制度(研究開発制度)の下で実施する事業の場合、以下の項目を参照しつつ当該
制度の選定基準等への適合性を問うこととする。
【注1】
・
「市場の失敗」
(行政改革委員会「行政関与の在り方に関する基準」
(平成 8 年 12 月)参
照)に該当しているか。しない場合、民間活動のみでは改善できないこと、公共性の高
いことが説明されているか。その際、当該事業に必要な資金規模や研究開発期間、民間
企業の資金能力等は示されているか。
・他の類似事業や関連技術動向を踏まえ、NEDO(国)の関与がなかった場合(放置した
場合)と比較して、NEDO(国)が関与することの優位性がより高いものであるか。
・当該政策目的の達成に当たって当該事業を実施することによりもたらされる政策効果が、
投じた政策資源との比較において効率的・効果的であるか(費用対効果はどうか)
。
(知
的基盤・標準整備等のための研究開発の場合を除く)
(2)事業の目的・政策的位置付けの妥当性
・評価時点或いは事業開始時点の時代背景認識から見て、事業の目的は妥当で、政策的位
置付けは明確か。
・政策課題(問題)の解決に十分資するものであるか。
・国としての国際競争力に資するものであるか。
2.研究開発マネージメントについて
(1)研究開発目標の妥当性
・目標達成のために、具体的かつ明確な開発目標、目標水準を設定しているか。
・目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。
・費用対効果分析が適切に行われているか。
(エネルギー特別会計を使用している場合に
は、費用対効果分析を踏まえ定量的なエネルギー政策上の目標が立てられているか。
)
1-4
(2)研究開発計画の妥当性
・目標達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配分を含む)とな
っているか。
・目標達成に必要な要素技術を過不足なく取り上げているか。
・研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か。
(3)研究開発実施者の事業体制の妥当性
・目標を達成する上で、事業体制は適切なものか。
・各研究開発実施者の選定等は適切に行われたか。
・関係者間の連携/競争が十分行われるような体制となっているか。
(4)研究開発実施者の運営の妥当性
・意思決定、進捗状況、計画見直し等の検討が適切に行われているか。
・プロジェクトリーダー(サブテーマのリーダーを含む)が有効に機能しているか。
・プロジェクト開始後の情勢変化(目標未達が明らかになった場合を含む)への対応は適
切であったか。
(5)情勢変化への対応の妥当性
・技術動向や社会・市場ニーズの変化等に対応して、計画を適切に見直したか。
・計画の見直しに当たっては、時代背景の変化を考慮していたか。
3.研究開発成果について
(1)計画と比較した目標の達成度
・成果は目標値をクリアしているか。
・全体としての目標達成はどの程度か。
・立案時点または計画見直し時点の時代背景認識から見て、事業は研究開発として成功し
たといえるか。また、評価時の時代背景から見てどうか。
(2)要素技術から見た成果の意義
・世界最高水準、世界で初めて、又は国際水準から見て優れた成果があるか。
(ある場合は、その根拠及びインパクトが明確に説明されているか。
)
・新たな技術領域を開拓するような成果の独創性が認められるか。
(認められる場合は、新たな技術領域の内容、その根拠、規模及び発展性はどうか。
)
・新たな市場創造につながるような新規性、先進性が認められるか。
(認められる場合は、新たな市場の内容、その根拠及び発展性はどうか。
)
・汎用性のある(応用分野の広い)技術が開発されているか。
・当初想定していなかったような成果(派生技術等)はあるか。
・将来の時代背景の変化により、重要性の増すあるいは減る成果はどのようなものか。
1-5
(3)成果の普及、広報
・論文の発表は、質・量ともに十分か。
・特許は適切に取得されているか。
・基本特許が的確に取得されているか。
・特許性は十分あると判断されるか。
・外国特許が適切に出願されているか。
・必要に応じ、成果の規格化に向けた対応が取られているか。
・広報は一般向けを含め十分に行われているか。
(4)成果の公共性【注2】
・成果の公共性を担保するための措置、あるいは普及方策を講じているのか。
(JIS 化、
国際規格化等に向けた対応は図られているか、一般向け広報は積極的になされているか
等)
4.実用化、事業化の見通しについて
(1)成果の実用化可能性
・産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか。
・公共財としての需要が実際にあるか。見込みはあるか。
・公共性は実際にあるか。見込みはあるか。
(2)波及効果
・成果は関連分野へのインパクトを期待できるものか。
・当初想定していなかった波及的な成果はあるのか。
・プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発を促進するなどの波及効果を生じている
か。
(3)事業化までのシナリオ
・コストダウン、導入普及、事業化までの期間、事業化とそれに伴う経済効果等の見通し
は立っているか。
【注1】
:
「必要性」の観点からの評価は、政策効果からみて、対象とする政策に係る行政目的が
国民や社会のニーズ又はより上位の行政目的に照らして妥当性を有しているか、行政
関与の在り方からみて当該政策を行政が担う必要があるか等を明らかにすることに
より行うものとする。
(政策評価に関する基本方針(閣議決定平成 13 年 12 月)参照)
【注2】
:知的基盤・標準整備等のための研究開発のみ。
【全体注】
:評価においてプロジェクトに対する提言を含めて検討を実施するものとする。
1-6
(参考資料)
政策立案・評価ガイドライン(抜粋)
(平成 11 年 12 月経済産業省策定)
IV.評価事項
1.事前評価
(1) 施策・制度の必要性[どのような問題が存在するのか、なぜその問題を改善する上
で行政の関与が必要なのか]
民間活動のみでは改善できない問題であって、かつ、行政が関与することにより改
善できるものが存在することを論証しなければならない。
行政の関与の必要性については、「市場の失敗
市場の失敗」と関連付けて説明すべきことを原
市場の失敗
則とする。「市場の失敗
市場の失敗」については以下に概念を示すが、より詳しくは、行政改革
市場の失敗
委員会「行政関与の在り方に関する基準」(平成 8 年 12 月 16 日)の「行政関与の可
否に関する基準」による。
行政関与の必要性の説明として、「市場の失敗
市場の失敗」に該当しないものも許容するが、
市場の失敗
その場合には、上述した問題の存在することの説明や公共性が高いことの根拠はでき
る限り客観的に明らかにしなければならない。
<市場の失敗
市場の失敗>…行政改革委員会「行政関与の在り方に関する基準」
(平成 8 年 12 月)による
市場の失敗
(a) 公共財的性格を持つ財・サービスの供給(経済安全保障、市場の整備、情報の生産、
文化的価値を含む)
複数の人が同時に消費できたり、対価の支払いなしに(まま)消費を制限することが
困難である財・サービスのことをいう。
例:市場ルールの形成
(b) 外部性
ある個人・企業の活動が、市場を経ずに他の個人・企業の経営環境に影響すること
をいう。好ましいものを正の外部性、好ましくないものを負の外部性という。
例:負の外部性の例として地球環境問題(正の外部性については、解釈に幅があると
される)
(c) 市場の不完全性
不確実性や情報の偏在(財や価格について取引の当事者間で情報量にばらつきがあ
ること)などがあるために市場取引が成立しないこと。
例:技術開発(不確実性)
、製品事故(情報の偏在)
(d) 独占力
独占力は、一般には、市場におけるマーケット・シェアやライバル企業と異なる品
質の製品を提供することによって生まれる価格設定力である。市場参加者が大きな独
占力を持っている場合には、行政の関与が許容される場合があるとされる。
(e) 自然独占
平均生産費が、市場で需要される産出量を超えても逓減するため、新規参入が利潤
をもたらさず、また 1 社だけ存在することが効率的になるため生ずる独占のことをい
う。
(f) 公平の確保
公平の確保を図るための施策については、機会の均等を図ることを第一とし、事後
的な公平については、所得・資産の多寡を基準とした再分配に原則として限定し、そ
れ以外の施策からは原則として撤退する、とされている。
1-7
第2章
プロジェクトの概要
当該事業の推進部室及び研究実施者から提出された事業原簿をもって、当該プロジ
ェクトの概要とする。
石炭利用次世代技術開発調査
「石炭熱分解技術分野」
事業原簿
事業原簿
作成者
新エネルギー・産業技術総合開発機構
エネルギー・環境技術開発室
作成時期
2002 年 10 月 4 日
目
次
0.
1.
2.
2.1.
2.2.
3.
4.
4.1.
4.2.
4.3.
5.
6.
7.
8.
8.1.
8.2.
8.3.
概要
NEDO の関与の必要性・制度への適合性・・・・・・・・・・・・・・・・2-1
事業の背景・目的・位置付け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-1
事業の背景・目的・意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-1
事業の位置付け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-1
事業の目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-2
事業の計画内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-3
事業全体の計画内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-3
研究開発項目毎の内容の詳細・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-3
研究開発実施主体の体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-6
実用化の見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-7
今後の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-7
中間・事後評価の評価項目・評価基準、評価手法及び実施時期・・・・・・2-7
研究開発成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-8
超臨界水抽出による石炭転換反応の試験・調査・・・・・・・・・・・・・2-8
水素化反応の基礎調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-45
成果の普及、広報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-52
9.
9.1
9.2
補足説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-56
2価フェノール類の市場性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-56
実用化にあたっての技術的課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-56
0.概要
石炭生産・利用技術振
石炭利用次世代技術開発調査
事業名
興補助金
石炭熱分解技術分野
事業の概要
石炭の利用にあたっては単にエネルギー源あるいは化学原料などの視点に固守することなく、総
合的な石炭利用システムの構築が必要である。本熱分解技術開発調査では、この観点に立ち、平
成 8 年度から平成 13 年度まで 6 年間に渡り研究開発を進めてきた。
付加価値の高い化学原料としての軽質成分などの液収率を増大させるための新たなプロセスの構
築を目指し、超臨界流体による抽出技術の適用、マイクロ波の利用、新たな水素化熱分解技術の
適用などに関する技術動向調査、基礎研究、システム化調査を行った。
1.NODE の関与の 我が国のエネルギーセキュリティーの確保、地球環境問題などへの対応のため、特に石炭は単
必要性・制度へ にエネルギー源としてのみではなく、付加価値の高い多目的利用への展開が可能なプロセスを開
の適合性
発することが重要であり、なかでも埋蔵量豊富な褐炭等の低品位炭を高効率に液・ガス等へ転換
する技術の開発は国の課題として残されている。本プロジェクトは、将来の実用化を目指した技
術開発であり、多額の研究開発費、長期にわたる研究開発期間、高い技術的難度等から、民間企
業のみでは十分な研究開発を進めることは難しい。国のプロジェクトとして技術開発を実施しな
い場合、実用化の促進、成果の速やかな普及は困難であことから、本技術開発は国のプロジェク
トとして実施するのが妥当である。
2.事業の背景・目 石炭の利用にあたっては単にエネルギー源あるいは化学原料などの視点に固定することなく、
的・位置付け
情勢に応じた総合的な石炭利用システム(Coal Refinary)を構築することは、石炭利用技術の
範囲拡大の点で意義が大きい。また、将来は良質瀝青炭や石油の不足が予想される中、褐炭等の
低品位炭への適用を考慮した新規技術開発が必要である。高液収率を狙った「超臨界水抽出によ
る石炭転換反応の試験・調査」では超臨界水抽出による石炭転換技術、
「中温中圧熱分解試験」
については新しい水素化熱分解技術の実用化、および「マイクロ波加熱による熱分解試験」では
マイクロ波利用の可能性を検討するものであり、基礎的な技術開発段階と位置付けられる。次世
代技術開発調査として、基礎的実験・調査研究ならびに将来の実用化を見据えた評価及び課題の
抽出を第一の目的としており、プロジェクトの性格は明確である。
制度名
3.事業の目標
(全体目標)
項
目
[要素技術開発]
a.超臨界水抽出による石炭転換反
応の試験・調査
(1) 小規模試験装置による試験を行
い基礎データの取得
開 発 目 標
・液収率:50%以上
・液性状:付加価値の高い化学原料としての
軽質油 60%以上
・チャーの部分酸化による水性ガス化シフト反応による
活性水素の供給 H/C 1.0→1.7
H12 年度に変更
・2 価フェノール類収率:4%以上(daf)
・改質炭性状:
発熱量 6,700kcal/kg(気乾)以上
燃料比 1.0∼1.5
(2)生成物のキャラクタライゼーション
・ 光触媒担持環境浄化能
・ 燃焼性
・ 表面構造
b.水素化反応の基礎調査
(1) マイクロ波加熱による熱分解特
性の基礎的調査
(2) 中温中圧熱分解試験による高液
収率熱分解反応条件の調査
[調査研究]
1)システム調査研究
2)技術動向調査
・CO2 転化率 20%以上(光照射 8hr)
・通常熱分解チャーとの違いを明確化
・
〃
・液収率 50%以上を達成するための水素種及びその発生条件の探
索
・軽質油(30%以上)及び高カロリーガスを狙いとする高効率プロ
セスの構築
・反応器 1m3(数 t/d)規模プラントの設備、運転コスト試算
・実規模プラントの設備、運転コスト試算
4. 事 業 の 計 画 内 容
H8fy
(単位:百万円)
一般会計
特別会計(電特)
特別会計(石特)
総予算額(計)
H9fy
47
47
省内担当原課
研究開発体制(実
態に併せ記載)
運営機関
委託先
H10fy
141
141
143
143
H11fy
H12fy
103
103
129
129
H13fy
115
115
総額
(6 年間)
678
678
資源エネルギー庁 石炭課
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
(財)石炭利用総合センター
三菱マテリアル㈱、アドケムコ㈱、宇部興産㈱、
研究協力先
新日本製鐵㈱、新日鐵化学㈱、三菱化学㈱、住友金属工業㈱
独立行政法人 産業技術総合研究所
5.実用化、事業化 「マイクロ波加熱による熱分解試験」については、マイクロ波利用の基礎的知見は得られたが、
の見通し
液収率が目標に達しなかったため実用化の検討は見送った。
「中温中圧熱分解試験」については、
石炭からガスと軽質油を併産する新しい石炭変換プロセスが構築できる可能性が見出されたた
め、熱自立可能な規模の反応実証試験設備(∼20t/d)による実用化に向けた試験研究を平成 15
年度から 5 年間の計画で実施することが決まっている。
「超臨界水抽出による石炭転換反応の試
験・調査」では、低品位炭から改質炭を製造しながら、2 価フェノール類などの高付加価値化学
原料が副生品として、従来の合成法で得られる場合より安価に生成できるシステムが構築可能
であることが確認できた。今後の実用化に向けては、数 t/d 規模のスケールアップ試験を引き
続き行い、本プロセスの最適化を図っていく必要である。
6.今後の展開
「マイクロ波加熱による熱分解試験」は平成 11 年度までの成果をもって一応の区切りをつけ
実用化検討は行わないが、マイクロ波応用分野における基礎的知見を得られたため、今後は民
間企業への技術情報支援を行っていく。
「中温中圧熱分解試験」に関しては、本調査研究により
得られた成果を踏まえて、平成 15 年度から実用化に向けた研究を実用化補助事業として実施す
る。
「超臨界水抽出による石炭転換反応の試験・調査」では、超臨界水により低品位炭を灰分の少
ない良質炭に改質すると同時に、2 価フェノール類(カテコール等)などの高付加価値化学原料
が副生品として得られる特徴があり、しかも、従来の合成法で得られる場合より安価に生成で
きることが分かった。これらのことから、今後は本調査で得られた結果をもとに、試験装置を
スケールアップ(数 t/d 規模)し、熱分解生成物の収率制御の精度向上や超臨界水を取り扱う
上での技術的課題の解決に向けた技術開発を行い、トータルシステムとしての総合的な調査研
究を引き続き行っていく必要である。
7.中間・事後評価 H11 年度終了後、中間評価を「石炭次世代・基盤技術委員会(NEDO)」にて実施した。H13 年度
終了後に事後評価を実施する。
8.研究開発成果
特許出願:6 件、査読論文数:2 件、査読なし論文数:0 件
総説、解説、著書、ポスター:2 件、口頭発表:9 件
9.情勢変化への対 基本計画の変更
「超臨界水抽出による石炭転換反応の試験・調査」に関し、当初は燃
応
(研究計画の変更) 料油を主製品とするプロセスの構築を目指していたが、平成 12 年度中間
評価後に超臨界水の特徴を生かした良質の改質炭と高付加価値化学原料
を副生する複合プロセスの構築を目指すように目標を変更した。
変更内容
平成 11 年度終了後に「超臨界水による石炭転換反応の試験・調査」に
関する目標値を変更した。
平成 11 年度終了後、
「中温中圧熱分解試験」は一応の区切りを付け、
試験を終了させた。また、
「マイクロ波加熱による熱分解試験」について
は継続を中止した。
評価履歴
平成 11 年度終了後、中間評価を「石炭次世代・基盤技術委員会(NEDO)」
にて実施した。
H13 年度終了後に本プロジェクトの事後評価を実施する。
10. 今 後 の 事 業 の 「超臨界水抽出による石炭転換反応の試験・調査」では、試験装置をスケールアップ(数 t/d
方向性
規模)し、熱分解生成物の収率制御の精度向上や超臨界水を取り扱う上での技術的課題の解決
に向けた技術開発を行い、実用化を図っていくことが望まれる。
1.NEDO の関与の必要性・制度への適合性
我が国のエネルギーセキュリティーの確保、地球環境問題などへの対応のためには、石炭
の効率的かつクリーンな利用拡大のための技術開発が必須である。特に、石炭は単にエネル
ギー源としてのみではなく、付加価値の高い多目的利用への展開が可能なプロセスを開発す
ることが重要であり、なかでも埋蔵量豊富な褐炭等の低品位炭を高効率に液・ガス等へ転換す
る技術の開発は国の課題として残されている。また、製鉄用コークスの生産は中長期的に減
少が確実視されており、これに伴い芳香族化学原料の確保という新たな問題が予想される。
本プロジェクトはこれらの問題を解決するために、将来の実用化を目指した技術開発であ
り、多額の研究開発費、長期にわたる研究開発期間、高い技術的難度等から、民間企業のみ
では十分な研究開発を進めることは難しい。国のプロジェクトとして技術開発を実施しない
場合、実用化の促進、成果の速やかな普及は困難と考えられる。以上の理由から、本技術開
発は国のプロジェクトとして実施するのが妥当である。
2.事業の背景・目的・位置付け
2.1 事業の背景・目的・意義
石炭の高度転換利用技術として、単一生成物を目的としたガス化や液化などの技術開発が
行われている。しかし、石炭の利用にあたっては単にエネルギー源あるいは化学原料などの
視点に固定することなく、情勢に応じた総合的な石炭利用システム(Coal Refinary)を構
築することは、石炭利用技術の適用範囲を拡大する点で意義が大きい。
また、将来は良質瀝青炭や石油の不足が予想される中、褐炭等の低品位炭への適用を考慮
した新規技術開発が必要である。
本プロジェクトは、石炭利用を単にエネルギー源のみに利用するのではなく、付加価値の
高い多目的利用への展開を目指すことを目的としたクリーンコールテクノロジー開発の一
環である「石炭利用次世代技術開発」の1テーマである。
2.2 事業の位置付け
本プロジェクトは、従来の石炭熱分解技術と異なり、高液収率を狙った石炭熱分解技術で
あり、「超臨界水抽出による石炭転換反応の試験・調査」では超臨界水の特徴を生かした石
炭転換技術、「中温中圧熱分解試験」については新しい水素化熱分解技術の実用化、および
「マイクロ波加熱による熱分解試験」ではマイクロ波利用の可能性を検討するものである。
次世代技術開発調査として、基礎的実験・調査研究ならびに将来の実用化を見据えた評価及
び課題の抽出を第一の目的としており、プロジェクトの性格は明確である。「超臨界水によ
る石炭転換反応の試験・調査」は、超臨界水抽出による石炭転換技術の可能性の検討するも
のであり、「中温中圧熱分解試験」及び「マイクロ波加熱による熱分解試験」は、新しい水
素化熱分解技術の実用化、及びマイクロ波利用の可能性の検討するものであり、産業技術と
しての成立性の見極め段階と位置付けられる。
2-1
3.事業の目標
各項目毎の技術開発目標を下表に示す。
<超臨界水抽出による石炭転換反応の試験・調査>
燃料油の製造を当面の目標とし、次世代技術として期待される値として現状技術との
比較(NEDOL 法石炭液化技術)から液収率と液性状の目標値を設定した。
その後、低品位炭を超臨界水処理することで灰分が少ない高カロリーの良質炭に改質
されること、水溶性成分として高付加価値のある 2 価フェノール類が抽出されるとい
う新しい知見が得られたため、開発目標を褐炭等の低品位炭から良質の改質炭を製造し、
2 価フェノール類の高付加価値化学原料を副生する複合システムの構築に変更した。開
発目標値は、経済性等から本プロセスが成立する値とし、改質炭については既設微粉炭
火力に提供できる値とした。
<マイクロ波加熱による熱分解試験>
超臨界水処理と同じ液収率 50%以上とした。
<中温中圧熱分解試験>
ガスと液の両方を高収率でえることを目的としているが、類似技術がないため、当面
の目標値として液収率 30%以上、高カロリーガス(3,500∼4,500kcal/m3N)を得るこ
ととした。
項
目
開 発 目 標
[要素技術開発]
a.超臨界水抽出による石炭転換反
応の試験・調査
・液収率:50%以上
(1)小規模試験装置による試験を行
・液性状:付加価値の高い化学原料として
ない基礎データを取得
の軽質油 60%以上
例;BTX、フェノール類、ナフタレン類を
主成分
とする。
・チャーの部分酸化による水性ガス化シフト反応に
よる活性水素の供給 H/C 1.0→1.7
H12 年度に変更
(2)生成物のキャラクタライゼーション
・光触媒担持環境浄化能
・燃焼性
・表面構造
b.水素化反応の基礎調査
(1)マイクロ波加熱による熱分解特
性の基礎的調査
(2)中温中圧熱分解試験により高液
収率熱分解反応条件の調査
[調査研究]
(1)システム調査研究
(2)技術動向調査
・2 価フェノール類収率: 4%以上(daf)
・改質炭性状
発熱量:6,700kcal/kg(気乾)以上
燃料比:1.0∼1.5
・CO2 転化率 20%以上(光照射 8hr)
・通常熱分解チャーとの違いを明確化
・
〃
・液収率 50%以上を達成するための水素種及び
その発生条件の探索
・軽質油(30%以上)及び高カロリーガスを狙いと
する高効率プロセスの構築
・反応器 1m3(数 t/d)規模プラントの設備、運転
コスト試算
・実規模プラントの設備、運転コスト試算
2-2
4.事業の計画内容
4.1 事業全体の計画内容
石炭は直接燃焼によりエネルギー源として利用する技術のほか、ガス化、液化などの転
換利用の技術開発が行われているが、基本的には単一成分の抽出を目的としている。しか
し、石炭の利用にあたっては単にエネルギー源あるいは化学原料などの視点に固守するこ
となく、総合的な石炭利用システムの構築が必要である。
本熱分解技術開発調査では上記視点に立ち、平成 8 年度から平成 13 年度まで 6 年間に渡
り、付加価値の高い化学原料としての軽質成分(BTX,1∼2 環成分)や、これらをベー
スとしたフェノール系化合物などの液収率を増大させるための新たなプロセスの構築を目
指した。具体的には、薬品分野などで一部実用化されている超臨界流体による抽出技術の
適用、メタン分解に極めて重要なマイクロ波の利用、従来の水素化熱分解に比べ比較的緩
やかな条件で行う新たな水素化熱分解技術などに着目し、これらに関する技術動向調査、
基礎研究、システム化調査を行う計画とした。
本開発調査は、次世代技術開発ということで、先に基礎調査、基礎試験を行い、これを
受けて要素技術試験、システム化試験と開発内容を絞り込み、ステップ的で効率的な技術
開発を進めてきた。各項目毎の計画内容について以下に記す。
4.2 研究項目毎の内容詳細
液多収率を狙うためには、熱分解過程における熱分解フラグメントラジカルの安定化お
よび再重合の抑制、さらにその後の二次熱分解の制御等が必要となる。このためにはラジ
カルを活性な水素等で安定化させる比較的低温での処理や、溶媒による抽出等が必要にな
る。
これを具現化させる 1 つの手段として、薬品分野や廃棄物処理の分野等で一部実用化さ
れている超臨界流体による抽出技術の適用が考えられた。超臨界流体の中でもとくに超臨
界水による石炭の転換は、加水分解反応が促進され、水素、水酸基の導入によるエーテル、
エステル結合の切断が起こり、軽質化および高付加価値化学原料の生成と、さらには有機
硫黄の除去なども可能であり、環境適用型プロセスとして期待される。また、生成油につ
いては水との親和性を圧力で制御することにより、転換反応から分離・精製操作の一貫し
たプロセスの構築が可能であり、反応時間が短いことは装置のコンパクト化が図れる。さ
らに若い炭種や低品位炭への適用も可能と考えられ、賦存地域が広範であるこれらの炭種
活用への道を開くことから,クリーンエネルギーの長期安定化と芳香族化学原料の確保の
ための開発と考えられ、社会的要請も大きい。
もう1つの手段として水素化熱分解があり、従来法である石炭を 7MPa∼10MPa の高圧
条件下で水素と反応させSNG(メタンを主とする炭化水素ガス)に転換する水添ガス化プ
ロセスとは異なり、熱分解条件を圧力 2∼5MPa,温度 500∼900℃,水素濃度 40∼60%,
反応時間 2sec 以下という前例のない比較的緩やかな条件を選択する。これにより、BTX
等の軽質油および従来の石炭ガス化ガス(酸素ガス化)よりも高カロリーなガスを同時に得
ることが可能であり、またチャーガス化ガスの顕熱有効利用により熱効率が極めて高い、
新しい水素化熱分解プロセスの構築が期待できる。石炭から生成した軽質油およびガスは、
発電あるいは化学原料等多岐の用途に利用可能であり、今後の石炭利用拡大を図っていく
上でも有効な環境調和型技術である。
さらに、メタンの分解に極めて有効なマイクロ波を用いることにより、水素を経由しな
いでメタン中の水素を直接利用して液化を行う手段の可能性調査も研究の一環として採用
した。
[要素技術開発]
要素技術開発]
a.超臨界水抽出による石炭転換反応の試験・調査
(a)小規模試験装置による基礎データの取得
基礎試験装置(数 10cc 規模)および石炭供給量が∼1kg/hr 規模の連続試験装置を用い
2-3
て、反応条件と高付加価値化学原料の性状(収率、組成等)や改質炭性状の関係、さらに灰
中不純物の挙動を把握し、システム化検討のためのデータを取得する。
(b)生成物のキャラクタリゼーション
生成する改質炭の一般分析を行い、さらに燃焼速度を測定し、炭種・超臨界転換反応条
件や操作条件と改質炭性状の関係を把握する。
(c)高付加価値化学原料の分離回収に関する調査
生成する高付加価値化学原料を効率的に分離・回収する方法を調査する。
(d)石炭の超臨界処理油の構造解析
生成する高付加価値化学原料の収率向上の可能性や生成機構について調査(産業技術総
合研究所との共同研究)を行う。
b.水素化反応の基礎調査
(a)マイクロ波加熱による熱分解特性の基礎的調査を行う。
既存試験装置(常圧)を用いて、マイクロ波を石炭(前処理炭を含む)に照射し、一次
低温熱分解反応による生成物収率、性状への影響を調査する。
(b)中温中圧熱分解試験により高液収率熱分解反応条件の調査を行う。
[調査研究]
調査研究]
a.システム調査研究
ラボ試験結果を基に、複合システムの概略と経済性の検討を行う。
b.技術動向調査
国内外の関連技術分野の基礎研究、要素技術等の調査を行う。
2-4
熱分解技術開発全体工程
小項目及び細分
1.調査研究
H8年度
H9年度
H10 年度
H11 年度
H12 年度
プロセスデータ取得、選定
プロセス可能性調査
H13 年度
プロセス評価
プロセス検討
基礎調査
・超臨界水による石炭転換反応試験、装置の仕様、設計、据付、運転
・マイクロ波加熱等の基礎調査
(石炭前処理(超強酸、アルキル化、膨潤)効果調査検討含む)
最終評価
中間評価
小規模試験装置による基礎データの取得
生成物のキャラクタリゼーション
高付加価値化学原料の分離回収に関する調査
2.要素技術開発
a.超臨界水抽出による石炭転換
石炭の超臨界処理油の構造解析
反応の試験・調査
システム化調査
b.水素化反応の基礎調査
マイクロ波加熱による熱分解特性の基礎調査
(石炭前処理効果含む)
中温・中圧熱分解基礎試験
超臨界水による石炭転換反応
<基礎試験>
(数 g/バッチ規模)
・バッチ、セミバッチ試験
(三菱マテリアル)
・生成油性状調査、構造解
析(産総研)
<連続試験>
(反応器 1 リットル規模)
(三菱マテリアル)
<中間評価>
・低品位炭の改質及び化
学原料(2 価フェノールなど)
・製造プロセスとしての可能
性検討
・製品の需要先及び経済
性見通し
<フェノール類分離
<フェノール類分離の検討>
分離の検討>
(新日鐵化学)
残渣炭供給
残渣炭供給
<残渣炭有効利用性検討>
・性状(表面特性等)把握(アドケムコ)
・燃焼性検討(宇部興産)
・光触媒への利用検討(住友金属工業)
水素化反応の基礎調査
<評価>
・プラズマの効果
・溶媒・触媒の効果
・メタン共存下プロセス検討
<マイクロ波加熱による熱分解試験>
試験(1.5g/バッチ規模)
(三菱化学)
<中温中圧熱分解反応試験>
(∼1g/min.規模)
(新日本製鐵)
<評価>
・プロセス構築可能性調査
・設備、運転コスト概算
・製品の需要先の見通し
石炭熱分解技術分野試験研究体系図(平成 8 年∼平成 13 年)
2-5
<開発プロセスの検討>
・改質炭の性状、運転条件等
の検討
・高付加価値化学原料の最適
化、回収方法等の検討
・システム化の調査
4.3 研究開発実施主体の体制
本プロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託により、(財)
石炭利用総合センター(CCUJ)が「石炭熱分解・調査委員会および検討委員会」を設け、
石炭化学に経験が豊富でかつ石炭の高度利用に意欲を持つ企業が参加したワーキンググル
ープ(WG)で研究を進めた。これらの委員会と WG は、相互に情報交換を行い研究成果の評
価、今後の方向性の見直し等に関して適切なコメントが出され、有機的に連携した実施体
制となっており産学官連携の効果が発揮された。
経済産業省
資源エネルギー庁
新エネルギー・産業技術総合開発機構
石炭次世代・基盤技術委員会
石炭利用総合センター
検討委員会
委員長
委員
委員
委員
委員
委員
委員
調査委員会
富田 彰
(H8-H13)
東北大学教授
阿尻雅文
(H8-H13)
東北大学助教授
林潤一朗
(H8-H13)
北海道大学助教授
坂西欣也
(H8-H10)
九州大学助手
稲葉 敦
(H8)
資源環境技術総合研究所室長
三木啓司
(H9-H13)
産業技術総合研究所研究室長
佐古 猛
(H8-H13)
静岡大学教授
委員長
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
田中 皓
橘 躍動
執行 修
山本 浩
中井成行
鶴谷 巌
古雅陸夫
野尻直弘
倉地和仁
古本正史
宮下 永
三菱マテリアル㈱ (H8-H13)
アドケムコ㈱(H8-H9)
アドケムコ㈱(H10)
アドケムコ㈱(H11-H13)
宇部興産㈱ (H8-H10)
宇部興産㈱ (H11-H13)
三菱化学㈱ (H8-H9)
三菱化学㈱ (H10-H11)
住友金属工業㈱(H8-H11)
新日鐵化学㈱(H11-H13)
新日本製鐵㈱(H8-H10)
WG(研究協力先)
アドケムコ㈱
宇部興産㈱
三菱マテリアル㈱
新日本製鐵㈱
住友金属工業㈱
新日鐵化学㈱
三菱化学㈱
独立行政法人 産業技術総合研究所
<委員会、参加企業 WG 会議開催実績>
H8 年度
H9 年度
H10 年度
H11 年度
H12 年度
H13 年度
委員会
2
2
2
2
2
2
参加企業 WG
8
9
7
7
4
7
2-6
5. 実用化の見通し
<超臨界水抽出による石炭転換反応の試験・調査>
低品位炭から改質炭を製造しながら、2 価フェノール類などの高付加価値化学原料が副製
品として、従来の合成法で得られる場合より安価に生成できるシステムが構築可能である
ことが確認できた。今後の実用化に向けては、数 t/d 規模のスケールアップ試験を引き続
き行い、本プロセスの最適化を図っていく必要である。
<マイクロ波加熱による熱分解試験>
マイクロ波利用の基礎的知見は得られたが、液収率が目標値に達しなかったため実用化の
検討は見送った。
<中温中圧熱分解試験>
石炭からガスと軽質油を併産す新しい石炭変換プロセスが構築できる可能性を見出したが、
今後、経済性を含めたプロセスイメージを明確化およびオイルの性状評価や詳細なフィー
ジビリティ・スタディが実用化のためには必要である。
6.今後の展開
<超臨界水抽出による石炭転換反応の試験・調査>
超臨界水による石炭の転換技術は、低品位炭を灰分の少ない良質炭に改質すると同時に、2
価フェノール類(カテコール等)などの高付加価値化学原料が副生品として得られる特徴
があり、しかも、従来の合成法で得られる場合より安価に生成できることが分かった。こ
れらのことから、今後は本調査で得られた結果をもとに、試験装置をスケールアップ(数
t/d 規模)し、熱分解生成物の収率制御の精度向上や超臨界水を取り扱う上での技術的課
題の解決に向けた技術開発を行い、トータルシステムとしての総合的な調査研究を引き続
き行っていくことが必要である。
<マイクロ波加熱による熱分解試験>
中間評価の結果を反映し、平成 11 年度までの成果をもって一応の区切りをつけ、実用化検
討は行わないが、マイクロ波応用分野における基礎的知見を提示できた意義は大きいため、
今後は民間企業への技術情報の支援を実施する。
<中温中圧熱分解試験>
中間評価の結果を反映し、平成 11 年度までの成果をもって一応の区切りをつけたが、石炭
からガスと軽質油を併産する新しい石炭変換プロセスが構築できる可能性が見出されたた
め、熱自立可能な規模の反応実証試験設備(∼20t/d)による実用化に向けた試験研究を平
成 15 年度から 5 年間の計画で実施することが決まっている。
7.中間・事後評価の評価項目・評価基準、評価手法及び実施時期
H11 年度終了後に中間評価を実施した。H13 年度終了後に事後評価を実施する予定である。
2-7
8.研究開発成果
8.1 超臨界水抽出による石炭転換反応の試験・調査
(1)小規模試験装置による基礎データの取得
(1)小規模試験装置による基礎データの取得
当初の開発目標は超臨界水を用いた高液収率熱分解技術の開発であり、燃料油の製造を主
目的として開発目標値を液収率:50%以上、液性状として軽質油:60%以上、H/C:1.0→1.7
に設定した。
平成 11 年度までに行った試験結果、超臨界水のみによる液収率は約 30∼40%(図 8.1-1)
であったが、蟻酸等の添加物を入れることにより、液収率は∼約 80%程度(図 8.1-2)まで向
上することが明らかになった。生成油中の軽質成分は約 40%(表 8.1-1)、H/C は約 1.2∼1.3
(表 8.1-2)であり、蟻酸等の添加により得られた生成油は重質成分が多いことが判明した。
生成油の H/C は、水素の水添触媒を添加し反応させることにより高めることが可能であると
分かったが、触媒の安定性や最適触媒の選定など開発課題が多く、軽質油収率と H/C 比は目
標値まで到達するのは難しいと判断した。
残渣
水不溶性成分
水溶性成分
ガス成分
380℃
ヤルーン炭
480℃
380℃
タニトハルム炭
480℃
20
40
60
80
物 質 収 支 [wt%-daf]
図 8.18.1-1超臨界水処理後の物質収支
(圧力:25MPa、水石炭比:5、反応時間:30min)
100
転換率 [wt%-daf]
0
80
60
40
20
0
0
15
30
45
蟻 酸 濃 度 [wt%]
60
75
図 8.18.1-2 蟻酸添加量と石炭転換率の関係
2-8
100
表 8.18.1-1 超臨界水処理後の生成油の分別結果
炭種
圧力
温度
(MPa)
(℃)
タニトハルム
30
ヤルーン
30
WIの溶媒分別 (wt%)
WI
TI-WI
HI-TS
HS
軽質油割合 *1
WS
(%)
380
35.3
17.8
12.7
4.9
4.0
22
480
25.1
4.5
12.0
8.5
4.7
44
380
24.7
15.5
7.0
2.2
10.0
35
480
18.6
9.8
7.0
1.7
11.8
44
WI : 水可溶分, TI : トルエン不溶分, TS : トルエン可溶分, HI : ヘキサン不溶分, HS : ヘキサン可溶分
*1 : (HS+WS)/(WI+WS)
表 8.18.1-2 超臨界水処理後の水不溶性成分の性状
反応条件
炭種
タニトハルム
ヤルーン
分析結果
温度
平均分子量
[℃]
[Mw]
380
878
480
H/C
元素分析値[wt%-daf]
C
H
O
1.15
79.6
7.6
10.2
310
1.19
78.3
7.8
10.4
380
651
1.16
74.8
7.2
16.4
480
281
1.28
72.4
7.7
18.1
SCW圧力:25MPa、水石炭比:約 5
しかしながら、低品位炭を超臨界水処理することにより灰分が少ない高カロリーの良質炭
に改質されること、水溶性成分として高付加価値のある 2 価フェノール類が抽出され、その
生成量は低品位炭ほど多いという新しい知見が得られた。
このことから、平成 11 年度終了後の行われた中間評価以降は、開発目標を燃料油の製造を
主体とするプロセスから褐炭等の低品位炭から良質の改質炭を製造し、2 価フェノール類の
高付加価値化学原料を副生する複合システムの構築に変更し、開発目標値を 2 価フェノール
類の収率:4%以上(daf)、改質炭性状としては微粉炭火力で使用できる性状として、発熱量:
6,700kcal/kg(気乾)以上、燃料比:1.0∼1.5 に再設定した。
また、調査対象プロセスを下記と設定し、基礎試験、連続試験、プロセスの検討を行なっ
た。
水・熱の回収
低品位炭
超臨界水による
石炭の転換
精 製
高付加価値化学原料
(2価フェノール等)
分 離
分
改質炭
余剰水、不純物等
2-9
a.基礎試験結果
a.基礎試験結果
チューブボム型及びオートクレーブ型のバッチ試験装置、また水のみを流通系で流すセミバ
ッチ試験装置を用いて、超臨界水による石炭転換挙動(2 価フェノールの収率、残渣収率、
残渣の性状)に対する温度、圧力、水/石炭比、炭種(亜瀝青炭、褐炭)等の影響について調
査し、連続試験における条件設定のための基礎データを取得した。 反応器容積はチューブ
ボム、セミバッチ装置が約 10∼20ml、オートクレーブは約 100ml である。 以下に、本方法
の特徴である、2 価フェノール収率(超臨界処理後の水溶液をガスクロにて分析)に及ぼす、
炭種、温度、圧力、水/石炭比、滞留(反応)時間の影響を示す。
(a)炭種の影響
中間評価までの検討により、褐炭のような酸素を多く含んだ若い石炭のほうが多価フェノー
ル類の収率が多いことが分かったが、ここでは、褐炭炭種の影響について示す。褐炭である
バンコ炭、ロイヤング炭、ヤルーン炭の 2 価フェノール類の収率を図 8.1-3 に示す。超臨界
水による石炭転換率、2 価フェノールの収率は亜瀝青炭より褐炭のほうが高く、褐炭の中で
は酸素含有量の高い褐炭(例えばヤルーン炭)のほうが収率は高くなる傾向があることがわ
かった。ヤルーン炭の 2 価フェノール類収率は約 5%であり、その内訳はカテコール収率が
約 3%、その他が約 2%であった。
(b)温度、圧力の影響
2 価フェノール類の収率に関する温度、圧力の影響を図 8.1-4 に示す。温度が高くなると収
率は増加するが、420℃以上ではほぼ一定となる。これは 420℃以上になると 2 価フェノール
の分解が始まるためと考えられる。また、臨界圧力を超える(25MPa 以上)と収率は急激に
増加することから、これは、超臨界水処理の特徴と判断された。
なお、25MPa 以上での収率増加は小さい。
(c)水石炭比、滞留時間の影響
2 価フェノール類の収率に関する水石炭比、滞留時間の影響を図 8.1-5 に示す。
水石炭比が高くなると収率は増加するが、水石炭比 15 以上の増加傾向は緩やかとなる。反応
器内の滞留時間が長いほど収率は増加するが、15 分以上の増加傾向は緩やかとなり、30 分以
上ではほぼ一定となる。
6
5
他2価
カテコール
収率
4
(wt%) 3
2
1
0
バンコ
ロイヤング ヤルーン
炭種
炭種の影響(420℃, 25MPa, W/F=15, 30min)
図 8.18.1-3 2 価フェノール収率比較(炭種)
2-10
2.5
4.5
他2価
2
カテコール
4
他 2 価
3.5
カテコール
3
収率 (wt%)
収率 (wt%)
1.5
1
2.5
2
1.5
1
0.5
0.5
0
0
380℃
420℃
450℃
10MPa
温度
20MPa
25MPa
圧力
温度の影響(25MPa, W/F=5, 5min)
圧力の影響(420℃,W/F=15, 15min, ヤルーン)
図 8.18.1-4 2 価フェノール収率比較(温度、圧力)
6
5
6
他2価
5
カテコール
4
収率 (wt%)
収率 (wt%)
香料、農薬、
医療品など
カテコール
4
3
2
3
2
1
1
0
0
W/F=5
他2価
W/F=15
5min
水石炭比
15min
30min
滞留時間
水石炭比の影響(420℃,25MPa,30min,ヤルーン) 滞留時間の影響(420℃,25MPa,W/F=15,ヤルーン)
図 8.18.1-5 2 価フェノール収率比較(水石炭比、滞留時間)
2-11
b.改質炭、2
b.改質炭、2 価フェノール分離試験
超臨界水処理後の生成物から減圧・降温過程で生成物を効率よく改質炭(残渣+不溶性(WI)
生成油)及び化学原料(溶解性(WS)生成油中の 2 価フェノール類)を分離する可能性につ
いて基礎試験を行い、各生成物の粗分離の可能性を確認するとともに、連続試験における減
圧・降温条件設定のための基礎データを取得した。
(a)改質炭の回収
残渣は固体であり流体との分離は容易であり、WI 生成油は圧力を下げる(臨界圧力以下にす
る)ことにより溶解度が下がるため流体との分離が容易なため、改質炭として残渣ともに分
離することが可能と考えられた。このことから、超臨界水処理後の残渣以外の生成物を温度
280∼360℃、圧力 6∼15MPa に減圧(・降温)した時の WI 生成油の分離挙動について調査し
た。その結果を図 8.1-6 に示す。その結果、WI 生成油は液側(常温では固体)に、フェノー
ル類(1 価、2 価)は気相側に分離可能であることが分かり、溶解度差を利用した WI 生成油
の改質炭としての回収、同時にフェノール類との分離が可能であることが明らかとなった。
液相中WI生成油
液相中フェノール類
気相中WI生成油
気相中フェノール類
360℃,15MPa
330℃,10MPa
300℃,8MPa
280℃,6MPa
原料(分離前)
0
20
40
60
物質収支(%)
図 8.18.1-6 WI 生成油の分離挙動
2-12
80
100
(b)2 価フェノール類の回収
(a)の気相側に得られる 1 価+2 価フェノール類および水から 2 価フェノールを減圧操作に
より粗分離する可能性について、試験検討を行った。
1 価フェノールは水と共沸物を作るのに対し、2 価フェノールは水と共沸しない特性を利
用して、減圧しフラッシュ蒸留を行うことで、2 価フェノール類の回収および水・1 価フ
ェノール類との分離を試みた。図 8.1-7 に超臨界水反応により得られた液相中フェノール
類を温度 170∼250℃、圧力 0.8∼4.5MPa に減温、減圧した時の液側、ガス側に移行する 1
価、2 価フェノール類の割合について調査した。2 価フェノール類は液側に、1 価フェノ
ールはガス側に移行することが分かり、分離が可能であることが確認できた。
以上の結果から、減圧(・降温)時のフラッシュ蒸留にて 2 価フェノール類を分離可能で
あることが明らかとなった。
液側一価
液側二価
ガス側一価
ガス側二価
250℃,4.5MPa
235℃,3MPa
200℃,1.5MPa
170℃,0.8MPa
原料(分離前)
0
20
40
60
80
フェノール類の物質収支 [%]
図 8.18.1-7 1 価、2
価、2 価フェノールの分離挙動
価フェノールの分離挙動
2-13
100
c.連続試験結果
基礎試験で得られた結果から、低品位炭を超臨界水処理
後に改質炭(残渣+WI 生成油)と高付加価値化学原料(2
価フェノール等)を分離するための手法として、2 段の減
圧分離システム(分離器 1 で改質炭の回収、分離器 2 で 2
価フェノール類の回収)が有効であると考えられた。この
ことから、図 8.1-8 に示す超臨界水反応を行う主反応器と
改質炭、2 価フェノール類の回収を行う分離器 1、分離器
2 を備えた連続試験装置を用いて、改質炭・高付加価値原
料副生の最適化と回収方法検討のために必要なデータを
取得した。また、システム化のために必要となるプロセス
内の不純物挙動に係わるデータも取得した。試験結果の概
要を以下に示す。
石炭
H2 O
粉砕・
混合機
石炭スラリ
分離器1
分離器2
(連続試験装置外観)
・ガス
主反応器
H2 O
冷
却
器
・生成油
・水
水
・改質炭
・改質炭
・WI生成油
・WS生成油
(2価フェノール類)
図 8.18.1-8 連続試験装置フロー図
(a)反応生成物の収率
温度・平均滞留時間の影響を図 8.1-9 に、平均滞留時間・水石炭比の影響を図 8.1-10 に
示す。温度が高い(420℃)方が、滞留時間が長い方が転換反応(軽質化)が進む。また、
水石炭比が高い方が僅かではあるが軽質化が進み、WS 生成油収率が増加する。
(b)石炭転換率と改質炭の収率
温度・水石炭比・平均滞留時間の影響を図 8.1-11 に示す。
反応温度 420℃では、石炭転換率は平均滞留時間 5 分ほどでほぼ一定となる。石炭転換率、
改質炭収率に水石炭比(5∼10)は大きな影響は及ぼさない。改質炭収率は、390℃のほうが
420℃に比べ約 10%程度高い。
(c)改質炭の発熱量
温度・平均滞留時間の影響を図 8.1-12 に、平均滞留時間・水石炭比の影響を図 8.1-13
に示す。温度が高く(420℃)、滞留時間が長い方が石炭の改質(高発熱量化)が進む。水
石炭比が低い方が、僅かであるが発熱量は高くなる。
(d)1 価 2 価フェノール類の収率
温度・平均滞留時間の影響を図 8.1-14 に、平均滞留時間・水石炭比の影響を図 8.1-15
に示す。温度が高く(420℃)、滞留時間が長い方が 1 価 2 価フェノール類の収率は高くな
る。水石炭比が高い方が、1 割程度、2 価フェノール類の収率が高くなる。
2-14
100
100
ガス
WS生成油
WI生成油
残さ
80
収率 (wt%-db)
収率 (wt%-db)
80
60
40
390℃
25MPa
W/F=10
20
ガス
WS生成油
WI生成油
残さ
60
40
420℃
25MPa
W/F=10
20
0
0
2min
5min
15min
2min
平均滞留時間
5min
15min
平均滞留時間
図 8.18.1-9 反応生成物の収率(温度・平均滞留時間の影響)
100
100
ガス
WS生成油
WI生成油
残さ
80
収率 (wt%-db)
収率 (wt%-db)
80
60
40
420℃
25MPa
W/F=5
20
ガス
WS生成油
WI生成油
残さ
60
40
420℃
25MPa
5m in
20
0
0
5min
W/F=5
10min
W/F=10
水/石炭比
平均滞留時間
平均滞留時間の影響 (420℃, W/F=5)
図 8.18.1-10 反応生成物の収率(平均滞留時間・水石炭比の影響)
2-15
100
60
2 5 MPa
2 5 MPa
改質炭収率 (wt%-db)
80
40
30
20
390℃, W/F=10
420℃, W/F=10
420℃, W/F=5
10
60
40
390℃, W/F=10
420℃, W/F=10
420℃, W/F=5
20
0
0
0
5
10
0
15
5
10
平均滞留時間 (min)
平均滞留時間 (min)
石炭転換率
改質炭の収率
15
図 8.18.1-11 石炭転換率と改質炭の収率
7500
7500
420℃
25MPa
W/F=10
発熱量 (kcal/kg-db)
発熱量 (kcal/kg-db)
390℃
25MPa
W/F=10
7000
6500
7000
6500
6000
6000
2 m in
5 m in
2 m in
1 5 m in
5 m in
1 5 m in
平均滞留時間
平均滞留時間
平均滞留時間の影響 (390℃, W/F=10)
平均滞留時間の影響 (420℃, W/F=10)
図 8.18.1-12 改質炭の発熱量(温度・平均滞留時間の影響)
7500
7500
420℃
25MPa
W/F=5
発熱量 (kcal/kg-気乾)
発熱量 (kcal/kg-気乾)
石炭転換率 (%-db)
50
7000
6500
6000
420℃
25MPa
5m in
7000
6500
6000
5min
10min
W/F=5
平均滞留時間
W/F=10
水/石炭比
水石炭比の影響 (420℃, 平均滞留時間 5min)
平均滞留時間の影響 (420℃, W/F=5)
図 8.18.1-13 改質炭の発熱量(平均滞留時間・水石炭比の影響)
2-16
4
4
390℃
25MPa
W/F=10
他2価
カテ コ ー ル
他1価
フェノー ル
3
収率 (wt%-db)
収率 (wt%-db)
3
他2価
カテコ ー ル
他1価
フ ェノー ル
2
1
420℃
25MPa
W / F =1 0
2
1
0
0
2min 5min 15min
2min 5min 15min
平均滞留時間
平均滞留時間
平均滞留時間の影響 (390℃, W/F=10)
平均滞留時間の影響 (420℃, W/F=10)
図 8.18.1-14 1 価・2
価・2 価フェノール類の収率(温度・平均滞留時間の影響)
4
4
420℃
25MPa
W/F=5
3
収率 (wt%-db)
収率 (wt%-db)
3
他2価
カテコール
他1価
フェノール
2
他2価
カテコール
他1価
フェノール
420℃
25MPa
5min
2
1
1
0
0
W/F=5 W/F=10
5min 10min
水/石炭比
平均滞留時間
平均滞留時間の影響 (420℃, W/F=5)
水石炭比の影響 (420℃, 平均滞留時間 5min)
図 8.18.1-15 1 価・2
価・2 価フェノール類の収率(平均滞留時間・水石炭比の影響)
2-17
(e)改質炭回収条件
超臨界水処理後に分離器 1 にて改質炭を回収する実用化プロセスの概念図を図 8.1-16 に、
超臨界水処理条件 420℃、25MPa、水石炭比 5、滞留時間 10 分にて処理後の生成物を分離
器1にて分離条件1(360℃、15MPa 及び 300℃、8MPa)に減温減圧した時の固気分離状況
を図 8.1-17 に示す。分離1条件で WI 生成油が回収でき、水・1 価・2 価フェノール類と
の分離が可能であることが確認された。360℃、15MPa と 300℃、8MPa でのガス側への移行
率を比較すると 、360℃、15MPa での移行率の方が高く、WI 生成油で 36%、1 価・2 価フェ
ノール類で 96%となった。
WS 生成油
石炭
WI 生成油
分離2
水
360℃
15MPa
転
換
残さ
100%
100%
← 改質炭として回収
気体
分離2へ →
(水蒸気・WS生成油
(1価 2価フェノール類))
WS 生成油
分離1
300℃
8MPa
WI 生成油
(改質炭回収)
残さ
改質炭
(残さ+WI生成油)
100%
100%
← 改質炭として回収
図 8.18.1-16 実用化プロセス概念図(分離 1)
分離2へ →
図 8.18.1-17 固気分離状況
(f)2 価フェノール類回収条件
分離器1にて固気分離され気相側に移行した生成物を分離器 2 で 2 価フェノール類を回収
するの実用化プロセスの概念図を図 8.1-18 に、分離器 2 にて分離条件 2(235℃、3MPa
及び 180℃、1MPa)に減温減圧した時の気液分離状況を図 8.1-19 に示す。
2 価フェノール類はほぼ全量が液側に濃縮回収され、1 価フェノール類は水蒸気と共にガ
ス側に移行し易く、2 価フェノール類の分離回収が良好に行われることが確認できた。
235℃、3MPa と 180℃、1MPa での液側への回収率はほぼ同程度であり、 235℃、3MPa にお
ける回収率は、WI 生成油で 98%、1価フェノール類で 5%、2 価フェノール類で 95%と
なった。
2-18
気体(ガス相)
WS(2価)
(水蒸気・1価フェノール)
WS(1価)
石炭
分離2
WI 生成油
(2価フェノール類回収)
水
235℃、3MPa
水
転
換
液体(液相)
100%
100%
← 液相(精製工程へ)
(2価フェノール)
気体
(水・生成油
(1価2価フェノール類))
WS(2価)
ガス相 →
180℃、1MPa
WS(1価)
分離1
WI 生成油
水
改質炭
100%
100%
← 液相(精製工程へ)
図 8.18.1-18 実用化プロセス概念図(分離 2)
ガス相 →
図 8.18.1-19 気液分離状況
(g)不純物の分離挙動
原炭中に存在する微量不純物元素である、Hg, Pb, Se, Cr は、超臨界水中での石炭転換に
より原炭より一部抜け出て水側に移行することがわかった。移行し易さは、Se, Hg, Pb, Cr
の順となり、水中での濃度は、数∼100ppb 程度と低かった。模擬不純物元素を用いた分離
試験により、石炭試験と同様、ほぼ全ての元素がプロセス水側へ一部移行することが分か
った。以上結果より、システム化調査に必要なプロセス内の不純物挙動に関わるデータを
取得することができた。
(図 8.1-20)
水・石炭
水・1価フェノール類
235℃
3MPa
反応
分離2
分離2条件での分離挙動
2価フェノール類
分離1条件での分離挙動
分離1
Hg
360℃
15MPa
H 1 2年 度 の 原 炭 の
分 析 結 果 に 対 する 値
Pb
Hg
Pb
Se
改質炭
Cr
Se
Cr
0
10
20
30
移 行 率 ( % )
40
100%
← 液相
50
不純物元素の分離2への移行量
100%
ガス相 →
不純物元素の分離2条件での分離挙動
図 8.18.1-20 不純物元素の分離
2-19
熱効率 (%)
化学原料製造単価/プラント建設費
(h)2 価フェノールの収率と経済性
2 価フェノール類の収率を上げるためには、超臨界水処理条件の温度と圧力を最適値とし
て、水石炭比を上げ、滞留時間を長くすることで可能であり、目標値として設定した 2 価
フェノール類収率:4%以上(daf)以上を達成できる条件は見出された。
しかしながら、水石炭比を上げ、滞留時間を長くすることは、設備の大型化、使用水量の
増加、熱効率の低下などからプラント建設費や運転費の増加につながり、最終製品である
化学原料の製造単価が上昇することが懸念される。
このことから、今までに行ってきた基礎試験、連続試験結果を踏まえて、2 価フェノール
類の収率と経済性の評価を行った。
図 8.1-21 は、2 価フェノール類の収率とプラントの熱効率、プラント建設費、化学原料(2
価フェノール類)製造単価の関係を検討した結果であり、プラント建設費と化学原料製造
単価は 2 価フェノール類の収率が 4.5%の時を 1.0 として表している。(プラント建設費と
化学原料製造単価の算出方法については、(5)システム化調査に記載した方法に準拠してい
る。)
本図より、2 価フェノール類の収率が約 2.5%以上の範囲では、収率が高くなるにつれて、
プラント建設費が増加、熱効率の低下によるプラント運転費が増加することが明らかにな
った。
一方で、化学原料の製造単
化学原料製造単価
プラン ト 建 設 費
熱効率
価の最小値は 2 価フェノ
ー ル 類 の 収 率 が 2.5 ∼
2 .00
80
3.0%の範囲に存在し、かつ、
1 .75
70
収率 4%よりも熱効率を高
くできることがわかった。
1 .50
60
以上より、平成 13 年度に
1 .25
50
実施したシステム化調査
(実用化についての F/S)
1 .00
40
では、2 価フェノール類の
0 .75
30
収率が 2.5∼3.0 の範囲に
入るプロセス条件にて行
0 .50
20
うこととした。
0 .25
10
0 .00
0
1
2
3
4
5
2 価 フ ェノ ー ル 類 収 率 (% )
6
*)化 学 原 料 製 造 単 価 、プ ラ ント 建 設 費 :
2価 フ ェ ノー ル 類 収 率 4.5%で の 値 を 1 とした 場 合
図 8.18.1-21 2 価フェノールの収率と経済性
2-20
(i)プロセス条件の選定
基礎試験および連続試験の結果及び経済性の観点から、2 価フェノール類の収率が 2.5∼3%
程度になる最適なプロセス条件を以下のように決定した。
①超臨界水反応条件:420℃、25MPa(石炭転換率、2 価フェノール収率から決定)
水/石炭比=5(装置、機器サイズの小型化)
平均滞留時間=10 分(上記条件にて改質炭の発熱量が瀝青炭
レベル(6,700kcal/kg)以上となる条件)
②分離1(改質炭回収)条件 :360℃、15MPa(2 価フェノール回収率から決定)
③分離 2(2 価フェノール回収)条件:235℃、3MPa(熱回収効率から決定)
上記プロセス条件での連続試験で得られた物質収支、改質炭の性状、フェノール類の収率
を図 8.1-22 に示す。
H2S
約1000ppm
Sマテバラより
改質炭から抜けた
Sのほぼ全量が
H2S
~
検討したプロセス条件での連続試験データ - 反応(420℃,
100
収支(%)
25MPa, 水/石炭 = 5, 平均滞留時間 10min)
残さ
WI生成油
WS生成油
ガス
0
20
40
60
収率(wt%-db)
80
100
50
他(C2, C3ガス等)
CO
CH4
H2
CO2
0
ガス組成
物質収支
3
灰分
揮発分
固定炭素
5 %─ad
2.5 %─ad
37.5 %─ad
55 %─ad
燃料比
1.47
発熱量
6800 kcal/kg─ad
収率 (wt%)
水分
2
他2価
カテコール
他1価
フェノール
1
カテコール
レゾルシノール
ハイドロキノン
3-メチルカテコール
4-メチルカテコール
フェノール
クレゾール
0
フェノール類の収率
改質炭性状
図 8.18.1-22 連続試験結果
2-21
(wt%)
1.55
0.16
0.31
0.14
0.41
0.34
0.31
(2)生成物のキャラクタリゼーション
(2)生成物のキャラクタリゼーション
a.光触媒担持環境浄化能
a.
光触媒担持環境浄化能
石炭転換反応で副生するチャーは、高い比表面積を持ち、その表面には様々な官能基を有
することが知られている。そのため、チャーは反応物質の吸着を促進し、光触媒の反応効率
を向上させる触媒担体として利用できる可能性が高い。このことから、超臨界水処理後の残
渣の有効利用を目的に、光触媒を担持したチャーを調整し、排水中に含まれるベンゼン等の
有害物質を分解・無害化する処理技術の可能性について調査した。目標値としては、ベンゼ
ンの CO2 への転化率 20%以上(条件:ベンゼン初期濃度 10ppm、8 時間照射、深さ 10cm 処理
槽)とした。これは、転化率に関する多くの報告に対し、約 2 倍の転化率である。
チャー担持光触媒を多量の処理が必要な排水処理に適用するためには、光触媒性能の向上
とともに連続処理が可能なシステムの構築が必要であり、チャーと TiO2 光触媒を組合せ一体
成型したペレットを作成して試験を実施した。ペレットは粉末のチャーと TiO2 粉末(チャ
ー粉末と TiO2 粉末の混合比は 1:9)をシリコン系のバインダー(メチルトリエトキシシラ
ンを TiO2 量の 10%)とともに分散混合させた後、打錠器を用いて成型加工し、250℃で焼成
することによって調整した。
この TiO2 担持チャーによるベンゼンの分解性能を図 8.1-23 に示す。
10
ベンゼン濃度(PPM)
7.5
光未照射
光照射
光未照
射
5
2.5
ベンゼン濃度:10PPM
流量 :3.0ML/分
ブラックライト :6本(2.6mW/cm2)
0
0
250
500
600
700
時間(分)
800
900
1000
図 8.18.1-23 ベンゼンの光分解挙動
次に、ベンゼンの分解性を当初の目標値に対して評価するための分解試験を行った。実験
は触媒充填した反応管の入出口を、閉鎖容器に直結し、ベンゼンを含む反応水を循環させた。
なお本試験は、光照射面積を 25cm2、液相体積を 250cm3 とすることで、深さ 10cm の反応槽
での試験を模擬している。
結果を図 8.1-24 に示す。CO2 は光照射直後から生成し、8 時間で仕込んだベンゼン(27μm
ol)の約 30%が CO2 に転化することを確認した。さらに照射を続けると、ほぼ直線的に CO2 は
生成し続けた。尚 CO2 の定量は気相部分のみであり、水への溶解は考慮しておらず、実際の
生成量はさらに多いと考えられる。
溶液を循環させることによって、物質移動しやすい条件ではあったが、TiO2/PC ペレット
を用いることによって、転化率 20%という当初の目標を達成することができた。
2-22
75
反応条件:
ベンゼン量(27μmol )
液相体積(250cm3)
気相体積(150cm3)
光量(2.6mW/cm2)
循環流量(2.0ml/分)
50
25
光照射面積:25cm 2
0
0
2
4
6
8
10
光照射時間(時)
図 8.18.1-24
12
14
TiO2/PC ペレットによるベンゼンの分解
における CO2 の発生(閉鎖循環系)
の発生(閉鎖循環系)
以上より、石炭転換反応で生成するチャーの有効利用の一つとして、チャーに光触媒を担
持し、ベンゼンなどの排水処理用の浄化触媒としての可能性を調査した成果を以下にまとめ
る。
・チャーは酸化チタンの光触媒性能を強化できる優れた触媒担体であった。
・チャーと光触媒をシリコン系のバインダーによって、強度、成形性に優れ、低濃度のベン
ゼン連続処理を可能とするペレットを開発した。超臨界水チャーでも比表面積を確保でき
れば、分解性能に優れたペレットが作成可能との予想を得た。
・ペレット触媒を用いて、ベンゼンの二酸化炭素への転化率 30%という結果が得られ、転化
率 20%という研究目標を達成した。
2-23
b.燃焼性評価
超臨界水処理により得られた改質炭の用途として、ガス化燃料、ボイラやセメントキルン
等の燃料を想定した性状調査を実施した。
連続試験装置より得られたヤルーン炭の改質炭を試料として、性状分析、燃焼性評価、自
然発熱性評価を実施した結果、以下の事が判明した。
超臨界水処理により、褐炭は脱水、脱酸素(脱 CO2)されて高カロリー化し、亜瀝青炭∼
瀝青炭相当の改質炭が得られる。また処理条件により、改質の程度を調整できることが確認
された。(表 8.1-3)
改質炭は平均径 10μm以下程度の微粉であり、既存の石炭ハンドリング設備を活用するた
めには、ブリケット化等の処理が必要と考えられる。
各成分の物質収支検討の結果、酸素、アルカリ金属(Na,K)や水銀、セレン等の微量元素
が低減することが確認された。
(表 8.1-5)なお、改質炭は原炭同様、灰中の塩基性成分が多
く、スラッギング、ファウリング等が懸念される。(表 8.1-4)
TG(熱重量測定計)
、DTF(Drop Tube Furnace)による燃焼性評価の結果、改質炭の
着火性、燃焼性は、一般炭に比べ良好で、燃焼性の点では、燃料として十分使用可能と判断
された。(図 8.1-25)
DSC(示差走査熱量計)、低温酸化反応性評価装置による評価の結果、原炭に比べ改質炭
の自然発熱性は改善し、また改質炭(高温処理)は比較的発熱し易いインドネシア亜瀝青炭
と同程度の発熱性と推測された。改質炭炭と同程度の発熱性と推定されるインドネシア亜瀝
青炭の実績から、特に発熱対策を行わない場合の貯炭可能期間は 3∼4 週間程度と推測される。
(図 8.1-26,27)
原炭
スラリー
原炭
工
業
分
析
元
素
分
析
収率
水分
灰分
揮発分
固定炭素
燃料比
発熱量
灰分
炭素
水素
酸素
窒素
燃焼性硫黄
全硫黄
%,無水ベース
%,気乾ベース
%,気乾ベース
%,気乾ベース
%,気乾ベース
-
kcal/kg,気乾
kcal/kg,daf
%,無水ベース
%,無水ベース
%,無水ベース
%,無水ベース
%,無水ベース
%,無水ベース
%,無水ベース
-
19.1
1.6
42.6
36.7
0.86
4920
6200
2.0
65.4
4.0
27.9
0.6
0.05
0.19
100
18.5
1.7
42.6
37.2
0.87
4870
6100
2.1
64.7
4.0
28.2
0.7
0.26
0.43
低温処理炭 高温処理炭
390℃
420℃
25MPa
25MPa
77
7.0
2.3
41.0
49.7
1.21
6350
7000
2.5
72.4
4.4
19.5
0.9
0.29
0.47
表 8.18.1-3 原炭、改質炭の性状分析
2-24
70
6.7
2.1
37.4
53.8
1.44
6460
7080
2.3
73.9
4.2
18.4
0.9
0.29
0.46
高温処理2
420℃
25MPa
滞留時間長
65
5.7
2.7
35.1
56.5
1.61
6900
7530
2.8
79.7
3.9
12.9
0.7
0.04
0.19
表 8.18.1-4 原炭、改質炭の灰組成分析
SiO2
Al2O3
Fe2O3
灰 CaO
の MgO
化 SO3
学 P2O5
組 TiO2
成 Na2O
K2O
V2O5
NiO2
MnO
%
%
%
%
%
%
%
%
%
%
%
%
%
低温処理炭 高温処理炭
420℃
390℃
25MPa
25MPa
原炭
スラリー
原炭
1.23
4.56
48.62
11.16
10.83
17.23
0.14
0.09
2.79
0.70
0.00
0.09
0.62
表 8.18.1-5 原炭、改質炭の不純物分析
1.02
5.06
44.50
10.58
11.49
19.70
0.16
0.14
3.19
0.54
0.00
0.16
0.62
1.08
5.53
45.05
9.43
10.83
17.63
0.13
0.14
2.18
0.40
0.00
0.16
0.66
1.52
4.28
47.38
9.88
11.17
18.08
0.13
0.12
2.61
0.55
0.00
0.19
0.68
分析項目 単 位
原炭
原炭
高温処理 低温処理
スラリー
420℃
390℃
調整後
25MPa
25MPa
0.03
<0.01
<0.01
T-Hg
mg/kg
0.03
Cd
mg/kg
<0.2
<0.2
<0.2
<0.2
Pb
mg/kg
<0.2
<0.2
<0.2
<0.2
As
mg/kg
<0.1
0.7
<0.1
0.1
Se
mg/kg
0.4
0.3
0.2
0.2
F
mg/kg
53
42
57
53
B
mg/kg
15
11
18
25
TGによる燃焼性比較
100
重量減量率(%)
80
原炭
低温処理
高温処理
インドネシア炭
豪州炭
中国炭
PC-A
PC-B
60
40
20
0
100
200
300
400
温度(℃)
500
600
700
図 8.18.1-25 TG による燃焼性比較
低温酸化熱量(80℃)
酸化熱量(J/g)
25
20
15
10
5
中国
難発熱性
豪州
標準的
高温H12
中国
易発熱性
豪州
易発熱性
高温改質
インドネシア
易発熱性
低温改質
低温H12
原炭H13
原炭H12
0
自然発熱性指数 SCI
50
80
70
60
50
40
30
20
10
0
40
40
38
38
36
34
SCI
30
16
20
15
12
10
8
図 8.18.1-26 低温酸化熱量の比較
図 8.18.1-27 自然発熱性指数の比較
2-25
中国
難発熱性
豪州
標準的
豪州
易発熱性
中国
易発熱性
インドネシア
易発熱性
高温処理
インドネシア
微粉
低温処理
原炭
中国
難発熱性
豪州
標準的
中国
易発熱性
豪州
易発熱性
高温H12
インドネシア
易発熱性
高温処理
低温処理
原炭H13
低温H12
0
原炭H12
酸化熱量(J/g)
低温酸化熱量(120℃)
以上の結果より、改質炭の利用方法として以下が想定される。
①改質炭は、原炭に比べ発熱量が高く、また原炭同様、低灰分、低硫黄、低窒素で、燃焼性
も良好であり、ボイラ、セメントキルン等の燃料、ガス化原料として好適である。
②改質炭は微粉状であり、そのままではハンドリングが難しく、既存石炭利用設備で使用す
るためには、ブリケット化が考えられる。
③改質炭は原炭同様、灰中の塩基性成分が多く、スラッギング、ファウリングが懸念される。
また改質炭の自然発熱性は原炭に比べ改善しており、インドネシア亜瀝青炭程度と予測さ
れ、単独での貯炭可能期間は 3∼4 週間程度と考えられる。従って、改質炭を単独で使用
するよりも、一般的な瀝青炭とブレンドして使用することによって、スラッギング性、フ
ァウリング性、自然発熱性を改善するのが良いと考えられる。
上述の結果は、いずれも実験室規模の少量サンプル評価試験に基づくものである。原料、
燃料としての特性(ハンドリング性、燃焼特性等)を把握するためには、より大規模な評価・
確認試験も不可欠であり、実用化までの課題の一つと考えられる。
2-26
c.表面性状
超臨界水を用いた石炭転換反応により生成する改質炭の表面性状を把握する目的で各種試験を実施し
た結果、改質炭の表面には細孔構造が成長する兆候が見られ、かつ有機分子を吸着し易い表面化学構造
を有していることが分かった。このことから、改質炭に水蒸気賦活したものの表面性状及び活性炭とし
ての特性評価を行った。
ヤルーン炭を超臨界水処理(温度:420℃、圧力:25MPa、平均滞留時間:2∼3 分)した改質炭を各種
条件にて水蒸気賦活した結果を表 8.1-6 に示す。賦活条件を厳しくすることにより、比表面積、細孔容
積、平均細孔径は増加する傾向があり、賦活温度 900℃の処理で比表面積は最大1,600m2/g に達した。た
だし、収率は条件が厳しくなると低下傾向を示すが、処理条件を変化させることにより任意の活性炭を
調整できることが分かった。
表 8.18.1-6 水蒸気賦活条件と表面性状の関係
Run No.
未処理
1
2
3
4
5
6
7
8
賦活
温度
℃
−
800
800
800
800
900
900
900
900
賦活
時間
h
−
1
1
0.5
0.5
1
1
0.5
0.5
ガス流量
L/min.
−
0.15
0.3
0.15
0.3
0.15
0.3
0.15
0.3
賦活
収率
%
−
42.3
36.8
50.1
45.7
27.7
16.3
44.1
33.1
BET
比表面積
m2/g
−
482
501
811
411
794
1678
601
603
細孔
容積
cm3/g
−
0.26
0.36
0.28
0.21
0.84
2.45
0.4
0.53
平均細孔
直径
Å
−
20.6
25.5
17.1
20.9
29.5
41.8
23.2
28.7
次に、水蒸気賦活炭の吸着特性を調べるために、処理温度 840℃で賦活処理した比表面積が 500m2/g
の水蒸気賦活炭を使用してトルエン吸着性能試験(JIS K1474)
、メチレンブルー吸着特性試験(JIS K1474)
を実施した。試験結果を市販の活性炭も含めて図 8.1-28、図 8.1-29 に示す。
図 8.1-28 は単位表面積当りのベンゼン吸着量と比表面積の関係を、図 8.1-29 は単位表面積当りのメ
チレンブルー脱色力と比表面積の関係を示したものである。
ベンゼン吸着に関しては、水蒸気賦活処理炭は市販品と比べても遜色なく、吸着に適した細孔構造、
あるいは表面特性になっていることが分かる。したがって、900℃程度の高温で水蒸気賦活し比表面積を
1,000m2/g 以上にすれば市販品と同じレベルになり得ることが分かった。
メチレンブルーは水処理活性炭の指標としても使われており、市販品ではメソ孔(20∼500Åの細孔)
が多い活性炭が使用されている。水蒸気賦活炭は市販品の活性炭に比べて、比表面積当りのメチレンブ
ルー脱色力が低く、今回行った単純な水蒸気賦活よりさらに細孔形成に工夫を施す必要があると考えら
れる。
以上より、改質炭を水蒸気賦活することにより、ガス吸着・空気性状用、あるいは対象物質を限定し
た水処理・溶剤回収用の活性炭としての用途が期待でき、市販品に十分太刀打ちできる活性炭製造の可
能性を示すことができた。
2-27
図 8.18.1-28 比表面積当りのベンゼン吸着量と活性炭比表面積の関係
図 8.18.1-29 比表面積当りのメチレンブルー脱色力と活性炭比表面積の関係
2-28
(3)高付加価値化学原料の分離回収に関する調査
(3)高付加価値化学原料の分離回収に関する調査
石炭の超臨界水反応で生成した水溶性実粗油の蒸留および超臨界水反応での物質収支に基
づいた想定原料を用いた蒸留試験を行い、目標純度(>98%カテコ−ル)に到達できるのか、
目標値を達成するための再結晶条件などを検討した。
また、目標純度物質等に分離精製するためのプロセスフロ−案とコスト試算を実験デ−タ
およびアスペンソフト等を用い検討した。
a.実粗油の蒸留
a.実粗油の蒸留
ガラスチューブオーブンにて単蒸留(蒸留条件は圧力:30mmHg、温度:100∼130℃)を
試みた。その結果、留出物は淡黄色の固形物が得られ、主成分は Catechol でその純度は 73%
を示した。その他 Resorcinol, Hydroquinone, Alkylcatechols も検出された。釜残分は炭
化状態でその量は約 30%であった。(表 8.1-7)
表 8.18.1-7 カテコ−ル粗油および留出油の分析結果
Catechol
Resorcinol
4-Methylcatechol
3-Methylcatechol
Hydroquinone
Other
Total
留出割合(wt%)
仕込み粗油
32.3
3.4
7.5
留出油−1
35.2
5.9
16.4
留出油−2
73.6
1.0
9.1
6.5
6.3
4.4
9.8
59.6
100
19.3
83.1
21.4
3.1
91.2
42.9
wt%
釜
残
0
0
0
0
0
0
32.1
氷冷却
ガラスチューブオーブン
b.想定原料(モデル液)での精密蒸留試験
b.想定原料(モデル液)での精密蒸留試験
分離精製工程に入ってくる原料油組成を表 8.1-8 と想定し、高純度カテコール(>
98%Catechol)に精製する前段として精密蒸留を試みた。留出物を 3 つの留分に分割し組成等
を調べた結果を表 8.1-9 に示す。First 留分は Catechol 純度 87%で残りは Methylcatechols
であり、Second 留分では Methylcatechols が主成分、また third 留分は Hydroquinone や
Resorcinol 等が含まれ、Methylcatechols は 3 留分にまたがっていた。
表 8.18.1-8 想定油の組成と濃度
組
成
名
濃度(wt%)
Catechol
55.5
3-Methylcatechol
4.8
4-Methylcatechol
14.5
Resorcinol
5.8
Hydroquinone
11.1
Pyrogallol
8.3
2-29
単位 wt%
表 8.18.1-9 留分組成と濃度
留分組成と濃度
留分
留出割合
(wt%)
Firsts
0∼66.6
Second
71.3∼75.6
Third
79.6∼89.2
Catechol
3-Methyl
catechol
4-Methyl
catechol
Resorcinol
Hydroquinone
割合
(wt%)
87.7
8.5
3.8
0
0
74.9
22.0
5.4
72.6
0
0
10.1
4.3
0.7
27.0
11.7
56.3
15.0
c.再結晶法による>
c.再結晶法による>98%
再結晶法による>98%Catechol
98%Catechol 品の精製
Catechol 純度 87%と 80%品について Toluene 単一溶媒中での再結晶条件を検討した。その
結果、前者は収率 78%で目標純度に達したが、後者は二度の操作が必要で収率は 70%であ
った。分離精製工程での>98%Catechol 収率は概略 60%と算出された。
d.その他の分離精製法
d.その他の分離精製法
分離精製対象物の物性値で Catechols と Alkylcatechols では、凝固点差が大きく(40℃)
この差を利用すれば二分割され、その後、蒸留、晶析を組み合わせさらに単離へと展開で
きる可能性がある。
e.分離精製プロセス案
e.分離精製プロセス案
試験結果等に基づき、プロセス案を構築(図 8.1-30 及び詳細を 34 頁に示す。)した。工
程毎のプロセスについて以下に記す。
(a)脱ピッチ設備
多価フェノール類混合物から沸点 300℃以上の重質分を分離する。
(b)精密蒸留設備
脱ピッチ設備で重質分を除去された多価フェノール油をカテコール主留分とそれ以外の
中間留分に分離する。
(c)カテコール結晶化設備
精密蒸留設備から回収されたカテコール主成分を溶剤(トルエン)で希釈し、結晶化槽内
で溶剤を蒸発させ、カテコール結晶を回収する。さらに、結晶中に同伴している溶剤分を
除去するため、溶解槽で再度溶解され溶剤回収塔に送られる。
(d)溶剤回収設備
カテコール結晶を除去した溶剤混合分を溶剤回収設備で回収し、リサイクル使用する。
(e)溶剤除去塔、フレーク化設備
溶解されたカテコールは、溶剤除去塔で溶剤分を除去し、純度を 98%まで上げた後にドラ
ムフレーカーに送られ粉砕後に袋詰される。
2-30
溶剤
溶剤回収 塔
脱ピッチ塔
精製蒸留塔
M
Catechol
33.7
フレ−カ−
原料タンク
100
遠心分離器
溶解槽
真空乾燥器
Catechols
41.8
Resorcinol
Hydroquinone
15.7
<
300℃
<300℃
8.8
8.8
図 8.18.1-30 分離精製プロセス案
f.コスト試算
f.コスト試算
55
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
38.47円/7500t/y
20.95円/30000t/y
15
00
0
30
00
0
45
00
0
60
00
0
75
00
0
90
00
0
11
50
00
13
00
00
15
00
00
16
00
00
13.09円/15万t/y
50
00
円/kg
分離精製プロセス案にもとづき、原料祖油(7,500t/y、30,000t/y 、150,000t/y)から純
度 98%のカテコール、カテコール類、レゾシノール+ハイドロキノン類などを回収するた
めのコスト試算を行った。
前提条件としては、設備系列を1系列とし、固定費と変動費を下記と見込んた。試算結果
(図 8.1-31)は、粗油 30,000t/y 処理すると製品コストは 21 円/kg となった。
<変動費> ①蒸気
:3000 円/m3
<固定費> ①原価償却費 :15 年,0.6%
②租税公課
:0.77%
②電力
:5 円/kWh
③保全費
:3.00%
③LNG
:30 円/m3N
④設備金利
:3.85%
④工業水 :20 円/m3
⑤人件費
:780 万円/y・人
⑤水道水 :50 円/m3
:固定費+変動費の
⑥工場管理費
⑥純水
:100 円/m3
5%
処理量(t/y)
図 8.18.1-31 分離精製コスト
2-31
8
7
6
5
H
P-005
洗浄油
T-003
還流槽
T-002
再結晶工程
洗浄スクラバS-003
排気
P-012
P-017
H
E-010
E-008
真空ドラム
T-004
E-011
トルエンタンク P-014
T-012
真空ドラム
T-010
精製蒸留塔
C-002
G
1
E-006
E-005
E-004
2
排気
洗浄スクラバS-002
E-001
E-002
3
蒸留工程
排気
洗浄スクラバS-001
4
真空ドラム
T-015
洗浄油
T-009
P-004
P-002
結晶化槽
R-001
P-011
還流槽
T-006
E-009
P-007
洗浄油
T-014
P-016
G
P-018
溶剤回収槽
T-016
遠心分離
M-001
P-019
脱ピッチ塔
リボイラE-003
F
精製蒸留塔
リボイラE-007
脱ピッチ塔
C-001
熱媒
バッファ槽
T-007
熱媒
バッファ槽
T-008
P-003
原料タンク
T-001
P-015
粗カテコ-ル溶解槽
T-017
F
バッファタンク
T-011
P-009
P-008
バッファタンク
T-005
E
溶媒槽
T-013
P-006
P-010
P-013
粗カテコ-ルタンク
T-018
P-020
E
P-001
E-013
D
D
洗浄スクラバS-004
排気
還流槽
T-019
溶剤回収塔
C-003
P-025
E-017
E-015
出荷
真空ドラム
T-021
溶媒
除去塔
C-004
E-012
洗浄油
T-020
P-021
C
出荷
レゾシノ-ル
ハイドロキノン
高沸点油
タンク
P-024
T-023
溶剤回収塔
リボイラE-014
各塔熱媒リボイラ-
C
P-030
熱媒タンク
T-022
ホッパM-003
P-023
T-025
N2
フレ-カM-002
B
B
E-003
P-022
E-007
袋詰装置
M-004
空気ブロワP-027
空気
LNG
溶媒回収工程
8
P-029
E-016
熱媒
A
T-024
P-028
出荷
カテコ-ル類
7
カテコ-ル回収プロセス概要図
熱媒供給ポンプ
P-026
カテコール回収工程
6
5
FSCM 番号
3
図面番号
A
縮尺
熱媒供給工程
4
2-32
E-014
熱媒加熱炉
F-001
2
1
(4)石炭の超臨界処理油の構造解析
(4)石炭の超臨界処理油の構造解析
平成 11 年度までの研究で石炭の超臨界水処理油の構造解析を行い、石炭分解反応の特性を
明らかにすることを目的とした。ガスクロマトグラフィー、質量分析計、核磁気共鳴法等を用い詳細な
構造解析を行った。構造解析の結果次のことが明らかになった。
①炭種の相違による生成物分布の相違
褐炭と亜瀝青炭を比較すると褐炭の方が溶剤可溶分の収率が高く、軽質化度も高い。高
温条件下ではガスが増大する傾向がある。(図 8.1-32)
②多価フェノールの収率
石炭の超臨界水処理では多価フェノール(主に 2 価フェノール類)が得られる。収率は
反応条件に依存し、特に石炭濃度の影響が大きい。(図 8.1-33)
③収率向上の可能性
ヤルーン炭中の 2 価フェノール性芳香核は約 30∼40wt%であると考えられる。現状の超臨
界水処理における 2 価フェノール類の最大収率はアルキル体を含めて 13%である。これは
石炭中に含まれる全単位の約 20∼30%に相当する。(図 8.1-34)
14
100
ガス
90
エチルエーテル可容分
+
酢酸エチル可容分
80
21.9
60
2 or 3 環を含む
12
11.5
70
テトラヒドロフラン可容分
11.2
4.2
9.8
25.5
27.5
収率︵%︶
フェノール等単環を含む
2.0
5.5
12.2
22.4
14.4
daf% 50
CH3
10
40
残渣炭
OH
OH
8
OH
6
30
20
Others
55.8
56.2
47.3
45.8
OH
4
10
2
0
Y380
Y480
T380
T480
0
図 8.18.1-32 物質収支
1
2
Y:ヤルーン炭、
4
6
石炭濃度(%)
T:タニトハルム炭
図 8.18.1-33 カテコール類の収率
Y 及び T の右横の数値:試験温度(℃)
図 8.18.1-34
造
8
ヤルーン炭中のフェノール構
分布(
分布 全てベンゼン環であると
仮定し、酸素官能基分布から計算)
2-33
O
∼20%
O
O
∼30%
褐炭は主にアルキル基が置換したベンゼン骨格を基本として、これがアルキル鎖や
エーテル鎖で結合したものであるとされている。石炭中でカテコールなどの多価フェ
ノールを与える構造としては、石炭の由来と関係して、2-メトキシ-4-プロピルフェノ
ール単位が重縮合した木質中のリグニン類似構造が推定される。石炭化の過程におい
て脱酸素化などの構造変性は経たと考えられるが、その一部にジアルコキシベンゼン
もしくはアルコキシフェノール構造が残存していると仮定すれば、多価フェノール類
を与える可能性が十分考えられる。よって、リグニン中の基本単位として知られてい
る化合物をモデルに用いて多価フェノールの生成について検討した。
2-メトキシ-4-メチルフェノールを超臨界水処理するとメチルカテコールが主生成物
として得られる。(図 8.1-35)またカテコールおよびジメチルカテコールも生じてい
る。これは脱メチルとその再結合が起きることを示している。同様に、脱メトキシル
化されたフェノール類も生成する。以上の結果は、熱分解によるメトキシル基の酸素
−メチル基炭素間およびフェニル炭素−メトキシル基酸素間の切断と、後者のいわゆ
る加水分解が併発したことを示している。遊離のフェノールではなく、ジアルコキシ
ベンゼン(ジメトキシベンゼン)の反応でも類似した結果が得られ、石炭の高分子中
に組み込まれた同様の構造単位も容易に分解して多価フェノールを与えると考えら
れる。
より構造が複雑なフェニルプロパン 2 量体(フェニルクマラン誘導体)の超臨界水処
理生成物では、反応温度 380℃で、主生成物はメトキシフェノール、メトキシメチル
フェノールとカテコールであった。
(図 8.1-36)反応温度を 430℃
に上げると、メトキシル基が
置換した化合物やオレフィン
類はほとんど消失して、カテ
コール、メチルカテコール、
プロピルカテコールが主生成
物として得られた。さらに条
件を過酷にすると、同定され
る化合物は減少して、主にカ
テコールとメチルカテコール
が得られた。以上のような反
応条件に対する生成物の変化、
ならびにカテコールやメチル
カテコールが主生成物である
ことは、褐炭(ヤルーン炭)
の超臨界水中処理の結果とよ
く類似しており、構造上の相
似性を示すものと考えられた。
図 8.18.1-35 メトキシメチルフェノールの超臨界水処理
2-34
図 8.18.1-36 クマラン誘導体の超臨界水処理
2-35
(5)システム化調査
(5)システム化調査
平成 8 年度から平成 13 年度までに得られた試験結果および検討結果を基に、超臨界水を用
いた本複合プロセスの実用化について概略の F/S を実施した。その結果を以下にまとめる。
a.実用化プロセスフロー
a.実用化プロセスフロー
プロセスフローの検討を行った結果、従来技術の活用によりプロセスの構築が可能である
ことがわかった。実用化プロセスフローの概念図を図 8.1-37 および次頁に示す。
石炭
スラリ
ガス処理
気液分離
予熱
酸化
反応
分離1
O2
分離2
ブリケット化
廃水処理
油水
分離
精製
化学原料
改質炭
図 8.18.1-37 実用化プロセスフロー概念図
(a)水・石炭の反応器への供給
反応器への石炭の供給は、本プロセスが高圧(25MPa)であることから、スラリー(CWM)化
してプランジャーポンプにて昇圧供給する。原炭は系内に持ち込む水量を低減させ廃水処
理コストを低減させるため予め乾燥させてからスラリー工程に供給する。乾燥用の熱源は
系内の余剰熱を回収して使用することで、プロセス全体の熱効率を高めることができる。
(b)改質炭の回収
分離 1 にて得られた改質炭は固体回収槽に送られ、分離 2 で回収した WI 生成油と混合し、
ハンドリング性を向上させるため成型機にブリケット化する。
(c)水・熱の回収および水・ガス処理
分離 2 から出た水は熱回収を行い、気液分離し生成ガスを回収後、リサイクル使用する。
回収した熱は原炭の乾燥やリサイクル水の予熱に使用する。
系外に排出する廃水は活性汚泥処理、排ガスは溶媒吸収法で硫化水素を除去した後、焼却
処理するものとした。燃焼熱は回収し系内で利用する。
2-36
2-37
b.物質収支
b.物質収支
検討したプロセスフローに基づき、石炭処理量 1,000 t/d 規模(100 万 kW 級石炭火力 1 基
分、混炭比率 10%として)の物質収支の検討を行った。反応・分離条件を表 8.1-10、製品
の収率を表 8.1-11 示す。
表 8.18.1-10 反応・分離条件
反応条件
温度 420℃、圧力 25MPa
水石炭比 5
平均滞留時間 10 分
分離 1 条件
温度 360℃、圧力 15MPa
表 8.18.1-11 製品の収率
石炭処理量
1,000t/d (100%)
改質炭
723t/d (72.3%)
カテコール
14.2t/d (1.42%)
レゾルシノール
1.5t/d (0.15%)
分離 2 条件
温度 235℃、圧力 3MPa
ハイドロキノン
2.8t/d (0.28%)
なお、カテコールの反応時の生成量(反応器出口)に対する製品カテコールの収率は、約
90%である。
c.熱収支
c.熱収支
プロセスフロー、物質収支の検討結果を基に、本プロセスの熱収支の検討を行った。
図 8.1-38 に熱収支の検討結果を示す。
入熱:32,900 MJ
(処理炭 1 ton-dbあたり)
熱回収
原料:25,000 MJ
加熱:7,000 MJ
反応
分離
その他:900 MJ
改質炭:21,000 MJ
ロス・その他:11,900 MJ
(製品化学原料等を含む)
図 8.18.1-38 本プロセスの熱収支
乾燥原炭 1 ton あたりの処理に必要な熱は、32,900 MJ であり、その内訳は原料炭の
持っている熱量 25,000 MJ と、主に水の加熱用熱(熱媒炉、効率 90%)7,000 MJ、ポンプ、
ブースターなどの動力などで 900 MJ である。これに対し、回収された熱は、改質炭の熱量
21,000 MJ となった。ここで、化学原料分の熱量は、その他として回収熱量分から除外した。
以上より、本プロセスを改質炭のみの製造プロセスと見た場合のエネルギー効率を以下の
式で定義し、計算すると、
エネルギー効率=改質炭熱量/全入熱×100=約 64%
となった。
本プロセスは、改質炭と 2 価フェノール類を併産する複合プロセスであるため、他の
エネルギー利用主体の褐炭利用プロセスとの単純な比較はできないが、本エネルギー効率は、
褐炭液化(57∼67%)∼褐炭生焚き発電(75%)の範囲内の値となった。
2-38
d.経済性評価
d.経済性評価
(a)プラント建設費
経済性評価を行う前提条件を表 8.1-12 に示すとおりとし、プラント建設費を算出した。
物質収支、プロセスフローの検討結果から、反応器、分離機1、分離機2などの主要機器
やポンプ、加熱炉、水処理装置などの補機の仕様を決定し、メーカヒアリング・見積りを
実施して、機器価格(国内調達価格)を決定した。
その他の配管、保温、電気・計装、据付費等については、石油精製プラントのコスト構
成を参考に、機器価格を 100 として表 8.1-13 に示す係数として振り分けた。
石炭処理量は、物質収支検討と同様の 1,000 t/d とし、比較として 4,000 t/d、20,000 t/d
の処理量についても評価を実施した。
建設費の算出範囲は、原料石炭受入∼改質炭ブリケットのプラント払い出し、化学原料
精製(カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン)払い出しまでとした。なお、カテ
コール精製工程の建設費、精製コストは、前章の検討結果を用いた。レゾルシノール、ハ
イドロキノンそれぞれの精製工程については、カテコール精製工程と同様のコストとして、
計算結果に組み入れた。
以上より求めたプラント建設費を表 8.1-14 に示す。
表 8.18.1-12 経済性評価の前提条件
立地場所
豪州ビクトリア州(産炭地)
対象炭
ヤルーン炭
処理量
1,000t/d (4,000t/d, 20,000t/d)
原価償却
15 年
保全率
設備費の 3%
管理費
製造費の 5%
人権費
500 万円/年
電力
5 円/kWh
表 8.18.1-14 建設費
処理量
建設費
1,000 t/d
133億円
4,000 t/d
422億円
20,000 t/d
1,676億円
表 8.18.1-13 建設費算出用の係数
費目
係数
機器
配管
保温・被覆
据付
土木・建築
電気
計装
その他
100.0
60.0
6.8
9.0
24.2
10.0.
26.0
1.2
total
237.2
(b)化学原料の工場出荷価格
化学原料の工場出荷価格を決定するためには、まず改質炭の価格を決めておく必要があ
る。
改質炭の主用途を発電用とし、豪州一般炭と同等またはそれ以下の価格で販売すること
とした。
2000 年の豪州 NSW 日本向け一般炭のレファレンス価格は、28.75US$/t-FOB(コールノー
ト 2001 年版)であるため、この値からヤルーン炭田から港までの陸上輸送および港湾荷役
コスト(9US$/t、文献値)を引いて工場出荷価格を決定した。
工場出荷価格=19.75US$/t=2,370 円/t > 2,200 円/t
2-39
以上より、改質炭の工場出荷価格を 2,200 円/t と想定し、化学原料(主製品であるカテ
コール)の工場出荷価格を見積もった。表 8.1-12 の前提条件に基づき、プラント建設費、
運転コスト等から乾燥褐炭 1ton あたりの処理費(受入∼払出まで、化学原料精製を含む)
を算出し、利益率を考慮して総収入を決定した。ここで、利益率は総収入の 20%と仮定し
た。この収入金額から改質炭販売分を減算し、残分から化学原料の出荷価格を逆算した。
表 8.1-15 にカテコールの工場出荷価格の検討結果を示す。
図 8.1-39 に化学原料の価格予測と本プロセスでの工場出荷価格との比較結果を示す。本
結果より、現状価格よりも安くカテコールを製造できることが分かり、市場が拡大した場
合の価格予測と比較しても十分低価格であった。
以上より、本プロセスにより安価な改質炭および化学原料を製造でき、かつプロセスの
経済性も成り立つことが示された。
処理量
処理費
改質炭価格
化学原料価格
収入
(t/d)
(円/t-原炭)
(円/t)
(円/kg)
(円/t-原炭)
1,000
8,700
2,200
510
10,800
4,000
7,200
2,200
410
9,000
20,000
6,300
2,200
340
7,900
表 8.18.1-15 カテコールの工場出荷価格
現在の市場
2~3万t/y
カテコール価格
(円/kg)
1000
一般化学原料の
需要と価格の関係から
予測されるカテコール
価格
低
価
格
700~
1000円/kg
530~
760円/kg
750
市場拡大
450~
650円/kg
500
石炭処理量
400~
580 円/kg
1000 t/dプラント
4000 t/dプラント
250
20000 t/dプラント
0
2 5
5
7 5
10
(万t/y)
市場 大
図 8.18.1-39 化学原料の価格予測と本プロセスでの工場出荷価格との比較
化学原料の価格予測と本プロセスでの工場出荷価格との比較
2-40
e.製品及び市場
e.製品及び市場
(a)改質炭
本プロセスにより得られる改質炭の性状を表 8.1-16 に示す。改質炭の特徴としては、発
熱量が高く、燃焼性が良好であること、原炭の特性から低灰分であり、S 分、N 分も低い値
となっている。また、自然発熱性はインドネシア産の亜瀝青炭レベルとなっている。ただ
し、原炭同様、灰中の塩基性成分が多く、スラッギング、ファウリングが懸念されるため、
改質炭を既設微粉炭焚ボイラの燃料として使用する場合は、混炭(配合比率:30%以下)す
る必要がある。
また、改質炭は、ベンゼンなどの排水処理用の浄化触媒としての使用や水蒸気賦活して
活性炭としての用途も期待できる。
表 8.18.1-16 改質炭の性状
水分
5%
C
74.0%
灰分
2.5%
H
4.5%
揮発分
37.5%
N
0.9%
固定炭素
55%
S
0.1%
燃料比
1.47
O
18.1%
発熱量
6,800kcal/kg
Ash
2.4%
(b)化学原料
本プロセスより回収させる化学原料(カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン)は、
高付加価値な化学原料であり、様々な産
表 8.18.1-17 各化学原料の市場性
業・用途で使用されている。表 8.1-17 に
市場性
市場規模
化学原料
日本:( )
用途
製品化合物の例
現状の各化学原料の市場性を示す。
460万t/yr
耐熱性樹脂
エポキシ樹脂
本プロセスの主製品であるカテコールは、
フェノール
(~76万t/yr) 感光性樹脂基材 ポリカーボネート樹脂
現在価格 700∼1,000 円/kg、世界市場は
薬品原料
ノボラック樹脂
2∼3 万トン/年であり、価格が高いため
8~10万t/yr 耐熱性樹脂
フェノール樹脂の改質
クレゾール
(5万t/yr)
薬品原料
農薬としてはMEP,
MPP
に小さな市場となっているが、価格が安
合成高分子
重合体(光脆化防止)
くなることにより、イオン交換樹脂、エ
25000t/yr
フォトレジスト用材料
ンジニアリングプラスチック、高硬化性
(数百t/yr)
フェノール変性用
カテコール
写真現像剤
微粒子現像
樹脂、その他高機能性樹脂などの分野へ
薬品原料
農薬(カーバメート剤)
の利用拡大が期待できる。(図 8.1-40)
3万t/yr
レゾルシン
ハイドロキノン
2-41
4万t/yr
(5000t/yr)
写真資材
薬品原料
導電性樹脂
薬品原料
写真現像剤
重合防止剤
アドレナリン、パパベリン、
神経系医薬
2 メチルレゾルシノール
防腐剤、他に多数の
薬品用誘導体
止血剤、鎮痛剤、殺菌剤
現在市場
香料、農薬、医療品など
2~3万トン/
万トン/年(世界)
世界) 数千トン/
数千トン/年(日本)
日本)
実証開発
石炭処理量 数トン/日
(カテコール 数10トン/年)
高機能性樹脂
数万トン/年(日本)
イオン交換樹脂
感光性樹脂、塗料など
実用化
石炭 数100~1000トン/日
(カテコール 数100~5000トン/年)
潜在市場
石炭 数万トン/日
(カテコール 数10万トン/年)
エンジニアリングプラスチック
(自動車、電子・電気機器、OA機器)
90万トン/年(日本)
熱硬化性樹脂
200万トン/年(日本)
図 8.18.1-40 カテコールの市場性とスケールアップ効果
以上より、超臨界水を利用する石炭転換プロセスとして、低品位炭を改質し、かつ高付加
価値原料を副生する複合プロセスを構築することができた。本プロセスは、これまでの低品
位炭の改質プロセス(改質炭製造プロセス)に比べ、改質炭を製造しつつ、化学原料を副生
できるため、製品の高付加価値化を図ることができる。その結果、改質炭・化学原料共に安
価に製造できる利点がある。また、褐炭液化プロセスと比較すると、本プロセスで生成する
化学原料の種類が少なく、かつ収率が大きいため、製品分離が容易であり、結果プロセスが
単純となってコスト的に有利になる。
以上より、超臨界水中での本石炭転換プロセスは、埋蔵量が豊富な低品位炭の利用の観点
から、有効かつ実用的なプロセスであり、エネルギーセキュリティーの確保、地球環境問題
などへの対応にも効果的なプロセスであると考えられる。
2-42
(6)今後の課題
(6)今後の課題
本調査研究において、褐炭等の低品位炭を超臨界水処理することによって、灰分の
少ない高カロリーの良質炭に改質でき、さらに 2 価フェノール類(カテコール等)な
どの高付加価値化学原料が副生品として得られることが明らかとなった。また、シス
テム化調査においては、本プロセスにおいて得られる改質炭や化学原料は現状の市場
価格に対して安価に製造でき、本プロセスの経済性も成り立つことが分かった。
しかし、本調査研究は、超臨界水の特徴を生かした石炭転換処理の可能性を評価す
るために行ったものであり、試験装置も石炭処理量が 25kg/d と非常に小規模なもの
である。
実用化レベルと想定した 1,000ton/d 規模のプラント建設にあたっては、まだまだ
技術的な課題も多く、数 ton/d 規模の実証プラントを建設し研究を続けていくことが
望まれる。
本調査研究により得られた課題及びプラントをスケールアップする上で予想され
る課題について整理した。主要な課題を表 8.1-18 に示す。
本プロセスの実用化を進めるにあたり、開発課題として、
・高温高圧(超臨界水)プロセスに特徴的な開発課題
・既存技術の適用および最適化に関する開発課題
の大きく 2 つに分類される。本プロセスは基本的に既存の機器、ユニットの組み合わ
せであり、既存技術の活用によってプロセスを構築することが可能であったが、主に
制御、システム化について、既存技術の最適化が重要であり、次ステップで研究開発
を続けていくことが必要であると考えられる。高温高圧プロセスに特徴的な課題とし
ては、主に材料の腐食や磨耗についてが挙げられる。文献情報等も多数あるが、まだ
情報は不十分であると考えられるため、今後の検討が必要である。また、反応器、分
離器等での粉体のハンドリングや流動性については、スケールアップ時に問題となる
と考えられるため、シミュレーション等を含め、引き続き検討する必要があると考え
られる。なお、個々のプロセス機器の中には、スケールアップを行わないと性能確認
できないものもあるため(圧力コントロールバルブなど)、同様に検討を要する。
一方で、上記の装置的な課題の他に、次ステップでは製品(改質炭、化学原料)の
詳細な評価および市場開発が主な検討課題になると考えられる。改質炭については、
ブリケットのハンドリング性や自然発熱性についてなど、今回の研究規模では実施で
きなかった項目について詳細に検討を続けるとともに、実ボイラでの燃焼試験、瀝青
炭とのブレンド性の確認などを行っていく必要がある。化学原料については、現状の
市場におけるユーザー評価(不純物など)を行い、市場に参入していくとともに、生
成した化学原料を使用したエンプラなどの高機能樹脂の開発、市場開拓を行っていく
必要がある。
今後、実証プラントによる試験開発を実施し、これら課題を克服して行き、本プロ
セスの実用化につなげて行きたいと考えている。
2-43
項
超臨界水(高温
高圧)を取扱う
上での課題
既存技術の適用
及び最適化に関
する課題
表 8.18.1-18 今後克服すべき主要な技術的課題
目
課
題
腐食、摩耗性:昇圧ポンプ、バルブ、反応器類な
材料選定
ど
減圧バルブ
反応器∼分離器1など
粉体回収
改質炭の高圧ハンドリング:分離器1
石炭スラリー 濃度/粒度最適化
水予熱
方法/温度制御等
反応器最適化 粉体流動性、温度制御/反応制御等
分離器最適化 温度制御/液面制御等
化学原料精製 カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン
ブリケット化 改質炭(粉体)の常圧ハンドリング
CO2 回収
システム化
その他
―
今回のプロセス(ワンスルー)
リサイクル水
反応
分離
石炭スラリー
発展プロセス(反応水直接循環)
循環ポンプ
分離
発展プロセスの検討
反応
石炭スラリ
発展プロセスにすることにより、熱効率は約 75%
に増加する。供給系、分離系の機器数や容量が減
少することで建設費が減少する。また、高水石炭
比への対応が可能であり、2 価フェノール類の収
率増加が期待できる。
2-44
8.2 水素化反応の基礎調査
(1)マイクロ波加熱による熱分解特牲の基礎調査
a.目的
a.
目的
圧力計 ガス
メタンと石炭の複合転換法の開発を
流量計
目標として、メタン共存下で石炭にマ
イクロ波を照射し、プラズマを発生さ
石英管
マイクロ波ガイド
内径25mm
せてメタンから発生する活性な水素で
内径54.6mm
2.45 GHz
石炭を液化し高収率で油分を取得する
5mm
マイクロ波
マイク
ロ波
20mm
ことを目的とした。
発信器
130mm
b.調査内容
b.調査内容
試験は内径25m、長さ400㎜の石英管
中央部にグラスウールで石炭を保持し
横からマイクロ波を照射して、気体か
らプラズマを発生させて加熱し(図
8.2-1)、照射出力、時間、圧力、ガス
種、触媒の有無、溶媒処理の有無の影
響を調べた。
グラス
ウール
真空ポンプ
ガスクロマト
グラフィー
トラップ
図 8.28.2-1 石炭マイクロ波熱分解の実験装置
2-45
60
45
転換率︵●︶
、ガス収率︵○︶、液収率︵□︶
︵%︶
c.調査結果
c.調査結果
主要試験結果は以下に示す。
・水素及ぴ希ガスプラズマでも液化するが、
ガス種によって反応率が異なる。(図
8.2-2)
・メタンから発生する活性な水素の効果は
予想されたほど大きくない。(図8.2-2)
・固相温度は石炭熱分解を可能にする温度
である。
・溶媒の効果はあるが触媒の効果はない。
(図8.2-3)
以上より、メタンプラズマでは水素プラズ
マよりは液収率は高いが、プラズマの作用は
主として熱の輸送体(キャリヤ)であり、溶媒
の効果はあるが触媒の効果はないということ
が分かった。
本調査結果から目標とする液収率50%は得
られなかったが、下記のような有意義な結果
が得られた。
ヘリウム
30
15
0
0
2
4
6
8
10
12
60
45
30
アルゴン
15
0
0
2
4
6
8
10
12
60
45
30
水素
15
0
0
2
4
6
8
10
12
60
45
30
メタン
15
0
0
2
4
6
8
10
時間(分)
図 8.28.2-2 プラズマ種と反応成績
12
図 8.28.2-3 溶媒及び触媒共存下の反応成績
①メタン共存下、溶媒浸漬させた石炭の熱分解はプロセスとして成立する可能性
がある(水素を用いるよりも有利)。(図8.2-4)
ガス
液
前処理
低温部
石炭
熱分解
灰分
中温部
メタン
石炭
ガス化
一部溶媒として使用
分解炉
炉内のガス組成
石炭
捕 集
油分
水素
メタン
供給
CH4
H2O
O2
石炭
H2
油分
高温部
水蒸気
酸素
1000 900
(炉底部)
800 700 600
温度(℃)
メタン分解
ガス化
石炭分解
灰分
図 8.28.2-4 メタンを用いた石炭熱分解
500 400
(炉頂部)
低温
乾留
図 8.28.2-5 メタンを用いた石炭熱分解炉内組成
プロセスのイメージ
②段差反応(高温でメタン分解、低温で油分取得)と速度論的過程(メタンと石炭の
向流接触、急速分解)を併用すれば油収率は大となることが期待される。(図
8.2-5)
d.中間評価結果
d.中間評価結果
平成 11 年度終了後に行われた中間評価において、本技術は検討すべき基礎項
目が多様広範に渡っており、これまでの結果では目標値に到達できていないため、
調査の継続を中止すべきとの評価を受けた。
2-46
(2)中温・中正熱分解試験∼石炭部分水素化熱分解技術の開発
埋蔵量豊富で安価な低品位炭(褐炭,亜瀝青炭)を緩やかな反応条件下(圧力2∼
3MPa,温度600∼900℃,水素濃度40∼60%,滞留時間1sec以下)において部分水素化熱
分解することによって、高圧の中カロリーガス(3,500∼4,500kcal/m3N)および高付
加価値な軽質油を併産し、
電力等の需要変動に対し、
高いプロセス効率を実現す
る新しい石炭転換技術を開
発することを目的とした。
本プロセスの特徴として、
他プロセスとの比較を図
8.2-6に示す。
低圧燃料ガス等の効率的
生産を目的として、現在実
用化実施中の多目的石炭転
換技術(石炭急速熱分解技
術)を適度に高圧・高水素
図 8.28.2-6 他プロセスとの比較
濃度化することによって、
高付加価値な軽質油およびガスタービン燃料等に直接利用可能な高圧ガスを得る
ことが可能である。
また、代替天然ガス(SNG)生産を目的とする石炭水添ガス化プロセスよりも緩
やかな反応条件下において石炭を水素化熱分解することによって(部分水素化熱分
解)、軽質油の収率を増加させる。
本プロセスのイメージを図8.2-7に示す。
石炭水素化熱分解炉とチャー
ガス化炉を一体化し、高温のチ
ャーガス化ガスの顕熱を有効に
利用(回収)して石炭を部分水
素化熱分解するため、熱効率が
高い。
また、部分水素化勲分解のた
め水素消費量が少なく、製品ガ
スの一部をシフト転換・脱炭酸
し、リサイクルするだけで系内
に必要な水素を賄える。
図 8.28.2-7 プロセスイメージ図
プロセスイメージ図
2-47
a.小型試験装置による基礎試験
a.小型試験装置による基礎試験
(a)目的
本技術において狙いとする
反応条件(圧力,温度,水素濃
度)下における熱分解反応生
成物(ガス,液,チャー)の収
率・性状を明確にし、一次プロ
セス構築のための基礎データ
を取得するため、小型試験装
置(図8.2-8)を用いた基礎試
験を実施した。
(b)試験結果
①圧力の影響(図8.2-9)
・高圧とするのに伴って、
BTX,CH4,C2H6の収率が顕
著に増加した。
ガスクロ
ガスメーター
冷却N2
チャー回収器
液回収器
ヒーター
冷却N2
N2
H 2/He
石炭
フィーダー
M
実験条件
石炭供給量:0.5g/min
圧力:0.3∼3.0MPa
温度:700∼870℃
水素濃度:0∼100%
ガス滞留時間:1sec
炭種:タニトハルム,バンコ,ヤルーン
ヒーター
反応器
上昇流とすることにより、石炭粒
滞留時間を正確に制御可能
プレヒーター
図 8.28.2-8 小型試験装置
〈試験条件:タニトハルム炭/870℃/水素濃度100%〉
チャー・ガス・液収率
チャー
液成分収率
CO
C 2H
ガス
BTX
液
80
炭素転換率[wt%-C]
ガス成分収率
オイル
25
6
CO 2
C 2H 4
CH
4
15
20
60
10
15
40
10
20
0
5
5
0
1.0
2.0
3.0
0
0
1.0
2.0
3.0
0
0
1.0
2.0
3.0
圧力[MPa]
図 8.28.2-9 圧力の影響
①圧力の影響(図8.2-9)
②水素濃度の影響(図8.2-10)
・チャー収率は水素を添加することによって減少した。
・水素濃度の上昇に伴って、BTX,CH4の収率が増加したが、水素濃度がO→50%
2-48
に変化する際の収率増加の割合よりも、50→100%に変化する際の収率増加
割合の方が小さく、50%以上の条件下では水素濃度の影響を比較的受け難
かった。
・水素濃度の上昇に伴って、オイル収率は減少したが、同時に軽質化が進行
する傾向も認められた(FD-MASS(Field Desorption Mass Spectorometry=電解脱
離イオン化質量分析装置)による質量分析結果)。
〈試験条件:タニトハルム炭/3.0MPa/870℃〉
チャー・ガス・液収率
チャー
液
液成分収率
CO
C 2H
ガス
BTX
80
炭素転換率[wt%-C]
ガス成分収率
オイル
CH
CO 2
C 2H 4
6
15
25
20
60
10
15
40
10
20
0
5
5
0
25
50
75
0
100
0
25
50
75
100
0
0
25
50
75
水素濃度[%]
図 8.28.2-10 水素濃度の影響
③炭種の影響(図8.2-11)
・バンコ炭を用いた場合に液収率(BTX+オイル)は最も大きくなった。
⇒(結論)本プロセスにおいて狙いとする条件下において、石炭の水素化
反応は充分に進行し、軽質油および飽和炭化水素ガスの収率増加に寄
与する(部分水素化熱分解)。
〈試験条件:3.0MPa/870℃/水素濃度100%〉
チャー収率
液成分収率
60
炭素転換率[wt%-C]
4
ガス成分収率
25
30
20
50
10
タニトハルム
バンコ
ヤルーン
0
C 2H
6
OIL
CH
4
CO
2
10
5
30
4
20
15
40
C 2H
BTX
タニトハルム
バンコ
CO
ヤルーン
図 8.28.2-11 炭種の影響
2-49
0
タニトハルム
バンコ
ヤルーン
100
b.プロセス検討
b.プロセス検討
上記基礎試験データ
(圧力3.OMPa,温度870℃,
水素濃度50%,タニトハル
ム炭の場合)を基に全体
プロセス収支(物質収支,
熱収支)を検討した(石炭
処理量4000t/d)。
発生するチャーを全量
チャーガス化炉へリサイ
クルすることによって、
水素化熱分解に必要な熱
量を賄える。
水素転換用ガス
[11万Nm 3/hr]
サイクロン
水素製造
製品ガス
[17万Nm 3/hr]
精製設備
石炭
[167t/hr]
(4000t/day)
H 2 リッチガス
[10万Nm 3/hr]
O2
[5万Nm 3/hr]
スチーム
[5万Nm 3/hr]
石炭部分水素化
熱分解炉
〈3.0MPa〉
〈820℃〉
〈H 2濃度46%〉
精製ガス
[28万Nm 3/hr]
BTX
[5.4t/hr]
オイル
[22.8t/hr]
ガス化ガス
[19万Nm 3/hr]
チャー
[69.3t/hr]
チャーガス化炉
〈3.0MPa〉
〈1580℃〉
製品ガス組成
CH 4:12%
C 2H 6:4%
H 2:36%
CO:41%
CO 2:4%
N 2:2%
発熱量:
3810kcal/Nm 3
タニトハルム炭/3.0MPa/870℃/水素濃度50%
における実験データを使用
スラグ
[4.2t/hr] エネルギー効率〈(製品ガス+BTX+オイル)/石炭〉=88%
精製ガスの一部を取り
出し、シフト転換および
図 8.28.2-12 プロセス収支
脱炭酸の後にH2リッチガ
スとして部分水素化熱分解炉ヘリサイクルする。製品ガスはH2,COリッチな高圧中
カロリーガスとなり、部分水素化熱分解炉とチャーガス化炉を併せたトータルのエ
ネルギー効率(冷ガス効率)は88%に達する見通しである。
c.製品の使用用途
c.製品の使用用途
得られた製品(高圧ガス、軽質油)は発電、化学原料等、多目的に利用することが
可能である。発電へ適用した場合、軽質油を夜間に貯蔵し、昼間の発電用燃料とす
ることによって、石炭部分水素化熱分解工程を一定負荷で運転しつつ、昼夜間の発
電出力を倍半分程度にまで変更
が可能(昼夜間電力負荷変動対
夜間
ガス⇒発電
策)(図8.2-13)である。
液⇒貯蔵
ガス
製品ガスを発電に、軽質油は
400万Nm /day
400MW
(送電端)
化学原料に使用(売却)した場合
石炭
4000t/day
の発電コストは4.3∼4.7円/kWh
BTX
(表8.2-1)となる。
130t/day
3
Air
昼間
d.まとめ
d.まとめ
緩やかな反応条件下において
石炭の水素化熱分解を行う(部
分水素化熱分解)新しい石炭転
換技術を提案し、基礎試験結果
石炭部分水素化
熱分解設備一式
ガス⇒発電
液⇒発電
オイル
550t/day
Air
730MW
(送電端)
※石炭の処理量を変化させること
なく、発電出力の変更が可能
図 8.28.2-13 昼夜間電力負荷変動対策
2-50
に基づいた全体プロセスの構築を実施した。本技術は、高付加価値な高圧ガスおよ
び軽質油を併産でき、かつ熱効率の高いプロセスとして成立する可能性がある。
e.中間評価結果
e.中間評価結果
平成11年度終了後に行われた
中間評価において、本技術は中
温・中圧条件下で石炭からガスと
軽質油を併産する新しい石炭転
換プロセスが構築できる可能性
が認められたため、今後の市場動
向を見据えたうえで次段階に進
むべきとの評価を得た。
表 8.28.2-1 発電コスト概算
項目
設備費[億円]
CASE.1
CASE.2
900∼1000
700∼800
発電出力(送電端)[MW] 730(昼)/400(夜)
変動費[円/kWh]
(燃料費,用役費等)
固定費[円/kWh]
(人件費,減価償却費等)
液収益[円/kWh]
発電コスト[円/kWh]
400(昼/夜)
1.8
2.5
2.7∼3.0
3.0∼3.4
0.0
▲1.2
4.5∼4.8
4.3∼4.7
石炭処理量4000t/day規模
CASE.1⇒ガス,液はすべて発電に使用(昼夜間発電出力変更)
CASE.2⇒ガスは発電に使用,液(BTX,オイル)は外販
2-51
8.3 成果の普及、広報
① 査読のある原著論文
No.
1
日付
1999
題
名
発表先
発表者
マイクロ波プラズマによるヤル
日本エネルギー学会誌、78
亀井修、丸島
渉、
ーン炭の転換反応―プラズマガ
巻、664 頁
小林基樹、尾上薫、
山口達明、川合智、
ス種が生成物分布に及ぼす影響
伊藤洋一
2
1999
メタンマイクロ波プラズマによ
石油学会誌、42 巻、335 頁
亀井修、丸島渉、小
るヤルーン炭の転換反応―原炭
林基樹、尾上
薫、
中元素の生成物への分配
山口達明、川合智、
伊藤洋一
② 査読のない原著論文
な し
③ 総説、解説、著書、ポスター
No.
1
日付
未定
題
名
発表先
発表者
「クリーンコールガイドハンドブ
(社)日本エネルギー学会 関西
ック」超臨界水石炭分解
支部長・編集委員長
西村 建二
(原稿)
2
2000.7
超臨界水による石炭分解処理
コールジャーナル
西川 章
発行:(財)石炭利用総合センタ
ー
④ 口頭発表
No.
1
日付
1998.9
題
名
発表先
発表者
元素組成変化に着目した褐炭の
化学工学会第 31 回秋期年
丸島渉、尾上薫、山
マイクロ波プラズマによる分解
会
口達明、伊藤洋一
反応−メタン雰囲気下での反応
主催:(社)化学工学会
機構―
2
1999.3
A Coal Conversion Process by
U.S./Japan
Work
Shop Jianshun FU
Supercritical Water
sponsored by MITI /DOE
Kenji NISHIMURA
Shinichi HASEGAWA
Yorimasa SEO
Fumiho IZUMIYA
3
1999.9
石炭水素化熱分解プロセスの検
化学工学会第 32 回秋期年
矢部英明、河村隆文、
討
会
泉谷文穂
主催:(社)化学工学会
2-52
4
5
6
7
1999.9
1999
2000.10
2000.10
超臨界水による石炭分解処理
第 9 回石炭利用技術会議
泉谷文穂、田中
主催:(財)石炭利用総合センタ
長谷川伸一、村山敏、
ー
西村健一
Characterization of
5th
Coal-Derived Liquids by
Symposium on Sepa- ration 林
Microwave Plasma Technique
Technology EX8
超臨界水による石炭分解処理
Japan-Korea
皓、
Joint 亀井修、丸島渉、小
基樹、尾上薫、
山口
達明、川合智、
伊藤
洋一
第 10 回石炭利用技術会議
宮下庸介、下田博巳、
主催:(財)石炭利用総合センタ
田中皓、長谷川伸一、
ー
村山敏、西村建二
石炭部分水素化熱分解技術の開
第 10 回石炭利用技術会議
矢部英昭、河村隆文、
発
主催:(財)石炭利用総合センタ
下田博巳
ー
8
2001.5
Development for Flash Coal
The 7th China - Japan 山口一良
Pyrolysis Process
Symposium on Coal and
C1Chemistory
9
2001.10
超臨界水による石炭分解処理
2-53
第 11 回石炭利用技術会議
宮下庸介、下田博巳、
主催:(財)石炭利用総合センタ
田中皓、長谷川伸一、
ー
村山敏、西村建二
⑤特許出願リスト(名称、出願番号、発明者等)
出願番号
公開番号
発明名称
発明者
出願人
区分
特許のカテゴリー
権利化の意図
特願平 9−43352
特開平10−237456
超臨界水による石炭転換方法
新井邦夫、阿尻雅文、田中皓、長谷川伸一、西村建二
三菱マテリアル株式会社
特許
出願番号
公開番号
発明名称
発明者
出願人
区分
特許のカテゴリー
権利化の意図
特願平9−43353
特開平10−237457
超臨界水を用いた石炭転換方法
新井邦夫、阿尻雅文、田中皓、長谷川伸一、西村建二
三菱マテリアル株式会社
特許
出願番号
公開番号
発明名称
発明者
出願人
区分
特許のカテゴリー
権利化の意図
特願平9−43354
特開平10−237458
石炭の連続転換装置
新井邦夫、阿尻雅文、田中皓、長谷川伸一、西村建二、川崎始
三菱マテリアル株式会社
特許
出願番号
公開番号
発明名称
発明者
出願人
区分
特許のカテゴリー
権利化の意図
特願平9−43351
特開平10−237459
石炭の転換方法
新井邦夫、阿尻雅文、西村建二、川崎始
三菱マテリアル株式会社
特許
出願番号
公開番号
発明名称
発明者
出願人
区分
特許のカテゴリー
権利化の意図
特願平9−60823
特開平10−251655
超臨界水を用いた石炭の連続転換装置
新井邦夫、阿尻雅文、田中皓、長谷川伸一、西村建二、傅建順
三菱マテリアル株式会社
特許
審査未請求
審査未請求
審査未請求
審査未請求
審査未請求
2-54
出願番号
公開番号
発明名称
発明者
出願人
区分
特許のカテゴリー
権利化の意図
特願2000−256112
特開2001−139957
低品位炭の改質方法
傅建順、畠山耕、宮下庸介、田中皓、長谷川伸一、村山敏、西村建二
三菱マテリアル株式会社
特許
審査未請求
2-55
9.補足説明
9.1 2価フェノール類の市場性
カテコール等の2価フェノール類の市場性については、文献及び専門家(化学、樹
脂)のヒヤリング等により情報を収集した。カテコールの現在市場は、2.5∼3 万トン
/年(世界)、数千トン/年(日本)である。本プロセスの実用化ステップにおいては、
最初に日本市場の 10∼20%程度の生産量で現状の市場に参入することが考えられる。
本プロセスをスケールアップするにあたっては、高機能性樹脂分野への参入も考え
られる。エンジニアリングプラスチックの市場は、現在約 90 万トン/年(日本) で
あり、本プロジェクトで検討した最大処理量(2 万トン/日−石炭処理、化学原料生産
量 数万トン/年)に比較しても十分大きな市場である。
樹脂分野への参入にあたっては、まず既に製品化されているポリ(パラ)ビニルフ
ェノール代替が考えられる。ポリビニルフェノール(現状 4,000 円/kg)は、フォト
レジスト(半導体の回路製作時の微細加工用感光性ポリマー)などの用途に使用され
ており、フェノール性水酸基の反応性や芳香族核置換反応などを利用できる機能性ポ
リマーで、多岐にわたる応用が考えられている。 専門家からのヒヤリングによると、
ポリビニルカテコールはポリビニルフェノールの特徴をさらに大きくできる可能性
があるということで、将来的には 40 万トン/年の需要が期待できる。
また、他の高機能樹脂への展開としては、-OH 基のエーテル化によるポリエーテル
樹脂の生成(ポリエーテル・エーテルケトン(PEEK)類似樹脂)
、-OH 基のアミノ化に
よるポリアミドまたはポリイミド樹脂の生成(カプトン類似樹脂)などがヒヤリング
等により得られた展開可能性の一例であり、耐熱性、耐熱変形性、難燃性を目標とし
たスーパーエンプラ志向を現在考えている。また、-OH 基のキレート性を活用した重
金属捕集樹脂などの展開も考えられる。以上の高機能性樹脂は高価であるため、本プ
ロセスによる安い2価フェノール類を原料とすることで、安価な高機能樹脂が生産で
きれば、市場参入並びに市場のさらなる拡大が期待できるのではないかと考えている。
なお、いずれのヒヤリング結果もカテコールの性質や既存樹脂の性能等から類推し
たものであるため、今後は樹脂メーカ、化学メーカと協力しながら、開発を進めてい
く必要がある。
9.2 実用化にあたっての技術的課題
本検討中におけるプロセス機器選定およびメーカヒヤリングによって、ブレークス
ルーするべき課題もまだ多数あるものの既存技術の組み合わせによりプロセス構築
は可能であると考えられる。
一例として、抜き出しバルブに関しては、高圧からの固体抜き出しバルブの一つと
して、石炭液化(NEDOL)で開発されたレットダウンバルブがある。バルブメーカか
らのヒヤリングによると、バルブへの過酷度は、高圧状態の大小ではなく、高圧から
低圧へレットダウンする差圧の大きさが問題になる。本プロセスでは段階的降圧によ
る分離を行うため、NEDOL での差圧(17MPa, 17MPa→常圧)に比べ、バルブにおける
差圧(10MPa、25MPa→15MPa)は小さく、過酷度も小さいということで、建設費試算
のための見積もり段階において、バルブメーカからはカタログ品レベルのバルブ仕様
2-56
(粉体抜き出しを考慮した高温・高圧対応品)の提示を受けている。なお、粉体の 15MPa
から常圧までの降圧では、複数の回収槽によるバッチ運転(減圧−昇圧の交互運転)
方式を考えており、差圧存在下でのバルブの開閉は行わないため、既存バルブで対応
可能であると考えている。
2-57
第3章
評価
第3章 評価
各評価項目における評価に続く肯定的意見/問題点・改善すべき点/その他の意見等
は、分科会委員のコメントを分類し、そのまま記述したものである。
1.総論
(1)総合評価
今後益々重要となる低品位炭をベースとした石炭利用技術の開発は国にとっ
て実施すべき公共性のある事業であり、事業の目的及び政策的位置付けは妥当
である。超臨界水分解技術を用いて、低品位炭から付加価値の高いカテコール
を選択的に得ると同時に、発熱量の大きい改質炭を得る技術は独創性に富みか
つ新規な技術であるといえる。
しかし、本技術は化学原料と改質炭の併産型であり、このどちらにウェイトを
置くかによって、石炭利用技術開発事業としての政策的あるいは技術的位置付
けが変わってくる。この点を、少なくとも中間評価時点でもっと明確にすべき
であった。今後本技術の展開を図る際には、化学原料と改質炭のどちらにウェ
イトを置いて進めるべきかを明確にした上で、国の関与の必要性を含め、十分
に検討する必要がある。
(肯定的意見)
○これから益々重要となってくる環太平洋圏の低品位炭をベースとしたエネルギー
の安定確保、炭酸ガス排出量削減、灰分排出量の軽減、低品位炭前処理としての発
展性など環境調和型石炭利用技術の開発という観点で、国として実施すべき公共性
のある事業と考えられ事業目的、政策的位置付けは妥当である。
○中間評価時点での開発目標の適切な見直しによるテーマの絞込み、目標の実用化へ
向けての修正、研究実施体制、基礎試験からシステム調査研究まで、実用化を念頭
においた研究計画など費用対効果が十分あり妥当であったと判断できる。
○低品位炭の含酸素官能基が多いという欠点を、超臨界水分解技術を用いることで、
付加価値の高いカテコールを選択的に得ることができるという長所に転じさせた
点、同時に固体残渣の発熱量を増加させ得た点で、非常に独創性に富んだかつ新規
な技術であり、低品位炭利用の要素技術として優れていると考えられる。
○システム化調査研究において、経済性評価、実用化のための課題も明確に示されて
おり、豪州ヤルーン炭に限定すれば、将来、実用化への可能性はあると判断できる。
また、本技術に留まらず、これからの低品位炭の高効率利用のコンセプトを公共に
提示している点で波及効果は十分ある。
○次世代技術調査としては、順当であり、研究開発マネージメントもうまく機能して
3-1
いたと思われる。
○石炭を超臨界水で改質したらどうなるかという、科学的には興味ある知見が得られ
ている。
○事業の位置付け、成果等は適当と思う。
○石炭の熱分解により新しい化学品製造プロセスの道が拓かれたことに意義がある。
また、時代の情勢変化に対応して、あるいは研究の成果に基づいて、中間評価段階
で軌道修正がなされたことは適切であった。
(問題点・改善すべき点)
●本事業は、化学原料併産型技術であるが、化学原料にウェイトをおくべきか、改質
炭にウェイトを置くべきかによって、石炭利用技術開発事業としての政策的位置付
けが変わってくる。この点を、少なくとも中間評価時点でもっと明確にすべきであ
ったと考えられる。
●当初の計画立案の際には、技術、製品の多様性まで含めて多面的に事前評価する必
要があると考えられる。
●本事業が実用化のための調査研究という性格から考えて、超臨界水分解技術の適用
範囲を明確にするために、幅広い炭種での実験を実施し、多炭種対応の可能性を検
討すべきであったと考えられる。
●廃棄物などへの応用に展開するためにも、超臨界水に関する成果を学術誌に論文と
してまとめるべきである。
●中間評価時に開発目標を変えざるを得なくなった時点で、プロジェクトの本来の目
的とは外れた新たな目標が設定され、開発のストーリーに無理が生じている。
●本研究は褐炭製造が主か、化学品製造が主か位置付けを判りやすくしていただける
となお良い。現時点では、ある程度位置付けを明確にできるかと思う。
●プロジェクトの意義が二転三転したことによって、石炭利用技術としての政策的位
置付け、技術的位置付けが難しくなった感がある。また、事業化に関しては、やは
り直近の実用化は難しくなった感がある。
(その他の意見)
△調査研究として実施したマイクロ波加熱の研究に関して、中間評価時点で打ち切っ
た点は評価できるが、事業開始時点で詳細な事前レビューを行うべきであった。今
後、事前レビューのあり方を考えていく必要があろう。
△今後、この技術を低品位炭のエネルギー利用として展開していくのか、化学原料生
産用として展開していくのかを、NEDO として明確に示す必要がある。
3-2
(2)今後に対する提言
実用化に当たっては多炭種適用性検討や製品カテコールの用途開発、及び技術
的にブレークスルーすべき課題の解決などが残されており、次の実証ステップ
へ進むか否かの判断は周辺の諸事情を勘案して慎重に行うべきである。また他
の低品位炭前処理技術との融合の可能性や、低品位炭とバイオマスとの共処理
技術の可能性などの調査研究を進め、今後、どのような形で実用化を図るべき
か十分な検討が必要である。
(今後に対する提言)
○本技術は、非常に優れた技術に成り得る可能性を大いに秘めている。しかしながら、
実用化には多炭種適用性、技術的ブレークスルーを必要とする課題、製品カテコー
ルの用途開発など、周辺の諸事情にマッチングする必要があり、実用化ステップへ
進む計画は十分な検討が必要である。
○他の低品位炭前処理技術と融合を図り、低品位炭と有機系廃棄物(バイオマスなど)
との共処理技術などの調査研究を進め、単独技術での実用化、石炭コンビナート構
想とのドッキングを図っていくことが望まれる。
○石炭としては次の段階に進める必要はないと思うが、廃棄物、バイオマスなどへの
応用は検討してもよい。
○本プロジェクトはまだ基礎研究段階であり、今後 NEDO のプロジェクトとして取
り上げるにはまだ未成熟である。
○類似技術の情報については、知り得る限り開示して頂きたい。評価委員は、プロジ
ェクトに関係する全てに精通しているわけではありません。関係する最も近い類似
技術との比較表があると、プロジェクトの正確や意義が判断しやすいと思います。
○石炭利用技術をエネルギーの national security の中核的課題として明確に位置づ
け、そのポリシーに則ったプロジェクトの立案、推進にさらに心を砕いていただけ
ると良いと思われる。また、海外における実用化なども踏まえ、開発技術の実用的
価値にまで踏み込んで NEDO によって、一層主体的に実効性のある石炭利用技術
開発が推進されることを期待します。
(その他の意見)
△特になし
3-3
2.各論
(1)事業の目的・政策的位置付けについて
本技術は低品位炭前処理技術として発展する可能性もあり、他の石炭利用技
術との融合を図れる点でも発展性に富んでおり、事業目的、政策的位置付けは
妥当である。
本事業は、化学原料併産型技術であるが、化学原料にウェイトをおくべきか改
質炭にウェイトを置くべきかによって、石炭利用技術開発事業としての政策的
位置付けが変わってくる。この点を、少なくとも中間評価時点でもっと明確に
すべきであったと考えられる。またプロジェクト開始時に実施した技術動向調
査の結果、石炭を超臨界水処理する基礎研究の実績が乏しかったことから、大
学等におけるさらなる基礎研究の積み上げが必要であった。なお、化学品製造
技術として本プロジェクトを続ける場合は、国の関与の必要性を含め、今後十
分に検討する必要がある。
(肯定的意見)
○これから益々重要となってくる環太平洋圏の低品位炭をベースとしたエネルギー
の安定確保、炭酸ガス排出量削減、灰分排出量の軽減などの環境調和型・石炭利用
技術の開発という観点で、国として実施すべき公共性のある事業と考えられる。ま
た、本事業で実施された石炭の超臨界水処理技術は、従来型の液化技術と異なり、
費用対効果も期待できる点でも適切な選定であったと考えられる。また、本技術は
低品位炭前処理としての発展性もあり、他の石炭利用技術との融合を図れる点でも
発展性に富んでいる。よって、事業目的、政策的位置付けは妥当である。
○次世代技術の探索としては、国が関与すべき課題であったと考えられる。
○低質炭からの液体燃料製造という当初の目的は評価できる。
○褐炭をエネルギーとして利用する技術については、国の関与が必要と思います。化
学品製造に関しては、派生技術として評価できますが、国の関与が必須とは言えな
いと思います。化学品製造技術として本プロジェクトを続ける場合は、国の関与の
必要性を、再検討して頂きたい。
○事業開始時点の機運としては、石炭利用技術に超臨海水を使用すること自体が、大
変に challenging で魅力的なテーマであったと思われる。また、そこで生まれた技
術が成立すれば、国際競争力のある技術となったのではないかと思われる。
(問題点・改善すべき点)
●本事業は、化学原料併産型技術であるが、化学原料にウェイトをおくべきか、改質
炭にウェイトを置くべきかによって、石炭利用技術開発事業としての政策的位置付
けが変わってくる。この点を、少なくとも中間評価時点でもっと明確にすべきであ
ったと考えられる。
●超臨界水による石炭転換は、プロジェクトがスタートした時点で、ある程度の知見
3-4
は得られていたはずである。大学等における基礎研究の積み上げがもう少し必要で
あったと思う。
●中間評価時に変更した開発目標に疑問がある。特にカテコール製造に重点を置いた
目標設定が問題である。
●他の低質炭利用技術との差別化が不明確である。
●残念ながら当初の志とはやや異なる方向に技術開発が推移したことは否めない。褐
炭の新規な利用技術であるのか、化学品の製造プロセスであるのか、政策的意図が
(少なくとも開発者の中で)あいまいになったことは反省材料であろう。
(その他の意見)
△調査研究として実施したマイクロ波加熱の研究に関して、中間評価時点で打ち切っ
た点は評価できるが、事業開始時点で詳細な事前レビューを行うべきであった。今
後、事前レビューのあり方を考えていく必要があろう。
3-5
(2)研究開発マネージメントについて
開始当初3つの調査項目を並列で実施し、中間評価時点で開発目標の適切な
見直しを行い、テーマの絞り込み、目標の実用化に向けての修正など、マネー
ジメントとしては概ね妥当であった。
本プロジェクトは、低品位炭の有効利用という観点からは NEDO 事業として問
題ないが、中間評価時における超臨界水処理技術の開発目標の見直しはプロジ
ェクト開始当初の課題解析の甘さを示している。
今後計画立案の際には技術、製品の多様性まで含めて多面的に事前評価する必
要があると思われる。
(肯定的意見)
○開始当初、3つの調査項目を並列で実施し、中間評価時点で、開発目標の適切な見
直しを実施し、テーマの絞込み、目標の実用化へ向けての修正など、研究実施体制
は概ね妥当であったと判断できる。研究開発項目は、基礎試験からシステム調査研
究まで、実用化を念頭においた研究計画がなされており、今後の展開を考えていく
上での必要なデータ、知見を示しており、費用対効果はあると判断できる。また、
定常的に委員会、ワーキンググループを開催し、有機的に連携を図りながら事業を
推進しており運営も妥当である。
○マイクロ波加熱による熱分解など、実用化の検討を見送り、超臨界水抽出に集中し
たのは、的確な判断であり、マネージメントがうまく行われていたと思われる。
○プロジェクト開始当初の研究開発目標は概ね妥当であった。
○事業体制は概ね妥当であった。
○妥当と思います。
○当初の目論見とは異なるものの、中間評価においてプロジェクトの成果を精査し、
化学品の製造プロセスに重点を移したことは当を得たものであった。
(問題点・改善すべき点)
●的確な開発目標の見直しは評価できるが、その内容が、単に数値の見直しではなく、
根本的にプロセスの目的の変更に係わるものであった点は問題点として残る。低品
位炭の有効利用という観点からは、NEDO事業として問題はないと判断できるが、
開始当初の問題解析の甘さを示している。今後、当初計画立案の際には、技術、製
品の多様性まで含めて多面的に事前評価する必要があると考えられる。
●基礎研究の段階で、大学、国研をより積極的に活用できたのではないかと思われる。
●明らかにカテコールなどの化学原料が主生成物(価格の面から考えて)なので、改
質炭にこだわる必要はなかった。
●中間評価時に新たに設定した研究開発目標の妥当性が不明確である。
●プロジェクトの性格の変更によって、開発者の中で技術の位置付けが明確でなくな
ったように思われる。
3-6
(その他の意見)
△簡単な物質、エネルギー収支などの事前検討からマイクロ波加熱は、開始当初から
検討の余地ありとすべきではなかったか。
3-7
(3)研究開発成果について
低品位炭の含酸素官能基が多いという欠点を超臨界水分解技術を用いること
で付加価値の高いカテコールを選択的に得ることができるという長所に転じさ
せたことと、固体残渣の発熱量を増加させ得たことは、独創性に富んだ新規な
技術であるといえる。
ただし、カテコールの回収は石炭構造に大きく依存するので、操作条件よりも
むしろ炭種の影響が大きい。実用化のための調査研究という本事業の性格から
考えて、超臨界水分解技術の適用範囲を明確にするために、幅広い炭種での実
験を行い多炭種対応の可能性を検討すべきであった。また、他の低品位炭利用
技術と比較した本技術の優位性を明確にすべきであった。
(肯定的意見)
○中間評価以降の開発目標は達成されている。特に、低品位炭の含酸素官能基が多い
という欠点を、超臨界水分解技術を用いることで、高付加価値の高いカテコールを
選択的に得ることができるという長所に転じさせた点、同時に固体残渣の発熱量を
増加させ得た点で、非常に独創性に富んだかつ新規な技術であり、低品位炭利用の
要素技術として非常に優れていると考えられる。また、中温・中圧熱分解試験で、
液−ガス併産プロセスの目処を立てた点でも研究成果は十分認められる。これらの
成果を数多くの特許として申請している点、論文、口頭発表で成果を公共に提示さ
れており、費用対効果が十分ある成果と判断できる。また、石炭に留まらず、各種
廃棄物などへの適用の可能性も示されており、発展性のある事業であったと判断で
きる。
○廃棄物系バイオマスなどから有価物を抽出・利用する技術として、実用化、市場創
設の可能性はあると思われる。
○特許など適切に取得されている。
○要素技術として科学的には有意義な研究成果が得られている。
○目標は達成したと思います。特許出願が多いですので、成果の普及は良いと思いま
す。
○成果の公開に対する努力はなされてきたと思われる。また、カテコール製造技術と
しては、優れたプロセスとなる可能性が示された。超臨界水の利用技術という観点
からも大変興味深い知見が得られていると判断できる。
(問題点・改善すべき点)
●カテコールの回収は石炭構造に大きく依存するので、操作条件よりもむしろ炭種
(フェノール性水酸基、エ−テル結合の量と芳香族ユニットとのバランス)による。
本事業が実用化のための調査研究という性格から考えて、超臨界水分解技術の適用
範囲を明確にするために、幅広い炭種での実験を実施し、多炭種対応の可能性を検
討すべきであったと考えられる。また、システム研究において改質炭ベースなのか、
3-8
カテコール製造ベースなのかを判断できる計算比較を実施し、次のステップのシナ
リオを明確にする必要がある。
●超臨界水の成果が査読付の論文としてまとめられていないのは残念である。
●研究成果が低質炭の有効利用というプロジェクトの目的達成につながっていない。
●石炭利用技術として考えた場合、本技術が褐炭利用技術のエースとなりえるかが不
明である。
(その他の意見)
△特になし
3-9
(4)実用化、事業化の見通しについて
豪州ヤルーン炭に限定すれば、将来条件が整えば実用化への可能性はあると
考えられる。また、低品位炭の構造特性を生かして高付加価値製品を取り出し、
残りをエネルギー源に利用するというスキームを提示しており、本技術にとど
まらず、これからの低品位炭や有機系廃棄物の高効率利用のコンセプトを公共
に提示している点で波及効果は認められる。
事業化に関しては、低品位炭改質事業単独では難しく、化学品事業を立ち上げ
ることができるかどうかが鍵になる。このためには、化学品製造技術として見
た場合の既存技術と比べた競争力の評価と副生品としての改質炭受け入れ先確
保の検討が重要になると考えられる。特に、カテコールの市場性を今後十分に
検討する必要がある。また、事業化にあたっては、技術的にブレークスルーす
べき課題もまだあり、次段階のステップに進むか否かの判断は周辺の諸事情を
勘案して慎重に行うべきである。
(肯定的意見)
○システム化調査研究において、経済性評価、実用化のための課題も明確に示されて
おり、豪州ヤルーン炭に限定すれば、将来、条件が整えば実用化への可能性はある
と判断できる。また、低品位炭の構造特性を生かして高付加価値製品を取り出した
のち、残りをエネルギー源に利用するというスキームを提示しており、本技術に留
まらず、これからの低品位炭の高効率利用のコンセプトを公共に提示している点で
波及効果は十分ある。さらに、石炭に留まらず、他の有機系廃棄物(特にリグニン)
にも適用可能で、低品位炭と有機系廃棄物との同時処理などへの展開の可能性も示
唆している点でも波及効果はあると考えられる。一方、カテコールの原料単価を大
幅に低減できる点で市場に大きなインパクトをもたらす可能性があると思われる。
○特定の化学品を低品位炭から抽出するプロセスとしては、マーケッティングによっ
ては実用化可能であろう。
○カテコール製造プロセスとしては可能性が示された。
(問題点・改善すべき点)
●炭種の調査範囲が狭いこと、実用化の開発課題で固体抜き出しバルブなど、技術的
ブレークスルーを必要とする。また、製品カテコールを現状主目的である食品用原
料として利用するには、製品純度と石炭由来の不純物を ppb オーダーまで除去する
必要があり、相当のコストがかかると考えられる。この点をクリアするための前処
理法などの開発も考えていく必要がある。樹脂材料としての見込みは、相当の用途
開発が必要で、本事業が技術的に実用化しても市場がついてくるかの判断も含めて
検討していく必要がある。
●エネルギーと物質のコプロダクションの場合、その生産規模にアンバランスがある
ことに注意すべきである。はっきり言えば本プロセスはエネルギープロセスとして
は実用化・事業化は困難と思われる。
3-10
●カテコールの市場性が不明確であることから、本技術の実用化のシナリオが描けな
い。
●ベンチスケールでの実験から、大規模な商業スケールの設備の経済性を議論するこ
とに無理がある。
●褐炭改質事業単独では成り立ちそうにないので、化学品製造事業を立ち上げること
が出来るかどうかが鍵になります。商用化研究へ移行する場合には、
1)化学品製造業として見た場合に、既存技術と比べて競争力があるのか、
2)副生品として得られる改質炭の受け入れ先を確保できるのか、
を良く検討してください。
●カテコールの市場性の検討が不十分であり、事業化までのスキームが明確に描けな
かった点が反省材料となろう。周辺動向調査と連携して、公共財としての本技術の
位置付けについて、プロジェクトの推進の早い段階から考慮されると良かったと思
う。
(その他の意見)
△今後、この技術を低品位炭のエネルギー利用として展開していくのか、化学原料生
産用として展開していくのかを、NEDO として明確に示す必要がある。
△技術の成熟度が実用化を議論する段階に達していない。
3-11
第4章
評点法による評点結果
第4章 評点法による評点結果
「石炭利用次世代技術開発調査 石炭熱分解技術分野」に係わる事後評価の実施に合
わせて、下記に基づき、本分科会委員による「評点法による評価」を実施した。
1. 経緯
(1)評点法の試行
通商産業省(当時)において、平成 11 年度に実施されたプロジェクトの
評価(39 件)を対象に、評点法を試行的に実施した。その結果を産業技術
審議会評価部会に諮ったところ、以下の判断がなされた。
数値の提示は評価結果の全体的傾向の把握に有効
評価者が異なっていてもプロジェクト間の相対的評価がある程度可能
(2)評点法の実施
平成 12 年 5 月の通商産業省技術評価指針改訂にて「必要に応じ、評点法
の活用による評価の定量化を行うこととする」旨規定された。
以降、プロジェクトの中間・事後評価において、定性的な評価に加え各評
価委員の概括的な判断に基づく評点法が実施されている。
2.評点法の目的
評価結果を分かりやすく提示すること
プロジェクト間の相対評価がある程度可能となるようにすること
3.評点の利用
評価報告書を取りまとめる際の議論の参考
評価報告書を補足する資料
分野別評価、制度評価の実施において活用
4.評点方法
(1)評点の付け方
各評価項目について4段階(A、B、C、D)で評価する。
(2)評点法実施のタイミング
第 1 回分科会において、各委員へ評価コメント票とともに上記(1)の点数の
記入を依頼する。
評価報告書(案)を審議する前に、評点結果を委員に提示、議論の際の参
考に供する。
4-1
上記審議を行った分科会終了後、当該分科会での議論等を踏まえた評点の
修正を依頼する。
評価報告書(案)の確定に合わせて、評点の確定を行う。
(3)評点結果の開示
評点法による評点結果を開示するが、個々の委員記入の結果(素点)につ
いては、「参考」として公表(匿名)する。
評点法による評価結果の開示については、あくまでも補助的な評価である
ことを踏まえ、評点のみが一人歩きすることのないように慎重に対応する。
具体的には、図表による結果の掲示等、評価の全体的な傾向がわかるよう
な形式をとることとする。
4-2
5.評点結果
1.8
1.事業の目的・政策的位置付け
2.研究開発マネジメント
1.6
3.研究開発成果
1.6
4.実用化・事業化の見通し
1.6
0.0
1.0
評価項目
2.0
平均値
3.0
素点(注)
1.事業の目的・政策的位置付けについて
1.8
C
A C
B B
2.研究開発マネジメントについて
1.6
C
B C
B B
3.研究開発成果について
1.6
C
B C
B B
4.実用化・事業化の見通しについて
1.6
C
B C
B B
(注)A=3,B=2,C=1,D=0として事務局が数値に換算。
4-3
<参考>
評点法
【記入方法、結果取扱いについて】
・各委員からは、各項目について、A、B、C、Dのいずれかを記入してく
ださい。
・各委員記入の結果(素点)は、「参考」として公表(匿名)いたします。
(1)事業の目的・政策的位置付けについて
<判定基準>
・非常に重要
→A
・重要
→B
・概ね妥当
→C
・妥当性がない又は失われた
→D
A
B
C
D
(2)研究開発マネージメントについて
<判定基準>
・非常によい
→A
・よい
→B
・概ね適切
→C
・適切とはいえない
→D
A
B
C
D
(3)研究開発成果について
<判定基準>
・非常によい
A
B
C
D
→A
・よい
・概ね妥当
・妥当とはいえない
→B
→C
→D
A
B
C
D
(4)実用化、事業化の見通しについて
<判定基準>
・明確に実現可能なプランあり →A
・実現可能なプランあり
→B
・概ね実現可能なプランあり
→C
・見通しが不明
→D
以
4-4
上
評価項目
事業の目的・政策的位置付け
評点
[ A B C D ]
評価に当たっての考慮事項
評価(委員限り)
非常に重要→A
NEDOの事業としての妥当性
[ a b c d ]
重要→B
事業目的・政策的位置付けの妥当性
[ a b c d ]
非常によい→A
研究開発目標の妥当性
[ a b c d ]
よい→B
研究開発計画の妥当性
[ a b c d ]
概ね適切→C
研究開発実施者の事業体制の妥当性
[ a b c d ]
適切とはいえない→D
研究開発実施者の運営の妥当性
[ a b c d ]
情勢変化への運営の妥当性
[ a b c d ]
非常によい→A
計画と比較した目標の達成度
[ a b c d ]
よい→B
要素技術から見た成果の意義
[ a b c d ]
概ね妥当→C
成果の普及広報
[ a b c d ]
妥当とはいえない→D
成果の公共性
[ a b c d ]
明確に実用可能なプランあり→A
成果の実用化可能性
[ a b c d ]
実現可能なプランあり→B
波及効果
[ a b c d ]
概ね実現可能なプランあり→C
事業化までのシナリオ
[ a b c d ]
概ね妥当→C
妥当性がない又は失われた→D
研究開発マネージメント
研究開発成果
実用化、事業化の見通し
[ A B C D ]
[ A B C D ]
[ A B C D ]
見通しが不明→D
4-5
参考資料1
プロジェクトの概要説明資料
本資料は、第1回「石炭利用次世代技術開発調査 石炭熱分解技術分野」事後評価
分科会において、プロジェクト実施者がプロジェクトの概要を説明する際に使用した
ものである。
石炭利用次世代技術開発調査
石炭熱分解技術分野
事後評価説明資料
平成14
平成14年10月11日
14年10月11日
新エネルギー・産業技術総合開発機構
石炭利用総合センター
表紙
1
石炭利用次世代技術開発調査の目的
革新的なクリ−ン・コ−ル・テクノロジー開発
世界的なエネルギ−需要が今後増大すると予想される一
方、地球環境問題が国際的な最重要課題として認識されて
いる。
この地球環境問題への対応として、21
この地球環境問題への対応として、21世紀における
21世紀におけるCO
世紀におけるCO2等
の環境負荷の低減を図る。
石炭利用次世代技術の調査研究
石炭利用次世代技術の 研究調査
研究 調査を行い、当該技術が実用
化研究へ進めるべきかどうかの可能性を見極める た
めの基礎的な研究調査
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-1
2
石炭利用次世代技術開発調査スケジュール
4年度 5年度 6年度 7年度 8年度 9年度 10年度
10年度 11年度
11年度 12年度
12年度 13年度
13年度 14年度
14年度 15年度
15年度
('92)
('93)
('94)
('95)
('96)
('97)
('98)
('99)
('00)
('01)
('02)
('03)
環境調和型石炭燃焼技術分野
・トッピング燃焼技術
・酸素燃焼技術
・高度排煙処理技術
活性炭素繊維による脱硫・脱硝
未利用Ca
未利用Ca及びラジカル剤による脱硫・脱硝
Ca及びラジカル剤による脱硫・脱硝
・高温石炭燃焼ガス集塵技術
高度石炭改質技術分野
高度石炭改質技術
高液収率熱分解技術
事後評価
高ガス収率熱分解技術
石炭熱分解技術分野
中間評価
・微量元素の測定及び除去技術
乾式石炭改質技術
~H19
~H19年度
H19年度
ハイパ-コール
利用高効率燃焼技術の開発
New Energy and Industrial Technology Development Organization
3
事後評価対象プロジェクト
<環境調和型石炭燃焼技術分野>
(1) トッピング燃焼技術 (H 7年度
7年度 終了)
終了)
(2) 酸素燃焼技術 酸素燃焼技術 (H11年度
H11年度 終了)
終了)
(3) 高度排煙処理技術 高度排煙処理技術 (
(H 7∼
7∼14年度
14年度)
年度)
(4) 微量元素の測定及び除去技術 (H11∼
H11∼15年度
15年度)
年度)
(5) 高温石炭燃焼ガス集塵技術 (H13年度
H13年度 終了)
終了)
<石炭熱分解技術分野> (H13年度
H13年度 終了)
終了)
<高度石炭改質技術分野> (
(H12年度
H12年度 終了)
終了)
<ハイパーコール利用高効率燃焼技術の開発>
(H14∼
H14∼19年度
19年度)
年度)
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-2
4
研究委託先の選定経緯
石炭利用次世代技術に関する専門能力及び知見を有し、さらに
石炭利用分野に係わり、且つ情報収集能力、計画策定能力を有
する機関に委託することとし、関連の団体などを比較検討し、
((財)石炭利用総合センター(
石炭利用総合センター(CCUJ)
CCUJ)
国(
国(通産省 資源エネルギー庁)
資源エネルギー庁)のコールフロンティア懇談会の提
言を受け、石炭利用に係わる供給、需要、ボイラー設備等にか
かわる会社が出資した財団法人で、経営基盤が安定している。
平成
平成4
随意契約)
平成4年度 委託先選考委員会にて承認 (随意契約)
New Energy and Industrial Technology Development Organization
5
石炭利用次世代技術開発調査
石炭熱分解技術分野
事業概要
(H8~13年度
8~13年度)
年度)
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-3
6
高液収率石炭熱分解技術
【開発意義】
1.液化、ガス化のような単一製品製造ではなく、液・
ガスを併産する多機能プロセス
2.高付加価値の高い液収率が高く、経済性のある プロセス
3.製鉄用コークス生産減、石炭直接利用プロセス 開発に伴う芳香族製品の原料確保
を狙うことにより、環境問題などに対処した経済性の
あるプロセス開発が必要
New Energy and Industrial Technology Development Organization
7
「石炭熱分解技術分野」調査内容
石炭(低品位炭)の多目的利用システムの開発
高ガス収率技術
急速熱分解技術
高液収率技術
超臨界水石炭転換技術
水素化反応基礎調査
フェーズⅠ (H4~
H4~7年度)
年度)
・中温・中圧熱分解基礎試験
・マイクロ波加熱による
熱分解特性基礎調査
フェーズⅠ (H8~
H8~13年度
13年度)
年度)
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-4
8
調査研究全体工程(
調査研究全体工程(石炭熱分解技術分野)
石炭熱分解技術分野)
フェーズ1
フェーズ2
H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14
<高ガス収率技術>
調査研究
多目的石炭転換技術
(急速熱分解技術)
<高液収率技術>
中
間
評
価
実用化研究
(1)超臨界水抽出による
石炭転換反応の試験・調査
中
事
間
後
評
評
価
価
(2)水素化反応の基礎調査
・マイクロ波加熱による
熱分解特性の基礎調査
・中温・中圧熱分解基礎試験
今回の事後評価
New Energy and Industrial Technology Development Organization
9
調査研究体制 (石炭熱分解技術分野)
石炭熱分解技術分野)
経済産業省 資源エネルギー庁
新エネルギー・産業技術総合開発機構
石炭次世代・基盤技術委員会
石炭利用総合センター(
石炭利用総合センター(CCUJ)
検討委員会
調査委員会
委員長 富田 彰 東北大学 教授 (H8∼
H8∼13)
委員 阿尻 雅文 東北大学 助教授
(H8∼
H8∼13)
委員 林 潤一郎 北海道大学助教授 (H8∼
H8∼13)
委員 坂西 欣也 九州大学助手 (H8∼
H8∼10)
10)
委員 稲葉 敦 資源環境技術総合
稲葉 敦 資源環境技術総合
研究所室長 研究所室長 (H8)
H8)
委員 三木 啓司 産業技術総合研究所
研究室長
(H9∼
H9∼13)
13)
委員 佐古 猛 静岡大学教授 (H8∼
H8∼ 13)
委員長 田中 皓 三菱マテリアル㈱ (H 8∼
8∼13)
委員 橘 躍動 アドケムコ㈱ (H 8∼
8∼ 9)
委員 執行 修 アドケムコ㈱ (H10)
委員 山本 浩 アドケムコ㈱ (H11∼
H11∼13)
委員 中井成行 宇部興産㈱
(H 8∼
8∼10)
委員 鶴谷 巌 宇部興産㈱
(H11∼
H11∼13)
委員 古雅陸夫 三菱化学㈱
(H 8∼
8∼ 9)
委員 野尻直弘 三菱化学㈱ (H10∼
H10∼11)
委員 倉地和仁 住友金属工業㈱ (H 8∼
8∼11)
委員 古本正史 新日鐵化学㈱ (H11∼
H11∼13)
委員 宮下 永 新日本製鐵㈱ (H 8∼
8∼10)
ワーキンググループ (研究協力先)
研究協力先)
アドケムコ㈱ 宇部興産㈱ 新日本製鐵㈱ 三菱化学㈱ 三菱マテリアル㈱
新日鐵化学㈱
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-5
10
検討・調査委員会、WG開催状況
実施回数
委員会
H8
2回
H9
2回
H10 H11 H12 H13
2回 2回 2回 2回
WG
8回
9回
7回
7回
4回
7回
New Energy and Industrial Technology Development Organization
11
水素化反応の基礎調査
マイクロ波加熱による熱分解特性
基礎調査
(平成8年度~平成11年度)
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-6
12
マイクロ波加熱による熱分解特性基礎調査
【試験目的】
メタン共存化で石炭にマイクロ波を照射し、
プラズマを発生させて、メタンから発生する
活性な水素で石炭を液化し、高収率で油分を 回収することを目的とする。
【目標値】
液収率:50%
New Energy and Industrial Technology Development Organization
13
マイクロ波加熱による熱分解 実験装置
圧力計
ガス
流量計
石英管
マイクロ波ガイド
内径 54.6 mm
2.45 GHz
マイクロ波
発信器
内径 25 mm
5 mm
20 mm
マイクロ波
130 mm
グラス
ウール
真空ポンプ
トラップ
ガスクロマトグラフィー
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-7
14
マイクロ波加熱による熱分解 中間評価結果
検討すべき基礎項目が多様広範に渡っており、
これまでの結果では目標値から大きな隔たりが
ある。
別途新たな企画が提案されることを期待して中
断する。
New Energy and Industrial Technology Development Organization
15
水素化反応の基礎調査
中温・中圧熱分解基礎試験
(平成8年度~平成11年度)
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-8
16
中温・中圧熱分解他技術との比較
水添ガス化 (SNG製
SNG製)
過去の知見がない
中圧・中水素濃度領域に注目
圧 力〔 7∼ 10MPa
10MPa〕
MPa〕 天然ガス代替
水素濃度〔 80∼
80∼ 100%
100% 〕
(CH4)
温 度〔800
温 度〔800∼
800∼1100℃
1100℃ 〕
滞留時間〔 5∼ 10sec
10sec〕
sec〕
高
本プロセス (中温中圧熱分解)
中温中圧熱分解)
圧力
圧 力〔 2∼ 3MPa〕
MPa〕
水素濃度〔 40∼
40∼ 60%
60% 〕
温 度〔600
温 度〔600∼
600∼900℃
900℃ 〕
滞留時間〔 1sec以下
sec以下 〕
発電用燃料
化学原料
(高圧ガス)
(軽質油)
多目的石炭転換技術 (CPX)
CPX)
低
低
水素濃度
高
COG代替燃料ガス
圧 力〔0.3
〕 COG代替燃料ガス
圧 力〔0.3MPa
0.3MPa
水素濃度〔 20%
〕
20%
重質タール
温 度〔600
温 度〔600∼
600∼900℃〕
900℃〕
チャー
滞留時間〔 2sec
〕
New Energy and Industrial Technology Development Organization
17
中温・中圧熱分解 まとめ
緩やかな反応条件下において石炭を水素化熱分解
(部分水素化熱分解)新しい石炭転換技術を目指し
て、基礎試験を行った結果、
・高付加価値のある高圧ガス(ガス収率:13-35%)
・軽質油(液収率:22-32%)
を併産でき、熱効率の高いプロセスを構築すること
ができた。
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-9
18
中温・中圧熱分解 中間評価結果
目標が達成され実用化への取り組みに入れると判断
し、本プロジェクトから外す。(H12年度)
次段階の研究開発(H15年度~)
石炭部分水素化熱分解技術に関する研究
H15年度 H16年度 H1 7年度 H18年度 H19年度 H20年度
設計・製作・据付
反応実証試験設備・試験
支援研究
実証実機企画推進
試運転・試験
支 援 研 究
サイ トに関す る調査研究
実証実機F S、計画
New Energy and Industrial Technology Development Organization
19
超臨界水抽出による
石炭転換反応の試験・調査
(平成8年度~平成13年度)
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-10
20
本調査の背景
褐炭等の低品位炭は、石炭可採埋蔵量の約半分を占めるが、
高水分、自然発火性などの理由により、その利用は産炭地周
辺に限られている。
一方で、エネルギー源としての石炭は、今後も重要な位置を
占めると考えられるが、良質炭の確保は今後困難が予想される。
日本国内の資源確保が必須
低品位炭の有効利用技術の開発
New Energy and Industrial Technology Development Organization
21
目 的
新しい熱分解手法として超臨界水を用いた方法を検討する
新しい熱分解手法として超臨界水を用いた方法を検討する
「超臨界水の特長」
「超臨界水の特長」
(1) 熱分解+エステル、エーテル等の結合の加水分解
熱分解+エステル、エーテル等の結合の加水分解
(1) 熱分解+エステル、エーテル等の結合の加水分解
(1) 熱分解+エステル、エーテル等の結合の加水分解
(1)
(2)
(2) 生成物再重合抑制効果
生成物再重合抑制効果
(2) 生成物再重合抑制効果
(2) 生成物再重合抑制効果
(2)
(2)
(3)
(3) situでの水性ガスシフト反応による軽質化 での水性ガスシフト反応による軽質化 (3) (3) InIn--situでの水性ガスシフト反応による軽質化 situでの水性ガスシフト反応による軽質化 (3)
(3)
InInsitu
(4) 環境調和型プロセス 環境調和型プロセス (4) 環境調和型プロセス (4) 環境調和型プロセス (4)
低品位炭のクリーン化、軽質化および高付加価値化をめざした
低品位炭のクリーン化、軽質化および高付加価値化をめざした
多機能・多目的プロセスの開発
多機能・多目的プロセスの開発
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-11
22
超臨界水による石炭転換試験の概要
・ 反応生成物
反 応
反 応
・ 物質収支
・ 改質炭/化学原料の収率と性状
改質炭 化学原料の収率と性状
分 離
分 離
・ 改質炭/化学原料の分離回収方法
改質炭 化学原料の分離回収方法
・ 分離試験結果
精 製
精 製
化学原料
化学原料
・ 化学原料の精製方法
・ 精製試験結果
改質
質炭
炭
改
New Energy and Industrial Technology Development Organization
23
目標値
当初目標値
見直し目標値
(1) 液収率: (1) 液収率: 50
液収率: 50%以上
50%以上
(2) 液性状: (2) 液性状: ・軽質油60
・軽質油60%以上
60%以上
・H/C
1.0→
→1.7
・H/C H/C 1.0
(設定根拠)
・石炭液化の次世代技術とし
て期待される最高目標値
(1) (1) 2価フェノール類収率: 4
4%以上 (daf)
(2) 改質炭性状:
(2) 改質炭性状:
・発熱量 6700
・発熱量 6700kcal/kg
6700kcal/kg(
kcal/kg(気乾)以上
・燃料比 ・燃料比 1.0
燃料比 1.0~
1.0~1.5
(微粉炭火力用に提供できる性状)
(設定根拠)
・実用プロセスの成立する要件
(経済性等から) (経済性等から)
New Energy and Industrial Technology Development Organization
参考資料1-12
24
「超臨界水を利用した石炭転換技術試験調査」
「超臨界水を利用した石炭転換技術試験調査」
プロジェクトの詳細
プロジェクトの詳細
25
目 次
目 次
1.背景
2.開発目標
3.試験・検討手順
4.基礎試験
5.連続試験
6.改質炭の利用方法の検討
7.化学原料の精製方法の検討
8.システム化調査(プロセス検討)
9.今後の課題と展望
10.まとめ
26
参考資料1-13
背景背景
背景超臨界水の利用
背景--超臨界水の利用
新しい熱分解手法として超臨界水を用いた方法を検討する
新しい熱分解手法として超臨界水を用いた方法を検討する
「超臨界水の特徴」
「超臨界水の特徴」
(1)
(1) 熱分解+エステル、エーテル等の結合の加水分解
熱分解+エステル、エーテル等の結合の加水分解
(2)
(2) 生成物再重合抑制効果
生成物再重合抑制効果
(3) In(3)
In
situ
(3) situでの水性ガスシフト反応による軽質化
での水性ガスシフト反応による軽質化
(3) InIn--situでの水性ガスシフト反応による軽質化
situでの水性ガスシフト反応による軽質化
(4) 環境調和型プロセス (4)
(4) 環境調和型プロセス 環境調和型プロセス (4) 環境調和型プロセス 低品位炭のクリーン化、軽質化および高付加価値
低品位炭のクリーン化、軽質化および高付加価値
化をめざした多機能・多目的プロセスの開発
化をめざした多機能・多目的プロセスの開発
27
背景背景
背景超臨界水とは
背景--超臨界水とは
圧力
MPa
融解曲線
臨界点
超臨界水
22
液体
蒸気圧曲線
固体
気体
三重点
昇華圧曲線
374
温度 ℃
28
参考資料1-14
技術動向調査
技術動向調査
○超臨界水と石炭に関する開発動向
■ 超臨界流体(有機溶媒)での抽出から、
超臨界水による抽出へ (1980年代~ 米、豪、独、中、日など)
1980年代~ 米、豪、独、中、日など)
■ 研究の目的は、燃料用途が主体
■ 試験規模は小規模で基礎レベルまで、
連続工学データはない
○中温・高圧に関する既存技術
■ 超臨界水中での汚泥排水処理プラント(~30t/d)
~400℃、25MPa
■ アンモニア合成プラント(>30万t/d) 約500℃、約50MPa
■ 重質油の直接脱硫プロセス(約1万m3/d) 350-425℃、12-20MPa
29
化学原料の市場性
化学原料の市場性
カテコール
バニリン 3000
バニリン 3000~
3000~3500円
3500円
O
バニリン
バニリン製造用の原料が
バニリン製造用の原料が
一番大きい用途
CHO
約半数が食品香料
約半数が食品香料として使用。
食品香料として使用。
(その他、医薬品など)
(代表的な香料)
・バニリン ・バニリン ・メントール
バニリン ・メントール
・リモネン ・その他
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
20
00
19
98
19
96
19
94
19
92
0
19
90
食品市場の変化に伴い、
食品香料の重要性が増し、
市場の成長が続いている。
4.5
19
88
食品香料
OMe
OH
食品香料の生産量(日本、万トン/年)
O
バニリン
4.9万トン/
4.9万トン/
5
日本における食品香料の生産量の推移
原料となるカテコールの重要性は今後も増すと考えられる
30
参考資料1-15
化学原料の将来市場
化学原料の将来市場
汎用エンプラ 400~
400~700円
700円/kg ~
高機能エンプラ 数1000
高機能エンプラ 数1000円
1000円/kg
エンジニアプラスチック
93万トン/年
93万トン/年
70
60
50
40
30
20
10
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
0
1992
今後も市場が増大すると考えられるとともに、
高機能、低コストな樹脂の開発により、
他の産業への適用が広がると考えられる。
80
1991
今後は、上記産業の海外移転に伴い、
東南アジア等での需要増が見込まれる
90
1990
高機能性が求められる分野において
ニーズがあり、成長市場である
エンプラの生産量(日本、万トン/年)
100
・ 自動車
・ 電気・電子機器
・ OA産業
産業
・ エンジニアプラスチックの
市場動向(日本)
31
開発目標
開発目標
見直し目標値(中間評価後)
2価フェノール類
OH
●改質炭性状:
・発熱量 6700
・発熱量 6700kcal/kg
6700kcal/kg(
kcal/kg(気乾)以上
・燃料比 1.0
・燃料比 1.0~
1.0~1.5
(微粉炭火力用に提供できる性状)
●2価フェノール類収率: 4
4%以上 (daf)
(daf
(daf = dry ash free)
(設定根拠)
・実用プロセスの成立する要件
(経済性等から) OH
・カテコール
・レゾルシノール
OH
OH
・ハイドロキノン
など
OH
OH
各種高付加価値化学品の
中間原料として使用される
32
参考資料1-16
背景背景
背景本プロセスの特徴
背景--本プロセスの特徴
経済性
コスト 高
製品の高付加価値化
褐炭液化
良
既存の改質
プロセス
低品位炭
改質プロセス
・プロセスの単純さ
・製品分離の容易さ
(主製品の種類が
少ない)
・蒸発法
乾燥・熱分解
重質油添加など
超臨界水
プロセス
・非蒸発法
CWM化、
化、
機械脱水など
製品の高付加価値化
製品の多様さ
33
試験と分担
試験と分担
(新日鐵化学)
原料炭
(三菱マテリアル)
精製
工程 生成油
超臨界水による
石炭転換
生成物の回収
化学原料
(三菱マテリアル、
産総研)
生成油
(三菱マテリアル、産総研)
残さ
(三菱マテリアル、宇部興産、
アドケムコ、住友金属)
34
参考資料1-17
開発項目と検討スケジュール試験と分担
開発項目と検討スケジュール
開発項目と検討スケジュール試験と分担
試験と分担
開発項目と検討スケジュール試験と分担
検討項目
H8
H 9 H10 H11 H12 H13
実施会社
1. 超臨界水による転換試験
(1) 基礎試験(石炭転換特性把握)
(a) 転換率(ガス、生成油、残渣の収率)
(b) 生成油特性(生成油の性状と各成分収率)
(c) 生成物の分離特性(減圧工程)
(d) 適用炭種の検討
三菱マテリアル
(2) 連続試験
(a) 要素試験
・基礎試験結果の確認
・設計基礎(F/S
・設計基礎(F/S用)データの取得
F/S用)データの取得
(b) システム試験
・システム検討(F/S
・システム検討(F/S用
F/S用)データの取得
産総研
宇部興産
アドケムコ
住友金属工業
2. 生成物の性状評価
・生成油の構造解析等
・生成油の構造解析等
・生成残渣(有効利用を含む)
3. 生成油の分離に関する検討
新日鐵化学
△:中間評価
35
試験・検討の手順
試験・検討の手順
●基礎試験
●基礎試験
・バッチ試験
10
ml
・バッチ試験 ((10ml
10ml
10ml)
ml)
ml))
・セミバッチ試験
・
・セミバッチ試験
セミバッチ試験((100
100ml)
ml)
・セミバッチ試験
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
プロセス概念
プロセス概念
●改質炭の評価
●改質炭の評価
●化学原料の精製法検討
●化学原料の精製法検討
プロセス概念
フロー組み立て
試験条件
(反応条件・分離条件)
●連続試験
●連続試験
・連続試験 (~1
・連続試験 (~
kg/h
・連続試験 (~1
kg/h)
・連続試験 (~11kg/h)
kg/h))
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
生成物性状
生成物性状
物質収支用データ
物質収支用データ
開発課題など
開発課題など
プロセス条件
(反応・分離条件)
収率、生成物性状
開発課題
●プロセス検討
F/S
●プロセス検討 ((F/S)
F/S)
F/S))
・
・プロセスフロー
プロセスフロー
・物質収支・熱収支
・物質収支・熱収支
・経済性
・経済性
・開発課題
・開発課題
36
参考資料1-18
基礎試験基礎試験
基礎試験目的
基礎試験--目的
●基礎試験
●基礎試験
●改質炭の評価
●改質炭の評価
●化学原料の精製法検討
●基礎試験
●化学原料の精製法検討
●基礎試験
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
・バッチ試験
(10ml)
・バッチ試験 (10ml)
プロセス概念
プロセス概念
・セミバッチ試験
・セミバッチ試験 (100
(100 ml)
ml)
・バッチ試験
10
ml
・バッチ試験 ((10ml
10ml
ml)
10ml)
ml))
・セミバッチ試験
・
・セミバッチ試験
セミバッチ試験((100
100ml)
ml)
・セミバッチ試験
プロセス概念
フロー組み立て
試験条件
(反応条件・分離条件)
基本特性(反応・分離)の把握
基本特性(反応・分離)の把握
基本特性(反応・分離)の把握
基本特性(反応・分離)の把握
プロセス条件
●連続試験
●連続試験
プロセス概念の検討
(反応・分離条件)
プロセス概念の検討
・連続試験 (~1kg/h)
F/S
・連続試験 (~1kg/h) 収率、生成物性状 ●プロセス検討
●プロセス検討 ((F/S)
F/S)
F/S))
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
生成物性状
生成物性状
物質収支用データ
物質収支用データ
開発課題など
開発課題など
・
・プロセスフロー
プロセスフロー
・物質収支・熱収支
・物質収支・熱収支
・経済性
・経済性
・開発課題
・開発課題
開発課題
37
基礎試験基礎試験
基礎試験基礎試験--試験装置
試験装置
CO +H
CO2+H2 2
or N2 2
or N2
モータ
試料供給槽
試料供給槽
TC
試料
CO2ガス
H2又はN2ガス
CO2 H2又は
ガス N2ガス
水供給槽
水供給
槽
バッチ装置(チューブボム)
水供給
ポンプ
水供給
ポンプ
PG
内容積 10
10cm
cm3程度
予熱器
予熱器
攪拌器
撹拌器
ヒータ
ヒータ
3
反応器(100cm ) 3
反応器(100
(100m
m)
反応器
(100
セミバッチ装置(オートクレーブ)
38
参考資料1-19
基礎試験基礎試験
基礎試験反応生成物
基礎試験-- 反応生成物
超臨界水中での石炭転換
100
における主な反応生成物
ガス
水溶性生成油
水不溶性生成油
残さ
・ ガス
・ ガス
(収率:約10
(収率:約
10
(収率:約10
(収率:約10~
10~
~20%
20%))
10~
・ 水溶性生成油
・ 水溶性生成油
(収率:
10
(収率:約
約10~
10~
~20%
20%))
10~
・ 水不溶性生成油
・ 水不溶性生成油
(収率:約10
(収率:約
10
(収率:約10
(収率:約10~
10~
~20%
20%))
10~
収率 (wt%-db)
80
60
40
420℃
25MPa
W/F=10
20
0
2min
5min
平均滞留時間
15min
・ 残さ ・ ・ 残さ 残さ ・ 残さ 平均滞留時間の影響
(収率:約50
(収率:約
50
60%
(収率:約50
50~
~60%)
60%)
(収率:約50~
50~
60%)) (420℃, 25MPa,水/石炭比=10,ヤルーン炭)
39
基礎試験基礎試験
基礎試験改質炭
基礎試験-- 改質炭
改質炭 : 残さ+水不溶性生成油
((反応温度)
反応温度
反応温度)
反応温度))
温度が高い(
温度が高い(420
温度が高い(
420
温度が高い(
温度が高い(420
420℃)方が石炭の改質が進み、
℃)方が石炭の改質が進み、
温度が高い(420℃)方が石炭の改質が進み、
420℃)方が石炭の改質が進み、
高発熱量の改質炭を得ることが可能
高発熱量の改質炭を得ることが可能
((水
石炭比)
石炭比
水/石炭比
/石炭比
石炭比)
石炭比))
水
水
水
水//石炭比の低いほうが、僅かに発熱量が高い
石炭比の低いほうが、僅かに発熱量が高い
((滞留時間)
滞留時間
滞留時間)
滞留時間))
滞留時間が長いほうが石炭の改質が進み高
滞留時間が長いほうが石炭の改質が進み高
滞留時間が長いほうが石炭の改質が進み高
滞留時間が長いほうが石炭の改質が進み高
発熱量化するが、改質炭の収率は低くなる
発熱量化するが、改質炭の収率は低くなる
((炭種、反応圧力) 影響は小さい
炭種、反応圧力
) 影響は小さい
炭種、反応圧力) 影響は小さい
炭種、反応圧力) 影響は小さい
40
参考資料1-20
基礎試験基礎試験
基礎試験石炭転換率と改質炭の収率
基礎試験-- 石炭転換率と改質炭の収率
○改質炭 (残さ+水不溶性生成油)
25MPa
25MPa
50
40
30
20
390℃
390℃, W/F=10
420℃
420℃, W/F=10
420℃
420℃, W/F=5
10
0
100
改質炭収率 (
改質炭収率 (wt%
wt%
wt%-db
db)
)
石炭転換率 (
石炭転換率 (%
%-db
db)
)
60
80
60
40
5
10
平均滞留時間 (min)
15
石炭転換率(ヤルーン炭)
390℃
390℃, W/F=10
420℃
420℃, W/F=10
420℃
420℃, W/F=5
20
0
0
25MPa
25MPa
0
5
10
平均滞留時間 (min)
15
改質炭の収率(ヤルーン炭)
41
基礎試験基礎試験
基礎試験石炭転換率と改質炭の収率
基礎試験-- 石炭転換率と改質炭の収率
○改質炭 (残さ+水不溶性生成油)
25MPa
25MPa
50
40
30
20
390℃
390℃, 水/石炭比=10
石炭比=10
420℃
420℃, 水/石炭比=10
石炭比=10
420℃
420℃, 水/石炭比=5
石炭比=5
10
0
100
改質炭収率 (
改質炭収率 (wt%
wt%
wt%-db
db)
)
石炭転換率 (
石炭転換率 (%
%-db
db)
)
60
80
60
40
5
10
平均滞留時間 (min)
15
石炭転換率(ヤルーン炭)
390℃
390℃, 水/石炭比=10
石炭比=10
420℃
420℃, 水/石炭比=10
石炭比=10
420℃
420℃, 水/石炭比=5
石炭比=5
20
0
0
25MPa
25MPa
0
5
10
平均滞留時間 (min)
15
改質炭の収率(ヤルーン炭)
42
参考資料1-21
基礎試験基礎試験
基礎試験改質炭の発熱量
基礎試験-- 改質炭の発熱量
7500
390℃
390℃
25MPa
25MPa
水/石炭比=10
石炭比=10
発熱量 (
発熱量 (kcal/kg
kcal/kg
kcal/kg-db
db)
)
発熱量 (
発熱量 (kcal/kg
kcal/kg
kcal/kg-db)
7500
7000
6500
6000
2min
420℃
420℃
25MPa
25MPa
水/石炭比=10
石炭比=10
7000
6500
6000
5min
15min
min
15
平均滞留時間
2min
5min
15min
15
min
平均滞留時間
平均滞留時間の影響
平均滞留時間の影響
(390℃
390℃, W/F=10,ヤルーン炭)
W/F=10,ヤルーン炭)
(420℃
420℃, W/F=10,ヤルーン炭)
W/F=10,ヤルーン炭)
43
基礎試験基礎試験
基礎試験改質炭の発熱量
基礎試験-- 改質炭の発熱量
7500
420℃
420℃
25MPa
25MPa
水/石炭比=5
石炭比=5
発熱量 (
発熱量 (kcal/kg
kcal/kg
kcal/kg-気乾)
発熱量 (
発熱量 (kcal/kg
kcal/kg
kcal/kg-気乾)
7500
7000
7000
6500
6000
420℃
420℃
25MPa
MPa
25
5min
6500
5min
10min
10
min
6000
平均滞留時間
平均滞留時間の影響
W/F=5
W/F=10
水/石炭比
水石炭比の影響
44
参考資料1-22
基礎試験基礎試験
基礎試験価フェノール類の収率
フェノール類の収率
基礎試験-- 22価
6
他2価
カテコール
5
収率 (wt%)
((炭種)
炭種
炭種)
炭種))
若い石炭(褐炭)、特に豪
若い石炭(褐炭)、特に豪
若い石炭(褐炭)、特に豪
若い石炭(褐炭)、特に豪
州ヤルーン炭の収率が高い
州ヤルーン炭の収率が高い
((反応温度)
反応温度
反応温度)
反応温度))
420
420℃
420
420
420℃
℃で収率が最も高い
で収率が最も高い
420℃
((圧力)
圧力
圧力)
圧力))
超臨界圧
超臨界圧(
25
以上
超臨界圧
MPa
超臨界圧
超臨界圧(
25MPa
MPa)
以上で
で
超臨界圧((25MPa
25MPa)
MPa))以上で
以上で
収率が増加
収率が増加
((水
石炭比)
石炭比
水/石炭比
/石炭比
石炭比)
石炭比))
高いほど収率が増加
高いほど収率が増加
((滞留時間)
滞留時間
滞留時間)
滞留時間))
長いほど収率が増加
長いほど収率が増加
4
3
2
1
0
バンコ
ロイヤング ヤルーン
炭種
炭種の影響
(420℃
420℃, 25MPa
25MPa,
MPa, 水/石炭比=15,
石炭比=15, 30min
30min)
min)
45
基礎試験基礎試験
基礎試験価フェノール類の収率
フェノール類の収率
基礎試験-- 22価
4
他2価
カテコール
他2価
カテコール
収率 (wt%)
収率 (wt%)
2
1
3
2
1
0
0
380℃
380℃
420℃
420℃
温度
10MPa
10
MPa 20MPa
20MPa 25MPa
25MPa
450℃
450℃
圧力
温度の影響
圧力の影響
(25MPa
25MPa,
石炭=5, 5min,
5min,ヤルーン炭)
MPa,水/石炭=
min,ヤルーン炭)
(420℃
420℃,水/石炭=
石炭=15, 15min,
15min, ヤルーン炭)
46
参考資料1-23
基礎試験基礎試験
基礎試験価フェノール類の収率
フェノール類の収率
基礎試験-- 22価
6
6
収率 (wt%)
収率 (wt%)
4
3
2
3
2
1
0
0
15min
15min
カテコール
4
1
5min
他2価
5
他2価
カテコール
5
W/F=5
W/F=15
水/石炭比
30min
30min
滞留時間
滞留時間の影響
水/石炭比の影響
(420℃
420℃, 25MPa
25MPa ,水/石炭比=15,
石炭比=15, ヤルーン炭)
(420℃
420℃,25MPa
,25MPa,30min,
MPa,30min,ヤルーン炭)
,30min,ヤルーン炭)
47
基礎試験基礎試験
基礎試験超臨界水転換反応
基礎試験-- 超臨界水転換反応
熱分解
加水分解
OH
OH
(エーテル結合など)
褐炭
OH
OH
H2 O
OH
OH
OH
CH3
化学原料など(水溶性生成油)
OMe
OMe
褐炭中リグニン
類似物質 H2O
熱分解
H2 O
O
OH
H2 O
H2 O
脱水
脱酸素
HO
H2 O
高含水分
高含酸素
+
OH
残さ
改質炭
H2 O
水不溶性生成油
・高発熱量
(低水分・低酸素)
H2O、CO2、CH4 など
48
参考資料1-24
基礎試験基礎試験
基礎試験超臨界水転換反応検討の例
基礎試験-- 超臨界水転換反応検討の例
クマラン誘導体の
超臨界処理による
生成物
試験条件
温度:
380,430,480℃
380,430,480℃
圧力: 30MPa
30MPa
カテコール
49
連続試験連続試験
連続試験目的
連続試験--目的
●基礎試験
●基礎試験
●改質炭の評価
●改質炭の評価
●化学原料の精製法検討
●化学原料の精製法検討
・連続試験 (~1kg/h)
・連続試験 (~1kg/h)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
・バッチ試験
・バッチ試験 (10ml)
(10ml)
・セミバッチ試験
(100
・セミバッチ試験
(100ml)
ml)
●連続試験
●連続試験
プロセス概念
プロセス概念
・・分離方法の検討
試験条件 ・
・
分離方法の検討プロセス概念
フロー組み立て
(反応条件・分離条件)
・反応・分離特性の確認
反応・分離特性の確認
・反応・分離特性の確認
反応・分離特性の確認
プロセス条件
・生成物性状の確認
●連続試験
・生成物性状の確認
●連続試験
(反応・分離条件)
・連続試験 (~1kg/h)
●プロセス検討 (F/S)
F/S
・連続試験 (~1kg/h)
・物質収支用データの収集
F/S))
・物質収支用データの収集
収率、生成物性状 ●プロセス検討 (F/S)
・
プロセスフロー
開発課題
・プロセスフロー
・開発課題の抽出など
・開発課題の抽出など
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
・物質収支・熱収支
生成物性状
生成物性状
物質収支用データ
物質収支用データ
開発課題など
開発課題など
・物質収支・熱収支
・経済性
・経済性
・開発課題
・開発課題
50
参考資料1-25
連続運転試験連続運転試験
連続運転試験分離方法の検討
連続運転試験-- 分離方法の検討
1価フェノール類・水
石炭・水
気体(水蒸気)
水・
熱のリサイクル
石炭
反応
水
分離
気液分離 (分離2)
反
応
器
液体
気体
(水・生成油)
水・生成油)
2価フェノール類
2価フェノール類
濃縮液
濃縮液
固気分離 (分離1)
改質炭
精製
改質炭
改質炭
固体
化学原料
・残さ
・水不溶性生成油
51
連続試験連続試験
連続試験試験装置フロー図
連続試験-- 試験装置フロー図
石炭
H2 O
粉砕・
混合機
石炭スラリ
~1 kgkg-coal/h
主反応器
分離器1
分離器2
(固気分離)
(気液分離)
石炭スラリ
貯槽
H2 O
⑤ガス
冷却器
水貯槽
水予熱器
水
~20 kg/h
① 改質炭 ②改質炭
生成油
③生成油 ④ 水
(+生成油)
52
参考資料1-26
外寸)
260 ((外寸)
200
(内寸)
連続試験連続試験
連続試験試験装置外観
連続試験-- 試験装置外観
80(ID)
80(ID)
180(OD)
180(
OD)
連続試験装置の外観
反応器の外観
53
連続試験連続試験
連続試験分離1(改質炭の回収)
連続試験-- 分離1(改質炭の回収)
水溶性
生成油
水不溶性
生成油
360℃
360℃
15MPa
15
MPa
●
●反応後の生成物か 反応後の生成物か 残さ
100
100%
%
← 改質炭として回収
100%
%
100
分離2へ →
分離1 360
15MPa
MPa条件での移行挙動
分離1 360℃、
360℃、15
℃、15
MPa条件での移行挙動
水溶性
生成油
水不溶性
生成油
300℃
300℃
8MPa
残さ
100
100%
%
← 改質炭として回収
100%
%
100
分離2へ →
ら、残さと水不溶性
ら、残さと水不溶性
生成油を同時に回 生成油を同時に回 収できる。
収できる。
●
●300~360℃、8~15
300~360℃、8~15
MPa)範囲内で効率 MPa)範囲内で効率 的に改質炭と水・1価
的に改質炭と水・1価
2価フェノール類(水溶性
2価フェノール類(水溶性
生成油)を分離でき 生成油)を分離でき る。
る。
分離1 300
分離1 300℃、
300℃、8
℃、8MPa条件での移行挙動
MPa条件での移行挙動
54
参考資料1-27
連続試験連続試験
連続試験分離1 改質炭の回収
連続試験-- 分離1 改質炭の回収
褐炭(粗粉砕後)
改質炭
ガス
水溶性生成油
水溶性生成油
水不溶性生成油
水不溶性生成油
残さ
水溶性生成油
水溶性生成油
55
連続試験連続試験
連続試験分離2 2価フェノール類の回収
連続試験-- 分離2 2価フェノール類の回収
2価フェノール
(水溶性生成油)
1価フェノール
(水溶性生成油)
水不溶性生成油
235℃、
235℃、3
℃、3MPa
水
100
100%
%
← 液相(精製工程へ)
100%
%
100
ガス相 →
分離2 235
分離2 235℃、
235℃、3
℃、3MPa条件での移行挙動
MPa条件での移行挙動
2価フェノール
(水溶性生成油)
1価フェノール
(水溶性生成油)
水不溶性生成油
180℃、
180℃、1
℃、1MPa
水
100
100%
%
← 液相(精製工程へ)
100%
100
%
●2価フェノールの ●2価フェノールの ほぼ全量が液側に
ほぼ全量が液側に
濃縮回収される。
濃縮回収される。
●1価フェノール類 ●1価フェノール類 は水蒸気とともに は水蒸気とともに ガス側に移行しや
ガス側に移行しや
すく、2価フェノール
すく、2価フェノール
類の分離が良好で
類の分離が良好で
ある。
ある。
ガス相 →
分離2 180
分離2 180℃、
180℃、1
℃、1MPa条件での移行挙動
MPa条件での移行挙動
参考資料1-28
56
連続試験連続試験
連続試験不純物金属の移行挙動
連続試験-- 不純物金属の移行挙動
プロセス内を循環
プロセス水
:水・生成物の流れ
:不純物元素の流れ
水
石炭
分離1
反応
分離2
分離精製
改質炭へ
改質炭として
回収
化学原料
改質炭
Hg
供給石炭中の
不純物含有量
0.04 mg/kg
Pb
0.7 mg/kg
Se
0.33 mg/kg
Cr
22 mg/kg
分離1で回収
0
20
分離2で回収
プロセス水へ移行
40
60
収支 (%)
80
100
石炭より抜けた
不純物は、改質
炭として再回収、
一部は系内循環・
蓄積し、プロセス
水へ移行
57
改質炭の評価
改質炭の評価
●基礎試験
●基礎試験
●改質炭の評価
●改質炭の評価
●改質炭の評価
●改質炭の評価
・バッチ試験
・バッチ試験 (10ml)
(10ml)
・セミバッチ試験
・セミバッチ試験(100
(100ml)
ml)
1.燃料炭としての評価
●化学原料の精製法検討
1.燃料炭としての評価
●化学原料の精製法検討
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
・性状調査
・性状調査
プロセス概念
プロセス概念
・灰の性状調査
・灰の性状調査 プロセス概念
試験条件
フロー組み立て
(反応条件・分離条件) ・粒度分布の計測
・粒度分布の計測
プロセス条件
●連続試験
●連続試験 ・燃焼性評価
・燃焼性評価
(反応・分離条件)
・連続試験 (~1kg/h)
F/S
・連続試験 (~1kg/h) 収率、生成物性状 ●プロセス検討
●プロセス検討 ((F/S)
F/S)
F/S))
・発熱性評価
・発熱性評価
・
プロセスフロー
開発課題
・プロセスフロー
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
・物質収支・熱収支
2.他の利用方法の検討
・物質収支・熱収支
2.他の利用方法の検討
生成物性状
生成物性状
・経済性
・経済性
物質収支用データ
●化学原料の精製法検討
物質収支用データ
・開発課題
●化学原料の精製法検討
・開発課題
開発課題など
開発課題など
58
参考資料1-29
改質炭の評価改質炭の評価
改質炭の評価改質炭性状
改質炭の評価-- 改質炭性状
原炭
スラリー
原炭
工
業
分
析
元
素
分
析
収率
水分
灰分
揮発分
固定炭素
燃料比
発熱量
灰分
炭素
水素
酸素
窒素
燃焼性硫黄
全硫黄
%,無水ベース
%,気乾ベース
%,気乾ベース
%,気乾ベース
%,気乾ベース
-
kcal/kg,気乾
kcal/kg,daf
%,無水ベース
%,無水ベース
%,無水ベース
%,無水ベース
%,無水ベース
%,無水ベース
%,無水ベース
-
低温処理炭 高温処理炭
390℃
420℃
25MPa
25MPa
100
18.5
1.7
42.6
37.2
0.87
4870
6100
2.1
64.7
4.0
28.2
0.7
0.26
0.43
19.1
1.6
42.6
36.7
0.86
4920
6200
2.0
65.4
4.0
27.9
0.6
0.05
0.19
77
7.0
2.3
41.0
49.7
1.21
6350
7000
2.5
72.4
4.4
19.5
0.9
0.29
0.47
70
6.7
2.1
37.4
53.8
1.44
6460
7080
2.3
73.9
4.2
18.4
0.9
0.29
0.46
高温処理2
420℃
25MPa
滞留時間長
65
5.7
2.7
35.1
56.5
1.61
6900
7530
2.8
79.7
3.9
12.9
0.7
0.04
0.19
(平均滞留時間) 5分 5分 15分
59
改質炭の評価改質炭の評価
改質炭の評価改質炭灰の性状
改質炭の評価-- 改質炭灰の性状
原炭
SiO2
Al2O3
Fe2O3
灰 CaO
の MgO
化 SO3
学 P2O5
組 TiO2
成 Na2O
K2O
V2O5
NiO2
MnO
%
%
%
%
%
%
%
%
%
%
%
%
%
1.23
4.56
48.62
11.16
10.83
17.23
0.14
0.09
2.79
0.70
0.00
0.09
0.62
原炭
スラリー
1.02
5.06
44.50
10.58
11.49
19.70
0.16
0.14
3.19
0.54
0.00
0.16
0.62
低温処理炭 高温処理炭
390℃
420℃
25MPa
25MPa
1.08
5.53
45.05
9.43
10.83
17.63
0.13
0.14
2.18
0.40
0.00
0.16
0.66
1.52
4.28
47.38
9.88
11.17
18.08
0.13
0.12
2.61
0.55
0.00
0.19
0.68
60
参考資料1-30
改質炭の評価改質炭の評価
改質炭の評価改質炭の粒度分布
改質炭の評価-- 改質炭の粒度分布
原料・試料の粒度分布
25
20
高温処理
頻度(%)
低温処理
15
10
原炭スラリ
5
0
1
10
粒径(μ
粒径(μm)
原炭スラリ
平均径
μm
500μm 通過%
150μm 通過%
75μm 通過%
12.6
99.6
99.6
99.6
100
1000
高温処理 低温処理
9.4
100.0
100.0
100.0
6.4
100.0
100.0
99.9
61
改質炭の評価改質炭の評価
改質炭の評価改質炭の燃焼性
改質炭の評価-- 改質炭の燃焼性
TGによる燃焼性比較
原炭
低温処理
高温処理
インドネシア炭
豪州炭
中国炭
PCPC-A
PCPC-B
重量減量率(%)
100
80
60
40
20
0
100
200
300
400
温度(℃)
500
比較用石炭・石油コークスの分析値
工
業
分
析
水分
灰分
揮発分
固定炭素
燃料比
発熱量
全硫黄
%,気乾ベース
%,気乾ベース
%,気乾ベース
%,気乾ベース
-
kcal/kg,気乾
kcal/kg,気乾
%,無水ベース
インドネシア
亜瀝青炭
4.3
11.8
42.2
41.7
0.99
6740
0.79
600
測定条件
試料量: 約1mg
試料粒径:150~90
試料粒径:150~90μ
150~90μm
700 10℃/min
昇温速度:10℃/min
昇温速度:
雰囲気: 酸素21%,窒素79%
ガス流量: 150ml/min
超臨界水処理 改質炭
豪州
中国
石油コークス 石油コークス
瀝青炭 半無煙炭
A
B
3.6
1.2
-
-
12.5
3.1
0.2
16.0
11.0
31.5
11.4
12.1
52.4
84.8
88.8
71.4
1.66
6.26
7.01
8.07
6840
7000
8540
8190
0.43
0.41
5.75
6.44
石油コークスの分析値は無水ベース
高温処理
低温処理
6.7
2.1
37.4
53.8
1.44
6460
0.46
7.0
2.3
41.0
49.7
1.21
6350
0.47
62
参考資料1-31
20
15
10
中国
難発熱性
豪州
標準的
高温
高温H12
H12
中国
易発熱性
豪州
易発熱性
高温改質
インドネシア
易発熱性
低温改質
低温
低温H12
H12
原炭
原炭H13
H13
原炭
原炭H12
H12
5
0
中国
難発熱性
豪州
標準的
中国
易発熱性
豪州
易発熱性
高温
高温H12
H12
インドネシア
易発熱性
高温処理
低温処理
原炭
原炭H13
H13
低温酸化熱量(120
120℃)
℃)
低温酸化熱量(120
80
70
60
50
40
30
20
10
0
低温
低温H12
H12
酸化熱量
酸化熱量((J/g)
低温酸化熱量(80
低温酸化熱量(80℃)
80℃)
25
原炭
原炭H12
H12
酸化熱量(
酸化熱量(J/g)
J/g)
改質炭の評価改質炭の評価
改質炭の評価改質炭の発熱性
改質炭の評価-- 改質炭の発熱性
63
改質炭の評価改質炭の評価
改質炭の評価燃料炭としての評価
改質炭の評価-- 燃料炭としての評価
●瀝青炭なみの発熱量
●瀝青炭なみの発熱量
●原炭同様、低灰分、低
●原炭同様、低灰分、低
硫黄、低窒素
硫黄、低窒素
●平均径10μm以下の
●平均径10μm以下の
微粉
微粉
●灰中の塩基性成分が
●灰中の塩基性成分が
多い 多い →スラッギング、ファウリング
→スラッギング、ファウリング
●燃焼性は良好
●燃焼性は良好
●自然発熱性は原炭に
●自然発熱性は原炭に
比べ改善
比べ改善
●ボイラ、セメントキル
●ボイラ、セメントキル
ン等の燃料、ガス化
ン等の燃料、ガス化
原料として好適
原料として好適
●ハンドリング性を高 ●ハンドリング性を高 めるためブリケット めるためブリケット 化が必要
化が必要
●一般炭とブレンド(最
●一般炭とブレンド(最
大30%混焼)使用す
大30%混焼)使用す
ることにより、スラッギ
ることにより、スラッギ
ング性、ファウリング性、
ング性、ファウリング性、
自然発熱性が改善
自然発熱性が改善
64
参考資料1-32
改質炭の評価改質炭の評価
改質炭の評価その他の利用方法
改質炭の評価-- その他の利用方法
利用例
検討結果
チャーに光触媒(酸化チタン)を担持
し、ベンゼンの分解試験を実施
ベンゼンなどの排水
処理用浄化触媒
ベンゼンのCO
ベンゼンのCO2への転化率は、目標
値20%以上に対し、
20%以上に対し、30
%以上に対し、30%を達成
30%を達成
改質炭を水蒸気賦活処理することに
より、活性炭としての吸着特性を評価
活性炭
比表面積が1500
比表面積が1500~
1600m2/g程度の
/g程度の
1500~1600m
市販品と同等レベル
65
化学原料の精製法の検討
化学原料の精製法の検討
●基礎試験
●基礎試験
・セミバッチ試験
・セミバッチ試験(100
(100ml)
ml)
●改質炭の評価
●改質炭の評価
●化学原料の精製法検討
●改質炭の評価
●改質炭の評価 ●化学原料の精製法検討
・バッチ試験
・バッチ試験 (10ml)
(10ml)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
プロセス概念
プロセス概念
●化学原料の精製法検討
●化学原料の精製法検討
プロセス概念
試験条件
精製方法(蒸留、再結晶)の検討
精製方法(蒸留、再結晶)の検討
フロー組み立て
(反応条件・分離条件)
精製プロセスの構築
プロセス条件
精製プロセスの構築
●連続試験
●連続試験
・連続試験 (~1kg/h)
・連続試験 (~1kg/h)
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
生成物性状
生成物性状
物質収支用データ
物質収支用データ
開発課題など
開発課題など
(反応・分離条件)
収率、生成物性状
開発課題
●プロセス検討
F/S
●プロセス検討 ((F/S)
F/S)
F/S))
・
・プロセスフロー
プロセスフロー
・物質収支・熱収支
・物質収支・熱収支
・経済性
・経済性
・開発課題
・開発課題
66
参考資料1-33
化学原料精製化学原料精製
化学原料精製粗油の組成
化学原料精製-- 粗油の組成
1価フェノール類・水
粗油の組成例
石炭
気液分離
(分離2)
反
応
器
水
2価フェノール類濃縮液
液体
固気分離
(分離1)
固体
改質炭
SCWプロセス
SCWプロセス
[wt%]
粗油
カテコール
56
レゾルシノール
6
ハイドロキノン
11
3-メチルカテコール
5
4-メチルカテコール
14
水溶性油 (沸点>300
水溶性油 (沸点>300℃)
300℃)
8
全量
100.0
分離精製
化学製品
カテコール等
・蒸留法の適用性
・再結晶法の適用性
・分離プロセスおよびコスト
主成分であるカテコー
ルについて主に検討
67
化学原料精製化学原料精製
化学原料精製精製方法
化学原料精製-- 精製方法
・ カテコールは蒸留で濃縮できるが、沸点の近いメチルカテコール類含まれる
カテコールは蒸留で濃縮できるが、沸点の近いメチルカテコール類含まれる。
カテコールは蒸留で濃縮できるが、沸点の近いメチルカテコール類含まれる
・ 再結晶法で精製することにより、高純度のカテコール(工業用レベル)を高回
再結晶法で精製することにより、高純度のカテコール(工業用レベル)を高回
収率で得ることが可能である。
減圧蒸留
減圧蒸留
<蒸留条件>圧力:30
蒸留条件>圧力:30mmHg,
30mmHg,温度:
mmHg,温度:100
温度:100100-180℃
180℃,昇温速度:3
昇温速度:3℃/min
Catechol
蒸留後
組成
87.7
44-Methyl
3.8
33-Methyl Resorcinol Hydroquinone
8.5
0
0
蒸留物
再結晶
再結晶
溶媒 溶質/溶媒比
A Toluene
0.2 0.2 B
Toluene
0.3
温度℃ 再結晶操作
60 60 1
1 50
2
純度%
純度% 回収率%
>98
>98 98 78
>98 98 70
70
分離精製プロセス : 減圧蒸留+再結晶(1回)
分離精製プロセス : 減圧蒸留+再結晶(1回)
参考資料1-34
68
化学原料精製化学原料精製
化学原料精製精製プロセス
化学原料精製-- 精製プロセス
溶剤
溶 剤回収 塔
脱ピッチ塔
精製蒸留塔
M
Catechol
フレ-カ-
原料タンク
溶解槽
遠心分離器
真空乾燥器
Catechols
Resorcinol
Hydroquinone
< 300℃
300℃
69
基礎試験、連続試験基礎試験、連続試験
基礎試験、連続試験まとめ
基礎試験、連続試験-- まとめ
1. 1. F/S検討に必要なデータ取得、および検討を実施
F/S検討に必要なデータ取得、および検討を実施
・ 石炭分解(転換反応)条件の把握・確認
・ 生成物(改質炭、2価フェノール類等)の特性把握・確認
・ 改質炭性状の把握
・ 生成物回収方法・条件の把握
・ 不純物挙動の把握
・ 化学原料精製プロセスの検討
2. 低品位炭を超臨界水処理し、
2. 低品位炭を超臨界水処理し、2
低品位炭を超臨界水処理し、2価フェノール類(高付加価値
化学原料)および改質炭を製造するプロセスの構築が可能
70
参考資料1-35
基礎試験、連続試験基礎試験、連続試験
基礎試験、連続試験まとめ
基礎試験、連続試験-- まとめ
目標値の達成度
2価フェノール類収率
改質炭性状
・発熱量
・燃料比 目標値
試験結果
4%以上(
%以上(daf)
daf)
5.4%以上
5.4%以上(
daf)
%以上(daf)
6700kcal/kg(
6700kcal/kg(気乾) 7200kcal/kg(
7200kcal/kg(気乾)
以上
1.0~
1.5
1.0~1.5
条 件
温度 : 420
温度 : 420℃
420℃
圧力 : 25
25MPa
圧力 : 25MPa
水/石炭比 : 15
滞留時間 : 30 min
--
71
システム化調査
システム化調査
●基礎試験
●基礎試験
・バッチ試験
・バッチ試験 (10ml)
(10ml)
・セミバッチ試験
・セミバッチ試験(100
(100ml)
ml)
●改質炭の評価
●改質炭の評価
●化学原料の精製法検討
●化学原料の精製法検討
●プロセス検討
F/S
●プロセス検討 ((F/S)
F/S)
F/S))
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
基本特性(反応・分離)
プロセス概念
プロセス概念
・プロセスフローの検討
・
・プロセスフローの検討
プロセスフローの検討
・プロセスフローの検討
プロセス概念
試験条件
・物質収支・熱収支の検討
フロー組み立て
・物質収支・熱収支の検討
(反応条件・分離条件)
・経済性の評価
・経済性の評価
プロセス条件
●連続試験
●連続試験
22排出量とエネルギー収支の検討
・CO
CO
・
(反応・分離条件)
排出量とエネルギー収支の検討
・CO
CO
・
・連続試験 (~1kg/h)
F/S
・連続試験 (~1kg/h) 収率、生成物性状 ●プロセス検討
●プロセス検討 ((F/S)
F/S)
F/S))
・開発課題の抽出
・
プロセスフロー
・開発課題の抽出
・開発課題の抽出
・開発課題の抽出
開発課題
・プロセスフロー
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
特性確認(反応・分離)
生成物性状
生成物性状
物質収支用データ
物質収支用データ
開発課題など
開発課題など
・物質収支・熱収支
・物質収支・熱収支
・経済性
・経済性
・開発課題
・開発課題
72
参考資料1-36
システム化調査システム化調査
システム化調査プロセスフローの検討
システム化調査-- プロセスフローの検討
石炭
ガス処理
スラリ化
気液分離
リサイクル水
予熱
反応
酸化
分離1
油水
分離
分離2
精製
ブリケット化
O2
化学原料
廃水処理
改質炭
実用化プロセスフローの概念
73
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
システム化調査システム化調査
システム化調査プロセスフロー図
システム化調査-- プロセスフロー図
A
15
16
A
排ガス
B
生褐炭供給
リサイクル水(*1)
X-701
P-502
スチーム(*2)
C
B
ガス処理
X-101
気液分離
V-501
冷却水
スチーム(*2)
C
ドライヤー
D-101
蒸発水
B-501
冷却器
D
*3,*4
H-102
*10
*10
熱交換器
H-501
水処理
X-801
*7,*10
水 *8
褐炭供給
X-102
*7
D
*6
回収水受槽
排水
V-502
E
冷却水
E
排水受槽
V-801
スチーム(*2)
P-801
リサイクル水(*1)
水 *8
F
F
昇圧ポンプ
スラリ調製
P-101
M-101
スラリ予熱
分離器2
H-101
*10
S-420
B-301
P-501
B-401
分離器1
S-410
スチーム(*2)
水昇圧ポンプ
G
G
P-301
反応器
リサイクル水(*1)
R-301
B-411
油水分離
熱交換器
*10
H
V-420
H-203
H
*4
脱水
*3
固体回収槽
D-420
B-412
V-410
熱交換器
スチーム(*2)
H-202
I
B-420
B-421
加熱炉
ブリケットマシン
H-201
I
化学原料精製
X-901
X-410
J
J
化学原料
*6
酸化反応器
B-601
X-601
K
*10
熱媒受槽
循環ポンプ
V-201
P-201
カテコール
レゾルシノール
ハイドロキノン
改質炭
K
酸素PSA
X-601
酸素コンプレッサー
K-601
超臨界水中石炭転換プロセスフロー
参考資料1-37
74
システム化調査システム化調査
システム化調査化学原料収率と経済性
システム化調査-- 化学原料収率と経済性
<目標値>
<目標値>
22価フェノール類収率:4%
価フェノール類収率:
4%
以上
daf
価フェノール類収率:4%
4%以上
以上(
daf)
価フェノール類収率:4%以上
4%以上(
以上((daf)
daf))
2.00
80
1.75
70
1.50
60
1.25
50
1.00
40
0.75
30
0.50
価フェノール類収率:約
3%(
daf
20 22価フェノール類収率:約2
価フェノール類収率:約2
~3%(daf
3%(daf
daf)
価フェノール類収率:約22~
3%(daf)
daf))
0.25
10
0.00
・建設費 大
・熱効率 小
・経済性 低
熱効率 (%)
化学原料製造単価
化学原料製造単価/
/プラント建設費
化学原料製造単価 プラント建設費 熱効率
0
1
2
3
4
5
2価フェノール類収率 (%)
6
*)化学原料製造単価、プラント建設費
*)化学原料製造単価、プラント建設費 :
2価フェノール類収率4.5%
価フェノール類収率4.5%での値を
4.5%での値を 1 とした場合
目標値は満足しないが、熱効率が高く、かつ経済性(化学原
目標値は満足しないが、熱効率が高く、かつ経済性(化学原
料製造単価が安価)に優れた、より有利な条件として選定
料製造単価が安価)に優れた、より有利な条件として選定
75
システム化調査システム化調査
システム化調査経済性評価条件
システム化調査-- 経済性評価条件
反応条件
分離1
分離1条件
(改質炭回収)
改質炭回収)
分離2
分離2条件
(2価フェノール回収)
温度
420℃
420℃
圧力
25MPa
25MPa
水/石炭比
石炭転換率、2価フェノール
収率より決定
5
装置・機器サイズの小型化
平均滞留時間
10min
10min
改質炭の高カロリー化
温度
360℃
360℃
2価フェノールの回収率より
圧力
15MPa
15MPa
温度
235℃
235℃
圧力
3MPa
熱回収率より
76
参考資料1-38
システム化調査システム化調査
システム化調査物質収支
システム化調査-- 物質収支
処理量
1000 ton/day
水/石炭
処理
排ガス
5
排水A
蒸発水B
⑦
ガス (Nm3/h)
CO2
6173
N2
334
H2
108
CH4
378
CO
486
C2C3
594
H2S
5
total
8073
~2000 kcal/Nm3
石炭
スラリ水
⑧
気液分離
排水B
乾燥
スラリ水
スラリ化
処理
リサイクル水
①
350℃
15MPa
②
リサイクル水
③
予熱
酸化
⑤
反応
分離1
420℃
25MPa
分離2
⑥WS粗油
脱水
油水分離
250℃
4MPa
排水A
精製
・カテコール
・レゾルシノール
・ハイドロキノン
蒸発水B
排水C
④改質炭
排水B
石炭
水
残渣
WI生成油
WS生成油
ガス
total
カテコール
他2価
1価フェノール
その他WS油
①
スラリ
(t/d)
1000
1222
②
水
(t/d)
③
④
⑤
反応物 改質炭 分離液
(t/d)
(t/d)
(t/d)
3841
18
60
2240
3901
5000
560
125
90
225
6000
0.2
0.1
1.7
15.6
0.5
0.4
5.8
53.3
15.5
10.1
6.5
57.9
36
560
124
2
0
723
⑥
粗油
(t/d)
485
0
37
31
0
553
0
0
0
26
0
26
14.2
9.3
0.7
6.8
14.2
9.3
0.2
1.8
⑦
ガス
(t/d)
0
0
0
0
345
345
⑧
回収水
(t/d)
4964
0
1
78
0
5042
⑨
排水
(t/d)
排水C
⑨
排水
水処理
2019
排水C
水
WI
WS
(t/d)
117
0.0
0.5
排水
水
(t/d)
2019
元素
(ppb)
Hg
<0.1
Pb
0
Cr
3
Se
4
*) 計算最大濃度
2019
0.7
0.5
7.5
68.9
77
システム化調査システム化調査
システム化調査熱収支の検討
システム化調査-- 熱収支の検討
本プロセスの熱収支をエネルギー(改質炭)製造の観点から検討
(処理炭 1 tonton-dryあたり)
dryあたり)
入熱:32,900
入熱:32,900 MJ
熱回収
原料:25,000
原料:25,000 MJ
反応
反応
分離
分離
加熱:7,000
加熱:7,000 MJ
その他:900
その他:900 MJ
改質炭:21,000
改質炭:21,000 MJ
ロス・その他:11,900
ロス・その他:11,900 MJ
(製品化学原料等を含む)
改質炭基準のエネルギー効率=
改質炭熱
× 100 = 64
total入熱
入熱
total
%
比較例) 褐炭液化 57
比較例) 褐炭液化 57∼
57∼67%、褐炭生焚き発電 67%、褐炭生焚き発電 75%
、褐炭生焚き発電 75%
78
参考資料1-39
システム化調査システム化調査
システム化調査経済性検討<前提条件>
システム化調査-- 経済性検討<前提条件>
●前提条件
・処理量 1,000 t/d (
t/d、
t/d)
t/d (4,000
(4,000 t/d
、20,000 t/d
)
・減価償却 減価償却 15year
・
15year
・産炭地立地 (豪州、ビクトリア州)
・保全率 ・保全率 設備費の3%
・対象炭:ヤルーン炭
・管理費 製造費の5%
・人件費 500万円/人
500万円/人
・電力 5円/kWh
円/kWh
・120
・120円=
120円=1
円=1US$として換算 総製造費
収 入
改質炭
化学原料
・カテコール
・レゾルシノール
・ハイドロキノン
・固定費
(人件費、減価償却費、保全費等)
・変動費
(原料費、電力費、薬剤費等)
79
システム化調査システム化調査
システム化調査プラント建設費
システム化調査-- プラント建設費
●建設費の検討
(検討範囲 : 石炭受入~製品 (分離精製を含む) )
○1,000t
1,000t/dプラントの建設費は、133億円
建設費算出のための係数
(石油精製プロセスを参考に設定)
費目
建設費の内訳 (1,000
建設費の内訳 (1,000 t/dの
t/dの場合)
係数
項目
割合
機器
100.0
水供給系
昇圧ポンプ、予熱器、加熱炉など
15%
配管
保温・被覆
据付
土木・建築
電気
計装
その他
60.0
6.8
9.0
24.2
10.0
26.0
1.2
石炭供給系
乾燥機、粉砕機など
20%
反応分離系
反応器、分離器1、分離器2など
25%
回収精製系
改質炭回収、化学原料精製など
25%
処理系
水処理、ガス処理など
15%
total
237.2
計 100%
80
参考資料1-40
システム化調査システム化調査
主要機器サイズの例
システム化調査主要機器サイズの例(1000
t/d)
システム化調査-- 主要機器サイズの例(1000
主要機器サイズの例(1000
(1000 t/d)
*)材質は主にSUS
*)材質は主にSUS
水
●反応器
●水供給ポンプ
プランジャー
80 m3/h×
/h×2(並列)
3 mφ×30
φ×30 mH
×2
×2 (直列)
●分離器2
2 mφ×5
φ×5 mH
●水予熱用熱交換器
●分離器1/回収槽
●分離器1 回収槽
多管式
15m
15m×1mφ(
1mφ(800m
φ(800m2)×2
)×2 (直列)
3 mφ×3
φ×3 mH
×4
×4(並列、分離器1)
3 mφ×10
φ×10 mH
×3
×3(並列、回収槽)
●石炭スラリ供給ポンプ
プランジャー
80 m3/h
石炭スラリ
81
システム化調査システム化調査
システム化調査化学原料価格
システム化調査-- 化学原料価格
●化学原料の工場出荷価格の検討
+利益
プラント建設費
収入
処理費
改質炭 改質炭 (2200円
2200円/トン)
(陸上輸送など
を考慮して設定)
原料費・運転費など
化学原料価格
収支および化学原料の工場出荷価格
処理量
処理費
改質炭価格
化学原料価格
収入
(t/d)
(円/t-原炭)
(円/t)
(円/kg)
(円/t-原炭)
1,000
8,700
2,200
510
10,800
4,000
7,200
2,200
410
9,000
20,000
6,300
2,200
340
7,900
82
参考資料1-41
システム化調査システム化調査
システム化調査本プロセスの導入
システム化調査-- 本プロセスの導入
●化学原料の市場と本プロセスの導入
現在の市場
2~3万t/y
カテコール価格 (円
カテコール価格 (円/kg)
kg)
1000
低
価
格
700~
700~
1000円
1000円/kg
530~
530~
760円
760円/kg
750
500
一般化学原料の
需要と価格の関係
から予測される
カテコール価格
石炭処理量
1000 t/d
プラント
市場拡大
450~
450~
650円
650円/kg
4000 t/dプラント
400~
400~
580円
580円/kg
250
20000 t/dプラント
0
2.5
5
7.5
10
(万t/y)
市場 大
83
システム化調査システム化調査
システム化調査本プロセスの適用例
システム化調査-- 本プロセスの適用例
メーカー
石炭火力発電所
30%混炭使用で
30%混炭使用で1000
混炭使用で1000MW
1000MW
級発電所7
級発電所7基分
改質炭
(14,000t/d)
(14,000t/d)
原炭(20,000
原炭(20,000t/d)
(20,000t/d)
受入基地
化学原料
(300t/d)
(300t/d)
超臨界水処理・精製プラント
84
参考資料1-42
システム化調査システム化調査
システム化調査CO22排出量およびエネルギー収支
排出量およびエネルギー収支
システム化調査-- CO
プロセス
CO2排出量
CO2排出量
(kgkg-CO2/MWh
CO2/MWh)
MWh)
超臨界水処理後発電
・改質プロセス
・輸送
348 kg
原料褐炭
・発電 発電 (一般ボイラ)
828 kg
70 kg
改質炭
改質
輸送
発電
16%
16
%
消費エネルギー
収率ロス
1,246
43
1,448
36
57%
57%
9%
32%
32%
総エネルギー
効率 (%)
輸送エネルギー
ロス合計
褐炭発電(日本)
・発電 発電 (褐炭ボイラ・乾燥込)
・輸送
235 kg
原料褐炭
輸送
37%
37%
輸送エネルギー
1,213 kg
乾燥
27%
27%
乾燥エネルギー
発電
64%
64%
ロス合計
85
システム化調査システム化調査
システム化調査経済性検討まとめ
システム化調査-- 経済性検討まとめ
・ プロセスフロー、物質収支により主要機器の仕様を決定
・ プロセスは従来技術の活用により構築し、今後の
開発課題を整理した。
・ 総建設費は、原炭処理量1,000
・ 総建設費は、原炭処理量1,000 t/dで133
dで133億円と試算
133億円と試算
・ 本プロセスにより、安価に改質炭と化学原料を製造
でき、十分経済性が成り立つ可能性がある。
86
参考資料1-43
今後の課題と展望今後の課題と展望
今後の課題と展望次ステップでの開発課題
今後の課題と展望-- 次ステップでの開発課題
ガス・
熱回収
水
高圧供給
水予熱
材料(腐食・磨耗)
加熱方法
材料(腐食・磨耗)
スラリ濃度/粒度
スラリ濃度 粒度
高圧供給
スラリ化
分離器 2価フェノール類
2
濃縮特性
反 粉体流動性
応 反応特性・制御
器 材料
(腐食・磨耗)
化学原料 製品評価
市場調査・開拓
石炭
・ 反応器の検討及び最適化
・ 改質炭回収挙動
・ 化学原料回収・精製挙動
・ 装置システムの実証
・ 改質炭・化学原料評価
精製 2価フェノール類
精製特性
減圧
バルブ形式
材料(腐食・磨耗)
分離器
1
改質炭回収特性
材料(腐食・磨耗)
回収
ブリケット化
粉体バルブ
粉体ハンドリング
ブリケット化
改質炭
製品評価
87
今後の課題と展望今後の課題と展望
今後の課題と展望プロセスの適正化
今後の課題と展望-- プロセスの適正化
今回検討プロセス
(ワンスルー・水リサイクル)
リサイクル水
石炭スラリー
反応
発展プロセス
(反応水直接循環)
分離
循環ポンプ
分離
石炭スラリー
エネルギー効率:約64%
エネルギー効率:約64%
反応
エネルギー効率:約75%
エネルギー効率:約75%
○発展プロセス
・ エネルギー効率が増加
・ 供給系、分離系の機器数、容量が減少 → 建設費減少
・ 高水/
・ 高水/石炭比に対応可能 → 2価フェノールの収率増加
石炭比に対応可能 → 2価フェノールの収率増加
88
参考資料1-44
今後の課題と展望今後の課題と展望
今後の課題と展望開発課題スケジュール案
今後の課題と展望-- 開発課題スケジュール案
西 暦
∼2001
∼2010
2015∼
2015∼
本調査(25
本調査(25kg/d)
(25kg/d)
実証開発(
実証開発(数t/
数t/d)
・プロセス最適化
プロセス最適化
・材料、高圧粉体ハンドリング
材料、高圧粉体ハンドリング
・製品ユーザ評価
製品ユーザ評価
実用化
(数100∼
100∼1000t
1000t/d)
設計 建設 試験
・課題の整理
・課題に対する既存技術の調査
・超臨界水を利用した技術の調査
設計 建設 操業
89
まとめ
まとめ
○ 本超臨界水の特長を生かしたプロセスの構築できた。 ・ 高カロリーの改質炭を製造
・ 高付加価値化学原料を副生
○ 実用化プロセスのフロー、物質収支、熱収支、経済性に
ついて検討し、経済性が成り立つ可能性が示された。
○ 次ステップへの移行に必要な技術課題を整理した。
○ 本プロセスは低品位炭利用の観点から、有効かつ実用
的なプロセスとなる可能性がある。
90
参考資料1-45
まとめまとめ
まとめ成果の普及
まとめ--成果の普及
石炭利用技術会議
U.S./Japan Work Shop
91
石炭熱分解技術分野 まとめ
石炭熱分解技術分野 まとめ
石炭次世代技術開発調査
石炭熱分解技術分野
高液収率技術
高ガス収率技術
多目的石炭転換技術
(石炭急速熱分解)
水素化反応基礎調査
超臨界水石
炭転換技術
中温中圧
熱分解
実用化開発へ移行
(H8H8-H12年度に実施)
H12年度に実施)
マイクロ波
加熱
実用化開発へ移行
(H15年度より実施予定
H15年度より実施予定)
年度より実施予定)
92
参考資料1-46
参考資料2
周辺動向調査
本資料は、第1回「石炭利用次世代技術開発調査
石炭熱分解技術分野」事
後評価分科会において、評価の事務局である新エネルギー・産業技術総合開発
機構技術評価部から、株式会社東レ経営研究所へ関連技術の周辺動向調査を依
頼したものである。
石炭利用技術振興事業/石炭利用次世代技術開発調査
「石炭熱分解技術分野」
周辺動向調査報告書
株式会社 東レ経営研究所
参考資料 2-1
目次
はじめに
1.本プロジェクトに関わる政策動向
1.1 1次エネルギー総供給の見通しと石炭の位置づけ
(1) 1次エネルギー需要の推移と見通し
(2) 日本の温室効果ガス削減対策
(3) エネルギー価格の推移
(4) 世界のエネルギー資源の埋蔵量
1.2 日本の石炭政策
(1) 石炭政策の推移
(2) 今後の石炭利用技術戦略
2.石炭熱分解技術分野
2.1 石炭転換利用技術の現状
(1) 石炭の国内市場の推移
(2) 石炭転換利用技術の開発状況
2.2 本 PJ の独自性・先進性
2.3 本 PJ で得られる製品の動向
(1) 化学原料(2価フェノール)
(2) 改質炭
3.関連する特許・文献・新聞記事
参考資料 2-2
はじめに
石炭は産業革命を機に最大のエネルギー源としていろんな分野に使用されて
きたが、戦後の石油化学の隆盛とともに、その地位を石油に奪われてしまった。
その後 1970 年代の二度にわたる石油危機や湾岸戦争によって石油の価格高騰、
供給の不安等が大きな国際問題としてクローズアップされ、石炭が見直され現
在に至っている。
エネルギーセキュリティの面では、日本のエネルギー自給率は 22%で、アメ
リカの 78%、英国の 118%、ドイツの 38%等に比べて先進国中最も低い。化石
燃料の中で最も埋蔵量が豊富かつ供給安定性の高い石炭の利用促進は、日本の
エネルギーセキュリティの確保として重要な政策課題になっている。
一方、地球環境問題が近年大きな国際問題となり、特に地球温暖化防止のた
めの温室効果ガス CO2発生の主犯といわれる化石燃料に代わる太陽光・風力発電
等の新エネルギーや再生可能エネルギー(バイオマス利用他)の開発、導入が
各国で取り組まれている。
しかし、このような化石燃料代替エネルギーは、まだ化石燃料との価格競争
力が低く、日本の代替エネルギー導入計画では 2010 年でも1次エネルギーの約
3%にしかならない。また、CO2発生の面でも有利な原子力の将来も昨今の安全
性問題等から楽観できない情勢にある。このような背景から、化石燃料代替エ
ネルギーの導入には時間を要するため、化石燃料依存は当面続くと予測されて
いる。石炭の利用促進に当たっては、温室効果ガス CO2の排出係数が化石燃料中
最大であるという欠点を克服する技術開発がもう一つの重要な政策課題である。
このために、エネルギーセキュリティの確保としての石炭利用促進策と併せ
て環境対策としての熱利用効率向上技術や CCT(クーリン・コール・テクノロジ
ー)開発など、国内外で数多くの国家プロジェクトが推進されている。
本調査は、石炭の転換利用技術としての「石炭熱分解技術」の周辺動向を調
査した。
参考資料 2-3
1.本プロジェクトに関わる政策動向
1.1 1次エネルギー総供給の見通しと石炭の位置づけ
(1) 1次エネルギー需要の推移と見通し
世界の1次エネルギー総供給は、図表 1-1 に示すように、1971 年の 5,012 百
万トン(石油換算)から、先進国を中心とする経済発展により 1997 年には 8,743
百万トンに増加した。今後も中国等の開発途上国の経済発展が牽引役となって
2010 年に 11,390 百万トン、2020 年には 13,710 百万トンと増加の一途をたどっ
て行くと予想されている。
これをエネルギー源別にみると、石油は二度の石油危機による価格高騰でそ
のシェアーを大きく下げたが、今後は現状並の 40%程度で推移する。石炭は今
まで微減してきたが今後はほぼ横ばいの約 25%で推移する。天然ガス、原子力
は今後とも増加し、化石燃料代替の新エネルギーが 2020 年には3%に成長する。
その中で、今後の石炭需要は、先進国においては温室効果ガス CO2 削減対策等
から伸びが抑制されるが、経済発展の著しいアジアを中心に伸び、全体として
は1次エネルギーの約1/4を今後とも占める。
石油換算百万トン
16,000
13710
14,000
11390
12,000
2%
3%
10,000
6%
3%
2%
5%
新エネ等
水力
原子力
26%
天然ガス
40%
石油
25%
24%
石炭
2010
2020
8,743
2%
3%
8,000
24%
7%
22%
5,012
6,000
1%
2%
4,000
40%
18%
41%
49%
2,000
26%
29%
0
1971
1997
図表 1-1 世界の1次エネルギー需要の推移と見通し
日本の 1970 年以降の1次エネルギー需要は図表 1-2 に示すように、今までは
世界の伸びほどではないが着実に増加してきた。経済成長の鈍化や現在取り組
んでいる温室効果ガス削減対策等によって、2010 年の需要は現状の約 3%増(基
準ケース)が予測されている。しかし、この計画のままでは、詳しくは後述す
参考資料 2-4
(年)
るCOP3での温室効果ガス削減枠の達成が難しく、新たに省エネルギーや新
エネルギー導入等を織り込んだ目標ケースが設定された。
エネルギー源別のシェアーをみると、石油が 1970 年代の二度にわたる石油危
機の影響でシェアーを大きく落とし、この分を天然ガス、原子力が代替えした。
石炭のシェアーは 1970 年の 18.9%から 1990 年の 16.5%まで微減で推移し、そ
の後はエネルギーセキュリティの確保政策等から増加に転じ、2010 年の基準ケ
ースでは 21.8%、目標ケースでも 19.0%になると見込まれている。
石油換算百万Kl
700
622
6 04
1.1 %
3.6
600
52 6
1.3 %
4.3
500
4 27
1.0 %
5 .3
4.7
3 40
400
9.4
1.0 %
1 2.4
602
程度
1 .6 %
3.0 %
3 .4
15 .0
15 .0
13 .1
新エ ネ等
3.2 水力・ 地熱
原子力
13 .2
14.0
10.1
天然ガス
6 .1
5.6
0.3
300
2.2
7 1.9
200
51.8
45.0
4 5.0
58.3
66.1
石油
100
18.9
17.0
16.5
1970
1980
1990
17.9
21.8
19.0 石炭
2000
2010
2010
0
(年)
( 基準ケー ス )( 目標ケー ス )
(出所) 総合エネルギー調査会需要部会中間報告(2001年7月)他
図表 1-2 日本の1次エネルギー需要の推移と見通し
(2) 日本の温室効果ガス削減対策
地球温暖化防止に向けた国際的な温室効果ガス排出量削減に関するCOP3
京都議定書(1997 年)の発効が最近決定し(最大の CO2排出国であるアメリカ
は不賛成で対案を提出している)、各国は 2010 年の目標達成に向けた検討に取
り組んでいる。
日本の達成目標値は 2010 年までに 1990 年の CO2排出量レベル(温室効果ガス
の CO2換算値)を6%削減することになっている。CO2を6%削減するための政
策は図表 1-3 の①に示すように、CO2、メタン、亜酸化窒素の排出抑制で 2.5%
減、土地利用の変化と森林活動による吸収で 3.7%減、共同実施、排出量取引で
1.8%減、代替フロン等の 2.0%増となっている。この中でエネルギー起源の CO
参考資料 2-5
2
排出抑制は 1990 年のレベルを維持することとなっている。
現在、国を挙げて取り組んでいるエネルギー起源の CO2排出抑制対策では、
2010 年の CO2排出量は図表 1-3 の②に示す基準ケースの排出量となり、目標達
成が困難であることが明らかになった。このため、新たに省エネルギーの強化、
新エネルギーの導入促進、燃料転換等を織り込み、2010 年の1次エネルギー需
要を 2000 年レベルとする、目標ケースが設定された。
①COP3での日本の削減枠(1990年比)とその対策(2010年)
対 策
CO2、メタン、亜酸化窒素の排出抑制
・エネルギー起源の CO2 排出抑制
エネルギー需給両面にわたる最大限の対策の積上
・メタン、亜酸化窒素等の排出抑制
・革新的技術開発や国民各層における更なる努力
土地利用の変化と森林活動による吸収
代替フロン等(HFC,PFC,SF6)の排出抑制
共同実施、排出量取引などの活用
合 計
削減目標値
▲2.5%
( 0 )
(▲0.5)
(▲2.0)
▲3.7%
+2.0%
▲1.8%
▲ 6%
②エネルギー起源のCO2排出量
排出量
(百万トン-C)
1990
1999
287
313
2010
基準ケース 目標ケース
287
307
(▲20) (注)
(注) 省エネルギー ………6 百万トン-C
新エネルギー ………9
燃料転換等 ………5
(出所)総合資源エネルギー調査会 総合部会/需給部会報告書-今後のエネルギー政策について-
図表 1-3 日本の温室効果ガス削減対策
(3) エネルギー価格の推移
1973 年、1979 年の二度にわたる石油危機による原油価格の高騰はそれまで石
油化学・エネルギーに依存してきた経済に大きな影響をもたらし、国を挙げた
各種の対策が講じられた。特にエネルギー面においては、省エネルギー技術や
製品の軽薄短小化技術などの差別化技術の開発、国民の省エネルギー運動など
が展開されてきた。
このような状況下において、石炭は安価なエネルギー源として定着し、最近
のカロリー当たりのCIF価格(運賃、保険料込みの価格)を図表 1-4 に示し
たように、他の化石燃料に比べて 2002 年で半値以下になっている。
なお、天然ガス(LNG)は環境に優しいクリーンエネルギーとして注目され、着
実に需要を伸ばし、現在は次世代エネルギーと期待される燃料電池の燃料とし
て注目を集めている。
参考資料 2-6
(円/1000kcal)
2.5
CIF:運賃・保険料込みの価格
2.0
原油
C重油
石炭
LNG
1.5
1.0
0.5
0.0
97
98
99
2000
01
02/01
02/07
(年月)
(出所) EDMCエネルギートレンド2002
図表 11-4 エネルギー源別平均輸入
エネルギー源別平均輸入 CIF 価格(カロリー当たり)の推移
(4) 世界のエネルギー資源の埋蔵量
石油資源の枯渇問題がクローズアップして久しいが、現状のエネルギー資源
の確認可採埋蔵量を示すと図表 1-5 のようになる。石油の埋蔵量は約 40 年で最
も短く、枯渇が身近の問題になりつつあることがわかる。天然ガスも 61 年と石
油よりは長いが十分とはいえず、石炭のみが 227 年と長く、最も豊富な資源で
ある。ただし、この石炭埋蔵量の中にはそのまま燃料には使用しがたく、何ら
かの前処理や改質処理が必要な低品位炭が約半分を占めている。この低品位炭
の有効利用技術の開発は重要課題である。
また、エネルギーセキュリティ確保に関しては、図表 1-5 の地域別賦存状況
欄に示したように、石油資源が政治的不安の大きい中東地区に集中しているの
に対して、石炭資源は世界中に分布しており、供給の安定性が非常に高いとい
う利点がある。
石 油
確認可採埋蔵量
北米
中南米
欧州
ウラン
9,845億トン
(5,191/4,654)
395万トン
150兆 m3
3.4
4.3
26.1
(23.0/29.5)
17.9
11.7
5.2
2.3
(1.7/ 3.1)
6.2
1.9
3.5
12.3
( 9.1/16.0)
4.8
6.4
37.8
23.4
(18.8/28.5)
29.4
35.0
0.2
( 0.3/ -)
0.0
7.1
7.4
5.6
(10.6/ 0.0)
18.6
アジア・大洋州
4.2
年生産量
262億バレル
可採年数
39.9年
6.8
m3
2.4兆 61.0年
30.1
(36.5/22.9)
43.4億トン
227年
23.0
3.5万トン
64.2年
中東
アフリカ
)
%
1兆460億
バレル
石 炭
(一般炭等/低品位炭)
65.3
旧ソ連
(
地
域
別
賦
存
状
況
天然ガス
(出所)石油、天然ガス:BP統計2001
ウラン:OECD/NEA、IAEA、URANIUM1999
石炭:第18回世界エネルギー会議資料(2001年10月)
図表 1-5 世界のエネルギー資源埋蔵量(2000
世界のエネルギー資源埋蔵量(2000 年)
参考資料 2-7
1.2 日本の石炭政策
(1) 石炭政策の推移
我が国の石炭政策は昭和 30 年代以降今日にいたるまで約 40 年間計 9 次にわ
たり、地域経済、雇用等への影響を考慮しつつ石炭鉱業の生産規模の縮小と移
行炭坑の徹底した合理化を図る石炭鉱業構造調整対策を推進し、世界的なエネ
ルギー革命の中で構造的不況に陥った石炭鉱業の、我が国における有り様の検
討を続けてきた歴史である。これを時系列的に整理すると次のようになる(補
足資料・1参照)。
第1次策(1963~65) ~ 第3次策(1967~69):
エネルギー資源の高い輸入依存度は、国際収支及び供給の安定という見地から
望ましくなく、重要な国産エネルギー資源である石炭の生産量は 5,000 万トン
台を維持する。
・原油輸入自由化(1962)
第4次策(1969~73) ~ 第7次策(1982~86):
国際競争力低下に伴う炭坑の集中閉山を避けるため、石炭の活用を促進し、生
産量は 2,000 万トン台を維持する。
・
第1次、2次石油危機(1973,1979)
・
一般炭の輸入開始(1974)
第8次策(1987~19) ~ 第9次策(1992~2001):
海外炭との競争条件改善は見込めず、国内炭の役割は変化し、段階的縮小はや
むなし。
(2) 今後の石炭利用技術戦略
石炭は、すでに述べたように化石燃料の中で最も安価であり、埋蔵量が豊富か
つ供給安定性が高いという優れたエネルギー源であるが、大きな欠点がある。
それは、温室効果ガスである CO2の排出係数が石炭を 100 とすると石油製品が
75、天然ガスが 55 となり、化石燃料中最も大きいことである。この欠点をカバ
ーするために、石炭利用に当たっての熱効率向上技術や各種のクリーン化技術
の開発が国家プロジェクトとして進められている。このような石炭政策の現状
をまとめると次のようになる。
参考資料 2-8
海外炭の安定供給確保:
・探鉱/開発段階前の各種調査に対する補助金、探鉱融資等の海外炭開発に対
する支援
・産炭国との石炭生産技術共同研究等の技術協力
・我が国炭坑を活用した炭坑技術移転5カ年計画による技術移転
環境に配慮した CCT の開発及び普及等:
・CO2発生量を低減させるための加圧流動床燃焼技術(PFBC)、石炭ガス化複合
発電技術(IGCC)、燃料電池用石炭ガス製造技術等の熱効率向上に資する技術
の開発
・環境負荷低減のための高効率石炭ボイラー(PCS,USC)の導入支援
・グリーンエイドプランに基づく、石炭利用に係わる地域の実情に応じたマス
タープランの作成や CCT の具体的な共同実施事業
(出所)エネルギー庁:石炭政策について
以上述べてきたことを、2030 年までの技術戦略として時系列的にまとめたも
のが図表 1-6 である。詳細は省略するが、1990 年代の CO210%削減を実現する
ための PFBC、PCS 技術等による高効率化第一世代から、2000 年代の IGCC 等の高
効率化第二世代、2010 年代の燃料電池等の高効率化ハイブリッド世代、2020 年
代のゼロエミッション世代の実現に向けた各種の石炭利用技術プロジェクトが
計画、推進されている。
参考資料 2-9
1990
2000
環境制約
削減率:10%
CO2
資源制約
高効率化第一世代
2010
10~20%
2020
20~30%
2030
30~40% >40%
石油供給タイト化
・PFBC
・PCS(USC)
高効率化第二世代
・石炭燃焼・ガス化複合サイ
クル発電(IGCC等)
・DIOS,SCOPE21
・エミッション低減-3Ten
高効率化ハイブリッド世代
PFBC
:加圧流動床燃焼複合発電
PCS :超臨界圧微粉炭焚火力発電
USC :超々臨界圧微粉炭焚火力発電
IGCC
:(石炭)ガス化複合発電
DIOS
:溶融還元製鉄技術
SCOPE21 :高度転換コークス製造技術
エミッション低減-3Ten:SOx<10ppm, NOx<10ppm,
煤塵<10mg/Nm3の達成
・石炭ガス化燃料電池発電
・発電と化学原料ガス併産
・石炭から水素製造( CO 2
回収・固定)
・エミッション低減-ゼロへ
ゼロエミッション世代
・石炭から水素-燃料電池、
タービン複合サイクル発電,
水素自動車
・石炭新産業構想-エネルギー・
鉄鋼・化学融合センター
・ 転換利用
CO 2
(注)年数は、開発課題の実用化時期を示す
CO2削減率は、開発課題の実用化時の削減率を示す
(出所) 第10回石炭利用技術会議講演集:我が国の21世紀石炭政策について(資源エネルギー庁)
図表 11-6 日本の石炭利用技術戦略―21世紀への挑戦
参考資料 2-10
2.石炭熱分解技術分野
2.1 石炭転換利用技術の現状
石炭はエネルギーや化学原料などいろんな分野に使用されている(補足資
料・2参照)。石炭の転換利用技術には、図表 2-1 に示すように、直接燃焼以外
にガス化、水添ガス化、液化、改質(熱分解)技術がある。この中の改質技術
に本 PJ の石炭の熱分解技術による低品位炭の改質と高価格化学原料(2価フェ
ノール、特にカテコール)の製造技術が含まれる。
このようなプロセスの開発例は、国内外の文献を検索(JOIS)した結果及び本
PJ が実施してきた調査結果(1996∼2001 年度該調査報告書)のいずれにおいて
も見あたらず、新しいプロセス開発といえる。
『転換技術』
直接燃焼
ガス化
石 炭
水添ガス化
『主力製品』
『新しい動き』
エネルギー
複合発電(PFBC)
化学原料、気体燃料
複合発電(IGCC)
気体燃料、化学原料
液化
輸送用燃料
改質
コークス,改質炭,化学原料
石炭直接利用(コークス)
低品位炭改質と高価格化学原料
図表 2-1 石炭の転換利用技術
(1) 石炭の国内市場の推移
国内の石炭市場の推移は図表 2-2 に示すように、1980 年代後半に伸びが鈍化
したが、その後は現在まで着実に増加している。
用途別にみると、1980 年ではコークス用の原料炭を主とする鉄鋼業向けが全
体の 76.0%を占め、次いで一般炭を使用する電力・ガス業の 12.3%、製造業の
9.6%となっている。その後、鉄鋼業向けは絶対量がほぼ横ばいで推移し、1999
年では全体の 49.1%まで低下している。成長が著しい分野は電力・ガス業向け
で、着実にそのシェアーを拡大し、1999 年には 36.5%を占めるまでに成長して
いる。製造業は、このほとんどが燃料用の一般炭であるが、1980 年代にそのシ
ェアーを拡大し、その後は 15%前後で安定している。
参考資料 2-11
この中で、本 PJ から得られる改質炭が対象となる分野は、鉄鋼業以外の電力・
ガス業、製造業となる。
16,000
13,965
13,027
14,000
8,000
︶
万
ト
ン
11,094
9,308
1.9%
0.1% その他
0.1%
0.6%
14.3%
製造業
36.5%
電力・ガス
15.4%
11.1%
15.1%
21.8%
23.4%
76.0%
65.1%
60.9%
52.6%
49.1%
鉄鋼
1980
1985
1990
1995
1999
(年度)
10,000
︵
販
売
量
12,000
11,517
9.6%
12.3%
2.1%
32.0%
6,000
4,000
2,000
0
(出所)経済産業省:エネルギー生産・需給統計年報
図表 22-2 石炭の国内用途別販売量推移
(2) 石炭転換利用技術の開発状況
石炭は化石資源の中で、最も安価で埋蔵量が豊富かつ供給安定性が高いとい
う利点と、温室効果ガス CO2の排出係数が最も高いという欠点を合わせ持った資
源である。このため、石炭転換利用技術の開発においては、この利点と欠点を
いかに調和させるかが重要技術となる。なお、今後の重要な CO2削減施策とも言
われる炭素税の導入に関しては、まだ国内では具体化しておらず、今後の課題
となる。
このような課題解決を目標に、現在取り組まれている石炭転換利用技術の開
発状況を図表 2-3 にまとめた。以下転換プロセスごとに述べる。
a) ガス化
無水酢酸やアンモニア原料としてすでに実用化されている。現在注目されて
いる分野にガス化複合発電(IGCC)、燃料電池向けの水素源があり、国内では各々
IGC、HYCOL プロジェクト等が始まっている。
b) 水添ガス化
合成天然ガス(SNG)、水素源、高エタン・BTX 転換等を目的に数多くのプロジ
ェクトが
推進されたが、経済性がネックになり、それらの多くが中断の状況
参考資料 2-12
にある。経済性改善として取り組まれた本 PJ の中温・中圧法もこの分野になる。
c) 液化
埋蔵量の豊富な褐炭や亜瀝青炭などの低品位炭から液体燃料、化学原料を製
造する技術
であるが、採算性がネックになっている。国内プロジェクトとし
て NEDOL(瀝青炭)
、BCL(褐炭)などが検討された。
d) 熱分解
無酸素下における熱分解技術として、気体・液体・固体を対象とする多目的
利用技術や鉄鋼のコークス化技術などがある。多目的利用技術は製造コストを
下げながらできるだけ高価な製品をつくろうとする技術であり、国内プロジェ
クトでは CPX などが検討された。
コークス化技術はすでに完成された分野であったが、原料炭より供給安定性
に優れる一
般炭をコークスに利用するプロジェクト SCOPE21 がスタートして
いる。この技術が完成するとコークスの副生物であるタールが生産されなくな
るので、タール工業は原料転換が必要になる(関連資料として補足資料・3に
①コークスの需要予測、②コールタール生産量の推移を示した)。
もう一つの熱分解技術として、本 PJ の超臨界水利用熱分解技術がある。これ
は、超臨界水中で低品位炭を一般炭並に改質すると同時に高価格化学原料であ
る2価フェノール、特にカテコールを選択的に製造する技術である。
プロセス
ガス化
反応条件
T:1400~1800℃
P:2~3 Mpa
環境:O2/スチーム
水添ガス化
T:800~1100℃
P:6~7 Mpa
環境:水素
T: ~450℃
P:15~20Mpa
環境:水素
T: ~1000℃
P: ~1Mpa
環境:無酸素
T: ~450℃
P:10~30Mpa
環境:水
液化
熱分解
開 発 状 況
化学原料:無水酢酸、アンモニア等量産中
IGCC:各国で開発中
反応炉:IGCC 向けは気流層が中心
SNG、水素、高エタン・BTX 転換等を目標に
開発
反応炉:(2段)気流層が中心
低品位炭からの液化を中心に開発
経済性がネックになっている
関連国内 PJ
HYCOL
IGC 他多数
多目的利用(気・液・固)プロセスの開発
一般炭のコークス利用技術の開発
CPX
SCOPE21
本 PJ の中温・
中圧法
NEDOL
BCL 他
低品位炭の改質、高価格化学原料化を目標 本 PJ (SCW)
に開発中
類似プロセスはない
図表 2-3 石炭転換利用技術の開発状況
2.2 本 PJ の独自性・先進性
従来の石炭転換技術は、ガス化、液化、コークス化のように単一製品を追求
しながら、副生品を効率よく回収・利用するものである。これに対して、本 PJ
参考資料 2-13
の超臨界水利用熱分解技術は、低品位炭から一般炭並のカロリーをもつ改質炭
と高価格の化学原料である2価フェノール等の製造を目的とするもので、すで
に述べたように国内外の文献検索では類似プロセスは見あたらず、新しいプロ
セス開発といえる。
このような石炭転換技術が目的としている製品を製品価格重み付けとして示
したのが、図表 2-4 である。なお、ここに示した製品価格重みは、各技術が目
標としている収率や製品の種類と価格等の変動が大きいため、概算値である。
燃焼技術では、燃焼ガスを PFBC に利用することから製品価格重みは気体 100
となる。水添ガス化技術は、気体と液体の製品価格重みはほぼ等しく、液化技
術では副生する燃料ガスの効果が少し認められる。
熱分解技術では、ガス化目的の IGCC の製品価格重みは気体 100、多目的の CPX
は液体の効果が認められる。また、固体を目的とする室炉コークスは副生高炉
ガスとタールの効果が認められる。
本 PJ の超臨界水技術は、2価フェノールの主成分であるカテコールの価格を
200∼500 円/kg の幅で示したが、製品価格重みは液体側にある。カテコールの
価格が仮に将来 200 円/kg になったとしても、固体(改質炭)と液体(カテコー
ル)がほぼ同価値である。このように、本技術は、得られる製品の製品価格重
みでみると、改質炭製造技術というよりも高価格化学原料のカテコール製造技
術と位置づけることができる。
気体
燃料
化学原料
100
×
IGCC
PFBC
●
▲
■
□
×
水添ガス化
液化
熱分解(固体)
熱分解(ガス)
燃焼
CPX
□
● Rockwell
● 中温・中圧法
BG/OG
●
●
旭化成
▲ NEDOL
▲ BCL
室炉コークス
■
(200円/㎏)
■
100
固体
コークス
改質炭
チャー
(500円/㎏)
■
本PJ
100
液体
燃料
化学原料
図表 2-4 石炭転換技術開発プロジェクトの製品価格重み付
2.3 本 PJ で得られる製品の動向
(1) 化学原料(2価フェノール)
参考資料 2-14
a) 2価フェノールの製造法
2価フェノールの中の代表的なものがカテコール、ハイドロキノン、レゾル
シンであり、これらの従来の製造法を図表 2-5 に示す。
2価フェノー
プロセス
生産国
ル
カテコール
o-クロロフェノール加水分 なし
解
フェノールヒドロキシル化
フランス、イタリア、日本
コールタール蒸留
イギリス、コメコン
ハ イ ド ロ キ ノ アニリン酸化
アメリカ、ドイツ、日本、イギ
ン
リス、コメコン、中国
フェノールヒドロキシル化
フランス、イタリア、日本
p-ジイソプロピルベンゼン アメリカ、日本
酸化
レゾルシン
ベンゼンスルフォン化
アメリカ、イタリア、ドイツ、
イギリス、プエルトリコ、日本
m-ジイソプロピルベンゼン
日本
ヒドロペルオキシ化
(出所)カーク・オスマー化学大事典(丸善)
図表 2-5 2価フェノールの工業的製法
本 PJ が対象としているカテコールは、イギリスなどでコールタール蒸留法が
採用されているが、主流は石油系のフェノールを原料とするフェノールヒドロ
キシル化プロセスになっている。
フェノールヒドロキシル化プロセス:
フェノールと過酸化水素を原料として、触媒量の鉱酸又は Fe(Ⅱ)塩、Co(Ⅱ)
塩の存在下で反応させるとカテコールとハイドロキノンが得られる。これを
蒸留分離する。
原料のフェノール製造法:
コールタールから抽出する古典的なタール系と合成法がある。主流は合成法
で、クメン法とトルエン酸化法が代表的プロセスである。
参考資料 2-15
b) 2価フェノールの用途、市場(ヒアリング結果)
2価フェノールの世界市場は、現在カテコールが約 3 万トン、ハイドロキノ
ンが約 4 万トン、レゾルシンが約 5 万トンである。国内市場は次に示すように、
現状は減少傾向にある。また、本 PJ から生産される大量のカテコールが使用で
きる大型新製品情報は、現時点では得られていない。
・国内市場は減少傾向にある。
・売値は kg 当たり、カテコール 500 円以下、レゾルシン 600 円前後である
・主な用途は、カテコール関連が香料、農薬、医薬品中間体等、ハイドロキ
ノンが写真現像液、重合禁止剤等、レゾルシンがタイヤ接着用等となる。
この中の農薬は環境規制強化で、写真現像剤はデジカメの急速な発展で市
場が減少している。
・プラスチック用途では、特殊ポリカーボネート樹脂に若干量の需要がある
・現時点では、大規模な市場が期待できる新製品情報はもっていない。
将来、仮に2価フェノールがプラスチック原料に使用できるようになったと
した場合の価格を予測するために、プラスチックの販売量と販売価格の相関を
示したものが図表 2-6 である。
本プロセスで得られる改質炭で国内石炭市場の 5∼10%を賄うようになると
仮定すると、生産されるカテコールは年産 10∼30 万トン規模になる。このスケ
ールでのプラスチック価格は、プラスチック間の少量・特殊性による価格差が
期待できる領域から汎用化・量的拡大による価格急落の領域に該当し、現状価
格は 400 円/kg 前後となる。このケースでのカテコールの価格は、プラスチック
の製品価格に占める原料費は素材の種類、販売価格、生産規模によって異なる
が、超概算でいうなら販売価格の半分くらいと見なせるので、200 円/kg 位にな
ると予想される(図表 2-4 の 200 円/kg はこの価格を使用)。
このように、本 PJ の今後の展開においては、大量に生産される2価フェノー
ル、特にカテコールの新市場開拓が重要な検討課題といえる。
参考資料 2-16
500
400
樹
脂
価 300
格
(
熱硬化性樹脂
熱可逆性樹脂
エンプラ
)
円
200
/
㎏
100
0
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
販売量(千トン/年)
(出所) 経済産業省:化学工業統計年報(2001年)
図表 2-6 プラスチックの販売量と価格
(2) 改質炭
本プロセスで得られる改質炭は、ハンドリング性を高めるためのブリケット
化及びスラッギング性、ファウリング性、自然発熱性を改善するための一般炭
とのブレンド(最大 30%)によって、燃料等に使用できることが確認されている。
このような背景を下に、価格、市場性について関連企業にヒアリングした。
価格:
石炭の価格はほぼ発熱量に比例して設定されている。発熱量は一般炭並であ
ることから、価格は同等と予想される。
市場性:
改質炭は、低品位炭のもっている灰分が少ない、硫黄や塩素などの大気汚染物
質が少ないという利点を活かせる。すでに石油分野では低硫黄原油が公害対策
として重要視されているが、石炭ではまだ付加価値改良炭として価格に反映さ
れる状態にいたっていない。今後の公害対策強化の中で、付加価値炭としての
価値が認められるようになると考えられるが、どの程度価格に反映されるよう
になるかは予測できない。
参考資料 2-17
3.関連する特許・文献・新聞記事
本 PJ の調査研究がスタートした翌年の 1993 年以降における、超臨界水によ
る石炭熱分解に関連する特許、文献、新聞記事の件数推移を図表 3-1 に示す。
なお、2002 年は最近データまでとした。
特許:
国内公開特許を対象に、出願日で件数を整理した。検索キーワードは超臨界水
と(A)石炭、(B)バイオマス・産廃・重質油、(C)触媒の3種とした。
超臨界水を用いた熱分解の対象物質に関連するA,Bは、1997 年までほぼゼ
ロ件であったが、1998 年にそれぞれ5、8件の出願があり、最近は5件/年程
度の出願件数となっている。これに対して触媒特許は 1998 年以降年々出願件
数が増加し、A,Bの2倍以上の件数になっている。
学術文献:
JOIS(日本語登録)を使用、検索キーワードは特許に同じ。A、B、C共に
1997 年から文献件数が増加している。熱分解の対象物質では、最近は石炭が
減少し、バイオマス・産廃・重質油系の件数が増えている。触媒系は特許と同
様に件数は多い。
新聞記事:
日経4紙の見出しを対象に検索、検索キーワードは特許に同じ。A、B、C共
に件数は少なく、調査全期間でAの石炭が2件、Cの触媒が8件となった。記
事件数は少ないが、特許や文献と同様に触媒に関するものが多い。参考までに、
超臨界水のみで検索した結果をグラフに示してあるが、1996 年から 1999 年に
かけて新聞記事としての話題性があったことがわかる。
参考資料 2-18
20
①国内公開特許(出願日)
特
10
許
(触媒)
超臨界水×(石炭)
(バイオマス+産廃+重質油他)
0
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002 年
2001
2002 年
2001
2002 年
30
②学術文献(JOIS)…日本語
(触媒)
20
文
献
(バイオマス+産業+重質油他)
10
超臨界水×(石炭)
0
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
30
③新聞記事(日経4紙)
20
記
事
超臨界水×石炭=2件
超臨界水×触媒=8件
超臨界水
10
0
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
図表 3-1 関連特許・文献・新聞記事の件数推移
以上
参考資料 2-19
<補足資料・1>
日本の石炭政策の推移
第1次策
1963~1965
【基本方針】
・石炭鉱業崩壊のもた
らす経済・社旗への影
響を防止
・エネルギー革命の進
行に対応して生産構造
を再編
【生産目標】
5,500 万トン確保
第2次策
1965~1967
【基本方針】
・エルギーの高い輸入依
存度は、国際収支上も
供給の安定という見地
からも望ましくなく、重
要な国産エネルギー資源
たる石炭を確保
【生産目標】
5,500 万トン維持
第3次策
1967~1969
【基本方針】
・経営基盤回復対策と
ある程度の需要確保を
講ずれば、今後とも
5,000 万トン程度の出
炭維持は可能
【生産目標】
5,000 万トン確保
第4次策
1969~1973
【基本方針】
・安定した出炭,供給体
制構築
・石炭企業は再建に努
力する反面、維持・再
建困難となる場合には
進退を決すべき
【生産目標】
規模明示せず
<出来事>
<出来事>
・炭坑ストライキ頻発
・ 原油輸入自由化
(1962)
<出来事>
<出来事>
・石炭対策特別会計創 ・公害対策強化
設(1967)
・集中閉山
第6次策
1976~1982
【基本方針】
・エネルギーの安定供給
の一環として石炭を可
能な限り活用
・国内炭の生産を維持
し、海外炭の輸入を円
滑に行う
【生産目標】
2,000 万トン以上の生産
規模維持
<出来事>
・第2次石油危機
(1978)
・価格差縮小
第8次策
1987~1991
【基本方針】
・海外炭との競争条件
改善は見込めず、国内
炭の役割は変化、段階
的縮小やむなし
・集中閉山回避、経済・
雇用への影響を緩和
【生産目標】
最終的には 1,000 万トン
程度が適当
<出来事>
・鉄鋼業界による引取
協力終了(1990)
第7次策
1982~1986
【基本方針】
・安定性と安全保障の
両面から貴重な国内
炭を積極的に活用
・国内炭生産量を維持
し、石炭鉱業の自立達
成を支援
【生産目標】
2,000 万トン以上の生産
水準達成
<出来事>
・プラザ合意(1985)
・価格差拡大
(出典)資源エネルギー庁:石炭政策について
参考資料 2-20
第9次策
1992~2001
【基本方針
・90 年代を構造調整の
最終段階と位置づけ、
国民経済的な役割と
負担の均衡点まで国
内炭生産の段階的縮
小を図る
【生産目標】
具体的水準を明記せ
ず
<出来事>
・三井三池閉山(1997)
・松島閉山 (2001)
・太平洋閉山 (2002)
第5次策
1973~1976
【基本方針】
・石炭鉱業の急激な縮
小は多大な社会的混
乱を惹起するおそれが
あることに鑑み、需要
の引き上げ及び対策
の拡充を行う
【生産目標】
2,000 万トンを下らない
規模
<出来事>
・第1次石油危機
(1973)
・ 一般炭輸入開始
(1974)
<補足資料・2> 石炭利用技術体系
エネルギー
原料
発電
電気エネルギー、灰の利用(フライアッシュ、浄水用)
燃料
熱エネルギー、灰の利用(計量骨材、セメント)
(混合燃料には、COM(石炭+石油)、
CMSあるいはメタコール(石炭+メタノール)、
CTM(石炭+タール)、
CWM(石炭+水)など)配送システムとして
CCS(カートリッジ式石炭処理)
直接または
混合燃料
基礎研究
石炭化学
石炭物理
乾留(コークス)
製鉄用、鋳物用、一般燃料
カーバイド、アセチレン
形成(コークス)
固体として
利用
石炭
賦活
炭化
ガス化原料、合成化学原料
活性炭(気相、液相吸着材)、炭素系分子篩
電極、炭素材、炭素繊維
カーボンブラック
酸化
フミン酸
芳香族カルボン酸
エネルギー原料
石炭化学
原料
乾留(ガス)
気体として
利用
ガス化
都市ガス、合成天然ガス(SNG)、一般燃料、高炉吹込み
ガス化発電
アセチレン(プラズマガス化)
合成化学原料( 製造源、メタノール等)、C1化学
液体燃料(フィッシャートロプシュ法)
乾留(タール)
特殊燃料(ジェット燃料、高炉吹込み)
タール化学、合成化学燃料、塗料、染料
液化
液体として
利用
液体燃料(ガソリン、ジェット燃料)
溶剤処理炭(STC)、バインダー、炭素繊維、活性炭繊維
芳香族ケミカルズ
ハロゲン
溶剤処理
潤滑油、有機弗素化合物
膨潤炭、芳香族ケミカルズ
参考資料 2-21
<補足資料・3>
<補足資料・3>
① コークスの需要予測
50
前提条件
・コークス炉命 35年
・粗鋼生産量 1億t
(内 高炉7千万t)
・高炉微粉炭比
150㎏/P-t(2020年)
45
ー
コ
40
コークス需要量
(
ク
ス 35
生
産 30
量
と
需 25
要
20
コークス不足量
M
t 15
/
年 10
溶融還元
30%普及時
(2020年)
)
既存コークス炉による
コークス生産量
5
0
2005
2000
2010
2015
2020
(出所) 芳香族協会資料
(注) コークス需要量の上の線は現状技術で推移した場合、下の線は溶融還元技術が導入された場合を示す
②コールタール生産量の推移
(千t)
3,000
2,500
生産量
2,000
蒸留量
1,500
1,000
500
0
1926
1945
1955
1982
1985
1988
1989
1995
1997
(出所)木村英雄:石炭化学工業の動向、日本エネルギー学会誌(第79巻4号)
参考資料 2-22
1998
2000
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