...

原子力発電に関する世界的現状と展望 タイトル Global status and

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

原子力発電に関する世界的現状と展望 タイトル Global status and
会議出張メモ
これは会議主催者による公式議事録ではありません。引用はお控えください。
This is not an official record by the meeting organizers. Do not quote.
原子力発電に関する世界的現状と展望
タイトル
Global status and outlook for nuclear power
主催
International Atomic Energy Agency (IAEA)
日時
2005 年 12 月 2 日(金)13:00-15:00
主要討論者
IAEA、OECD Nuclear Energy Agency (OECD/NEA)、カナダ政府
傍聴者
約 70 名
目的
気候変動への対応策の一つとして、原子力発電を位置付ける。
発表の概要
はじめに
Hans-Holger Rogner 氏: Head, Planning and Economic Studies Section, Department of Nuclear
Energy, IAEA
・ 原子力発電は 21 世紀の途上国・先進国ともに世界のネルギー需要と持続可能な開発に寄与する、
と主張。本イベントでは原子力発電の現状と展望、原子力発電と気候変動との関係、経済的な側面
について考える。
原子力発電:現状と展望
Alan McDonald 氏: Programme Liaison Officer, Department of Nuclear Energy, IAEA
○原子力発電について、①需要の高まり、②国情に合わせた発電所建設の必要性、③原子力発電の持
つ経済性
について解説。
① 世界の原子力による発電量は、1960 年代以降、増加の一途である。世界で現在 442 の原子力発電
プラントが存在し、アジアでの建設も増加している。
② エネルギー需要、代替エネルギー(石炭、風力、水力・・・)の有無、ファイナンス状況、事故リス
クや大気汚染など、国ごとに状況は異なる。各国でさまざまな電力の組み合わせが用いられている。
・ インドでは、原子力発電は 2.8%を占める。現在 8 基を建設中。
・ 中国ではエネルギー需要の大幅増により、2 プラントが建設中。
・ ロシアは 31 基を保有し、4 基を建設中。
・ 日本、韓国、東欧(ブルガリア、ウクライナ、ルーマニア、ポーランドなど)でも原子力発電への
依存が高い。
・ 西欧では、原子力発電を禁止する国(オーストリア、イタリア等)、段階的に削減する国(スウェ
ーデン、ドイツ、ベルギー)、拡大する国(フィンランド、フランス)がある。
・ アメリカでは、原子力発電設備が 104 基稼動しており、電力の 20%をまかなっている。
③ 原子力発電は建設には費用がかかるが、ランニングが安くできる。エネルギー需要の急速な増加に
対応できる、代替エネルギーの少ないところに適用できる、電力を安定供給できる、大気汚染や
GHG 排出の抑制、長期のファイナンスが期待できる、フィナンシャルリスク・プレミアムが低く
抑えられる、という点で利点がある。
-1-
会議出張メモ
これは会議主催者による公式議事録ではありません。引用はお控えください。
This is not an official record by the meeting organizers. Do not quote.
コメント:(フィンランド)フィンランドは原子力発電を拡大するとあるが、世論は反対の声が根強い。
Q:(ベルギー)ベルギーでは、原子力発電を段階的に削減する、とのことだが、新規の建設計画が
ある。例えば石炭の低価格が続いたとしたら、原子力発電の建設が抑えられるというような可能
性はないのか?
A:南アフリカで石炭価格を調査したところ、価格は上昇するとのこと。石炭の輸送を考えても、石
炭は高くつくと思う。
原子力エネルギー:気候変動と経済
Thierry Dujardin 氏: Deputy Director, Science and Development, OECD/NEA
○原子力発電は運転維持管理では経済性に優れており、温暖化対策の一つの手段になりえる。
・ 北アメリカや EU、太平洋地域、途上国ではエネルギー需要が高まっている。2002 年から 2030 年
にかけて、世界で 97%のエネルギー需要増があるだろう。
・ 京都議定書は温室効果ガス削減を目指すものであるが、CDM/JI では原子力発電は使用を差し控え
るとされている。しかし、排出量取引では原子力発電が使えるはずだ。
・ 原子力発電はほとんどカーボンフリーである。OECD 諸国での原子力発電により、GHG 排出量は
10%削減されている。もっとも安価な GHG 対策と言える。
・ OECD/NEA では、「発電にかかる予測コスト」という研究を 1982 年以降行っている。21 カ国の
130 の各種発電プラントを対象に、発電に係るコスト(投資(建設費・利子、改修費、廃炉費用)、
維持管理、燃料費等)を分析。それによると、建設費用はガス(全体コストの 1.5-2 割)や石炭(同
3-5 割)に比べ、原子力は高い(全体コストの 5-7 割)ものの、維持管理や燃料費は安くできる事
がわかった。
・ 結論として、原子力の競争力は向上しており、原子力発電は発電セクターの GHG 排出の 16%削減
に寄与している、長期的には原子力エネルギーは温暖化防止に貢献する、ポスト京都には原子力を
対策の一つと考えるべきである。
Q:(フィンランド)化石燃料の使用が増加しているが、原子力発電はその代替とならないのではな
いか?
A:エネルギー需要を満たすために入手できるエネルギー源は化石燃料であり、原子力がその代替と
なるのは明らかである。原子力発電は再生可能エネルギーを代替するのではない。化石燃料の使
用を減らさないといけないのは自明のことである。
カナダにおける原子力エネルギー
Sylvana Guindon 氏: Director, Nuclear Energy Division, Natural Resources Canada
○カナダでの原子力発電の重要性を強調。
・ カナダはウランの産出国である。22 の原子炉を有し、電力の 15%をまかなっている。オンタリオ
の工業地帯ではベースロードとして用いられている。
・ 政府は原子力の研究開発に投資しており、高性能の CANDU 原子炉が完成した。
・ 原子力エネルギーは今後もカナダのエネルギー需要を満たすと共に、大気保全、気候変動への対策
-2-
会議出張メモ
これは会議主催者による公式議事録ではありません。引用はお控えください。
This is not an official record by the meeting organizers. Do not quote.
にも貢献している。
Q:(韓国)原子力発電からは CER は獲得できない。自発的に原子力をする場合は、安全性が重要と
なる。アジアでは GHG 削減に原子力発電がいいと考えるか?
A:長期的には原子力発電は GHG の大幅削減につながると考えている。
Q:(オンタリオ・グリーンピース)CANDU 原子炉の性能は本当は悪い。
A:新しい技術ではよりよい性能になる予定。
おわりに
Hans-Holger Rogner 氏
・ 全ての技術は廃棄物を生み、リスクを抱える。一つの技術を個別に考えるのではなく、国情に合わ
せ、その代替策と共に LCA の中で検討する必要がある。
・ 核廃棄物の処理方法(直接廃棄や再利用)の開発が進んでいる。
・ 原子力発電は気候変動や持続可能な開発の唯一の解決策ではないが、必要不可欠な解決策の一つと
なりえる。
Q:テロ攻撃の可能性にはどう考えているのか?
A:安全面は大事なことで、国家の安全対策として政府とも考えなければならない問題である。
質疑応答
その他、原子力発電を気候変動対策のオプションとすることへの懸念が多く出された。
資料
なし
文責:川村 美穂子(社団法人海外環境協力センター 嘱託研究員)
サイドイベントの様子。
「原子力発電の GHG 排出量は石炭火力の 350 分の 1。
原子力発電が生み出すごみは、ほんのちょっとの放射性物質」
-3-
Fly UP