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No.158 - 名古屋大学附属図書館

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No.158 - 名古屋大学附属図書館
名古屋大学附属図書館報
ISSN 0387−477X
目 次
附属図書館利用者アンケートについて …… 1
「館長と話そう!2005」を開催 …………… 5
2005年秋季特別展「知の万華鏡−書物から
みた18世紀の西洋と東洋−」
(長尾伸一) 6
新しいサービスのお知らせ ………………… 8
本学教員著作物の寄贈リスト ……………… 10
No.158
2006 .
2.
利用者から見た図書館 ……………………… 11
15
http://www.nul.nagoya-u.ac.jp/koho/kanto/
附属図書館利用者アンケートについて(その2)
前号に続き、附属図書館利用者アンケートの満足度調査に関する部分について概観します。
1.満足度調査の項目
施設・設備、資料・情報、職員・サービスと
いう大きく3つのカテゴリーに、41個の調査項
目を設定し、それぞれの項目に対する「期待の
程度」と中央図書館及び所属する部局図書室に
対する「評価の程度」を7段階で尋ね、その期
待点、評価点の平均を算出し、その数値で期待、
評価の度合いを比較した。以下は、項目の内容
で、本文中の“数字)”はこの項目番号を指示
している。
【施設・設備について】
1)開館日・開館時間は適切で、利用しやすい。
2)図書館はキャンパスの中の便利な場所にある。
3)建物・設備が魅力的である。
4)館内は安全である。
5)座席数は十分である。
6)グループで研究・学習できるスペースがある。
7)十分な蔵書スペースがある。
8)計画的にスペースの利用が考えられている。
9)照明・空調などの環境が整っている。
10)複写機が十分に適切に配置されている。
11)OPAC(蔵書検索)やデータベースを検索する
情報機器は十分に用意されている。
12)図書館は快適で、居心地がよい。
13)図書館では、静かに研究・学習ができる。
【資料・情報について】
14)専門図書が十分備えられている。
15)学習用図書が十分備えられている。
16)参考図書が十分備えられている。
17)貴重資料が充実している。
18)雑誌(電子ジャーナルを含む)は必要なタイトル
が揃っている。
19)電子資料が充実しており、アクセスは快適である。
20)必要な図書館資料を自力で見つけられる。
21)資料の配置・配架は分かりやすい。
22)館内の案内・サイン・掲示は分かりやすい。
23)図書館のホームページから、必要な情報を得るこ
とができる。
24)所蔵していない文献を迅速に取り寄せることがで
きる。
【職員・サービスについて】
25)貸出期間・冊数の設定は適切である。
26)サービスが迅速である。
27)いつどこでサービスが受けられるかが適切に周知
されている。
28)ネットワークを通じてサービスが受けられる。
29)職員は質問に答えられるだけの知識を持っている。
30)目録の記述や、利用の手続き等に間違いがない。
31)職員は課題解決の際頼りになる。
32)職員はすすんで援助・手助けしてくれる。
33)職員の対応は丁寧・親切である。
34)職員は利用者のニーズを理解している。
35)プライバシーが保護されており安心できる。
36)図書館案内(ホームページも含む)、パンフレット
等が十分揃っている。
37)学生・教員の意見を反映する制度が整っている。
38)授業を支援するプログラムを用意している。
39)必要に応じてガイダンスや利用説明会が受けられ
る。
40)学外者・地域社会にもサービスを提供している。
41)障害者に配慮している。
− 1 −
館燈
No.158(Feb. 2006)
2.期待度の傾向
図書室の態様には、かなり差異があり、一括し
①全体の傾向
て中央図書館と比較するより、むしろ部局図書
期待の程度が高かったもの上位10をカテゴリ
室同士で比較した方が“差異”の意味について
参考データが得られると思われる。
ー別に見ると表1のとおりであった。
表1 期待度の高かったもの
カテゴリー
施設・設備
について
資料・情報
について
項 目
表2 期待度の低かったもの
期待
項 目
期待
6)グループで研究・学習できるス
ペースがある。
4.32
3)建物・設備が魅力的である。
4.70
39)必要に応じてガイダンスや利用
説明会が受けられる。
4.26
4.30
5.49
36)図書館案内(ホームページも含
む)、パンフレット等が十分揃っ
ている。
11)OPAC(蔵書検索)やデータベ
ースを検索する情報機器は十分に
用意されている。
5.48
38)授業を支援するプログラムを用
意している。
4.30
4.43
14)専門図書が十分備えられている。
5.82
40)学外者・地域社会にもサービス
を提供している。
15)学習用図書が十分備えられてい
る。
5.58
32)職員はすすんで援助・手助けし
てくれる。
4.47
20)必要な図書館資料を自力で見つ
けられる。
41)障害者に配慮している。
4.80
5.58
27)いつどこでサービスが受けられ
るかが適切に周知されている。
4.81
16)参考図書が十分備えられている。
5.56
18)雑誌(電子ジャーナルを含む)
は必要なタイトルが揃っている。
4.82
5.55
34)職員は利用者のニーズを理解し
ている。
1)開館日・開館時間は適切で、利
用しやすい。
5.89
13)図書館では、静かに研究・学習
ができる。
5.59
2)図書館はキャンパスの中の便利
な場所にある。
5.54
7)十分な蔵書スペースがある。
カテゴリー
施設・設備
について
職員・サー
ビスについ
て
図1 全ての利用者の期待と評価
これらの項目をつなぎ合せると、「専門図書、
有効回答数=737∼797
学習用図書、参考図書や雑誌が十分備えられ、
資料は自力で見つけられて、静かに研究・学習
ができる。そんな蔵書スペースがあり、情報検
索機器も十分に用意された、便利な場所にあり、
開館日・開館時間が適切な利用しやすい図書
館」となる。
逆に期待の程度が低かったものは、表2のと
おりである。
図書館としては重要視している図書館情報リ
テラシーにつながる案内や利用者支援に関する
項目が多く含まれていることに、利用者と図書
館側の意識のギャップを垣間見ることができ
る。
図1は、大学図書館への期待と中央図書館及
び部局図書室への評価をグラフにしたものであ
②教員、大学院生、学部生別の傾向
図2は、期待の程度を教員、大学院生、学部
る。概して、中央図書館への評価の方が高くな
っている。しかし、館内の安全性や職員・サー
生に分けて見たものである。
概ね、教員>大学院生>学部生になっていて、
ビスでは部局図書室の方が高くなっており、図
書館に作られる利用者や職員のコミュニティの
教員と大学院生では資料・情報への期待、学部
相互関係がより濃密といえよう。ただし、部局
生では施設・設備についての期待が高くなって
− 2 −
名古屋大学附属図書館報
いる。職員・サービスについての期待はいずれ
表3 期待と評価のギャップ:満足度
(中)
の高い順
の区分でも低くなっている。特に差が見受けら
項目
6
36
39
40
2
11
30
8
3
17
7
23
35
29
38
26
20
32
12
5
1
31
27
22
33
13
28
41
25
15
34
10
16
9
4
19
18
24
21
37
14
平均
れる18)、19)、24)、28)の電子ジャーナルを
含む雑誌や電子資料の充実、文献の迅速な取り
寄せ、ネットワークサービスへの期待で、いず
れも教員>大学院生>学部生となっているの
は、やはり学術情報の取得に対する積極性の差
かと思われる。
図2 教員、大学院生、学部生の期待
有効回答数=737∼797
3.期待と評価のギャップ
表3は、各調査項目を満足度(中)の降順に
並べたものである。満足度=評価÷期待で定義
し、(中)は中央図書館の、(部)は部局図書室
の評価又は満足度である。1以上は期待を上回
っていることになり、より低いものは改善を要
する度合いが高いものと考える必要があろう。
①中央図書館
【ギャップの小さいもの】6)のグループで研
期待
4.32
4.30
4.26
4.43
5.54
5.48
5.10
4.83
4.70
4.87
5.49
5.30
4.93
5.02
4.30
5.17
5.58
4.47
5.37
5.13
5.89
4.84
4.81
5.05
5.12
5.59
5.05
4.80
5.13
5.58
4.82
4.89
5.56
5.36
5.07
5.45
5.55
5.15
5.46
4.83
5.82
5.08
評価(中) 評価(部) 満足度(中) 満足度(部)
4.42
2.45
1.02
0.57
4.34
3.92
1.01
0.91
4.15
3.93
0.98
0.92
4.21
3.58
0.95
0.81
4.96
5.16
0.90
0.93
4.89
4.35
0.89
0.79
4.53
4.65
0.89
0.91
4.29
3.66
0.89
0.76
4.16
3.55
0.89
0.75
4.24
3.76
0.87
0.77
4.73
3.36
0.86
0.61
4.53
4.20
0.86
0.79
4.20
4.34
0.85
0.88
4.27
4.56
0.85
0.91
3.64
3.52
0.85
0.82
4.38
4.53
0.85
0.88
4.72
4.57
0.85
0.82
3.78
4.44
0.84
0.99
4.54
3.96
0.84
0.74
4.31
3.35
0.84
0.65
4.95
3.83
0.84
0.65
4.06
4.50
0.84
0.93
4.02
4.10
0.84
0.85
4.19
4.03
0.83
0.80
4.24
4.91
0.83
0.96
4.62
4.32
0.83
0.77
4.15
4.15
0.82
0.82
3.93
3.31
0.82
0.69
4.20
4.36
0.82
0.85
4.57
4.03
0.82
0.72
3.92
4.38
0.81
0.91
3.95
3.68
0.81
0.75
4.50
4.13
0.81
0.74
4.30
4.23
0.80
0.79
4.03
4.80
0.80
0.95
4.33
4.14
0.79
0.76
4.40
4.18
0.79
0.75
4.05
4.46
0.79
0.87
4.29
4.17
0.78
0.76
3.76
3.70
0.78
0.77
4.40
4.40
0.76
0.76
4.30
4.09
0.85
0.81
究・学習できるスペースがある、36)の図書館
案内(ホームページも含む)、パンフレット等
【ギャップの大きいもの】特に、満足度0.8未
が十分揃っている、39)必要に応じてガイダン
満の6項目のうち、5項目が資料・情報につい
スや利用説明会が受けられる、などは満足度が
てであり、14)、18)、19)の専門図書や雑誌
高くなっている。期待度が低いからということ
(電子ジャーナルを含む)、電子資料の充実など、
も言えるが、期待度の平均が5.08、評価(中)
そして21)の資料の配置・配架の分かりやすさ、
の平均が4.30、満足度の平均が0.85であるので、
24)ILLでの文献の迅速な取り寄せとなってお
改善事項の検討としては、やはり期待度が高く
り、もう一つは職員・サービスの37)学生・教
満足度が低く出ている項目に注目する必要があ
員の意見を反映する制度となっている。
前3項目については、これまでも図書館が主
ろう。
− 3 −
館燈
No.158(Feb. 2006)
張してきた学術情報・資料の充実の必要性は、
表5 満足度(部)0.75以下
利用者のニーズと一致するものとして、予算的
カテゴリー
項 目
満足度(部)
6)グループで研究・学習でき
るスペースがある。
0.57
7)十分な蔵書スペースがある。
0.61
1)開館日・開館時間は適切で、
利用しやすい。
0.65
5)座席数は十分である。
0.65
12)図書館は快適で、居心地が
よい。
0.74
り、4)は引き続き、利用者と協同して盗難等
10)複写機が十分に適切に配置
されている。
0.75
の防止、館内の安全、快適性の保持を図る必要
3)建物・設備が魅力的である。
0.75
がある。
15)学習用図書が十分備えられ
ている。
0.72
16)参考図書が十分備えられて
いる。
0.74
18)雑誌(電子ジャーナルを含
む)は必要なタイトルが揃っ
ている。
0.75
41)障害者に配慮している。
0.69
な要求を続け、後の3項目については、何か具
体的な対応方策が可能か検討する必要がある。
また、満足度0.8以上でも低位にある、4)、9)、
10)について、9)は照明が大幅に改善された
施設・設備
について
が、空調については、依然懸案事項として残っ
ている。10)については、平成18年4月から要
望のある地階に私費複写機を増設の予定であ
次の低位にあるのが、職員・サービスについ
ての項目で、25)、27)、28)、31)、32)、33)、
資料・情報
について
41)などとなっている。部局図書室についても
いえることであるが、特に満足度が低い点につ
いては、今後具体的な検討を行い、必要に応じ
職員・サービ
スについて
て実施計画を立てるなど対応していきたいと考
えている。
のバラツキがかなりある。ある意味、それ自体
②部局図書室
前述のように、部局図書室は部局により機能
が図書館(室)と利用者の関係の濃淡を示して
的な差異が大きく、個々の部局図書室を考える
いるかもしれないが、それらを踏まえて、部局
ときには、データを集計し、一括して論ずるに
図書室全体を概観することはできよう。その部
は無理があるかもしれない。また、前号の回答
局図書室像と個々の部局図書室の状況との相
者所属別内訳が示すように、部局により回答率
似、乖離については、それぞれの部局図書室で
ご一考願いたい。
表4 満足度(部)0.9以上
カテゴリー
施設・設備
について
職員・サー
ビスについ
て
項 目
部局図書室について、ギャップの小さいもの
満足度(部)
4)館内は安全である。
0.95
2)図書館はキャンパスの中の
便利な場所にある。
0.93
32)職員はすすんで援助・手助
けしてくれる。
0.99
33)職員の対応は丁寧・親切で
ある。
0.96
31)職員は課題解決の際頼りに
なる。
0.93
39)必要に応じてガイダンスや
利用説明会が受けられる。
0.92
36)図書館案内(ホームページ
も含む)、パンフレット等が十
分揃っている。
0.91
30)目録の記述や、利用の手続
き等に間違いがない。
0.91
29)職員は質問に答えられるだ
けの知識を持っている。
0.91
34)職員は利用者のニーズを理
解している。
0.91
10個を表4に、ギャップの大きいもの11個を表
5に、それぞれカテゴリー別に示した。
4.終わりに
附属図書館利用者アンケートで7段階の期
待、評価をいただき、それなりに改善のポイン
トを見つけられたが、回答率あるいは回答者の
部局構成にバラツキがあるなど、集計結果にバ
イアスがかかっているとの指摘もある。また、
状況に応じて期待値も評価値も変化していくも
のと考えれば、これで十分ということはない。
この結果は、現時点での参考値として捉えて、
改善方策の検討に役立てたいと考えている。
最後に、このアンケート調査にご協力いただ
きました皆様に感謝いたします。また、今後の
アンケート調査の機会にも、一層のご協力をい
ただきますようお願いします。
− 4 −
名古屋大学附属図書館報
附属図書館で学生利用者と館長との懇談会
「館長と話そう! 2005」を開催
附属図書館では、平成17年12月12日
(月)、平成15年から毎年行っている学部
学生、大学院生の利用者との懇談会「館
長と話そう! 2005」を開催しました。
3回目となる今回は、学部生3名、大学
院生3名の計6名が応募により参加し、
約2時間の間、お茶菓子をつまみながら、
図書館の利用について、複写機や、研究
個室、視聴覚ブース、閲覧机や雑誌架、
留学生用の資料や情報検索に使うマガジ
ンプラスのことなど、多岐にわたって利
用者の目から見た意見や要望が出され、
伊藤附属図書館長と懇談する学生利用者
図書館長からの細部にわたる説明もあ
り、活発な意見交換になりました。
また、最近トイレが綺麗に改修されたこと、
した。
利用者の意見を直接図書館長が聞く機会は、
照明が明るくなったこと、夏休みなどの開館時
間が長くなったことなど、ずいぶん利用しやす
今後も継続していく予定ですので、多数のご参
くなったと利用者から好意的な感想も出されま
加をいただければ幸いです。
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
中央図書館で市民への貸出を拡大
「就職コーナー」を設置
かねてより、大学図書館に蓄積した学術情報
中央図書館3階のグループ学習室内に「就職
を、地域の生涯学習などにも活用し、社会に貢
コーナー」を設けました。これは、名古屋大学
献することが求められていましたが、平成17年
全学同窓会による平成17年度大学支援事業(就
7月に施行された「文字・活字文化振興法」の
職支援事業)の助成を受けて設置されたもので、
中でも、地域の文字活字文化の振興に貢献する
資格試験や面接、ビジネスマナーに関するもの、
活動の促進が謳われています。
○○士になるには、など各試験に関する資料な
中央図書館では、平成14年10月から学外者へ
の貸出しを研究用図書に限って始めていました
どが置いてあり、また、借り出すこともできま
す。
が、これまでの貸出実績から、①学外者への貸
出は貸出冊数全体の1%未満でまだそれ程多く
なお、就職に関しては、学務部学生総合支援
ない、②学習用図書を借りたいという要望があ
課の就職支援室が、学生相談総合センターの就
る、ということから、市民への貸出を学習用図
職相談部門と連携を取りながら、さまざまなサ
書にまで枠を拡大することになりました。
ポートをしていますので、併せてご活用くださ
1人3冊まで、2週間以内で借りることがで
い。(参照:http://syusyoku.jimu.nagoya-u.ac.jp/)
きます。当面、試行し、問題がなければ4月か
ら正式運用の予定です。
− 5 −
館燈
No.158(Feb. 2006)
2005年秋季特別展
「知の万華鏡−書物からみた18世紀の西洋と東洋−」
長 尾 伸 一
2005年秋季特別展は「知の万華鏡 −書物か
出版者が本文を自由に書き換えることもしばし
らみた18世紀の西洋と東洋−」と題して、名古
ばあった。手書きのまま流通した作品には次々
屋大学のひとつの特色である初期近代、近代西
に手が加えられ、変貌していった。いわば「オ
洋思想史に関するコレクションを取り上げた。
リジナル」の著者ばかりでなく、出版者や読者
「啓蒙の時代」と呼ばれる18世紀は、ヨーロ
までが作品の制作にかかわっていた。それは書
ッパで現代的な考え方の基礎が築かれていった
物の「著者」が明確でなく、知識の生産者と受
時代だった。書物というめがねを通じてみたと
容者が明確に分かれないままで交流する世界だ
き、この時代がどのようなものだったのかを、
ったのである。
具体的に知ることができる。当時のヨーロッパ
西洋近代思想史研究の拠点の一つとして、名
は、ヨーロッパの歴史上初めて本が大量に印刷
古屋大学は、17世紀から18世紀の政治・倫理・
され、流通するようになった、一種の「情報革
社会思想に関するホッブズ・コレクション、18
命」を迎えていた。
世紀フランス自由思想家たちの著作集、18、19
しかし19世紀以後の近代世界の原型を作り出
世紀英語圏、フランス語圏の雑誌コレクション
したとはいえ、この時代には近代と呼ぶには異
など、この時代についての貴重な資料を所蔵し
質な世界がひろがっていた。従来はこの「啓蒙
ている。
の時代」の、近代の幕開けという面が強調され
このような企画には、最近では百科全書とフ
てきた。しかし最近の研究では、この時代の知
ランス自由思想家コレクションを取り上げた
性のあり方が、それ以後の時代とは異なる性質
1999年度の展示会「『百科全書』とその時代展」
を持っていたことが強調されるようになってき
がある。今回でもこれらの先行する企画を参考
た。そこには、人類の知性の転換期という点に
としたが、それに加えて4点の新しい試みを行
おいて、生命科学と宇宙開発や環境問題や情報
った。
化によって世界が大きく変化している現在とも
第1に、中央図書館所蔵資料のみでなく、他
通じる面が存在していた。この時代では、「文
部局の協力を得て、本学所蔵の関連する貴重図
理融合」というより、いわば「文理未分化」の
書をできるかぎり広く公開することを試みた。
総合的な知の枠組みが存在していた。「客観的」
特に経済学研究科および文学研究科については
な「科学」と、人間がどう行動し、どう生きる
共催者として、中核的な資料の提供を受けた。
べきかを説く倫理や哲学、さらには人生の目的
これは今後の全学的な観点からのコレクション
を教える宗教は、相互に大きく干渉することな
の整理と拡充のためにも意義あることだった。
第2に、展示会の内容を企画するにあたって
く、なだらかに結びついていた。
また多くの優れた学者、思想家を生み出した
本学の部局だけでなく、近代思想史研究を担っ
とはいえ、この時代には思索や創作は必ずしも
ている日本18世紀学会の協力を得た。そのため
個人的な営みではなかった。著作権の観念はま
図録に18世紀思想史研究の最先端を論じる座談
だ生まれず、自由に出版が行われた。検閲の問
会が収録でき、それをもとに企画の内容的充実
題もあり、多くの重要な思想書は匿名あるいは
をはかることができた。これは最近名古屋大学
偽名で出版された。同じ書物にもいくつかの版
経済学研究科の教員である安藤隆穂教授が日本
があり、本文が異なることもしばしばだった。
18世紀学会代表幹事を勤めたことや、そのこと
− 6 −
名古屋大学附属図書館報
をきっかけに名古屋地区で同学会の幹事会メン
的に困難なため、展示によって視覚に訴えるこ
バーによる研究会が作られ、現在も継続的に活
とが困難である。また外国語の書物の場合、翻
動していること、昨年度はこの研究会の協力を
訳を添えたとしても専門家向けになりがちであ
得て総長裁量経費プロジェクトが実施されたこ
り、一般の来訪者に内容を理解していただくこ
となどが幸いしている。図書館展示会も、この
とが難しい。図版全編のスライド上映はこの点
ような学術的ネットワークと密接に連携するこ
を改善しようとしたものであり、ディスプレー
とが必要であることがわかる。
の大きさや展示方法など改善すべき点は多かっ
第3に、この展示会では視野を東洋にまで拡
大して、18世紀の同時代の日本、中国の情報化
たが、本展示会は今後とも追求すべきテーマを
示したといえる。
や、知識の集成のあり方を西洋と対比し、また
以上に加えて本展示会準備の過程で、名古屋
西洋の書物の伝播のプロセスの一端を示すこと
大学の成立にかかわる重要な人物吉雄常三の業
も試みた。これに関する本学のコレクションに
績に注目することができた。伊藤圭介の師であ
は、中国の四庫全書およびその補遺の全巻ファ
る常三については不明なことが多いため、名古
クシミリ版、日本については神宮皇学館文庫や
屋での科学研究および学問的談話のネットワー
和漢三才図会などがある。これらは中部圏のみ
クを解明するためにも、今後とくに研究を深め
ならず、全国的に見ても学問的価値の高い文献
ていく必要がある。
資料だといえる。本展示会では、18世紀からア
特別講演会では講師に西洋近代思想史の水田
ヘン戦争や開国によって東西の関係が決定的に
洋氏(学士院会員、名古屋大学名誉教授)、百
変化する19世紀中葉までを一つの時代と考え、
科全書研究の逸見龍生氏(新潟大学)、中国出
名古屋大学が所蔵するこの時代の和・漢・洋の
版史の井上進本学文学研究科教授を招き、多彩
代表的な資料を展示することで、近世の東西の
な参加者の下で有意義な講演会を行うことがで
知的世界の姿を、書物という「もの」のあり方
きた。本学所蔵の百科全書の版の確定を含め、
を通じて示すことをねらいとした。これはあま
この企画の過程でのカタログ整理の進行や研究
り類例のない萌芽的な試みだったが、今後さら
ネットワークの拡大を継承して、今後本学の特
に発展させて行く必要があると思われる重要な
色あるコレクションの整理と拡充が望まれる。
達成だった。
第4に、展示方法についても、百科全書図版
(ながお・しんいち 経済学研究科教授、
および和漢三才図会のスライド上映という新し
附属図書館研究開発室室員)
い試みを行った。書物は全体を示すことが物理
展示室風景
水田名誉教授による講演
− 7 −
館燈
No.158(Feb. 2006)
新しいサービスのお知らせ
「Webからのリクエスト」を使ってますか?
Webから利用できる図書館サービスをご紹介します。これらの利用には図書館ホームページの
「Webからのリクエスト」のページが便利です。
http://www.nul.nagoya-u.ac.jp/guide/webrequest/web_request.html
(1)
貸出・ILL情報
自分がいま借りている図書のタイトルや返却期限が分かります。
ILL
(=InterLibrary Loan 文献の取り寄せ、図書借用)
申込みの進行状況が確認できます。
(2)
複写申込・貸借申込(ILL)
他大学からの文献取り寄せや、図書借用の申込みができます(一部の部局図書室ではWebか
らの申込み受付はしていません)。利用するには費用負担や連絡先などが必要なため、事前に
ご自分のILL申込み先の図書館・室へ「Web利用申請書」の提出が必要です。Webでの受付をし
ていない部局の方は中央図書館に提出してください。
(ILL申込み先一覧)http://www.nul.nagoya-u.ac.jp/guide/ILLplace.html
「Webからのリクエスト」の
ページのほか、OPAC左側の
メニューからも利用できま
す。
クリックして、全学IDでログ
インしてください。
(3)
中央図書館の貸出中図書の予約申込み
OPAC(蔵書検索)で検索して見つけた図書が貸出中で中央図書館の蔵書の場合は、オンライ
ンで予約ができます。
ボタンをクリックして、手続きしてください。利用で
きるようになったら、指定の連絡先に通知が届きます。
(1)∼(3)のサービスを利用するには、全学IDとパスワードが必要です。
学 生 → 情報メディア教育センター(アカウント申請)
https://www.media.nagoya-u.ac.jp/regist/account/
教職員 → 情報連携基盤センター(全学ID)
http://www2.itc.nagoya-u.ac.jp/center/id.htm
(4)
中央図書館推薦・希望図書申込み
中央図書館の学習用図書として備えつけたい図書をリクエストしてください。教員向けと、
学生・大学院生向けのフォームを用意しています。
http://www.nul.nagoya-u.ac.jp/guide_c/newbook/gakusyuhp1.html
− 8 −
名古屋大学附属図書館報
Academic Resource Cabinet(新リンク集)を公開しました
リンク集を拡充し、Academic Resource Cabinetとして公開しました。有用な学術サイトへのリンク
に加え、契約データベースや中央図書館の参考図書の一部も案内しています。学術情報の収集にお役
立てください。また追加すべき情報がありましたら、ぜひお知らせください。
http://www.nul.nagoya-u.ac.jp/db/dbdb/
リソースの検索
タイプ別リスト
関連機関のリスト
分野ごとのリスト
新規データベースの導入について
今年度、下記のデータベースを新たに導入しました。どうぞご活用ください。
http://www.nul.nagoya-u.ac.jp/db/index.html
大宅壮一文庫雑誌記事索引検索
CD-ROMからWEB版に切り替えました。1988年以降の週刊誌、大衆
誌の記事200万件以上を検索できます。(1987年以前は中央館参考図
書コーナーの冊子をご利用ください。) <同時利用1名>
1987年4月以降の中日新聞、1997年4月以降の東京新聞の記事を全文
フリーワードで検索・表示できます。90年代後半からは中日新聞地
域版も収録しています。 <同時利用1名>
オックスフォード大学出版局発行の辞書・各分野の専門事典・年
表・地図など100タイトル以上が利用できます。
<同時利用制限なし>
冊子から切り替えました。世界各国の雑誌・新聞など25万誌の刊行
情報を調べられます。目次情報にもリンクしています。
<同時利用1名>
研究社発行の12種類の英和・和英辞典を検索できます。最新の語も
追加されていきます。 <同時利用10名>
MLA
International Bibliography
冊子から切り替えました。言語学分野で定評のある索引誌です。
EBSCOhostのメニューに追加されています。 <同時利用1名>
− 9 −
館燈
No.158(Feb. 2006)
本学教員著作物の寄贈リスト
中央図書館では、教員著作物等を積極的に収集しています。平成17年6-12月は下記の図書を寄贈していただきました。
ここにあらためてお礼申し上げます。
所 属
寄贈者名
名 誉 教 授
毛利佳年雄
名 誉 教 授
(故)武田喬男
附属図書館長
伊 藤 義 人
附属図書館
研究開発室
教育発達科学
研
究
科
(寄贈者の敬称は略します)
資 料 名
磁気センサ理工学 / 毛利佳年雄著. − コロナ社, 1998.3.
雨の科学 : 雲をつかむ話 / 武田喬男著. − 成山堂書店, 2005.5. −(気象ブックス
; 015).
Proceedings of the first International Conference on Advances in Experimental
Structural Engineering, July 19-21, 2005, Nagoya, Japan : AESE 2005 / edited by Y.
Itoh and T. Aoki. − v. 1, v. 2. − Ichiryusha, c2005.
資料ID
11497558
11500342
41384451
41384452
中央図
524/I
中央学
017.7/I
中央学
371.42/I
中央学
913.6/I
中央学
329.87/H
逸村 裕
変わりゆく大学図書館 / 逸村裕, 竹内比呂也編. − 勁草書房, 2005.7.
11504932
今津孝次郎
いじめ問題の発生・展開と今後の課題 / 今津孝次郎著. − 黎明書房, 2005.11.
11518793
法学研究科
磯部 隆
神の箱 : ダビデとその時代 / 磯部隆著. − 春風社, 2005.5.
11499441
法学研究科
本 間 靖 規
国際経済動態
研究センター
平川 均
理学研究科
福 井 康 雄
理学研究科
山 脇 幸 一
理学研究科
山 脇 幸 一
医
学
部
保 健 学 科
医
学
部
保 健 学 科
医
学
部
保 健 学 科
工学研究科
生
研
生
研
生
研
生
研
命 農
究
命 農
究
命 農
究
命 農
究
学
科
学
科
学
科
学
科
鈴 木 國 文
津 坂 昌 利
津 坂 昌 利
11517567
11502416
中央学
332.2/H
11502415
中央学
440.12/Sa
41383918
中央図
432.3/In
41383919
11499437
11499436
11502413
初歩から学ぶ乾燥技術 / 中村正秋, 立元雄治著. − 工業調査会, 2005.7.
11517566
小 田 裕 昭
健康栄養学 : 健康科学としての栄養生理化学 / 小田裕昭, 加藤久典, 関泰一郎編.
− 共立出版, 2005.4.
11504933
小 田 裕 昭
代謝栄養学 / 横越英彦編著. − 同文書院, 2005.4. −(ネオエスカ).
11504934
小 田 裕 昭
食 up to date : 食と健康, 食と安全, 食と環境 / 松田覚編集. − 金芳堂, 2005.1.
11504935
むしの才覚を探る. − [「昆虫特異機能の発現機構と開発」研究推進委員会],
[2005.3].
Early childhood developmentの支援に関する基礎研究 / 三輪千明 [著]. − 国際協
力機構国際協力総合研修所, 2004.8. −(総研 ; JR 03-54 . 国際協力機構客員研究
員報告書 ; 平成15年度).
11504936
11495784
中央学
333.8/Ko
国際教育開発論 : 理論と実践 / 黒田一雄編, 横関祐見子編. − 有斐閣, 2005.4.
11495785
中央学
370.4/Ku
41383920
中央図
372.235/G
沼 利 信
三 輪 千 明
国 際 開 発
研
究
科
北 村 友 人
国 際 開 発
研
究
科
北 村 友 人
西 川 芳 昭
西 川 芳 昭
西 川 芳 昭
ス ネ ー ト ・
カンピラパーブ
中 井 政 喜
Assessment of Community Learning Centre (CLC) experience in Cambodia : making
CLC work / Graduate School of International Development Nagoya University,
Asia/Pacific Cultural Centre for UNESCO. − GSID, Nagoya University, 2005.
作物遺伝資源の農民参加型管理 : 経済開発から人間開発へ / 西川芳昭著. − 農
山漁村文化協会, 2005.1.
グリーンツーリズム : 文化経済学からのアプローチ / 駄田井正, 西川芳昭編著.
− 創成社, 2003.3.
地域文化開発論 / 西川芳昭著. − 九州大学出版会, 2002.10. −(久留米大学経済
叢書 ; 10).
日本・タイ両国における「市民性」の育成に関する実証的比較研究 / 研究代表者平田利文. − [出版
者不明], 2005.3. −(科学研究費補助金(基盤研究(B)(1))研究成果報告 ; 平成14-16年度).
一九二〇年代中国文芸批評論 : 郭沫若・成 吾・茅盾 / 中井政喜著. − 汲古書
院, 2005.10.
大気の本 : きれいな空気をとりもどそう! / 神沢博執筆. − ポプラ社, 2004.4. −
(考えよう地球環境 ; 2).
11499438
11499439
11499440
11504937
11513834
11497557
環境学研究科
神沢 博
環境学研究科
林 上
都市サービス地域論 / 林上著. − 原書房, 2005.9.
11513835
小 池 直 人
デンマークを探る / 小池直人著. − 改訂版. − 風媒社, 2005.5.
11502414
村木 綏
3つのダークマター : 量子力学で理解する宇宙と素粒子 / 村木綏著. − 開成出版,
2005.9.
11515225
情 報 科 学
研
究
科
太陽地球環境
研
究
所
中央図
429.6/H
中央学
493.74/Su
中央学
490.7/Ta
中央学
492.43/Tu
中央学
571.6/N
中央学
498.56/O
中央学
498.5/Y
中央学
498.5/Ma
中央学
486.1/Mu
中 村 正 秋
国 際 開 発
研
究
科
国 際 開 発
研
究
科
国 際 開 発
研
究
科
国 際 開 発
研
究
科
国 際 開 発
研
究
科
国際言語文化
研
究
科
国際民事手続法 / 本間靖規, 中野俊一郎, 酒井一著. − 有斐閣, 2005.9. −(有斐
閣アルマ ; Advanced).
通貨危機後のアジア経済と改革への展望 : タイ・インドネシア・韓国を中心に
/ 平川均, 佐藤隆文編著. − 名古屋大学大学院経済学研究科附属国際経済動態研
究センター, 2003.8. −(名古屋大学国際経済動態研究センター叢書 ; 10).
高エネルギー宇宙物理学 : 宇宙の高エネルギー現象を探る / 桜井邦朋編. − 朝
倉書店, 1990.2.
Perspectives of strong coupling gauge theories : Nagoya, Japan, 13-16 November 1996
: proceedings of the 1996 International Workshop / editors, J. Nishimura, K.
Yamawaki. − World Scientific, c1997.
Strong coupling gauge theories and effective field theories : proceedings of the 2002 International
Workshop / editors, M. Harada, Y. Kikukawa, K. Yamawaki. − World Scientific, c2003.
トラウマと未来 : 精神医学における心的因果性 / 鈴木国文著. − 勉誠出版,
2005.5. −(精神科医からのメッセージ).
パーフェクトガイド!医用internet(インターネット) / 高橋正樹, 津坂昌利編 ; 古賀
佑彦監修. − 金原出版, 2001.10. −(臨床放射線 ; 第46巻別冊(10月臨時増刊)).
3D PACS : ネットワーク対応リアルタイム3Dイメージング / 津坂昌利編. − インナ
ービジョン, 2005. −(Innervision = インナービジョン ; v.20 no.5 臨時増刊号).
配置場所
中央学
541.58/Mo
中央学
451.64/Ta
− 10 −
中央学
615.2/N
中央学
689.4/N
中央学
601/N
中央学
372.2/H
中央学
920.27/N
中央学
519.08/Ka
中央学
673.9/H
中央学
302.3895/Ko
中央学
429.6/Mu
名古屋大学附属図書館報
≪利用者から見た図書館≫
気分はベー・エヌ
石 井 三 記
図書館のなかはどうだろう。入口に入って、
おそらく、この原稿依頼はフランスで在外研
究をしてきたということもあって私のところに
わたしとしては、まず新刊書コーナーがあると
来たのではないかと勝手に想像する(こういう
いい、と思う。ただし、あまりに新刊書コーナ
「弱み」があるので原稿を断れるわけもない)。
ーの点数が少ないとさびしい。それを補う意味
ところで、フランス語でB.N.(ベー・エヌ)と
で、新聞等の書評欄のページなど置いていただ
いえば、フランス関係の研究者や学生仲間では、
くなんてことはできない?(書店じゃないから
周知のように、あの「国立図書館(Bibliothèque
ね、との声も)
この図書館、建物が建ったときは、おそらく、
Nationale)」のことを指す。「ベー・エヌ族」な
ることばもあるようで、余暇をパリのB.N.です
豊田講堂と向き合うモダニズムの理念にもとづ
ごす、優雅な生活のことをいうようだ(わたし
く建築物だったのではなかろうか。このことと
には縁がなかった)。世界でも有数の規模を誇
関係などないだろうが、今はなくなった洗面所
る、パリ13区トルビアックの、とにかく巨大で
の手を洗うとき、水を出すのが足でボタンを踏
モダンなB.N.の、豪華客船の甲板のような木組
む方式だったのがなつかしい。パリにふたつあ
みの床を通って、入り口でチェックを受け、さ
るうちのモダンなほうのバスティーユのオペラ
らに研究者用閲覧室まで、長い、なが∼いエス
座(1989年のフランス革命200年のときに建設
カレーターをメタリックな壁面を見ながら、降
された)の洗面所が、この方式である(身体感
りていく感覚がなんとも忘れがたい(個人的に
覚とはおそろしいもので、オペラに行くたび、
はリシュリュー通りのほうの昔ながらのB.N.の
名古屋大学附属図書館のことを思っていたわた
ほうが好きだが)。トルビアックのB.N.は4つ
しはトリビアすぎる?)。で、このモダニズム
の建物からなり、それが開いた書物のようなか
の建物、重厚なんだけど、暗い。しかも、豊田
たちになっている。その地下に研究者用の閲覧
講堂と向き合う部屋が海外放送の部屋だった
室があるのだが、そこが、まるで地底の別世界
り、特別展示室(カーテンが必要なことが多い)
を思わせるような部屋になっており、広大な地
だったりと、使い方は再検討すべきではないだ
下庭園を囲む閲覧室のなかで、閲覧者は一心不
ろうか。また、階段の踊り場などに、大学所蔵
乱にそれぞれの仕事に没頭している。
のまともな美術品(ないのだろうか?)なんか
さて、依頼された原稿は「世界の図書館めぐ
が展示されていてもいいかな、と思う。そして、
り」などではなく、名古屋大学附属図書館のこ
1年周期ぐらいで替えるようにする、というの
とである。ここは、地下鉄名城線の駅からの
はどうだろうか。
「緑のトンネル」が心地よい。ときどき、空想
強引すぎるのは承知のうえで、名古屋大学附
してしまうのだが、池のところを噴水が出るよ
属図書館もBibliothèque universitaire de Nagoyaな
うにして、図書館の前のあたりにカフェのテラ
のだから、ベー・エヌと呼べないこともない
スでもあって、木陰でコーヒーでも飲みながら
(やっぱ、無理?)。図書館の玄関前でカフェを
(ワインでもいいが)、本を読んだり、おしゃべ
開くことになったら、「Café B.N.」の名前を候
りしたりできるようにしたら、どうだろう。円
補のひとつにしてもらうというのは、ダメです
形劇場部分で音楽でも聞かせるようにしてくれ
か。ともかく、気分だけはベー・エヌと心に想
てもいいけど(じつは、この原稿は夏に書いて
い描いて、図書館に行くことにしたい。
おいたので、「冷やした」ワインと書いたのを、
(いしい・みつき 法学研究科教授)
提出時に修正しました)。
− 11 −
No.158(Feb. 2006)
館燈
便利な教育学部の図書館
Fermirina F. M.
私が最近よく利用する図書館は、「教育学部
3つ目に、OPACのメリットである。OPAC
の図書館」である。インドネシアで私が通って
は、借りたい図書がどの図書館にあるかや、図
いた学部の図書館に比べ、1つ目立った違いが
書の貸し出し状態、また、もし名古屋大学にな
ある。それは、貸し出しの制度である。
ければどこの大学が所蔵しているか、を知るこ
インドネシアの図書館では、備え付けのパソ
とができる。それだけではなく、自宅にいなが
コンで資料を探し、見たい/借りたい資料のリ
らOPACで資料を検索することができるのもメ
ストを作成し、それを図書館のスタッフに渡す。
リットだと思う。
そうすると、図書館のスタッフがリストに書い
4つ目は、電子ジャーナルの威力。電子ジャ
てある資料を探してくれる。このような制度は
ーナルはレポートを書いたり、研究計画を立て
良いと思うが、備え付けのパソコンが1台か2
たりする時に不可欠である。さまざまな電子ジ
台しかないため、図書館が混んでいる時には待
ャーナルにアクセスすることができ、目当ての
たされることがあった。これに対し、名古屋大
論文を保存したり、印刷したりすることもでき
学教育学部の図書館では学生でも借りたい図書
るため、このような設備は非常に役立つ。
最後に、私にとって大きな助けとなっている
に直接アクセスできる。
教育学部の図書館について、良いと思う点を
のは、司書が図書館の利用法や提供されるサー
ビスの活用法などを親切に教えてくれることで
いくつか取り上げる。
まず、静かで快適な自習室があること。この
ある。図書館に関して知らないサービスがあっ
ような環境のお陰で勉強に集中できる。しかも、
ても、司書のガイダンスを受けたことで、図書
そこでは自分のノートパソコンを使うことがで
館を最大限利用することができるし、自分の勉
きるのも便利である。
強にも役に立つ。
2つ目に、検索コーナーに5台のパソコンが
このように、(教育学部の)図書館は学生に
備えられているため、図書館が混んでいる時で
とって大変有用であるといえる。今後も利用し
もパソコンで図書を探すことができないという
続けたいと思う。
(フェルミリナ F. M. 教育学部3年)
ことがあまりない。
333333〔行事等〕<17.10.6∼18.1.5>333333
・留学生ガイダンス・ツアー<10.7,12,13>
・「館長と話そう!2005」<12.12>
・電子ジャーナル・データベース講習会<10.18,19,
◆部局動向
21,25,28,11.2,4>
・中央館:施設利用時間を平日21:00までから21:30
までに延長<1.5∼試行>
・名古屋大学附属図書館2005年秋季特別展「知の万
華鏡−書物からみた18世紀の西洋と東洋−」<10.
・工:講習会「インパクトファクターとは何か」実
21∼11.11>
施<10.21>
・名古屋大学附属図書館2005年秋季特別展講演会
・工:昼休み時間帯の開室開始<11.1∼>
<10.22>
・名古屋大学ホームカミングディにおける附属図書
臼井克巳(委員長)前川宏司(中)田丸京子(中)
館見学ツアー<10.23>
・名古屋大学附属図書館2005年秋季特別展資料講座
<11.3>
編集委員会
照井香(中)岡田智行(経)堀茂(情文)
伊藤由美(理)濱島泰子(工)
館燈(かんとう): 名古屋大学附属図書館報 No.158 2006年2月15日 名古屋大学附属図書館発行
〒464−8601 名古屋市千種区不老町 電話(052)789−3684(ダイヤルイン)
− 12 −
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