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「生命保険契約法」(ー)

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「生命保険契約法」(ー)
ブルック=デルストリング
「生命保険契約法」(1)
く翻訳〉 中 西 正 明
(京都大学助教授)
はしがき ブルック、デルストリング両氏の「生命保険契約法」(BruckDoerstlinglDas Recht des Ledensversicherungsvertrags,2.Aufl.1933は
ドイ、ソの生命保険会社協会が1930年から1931年にかけて作成した生命保険契約の
標準約款ないし模範約款の註釈書であって,当時のドイツの生命保険契約法を詳
細に叙述したものである。その後における法律・約款の改正,判例・学説の発展
その他の諸事情の変化により現行法の叙述として適当でなくなっているところも
あるが,ドイツの生命保険契約法の全体を説明したものとしては現在でも最も詳
細な書物であって,全体としてはなお今日的意義を失っていないと考えられる。
近時のドイツの文献でも生命保険契約法に関する参考書として本書をかかげてい
るものが多い(たとえばJ.V.Gierke,Versicherungsrecht,2.H嵐1fte再好
S.326;Koch,Einfuhrung in das Versicherungs-Schriftum〔Die
Versicherung Bd.5,1962-1964〕S.121;Prblss, VVG.15.Aufl.
1965,S.737;Eichler,Versicherungsrecht,1966,S.171)。
本稿はこの書物の翻訳である。翻訳については日本語どして通りをよくするこ
とを重要視した。また便宜上若干の説明を付加したところがある。なお、引用き
れている文献や判例は日本語になおしてもあまり意味がないと思われるので,大
体原文のままにしてある。このような仕事は、本来は私自身の勉強のための個人的
な覚書として匪底に秘しておくべき性質のものであるが、多少資料としての意味
もあるかと思い、本誌に掲載していただくこととした。今回はその第1回で、同
書の最初にある総括的前註全部および第1条の註釈のほぼ前半にあたる部分をかかげる。
なおこの部分についてはすでに奥田宏氏の翻訳(タイプ印刷)があり、参照し
て教示を受けた。
-109一
「生命保険契約法」
総 括 的 前 註
目 次
文 献
、・・‥・・‥……註1
I.従来の標準約款の沿革
2
Il.新標準約款の沿革
3
m.従来の標準約款と新標準約款の相違点
4
Ⅳ.商行為としての生
5
〔註1〕文献 Bache,dRevue,1910,227;Hagen,Z.1910,
202;Liertz,Mitteilungen1916,304;R融iger,Die Rechtslehre
VOm Lebensversicherungsvertrag,Berlin1885;Samwer,Ass
Jhrb. Bd.28.I.3.工ntern.Vers-Kongress
VI(Wien1909)
Bd.2.3.
〔駐2〕I.普通保険約款の歴史.は古くまでさかのぼる。1908年5月30日
制定の現行ドイツ保険契約法は1910年1月1日から施行されているが、同
法施行以前においては、ドイツの各生命保険会社は内容・形式の両面で相
当に異なった保険約款を使用していた。各保険全社が自社の特色を発揮す
るよう努力を払うのは当然であるが、この努力が保険契約ないし保険約款
の内容についても顕著に行なわれていたのである。このような約款の不統
一を除去し約款の内容の統一をはかる試みとしては、1875年にドイツ生命
保険会社協会(Verein Deutscher Lebensversicherungs-Gesell,
schaften)に所属する17の保険会社が統一的な約款の案を定めたのがは
じめである(Rudiger315ff.)。しかしこの案は同協会の採用するとこ
ろとならず、また各保険会社についてみても、多数の会社がこの案を採用
するには至らなかった。
ドイツ保険学会が編集した「ドイツ保険事業者保険約款集」の第2部
(1909年発行)に、歴史的に重要な約款および当時行なわれていた約款の
一110-
「生命保険契約法」
例かかかげられている。
その後しばらく約款統一のことはあまり問題とされなかった。これが再
び活発に問題とされるようになったのは、ようやく保険契約法の施行が間
近にせまってからである。ドイツ保険会社連盟(Verband Deutscher
Lebensversicherungs-Gesellschaften)は、1904年にはじまる長期間
にわたる検討の末、所属36社の委託をうけその名において死亡保険の標準
約款の草案を私保険監督局に提出した。この草案は、1909年2月18日の委
員会決定(Senatentscheidung)(VA.1909.154)により若干の条件を付
して認可された(VA.1909.92ffつ。この標準約款についてはその後私保
険監督局がその意味を明らかにする趣旨の若干の説明を行なっているが、
認可後に改められたのは医師の報告に関する規定(7条・11条)のみであ
る。
1910年1月1日以降効力を有する各社の死亡保険の普通保険約款を集め
たものとして、ツアーンプレツヒャー(Zahnbrecher)氏が生命保険会社
連盟の依嘱により編集した約款集(1910年発行)がある。また前述の約款
集の第5部第1分冊(1912年発行)には、この標準約款と各社でこれに加
えている変更の重要なものとがあわせて掲載せられている。
〔匝3〕IL1909年の標準約款(以下これを旧標準約款または旧約款
という)の全面改正の機縁となったのは、ドイツ生命保険会社協会のケル
ン総会におけるハフナー(Hafner)氏の「生命保険の領域における近時
の判例」と題する講演である。この講演で同氏は、会社間の鏡争の激化に
ともない次第に約款も競争の手段とされるようになって来ていること、
および約款が各社で異なるところから全く同様の事案について裁判上異な
った結論が出されることが少なくなく、約款の相違が裁判において保険会
社の不利に作用していることを指摘し、できるかぎり約款の統一をはかる
ことが必要であると説いた。
ドイツ生命保険全社連盟は1928年10月16日の委員会において約款草案
-111-
「生命保険契約法」
作成専門委員会を設置することを定め、ここにハフナー氏の提案が実際に
取り上げられることとなった。約款専門委員会は連盟委員会との連縁の下
に草案を作成した。連盟委員会は1929年10月12・13の両日これを審議し、
その結果まとまった草案を連盟所属の各保険会社に送付してその意見を求
めた。同草案はその後1930年2月12日に連盟委員会において改めて詳細に
検討され,書き改められた。1930年6月4・5両日の連盟総会では、若干
の修正を加えてこの草案を承認し、ある保険会社からこれを保険監督局に
提出してその認可r保険監督法第5条3項)を求めることに決した。監督
局はこの章案を詳細に検討し、1931年7月23日の委員会決定,1932年1月
27日の上級機関決定(Berufungsentscheidung)およびその後における
監督局処分をもってこれを認可した。認可せられた約款の文言は保険監督
局公報(VAつ1933年度115頁以下に褐載せられている。
連盟では、1931年6月9・10両日の総会において監督局の修正提案に関
する連盟の態度を決定し、標準約款を最終的に確定した。
本書では1930年6月4・5両LIの連用総会および1931年6日9・10日目川の
連盟総会の決議によって定められた標準約款の文言を基礎として説明する。
〔註4〕 111.新旧両標準約款の相違としては、内容面よりはむしろ用
語および約款の構成の面における相違が重要である。
まず用語の点について述べると、新標準約款では保険法について知識を
有しない者でも約款の内容を理解しうるような用語を-一貫して使用してい
る。たとえば1粂2項において保険契約者および被保険者の意義を定めた
こと、5条2項の脚註において責任準備金の意義を定めたこと、そしてと
くに一一一他の保険種類の約款と異なり-複雑でかつ各所に散在する保険
契約法の規定を約款の中に入れたこと、しかもこれを一一般人にもわかりや
すい形で入れたこと(とくに4条・5条・8条参照)は、いずれも上述の
目的に役立つものである。
約款の構成の面では、新標準約款は、保険契約の申込みにはじまる保険
-112-
「生命保険契約法」
契約の進展の順序にしたがって規定を配列している。
内容の面ではなかんずくつぎのような変更が行なわれた。
a)2条1項では、旧標準的款の錯誤による取消の規定川1約款1条2
項)を削って、実質的保険開始(materieller Beginn der
Versicherung)以前に死亡・病気または傷害が発生しないことが保
険会社の給付義務の前提要件であることを明示した。
b)3条5項は、次回後保険料の払込の猶予期間が1カ月であること、保
険料が月払の場合にはこれが2週間であることを定めている。旧約款で
はこれはいずれの場合も2週間であった(旧約款1条1項2文)。
C)4条1項では、保険料等の支払の催告は書面によってなすべきこと、
およびその署名は機械的複写によるもので足りることを定めている。旧
約款には規定がなかった(旧約款3条1項参照)。
d)4条2項では、保険料等の支払の遅滞の効果を大体保険契約法の規定
にならって定めている。
e)4条4項では、保険契約法39条(1924年2月12日命令-RGBI
I.65-による改正規定)にしたがって、解約せられた保険契約の復
活期間を1カ月と定めている。旧約款3条3項の特別復活期間は廃止せ
られた。
り 旧約款では保険料払済保険への変更の請求は保険年度の終りにのみ行
ないうるものとせられていたが(旧約款4条1項)、新約款では保険年
度の途中でも3カ月の予告期間をもって各月の終りにこれを行ないうる
こととした(5条1項)。これにともない、猶予期間の経過後も末払込保
険料の払込期日に進行中の保険年度の終りまで保険が効力を有する旨の
旧約款3条2項bの規定は、無意味となった。
g)同様に保険契約の解約およびこれにもとづく解約返戻金の請求は、保
険年度の途中でも3カ月の予告期間をもって各月の終りになしうること
とした(6条1項3項)。従来は解約は保険年度の終りにのみなすことが
-113-
「生命保険契約法」
でき、保険料を継続して支払う契約では、このほか、新保険年度の最初
の1カ月内は予告期間なしにこれをなしうるものとなっていた(旧約款
5条1項)。
h)新約款は、保険契約者貸付については、旧約款6条と異なり、統一的
な規定は設けず、若干の指針を示すにとどめた(7条)。
i)8条3項aは、保険契約法16条3項および44条にしたがい、告知され
なかった事実を保険会社が知っていたときは解除をなしえないこと、お
よびこの場合に保険募集人の悪意は当然に保険会社の悪意と同視せられ
るものでないことを定めている。旧約款では規定がなかった。
k)旧約款7粂2項では告知義務違反を理由とする解除の場合のいわゆる
因果関係の存否の問題に関して、保険契約法21条にならって「および給
付の範周について」という文言を入れていたが、これは不必要であるの
で、新約款ではこれを削った(8条3項C)。
1)8条5項では、旧約款の7条4項2文と異なり、詐欺を理由とする取
消の場合にも解約返戻金を支払う旨を規定した。
m)旧約款と異なり新約款では外国危険もはじめから保険の対象となるも
のとした。
n)自殺の規定は保険契約法の規定と同趣旨のものとした(10条)。旧約款
10条では保険契約法の規定と異なる特別の定めをしていた。
0)保険会社の調査権は旧約款(11条)よりも制限せられることとなった
(11条)。
p)14条1項によれば、保険会社の意思表示は、保険契約者がその宛所に
いたならば表示の内容を知りうべかりし時にこれに到達したものとみな
される。旧約款の18条1項では、保険契約者がその住所を変更しない場
合には、故意に受領を避けることができる結果となっていた。
q)15条1項3文は、撤回しえない受取人指定については受取人の同意が
ある場合にのみ撤回しうるという点が重要であることを明確にした。旧
一114-
「生命保険契約法」
約款15条1項4文では、撤回しえない旨が保険証券に記載せられている
か否かが重要な意義を有することとなっていた。
r)15条3項は、民法334条との関係で、解除および取消は第三者たる受取
人に対しても主張しうる旨を定めている。旧約款の15条2項の規定はこ
れよりも狭かった。
S)17条1項は、証券の喪失の証明があった場合に催告の手続(旧約款19
条)をへないで代り証券を発行することができる旨を定めた0
〔註5〕Ⅳ.商行為としての生命保険契約 保険料を対価とする生
命保険の引受は商法にいう商業(Handelsgewerbe)であり、これを営む
者は商法上の商人である(商法1条1項、同2項3号)。保険会社が相互会
社であるときは、その保険契約は商行為ではない。相互会社は商法1条
によっても同法2条によっても商人とはならない。しかし、保険監督法16
条により、商法典第1編および第3編の商人に関する規定は、第1条ない
し第7条を除くほか相互会社に準用せられる。ただし、これによって相互
会社が(たとえば税法の関係で)商人となるのではない。商法の関係規定
の準用をうけることとなるにとどまる。相互会社が確定保険料による保険
(保険監督法21条2項)を行ない、しかもその保険契約者を社員としない
ときは、その範囲で商人資格を取得する(RG.21.10.91B d.28.313)。
保険が保険契約者にとって商行為であるか否かは、商法343条1項によ
って定まる。同条によれば商人の行為であってその商業の経営に属するも
のはすべて商行為である。たとえば商人がその共同事業者の生命を保険に
付することはその商業の経営に属するものといえるが、商人がその妻の生
命を保険に付するのは商業の経営に属しない(RG.13.11.85Bd.14.237)。
保険契約者と被保険者が別人である場合に被保険者が商人資格を有するか
否かは問題とならない。
保険契約が双方的商行為であるときは商事部が管轄権を有する(裁判所
構成法101条)。
一115-
「生命保険契約法」
第1条 総
則
1.生命保険に加入したい者は、保険契約申込書を提出し、かつ保険会
社が引受ける危険に関するすべての重要な事実を正しくかつ完全に告知し
なければならない(第8粂参照)。申込者は6週間申込に拘束される。この
期間は、診査医の診査の日から、診査をしないときは申込の日から、計算
する。
2.保険契約者とは保険契約の申込をした考をいい、被保険者とはその
者の生命について保険契約が締結された者をいう。
3.会社は申込を拒絶する際にその理由を述べる義務を負わない。申込
書類はすべて会社の所有とする。
4.会社は、保険契約について保険証券を発行する。保険証券には機械
的複写の方法をもって署名することができる。保険契約者が保険証券を受
領し,かつその記載内容に申込の内容と異なる点があるときはその相違点
について書面による通知を受けた時から1カ月内に、証券の内容が正しい
ことにつき異議(14条3項)を述べないときは,証券の記載内容を承認し
たものとみなす。ただし,保険契約者は錯誤を理由として承認を取消すこ
とを妨げない。
5.この約款に別段の定めのない事項については、法律の定めるところ
による。
一116-
「生命保険契約法」
第1桑
目
次
A.保険契約の基礎(5璃)
文 献
I.保険約款
1.8)普通保険約款
b)認 可
c)内 容
3
4
5
契約自由のI削除
d)車働的適用j範囲
6
・….=・7-9
e)時間J的適用範囲
f)上告可能1生
2.特別保険約款
8)契約締結前の合意による特別保険勅款・保険
契約者に有利なもの
12
同前・保険契約者に不利なもの
13
契約締結後のノ含意による特別保険東町款
14
b)保険約款の通用の順位
15
C)上告可能性
3.約款解釈の諸原則
8)文 献
16
b)個々の1弾1尺l幕別
C)保険契約者・被保険者・保険会社.・会社.‥・………・・=…………‥ 19
II.法 律
1.保険契約法
2.保険監督法
3.民法典
B.保険契約の成立(1項、3項)
文 献
法律および約款の規定
I.保険契約締結の申込
1.申込の法的性質
2.保険契約者が申込人となる場合
a)保険契約者が行為無能力者である域で合
-117-
「生命保険契約法、I
b)保険契約者が制限的行為能力者である場合
α)文 献
26
β)法定代理人の同意
後見裁判所の許可
γ)同意に関する諸問題
C)保険契約者が∃豪である場合
3.保険会社が申込人となる場合
実払保険料計算表
4.他人の生命の保険
27
28
29
30
31
8)意 義
b)種 類
α)生存保険
β)死亡保険
α α)文 献
34
ββ)行なわれる場ノ合
35
γγ)同 意
36
お∴ざ)被保険者が行為能力を有しないとき……・…‥・‥‥・…
37
5.数人の保険契約者が申込をなす場合・
38
他人の生命の保険で被保険者が数人である場合
6.宛 所
7.効力発生
8.方 式
9.内 容
10.普通保険約款の交付
39
40
41
42
43
11.効 果
8)承言若期間
存続】明聞
b)保険契約者の拘束
C)保険契約者が後に行為無能力者となった場合。申込の撤回…… 47
12.申込書のうつし
IL 申込の承諾または拒絶
1.8)形式的保険開始
b)承 言若
50
c)方 式
51
d)申込と承喜若が一致するj鼻合
52
変更承諾
53
54
e)形式的保険開始の時期
55
-118-
「生命保険契約法」
f)承言若の撤回
56
g)契約締結上の過失
57
58
2.拒 素色
111.保険証券(第4項)
1.発 行
59
8〉 発行1靖求権
b)内 容
C)署 名
2.法的1生質
8)ま正1処証券
60
61
62
b)1責務狂者・
C)免責証券
3.代り言証券
4.保険吉証券が正しいことに対する異議
a):定 離
64
も)相 i皇
65
C)相i皇した胃正春を受寺顕したことの効果
66
d)異議権の理由
α)異議の法的性質
67
68
β)権利者
γ)期 間
♂)方 式
C)内 容
73
r)異議の撤回
74
り)効 力
75
e)異議を述べないこと
76
f)j承認の取消
77
g)契約の取消
5.保険会社による取消
78
79
附 説I.時点と期間
I.時 点
Il.期 間
1.実質的区別
8)最・少期間
b)最長鈍間
2.除斥J明間
8)法定の除斥期間
81
82
83
84
85
ー119-
「生命保険契約法」
b)約定除斥期間
3.計 算
附 脱Il.譲査医による惨査
1.意 義
2.法的性質
88
89
90
1貴書事賠償惰球種
費用の賠1賞
91
3.申込に対する影響
92
相 貌 爪.医師の地位
文 献
93
I.職務の範囲
II.1.珍重医
2.責 任
94
刑 ま去
97
3.告 知
4.黙秘義∃防
そのi皇反
98
95
96
99
100
m.家廉医
1.黙秘義1努
2.報 告
101
102-103
Ⅳ.通知団体
Ⅴ.査定医
〔柱1〕 第1条は、「総則」と題して、第1項では保険契約の申込、
第2項では保険契約者および被保険者の意義、第3項では申込の拒絶、第
4項では保険証券、第5項では保険契約の基礎について規定している。旧
約款では承諾期間(1条1項1文)および証券の記載内容に関する異議に
ついてのみ規定していた。
以下では、これらの諸問題のほか、時点および期間、診査医の診査、な
らびに医師の地位についても、あわせて説明する。
A.保験契約の基礎
〔駐2〕 文献。Behrend,ZHR.Bd.55.1;Bruck16;Ehren-120-
「生命保険契約法」
berg,Z.1903,315;Hagen Bd・1・25;Koenige LZ・1907,620;
Kubel MalssZ.Bd.V.321, Bd.2.1;Prange,Kritische
Betrachtungen zu-dem Entwurf eines VVG.,Leipzig1904;
Zehnter,Arch BurgR.Bd・20・1・Verbffentlichungen Heft 2・
I.保険契約の基礎は,第-に偲検釣紋である。保険約款に規定がない
場合には法律の規定によることになる(5項)。
〔牲3〕1.a)標準約款は,将来締結される多数の契約の通常の内
容をなすべきものとして作成せられた典型的な約款であって、普通保険約
款としての性質を有する。個々の具体的な保険契約においては、保険契約
申込書および保険証券に約款によって契約する旨の記椛があり、従って普
通保険約款を基礎として契約する旨の明示の合意があるのが通常である。
しかし、保険者は多数の契約を締結する関係上普通保険約款を使用すると
いうことは保険契約者の当然予期すべきことであるから、その適用範囲
(註7-10)内では、少なくともこれを基礎として契約する旨の黙示の合
意があるというべきである(OLG.Frankfurt16.3.27.VA.1928.
236.Nr.1745;OLG.Hamm 25.6.28JR.1929.83;Raiser 51.
ただしOLG.Celle 2.2.32JR1932.266,23.2.32VA.1933.229
Nr.2427はこれと異なる趣旨を説く)。申込者が保険契約申込書において
普通保険約款に従う旨を表示したときは、申込者は、約款の内容を知らな
くてもその拘束を受ける(OLG.Rostock 9.12.26 Praxis des
Versicherungsrechts1927.73;OLG Kblnl2.12.30VA.1931.
241Nr.2199;KG.28.10.31VA.1932.258 Nr.2322)。
しかし,保険契約は必ず普通保険約款を基礎としなければならないとい
う必然性はなく、そのような義務もない。法律の規定のみを基礎として締
結せられるものとして,たとえば旅行者生命保険(Reiselebensversicherund
がある。
〔註4〕 b)普通保険約款はこ それが保険会社の事業経営上有する垂
一121-
「生命保険契約法」
要性にかんがみ、基礎書類の一つとして監督官庁の認可をうけることを要
するものとされている(保険監督法5粂3項2号)。普通保険約款を変更し
たときは、基礎書類の変更となるから、これを監督官庁に届出て、その使
用前に監督官庁の認可をうけなければならない(保険監督法13条1文)。
監督官庁による普通保険契約款の認可は、保険事業に対する実体的監督
制度により原則としてすべての保険事業者に対して行使される国の監督権
の一つのあらわれである。この認可は、私法的意味ではなく、公法的な意
味を有する。必要な認可をえないで普通保険約款を使用する企業は、監督
官庁により-場合によっては罰金をもって-法律の規定に従うよう強
制され(保険監督法81条)、終局的には営業免許の取消の処分を受けるこ
ととなる(保険監督法87条1項)。しかし認可は通常裁判所を拘束する効力
を有するものではない。また監督官庁が普通保険約款の解釈に関して示す
見解は、裁判所または当事者を拘束するものではなく(保険監督局の行政
慣習もこの見解を前提としている)、裁判所は監督官庁の見解に従うこと
を要しな・い。ことに裁判所は、監督官庁が認可した普通保険約款について
も、その条項が保険契約法の強行規定を保険契約者の不利益に変更したも
のでないか否かを審査し、これにもとづいて普通保険約款の条項の効力を
否認することを妨げられない。他方において、認可を受けない普通保険約
款を基礎として保険契約が締結せられた場合でも、そのことのゆえに保険
契約が当然に無効になるものではない。けだし、警察的禁止の違反があっ
ても当然に民法134条による無効を生ずるものではないからである(OLG.
KarlsruhelO.4.02 DJZ.1903.58;OLG.FrankfurtlO.11.
20VA.1922 67 Nr.1222。反対説はLiertz Mitteilungen1916.
304のみ)。監督官庁の認可が例外的に私法上の効力を有する場合がある。た
とえば保険契約法40条2項3文(標準約款2条2項2文)の営業費用の算
定の場合,子供死亡保険における保険会社の給付の最高額を定める場合
(保険契約法159粂3項2文),保険料積立金からの控除額を定める場合
-122-
「生命保険契約法」
(保険契約法174条4項2文、同176条4項2文、標準約款6条3項)、
少額生命保険の範囲を定める場合(保険契約法189粂2項)等である。な
お保険契約法89条2項1文参照。
〔駐5〕C)普通保険約款の記載事項(相互会社ではこれを定款に記載
してもよい。保険監督法10粂2項)については、保険監督法10条1項がそ
の大綱を定めている。普通保険約款においては当事者間の法律関係に関す
る重要な問題を明確に定めなければならない。ことド当事者双方の権利・
義務をできるかぎり完全に規定しておくことを要する(VA.1931.145)。
それゆえこの普通保険約款には,法律の規定に多少とも一致する規定も含
まれている。例えば保険契約法3条1項(=標準約款1条4項1文)、同
法5粂2文(=標準約款1条4項3文後段)、同法10条1項(=標準約款
14条1項)、同法12条1項(=標準約款18条3項)、同法16条ないし㌶条
・161条(=標準約款8条)、同法39条(標準約款4条)、同法48条1項
(=標準約款18条2項)、同法162粂1文(=標準約款3条2項),同法
165条(=標準約款6条1項1文)。
〔拉6〕 普通保険約款において定めうる事項の内容については制限が
ある。すなわち、保険契約の内容いかんは本来当事者が自由に定めうる問
題であり、このことは生命保険契約についても同様であるが、これに関し
て、一般的な法の強行規定による制限のほか、ことに「契約自由の制限」
による制約がある。このような「契約自由の制限」を定めたものとしてま
ず相対的強行規定がある。相対的強行現定とは、法の明文の規定により特
定の者(とくに保険契約者。例外的に一般第三者のこともある。)の不利益
に変更しえないものと定められた規定である。相対的強行規定に関してこ
れをその被保護者の不利益に変更する旨の合意が行なわれても、その会意
は効力がなく、従って法律関係はこの合意によっではなく、もとの法律の
規定によって定むべきこととなる。相対的強行規定の違反はその裡保護者
のみがこれを主張しうる。訴訟上は、相対的強行規定の違反の有無は、裁
、一123一一一
「生命保険契約法」
判所が職権で顧慮しなければならない。生命保険契約について問題となる
相対的強行規定は、つぎのとおりである。保険契約法5条(=標準約款1
条4項3文。保険証券の拘束力)、同法6粂・32条(保険契約者の義務。
オブリーケンバイト)、同法12条1項(=標準約款18条3項。時効期間)、
同法12条2項(=標準約款18条1項。除斥期間)、同法16粂-22条・31
条(=標準約款8条。告知義務)、同法33条(=標準約款11条2項。被保
険者死亡の通知)、同法34条2項(=標準約款11条1項・3項・4項。保
険契約者の説明義務)、同法38条・39条・40条2項・42条(=標準約款2
条・4条。保険料不払の効果)、同法162条・172条(=標準約款3条2
項。年齢の不実告知)、同法163条・172条(=標準約款8条2項d・同4
項。保険会社の解除権の制限)、同法165条・172条(=標準約款6条。保
険契約者の解約権)、同法169条・172条(=標準約款10条。被保険者の自
殺)、同法173条-178条(=標準約款5条・6条。保険料払済保険への
変更、解約返戻金)、同法11条・14条及び47粂2文。・一一一一「契約自由の制
限」を定めたものとして、さらに絶対的強行規定がある。絶対的強行規定
とは,その違反があるときは何人からでも当然にそれを主張しうる規定で
ある。訴訟上はこれも裁判所が職権により顧慮することを要する。生命保
険契約について問題となる絶対的強行規定は、保険契約法4条1項、同法
13条,同法48条(=標準約款18条2項)、同法159条2項3項、および同法
170条である。このような「契約自由の制限」があるため、普通保険約款に
認められている活動の余地ないし普通保険約款において法律の規定と異な
ることを定めうる範囲は、それほど広くない。のみならず監督官庁は、被
保険者の利益のために(保険監督法8条1項2号)、保険契約法中の任意
規定についてもこれを被保険者の不利益--変更しないように強制すること
ができる(Kbnige,LZ.1908.337 ff.;414ff・;VA.1909,516)。
〔柱7〕 d)この標準約款の事物的適用範囲は、「死亡資金保険(生
命保険)普通保険約款」と,、うその名称が示しているように、生命保険のうち
一124-
「生命保険契約法」
保険会社の資金給付もしくは保険契約者の保険料給付またはその双方が被
保険者の死亡という不確定な事故の発生によって左右されるものに限られ
る。旧約款におけると異なり、診査医による被保険者の診査が行なわれる
か否かの区別は新約款上は重要ではない。この点は、現行約款上は、申込
の拘束力の存続期間の起算点に関して,無診査の場合につき有診査の場合
と異なる定めがなされているにすぎない(1項2文後段)。
〔往8〕 従って標準約款はつぎのものに適用される。
a)純粋死亡保険(reine Todesfallversicherung) これは被保
険者死亡の場合に保険会社の資金給付ないし保険金の支払を行ない、被保
険者死l=の時までまたは一定期間継続して年度保険料(Jahrespramien)
の支払をする保険である。
β)確定日払保険(Versicherungmit festem Auszahlungstermip,
Termfix-Versicherung) 保険金は被保険者が生存していると否とを
問わず契約所定の一定の時期に支払い、年度保険料を被保険者死亡の時ま
で支払う保険である。この保険種類の特色は、保険会社の給付については
なすべき時期まで定まっているが、保険契約者のなすべき給付は被保険者
が何時死亡するかという偶然の事実によって左右される点にある。このよ
うな相違はあるが、この種の保険もやはり生命保険である(Dbrstling
HansIは.1918.688,694)。
γ)混合保険(gemischteくalternative〉Versicherung) 一定の
時期が到来した時、またはそれ以前に被保険者が死亡したときはその時に
保険金を支払い、年度保険料は被保険者の死亡の時までまたは一定期間継
続して支払う保険である。
6)連生保険(Todesfallversicherung auf zwei verbunderle
Leben) 二人の被保険者のいずれか一方が先に死l=した時に保険金を
支払い、保険料は被保険者のいずれかが先に死亡する時までまたは一定期
間継続して支払う保険である。
一125-
「生命保険契約法」
〔駐9〕 これに対してつぎのものにはこの標準約款は適用されない。
a)純粋生存保険(reine Erlebensfallversicherung) 被保険者
が一定の時期まで生存した場合にのみ保険金の支払が行なわれる保険であ
る。各種の婚資保険(Aussteuerversicherung)及び年金保険がこれに
属する。純粋生存保険はあまり行なわれないが、これが行なわれる場合は、
その普通保険約款がないため、この標準約款に必要な変更を加えて使用さ
れるのが通常である。-被保険者が年金受取人より先に死亡した場合に
のみ保険会社の金銭給付が行なわれる生残者年金保険(Ueberlebensrerト
tenversicherung)についても、この標準約款の準用が許されるにすぎな
い。
β)定期保険(Todesfall-Risikoversicherung,tempOr嵐re
Versicherung) 被保険者が約定の期間内に死亡した場合にのみ保険金
の支払が行なわれ、保険料は被保険者の死亡の時まで、しかし長くとも右
の約定の期間の経過の時まで支払う保険である。この種の保険を約定期間
経過後に純粋死亡保険または混合保険に変更することの可否については、
VA.1908.79 参照。
γ)貯蓄保険(Sparversicherung) これは生命保険会社が行なっ
ている場合でも生命保険ではない。たんに生命保険でないというにとどま
らない。そもそも保険でない(VA.1908.84,1913.96;RG・29・4・
98JW.1898.404;RFH.8.12.31ZVW.1932.368.監督局はそ
の後誤った見解を示したが〔VA.1916.100〕,とくにDorstling
の反対〔Hans RZ.1918.688〕があって,またその見解を改めた
〔VA.1922.95〕)。Ehrenzweig Z.1931.355,358は,貯蓄保険は本
質的には保険ではなく、ただ保険事業の経営において保険となるに適した
性質を有するにすぎない限界形態であると説く。
〔註10〕 e)時間的には,この標準約款は保険会社がこの約款の使用
を開始した後に締結せられるすべての保険契約(ただし事物的適用範恥こ
-126-
「生命保険契約法」
っき註7ないし註9参照)に適用される。もっとも、保険.契約者の個別的
な同意があれば、この時以前に成立した保険契約についてもこの約款を適
用することができる。しかしいわゆる遡及効は認められない。
〔駐11〕 f)この標準約款は普通保険約款であって、上告しうる(確
定判例。Bruck,Kommentar 5 Bem.15)。その適用範囲が高等裁判所
の管轄区域をこえるという上告の要件(民事訴訟法549条1項)は、みた
されている。契約申込書の上告可能性についてはRG.31.5.29JR.
1929.239参照。
2.ある会社がこの標準約款を自社の約款として使用することにつき監
督官庁の認可をえた後にこれを変更すること-特別保険約款-は、無
制限に許されるものではない。これについては、変更の時期により、変更
が契約締結前に行なわれる場合と契約締結後に行なわれる場合とを区別す
ることを要する。
〔柱12〕 a)契約締結前に約定される特別約款のうち、まず保険契約
者に有利に普通保険約款を変更するものは、無制限に許される。けだし、
監督官庁による普通保険約款の審査は被保険者の利益の保護の見地からな
されるものであって(保険監督法8条1項2号)、普通保険約款は被保険
者が有すべき権利の最小限度を示すにすぎないからである。
〔拉1台〕 つぎに、普通保険約款を保険契約者の不利益に変更する特別
保険約款は、つぎの三の要件が備われば許される。すなわち、第一に、変
更を正当ならしめる特別の理由(たとえば診査医の所見)がなければなら
ない。第二に、契約締結前に保険契約者に対して変更がある旨を個別的に
告げなければならない。第三に、変更について保険契約者の書面による同
意がなければならない(保険監督法10条3項)。これによって、保険契約
者は約款については監督官庁の認可があったものと考えているのに、保険
契約者の知らな-い間に、認可のあったものとは異なる約款にかわっていると
いう事態を生ずることがさけられるとともに、保険契約者は、変更がある
-127一
「生命保険契約法」
ことについて明示的な指示を受けることにより、その変更事項を自ら調査
しないでそれとかかわりをもつことのないよう注意を喚起されること
になる。しかし、保険会社が保険監督法10粂3項に違反した場合でも、
同法81条・87条1項による監督官庁の行政処分の間題を生ずることがあ
るにとどまる。保険契約全体または変更せられた当該の条項が無効にな
るものではない(保険監督法9条理由書)。変更が個別的な性格を失い通常
行なわれるものとなったときは、普通保険約款の変更の問題となる(V
A.1908.113)。
〔性14〕 契約締結後に普通保険約款もしくは特別保険約款またはその
双方を変更するには、当事者双方の明示または黙示の合意を必要とする。
変更が法の強行規定に反するときは、保険会社はその変更を主張すること
ができない。なお、普通保険約款または特別保険約款の規定が契約締結後
に当事者の合意により変更される場合には、変更前の約款の文言を信頼し
た第三者が変更により不利益を受けることがありうるが、第三者はこれに
よる損害の賠償を請求しうるものではない(第7条註14、第17条註11参照)。
〔柱15〕 b)特別保険約款は普通保険約款に優先し、手書した保険約
款は印刷した保険約款に優先する(Bruck Kommentar 6Bem.18)。
〔註16〕 C)特別保険約款は原則として上告しえない(確定判例)。た
だし、普通保険約款との関連からこれを上告審において審理することが必
要であるときは,例外的に上告が許される。また特別約款中の典型的な条
項については上告ができる(Bruck Kommentar 6Bem.19)。
3.約款解釈の諸原則。
〔駐1・7〕 a)文献。 Hagen Bd.1.44;Raiser 51;Schneider
LZ.1914.1306;Schweig旭user ZVW.1918.103.
〔柱18〕 b)普通付検約款および特別保険約款において法律上の概念
が使用せられているときは、その概念は法律自体におけると同じ意味に解
釈すべきである。これによってはじめてその解釈と適用の統一性が確保せ
一128-
「生命保険契約法」
られる(ROHG.Bd.3.85;RG.15.2.29JR.1929.96;OLG・
Kbln 3.4.29VA.1930.202.Nr.1973;OLG.NurnberglO.5.29
VA.1930.231Nr.19㊦)。法律上の意味と異なった解釈をすることは、
約款の構成および内容からみてその解釈によるはかないと認められる場合
にかぎり許される。
約款自体に矛盾があるのでないかぎり、約款のある条項が当事者の意思
に合致しないという結論は軽々に出すべきではない。かような結論は、当
事者双方が一致して約款のある条項の定めと異なることを欲していたと認
められる場合、または当事者が約款中のある定めを欲したはずがないと認
めるに足りる事情がある場合にかぎってこれを認めることができ
る。
約款自体に矛盾があるときは、取引の慣習にしたがい(民法157条)、
その文字上の意味ではなくして、その真の意味(民法133条)を発見する
ようにつとめなければならない(OLG.Augsburg 31.10.14 LZ.
1915.76;RG.13.11.18 Recht1919 Nr.1299;RGZ.Bd.98.
122)。-約款作成の時ではなく契約締結の時を基準として解釈すべく
(OLG.Dusseldorf 6.3.22HansRZ.1922.554),地方によって用
語法を異にするときは保険者の住所の用語法ではなく保険契約者の住所の
用語法を基準とすべきである(RG.Seuffert Bd.40.146Nr.94)。
一一一一保険約款はひろく一般人を対象とするものであるから、誠実で公正な
素人が日常普通に理解する意味に解釈すべきである(RG.22.12.03
VA.1904.69 Nr.47,21.11.19 Bd.97.189,28.11. Bd.97.
207,7.1.30 J R.1930.54;OLG.Kolmar 18.3.04
VA.1904.141Nr.57)。一一イ呆険会社の発行した印刷物および説明書な
らびに保険契約申込書を約款の解釈の参考にすることができる。-以上
によってもなお意味が明らかでない箇所があり、かつ他の保険約款の参照
に・よってもその意味を明らかにしえないときは(RG.2.1.17.Recht
-129-
「生命保険契約法」
1917 Nr.554)、保険契約者に有利な解釈によるべきものとするのが判例
である。けだし,判例によれば,保険会社は約款の作成者であり、また加
入者よりも豊かな経験を有するものであって、約款に意味の不明瞭なとこ
ろが生じないよう注意すべきは当然であるからである(確定判例。Bruck
Kαnmentar 7Bem.23)。約款が保険契約者の代表との協力の下に作成さ
れた場合については必ずしもこの限りでないが、この模範約款の作成に
は保険契約者の代表者は関与していない。-保険会社は,それが約款作
成当時の自社の解釈であったことを理由として、自己に有利な解釈をとる
べきことを主張しうるものではない(RG.12.11.15 Recht1916 Nr.
15)。
〔駐19〕 C)本約款は、疑を避けるために,本約款の適用については
「保険契約者」とは保険の申込をした者をいい、「被保険者」とはその者
の生命について保険が締結せられた者をいう旨を定めている(2項)。保険
契約者が自己の生命について保険契約を締結するときは、保険契約者が同
時に被保険者となる。
「被保険者たるべき者」という言葉(2条2項)は、保険会社の給付義
務が開始する前の時期について使用される言葉であるが、その者の生命に
について保険契約が締結せられた者をいう。
本約款で「保険会社」または「会社」という場合は、相互会社(保険監
督法15条以下。註39参照)を含むことはいうまでもない。
〔駐20〕II.普通保険約款に特別の規定がない場合には法律の規定が
保険契約の基礎となる(5項)。とくにつぎの諸規定である。
1.保険契約法1条一48粂・159条-178条。
2.保険監督法77条2項-4項・78粂・89条。
3.民法第1編、第2編第1章-第6章。とくに328条-335条(保
険金受取人の指定について問題となる。本約款15条)。
一130-
「生命保険契約法」
B.保験契約の成立(1項・3項)
〔駐21〕 文献。 Bruck161及び同所にかかげる諸文献、とくに
Basler Z.1914.623;Demelius Z.1907.436.1909.128,AssJhrb.Bd.33.I.133;Gbssmann Z.1909.156;Gottschalk ZVW.
1912.199;Hawlitschka.ZVW.1922.281,296;Josef Z.1908.
688;Lederle17;Opfermann,Beitr且ge zur Lehre vom Lebe-
nsversicherungs-Vertrag,Erlanger Diss.1911;Worms Z.
1909.531.
〔柱22〕 保険契約法は、保険契約の成立の問題に関しては、保険契約
一般についても、生命保険契約についても、特別の規定を設けていない。
この模範約款も申込の方式(1項1文)、申込の一般的な内容(1項1文)、
承諾期間(1項2文)、申込の拒絶(3項1文)、および申込書類の所有
関係(3項2文)について規定しているにとどまる。それゆえ基本的には
民法の一般規定が適用されることとなる。
〔駐23〕I.保険契約の締結の申込
1.保険契約の締結の申込、既存の保険契約の変更または延長の申込、
および以前に効力を有していた保険契約の復活の申込は、いずれも民法
145条以下にいう申込に該当する(OLG.Dresden13.5.08 LZ.
1908.956)。デメリウスは、これと異なり、保険の申込は契約の申込とし
ては特殊のものであって、予約(pactum de assecurando)の締結を目
的とするものであると説いているが(Demelius,Z.1907.436,1909.
128.なお同氏以外にかような見解をとる者はない)、この見解は適当で
ない。けだし、生命保険契約の締結の申込をなす者は直ちに保険会社との
間で申込書記載の内容の保険契約を保険約款を基礎として締結することを
欲しているのであって、将来別の契約(本契約)を締結したい旨の表示を
しているのではないからである(Basler623ff.,Gerhard-Hagen §160
Bem・2,Gierke ZHR・Bd・65・318,Gbssmann156Anm・2,
一131-
「生命保険契約法」
Gottschalk199,Josef 688)。申込によって生ずる法律状態のほかに
費用および手数料の賠償を求める権利が生ずることは、他の一般の契約に
ついても認められることであって、何ら特別のことではない(DernburgKohler420)。
有診査の生命保険契約の締結の申込については特別の定めがあり、その
拘束力は診査医による被保険者の診査の時から生ずるものとされる(1項
2文後段)。ただし、このことは申込の本来の性質に変更を生ぜしめるもの
ではない。
〔拉24〕 2.保険契約者が申込人となる場合。保険契約者は権利能
力を有する者(自然人、私法人または公法人)でなければならない。法人
が申込をなす場合に何人が法人のために申込をなす権限を有するかは、そ
の定款等の規約および一般の原則によって定まる(Masius1913,125)。
合名会社の場合は、全社月が共同してのみ申込をなすことができる。申込
者は任意代理人によって申込をすることができる(OLG.Kbnigsberg
6.5.19 Seuffert Bd.75.127 Nr.75)。
〔柱25〕 a)保険契約者が行為無能力者(民法104条、105条)であると
き。この場合にはその者のなした申込は無効である。それゆえ、たとえば
精神病のために禁治産の宣告を受けた者(民法1似条3号)、または精神活動の
病的障害により自由な意思決定をなしえない状態にある者(民法104条2
号、RG.9.12.15 LZ.1916.1470)は、有効な申込をすることができ
ない。しかし事実上精神薄弱(Geistessch血che) であったのみでは、
申込は無効とならない(RGZ.Bd.50.203)。
b)保険契約者が制限的行為能力者であるとき(民法107条、114条)。
〔鰹26〕 α主丈献。 Berolzheimer Z.1918.87;Erlanger Z.
1908.692;Geisler,Der Versicherungsvertrag des Minder匝hrigen, Gbttinger Diss.1908;Hagen Bd.1.328;Lederle17;
Schellwien Z.1908.29;Thiel Mitteilungen1918.137;Voge1
-132-
「生命保険契約法」
LZ.1920.375.ZVW.1914.369・
(鰹27〕β)制限的行為無能力者が保険契約の申込をなすには、その法定代
理人の同意をえなければならない。申込に対して承諾があれば義務(例えば保.険
料支払義務)を負担することになるからである(民法∽7条江かし、保険料が一
時払である契約を締結するとき、および保険料年私の契約でもその契約関係が被
後見人が21才になった後1年以上存続しないものであるときは、後見裁判所の関
与は必要でない。これ以外の場合に後見裁判所の許可を要するか否かについては、
争いがある。通説は、保険契約は民法1822条5号にいわゆる被後見人に反復的給付
義務を課する契約に該当するとし、従って後見裁判所の許可を得なければ効力
を生じないとする(生命保険契約に関してこの趣旨を明言するものとして
BeroIzheimer 90,Erlanger693,Hagen Bd.1.328,Lederle17,
Schellwien 33,Schtinemann LZ.1923.307,Voge1377がある)。し
かし民法1822条の立法理由は、被後見人が多年存続する義務(たとえば存
続期間を10年と定めた賃貸借契約または火災保険契約にもとづいて生ずる
義務)を負担することにならないよう被後見人を保護しようとするにある。
しかるに生命保険契約は法の強行規定(保険契約法165条、本約款6条)に
より何時でも解約しうるものとせられている′のであるから、生命保険契約
についてはこの保護の必要性は存しないといわねばならない。生命保険契
約においては、保険契約者は解約の申入れをするかまたは保険料払済保険
への変更を請求することにより(本約款5条)将来の支払義務を免れうる
のであって、被後見人が成年に達した後に反復的給付をなすよう拘束され
るという事態は生じないものである。生命保険契約を中途で終了させるこ
とにより加入者が損失を蒙ることをあげてこの議論に対する反論となすこ
とはできない。このことは、民法1822条5号がかかる財産的損失に対する
保護を目的とするものでは全くなく、もっぱら将来における給付義務の負
担に対する保護を目的とするものである点からみても、明らかである。
19芋9年4月4日のカンマーナリヒトの判決(KG.4.4.29JR.1929.246)
-133-
「生命保険契約法」
は、未成年者の埋葬料保険(Sterbegeldversicherung)により未成年者
が10年間毎月一定額の保険料を支払う義務を負担した場合に関して、確定
的な保険料支払義務は1年間だけ存続する旨の約定であったとの理由に
より後見裁判所の許可は必要でないと説いているが、1928年2月3日の判
決(JR.1929.15)では、同裁判所は、生命保険の解約の場合に保険料
の返還が行なわれるにしても保険契約者の支払った保険料の一部が返還せ
られるにすぎなく、また人はしばしば解約権のあることを看過するから、
保険契約法165条が被後見人に与える保護は民法1902条と比較して不完全
であって、同条は完全に民法のこの規定に代る作用を営むものとはいえない
として、これと反対の見解を示していた。-制限的行為能力者が保険料
の支払にあてるために処分を許された財産または自由に処分することを許され
た財産(民法110条)をもって保険料の支払をなしたときは、保険契約は
そのかぎりにおいて完全に有効である。制限的行為能力者が一時払保険料
を民法110条により支払ったときは、保険会社はその相続人に対して同意
がなかった旨の抗弁を提出することができない。
〔駐28〕 γ)法定代理人の同意は、申込をなす以前にまたは申込をな
す際に与えることができる。事前に同意を与えた場合は、申込がなされる
時まではこれを撤回することができ(民法183条)、この撤回の表示は制
限的行為能力者または保険会社に対してすることができる。必要な同意を
えないで締結せられた保険契約は、効力を有しない。しかし、法定代理人
の追認により、または保険契約者が完全な行為能力者となった後は保険契
約者自身の追認により、後にこれを(原則として遡及的に-ただし例外
もある-)有効となしうる(民法108粂・182条・1糾条)。保険会社
は、制限的行為能力者の法定代理人または完全な行為能力者となった保険
契約者自身に対して、追認に関する表示をなすべき旨を催告することがで
きる。この場合には追認は保険会社に対してしなければならない。追認は
これを明示的になすことができるほか、たとえば保険料の支払のような推
一134-
「生命保険契約法」
断的行為によってもこれをなしうる。催告を受領した時から2週間内に追
認をしないときは、追認を拒絶したものとみなされる(民法108条2項)。追
認は原則的には保険契約者または保険会社のいずれに対してもすることが
できる。外務員は保険会社に代って追認を受領する権帆を有しない(本約
款14条3項)。
申込に対する法定代理人の同意は、申込書に保険契約者とともに署名す
ることによって表示せられるのが通常であるが、法定代理人はこの署名を
なすことによって当然に保険契約者とともに保険料支払義務を(分割債務
または連帯債務として)負担するものではない(本約款2条註5)。
法定代理人の追認がない間は申込の効力は浮動的である(民法108粂)。
しかし保険会社は、保険契約者が未成年者であることを知らなかった場合
(これは多くは年齢の不実告知があった場合である)、または保険契約者が
未成年者であることは知っていたがこの者が真実に反して法定代理人の同
意をえている旨を告げた場合にかぎって、保険契約を撤回することができ
る(民法109条2項)。保険契約者は事情によっては(民法823条2項・826条)保
険会社に対して損害賠償の義務を負う。
追認が拒絶せられたときは、保険契約は遡及的に消滅する。各当事者は
相互にすべてのものを返還しなければならない。ただし保険会社は解約返
戻金(6条3項)の払い戻しをすれば足りる場合がある。この場合には保
険料の残余の部分は、保険会社がなした危険負担等によりすでに使用せら
れているのである(同趣旨、Schellwien 37,Erlanger 692.8条註37
参照)。
制限的行為能力者が完全な行為能力を取得したときは、追認・をなす権
利は民法108条3項によりこの者に移転する。制限的行為能力者または完
全な行為能力者となった者の相続人がこの権利を相続することは、生命保
険については問題とならない。けだし、被保険者の死亡によって契約内容
に重要な変更を生ずる(すなわち保険料支払義務はなくなり、保険会社は
原則として保険金支払義務を負うに至る)からである。それゆえ、保険合
一135-
「生命保険契約法」
杜は契約の無効を主張することができ、他方被保険者の相続人は死者に代
って後に契約を追認することができない(結果同説、BeroIzhei汀把r87,
Rehbein BGB.Bd.1.109a.E.反対説、J。Sef 6Z.1921.112,
Lederle19 Anm.1および同所所禍の文献、Voge1377)。
〔註29〕 C)保険契約者が妻である場合。妻のなす申込は夫の連署が
なくても有効である。夫婦の財産関係が別産制(Giitertrennung)である場
合には、妻は申込によって負担する債務について自己の財産をもって責任
を負い、それ以外の場合にも自己の留保財産(Vorbehaltsgut)をもって
する責任は当然に認められる。夫婦の財産関係が管理共通性および用益共
通性(Verwaltungs-und Nutzniessungs-Gemeinschaft)である場合
には、夫が申込に同意したときは妻の持参財産(eingebrachtes Gut)
も責任の対象となるが(民法1399条)、夫は当然に妻のために(すなわち
妻の財産を拘束する効力をもって)申込をなす権限を有するものではない
から(民法1375条)、夫が申込書に署名したのみでは妻の責任は生ぜず、
妻のみが署名したときはその留保財産のみをもって責任を負う。この場合
に妻が無制限に責任を負うためには、妻の署名と夫の同意が必要である。
つぎに夫婦の財産関係が一般共通性(allgemeine Gutergemeinschaft)
である場合には、保険契約を締結して、これを共通財産に属しめることな
く妻の財産とするには、その旨の特別の夫婦財産契約が必要である(民法
1438条、1440条)。この場合に妻が夫の同意をえないで申込をしたときは、
共通財産は申込にもとづいて生ずる債務の引当とならず(民法1460条)、
夫が保険契約者たる妻のために申込書に署名したときは、共通財産が責任
を負う。-なお,妻のなす申込に夫が連署しても夫が当然に保険料支払
義務を負うことにはならない。夫に保険料支払義務を負わせることができ
るのは、申込書またはその他の事情から未にその意思があると認められる
場合にかぎる。-妻が民法1405条・1452条・1462条(独立して営業を営
む場合)により単独で申込をなしうる場合がある。
-136-
「生命保険契約法」
〔駐30〕 3.保険会社が申込人となる場合。自動販売式保険(Aut0matenversicherung)およびクーポン式保険証券(Kuponpolize)-いず
れも生命保険の分野では存在しない-の場合をのぞくほか、保険会社が
はじめから保険契約の申込人となることはない。保険会社が保険の説明書
・営業案内その他の印刷物を交付または送付しても、これによって保険会
社が保険契約の申込人となるのではない。このような書類は申込の誘引で
ある。ただ、この種の書類も保険約款の解釈について意味をもつ場合があ
る(OLG.Mtinchen12.7.05VA.190686Nr.235;RG.21.12.09
VA.1910 7Nr.494,LZ.1910.322,5,5,11VA.1912 7 Nr.664。
訳者註。本条註18参照)。それゆえ、この種の書類は保険監督局に提出して
その審査を受けることを要する(VA.1911.89)。これに対して、保険契約
の申込を受けた保険会社が時期におくれて承諾したとき(民法150粂1項)、
または申込に拡張・縮小等の変更を加えて承諾したときは(民法150条2項)、
保険会社が申込人となる。
〔瞳31〕 営業保険料から毎年の配当予想額を差引いて保険契約者が実
際に払込むことを要する保険料の額を算出し、その合計額を示したものを、
通常、実払保険料計算表(Nettokostenaufstellung)または正味払込額
見積表(Schatzungen der Baraufwendungen)という(VA.1913.
90)。これに対する保険監督局の態度には多少の変遷があった。すなわち、
保険監督局は、実払保険料計算表はその意義が過大に評価され、また加入
者に誤解を与えるおそれがあることにかんがみ、はじめ1913年4月5日の
命令(VA.1913・28)により、その使用に関して若干の制限を定めた。
この命令に示された諸原則については多くの反対があった(ZVW.1913.
225,227,349,385,517,629)。そのため保険監督局はVA.1913.91
においてこれに関する態度を表明して(ZVW.1913,675)、上の命令の
態度を1914年4月8日から緩和することとした(VA.1914.51,1915.
84)。しかし戦争のためこの命令の施行が延期されている間に(VA.1915.
-137-
「生命保険契約法」
1,朗)、今度は一転して1920年1月1日以降(スイスにおけると同様に
〔VA.1915.糾〕)その使用を全面的に禁止することとした(VA.
1919.160,1921.81,1922.88,206;ZVW.1920.1,13)。その後保
険監督局は1926年6月1日の命令(VA.1928.123)をもって「正味払
込顔見横表」の名称により一定の範囲でこれを使用してもよいこととした
が、さらに1932年8月2日の通達(ZVW.1932.655)では、経済事情の
変化(ことに利率の変動および法律による利率の規制)にかんがみて再び
その使用を全面的に禁止するに至っている。
4.保険契約者は自己の生命についての生命保険契約の申込をすること
もできるし、他人(被保険者。註19参照)の生命についての生命保険契約
(Fremdversicherungともいう)の締結の申込をすることもできる(保
険契約法159条1項)。
〔柱32〕 他人の生命の保険にあっては、保険会社のなすべき給付は、
概念上、その他人が何時まで生存するかという不確定な事実によって左右
される。そのため、その他人すなわち被保険者は、なかんづく、必要な場
合には診査医の診査を受けることを要し、また告知義務を履行することを
要することとなる。保険会社に対して金銭の支払を求める権利がその他人
(またはその相続人)に帰属することは、必ずしも必要でない。被保険者
の一身に関する事故(一定の時期における生存または死亡)により保険契
約者に財産的姐害またはその他の需要が生ずるおそれがあり、これにそな
えて、そのような場合に保険契約者自身が財産的給付を受けられるように
するための手段として、他人の生命の保険を利用することも多い。保険契
約者AがBの生命について保険契約を締結すれば、これは他人の生命の保
険である。この場合に保険会社に金銭給付を求める権利は、Aまたはその
権利承継者がこれを有するものとしてもよいし、これらの者の指定する保
険金受取人(15粂)がこの権利を有するものとしてもよい。
他人の生命の保険は、法定代理人による契約の締結、すなわち行為無能
-138-
「生命保険契約法」
力者または制限的行為能力者の法定代理人が行為無能力者または制限的行為
能力者の名においてこれらの者の生命について保険契約の申込をする場合
と区別しなければならない。この場合には、行為無能力者または制限的行
為能力者が、保険契約者であり被保険者である。任意代理の場合におい
てもも様である(OLG.Kるnigsberg6.5.19Seuffert Bd・75・
127Nr.75,Recht1920 Nr.2166)。AがBに対しAの名でAの生命に
っいての保険契約を締結するよう委任したときは、Aが保険契約者であり
被保険者であることとなる。-ある者が自己の名をもってではなく、保
険契約者の名をもって申込書に署名したときは(保険契約者が他人にこの
ような形で保険の申込をなす権限を与えることは可能である。RG.3.
12.26JR.1927.10,VA1928.6.Nr.1663;RG乙 Bd.74.69)、
保険契約者による自己の生命の保険が存在することとなる。
b)他人の生命の保険には、他人の生存を保険事故とするものがあり、
また他人の死亡を保険事故とするものがある。
〔瞳33〕 α)生存保険(Schellwien,Die Erlebensfallversicherung) これについては特別の規定はない。この種の保険は無制限に
許される。けだし,保険契約者が他人が生きてある出来事に遭遇する場合
のために(たとえば父親が娘の結婚の場合のために娘の生命を保険に付し、
また息子の修学時期のために息子の生命を保険に付するような場合)、ま
たは他人が一定の時期に生存している場合のために保険契約を締結する場
合は、その他人は何ら特別の保護を必薯としないからである。
β)死亡保険
〔住34`〕 αa)文献 Burkner,Z.1911.808;Brecher,
Versicherung auf fremden Tod,Wien1912;Bruck,Das
Interesse,ein ZentraLlbegriff der Versicherung,Wien1931;
Fick,Das juristische Charakter des LebensversicherungSVertragS,Zuricher Diss.1884,34;Hagen Bd.2.351;Heck
-139-
「生命保険契約法」
ArchBurgR Bd.4.17ff.;Lederle 40;StrauSS,DaS Institut
der Fremdversicherung,Tubinger Diss.1917;Rudiger,
Rechtslehre vom Lebnsversicherungsvertrag,Berlin1885,126.
〔駐35〕ββ)保険契約者と被保険者と:の間に財産法的な(経済的な)関係
が存在する場合がある。たとえば、組合員が他の組合員の生命について保
険契約を締結する場合(組合保険〔Sozienversicherung〕),金銭の貸主
または保証人が債務者の生命について保険契約を締結する場合、夫婦の一
方がその地方の生命について保険契約を締結する場合、または父もしくは
母が子の生命について保険契約を締結する場合等には、保険契約者と被保
険者との間に上述の関係が認められる。しかし両者の間にこのような関係
が存在することは必ずしも必要でない(反対説Ehrenberg ZHR.Bd.
33.37 ff.)。ドイツの立法は、長い論争(Brecher 2ff.,Stra,uSS
8fり のうちに、経済的な利益の存在は必要でなく、観念的な利益の存在
も必要でなく、ただ被保険者の同意があれば足りる、とする立場をとるこ
ととしたのである(保険契約法159条2項1文)。これによって保険と賭博
保険(Wettassekuranz)との区別がなくなったことは承認するほかはない
が、実定法上は、被保険者の書面による同意があるかぎり、生命保険契約
の法律上の効力を問題とする余地はない(反対説。Hupka ZHR.Bd.
66・568)。賭博との区別がつかないという議論に対する反論としては、保険
会社は賭博契約ではなくして保険契約を締結するものであること、また保
険会社は保険契約者の契約締結の意図を知りえないことが主張せられるの
が通常である。なお被保険者は、このほか、保険契約者は被保険者を殺害
することによりすべての給付請求権を失うという法則(保険契約法170条
1項・176粂2項2文・178条、本約款10条註10)によっても保護される。
〔拉36〕 γγ)被保険者の同意は他人の死亡の保険契約の有効要件で
ある。この同意はその性質上極めて人格的な意思表示であって、書面によ
ってなされることを要し(氏名の自署、または裁判所もしくは公証人の認
-140-
「生命保険契約法」
証ある記号の手記を要する。裁判所または公証人の作成する書面をもって
これに代えることは差支えないが、電報によるのでは足りない〔民法126
条〕)、かつ保険契約者または保険会社の取締役(本約款14条3項)にあ
ててなされ、これに到達することを要する。一般的に与えられた代理権
(たとえば夫が妾に与えた一般的な代理権)があるのみでは足りない
(OLG.Kbnigsberg 6.5.19Setlffert Bd.75.127 Nr.75,
Recht1920 Nr.2166)。書面による明示的な代理権の授与がなければな
らない。被保険者が診査医の診査を受け、その質問に答え、質問表に署名
した場合でも、これのみでは法定の要件をみたしたことにはならない。被
保険者が一たん同意を与えた後形式的保険開始(fornellerVersicherungsbeginn)(註49)以前にこれを撤回したとき、または形式的保険開始の前
後を問わず被保険者が錯誤・詐欺もしくは強迫を理由として同意を取消し
たときは、保険契約は効力を有しない。この場合に被保険者に対して損害
賠償の爵求をなしうるか否かは、民法の一般原則による。形式的保険開始
の際に被保険者の同意があることを要する。この同意がないときは保険契
約は無効となり(RG.13.4.89 Bolze Bd.7234Nr.617;LG.
Zwickau VA.1928.26 Nr.1679)、従って保険事故が発生しても保
険契約者は保険金璃求権を有せず、保険会社は場合により解約返戻金(本
約款6条3項)の支払をなすべきこととなる。保険契約成立後に同意が撤
回されても、保険契約の効力は影響を受けない。他方において、同意があ
ったときは、その同意は、普通保険約款の内容に関する同意、およびとく
に医師の黙秘義務の免除(註102)に対する同意を含む。団体の構成月に
つき団体が保険契約者となって団体保険契約を締結する場合に、その団体
の定款の定めに被保険者の同意としての意味を認めうるためには、団体員
が書面により定款を承認していることを必要とする(VA.1929.166)。
〔柱37〕 おの被保険者が行為無能力者または制限的行為能力者であ
るときは、その者が単独で同意の意思表示をなしえないことは、一般原則
-141-
「生命保険契約法」
上当然である。法定代理人がこの者に代ってしなければならない。保険契
約者が被保険者の法定代理人であるとき(たとえば後見人が被後見人の死
亡を保険事故とする保険契約を締結するとき)は、相矛盾する利益の競合
を避ける趣旨で、その保険契約者は被保険者に代って同意を与えることが
できないものとされている(保険契約法159条2項2文はこれを明宝する)。
この場合には裁判所による特別代理人の選任を必要とする(民法1909条)。
特別代理人は、その保険契約が未成年者の生命および利益に危険を及ぼす
ものでないか否かを調査しなければならない。
ただし、つぎの二つの要件が備わっている場合には、特別代理人の選任を
必要としない(保険契約法159条3項)。
第一に、未成年の子の婦父または母がその子の生命について保険契約を
締結する場合であることを要する。一般に例外は狭く解釈すべきであるか
ら、特別代理人の選任を要しないのは、父または母が保険契約者である場
合(養親が保険契約者である場合はこれに含めてよいであろう)にかぎら
れ、他の者(たとえば継父母、祖父母)が保険契約者である場合を含まな
いと解すべきである。保険契約法159条3項は人口政策的な考慮を基礎と
するものであるから、この点を考えるならば、同規定にいう父または母た
るには、子の身上監護権を有することを要すると解すべきであろう。保
険契約法159条の保護は子の生命・身体を対象とするものである。それゆ
え、父がたとえば民法1680条により親権を喪失したときは、同条3項によ
る例外的取扱は受けないと解すべきである。しかし、婚姻によらない子の
母は当然にその子の生命について保険契約を締結する権限を有すると解す
べきであろう。けだし、立法者は、かかる母には親権は認めていないが、
明文をもって子の身上監護をこの者にゆだねているからである。この場合
には後見人は監督者として母の行為を監督するにとどまる。母のなす申込
については後見人の関与は認められない。このことは、母が婚姻関係にあ
るが未成年者であるためその親権が休止している場合(民法1707条、1696
-142-
「生命保険契約法」
条)についても同様である。母は、婚姻関係によるものであると否とを問
わず、その未成年の子について子の同意をえないで保険契約を締結するこ
とができるから、これについて子の法定代理人の同意(ことに父の同意)
を得ることを要しない。父の意思いかんは問題となる余地がなく、母は父
の意思に反しても保険契約を締結することができる。父は民法1634条によ
っても契約の締結を妨げることができない。けだし、この契約の締結の際
には、父はその子の父としての立場または法定代理人としての立場で行動
するのではないからである。
第二に、保険金額が、被保険者たる子が7才未満で死亡する場合につい
ては、通常の葬式費用をこえないことを要する。これについて監督官庁が
その最高額を定めたときは、これが通常の葬式費用とみなされるが(保険
契約法159条3項2文)、監督局が定めた最高額は、3才未満は100マル
ク、3才以上5才未満は 200マルク、5才以上7才未満は 300マルクであ
る(VA.1925.66)。これ以上の年齢については法律上の制限はないが、
監督局はさらに7才から14才までの子については保険金額は最高5,000マ
ルクを限度とする旨を定めている(VA.1925.66)。子の死亡の場合には
保険料の払戻をなすべき旨を定める場合には、保険料を払戻すほかこれに
相当の利息を付することが許されるが、この場合には利息を含めた払戻額
が死亡保険金額の最高限度額をこえてもよい。これに対して、保険金額か
ら葬式費用を差引いた残額を約定の保険期間経過後に被保険者であった子
の法定相続人に支払うことは、許されない。保険会社に対する債権はただ
ちに譲渡しうるからである。数個の保険会社との間で子の保険契約を締結
することにより立法目的が潜脱せられることを防止するため、保険会社は
申込書に特別の質問を設け、場合によっては保険金額を減額することを要
するものとされている(VA.1907.76,1909.163,19軋17,93)。監督
官庁が1才未満の子についての死亡保険金の支払を全面的に禁止することは許
されない(Preuss.0VG..19.2.12 VA.1912,95 Nr.686),
-143-
「生命保険契約法」
〔性38〕 5.数人の保険契約者が申込をなす場合。たとえば父母の双
方が申込をなし、または数人の組合月が申込をなす場合である。この場合
には、その各人が申込の一般的要件をみたすことを要する。
また、一人または数人の保険契約者が数人の者を被保険者として保険契
約を締結する場合がある。たとえば、夫婦または組合月(組合保険)・が、
最初にその一人が死亡したときに保険金の支払をするという形で相互に他
の者の生命について保険契約を締結するような場合である。この場合には、
各被保険者が他人の生命の保険に関する要件をみたすことが必要であ.る。
〔性39〕 6.申込は特定の保険会社に対してしなければならない。生
命保険は、株式会社または相互会社のみがこれを営むことができる(保険
業法7粂2項)。保険事業の経営は保険業法によって具体的に定められてい
る国の監督に服する。国の監督は、なかんずく、事業の免許および事業
に対する継続的監督として行なわれる。事業の免許は営業警察的性格を有
する。免許を受けないで営業を行なったときは、刑罰が課せられる(保険
業法140粂1項)。しかし、免許を受けないで営業を行なったときでも、ま
た認可を受けた基礎書類に違反したときでも、申込の私法上の効力には影響
がない。それゆえ、事業の免許を受けていない保険会社に対して申込をし
たときでも、また申込の基礎とした普通保険約款が認可を受けていないも
のであるときでも、申込は有効である(AG.Hamburg Praxis Bd.
2.326;RG.26.10.16.JW.1917.43;Roelli22,Josef
ZH軍._Bd.鋪101;註4参照)。保険契約者がかかる申込にもとづいて成立
した契約を、保険会社の重要な性質に関する錯誤(民法119条2項)また
は詐欺(民法123条)を理由として取消しうるか否かは、別個の問題であ
る。相互会社が保険監督法21条2項に違反して官庁の認可をえないで確定
保険料の保険を行なった場合でも、締結せられた契約の効力は影響を受け
ない(RG.9.11.15 VA.1916.6Nr.910)。
〔瞳40〕 7.申込は保険会社に到達した時(民法130条)にその効カ
ー144-
「生命保険契約法」
を生ずる。保険会社に到達するとは、保険会社が通常申込書頬の内容を知
りうべき状態になることをいう。保険会社は殆んど例外なく外務員(保険
契約法43条1号)の仲介によって申込を受ける。しかし,申込の到達時期
いかんは重要でない。けだし、承諾期間は、有診壷の保険では診査医の
診査の日から、無診壷の保険では申込を発した日から開始するからである
(本条1項2文。註45)。
〔柱41〕 申込は書面ですることを要する(本条1項1文)。保険契約者
が自己の名の手書または裁判所もしくは公証人の認証のある記号の手書に
より申込書に署名しているときは、書面で申込をしたこととなる(民法
126条1項、127条1文)。裁判所または公証人の作成する証書をもって署
名に代えること(民法126条3項、127条1文)、および電報によって申込
をなすこと(民法127条2文)は、それ自体としては差支えないが、実際上
は殆んど行なわれない。保険契約者の任意代理人が保険契約者に代って署
名してもよい(RG.3.12.26JR.1927.10,VA.1928.6Nr.1663)。
この場合に、任意代理人は本人の名のみをもって署名することもできる
(RGZ.Bd.74.69)。ただし、保険監督局は、保険会社に対して、
署名者が自己の名をもって署名した申込のみを受領するように配慮するこ
とを要求している(VA.1933.141)。申込書に署名がなく、またはその他
の欠陥がある場合でも、保険会社がこれに対して承諾をなしたときは、そ
の欠陥は治癒される(OLG、Kie124.11.22VA.192412 Nr.1300)。
保険契約者が後に保険料を支払って保険証券の交付を受けた場合も、同様
である。
〔註42〕 申込の内容。申込は、普通保険約款に従って保険契約を締
結しようという保険契約者の意思を明瞭にかつ疑問の余地なく認めしめ
のでなければならない。生命保険契約を締結しうるか否か、またはその
条件いかんを保険会社に問いあわせることは、申込ではない。申込は、保
険会社がこれについて承諾または拒絶をなしうる状態のものであることを
-145一
「生命保険契約法」
要する。申込は保険会社の作成する申込用紙を用いてなされるから、申込
の重要な内容について疑問を生ずることは稀である。申込者が選択した種
類の保険の申込が加入目的にてらして適当であるかどうかを保険契約者に
教える義務は、保険会社にも、外務員にも、存在しない(OLG.Stettin
7.1.32 VA.1933.54 Nr.2411)。
保険料の額は、申込にかかる保険期間・保険金額ならびに被保険者の年
齢および健康状態によって定まるが、申込書にその額を具体的に示すこと
は必要でない。保険会社の認可をうけた(保険監督法5条・11条)保険料
表によって問題なく算出しうるからである(OLG.Dresden13.5.08
LZ.1908.956)。申込書に保険金額が明記されていないが、保険料の額
および保険期間によりこれを定めうる場合についても、同様である。保険
料は申込者が直接具体的に定めることなく保険会社が計算するのが通常で
あるが、「申込者」がこの方法による保険料の決定を欲しない旨を表示した
ときは、その「申込」は、保険料の額を「申込者」に知らせるよう保険会
社に対して要求しているものにはかならない。この場合には、法律状態は
逆になる。すなわち、保険会社が保険料の額を告げた(法的にはこれが申
込になる)のに対して、保険契約者が承諾するのでなければ、契約は成立
しない。申込と異なる保険料の額を記載した保険証券が、民法150条2項
の新しい申込となることがある(上記註30)。
保険契約者は、保険契約締結の申込をなすほか、保険会社が引受くべき
危険に関するすべての重要な事実を正しくかつ完全に告知しなければなら
ない(1項1文。8条註8-14)。この告知は外面的に申込と結合している
にすぎなく、実質的にはこれと区別することを要する。保険契約者が告知
をしないとき、または不完全もしくは真実に反する告知をしたときは、本
約款8条所定の効果を生ずる。告知がなされないときまたは告知が誤り
であるときでも、これによって申込の拘束力は影響を受けるものではなく、
また契約内容の主要を点に関して当事者間に意思の合致があるかぎり、保
一146-
「生命保険契約法」
険契約の成立も妨げられない。
〔註43〕10.1901年5月12日制定当初の旧保険監督法(10条1項)で
は、保険会社は、特別の受取証を徹して関係の普通保険約款一過を申込者
に交付することを要し(被保険者にも交付することは必要でない)、相互
会社にあってはこのほか定款をも交付すべきものとされていた(同法10条)。
さらに、保険会社は契約申込書用紙に普通保険約款を受領した旨を記載す
る欄を設けることを要し、申込者はこの欄自体にも自署し、かつその日付
を記載すべきものとされていた。そして、申込は保険契約者が知っている
普通保険約款または少なくとも保険契約者が知っているものと考えてよい
普通保険約款を基礎としてのみこれをなしうるとする見地から、約款等の
受取証の署名の日付は申込の日付より後であってはならないものとされた
(VA.1902.190,1903.114)。その後、1923年6月19日の保険監督法の一
部を改正する法律1粂1号により、右の第10条は削除となった。しかし、
監督官庁は、行政措置によって、改正前と同様の法的状態を生ぜしめるこ
とができる。もっとも、その違反があっても、私法上の効果は生ずること
なく(民法125粂・134条・823条・826条の適用は生じない)、保険監督法81
条・87条による監督官庁の介入の問題を生ずるにとどまる(LG.Colmar
VA.1905.87 Nr.150;Toop,Die rechtliche Bedeutung der
Uebergabe der Versicherungsbedingungen vor Abschluss des
Versicherungsvertrages,Berlin1905,34;ただし Zalud Masius
1903,103の見解は明らかにこれと異なる)。
11.有効で承諾適格のある申込があったときは、保険会社が一定期間内
に申込を承諾しうるという効果、および申込者(保険契約者)が6週間こ
の申込に拘束されるという効果(本条1項2文)を生ずる。
〔柱44〕 a)保険契約者が申込に拘束されることの反面として、保険
会社は承諾により保険契約を成立せしめ、または拒絶により申込の効力を
失わしめる権利を有する。保険会社のこの権利は形成権である。この権利
-147一
「生命保険契約法」
は包括承継(保険会社間の合併)の場合または包括移転(保険監督法14条
1項3文)の場合には移転するが、これを個別的に移転することは認めら
れない。
本約款は、疑を避けるために(民法147粂2項参照)、保険会社が申込
の承諾をなすべき期間(承諾期間)を明示的に(民法148条)定めている。
その期間は本約款では常に6週間である(本条1項2文。旧約款の1粂1
項1文では場合によりこれと異なる期間となることがあlつた)。この期間は
かなり長いが、保険会社は種々の調査や照会をしなければならないので、
これだけの期間が必要になるのである。この期間を個別的に延長すること
は、保険監督法10条3項に従ってするのであれば(すなわち、保険契約者
にこのことを明示し、その書面による承認をえてするのであれば)、差支
えない(上記証13)。もちろん保険会社はこの期間の経過以前でも申込に対
する意思表示をすることができる。-承諾期間は約定の除斥期間(註86)
の一つであって、その期間の計算は民法187条以下の定めるところによる
(註87)。この承諾期間の定めがあるため、保険会社はこの期間内にかぎり承
諾をなしうることとなる(民法148条)。承諾は受領を要する意思表示であ
り、保険契約者に到達することを要するから(本約款2条1項本文)、期
間経過前に保険契約者に到達するよ.う、期間経過前の相当の時期にしなけ
ればならない。もっとも、保険契約者が故意または過失により(例えば承
諾が自己に到達するよう配慮しないことにより)承諾の受領を妨げたとき
は、承諾は期間内に到達したものと認むべきである。ただし、本約款14条
1項および2項の適用はない(14条註4)。承諾がおくれて保険契約者に到
達した場合において、それが輸送が正常に行なわれたならば期間内に到達
すべかりし時期に発送されており、かつ保険契約者がこのことを知りまた
は(たとえば郵便局の消印によって)これを知りうべかりしときは、保険
契約者は承諾の受領後遅滞なく承諾の延着を保険会社に通知しなければな
らない(民法149条1文)。保険契約者がこの義務を履行したときは、契約
-148-
「生命保険契約法」
は成立しなかったこととなる。保険契約者がこの義務を履行しないときは、
契約が成立したものとみなされる(民法149条2文)。一一一保険会社が時期
におくれて承諾したときは、おくれた承諾は保険会社の新たな申込とみな
され、保険契約者は民法147条2文の定める期間内にこれを承諾しうるこ
こととなる(民法150条1項。上記註30)。
〔牲45〕 承諾期間は、無診査保険の場合には、申込の日から開始する
(1項2文後段)。申込の日とは、申込が保険会社の取締役(14条3項)に
到達する日である。しかし14条3項は、保険会社は申込が取締役に到達し
たときはこれを有効と認めなければならないが、これ以外の場合には申込
を有効と認めることを要しない旨を定めているにすぎないから、保険会社
において申込書が外務員に交付されたときに申込があったものと認めるこ
とは差支えない。このため承諾期間の始期についても不明確が生ずること
となる(14条註14)。一一一一一有診査の保険の場合は、申込は診杢医による診査
と合することにより、はじめて保険会社が申込にかかる危険の引受に関す
る調査を行なう基礎資料となりうるが、保険会社は診査を受くべきことを
請求する権利を有しないから(保険契約法160条。註89参照)、承諾期間
は診査医による診査の日から開始するものとされてる(1項2文後段)。診
査医による診査が申込以前に行なわれる場合についても同様である。診壷
の日までは申込にもとずく法律関係は生じない。保険会社は、明示の会意
がないかぎり、診査医による診査を省略することによって申込の効力を生
せしめることはできない。承諾期間はこのように診査の日から開始するも
のであるが、このことは診査の日以前には当事者間に契約関係が全く存在
しえないことを意味するのではない。たとえば、被保険者が診査医の派遣
に明示的または黙示的に同意しながら、診査を受けることを拒否したとき
は、被保険者は保険会社に対してその費用を賠償する義務を負う。その法
律上の原因は申込ではない(申込は承諾がない間は何らの効果を生じない)。
予約(註23)でもない。違約罰でもない。当事者間で行なわれた合意の不
一149-
「生命保険契約法」
履行がその法律上の原因である。かような会意はたとえば保険契約申込書
中にこれを含めることができる(保険監督局はこの場合には普通保険約款
においてこの点に関する留保をなすことを要求している。VA.1910.93)。
この合意はそれ自体として独立の効果を生ずる。保険契約法160条によっ
てその効力を否定されるものではない。保険会社が保険契約者の認容ない
し黙認または明示的な要求により支出したその他の費用(外務員の活動の
費用等)の賠償の問題も、これに準ずる。外務月の保険会社に対する請求
権については、後述する(註90)。-有診査の保険でも、一定期間内に申
込者が診査医の診査を受けないときは保険会社がその申込を無診査保険の
申込として取扱いうる旨を申込者が申込書において表示しているときは、
申込者は申込の時から申込に拘束される。保険監督局はかつて保険契約法
160条との関係からかかる合意の効力を否定したことがあるが(VA.
1913.122,1923.43)、現在ではこれを有効と認めている(VA.1930.
160)。ただし、保険会社がかような会意を行なうについては、診査なしで
申込を承諾したときは保険契約者において基礎書類所定の無診査保険の保
険料割増分を支払うことを要するとか、あるいは保険金額は保険会社が基
礎書類において無診査保険の最高保険金額と定めた額まで減額されるとか
等のことを、保険契約申込用紙に記載しておく必要がある場合が多いであ
ろう。申込者がこの旨の表示に署名することによりその内容に拘束力を与
えることを承認したときは、その効力については間者はない。
〔掟46〕 b)保険契約者は承諾期間内は申込に拘束される。ただし、
保険契約者が明示的にその拘束力を排除したときは(これが実際上行なわ
れることは稀であるが)、保険契約者は申込に拘束されないといわざるを
えないであろう(RG.19.5.11JW.1911.643。シユタウプは、こ
れと異なり、保険契約は保険契約者が保険料を支払って保険証券の交付を
受けたときに成立するのであって、従って申込は拘束力を有しないと説く
が〔Staub HGB.12.13.Aufl.,Anhang zu §361Anm・17〕,こ
-150-
「生命保険契約法」
れは誤りである)。-申込をなすことにより保険契約者および他人の生命
の保険の場合の被保険者は本約款8条所定の告知義務を負うこととなる。
従って、申込をした後または診査医の診査を受けた後に至って知った事実
も、告知しなければならない。告知の方式の点でも、書面によることを要
求せられるかぎりで、保険契約者と被保険者は拘束を受ける。契約関係は
未だ存在しないが、保険契約法31条2文の特別規定により、本約款14条3
項の適用を生ずる。
〔駐47〕 C)申込は、保険契約者が申込をなした後に行為無能力者
(民法130粂2項)となっても、その効力を失わない。しかし、この場合
には、保険会社のなす承諾の意思表示は保険契約者の法定代理人に対して
しなければならない。保険契約者と被保険者が同一人である場合において、
保険契約者が申込をなした後、保険会社の給付義務の開始前に死亡したと
きは、保険会社は2条1項3文によって保護される。保険契約者と被保険
者が別人である場合には、保険契約者が申込後に死亡しても申込は効力を
失わないが、承諾の意思表示は保険契約者の相続人に対してしなければな
らない。・一一一一申込がなされた後その効力発生前に(註40参照)申込が撤
回せられたときは、診査医による診査がすでに終了している場合でも、申
込は効力を生じない(民法130条1項2文)。撤回は一つの意思表示であり、
保険会社は本約款14条3項によりこれが書面で取締役に到達した場合にの
みその効力を認めれば足りるから、保険会社はこの場合にも撤回が申込の
効力を排除する力をもつかどうかを定める自由を有することとなる。申込
はすでに会社の取締役に到達しているが、その撤回の意思表示はようやく
外務員のもとに到達したにすぎないときは、保険会社は撤回を認めること
を要しない。またこれと逆に、申込は外務員のもとに到達したにすぎない
が、撤回はすでに保険会社の取締役のところに到達している場合でも、保
険会社は撤回の効力を認めることを要しない。けだし、保険会社は、申込
が外務員のもとに到達した時にすでにその効力を生じたものと認めうるか
-15ユー
「生命保険契約法」.
らである(反対説、LG.I Berlin Praxis des Versicherungsrechts
l927.85)。
〔駐棚〕12.保険契約者は、保険契約法3条3項・4項の定めるとこ
ろにより、何時でも、費用を負担して、申込の際に自己がなした表示のう
つLを請求することができる。従って保険契約者は、たとえば保険契約申
込書のうつし、診査医に対してなした表示のうつLを請求することができ
る。ただし、診査医の報告書(註96)のうつLは請求しえない。保険契約
者は各表示につき数通のうつLを請求することもできるが、保険会社は
場合によっては権利濫用の主張(民法226条)をなしうる。保険会社
は、保険証券を交付する際に、この権利があることを保険契約者に注意し
なければならない(保険契約法3条3項2文)。これは、保険証券もしくは
そのカバーまたはこれらに添付した書面にその旨を記載することによって
行なわれる(VA.1910.31)。保険契約者はうつLにつきその地方で普通
に要する費用(16条2項2文)を負担することを要し、請求があれば前払
しなければならない(保険契約法3条4項)。-原本の閲覧の請求は、民
法810条・811条の定めるところによる(VA.1917.91.保険契約者が老
衰しているときは、保険契約者の住所において提示を求めうる重要な原因
があると認められる。LG.Karlsruhe ZVW.1913.2)。-被保険者
は、自己がなした表示につき、これと同様の権利を同様の制限の下に認め
られる。
II.申込の承諾または拒絶
〔柱49〕1.a)生命保険契約は他の保険契約と同じく諾成契約であ
って、当事者の表示により合意を要するすべての点(当事者の一方の表示
により合意を要する点を含む)について、保険会社が保険契約者と合意し
たときに成立する(民法154条1項)。保険会社が承諾をなすときは、まず
社内的にその旨を決定し、ついでこれを申込者に対して表示することに
なるが、保険会社が純粋に社内的な意思決定として承諾を決定したのみで
-152-
「生命保険契約法」
は、いまだ承諾が行なわれたことにはなら・ない。保険取引における慣習は、
承諾が申込者に対して表示せられることを要求する(民法151条。RG・
23.9.21HansRZ.1921.895)。
申込の承諾によって生ずる形式的保険開始は、これを第2条にいう保険
保護の開始(実質的保険開始)、技術的保険開始(保険証券記載の第1保
険年度の開始)、および保険証券発行の年月日と区別しなければならない。
保険保護は一定の要件をみたすことによってはじめて開始するが、形式的
保険開始は申込の承諾によって生ずる。
〔註50〕 b)承諾は、被申込者(申込の相手方とされた者)によって
表示されなければならない。被申込者は、申込の相手方とされた保険会社
であるのが通常である。何人が保険会社に代って承諾の表示をなす権限を
有するかは、当該株式会社または相互会社の定款の関係規定によって定ま
る。媒介代理商がこの権限を有することはない(保険契約法43条)。この者
は表示の伝達の使者として問題になるにすぎない。保険監督法147条2項
の定めるラントにおける代表者(Landeshauptbevollm誌Chtigter)は、本
店の許可をえた場合にのみ生命保険契約を締結する権限を有し、この許可
があったことは保険契約中に(たとえば保険証券上に)表示しなければな
らない(保険監督法147条2項5文)。ドイツにおいて保険事業を営むこと
の免許をうけた外国保険事業者のドイツにおける代表者(Reichshauptbevollmachtigter)は、生命保険契約を締結する権限を有する(保険監
督法106条2項3号)。被申込者が保険契約者であるときは(註30)、承諾
は保険契約者によって表示されなければならない。
〔性51〕 C)承諾は明示的または黙示的に表示することができる。承
諾の意思表示を明示的に行なう場合の方式については、法律にもこの約款
にも特別の規定はない。本約款2条1項1文は、保険契約者に対して承諾
を通知すべきことを定めているが、この通知は口頭でなすことを妨げない。
この通知をなす際に第1回保険料および費用の支払の催告をあわせて行な
-153-
「生命保険契約法」
うのが適当であろう(2条1項1文)。保険証券を発行することおよび保険
料等を支払ってその交付をうけることは、いずれも契約締結の要件ではな
く、すでに締結せられた保険契約にもとづいて生ずる義務である。一一一一保
険契約者が保険契約の申込を承諾した場合に(註30)必ずしもこれを明示
的に保険者に通知するを要しないことは疑いがない。保険契約者は推断的
行為(たとえば第1回保険料および付随費用の支払)により承諾の意思を
表示することができる。保険会社は承諾を保険契約者に通知することを要
するものとされているから、保険会社が推断的行為(たとえぱたんに保険
証券を提供する行為)によって承諾をなす余地はない。
〔瞳52〕 d)被申込者は、申込をうけた事項ないし内容についてのみ、
承諾をなしうる。申込と承諾の内容が一致するか否かは、その文言によっ
てではなくして、その意味によって定むべきである(RG.8.10.20.
HansRZ.1920.708)。ただ、附随的な事項については(ただし保険料の
額についても同様である。註42)、申込に存在する欠陥が承諾の意思表示
によってみたされる場合がある。承諾が申込と内容を異にするときは、そ
の承諾は、申込を拒絶して新たな申込をしたものとみなされる(民法150
条2項)。
〔拉53〕 たとえば、承諾の意思表示が、保険料率を著しく変更してい
る場合(Jasper ZVW.1912.93)、保険料以外に保険約款に規定のな
い費用の支払を要求している場合(OLG.Dresden13.5.08 LZ.
1908.956)、保険料の支払をなすべき時期または実質的保険開始の時期
を変更している場合(RG.8.10.09 VA.1910.16 Nr.500;Gottschalk HansRZ1921.869)、保険料支払期間を延長している場合(VA.
1912.103)、再度診査医の診査を受くべきことを要求している場合、通
常の保険料による保険契約が申込まれているのに対して通常の保険料より
も高額の保険料を定めている場合(OLG.Dijsseldorf 3.10.29JR.
1929.398,HansRGZ.A.1930.220,VA.1930.304 Nr.2057)、約
-154-
「生命保険契約法」
款のある条項(たとえば訴訟代理権の授与に関する条項)を拒否して承諾
をなしている場合(OLG.Kbnigsberg 30.5.30.JR.1930.317)
等には、承諾の内容が申込と異っているといえる。-外務員との間でな
した付随的な合意の効力につき、14条註16参照。
〔瞳54〕 表示が表面的に一致している場合でも、各当事者がその表示
を異なった意味に理解しているとき、または当事者の一方が相手方の表示
の意味を誤解しているときは、合意の欠映(民法155条)があることとな
り、契約の成立は認められない。もっとも、各当事者はその表示が一般人
の理解する意味に、しかも信義則に従って解釈されることを甘受しなけれ
ばならない。
〔陰55〕 e)申込の承諾は受領を要する意思表示であって、申込者に
対して表示されなければならない。保険者から保険契約者に対して申込の
承諾が通知された時(2条1項1文)、従って承諾が書面で行なわれる場
合はそれが保険契約者に到達した時(民法130条1項1文)に、契約が成
立し、この時に形式的保険開始(formeller Versicherungsbeginn)を生
ずる(OLG.Ntirnberg 26.3.13 VA.1913.118Nr.770)。保険
契約者が保険者のなした申込を承諾することとなる場合には(註30)、保
険契約者の承諾の表示が書面で保険会社の取締役に到達した時(14粂3項)、
またはその承諾の意思が推断行為により表示せられた時に、形式的保険開
始を生ずる。-承諾の表示が到達する場所が契約締結の場所である。こ
れが契約に適用せらるべき法の決定に関して有する意義につき、Bruck,
Zwischenstaatliches Versicherungsrecht,8参照。-保険証券ま
たは保険料を支払って保険証券を受領すべき旨の催告が外務員のもとに到
達したのみでは、いまだ契約が締結されたことにはならない。外務員は保
険会社から委託を受けた者にすぎないからである。ただし、申込者が外務
月に対して受領の権限を明示的に与えている場合は別である(GerhardHagen §2 Anm 4)。
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「生命保険契約法」
本約款14条1項は「保険会社が保険契約者に対して、取締役に知れたそ
の最後の宛所にあてて書留郵便をもってなした意思表示は、保険契約者が
その場所にいたならばその表示の内容を知りえたものと認められる時に、
保険契約者に到達したものとみなす」と定めているが、この規定は契約成
立後になすべき表示に関するものであって、保険契約者が申込をなした後
その宛所を変更しこれを通知しない場合に同条の定める方法によることは
できない(14条註4)。
従業員が生命保険契約を理由として従業員保険(Angestelltenversicherung)に対する保険料給付の自己負担分を免れうることについて、
従業月保険法(Angestelltenversicherungsgesetz)375条-377条参照。
〔註56〕 f)承諾の表示は撤回することができる。ただし、撤回の意
思表示が承諾の到達より以前に、またはこれと同時に申込者に到達するこ
とを要する(民法130条1項2文)。このことについては被申込者が挙証責任
を負う。-保険契約者が申込をなした後に死亡し、または能力を失づた
場合の効果につき、註47参照。
〔駐57〕 g)保険会社は、その受けた申込を承諾する義務を負うもの
ではない。-締約強制は私保険のどの分野においても存在しない。さらにいえば、保険会社には申込に対して何らかの返答をする義務すらな
い。それゆえ、保険契約者は、民法826粂(良俗に反する故意の加害行為)
の要件が存在する場合をのぞくほか、保険会社に対して承諾がないことま
たは承諾がおくれたことによる損害の賠償を請求しうるものではない
(Gerhard-Hagen §2Anm 6,Hagen Bd.1.327,Muller-Erzbach
746,Raiser 217,Roelli 31ノ。KG.15.11.30JR.1931.40.
VA.1931.250 Nr.2207,7.11.31HansRGZ.A.1932.470 およ
びこれに従うMoschelJW.1931.3177 は、申込を審査のために受領
した時から暫定的な契約関係が存在するというが、この見解によるとき
は、保険会社が終局的に申込を拒絶した場合についても契約締結上の過失
-156-
「生命保険契約法」
の理論により保険会社の責任を認むべきことどなるのであって、これには
強く反対しなければならない。HaymannJW・1932・2500もMoschelと
類似の考え方であって、「保険契約者は、危険負担の申込をなすことによ
り、保険会社ができるだけ早く諾否の決定を行なうことに大きい利益を有
することとなる。保険会社が諾否の決定をおくらせることは信義誠実に反
し、保険会社はこれによって損害賠償義務を負うことになる。けだし、保
険会社は契約締結のための交渉の段階においても保険契約者の正当な利
益を守らなければならないからである」と説く。これらの見解によるとき
は、遂には、被保険者が申込期間中に死亡した場合にも、保険会社が速か
に申込に関して表示をしていたならば、被保険者の死亡は実質的保険開始
(2条1項3文)以後のことであったであろうという理由で、保険会社に給付義
務を負わせることになるであろう。-既存の契約の変更または復活の場
合は、事情は異なる。この場合には、保険会社は信義則上できるだけ早く
返答をする義務を負う(Bruck Kommentar24および同所所掲の文献)。
外務員が申込を受領したときは(保険契約法43条1号参照)、外務月は
これを正規の方法で保険会社に伝達する義務を負い、この義務に違反した
ときは、保険契約者に対して損害賠償の義務を負う。外務員が保険契約者
に対して申込を一定の方法で処理すべきことを約した場合についても同様
である。損害賠償請求権の基礎は、常に、外務員と保険契約者との間の特
別の契約関係である(Gerhard-Hagen §43Anm.11)。保険会社が外務
員の過失につき申込者に対していかなる責任を負うかに関しては、Bruck
Kommentar182参照。 これと別に、保険会社は外務員に対し保険会社と
外務月との間の契約関係にもとづく義務の違反を理由として損害賠償の請
求をすることができる。-保険契約者は申込んだ保険契約が不成立とな
ったことについて外務月に対して責任を負うものではなく、従って保険契
約者は外務員がうべかりし手数料を賠償する義務を負わない(VA.1933.
141)。
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「生命保険契約法」
〔瞳58〕 2.保険会社は法的には申込の拒絶を通知する義務を負わな
い。保険会社は商法362条・民法鋪3条にいう事務処理者ではない。しかし実
際上は拒絶を通知するのが通常である。保険会社は拒絶の理由を述べる義
務を負わない(3項1文)。申込書類はすべて会社の所有となる(3項2文)。
たとえば契約申込書・診査医の報告書・家庭医の報告書・その他の報告書
などは、ここにいう申込書類である。これに対して、出生証明書・身分証
明書その他これに類似の書類はここにいう申込書類に入らない。
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